JP2005503887A - インプラント - Google Patents

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Abstract

緊密に嵌合された補綴物を係留するインプラントが記載されており、このインプラントは挿入工具を用いて骨内にねじ込まれる雄ネジ付きインプラント本体を備え、インプラント本体は第1端と第2端である頂端を有し、第1端は片側が開口した内部軸穴を有し、インプラントはさらに頂端の直径が第1端の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜しており、このようなインプラントの特徴として、上記テーパは2°以下であり、インプラントはさらに漸増的切削面を備えている。また、このようなインプラントを取り付ける方法も記載されている。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のインプラントおよびそのインプラントに関連する新規の治療方法に関する。
【0002】
特に、本発明は骨、好ましくは、上顎または下顎内に補綴物の取付けまたは係留手段としてねじ込まれるネジ付きインプラントに関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在のインプラント設計、例えば、歯科用インプラント設計は、種々の異なる臨床状況、例えば、軟質骨や硬質骨への設置状況などに適応する必要がますます高まっている。具体的に述べれば、ある種のインプラントは骨梁、すなわち、骨質の劣る骨、例えば、軟質骨への固着に用いられ、別のインプラントは緻密な皮質骨、すなわち、硬質組織への固着に用いられている。この場合、硬質骨に設置されるインプラント設計に望まれる一般的な特徴は、許容レベルの挿入トルクに抑えるのに必要な高切削効率と低摩擦である。一方、軟質骨に設置される場合、インプラントの初期安定性を向上させるために、挿入トルクを高めてその反力としての骨の圧縮力によってインプラントとの係合を強める必要がある。しかし、歯科医に用いられる現在のシステムでは、1つのインプラント設計でこのような矛盾する2つの要求を同時に満たすことができない。
【0004】
結果的に、現在のシステムにおいては、これらの臨床状況に対して別々に設計がなされている。例えば、(ノーベルバイオケアから市販されている)ブローネマルクシステムのMk−IIIインプラントは、主に硬質骨に用いられるように設計されている。同様に、(ノーベルバイオケアから市販されている)リプレイスシステムは、ソケットリフトを介してインプラントされるように特に設計されている。あるいは、(ノーベルバイオケアから市販されている)ブローネマルクシステムのMkIVインプラントは、軟質骨に用いられるように特に設計されている。このことから、従来のシステムは異なる骨質に対して種々のインプラント設計を用いていることがわかる。
【0005】
ニズニックらに付与された米国特許第5,427,527号は、複数の縦溝を有するネジ付き円筒状インプラントを用いる歯科用インプラントシステムを記載している。このインプラントは円錐状インプラント、すなわち、ネジ付きテーパインプラントである。具体的に、インプラントの下部の直径は円筒状骨穴の直径よりも小さく、上部は円筒状骨穴の直径よりも大きくなっている。さらに、ニズニックは、骨穴の直径がインプラントの直径よりも小さいインプラントを固定する方法についても記載している。このニズニックのシステムの1つの具体的な欠点は、インプラントの下部の直径が骨穴の直径よりも小さいので、インプラントの挿入は容易であるが、インプラントの固着の安定性が制約される点にある。
【0006】
リームスらに付与された米国特許第5,902,109号は非円形断面を有する低摩擦スクリュー式歯科用インプラントを記載している。このインプラントは、複数の丸突起部と平面部を備え、骨内への挿入時において、突起部のみを骨組織に係合させて、骨を平面部において成長させるように構成されている。
【0007】
ビヨルンらに付与された国際特許出願番号WO99/23970は、前述したノーベルバイオケアのブローネマルクMk−IVについて記載している。ビエルンは、上部にテーパ付き係留用穴を有するネジ付きテーパインプラントを備えるインプラントシステムについて記載している。インプラントは、特に本発明の図2に示す切削刃(5)を備えている。
【0008】
米国特許第6,099,312号は、縦方向に延在する略円筒形状を有する歯科用インプラント部材について記載している。このインプラントは、全長にわたって、二重溝、好ましくは、等距離に離間した2重溝を有している。
【0009】
なお、Ha−Tiデンタルから市販されているインプラントシステムは、テーパ付き穴に係留させるために用いる縦溝を有する略円筒状テーパ付きインプラントを備えている。
【0010】
このように、既存の歯科用インプラントシステムには多くの問題点がある。第1に、実際的な見地から、任意の設計に基づいて作製され、使用法が指定されたインプラントを常にそのインプラントの仕様通りに用いることは困難である。その結果、誤った治療、あるいは最悪の場合、患者に苦痛を与えるような治療に至ることがある。すなわち、最適な治療を得ることができない。
【0011】
臨床的に、不適当なインプラントを選択することによって、インプラントの良好な安定性を得ることができず、インプラントに対する骨応力が大きくなり、骨の欠損や壊死などをもたらすことがある。一例を挙げれば、ノーベルバイオケアから市販されているMk−IVインプラントを緻密な骨に対して用いる場合、インプラントの選択が不適当であり、上記の不都合をもたらすことになる。
【0012】
第2の問題点として、機能または臨床治療の改善、例えば、使用方法の改善を意図する新しい製品が開発されるに伴って、それらの製品の選別の自由度がさらに大きくなる。
【0013】
従って、インプラントの機能に関する問題のみならず、医者によるインプラントの使い方および管理に関する問題がある。このように種々のインプラントが存在し、その選別の自由度が増えるので、ユーザ側においてインプラントの在庫の量が増え、その結果、運転資本が大きくなってしまう。
【0014】
第3の問題点として、円筒状のインプラントを製造する場合、通常、インプラントを挿入中硬質骨の中間部に確実に着座させるために、インプラントの頂部の直径は歯冠側のネジ部の直径よりも細く設定されているが、このような構成のインプラントは軟質骨に設置する場合に安定性が低下することになる。
【0015】
従来のねじ切りインプラントは切削刃の長さを大きくし、骨片採集空洞部の体積を増やし、さらに接触力を増すために切削刃に対する逃げ面を設けることによって、切削効率を可能な限り大きくするように設計されている。しかし、これらのインプラントを設置する場合に種々の臨床的な問題が生じることになる。例えば、骨に形成されたネジと予め設けられた骨穴との間の芯合わせの精度が劣り、インプラントの安定が低下することになる。この芯合わせの誤差は、切削空洞部と逃げ面を設けることによって、周方向におけるネジ部の面積が少なくなることで生じるものである。その結果、骨に対するインプラントの接触力が低下し、インプラントを骨内に臨床的に設置している間に揺動が生じることになる。
【0016】
一般的に、インプラントを骨内に設置するとき、インプラントの下部の直径は予め設けた円筒状の骨穴の直径よりも小さい。しかし、軟質な骨梁、例えば、上顎において最適な安定性を得るには、予め設ける骨穴の直径が可能な限りインプラントのネジ部の直径よりも小さくされ、設置時における骨のインプラントに対する、所謂、圧縮力を大きくしている。
【0017】
歯茎突起内への臨床治療においては、通常、インプラントの頂端からの距離とは無関係に、すなわち、インプラント本体の全体にわたって、その直径よりも小さい骨穴が設けられている。従って、インプラントはその全長にわたって骨と係合している。この治療では、骨内に円筒状穴が設けられ、その円筒状穴にテーパ付きインプラントが設置されている。このテーパ付きインプラントは、米国特許第5,427,527号に記載されているインプラントとは異なっている。
【発明の開示】
【0018】
このように、設計変更および/または器具の変更との組合せおよび/または外科治療との組合せによって、実際のどのような臨床状況にも適合することが可能なインプラントシステムが長年にわたり必要とされていた。本発明の目的は、骨内に好適に設置されるインプラントであって、特に軟質骨または硬質骨のいずれに対しても最適に係留可能な万能インプラントを提供することにある。この目的は、補足的な切削手段を設けることによって、硬質骨への挿入中または挿入後には圧縮応力を低減し、軟質骨への挿入時には最適なインプラント安定性を得るために挿入トルクを増大させるように設計することによって達成される。
【0019】
従って、本発明の第1態様によれば、緊密に嵌合された補綴物を係留するインプラントが提供されることになる。インプラントは、挿入工具を用いて骨内にねじ込まれる雄ネジ付きインプラント本体を備えている。この本体は、第1端と第2端である頂端を有し、第1端は片側が開口した内部軸穴を有している。また、インプラントは、頂端の直径が第1端の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜して形成されている。このようなインプラントにおいて、上記のテーパは2°以下であり、インプラントが漸増的切削面をさらに備えていることを特徴としている。
【0020】
好ましい一実施態様によれば、インプラントはさらにねじ切り部材として作用する環状アンダーカット領域を備えている。好ましくは、インプラントは複数のアンダーカット領域、例えば、3つのアンダーカット領域を備えているとよい。
【0021】
漸増的切削面は縦方向切削溝であるとよい。切削溝の頂端は好ましくは本体部材の頂端に隣接しているとよい。また、切削溝の頂端は、好ましくは環状アンダーカット領域と重なっているとよい。最も好ましい実施態様によれば、本体部材の頂端領域は3つの均一な寸法の切欠領域を有している。すなわち、インプラントはその頂端において3つの隆起領域と3つの谷部を有し、好ましくは、各切削溝が各隆起領域内に位置しているとよい。
【0022】
ネジ部の著しく小さいテーパは、頂端からフランジに向かう直径の差で表すことが可能である。この場合、テーパを表す直径の差は0.05から0.20mmの範囲内にあるとよい。あるいは、テーパは角度を用いて表すこともできる。この場合、テーパを表す角度は0.3°から2°、好ましくは、0.4°から2°の範囲内にあるとよい。ネジ部の全体にテーパを付けてもよいし、ネジ部の一部、例えば、頂端部分のみにテーパを付けてもよい。
【0023】
漸増的切削面は、ネジ部に形成される頂端からフランジに向かって軸方向に延在する溝の一端縁であるとよい。この場合、漸増的切削面は軸方向に沿って異なったおよび/または変化させた断面を有するとよいが、概略的に、1つのねじ山の深さに達するまで切り込まれた断面を有しているとよい。ここで、ねじ山の高さは好ましくは0.15から0.6mm、特に0.2から0.4mmの範囲内にあるとよい。溝の深さは、とりわけ、用途および/または対応する骨の組織に依存して変更しているとよい。
【0024】
本発明のインプラントは、種々の技術的領域または用途に用いることが可能である。しかし、本発明による前述のインプラントは特に歯科用インプラントとして用いられることを意図している。
【0025】
あるいは、本発明による前述のインプラントは整形外科用インプラント、例えば、脊椎インプラント、または頭蓋/顔面インプラントのような他のインプラントとして用いられてもよい。
【0026】
前述のインプラントアセンブリの具体的な一つの利点は、チタンインプラントを用いることができる点にある。本発明のさらに他の態様によれば、軟質組織または硬質組織内にネジ付きインプラントを係留するための装置が提供される。インプラントは緊密に嵌合された補綴物を係留する構成を有している。このインプラントは、挿入工具を用いて骨内にねじ込まれる雄ネジ付きインプラント本体を備えている。この本体は、第1端と第2端である頂端を有し、第1端は片側が開口した内部軸穴を有している。また、インプラントは頂端の直径が第1端の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜している。このような装置において、上記テーパは2°以下であり、インプラントが漸増的切削面をさらに備えていることを特徴としている。
【0027】
上記装置は、頂端部の切削溝と共同作用する幾何学的手段、例えば、空間部または空洞部を有しているとよい。幾何学的手段は、インプラントの頂端部からその反対側の端部のフランジに延在しているとよい。あるいは、幾何学的手段は頂端部から好ましくはフランジから1つ以上のネジ山まで延在しているとよい。このインプラントは1つ以上のネジ線条、すなわち、多重ネジ線条パターンを有しているとよい。
【0028】
硬質骨および軟質骨内において最適な状態で設置可能なインプラントを得るには、インプラントのネジ部を以下のように設計することによって、硬質骨に対するインプラントの挿入トルクを低下させ、軟質骨に対するインプラントの初期安定性を高めるとよい。
【0029】
インプラントの頂端から小さなテーパを設けることによって、ネジ部の直径がフランジに向かって大きくなっている。頂端からフランジに向かって軸方向に沿って延在する漸増的切削面をネジ部に形成されている。切削面よりも強力な切削刃が頂端領域の環状凹部に設けられている。環状凹部は、ネジ部の面積を可能な限り犠牲にしないように設けられている。この環状凹部を逃げ部とする切削刃は、漸増的切削面の頂端部との共同作用によって高い切削能力を呈している。この場合、略円筒状のドリルを用いて骨に予め穴が設けられる。ネジ部は多重ネジ線条パターンとしてもよい。なお、著しく硬質の骨の場合は、必要に応じて、スクリュータップを用いて骨にネジ穴が設けられるようにしてもよい。
【0030】
骨の円筒状の穴に対して円筒状のインプラントを用いる場合、以下の問題点が生じる。すなわち、骨穴の雌ネジ部は通常インプラントのねじ切り部によって作成されるが、その骨穴の雌ネジ部がインプラントのねじ込みと共に磨耗し、この磨耗によって、骨穴の特に入口/開口の部分が広くなってしまう。その結果、特に弱質/軟質骨において初期安定性が低減することになる。一方、円錐状(テーパ付き)インプラントを用いる場合、骨穴に円錐状(テーパ付き)の雌ネジを切る時に熱が生じるという大きな問題点がある。インプラントのテーパ付きねじ切り部は全周面に沿ってネジを切るので、比較的大きな熱が生じ、骨の壊死を招き、その悪影響によって骨の損壊が生じることもある。この発熱は、テーパ付きねじ切り部の幾何学的形状に依存し、切削刃に周方向の表面圧がわずかに生じることによってさらに助長され、切削効率を低減させるものである。その結果、切削刃の切屑生成に対する磨耗の比率を高めることになる。
【0031】
上述した問題が生じると、骨とチタンとの良好な直接結合(オッセオインテグレーション)を著しく低減させることになる。本発明の目的は、とりわけ、このような問題を解消することにある。
【0032】
インプラントをネジ嵌合によって骨内に係留する場合、そのネジ嵌合が緩む場合がある。その結果、インプラントと骨との間には回転運動が生じ、欠損に至ることがある。
【0033】
これは特に、インプラントが弱性/軟質骨に嵌込まれたときに生じるものである。また、円対称のねじ山を有するインプラントの場合、この緩む問題が特に生じやすい。殆どのネジ付きインプラントにおいては、ねじ切り部として機能すると共に回転の安定性を付与するための切欠き、さらに具体的には、環状アンダーカット領域を頂端部に設けることが可能である。また、骨の成長を促す横断穴を有するインプラントも知られている。これらの公知の構成に共通する特徴は、凹部および穴の面積がインプラントのネジ領域と比較して比較的小さいことにある。このように凹部と穴の表面が小さいと、捩れ荷重が付加したときに、内部に成長する骨の変形または破壊が生じやすくなる。なお、骨質が劣る(硬度が低い)骨の場合、例えば、単一皮質の骨の場合、これらの穴および凹部はインプラントの先端部のごく前面に配置されることが多い。また、穴と凹部を設けることによって、それらの穴と凹部がインプラントのネジ領域を低減させるという不可壁的な欠点もある。ここで、歯の補綴物または歯のブリッジから骨に負荷を有効に伝達させるためのネジ領域は、可能な限り大きくすることが重要であることはいうまでもない。このような問題は特に軟質骨の場合に生じている。
【0034】
挿入の直後のインプラントが十分な安定性を持たずに骨に着座している場合、例えば、患者が食べ物を咀嚼する負荷が骨に作用した場合、または患者の歯に装填された通常の補綴物からインプラントの上方の歯茎に負荷が作用する場合、インプラントが屈曲し、インプラントと周囲の骨組織との間に微小な運動が生じることがある。これらの微小運動は、治癒および/または骨成長を阻害し、インプラントを損壊することがある。従って、インプラントは十分な初期安定性を有していることが重要である。
【0035】
上述した方法は、治癒期間中に骨とインプラントの直接的な接触を維持できるように条件下で実施する必要がある。また、精緻な外科手術によってインプラントを嵌合する必要がある。具体的に述べれば、インプラントが設置される骨の穴は極めて正確に穿孔する必要があり、その場合、骨の温度を所定の温度以下に保つことが最も重要である。これらの要件は、骨への穿孔とインプラントの嵌合を低速回転の穿孔器具とインプラント締付器具を用いて行なうべきであることを意味している。インプラントを嵌合する場合の回転数は、通常20〜25rpmである。この回転速度は、インプラントを嵌合するのに必要な時間が1分以上であることを意味している。すなわち、外科医は、骨穴の周囲の微細な骨梁が変形、破壊、または圧縮しないように十分に注意してインプラントを嵌合する必要がある。締付け中の器具の揺動は変形および破壊をもたらすおそれがあるからである。
【0036】
本発明のさらに他の態様によれば、組織に予め作成された略円筒状の穴にインプラントを取り付ける方法が提供されることになる。この方法は、(i)軟質または硬質の組織に円筒状の穴を作成する段階と、(ii)前述したテーパの付いたインプラントを挿入する段階とを含んでいる。
【0037】
この方法においては、軟質骨内に挿入する場合、複数の切削手段のいくつかに生じる骨に対する接触圧が効果的な切削を達成するのに十分な接触圧に達せず、骨の圧縮力によって挿入中の挿入トルクが極めて大きくなる。
【0038】
本方法において、予め作製された円筒状の穴に挿入されるインプラントは、硬質骨あるいは軟質骨のいずれに対しても同一設計の構造によってその設計上の利点を失うことなく適応できるようなインプラントであるとよい。具体的には、硬質骨に対しては挿入トルクを比較的低く抑え、軟質骨に対しては挿入トルクを極めて大きくすることができるインプラントであるとよい。この方法の原理は、インプラントの複数の切削手段が硬質骨に対しては全て機能し、軟質骨に対しては漸増的切削溝が有効に作用しない点にある。
【0039】
ネジ部を選択的に機能させ、硬質骨の場合は低挿入トルクを与え、軟質骨の場合は良好な初期安定性を与えることによって、硬質骨および軟質骨のいずれにも好適に用いられる前述のインプラントは、そのネジ部をテーパ付きネジ部として構成する点に特徴がある。
【0040】
頂端部の環状アンダーカット領域における切削刃の切削角度は、ネジ領域のネジ山を可能な限り犠牲にせずに、種々変更することが可能となっている。例えば、揺動を少なくするのに十分な逃げ部を設けると共に、切削溝の頂端部を考慮した切削角度に設定するで、切削溝との共同作用によって切削能力を高めることができる。切削刃に鋭利でかつ十分な強度を有する刃先を設けるために、ネジ領域に2つの異なるネジ線条を切ることによって、2つの半径を有する切削溝が形成されているとよい。一実施態様として、ネジ領域は多重ネジ線条パターン有しているとよい。
【0041】
従って、本発明のインプラントの幾何学的な特徴は以下の通りである。
【0042】
(1)小さいテーパ
(2)ネジ部側に設けた(直径が大きくなる方向に沿って深くねじ切りする)多目的切削溝
(3)頂端側の主切削刃であって、その切削刃に付加される圧力を大きくし、切削抵抗を抑制し、挿入トルクを低減させるための逃げ領域を有しているような主切削刃
(4)挿入時間を減らし、確実なネジ山の形状を得るための二重ねじ山線条パターン
(5)顎骨内に予め作成された円筒状穴への挿入に適した形状
【0043】
同様に、本発明のインプラントの機能上の特徴は以下の通りである。
【0044】
硬質骨と軟質骨のいずれに対しても良好な挿入特性を有するが、特に硬質骨に挿入された場合、MkIII(機械加工による粗面型またはタイユナイト(TiUnite)型))と比較して、良好な切削特性を呈し、従って、挿入トルクが低く、その結果、骨とインプラントの接触が改善され、さらに揺動を低減させることができる。
【0045】
軟質骨に挿入された場合、軟質骨は、軸方向溝の骨切削刃に対して十分な圧力を与えることができないので、それらの溝は切削機能を果たさずに回転の安定性の機能のみを果たすことになり、挿入トルクを大きくすることができる。
【0046】
本発明のインプラントのさらに他の利点は、とりわけ、従来技術のニズニックのシステムと違って、使用時において、インプラントがその全長にわたって骨穴の側面と接触して導かれる点にある。
【0047】
他の利点および特徴は、以下の好適な実施例、図面および請求の範囲から明らかになるであろう。
【0048】
以下、本発明を添付の例と図面に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1に示すように、本発明のインプラント(1)は縦長の本体部材(2)を備えている。この本体部材(2)は、その第1端(3)に、補綴物、例えば、歯科用補綴物と係合する装置(図示せず)を有するフランジヘッド(4)を備えている。本体部材(2)は、第1端(3)の遠位側の第2端または頂端(5)の直径が第1端(3)の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜している。さらに、本体部材(2)は雄ネジ部(6)を備えている。また、この本体部材の第2端(5)は、アンダーカット領域(7)を備えている。
【0050】
また、本体部材(2)には、少なくとも1つの漸増的切削面(8)が設けられている。この切削面は縦溝(9)に形成されている。漸増的切削面(8)の頂端(10)は、本体部材(2)の頂端(5)に隣接している。また、漸増的切削面(8)の頂端(10)は、縦方向において、環状アンダーカット領域(7)で、インプラントの頂端(5)の遠位側の端部(11)に重なっている。
【0051】
図2に示す本発明の好ましい実施例において、本体部材(2)は、3つの同一寸法のアンダーカット領域(7)と3つの縦溝(9)を備えている。すなわち、インプラント(1)の断面視において、インプラント(1)は3つの非アンダーカット領域(12)と3つのアンダーカット領域(7)からなる3つの谷部を有している。縦方向切削溝(9)は、隆起した非アンダーカット領域領域(12)内の各々に配置されている。
【0052】
環状アンダーカット領域(7)の空洞内には、凹壁(13)が設けられている。さらに、環状アンダーカット領域(7)は、この凹壁(13)の両側に切削端(13)と後縁(14)を備えている。本発明のインプラントにおいて、後縁と切削端は空洞の奥側の凹壁(13)によって十分に離間され、切削壁と後壁との間の角度は90°未満であるが、切削壁と後壁の各々と凹壁(13)のなす角度は90°よりも大きくなっている。従って、従来のインプラントと比較して、隣接するアンダーカット領域(7)間のねじ本体(12)は肉厚が大きくなっている。
【0053】
インプラントの本体部材は、頂端がフランジ側の遠位端よりも小径となるように2°以下のテーパで傾斜している。
【0054】
使用時において、患者の骨を穿孔して円筒状の穴が形成され、テーパ付きインプラントはその穴に配置され、時計方向にねじ込まれるようになっている。
【0055】
このような構成によって、多くの利点が得られる。とりわけ、隣接する切欠領域間の領域が従来の装置と比較して幅広くなっているので、種々の等級および純度のチタンのような材料を用いることができる。
【実施例1】
【0056】
比較試験
既存の製品(ノーベルバイオケア品)と比較して、本発明のインプラント(試験品)の切削特性を調べる試験を行なった。
【0057】
グラフ1は、下顎(緻密骨)に取り付けた典型的なセルフタップ(自己ねじ切り)式のMkIIIインプラントと試験品の比較を示している。いずれのインプラントも同じパターンを示しているが、試験品の方がいくらか挿入トルクが高い。しかし、この試験品の各深さにおける挿入トルクのレベルは、すべて許容範囲内にある。
【0058】
グラフ2は、上顎(軟質骨)に取り付けた軟質骨用のテーパ付きインプラントであるMkIVインプラントと試験品の比較を示している。試験品は再び同じ特性を示し、軟質骨用に設計された既存のインプラントと同様の挿入トルクを有している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のインプラントの斜視図である。
【図2】図1のインプラントのX−X線に沿った頂端部の断面図である。
【図3】下顎への挿入トルクのグラフである。
【図4】上顎への挿入トルクのグラフである。

Claims (30)

  1. 緊密に嵌合された補綴物を係留するインプラントであって、挿入工具を用いて骨内にねじ込まれる雄ネジ付きインプラント本体を備え、前記本体は第1端と第2端である頂端を有し、前記第1端は片側が開口した内部軸穴を有し、前記頂端の直径が前記第1端の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜しているようなインプラントにおいて、
    前記テーパは2°以下であり、漸増的切削面を備えていることを特徴とするインプラント。
  2. ねじ切り部材として作用する環状アンダーカット領域を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  3. 複数のアンダーカット領域を備えていることを特徴とする請求項2に記載のインプラント。
  4. 3つのアンダーカット領域を備えていることを特徴とする請求項3に記載のインプラント。
  5. 前記本体部材は、少なくとも1つの漸増的切削面を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  6. 前記漸増的切削面の頂端は、前記本体部材の頂端に隣接していることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  7. 前記漸増的切削面の頂端は、前記アンダーカット領域に重なっていることを特徴とする請求項6に記載のインプラント。
  8. 前記漸増的切削面は、縦方向切削溝の形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインプラント。
  9. 前記縦方向切削溝の断面は、その長さ方向に沿って変化していることを特徴とする請求項8に記載のインプラント。
  10. その頂端において3つの隆起領域と3つの谷部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のインプラント。
  11. 前記漸増的切削面は、前記各隆起領域内に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のインプラント。
  12. 歯科用インプラントであることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  13. 整形外科用インプラントであることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  14. チタンインプラントであることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  15. 硬質骨および軟質骨への挿入に適していることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
  16. 軟質組織または硬質組織内にネジ付きインプラントを係留するための装置であって、前記インプラントは挿入工具を用いて骨内にねじ込まれる雄ネジ付きインプラント本体を備え、前記本体は第1端と第2端である頂端を有し、前記第1端は片側が開口した内部軸穴を備え、前記インプラントは前記頂端の直径が前記第1端の直径よりも小さくなるようなテーパで傾斜しているような装置において、
    前記テーパは2°以下であり、前記インプラントは漸増的切削面を備えていることを特徴とする装置。
  17. 前記インプラントは、多重ネジパターンを有していることを特徴とする請求項16に記載の装置。
  18. 前記漸増的切削面は、前記頂端の近傍から前記第1端におけるフランジまで延長されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
  19. 前記各アンダーカット領域は、長軸と直交する面において3つの側線を有していることを特徴とする請求項16に記載の装置。
  20. 後工程における前記インプラントとスペーサ要素との間の嵌合中に力が付加されたとき、前記インプラントと骨の嵌合を離脱させるような捩れを防ぐ手段をさらに備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
  21. 硬質骨および軟質骨に用いるのに適していることを特徴とする請求項16に記載の装置。
  22. 組織に予め作成された略円筒状の穴にインプラントを取り付ける方法であって、
    (i)軟質または硬質の組織に円筒状の穴を作成する段階と、
    (ii)請求項1に記載のテーパの付いたインプラントを挿入する段階と
    を含むことを特徴とする方法。
  23. 前記インプラントは前記作成された円筒状の穴に挿入され、同一設計のインプラントが硬質骨または軟質骨のいずれに対しても用いられ、前記インプラントは硬質骨には低挿入トルクでねじ込まれ、軟質骨には高挿入トルクでねじ込まれることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  24. 前記穴は円筒状の穴であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  25. 前記骨は硬質骨であり、前記骨は低挿入トルクを受けることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  26. 前記骨は軟質骨であり、前記骨は高挿入トルクを受けることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  27. 前記骨は顎骨であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  28. 請求項1に記載のインプラントと、前記インプラントを支持して挿入する工具と、円筒状の穴を形成するドリルとを備えているインプラントキット。
  29. 歯科用インプラントキットであることを特徴とする請求項28に記載のインプラントキット。
  30. 実質的に添付の図面に記載されているインプラントまたは装置。
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