JP2005503995A - キノリノン鏡像異性体による性的機能不全および心血管疾患の治療法 - Google Patents

キノリノン鏡像異性体による性的機能不全および心血管疾患の治療法 Download PDF

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Abstract

特定の患者群における性的機能不全を治療するための方法を提供する。本発明の方法は、心臓疾患の症状がない患者、降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがない患者、および/または、有機亜硝酸塩もしくは硝酸塩を投与されたことがない患者において、フロセキナンの鏡像異性体およびフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物を利用することを含む。フロセキナンの鏡像異性体およびフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物は、鼻腔内的に、経口的に、局所的に、および/または呼吸吸入により患者に投与される。加えて、本発明は、心血管疾患を治療するための組成物および方法に関する。好ましい態様において、本発明は、同時に亜硝酸塩または硝酸塩によって治療されていない被験者において、フロセキナンの鏡像異性体(およびフロセキナンの鏡像異性体を含む製剤)を使用することを想定する。

Description

【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特定の治療群における男性および女性の性的機能不全(男性における勃起機能不全を含むが、限定されない)の治療のための方法に関する。本発明の方法は、心臓疾患の症状がない患者、並びに亜硝酸塩および硝酸塩などの降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがない患者に、薬学的化合物および薬学的組成物を利用することを含む。また、本発明は、心血管疾患の治療のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
A. 性的機能不全
インポテンスまたは勃起機能不全は、45歳未満の成人の約12パーセント、60歳の人の約20パーセント、および75歳の人の約55パーセントに影響を与えると考えられる広範囲にわたる疾患である。
【0003】
勃起機能不全の原因は、一つだけではない。例えば、勃起機能不全は、明らかな身体性もしくは器質性の傷害を伴わない不安症またはうつ病から生じるような心理的なものであり得る。このような勃起機能不全は、これを「心因性」と称し、インポテンスの症例の約15〜20パーセントの原因である。その他の場合では、勃起機能不全は、陰茎に血液を供給している動脈のアテローム性動脈硬化と関連しており、このような機能不全は、「動脈誘発性(arteriogenic)」または「アテローム硬化性」と称する。インポテンスの症例の約40〜60パーセントは、その原因が動脈誘発性である。
【0004】
さらに他の場合において、陰茎の静脈からの漏出があり、その結果、勃起のための充分な圧力を得ることができず、維持することもできない。この機能不全は、「静脈漏出性」または「異常なドレナージ性」と称する。この症状は、多少の動脈誘発性の機能不全が存在することにより、陰茎への血液の供給が損なわれ、しばしば悪化する。さらにその他の場合において、この機能不全は、陰茎に影響を及ぼしている神経系における神経病、例えば手術または骨盤外傷から生じる神経損傷などと関連している。このような機能不全は、「神経原性」と称し、これは、インポテンスの症例の約10〜15パーセントである。
【0005】
また、糖尿病患者、特にインスリン依存型糖尿病の患者の間で、勃起機能不全が高発生率で存在する。糖尿病患者における勃起機能不全は、しばしば「糖尿病誘発性」として分類され、基本的な機能不全は、通常、神経病と関連した神経原性であるが、動脈誘発性であることもあり、神経原性かつ動脈誘発性であることもある。糖尿病患者の男性の約半分は、勃起機能不全に罹患し、神経原性のインポテンスの症例の約半分は、糖尿病患者である。
【0006】
その上、勃起機能不全は、時に、高血圧に罹患した人の血圧を減少するために投与されるベータ遮断薬またはうつ病もしくは不安症を治療するために投与される薬剤などの一定の薬剤の副作用であることがある。また、過剰のアルコール消費は、勃起機能不全に関係する。非常に敏感な陰茎の組織を除去して残留組織のケラチン形成によって陰茎の亀頭を除感作させる男性の割礼は、勃起機能不全の一部の形態に寄与する因子でもあると考えられる。勃起機能不全のこれらの形態は、神経原性の不全または心因性の不全のサブセットと考えられうる。
【0007】
インポテンスを治療するために、多くの方法が利用できる。これらの治療は、薬理学的治療、手術を含み、心因性機能不全の場合には、心理的なカウンセリングが時に有効である。心因性インポテンスは、患者に対して、彼が完全な勃起ができることを、患者にこのような勃起を1回または数回誘導することによって示すことと連関させてカウンセリングをすることにより、しばしば治療することができる。過剰のアルコール消費による不全は、時に、このような消費を減らすことまたは無くすことによって治癒される。
【0008】
まれな場合ではあるが、静脈漏出による物理的不全の場合、静脈の病巣を修復するために通常手術が使用され、これにより不全が治癒するか、または静脈の病巣の修復後に勃起機能不全が残ったままの場合は、不全が薬理学的方法による治療の影響を受けやすくなるかのいずれかとなる。また、膣の貫入のための充分な勃起を生じる機械的手段を提供する陰茎インプラントも、インポテンスを治療するために広く使用されている。近年、インプラントは、特に薬理学的処置の効果がない場合において(これは、通常重篤なアテローム硬化性インポテンスである)使用されている。しかし、陰茎インプラントによるインポテンスの治療は、深刻な不都合を伴う。このような治療は、手術を必要とし、陰茎の勃起組織を総て破壊することを必要とし、永遠に正常な勃起を妨げる。
【0009】
また、薬理学的な治療方法も利用できる。しかし、このような方法は、非常に満足のいくものであることは証明されておらず、重篤な副作用を伴うこともある。パパベリンは、インポテンスを治療するために現在広く使用されているが、パパベリンは、少なくとも一部において、重篤なアテローム性動脈硬化によるインポテンスを克服する効果がない。パパベリンは、機能不全が心因性または神経原性であり、かつ重篤なアテローム性動脈硬化が関与しない場合に有効である。パパベリン、平滑筋弛緩物質、またはフェノキシベンズアミン(非特異的遮断薬および降圧薬)の海綿体への注射では、膣の貫入のための充分な勃起を生じることが見出された。また、重篤なアテローム性動脈硬化が機能不全の原因でない場合は、フェントラミン(α-アドレナリン作用性遮断薬)の海綿体内注射によって、膣の貫入のための充分な勃起が生じる。生じた勃起は、パパベリンまたはフェノキシベンズアミンの海綿体内注射によって誘導されるものよりも非常に短い期間のものであり、このような短い期間では、満足な性交が困難か、または不可能である。
【0010】
パパベリンまたはフェノキシベンズアミンによるインポテンスの治療は、長期間、典型的には数時間、時には24時間より長く、勃起を固定する有痛性持続勃起症をたびたび生じる。有痛性持続勃起症は、これらの薬剤による勃起機能不全の治療の、深刻で有害な副作用である。一部の人に引き起こされるかもしれない当惑を越えて、有痛性持続勃起症は、通常痛く、不可逆的に勃起組織を損傷し、かつ、緩和するためには、瀉血、またはアドレナリンなどの交感神経興奮薬の注射のような薬理学的処置を必要とする。
【0011】
パパベリンの使用により有痛性持続勃起症が起こらない場合でさえ、このような使用は、注射後の最初の2分程度のうちに、痛く、焼けつくような感覚を伴い、パパベリンを繰り返し使用すると、望ましくない広範な海綿体内線維症を引き起こすという指摘がある。さらに、上記のように、重篤なアテローム性動脈硬化から生じるインポテンスは、パパベリン、フェノキシベンズアミン、フェントラミン、またはパパベリンとフェントラミンによる治療に感受性ではない。いずれにせよ、フェノキシベンズアミンは、これが癌原性物質であるために、インポテンスを治療するためには適切でない。
【0012】
クエン酸シルデナフィル(バイアグラ)は、また、インポテンスの薬理学的治療として利用されている。しかし、クエン酸シルデナフィルは、その標的である酵素ホスホジエステラーゼ5(PDE5)に対する特異性を欠如しており、網膜に位置する酵素ホスホジエステラーゼ6(PDE6)に対して明らかな阻害を発揮する。PDE6の阻害は、クエン酸シルデナフィルによる治療の副作用として、色覚欠損を生じることが示されている。さらに、紅潮、頭痛、鼻のうっ血、および消化不良(胸焼け)のような副作用も、インポテンスのクエン酸シルデナフィル治療と関連している。(Moreiraら、Side-effect profile of sildenafil citrate (Viagra) in clinical practice、Urology, 56 (3):474-76 (2000)を参照されたい。)
【0013】
したがって、インポテンスは普遍的な課題であるにもかかわらず、この疾患を治療するために利用できる満足な方法はほとんどない。外科的アプローチは、比較的侵襲的処置が必要であり、勃起補助具の故障率が高いので、魅力のない選択肢を提供するものである。インポテンスの治療に対する安全な薬理学的アプローチは、いまだ達成されていない。
【0014】
B. 心血管疾患
心血管疾患は、米国における第一の死因である。Medical Sciences Bulletin, No. 238; p.1(1997)。心血管疾患は、異なった種々の臨床症状を示すが、高血圧およびうっ血性心不全(CHF)は、この疾病状態の主要な構成要素である。制御不能な高血圧は、心筋梗塞および脳卒中を生じ得る。うっ血性心不全は、治療されない場合には、最終的には死に至る病気であり、初診の5年以内にその患者の半分よりも多くの命を奪う。CHFは、米国で約3,000,000人、そして世界中で約15,000,000人に影響を及ぼす。現在、推定400,000の新規症例が米国において毎年診断され、CHFは、毎年約900,000件の入院の原因となっている。
【0015】
最新の治療アプローチは、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(特にジヒドロピリミジン)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、利尿剤、およびアルファ遮断薬などの抗高血圧化合物を含む。しかし、多くの患者は、これらの化合物に応答しない(または十分に耐容性でない)。
【0016】
例えば、多くの患者は、利尿剤に応答しない(ジギタリスの有無にかかわらず)。さらに、多くの患者では、ACE阻害剤に耐容不可能である(または十分に応答しない)。加えて、ベータ遮断薬の使用は、血糖制御の喪失と関連している。Studies on the Glycemic and Lipidemic Effect of Atenolol and Propranolol in Normal and Diabetic Rats (Abstract) Arzneimittelforschung, 44(4): 496-501(1994年4月)。
【0017】
必要なものは、男性および女性の性的機能不全の治療に有効であるが、有意な副作用がない医薬である。加えて必要なものは、既存の治療様式と比較して、患者に対してより破壊的でなく、かつ、より許容される、心血管疾患(高血圧およびCHFを含むが、限定されない)のための薬理学的処置である。
【発明の開示】
【0018】
発明の要旨
本発明は、特定の治療群における男性および女性の性的機能不全(男性における勃起機能不全を含むが、限定されない)の治療のための方法に関する。加えて、本発明は、心血管疾患の治療のための、組成物および方法に関する。
【0019】
A. 性的機能不全
本発明の方法は、性的機能不全の症状に罹患し、かつ心臓疾患の症状がない患者、ならびに、亜硝酸塩および硝酸塩などの降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがない患者に対する、薬学的な化合物および組成物の利用を含む。組成物は、精製されたフロセキナン(flosequinan)(その誘導体を含む)の鏡像異性体を含む。一つの態様において、前記精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、(+)鏡像異性体である。もう一つの態様において、前記組成物は、実質的にフロセキナンの(-)鏡像異性体を含まない。
【0020】
一つの態様において、本方法は、a)i)性的機能不全の1つまたは複数の症状に罹患している患者(男性または女性いずれにせよ)と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物とを提供する工程、および、b)前記1つまたは複数の症状の少なくとも1つが緩和されるように、患者に対して前記薬学的組成物を投与する工程を含む。種々のこのような症状は、性器への不十分な血流および/またはオルガズムに達することができないことを含むことが想定されるが、限定されない。一つの態様において、本発明は、前記男性または女性の性器への血流が改善されるような条件下で、前記フロセキナンを前記男性または女性に投与することを想定する。
【0021】
本発明の方法は、心臓疾患がない患者に限定されることは意図されない。しかし、一つの態様において、患者は心臓疾患がない。もう一つの態様において、前記患者は心臓疾患がないことはない。一つの態様において、患者は男性である。もう一つの態様において、患者は女性である。一つの態様において、前記投与する工程は、鼻腔内および呼吸吸入からなる群より選択される。
【0022】
本発明の方法は、降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがある、または治療されている患者に限定されることは意図されない。しかし、一つの態様において、本方法は、a)i)性的機能不全の1つまたは複数の症状に罹患している患者であって、降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されていない患者(男性または女性いずれにせよ)と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物とを提供する工程、および、b)前記1つまたは複数の症状の少なくとも1つが緩和されるように、患者に対してフロセキナンを投与する工程を含む。様々なこのような症状は、性器への不十分な血流および/またはオルガズムに達することができないことを含むことが想定されるが、限定されない。一つの態様において、本発明は、前記フロセキナンを前記男性または女性に、前記男性または女性の性器への血流が改善されるような条件下で投与することを想定する。一つの態様において、患者は心臓疾患がない。一つの態様において、患者は男性である。もう一つの態様において、患者は女性である。一つの態様において、前記投与する工程は、鼻腔内および呼吸吸入からなる群より選択される。一つの態様において、前記患者は、降圧効果を引き起こす薬剤による治療を行っているか、または過去に行ったことがある。
【0023】
本発明の方法は、硝酸塩または亜硝酸塩による治療を行っているか、または行ったことがある患者に限定されることは意図されない。しかし、もう一つの態様において、本方法は、a)i)性的機能不全の症状に罹患している患者であって、亜硝酸塩または硝酸塩によって治療されていない患者(男性または女性いずれにせよ)と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物とを提供する工程、および、b)このような症状(またはそのサブセット)が緩和されるように、患者に対してフロセキナンを導入する工程を含む。様々なこのような症状は、性器への不十分な血流および/またはオルガズムに達することができないことを含むことが想定されるが、限定されない。一つの態様において、本発明は、前記フロセキナンを前記男性または女性に、前記男性または女性の性器への血流が改善されるような条件下で投与することを想定する。一つの態様において、患者は心臓疾患がない。一つの態様において、患者は男性である。もう一つの態様において、患者は女性である。一つの態様において、前記投与する工程は、鼻腔内および呼吸吸入からなる群より選択される。一つの態様において、前記患者は、亜硝酸塩または硝酸塩による治療を行ったことがあるか、または行っている。一つの態様において、前記硝酸塩は、グリセリルトリニトラート(glyceryl trinitrate)、イソソルビドジニトラート(isosorbide dinitrate)、イソソルビド-5'-モノニトラート(isosorbide-5'-mononitrate)、およびエリスリチルテトラニトラート(erythrityl tetranitrate)からなる群より選択される。
【0024】
一つの態様において、本方法は、i)勃起機能不全の男性または女性被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩とを提供する工程;および、男性または女性被験者に、勃起(すなわち、陰茎または陰核の)が生じるようにフロセキナンを導入する工程を含む。
【0025】
もう一つの態様において、本方法は、i)勃起機能不全の男性または女性被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物とを提供する工程;および、男性または女性被験者に、勃起(すなわち、陰茎または陰核の)が生じるように薬学的組成物を導入する工程を含む。
【0026】
本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩の導入方法によって限定されることは、意図されない。一つの態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、男性または女性に経口的に導入される。フロセキナンのラセミ混合物の約200ミリグラムまでの経口用量が有効な経口投薬量であると考えられる。また、精製したフロセキナンの鏡像異性体の経口投与は、より低用量でさえも有効であると考えられる(例えば、200mg未満)。一つの態様において、男性または女性は、ヒト成人であり、精製されたフロセキナンの鏡像異性体の経口用量は、1日につき1回用量において、約200ミリグラムまで、より好ましくは約50〜約75ミリグラムの間である。より好ましい態様において、精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、1日につき1回経口用量において、約20〜約50の間、およびより好ましくは、約10〜約20ミリグラムの間で投与される。また、精製されたフロセキナンの鏡像異性体の複数回用量の投与も想定される。
【0027】
その他の態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、皮膚に、経尿道で、標準的な注射により、海綿体内に、鼻腔内に、または呼吸吸入により導入される。その他の態様において、精製されたフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物、またはその薬学的に許容される塩は、皮膚に、経尿道で、標準的な注射により、海綿体内に、鼻腔内に、または呼吸吸入により導入される。
【0028】
本発明は、男性被験者による反応の程度によって限定されない。一つの態様において、誘導される勃起は、膣の貫入のために充分である。
【0029】
同様に、本発明は、薬学的組成物の適用に加えて、性的な刺激の使用も想定する。例えば、一つの態様は、a)i)勃起機能不全を伴う陰茎を有する男性と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体、またはその薬学的に許容される塩と、iii)性的な刺激とを提供する工程、並びにb)勃起が生じるように、前記フロセキナンおよび性的な刺激を男性に導入する工程を含む。
【0030】
もう一つの態様において、本方法は、a)i)勃起機能不全を伴う陰茎を有する男性と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物と、iii)性的な刺激とを提供する工程、並びにb)勃起が生じるように、前記薬学的組成物および性的な刺激を男性に導入する工程を含む。
【0031】
もう一つの態様において、本発明は、薬学的組成物の適用に加えて、性的な刺激の使用も想定する。例えば、一つの態様は、a)i)勃起機能不全を伴う陰核を有する女性と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩と、iii)性的な刺激とを提供する工程、並びにb)勃起が生じるように、前記フロセキナンおよび性的な刺激を女性に導入する工程を含む。
【0032】
もう一つの態様において、本方法は、a)i)勃起機能不全を伴う陰核を有する女性と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物と、iii)性的な刺激とを提供する工程、並びにb)勃起が生じるように、前記薬学的組成物および性的な刺激を女性に導入する工程を含む。
【0033】
同様に、本発明は、性的な刺激の性質によって限定されない。一つの態様において、性的な刺激は、性的に露骨な媒体である。もう一つの態様において、性的な刺激は、振動によるなどの陰茎への処置を含む。もう一つの態様において、性的な刺激は、振動またはデジタル刺激によるなどの陰核への処置を含む。
【0034】
本発明は、製剤の性質によって限定されることは意図されない。一つの態様において、本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその誘導体を、ラクトースを含む混合液に含む製剤を想定する。
【0035】
B. 心血管疾患
本発明は、心血管疾患の治療のための組成物および方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、特にCHFの治療に適する。本発明の方法は、好ましい態様において、亜硝酸塩および硝酸塩を同時に投与されていない被験者に、薬学的組成物を投与することを含む。特に、本発明の組成物は、キノリノン(その誘導体を含む)を含む。キノリノンは、キノロンおよびオキソキノリンとしても知られる。
【0036】
もう一つの態様において、本発明は、ハロゲン化されたキノリノンを想定する(例えば、フルオロキノリノン)。好ましい態様において、キノリノンは、チオキノリノンまたはそのスルフィニルもしくはスルホニル誘導体である。一つの態様において、ハロゲン化されたキノリノンは、フロセキナン[(+-)-7-フルオロ-1-メチル-3-(メチルスルフィニル)-4(1H)-キノリノン];[7-フルオロ-1-メチル-3-(メチルスルフィニル)-4(1H)-キノロン]である。好ましい態様において、フロセキナンの鏡像異性体[(+)または(-)いずれか]を使用する。
【0037】
一つの態様において、本発明は、a)i)少なくとも一つの心血管疾患の症状を示す患者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体標品とを提供する工程、および、b)前記標品を前記患者に投与する工程(例えば、前記症状が緩和されるように)を含む方法を想定する。心血管疾患の様々なこのような症状が想定される。本発明は、心血管疾患の特定の症状の緩和に限定されることは意図されない。好ましい態様において、高血圧の症状が緩和される。
【0038】
高血圧は、長期間にわたって続く動脈における異常な血圧の増加である。これは、動脈から分岐した小血管である細動脈が収縮するときに起こる。細動脈のこの収縮は、血液が流れるのを困難にし、動脈壁に対する圧力を増加する。
【0039】
約110/60〜140/90の血圧示度は、正常範囲にあると考えられる。最初の数(110)は、収縮期圧であり、これは、心臓が収縮して血液を押し出すときの動脈における血圧を測定する。第二の数(60)は、拡張期圧であり、これは、心臓が静止しているときの動脈における血圧を測定する。高血圧は、心臓および動脈の労働負荷を加える。次第に、これが心臓および血管に損傷を引き起こし、動脈硬化、心不全、脳卒中、腎臓の問題、盲目、および脳損傷を生じ得る。本発明の一つの態様において、心血管疾患の症状は、約140/90またはそれ以上の測定血圧を含む。好ましい態様において、前記高血圧(例えば、約140/90またはそれ以上)の診断は、少なくとも2週間の期間にわたって、測定の多くが約140/90またはそれ以上であることによって確認される。本発明は、血圧を測定する手段によって限定されることは意図されない。さらに、高血圧のさらなる症状は、疲労、錯乱、吐き気、嘔吐、不安症、過剰の発汗、筋震え、胸部痛、鼻血、および耳鳴りをも含むが、限定されない。
【0040】
もう一つの態様において、本発明は、CHF(「心不全」とも称される)の症状を緩和するための組成物および方法を想定する。CHFは、心臓の機能不全によって特徴づけられ、その結果、ポンプとして血液の循環を維持することができなくなり、したがって心臓の組織におけるうっ血および水腫が発生し減少する。CHFの症状は、種々の組み合わせにおいて、息切れ、圧痕水腫、肥大および虚弱肝臓、充血頚静脈、および肺のラ音を含むが、これらに限定されない。
【0041】
本発明は、CHFを診断する方法によって限定されることは意図されない。CHFは、既往歴および完全な理学的検査(これは、血圧チェック、聴診器により被験者の心臓を聞くこと、および被験者のパルスをとることを含んでもよい)に基づいて診断されてもよい。理学的検査では、ヘルスケア提供者(医師、看護士実務者、または医師の助手を含むが、限定されない)がCHFの症状(上で一覧を示したもの)を探してもよい。
【0042】
ヘルスケア提供者は、診断をするための十分な症状を見出せないが、なおも被験者がCHFを有する疑いがある場合、そのときは、彼または彼女は、さらなる試験を要求してもよい。これらの試験は、貧血および甲状腺機能を評価するための血液試験、糖を測定するための尿検査、心電図(EKG)、運動ストレス試験、心エコー、ストレス心エコー、放射性核種イメージング試験(例えば放射性核種心室造影)を含むが、限定されない。
さらに、上記と組み合わせて、または上記の代わりに、より侵襲的な診査試験が要求されてもよい。これらの試験は、造影色素をカテーテルによって冠状動脈に送達し、血管を視覚化して心臓の損傷または機能不全を確認する冠動脈造影を含む。
【0043】
本発明は、被験者による反応の程度によって限定されない。キノリノン鏡像異性体の投与は、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、心筋症、高血圧、動脈狭窄、および静脈狭窄を含む(しかし、これらに限定されない)心血管疾患と関連した症状を緩和するであろうことが期待される。好ましい態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、高血圧と関連した症状を緩和するために投与される。
【0044】
もう一つの好ましい態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、CHFの症状を緩和するために投与される。CHFの症状は、種々の組み合わせにおいて、息切れ、圧痕水腫、肥大および虚弱肝臓、うっ血頚静脈、並びに肺のラ音を含むが、限定されない。
【0045】
症状は、症状の大きさ(例えば、強さ)または頻度が緩和される場合に「緩和」される。本発明は、症状が除去される場合のみに限定されることは意図されない。本発明は、特に、症状が完全に除去されなくても緩和される(そして被験者の状態はこれによって「改善される」)ような治療を想定する。さらに、1つまたは複数の症状(例えば、サブセット)が緩和されるならば十分である。
【0046】
好ましい態様において、被験者はヒトであり、かつフロセキナンの(+)または(-)鏡像異性体のいずれかの経口用量は、一日に1回用量で約200ミリグラムまでである。もう一つの態様において、前記用量は、約25〜約75ミリグラムの間である。もう一つの態様において(+)または(-)鏡像異性体は、一日に1回経口用量で約125〜約200ミリグラムの間で投与される。もう一つの態様において、前記フロセキナンの鏡像異性体の投与は、1日に3回用量、食前に、それぞれ1用量につき約200ミリグラムまでの用量を含む。もう一つの態様において、前記一日用量は、1用量につき約25〜約75ミリグラムの間の用量を含む。もう一つの態様において、前記一日用量は、1用量につき約125〜約200ミリグラムの間の用量を含む。
【0047】
選択された態様において、前記フロセキナンの鏡像異性体は、経口的に、皮膚に、標準的な注射により(例えば、静脈内に)、または鼻腔内に導入される。
【0048】
一つの態様において、本方法は、a)i)亜硝酸塩または硝酸塩が投与されていない、心臓疾患の症状に罹患している患者と、ii)フロセキナンの鏡像異性体とを提供する工程、および、b)前記心臓疾患の症状が緩和されるように、前記患者に前記フロセキナンの鏡像異性体を導入する工程を含む。
【0049】
一つの態様において、前記実質的に精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、(+)鏡像異性体である。もう一つの態様において、前記組成物は、実質的にフロセキナンの(-)鏡像異性体を含まない。
【0050】
一つの態様において、本方法は、a)i)心血管疾患の症状に罹患している被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤またはその薬学的に許容される塩とを提供する工程、および、b)症状が緩和されるように、前記製剤を被験者に投与する工程を含む。一つの態様において、前記心血管疾患は、高血圧、狭心症、心筋梗塞、およびうっ血性心不全からなる群より選択される。前記投与工程は、鼻腔内および呼吸吸入からなる経路より選択される。
【0051】
もう一つの態様において、本方法は、a)i)降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されていない、心血管疾患の症状に罹患している被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤またはその薬学的に許容される塩とを提供する工程、および、b)このような症状が緩和されるように、被験者に前記製剤を投与する工程を含む。
【0052】
もう一つの態様において、本方法は、a)i)亜硝酸塩または硝酸塩によって治療されていない、心血管疾患の症状に罹患している被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤またはその薬学的に許容される塩とを提供する工程、および、b)このような症状が緩和されるように、前記製剤を被験者に導入する工程を含む。前記硝酸塩は、グリセリルトリニトラート、イソソルビドジニトラート、イソソルビド-5'-モノニトラート、およびエリスリチルテトラニトラートからなる群より選択される。
【0053】
本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤またはその薬学的に許容される塩の導入方法によって限定されることは意図されない。一つの態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、経口的に導入される。好ましい態様において、ヒト成人は、1日あたり10〜200ミリグラムの1回用量として、経口用量を提供される。その他の態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、皮膚に、標準的な注射により、鼻腔内に、または呼吸吸入を経て導入される。
【0054】
本発明は、被験者による応答の程度によって限定されない。一つの態様において、狭心症由来の疼痛の軽減は充分である。
【0055】
本発明は、製剤の性質によって限定されることは意図されない。一つの態様において、本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体と担体との混合物、すなわち、ラクトースを含む混合物を想定する。
【0056】
一つの態様において、本発明において詳述される鏡像異性体は、前記被験者に経口投与または皮膚投与によって導入される。もう一つの態様において、前記被験者は、ヒト成人であり、かつ前記経口投与は、約200ミリグラムまでのフロセキナンを含む。
【0057】
好ましい態様において、本発明において詳述されるフロセキナンの鏡像異性体は、過去に降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがない被験者に投与される。より好ましい態様において、本発明において詳述されるフロセキナンの鏡像異性体は、亜硝酸塩または硝酸塩によって治療されていない被験者に投与される。一つの態様において、前記硝酸塩は、グリセリルトリニトラート、イソソルビドジニトラート、イソソルビド-5-モノニトラート、およびエリスリチルテトラニトラートからなる群より選択される。
【0058】
また、本発明は、a)i)高血圧およびうっ血性心不全の群から選択される心血管疾患の症状に罹患している被験者と、ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤とを提供する工程、および、b)前記症状が緩和されるような条件下で、前記被験者に前記製剤を投与する工程を含む方法を想定する。好ましい態様において、前記精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、(+)鏡像異性体である。もう一つの好ましい態様において、前記精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、(-)鏡像異性体ある。
【0059】
一つの態様において、鏡像異性体製剤は、前記被験者に経口または皮膚投与によって導入される。一つの態様において、前記被験者はヒト成人であり、かつ前記鏡像異性体製剤の前記経口投与は、約200ミリグラムまでのフロセキナンを含む。
【0060】
また、本発明は、担体を含む精製されたフロセキナンの鏡像異性体製剤を想定する。
【0061】
定義
本明細書において使用されるものとして、「鏡像異性体」の用語は、互いの鏡像を重ね合わせることができない分子の立体異性体をいう。鏡像異性体は、融点および沸点など同一の物性を有し、また同一の分光学的性質も有する。鏡像異性体は、平面偏光を伴うこれらの相互作用に関して、および生物学的活性に関して、互いに異なる。
【0062】
本明細書において用いられるものとして、「立体異性体」の用語は、同じ順序で連結された、それらの原子を有するが、空間におけるそれらの原子配置が異なる化合物をいう。(例えば、シス-2-ブタンおよびトランス-2-ブタン。)
【0063】
本明細書において用いられるものとして、「ジアステレオ異性体」の用語は、互いの鏡像ではない立体異性体をいう。
【0064】
本明細書において用いられるものとして、「キノリノン」の用語は、以下の構造(2-キノロン):
【化1】
Figure 2005503995
並びにキノリノンのその他の形態(例えば、イソキノロン):
【化2】
Figure 2005503995
に説明されるように、キノリノンを含む化学組成物をいう。
【0065】
本明細書において使用されるものとして、「キノリノンの誘導体」の語は、ハロゲン化されたキノリノンを含む(しかし、限定されない)結合された化学基を有するキノリノンを含む化学組成物をいう。
【0066】
本明細書において使用されるものとして、「キノリノンのメチルスルフィニル誘導体」の語は、結合されたメチルスルフィニル基を有するキノリノンを含む化学組成物をいう。例には、フロセキナン(7-フルオロ-1-メチル-3-(メチルスルフィニル)-4(1H)-(キノロン);7-フルオロ-1-メチル-3-(メチルスルフィニル)-4(1H)-キノリノン):
【化3】
Figure 2005503995
および、フロセキナンのスルホン代謝産物:
【化4】
Figure 2005503995
を含む。
【0067】
本明細書において使用されるものとして、「精製された鏡像異性体」および「精製された鏡像異性体製剤」の用語は、製剤(例えば、ラセミ混合物に由来するか、またはデノボ合成される)であって、一方の鏡像異性体が他方よりも高められ、より好ましくは、他方の鏡像異性体が製剤の10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満を表す製剤を示すことを意味する。
【0068】
本明細書において使用されるものとして、「ラセミ混合物」の用語は、1つの化合物の2つの鏡像異性体の混合物をいう。理想的なラセミ混合物は、(+)鏡像異性体の旋光性が(-)鏡像異性体の旋光性を相殺するような、化合物の両方の鏡像異性体が50:50の混合物で存在するものである。
【0069】
本明細書において使用されるものとして、「薬学的に許容される塩」または「その薬学的に許容される塩」の用語は、無機酸および無機塩基、並びに有機酸および有機塩基を含む薬学的に許容される非毒性の酸または塩基から調製される塩をいう。本発明の化合物は、塩基性であるので、塩は、薬学的に許容される非毒性の酸から調製されてもよい。本発明の化合物のための適切な薬学的に許容される酸付加塩は、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート(besylate))、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモイック(pamoic)酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、およびその他同種のものを含む。好ましい酸付加塩は、塩化物および硫酸塩である。
【0070】
本明細書において使用されるものとして、「心臓疾患がない」患者および「心臓疾患の症状がない」患者とは、アンギナ、心筋梗塞、うっ血性心不全と診断されたことがない患者、並びにアンギナ、乏血、心筋梗塞および/またはうっ血性心不全の症状が検出されたことがない患者を表す。
【0071】
本明細書において使用されるものとして、「心血管疾患の症状」とは、心臓および脈管構造と関連した疾患のあらゆる臨床症状をいう。例えば、前記臨床症状は、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、心筋症、高血圧、動脈狭窄、および静脈狭窄を含む。本発明は、特に、症状が完全に除去されなくても緩和される(そして、これにより被験者の症状は「改善される」)ような治療を想定する。
【0072】
本明細書において使用されるものとして、「うっ血性心不全」とは、以下の徴候によって特徴づけられる特定の心血管疾患であるが、限定されない:息切れ、圧痕水腫、肥大および虚弱肝臓、うっ血頚静脈、並びに肺のラ音の様々な組み合わせ。
【0073】
「低級アルキル」、「低級アルコキシ」、「低級アルカノイル」、および「低級アルキルチオ」の用語は、1〜8個の炭素原子、特に低級アルカノイルについては2〜4個の炭素原子、およびその他の基については1〜4個の炭素原子を含む前述の基を示す。このような基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘプチル、n-オクチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、およびn-ブチルチオを含む。
【0074】
本明細書において以下に使用される、「活性な化合物」は、一般式Iのピリジノン化合物(以下の「心血管疾患の治療に有用なその他の化合物」の表題の節に例示して記載したとおり)、または上記例示して記載したとおりの、キノリノンまたはキノリノン誘導体を示す。
【0075】
本明細書において使用されるものとして、「降圧効果を有する薬剤」は、投与されたときに、患者の拡張終期の血圧が減少されるような薬剤である。硝酸塩は、通常使用される降圧効果を有する薬剤である。
【0076】
本明細書において使用されるものとして、「硝酸塩」は、-NO3-部分を含む化合物である。臨床において典型的に使用される硝酸塩を表1に示す。
【0077】
本明細書において使用されるものとして、「亜硝酸塩」は、-NO2-部分を含む化合物である。臨床において典型的に使用される亜硝酸塩を表1に示す。
【0078】
本明細書において使用されるものとして、「勃起機能不全」の用語は、性的に機能的な勃起を達成することができないインポテンスを生じる、陰茎の海綿状組織および関連組織のいくつかの疾患をいう。
【0079】
本明細書において使用されるものとして、「勃起機能不全の症状」は、以下の症状のいずれか2つの症状をいう:陰茎の弛緩性、陰茎の腫脹の欠如、陰茎の強剛性の欠如、および膣の貫入のために充分な勃起を生じることができないこと。症状は、症状の大きさ(例えば、強さ)または頻度が緩和された場合、「緩和」される。本発明は、症状が除去される場合だけに限定されることは意図されない。本発明は、特に、1つまたは複数の症状が、完全に除去されなくとも緩和される(そして、これにより患者の症状は「改善される」)ような治療を想定する。
【0080】
本明細書において使用されるものとして、「性的機能不全の症状」は、性器への不十分な血流および/またはオルガスムを達成できないことを含むが、限定されない。症状は、症状の大きさ(例えば、強さ)または頻度が緩和された場合、「緩和」される。本発明は、症状が除去される場合だけに限定されることは意図されない。本発明は、特に、1つまたは複数の症状が、完全に除去されなくとも緩和される(そして、これにより患者の症状は「改善される」)ような治療を想定する。
【0081】
本明細書において使用されるものとして、「勃起」は、弛緩状態にあることに対して、少なくとも半強固である陰茎の状態をいう。
【0082】
本明細書において使用されるものとして「被験者」は、ヒトおよび動物の両方をいう。
【0083】
本明細書において使用されるものとして、「標準的な注射」は、被験者内に薬学的組成物を置くこと(例えば、皮下注射による)をいう。例えば、このような
【0084】
【表1】
Figure 2005503995
B、バッカル(経粘膜)タブレット;C、持続性カプセルまたはタブレット;D、経皮的ディスク;Inh、吸入薬;IV、静脈内注射;O、軟膏;S、舌スプレー;T、舌下使用のためのタブレット;T(C)、噛めるタブレット;T(O)、経口タブレットまたはカプセル。
注射は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、海綿体内などに行うことができる。
【0085】
本明細書において使用されるものとして、「海綿体内」注射とは、陰茎の海綿体への注射である。
【0086】
本明細書において使用されるものとして、「鼻腔内に」とは、鼻腔の中に薬学的組成物を導入することをいう。
【0087】
本明細書において使用されるものとして、「呼吸吸入」とは、気道の中に薬学的組成物を導入することをいう。
【0088】
本明細書において使用されるものとして、「経口投与による」とは、口腔を経由して(例えば、水性液体または固体形態で)被験者に薬学的組成物を導入することをいう。
【0089】
本明細書において使用されるものとして、「皮膚に」とは、組成物が被験者に吸収されるように、皮膚の表面に適用することにより被験者に薬学的組成物を導入することをいう。
【0090】
本明細書において使用されるものとして、「経尿道で」とは、組成物が被験者に吸収されるように、被験者の尿道に薬学的組成物を導入することをいう。
【0091】
本明細書において使用されるものとして、「鼻腔内に」とは、鼻腔の中に薬学的組成物を導入することをいう。
【0092】
本明細書において使用されるものとして、「呼吸吸入」とは、気道の中に薬学的組成物を導入することをいう。
【0093】
本明細書において使用されるものとして、「膣の貫入に十分な」とは、陰茎が手による処理を伴わずに膣に挿入することができるような勃起の状態をいう。
【0094】
本明細書において使用されるものとして、「性的な刺激」とは、勃起機能不全のない男性に勃起を誘導するであろう活動(例えば、性的に露骨な媒体、手による処理、振動、生のエロチックな娯楽、その他)をいう。
【0095】
本明細書において使用されるものとして、「性的に露骨な媒体」とは、性活動を描いた映画、ビデオ、本、雑誌、その他をいう。
【0096】
本明細書において使用されるものとして、「1回用量」とは、単独の投与または適用でその意図された効果を達成することができる薬学的組成物の処方をいう。
【0097】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の治療群における男性および女性の性的機能不全(男性における勃起機能不全を含むが限定されない)の治療のための方法に関する。これは、下記の節(A)において概説される。また、本発明は、心血管疾患の治療に関する。これは下記の節(B)において概説される。
【0098】
A. 性的機能不全の治療
本発明は、特定の治療群における男性および女性の性的機能不全(男性における勃起機能不全を含むが、限定されない)の治療のための方法に関する。本発明の方法は、心臓疾患の症状がなく、かつ亜硝酸塩および硝酸塩などの降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されたことがない患者に対して、薬学的化合物および組成物を利用することを含む。組成物はフロセキナンの鏡像異性体(その誘導体を含む)を含む。
【0099】
一つの態様において、精製されたフロセキナンの鏡像異性体が投与される。重要なことに、フロセキナン鏡像異性体は、硝酸塩の降圧効果を強化するかもしれず、いずれかの形態で有機硝酸塩を並行して使用している患者に対してそれを投与することは禁忌であろう。フロセキナンの鏡像異性体は、皮膚に、経尿道で、標準的な注射により、海綿体内に、鼻腔内に、または呼吸吸入を経て投与されることが想定されるが、本発明の方法は、フロセキナンの鏡像異性体の投与の方法に限定されることは意図されない。
【0100】
その他の態様において、精製されたフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物が投与される。前記薬学的組成物は、皮膚に、経尿道で、標準的な注射により、海綿体内に、鼻腔内に、または呼吸吸入を経て投与されることが想定されるが、本発明の方法は、前記薬学的組成物の投与の方法に限定されることは意図されない。
【0101】
一つの態様において、本発明は、膣の貫入のために充分な勃起を排除する解剖学的な欠損(すなわち、陰茎またはそのかなりの部分を欠いている)以外のいずれかの原因によるインポテンスに罹患しているヒト男性に勃起を誘導するために有効である組成物の使用を想定する。特に、これらの組成物は、重篤なアテローム性動脈硬化によって引き起こされるインポテンス、さらには神経原性または心因性の原因のインポテンスに罹患している男性において勃起を誘導するために使用されてもよい。本発明の方法において利用される組成物は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体(その誘導体を含む)を含む。
【0102】
本発明は、特定のフロセキナン鏡像異性体を製造する手段に限定されないが、フロセキナンのラセミ混合物を製造する方法は、MacLeanらにより米国特許第5,079,264号および第5,011,931号に記載されており、参照として本明細書に組み入れられる。さらに、フロセキナンの鏡像異性体を分離する方法は、Moritaら、"Synthesis and Absolute Configuration of the Enantiomers of 7-Fluoro-1-methyl-3-(methylsulfinyl)-4 (1H)-quinolinone (Flosequinan)," Chem. Pharm. Bull., 42 (10): 2157-2160 (1994)に記載されており、参照として本明細書に組み入れられる。
【0103】
1. フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体の分離
本発明は、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体の分離を想定する。フロセキナンを含む多くの有機化合物は、光学活性な形態で存在する(すなわち、これらは平面偏光面を回転させる能力を有する)。光学活性化合物について記載する際に、 そのキラル中心について分子の絶対配置を示すために、接頭辞DおよびLまたはRおよびSが使用される。化合物による平面偏光の回旋の徴候を示すために、接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)が使用され、(-)またはlは、化合物が左旋性である(左に回転する)ことを意味する。(+)またはdの接頭辞の化合物は、右旋性である(右に回転する)。「立体異性体」と称されるこれらの化合物は、与えられた化学構造について、互いの鏡映像であることを除いては同一である。特定の立体異性体は、「鏡像異性体」と称されることもある。
【0104】
立体化学的純度は、医薬の分野において重要であり、この場合、最もよく処方される薬剤の20のうちの12は、キラリティを示す。適切な一例は、ベータ-アドレナリン遮断剤のプロプラノロールのL型によって提供され、これは、D-鏡像異性体より100倍よく効くことが知られている。さらに、ある異性体は、実際に単に非活性であるというよりむしろ有害であるかもしれないので、光学純度は重要である。例えば、つわりを制御するために妊娠の間に処方される場合、サリドマイドのD-鏡像異性体は、安全かつ有効な鎮静剤であったことが示唆されているが、対応するL-鏡像異性体は、催奇形物質の可能性があると考えられている。
【0105】
本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体を得るための、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を分離するいずれの特定の手段によっても限定されない。一つの態様において、前記鏡像異性体は、以下のように分離される。フロセキナンのラセミ混合物を1.0ml/分の流速で、Chiracel ODカラム(Chiral Technologies, Exton, PA)の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)にかける。メタノールを含む移動相を利用して、それぞれの鏡像異性体の異なったピークの分離を得る。分離したフロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を、99%を超える光学純度でメタノールを用いて溶出させる。
【0106】
本発明を実行するためにいずれの特定の機構を理解することも必要でないが、一部の状況において、フロセキナンの鏡像異性体が血管拡張薬として直接作用して、海綿体平滑筋細胞を弛緩させることができ、これが、次々と海綿体空間への血流を増やすと考えられている。次いで、これが海綿体圧力を増加して、陰茎の勃起を生じる。
【0107】
体内でのフロセキナンの鏡像異性体の作用は、正確に理解されていない。その体内での活性は、フロセキナン自体、並びにそのスルホン代謝産物にあると考えられる。心不全の治療において、ある程度有用であることが報告されている(Kelsoら、J. Cardiovasc. Pharmacol. 25:376 (1995)を参照されたい)。しかし、その作用は、最終段階の不全の患者にはほとんど効果を有さないようであり(Perreaultら、Br. J. Pharmacol. 106:511 (1992))、死亡率または冠状動脈結合後の不整性に影響を及ぼさない(Jonesら、Br. J. Pharmacol. 108 : 1111 (1993)を参照されたい)。
【0108】
同様に、フロセキナンは、ホスホジエステラーゼIII(PDE3)の選択的阻害剤であることが報告されている(Gristwoodら、 Br. J. Pharmacol., 105: 985 (1992); Frodshamら、Eur. J. Pharmacol. 211: 383 (1992)を参照されたい)。PDE3の阻害剤は、血管拡張を引き起こし、付随して動脈圧の減少を導くことが分かっている(Shiraishiら、"Effect of cilostazol, a phosphodiesterase type III inhibitor, on histamine-induced increase in [Ca2+]i and force in middle cerebral artery of the rabbit," Br. J. Pharmacol., 123: 869-878 (1998)を参照されたい)。さらに、PDE3は、ヒト海綿体組織において存在することも示された(Ellis & Terrett, PCT出願番号WO 94/28902を参照されたい)。しかし、心不全におけるその効果に関し、フロセキナンのホスホジエステラーゼ阻害に関する報告は疑わしいものである。したがって、体内で特定の目的にフロセキナンを適用することは、よく特徴づけられておらず、経験的に決定されなければならない。
【0109】
本発明は、性的機能不全の症状を減らすためのどのような特定の機構にも限定されることは意図されない。一つの態様において、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を生化学アッセイにかけて、これらの各PDE3のパーセント阻害を決定した。一つの態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、同じモル濃度のフロセキナンの(-)鏡像異性体のものと比べて、PDE3阻害に8倍の増加を有することが示された。さらに、同じ態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、同じモル濃度のフロセキナンのラセミ混合物よりもより多くPDE3阻害を示した。
【0110】
2. 男性勃起機能不全の診断
ヒト男性が実質的に神経原性または心因性のみであるインポテンスに罹患しているかどうかの決定は、多くの容易に利用できる診断法を使用して、当業者によって容易になされる。したがって、インポテンスに罹患している男性は、まず、起こりうる陰茎および陰嚢の病態に対して特に注意して理学的検査をうけることができ、これにより、膣の貫入のために充分な勃起を排除しているどのような解剖学的な欠損でも検出することができる。このような解剖学的な欠損が存在しない場合、男性は、試験を受けることができ、これにより、陰茎における静脈漏出または重篤なもしくは処置不能のアテローム性動脈硬化を検出することができる。
【0111】
このような試験は、陰茎上腕血圧比(PBPI)の測定、陰茎の動脈のドップラー調査、およびパパベリン試験を含む。PBPIは、腕の一方で決定される収縮期血圧によって陰茎の収縮期血圧を割ったものである。これらの血圧は、多数の標準的な技術によっても決定することができる。したがって、陰茎の収縮期血圧は、i)弛緩状態の陰茎の自由な部分の基部のまわりに、膨張可能なカフ(cuff)(計器から読み取り可能な種々の圧力を、カフが配置される物体に適用するために使用することができる)を配置することと、ii)陰茎の動脈をドップラー超音波プローブ(例えば、Huntleigh Technology、Luton、United Kingdomから入手可能なMini Doplex D500などの8MHzのプローブ)と共に配置することと、次いで、iii)カフをふくらませたりしぼませたりしてドップラー音が再現される圧力を確認することとによって測定することができる。
【0112】
ドップラー音が再現される圧力は、陰茎の収縮期血圧である。男性の陰茎の血圧は、彼のPBPIが>0.80である場合、正常なものとみなされる。ドップラー調査に関して、2つの陰茎海綿体動脈のそれぞれは、ドップラー超音波問題を使用して、上述したカフの遠位において調査される。2つの動脈のそれぞれの機能は、0、1、2、または3の便宜的スケールを用いてドップラー超音波によって評価され、ここで、0は、その動脈は位置づけることができないほど機能が不十分なことを意味し、3は、動脈が、最大のドップラー音が観察されるほど充分によいことを意味する。
【0113】
パパベリン試験では、止血帯を陰茎の自由な部分の基部に配置して締めつけ、次いで、着席した患者に、1mlの生理的に許容される液(例えば、生理食塩液またはリン酸塩緩衝食塩水)中の30mgのパパベリンを陰茎の海綿体に注射する。このような場合にパパベリンで誘導される有痛性持続勃起症が高発生率であるため、上仙骨(suprasacral)の神経病巣または心因性機能不全のためにインポテンスを有すると疑われる人には、15mgのパパベリンのみを投与する。
【0114】
注射の5分後、止血帯を除去して、陰茎の海綿体動脈の超音波ドップラー調査を上記の通りに実行する。これらの両方が、便宜的スケールにおいて3をスコアする場合、動脈の機能は正常なものとみなされる。ドップラー調査の後、約1.2mmの振幅を有する約4Hz(例えば、Multicept, Gentofte, DenmarkのVibrectorで行われる)で、陰茎の振動を5〜10分間行い、次いで、勃起反応を評価する。
【0115】
立位における陰茎と脚との間の角度が>90°である場合、勃起反応は、完全な硬直として分類され、角度が45°以下の場合、腫脹または反応なしとして分類される。膣の貫入のために充分な勃起を妨げるような解剖学的な欠損を有さず、PBPI>0.80であり、上記の通りに、パパベリンの注射後、陰茎の海綿体動脈の両方のドップラー超音波調査において2または3のスコアを有し、かつ上記の通りに、パパベリン注射および振動の後に完全に硬直した勃起を有する性的に不能な男性は、その原因が「実質的に神経原性または心因性のみである」インポテンスに罹患している。
【0116】
アテローム性動脈硬化または静脈漏出がこのようなインポテンスに貢献する可能性があり、パパベリン注射後の海綿体動脈の一方または両方のドップラー調査においてスコア3未満の場合、アテローム性動脈硬化が貢献する可能性が高いが、このようなインポテンスにおいて、どのような静脈漏出またはアテローム性動脈硬化も治療不能ではなく、その結果、インポテンスの実質的な因子でなく、このようなアテローム性動脈硬化は、あるとしても重篤ではない。
【0117】
ベータ遮断薬のような薬剤の副作用であるインポテンスは、本明細書において神経原性のインポテンスであるとみなされる。同様に、アルコール中毒症またはアルコールの過剰消費の結果のインポテンスは、本明細書の目的においては神経原性または心因性のインポテンスであるとみなされる。したがって、本明細書に従って「実質的に神経原性または心因性のみ」の原因のインポテンスに罹患していると診断された男性は、インポテンスの基本的な原因が、薬剤、アルコール中毒症、またはアルコールの過剰消費の副作用として同定された場合であっても、実質的に神経原性、心因性のみの、または神経原性および心因性の原因であるインポテンスに罹患している。
【0118】
通常、約0.60未満のPBPIを有し、(上記の通りのパパベリン注射後に)両方の陰茎の海綿体動脈のドップラー調査において0のスコアを有し、パパベリン注射および振動後に完全硬直勃起とは言えない男性は、「治療不能」のアテローム性動脈硬化にて引き起こされたインポテンスを有する。いくつかの方法では、インポテンスが静脈漏出のために処置不能であるかどうかを確認することが可能である。
【0119】
処置不能の静脈漏出がインポテンスの原因であるかどうかを確認する1つの方法は、海綿体分析法(cavernosometry)によるものであり、選択的に海綿体造影法(cavernosography)で補われる(例えば、Delcourら、Radiology 161:799 (1986);Porstら、J. Urol. 137:1163 (1987);Lueら、J. Urol. 37:829 (1987)を参照されたい)。海綿体分析法は、60mgのパパベリン(1mlの生理食塩液において)の海綿体内注射の前と後の両方に、海綿体内圧力(これは、プロッタに記録される)の測定のために、一方の海綿体に19ゲージのニードルによって、他方の海綿体に21ゲージのニードルによって、生理食塩水を注入することをもって行うことができる。
【0120】
勃起を誘導して維持するために必要な注入速度を測定する。パパベリンの投与前に、勃起を維持するために必要な注入速度が50ml/分よりも速く、パパベリンの投与後に、15ml/分よりも速い場合、治療不能な静脈漏出が存在する。パパベリンの注射前に約100ml/分未満で、パパベリンの注射後に約50ml/分未満のいくらかの流速において勃起を達成することができる限り、海綿体造影法を使用して漏出と関連する静脈の病巣の位置を決定し、これにより海綿体分析法に基づく診断を確認して、漏出を外科的矯正するための情報を提供することが可能であろう。海綿体造影法において、60mgのパパベリン(1mlの生理食塩溶液中)の海綿体内注射の前と後の両方で陰茎のX線写真を撮り、その一方で、X線の間に勃起を維持する流速で、造影剤を海綿体に注入する(例えば、19ゲージニードルによる)。本手順のために適切な多くの造影剤は、本技術分野において利用可能であり、これらは、典型的には、約180mg/ml〜約360mg/mlの間でヨウ素を提供するヨウ素化された化合物の水溶液である。例は、Winthrop Pharmaceuticals, New York, N. Y., USAによって販売される240mg/mlのヨウ素を提供するイオヘキソールの溶液およびAstra Meditec, Goteborg, Swedenによって販売される300mg/mlのヨウ素を提供するイオパミドールの溶液である。典型的には、50〜100mlの造影剤は、それぞれのX線のために(すなわち、パパベリン注射の前、次いで後に)使用されるであろう。海綿体分析法および海綿体造影法において、振動による刺激作用に連関する30mgのパパベリン(1mlの生理食塩溶液中)は、60mgのパパベリン(1mlの生理食塩溶液中)の代わりに使用することができる。
【0121】
3. 女性勃起機能不全の診断
女性は、性的機能不全を有する。閉経後の女性は、しばしば性交、膣の乾燥、および減少した膣の感覚に対して不快感を訴える。カップルにおける性的機能不全の比較研究では、男性の40%が勃起または射精の機能不全を有したが、女性の63%は、感覚またはオルガスムの機能不全を有したことが明らかとなった。男性の性的機能不全と同様に、女性の性的機能不全の有病率は、年をとるにつれて増加し、血管危険因子の存在および閉経期の展開と関連することが示された。
【0122】
陰核は、陰茎の相同体である。これは、陰核亀頭、陰核体、および陰核脚から構成される円柱形の勃起性器官である。陰核体は、線維鞘である白膜によって包囲され、これは、洞様構造からなる海綿組織をおおい、平滑筋を包囲している。陰核は、腫脹および勃起によって性興奮に応答するが、これは陰茎勃起の間に見られる圧力上昇の程度によっては生じない。しかし、陰核の血流の特徴は、男性のものとほぼ類似する。K. Parkら、Vasculogenic female sexual dysfunction: The hemodynamic basis for vaginal engorgement insufficiency and clitoral erectile insufficiency、Int. J. Impotence Res. 9: 27 (1997)を参照されたい。
【0123】
閉経後の女性および血管危険因子の病歴をもつ女性は、閉経前の女性または血管危険因子のない女性より、非常に多くの自己申告性の女性膣および陰核の機能不全の病訴を有することが示された。このような問題には、アテローム性動脈硬化で誘導される膣の充血不全および陰核の勃起機能不全症候群を含むが、限定されない。
【0124】
ヒト女性が不十分な血流または供給に罹患しているかどうかの測定は、多くの容易に利用できる診断法を使用して、当業者によって容易になされる。ヒトの膣は、膣動脈、子宮動脈の膣の分岐、内陰部動脈、および中直腸動脈の膣の分岐から動脈血供給を受ける。これらの領域における血流は、多くの技術によって容易に評価することができる。第一の工程で、動脈血を得ることができ、コレステロールおよびトリグリセリドの血中濃度を分析することができる。しかし、好ましい方法は、画像化である。
【0125】
比較的非侵襲的な画像化が好ましいが、より侵襲的な技術を使用することもできる。例えば、膣壁血流は、海綿質領域の血液に満ちた空間および血管平滑筋内の、膣の筋層に配置したレーザー・ドップラー流量プローブによって測定することができる。陰核の海綿体内の勃起性組織の血流は、陰核体に配置された同様のレーザー・ドップラー流量プローブによって測定することができる。流量プローブは、ml/分/100gm組織を単位にして、内部標準読み流量に対して較正したレーザー・ドップラー流量計(Transonic Systems, Inc.)に連結される。
【0126】
レーザー・ドップラー・プローブは、レーザ光の投射された光線のドップラーシフトを使用し、光検出器に記録する。静的組織は、波長のドップラーシフトを生じないが、移動している赤血球は、赤血球速度に比例してシフトを生じるであろう。
【0127】
4. 男性および女性勃起機能不全の治療
本発明は、治療製剤の特定の性質によって限定されることは意図されない。一つの態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、生理的に容認される液体、ジェルまたは固体担体、希釈液、アジュバント、および賦形剤と共に提供される。さらに、フロセキナンの鏡像異性体は、その他の化学療法剤と共に使用されてもよい。一方、製剤は、また、結合剤、充填剤、担体、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、および賦形剤などの通常使用される添加物、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、その他同種のものとして含んでいてもよい。これらの組成物は、典型的には1%〜95%、好ましくは2%〜70%の活性成分を含む。
【0128】
本発明は、治療的な化合物を体へ導入する方法によって制限されない。その他の方法の中で、本発明は、皮膚に、経口的に、海綿体内に、経尿道で、標準的な注射(例えば、静脈内または筋注)によって、鼻腔内に、または呼吸吸入で投与することを想定する。
【0129】
フロセキナンの(+)鏡像異性体およびフロセキナンの(+)鏡像異性体を含む薬学的組成物の経口投与は、投与の有効な方法であると考えられる。フロセキナンの(+)鏡像異性体のピーク血漿中濃度は、経口投与後1〜2時間で観察され、一方、ピーク代謝産物血漿レベルは、経口投薬後、約7時間で観察される。一つの態様において、フロセキナンの鏡像異性体は、男性または女性に経口的に導入される。約200ミリグラムまでのフロセキナンのラセミ混合物の経口用量が有効な経口用量であると考えられる。また、精製されたフロセキナンの鏡像異性体の経口投与は、より低用量(例えば、200mg未満)でさえ有効であると考えられる。一つの態様において、本発明は特定の用量レベルに限定されないが、男性または女性はヒト成人であり、かつ精製されたフロセキナンの鏡像異性体の経口用量は、1日につき1回量において約200ミリグラムまで、より好ましくは約50〜約75ミリグラムの間である。より好ましい態様において、精製されたフロセキナンの鏡像異性体は、1日につき1回経口用量において、約20〜約50の間、より好ましくは1日につき約10〜約20ミリグラムの間で投与される。
【0130】
フロセキナンの鏡像異性体は、水溶性であり、また多くの有機溶媒に可溶性である。したがって、本発明は、経口投与の形態によって限定されないが、経口投与のためのフロセキナン鏡像異性体の水溶液および有機性溶液が想定される。同様に、フロセキナン鏡像異性体は、固体経口投与のための(すなわち、ピル形態において)固体医薬担体と結合することもできる。当業者は、容易にこのような固体製剤を調製することが可能であり、一つの態様において、不活性な成分は、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メトセル(methocel)E5、微結晶性セルロース、ポビジン(povidine)、プロピレングリコール、および二酸化チタンを含む。
【0131】
また、フロセキナン鏡像異性体およびフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物は、局所的投与に適合した担体中において皮膚に投与されてもよい。このような担体は、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、エアロゾル、バスオイル、またはフロセキナンと皮膚の穴との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。一般的に、薬学的製剤は、適切な担体中に、活性な化合物(例えば、フロセキナン)をw/wで約0.001%〜約10%、および好ましくは約0.01〜5%を含み得る。場合によっては、医薬製剤中への取込みを容易にするために、フロセキナンの鏡像異性体またはフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物を、エタノールまたはDMSO(ジメチルスルホキシド)、その他同種のものなど適切な溶媒に溶解することが必要であるかもしれない。同様に、本発明は、性的活動と関連したその他の製品に取り込むことも可能である。例えば、米国特許第4,829,991号にて開示されたような(参照として本明細書に組み入れられる)被覆された勃起誘導コンドームを、フロセキナン鏡像異性体またはフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物とともにに利用することができる。
【0132】
本発明は、フロセキナン鏡像異性体およびその薬学的組成物を導入する特定の方法によって限定されないが、フロセキナン鏡像異性体またはその薬学的組成物の注射は、任意の従来の注射手段によって実行することができる(例えば、皮下注射器および針、またはSquibb-Novo, Inc., Princeton, N. J., USAによって販売されるNovolinPen.などの同様の装置を用いて)。この注射は、被験者が彼自身に注射することによって、またはもう一人(例えば、性交の間のパートナーまたは性交前に医師)が、勃起が誘導されるべき男性に注射することによってなされてもよい。一つの態様において、Gerstenbergらに対する米国特許第5,447,912号(参照として本明細書に組み入れられる)に記載されているように、フロセキナン鏡像異性体は、海綿体内に導入される。
【0133】
フロセキナン鏡像異性体およびフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物は、生理的に許容される組成物中において海綿体内に導入することができる。このような組成物は、海綿体内注射によって陰茎に投与することが生理的に許容される水溶液である。生理的に許容される担体は、海綿体内注射の際に、痛みを生じない、または刺激しないようなものが選択される。生理的に許容される組成物は、好ましくは海綿体内注射による投与の時点で無菌である。
【0134】
本方法に使用するための生理的に許容される組成物の中には、生理食塩液またはリン酸緩衝食塩水があり、その中には、フロセキナン鏡像異性体またはフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物が、生じた組成物が海綿体内注射に適切であるように溶解または懸濁される。また、生理的に許容されるこのような組成物は、例えば、0.05%(w/v)〜0./2%(w/v)の塩化ベンザルコニウムなどの非刺激性の防腐剤を含むことができる。当業者が理解するであろうとおり、多くのVIP、PHM、およびα-アドレナリン作用性遮断薬の非毒性塩が存在し、本発明の方法に使用するための生理的に許容される組成物に用いることができ、その他の中には、塩化物、臭化物、酢酸塩、硫酸塩、およびメシレート塩を含む。
【0135】
本方法を実施する際に、勃起の誘導に対して活性な液中の成分が勃起誘導効果を発揮できる前に、注射された液が海綿体から損失することを制限するために、約1分〜約15分(好ましくは5分〜10分)の間、陰茎を、基部近くの、基部と海綿体への注射を行う部位との間で、圧迫することが好ましい。圧迫は、体循環中への注射された液およびその中の薬理学的に活性な物質の放出を遅くするために、止血帯、カフ、輪ゴム等を用いるような当業者に既知の任意の手段によって、または手でさえも行うことができる。
【0136】
同様に、本発明は、フロセキナン鏡像異性体またはフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物を経尿道で導入するための特定の方法によって限定されない。一つの態様において、(+)フロセキナン鏡像異性体またはその薬学的組成物は、皮膚の投与のために記載されたような担体において、尿道に導入される。薬学的組成物の経尿道導入についての装置および方法は、Placeらによる米国特許第5,474,535号;Voss、米国特許第4,801,587号、およびKock、EPA 0357581に記載されており、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる。
【0137】
フロセキナン鏡像異性体またはその薬学的組成物の経尿道導入のさらなる方法は、尿道および膀胱の局所感染および刺激を予防または治療するために使用するものなどの薬用カテーテル(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,640,912号を参照されたい)の使用を含む。あるいは、薬学的組成物の経尿道投与は、米国特許第4,478,822号、第4,610,868号、第4,640,912号、および第4,746,508号(全て参照として本明細書に組み入れられる)において示され、典型的に抗感染剤または殺精子剤を含む、薬用の尿道坐剤、挿入物、またはプラグは、米国特許第1,897,423号、第2,584,166号、第2,696,209号、および第3,373,746号(全て参照として組み入れられる)に開示されている。
【0138】
本発明は、フロセキナン鏡像異性体またはその薬学的組成物を注射する方法に限定されないが、好ましい態様において、フロセキナンまたはフロセキナンを含む薬学的組成物は、標準的な注射器によって注射される。当業者であれば、海綿体内注射のために記載したように、担体とともにフロセキナンまたはフロセキナンを含む薬学的組成物を注射することができるであろう。
【0139】
また、フロセキナン鏡像異性体およびフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物は、鼻腔内に投与されてもよい。鼻腔内投与に適した製剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル、油、およびフロセキナンまたはフロセキナンを含む薬学的組成物と鼻腔との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。鼻腔内投与される薬学的組成物の例は、Craigらにより米国特許第5,393,773号および第5,554,639号に;およびMerkusにより第5,801,161号に記載されており、全て参照として本明細書に組み入れられる。
【0140】
また、フロセキナン鏡像異性体およびフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物は、呼吸吸入で投与されてもよい。呼吸吸入のために適切な製剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル、油、およびフロセキナン鏡像異性体またはフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物と気道との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。呼吸吸入で投与される薬学的組成物の例は、Huらにより米国特許第4,552,891号に;Kreutnerらにより第5,869,479号に、およびChasisらにより第5,864,037号に記載されている。
【0141】
一部の態様において、鼻腔内投与および呼吸吸入は、投与の容易さおよび治療活性の開始期が迅速なことから、好ましい投与方法である。鼻腔内投与および呼吸吸入は、これらが経口経路の投与によって可能と考えられるものよりも、より少ない投与有効用量を可能にするかもしれないので、有利であることが想定される。投与の好ましい方法は、肺への投与を含む。患者への薬理学的薬剤の肺内デリバリーは、エアロゾル適用を経て達成することができる。あるいは、該薬剤は、気管支鏡によって肺に投与されてもよい。もちろん、治療的な薬剤は、非経口投与を含むその他の投与経路を経て、それらの効果について調査されてもよい。
【0142】
一つの態様において、本発明の組成物の投与は、性的な刺激を伴って勃起を誘導する。性的な刺激は、フロセキナンまたはフロセキナンを含む薬学的組成物の導入の前または後に開始することができる。刺激が注射の後に開始される場合、投与された薬学的組成物の薬理効果と性的な刺激の刺激効果との有意な重なりがあることを保証するため、好ましくは5〜10分以内に開始される。刺激が注射の前または後のいずれに開始されようと、刺激は、好ましくは少なくとも膣の貫入のために充分な勃起が達成されるまで続けられる。
【0143】
これらの方法によって規定される性的な刺激は、勃起機能不全に罹患していない正常男性における勃起を誘導するであろう性的な刺激のどのような形態も含む。性的な刺激は、被験者ともう一人の人間との間の性交の際に生じるものでもよく、またはもう一人との性交以外であることもできる。性的な刺激の方法の例は、単独または組み合わせて、生殖器官の性欲を刺激する領域または体の性欲を刺激する他の部分を触れること、または性的に処理すること;性的に露骨な媒体(例えば、ポルノ映画)または性的に刺激的な見せ物もしくは表示のその他の形態により、視覚刺激を提供することを含む。加えて、陰茎に、約1mm〜約5mmの振幅を有する約30Hz〜約100Hzの間の振動刺激を提供する。これは、例えば、Vibrectorシステム(Multicept, Genofte, Denmark)のような振動する器具の台上に陰茎をおくことにより提供することができる。
【0144】
性交以外に、インポテンス男性に勃起を誘導する際、例えば医師が心因性インポテンスに罹患している患者に勃起を誘導するときには、性的な刺激の好ましい方法は、ポルノ映画により視覚刺激を提供すると同時に、約30Hz〜約60Hz(通常約50Hz)の間の振動数で、約1mm〜約2.5mm(通常約2.2mm)の間の振幅にVibrectorシステムをセットすることにより陰茎の振動刺激をすることを含む。
【0145】
上記から、本発明が性的機能不全(例えば、勃起機能不全)を医薬薬剤で治療する方法を提供することは明白なはずである。特に、フロセキナン鏡像異性体またはフロセキナン鏡像異性体を含む薬学的組成物は、このような機能不全を有する患者に治療的に投与される。
【0146】
B. 心血管疾患の治療
本発明は、心血管疾患の治療のための方法に関する。一つの態様において、本発明はCHFおよび高血圧の治療のための組成物および方法を想定する。これらの組成物は、キノリノン(その誘導体および鏡像異性体を含む)を含む。様々なキノリノン誘導体を図2に示す。特定のキノロンカルボン酸骨格の抗菌性誘導体を製造するための方法は、Gilliganらにより米国特許第4,623,650号に提供されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0147】
本発明は、誘導体の性質によって限定されないが、1つの態様において、本発明は、様々なキノリノン誘導体(例えば、5-ブロモキノリン、5-ニトロイソキノリン、8-ニトロイソキノリン、および1-メチルイソキノリン)の使用を包含する。当業者は、このような誘導体を、McMurry, Organic Chemistry, 2nd Ed., Brooks/Cole Publishing, Belmont, CA (1988), 第1044-1045および1076頁にて説明されたように、容易に製造することができる。
【0148】
もう一つの態様において、本発明は、キノリノンのメチルチオおよびメチルスルフィニル誘導体の使用を想定する。好ましい態様において、メチルスルフィニル誘導体は、フロセキナン(ラセミ混合物として、または精製された鏡像異性体としてのいずれにせよ)である。
【0149】
もう一つの態様において、本発明は、亜硝酸塩または硝酸塩によって並行して治療されていない被験者のCHFおよび高血圧の治療のための組成物および方法を想定する。好ましい態様において、本発明は、CHFおよび高血圧を治療する方法として、フロセキナンの鏡像異性体の投与を想定する。もう一つの態様において、フロセキナンの光学活性誘導体および代謝産物も想定される。
【0150】
一つの態様において、フロセキナンの精製された鏡像異性体製剤が投与される。フロセキナンの鏡像異性体は、皮膚に、標準的な注射によって、鼻腔内に、または呼吸吸入を介して投与されることが想定される。本発明の方法は、フロセキナンの鏡像異性体の投与方法に限定されることは意図されない。
【0151】
1. 抗高血圧剤としての効果についての化合物の評価
フロセキナンの鏡像異性体によって発揮される抗高血圧剤効果は、標準的な実験動物における試験によって容易に示される。本発明は、試験プラットフォームとして使用される動物の生物種によって限定されることは意図されない。適切な動物モデルは、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反すう動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、および鳥類を含む生物種を含むが、限定されない。
【0152】
一つの態様において、自発性高血圧のAoki-Okamoto株の雌ラット(重量範囲180〜240 g)を使用することができる。ラットは、4群に分割して、フロセキナンの(+)または(-)鏡像異性体のいずれかを投与する前に一晩断食させる。血圧は、以下のようにして決定されるであろう。ラットを、その尾部がケージの穴を通して突出するように、38℃で維持した拘束ケージに配置する。ケージ内で30分後、尾部の基部のまわりに配置された膨張可能なカフを使用して血圧を測定し、動脈の脈動を気圧式パルストランスデューサによってモニターする。しかし、その他の動物モデルでは、血圧をモニターするための部位としては、脚または指骨である。予期される血圧より大きい圧力をカフに適用し、この圧力をゆっくり減少させる。動脈の脈動が再び現れたときのカフの圧力が、血圧として記録されるだろう。ラットをケージから除き、それぞれの群に、フロセキナンの(+)または(-)鏡像異性体のいずれかの所与の用量を経口的に投与する。投薬前の読みに加えて、投薬後1.5および5.0時間において血圧を測定する。一つの態様において、有効な用量は、以下のように定義されるであろう。
【0153】
フロセキナンの(+)または(-)鏡像異性体のいずれかが、まず最初に与えられた用量レベル(例えば、90mg/kg)で試験されるであろう。化合物が十分に活性である(補正後に約15%と同等か、またはより大きい血圧の減少を与える)と考えられる場合、これはより低い用量レベル(例えば、30mg/kg)で再試験されるであろう。連続してより低い用量レベルで試験することによって、限界抗高血圧剤用量(補正後に5〜15%の間の血圧の減少を与える用量)が決定されるであろう。特定の用量レベルで不活性であり、次に最も高い用量レベルで補正後に15%と同等または大きい血圧の減少を生じる化合物は、2つの用量レベルによってカバーされる範囲内に限界抗高血圧剤用量を有するものとして示される。
【0154】
上述したプロトコールは、様々な高血圧性および正常血圧性の動物モデルに適している。好ましい態様において、正常血圧性のマーモセットが使用されるであろう。
【0155】
2. CHFの治療における効果に対する化合物の評価
a. 外科的調製
成熟した霊長類M. fascicularisに、塩酸ケタミン(15mg/kg im)、およびグリコピロレート(0.01mg/kg im)を前投薬する。挿管後、麻酔を0.5%〜1%のイソフルランで維持する。第4または第5肋骨の除去を含む左の開胸術は、無菌条件の下で行われ、心膜を開け、反転させて心臓をさらす。皮下の血管アクセスポート(VAP; Access Technology)に付いたサイラスティックカテーテルは、下行胸大動脈に、また、心耳を経て右心房に嵌入する。LV圧力を測定するために、固体状態微差圧力計(Konigsberg Instruments)を心室尖に刺創を経て導入し、巾着縫合によって固定する。単極性のペーシングリードをLVの後壁に縫合して、左胸壁を越えて皮下に位置するプログラム可能なペースメーカー(Medtronic, Model Minix 8340)に連結する。内部心電図(ECG)リードを胸壁に縫合する。全てのカテーテルおよび針金は、肩甲骨の下の背側正中へ、皮下にトンネルを掘る。LV圧力トランスデューサおよびECGリードからの針金に取り付けられた経皮性チタン皮膚ボタン(Konigsberg Instruments)を、正中に沿って固定し、一方、カテーテルVAPを皮下の腔に位置させる。胸部は、層状に閉じて、一時的な胸腔チューブを経て胸腔内陰圧を回復する。抗生物質(セファゾリン、30mg/kg)を、手術前および手術後に10日間(30mg/kg bid)、皮下に投与する。ブプレノルフィン(0.01mg/kg sq)を手術直後および必要に応じて手術後の第一週に、鎮痛のために投与する。全てのサルは、手術後の最低2週間で回復できると考えられ、実験的調査の開始の前に直立/リクライニング霊長類拘束椅子に座るように慣らした。
【0156】
b. 血液動態の測定
動脈の血圧は、他方の端がStatham P23 XL圧力トランスデューサに連結された塩類溶液充填ニードル-チップカテーテルを大動脈のVAPに嵌入することによって測定される。静脈内用剤は、右心房のVAPに嵌入された同様のカテーテル伸張セットを経て送達される。左心室圧(LVP)は、Konigsberg微差圧力計を経て測定され、大動脈圧シグナルによって相互に較正され、Gould ECG/Biotach増幅器(Gould Instrument Systems)を使用して、経胸腔的ECGを測定する。全ての生理学的なシグナルは、コンピュータ化されたデジタルデータ取得システム(Po-Ne-Mah, Gould Instrument Systems)を使用して、500Hzでサンプルをとり、一方でデジタルオーディオテープ(Model RD 111T, Teac)に同時に記録され、8チャンネル温熱配列レコーダMT 95000(MT 95000 eight-channel thermal-array recorder, Astro-Med)に示される。心臓速度(HR)、平均動脈血圧(MAP)、左心室の心収縮期および拡張終期の血圧(それぞれ、LVSPおよびLVEDP)、並びにLVP変化におけるピーク陽性率(+dP/dtmax)の測定は、デジタル化された波形のアルゴリズムに基づいた解析を使用して導かれる。
【0157】
c. 心筋機能の測定
LVディメンションは、霊長類で経左胸部アプローチによるLVのM-型式心エコー画像診断(Hewlett Packard Sons 100CF)を使用して、ケタミン鎮静下で記録する。画像は、次の、短軸および壁厚ディメンションからLV分画短化および壁肥厚パーセンテージ(WT)の算出のためにVHSテープに記録する。さらに、駆出分画(EF)は、Teicholz式を、拡張終期および収縮終期で測定されるそれぞれの短軸ディメンション(拡張終期および収縮終期の容積について、それぞれEDV=[7/(2.4+LVDd)](LVDd3)およびESV=[7/(2.4+LVDs)](LVDs 3))にあてはめることによって算出される。ビデオテープに同時にECGを記録することをもって、拡張終期ディメンションは、R-波のピーク時に起こるものであると定義され、一方、収縮終期は、T-波のピークと関連するであろう。次いで、収縮期のWTは、収縮終期および拡張終期のディメンション間の相違として算出され、拡張終期の厚さ[(EST-EDT)/EDT ] x 100からパーセント変化として表わされる。
【0158】
しかし、本発明は、可能性のあるCHF治療として、所与の化合物の効果を評価するために使用される動物モデルの生物種によって限定されることは、意図されない。上記したプロトコールは、様々な高血圧性および正常血圧性の動物モデルに適している。好ましい態様において、正常血圧性のマーモセットが使用されるであろう。
【0159】
本発明の方法に利用される組成物は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体(その誘導体を含む)を含む。本発明は、フロセキナンの鏡像異性体を製造する特定の手段によって限定されないが、フロセキナン(および、キノリノンのメチルスルフィニル/メチルチオ誘導体)のラセミ混合物を製造する方法は、MacLeanらにより米国特許第5,079,264号および第5,011,931号に記載されており、参照として本明細書に組み入れられる。さらに、フロセキナンの鏡像異性体を分離する手段は、Moritaら、Synthesis and Absolute Configuration of the Enantiomers of 7-Fluoro-1-methyl-3-(methylsulfinyl)-4(1H)-quinolinone (Flosequinan)、Chem. Pharm. Bull., 42(10):2157-2160(1994)に記載され、参照として本明細書に組み入れられる。
【0160】
3. フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体の分離
好ましい態様において、本発明は、精製されたフロセキナンの鏡像異性体の投与を想定する。フロセキナンを含む多くの有機化合物が、光学活性形態で存在する(すなわち、これらは平面偏光面を回転させる能力を有する)。光学活性化合物を記載する際に、そのキラル中心について分子の絶対配置を示すために、接頭辞DおよびL、またはRおよびSが使用される。化合物による平面偏光の回旋の徴候を示すために、接頭辞dおよびl、または(+)および(-)を使用し、(-)またはlは、化合物が左旋性(左に回転する)であることを意味する。接頭辞(+)またはdの化合物は、右旋性である(右に回転する)。
【0161】
本発明は、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を分離して実質的に精製されたフロセキナンの鏡像異性体を得るための、どのような特定の手段にも限定されない。一つの態様において、鏡像異性体は、実施例2の方法によって分離された。
【0162】
本発明は、どのような特定の機構にも限定されることは意図されない。しかし、フロセキナンの鏡像異性体は、血管拡張剤として機能することができる。この血管拡張は、脈管系によって提供される全末梢抵抗を減少させることにより、血圧を減少させる。また、フロセキナンは、ホスホジエステラーゼIII(PDE3)の選択的阻害剤であることが報告されている(Gristwoodら、Br. J. Pharmacol., 105: 985 (1992);Frodshamら、Eur. J. Pharmacol. 211: 383 (1992)を参照されたい)。PDE3阻害剤により血管拡張が生じ、付随して動脈血圧の減少を引き起こす。Shiraishiら、 Br. J. Pharmacol., 123: 869-878 (1998)を参照されたい。
【0163】
本発明は、心血管疾患の症状を緩和するためのどのような特定の機構にも限定されることは、意図されない。一つの態様において、それらのそれぞれのPDE3パーセント阻害を決定するために、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を生化学アッセイに供した。一つの態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、同じモル濃度のフロセキナンの(-)鏡像異性体のものと比較して、PDE3阻害の8倍の増加を有することが示された。さらに、同じ態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、同じモル濃度のフロセキナンのラセミ混合物よりも強いPDE3の阻害を示した。これに関するさらなるデータは、実施例3において提供される。
【0164】
さらに、本発明は、心血管疾患のための種々の薬理学的治療と関連した副作用を減らすためのどのような特定の機構にも限定されることは、意図されない。一つの態様において、100μMのフロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体の混合液を、1μMの濃度のクエン酸シルデナフィルのものと比較して、それらのそれぞれのPDE6パーセント阻害を決定するために、生化学アッセイに供した。一つの態様において、フロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体の混合液は、100倍低いモル濃度のクエン酸シルデナフィルのものと比較して、ほぼ半分程度のPDE6阻害を示した。これに関するさらなるデータは、実施例1において提供される。
【0165】
4. 心血管疾患の診断
ヒト成人が心血管疾患に罹患しているかどうかの決定は、多くの容易に利用できる診断法を使用して、当業者によって容易になされる。したがって、心血管疾患に罹患したヒト成人は、特に可能性のある血圧または心臓の律動の病態に注意して、最初に理学的検査を受け、これにより多くの解剖電気生理学的な心血管の異常状態を検出することができる。
【0166】
高血圧を決定するための試験は、静脈血返還システム充足性(venous blood return system sufficiency)のドップラー調査によって行われてもよい。血圧は、多くの標準的な技術によって決定することができる。
【0167】
心筋梗塞を決定するための試験は、血液酵素の異常を検出すること含む。心筋梗塞の後、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)サブタイプを放出する損傷を受けた心臓細胞は、健康な人では通常観察されない循環比を生じる。
【0168】
狭心症を決定するための試験は、心筋梗塞と同様に、正常LDHサブタイプ比の検出のみを伴う検定手順を含む。
【0169】
うっ血性心不全を決定するための試験は、血圧、心拍出量、および1回心拍出量測定の比較を含む。うっ血性心不全は、消耗性で進行性の症状であり、即時の措置がされない場合は、致死的である。
【0170】
5. 心血管疾患の治療
本発明は、調製の特定の性質によって限定されることは、意図されない。一つの態様において、フロセキナンの(+)鏡像異性体は、生理的に寛容される液体、ジェルまたは固体担体、希釈液、アジュバントおよび賦形剤と共に提供される。さらに、フロセキナンの鏡像異性体は、その他の化学療法剤と共に使用されてもよい。一方、製剤はまた、結合剤、充填剤、担体、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、および賦形剤として、このような通常使用される添加物、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、その他同種のものを含んでもよい。これらの組成物は、典型的には、活性成分1%〜95%、好ましくは2%〜70%を含む。
【0171】
本発明は、化合物の体内への導入の方法によって、限定されない。その他の方法の中で、本発明は、皮膚に、経口的に、または標準的な注射(例えば、静脈内)により、投与することを想定する。
【0172】
また、本発明は、フロセキナンの鏡像異性体を、被験者に、鼻腔内にまたは呼吸吸入で投与することを想定する。鼻腔内投与に適した製剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル、油、およびフロセキナンの鏡像異性体またはフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物と鼻腔との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。鼻腔内に投与される薬学的組成物の例は、Craigらにより米国特許第5,393,773号および第5,554,639号に;およびMerkusにより第5,801,161号に記載されており、全て参照として本明細書に組み入れられる。呼吸吸入のために適切な製剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル、油、およびフロセキナンの鏡像異性体またはフロセキナンの鏡像異性体を含む薬学的組成物と気道との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。呼吸吸入で投与される薬学的組成物の例は、Huらにより米国特許第4,552,891号に;Kreutnerらにより第5,869,479号に、およびChasisらにより第5,864,037号に記載されており、全て参照として本明細書に組み入れられる。
【0173】
一部の態様において、鼻腔内投与および呼吸吸入は、投与の容易さおよび治療活性の開始期が迅速なことから、好ましい投与方法である。鼻腔内投与および呼吸吸入は、これらが経口経路の投与によって可能であると考えられるものよりも、より少ない投与有効用量を可能にするかもしれないので、有利であることが想定される。投与の好ましい方法は、肺への投与を含む。被験者への薬理学的薬剤の肺内デリバリーは、エアロゾル適用を経て達成することができる。あるいは、該薬剤は、気管支鏡によって肺に投与されてもよい。もちろん、治療的な薬剤は、非経口投与を含むその他の投与経路を経て、それらの効果について調査されてもよい。
【0174】
フロセキナンの鏡像異性体の経口投与は、投与の有効な方法であり、50ミリグラムの1回用量後に72%の平均絶対生体有用性を有する。フロセキナンの鏡像異性体のピーク血漿中濃度は、経口投与1〜2時間後に観察され、一方、代謝産物血漿レベルのピークは、経口投与の約7時間後に観察される。本発明は、特定の用量レベルに限定されないが、一つの好ましい態様において、ヒト成人については、用量は1日あたり10ミリグラムの1回用量であるが、もう一つの好ましい態様において、用量は1日あたり25ミリグラムの1回用量であり、もう一つの好ましい態様において、用量は1日あたり50ミリグラムの1回用量であり、さらにもう一つの好ましい態様において、さらに、用量は1日あたり75ミリグラムの1回用量である。もう一つの好ましい態様において、用量は1日あたり約125ミリグラムの1回用量であり、もう一つの好ましい態様において、用量は1日あたり約150ミリグラムの1回用量である。もう一つの好ましい態様において、用量は1日あたり約200ミリグラムの1回用量である。また、複数回用量も想定される。
【0175】
フロセキナンとその鏡像異性体は、水溶性であり、また多くの有機溶媒に可溶性である。したがって、本発明は、経口投与の形態によって限定されないが、経口投与のためのフロセキナンの鏡像異性体の水溶液および有機性溶液が想定される。同様に、フロセキナンの鏡像異性体は、固体経口投与のための(すなわち、ピル形態において)固体薬学的担体と結合することもできる。当業者は、容易にこのような固体製剤を調製することが可能であり、一つの態様において、不活性な成分は、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メトセルE5、微結晶性セルロース、ポビジン、プロピレングリコール、および二酸化チタンを含む。
【0176】
また、フロセキナンの鏡像異性体は、局所的投与に適合させた担体中において皮膚に投与されてもよい。このような担体は、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、エアロゾル、バスオイル、またはフロセキナンの鏡像異性体と皮膚の穴との間の直接的接触を達成するその他の薬学的担体を含む。一般的に、薬学的製剤は、適切な担体中に、活性な化合物(例えば、フロセキナンの鏡像異性体)をw/wで約0.001%〜約10%、および好ましくは約0.01〜5%を含んでいてもよい。場合によっては、薬学的製剤中への取込みを容易にするために、エタノールまたはDMSO(ジメチルスルホキシド)、その他同種のものなど適切な溶媒に活性な化合物を溶解することが必要であるかもしれない。
【0177】
本発明は、フロセキナンの鏡像異性体を注射により導入する特定の方法によって限定されないが、フロセキナン鏡像異性体(またはフロセキナンの鏡像異性体を含む製剤)の注射は、どのような従来の注射手段によってでも実行することができる(例えば、皮下注射器および針、またはSquibb-Novo, Inc., Princeton, N. J., USAによって販売されるNovolinPen.などの同様の装置を用いて)。この注射は、被験者が彼または彼女自身を注射することによって、または他のもう一人が被験者を注射することによってなされてもよい。
【0178】
フロセキナンおよびその鏡像異性体は、生理的に許容される組成物中の注射によって導入することができる。このような組成物は、注射による投与のために生理的に許容される水溶液である。生理的に許容される担体は、注射する際に痛みを生じない、または刺激がないように選択される。生理的に許容される組成物は、好ましくは注射による投与の時点で無菌である。
【0179】
本方法に使用するための生理的に許容される組成物の中には、生理食塩液またはリン酸緩衝食塩水があり、その中には、フロセキナンの鏡像異性体が、生じた組成物が注射に適切であるように溶解または懸濁される。また、生理的に許容されるこのような組成物は、例えば、0.05%(w/v)〜0./2%(w/v)の塩化ベンザルコニウムなどの非刺激性の防腐剤を含むことができる。当業者が理解するであろうように、多数のVIP、PHM、およびα-アドレナリン作用性遮断薬の非毒性塩が存在し、本発明の方法に使用するための生理的に許容される組成物に用いることができ、その他の中には、塩化物、臭化物、酢酸塩、硫酸塩、およびメシレート塩を含む。
【0180】
本発明は、フロセキナンの鏡像異性体を注射する方法に限定されないが、好ましい態様において、これは、標準的な注射器によって注射される。当業者であれば、上記の通りに担体と共にフロセキナンの鏡像異性体を注射することができるであろう。
【0181】
上記観点において、本発明は、フロセキナンの鏡像異性体(または、フロセキナンの鏡像異性体を含む製剤)によるヒト心血管疾患を治療するための方法を提供する。
【0182】
6. 心血管疾患の治療に有用なその他の化合物
本発明は、さらに、治療的な活性を有するピリジノン化合物、およびこのような化合物を含む組成物に関し、ここで、化合物は、一般式Iを有する:
【化5】
Figure 2005503995
R1は、水素、選択的にヒドロキシもしくはC1-4のアルコキシカルボニルによって置換された低級アルキル、アリル、プロピニル、または選択的にそのフェニル環が1つもしくは2つのC1-4アルコキシ基によって置換されたフェニル低級アルキルであり;R2は、水素または低級アルキルであり;R3は、(X)m-S(O)nR4、COR5、SR6、またはS(OH)(O)NR7であり、mは、0または1であり、nは0、1、または2であり、Xは、酸素または低級アルキレンであり、R4はC1-4のアルキルであり、R5は、ヒドロキシル、低級アルキルカルボニル、アミノ、または低級アルキルアミノであり、並びにR6およびR7は、低級アルキルであり;かつ環Aは、式:
【化6】
Figure 2005503995
の選択的に置換されたフェニル環を表し、
式中、R8、R9、およびR10は、同じか、または異なっていてもよく、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、ハロ、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、ハロゲン化された低級アルキル、ハロゲン化された低級アルコキシ、シアノ、フェニル、または、低級アルキル、低級アルコキシ、およびトリフルオロメチルから独立して選択される1〜3の基によって置換されたフェニルであり;または、環Aは、式:
【化7】
Figure 2005503995
の選択的に置換されたチオフェン環を表し:
式中、R11は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、ハロ、トリフルオロメチル、低級アルキルチオ、フェニル、もしくはハロゲンによって置換されたフェニル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0183】
一般式Iの化合物は、温血動物において抗高血圧活性および強心剤活性を有することが見出されている。化合物、化合物を製造する方法、化合物の抗高血圧および心臓治療的な組成物、ならびに化合物を使用した高血圧および心不全を治療するための方法は、米国特許第4,302,460号、米国特許第4,522,884号、米国特許第4,855,291号、米国特許第4,877,793号、米国特許第4,710,506号、米国特許第4,772,614号、および米国特許第4,997,840号に記載されており、これらの特許の全ての開示は、その全体が参照として本明細書に明白に組み入れられる。
【0184】
好ましい態様において、本発明は、一般式Iの化合物を含む薬学的組成物、および心血管疾患の症状を有する被験者を、前記症状が緩和されるように治療するために、該組成物を使用する方法を提供する。フロセキナンの鏡像異性体については上記の通り、本発明は、薬学的組成物の特定の性質によって、または体内に活性なもしくは治療的な化合物を導入する方法によって、限定されない。また、上記想定される治療方法および組成物の全ては、ここで式Iの化合物についても想定される。組成物中の活性成分は、好ましくは単位用量形態で投与される。一つの態様において、タブレットおよびカプセルは、都合よく1〜500mg/kg、より好ましくは5〜100mg/kg、およびより好ましくは5〜50mg/kgの活性化合物の単位用量を含んでいてもよい。
【0185】
式Iの化合物は、1つまたは複数の非対称中心を含んでいてもよく、したがって鏡像異性体またはジアステレオ異性体として存在することができる。さらに、アルケニル基を含む式Iのある化合物は、シス異性体またはトランス異性体として存在してもよい。それぞれの場合において、本発明は、混合物および別々の個々の異性体の両者を含む。また、式Iの化合物は、互変異性型で存在してもよく、本発明は、混合物および別々の個々の互変異性体の両者を含む。
【0186】
本発明の薬学的組成物および方法に用いられる一般式Iの好ましい化合物は、一般式IIおよびIIIを有する化合物である:
【化8】
Figure 2005503995
【化9】
Figure 2005503995
式中、R1、R3、R8、R9、R10、およびR11は、上記のとおりに定義される。
【0187】
式IIの化合物に関して、より好ましい化合物は、式IIAを有する:
【化10】
Figure 2005503995
式中、R3は、(X)m-S(O)nR4、COR5、SR6、またはS(OH)(O)NR7であり;および、
(a)R10は、水素であり、かつR9は6-低級アルコキシ、8-低級アルコキシ、5-ハロ、または6-ハロであり;
(b)R9は、水素であり、かつR10は、ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、トリフルオロメチル、または低級アルキルチオであり;
(c)R10は、ハロ、低級アルコキシ、または低級アルキルであり、かつR9は、6-低級アルキル、6-低級アルコキシ、またはR10由来の種々の値の6-ハロであり;または、
(d)R9およびR10は、水素である。
【0188】
好ましい態様は、式IIAの化合物を含み、式中R1およびR2は、メチルであり、R9は、水素であり、かつR10は、ハロ、低級アルキル、またはトリフルオロメチルである。より好ましくは、R10は、ハロまたはC1〜C4アルキルである。もう一つの好ましい態様において、R9は、6-低級アルコキシであり、かつR10は、ハロまたは低級アルコキシである。さらに好ましい態様において、R9は、6-ハロであり、かつR10は、低級アルコキシである。もう一つの好ましい態様において、R10は、C1〜C4アルキルである。
【0189】
したがって、好ましい態様は、以下のとおりの式IIB、IIC、IID、IIE、IIF、IIIA、およびIIIBの化合物を含む:
【化11】
Figure 2005503995
【化12】
Figure 2005503995
【化13】
Figure 2005503995
【化14】
Figure 2005503995
【化15】
Figure 2005503995
【化16】
Figure 2005503995
【化17】
Figure 2005503995
式IIBの好ましい化合物は、mが1であり、nが2であり、かつXが酸素であるものである。式IICの好ましい化合物は、mが0であり、nが1または2であり、かつR4がメチルであるものを含む。式IIDの好ましい化合物は、R5がアミノまたは低級アルキルアミノであるものを含む。式IIEの好ましい化合物は、R6がメチルであるものを含む。式IIFの好ましい化合物は、R7がメチルであるものを含む。式IIIAの好ましい化合物は、nが1であり、かつR4がメチルであるものを含む。式IIIBの好ましい化合物は、R5がアミノまたは低級アルキルアミノであるものを含む。
【0190】
これらの式の特に好ましい化合物は、以下のものを含む:
1-メチル-3-メチルスルフィニル-4-キノロン、7-フルオロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノロン-3-カルボキサミド、4-メチル-7-オキソ-4,7-ジヒドロチエノ[3,2-b]ピリジン-6-カルボキサミド、4-メチル-6-メチルスルフィニル-7(4H)-チエノ[3,2-b]ピリジノン、7-クロロ-1-メチル-3-メチルスルファモイル-4-キノロン、1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノール-3-イルメタンスルホナート、7-クロロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド、7-フルオロ-1-メチル-3-メチルスルホニル-4-キノロン、もしくは7-フルオロ-1-メチル-3-メチルチオ-4-キノロン、またはその薬学的に許容される塩。
【0191】
実験
以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様および側面を例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されない。
【0192】
以下の実験の開示において、以下の略記号を適用する:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(正常);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏度)。
【0193】
実施例1
本実施例において、種々のモル濃度のクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)によるホスホジエステラーゼ6(PDE6)阻害のパーセンテージを、100μMの濃度のフロセキナンのラセミ混合物と比較して試験するために、次のように生化学アッセイを行った。
【0194】
ウシの網膜桿体から部分的に精製し、トリプシンによって活性化したPDE6を使用した。4つの別々の反応において、0.3μM、1.0μM、および3.0μMモル濃度のバイアグラ、並びに100μMのフロセキナンのラセミ混合物を、0.2μg/mlの活性PDE6と0.1μM [3H]cGMPを含む100μMのcGMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。各反応は、2分間100℃に温度を上げることにより停止させた。生じたGMPは、10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、30℃で10分間さらにインキュベートすることにより、グアノシンに転換した。加水分解されなかったcGMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]グアノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0195】
アッセイの結果は、下記の表に記したように、バイアグラは、0.3μM程度の低い濃度で、50%程度のPDE6を抑制するにもかかわらず、このようなレベルのPDE6の阻害には、100μM量よりも多くのフロセキナン(すなわち、モルに基づいて300倍よりも多くの化合物)を必要とすることを示す。これらの実験結果は、予測することができなかった。
【0196】
【表2】
Figure 2005503995
【0197】
実施例2
本実施例では、フロセキナンの鏡像異性体は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により、次のように分離した。5.0gのフロセキナンのラセミ混合物試料を、25℃において1.0ml/分の流速でカラム圧力が37バールであるように、10cm ID×50cm L CHIRALCEL OD HPLCカラム(Chiral Technologies, Exton, PA)を通して分離した。使用した移動相は、100%のメタノールであり、混合液の検出は、270nmで行った。(-)鏡像異性体は、3.13分の保持時間を有し、一方(+)鏡像異性体は、4.40分の保持時間を有した。合計2.1gの99%を超える光学純度を有する(-)鏡像異性体が生成された。合計2.3gの99%を超える光学純度を有する(+)鏡像異性体が生成された(図1を参照されたい。)
【0198】
実施例3
本実施例において、様々なホスホジエステラーゼ(PDE1-PDE6)のそれらのそれぞれのパーセント阻害を決定するために、フロセキナンのラセミ混合物、並びにフロセキナンの(+)および(-)鏡像異性体を生化学酵素アッセイに供した。それぞれのPDEアッセイのための反応条件は、以下の通りであった。
【0199】
PDE1:ウシの心臓から部分的に精製したPDE1を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、13μg PDE1酵素、1.0μM [3H]cAMP、およびCaCl2/カルモジュリンのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたAMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、アデノシンに転換した。加水分解されなかったcAMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0200】
PDE2:ヒト血小板から部分的に精製したPDE2を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、23μg PDE2酵素および0.05μM [3H]cAMPを含む25μM cAMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたAMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、アデノシンに転換した。加水分解されなかったcAMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0201】
PDE3:ヒト血小板から部分的に精製したPDE3を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、13μg PDE3酵素および0.01μM [3H]cAMPを含む1μMのcAMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたAMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、アデノシンに転換した。加水分解されなかったcAMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0202】
PDE4:ヒトU-937プロノサイティック(pronocytic)細胞から部分的に精製したPDE4を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、20μg PDE4酵素および0.01μM [3H]cAMPを含む1μM cAMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたAMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、アデノシンに転換した。加水分解されなかったcAMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0203】
PDE5:ヒト血小板から部分的に精製したPDE5を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、120μg PDE5酵素および0.01μM [3H]cGMPを含む1μM cGMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたGMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、グアノシンに転換した。加水分解されなかったcGMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]グアノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0204】
PDE6:ウシの網膜桿体から部分的に精製し、トリプシンによって活性化したPDE6を使用した。フロセキナンのラセミ混合物およびフロセキナンのそれぞれの鏡像異性体は、全て100μMのモル濃度であり、独立して、0.2μg/mlの活性なPDE6および0.1μM [3H] cGMPを含む100μM cGMPのトリス緩衝液pH 7.5溶液と、30℃において20分間インキュベートした。各反応は、2分間煮沸することによって停止させ、生じたGMPを10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに30℃において10分間インキュベーションすることにより、グアノシンに転換した。加水分解されなかったcGMPをAGI-X2樹脂に結合させて、水相に残ったままである[3H]グアノシンをシンチレーション計数によって定量した。
【0205】
上記のPDEアッセイの結果は、以下の表に示す。結果は、フロセキナンの(-)鏡像異性体と比較した場合、フロセキナンの(+)鏡像異性体が、よりPDE1およびPDE3阻害活性を示したことを示す。これらの実験結果は、予測することができなかった。
【0206】
【表3】
Figure 2005503995
【0207】
実施例4
本実施例は、どのように一般式(I)のいくつかの好ましい化合物を調製することができるかを記載する。
a. 7-フルオロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノロン-3-カルボキサミドは、米国特許第4,855,291号の実施例1において説明されたように調製することができる。
【0208】
(i)7-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン-3-カルボン酸エチル(4.7g)、無水炭酸カリウム(3.0g)、硫酸ジメチル(2.52g)、およびブタノン(200ml)の混合液は、還流下で14時間沸騰させ得る。溶媒を蒸発することもでき、残さをジクロロメタン(150ml)を用いて粉末にし得る。混合液を濾過して、ろ液を蒸発させて体積を小さくし得る。ジエチルエーテルを添加して、固体を沈殿させ得る。固体を回収して、エーテルで洗浄し、乾燥して工業用メチル化アルコールから再結晶し、化合物7-フルオロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸エチル、m.p.164℃〜166℃を得ることができる。
【0209】
(ii)19.0gの上記カルボン酸エステル、アンモニア水(比重0.88、750ml)、およびカプロイル(caproyl)アルコール(2滴)の混合液を蒸気浴において1.5時間撹拌し、次いで室温に冷却し得る。固体産物を濾過によって回収して工業用メチル化アルコール/水3:2から再結晶し、化合物7-フルオロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン3-カルボキサミド、m.p.317℃〜318℃を得ることができる。
【0210】
b. 4-メチル-7-オキソ-4,7-ジヒドロチエノ[3,2-b]ピリジン-6-カルボキサミドは、米国特許第4,877,793号の実施例1にて説明されたように調製することができる。
【0211】
(i)硫酸ジメチル(3.9ml)は、7-ヒドロキシチエノ[3,2-b]-ピリジン-6-カルボン酸エチル(4.63g)および水酸化カリウム(3.5g)水溶液(50ml)の撹拌された溶液に、0〜5℃で添加し得る。さらに水(20ml)を添加し得、混合液を外界温度で24時間撹拌し得る。固体産物を濾過によって回収し、水で洗浄して乾燥し、化合物4-メチル-7-オキソ-4,7-ジヒドロチエノ[3,2-b]ピリジン-6-カルボン酸エチル、m.p.122℃〜128℃を得ることができる。
【0212】
(ii)上記(i)からの生成物3.0gとアンモニア水(比重0.880、60ml)との混合液を撹拌して蒸気浴において加熱し得る。泡が生じ、オーシャン(ocean)-1-オル(2ml)およびさらにアンモニア水(比重0.880、20ml)を添加し得、蒸気浴で加温を一晩続け得る。次いで、混合液を外界温度に冷却して、濾過により固体産物を回収し、乾燥して工業用メチル化アルコールから結晶化して、化合物4-メチル-7-オキソ-4,7-ジヒドロチエノ[3,2-b]ピリジン-6-カルボキサミド、m.p.255℃〜258℃を得ることができる。
【0213】
c. 4-メチル-6-メチルスルフィニル-7(4H)-チエノ[3,2-b]ピリジノンは、米国特許第4,710,506号の実施例2にて説明されたように調製することができる。
【0214】
3-クロロ過安息香酸(85%;1.63g)のジクロロメタン溶液(60ml)は、撹拌された4-メチル-6-メチルチオチエノ[3,2-b]ピリド-7(4H)-オン(2.0g)のジクロロメタン(60ml)溶液に、0〜5℃において20分間で滴下して添加し得る。4時間後、さらに3-クロロ過安息香酸(0.15g)のジクロロメタン(10ml)溶液を外界温度で添加して、混合液を一晩撹拌し得る。さらに3-クロロ過安息香酸(0.15g)のジクロロメタン(10ml)溶液を添加し得、混合液を再び外界温度において一晩撹拌し得る。生じた溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5×150ml)および飽和塩化ナトリウム水溶液(1×150ml)によって抽出し得、有機相を捨て得る。水性抽出物を合わせてジクロロメタン(5×100ml)で抽出する。有機抽出物を合わせて、無水硫酸マグネシウムを通じて乾燥させて蒸発し、固体生成物を得る。この生成物を工業用メチル化アルコールから結晶化して化合物4-メチル-6-メチルスルフィニルチエノ[3,2-b]ピリド-7(4H)-オン、m.p.174℃〜176℃を得る。
【0215】
d. 7-クロロ-1-メチル-3-メチルスルファモイル-4-キノロンは、米国特許第4,772,614号の実施例4にて説明されたように調製することができる。
【0216】
(i)7-クロロ-1-メチル-4-キノロン(6.9g)およびクロロスルホン酸(14ml)を撹拌して、140℃において2時間加熱し得る。反応混合液を室温に冷却して、氷水(200ml)に慎重に滴下して添加し得る。形成された固体を回収し、水で洗浄して風乾し、化合物塩化7-クロロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-スルホニル、m.p.>300℃を得ることができる。
【0217】
(ii)6.5gの上記塩化スルホニルおよび水性メチルアミン(30%w/v;220ml)を室温で3時間撹拌し得る。生じた固体を回収し、水で洗浄して、ジクロロメタン/工業用メチル化アルコール1:1から結晶化し得る。生成物を回収して、水(200ml)とジクロロメタン(200ml)との間に分離し得る。有機相を分離して、無水硫酸ナトリウムを通じて乾燥して乾燥状態になるまで蒸発させ得る。残さを工業用メチル化アルコールから結晶化して、化合物7-クロロ-1,N-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-スルホンアミド、m.p.220℃〜223℃を得ることができる。
【0218】
e. 7-クロロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドは、米国特許第4,855,291号の実施例4にて説明されたように調製することができる。
【0219】
7-クロロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸エチル(5.0g)とアンモニア水(比重0.88、100ml)との混合液を、撹拌して蒸気浴において3.5時間加熱させ得る。さらなるアンモニア水(100ml)を添加して、さらに21時間加温を続け得る。混合液は、氷中で冷却し得る。固体生成物を濾過によって回収して乾燥し、化合物7-クロロ-1-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド、m.p.>240℃を得ることができる。
【0220】
上記から、本発明は、薬学的薬剤により心血管疾患の症状の治療方法を提供することが明白なはずである。特に、キノリノン鏡像異性体は、このような症状を有する被験者に治療的に投与される。
【0221】
上記の明細書において言及した全ての刊行物および特許は、参照として本明細書に組み入れられる。記載された本発明の方法およびシステムの種々の改変並びにバリエーションが、本発明の範囲および意図の内であることは、当業者に明らかであろう。本発明は、特定の好ましい態様と関連して記載されているが、請求の範囲に記載された本発明は、このような特定の態様に不当に限定されるべきではないことが理解されるはずである。実際に、当業者にとって明らかである発明を実施するために記載された手段の種々の改変は、請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】それぞれのHPLCカラムの保持時間および実施例2において提供される方法によって分離したフロセキナンの鏡像異性体の旋光度を表す。
【図2】キノリノン(最上段)および16C-7置換基(下段)の化学構造を表す。

Claims (21)

  1. 以下を含む方法:
    a)以下を提供する工程:
    i)1つまたは複数の性的機能不全の症状に罹患している患者、および
    ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物、ならびに
    b)該1つまたは複数の症状の少なくとも1つが緩和されるように、該薬学的組成物を該患者に投与する工程。
  2. 精製されたフロセキナンの鏡像異性体が(+)鏡像異性体である、請求項1記載の方法。
  3. 組成物が実質的にフロセキナンの(-)鏡像異性体を含まない、請求項1記載の方法。
  4. 患者が男性である、請求項1記載の方法。
  5. 患者が女性である、請求項1記載の方法。
  6. 患者は、心臓疾患がない、請求項1記載の方法。
  7. 投与する工程が鼻腔内投与および呼吸吸入からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  8. 以下の工程を含む方法:
    a)以下を提供する工程:
    i)降圧効果を引き起こす薬剤によって治療されていない性的機能不全の症状に罹患している患者、および
    ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物、ならびに
    b)該症状が緩和されるように、該薬学的組成物を該患者に投与する工程。
  9. 投与する工程が鼻腔内投与および呼吸吸入からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
  10. 患者が降圧効果を引き起こす薬剤によって過去に治療されたことがない、請求項8記載の方法。
  11. 精製されたフロセキナンの鏡像異性体が(+)鏡像異性体である、請求項8記載の方法。
  12. 組成物が実質的にフロセキナンの(-)鏡像異性体を含まない、請求項8記載の方法。
  13. 患者が男性である、請求項8記載の方法。
  14. 患者が女性である、請求項8記載の方法。
  15. 以下の工程を含む方法:
    a)以下を提供する工程:
    i)亜硝酸塩または硝酸塩によって治療されていない性的機能不全の症状に罹患している患者、および
    ii)精製されたフロセキナンの鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物、ならびに
    b)該症状が緩和されるように、該薬学的組成物を該患者に投与する工程。
  16. 投与する工程が鼻腔内投与および呼吸吸入からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
  17. 硝酸塩が、グリセリルトリニトラート、イソソルビドジニトラート、イソソルビド-5'-モノニトラート、およびエリスリチルテトラニトラートからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
  18. 精製されたフロセキナンの鏡像異性体が(+)鏡像異性体である、請求項15記載の方法。
  19. 組成物が実質的にフロセキナンの(-)鏡像異性体を含まない、請求項15記載の方法。
  20. 患者が男性である、請求項15記載の方法。
  21. 患者が女性である、請求項15記載の方法。
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