JP2005504063A - 化学療法誘導性脱毛の予防に関連する組成物および方法 - Google Patents

化学療法誘導性脱毛の予防に関連する組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための方法であって、化学療法薬の投与の十分前に、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む有効量の組成物、あるいは有効な熱線量を、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与することを含む方法に関する。本発明はまた、化学療法誘導性脱毛の予防のための薬学的組成物に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、毛包においてストレス応答を誘導することが可能な条件および組成物ならびに化学療法誘導性脱毛の予防のための前記条件および組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法は毛の消失を頻繁に誘発する。化学療法により、患者は体力の減少および隔絶した状況を経験するだけでなく、化学療法を要する疾患を患っていることを象徴的に示す身体的な特徴である毛の消失を招かざるを得ない。このような毛の消失は、外傷的経験であり、自尊心および全体的抵抗性の低下をも招き得る。患者によっては、毛が消失することを憂慮して化学療法を拒絶していることは公知となっている。化学療法誘導性脱毛を予防するために、数十年の間、頭皮の止血帯が使用されている。この技術は、化学療法薬の投与時にヘアライン周辺に空気止血帯を配置することを伴う。次いで、止血帯は、収縮期動脈血圧より高い血圧に対して膨張し、頭皮への血流量を抑制する。この技術の有効性については、明白には実証されていない。止血帯を使用することによって、事実上、頭皮低温症を生じさせる。この技術では、化学療法の前に冷却パックを装着することなどにより頭皮の温度が24℃未満に低下する。該技術は、50〜70%の良好〜優良な毛保護効果を付与することが報告されている。しかし、結果にばらつきがあり、好適には受け入れられていない。さらに、実施にはかなりの不快感を伴い、我慢できるのは極短期間でしかない。短い半減期を有する化学療法剤が最も有効であるようである。さらに、頭皮低温症を使用した患者における頭皮転移の症例がいくらか報告された。最終的に、この技術は、単一の薬剤を使用する療法と比べて、併用化学療法への働きが顕著に低いようである。化学療法によって誘導される毛の消失の予防のための薬理学的アプローチも試験された。論評については、非特許文献1を参照のこと。試験されたほとんどの薬物が良好な結果を示さなかった(例えば、α−トコフェロール、ミノキシジル、カルシトリオール)か、または顕著な性差を示した(1,25−ジヒドロキシビタミンD3)。免疫調節物質であるテルル酸トリクロロアンモニウム(ジオキシ−エチレン−0,0’)(AS101)より有望な結果が得られた。非特許文献2。しかし、この研究についてはまだ確認されていない。さらに、免疫調節物質は、化学療法の数週間前に投与した場合にのみ有効であるかどうかという疑問を解決しなければならない。もしそうであれば、該化合物の有用性は若干減少する。
【0003】
もう1つの薬物候補は、おそらくアセチルシステインと併用されるイムベルト(ImuVert)である。イムベルトはセレイシア・マルセッセンス(Serratia marescens)由来の膜小胞−リボソーム調製物である。AS101とアセチルシステインとの併用は、齧歯類モデルでは有効性を示したが、ヒトでのデータは得られていない。生物学的応答修飾物質としてのイムベルトは、許容し得ない毒性を産生する能力を有するため、いくつかの注意が適切である。従って、化学療法誘導性脱毛から一般に保護する薬物は市販されておらず、活発に開発されている薬物候補は極僅かしかない。従って、化学誘導性脱毛に対する保護のためのさらなる薬物候補および方法の必要性がある。
【非特許文献1】
ドル(Dorr).1998.Semin.Oncol.25:562−570
【非特許文献2】
スレドニー(Sredni)ら、1996.Int.J.Cancer65:97−103.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
細胞、組織、器官および生物体全体は、熱ショックタンパク質またはストレスタンパク質(Hsp)と呼ばれる一連のタンパク質の発現を増強することによって、タンパク毒ストレスに対して応答する。本明細書では、この応答をストレスタンパク質応答と呼び、この応答を誘導する条件および化合物を誘導因子と呼ぶ。該応答を誘導する条件を特に物理的誘導因子と呼び、該応答を誘導する化合物を化学的誘導因子と呼ぶ。癌細胞、組織および器官におけるストレスタンパク質応答の活性化によって生じ得る結果について現在知られている事柄に基づけば、癌の化学療法処置中のこのような応答の活性化を回避することは重要である。本発明は、高レベルのHspの保護効果が利用され、腫瘍に対する化学療法薬の有効性を低下させることなく、化学療法薬の処置に関連しない毒性を抑制することができる、特定の状況が存在することを本発明者が認識したことに基づいている。この特定の状況は、頭皮に存在しない腫瘍の化学療法処置を経験する患者の毛髪か、または皮膚に位置しない腫瘍の化学療法に供される哺乳動物の被毛もしくはその部分に関する。多くの化学療法薬およびそのような薬物の併用により、患者の頭皮または動物の被毛からの毛の消失(脱毛)が生じる。ストレスタンパク質応答の化学誘導因子を患者の頭皮または動物の皮膚に塗布して、全身循環に侵入する前に、毛包の有糸分裂をする活動細胞に該化学誘導因子が到達するようにすることができる。結果として、毛包細胞、および化学的誘導因子を含む組成物の性質に依存して、皮膚の他のいくつかの細胞を、これらの細胞においてストレスタンパク質応答を活性化するのに十分高い濃度の化学的誘導因子に暴露させることができる。ストレスタンパク質のレベルが上昇し、結果として、毛包細胞は、典型的に1〜2日間の間、細胞傷害性化学療法薬へのその後の暴露から保護され、脱毛症の表現型が発達しない。必然的に、化学的誘導因子分子の断片が究極的に全身循環に侵入する一方、循環中の化学的誘導因子は高い程度で希釈され、かつ化学的誘導因子の閾値濃度が達成される前にストレスタンパク質が活性化されることはないため、ストレス応答の活性化は毛包の細胞およびおそらくは皮膚細胞に限定され、血液の細胞または他の器官では有意な程度では生じない。従って、局所投与された化学的誘導因子は、毛包、および、皮膚において保護的ストレスタンパク質応答を活性化するのみであり、身体の他の場所では活性化せず、従って、頭皮または皮膚に位置しない腫瘍の化学療法処置の有効性に悪影響を及ぼさない。化学療法薬が1回投与されるのみの化学療法レジメの場合、化学的誘導因子を含む組成物による患者または動物の単回局所前処置は、毛包温存効果を生じるのに十分であり得る。多くの化学療法レジメは、サイクルが数日または数週間隔たり得る化学療法薬でのいくらかのサイクルの処置に関与する。これらの場合、化学療法薬による各処置サイクルの前に行われる化学的誘導因子を含む組成物の局所投与も同様に定期的であり得る。このタイプのレジメでは、化学的誘導因子は、各処置サイクル中に排泄され、ストレスタンパク質応答の全身活性化に十分なレベルにまでには決して蓄積しない。
【0005】
従って、本発明は、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための方法に関する。ヒト患者または哺乳動物を保護することは、化学療法誘導性脱毛の重症度を予防または減少することを含む。該方法は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む有効量の組成物を、患者の頭皮または動物の皮膚に投与することを含む。化学療法薬の投与は、ストレスタンパク質応答の誘発が生じ、毛包中のストレスタンパク質が保護レベルにまで蓄積することを可能にするのに十分な長さの期間だけ遅延される。化学的誘導因子を含む組成物の有効量とは、化学的誘導因子を含む組成物に暴露される皮膚に存在する毛包におけるHsp90、Hsp70、Hsp25−27を含むHspおよびP−糖タンパク質の群由来の少なくとも1つのストレスタンパク質の濃度の測定可能な上昇を生じるのに必要な量に少なくとも等しく、かつ化学療法薬に対する毛包の高い耐性を生じるような量である。Hspの濃度の測定可能な上昇とは、本発明の組成物の投与前に測定される濃度の少なくとも25%を超える上昇である。培養細胞を化学的誘導因子に暴露すると、典型的に、Hsp発現の急激な上昇、2〜12時間内のHsp濃度の十分な上昇が生じ、細胞を化学療法薬を含む毒物に対して耐性にする。しかし、毛包を含む皮膚は有意な障壁を提示し、化学的誘導因子が毛包細胞での有効濃度に到達するためには24時間までのさらなる時間を必要とする。但し、好ましくは、化学療法薬は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物の患者の頭皮または動物の皮膚への投与の2〜36時間後に投与される。より好ましくは、化学療法薬の投与は、8〜24時間遅延される。ストレスタンパク質応答の多くの化学的誘導因子は公知である。一般に、いくつかの量のタンパク毒を産生する任意の化合物が化学的誘導因子として機能する。好適な誘導因子は、ベンゾキノンアンサマイシン系(例えば、ゲルダナマイシン)、ヒ素塩(例えば、亜ヒ酸ナトリウム)、スズ塩(例えば、塩化第一スズ)、亜鉛塩(塩化亜鉛)およびジアミドの化合物である。さらなる好適な化学的誘導因子は、組換えタンパク質または因子に対する遺伝子を含有する発現可能な形態の核酸として投与され得る活性型熱ショック転写因子1(HSF1)である。
【0006】
本発明の方法はまた、化学的誘導因子およびさらに透過エンハンサーを含み、毛包の細胞への誘導因子の輸送を容易にする組成物による患者の頭皮または動物の皮膚の前処置を包含する。
【0007】
本発明はまた、化学療法誘導性脱毛からの保護のための薬学的組成物に関し、該組成物は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子、透過エンハンサーおよび適切な希釈剤または溶媒を含む。これらの組成物において使用される好適な化学的誘導因子は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン系、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩およびタンパク質または核酸形態の活性型HSFである。
【0008】
本発明は、患者の頭皮または動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造のためのストレスタンパク質応答の化学的誘導因子の使用であって、医薬品の有効量は、化学療法薬の投与の十分前に、患者の頭皮または動物の皮膚に投与される、上記使用にさらに関する。そのような医薬品の有効量とは、化学的誘導因子を含む医薬品に暴露される皮膚に存在する毛包におけるHsp90、Hsp70、Hsp25−27を含むHspおよびP−糖タンパク質の群由来の少なくとも1つのストレスタンパク質の濃度の測定可能な上昇を生じるのに必要な量に少なくとも等しく、かつ化学療法薬に対する毛包の高い耐性を生じるような量である。Hspの濃度の測定可能な上昇とは、本発明の医薬品の投与前に測定される濃度の少なくとも25%を超える上昇である。好ましくは、化学療法薬は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む医薬品の患者の頭皮または動物の皮膚への投与の2〜36時間後に投与される。より好ましくは、化学療法薬の投与は、8〜24時間遅延される。ストレスタンパク質応答の多くの化学的誘導因子は公知である。一般に、いくつかの量のタンパク毒を産生する任意の化合物が化学的誘導因子として機能する。本発明の医薬品の製造において使用される好適な誘導因子は、ベンゾキノンアンサマイシン系薬剤(例えば、ゲルダナマイシン)、ヒ素塩(例えば、亜ヒ酸ナトリウム)、スズ塩(例えば、塩化第一スズ)、亜鉛塩(塩化亜鉛)およびジアミドの化合物である。さらなる好適な化学的誘導因子は、組換えタンパク質または因子に対する遺伝子を含有する発現可能な形態の核酸として投与され得る活性型熱ショック転写因子1(HSF1)である。また、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造のための、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および毛包への因子の送達を可能にする透過エンハンサーの使用が本発明に包含される。
【0009】
本発明はまた、患者の頭皮または動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するために、ストレスタンパク質応答の物理的誘導因子、例えば、熱を使用する方法に関する。ヒト患者または哺乳動物を保護することは、化学療法誘導性脱毛の重症度を予防または減少することを含む。1つの実施態様では、該方法は、患者の頭皮または動物の皮膚に有効な熱線量を投与することを含む。化学療法薬の投与は、ストレスタンパク質応答の誘発が生じ、毛包中のストレスタンパク質が保護レベルにまで蓄積することを可能にするのに十分な長さの期間だけ遅延される。有効な熱線量とは、熱線量に暴露される皮膚に存在する毛包におけるHsp90、Hsp70、Hsp25−27を含むHspおよびP−糖タンパク質の群由来の少なくとも1つのストレスタンパク質の濃度の測定可能な上昇を生じるのに必要な線量に少なくとも等しく、かつ化学療法薬に対する毛包の高い耐性を生じるような線量である。Hspの濃度の測定可能な上昇とは、本発明の組成物の投与前に測定される濃度の少なくとも25%を超える上昇である。培養細胞を化学的誘導因子に暴露すると、典型的に、Hsp発現の急激な上昇、2〜24時間内のHsp濃度の十分な上昇が生じ、細胞を化学療法薬を含む毒物に対して耐性にする。但し、好ましくは、化学療法薬は、熱線量の患者の頭皮または動物の皮膚への投与の2〜24時間後に投与される。より好ましくは、化学療法薬の投与は、6〜12時間遅延される。熱は、いくらかの異なる手段によって投与することができる。処置の必要な患者の頭皮または動物の皮膚を加熱した表面あるいは加熱した液体(例えば、水)と接触させることによって、皮膚および毛包細胞に熱線量が提供される。皮膚および毛包細胞を加熱するための他の手段は、超音波、またはマイクロ波、赤外線もしくは高周波照射への暴露を含む。
【0010】
従って、本明細書に記載の本発明の実施態様はまた、癌の治療が必要なヒト患者または哺乳動物における癌の治療のための方法に関し、該方法は、(a)患者の頭皮または動物に皮膚に、熱などの有効線量の物理的誘導因子あるいはストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む有効量の組成物を投与すること、および(b)前記ヒト患者または動物を化学療法処置に供することを含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
毛は、毛根、毛球(胚芽中心)および毛幹からなる。細胞は毛球中で増殖し、根から頭皮の方へ毛が押し出される。最終産物は、緊密に密集したケラチンの鎖である。毛の成長は、3つの相で生じる。第1の相は成長期相であり、成長が起こる相である。ヒトの毛包の85〜90%は成長期相にある。それぞれの毛包は有糸分裂をする活動マトリックス細胞の球状基部を含む。これらから、毛幹の全ての細胞が分化し、成長する。細胞は列を成して上部球に上昇し、垂直に延在する。最終的に、それらは上方に推し進められ、皮膚表面に出現する。ヒトの毛球細胞は平均で12〜24時間ごとに分裂する。この実質的な有糸分裂活動のため、毛球細胞は細胞傷害剤に対して特に感受性である。成長期相は、ヒトでは2〜6年間継続する。第2の段階は退行期相であり、ヒトでは数週間継続する。この相では、毛根が毛球から分離し、色素の貯蔵が終了し、根末端部が球から押し出される。ヒトの毛の1%未満が退行期相にある。第3の相は休止期であり、有糸分裂の欠乏を特徴とする。この相は3〜6ヶ月間継続する。ヒトの毛の約10%が休止期にある。ドル(Dorr)1998.Semin.Oncol.25:562−570。ヒュッセン(Hussein)1993.South.Med.J.86:489−496。
【0012】
脱毛または毛の消失は癌の化学療法に頻繁に関連する。ドル(Dorr)1998.Semin.Oncol.25:562−570。一般に使用される化学療法薬の多くは毛の消失を誘発するが、脱毛を引き起こす能力は薬物によって異なると思われる。最も重度の影響は、シクロホスファミド、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、イホスファミド、パクリタクセル、テニポシドおよびトポテカンによって生じる。ジョス(Joss)ら、1988.Recent Res.Cancer Res.108:117−126.ペリー(Perry)(編)。ケモセラピー・ソース・ブック、メリーランド州、ボルティモア、ウイリアムアンドウィルキンス(Williams&Wilkins)、1996、293−555、595−606頁。毛の消失の誘発において若干低い影響を及ぼすものは、アクチノマイシン、5−フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトザントロン、ナイトロジェンマスタード、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンである。しばしば、これらの細胞傷害性化学療法薬は併用で使用され、ここの薬物に本来ある危険性よりも大きな脱毛の危険性を増加させる。
【0013】
化学療法誘導性脱毛の実際の機構を同定するための研究は比較的少ない。おそらく、これは、細胞傷害性薬剤は、それらが癌細胞を死滅させ、他の増殖中の細胞は直ちに妥当であると思われる同じ機構によって毛包細胞を死滅させるという仮定の事実による。それにもかかわらず、ドキソルビシンは、アポトーシス機構を開始することによって毛細胞を死滅させることを示した。セセ(Cece)1996.Lab.Invest.75:601−609。同研究により、ドキソルビシン毒性の標的は毛包のマトリックスおよび上部球細胞であることが発見された。もう1つの研究は、シクロホスファミドが成長期の毛包において重度のアポトーシスを誘発することを報告した。シリー(Schilli)ら、1998.J.Invest.Dermatol.111.598−604。
【0014】
理論的には、化学療法のより誘導される毛の消失を予防するにはいくらかの方法があるようであり、即ち(1)急に送達される化学療法剤の量の減少、(2)化学療法薬の局所的不活化、および(3)本明細書において開示される本発明により提唱されるような球の保護、である。本発明は、化学療法剤および化学療法剤の治療有効性を含まないそれらの併用の細胞傷害性効果から毛包を保護するための、化学療法を必要とする患者の頭皮または哺乳動物の皮膚におけるストレスタンパク質応答の熟慮された局在化された誘導に関する。
【0015】
全ての器官および全ての組織の細胞は、いわゆる熱ショックタンパク質またはストレスタンパク質(Hsp)の発現を増強することによってタンパク質毒性ストレスに応答する。本明細書では、この応答をストレスタンパク質応答と呼ぶ。論評については、ボエルミー(Voellmy)1994.Crit.Rev.Eukaryotic Gene Expr.4:357−401、ボエルミー(Voellmy)1996.ストレス誘導性細胞応答(Stress−Inducible Cellular Responses)(フレイグ(Feige)ら編)Birkhauser Verlag、スイス、バーゼル(Basel)121−137頁、パーセル(Parsell)およびリンドクイスト(Lindquist)1993.Annu.Rev.Genet.27:437−496。歴史的には、用語「Hsp」は、原型ストレッサーである加熱に暴露された細胞において合成の速度が上昇するタンパク質を表現するために使用された。Hspは、そのサブユニットの分子量に基づいて区別される。主要なHspは、それぞれ約110、90、70、60、20〜30、および10kDaのサブユニットサイズを有し、それぞれHsp110、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp20−30(または小Hsp)およびHsp10と呼ばれる。これらのほとんどのHspは、タンパク質の折りたたみおよび再折りたたみ、タンパク質の細胞内輸送、タンパク質複合体の集成および解離、タンパク質の分解などを支援する分子シャペロンであることが現在公知である。ストレスタンパク質はまた、ステロイドホルモン受容体、RafおよびRasを含む特定のシグナル伝達キナーゼ、ならびにテロメラーゼなどの重要な細胞調節タンパク質の活性ならびに安定性の調節に参加することも公知である。それらの生理学的機能に一致して、Hspは、ストレスを加えられた細胞だけでなく、ストレスを加えられていない細胞においても普及している。特定のHspは、ストレスが加えられていない細胞においてさえも主要なタンパク質である。例えば、Hsp90は、ストレスの非存在下において総細胞タンパク質の1〜2%を表す。細胞にストレスが加えられる場合、Hspの濃度はさらに上昇する。
【0016】
ほとんどのHspは、高度に関連する遺伝子のファミリーによってコードされることが長い間公知であった。これらの遺伝子のうち厳密にストレスによって調節されるものもある一方、ストレスを加えられていない細胞においてすでに実質的に活性であるものもある。遺伝子のいくつかは、全くストレスによっては調節されず、常にストレスタンパク質を発現する。後者の遺伝子はコグネイト(cognate)ストレスタンパク質遺伝子とも呼ばれ、ストレスまたは熱ショックコグネイトタンパク質(Hspに対してHsc)としてそれらによってコードされる。ストレスタンパク質遺伝子の最も巧緻なファミリーは、約70kDa(Hsp/c70)のサブユニット分子量を有するタンパク質をコードする。ヒトは、ストレスが加えられていない細胞においてすでに実質的に活性であり、熱ストレス中はその活性が約10倍にまで上昇するhsp70遺伝子を有する。この遺伝子もhsp70A遺伝子として公知である。この他にも少なくとも2つの遺伝子があり、hsp70Bおよびhsp70B’遺伝子と呼ばれ、厳密に熱によって調節される。熱ストレスを加えた細胞では、それらの活性は約1000倍にまで上昇する。ヒト細胞はまた、Hsp70に高度に関連するタンパク質をコードする少なくとも1つのhsc70遺伝子を有する。この遺伝子は本質的にストレスによって調節されない。
【0017】
上述したように、細胞がタンパク質毒ストレスに暴露されると、ストレス調節可能hsp遺伝子の活性は上昇する。そのようなタンパク質毒ストレスは、例えば、熱、UV光、電磁場、Cd、Zn、Sn、またはCuイオンなどの重金属イオン、亜ヒ酸ナトリウム(ヒ素塩)などの他のスルフヒドリル反応性化合物、エネルギー代謝の阻害剤、特にミトコンドリア機能の阻害剤、カナバニンまたはアゼチジンカルボン酸塩などのアミノ酸アナログ、エタノールなどのタンパク質変性剤、ジアミドなどの酸化剤(ジアジンジカルボン酸ビス(N,N−ジメチルアミド))または例えば、アセトアミノフェンなどのタンパク質付加物を形成する毒物を含む他の薬剤によって誘導され得る。hsp遺伝子の活性は、ラクタシスチンなどのタンパク質分解の阻害剤またはストレスタンパク質の適切な機能を妨害する化合物に暴露された細胞においても上昇する。後者のタイプの化合物の例には、ゲルダナマイシンおよびHsp90のヌクレオチド結合部位に特異的に結合することが公知であるハービマイシンAを含むベンゾキノンアンサマイシン系薬剤がある。当該分野において一般に許容されると思われる現在のモデルは、任意のこれらのストレスによって高い割合のタンパク質が折りたたみされず、結果的に高濃度の非生来のタンパク質が生じるとみなしている。十分に高いレベルの非生来のタンパク質はhsp遺伝子の高い発現を誘発する。定量測定により、実質的に高いhsp遺伝子活性には約1〜2%の細胞タンパク質の変性が必要であることが示唆された。上記の化学物質または物理的条件に暴露されると高いhsp遺伝子活性が生じるため、これらの化学物質または物理的条件は、ストレスタンパク質応答の化学的または物理的誘導因子と呼ばれる。化学的ならびに物理的誘導因子は、本発明の実施のために使用することができる。
【0018】
hsp遺伝子のストレス調節は、熱ショック転写因子(HSF)によって仲介される。哺乳動物の細胞は、いくらかの異なるが関連するHSF分子を発現する。これらの因子のうちのただ1種(HSF1)のみがhsp遺伝子のストレス調節に通常関連するようである。HSF1は、不活性、即ち、ストレスを加えられていない細胞ではhsp遺伝子をトランス活性化することができない偏在的に発現される因子である。細胞が上記の誘導因子のうちの1つに暴露されると、因子は活性化され、トランス活性化能力を獲得する。ストレスを加えられていない細胞では、HSF1は、Hsp90ならびに、おそらく他のシャペロンおよび補因子を含む動的なヘテロオリゴマー複合体の部分を形成する。ゾウ(Zou)ら、1998.Cell94:471−480。細胞にストレスが加えられる場合、非生来のタンパク質が蓄積する。これらの非生来のタンパク質はHsp90および他のシャペロンに好適に結合し、同シャペロンに結合するためのHSF1に競合する。この競合の結果として、HSF1の機能にはもはやシャペロン結合性ではなくなる。非関連HSF1は迅速にホモ三量体を形成し、結果として、hsp遺伝子のプロモーターに存在するいわゆる熱ショックエレメント(HSE)配列に特異的に結合する能力を獲得する。HSF1を十分に活性化するためには、さらに高リン酸化される必要があると思われる。最近の公開されていない観察により、シャペロン複合体を三量体転写因子に結合させることによって、リン酸化事象の活性化を負に調節し得る確率が上昇している。
【0019】
ヒトHSF1の変異研究により、もはやストレスによって調節されないが、任意のストレスの非存在下でhsp遺伝子をトランス活性化することが可能な変異因子を発見した。ズオ(Zuo)ら、1995.Mol.Cell.Biol.15:4319−4330。キシア(Xia)ら、1999.Cell Stress&Chaperones4:8−18。ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子として機能するこれらの変異因子はまた、本明細書において、活性型HSF1と呼ばれる。529残基長ヒトHSF1ポリペプチドのアミノ酸約185位〜315位の領域における欠失およびアミノ酸置換により、このような脱調節型表現型が生じる。トランスフェクトされた遺伝子から過剰発現させる場合、アミノ酸約200位〜315位の領域の欠失および置換は構成的にトランス活性化性であることが公知である。極めて低濃度で構成的に活性である因子を生じるアミノ酸約185位〜200位の領域の置換および欠失は特に興味深い。HSF1を構成的にトランス活性化性にする欠失および置換の例は、特許出願PCT/US98/01038(国際公開第98/31803号)に記載されており、該文献は本明細書において参考として援用される。国際公開第98/31803号の出願はまた、ストレスの非存在下でhsp遺伝子を活性化することが可能な非ヒトHSFおよびキメラ因子についても記載したことは注目される。残基185〜315領域における全ての欠失または置換が脱調節型ヒトHSF1を生じるわけではないが、当業者によって、いくらかの分析方法の1つを使用して、脱調節型変異因子の同定が容易に達成される。例えば、試験しようとする変異したHSF1をコードする遺伝子を適切な発現ベクターに挿入してもよい。hspプロモーター駆動性レポーター遺伝子の1つ以上のコピーを含有する細胞におけるトランスフェクションによって、得られる発現構築物を導入してもよい。そのような細胞株の例は、ヒトhsp70Bプロモーターの制御下にある数コピーのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含有するヒト細胞株であるHeLa−CATである。バーレー(Baler)ら、1992.J.Cell Biol.117:1151−1159。レポーター活性の簡便なアッセイによって測定することができるレポーター遺伝子活性の増加は、変異したHSF1がストレスの非存在下でhsp遺伝子をトランス活性することが可能であることを示す。
【0020】
生来の細胞に対して致死性である以後のより重度な熱ストレスから細胞を保護するためには、細胞を非致死性のストレスに暴露することが長い間公知であった。パーセル(Parsell)およびリンドクイスト(Lindquist)1993.Annu.Rev.Genet.27:437−496。熱前処理もまた、特定の化学的ストレスから細胞を保護する。この保護効果は、Hspの発現の上昇に相関する。トランスフェクション実験は、高いレベルの特定の個々のストレスタンパク質がストレス認容性を生じることの直接的証拠を提供した。例えば、Hsp70を一過的に過剰発現するようにトランスフェクトされた細胞または同じHspを安定に過剰発現する細胞株は、高いストレス耐性を有することが見出された。リー(Li)ら、1991.Proc.Natl.Acad.SciUSA88:1681−1685。ホート(Hout)ら、1991.Cancer Res.51:5245−5252。ジャテラ(Jaattela)ら、1992.EMBO J.11:3507−3512。動物実験でアナログの観察が行われた。熱プレコンディショニング実験(リウ(Liu)ら、1992.Circulation 86:11358−11363。リチャード(Richard)ら、1996.Fund.Clin.Pharmacol.10:409−415。ジョエクス(Joyeux)ら、1998.Cardiovasc.Res.40:124−130)ならびにトランスジェニック動物を使用する研究によって、心臓における虚血/再潅流傷害から保護するHspの能力が実証された。後者の研究では、Hsp70を過剰発現するトランスジェニックマウスの心臓は虚血事象に供された。虚血性外傷からの心臓の回復が、虚血事象後の再潅流の30分後に評価された。収縮力およびクレアチンキナーゼ放出の測定から判断されるように、トランスジェニックマウス由来の心臓は、非トランスジェニック動物由来の心臓と比較して、回復の有意な向上を示した。プルミヤー(Plumier)ら、1995.J.Clin.Invest.95:1854−1860。マーベル(Marber)ら、1995.J.Clin.Invest.95:1446−1456。hsp70遺伝子を含有するHVJリポソーム処方の冠動脈内輸注によって、成獣ラットの心臓をhsp70遺伝子でトランスフェクトした実験でも同様な結果が得られた。スズキ(Suzuki)ら、1997.J.Clin.Invest.99:1645−1650。脳においてHsp70を過剰発現するトランスジェニックマウスもまた、中大脳静脈閉塞後の神経傷害の減少を示した。プルミヤーら、1997.Cell Stress&Chaperones2:162−167。熱またはスズ塩によるウサギのプレコンディショニングは、急性脊髄虚血によって生じる麻痺を予防することが見出された。レルドリゼット(Perdrizet)ら、1999.Ann.N.Y.Acad.Sci.874:320−325。私的情報。同様に、虚血傷害からの腎機能の保護もブタのモデルにおいて実証された。レルドリゼットら、1999.Ann.N.Y.Acad.Sci.874:320−325。
【0021】
皮膚におけるストレスタンパク質の保護効果について、熱プレコンディショニングは皮膚弁の生存を増加させることを反復的に実証した。このような生存の増強は、皮膚弁におけるHsp70の高い発現に相関する。コーニング(Koening)ら、1992.Plast.Reconstr.Surg.90:659−694。ワング(Wang)ら、1998.Plast.Reconstr.Surg.101:776−784。さらに、熱プレコンディショニングは、UVB誘導性傷害からケラチノサイトおよび上皮細胞培養物を保護した。この保護効果は、高いHspレベル、特にHsp70のレベルに関連した。トラウティンガー(Trautinger)ら、1995.J.Invest.Dermatol.105:160−162。Hsp70抗体の注入は、UVB損傷に対するケラチノサイトの感受性を増加した。バイエル(Bayerl)およびジュンク(Jung)1999.Exp.Dermatol.8:247−253。
【0022】
構成的に活性なHSF1変異体を発現する細胞は、Hspを過剰発現し、熱ストレスシミュレートされた虚血、およびシクロホスファミドへの暴露に対する耐性を増加した(肝細胞由来(HepG2)細胞において試験された)。キシア(Xia)ら、1999.Cell Stress&Chaperones4:8−18。ストレスタンパク質Hsp70の過剰発現はアドリアマイシンに対する細胞体性を増大させた。ロイガス(Roigas)ら、1998.Prostate34:195−202。Hsp27の過剰発現もドキソルビシンに対する耐性を生じた。リチャードら、1996.Cancer Res.56:2446−2451。オステライヒ(Oesterreich)ら、1993.Cancer Res.53:4443−4448。カールセダー(Karlseder)の研究室および他の研究室も同様に、Hsp70およびHsp27の特異的な過剰発現は、ドキソルビシン誘導性アポトーシスから細胞を保護することを報告した。カールセダーら、1996.Biochem.Biophys.Res.Commun.220:153−159。リチャードら、1996.Cancer Res.56:2446−2451。オステライヒら、1993.Cancer Res.53:4443−4448。Hsp70またはHsp27の過剰発現はまた、細胞をシスプラチンに対して耐性にした。コマツダ(Komatsuda)ら、1999.Nephrol.Dial.Transplant.14:1385−1390。リチャードら、1996.Cancer Res.56:2446−2451。オステライヒら、1993.Cancer Res.53:4443−4448。これらの研究は、個々のHspの高い発現により、細胞傷害性化学療法薬の毒性から特定の細胞タイプが保護されることを明確に実証した。ストレスタンパク質の構造および機能は保存され、かつストレスタンパク質応答も保存されるため、後者の知見は、研究された細胞以外の細胞タイプならびに組織中の細胞にも同様に当てはまることが予想される。Hspの過剰発現はまた、上記の研究で試験された細胞傷害剤以外の細胞傷害剤からも細胞を保護し、Hspの一団全体の過剰発現は、少なくとも個々のHspの過剰発現に匹敵する保護効果を有することがさらに予想される。最終的に、いくらかの研究は、ストレスタンパク質応答の活性化は多剤耐性も誘発するという概念を指示した。チン(Chin)ら、1990.J.Biol.Chem.265:221−6。キム(Kim)ら、1998.Exp.Mol.Med.30:87−92。これらの知見は、ストレスタンパク質応答の活性化が、癌化学療法において単独または併用で使用される細胞傷害性化学療法薬の効果を減少することを支持する。従って、癌化学療法処置中のストレスタンパク質応答の活性化は、明確に反証される。
【0023】
癌細胞に対する活性化されたストレスタンパク質応答の保護効果は、他の機構によって若干減少され得る。構成的に活性なHSF1の継続的な過剰発現は細胞の成長を阻害した。キシア(Xia)ら、1999.Cell Stress&Chaperones4:8−18。成長を停止された細胞は、成長中の細胞よりも細胞傷害剤に対する感受性が低い。しかし、活性化されたHSF1過剰発現細胞が成長停止するのは、これらの細胞が他の必須タンパク質を産生する代わりにHspの過剰量の産生を効果的に再指令することによると思われていた。この状況が生理学的に意味のあることであるかは疑わしい。Hspは免疫系と特別な関係にある。1980年代後半、多くの研究者達は、Hspが細菌、真菌および原生動物による感染に対する体液性ならびに細胞性免疫の好適な標的であると認識した。異なる生物体由来のストレスタンパク質は高度に関連するため、これらの知見は難解である。従って、自己免疫反応は生じ得る。実際に、感染した、ワクチン接種した、ならびに健常な患者は、ストレスタンパク質に対して指令された抗体およびT細胞を発現する。見かけ上、ストレスタンパク質に対する免疫応答が最終的に同調され、重度の自己免疫反応が回避される。より最近、ストレスタンパク質は、共有および非共有結合した抗原の免疫原性を劇的に増強することが発見された。興味深いことに、これは、他のほとんどのアジュバント由来のストレスタンパク質を識別し、ストレスタンパク質が増強される免疫は大部分はTh1様タイプであると思われ、食細胞および細胞傷害性リンパ球(CTL)の活性化を刺激する。ハング(Huang)ら、2000.J.Exp.Med.、印刷中。ストレスタンパク質の免疫学的活性に対する根底にある機構については十分に理解されていないが、それは抗原提示の刺激に関与することが疑われる。最近数年間、ストレスタンパク質単独の高い発現は腫瘍細胞によるそれらの抗原の提示を増強し、従って、腫瘍細胞に対して指令される免疫応答を刺激することを示唆するいくつかの調査が発表された。メルヒャー(Melcher)ら、1998、Nat.Med.4:581−587。トドリク(Todryk)1999.J.Immunol.163:1398−1408。ウェルズ(Wells)ら、1997.Scand.J.Immunol.45:605−612。しかし、抗原ペプチド/タンパク質と複合体を形成するストレスタンパク質を含有する調製物の抗腫瘍活性を腫瘍モデルにおいて実証することができた一方、腫瘍細胞内のストレスタンパク質の過剰発現から生じる免疫系に影響を及ぼす効果の重要性については不明のままである。後者の効果は、過剰発現したストレスタンパク質の細胞保護効果(細胞保護効果は化学療法処置の有効性を減少する)を無効にすることが可能あるとは思われない。
【0024】
従って、癌細胞、組織および器官におけるストレスタンパク質応答の活性の可能性のある結果について現在公知であることに基づくと、癌の化学療法処置中はストレスタンパク質応答の活性化を回避することが極めて重要である。本発明は、少なくとも1つの特定の状況において、高レベルのHspの保護活性を利用して、化学療法処置が必要な癌に対する化学療法薬の有効性を含まない該薬物の処置に関連しない毒性を予防することが可能であることを本発明者が認識したことに基づいている。この特定の状況は、化学療法が必要な癌患者の頭皮または動物の皮膚の毛包に関する。上述したように、多くの化学療法薬および薬物の組み合わせの処置に関連しない毒性は、ヒト患者における毛髪の消失および処置される動物の被毛由来の毛の消失を生じる。ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子は、循環に侵入する前、即ち、それほど希釈されることなく毛包の有糸分裂中の活性な細胞に到達するように、癌患者の頭皮または動物の皮膚に直接投与することができる。誘導因子に暴露される毛包細胞、およびおそらくは皮膚の他のいくつかの細胞におけるストレスタンパク質のレベルは増加し、数時間内に、毛包は、典型的に1〜2日間の間、以後の細胞傷害性化学療法剤への暴露から保護される。結局、誘導因子分子の断片は、血流に進入する。しかし、血流中の化学的誘導因子が高レベルで希釈され、かつ化学的誘導因子はストレスタンパク質応答が装架される前に閾値濃度に達する必要があるため、ストレスタンパク質応答の活性化は毛包、およびおそらくは皮膚の細胞に限定され、血液の細胞または他の器官では有意な程度で発生しない。従って、化学誘導因子は全身濃度に決して到達することはなく、到達しても無視できる程度の濃度であり、この濃度では低過ぎて毛包に存在しない腫瘍の化学療法処置の有効性に影響を及ぼさないか、または局所に投与する場合、誘導因子が暴露される皮膚において、化学的誘導因子は毛包に対して特異的に標的化されることはない。化学療法レジメは、数日または数週間隔たる化学療法薬の投与のいくらかのサイクルに頻繁に関与するため、化学的誘導因子の投与は定期的であり得、化学療法薬の投与の各サイクルの前に行われる。反復的に投与される場合であっても、このタイプの投与レジメでは、化学的誘導因子は、各処置サイクル中に排泄され、ストレスタンパク質応答の全身活性化に十分なレベルにまでには決して蓄積しない。従って、本発明は、誘導因子に暴露される細胞に存在しない癌を処置し、患者の頭皮または動物の皮膚において保護ストレスタンパク質応答を選択的に活性化するために、化学療法剤の投与の十分前に、ストレスタンパク質応答の有効量の化学的誘導因子を癌患者の頭皮または動物の皮膚へ局所投与することに関与する。化学的誘導因子はまた、例えば、眉毛、顎鬚および口髭領域などの化学療法誘導性脱毛に感受性であるヒト身体の他の任意の領域に局所投与してもよい。さらに、本発明の方法および組成物も照射処置によって生じる脱毛に対する保護に有効であることが予想される。従って、本発明はまた、照射誘導性脱毛からのヒト患者または動物の保護について記載されるいずれの実施態様をも包含する。本明細書において使用される「有効量」とは、ヒト患者または動物の毛包の生物学的応答あるいは研究者または臨床家が考えるヒト患者または動物の医学的応答を誘発する化学的誘導因子(または誘導因子を含む組成物)の量を指す。用語「有効量」は、そのような量を受領しなかった対応する毛包含有組織あるいはヒトまたは動物被験体と比較して、化学治療剤による死滅に対する毛包の高い耐性、あるいは化学療法誘導性脱毛の改善された処置、予防、または重症度の減少を生じる任意の量を含む。
【0025】
あるいは、一過性加熱などのストレスタンパク質応答の物理的誘導因子は、毛包の有糸分裂する活性な細胞には到達するが、皮膚のかなり下には透過しないように、癌患者の頭皮または動物の皮膚に対して直接標的化することができる。誘導因子に暴露される毛包細胞および皮膚の他の細胞におけるストレスタンパク質のレベルは増加し、数時間内に、毛包は、典型的に1〜2日間の間、以後の細胞傷害性化学療法剤への暴露から保護される。物理的因子の標的化された投与のため、ストレスタンパク質のレベルは皮膚細胞以外の細胞では増加せず、毛包または他の皮膚部位に存在しない腫瘍の化学療法処置の有効性は減少しない。化学療法レジメは、数日または数週間隔たる化学療法薬の投与のいくらかのサイクルに頻繁に関与するため、物理的誘導因子の投与は定期的であり得、化学療法薬の投与の各サイクルの前に行われる。従って、本発明はまた、誘導因子に暴露される細胞に存在しない癌を処置し、患者の頭皮または動物の皮膚において保護ストレスタンパク質応答を選択的に活性化するために、化学療法剤の投与の十分前に、ストレスタンパク質応答の有効線量の物理的誘導因子を癌患者の頭皮または動物の皮膚へ標的化して投与することに関与する。物理的誘導因子はまた、例えば、眉毛、顎鬚および口髭領域などの化学療法誘導性脱毛に感受性であるヒト身体の他の任意の領域に局所投与してもよい。さらに、本発明の方法のこのような実施態様も照射処置によって生じる脱毛に対する保護に有効であることが予想される。従って、本発明はまた、照射誘導性脱毛からのヒト患者または動物の保護について記載されるいずれの実施態様をも包含する。本明細書において使用される「有効量」とは、ヒト患者または動物の毛包の生物学的応答あるいは研究者または臨床家が考えるヒト患者または動物の医学的応答を誘発する物理的誘導因子の線量を指す。用語「有効線量」は、そのような線量を受領しなかった対応する毛包含有組織あるいはヒトまたは動物被験体と比較して、化学治療剤による死滅に対する毛包の高い耐性、あるいは化学療法誘導性脱毛の改善された処置、予防、または重症度の減少を生じる任意の線量を含む。
【0026】
誘導因子
上述したように、ストレスタンパク質応答の誘導因子は、熱、UV照射、電磁場などの物理学的誘導因子および重金属イオン、例えば、Cd、Zn、SnまたはCuイオン、他のスルフヒドリル反応性化合物、例えば、亜ヒ酸ナトリウム(ヒ素塩)、エネルギー代謝の阻害剤、特にミトコンドリア機能の阻害剤、アミノ酸アナログ、例えば、カナバニンまたはアゼチジンカルボン酸塩、タンパク質変性剤、例えば、エタノールおよび塩酸グアニジン、酸化剤、例えば、ジアミドならびに他の薬剤、例えば、アセトアミノフェンなどのタンパク質付加物を形成する毒物などの化学的誘導因子を含む。誘導因子はまた、ラクタシスチンなどのタンパク質分解の阻害剤およびHspの適切な機能を妨害する化合物を含む。後者のタイプの化合物の例としては、Hsp90のヌクレオチド結合部位に特異的に結合することが公知であるゲルダナマイシンおよびハービマイシンAなどのベンゾキノンアンサマイシンが挙げられる。典型的な誘導因子のリストについては、ゾウら、1998.Cell Stress&Chaperones3:130−141を参照のこと。上記のリストが全てを網羅しているというわけではない。さらなる多くの化学物質もまた、ストレスタンパク質応答の誘導因子であることが公知である。ビクロモール(biclomol)、シクロペンテノン類および特定のプロスタグランジン類を含むこれらの化合物のいくつかは、上記の群には当てはまらないと思われる。さらに、同程度のタンパク毒を有する任意の化合物は、一般にストレスタンパク質応答を誘発するであろうから、新規の化学的誘導因子が将来発見されることはほとんど間違いない。特定の化合物がタンパク毒性であるかどうかについては、その構造から容易に推測できる場合もあるし、できない場合もある。従って、化学的誘導因子は構造よりも機能から規定する方がより適切であると思われる。本発明の目的のための誘導因子は、準致死性濃度でHsp発現を増強することが可能な化合物であるか、またはHsp発現を刺激する順致死的物理的条件である。化合物/物理的条件が誘導因子であるかどうかを発見するための多くの方法が存在する。例えば、並列な哺乳動物細胞培養物を、放射性標識アミノ酸の存在下で、試験しようとする物質のある範囲の順致死的濃度に暴露させることができる。適切な暴露期間後、細胞を回収し、溶解し、細胞溶解物をSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーまたはフルオログラフィーに供する。試験した物質が化学的誘導因子であれば、Hspに典型的な分子量(例えば、90、70、25−27kDa)を有するポリペプチドの合成速度を増強する。より広範囲で行われた同じ試験では、抗Hsp抗体を使用して、特定のHspが細胞溶解物から免疫沈降し、Hspの合成の相対速度は、免疫沈降したタンパク質のSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーまたはフルオログラフィーから推定される。抗Hsp抗体は、例えばストレスゲン・バイオテクノロジーズ社(StressGen Biotechnologies Corp.)、ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア(Victoria,B.C.)より市販されている。
【0027】
ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子は先に考察した化合物などの小さな分子化合物のみではないことに留意すること。化学的誘導因子はまた、タンパク質および核酸などのより大きな分子を含む。そのような化学的誘導因子の非制限的例には、構成的に活性なHSF1をコードする機能的遺伝子ならびに構成的に活性なHSF1タンパク質がある。それらを細胞に伝達することによって、先に考察した試験によって検出することができるストレスタンパク質発現が誘発される。Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質などの個々のストレスタンパク質に対する遺伝子ならびにこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質も含まれる。それらを細胞に伝達することによって、ストレスタンパク質が再生され、即ち、上記の試験によって検出することができる高いレベルの特定のストレスタンパク質が生じる。
【0028】
本発明の実施態様は、癌患者の頭皮または哺乳動物の皮膚へのストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物の局所投与に関与する。この態様の投与のため、化学的誘導因子の全身濃度は低い。従って、化学的誘導因子によって生じる全身または器官特異的毒性の危険性は比較的低い。従って、本質的に任意の化学的誘導因子が本発明の組成物に使用することができると思われる。しかし、例えば、スズ塩、亜鉛塩およびヒ素塩のようなヒトにおいてすでに試験もしくは使用されている化学的誘導因子か、または例えば、ベンゾキノンアンサマイシンのようなヒトにおいて試験しようとする化学的誘導因子が最も好適である。ジアミドなどの周知の化学反応性を有する化学的誘導因子、ならびに核酸またはタンパク質として送達されるHSF1の活性型形態などのストレスタンパク質応答の高度に特異的な活性化因子であると予想される化学的誘導因子もまた好適である。
【0029】
化学的誘導因子を含む処方および送達
化学特性(例えば、親油性、分子サイズ)に依存して、化学的誘導因子は、エタノール、プロピレングリコールまたはグリセリンなどの溶媒中で局所投与してもよい。シリー(Schilli)ら、1998.J.Invest.Dermatol.111:598−604。タタ(Tata)ら、1994.J.Pharm.Sci.83:1508−1510。スレドニーら、1996.Int.J.Cancer65:97−103。より典型的には、化学的誘導因子は1つ以上の透過エンハンサー(またはプロモーター)をも含む処方中で投与される。皮膚および濾胞内送達は学術および産業研究の高度に活発な分野であり、当業者であれば、特定の化学的誘導因子を送達するための適切な方法を承知している。用語「透過エンハンサー(またはプロモーター)」は、皮膚の完全性および物理化学的特性を一過的に含むことによる皮膚の透過性を増大するか、もしくは毛包の選択的標的化を生じる任意の物理的方法または任意の化学的組成物を含むものとして、最も広い意味で本明細書で使用する。それはまた、変形可能および超変形可能(ultradeformable)なリポソームを含むリポソームなどの送達ビヒクル、ならびにイオン導入法、超音波振動およびエレクトロポレーションなどの有効な電子的方法を含むことを意味する。それはまた、送達しようとする分子の親油性誘導体の調製物を含む。例えば、テープストリッピングを使用して、特に高分子に対する皮膚の透過性が増強された。ヤング(Yang)ら、1995.Br.J.Dermatol.133:679−685。皮膚を反復的にブラッシングすることよって、ネイキッド(naked)DNAの表皮の外層および毛包への効率的な送達が可能にされた。ユ(Yu)ら、1999.J.Invest.Dermatol.112.370−375。周知の化学的透過エンハンサーは、アゾン(Azone)、デンガンマE(DegammaE)、またはn−デシルメチルスルホキシドである。フーグストラッテ(Hoogstraate)ら、1991.Int.J.Pharm.76:37−47。ボッデ(Bodde)ら、1989.Biochem.Soc.Trans.17:943−945。チョイ(Choi)ら、1990.Pharm.Res.7:1099−1106。マルジュッカ・スホーネン(Marjukka Suhonen)ら、1999.J.Controlled Release59:149−161。化学的透過エンハンサーの最近の例には、N−アセチルプロリン酸エステル類、ポリエチレングリコール−8−グリセリルカプリル/カプリン酸、SEPAおよびデオキシコール酸−ヒドロゲル類などのヒドロゲル類がある。テンジャーラ(Tenjarla)ら、1999.Int.J.Pharm.192:147−158。トラン(Tran)1999.J.Surg.Res.83:136−140。ディアニー(Diani)ら、1995.Skin Pharmacol.8:221−228。バレンタ(Valenta)ら、1999.Int.J.Pharm.185:103−111。送達しようとする分子の親油性誘導体かは、例えば、INFαの場合において成功している。アシル誘導体(鎖長12〜16)は、誘導退化されていない分子よりもかなり高い皮膚および経皮吸収を示した。ホールドバリー(Foldvari)ら、1999.Biotechnol.Appl.Biochem.30:129−137。イオン導入法は、ほとんどイオン化された分子に対する皮膚透過性の電子刺激に基づく方法である。それは、皮膚において小さな分子ならびに小さなポリペプチドを送達するために首尾よく使用されている。ガイ(Guy)1998.J.Pharm.Pharmacol.50:371−374。最近の電子的方法の1つは、皮膚において親水性化合物を送達するために使用されているエレクトロポレーションである。バンガ(Banga)およびプラウスニッツ(Prausnitz)1998.Trends Biotechnol.16:408−412。核酸を毛包に送達する方法を利用可能である。国際公開第00/24895号および国際公開第98/46208号。
【0030】
皮膚送達、具体的には、有効分子の濾胞内送達のためのカプセル化技術の使用は、近年好適なアプローチになっている。フレスタ(Fresta)およびプグリシ(Puglisi)による研究は、角質層脂質に基づく単層リポソームは、薬物の皮膚送達に適切なデバイスであることを示唆した。フレスタ(Fresta)およびプグリシ(Puglisi)1996.J.Drug Target4:95−101。多様な小さなおよび大きな分子を皮膚に送達するために使用されている超変形可能なリポソームの最近の開発は特に興味深い。例えば、コール酸ナトリウム、スパン(Span)80およびツイーン(Tween)80などの界面活性化因子(edge activator)と混合されたホスファチジルコリンを含有するベシクルが、ホルモンであるエストラジオールの送達のために首尾よく使用された。エル・マグフラビー(El Maghraby)ら、2000.Int.J.Pharm.196:63−74。セビック(Cevc)1996.Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.13:257−388。カチオン性脂質に基づく処方は、オリゴヌクレオチドを含む小さなおよび大きな分子を毛包に送達することができるという知見は特に関連性がある。内および外毛根鞘の接合部を介して送達が生じるため、このような送達は鋭敏な特異性を有し得る。リーブ(Lieb)ら、1997.J.Pharm.Sci.86:1022−1029。ホフマン(Hoffman)は、選択的に毛包に対して、ホスファチジルコリンに基づくリポソームは線量、メラニン、遺伝子およびタンパク質を標的化することができることを示した。ホフマン(Hoffman)1998.J.Drug Target5:67−74。送達される遺伝子は濾胞内で活性であり、濾胞を選択的遺伝子療法に対する標的にする。リ(Li)およびホフマン(Hoffman)1995.Nat.Med.1:705−706。ホフマン(Hoffman)2000.Nat.Biotechnol.18:20−21。
【0031】
化学的誘導因子の用量および投与
本発明の実施では、細胞傷害性化学療法剤への患者または哺乳動物の暴露の前に、化学的誘導因子を含む組成物が患者の頭皮または非ヒト哺乳動物の皮膚に適用される。化学治療剤による死滅から毛包細胞を保護するために、化学的誘導因子は、毛包細胞においてストレスタンパク質応答を活性化するのに十分高い毛包内濃度に到達し、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つのストレスタンパク質の濃度において客観的に測定可能な上昇が生じなければならない。より好ましくは、これらのストレスタンパク質のいくらかまたは全てのレベルが上昇する。ストレスタンパク質の濃度の約25%の上昇は、ストレスタンパク質に対する抗体を使用するウエスタンブロット分析によって容易に検出可能である。哺乳動物細胞の培養物において検出可能なストレスタンパク質応答が生じる濃度範囲は、多くの化学的誘導因子について公知であり(例えば、ゾウら、1998.Cell Stress&Chaperones3:130−141(本明細書において参考として援用される)を参照のこと)、用量決定研究の初期指針として役立つことができる一方、患者の頭皮(または別の哺乳動物の皮膚)に対する局所投与のための組成物において要求される濃度は、好ましくは経験的にそれぞれの組成物について決定される。毛包において到達される誘導因子の濃度は誘導因子の化学的特性および選択される透過エンハンサーの有効性に依存し、それぞれの誘導因子および透過エンハンサーについてさらに本明細書において記載されているように当業者によってかまたは当該分野において公知である他の任意の方法によって決定することができることが理解されよう。多様な化学療法薬に対する細胞の最大の保護のために増加させるのに必要のある毛包内のストレスタンパク質のレベルの程度を予測するために、標準的な臨床用量決定研究を行うことができる。測定しようとする最も関連性のある臨床パラメータは化学療法前後の毛密度である。これらの測定値は、定量的(規定されたサイズの皮膚の面積における毛の計数値)であっても、半定量的(脱毛の等級を見積もる)であってもよい。代替的または付加的に、皮膚生検を採取して、毛包の密度および/または形態学について分析してもよい。不完全な代用終点(上述を参照)として、化学治療薬の投与前の毛包細胞におけるストレスタンパク質応答の活性化は、免疫細胞化学法(ハシヅメ(Hashizume)ら、1997.Int.J.Dermatol.36:587−592。ユ(Yu)ら、1999.J.Invest.Dermatol.112.370−375)またはストレスタンパク質抗体を使用するウエスタンブロットによって頭皮生検において推定することができる。
【0032】
化学療法処置サイクルの阻害の時間に対して、誘導因子を含む組成物が患者の頭皮(または別の哺乳動物の皮膚)に最も良好に投与される時間もまた、標準的なプロトコルに従って経験的に決定することができる。化学的誘導因子の毛包への送達の動力学は、選択される誘導因子および透過エンハンサーの性質によって変動する。細胞培養物において、十分な濃度の化学的誘導因子への暴露によって、ストレスタンパク質応答の迅速な活性化が生じ、約2〜12時間以内にストレスタンパク質の細胞保護レベルに到達する。皮膚は分子の送達に対する顕著な障壁を示すため、毛包におけるストレスタンパク質の細胞保護レベルの達成は、選択される誘導因子および透過エンハンサーの性質に依存して、24時間まで遅延され得る。従って、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、化学療法剤の投与の約2〜36時間前に投与することができる。好ましくは、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、化学療法の約8〜24時間前に投与される。一旦、毛包の細胞においてストレスタンパク質の細胞保護レベルに到達すると、毛包は、典型的に1〜2日間、化学療法剤に対する高い耐性を保持する。この指針によれば、当業者は、日常的実験のみによって、化学療法剤に対する毛包の効果的保護を提供する化学的誘導因子を含む特定の組成物の適切な用量および適切な投与レジメを経験的に規定することが可能である。
【0033】
物理的誘導因子の用量および投与
本発明の実施のもう1つの局面では、患者の頭皮または非ヒト哺乳動物の皮膚は、細胞傷害性化学療法剤への患者または哺乳動物の暴露の前に、ストレスタンパク質応答の物理的誘導因子に暴露される。化学治療剤による死滅から毛包細胞を保護するために、物理的誘導因子の線量は、毛包細胞においてストレスタンパク質応答を活性化するのに十分高く、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つのストレスタンパク質の濃度において客観的に測定可能な上昇が生じなければならない。より好ましくは、これらのストレスタンパク質のいくらかまたは全てのレベルが上昇する。ストレスタンパク質の濃度の約25%の上昇は、ストレスタンパク質に対する抗体を使用するウエスタンブロット分析によって容易に検出可能である。好適な物理的誘導因子は熱である。熱は、加熱された表面または加熱された液体、超音波、赤外線照射、またはマイクロ波もしくは高周波照射との直接接触を含む異なる手段によって、標的組織において送達あるいは発生させることができる。本発明の目的のために、患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に熱を送達する好適な手段は、水などの加熱された液体との直接接触に関与する。非制限的例では、患者の頭皮を覆うシャワーキャップに似たデバイスが患者に提供される。該キャップは、患者のヘアラインを僅かに超えて延在し、ヘアラインに極隣接する皮膚に水密シールを形成する。キャップの内部は、適切な入口部および出口部、バルブ、接続管ならびにウォーターポンプの手段によって温度制御された水浴に対応する適切な容積の水または他の生理学的水溶液を含有する。哺乳動物細胞培養物理的誘導因子において検出可能なストレスタンパク質応答を生じる熱線量の範囲は公知であり、用量決定研究の初期指針として役立つことができる。高温度の代表的な範囲は約39℃〜45℃であり、高温度暴露の代表的な期間は約2時間〜15分間である。患者の頭皮(または別の哺乳動物の皮膚)に適用しようとする適切な熱線量は、好ましくは経験的に決定される。多様な化学療法薬に対する細胞の最大の保護のために増加させるのに必要のある毛包内のストレスタンパク質のレベルの程度を予測するために、標準的な臨床用量決定研究を行うことができる。測定しようとする最も関連性のある臨床パラメータは化学療法前後の毛密度である。これらの測定値は、定量的(規定されたサイズの皮膚の面積における毛の計数値)であっても、半定量的(脱毛の等級を見積もる)であってもよい。代替的または付加的に、皮膚生検を採取して、毛包の密度および/または形態学について分析してもよい。不完全な代用終点(上述を参照)として、化学治療薬の投与前の毛包細胞におけるストレスタンパク質応答の活性化は、免疫細胞化学法(ハシヅメら、1997.Int.J.Dermatol.36:587−592。ユ(Yu)ら、1999.J.Invest.Dermatol.112.370−375)またはストレスタンパク質抗体を使用するウエスタンブロットによって頭皮生検において推定することができる。
【0034】
化学療法処置サイクルの阻害の時間に対して、熱線量が患者の頭皮(または別の哺乳動物の皮膚)に最も良好に投与される時間もまた、標準的なプロトコルに従って経験的に決定することができる。細胞培養物において、適切な熱線量への暴露によって、ストレスタンパク質応答の迅速な活性化が生じ、数時間以内にストレスタンパク質の細胞保護レベルに到達する。熱の送達に対する顕著な障壁を示し、循環を介する熱の転出は加熱プロセスを減速し得るため、毛包におけるストレスタンパク質の細胞保護レベルの達成は、数時間遅延され得る。従って、適切な熱線量は、化学療法剤の投与の約2〜24時間前に投与することができる。好ましくは、熱線量は、化学療法の約6〜12時間前に投与される。後者の時間の遅延は、加熱開始後の化学療法処置の開始にまで言及する。一旦、毛包の細胞においてストレスタンパク質の細胞保護レベルに到達すると、毛包は、典型的に1〜2日間、化学療法剤に対する高い耐性を保持する。この指針によれば、当業者は、日常的実験のみによって、化学療法剤に対する毛包の効果的保護を提供する適切な熱線量および熱線量の適切な投与レジメを経験的に規定することが可能である。
【0035】
化学療法誘導性脱毛の動物モデル
ヒト患者に対しては不完全な代替物ではあるが、脱毛の動物モデルを使用して、誘導因子および保護方法を評価することは可能である。ヒトでは、濾胞の90%が成長期相にある点で、ヒトの毛の成長は多くの動物とは異なると思われているが、齧歯類などの成獣動物では、この百分率が劇的に低い。成長相でヒトの状況に近づく2種の動物モデルは、新生児(8日齢)ラット(ヒュッセイン(Hussein)ら、1990.Science249:1564−1566)および被毛の一部を除毛した後のC57BL/6系マウスである。パウス(Paus)ら、1990.Br.J.Dermatol.122:777−784。パウス(Paus)ら、1994.Am.J.Pathol.144:719−734。第1のモデルでは、新生児ラットの毛の成長の活性相を利用し、第2のモデルでは、毛の再成長を除毛によって同調させる。マウスのモデルでは、6〜8週齢の雌性C57/BL/6系マウスの除毛された皮膚における休止中(休止期)の毛包を活発な毛の成長(成長期)に入る様に誘導する。麻酔した動物(30mg/kgペントバルビタール)の被毛の背部全体または所望の部分に蝋とロジンとの混合物を塗装し、硬化した後該混合物を剥離する。パウス(Paus)ら、1990.Br.J.Dermatol.122:777−784。シリー(Schilli)ら、1998.J.Invest.Dermatol.111:598−604。薬学的組成物は、典型的に、除毛の約5日後に局所投与され、その時は全ての毛包は毛サイクルの成長期III〜IVにある。従って、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含有する処方または熱などの物理的誘導因子の線量は、後者の時間ポイントで投与される。2種のモデルは、アドリアマイシンおよびシクロホスファミドを含む化学療法薬によって誘発される脱毛の研究において広範に使用された。バルサリ(Balsari)ら、1994.FASEB J.8:226−230。シリー(Schilli)ら、1998.J.Invest.Dermatol.111:598−604。ジメネズ(Jimenez)およびユニス(Yunis)1992.Cancer Res.52:413−415。動物モデルは、原理証明実験、毛包への化学的誘導因子の送達を改善する能力に関する潜在的透過エンハンサーの評価、化学的誘導因子の局所毒性の推定、化学的誘導因子の局在化された送達または物理的誘導因子の局所暴露は、物理的または化学的誘導因子によるストレスタンパク質応答の一般化された活性化において化学的誘導因子の高い全身濃度を生じないことの実証などのために使用することができる。従って、本発明はまた、化学療法誘導性脱毛からのヒトまたは動物の保護における使用のための薬剤(即ち、化学的誘導因子または化学的誘導因子と透過エンハンサーとの併用)を同定するための方法であって、(a)化学誘導性脱毛の動物モデルに試験薬剤を投与すること、および(b)前記薬剤が、前記動物モデルにおいてストレスタンパク質応答を誘導することが可能であるかどうかを決定することを含んでなる上記方法を含む。また、化学誘導性脱毛からのヒトまたは動物の保護における使用のための薬剤を同定するための方法であって、(a)ストレスタンパク質応答を誘導することが可能な薬剤を選択すること、および(b)化学誘導性脱毛の動物モデルに前記試験薬剤を投与し、前記薬剤が化学誘導性脱毛に対して保護するかどうかを決定することを含んでなる上記方法も包含される。
【0036】
本発明をさらに例示するために、上記の脱毛の動物モデルを使用する実験の非制限的例を以下のセクションで説明する。
【0037】
選択された薬学的処置または物理的処置(例えば、熱処置)は、毛包の関連性のある細胞の大部分においてストレスタンパク質応答を誘導することが示される必要がある。さらに、処置レジメの最適化には、毛包において誘導されたストレスタンパク質応答の相対的大きさおよび期間を評価することが可能であることが重要である。これらの目的のために、毛包の細胞および皮膚の他の細胞においてHsp70の主要なストレス誘導性形態のレベルを推定する免疫組織化学的アッセイが利用される。ストレスタンパク質応答に好適な誘導因子として誘導性Hsp70が選択される妥当な理由が少なくとも2つある。第1に、Hsp70は、最も豊富にあるHsp類の中の1つであり、それ自体の細胞保護性が示されたこと。リウ(Liu)ら、1992.Cancer Res.52:3667−3673。リ(Li)ら、1995.Exp.Cell Res.217:460−468。第2に、細胞株および動物組織を使用した先の研究の評価から、Hsp70の主要な誘導性形態の発現は齧歯類において厳密に調節されることが明らかであること。ウェルヒ(Welch)ら、1983.J.Biol.Chem.258:7102−7111。ストレスの非存在下では、そのレベルは非常に低く、全ての細胞株およびほとんどの組織で存在しない。ストレス中およびその後では、タンパク質は、劇的に高いレベルにまで迅速に蓄積する。ハシヅメらによる研究(ハシヅメら、1997.Int.J.Dermatol.36:587−592)は、C57/BL/6系マウスにおける誘導性Hsp70のレベルについて試験し、成長期の毛包における誘導性Hsp70の発現は低いことを見出した。成長期−退行期の変換が行われている間のみに、誘導性Hsp70のレベルが有意に上昇する。培養された齧歯類細胞および新鮮かつ固定された組織切片において誘導性Hsp70を特異的に検出するモノクローナル抗体が市販されている(<<C92>>ストレスゲン・バイオテクノロジーズ社(StressGen Biotechnologies Corp.)、ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア(Victoria,BC)(カタログ番号:SPA−810))。
【0038】
免疫組織化学的アッセイを検証するための実験には、Hsp70を誘導することが必要であり、何故なら、上述したように、このタンパク質は通常存在しないか、または非常に低いレベルで存在するからである。Hsp70の阻害のためには、2つの異なる方法を使用することができる。第1は、(水浴での浸漬によって)動物を全身高体温に暴露することに関与する。熱暴露の最適温度および期間を経験的に決定する必要がある一方、先の培養実験は、少なくともさらなる実験を行うことなく、免疫組織化学的に検出可能なHsp70の誘導のレベルを達成するための十分な初期指針を提供する。第2の方法は、リ(Li)およびホフマン(Hoffman)による先の観察に基づく。リ(Li)およびホフマン(Hoffman)1995.Nat.Med.1:705−706。これらの研究者らは、CMVプロモーターにより制御されるβガラクトシダーゼ遺伝子を含有するリポソームが、マウス成長期毛包の有糸分裂している活性な細胞(マトリックス細胞および推定濾胞幹細胞)にβガラクトシダーゼ遺伝子を効率的かつ選択的に送達しており、ここで、遺伝子は活性に発現されたことを見出した。活性型ヒトHSF1(変異体HSF1d202−316、以後HSF1(+)と呼ぶ)の発現構築物を毛包細胞に導入するためにも同じプロトコルを使用することができる。HSF1(+)は、異なる細胞タイプにおいて誘導性Hsp70の発現を強力に増強することが公知である。キシア(Xia)ら、1999.Cell Stress&Chaperones4:8−18。
【0039】
アッセイ検証実験のために、新生児ラットおよび一部の被毛を除毛した後の成獣マウスを、中等度の重傷度の全身高温に暴露する。代替的または付加的に、CMVプロモーター駆動性hsf1(+)遺伝子か、またはコントロールとしてβガラクトシダーゼ遺伝子を含有するリポソームを、新生児ラットの背部もしくは成獣マウスの除毛した領域に投与する。適切な時間後(熱暴露後6〜48時間、または導入1、3もしくは5日後)、処置したおよび処置していない動物を屠殺し、皮膚サンプルを採取する。標準的な免疫組織化学プロトコルを使用して、これらのサンプルをプロセスすることができる。サンプルプロトコルを提供するために、皮膚サンプルをO.T.C.(マイルズ(Miles))に包埋し、急速凍結することができる。ユ(Yu)ら、1999.J.Invest.Dermatol.112.370−375。凍結標本をクリオスタット上で切片化し(5μm)、清潔なチャージしたスライド上に回収した。空気乾燥およびアセトン中での固定化の後、スライドを洗浄し、ブロックし、Hsp70抗体C92に暴露させることができる。標本上のC92抗体は、酵素標識第2抗体で検出することができる。あるいは、高いバックグランドのため、必要であれば、ビオチン化したC92抗体(市販されている)を使用して第2抗体の必要性を排除してもよい。
【0040】
抗体の結合が成功しないことが判明している見込みのない事象では、特定の核酸ハイブリダイゼーションを、高いhsp70遺伝子の発現の代替的アッセイとして使用することが可能であることが認められる。ラットおよびマウスのhsp70遺伝子がクローニングされ(ペリー(Perry)ら、1994.Gene146:273−278。ロンゴ(Longo)ら、1993.J.Neurosci.36:325−335)、従って、ハイブリダイゼーションプローブを容易に調製することが可能である。
【0041】
上述したように、最近10年間で、小さな分子量の薬物物質ならびに核酸およびタンパク質などの大きな分子の毛包の有糸分裂する活性な細胞への優先的かつ効率的送達は、目的の有効物質を含有する脂質に基づく処方およびリポソームの局所投与によって達成することができる。バルサリ(Balsari)ら、1994.FASEB J.8:226−230。リ(Li)およびホフマン(Hoffman)1995.Nat.Med.1:705−706。リーブ(Lieb)ら、1992.J.Invest.Dermatol.99:108−113。リーブ(Lieb)ら、1997.J.Pharmaceutical.Sciences.86:1022−1029。り(Li)ら、1993.In Vitro Cell.Dev.Biol.29A:192−194。り(Li)ら、1993.In Vitro Cell.Dev.Biol.29A:258−260。リ(Li)およびホフマン(Hoffman)1995.In Vitro Cell.Dev.Biol.31A:11−13。ホフマン(Hoffman)1997.J.Drug Targeting5:67−74。ホールドバリー(Foldvari)ら、1999.Biotechnol.Appl.Biochem.30:129−137。リポソームでは、薬物物質の循環への放出は極僅かでしかないことがさらに示された。バルサリ(Balsari)ら、1994.FASEB J.8:226−230。リ(Li)およびホフマン(Hoffman)1997.J.Derm.Sci.14:101−108。本発明の実施例の実験では、ホフマン(Hoffman)のグループ(ホフマン(Hoffman)1997.J.Drug Targeting5:67−74)により記載されているようなリポソーム処方を使用して、ストレスタンパク質応答を含む薬物物質(化学的誘導因子)を毛包細胞に送達する。小さな分子およびタンパク質のためのホフマン(Hoffman)のリポソームはホスファチジルコリンに基づき、核酸のための該リポソームはホスファチジルコリン単独かまたは5:3:2の比率でホスファチジルコリン:コレステロール:ホスファチジルエタノールアミンのいずれかを含有した。
【0042】
実施例の実験では、2つのタイプのストレスタンパク質応答の化学的誘導因子(小さな分子化合物である亜ヒ酸ナトリウムおよびHSF1(+))が(個々に)試験される。HSF1(+)は、HSF1(+)をコードする核酸または組換えタンパク質として送達することができる。核酸は、構成的に活性なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にあるhsf1(+)を遺伝子を含有するプラスミドベクターであることができる。治療施設では、ストレスタンパク質応答が一過的にのみ誘導されることが所望される。プラスミドに担持されているhsf1(+)遺伝子は経時的に不活化されるが、この不活化は非常に遅いと考えられ得る。代替的に、hsf1(+)遺伝子の調節された発現を可能にする異なる(真核生物の)発現ベクターを使用すべきである。おそらく無毒の小さな分子量の物質(例えば、テトラサイクリン、RU486など)によって活性化される/抑制される遺伝子スイッチが公知であり、容易に入手することができる。ゴッセン(Gossen)ら、1996.Science268:1766−1769。ゴッセン(Gossen)およびブジャード(Bujard)1992.Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:5547−5551。ワングら、1997.Nat.Biotechnol.15:239。ワングら、1997.Gene Therapy4:432−441。HSF1(+)が組換えタンパク質として送達される場合、後者の問題は生じない。野生型のヒトHSF1およびHSF1(+)が哺乳動物細胞において同様の構築物から発現される場合、野生型HSF1はHSF1(+)よりも有意に高いレベルで蓄積した(データ公表せず)が、これは、変異タンパク質(即ち、HSF1(+))が野生型タンパク質よりもかなり安定ではないことを示唆する。以後の実験では、HSF1(+)の半減期が6〜8時間であることが推定された。従って、組換えHSF1(+)の細胞への導入は、ストレスタンパク質応答の一過的導入しか生じない。HSF1(+)は、例えば、FLAG標的化タンパク質または大腸菌(E.coli)におけるグルタチオントランスフェラーゼ融合として産生させることができる。ボエルミー(Voellmy)1996.ストレス誘導性細胞応答(Stress−Inducible Cellular Responses)、U.フレイグ(U.Feige)、R.I.モリモト(R.I.Morimoto)、I.ヤハラ(I.Yahara)、およびB.S.ポーラ(B.S.Polla)編)(バーゼル(Basel):Birkhaeuser Verlag)121−137頁。グオY.(Guo, Y.)、グエトッヒT.(Guettouche,T.)、フェンナM.(Fenna,M)、ボエルマンF.(Boellmann,F.)、プラットW.B.(Pratt,W.B.)、トフトD.O.(Toft,D.O.)、スミスD.F.(Smith,D.F.)、およびボエルミーR.(Voellmy,R.)データ示さず。FLAG標的化HSF1(+)およびグルタチオントランスフェラーゼ融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー方法によって精製することができる。グルタチオントランスフェラーゼ部分は、精製中に切断して、HSF1(+)を生じさせることができる。これは、HSF1(+)の機能を防止しない(結果示さず)ため、FLAG標的化HSF1からのタグを取り出す必要はないと思われる。本質的に純粋な組換えタンパク質を得ることができる。HSF1(+)は比較的不安定であるため、タンパク質分解活性の低い産生株を使用することが有利であることが認められる。HSF1(+)は細菌の発現系で産生させることができる一方、それは、バキュロウイルス感染昆虫細胞を含む真核細胞発現系において発現させ、精製することもできる。
【0043】
亜ヒ酸を、水またはリン酸緩衝化生理食塩水に最大溶解度またはその付近で溶解する。HSF1(+)タンパク質または核酸を、最も高い実施濃度で溶解する。次いで、これらの溶液および希釈系列をホフマン(Hoffman)による記載のようにリポソームに組み入れる。ホフマン(Hoffman)1997.J.Drug Targeting5:67−74。コントロールは、それぞれ空のリポソームおよびHSF1(+)に関連しないタンパク質または核酸を含有するリポソームを含む。これらのリポソーム調製物を、新生児ラット(8日齢)の背部、側部もしくは腹部上の領域または成獣マウス(除毛5日後)の除毛した領域に投与する。投与は1回でもよく、また適切な間隔(例えば、毎日)で反復してもよい。最後の投与の様々な時間(12時間、1〜10日間)後、動物を屠殺する。皮膚サンプルを採取し、切片を調製し、先に記載の免疫組織化学的アッセイによる分析し、顕微鏡上で毛包の密度および形態学を評価する。
【0044】
これらの実験は、いくらかの疑問に答えることができる。ストレスタンパク質応答を誘導する最小および最良の濃度、ならびに毛包に傷害を引き起こすことなく誘導因子を投与することができる最大濃度(亜ヒ酸ナトリウムのみに関連性がある)の各化学的誘導因子について推定値を得ることができる。後者の情報について、読者は、ストレスタンパク質応答が最小限のタンパク毒ストレスに応答して誘導されることを留意することができる。従って、過剰な濃度で、亜ヒ酸ナトリウムなどの化学的誘導因子は有意な細胞傷害性を有し、毛包細胞を死滅させる。この理由のため、化学的誘導因子が不可逆的な傷害を引き起こすことなく、Hspの過剰発現を誘発する濃度の範囲を決定することは極めて重要である。誘導因子の過剰濃度は、より低い濃度により誘導されるストレスタンパク質応答と比較して減少したストレスタンパク質応答、ならびに毛包の形態学的変化および密度によって検出することができる。
【0045】
第2に、実験は、リポソーム調製物は、全てまたはほぼ全ての毛包マトリックス細胞(および濾胞幹細胞)を標的化するかどうかを示すことができる。ホフマン(Hoffman)(ホフマン(Hoffman)1997.J.Drug Targeting5:67−74)によって提供される指示に従って調製される誘導因子を含有するリポソームが、有糸分裂する活性なマトリックスおよび推定幹細胞の小さな画分のみを標的化することが見出される場合、上記の実験と類似の実験を行うことによって、異なる化合物または他の透過エンハンサーのリポソームを試験することができる。
【0046】
第3に、実験は、各誘導因子について、ストレスタンパク質応答の活性化の時間経過ならびにその持続性を規定する。この情報は、動物モデルにおける効果的な脱毛保護レジメの設計に必要である。ストレスタンパク質応答の活性化が生じ、Hsp濃度が適切に高いレベルにまで上昇した後に薬物療法薬が投与される場合にのみ、最適な保護が生じる。上記の実験から得られるデータのみが、誘導因子による前処置と化学療法薬による処置との間の最小の遅延を規定し、即ち、該データのみが以下に記載の実験のための初期条件を提供する。後者の実験こそが、化学療法薬によって誘導される脱毛に対する最適な保護と相関する誘導性Hsp70のレベルを規定する。ストレスタンパク質応答の持続性に関するデータによって、1回だけの応答の誘導が、化学療法剤が有効濃度で存在すると予想される間の期間全体にわたって、保護を提供する可能性があるかどうかを推定することができる。さらに、それらは、誘導されるHspのレベルが十分に長時間持続して、化学療法薬の複数回投与に関与するレジメに供される動物において潜在的に保護的であるかどうかに関する情報を提供する。最終的に、それらは、いくらかの用量の誘導因子を含有するリポソームの連続投与が、Hspの濃度が上昇する期間を効率的に延長するかどうかを示す。
【0047】
第4に、実験はまた、誘導因子を含有するリポソームが、ストレスタンパク質応答の期間を延長することに加えて、より強力な応答を生じるおよび/またはストレスタンパク質応答を装架する毛包のマトリックスおよび推定幹細胞の画分を増加するかどうかをも示すことができる。
【0048】
選択された化学療法剤に対する毛包の最適な保護のための条件を確立するためのモデル実験
以下の実験は、動物モデルにおいて異なる化学療法剤に対する毛包の最適な保護を生じる条件を確立することができる。化学療法剤は頻繁に併用使用されるが、動物はこれらの実験において単一の薬物に暴露されるのみである。特定の併用において比較的重要な個々の薬物に関する疑問は回避されるため、本明細書は、ストレスタンパク質応答の誘導が特定の薬物の毛包毒性に対して保護することを確実に実証することが可能である。以下に記載の実験は、ヒトにおいて重度の脱毛を生じ、一般に使用される治療併用のうちの多くに存在するいくらかの薬物物質を中心に行う。選択された化学療法薬はシクロホスファミド、アドリアマイシン、タキソール、エトポシドおよびビンクリスチンである。
【0049】
最初の実験では、異なる選択された化学療法剤の単回の腹腔内注入が、重度の脱毛(等級3、ほとんどの動物において毛の成長/再成長が本質的に完全に損なわれていることを特徴とする;以下を参照のこと)を生じる条件を確立する。先の研究は価値のある指針を提供することができる。例えば、アドリアマイシンおよびシクロホスファミドによる新生児ラットの脱毛の誘導については、ヒュッセイン(Hussein)ら(ヒュッセイン(Hussein)ら、1990.Science249:1564−1566)、ジメンツ(Jimenez)およびユニス(Yunis)(ジメンツ(Jimenez)およびユニス(Yunis)1992.Cancer Res.52:5123−5125)、バルサリ(Balsari)ら(バルサリ(Balsari)ら、1994.FASEB J.8:226−230)ならびにジメンツ(Jimenez)ら(ジメンツ(Jimenez)ら、1995.Am.J.Med.Sci.310:43−47)によって記載され、ならびにエトポシドによる誘導は、デイビス(Davis)ら(デイビス(Davis)ら、2001.Science291:134−137)によって記載された。シクロホスファミドへの暴露から生じるC57/BL/6マウスモデルの脱毛については、パウス(Paus)および同僚らによって研究された。パウス(Paus)ら、1994.Am.J.Pathol.144:719−734。シリー(Schilli)ら、1998.J.Invest.Dermatol.111:598−604。他の研究者らは、アドリアマイシンの投与後のマウスにおける脱毛について記載した。マルキンソン(Malkinson)ら、1993.J.Invest.Dermatol.101:135S−137S。D’アゴスチニ(D’Agostini)ら、1998.Int.J.Oncol.13:217−224。統計的に重要な結果を得るためには、各データポイントに付き最小で10個体の動物からなる群をこれらおよび以後の実験に使用する。脱毛に対する1次アッセイは2名の観察者によって独立して実施される顕微鏡評価である。次の4つの等級を識別する:等級0:脱毛なし、等級1:50%未満の毛の消失として規定される軽度の脱毛、等級2:50%を超える毛の消失として規定される中程度の重症度の脱毛、および等級3は全てまたはほとんど全て(>90%)の脱毛症を伴う。ヒュッセイン(Hussein)ら、1990.Science249:1564−1566。スレドニー(Sredni)ら、1996.Int.J.Cancer65:97−103。皮膚切片の顕微鏡検査から知見の確証を得ることができ、該検査は毛包の密度および形態学を評価する。少なくともマウスモデルにおいては、色素形成の増加および皮膚の肥厚化は、成長期の進行と相関することが公知であることに留意すること(パウス(Paus)ら、1990.Br.J.Dermatol.122:777−784において説明されている)。従って、必要であれば、皮膚の色素形成および肥厚化の推定は、毛の成長の代用的アッセイとして役割を果たし得る。これらの初期の実験は、それぞれの化学療法剤について、ほとんど完全な脱毛が生じる最適濃度、脱毛表現型が最も容易に観察される動物身体の局在化(実験は、背部、側部および腹部を除毛されたマウスで行われる)、表現型が最も容易に評価される投与後の時間、ならびに表現型の発現の再現性を規定する。実験プロトコルをできるだけ簡単にするために、化学療法剤の坦懐投与が強く好まれる。
【0050】
化学療法剤によって誘導される脱毛に対する活性化されたストレスタンパク質応答の保護効果を評価し、最適化するために、少なくとも10匹の8日齢のラット、または局所的に除毛5日後のC57/BL/6マウスの群を、ストレスタンパク質応答の選択された誘導因子(ここでは亜ヒ酸ナトリウムおよびHSF1(+))を含有するリポソーム調製物で局所的に(示されるように1回または反復で)処置する。3つの異なる調製物を試験する:第1は、12または24時間後の誘導性Hsp70レベルの測定可能な増加を誘発する最低濃度(先に記載の実験で推定される)で誘導因子を含有し、第2および第3は、逐次それより高い濃度を含有する。化学療法剤の投与は、誘導因子を含有するリポソームの(最後の)投与の12もしくは24時間後のいずれかまたは約12時間もしくは24時間後に生じる。予め決定された量の化学療法剤(先の段落で規定される)を、すべての誘導因子処置した動物および模擬(亜ヒ酸ナトリウムを使用する実験では空のリポソームまたはHSF(+)タンパク質もしくは遺伝子を使用する実験ではコントロールタンパク質もしくは核酸を含有するリポソームで)処置した動物の腹腔内に注入する。更なる誘導因子および模擬処置した群にビヒクルのみを注入する。あるいは、物理的誘導因子である熱によって誘導される脱毛に対する活性化されたストレスタンパク質応答の保護効果を評価し、最適化するために、少なくとも10匹の8日齢のラット、もしくは局所的に(示されるように1回または反復で)除毛処置した5日後のC57/BL/6マウスの群を、異なる強度(39〜45℃に15〜120分間暴露)の局所熱処置に供するかまたは処置せずに放置した。局所熱処理は、いくらかの異なる手順で投与することができる。簡単な手順は、金属メッシュの意図された部分および結果的にこの意図された部分に載っている動物の身体の部分が水に浸漬するような様式で、水浴に固定された意図された金属メッシュ上に麻酔した動物を配置することに関与し得る。化学療法剤の投与は、熱線量の(最後の)投与の12または24時間後のいずれかに生じ得る。予め決定された量の化学療法剤(先の段落で規定される)を、すべての群の動物の腹腔内に注入する。
【0051】
次いで、動物を居所に戻し、脱毛の表現型の評価に最適と予め同定される時間に、全ての動物における脱毛の等級を記録する。次いで、動物を屠殺し、皮膚サンプルを採取し、固定化し、切片化する。切片を毛包の密度および形態学について顕微鏡で試験する。ストレスタンパク質の導入を確認するために、さらなるいくらかの動物を各群に含めることができる。化学療法剤の投与時にこれらの動物を屠殺し、皮膚サンプルを採取し、誘導性Hsp70のレベル、即ち達成されるストレスタンパク質応答の導入の程度の免疫組織化学的評価のためにプロセスする。
【0052】
脱毛を評価する実験では、個々の動物に0〜3の範囲の脱毛スコアを割り当てる(上記を参照のこと)。各処置群に対する脱毛スコアについて、個々の動物の脱毛スコアの平均および標準偏差を計算することによって要約する。処置群は一元分散分析(ANOVA)により比較する。処置群間の差がANOVAで検出される場合、事後検定(例えば、シェフの検定またはスチューデント−ニューマン−クルーズ検定)を使用して、どの群が相互に異なるかを決定することができる。統計的有意の基準は、p<0.05である。
【0053】
化学的誘導因子の可能な全身/器官毒性ならびに処置しようとする腫瘍の細胞においてもストレスタンパク質応答が誘導される場合の化学療法剤の治療有効性の減損を回避するために、上記の実験では、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を毛包の関連性細胞に特異的に送達するために、局所的に適用されるリポソーム処方を使用した。この局所送達のため、後者の細胞だけではなく化学処置によって標的化される腫瘍細胞を含む他の細胞も化学療法剤由来の毒性から保護されるべきである。上記の先の報告に基づいて、化学的誘導因子のリポソーム処方の局所投与は、誘導因子の所望される高度に局在化された送達を生じることが予想される。亜ヒ酸ナトリウムなどの少量の化学的誘導因子は循環中で終結し得るが、希釈されるためその濃度は最小限であり、必要な閾値濃度よりもかなり低いため、該誘導因子は全身的なストレスタンパク質応答を活性化することができない。同様に、HSF1(1)の全身濃度は極めて低いことが予想され、血液細胞および器官中のストレスタンパク質応答の活性化は、多くても数個の単離された細胞でしか生じない。上記の考察は、局在化された熱処置によって治療ストレスタンパク質応答が誘導される処置アプローチには当てはまらないことに留意すること。
【0054】
局所的に投与される化学的誘導因子は循環中および主要な器官にストレスタンパク質応答の誘導に十分なレベルでは蓄積しないことを確定することを目的とする実験では、化学療法薬によって生じる脱毛を予防するのに有効であることが先の実験から公知である量および条件で化学的誘導因子(亜ヒ酸ナトリウムまたはHSF1(+)の形態)を含有するリポソーム処方を、動物に投与し、適切な遅延後、化学療法薬を注入する。コントロールは、同様に処置されるが、但し、それぞれ空のリポソームおよびコントロールタンパク質または核酸を含有するリポソームで処置される動物である。ストレスタンパク質応答の誘導に対する化学療法剤とリポソームの脂質成分との組み合わせを評価するために、さらなるコントロールに、化学療法剤を受領しなかった(ビヒクル注入)か、または化学的誘導因子を含有するかもしくはコントロールのリポソームで前処理されなかった動物を含めることができる。化学療法薬の投与前後の様々な時間で、動物を屠殺し、切開する。日常的な方法論を使用して、PBL、心臓、肺、脳、肝臓および腎臓の抽出物を調製し、誘導性Hsp70に対する抗体(C92)でプローブ化したウエスタンブロットにより分析する。誘導性Hsp70のレベルを比較する。上述したように、この実験は、ストレスタンパク質応答の誘導が毛包の細胞に対して局在化されることを示すことが強く予想される。
【0055】
上記の開示物は多くの参考文献を引用する。本明細書において引用される全ての出版物、特許および特許出願は、本明細書において参考として具体的に援用される。本明細書では、具体的な特徴、局面および実施態様を参考として本発明を説明してきたが、むしろ他の改変物、修飾物および他の実施態様にまで及び、それらを包含する。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲内のそのような全ての改変物、修飾物および他の実施態様を含むものとして同等に解釈される。

Claims (32)

  1. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための方法であって、化学療法薬の投与の十分前に、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む有効量の組成物を、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与することを含む方法。
  2. 前記組成物は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記組成物は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および透過エンハンサーを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記組成物は、透過エンハンサーと、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子と、を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、前記化学療法薬の投与の2〜36時間前に投与される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、前記化学療法薬の投与の8〜24時間前に投与される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記組成物は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記組成物は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および透過エンハンサーを含む、請求項5または6に記載の方法。
  9. 前記組成物は、透過エンハンサーと、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子と、を含む、請求項5または6に記載の方法。
  10. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための方法であって、化学療法薬の投与時に毛包の細胞において、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択されるストレスタンパク質の濃度の検出可能な上昇を引き起こすのに必要とされる量と同量またはそれ以上の量で、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物を、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与することを含む方法。
  11. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、前記化学療法薬の投与の2〜36時間前に投与される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む組成物は、前記化学療法薬の投与の8〜24時間前に投与される、請求項10に記載の方法。
  13. 前記組成物は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子を含む、請求項11または12に記載の方法。
  14. 前記組成物は、ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および透過エンハンサーを含む、請求項11または12に記載の方法。
  15. 前記組成物は、透過エンハンサーと、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択されるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子と、を含む、請求項11または12に記載の方法。
  16. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための方法であって、化学療法薬の投与の十分前に、有効な熱線量を、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与することを含む方法。
  17. 有効な熱線量は、化学療法薬の投与時に毛包の細胞において、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択されるストレスタンパク質の濃度の検出可能な上昇を引き起こすのに必要とされる線量と同量またはそれ以上の線量である、請求項16に記載の方法。
  18. 熱線量は、前記化学療法薬の投与の2〜24時間前に投与される、請求項17に記載の方法。
  19. 熱線量は、前記化学療法薬の投与の6〜12時間前に投与される、請求項17に記載の方法。
  20. 熱線量は、加熱された表面または液体、赤外線照射、マイクロ波照射、超音波および高周波照射との直接接触からなる群より選択される手段によって投与される、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子、透過エンハンサーおよび希釈剤または溶媒を含む、化学療法誘導性脱毛に対する保護のための薬学的組成物。
  22. 前記化学的誘導因子は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
  23. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造におけるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子の使用であって、該医薬品の有効量が、化学療法薬の投与の十分前に、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与される、使用。
  24. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造におけるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および透過エンハンサーの使用であって、該医薬品の有効量が、化学療法薬の投与の十分前に、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与される、使用。
  25. 前記医薬品は、前記化学療法薬の投与の2〜36時間前に投与される、請求項23または24に記載の使用。
  26. 前記医薬品は、前記化学療法薬の投与の8〜24時間前に投与される、請求項23または24に記載の使用。
  27. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択される、請求項23、24、25または26のいずれか一項に記載の使用。
  28. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造におけるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子の使用であって、医薬品は、化学療法薬の投与時に毛包の細胞において、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択されるストレスタンパク質の濃度の検出可能な上昇を引き起こすのに必要とされる量と同量またはそれ以上の量で、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与される、使用。
  29. ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に存在しない腫瘍の化学療法処置に供されるヒト患者または哺乳動物を、化学療法誘導性脱毛から保護するための医薬品の製造におけるストレスタンパク質応答の化学的誘導因子および透過エンハンサーの使用であって、医薬品は、化学療法薬の投与時に毛包の細胞において、Hsp90、Hsp70、Hsp25−27およびP−糖タンパク質からなる群より選択されるストレスタンパク質の濃度の検出可能な上昇を引き起こすのに必要とされる量と同量またはそれ以上の量で、ヒト患者の頭皮または哺乳動物の皮膚に投与される、使用。
  30. 前記医薬品は、前記化学療法薬の投与の2〜36時間前に投与される、請求項28または29に記載の使用。
  31. 前記医薬品は、前記化学療法薬の投与の8〜24時間前に投与される、請求項28または29に記載の使用。
  32. 前記ストレスタンパク質応答の化学的誘導因子は、ジアミド、ベンゾキノンアンサマイシン、ヒ素塩、スズ塩、亜鉛塩および核酸またはタンパク質形態の活性型HSF1からなる群より選択される、請求項28、29、30または31のいずれか一項に記載の使用。
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