JP2005504529A - マーカー及びスクリーニング - Google Patents

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Abstract

(i)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位(例えば、樹状突起棘)における、(活性化に関する「タグ」又は「マーカー」、例えばプロフィリンII又はゲルソリンのようなアクチン細胞骨格相互作用タンパク質である)活性化に関連した検出可能な細胞成分の存在及び/又は量を決定すること、並びに(ii)その決定の結果をシナプス活性化と相関させること、を含む、活性化されたシナプスの同定もしくは検出、又はシナプスの活性化のレベルの評価のためのインビボ及びインビトロの方法が提供される。そのようなアッセイは、LTPに関与している過程の同定において有用であるかもしれず、より一般的には、シナプスの活性化又は伝達の調整剤、従って認知機能の調整剤の同定においても有用であるかもしれない。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シナプス活性のマーカーにおける使用のための方法及び材料、並びにそのような活性の調整剤の同定のためのこれらの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経験の実験的操作が、脳内の興奮性シナプスのためのシナプス後接触部位を形成している樹状突起棘の形及び数を変化させることは既知である(1)。
【0003】
樹状突起棘の機能に関しては、極めて多様な概念が提唱されている。これらには、それらはもっぱらシナプス接触の受容のために利用可能なニューロンの表面積を増加させるために存在しているとするもの、それらの役割は過度の興奮からニューロンを防御することであるとするもの、それらは樹状突起と無関係の電気生理学的コンパートメント又は生化学的コンパートメントとして機能しているとするものが含まれる。樹状突起棘の数又は形が、発達中の動物の感覚入力に応じて、又は動物の行動状態と共に変化し得るという証拠から、それらは学習及び記憶に関与しているかもしれないという提唱がなされた(2)。最近の生細胞画像化研究は、棘の形及び数の自発的変化及び活性依存的な変化の両方を示すことにより、この仮説を支持している(3〜6)。この形態学的可塑性は、棘内の高濃度のアクチン(7〜9)、及び棘頭部の表面上のアクチンリッチな運動性の隆起の出現(3、4)と関連している。アクチン動力学を阻害する薬物は、樹状突起棘の運動性を阻止し(3、4)、長期増強(LTP)の維持相も妨害するが(10、11)、これらは、活性により誘導されるシナプス伝達の調整と、記憶固定に関連したシナプス形態学の長期変化との間のリンクとして、アクチンが機能していることを示唆している。にもかかわらず、「活性化」された場合により多くのアクチンを獲得する棘も存在するし、不変である棘、減衰する棘も存在するが、アクチン自体は、活性化前ですら棘内に既に存在する。
【0004】
直ちに出現するLTPの電気生理学的効果と、発現におよそ30分を要するそれに関連した形態学的変化との間にはタイミングの不一致が存在することは、当技術分野において既知である。実際、この時間的なずれは、シナプス可塑性の電気生理学的兆候と長期記憶の符号化との関係に関する一般的な疑問(38、40)、すなわち最初は不安定である記憶を耐久性のある長期記憶痕跡へと転換する固定過程においてシナプス特異性が如何にして維持されるのかという疑問に関する一つの要因である。シナプス活性化の特定のパターンが、短期持続性のLTPを与えるのか、又は長期持続性のLTPを与えるのかを決定するためには、事前の活性の何らかの記録、即ち、おそらくは可塑性に関係するタンパク質を隔絶することによる、活性化されたシナプスを固定過程の将来のレシピエントとしてマークする「タグ」の設定が必要とされると考えられる(38、41)。しかしながら、そのような識別タグは、検討はされているが(41)、現在のところ未同定である。
【0005】
Naisbittら(1999)Neuron 23:569−582は、NMDA受容体複合体と結合するタンパク質である「シャンク(Shank)」を記載している。この出版物は、シナプスがグルタミン酸により活性化されると、シャンクとコルタクチン(cortactin)との共局在が、約5%から25%へと増加すると断定している。しかしながら、シャンク及びコルタクチンは、いずれも、刺激状態のシナプスにも未刺激状態のシナプスにも存在しており、従って、シナプス内のそれらの存在は、それ自体が、活性化に関するタグではない。
【0006】
Ehlers(2000)Neuron 28:511−525は、シナプス後膜に高濃度で存在するグルタミン酸受容体(AMPA受容体;AMPAR)を取り上げている。グルタミン酸によるシナプスの刺激は、迅速なAMPARの喪失をもたらし、LTPの誘導は、AMPARサブユニットGluR1の樹状突起棘及びシナプスへの移行を引き起こす。しかしながら、AMPA受容体がシナプスにおいて代謝回転しているという事実は、それらが活性化の持続性マーカーではなく、いずれにせよ、活性化されていない成熟シナプスにも存在する場合があることを示唆している。
【0007】
従って、シナプスにおける検出可能な存在がシナプスの活性化と密接に相関している持続性マーカーである「タグ」により、活性化されたシナプスを容易に同定することが可能となれば、それは当技術分野において極めて重要である。電気生理学的アプローチを使用しても、同時に研究され得るのは極少数のニューロン(典型的には60個)のみであり、個々のシナプスは解像レベル未満にある。しかしながら、マーカータグの同定は、インビトロ又はインビボの神経回路網を通した特定の刺激パターンの実行に関与しているシナプス集団の同定を許容するであろう。また、それは、とりわけ、シナプス活性化を調整し、従って下流の神経化学的及び神経生理学的なイベントを調整する化合物の同定を容易にするであろう。
【0008】
本発明の優先日の後、Muraseら(2002,Neuron 35:91−105)は、脱分極時に樹状突起の軸から棘へ移動し、シナプスのサイズ及び強度に影響を及ぼすらしい、活性により誘導されるβ−カテニンの変化について記述した。この分子は、カドヘリンとアクチン細胞骨格との間の相互作用を媒介する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、棘保持海馬ニューロンの活性化を調査した。本発明者らは、蛍光標識タンパク質を発現している細胞の生画像化を使用して、NMDA受容体の活性化が、長期持続性のCa2+依存性のプロフィリンIIの棘頭部へのターゲティングを生じることを示した。YFPタグ化プロフィリンII及びCFPタグ化アクチンの同時の可視化は、NMDA受容体により誘導される樹状突起棘への輸送の後、プロフィリンIIは、アクチンと共分布せず、樹状突起棘の表面の点状部位へとターゲティングされることを示した。抗体染色は、インビボ(26、30)及びインビトロ(8、31)でシナプス後膜の接合領域と密接に関連していることが以前の研究により示されているNMDA受容体のクラスタと、これらの部位が整列していることをさらに示した。総合すると、これらのデータは、NMDA受容体活性化が、棘シナプスのシナプス後接合部位へプロフィリンIIをターゲティングすることを示している。プロフィリンが主にシナプス後部に分布しているというここでの観察は、プロフィリンのシナプス前部位との会合を示唆した以前の免疫組織化学的研究(28)と異なっている。
【0010】
動員後、プロフィリンは、長時間棘内に濃縮され続け、従って活性化されたシナプスをマークする。これらの結果は、樹状突起棘内のアクチン細胞骨格の長期調整に関する分子的メカニズムを示唆している。プロフィリンIIは、未刺激状態のシナプスには検出可能に存在しないが、刺激状態のシナプスには存在するため、例えば特にNMDAグルタミン酸作動性受容体を介して活性化されたシナプスに関する単一タンパク質のマーカー又は「タグ」として機能する。樹状突起棘が形成される前(およそ培養12日目)の発達途上のニューロンにおけるさらなる結果は、プロフィリンII−GFPが、NMDA受容体が刺激された場合、樹状突起軸上のシナプス後部位へもターゲティングされることを示した。これは、プロフィリンII−GFPが、(樹状突起棘を有するものに限らず)活性化されたグルタミン酸作動性シナプスのシナプス後部位をマークすることを証明している。
【0011】
従って、一般的には、本発明は、樹状突起棘のような形態学的に特殊なニューロンシナプス後部位における濃度が増加する検出可能な細胞成分の、シナプス活性化の特異的「マーカー」としての使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの面において、(i)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における、活性化に関連した検出可能な細胞成分の存在及び/又は量を決定すること、並びに(ii)その決定の結果をシナプスの活性化と相関させること、を含む、活性化されたシナプスの同定もしくは検出、又はシナプスの活性化のレベルの評価のための方法が提供される。
【0013】
「シナプス」とは(従って、シナプスの、とは)、シナプス接合部において連絡している形態学的に特殊なシナプス前成分及びシナプス後成分からなる、二つのニューロン間でシナプス伝達が起こるような構造を意味する。
【0014】
「活性化」とは(従って、活性化された、とは)、LTP(36〜38)又は長期抑圧(LTD)を誘導することが既知の反復的な刺激パターンのような特定の刺激パターンに応答して起こるシナプスの伝達又は接続の適応変化にシナプスが参与していることを意味する(Bear,M.F.(1996).A synaptic basis for memory storage in the cerebral cortex(脳皮質における記憶保存のためのシナプスの基礎),Proc Natl Acad Sci U S A 93,13453−9参照)。適応変化には、以下に制限はされないが、シナプスの形態学的変化、及びアクチン細胞骨格に関係した構造タンパク質の分子的再編成が含まれる(8、9)。その変化は、インビボでは、感覚情報の認知又は処理に関係しているかもしれない。活性化は、適切な条件の下で、シナプス後受容体が刺激され、その結果、Ca2+がシナプスの棘形成部分へ流入することにより達成される場合がある。
【0015】
本法における決定工程の前に、薬理学的薬剤又は電気刺激を含む推定上又は既知の活性化刺激へシナプスが曝されてもよい。
【0016】
従って、本法は、活性化されたシナプスにおいてシナプス内の存在及び/又は量が増加するという点で、活性化と「関連」している検出可能なタグ又はマーカーによる、活性化されたシナプスの同定を包含する。一般に、本法において使用される条件の下で、活性化前にはマーカーは存在しない(又は、検出可能には存在しない)が、シナプスが活性化された場合、シナプス内のマーカーの量は、実際、検出可能なレベルにまで、持続的に、例えばその検出可能なレベルが少なくとも例えば1時間、5時間、10時間、最も好ましくは15時間又はそれ以上存在するよう、増加するであろう。検出可能な細胞成分の存在及び/又は量の「決定」は、定性的であってもよいし又は定量的であってもよく、「相関」は、活性化されていないシナプス内のマーカーとの比較(直接の、又は歴史的もしくは同時的な比較に基づく)に基づいたものであり得る。例えば、検出可能な細胞成分の量が各々スコア化され、そのスコアが比較され得る。
【0017】
本発明のこれ及びその他の面が実施され得るいくつかの実施形態を、以下、より詳細に記述する。
【0018】
マーカーの選択及び使用
前記のように、本発明者らは、特にプロフィリンIIが適当なマーカー又はタグであることを証明した。プロフィリンは、アクチン単量体と結合し(12)、細胞表面における急成長中のアクチンフィラメントの反しのある端へのG−アクチンの付加を増強する(13、14)、小さなタンパク質である。多様なプロリンリッチタンパク質及びPIPとのプロフィリンの結合は、細胞表面の高アクチン動力学の部位への単量体アクチンの動員を促進し、その重合を制御すると考えられている(15〜17)。プロフィリンIIは、ほぼ排他的に脳に発現しており、脳内の存在量は、より広範に発現しているプロフィリンIより数倍多い(19、20)。しかしながら、シナプス活性化に関するマーカーとしてのプロフィリンIIの役割は、以前には示唆されていない。プロフィリンIIは、ターゲティングと残留性との組み合わせを示すため、活性化されたシナプスに関する潜在的に貴重な組織化学的タグであり、初めて記載されるそのようなマーカーである。
【0019】
LTPの長期持続効果には動的なアクチンが必要であるため(11)、本発明の開示を考慮すると、活性化に関するタグとしてのプロフィリンIIの役割は、樹状突起棘内の特殊なアクチンに基づく細胞骨格の修飾における役割に関係している可能性が高いと考えられる。この細胞骨格は、アクチン自体のみならずアクチン制御タンパク質も含んでおり(8、9、29)、そのようなタンパク質、例えばゲルソリン、コフィリン、ADF(アクチン脱重合因子)及びその他のアクチン制御タンパク質(即ち、前記のように、樹状突起棘内のアクチン細胞骨格を修飾することができるアクチン関連タンパク質)も、本発明における利用可能性を有するかもしれない。マーカーとしてのゲルソリンの使用を証明する結果は、後述される。
【0020】
実際、シナプスタグとしてのプロフィリンIIの同定は、下記のような他のタグの同定を容易にすることができる。
【0021】
本発明において使用するには、マーカー又はタグは、検出可能でなければならない。原理的に、それは、本質的に検出可能なもの(例えば、対応する抗体により同定可能なタンパク質)であり得る。免疫学的な検出法には、細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色、及び遺伝子産物の発現を直接定量するための細胞培養物のアッセイが含まれる。免疫組織化学的染色及び/又は試料液のアッセイに有用な抗体は、モノクローナルであっても又はポリクローナルであってもよく、従来の方法により調製され得る。便利には、抗体はマーカーの未改変の配列に対して調製され得る。
【0022】
好ましい実施形態において、マーカーは、スコア化の容易さ及び/又は感度を増加させるため、「シグナルタンパク質」であり得る特異的な検出可能標識を含むであろう。最も好ましくは、シグナルタンパク質の活性、又はタンパク質自体が、測光により(特に、蛍光測定又は発光測定により)推定され得る。これは、例えば、緑色蛍光タンパク質、昆虫ルシフェラーゼ及び発光性細菌(photobacterial)ルシフェラーゼを使用して、直接的に行われ得る。又は、例えば、シグナル遺伝子が、例えば染色によって指示色により検出される変化を引き起こすような、間接的なものであってもよい。(容易に検出可能な活性を有する)他の適当なシグナルタンパク質、例えば、基質から有色生成物を生成させることができるβ−ガラクトシダーゼは、当技術分野において既知である。シグナルは共同因子を利用するかもしれない。
【0023】
本発明は、活性化に応答してシナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における存在及び/又は量が増加する検出可能な細胞成分を、1個以上のシナプスを形成しているニューロンへ導入することを含む、活性化時のシナプスの検出可能性を増加させる方法をさらに提供する。
【0024】
従って、本発明は、(i)活性化に応答してシナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における存在及び/又は量が増加する検出可能な細胞成分を、1個以上のシナプスを形成しているニューロンへ導入すること、並びに(ii)シナプス内のシナプス後部位における、その細胞成分の存在及び/又は量を決定すること、並びに(iii)その決定の結果をシナプスの活性化と相関させること、を含む、活性化されたシナプスの同定もしくは検出、又はシナプスの活性化のレベルの評価のための方法を内含する。
【0025】
標識されたマーカーは、一般に、活性化時にシナプスへ動員され得るように(例えば、それをコードする核酸からの発現により)シナプスを形成しているニューロンへそれを導入することにより利用されるであろう。シナプスへ導入される本発明の標識されたマーカーが、天然に存在するようなマーカータンパク質の全長の「真正の」配列を含んでいなければならないという要件は存在しない。タグとしての活性を保持している(例えば、プロフィリンIIに由来する)変種が使用されてもよい。「由来する」という用語には、例えば、変化、例えば置換、挿入及び/又は欠失を全長又は部分長の配列へ導入することにより、真正の未改変の配列の修飾により作製された変種が含まれる。これは、コーディング配列をエンドヌクレアーゼにより制限処理した後の、(必要であればリンカーを使用した)選択された塩基配列の挿入及びライゲーションを含む、任意の適切な技術により達成され得る。また、変異プライマーを使用したPCRにより媒介される突然変異誘発も可能である。例えば、さらなるクローニングを容易にするために制限部位を追加又は除去することも好ましいかもしれない。
【0026】
本発明に係る修飾された配列は、マーカーの配列と少なくとも70%同一の配列を有し得る。典型的には、80%以上、90%以上、95%以上又は98%以上の同一性が、修飾された配列と真正配列との間には存在するであろう。機能性が完全に失われないことを条件として、全長又は部分長の配列に施された最大5個、例えば最大10個又は最大20個のヌクレオチド又はアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換が存在してもよい。類似性又は同一性は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のTBLASTNプログラム、又はウィスコンシンパッケージバージョン8(1994年9月)(Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,米国ウィスコンシン州,ウィスコンシン53711)の一部であるベストフィット(BestFit)により定義され決定されるようなものであり得る。好ましくは、配列比較は、FASTA及びFASTPを使用してなされる(Pearson&Lipman,1988.Methods in Enzymology 183:63−98参照)。パラメーターは、好ましくは、以下のようなデフォルトマトリックスを使用して設定される:Gapopen(ギャップの最初の残基に関するペナルティ):DNAの場合、−16;Gapext(ギャップの付加的な残基に関するペナルティ):DNAの場合、−4;KTUP語長(word length):DNAの場合、6。別法として、核酸に関する相同性は、適切な厳密条件下での探索により判断され得る。指定された配列相同性の核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するために必要とされる厳密条件を計算するための一つの一般式は、以下の通りである(Sambrookら,1989):Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/二重鎖内のbp数。
【0027】
標識されたマーカーをシナプスに導入するための方法は、より詳細に後述される。
【0028】
シナプス
一般的に述べると、本発明の方法においては、1個以上のシナプス集団が評価され(場合によっては比較され)得る。
【0029】
前記のように、シナプスとは、シナプス接合部で連絡している形態学的に特殊なシナプス前成分及びシナプス後成分からなる、二つのニューロン間でシナプス伝達が起こるような任意の構造であり得る。
【0030】
成体の脳内では、神経伝達物質物質としてグルタミン酸を使用する興奮性シナプスの90%超が、樹状突起棘上に作成される。典型的には、これは、細い頸部によって樹状突起に付着した膨張した頭部からなる、およそ1ミクロン長の樹状突起からの小さな隆起である。シナプス前終末は、伝達が起こるシナプス接合部を通して棘の頭部と接触している。
【0031】
本発明は、下記のような様々なインビボ又はインビトロのフォーマットで実施され得る。
【0032】
関係する方法
本発明の方法は、シナプスが活性化されているか否かを決定するために使用され得る。
【0033】
前記のように、活性化は、アクチン再組織化に関連しており、即ち、一般的に述べると、プロフィリンIIのターゲティングが、棘内のアクチン機能を改変する(即ち、棘細胞骨格を調整し、従ってシナプス構造を調整する)。原理的に、本法は、そのような改変されたアクチン機能を決定するために使用され得る。改変された機能は、安定化(即ち、減少した動力学)に相当するかもしれない。
【0034】
活性依存性のプロフィリンII(及びゲルソリン)の棘へのターゲティングのいくつかの特色は、海馬内の学習及び記憶に関する細胞モデルである長期増強(LTP)(36〜38)との関係を示唆している。プロフィリンIIの棘へのターゲティングと同様に、LTPの誘導は、シナプス後NMDA受容体の活性化、及び受容体関連チャンネルを通したCa2+の流入に依存している。より長期にわたるNMDA受容体依存性のLTPは、新たな棘の出現とリンクしている(5、39)。
【0035】
下記実施例に示されるように、プロフィリンII(及びゲルソリン)の棘へのターゲティングは、この長期の刺激により誘導された活性化、及びそれと相関した棘成長のイベントの両方と同時に発生する(5、37、39)。初期刺激が撤去された後のこのアクチン組み立て促進タンパク質の長時間の棘内残留性は、記憶形成にとって重要であると考えられるシナプス活性化の長期の形態学的結果における役割と適合する。
【0036】
本発明は、本明細書に記載されたような方法を実施することを含む、LTPがシナプスにおいて活性化されるか否かを決定する方法をさらに提供する。同様に、シナプス又はシナプス群がLTP及び/又は学習もしくは記憶に関与しているか否かを決定する方法が提供される。
【0037】
細胞に基づくフォーマット
好ましい形態において、本発明は、例えば棘保持海馬ニューロンの樹状突起棘においてマーカーを検出することにより実施される。例えば、培養ニューロンが使用され得る。そのようなニューロンを3〜4週間培養した場合、ほとんどの興奮性シナプスは、成体の脳内のものと同様に樹状突起棘上に作成される。
【0038】
さらなる実施形態において、樹状突起棘が形成される前(培養およそ12日目)の発達途上のニューロンが使用されてもよい。そのような場合にも、検出可能マーカー(例えば、プロフィリンII−GFP)は、やはり、NMDA受容体が刺激された場合、樹状突起軸上のシナプス後部位へターゲティングされ、即ち、例えばプロフィリンII−GFPは、(樹状突起棘を有するものに限らず)活性化されたグルタミン酸作動性シナプスのシナプス後部位をマークする。
【0039】
検出可能マーカーを含む適当なテスト系を作製するためには、安定的に又は一過性に発現されるそのようなマーカーをコードする核酸を使用することが一般的に好ましいであろう。
【0040】
(例えば、標識されたプロフィリンIIをコードする)本発明の核酸、又は本発明において使用するための核酸は、実質的に純粋もしくは均質な形態で、又は起源種の他の核酸を含まずに、もしくは実質的に含まずに、天然の環境から単離及び/又は精製されて提供され得る。本明細書において使用される場合、「単離された」という用語には、これらの可能性全てが包含される。
【0041】
本発明に係る核酸は、cDNA、RNA、ゲノムDNA、及び修飾された核酸もしくは核酸アナログの形態で存在するか、又はそれらに由来する。
【0042】
従って、本発明は、さらなる面において、本発明の様々な方法における、検出可能標識と連結された前記のマーカーをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用に関する。
【0043】
本発明に係る標識と連結されたマーカーのポリペプチド又はペプチドをコードする核酸配列は、本明細書に含まれる情報及び参照、並びに当技術分野において既知の技術を使用して、当業者によって容易に調製され得る(例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis、”Molecular Cloning,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989、並びにAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,1992参照)。これらの技術には、(i)例えばゲノム起源から該当する核酸の試料を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii)化学合成、又は(iii)cDNA配列の調製が含まれる。
【0044】
従って、本発明の細胞に基づくアッセイ実施形態において、標識された目的のマーカーは、発現構築物又はベクターの細胞における発現を引き起こすか又は可能にすることにより導入され得る。
【0045】
構築物は、そのような系に通常含まれるであろう、後述のような、その他の制御配列又は構造エレメントを含んでいてもよい。シグナル配列と同様に、ベクター成分は、通常、以下に制限はされないが、1個以上の複製起点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列を含むであろう。これらの成分のうちの1個以上を含有している適当なベクターの構築は、当業者に既知の標準的なライゲーション技術を利用する。
【0046】
ベクターが1個以上の選択された宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列は、多様な細菌、酵母及びウイルスに関して周知である。例えば、様々なウイルス起源(SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、VSV又はBPV)が、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングに有用である。
【0047】
特に好ましいのは、本明細書に記載されたような核酸を含む発現ベクターである。ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス粒子、ファージもしくはその他の適当なベクター、又は細胞により取り込まれ得、検出可能マーカーを発現させるために使用され得る構築物の形態で存在し得る。
【0048】
発現ベクターは、通常、mRNA合成を指図するための、目的のタンパク質コーディング核酸配列と機能的に連結されたプロモーターを含有している。多様な可能性のある宿主細胞により認識されるプロモーターが周知である。「機能的に連結された」とは、転写がプロモーターから開始されるよう適切に位置付けられ方向付けられた同一核酸分子の一部として連絡していることを意味する。プロモーターと機能的に連結されたDNAは、プロモーターの「転写調節下」にある。哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件として、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、(アデノウイルス2型のような)アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノム、異種哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、並びに熱ショックプロモーターから入手されたプロモーターにより調節される。
【0049】
本発明の発現ベクターは、1個以上の選択遺伝子も含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくはその他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求欠損を補足するタンパク質、又は(c)複合培地から入手可能でない重大な栄養素、例えば桿菌(Bacilli)のためのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0050】
従って、前述の方法は、宿主細胞へ核酸を導入することをさらに含み得る。一般に、(特にインビトロ導入の場合には)制限はされないが「形質転換」とも呼ばれる導入は、任意の利用可能な技術を利用し得る。真核細胞の場合、適当な技術には、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン、電気穿孔、リポソーム媒介形質移入、及びレトロウイルス又はその他のウイルス、例えば、ワクシニアもしくは昆虫細胞の場合にはバキュロウイルスを使用した形質導入が含まれる。例えば、Graham及びvan der Eb、Virology 52:456−457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法が利用され得る。哺乳動物細胞宿主系の形質転換の一般的な面は、米国特許第4,399,216号に記載されている。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術については、Keownら、Methods in Enzymology,185:527 537(1990)及びMansourら、Nature 336:348−352(1988)を参照のこと。
【0051】
本明細書に記載された発現ベクター又はクローニングベクターにより形質移入又は形質転換された宿主細胞は、従来の栄養培地中で培養され得る。培地、温度、pH等のような培養条件は、過度の実験なしに当業者によって選択され得る。一般に、細胞培養物の生産性を最大限にするための原理、プロトコル及び実際の技術は、「Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach(哺乳動物細胞バイオテクノロジー:実際のアプローチ)」、M.Butler編、JRL Press(1991)、及びSambrookら(前記)に見出され得る。
【0052】
インビボ及び動物フォーマット
本発明に係る(即ち、検出可能マーカーを含む)宿主細胞は、遺伝子組換え動物に含まれていてもよく、本発明は、さらに、蛍光型プロフィリンIIのような上記の面に係る標識されたマーカーを発現する細胞を含む遺伝子組換え動物を提供し、それらの使用も提供する。
【0053】
本発明の遺伝子組換え生物は、全て、標識されたマーカーをコードするクローニングされた組換え又は合成のDNA配列を、複数の細胞内に含んでいる。
【0054】
多様な標識されたマーカーを利用して、本発明の遺伝子組換え生物を作製することが可能であるため、外因性遺伝材料に一般的に言及することにより、遺伝子組換え生物の作製の一般的な説明を与えることにする。この一般的な説明は、生物へ前記の特異的なDNA配列を組み込み、下記の方法及び材料を利用してそれらの配列の発現を入手するために、当業者により適合化され得る。遺伝子組換え生物、特に遺伝子組換えマウスの作製に関するさらなる詳細については、(遺伝子組換えマウスを作製する方法を開示するため、参照により本明細書に組み込まれる)1989年10月10日発行の米国特許第4,873,191号、並びにその中で言及され引用された多数の科学的出版物を参照のこと。
【0055】
外因性遺伝材料は、接合体の雄性前核又は雌性前核のいずれかに置かれ得る。より好ましくは、それは、精子が卵に進入した後、可能な限り早く、雄性前核に置かれる。換言すると、接合体の膜の近くに各々位置している前核が、明確に画定され充分に隔離されている、雄性前核の形成の直後。マウス受精卵の雄性前核は、本発明の外因性遺伝材料の添加のための好ましい部位である。
【0056】
卵の核又は接合体の雌性前核により処理される前に、接合体の雄性DNA相補鎖に外因性遺伝材料が添加されることが、最も好ましい。卵の核又は雌性前核は、おそらく雄性DNAのプロタミンをヒストンに交換し、それによって複相接合体を形成する雌性及び雄性のDNA相補鎖の組み合わせを容易にすることにより雄性DNA相補鎖に影響を与える分子を放出すると考えられている。
【0057】
従って、雌性前核により影響を受ける前に、雄性DNA相補鎖又はその他のDNA相補鎖に外因性遺伝材料が添加されることが好ましい。例えば、外因性遺伝材料は、雄性前核と雌性前核とが充分に隔離され、両方が細胞膜の近くに位置している、雄性前核の形成の後、可能な限り早く、初期雄性前核に添加される。別法として、外因性遺伝材料は、脱凝縮を経るよう誘導された後に添加され得る。次いで、外因性遺伝材料を含有している精子が卵に添加されるか、又は凝縮した精子が、卵に添加され、その後に可能な限り早く、外因性遺伝材料が添加される。
【0058】
本発明の目的のため、接合体は、本質的には、完全な生物へ発達することができる複相細胞の形成である。一般に、接合体は、1個以上の配偶子に由来する2個の1倍体核の融合により、天然に又は人為的に形成された核を含有している卵から構成されるであろう。従って、配偶子の核は、天然に適合性であるもの、即ち分化を経て、機能性の生物へ発達することができる生存可能な接合体をもたらすものでなければならない。一般に、正倍数体接合体が好ましい。異数体接合体が入手された場合には、一方の配偶子の起源生物の正倍数に対して2以上、染色体の数が変動するべきではない。
【0059】
同様の生物学的考慮に加え、物理的なものも、接合体の核へ、又は接合体の核の一部を形成している遺伝材料へ添加され得る外因性遺伝材料の量を支配する。遺伝材料が除去されない場合、添加され得る外因性遺伝材料の量は、物理的な破損なしに吸収されるであろう量により制限される。一般に、挿入される外因性遺伝材料の容量は、約10ピコリットルを越えないであろう。添加の物理的効果は、物理的に接合体の生存可能性を破壊するほど大きくてはならない。得られた接合体の外因性遺伝材料を含む遺伝材料は、機能的生物への接合体の分化及び発達を生物学的に開始させ維持することができなければならないため、DNA配列の数及び多様性の生物学的な限界は、特定の接合体及び外因性遺伝材料の機能に依って変動するであろうが、それらは当業者には容易に明らかとなろう。
【0060】
接合体に添加されるDNA配列のコピー数は、添加される外因性遺伝材料の総量に依存し、そして遺伝学的形質転換が起こることを可能にする量であろう。理論的には、1コピーのみが必要であるが;一般には、1コピーが有効であることを保証するために、多コピー、例えば1,000〜20,000コピーの遺伝子が利用される。本発明に関して、一般に、外因性DNA配列の表現型発現を増強するためには、挿入される各外因性DNA配列の複数の機能性コピーを有することが有利である。
【0061】
細胞、核膜、又はその他の既存の細胞もしくは遺伝子の構造を破壊するものでない限り、核遺伝材料への外因性遺伝材料の添加を可能にする任意の技術が、利用され得る。外因性遺伝材料は、優先的には、マイクロインジェクションにより核遺伝材料へ挿入される。細胞及び細胞構造のマイクロインジェクションは、当技術分野において既知であり使用されている。
【0062】
従って、本発明は、適切な膜ターゲティング配列をコードするクローニングされた組換えDNA配列が、哺乳動物受精卵(好ましくは、マウス卵)へ注射され得る方法を提供する。注射された卵は、偽妊娠雌に移植され、該当疾患の病理に関係しているタンパク質を発現する細胞を有する遺伝子組換えマウスが提供されるよう、満期まで成長させられる。注射された配列は、遺伝子組換え哺乳動物の特異的な組織(特に、神経組織)において所望のタンパク質を発現させるため接続されたプロモーター配列を有するよう構築される。例には、Lewisら(2000)Nature Genetics 25,402−405のプリオン特異的プロモーター、又は神経特異的エノラーゼプロモーターが含まれる。
【0063】
本発明の非ヒト動物は、融合ポリペプチドに関してホモ接合性であってもよいし又はヘテロ接合性であってもよい。哺乳動物には、非ヒト霊長類、齧歯類、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタが含まれる。齧歯類には、マウス、ラット及びモルモットが含まれる。特に、以下のものが提供される:
場合によっては明確な刺激又は処理の後に、シナプスの活性化(従って、LTP及び記憶形成に関与しているシナプスの存在)が容易に検出され得る遺伝子組換え動物モデルを調製する方法、
本明細書に記述されたタンパク質に関して非遺伝子組換えであり、好ましくは野生型である動物と、いずれかの性別の初代(F世代)を交雑させることにより、F世代を作製する方法(次いで、子孫(F世代)がスクリーニングされ、上記のような導入遺伝子を保持しているものが選択される)、
適切な性別の2匹のF動物を交雑させることによりF世代を作製する方法(次いで、子孫(F世代)がスクリーニングされ、適切な量の導入遺伝子を保持している(即ち、ヘテロ接合性又はホモ接合性の)ものが選択される)、
遺伝子組換え動物モデル、及び前記のような調整された表現型を有する遺伝子組換え生物におけるシナプスの活性化の検出可能性を増強する方法。
【0064】
例えば、本発明は、シナプスの「タグ化」を研究するために脳が使用され得るプロフィリンII−GFPマウスを提供する。これらのマウスの脳組織に由来する細胞培養物は、(下記実施例においてより詳細に記述される)形質移入された細胞において特徴決定されたのと同一のグルタミン酸受容体依存性のターゲティングが、マウス由来の脳ニューロンにおいても起こることを示す。そのようなマウスは、標識されたタグの発現が機能を妨害しないレベルで制御されている正常な行動を示す動物である。従って、活性依存的なターゲティングがマウス組織において起こるという事実は、効果の生理学的妥当性の良好な確認である。
【0065】
本発明の遺伝子組換え非ヒト哺乳動物は、とりわけ、ニューロン活性化を研究する実験的な目的のため、そして不適切な活性化が関与している疾患の徴候を緩和するために設計された療法の開発のため、使用され得る。「実験的な」とは、そのような実験が実施される研究施設に適用可能な現行法の下で、動物実験における又は試験目的のための使用が許容されることを意味する。
【0066】
シナプス活性化の調整剤
本発明の重要な面は、シナプス伝達に影響を与える調整剤、例えば認知機能(薬物依存を含む記憶及び学習)、てんかん、神経変性、虚血、偏頭痛、統合失調症及び抑うつに影響を与える調整剤(例えば、アゴニスト又はアンタゴニスト)をスクリーニングするための、本明細書に開示された検出可能マーカーの使用である。これは、本明細書の開示を考慮して、棘に移行するマーカーを増強(アゴニストの場合)もしくは抑制(アンタゴニストの場合)する(又は、アクチン細胞骨格を制御する他のタンパク質の、棘への、もしくは棘からの再分布を引き起こす)であろう化合物を検索することにより、達成され得る。従って、活性化されたシナプスに関する指標は、アルツハイマー病のような疾患にとって重要な長期記憶を改善する化合物のスクリーニングに有用である。下記実施例に示されるように、プロフィリンIIは、少なくとも16時間シナプス内に滞留し、従って調整剤の効果をスクリーニングするのに十分な期間にわたり、活性化されたシナプスをマークする。
【0067】
従って、本発明は、シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位への標識されたマーカーのターゲティングの修飾に関してアッセイすることを含む、可能性のある認知機能の調整のための化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0068】
本発明の目的のための「認知機能」という用語は、特に脳の皮質機能を含む。従って、意識及び記憶は、「認知機能」の例である。疾患及び先天性疾患を含むヒトにおける様々な状態が、認知機能に影響を与え得る。例えば、アルツハイマー病又は精神遅滞のような痴呆は、認知機能の減損を特徴とする。認知機能を評価するための多数のテストが、心理学及び医学の当業者に既知である。例えば、認知機能は、心理測定テスト、神経心理学的テスト、メタ認知自己評価、認知スクリーニングテスト及び反応時間テストを使用して評価され得る(Ruoppila,I.及びSuutama,T.(1997)Scand.J.Soc.Med.Suppl.53,44−65)。「認知機能」という用語には、任意のそのようなテストにより評価された機能が含まれる。認知機能の「調整」という用語には、認知機能の増加及び減少が含まれるものとする。認知機能の増加及び減少は、前記テストのうちのいずれかにより評価され得る。
【0069】
非ニューロンスクリーニング
本発明のスクリーニングの好ましい方法は、ニューロン細胞又はニューロン起源の細胞に基づくが、適切な特徴を示す非ニューロン細胞型も、本発明の目的に適した細胞であり得る。
【0070】
例えば、非ニューロン細胞において、プロフィリンは細胞表面上の部位へ動員される(13、18、34)。従って、前述の培養又は抽出されたニューロン細胞に加え、例えば、場合によりプロフィリンIIの一過性発現を有する繊維芽細胞を用いても、活性化の調整剤に関するスクリーニング(又はプレスクリーニング)は実施され得る。これは、ニューロンの使用より便利であるかもしれず、陽性「ヒット」は、次いで、ニューロン又は動物の全身における研究において使用するため採用され得る。
【0071】
一つの実施形態において、本発明は、以下の工程を含む、可能な認知機能の調整のための化合物をスクリーニングする方法を提供する:(a)活発にラフリングしている膜へのプロフィリンIIの移行を測定する工程、(b)そのような細胞を候補化合物へ曝す工程、(c)候補化合物の存在下で、該細胞における活発にラフリングしている膜へのプロフィリンIIの移行を測定する工程、(d)化合物の非存在下及び存在下における該細胞における活発にラフリングしている膜へのプロフィリンIIの移行を比較する工程、(e)活発にラフリングしている膜へのプロフィリンIIの移行を修飾する化合物を選択する工程。
【0072】
ニューロンスクリーニング
しかしながら、プロフィリンII「タグ」メカニズムは、シナプスにおいて作動し、シナプス伝達により制御されるため、本法は、好ましくはニューロン細胞を用いて使用される。同様に、前述の他のアクチン制御タンパク質の細胞の皮質細胞骨格への再分布が、ニューロンにおいてアッセイされ得る。
【0073】
従って、前記の様々な方法は、シナプス又はそれを形成しているニューロンを、シナプス活性化を調整する能力に関して評価すべき1個以上の薬剤と接触させる工程、及び該薬剤の存在下又は非存在下における活性化を比較する工程(その相対値は調整剤としての活性と相関している)を含み得る。
【0074】
一つの実施形態において、本発明は、(a)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能マーカーの存在及び/又は量を決定する工程、(b)シナプスを形成しているニューロンを候補化合物に曝す工程、(c)候補化合物の存在下で、シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能マーカーの存在及び/又は量を測定する工程、(d)(a)及び(c)においてなされた決定を比較する工程、(e)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能マーカーの量を修飾する化合物を選択する工程、を含む、可能性のある認知機能の調整のための化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0075】
例えば、培養ラット海馬ニューロン上の樹状突起棘を、棘頭部に濃縮された蛍光性タンパク質(例えば、プロフィリンII−GFP)により可視化し、化合物による潅流の前及び後(例えば、ニューロン細胞培地のような溶媒中で30分後)に記録することができる。
【0076】
阻害剤である調整剤をスクリーニングすべき場合には、一般に、活性化工程の開始又は刺激が方法に含まれることが必要とされるであろう。従って、そのような方法は、一般に、シナプス(又はシナプスを形成しているニューロン、又は非ニューロン細胞)を、推定上又は既知の活性化の刺激又は原因に曝す工程を含むであろう。方法は、活性化に関与する他の成分、例えばCa2+を供給することを含んでいてもよい。
【0077】
培養ニューロン又はその他の適切な組織試料の場合、これは、適切な受容体の刺激により行われ得る。以下に示されるように、グルタミン酸NMDA受容体の刺激は、特に効果的であり得る。
【0078】
遺伝子組換え動物並びにそれに由来する細胞及び組織を使用したスクリーニング
タグ可視化技術は、無処理動物(又はそのような動物に由来する脳組織もしくはニューロン)、例えば疾患モデルにおいて、薬物処理の後、又は行動操作の後、使用され得る。
【0079】
神経伝達物質の放出及びその後の同族の受容体との相互作用を誘導するために、生理学的刺激、特に電気刺激を利用する方法は、ターゲティングを得るために細胞をグルタミン酸に曝すことを回避すべき場合、特に好ましいかもしれない。別法として、適切な電気刺激(LTP、50〜100HZにおける強縮性刺激;LTD、lHz)を使用して、プロフィリンII−GFP脳片においてLTP又はLTDを誘導し、プロフィリンII再分布に対する薬物の効果を、そのような系において決定することができる。別法として、前記のように、明確な状況においてプロフィリンIIが活発にラフリングしている膜へ移行するか否かを調べるため、繊維芽細胞又は血球をプロフィリンII−GFP動物から単離してもよい。
【0080】
プロフィリンII−GFPマウスがテスト化合物の存在下又は非存在下において行動テストを受けるインビボ系が実施されてもよい。プロフィリンIIは、活性化後少なくとも16時間シナプスに残存するため、脳組織は、マーカー分布が試料調製中に変化する懸念なしに固定され分析され得る。
【0081】
調整の特異性
調整剤を同定する方法が、細胞に基づく系を利用する場合には、それは、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイキット(Sigma)の使用により、標識されたマーカーを発現している細胞の生存可能性をテストする工程をさらに含み得る。この工程は、生命維持に必要な細胞機能のテスト薬剤による妨害の指標を提供し得る。
【0082】
ハイスループットスクリーニング
本質的に、本発明の方法は、当技術分野において周知のもののようなハイスループットスクリーニングと同様にして利用され得る。例えば、WO200016231(Navicyte);WO200014540(Tibotec);ドイツ特許第19840545号(Jerini Biotools);WO200012755(Higher Council for Scientific Research);WO200012705(Pausch MH;Wess J);WO200011216(Bristol−Myers Squibb);米国特許第6027873号(Genencor Intl.);ドイツ特許第19835071号(Carl Zeiss;F Hoffman−La Roche);WO200003805(CombiChem);WO200002899(Biocept);WO200002045(Euroscreen);米国特許第6007690号(Aclara Biosciences)を参照のこと。
【0083】
テスト化合物の選択
テストされる化合物は、該当する活性の評価が求められる、何らかの化合物であり得る。
【0084】
方法は、新たな阻害剤/調整剤を同定するための一次スクリーニングとして、又は既知の阻害剤/調整剤をさらに詳細に研究するための二次スクリーニングとして役立ち得る。
【0085】
薬剤は、天然又は合成の化合物であり得る。好ましくは血液脳関門を通過することができる比較的小さな化学化合物が、好ましいかもしれない。
【0086】
当業者であれば、本発明のこの面に係るスクリーニングアッセイに添加されるテスト物質又は化合物の量が、通常、使用される化合物の型に依って試行錯誤により決定されるであろうことを認識するであろう。それは、治療環境において現実的に使用され得るレベル、即ち患者にとって致命的でないであろうレベルとなるよう選択され得る。典型的には、約0.01〜100nM、例えば0.1〜10nMの濃度の推定調整剤化合物が、使用され得る。
【0087】
薬物療法学
上記の様々な面に係るスクリーニングアッセイ法の実行の後は、ニューロン活性化を妨害又は調整する能力に関して陽性と判定された化合物、物質又は分子の単離及び/又は製造及び/又は使用が行われ得る。
【0088】
このようにして同定された化合物は、診断、予後判定又は治療的処置において使用するための組成物へと製剤化され得る。従って、本発明は、さらなる面において、本明細書に提供されたようなスクリーニング法によって入手可能な1個以上の阻害性又は調節性の化合物を含む薬学的製剤にも及ぶ。
【0089】
前記のようにして同定された化合物は、製造され、かつ/又は医薬品、薬学的組成物もしくは薬物のような組成物の調製、即ち製造もしくは製剤化において使用され得る。これらは、個体へ投与され得る。
【0090】
個体へ与えられるのが、本発明に係るポリペプチド、抗体、ペプチド、核酸分子、低分子、模倣体、又は薬学的に有用なその他の化合物のいずれであるかに関わらず、投与は、好ましくは、(予防は治療と見なされ得るが、場合に応じて)個体にとっての利益を示すのに十分な「予防的に有効な量」又は「治療的に有効な量」でなされる。投与される実際の量、並びに投与の速度及び時系列は、処置されるものの性質及び重度に依るであろう。処置の処方、例えば投薬量等に関する決定は、一般医及びその他の医師の責任の範囲内にある。
【0091】
本発明に係る薬学的組成物、及び本発明に係る使用のための薬学的組成物は、活性成分に加え、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者に周知のその他の材料を含み得る。そのような材料は、無毒であるべきであり、活性成分の効力を妨害するべきではない。担体又はその他の材料の正確な性質は、経口、又は注射、例えば皮内注射、皮下注射、静脈注射であり得る投与経路に依るであろう。
【0092】
経口投与用の薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤又は液剤の形態であり得る。錠剤は、ゼラチン又は佐剤のような固体担体を含んでいてもよい。液状の薬学的組成物は、一般に、水、石油、動物もしくは植物の油、鉱油又は合成油のような液状担体を含む。生理食塩水、デキストロースもしくはその他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコールが含まれていてもよい。
【0093】
静脈注射、皮内注射もしくは皮下注射、又は罹患部位への注射の場合、活性成分は、発熱性物質を含まず、適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水性溶液の形態であろう。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液のような等張性の媒体を使用して、適当な溶液を調製することができよう。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤及び/又はその他の添加剤が含まれてもよい。
【0094】
前記の技術及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.編、1980年に見出され得る。
【0095】
薬剤は、脳もしくはその他の所望の部位へ局所的に投与されてもよいし、又は脳細胞もしくはその他の細胞へターゲティングされるような様式で全身送達されてもよい。
【0096】
新たなタグを見出す方法
本明細書の開示は、例えば、シナプス内のプロフィリンIIを検出する工程、及び(例えば)活性化条件下で、それと共局在するか又はアクチン細胞骨格を修飾する細胞成分をスクリーニングする工程を含む方法の使用により、ニューロン活性化の新たなマーカー又はタグを見出すために使用され得る。
【0097】
そのような、さらなるマーカー(プロフィリンIIと直接相互作用するかもしれないし、相互作用しないかもしれない)も、LTPにおいて役割を果たすかもしれない。これらの特性を有するプロフィリンの結合パートナーは、例えば、Fields and Song,1989,Nature 340;245−246により開示されたようなツーハイブリッドアッセイにおいて検出され得る。
【0098】
診断学
本明細書に開示された活性化されたシナプスに関するプロフィリンII及びその他のマーカーは、診断に使用され得る。脳内の活性化されたシナプスのパターンは、特定の疾患状態(例えば、種々の型の統合失調症)と相関しているかもしれず、その診断に基づき、特定の治療が選択され得る。
【0099】
本発明者らは、培養海馬ニューロンが、興奮毒性濃度(100マイクロM)のグルタミン酸に30分間曝された場合、グルタミン酸曝露の2分以内に、正常な形態学の喪失及び樹状突起の膨潤を含む興奮毒性変化を示したことを示した。しかしながら、これらの変性性変化にもかかわらず、プロフィリンII−GFPはやはり樹状突起内の点状部位へターゲティングされ、ターゲティングメカニズムが完全であることが示された。これは、放出されたグルタミン酸による受容体の過刺激がニューロン損傷を引き起こす発作及びてんかんに該当するかもしれない。従って、最終的にアポトーシスへと至るイベントが始動した後ですら、プロフィリンIIタグ化は起こるようである。従って、毒性モデルにおいて、プロフィリンIIターゲティングは、細胞死が起こる前の時点で、可能性のある損傷を負った細胞のマーカーとして機能するかもしれない。
【0100】
従って、本発明は、診断の方法、及び特に神経病理学に関するそのような方法における本明細書に開示された材料の使用を提供する。本発明は、活性化時のシナプスの検出可能性が、前記のような検出可能な細胞成分の使用により増加させられる、遺伝子組換え動物モデルの疾患表現型の検出可能性を増強する方法をさらに提供する。
【0101】
以下、非制限的な図面及び実施例を参照しつつ、本発明をさらに説明する。これらを考慮すれば、本発明の他の実施形態が、当業者には想到されるであろう。
【実施例】
【0102】
材料及び方法
プロフィリンI及びIIとGFPとの融合構築物、又はGFP単独を、β−アクチンプロモーターを含有している真核生物発現プラスミドから発現させた(42)。
【0103】
活性化合物は以下の供給元より入手した:N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)、アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、マレイン酸水素(5R,10S)−(+)−5−メチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5,10−イミン(MK−801)、6,7−ジニトロキノキサリン−2,3(1h,4h)−ジオン(DNQX)、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ニトロ−2,3−ジオキソ−ベンゾ[f]キノキサリン−7−スルホンアミド(NBQX)、D(−)−2−アミノ−5−ホスホノペンタン酸はRBIより、(1S,3S)−1−アミノシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸((1S,3S)−ACPD))はAlexisより、(S)−3,5−ジヒドロキシフェニルグリシン((S)−3,5−DHPG)、(R,S)−γ−メチル−4−カルボキシフェニルグリシン(MCPG)及び2S−2−アミノ−2−(1S,2S−2−カルボキシシクロプロパ−1−イル)−3−(キサント−9−イル)プロパン酸(LY341495)はTocrisより。NMDA受容体のNR1サブユニットに対するモノクローナル抗体は、Pharmingenより入手した。
【0104】
細胞培養及び顕微鏡検査
分散したニューロンの培養物(43)をcDNA構築物(3)で形質移入し、画像化前に19〜28日間、グリア条件無血清培地中で維持した。画像化は、GFP最適化フィルター(Chroma Technologies,Brattleboro,Vermont)、及びMetamorphソフトウェア(Universal Imaging corporation,West Chester,Pennsylvania)によりコントロールされたミクロマックス(MicroMax)冷却CCDカメラ(Princeton Instruments,Trenton,New Jersey)を用いて、タイロード(Tyrode)溶液pH7.3中で37℃で実施した。細胞を、最大30分間、グルタミン酸又はNMDA(5〜10μM)の添加により刺激した。特異的受容体サブタイプを阻止する実験においては、細胞を対応するアンタゴニストと共に15分間プレインキュベートした。
【0105】
実施例1−培養海馬ニューロン内のプロフィリンI及びプロフィリンII
培養海馬ニューロンにおいてGFPタグ化されたプロフィリンI及びプロフィリンIIを発現させたところ、樹状突起内のそれらの分布の差が明らかとなった(図1及び表1)。プロフィリンIIを発現している細胞(n=239)の4%において、GFPタグ化タンパク質は、樹状突起棘の頭部に高度に濃縮されていたが(図1A)、他の細胞においては、棘濃縮は弱いか又は検出不可であった(図1B)。GFPタグ化プロフィリンIは、棘における濃縮を弱くしか又は全く示さなかった(図1C)。比較のため、対照細胞における未修飾GFPの分布を、図1Dに示す。
【0106】
ゲルソリンを用いた対応する結果を表5に示す。「G2−6−GFP」とは、ゲルソリン全体からドメイン1を欠いている(従って、アクチン線維切断(severing)機能を欠いている)ゲルソリン変異体に基づくものである。
【0107】
実施例2−NMDA受容体は棘頭部へのプロフィリンII蓄積を制御する
いくつかの細胞の棘にはプロフィリンIIが強く濃縮され、他においては濃縮されないことから、細胞質局在が活性依存性であるかもしれないことが示唆された。本発明者らは、この仮説をテストするため、GFPタグ化されたプロフィリンIIもしくはプロフィリンI又は未修飾GFPを発現している海馬ニューロンを、10μMグルタミン酸に曝した(図2)。処理の前後に捕捉された生細胞の画像は、グルタミン酸添加の5〜8分後に開始し、30分後に最大となった、棘の頭部へのプロフィリンII−GFPの強い再分布を示した(図2A及びB)。グルタミン酸処理によって、GFPタグ化プロフィリンIも弱く棘へとシフトしたが(図2D)、それは、プロフィリンIIで見られた高いレベルよりはるかに低かった。同処理によって、未修飾GFPの分布は変化しなかった(図2C)。
【0108】
グルタミン酸受容体のどの種類がプロフィリンターゲティングに関与しているのかを決定するため、プロフィリンII−GFPで形質移入された細胞を、多様なサブタイプ選択的なグルタミン酸受容体のアゴニスト及びアンタゴニストで処理した(表2)。対照実験において、プロフィリンII−GFPを発現している細胞は、10μMグルタミン酸による処理の後、タンパク質の樹状突起棘への強い再分布を示した(表2a)。NMDAによる処理は、グルタミン酸に関して観察されたものと類似している、全ての細胞におけるプロフィリンIIの棘への強いターゲティングを生じた(表2b)。しかしながら、mGluR1型代謝共役型グルタミン酸受容体に選択的なアゴニストであるDHPGによる細胞の刺激は、効果が顕著に低く、AMPAはテストされた細胞16個のうち14個において無効であり、残りの2個の細胞においても微小の効果しか示さなかった。プロフィリンII−GFPの棘へのターゲティングに対する異なるグルタミン酸受容体のこれらの対照的な効果は、個々の受容体サブタイプを選択的アンタゴニストにより阻止しながら細胞をグルタミン酸で刺激する実験により確認した(表2c)。アンタゴニストAPVによるNMDA受容体の阻止は、グルタミン酸により誘導されるプロフィリンIIターゲティングを大きく低下させ、その結果、テストされた細胞28個は全てグルタミン酸単独による処理により生じる強いターゲティングを示さず、5個のみが弱い棘標識を示した。対照的に、AMPA又は代謝共役型グルタミン酸受容体のいずれか、又はそれら両方の阻止は、グルタミン酸により誘導されるプロフィリンIIの棘への蓄積を阻害する効果がはるかに低かった。
【0109】
ゲルソリンを用いた対応する結果を、表6に示す。これらの実験においては、2.5μMグルタミン酸のみを使用した。
【0110】
実施例3−プロフィリンIIの棘ターゲティングには、増加したカルシウムレベルが必要である
棘へのプロフィリンII蓄積におけるNMDA受容体の関与は、細胞質Ca2+レベルの増加が、プロフィリンIIターゲティングを誘発するために必要とされることを示唆した。この概念と一致して、細胞を細胞外Ca2+の非存在下でグルタミン酸により処理した場合には、棘内のプロフィリンIIレベルは増加し得なかった(表3、補足的な図面も参照のこと)。細胞内Ca2+の上昇が単独でターゲティング過程を誘発するのに十分であるか否かを決定するため、内部貯蔵庫からCa2+を放出させ、細胞外Ca2+を流入させる(21、22)タプシガルジン(thapsigargin)(1μM)によりニューロンを処理した。タプシガルジン処理後、テストされた細胞15個のうち10個が、プロフィリンIIの棘への蓄積を示した(表3)。細胞を細胞外のCa2+の非存在下でタプシガルジンにより処理した場合には、少数の細胞におけるプロフィリンIIの弱い再分布のみが存在し(表3a)、このことから、タプシガルジンの効果が、細胞内貯蔵庫からの放出ではなく外部から棘細胞質に進入するCa2+(22)に主として依存することが示唆された。
【0111】
さらなる実験において、内部貯蔵庫からのCa2+の濃度依存的な放出を刺激するmGluR Iアゴニスト1S,3R−ACPDに細胞を曝した。低濃度(100μM)では、このアゴニストは、IP受容体依存性貯蔵庫からの放出のみを誘起し、細胞質Ca2+濃度を中程度に増加させる(23)。この比較的低い濃度で使用された1S,3R−ACPDは、樹状突起内のプロフィリンIIの分布を変化させなかった(表3b)。カルシウムにより誘導されるカルシウム放出(CICR)(23)を介してリアノジン感受性Ca2+貯蔵庫を活性化することにより、細胞質Ca2+レベルのより大きな増加を生ずるlmMという比較的高い濃度においては、1S,3R−ACPDは、プロフィリンIIの棘への強いターゲティングを生じた。中間濃度の1S,3R−ACPD(500μM)による細胞の処理は、中間の結果を生じ(表3b)、このことから、プロフィリンIIターゲティングの細胞内Ca2+レベルへの依存性が強調された。
【0112】
実施例4−シナプス前より放出されたグルタミン酸はプロフィリンII再分布を誘発する
プロフィリンIIの棘へのターゲティングは、90mM KClへの曝露による細胞の脱分極によっても誘導され得た。30分間連続的に細胞を処理したところ、プロフィリンIIの棘へ弱いシフトが生じた(n=2)。より効果的な手法は、10分間の回復間欠期により隔てられた各々3分間継続される4回の90mM KClのパルスによる断続的な刺激を細胞に与えることであった(24)。これは、テストされた細胞5個のうち3個において、強いターゲティングにより、信頼性のあるプロフィリンIIの棘への蓄積を生じた(表4a)。連続処理及び断続処理の両方において、APVの存在下では、テストされた細胞(連続、n=5;断続、n=7)の全てが、プロフィリンの棘への再分布を示さなかったため、90mM KClによる脱分極の効果は、NMDA受容体の活性化に依存していた。
【0113】
90mM KClによる脱分極の一つの効果は、静止膜電位においてそれらに作動するMg2+阻止を軽減することにより、シナプス後NMDA受容体を活性化することである。これが正しいか否かを調べるため、培地からMg2+を除去した後に細胞内のプロフィリンIIの分布を追跡した。30分後、調査されたニューロン12個のうち11個が、プロフィリンIIの棘頭部への再分布を示した(図3A及び表4)。実験前に24時間ボツリヌス毒素(100ng/ml)と共にニューロン(n=7)をプレインキュベートすることにより、神経伝達物質のシナプス前からの放出を阻止した場合、細胞外Mg2+の除去後のプロフィリンIIの棘ターゲティングは起こらなかった。続いて、5μM NMDAによる同細胞の処理は、プロフィリンの棘への強いターゲティングを生じ(図3B及び表4)、このことから、シナプス後受容体依存性のメカニズムがボツリヌス毒素処理後に完全であったことが示された。総合すると、これらの結果は、プロフィリンIIの棘への蓄積が、シナプスより放出されたグルタミン酸が、シナプス後NMDA型グルタミン酸受容体に作用することにより誘発されることを示している。
【0114】
実施例5−プロフィリンは樹状突起棘内のシナプス接合部位へターゲティングされる
以前の研究は、高運動性の部位への単量体アクチンの動員、及びアクチンフィラメントの反しのある端へのそれの負荷にプロフィリンが関与していることを示している(13、16)。従って、本発明者らが観察したNMDA受容体により誘導されるプロフィリンIIの樹状突起棘への再分布は、それが、棘内のフィラメント伸長の部位への単量体アクチンの送達に関与しているかもしれないことを示唆した。この可能性をテストするため、本発明者らは、プロフィリンII及びアクチンの分布を同時にかつ独立に可視化することを可能にする、プロフィリンII−YFP及びCFP−アクチンにより二重形質移入された細胞を調査した(図4)。プロフィリンII−YFP(図4A)及びCFP−アクチン(図4B)の棘頭部内の分布の比較は、棘頭部内の二つの分子の正確な局在が異なっていることを示唆し、この結論は、二つの画像を重ね合わせた場合に確認された(図4C)。これは、プロフィリンIIが棘頭部の先端で1個以上の別個のスポット内に濃縮されていることを明らかにした(図4A及びC、楔形)。対照的に、アクチンは、全ての棘頭部において細胞質全体に分布していた(図4B及びC)。
【0115】
このプロフィリンIIの分布は、同様に、樹状突起棘の先端で1個以上の不連続の位置に分布しているシナプス後接合部位と、それが関連しているかもしれないことを示唆した(25)。
【0116】
従って、本発明者らは、シナプス後接合部位と密接に関連していることが既知(26)のNMDA受容体の、抗体で染色されたNR1サブユニットの分布と、プロフィリンII−YFPの分布を比較した。これは、棘細胞質の全体に分布していたアクチンとは対照的な、棘の先端におけるプロフィリンII斑点(puncta)とNR1クラスタとの著しい共局在を示した(図5)。
【0117】
実施例6−グルタミン酸受容体により誘導されるプロフィリンIIの棘頭部への蓄積は数時間続く
次に、NMDA受容体依存的な蓄積の後、どの程度長くプロフィリンIIが棘頭部に局在し続けるかという問題を扱った。前記と同様に、プロフィリンIIターゲティングを誘導するため、GFPタグ化プロフィリンIIを発現している細胞を、30分間、タイロード(Tyrode)溶液中のグルタミン酸により処理し、次いで、タイロード溶液単独の4回の交換により洗浄した。さらなる45分の「回復」期の後、細胞を観察した。この時間の終了時、棘内のプロフィリンII−GFPレベルの低下は存在しなかった(図6)。続いて、プロフィリンIIの棘頭部への蓄積を誘導するため、細胞をグルタミン酸により30分間刺激し、グルタミン酸を含まない培養培地中での4時間又は16時間のさらなるインキュベーションの後、それらを再調査した。これらの刺激後の長時間のインキュベーションの後ですら、プロフィリンIIは減弱していないレベルで棘頭部に濃縮されたままであった(n=10細胞(4h目)、4細胞(16h目))。
【0118】
実施例7−遺伝子組換えマウス
遺伝子組換えマウスは、Hogan,B.,Beddington,R.,Costantini,F.及びLacy,E.(1994)Manipulating the mouse embryo(マウス胚の操作)第2版(Plainview,NY,Cold Spring Harbor Laboratory Press)により記載され、既に本明細書中に要約されたような従来の方法論を使用して調製した。
【0119】
簡単に説明すると、緑色蛍光タンパク質のコーディング配列と融合したプロフィリンIIのコーディング配列と共に3kbニワトリベータ−アクチンプロモーターを含有しているDNA 10マイクログラムを、エリュチップ(Elutip)カラム(Schleicher and Schuell,Dassel,Germany)で精製し、注射用緩衝液(5mMトリス緩衝液(pH7.4)及び0.5mM EDTA)中に1ミリリットル当たり2.5マイクログラムで溶解させた。注射用の受精卵は、雄C57BL/6を、C57BL/6とBalb/Cとの交雑からのF1世代の雌(B6CF1と呼ばれる)と交雑させることにより作製されたマウスから入手した。卵に、計算量2ピコグラムのベータ−アクチンプロモーター−プロフィリンII−GFP DNAを注射した。挿入された導入遺伝子に特異的なプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応、及び特異的プローブを用いたサザンブロッティングにより、初代を同定した。遺伝子組換えマウスは、表現型的に正常であった。
【0120】
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【0121】
表1:樹状突起棘内のGFPタグ化プロフィリンの濃縮。GFPタグ化されたプロフィリンI及びプロフィリンII又は未修飾GFPの棘濃縮を示す形質移入された海馬ニューロンの割合
【表1】
Figure 2005504529
【0122】
++ 全ての棘における濃縮を示す細胞;+ いくつかの棘における濃縮を示す細胞;− 棘濃縮を全く示さない細胞。(n=各構築物に関して調査された細胞の総数)。
【0123】
表2:プロフィリンIIの樹状突起棘へのターゲティングのグルタミン酸受容体サブタイプに対する依存
【表2】
Figure 2005504529
【0124】
(a)10μMグルタミン酸による処理により全ての受容体サブタイプを刺激した後の樹状突起内のプロフィリンII−GFP及びGFPの分布。ターゲティングは、プロフィリンII−GFP発現細胞に関して強(++)、部分的(+)、及びなし(−)として分類した。矢印は、強いプロフィリンIIターゲティングを示す棘を示し、楔形は蓄積のない棘をさす。
【0125】
(b、c)グルタミン酸受容体サブタイプに特異的なアゴニスト及びアンタゴニストへの30分間の曝露の後のプロフィリンII−GFPターゲティング。薬物濃度:NMDA、10μM;DHPG、10μM;AMPA、2μM;APV、500μM;MK−801、50μM;CNQX、20μM;NBQX、20μM;MCPG、100μM〜1mM;Ly341495、30μM。n=調査された細胞の数。
【0126】
表3:カルシウムはプロフィリンターゲティングを媒介する
【表3】
Figure 2005504529
【0127】
異なるCa2+放出処理から30分後の棘へのプロフィリンII−GFPの蓄積を示す細胞の数。(a)10μMグルタミン酸で刺激されたニューロンは、細胞外Ca2+が存在する場合のみ、プロフィリンIIの棘ターゲティングを示す(補足的な図面も参照のこと)。タプシガルジン(1μM)も、細胞外Ca2+依存性のプロフィリンIIの棘ターゲティングを誘導する。(b)しきい濃度を超えるmGluRグループIアゴニスト1S,3R−ACPDによるCa2+放出の放出は、プロフィリンIIターゲティングを用量依存的に増加させる(++ 強いターゲティング;+ 弱いターゲティング;− ターゲティングなし)。
【0128】
表4:シナプス前グルタミン酸放出により誘導されるプロフィリンIIの棘へのターゲティング
【表4】
Figure 2005504529
【0129】
内因性グルタミン酸放出は、NMDA受容体を活性化することにより、プロフィリンIIの樹状突起棘へのターゲティングを誘発するのに十分である。プロフィリンII−GFPで形質移入されたニューロンを、以下のようにして30処理した。(a)10分間隔で4回3分間90mM KClへ細胞を曝すことにより誘導される脱分極は、プロフィリンIIを棘へ再分布させる。(b)同処理は、NMDA受容体をアンタゴニストAPV(100マイクロM)により阻止した場合には効果がない。(c)培地から外部Mg2+を除去した場合、内因性に放出されるグルタミン酸は、プロフィリンIIの棘へのターゲティングを誘発するのに十分である。(d)シナプス前からのグルタミン酸の放出を阻止するため、細胞をボツリヌス毒素A(100ng/ml)と共に24時間プレインキュベートした場合、外部Mg2+の除去はプロフィリンIIターゲティングをもたらさなかった。対照として、シナプス前受容体を直接刺激するための、その後の5マイクロM NMDAの添加は、ターゲティングをもたらした。(++ 強いターゲティング;+ 弱いターゲティング;− ターゲティングなし;n=調査された細胞の数)。
【0130】
表5:樹状突起棘内のGFPタグ化ゲルソリン構築物の濃縮
【表5】
Figure 2005504529
【0131】
表6:ゲルソリン蓄積の受容体サブタイプ特異性
【表6】
Figure 2005504529

【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】形質移入された海馬錘体ニューロンの樹状突起内のGFPタグ化プロフィリン及びGFPの分布。(A)ある割合のニューロン(表1参照)においては、プロフィリンII−GFPが、樹状突起軸と比較して樹状突起棘(楔形)に高度に濃縮されていた。(B)他の細胞においては、プロフィリンIIは棘に濃縮されていなかった。(C)同様に、GFPタグ化プロフィリンIは、棘に対する選択性をほとんど示さない。(D)可溶性マーカーの樹状突起の軸及び棘への分布を示すための、未修飾GFPを発現している細胞。スケールバー:C、10μm。
【図2】グルタミン酸受容体刺激によるプロフィリンIIを樹状突起棘へ再分布。(A)30分間の10μMグルタミン酸曝露の前(0’)及び後(30’)の形質移入された細胞の樹状突起におけるプロフィリンII−GFP分布。(B)この処理により誘導されたプロフィリンIIの棘頭部へのターゲティングのより高倍率の詳細。(B’)(B)の四角で囲まれた区域の詳細。(C、C’)グルタミン酸処理が棘へのタンパク質蓄積を誘導しない、GFPを発現している対照細胞の樹状突起セグメント。(D、D’)GFPタグ化プロフィリンIも、棘へと再分布するが、その程度はプロフィリンIIより著しく低い。スケールバー:A、20μm;B、5μm;B’、1μm。
【図3】シナプス前から放出されるグルタミン酸の、プロフィリンIIの樹状突起棘へのターゲティングを誘発。(A、B)棘への強いシフトを示している、低下した細胞外Mg2+(0.5mM)における30分間の前(A)及び後(B)のプロフィリンII−GFPの分布。(C、D)ボツリヌス毒素と共に16時間プレインキュベートした後30分間ゼロMg2+へ曝された細胞におけるプロフィリンII−GFP分布。プロフィリンIIの棘へのシフトは存在しなかった。(E)シナプス後受容体依存性のプロフィリンターゲティングメカニズムがボツリヌス毒素処理の後に完全であったことを示すため、同培養物をさらに30分間5μM NMDAに曝した。これは、プロフィリンIIの棘への強いターゲティングを誘導した(E)。スケールバー:5μm(A、E)。
【図4】プロフィリンIIの樹状突起棘頭部上の遠位部位へのターゲティング。(A、B)二重形質移入された細胞からのYFP−プロフィリンII(A)及びCFP−アクチン(B)に関する最初のグレースケールデータ。明確のため、高蛍光が暗くなり、低蛍光が明るくなるよう、シグナルを変換した。図4A及びC中の楔形は、表面に位置する二重プロフィリン斑点を有する棘を示している。(C)YFPタグ化プロフィリンII(黄色)及びCFPタグ化アクチン(青色)の重ね合わせ画像。二つのシグナル間の重複の区域は、薄緑色に見える。(D、E)より高い倍率におけるパネルA及びCに示された二つの棘。各列は、(左から)重ね合わせ画像、プロフィリンII及びアクチンの変換グレースケールデータを含んでいる。スケールバー:A、10μm;D、E、1μm。
【図5】プロフィリンの、棘頭部でのNMDA受容体クラスタとの共分布。(A)二重形質移入された細胞の棘3個におけるプロフィリンII−YFP及びCFP−アクチンを示す図4Cと同様の重ね合わせ画像。(B)アクチンの変換グレースケールデータ。点線は、樹状突起軸のコースを示している。(C)同棘におけるプロフィリンII分布を示す変換グレースケールデータ。(D)プロフィリンIIとNMDA受容体との同時分布を示す、固定及び抗NR1による染色の後の樹状突起の同区域(パネルC及びDを比較すること)。スケールバー:A、1μm。
【図6】プロフィリンIIの、ターゲティング刺激の撤去後の棘頭部への残存。(A)刺激前の樹状突起セグメント。四角の隣の文字は、パネルD、E及びFに詳細に示された個々の棘を同定するものである。(B)プロフィリンIIの棘頭部へのターゲティングを示す、5μMグルタミン酸による30分間の処理の後の同一樹状突起。(C)グルタミン酸を洗浄除去した後45分目、プロフィリンIIは依然として棘内に強く濃縮されていた。(D〜F)グルタミン酸処理の直前(D、E、F)及び洗浄除去後45分目(D’、E’、F’)の(A)に示された個々の棘の詳細。スケールバー:5μm(A)及び1μm(D、E、F)。
【図7】Ca2+を含まない培地中の10μMグルタミン酸により処理されたプロフィリンII−GFPで形質移入されたニューロン。細胞外Ca2+の非存在下では、グルタミン酸により誘導されるプロフィリンIIの棘へのターゲティングが起こらないことを示す。スケールバー:5μm。

Claims (40)

  1. 活性化されたシナプスの同定もしくは検出、又はシナプスの活性化のレベルを評価するための方法であって、
    (i)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における、活性化に関連した検出可能な細胞成分の存在及び/又は量を決定すること、並びに
    (ii)その決定の結果をシナプス活性化と相関させること、を含む方法。
  2. 細胞成分が、活性化されたシナプスにおいて量が増加する検出可能なタグ又はマーカーである、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞成分が、活性化前にはニューロン細胞質に存在しシナプスには検出可能に存在しないが、シナプスが活性化された場合にはシナプスに局在するものである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 決定が定性的なものである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  5. シナプスが興奮性グルタミン酸作動性シナプスである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  6. シナプス内のシナプス後部位における細胞成分の存在及び/又は量の決定の前に、推定上又は既知の活性化刺激にシナプスが曝される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  7. 活性化刺激がNMDA受容体アゴニストを介したものである、請求項6に記載の方法。
  8. シナプス後部位が樹状突起棘である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  9. 細胞成分が棘頭部へターゲティングされるものである、請求項8に記載の方法。
  10. 細胞成分が棘頭部の表面の点状部位へターゲティングされるものである、請求項9に記載の方法。
  11. 細胞成分が、検出可能標識を含む内因性タンパク質又はそれらの誘導体である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  12. 内因性タンパク質がアクチン制御タンパク質である、請求項11に記載の方法。
  13. アクチン制御タンパク質が、ゲルソリン、コフィリン、アクチン脱重合因子、プロフィリンIIより選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 細胞成分が、標識された内因性タンパク質の誘導体である、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 標識された誘導体が、測光により検出可能である、請求項14に記載の方法。
  16. 標識がGFP、YFPより選択される、請求項15に記載の方法。
  17. シナプス内のシナプス後部位における細胞成分の存在及び/又は量の決定の前に、シナプスを形成しているニューロンのうちの1個以上へ標識された誘導体が導入される、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 標識された誘導体が、ニューロン又はその前駆細胞へ導入されたそれらをコードする核酸から発現される、請求項17に記載の方法。
  19. 標識された誘導体が、発現構築物又はベクターから発現される、請求項18に記載の方法。
  20. ベクターが、β−アクチンプロモーターを含有している真核生物発現プラスミドである、請求項19に記載の方法。
  21. 核酸がニューロンにおいて安定的に発現される、請求項18に記載の方法。
  22. シナプスが培養棘保持海馬ニューロンに存在するものである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
  23. シナプスの集団が評価される、請求項22に記載の方法。
  24. シナプスが、標識された誘導体を発現する細胞を有する非ヒト遺伝子組換え哺乳動物に存在するか、又はそれから抽出されたものである、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
  25. シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能な細胞成分の存在及び/又は量が、無処理の哺乳動物において検出される、請求項24に記載の方法。
  26. シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能な細胞成分の存在及び/又は量が、哺乳動物から切除された脳組織において検出される、請求項24に記載の方法。
  27. シナプスが、哺乳動物から切除された脳組織において電気的に刺激される、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
  28. シナプスが、哺乳動物において生理学的に刺激される、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
  29. 哺乳動物の脳内の活性化されたシナプスのパターンが、特定の疾患状態と相関させられる、請求項24〜28のいずれかに記載の方法。
  30. 請求項28の方法を実施することを含む、シナプス又はシナプス群が学習及び/又は記憶に関与しているか否かを決定する方法。
  31. 上記請求項のいずれかの方法を実施することを含む、LTPがシナプスにおいて活性化されるか否かを決定する方法。
  32. 診断すべき動物から抽出されたシナプスに対して、請求項1〜23のいずれかの方法を実施することを含む、シナプス活性化に影響を与える神経病理の診断のインビトロでの方法。
  33. 請求項1〜23のいずれかの方法を実施することを含む、シナプス活性化に影響を与える神経病理の診断のインビボでの方法における、シナプス活性化に関連した検出可能な細胞成分の使用。
  34. シナプスの活性化又は伝達を調整する薬剤の能力を評価する方法であって、
    (a)シナプス又はそれを形成しているニューロンを、評価すべき1個以上の薬剤と接触させる工程、
    (b)請求項1〜28のいずれかの方法の使用により、該薬剤の存在下又は非存在下におけるシナプスの活性化を比較する工程を含み、
    (c)場合により、工程(b)において得られた値を、調整剤としての薬剤の活性と相関させる工程、
    を含む方法。
  35. 請求項34に記載の方法において、
    (i)シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能な細胞成分の存在及び/又は量を決定する工程、
    (i−2)シナプスを形成しているニューロンを薬剤へ曝す工程、
    (i−3)薬剤の存在下で、シナプス内の形態学的に特殊なシナプス後部位における検出可能な細胞成分の存在及び/又は量を測定する工程、
    (ii)(a)及び(c)においてなされた決定を比較する工程、
    を含む方法。
  36. 工程(i−2)が、シナプスを薬剤で潅流することにより実施される、請求項35に記載の方法。
  37. シナプスの活性化又は伝達を調整する薬剤の能力を評価する方法であって、
    (a)非ニューロン細胞において活発にラフリング(ruffling)している膜へのプロフィリンIIの移行を測定する工程、
    (b)該細胞を薬剤へ曝す工程、
    (c)薬剤の存在下で、活発にラフリングしている膜へのプロフィリンIIの移行を測定する工程、
    (d)工程(d)と比較して工程(c)において増加した値を、シナプス活性化を刺激する薬剤の能力と相関させる工程、
    を含む方法。
  38. 認知機能を調整する性能に関して化合物をスクリーニングする方法であって、請求項34〜37のいずれかの方法の使用により、シナプス活性化を調整する該化合物の能力を評価することを含む方法。
  39. てんかん、神経変性、虚血、偏頭痛、統合失調症又は抑うつの処置のための化合物をスクリーニングする方法であって、請求項34〜37のいずれかの方法の使用により、シナプス活性化を調整する該化合物の能力を評価することを含む方法。
  40. 陽性と判定された薬剤の単離及び/又は製造及び/又は処置の方法における使用という後続の工程を含む、請求項38又は請求項39に記載のスクリーニングの方法。
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