JP2005502583A - アテローム性動脈硬化を防止および処置するために斑関連分子を用いる方法および斑関連分子を含有する組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野および背景
本発明は、アテローム性動脈硬化および関連する疾患を防止および処置するためのアテローム斑関連分子に関し、より詳細には、粘膜寛容性を誘導することにおいて、そしてアテローム性血管疾患および後遺症の一因である炎症プロセスを阻害することにおいて効果的な斑関連分子を用いる方法および組成物に関する。
【0002】
心臓血管疾患は工業化世界全体における主要な健康リスクである。アテローム性動脈硬化(心臓血管疾患の最も一般的なもの)は、心臓発作、卒中および四肢の壊疽の主原因であり、そのため、合衆国における死亡原因の第1位である。アテローム性動脈硬化は、多くの細胞タイプおよび分子因子が関係する複合疾患である(詳細な総説については、Ross、1993、Nature、362:801〜809を参照のこと)。そのプロセスは、動脈壁の内皮細胞および平滑筋細胞(SMC)に対する傷害に応答して生じるが、線維脂肪性および線維性の病変または斑(プラーク)の形成からなり、これには、炎症が先行し、そして付随する。アテローム性動脈硬化の進行した病変は、関係する動脈を閉塞させることがあり、そして多数の異なる形態の傷害に対する過度な炎症性線維増殖性応答から生じる。例えば、剪断ストレスは、乱れた血流が生じる循環系の様々な領域(分岐点および不規則な構造部など)におけるアテローム硬化性斑の度重なる出現の原因であると考えられている。
【0003】
アテローム硬化性斑の形成における最初の観測可能な事象が、単球由来のマクロファージなどの炎症性細胞が血管の内皮層に付着して、内皮下空間にまで遊走するときに生じる。上昇した血漿LDLレベルは血管壁の脂質充血をもたらし、そして隣接する内皮細胞により、酸化された低密度リポタンパク質(LDL)が産生される。さらに、細胞外マトリックスによるリポタンパク質の捕捉は、他の酸化化合物と同様に、リポキシゲナーゼ、反応性酸素種、過酸化亜硝酸および/またはミエロペルオキシダーゼによるLDLのさらに進む酸化を生じさせる。これらのLDLの酸化された形状は、その後、その表面に発現しているスカベンジャー受容体を介して血管細胞によって多量に取り込まれる。
【0004】
脂質で満たされた単球および平滑筋由来細胞は泡沫細胞と呼ばれ、脂肪縞の主要な構成成分である。泡沫細胞とそれらを取り囲む内皮細胞および平滑筋細胞との相互作用は、内皮細胞の活性化、マクロファージの増大したアポトーシス、平滑筋細胞の増殖および遊走、そして線維質斑の形成を最終的には生じさせ得る慢性的な局所的炎症の状態をもたらす(Hajjar,DPおよびHaberland,ME、J.Biol.Chem、1997(9月12日)、272(37):22975〜78)。そのような斑は、関係する血管を閉塞させ、従って血液の流れを制限し、その結果、虚血(不十分な灌流による器官の組織における酸素供給の欠乏を特徴とする状態)をもたらす。関与する動脈により心臓への血流が遮断されたとき、人は「心臓発作」によって苦しめられる。一方、脳動脈が閉塞したとき、人は卒中を経験する。四肢への動脈が狭くなると、その結果は重症の痛み、低下した身体運動性であり、そしておそらくは切断の必要性が生じる。
【0005】
酸化されたLDLは、単球および平滑筋細胞に対するその作用によって、そして内皮細胞のアポトーシスを誘導し、内皮における抗凝固バランスを損なうことによってアテローム性動脈硬化およびアテローム性血栓症の病因に関係している。酸化されたLDLはまた、アテローム発生を防止するHDLが関与する、酸化されたリン脂質の分解を阻害する(Mertens,AおよびHolvoet,P、FASEB J、2001(10月)、15(12):2073〜84)。この関与はまた、酸化されたLDLがアテローム発生の様々な動物モデルにおいて斑に存在すること;アテローム発生が、薬理学的操作および/または遺伝的操作により酸化を阻害することによって遅くなること;そして抗酸化性ビタミンを用いたいくつかの介入試験の有望な結果を明らかにする多くの研究によって支持されている(例えば、現状の文献の総説については、Witztum,JおよびSteinberg,D、Trends Cardiovasc Med、2001(4月/5月)、11(3−4):93〜102を参照のこと)。実際、酸化されたLDLおよびマロンジアルデヒド(MDA)修飾されたLDLは、最近、冠状動脈疾患の第1期および第2期に対する正確な血液マーカーとして提案されている(米国特許第6309888号(Holvoet他)および米国特許第6255070号(Witztum他))。
【0006】
LDL酸化およびLDL活性の低下は、心臓血管疾患を処置および防止するための多数の提案された臨床応用の標的である。Bucala他(米国特許第5869534号)は、進行したグリコシル化最終産物(すなわち、年齢、疾患および糖尿病に関連した泡沫細胞形成に特徴的な脂質)を低下させることによって脂質の過酸化を調節する方法を開示する。Tang他(Incyte Pharmaceuticals,Inc.;米国特許第5945308号)は、ヒト酸化型LDL受容体の同定を開示し、そして心臓血管疾患および自己免疫疾患およびガンの処置におけるその臨床応用を提案している。
【0007】
量が多く、アテローム形成に関連する別の斑成分はβ2−糖タンパク質Iである。β2−糖タンパク質I(β2GPI)は、インビトロアッセイにおいて抗凝固剤として作用する50kDaの分子である。アテローム形成におけるβ2GPIの正確な役割はこれから解明されなければならないが、いくつかの関連する性質が認められている:1)β2GPIは、負荷電リン脂質またはリン脂質発現細胞(アポトーシス細胞、活性化された血小板)と結合することができる;2)β2GPIは、修飾された細胞表面に結合することができ、これにより、そのクリアランスが、マクロファージを捕捉することによって高められる(Chonn A.他、J Biol Chem、1995、270:25845〜49;Thiagarajan P.他、Arterioscler Thromb Vasc Biol、1999、19:2807〜11);そして3)β2GPIは、様々な自己免疫性の抗リン脂質抗体(aPL)が結合するための重要な標的である。β2GPIは、様々なaPLによって認識されるためには構造的変化を受けなければならない。この変化は、例えば、負荷電リン脂質または高結合性のプレートに結合することによって、しかしインビボではまた、ホスファチジルセリンを発現するアポトーシス細胞と結合することによって開始され得る。
【0008】
凝血促進性状態を促進することにおける抗β2GPI抗体の重要性を調べる最近の研究は、凝固系の細胞成分およびタンパク質成分(内皮細胞、血小板およびマクロファージ;組織因子および凝固因子)に対するこれらの抗体の作用に集中している。これらの研究により、抗β2GPI抗体が血小板の不活性化を妨げ、これにより食作用によるそのクリアランスを持続させること;ヒト内皮細胞の後期エンドソームと相互作用すること;そして組織因子経路阻害剤の阻害活性を抑制することが示される。凝固事象とのこの関連は、前血栓性抗リン脂質症候群(APLS)におけるβ2GPIの提案された機能と一致している。米国特許第5998223号および同第5344758号(それぞれ、Matsuura他およびKrilis他)はともに、APLSおよびSLEにおける診断のために抗β2GPI抗体(隠れたエピトープに対するいくつかの抗体)の適用を開示している。しかし、治療的適用はそれらの著者らによって何ら開示されていない。
【0009】
アテローム形成に関連するさらに別の重要な斑関連成分は60/65kDaの熱ショックタンパク質(HSP)である。このミトコンドリアタンパク質は、種々の種の間で大きな程度の配列相同性を示す約24個のタンパク質から構成されるHSPファミリーのメンバーである。これらのタンパク質は、その名前が示すように、フリーラジカル、熱、機械的剪断ストレス、感染およびサイトカインにさらされることを含むストレスに応答して発現され、そして細胞タンパク質のアンフォールディングおよび変性から保護する。このため、それらは分子「シャペロン」と呼ばれている。しかし、HSPの過剰発現は、ある種の条件のもとでは、生じる組織損傷との自己免疫反応を促進することがあるので、HSPの機能は望ましくない結果をもたらすことがある。HSPの免疫媒介損傷を生じさせる機構は今までのところ不明であるが、隠れた「非自己」のネオエピトープがそれらのアップレギュレーションの後に露出すると考えられている。あるいは、交差反応が、自己HSPエピトープと、感染後に持ち込まれた「外来」HSPエピトープとの間に存在し、これにより、本来のHSPに対する病理学的な自己免疫応答が引き起こされることがあると提案されていた。自己免疫性におけるHSPの関与に関する裏づけが、いくつかの自己免疫疾患におけるHSP60/65に対する増強された自己抗体ならびに細胞応答を報告する研究によって提供される(Schoenfeld,Y他、Autoimmunity、2000(9月)、15(2):199〜202;米国特許第6130059号(Covacci他);Gromadza G他、Cerebrovascul Dis、2001(10月)、12(3):235〜39)。
【0010】
HSP65とアテローム性動脈硬化との関連が、免疫化のために使用された調製物が完全フロイントアジュバント(CFA)を含有するならば、種々の抗原で免疫化された正常コレステロール血のウサギがアテローム性動脈硬化を発生することを見出したGeorge Wickのグループによって最初に認められた(Xu,Q他、Arterioscler Thromb、1992、12:789〜99)。CFAの主要な構成成分は熱で殺した結核菌であり、その主成分はHSP−65であるので、彼らは、この成分に対する免疫応答がアテローム性動脈硬化の発生をもたらしたと推論した。このことは、これらの著者らが、HSP65による動物の免疫化は顕著なアテローム性動脈硬化をもたらすこと、そして実験的なアテローム硬化性ウサギに由来するT細胞がHSP−65を過剰発現すること(これは、ストレスを受けた動脈血管に限定される限局的な免疫反応を示す)を明らかにしたときに確認された。アテローム形成における内因性HSP−65の重要性が、実験に供されたことがないマウスをHSP−65(または結核菌)で免疫化した後の脂肪縞形成の促進によってさらに明らかにされた(George J他、Arterioscler Thromb Vasc Biol、1999、19:505〜10)。
【0011】
HSP−65に対する応答における体液性免疫機構の関与がアテローム性動脈硬化において認められていた:顕著な相関が、健康な個体のスクリーニングにおいて、高レベルの抗HSP65抗体と、超音波検査により推定される頸動脈の狭小化との間で見出されている(Xu Q.他、Lancet、1993、341:255〜9;Xu Q.他、Circulation、1999、100(11):1169〜74)。さらに、培養された内皮細胞を用いたインビトロ実験により、HSP65とインキュベーションした後の単球および顆粒球に対する内皮細胞の接着が濃度および時間に依存して誘導されることが明らかにされている。
【0012】
HSP65とアテローム形成との関連により、多数の提案された治療的適用がもたらされている。HSP65に対する免疫反応性が微生物(例えば、H.pylori)感染およびアテローム性動脈硬化の両方と相関することが認められたことにより、Bernie他(Eur Heart J、1998、19:366〜7)は、感染および抗HSP抗体を減少させるための抗生物質療法を提案した。同様に、Covacci他(米国特許第6130059号)は、アテローム性動脈硬化における診断的適用および治療的適用のためにH.pyloriのHSPおよび関連するペプチドの使用を開示した。
【0013】
アテローム性動脈硬化および自己免疫疾患
アテローム性動脈硬化および虚血における過度な炎症性線維性増殖応答の推定される役割のために、ますます多くの研究が、血管傷害の自己免疫成分を明らかにするために試みられている。自己免疫疾患において、免疫系は、侵入している異物抗原を攻撃することに加えて、通常の場合には非抗原性の身体成分(自己抗原)を認識し、攻撃する。自己免疫疾患は、自己(もしくは自身)の抗体により媒介される疾患または自己(もしくは自身)の細胞により媒介される疾患として分類される。典型的な自己抗体媒介の自己免疫疾患は重症筋無力症および突発性血小板減少性紫斑症(ITP)であり、一方、典型的な細胞媒介の疾患は橋本病およびI型(若年性)糖尿病である。
【0014】
免疫媒介のプロセスがアテローム硬化性病変幹細胞の内部に広がっているという認識が、最も初期の段階(すなわち、脂肪縞)におけるリンパ球およびマクロファージの一貫した観察から得られていた。CD4+細胞の優勢な集団(残りはCD8+細胞である)を含むこれらのリンパ球は、この比率が逆転する傾向があるさらにより進行した病変と比較したとき、初期の病変ではマクロファージよりも数が多いことが見出されていた。これらの発見は、それらが可能な抗原に対する一次免疫感作を反映しているか、あるいは以前に誘導された局所的な組織損傷に起因するかどうかという疑問をもたらしていた。これらの炎症性細胞が初期の斑に集まることをもたらす因子にも関わらず、これらの炎症性細胞は、白血球共通抗原(CD45R0)および超後期抗原1(VLA−1)インテグリンだけでなく、MHCクラスIIのHLA−DRおよびインターロイキン(IL)受容体を同時に発現することによって示される活性化された状態を示すようである。従って、アテローム硬化性病変の初期段階の炎症反応は、その局所的な細胞(すなわち、内皮細胞、マクロファージ、平滑筋細胞および炎症性細胞)による様々なサイトカインの産生を生じさせる一次の開始事象であり得るか、またはこの反応が有害なプロセスに対する免疫系の応答の一形態であると考えられるかのいずれかである。常在性の細胞によってアップレギュレーションされることが示されているサイトカインの一部には、TNF−α、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γおよび単球誘因性ペプチド−1(MCP−1)が含まれる。アテローム硬化性斑内のすべての細胞性構成成分によって発現される血小板由来増殖因子(PDGF)およびインスリン様増殖因子(ILGF)もまた過剰に発現していることが示されており、従って、これは、おそらくは、分裂促進性走化性因子の形態での同時刺激担体による既に存在する炎症反応を強化している。最近、Uyemura他(J.Clin.Invest、1996、97:2130〜2138)は、正常な動脈との比較において、IL−4ではなく、IFN−γのmRNAの強い発現によって例示されるヒトのアテローム硬化性病変における1型T細胞のサイトカインパターンを解明している。さらに、活性化単球およびTh1サイトカインパターンの選択的誘導剤によって主に産生されるIL−12−aT細胞増殖因子が、その主要なヘテロ二量体形態(p70およびp40(その優勢な誘導性タンパク質))のmRNAの量が多いことにより示されるように病変内で過剰発現していることが見出された。
【0015】
細胞性免疫系がアテローム硬化性斑内では優勢であることに関する強い証拠と同様に、局所的な体液性免疫系の関与を支持する十分なデータもまた存在する。例えば、免疫グロブリンおよび補体成分の堆積が、常在性マクロファージにおけるC3b受容体およびC3Bi受容体の増強された発現に加えて、斑において明らかにされている。
【0016】
アテローム性動脈硬化の進行に対する免疫媒介炎症の寄与に関する有益な手がかりが、動物モデルから得られている。免疫低下マウス(クラスIMHC不全)は、免疫応答性マウスと比較した場合、加速されたアテローム性動脈硬化を発症する傾向がある。さらに、シクロスポリンA(IL−2転写の強力な抑制剤)によるC57BL/6マウスの処置(Emerson EE、Shen ML、Am.J.Pathol、1993、142:1906〜1915)およびニュージーランド白ウサギの処置(Roselaar SE他、J.Clin.Invest、1995、96:1389〜1394)は、「正常」なリポタンパク質「負荷」のもとで著しく増強されたアテローム性動脈硬化をもたらした。これらの後者の研究では、アテローム硬化性斑内で自己永続的な炎症プロセスに対抗することにおける免疫系の可能な役割を洞察することができる。
【0017】
アテローム性動脈硬化は、脈管構造を妨げる斑の生成などのその症候のいくつかが異常な免疫応答性に関連するかもしれないが、古典的な自己免疫疾患ではない。古典的な自己免疫疾患では、自己抗原を認識する免疫系および免疫系の成分(体液性、すなわち、自己抗体、または細胞性、すなわち、リンパ球)によって攻撃される感作性自己抗原を非常に明瞭に明らかにすることができる。中でも、免疫系のこれらの成分の受動的移入によって、この疾患を健康な動物において誘導することができること、またはヒトの場合には、この疾患が病気の母胎からその子に伝達し得ることを示すことができる。上記の多くは、アテローム性動脈硬化では一般的ではない。さらに、この疾患は、高血圧、糖尿病、運動不足、喫煙およびその他などの共通するリスク因子を明らかに有しており、そしてこの疾患は若年者に罹患し、古典的な自己免疫疾患の場合とは異なる遺伝的優位を有する。
【0018】
炎症疾患の処置は、全身的および/または疾患特異的な免疫反応性の抑制または逆転に対して行うことができる。従って、例えば、Aiello(米国特許第6034102号および同6114395号)により、炎症性細胞の呼び寄せを阻害することによってアテローム性動脈硬化およびアテローム硬化性病変の進行を処置および防止するためのエストロゲン様化合物の使用が開示される。同様に、Medford他(米国特許第5846959号)は、細胞接着分子VCAM−1により媒介される心臓血管および非心臓血管の炎症性疾患を処置するために酸化型PUFAの形成を防止する方法を開示する。さらに、Falb(米国特許第6156500号)は、抗炎症治療の潜在的な標的として、アテローム硬化性の斑および疾患において量が多い多数の細胞シグナル分子および細胞接着分子を示している。
【0019】
酸化されたLDL、β2GPIおよびHSP65は、アテローム性動脈硬化の病因に明らかに関係しているので(上記参照)、アテローム性疾患プロセスにおける自己免疫性に対するこれらの顕著な斑成分の寄与が調べられている。
【0020】
斑関連分子に対する免疫応答性
OxLDLがT細胞および単球に対して走化性であることが知られている。OxLDLおよびその副生成物はまた、単球走化性因子1などの様々な因子の発現、コロニー刺激因子の分泌、および血小板活性化性質を誘導することが知られており、これらはすべて強力な増殖刺激剤である。アテローム性動脈硬化における細胞性免疫応答の積極的な関与が最近立証されている(Stemme S他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1995、92:3893〜97)。Stemme S他は、刺激剤としてのOxLDLに応答する斑クローン内のCD4+を単離した。OxLDLに応答するクローン(27個のうちの4個)は、IL−4ではなく、インターフェロン−γを主に産生した。上記T細胞クローンが、誘発性の強い免疫原(OxLDL)とともに細胞性免疫系との単なる接触を表しているかどうか、またはこの反応が、明らかにゆっくりと進むアテローム硬化性プロセスを治療する手段を提供することはまだ分かっていない。
【0021】
体液性機構の関与に関するデータおよびその意味は、さらにより大きな議論の的になっている。1つの最近の研究により、心臓疾患および/または糖尿病に罹っている女性では、LDL酸化の代謝産物であるMDA−LDLに対する抗体レベルが増大していることが報告された(Dotevall他、Clin.Sci、2001(11月)、101(5):523〜31)。他の研究者らは、アテローム性動脈硬化および他の疾患(糖尿病、腎血管症候群、尿毒症、リウマチ熱、紅斑性狼瘡など)において脂質成分およびアポリポタンパク質成分に対する免疫応答性を表す、酸化型LDLにおける多数のエピトープを認識する抗体を明らかにしている(Steinerova A他、Physiol.Res、2001、50(2):131〜41)。いくつかの報告は、OxLDLに対する抗体の増大したレベルを、(頸動脈狭窄の程度、末梢血管疾患の重篤度などによって表される)アテローム性動脈硬化の進行と関連させている。ごく最近には、Sherer他(Cardiology、2001、95(1):20〜4)により、冠状動脈心臓疾患では、ホスファチジルコリンまたは内皮細胞に対してではなく、カルジオリピンおよびβ2GPIおよびOxLDLに対する抗体レベルが上昇していることが明らかにされた。従って、アテローム硬化性斑内における免疫複合体の形態で抗斑成分抗体が存在することに関して意見が一致している。
【0022】
OxLDLに対する抗体が、正常および異常のリポタンパク質代謝の両方において影響を与えているとみなされている。従って、OxLDLとその対応する抗体との免疫複合体が、OxLDLと比較したとき、懸濁状態のマクロファージによってより効率的に取り込まれることが知られている。マクロファージによるOxLDLの加速された取り込みが有益または有害であるかという疑問は未だ解決されていないので、アテローム性動脈硬化の病因に関して、この一致する発見から結論を引き出すことができない。
【0023】
アテローム発生における体液性免疫系の重要性に関する重要なデータが動物モデルから得られている:相同的な酸化型LDLによるLDL受容体欠損ウサギの過免疫化は、高レベルの抗OxLDL抗体の産生をもたらし、アテローム硬化性病変の程度の著しい低下と関連したことが見出されている。同様に、斑形成の低下は、高コレステロールリポソームでのウサギの免疫化および抗コレステロール抗体の産生の刺激によって起こる。;しかしながら、この作用には超低密度リポタンパク質コレステロールレベルの35%の低下が伴っていた。
【0024】
β2GPIの免疫原性に関して、β2GPIは、免疫媒介攻撃に対する標的抗原として使用され、これによりヒトおよびマウスにおけるアテローム性動脈硬化の進行に影響を及ぼすことが示されている。George J他は、β2GPIでLDL受容体欠損マウスを免疫化して、ヒトβ2GPIに対する顕著な体液性免疫応答を生じさせ、そしてコントロールと比較してより大きい初期のアテローム硬化性病変を生じさせた(George J他、Circulation、1998、15:1108〜15)。Afek A他は、ヒトβ2GPIで1回免疫化し、そして高脂肪食を5週間与えた、アテローム性動脈硬化になりやすいアポリポタンパク質Eノックアウトマウスにおいて同様の結果を得た(Afek A他、Pathobiology、1999、67:19〜25)。
【0025】
さらに、前血栓性抗リン脂質症候群のヒトにおけるβ2GPIに対する免疫反応性は、β2GPIに対する自己抗体が存在するためであると従来考えられていたが、近年の観測結果は、β2GPIに対する細胞性免疫応答の重要性を示している。β2GPIとの反応性を有するT細胞が抗リン脂質症候群患者の末梢血中に明らかにされている。これらのT細胞は(前炎症性(および前アテローム形成性)サイトカインのインターフェロンを分泌する)Tヘルパー1表現型を示し、そしてまた組織因子の産生を誘導することができた(Visvanathan SおよびMcNiel HP、J Immunolog、1999、162:6919〜25)。まとめると、抗β2GPIに関して今日までに集められた多くのデータは、(総説については、Roubey RA、Curr Opinion Rheumatol、2000、12:374〜378を参照のこと)、この斑関連抗原に対する免疫応答が、アテローム斑のサイズおよび組成に影響を及ぼすことにおいて重要な役割を果たし得ることを示している。
【0026】
最後に、酸化されたリン脂質およびβ2GPIの抗原性および病原性における著しい依存性が存在する。上記に述べられたように、最小限に修飾されたLDLおよびβ2GPIに関連する自己免疫エピトープのいくつかは隠れている。Kyobashi他(J Lipid Res、2001、42:697〜709)およびKoike他(Ann Med、2000、32(増刊I)、27〜31)は、β2GPI−OxLDL複合体の形成を伴う場合にだけ存在する、マクロファージを活性化するOxLDL特異的リガンドを同定している。このリガンドは、APLSに特異的な自己抗体によって認識された。従って、酸化型LDLおよび他の斑成分の病原的役割と、アテローム性動脈硬化ならびに他の疾患における自己抗原としてのそれらの役割の重要性との両方が、研究室での研究および臨床研究において広範囲に明らかにされている。
【0027】
自己免疫疾患の処置における粘膜寛容性
最近、自己免疫疾患(および関連するT細胞媒介による炎症障害、例えば、同種移植片拒絶およびレトロウイルス関連の神経学的疾患など)を処置するために有用である新しい方法および薬学的配合物が見出されている。これらの処置は、自己抗原、またはバイスタンダー抗原、または自己抗原もしくはバイスタンダー抗原の疾患抑制性のフラグメントもしくはアナログを寛容化剤として使用して、経口的または粘膜的に、例えば、吸入によって、寛容性を誘導する。そのような処置は、例えば、米国特許第5935577号(Weiner他)に記載される。自己抗原およびバイスタンダー抗原は下記に定義される(粘膜寛容性の一般的総説については、Nagler−Anderson,C.、Crit.Rev.Immunol、2000、20(2):103〜20を参照のこと)。自己抗原(およびその分子の免疫優勢エピトープ領域を含有するそのフラグメント)の静脈内投与は、クローン麻痺と呼ばれる機構による免疫抑制を誘導することが見出されている。クローン麻痺は、特定の抗原に対して特異的な免疫攻撃T細胞のみの不活性化を生じさせ、その結果は、この抗原に対する免疫応答の著しい低下である。従って、自己免疫応答を促進し、かつ自己抗原に対して特異的なT細胞は、一旦麻痺化されると、その抗原に応答してもはや増殖しない。増殖におけるこの低下はまた、自己免疫疾患の症状(MSにおいて認められる神経組織損傷など)の原因となる免疫反応を減少させる。単回用量で、そして「能動的抑制」を誘発する量よりも実質的に多い量で自己抗原(または免疫優勢フラグメント)を経口投与することによってもまた、寛容性が麻痺(またはクローン除去)により誘導され得ることもまた明らかにされている。
【0028】
能動的抑制によって進行する処置方法もまた開示されている。能動的抑制は、クローン麻痺の機構とは異なる機構によって機能する。この方法は、PCT出願PCT/US93/01705に詳細に議論されているが、自己免疫の攻撃を受けている組織に対して特異的な抗原を経口投与または粘膜投与することを伴う。これらは「バイスタンダー抗原」と呼ばれる。この処置により、調節(サプレッサー)T細胞が、腸管関連リンパ組織(GALT)、または気管関連リンパ組織(BALT)、または最も一般的には粘膜関連リンパ組織(MALT)において誘導させられる(MALTにはGALTおよびBALTが含まれる)。これらの調節細胞は血液内またはリンパ組織内に放出され、その後、自己免疫疾患によって苦しめられている器官または組織に遊走して、苦しめられている器官または組織の自己免疫攻撃を抑制する。バイスタンダー抗原によって誘発されるT細胞(これは、T細胞を誘発するために使用されたバイスタンダー抗原の少なくとも1つの抗原性決定基を認識する)が、ある種の免疫調節因子およびサイトカイン(形質転換増殖因子β(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)および/またはインターロイキン−10(IL−10)など)の局所的な放出を媒介する自己免疫攻撃の場所に標的化される。これらの中で、TGF−βは、攻撃を誘発する抗原にもかかわらず免疫攻撃を抑制する点で、抗原非特異的な免疫抑制因子である(しかし、バイスタンダー抗原による経口寛容化または粘膜寛容化は自己免疫攻撃の近傍におけるTGF−βの放出を生じさせるだけであるので、全身的な免疫抑制は起こらない)。IL−4およびIL−10もまた、抗原非特異的な免疫調節性のサイトカインである。特に、IL−4は(Tヘルパー2)Th2応答を増強し、すなわち、T細胞前駆体に対して作用し、そしてTh1応答を犠牲にしてT細胞前駆体を優先的にTh2細胞に分化させる。IL−4はまた、Th1の悪化を間接的に阻害する。IL−10はTh1応答の直接的な阻害剤である。自己免疫疾患状態で苦しめられている哺乳動物をバイスタンダー抗原で経口投与により寛容化した後、TGF−β、IL−4およびIL−10の増大したレベルが自己免疫攻撃の場所で認められる(Chen,Y.他、Science、265:1237〜1240、1994)。バイスタンダー抑制機構がvon Herreth他によって確認されている(J.Clin.Invest.、96:1324〜1331、1996(9月))。
【0029】
より最近には、経口寛容性が、共生細菌を与えることによる炎症性腸疾患の動物モデルの処置において(Dunne,C.他、Antonie Van Leeuwenhoek、1999(7月−11月)、76(1−4):279〜92)、腎糸球体基底膜を与えることによる自己免疫糸球体腎炎の動物モデルの処置において(Reynolds他、J.Am.Soc.Nephrol、2001(1月)、12(1):61〜70)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)を与えることによる実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE、これは多発性硬化症またはMSの等価体である)の動物モデルの処置において、対象にコラーゲンおよびHSP−65をそれぞれ与えることによるアジュバント関節炎およびコラーゲン関節炎の動物モデルの処置において、効果的に適用されている。Autoimmuneと呼ばれる、ボストンに本社を置く企業は、糖尿病、多発性硬化症、慢性関節リウマチおよびブドウ膜炎を防止するためのヒト試験をいくつか行っている。臨床試験の結果は、動物実験よりも優れていなかったが、ある程度の成功が関節炎の防止について得られていた。
【0030】
アテローム硬化性斑病変において見出される自己抗原に対する経口寛容性もまた調べられている。アテローム性動脈硬化の臨床モデルおよび動物モデルにおける、T細胞によって認識されるエピトープおよびIg力価の研究により、アテローム性病変における炎症の抑制に関して3つの候補抗原が示された:酸化型LDL、ストレス関連の熱ショックタンパク質HSP65、およびカルジオリピン結合タンパク質β2GP1。米国特許出願第09/806400号(Shoenfeld他、1999年9月30日出願)(これはその全体が本明細書中に組み込まれる)には、酸化型ヒトLDLを与えた遺伝的感受性のLDL受容体欠損マウス(LDL−RD)の動脈におけるアテローム発生が約30%減少したことが開示される。アテローム発生の著しい阻害がおそらくは経口寛容性により達成されたが、特異的な脂質抗原または免疫原性LDL成分の確認は行われなかった。遭遇した別の障害は、消化による分解と肝臓および細胞性免疫機構による酸化型LDLの取り込みのためにインビボにおける経口的抗原摂取が固有的に不安定であるということであった。摂食(経口)以外の粘膜経路の投与は、より大きい効率の経口寛容性が得られたと考えられる。
【0031】
免疫寛容性の誘導、および自己免疫炎症プロセスのその後の防止または阻害が、腸管以外の粘膜部位を介した抑制性抗原への暴露を使用して明らかにされている。眼の周りの膜組織、中耳、呼吸器およびその他の粘膜、特に鼻腔の粘膜は、腸管のように、多くの侵入する抗原ならびに自己抗原にさらされ、そして免疫反応性に対する様々な機構を有する。例えば、Rossi他(Scand.J.Immunol、1999(8月)、50(2):177〜82)は、グリアジンの鼻腔投与が、セリアック病のマウスモデルにおける抗原に対する免疫応答をダウンレギュレーションすることにおいて静脈内投与と同じくらい効果的であることを見出した。同様に、アセチルコリン受容体抗原に対する鼻腔暴露は、重症筋無力症のマウスモデルにおける筋肉衰弱および特異的なリンパ球増殖の遅延および低下において、経口暴露よりも効果的であった(Shi,FD.他、J.Immunol、1999(5月15日)、162(10):5757〜63)。従って、粘膜投与ならびに静脈内投与または腹腔内投与のために意図された免疫原性化合物は、投与の鼻腔経路および他の膜経路に適合させることができるはずである。
【0032】
従って、粘膜投与(特に、鼻腔投与)における優れた寛容化免疫原性を可能にする斑関連分子を用いる新規な方法およびそのような分子の組成物が明らかに求められている。
【0033】
発明の概要
本発明の1つの局面により、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄の防止および/または処置を必要とする患者において、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄を防止および/または処置するための薬学的組成物で、有効成分として、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分またはその薬学的な塩の治療効果的な量を含む薬学的組成物が提供される。本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み、そして粘膜投与のために設計されている。
【0034】
本発明のさらなる局面により、アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態に対する斑成分の粘膜投与の効果を明らかにするためのアッセイが提供される。このアッセイは、アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態を有する患者に、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分を粘膜投与し、そしてこの患者におけるアテローム形成の少なくとも1つの指標を評価し、それにより、アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態に対する少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分の粘膜投与の効果を明らかにすることによって行われる。
【0035】
本発明のさらに別の局面により、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄の防止および/または処置を必要とする患者において、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄を防止および/または処置するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分の治療効果的な量を患者に粘膜投与することを含む。
【0036】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴により、斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0037】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴により、少なくとも1つの斑関連分子の抗原性部分は、天然に存在する分子、または合成された分子である。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴により、薬学的組成物は、鼻腔投与、呼吸器系投与、耳投与および/または結膜投与のために設計される。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴により、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分は、前記患者における斑成分に対する免疫反応性を低下させるように選択される。
【0040】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴により、薬学的組成物は、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄からなる群から選択される少なくとも1つの障害の防止および/または処置における使用のためにパッケージおよび識別される。
【0041】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴により、薬学的組成物は、HMGCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、粘膜アジュバント、コルチコステロイド、抗炎症性化合物、鎮痛剤、増殖因子、トキシンおよびさらなる寛容化抗原からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物の治療効果的な量をさらに含む。
【0042】
本発明は、優れた免疫寛容性を斑関連分子の粘膜投与により誘導し、それにより、アテローム性動脈硬化および他の斑関連疾患を阻害する新規な方法を提供することによって、現在知られている形態の様々な欠点を解決することに成功している。
【0043】
図面の簡単な説明
本発明は、本明細書中には、例としてだけ、添付された図面を参照して記載される。次に図面を詳細に特に参照することにより、示される特定の事項は、例として、かつ本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためだけであり、そして本発明の原理および概念的局面の最も有用で、かつ容易に理解される記載であると考えられるものを提供するために示されることに重点が置かれている。これに関連して、本発明の基本的な理解のために必要とされるよりも詳しく本発明の構造的詳細を示すことはなされていない。しかし、図面とともに理解される説明により、本発明のいくつかの形態がいかにして実際に具体化され得るかが当業者には明らかになる。
図1は、低用量の斑関連分子を投与することによって誘導される経鼻寛容性による、アポE欠損マウスにおける初期のアテローム形成の阻害を例示する。9週齢〜13週齢のアポE欠損マウスは、軽い鎮静状態で、HSP65(HSP−65)(n=12)、ヒト酸化型LDL(H−OxLDL)(n=14)、ヒトβ2GPI(B2gpi)(n=13)、ウシ血清アルブミン(BSA)のそれぞれ10μg/マウスの3回の用量への鼻腔内暴露、または生理的食塩水への擬似暴露(PBS)(n=12)にさらされた。すべてのマウスには、アテローム形成性の「西洋(Western)」餌が最後の暴露後に与えられた。アテローム形成は、3回目の暴露が行われた5週間後の大動脈洞におけるアテローム硬化性病変の面積として表される。
図2は、非常に低い用量のHSP65に対する鼻腔内暴露によって誘導される粘膜寛容性による、アポE欠損マウスにおける初期のアテローム形成の優れた阻害を例示する。経鼻寛容性を、1μg/マウスのHSP65(HSP−65低)(n=16)または10μg/マウスのHSP65(HSP−65高)(n=14)の3回の用量を5日間にわたり1日おきに鼻腔内投与することによって12週齢〜16週齢のアポE欠損マウスにおいて誘導させた。コントロールのマウスには、10μg/マウスのウシ血清アルブミンの同一容量(10μl)への鼻腔内暴露(BSA)(n=14)、またはPBSへの擬似暴露(PBS)(n=14)が行われた。すべてのマウスには、アテローム形成性の「西洋」餌が最後の暴露後に与えられた。アテローム形成は、最後の鼻腔暴露が行われた5週間後の大動脈洞におけるアテローム硬化性病変の面積として表される。
図3は、ヒトβ2GPIへの鼻腔暴露によって誘導されるアテローム硬化性斑抗原に対する免疫反応性の優れた抑制を例示する。5週齢のオスのアポE欠損マウスは、5日間にわたり1日おきに、10μg/マウスのヒトβ2GPIへの鼻腔内暴露(H−b2−nt)(n=3)が行われ、あるいは胃管法により、100μg/マウスのヒトβ2GPI(H−b2−ot)(n=3)が0.2mlのPBSにおいて与えられ、またはPBSだけ(PBS)(n=3)が与えられた。最後の投与が行われた1週間後、マウスは、0.1mlの容量で10μg/マウスのヒトβ2GPIを単回皮下注射することによって感作された。10日後、鼠径リンパ節に由来するT細胞を下記の材料および方法の節に記載されるように調製し、そして増殖のインビトロ評価のために感作用ヒトβ2GPI抗原にさらした。増殖(これは免疫反応性を示す)は、ヒトβ2GPI抗原の存在下および非存在下におけるT細胞DNA内への標識チミジンの取り込み比(刺激指数、S.I.)として表される。
【0044】
好適な実施形態の説明
本発明は、粘膜寛容性を誘導することにおいて、そしてアテローム性血管疾患および後遺症の一因である炎症プロセスを阻害することにおいて効果的な斑関連分子を用いる方法および組成物に関する。
【0045】
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例により例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられている表現法および用語法は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0047】
実験的および臨床的な証拠により、アテローム性動脈硬化における過度な炎症応答の病因において斑に関連した抗原に対する原因的役割が示される。斑に関連した酸化型LDL、β2GPIおよびHSP65に対する細胞性および体液性の両方の免疫反応性が明らかにされており、このことは、アテローム発生における重要な抗酸化型LDLの自己免疫成分を示唆している。従って、酸化型LDL、β2GPI、HSP65およびその成分は、心臓疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患を防止および処置するための多数の治療法の標的となっている。
【0048】
先行技術により、アテローム性動脈硬化ならびに他の斑関連状態および血栓症関連状態を検出および診断するために斑関連抗原の適用が教示されている。例えば、Holvoet(米国特許第6309888号)は、冠状動脈疾患についてスクリーニングするために、段階特異的な斑関連抗原のOxLDLおよびMDA−LDLの使用を教示する。同様に、他の研究者(米国特許第5998223号および同第5344758号、それぞれ、Matsuura他およびKrilis他)は、APLS、SLEおよびアテローム性動脈硬化の血清指標についてスクリーニングするための抗β2GPI抗体の使用を開示している。上記の開示は診断的適用だけを提案しており、これらの斑関連分子の治療的可能性を認めていない。
【0049】
アテローム性動脈硬化および他の斑関連疾患の病因および進行における免疫応答の役割は引き続き議論の余地がある(Meir,K他、International Atherosclerosis Soc.(2001)、Commentaryを参照のこと)が、免疫に基づく多くの治療法がアテローム性動脈硬化について提案されている。炎症状態および反応亢進状態における免疫応答を低下させる一般的な方法が、例えば、米国特許第6277969号;同第5698195号および同第5656272号(Le他)、米国特許第6224902号(Alving他)、国際特許出願第0010012514号(Shurkovitz他)および同第20010051156A1号(Zeng)において教示される。しかし、免疫応答性の提案された低下および媒介因子(サイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF)および他の病原性因子など)の除去では、血液の免疫吸着および長期間の抗サイトカイン投与などの、多大の費用がかかり、かつ潜在的に危険な方法を中断することなく続けることが必要である。さらに、アテローム性動脈硬化または斑関連疾患の処置に対する適用は何ら開示されてない。
【0050】
斑関連抗原を用いた特異的な免疫療法もまた提案されている。Bumol他、Calenoff他およびTakano他(それぞれ、米国特許第5196324号、同第6025477号および同第5110738号)は、免疫化、モノクローナルAb調製、アテローム性動脈硬化の診断および処置に対する、純粋でない、十分に明らかにされていない分画された斑調製物の使用を開示する。これらの抗原、すなわち、アテローム性組織のタンパク質画分および脂質画分は、十分には明らかにされておらず、治療的使用に関しては実用的ではなく、そして長期間の処置においては潜在的に危険である。
【0051】
先行技術には、アテローム性動脈硬化の処置および防止のために酸化型LDLに対する免疫療法が教示されている。米国特許第6225070号(Witztum他)は、マクロファージに対する酸化型LDLの結合および泡沫細胞の形成を阻害するために酸化型LDLに対するmAbの使用を開示する。同様に、McGregor他(国際特許出願第EP1162458A1)は、マクロファージによる酸化型LDLの取り込みおよび輸送の特異的な調節方法を開示する。米国特許第5733524号および同第5733933号(Bucala他)には、亢進したグリコシル化最終生成物脂質(AGE脂質)を減少させることによって特異的な抗酸化型LDL免疫応答を低下させることが開示される。これらの提案された治療法はどれも、酸化型LDLに対する能動的な免疫化を教示しておらず、長期間の免疫治療法を必要とする。
【0052】
Zhou他(Arterioscler Thromb Vasc Biol、2001、21:108)は、ホモジネートした斑または相同的なMDA LDLを用いた足裏免疫化を行った後のマウスにおいて初期斑形成の著しい低下を達成した。Palinski他(PNAS USA、1995、92:821〜25)は、酸化型LDLで免疫化されたウサギにおいて同様なレベルの保護をもたらした。しかし、酸化型LDLに対する従来の免疫化技術の適用は、免疫化および追加免疫化のために必要とされるアジュバント調製物が、同様な免疫化方法で、促進された斑形成をもたらしているので問題である。さらに、比較的高用量(100μg/マウス/注射)の斑抗原が免疫性のために必要であった。粘膜投与および寛容性の誘導は言及されていなかった。
【0053】
他の斑抗原を用いた免疫治療もまた提案されている。β2GPIを用いた最近の動物研究およびインビトロ研究(George J他、Rheum Dis Clin North Am、2001、27:603〜10;Brey他、Stroke、2001、32:1701〜06;Kyobashi他、J Lipid Res、2001、42:697〜709;Koike T他、Ann Med、2000、32(増刊I):27〜31;Cabral AR他、Am J Med、1996、101:472〜81、を参照のこと)は、β2GPIと、発作、APLS、アテローム性動脈硬化および心筋梗塞との関連を明らかにしている。このタンパク質の隠れたエピトープは酸化型LDLに対する体液性免疫応答および細胞性免疫応答において明らかに関係していたが、上記の研究はどれも、このタンパク質による保護的免疫性を明らかにしていなかった。同様に、HSP65を用いた研究(Birnie DH、Eur Heart J、1998、19:366〜67;Xu Q他、Circulation、1999、100:1169〜74;Gromadzka G他、Cerebrovasc Dis、2001、12:235〜39)は、発作および心臓疾患におけるこの斑関連抗原の関わりを示しており、このことは、体液性の免疫性が引き金因子であるかもしれないことを示唆している。
【0054】
アテローム性動脈硬化における斑抗原免疫性の複雑さが、HSP65およびβ2GPIの両方のタンパク質抗原でLDL受容体欠損(KO)マウスを免疫化し、これにより強い細胞性応答および体液性応答を生じさせ、そして斑形成を高めたSchoenfeld Y他(Autoimmunity、2000、15:199〜202)によって明らかにされた。同様の増大したアテローム形成が、斑抗原で活性化されたリンパ球の受動的移入によって認められた。上記の研究はどれも、免疫寛容性によるアテローム形成性プロセスの阻害を明らかにしていなかった。
【0055】
アテローム性動脈硬化および関連疾患における自己抗原に対する免疫応答の抑制が最近研究されている。Victoria他(米国特許第6207160号および同第5844409号)は、免疫細胞の抗体結合を低下させ、そしてAPLS、SLEおよび他の疾患におけるB細胞寛容性を誘導するために、T細胞エピトープを有しない特異的な非免疫原性β2GPIペプチドを開示している。しかしながら、実際の保護は何ら明らかにされず、その開示は非免疫原性ペプチドの診断的使用を強調している。George J他(Atherosclerosis、1998、138:147〜52)は、MDA LDLを用いた過免疫化による免疫抑制の実現可能性、およびマウスにおけるアテローム形成の低下を明らかにしていた。しかしながら、実用的でないほどの大きい用量の抗原が必要であった。また、斑抗原による免疫化に対する矛盾した応答により、そのような治療の臨床的効力がなくなっている。さらに、上記の研究はどれも、アテローム性動脈硬化を処置するための粘膜寛容性の誘導を開示していない。
【0056】
炎症状態を抑制および防止するための経口寛容性および粘膜寛容性はこの分野では十分に知られている。候補となる状態、抗原および治療様式の例を、例えば、米国特許第5935577号;同第5397771号;同第4690683号(Weiner他)、そして国際特許第EP0886471A1号および国際特許出願公開WO01821951(Haas他)に見出すことができる。米国特許出願第09/806400号(Shoenfeld他、1999年9月30日出願)(これはその全体が本明細書中に組み込まれる)には、LDL受容体欠損マウスにおいて寛容性を誘導するための斑関連抗原の経口投与が教示される。動脈の脂肪縞病変密度を測定することにより、本発明者らは、様々な動物源に由来する酸化型LDLおよびβ2GPIおよびHSP65の経口投与がそれぞれ、アテローム形成の約30%の低下を生じさせることができたことを明らかにした。しかし、典型的には、抗原の経口投与は、寛容性および正確な投薬を達成することに対する数多くの障害をもたらす。すなわち、これらの抗原は消化による作用を受け、これにより、パイエル板のリンパ組織にそれらが提示される前に濃度および分子構造の両方が変化する。さらに、著者らは、粘膜寛容性および経鼻寛容性などの寛容性を誘導するための他の投与経路の効力を調べていなかった。上記の開示が明瞭に明らかにしているように、経口寛容性および粘膜寛容性の誘導に関するパラメーターは、従来の免疫化における抗原性活性から、またはインビトロでの結果さえからも求めることができず、広範囲の経験的な実験から得なければならない。実際には、多くの研究により、免疫系における「反応性と非反応性とのバランス」を操作することにおける固有的な複雑さが明らかにされている。Zivny他(Clin Immunol、2001、101:150〜68)は、「一般に、ある1つの(寛容性誘導の)抗原に対する応答は別の抗原に対する応答を必ずしも予測することができない」と明瞭に述べている。同様に、Hannihen他(Diabetes、2001、50:771〜75)は、抗原の経口投与および鼻腔投与および呼吸器系投与は、寛容性を誘導するのではなく、疾患症状(糖尿病)の出現を生じさせたことを認めた。粘膜寛容性における同様の不一致が、Fujihashi他(Acta Odontol Scand、2001、59:301〜08)、Jiang HR他(Br J Ophthalmol、2001、85:739〜44)によって報告されている。粘膜ワクチン接種法における様々な問題が最近検討されている(Ogra PL他、Clin Microbiol Rev、2001、14:430〜45;Chen H他、J Control Release、2000、67:117〜28;Lehner T他、J Infect Dis、1999、179(増刊3):S489〜92)。
【0057】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、斑関連分子の鼻腔投与により、粘膜寛容性の誘導、抗斑関連抗原の免疫反応性の抑制、そしてアテローム性動脈硬化からの保護がもたらされることを明らかにしている。粘膜寛容性は、その適用の容易さがより大きいために、正確な投薬のために、そして(非経口による投与経路においては特に)消化プロセスおよび代謝プロセスによる寛容化分子の変化の発生が大きく低下しているために好都合である。これらの利点により、アテローム形成性プロセスからの優れた保護、患者の改善されたコンプライアンス、そして低下した治療コストがもたらされる。
【0058】
従って、本発明の1つの局面により、ヒトなどの患者における斑関連分子に対する免疫寛容性を誘導する方法が提供される。
【0059】
本発明のこの局面による方法は、少なくとも1つの斑関連分子の抗原性部分の治療効果的な量を患者(例えば、ヒト)に投与することによって行われる。
【0060】
本明細書中で使用される用語「粘膜投与」は、粘膜関連リンパ組織の成分(1つまたは複数)を有する粘膜に対して任意およびすべての化合物および/または組成物を適用することとして定義される。粘膜投与の非限定的な例には、口内、鼻腔内、耳(中耳)、結膜、膣、直腸などがある。粘膜投与には、例えば、静脈内投与、皮下投与および硬膜外投与は含まれない。
【0061】
本明細書中で使用される用語「斑関連分子」は、斑に関連した状態または疾患の病因、病理発生、症候学および/または処置に物理的または機能的に関連する任意およびすべてのタンパク質分子、炭水化物分子、脂質分子および核酸分子、その一部(抗原性部分)、それらの誘導体、またはそれらの組合せとして定義される。そのような分子は、例えば、酸化型LDL、泡沫細胞の成分などの斑成分であり得るが、これには、体液性および細胞性の実体、例えば、抗体、サイトカイン、増殖因子およびT細胞受容体などもまた含まれ得る。
【0062】
本明細書中で使用される用語「抗原性部分」は、免疫応答を誘発することができる分子の一部分を示す。例えば、分子がタンパク質(例えば、HSP65、β2GPI)である場合、そのような部分は、抗原性エピトープを構成する6アミノ酸〜8アミノ酸の領域を含むことができる。抗原性部分を予測するための様々な方法がこの分野では十分に知られている:例えば、DNASTAR’S PROTEANの配列分析および予測モジュール(DNAStar、マディソン、ウィスコンシン州)。そのため、本発明とともに使用される好適な斑関連分子の抗原性部分を決定することは充分に当業者の能力の範囲内である。
【0063】
斑関連分子(ならびにそのフラグメント、アナログ、一部分および誘導体)は、天然の供給源(それらが通常的に存在する組織または器官)から精製することができ、そしてまた、当業者に十分に知られている技術を使用する、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)および哺乳動物細胞における組換えDNA技術を使用して得ることができる。多くの潜在的な斑関連分子および実際の斑関連分子に対するアミノ酸配列が知られている:例えば、ヒトβ2GPI(アクセション番号AAB21330、Matsuura他)、HSP65(アクセション番号AF65546、Oliviera他)およびヒトマクロファージLDLスカベンジャー受容体(アクセション番号XP_008489、NCBI Annotationプロジェクト)。
【0064】
本発明の方法論を使用して確立された免疫寛容性は、アテローム性動脈硬化、アテローム硬化性の心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄およびステント内狭窄(これらに限定されない)を含む、斑形成に関連する様々な障害の防止および/または処置において使用することができる。アテローム硬化性の心臓血管疾患のいくつかの非限定的な例には、心筋梗塞、冠状動脈疾患、急性冠状動脈症候群、鬱血性心不全、狭心症および心筋虚血がある。末梢血管疾患のいくつかの非限定的な例には、壊疽、糖尿病性血管障害、虚血性腸疾患、血栓症、糖尿病網膜症および糖尿病性腎症がある。脳血管疾患のいくつかの非限定的な例には、発作、脳血管炎症、脳出血および椎骨動脈不全がある。狭窄は血管系の閉塞性疾患であり、これは、アテローム斑および増強された血小板活性によって一般には引き起こされ、冠状動脈血管系に対して非常に重大な影響を及ぼす。再狭窄は、狭窄性の血管系における閉塞を低下させた後に多い進行性の再閉塞である。血管系の能力がステントの機械的支持を必要とする場合、ステント内の狭窄が生じることがあり、処置された血管を再び閉塞させる。
【0065】
いくつかの斑関連分子は本発明の方法との使用に好適である。例には、修飾された脂質、リン脂質およびリンタンパク質、アポリポタンパク質−脂質複合体(LDL−カルジオリピンなど)、HSP65およびβ2GPIなどのタンパク質性分子の特異的なエピトープ、泡沫細胞表面の抗原(LDL受容体など)、そして平滑筋成分(トロポニンなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の好ましい実施形態により、本発明の方法によって利用される斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSP65および/またはそれらの誘導体である。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態により、上記分子の少なくとも2つの組合せが患者に投与される。
【0068】
本発明の方法は、アテローム性動脈硬化に関連しない疾患の防止および/または処置のために使用することができる。例えば、リン脂質、リン脂質代謝産物およびHSP65は、明らかに、アテローム性動脈硬化非関連疾患の病理発生に関係しており、従って、さらなるアテローム性動脈硬化非関連疾患の潜在的な処置に関係している。そのような疾患および症候群には、老化の酸化的ストレス(Onorato JM他、Annal N Y Acad Sci、1998(11月20日)、854:277〜90)、慢性関節リウマチ(RA)(Paimela L他、Ann Rheum Dis、1996(8月)、55(8):558〜9)、若年性慢性関節リウマチ(Savolainen A他、1995、24(4):209〜11)、炎症性腸疾患(IBD)(Sawai T他、Pediatr Surg Int、2001(5月)、17(4):269〜74)、腎臓ガン(Noguchi S他、Biochem Biophys Res Commun、1992(1月31日)、182(2):544〜50)、静脈および動脈の血栓症(Cabral AR他、Am J Med、1996、101:472〜81)、抗リン脂質症候群(APLSまたはAPS)(Koike T他、Ann Med、2000、32(増刊I):27〜31)、全身性エリテマトーデス(米国特許第5344758号および同第6207160号、それぞれ、Krilis他およびVictoria他)が含まれる。従って、本発明の方法は、老化、RA、若年性RA、IBD、SLE、APLS、血栓症およびガンなどのアテローム性動脈硬化非関連疾患を防止および/または処置するために使用することができる。
【0069】
本明細書中に記載される免疫寛容性誘導分子または分子の組合せは、それ自体で、または分子が好適なキャリアまたは賦形剤と混合される薬学的組成物で投与することができる。
【0070】
本明細書中で使用される「薬学的組成物」は、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤などの他の化学的成分を伴う、本明細書中に記載される1つ以上の有効成分の調製物を示す。本発明の薬学的組成物の目的は、生物に対する免疫寛容性誘導分子の粘膜投与を容易にすることである。
【0071】
本明細書中では、用語「有効成分」は、少なくとも生物学的作用(免疫寛容性)を説明することができる斑関連分子の抗原性部分(例えば、酸化LDL、HSP65およびβ2GP−I)あるいはそれらの組合せを示す。
【0072】
以降、交換可能に使用することができる表現「生理学的に受容可能なキャリア」および表現「薬学的に受容可能なキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0073】
本明細書中では、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために薬学的組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0074】
薬物の配合および投与に関する様々な技術を「Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、Easton、PA)、最新版」(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出すことができる。
【0075】
粘膜投与の適切な経路は、例えば、直腸、口、膣および特に経鼻、耳、結膜および呼吸器(気管内を含む)適用を含むことができる。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0077】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、従って、薬学的に使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアを使用して、従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0078】
薬学的組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合する緩衝液(ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的塩の緩衝液など)において配合することができる。透過しなければならないバリアに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0079】
鼻吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定することができる。ディスペンサーで使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、本発明の化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0080】
本発明の薬学的組成物は、結膜などの目の膜に投与することができる。そのため、組成物は、上記に記載されるように、例えば滴剤アプリケーターを使用して適用される液体または半流動性の組成物に配合することができる。無菌性は、当業者に知られている滅菌方法によって確保され得る。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を使用して、坐薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物および膣用組成物に配合することができる。
【0082】
本発明の薬学的組成物は吸入によって投与することができる。吸入によって投与される寛容化剤に対する配合物の例が国際特許出願PCT/US90/07455(1990年12月17日出願)に提供される。吸入によって投与される本発明の薬学的配合物は、必要に応じて使用される成分として、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、可溶化剤および乳化剤、そしてこの分野で十分に知られているタイプの塩を含むことができる。そのような物質の例には、生理学的に緩衝化された生理的食塩水溶液などの規定生理的食塩水溶液、および水が含まれる。
【0083】
本発明のこの代替的な実施形態による寛容化抗原の投与経路はエアロゾル形態または吸入形態においてである。抗原は、乾燥粉末粒子として、またはキャリアガス(例えば、空気またはN2)に懸濁された噴霧化水溶液として投与することができる。好ましいエアロゾル薬学的配合物は、例えば、約1mg〜約300mgの抗原を含有する生理学的に受容可能な緩衝化生理的食塩水溶液を含むことができる。
【0084】
液体に溶解または懸濁されない寛容化抗原の微細に分割された固体粒子の形態での乾燥エアロゾルもまた、本発明の実施において有用である。寛容化抗原は散粉剤の形態であってもよく、約1ミクロン〜5ミクロン(好ましくは2ミクロン〜3ミクロン)の平均粒子サイズを有する微細に分割された粒子を含むことができる。微細に分割された粒子は、この分野で十分に知られている技術を使用して粉砕し、ふるいろ過することによって調製することができる。粒子は、粉末の形態であり得る微細な分割物の所定量を吸入することによって投与することができる。
【0085】
吸入による薬学的配合物において有用であるキャリアおよび/または希釈剤の具体的な非限定的な例には、水、およびリン酸塩緩衝化生理的食塩水溶液(pH7.0〜8.0)などの生理学的に受容可能な緩衝化生理的食塩水溶液が含まれる。吸入による本発明の薬学的配合物または投薬物形態物において使用される好適なキャリアまたは希釈剤のさらなる非限定的な例が米国特許第5935577号(Weiner他)に開示される。
【0086】
本発明の薬学的配合物は、例えば、Weiner他(米国特許第5935577号)によって記載されるネブライザーを使用してエアロゾルスプレー剤の形態で投与することができる。エアロゾル物質が、処置される患者によって吸入される。
【0087】
エアロゾル送達の他のシステム、例えば、Newman,S.P.、Aerosols and the Lung(Clarke,S.W.およびDavia,D.編、197頁〜224頁、Butterworths、ロンドン、英国、1984)に開示されるような加圧計量用量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器などを、本発明を実施するときに使用することができる。本明細書中に開示されるタイプのエアロゾル送達システムは、Fisons Corporation(ベッドフォード、マサチューセッツ)、Schering Corp.(ケニルワース、ニュージャージー)およびAmerican Pharmoseal Co.(バレンシア、カリフォルニア)を含む多数の市販元から入手することができる。
【0088】
本発明に関連して使用される好適な薬学的組成物には、意図された目的を達成するために十分な量で有効成分が含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、免疫応答を誘導し、従って、障害(例えば、アテローム性動脈硬化)の症状を防止または緩和または改善するために効果的な有効成分の量を意味する。
【0089】
有効成分(1つまたは複数)を投与するための最適な方法を確認することは、本明細書中に開示される情報、そして粘膜活性な抗原の投与および自己抗原に関する十分に知られている情報を考慮して決定される。投薬量および組合せおよび処置継続期間の日常的な変化が、アテローム発達の重篤度が測定され得る状況のもとで行われる。投薬量および投与の有用なパラメーターは、自己反応性T細胞数の減少を含む炎症反応の低下、あるいは疾患の少なくとも1つの臨床的または組織学的な症状の発生または重篤度の低下をもたらすパラメーターである。
【0090】
本発明の薬学的組成物は、斑関連疾患を処置または防止することにおいて有用なさらなる化合物(1つまたは複数)の治療効果的な量を含んで配合することができる。1つの好ましい実施形態において、さらなる化合物は、HMGCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)、粘膜アジュバント(例えば、米国特許第6270758号(Staats他)を参照のこと)、コルチコステロイド、抗炎症性化合物(例えば、米国特許第6297260号(Bandarage他)を参照のこと)、鎮痛剤、増殖因子、トキシンおよびさらなる寛容化因子である。さらに、本発明の方法および組成物の使用は、逆のことが具体的に示される場合を除き、上記の疾患または状態に対する他の治療の開始または継続を妨げないことが理解される。
【0091】
本発明の方法において使用される任意の調節物の場合、治療効果的な量または用量を、インビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから最初に見積もることができる。例えば、用量は、所望する濃度および力価を達成するための動物モデルにおいて明確化することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0092】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、サイトカインおよび非サイトカインの相乗剤を、斑関連分子による粘膜寛容化の有効性を増強するために処置において組み合わせることができる。他のサイトカイン相乗剤(I型インターフェロン)の経口的および非経口的な使用が国際特許出願PCT/US95/04120(1995年4月7日出願)に記載される。Th2増強サイトカインの投与がPCT出願第PCT/US95/04512(1995年4月7日出願)に記載される。例えば、IL−4およびIL−10を、PCT/US95/04512に記載される様式で投与することができる。
【0093】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的手法によりインビトロで決定することができる。これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬物形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第1章、1頁を参照のこと)。
【0094】
投薬量および投薬間隔は、寛容性の誘導に十分な有効成分の粘膜レベルをもたらすために個々に調節することができる。「寛容量」はそれぞれの調製物について異なるが、インビトロでのデータから推定することができる。寛容量を達成するために必要な投薬量は、個々の特性および投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿濃度を測定するために使用することができる。
【0095】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は単回投与または多数回の投与にすることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0096】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0097】
本発明の組成物は、所望する場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供することができる。パックは、例えば、吸入器を含むことができる。パックまたは吸入器には、投与に関する説明書が伴ってもよい。パックまたは吸入器はまた、医薬品の製造または使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に関連する通知によって規定され得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局の承認を反映する。そのような通達は、例えば、処方薬物または承認された製品添付文書に関する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得る。適合性の薬学的キャリアにおいて配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されているかのように、調製することができ、適切な容器に入れられ、そして指示された状態の処置について表示することができる。
【0098】
本発明の寛容化組成物の投与および方法は、皮内適用、皮下適用および腹腔内適用などのさらなる非粘膜方法によって行われ得ることが理解される。
【0099】
本発明の別の局面により、アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態に対する斑関連分子の粘膜投与の効果を測定するためのアッセイが提供される。このアッセイは、そのような疾患または状態を有する患者に斑関連分子またはその組成物を粘膜投与し、そしてアテローム形成または炎症の少なくとも1つの指標を評価することによって行われる。好ましい実施形態において、斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSPおよび/またはそれらの誘導体である。別の実施形態において、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分が粘膜投与される。この場合、斑関連分子は、天然に存在する分子または合成された分子である。
【0100】
本発明のアッセイに関連して評価され得るアテローム形成または炎症の指標はこの分野では知られている。いくつかの非限定的な例には、本明細書中、下記の実施例の節に記載されるように、脂肪縞病変カウントなどの組織学的方法、および刺激指数などの免疫学的方法がある。アテローム性動脈硬化の進行を、例えば、アテローム形成性の餌で飼育されるアテローム性動脈硬化発症性マウスにおいて評価することができる(例えば、George J他、Circulation、1999、99:2227〜30を参照のこと)。炎症を、この分野で知られている細胞学的技術、免疫学的技術、生化学的技術、分子的技術および遺伝学的技術によって評価することができる。
【0101】
本発明のさらなる目的および利点および新規な特徴は、限定であることを意図しない下記の実施例を検討したとき、当業者に明らかになる。さらに、本明細書中上記に示され、そして下記の請求項の節に記載される本発明の様々な実施形態および局面のそれぞれは、実験的裏づけが下記の実施例に見出される。
【0102】
実施例
次に、下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する。
【0103】
一般に、本明細書中で使用される命名法および本発明において用いられる実験室手順には生化学的技術および免疫学的技術が含まれる。そのような技術は文献に詳細に説明されている。例えば、「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、第I巻〜第III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」、第I巻〜第III巻、Coligan J.E.編(1994);Stites他編、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994);MishellおよびShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、New York(1980)を参照のこと。様々な利用可能な免疫アッセイが特許および科学文献に広範囲に記載されている:例えば、米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;そして「Methods in Enzymology」、第1巻〜第317巻、Academic Press;Marshak他。これらはすべて、全体が本明細書中に示されているかのように参考として組み込まれる。他の一般的な参考文献がこの文書中に示されている。参考文献中の手順は、この分野では十分に知られていると考えられ、そして読者の便宜のために提供される。参考文献に含まれる情報はすべて、参考として本明細書中に組み込まれる。
【0104】
材料および実験方法
動物
本発明者らの実験において使用されたアポE欠損マウスは、アテローム性動脈硬化になりやすいC57BL/6J−ApoEtm1unc系統である。ApoEtm1unc変異についてホモ接合マウスは、月齢および性に影響を受けない、総血漿コレステロールレベルの著しい増大を示す。近位大動脈における脂肪縞が3月齢で見出される。病変は月齢とともに増大し、そして前アテローム硬化性病変のより進行した状態に典型的な、脂質がより少ないが、より細長くなった細胞を有する病変に進行する。
【0105】
系統の開発:ApoEtm1unc変異系統はノースカロライナ大学(Chapel Hill)においてノブヨ・マエダ博士の研究室で開発された。129由来のE14Tg2aのES細胞株が使用された。使用されたプラスミドはpNMC109と名付けられた。始祖系はT−89である。C57BL/6J系統は、ApoEtm1unc変異をC57BL/6Jマウスに10回戻し交配することによって作製された(11、12)。
【0106】
このマウスは、12時間の明暗周期のもと、22℃〜24℃でSheba Hospital Animal Facility(Tel−Hashomer、イスラエル)において維持され、0.027%のコレステロール(約4.5%の総脂肪)を含有する規定脂肪餌の実験用餌(Purina Rodent Laboratory Chow No.5001)および水が自由に与えられた。「西洋餌」(TD96125、Harlan Teklad、カロリーの42%は脂質から、43%は炭水化物から、及び15%はタンパク質からなる)は、標準化された、高脂肪アテローム生成餌を示している。
【0107】
経鼻寛容性:経鼻寛容性を、10μlのPBSの総容量で酸化型LDLまたはβ2GPIまたはHSP65を鼻腔内投与することによって誘導した。鼻腔内投与は、軽く鎮静化させたマウス(12週齢〜16週齢)に対して行われ、各マウスには、示された濃度で、1用量あたり3回の抗原が1日おきに与えられた。アテローム形成を、最後の鼻腔内投与を行った後、その日から開始された5週間の西洋餌によって誘導した。コントロールには、示されるように、同一の方法で等量のBSAおよび/またはPBSが与えられた。血漿サンプルを、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルを評価するためにすべてのマウスから得た。マウスは、5週間の西洋餌の後、本明細書中下記に示されるようにアテローム性動脈硬化の評価のために屠殺された。
【0108】
経口寛容性:比較のために、斑関連分子に対する経口寛容性を、経鼻寛容性と類似する方法で、1日おきに3回の抗原を与えることによって誘導した(経口寛容性の誘導の詳細な説明については、米国特許出願第09/806400号(Shoenfeld他、1999年9月30日出願)を参照のこと)。
【0109】
抗原の調製
β2GPI:ヒトβ2GPIを、Gharavi他(J Clin Invest、1992、92:1105〜09)によって記載されるように、健康な成人の血清から精製した。
【0110】
酸化型LDL:ヒトLDL(密度=1.019〜1.063g/l)を、調製用超遠心分離(50,000rpm/分、22分)、洗浄、150mMのEDTA(pH7.4)に対する透析、凝集物を除くためのろ過(0.22μmの細孔サイズ)、そして窒素下での貯蔵によって絶食者の血漿から調製した。LDLの酸化を、透析されたEDTA非含有LDLを硫酸銅(10μM)とともに37℃で24時間インキュベーションすることによって行った。リポタンパク質の酸化を、マロンジアルデヒド(MDA)等価物を測定する、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の分析によって確認した。
HSP65:組換えマイコバクテリアHSP−65(これは記載(Prohaszka Z他、Int Immunol、1999、11:1363〜70)に従って調製された)はM.Singh博士(ブラウンシュワイク、ドイツ)から分与された。
【0111】
免疫化:ヒトβ2GPIを用いた皮下免疫化:ヒトβ2GPIを上記に記載されるようにヒト血漿プールから調製した。免疫化のために、ヒトβ2GPIをPBSに溶解して、等容量のフロイント不完全アジュバントと混合した。免疫化を、0.1mlの容量における10μg抗原/マウスの単回皮下注射によって行った。斑関連分子の最後の粘膜投与を行った3日後、マウスは1回の免疫化を受け、そして免疫化の10日後に屠殺された。
【0112】
コレステロールレベルの測定:実験が完了したとき、1ml〜1.5mlの血液を心臓穿刺によって得て、EDTA含有バイアルに加え、遠心分離により血漿を分離する。総血漿コレステロールレベルを、自動化された酵素技術(Boehringer Mannheim、ドイツ)を使用して測定した。
【0113】
FPLC分析:リポタンパク質のコレステロール含有量および脂質含有量の高速タンパク質液体クロマトグラフィー分析を、セファロース6HR10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Inc.、Peapack、NJ)をFPLCシステム(Pharmacia LKB、FRAC−200、Pharmacia、Peapack、NJ)において使用して行った。300μlの最少サンプル容量(3匹のマウスからプールされた血液が1:2希釈され、ろ過され、その後、負荷された)が、200μlのサンプルループを完全に満たすために、自動化サンプラーのサンプリングバアイルにおいて必要とされた。画分10〜40が集められ、各画分は0.5mlを含有した。各画分からの250μlのサンプルを、新しく調製されたコレステロール試薬またはトリグリセリド試薬とそれぞれ混合し、37℃で5分間インキュベーションして、分光光度法により500nmにおいてアッセイした。
【0114】
アテローム性動脈硬化の評価:アテローム硬化性脂肪縞病変の定量化を、以前の記載(George J他 Circulation 1999;99:2227−30)のように大動脈洞における病変サイズを計算することによって、そして大動脈における病変サイズを計算することによって行った。簡単に記載すると、生理的食塩水−Tris−EDTAで灌流した後、心臓および大動脈を動物から摘出して、周辺の脂肪を注意深く除いた。心臓の上側部分をOCT培地(10.24%(w/w)ポリビニルアルコール;4.26%(w/w)ポリエチレングリコール;85.50%(w/w)非反応性成分)に包埋し、凍結した。大動脈洞(400μm)全体を1つおきに切片(10μm厚)を分析のために採取した。大動脈洞の遠位部分が、大動脈が心臓につながる部分である3つの弁尖によって認められた。切片は、オイルレッドOによる染色の後、脂肪縞病変について評価された。切片あたりの病変面積が、数字を付けた未同定標本を計数する観測者によってグリッドに基づいてスコア化された。大動脈は心臓から切開され、周りの付随的組織が除かれた。大動脈の固定および血管のズダン染色を以前の記載(George J他 Circulation 1999;99:2227−30)のように行った。
【0115】
増殖アッセイ:マウスは、アテローム性動脈硬化の評価について記載されるように試験された抗原に暴露され、その後、精製ヒトβ2GPIから上記のように調製された10μgのβ2GPIを含む0.1mlのPBSによって皮下的に免疫化された(最後の暴露から1−3日)。
【0116】
増殖は、以下のようにβ2GPIによる免疫化の10日後に下記のようにアッセイされた。鼠径リンパ節を、組織を100メッシュのふるいで処理することにより調製した。赤血球を、冷却された無菌の2回蒸留水(6ml)で30秒間溶解して、2mlの3.5%NaClを加えた。不完全な培地を加え(10ml)、細胞を1,700rpmで7分間遠心分離し、そしてRPMI培地に再懸濁して、1:20希釈(10μlの細胞+190μlのトリパンブルー)において血球計で計数した。増殖は、96ウエルマイクロタイタープレートにおいて、充填細胞(1×106細胞/ml)の100μlの三連サンプルにおけるDNA内への[3H]チミジンの取り込みによって測定された。β2GPIの三連のサンプル(10μg/ml、100μl/ウエル)を加えて、細胞を72時間インキュベーションし(37℃、5%CO2および約98%の湿度)、そして10μlの3[H]チミジン(0.5μCi/ウエル)を加えた。さらに1日間インキュベーションした後、細胞ハーベスター(Brandel)を使用して、細胞を集めてガラス繊維フィルターに移し、そしてβカウンター(Lumitron)を使用して計数した。増殖は、最後の12時間のインキュベーションのときにおけるDNA内への[3H]チミジンの取り込みによって測定された。結果は、刺激指数(S.I.)、すなわち、抗原の平均放射能(cpm)と、抗原の非存在下で得られる平均バックグラウンド(cpm)との比として表される。標準偏差は常に平均cpmの10%未満であった。
【0117】
統計学的分析:一元ANOVA検定を使用して、独立した値を比較した。p<0.05を統計学的に有意として採用した。
【0118】
実施例1
低用量の斑関連分子(酸化型LDL、ヒトβ2GPIおよびHSP65)を用いた経鼻寛容性の誘導による遺伝的素因(アポE欠損)マウスにおけるアテローム形成の阻害
【0119】
本発明者らは、本実施例において、低用量の斑関連分子(酸化型LDL、β2GPIおよびHSP65)に対する鼻腔暴露により、これらの抗原に対する寛容性の誘導およびアテローム形成の著しい阻害がもたらされることを初めて明らかにしている。従って、精製された酸化型LDL、ヒトβ2GPIおよび組換えマイコバクテリアHSP65に対する鼻腔暴露が、アポE欠損マウスにおいてアテローム形成を抑制することにおけるそれらの有効性について比較された。63匹のオスの9週齢〜13週齢のアポE/C57マウスが5つの群に分けられた。群A(HSP−65)(n=12)では、経鼻寛容性が、PBSに懸濁された組換えマイコバクテリアHSP65を1日おきに5日間にわたり投与すること(10μg/マウス/10μl)によって、材料および方法において記載されるように誘導された。群B(H−OxLDL)(n=14)では、経鼻寛容性が、10μg/マウス/10μlの酸化された精製ヒトLDLを、PBSに懸濁して、1日おきに5日間にわたり投与することによって、材料および方法において記載されるように誘導された。群Cのマウス(B2GPI)(n=13)には、マウスあたり、10μg/マウス/10μlのヒトβ2GPIが、材料および方法において記載されるように鼻腔内投与により、1日おきに5日間にわたり与えられた。群Dのマウス(BSA)(n=12)には、マウスあたり、10μg/マウス/10μlのウシ血清アルブミン(BSA)が、材料および方法において記載されるように鼻腔内投与により、1日おきに5日間にわたり与えられた。群Eのマウス(PBS)(n=12)には、鼻腔内投与により、マウスあたり10μgのPBSが与えられた。マウスは、脂質プロフィルを測定するために、投与前(時間0)および実験終了時(終了)に採血された。アテローム形成が、最後の投与が行われた8週間後に、上記に記載されるように心臓および大動脈において評価された。マウスは、体重が実験期間中2週間毎に測定された。すべてのマウスには、水が自由に与えられ、そして4.5重量%の脂肪(0.02%のコレステロール)を含有する通常の実験餌が最後の抗原暴露まで与えられ、その後、屠殺されるまで「西洋」餌が与えられた。
【0120】
【表1】
【0121】
図1から理解され得るように、表1に示される結果は、模擬抗原(BSA)またはPBSにさらされたコントロールのマウスと比較したとき、低用量(10μg/マウス)の斑関連分子に対する鼻腔暴露を受けているマウスの組織において測定されるアテローム形成の驚くほど効果的な阻害を明らかにしている。さらに、経鼻寛容性はその保護様式において特異的である:明らかに、経鼻寛容性の誘導は、体重増加、トリグリセリドまたはコレステロールの血中レベルなどの、測定された他の一般的なパラメーターに対する著しい影響を有していない。従って、酸化型LDL、β2GPIおよびHSP65のこれらの抗原性斑関連分子は経鼻寛容性の非常に強力な誘導因子であり、驚くほど低い用量(10μg/マウス)および短時間の暴露(3日間)により、これらの遺伝的感受性のアポE欠損マウスにおけるアテローム形成からの著しい(65%を越える)一貫した保護がもたらされる。
【0122】
実施例2
HSP65を用いた経鼻寛容性の誘導による遺伝的素因(アポE欠損)マウスにおけるアテローム形成の優れた阻害
本発明者らは、本実施例において、非常に低い用量の斑関連分子HSP65に対する鼻腔暴露により、この抗原に対する寛容性の誘導およびアテローム形成の阻害がもたらされることを初めて明らかにしている。従って、低用量および非常に低い用量のヒト組換えHSP65に対する鼻腔暴露が、アポE欠損マウスにおいてアテローム形成を抑制することにおけるそれらの有効性について比較された。58匹のオスの12週齢〜16週齢のアポE/C57マウスが4つの群に分けられた。群A(HSP−65高)(n=14)では、経鼻寛容性が、10μg/マウス/10μlの組換えヒトHSP65を、PBSに懸濁して、1日おきに5日間にわたり鼻腔内投与することによって、材料および方法において記載されるように誘導された。群B(HSP−65低)(n=16)では、経鼻寛容性が、1μg/マウス/10μlの組換えヒトHSP65を、PBSに懸濁して、1日おきに5日間にわたり投与することによって、材料および方法において記載されるように誘導された。群Cのマウス(BSA)(n=14)には、マウスあたり、1μg/マウス/10μlのBSAが、鼻腔内投与により1日おきに5日間にわたり与えられた。群Dのマウス(PBS)(n=14)には、鼻腔内投与により、マウスあたり10μlのPBSが与えられた。マウスは、脂質プロフィルを測定するために、投与前(時間0)および実験終了時(終了)に採血された。アテローム形成が、最後の投与が行われた8週間後に、上記に記載されるように心臓および大動脈において評価された。マウスは、体重が実験期間中2週間毎に測定された。すべてのマウスには、水が自由に与えられ、そして4.5重量%の脂肪(0.02%のコレステロール)を含有する通常の実験餌が最後の抗原暴露まで与えられ、その後、屠殺されるまで「西洋」餌が与えられた。
【0123】
【表2】
【0124】
図2から理解され得るように、表2に示される結果は、模擬抗原(BSA)またはPBSにさらされたコントロールのマウスと比較したとき、非常に低い用量(1μg/マウス)のHSP65に対する鼻腔暴露を受けているマウスの組織において測定されるアテローム形成の阻害の優れた有効性を明らかにしている。さらに、経鼻寛容性はその保護様式において特異的である:明らかに、経鼻寛容性の誘導は、体重増加、トリグリセリドまたはコレステロールの血中レベルなどの、測定された他の一般的なパラメーターに対する著しい影響を有していない。従って、抗原性斑関連分子HSP65は経鼻寛容性の極めて強力な誘導因子であり、非常に低い用量でさえ、遺伝的感受性のアポE欠損マウスにおけるアテローム形成からの著しい(約70%)の保護をもたらしており、これは、経口寛容性の誘導によって達成される保護(30%、米国特許出願第09/806400号(Shoenfeld他、1999年9月30日出願)を参照のこと)よりも非常に優れている。
【0125】
実施例3
ヒトβ2GPIの鼻腔内投与による遺伝的素因(アポE欠損)マウスにおける特異的な抗β2GPI免疫反応性の優れた抑制
斑関連分子に対する粘膜暴露によって誘導される寛容性は、これらの斑関連分子の抗原性部分に対する特異的な免疫応答の抑制によって媒介され得る。ヒトβ2GPIに対する粘膜(鼻腔および経口)暴露に応答したリンパ球増殖をアポE欠損マウスにおいて測定した。9匹のオスの5週齢のアポE/C57欠損マウスが3つの群に分けられた。群A(n=3)では、経口寛容性が、0.2mlのPBSに懸濁された100μg/マウスのβ2GPIを、1日おきに5日間、上記に記載されるように、胃管法により投与することによって誘導された。群B(n=3)では、経鼻寛容性が、10μlのPBSに懸濁された10μg/マウスのβ2GPIを、1日おきに5日間、上記に記載されるように、鼻腔内投与することによって誘導された。群Cのマウス(n=3)は、1日おきに5日間にわたり、200μlのPBSの経口投与を受けた。免疫反応性を、最後の投与が行われた翌日に、材料および実験の節において上記に記載されるように、ヒトβ2GPIを用いた免疫化によってすべてのマウスにおいて刺激した。免疫化の10日後、リンパ節を増殖アッセイのために集めた。すべてのマウスには、4.5重量%の脂肪(0.02%のコレステロール)を含有する通常の実験餌および水が自由に与えられた。
【0126】
【表3】
【0127】
図3から理解され得るように、表3に示される結果は、アポE欠損マウスのリンパ節における増殖の阻害によって測定されたとき、ヒトβ2GPI抗原に対する免疫反応性の著しい抑制を明らかにしている。低いアテローム形成阻害用量(10μg/マウス)のヒトβ2GPIに対する鼻腔内暴露を受けているマウスに由来するリンパ球は、経口暴露マウスおよびコントロール(PBS)のマウスと比較したとき、β2GPIによる免疫化を行った後の刺激指数が非常に低下していることを示した。経鼻寛容性の誘導に関する以前の研究は、体重増加、トリグリセリドまたはコレステロールの血中レベル、あるいは免疫能力などの、測定された他のパラメーターに対する著しい影響を示していないので(上記の実施例を参照のこと)、これらの結果は、抗β2GPI免疫反応性の抑制が特異的であることを示している。従って、精製された斑関連分子β2GPIの鼻腔内投与は、これらの遺伝的感受性アポE欠損マウスにおける免疫原性かつアテローム形成性の斑関連分子に対する細胞性免疫応答を弱める優れた方法である。
【0128】
本発明がその具体的な実施形態とともに記載されているが、多くの代替および改変および変化が当業者には明らかであることはいうまでもないことである。従って、本発明は、添付された請求項の精神および広い範囲に含まれるすべてのそのような代替および改変および変化を包含するものとする。本明細書中に言及されているすべての刊行物および特許および特許出願およびそのアクセション番号により確認される配列は、個々の刊行物または特許または特許出願またはそのアクセション番号により確認される配列のそれぞれが、参考として本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個々に示されていたかのようにそれと同じ程度に、参考として本明細書中にその全体が組み込まれる。さらに、本明細書中におけるいずれかの参照事項の引用または同一化は、そのような参照事項が本発明に対する先行技術として利用できるという許可として解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】低用量の斑関連分子を投与することによって誘導される経鼻寛容性による、アポE欠損マウスにおける初期のアテローム形成の阻害を例示する。
【図2】非常に低い用量のHSP65に対する鼻腔内暴露によって誘導される粘膜寛容性による、アポE欠損マウスにおける初期のアテローム形成の優れた阻害を例示する。
【図3】ヒトβ2GPIへの鼻腔暴露によって誘導されるアテローム硬化性斑抗原に対する免疫反応性の優れた抑制を例示する。
Claims (16)
- アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄の防止および/または処置を必要とする患者において、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄を防止および/または処置するための薬学的組成物であって、有効成分として、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分またはその薬学的な塩の治療効果的な量を含み、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み、そして粘膜投与のために設計される薬学的組成物。
- 前記斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項1の組成物。
- 少なくとも1つの斑関連分子の前記抗原性部分は、天然に存在する分子、または合成された分子である請求項1の組成物。
- 薬学的組成物は、鼻腔投与、呼吸器系投与、耳投与および/または結膜投与のために配合される請求項1の組成物。
- 前記少なくとも1つの斑関連分子の前記少なくとも抗原性部分は、患者における斑成分に対する免疫反応性を低下させるように選択される請求項1の組成物。
- アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄からなる群から選択される少なくとも1つの障害の防止および/または処置における使用のためにパッケージおよび識別される請求項1の組成物。
- HMGCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、粘膜アジュバント、コルチコステロイド、抗炎症性化合物、鎮痛剤、増殖因子、トキシンおよびさらなる寛容化抗原からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物の治療効果的な量をさらに含む請求項1の組成物。
- アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態に対する斑成分の粘膜投与の効果を明らかにするためのアッセイであって:
(a)アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態を有する患者に、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分を粘膜投与すること、および
(b)前記患者におけるアテローム形成の少なくとも1つの指標を評価し、それにより、アテローム性動脈硬化に関連する疾患または状態に対する前記少なくとも1つの斑関連分子の前記少なくとも抗原性部分の粘膜投与の効果を明らかにすること、
を含むアッセイ。 - 前記斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項8のアッセイ。
- 前記少なくとも1つの斑関連分子の前記抗原性部分は、天然に存在する分子、または合成された分子である請求項8のアッセイ。
- アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄の防止および/または処置を必要とする患者において、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狭窄、再狭窄および/またはステント内狭窄を防止および/または処置するための方法であって、少なくとも1つの斑関連分子の少なくとも抗原性部分の治療効果的な量を患者に粘膜投与することを含む方法。
- 前記斑関連分子は、酸化型LDL、β2GPI、HSPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項11の方法。
- 少なくとも1つの斑関連分子の前記抗原性部分は、天然に存在する分子、または合成された分子である請求項11の方法。
- 前記少なくとも1つの斑関連分子の前記抗原性部分の投与は、鼻腔経路、呼吸器系経路、耳経路および/または結膜経路を介して行われる請求項11の方法。
- 少なくとも1つの斑関連分子の前記少なくとも抗原性部分の投与は、前記患者における前記少なくとも1つの斑関連分子に対する免疫反応性を低下させる請求項11の方法。
- 前記少なくとも1つの斑関連分子の前記少なくとも抗原性部分は、HMGCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、粘膜アジュバント、コルチコステロイド、抗炎症性化合物、鎮痛剤、増殖因子、トキシンおよびさらなる寛容化抗原からなる群から選択される、治療効果的な量の化合物とともに投与される請求項11の方法。
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