JP2005502358A - 真菌グリオキサールオキシダーゼ - Google Patents
真菌グリオキサールオキシダーゼ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005502358A JP2005502358A JP2003527093A JP2003527093A JP2005502358A JP 2005502358 A JP2005502358 A JP 2005502358A JP 2003527093 A JP2003527093 A JP 2003527093A JP 2003527093 A JP2003527093 A JP 2003527093A JP 2005502358 A JP2005502358 A JP 2005502358A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polypeptide
- seq
- nucleic acid
- glyoxal oxidase
- sequence
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N9/00—Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
- C12N9/0004—Oxidoreductases (1.)
- C12N9/0008—Oxidoreductases (1.) acting on the aldehyde or oxo group of donors (1.2)
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A01—AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
- A01N—PRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
- A01N55/00—Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators, containing organic compounds containing elements other than carbon, hydrogen, halogen, oxygen, nitrogen and sulfur
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A01—AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
- A01N—PRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
- A01N61/00—Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing substances of unknown or undetermined composition, e.g. substances characterised only by the mode of action
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
- A61P31/10—Antimycotics
Landscapes
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Zoology (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Pest Control & Pesticides (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Environmental Sciences (AREA)
- Dentistry (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Agronomy & Crop Science (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Oncology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Public Health (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Communicable Diseases (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Enzymes And Modification Thereof (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
- Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
Abstract
本発明は、殺真菌剤を特定するための方法、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌のポリペプチドをコードする核酸、それらによってコードされるポリペプチド、並びに殺真菌剤の標的としての、および新規殺真菌活性化合物の特定への使用に関する。本発明は、前記ポリペプチドの修飾因子を検出するための方法、および前記ポリペプチドを含むトランスジェニック生物にも関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は殺真菌剤を特定するための方法並びにグリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌ポリペプチドをコードする核酸、それらによってコードされるポリペプチド、および殺真菌剤の標的としてのそれらの使用および新規殺真菌活性化合物の特定へのそれらの使用、並びにこれらのポリペプチドの修飾因子を発見する方法、並びに、最後に、グリオキサールオキシダーゼの機能を有する真菌ポリペプチドをコードする配列を含むトランスジェニック生物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば農業において、毎年相当の損害につながる望ましくない真菌の成長は真菌剤の使用によって制御することができる。真菌剤に対する要求は、それらの活性、それらのコストおよび、特には、生態学的安定性に関して絶えず増加している。したがって、強力かつ生態学的に安定な新規殺真菌剤に発展可能な新規物質または物質クラスに対する需要が存在する。一般には、そのような新規先導化合物は温室試験において探索することが必要である。しかしながら、そのような試験は多大な労力の投入および多大な財政的投入を必要とする。したがって、温室において試験することができる物質の数が制限される。そのような試験の代替物は高スループットスクリーニング法(HST)として知られるものの使用である。これは、多数の個々の物質を、細胞に対するそれらの効果、個々の遺伝子産生物または遺伝子に関して自動化法において試験することを包含する。特定の物質が効果を有することが見出されたとき、それらを通常のスクリーニング法において研究し、かつ適切であるならば、さらに開発することができる。
【0003】
殺真菌剤の有利な標的が必須生合成経路において頻繁に探索される。理想的な殺真菌剤は、さらに、真菌の病原性の発現において決定的な重要性を有する遺伝子産生物を阻害する物質である。そのような殺真菌剤の一例は、例えば、真菌のメラニン生合成を阻害し、したがって、無傷の付着器(付着器官)の形成を妨げる活性物質カルプロパミドである。しかしながら、真菌に対してそのような役割を果たす既知遺伝子産生物の数は非常に少数のみである。さらに、対応する生合成経路の阻害によって標的細胞の栄養要求を導き、結果として、病原性の損失を導く殺真菌剤が公知である。したがって、例えば、エチリモールの添加によるアデノシンデアミナーゼの阻害はブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)における病原性の有意の低下を導く(Hollomon,D.W.1979)。
【0004】
バシジオミセテス(Basidiomycetes)に属する真菌ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)は欠乏条件下において木材リグニンを分解することが可能である。この分解はマンガン依存性リグニンペルオキシダーゼ(MnPs)およびリグニンペルオキシダーゼ(LiPs)によって酵素的に生じる。過酸化水素(H2O2)がこれらの酵素の基質として作用する(Kerstenら,1990)。過酸化水素は、以下の反応を触媒するグリオキサールオキシダーゼによって提供される:
RCHO+O2+H2O → RCO2H+H2O
この反応においては、アルデヒド官能基がカルボン酸に酸化され、それに対して元素状酸素が過酸化水素に還元される。この酵素の基質特異性は広範であるため、一連の単純アルデヒド、α−ジカルボニル化合物および様々なα−ヒドロキシカルボニル化合物、例えば、HCHO、CH3CHO、CH2OHCHO、CHOCHO、CHOCOOH、CH2OHCOCH2OH、CHOCHOHCH2OHまたは他のCH3COCHOが基質として受容される。加えて、リグニンペルオキシダーゼによるリグニンモデル基質の変換の他の産生物もグリオキサールオキシダーゼによって変換され(Kerstenら,1995)、特には、リグノセルロースの主成分で成長する場合における中間代謝物としてのグリオキサールおよびメチルグリオキサールが変換される(Kerstenら,1993)。グリオキサールオキシダーゼによってリグニンを分解する真菌ファネロカエテ・クリソスポリウムの能力を別にすると、この酵素が真菌に対して発揮する他の機能は知られていない。
【0005】
ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼは、リグニン生分解経路の必須成分を構成する銅金属酵素である(Whittakerら,1996)。この酵素は分泌される。グリオキサールオキシダーゼは、まずペルオキシダーゼに過酸化水素を提供し、次に、リグノ分解培養の培地中に二次代謝物として見出される、メチルグリオキサールおよびグリオキサールを主要基質として変換する(Kerstenら,1987)。
【0006】
立体視的研究は、真菌金属酵素ガラクトースオキシダーゼにおける場合と同様に、銅イオンに結合する異常フリーラジカルが活性中心に存在することを示している。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼと本発明によるU.メイジス(U.maydis)グリオキサールオキシダーゼ1(Glo1)との相同性比較(図1を参照)およびB.シネレア(B.cinerea)との相同性比較もU.メイジス酵素をラジカル銅オキシダーゼとして知られる酵素クラスに割り当てる。この酵素クラスにおいては、触媒モチーフは、それに結合するラジカルを有し、かつ銅イオンに結合するアミノ側鎖によって形成される(式I)。
【0007】
【化1】
【0008】
最後に、ガラクトースオキシダーゼおよびファネロカエテ・グリオキサールオキシダーゼの配列整列化とそれに続く部位特異的突然変異誘発(Whittakerら,1999)が他の触媒的に重要なアミノ酸を割り当てることを可能にした。EPR立体視研究により銅(II)複合体中に2つの窒素リガンドが特定され、吸収およびラマン分光によって活性中心内にチロシンおよびチロシン−システイン二量体リガンドが特定された。これらのアミノ酸は以下のアミノ酸および位置であった:
チロシンリガンド1:Tyr178(U.メイジス)およびTyr273(B.シネレア)、
チロシンリガンド2:Tyr452(U.メイジス)およびTyr499(B.シネレア)、
ヒスチジンリガンド1:His453(U.メイジス)およびHis500(B.シネレア)、
ヒスチジンリガンド2:His555(U.メイジス)およびHis597(B.シネレア)、
システイン残基:Cys105(U.メイジス)およびCys209(B.シネレア)。
【0009】
したがって、これらの保存されたアミノ酸(これらはCu2+イオン結合に特有であり、かつ本発明によるポリペプチドの全てに存在する)はこれらの酵素の構造的に特有の特徴である。電子1個を伝達しながらプロセスを触媒する他のラジカル酵素とは対照的に、2個の電子がこの触媒中心によって伝達される。最も完全に研究されている、このクラスのラジカル銅オキシダーゼからの酵素はガラクトースオキシダーゼであり、その結晶構造も解明されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ファネロカエテ・クリソスポリウム以外の真菌生物に由来するグリオキサールオキシダーゼは未だに不明である。
【0011】
今や完全なcDNAクローンおよびグリオキサールオキシダーゼをコードする対応遺伝子(ゲノム配列またはcDNA配列)が本発明内でウスチラゴ・メイジス(Ustilago maydis)およびボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)から単離されている。
【0012】
黒穂病真菌ウスチラゴ・メイジス、担子菌類はトウモロコシ植物を攻撃する。この疾病はトウモロコシが成長する全ての地域において生じるが、乾燥年の間のみに重要性を帯びる。典型的な症状はこぶ様のこぶし大腫脹(ブリスター)であり、これは全ての地上植物部分に形成される。これらのこぶは、まず、白っぽい灰色粗膜によって覆われる。この膜が破裂すると、ウスチロスポア(ustilospore)の黒色塊(これは最初はグリース状であり、後に粉末状となる)が放出される。ウスチラゴ(Ustilago)属のさらなる種は、例えば、U.ヌーダ(U.nuda)(オオムギおよびコムギの裸黒穂病を生じる)、U.ニグラ(U.nigra)(オオムギの墨黒穂病を生じる)、U.ホーデイ(U.hordei)(オオムギの堅黒穂病を生じる)およびU.アベナエ(U.avenae)(オート麦の裸黒穂病を生じる)である。
【0013】
真菌ボトリチス・シネレア、子嚢菌類は「灰色カビ(grey mould)」として知られるものを生じる。これは農業において深刻な損害を一貫して生じる疾病であり、したがって、積極的に制御される。これは植物の全ての部分に感染することができるが、特には、ベリー類の熟成に対して有害である。この普遍的な真菌は雑食性であり、かつ木材および植物残滓上で腐生菌として、さもなければ菌糸もしくは菌核として生存する。これは創傷を介して侵入するが、開花後に花の残滓を介して植物に感染することも可能である。これは未熟なベリー類においては顕在しない;その発症が劇症であるのは熟成が開始された後のみである。
【0014】
今や、ノックアウト変異体が上記ゲノムDNAまたはその断片の助けを借りてU.メイジスおよびB.シネレアの両者において産生されている;驚くべきことに、両者の場合、すなわち、担子菌類および子嚢菌類(これらの両者は植物病原性である)において、それらは真菌の無病原性を導いた。これらの異なる遺伝子、すなわち、glo1、glo2およびglo3(これらは全てグリオキサールオキシダーゼをコードする)がウスチラゴ・メイジスにおいて特定できることに注意しなければならない。本発明の文脈においては、遺伝子glo1(配列番号1および3を参照)の場合において上述の効果が得られ、それに対して、対照的に、glo2のノックアウトには真菌の病原性に対する効果がないことが見出されている。glo3は、glo1と同様に、病原性決定基としての無病原性スクリーニングの間に変異体として特定された。これらの異なる表現型の理由は、異なる酵素の発現パターン、それらの細胞局在化、さもなければ酵素の特異的活性において特定することができる。しかしながら、明らかに、この真菌の病原性において決定的な役割を果たすのは間違いなくglo1である。
【0015】
CL13株の形態学的に注目すべき変異体がREMI変異原性アプローチ(制限酵素介在統合、例えば、Kahmann and Basse 1999を参照)において既に単離されている(M.Bolker and R.Kahmann、未公開)。このREMI変異体#5662は、鱗状、無光沢の表現型によって区別される。加えて、この変異体は注目すべきメラニン沈着を示す。
【0016】
病原性試験においてはトウモロコシ植物の感染は検出されず、すなわち、この変異体は無病原性である。グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸を得るためプラスミド・レスキュー実験を行った。
【0017】
今や、本発明の範囲内で、プラスミド・レスキュー実験(実施例1を参照)により、挿入部位に隣接する配列を再単離することが可能になっている。このようにして、グリオキサールオキシダーゼをコードする配列、この場合にはglo1が単離される。この文脈において、挿入が推定ORFの開始コドンの770bp下流で生じていることが配列決定で明らかとなった。その推定アミノ酸配列はファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼとの類似性を示す。このウスチラゴ遺伝子はglo1(グリオキサールオキシダーゼ1)と命名された。REMI挿入と変異体の観察された表現型との相関が常に上手くいくわけではないので、本発明の目的に沿って表現型と遺伝子との明白な関係を確立するため、2つのハプロイド株Um518およびUm521におけるglo1遺伝子をさらに削除した(実施例2を参照)。まず、推定glo1 ORFのそれぞれ5’および3’の1151bpおよび1249bpDNA断片をPCRによって増幅した。次に、これらの断片を制限酵素SfiIで開裂させ、1931ヌクレオチドがglo1遺伝子のORFから除去されるようにSfiI開裂ハイグロマイシンBカセット(pBS−hhnからの1884bp断片)でライゲートした(図2BおよびKamper and Schreier,2001を参照)。このノックアウトカセットを同様にPCRによって増幅した(実施例2を参照)。相同組換えの場合においては、glo1のN末端部分をハイグロマイシンBカセットで置換する。glo1特異的DNAプローブを用いるこれらの形質転換体のサザーン分析によりゼロ変異体を選択した(図2Aを参照)。10の形質転換体のうちの8つがサザーン分析において期待される制限パターンを示すことが明らかとなった。株518Δglo1#1、518Δglo1#4または521Δglo1#7および521Δglo1#9をさらなる分析のために選択した。
【0018】
図4からわかるように、glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。したがって、glo1ゼロ変異体の取り扱いも、プレート培地上で成長するとき、野生型株と比較して細胞が互いに接着することがかなり少ないことを示す。この表現型をより詳細に特徴付けるため、研究、例えば、顕微鏡研究を行うことができる。この目的のため、細胞をスライドに付着させ、微分干渉対照顕微鏡で観察する(図4)。野生型株と比較して細胞が伸長していることが明らかとなる。さらに、空胞形成の増加を観察することができる。さらに、変異体細胞の細胞質分裂が悪影響を受け、隔壁の発達の増加が観察される(図3も参照)。形状が球状であり、かつ非分離細胞凝集体の中央に位置する細胞も注目に値する。まとめると、多面的な形態学的欠陥の全ての徴候が本発明によるゼロ変異体において観察される。
【0019】
さらに、適合性glo1ゼロ変異体の混合物が無病原性であることも注目すべきである。glo1ゼロ対立遺伝子の病原性に対する効果を研究するため、本発明の目的に沿って植物感染を行った。この目的のため、各々の場合において2つの独立した適合性glo1ゼロ変異体を成長させ、洗浄して混合した。次に、これらの混合物を若いトウモロコシ植物に注入した。比較のため、適合性野生型株(Um518およびUm521)でトウモロコシ植物を感染させた。対照実験においては1週間後に腫瘍形成が既に観察されたのに対して、適合性変異体の混合物においてはいかなる症状も見出されれなかった。注入後2週間で、対照感染における102の感染植物のうちの97が腫瘍を形成していた。さらに3つの植物はアントシアニン色を示しており、これは真菌感染に典型的なものである。したがって、102の感染植物のうちの100(98%)が病原性の症状を示した(表Iを参照)。適合性変異体の混合物での感染の場合、腫瘍形成もアントシアニン色も観察されなかった(表Iを参照)。これは、glo1の適合性ゼロ変異体がトウモロコシ植物に感染することができず、すなわち、それらの病原性が不完全であることを意味する。
【0020】
【表1】
【0021】
glo1ゼロ変異体の接合挙動が制限されることがさらに注目に値する。したがって、適合glo1変異体株の混合物における二核フィラメントの形成はもはや観察することができない。変異体を適合野生型と交配させるとき、二核菌糸(図4を参照)の形成に関して接合挙動に関する残留活性を観察することができ、これは細胞融合が不完全であると結論付けることを可能にする。
【0022】
B.シネレアにおける対応ノックアウト変異体の研究は全く類似する結果をもたらす。ここでもやはり、グリオキサールオキシダーゼをコードする遺伝子の破壊がB.シネレアにおける不完全な病原性を導くことが明瞭に示された(実施例9および図9から12を参照)。
【0023】
したがって、これらの結果から、グリオキサールオキシダーゼが、1つの特定の真菌の場合だけではなく植物病原性真菌それ自体の場合においても、病原性の発生において特別な役割を果たすことが結論付けられた。このように、植物病原性真菌の病原性、宿主における生存可能性および生活環に対するグリオキサールオキシダーゼの重要性が最初に認識され、かつ新規特異的殺真菌剤を探索するための最適標的として初めて特定された。このように、この標的の助けを借りて完全に新規のリード構造を特定する可能性が初めて提供されている。グリオキサールオキシダーゼを阻害する化合物から開始して新規殺真菌剤を得ることができる。
【0024】
ゲノム配列およびcDNA配列並びに、その上、それらを得るための方法の説明によって、植物病原性真菌の2つの異なる亜門から殺真菌剤を特定するための方法において用いるのに適するグリオキサールオキシダーゼがさらに得られ、対応する標的、すなわち、グリオキサールオキシダーゼの助けを借りて、特定されているこれらの殺真菌剤を特徴付け、かつさらに開発することが可能である。
【0025】
したがって、本発明は、病原性真菌のグリオキサールオキシダーゼの完全なゲノム配列またはcDNAを初めて提供し、この酵素の阻害剤の特定へのそれらの使用またはそれらによってコードされるポリペプチドの使用、およびそれらの殺真菌剤としての使用を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼをコードするファネロカエテ・クリソスポリウム核酸配列(Kerstenら,1995)、559アミノ酸を有するPCGLX1G_1PRT(受付番号L47286としてEMBLで、または受付番号Q01772としてSPTREMBLで利用可能;(タンパク質ID=AAA87594.1))、および559アミノ酸を有するPCGLX2G_1PRT(受付番号L47287としてEMBLで、または受付番号Q01773としてSPTREMBLで利用可能(タンパク質ID=AAA87595.1))を除く、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関する。これらのタンパク質配列は、Thr308によるLys308の一アミノ酸置換を除いて同一である。ヌクレオチド配列の同一性は98%である。
【0027】
本発明による核酸を用いて、グリオキサールオキシダーゼをコードし、かつ、ゲノムプロジェクトの脈絡における結果として公衆に利用可能でありながら、機能または生物学的重要性が割り当てられていないさらなる核酸配列を他の真菌から特定することが同様に可能であった。これらはクリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒトに対して病原性であり、クリプトコッカス髄膜炎および肺炎の原因である真菌(CRYNE_cneo001022.コンティグ6786(4064bp)、相同性領域2704−1393、CRYNE_cneo001022.コンティグ7883(13487bp);相同性領域:916−1695、468−2185、2100−2345、CRYNE b6f10cnf1;相同性領域:1−564、CRYNE_4_コンティグ456;相同性領域:930−19およびCRYNE_cneo001022.コンティグ6828(4546bp);相同性領域:4364−3840を参照)、パンカビとして知られるアスコミセタ・ニューロスポラ・クラッサ(Ascomyceta Neurospora crassa)(NEUCR_コンティグ1887(スーパーコンティグ127);相同性領域:14411−15889を参照)および植物病原性コメイモチ病真菌マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)に由来する配列である。このように、グリオキサールオキシダーゼはヒトに対して病原性である真菌においても生じることが見出されている。ヒトに対して病原性であるこれらの真菌においても、この酵素が僅かとは言えない生理学的役割を果たし、したがって、酵素修飾因子の興味深い標的であるか、またはこれらの真菌においても抗真菌剤の作用部位としての役割を果たすものと推定することができる。
【0028】
特には、本発明は、植物病原性真菌、好ましくは、アスコミセテスおよびバシジオミセテス亜門の真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関し、ボトリチスおよびウスチラゴ属が特に好ましい。
【0029】
特に好ましくは、本発明は、ウスチラゴ・メイジスおよびボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関する。
【0030】
本発明は、特に好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7を有するウスチラゴ・メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸並びに配列番号9および配列番号11を有するボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸並びに配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12に示されるポリペプチドをコードする核酸またはそれらの活性断片に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明による核酸は、特には、一本鎖もしくは二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)の形態をとる。好ましい実施形態は、イントロンを含んでいてもよいゲノムDNAおよびcDNAの断片である。
【0032】
本発明による核酸は、好ましくは、植物病原性真菌のcDNAに対応するDNA断片の形態をとる。
【0033】
本発明による核酸は、特に好ましくは、以下のものから選択される配列を含む:
a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11に示される配列、
b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列、
c)Cu2+配位に適する、式(I)によるアミノ酸チロシン1および2、ヒスチジン1および2並びにシステインを含むポリペプチドをコードする配列、
d)長さが少なくとも14塩基対である、a)からc)に定義される配列の部分配列、
e)a)からc)に定義される配列との50%同一性、特に好ましくは70%同一性、とりわけ好ましくは90%同一性を有する配列、
f)a)からc)に定義される配列と相補的である配列、並びに
g)遺伝子暗号の縮重のため、a)からc)に定義される配列と同じアミノ酸配列をコードする配列。
【0034】
本発明による核酸のとりわけ好ましい実施形態は、ウスチラゴ・メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする、配列番号1および3に示される配列または配列番号5もしくは配列番号7の配列を有するcDNA分子である。
【0035】
本発明による核酸のさらなるとりわけ好ましい実施形態は、ボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする、配列番号9もしくは11に示される配列を有するcDNA分子である。
【0036】
「完全」グリオキサールオキシダーゼという用語は、本文脈において用いられる場合、その転写単位の完全コーディング領域がATG開始コドンで始まり、出発生物内に存在する遺伝子の全ての情報担持エクソン領域を含み、かつグリオキサールオキシダーゼをコードし、並びに正確な転写終止に必要なシグナルが存在するグリオキサールオキシダーゼを記述する。
【0037】
「活性断片」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有し、すなわち、反応
RCHO+O2+H2O → RCO2H+H2O2
を触媒することが可能であるポリペプチドを依然としてコードする、グリオキサールオキシダーゼをコードするもはや完全ではない核酸を記述する。
【0038】
この生物学的機能が実際に依然として存在するのかどうかを決定するのに活性アッセイを用いることができ、このアッセイは、例えば、H2O2を、例えば、H2SO4での酸性化およびTiOSO4溶液の添加によって検出することをベースとする([TiO2 *aq]SO4の形成は黄色がかったオレンジ色の呈色を導く)。グリオキサールオキシダーゼ活性は既知グルコースオキシダーゼにおいて観察することもできる。しかしながら、その主活性が上記反応の触媒であるグリオキサールオキシダーゼとの比較において、この活性は顕著に低下する。したがって、「生物学的活性」という用語は、その主活性がこの反応の触媒ではないグルコースオキシダーゼのようなポリペプチドまで拡張しようとするものではない。「活性断片」は、グリオキサールオキシダーゼをコードする上記完全核酸より短い。本文脈において、核酸は配列の3’末端および/または5’末端の両者が除去されていてもよい;さもなければ、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性に対する決定的な悪影響を持たない配列の部分が欠失、すなわち、除去されていてもよい。依然として特徴付けまたは生じるグリオキサールオキシダーゼ断片の使用を可能にする、より低い、さもなければ、適切であるならば、高い活性がここで用いられるこの用語の目的に十分であるものと見なされる。「活性断片」という用語はグリオキサールオキシダーゼ・アミノ酸配列をも指すことができ、この場合、上述されているものに同様に適用され、上に定義される完全配列との比較でもはや特定の部分を含んではいないが酵素の生物学的活性に対する決定的な悪影響が発揮されていないポリペプチドに適用される。
【0039】
これらの断片の好ましい長さは1200ヌクレオチド、好ましくは900ヌクレオチド、とりわけ好ましくは300ヌクレオチド、または400アミノ酸、好ましくは300アミノ酸、とりわけ好ましくは100アミノ酸である。
【0040】
「遺伝子」という用語は、本文脈で用いられる場合、ポリペプチド鎖の合成の責を担う、細胞ゲノムからのセグメントの名称である。
【0041】
「ハイブリダイズする」という用語は、本文脈において用いられる場合、一本鎖核酸分子が相補鎖との塩基対形成を受けるプロセスを記述する。これは、本発明による核酸のコンセンサス領域または他の既知領域にまたがる短い領域に特に関連し、それらの領域はグリオキサールオキシダーゼをコードするさらなる核酸を特定するためのPCR実験の実施に有利に用いられる。例えば、ここに開示される配列情報から出発して、さらなる相同遺伝子の、またはウスチラゴ・メイジスもしくはボトリチス・シネレア以外の真菌からのDNA断片をこのようにして単離することができ、これらのDNA断片は、それぞれ、配列番号1および配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するグリオキサールオキシダーゼと同じ特性または類似する特性を有するグリオキサールオキシダーゼをコードする。
【0042】
「cDNA」という用語は、本文脈において用いられる場合、RNA分子の一本鎖または二本鎖コピーの名称であり、したがって、生物学的に活性のmRNAのコピーであれば、イントロンがなく、すなわち、遺伝子のコーディング領域の全てが連続形態で存在する。
【0043】
さらなる真菌グリオキサールオキシダーゼを特定するための上記PCR法に主として用いることができるハイブリダイゼーション条件は、以下の式を用いておおよそ算出される。
【0044】
融点Tm=81.5℃+16.6log[c(Na+)]+0.41(%G+C))−500/n(Lottspeich and Zorbas,1998)。
【0045】
この式において、cは濃度であり、かつnはハイブリダイズする配列セグメントの塩基対での長さである。>100bpの配列については、500/nの項が低下する。洗浄は最高の厳密性をもって5℃から15℃の温度、Tmおよび15mM Na+のイオン強度の下で行う(0.1×SSCに相当)。RNA試料をハイブリダイゼーションに用いる場合、融点は10℃から15℃高い。
【0046】
上述の核酸の同一性の程度は、好ましくは、プログラムCLUSTALWまたはプログラムBLASTXバージョン2.0.4の助けを借りて決定する(Altschulら,1997)。
【0047】
本発明は、さらに、本発明による核酸および同種または異種プロモーターを含むDNA構築体に関する。
【0048】
「同種プロモーター」という用語は、本文脈において用いられる場合、その源生物において問題の遺伝子の発現を制御するプロモーターを指す。
【0049】
「異種プロモーター」という用語は、本文脈において用いられる場合、その源生物において問題の遺伝子の発現を制御するプロモーター以外の特性を有するプロモーターを指す。
【0050】
異種プロモーターの選択は、実験に原核細胞もしくは真核細胞を用いるのか、または細胞非含有系を用いるのかに依存する。異種プロモーターの例は、植物細胞用のカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、酵母細胞用のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、および原核細胞もしくは細胞非含有系用のT3、T7もしくはSP6プロモーターである。
【0051】
真菌発現系、例えば、ピチア・パウトリス(Pichia pastoris)系を好ましく用いることができるはずであり、この場合の転写はメタノール誘導性AOXプロモーターによって駆動される。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの異種発現は既にこの系に対して示されている(Whittaker,M.ら,1999)。
【0052】
本発明は、さらに、本発明による核酸、本発明による調節領域または本発明によるDNA構築体を含むベクターに関する。用いることができるベクターは、分子生物学研究室において用いられる全てのファージ、プラスミド、ファージミド、ファスミド、コスミド、YAC、BAC、人工染色体または微粒子銃粒子である。
【0053】
好ましいベクターは、植物細胞に対してはpBIN(Bevan,1984)およびその誘導体、酵母細胞に対してはpFL61(Minetら,1992)もしくは、例えば、p4XXprom.ベクターシリーズ(Mumbergら,1995)、細菌細胞に対してはpSPORTベクター(Life Technologies)、または細菌細胞、植物、P.パストリス、S.セレビシアエもしくは昆虫細胞における様々な発現系に対してはGatewayベクター(Life Technologies)である。
【0054】
本発明は、本発明による核酸、本発明によるDNA構築体または本発明によるベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0055】
「宿主細胞」という用語は、本文脈において用いられる場合、本発明による核酸を天然には含まない細胞を指す。
【0056】
適切な宿主細胞は原核細胞、好ましくは、大腸(E.coli)だけではなく、真核細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス、昆虫、植物、カエル卵母細胞および哺乳動物細胞株の細胞である。
【0057】
真菌細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)およびピチア・パストリスが発現に好ましく用いられる。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼは、例えば、A.ニズランスおよびP.パストリスにおいて上手く発現した(Kerstenら,1995;Whittakerら,1999)。
【0058】
本発明によるポリペプチドの発現に用いることができる他のものは、特には、ウスチラゴ・メイジス細胞である。この目的に特に適する細胞は、ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツァイルクルツレンGmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zeilkulturen GmbH)[ジャーマン・コレクション・オブ・マイクロオーガニズムス・アンド・セル・カルチャー(German collection of microorganisms and cell cultures)](DSMZ)、Mascheroder Weg 1b in 38124 Brunswickに2001年9月13日、DSM 14 509として寄託されているU.メイジス株の細胞である。
【0059】
これらの寄託細胞は実施例3において説明されるようにして得たものであり、例えば、実施例4に示される、元の株の野生型細胞のアッセイで区別することができる。寄託番号DSM 14 509の株は、グリオキサールオキシダーゼ活性を検出し、かつその株を本発明による方法において用いることができるようにするのに十分な量および活性で本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼを発現することが可能である。
【0060】
寄託番号DSM 14 509の株は本発明の主題である。
【0061】
本発明は、さらに、本発明の核酸によってコードされるグリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドに関する。
【0062】
本発明によるポリペプチドは、好ましくは、以下のうちから選択されるアミノ配列を含む:
a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12に示される配列、
b)Cu2+配位に適する、式(I)に示されるアミノ酸チロシン1、チロシン2、ヒスチジン1、ヒスチジン2およびシステインを含む配列、
c)長さが少なくとも15アミノ酸である、a)およびb)に定義される配列の部分配列、
d)a)およびb)に定義される配列との少なくとも20%、好ましくは25%、特に好ましくは40%、とりわけ好ましくは60%、最も好ましくは75%の同一性を有する配列、並びに
e)a)からd)に定義される配列と同じ生物学的活性を有する配列。
【0063】
「ポリペプチド」という用語は、ここで用いられる場合、通常ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短いアミノ酸鎖および通常タンパク質と呼ばれるより長いアミノ酸鎖の両者を指す。これは、天然プロセス、例えば、翻訳後処理、または技術の現状である化学法のいずれかによって修飾されていてもよいアミノ酸鎖を包含する。そのような修飾は1つのポリペプチドにおいて様々な点で複数回、例えば、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、アミノ末端および/またはカルボニル末端で生じ得る。これらには、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビン、ヘム部分、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体、脂質もしくは脂質誘導体またはホスファチジルイノシトールとの共有結合、環化、ジスルフィド架橋の形成、脱メチル化、シスチン形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解処理、リン酸化、セレニル化およびアミノ酸のtRNA介在付加が含まれる。
【0064】
本発明によるペプチドは「成熟」タンパク質の形態であってもよく、大きいタンパク質(例えば、融合タンパク質)の一部の形態であってもよい。これらは、さらに、分泌またはリーダー配列、簡潔な生成を可能にする配列、例えば、ポリヒスチジン残基、またはさらなる安定化エピトープを有することができる。
【0065】
本発明によるポリペプチド、特には、配列番号2、4、6、8、10および12に示されるポリペプチドは、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼを構成する必要はなく、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する限りこれらの断片を構成するだけでもよい。配列番号2、4、6、8または配列番号10および12に示されるアミノ酸配列を有する、グリオキサールオキシダーゼと同じタイプの生物学的活性を発揮するポリペプチドは依然として本発明によるものと考えられる。この文脈において、本発明によるポリペプチドはウスチラゴ・メイジスもしくはボトリチス・シネレアまたは植物病原性真菌から推定可能である必要はなく、例えばグリオキサールオキシダーゼ間の関係により、様々な生物、例えば、ヒトに対して病原性である真菌、さもなければ植物から誘導することができる(図8も参照)。本発明によるものと考えられるポリペプチドは、とりわけ、例えば以下の真菌のグリオキサールオキシダーゼ、またはこれらの断片に相当するポリペプチド、およびそれらの生物学的活性を依然として有するポリペプチドでもある:
例えば、プラスモジオホロミセテス(Plasmodiophoromycetes)、オオミセテス(Oomycetes)、キトリジオミセテス(Chytridiomycetes)、ジゴミセテス(Zygomycetes)、アスコミセテス(Ascomycetes)、バシジオミセテス(Basidiomycetes)およびジューテロミセテス(Deuteromycetes)。
【0066】
ピチウム(Pythium)種、例えば、ピチウム・ウルチマム(Pythium ultimum)、フィトフトラ(Phytophthora)種、例えば、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)種、例えば、シュードペロノスポラ・フムリ(Pseudoperonospora humuli)もしくはシュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、プラスモパラ(Plasmopara)種、例えば、プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ブレミア(Bremia)種、例えば、ブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、ペロノスポラ(Peronospora)種、例えば、ペロノスポラ・ピシ(Peronospora pisi)もしくはP.ブラシカエ(P.brassicae)、エリシフェ(Erysiphe)種、例えば、エリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)、スファエロテカ(Sphaerotheca)種、例えば、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、ポドスファエラ(Podosphaera)種、例えば、ポドスファエラ・ロイコトリカ(Podosphaera leucotricha)、ベンツリア(Venturia)種、例えば、ベンツリア・イナエカリス(Venturia inaequalis)、ピレノホラ(Pyrenophora)種、例えば、ピレノホラ・テレス(Pyrenophora teres)もしくはP.グラミネア(P.graminea)(分生子形態:ドレクスレラ(Drechslera)、syn:ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)、コクリオボーラス(Cochliobolus)種、例えば、コクリオボーラス・サチブス(Cochliobolus sativus)(分生子形態:ドレクスレラ、syn:ヘルミントスポリウム)、ウロミセス(Uromyces)種、例えば、ウロミセス・アッペンジクラツス(Uromyces appendiculatus)、プシニア(Puccinia)種、例えば、プシニア・レコンジタ(Puccinia recondita)、スクレロチニア(Sclerotinia)種、例えば、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、チレチア(Tilletia)種、例えば、チレチア・カリエス(Tilletia caries);ウスチラゴ(Ustilago)種、例えば、ウスチラゴ・ヌーダ(Ustilago nuda)もしくはウスチラゴ・アベナエ(Ustilago avenae)、ペリクラリア(Pellicularia)種、例えば、ペリクラリア・ササキイ(Pellicularia sasakii)、ピリクラリア(Pyricularia)種、例えば、ピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、フサリウム(Fusarium)種、例えば、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、ボトリチス種、セプトリア(Septoria)種、例えば、セプトリア・ノドラム(Septoria nodorun)、レプトスファエリア(Leptosphaeria)種、例えば、レプトスファエリア・ノドラム(Leptosphaeria nodorum)、セルコスポラ(Cercospora)種、例えば、セルコスポラ・カネッセンス(Cercospora canescens)、アルターナリア(Alternaria)種、例えば、アルターナリア・ブラシカエ(Alternaria brassicae)またはシュードセルコスポレラ(Pseudocercosporella)種、例えば、シュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス。
【0067】
特に興味深い他のものは、例えば、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、コクリオブルス・ヘテロストロフス(Cochliobulus heterostrophus)、ネクトリア・ヘマトコッカス(Nectria hematococcus)およびフィトフトラ(Phytophthora)種である。
【0068】
既に上で考察されるように、本発明のポリペプチドは抗真菌剤の作用部位として、したがって、ヒトまたは動物に対して病原性である真菌の制御にも用いることができる。この文脈において特に興味深いものは、例えば、ヒトに対して病原性であり、かつ以下に述べられる症状を生じる以下の真菌である:
ダーマトフィテス(Dermatophytes)、例えば、トリコフィトン(Trichophyton)種、ミクロスポラム(Microsporum)種、エピダーモフィトン・フロッコサム(Epidermophyton floccosum)または、例えば水虫(足白癬)を生じる、ケラトミセス・アジェロイ(Keratomyces ajelloi)。
【0069】
酵母、例えば、ソア食道炎(soor oesophagitis)および皮膚炎を生じる、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)または、例えば肺クリプトコッカス症、さもなければトルロシス(torulosis)を生じ得る、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)。
【0070】
カビ、例えば、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、A.フラブス(A.flavus)、例えば気管支肺アスペルギルス症または真菌性敗血症を生じる、A.ニガー(A.niger)、ケカビ(Mucor)種、アブシジア(Absidia)種、または、例えば接合菌症(管内真菌症)を生じる、リゾプス(Rhizopus)種、例えば慢性肉芽腫性咽頭炎および気管炎を生じる、リノスポリジウム・シーベリ(Rhinospqridium seeberi)、例えば皮下菌腫を生じる、マズレラ・ミセトマチス(Madurella mycetomatis)、例えば細胞内皮性細胞真菌症およびダーリング病を生じる、ヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、肺性コクシジオイデス症および敗血症を生じる、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、例えば南アメリカ分芽菌症を生じる、パラコクシジオイデス・ブラシリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、例えばギルクリスト病および北アメリカ分芽菌症を生じる、ブラストミセス・ダーマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、例えばケロイド分芽菌症およびロボ病を生じる、ロボア・ロボイ(Loboa loboi)、並びに、例えばスポロトリクム症(肉芽腫性皮膚真菌症)を生じる、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)。
【0071】
本発明によるポリペプチドは、天然グリオキサールオキシダーゼの対応領域との比較により、それらが完全グリオキサールオキシダーゼの少なくとも1つの生物学的活性を発揮する限り、欠失またはアミノ酸置換を有することができる。保存置換が好ましい。そのような保存置換には、1つのアミノ酸を以下の群からの他のアミノ酸で置換する変種が含まれる:
1.非極性であるか、または低極性である小脂肪族残基:Ala、Ser、Thr、ProおよびGly;
2.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、GluおよびGln;
3.極性の正に荷電した残基:His、ArgおよびLys;
4.大脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、ValおよびCys;並びに
5.芳香族残基:Phe、TyrおよびTrp。
【0072】
以下のリストは好ましい保存置換を示す:
【0073】
【表2】
【0074】
したがって、本発明は、少なくともグリオキサールもしくはメチルグリオキサールまたはそれらの誘導体の変換における酸素の還元による過酸化水素形成の生化学的反応においてグリオキサールオキシダーゼと同様に作用し、かつ配列番号2および4または配列番号6もしくは8および配列番号10もしくは12に示される配列と100アミノ酸、好ましくは250アミノ酸の長さにわたって、特に好ましくはその全長にわたって少なくとも20%の同一性、好ましくは25%の同一性、特に好ましくは40%の同一性、とりわけ好ましくは60%の同一性、最も好ましくは75%の同一性、最終的に絶対的に好ましくは90%の同一性を有するポリペプチドにも関する。
【0075】
アミノ酸配列の同一性の程度は、好ましくは、BLASTP+BEAUTYプログラム(Altschulら,1997)の助けを借りて決定する。
【0076】
本発明によるポリペプチドの特に好ましい実施形態は、配列番号2、4、6および8並びに配列番号10および12に示されるアミノ酸配列を有するグリオキサールオキシダーゼである。
【0077】
特に好ましくは、本発明は、Cu2+配位部位の形成に適する上記アミノ酸を含む本発明によるポリペプチドに及ぶ:
チロシンリガンド1:(例えば、Tyr178(U.メイジス)またはTyr273(B.シネレア))、
チロシンリガンド2:(例えば、Tyr452(U.メイジス)またはTyr499(B.シネレア))、
ヒスチジンリガンド1:(例えば、His453(U.メイジス)またはHis500(B.シネレア))、
ヒスチジンリガンド2:(例えば、His555(U.メイジス)またはHis597(B.シネレア))、および
システイン残基:(例えば、Cys105(U.メイジス)またはCys209(B.シネレア))。
【0078】
本発明による核酸は通常の方法で調製することができる。例えば、核酸分子は完全な化学合成によって調製することができる。本発明による核酸分子の短片を化学的に合成し、そのようなオリゴヌクレオチドを放射標識するか、さもなければ蛍光色素で標識することも可能である。標識されたオリゴヌクレオチドも、真菌mRNAから出発して生成されたcDNAライブラリの探索に用いることができる。問題のDNA断片を単離するため、標識オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるクローンを選択する。単離されたDNAの特徴付けの後、本発明による核酸が簡潔な方法で得られる。
【0079】
本発明による核酸は、PCR法により、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを用いて生成することもできる。
【0080】
「オリゴヌクレオチド(複数)」という用語は、本文脈において用いられる場合、10個以上のヌクレオチド、好ましくは15個から30個のヌクレオチドからなるDNA分子を指す。これらは化学的に合成され、プローブとして用いることができる。
【0081】
本発明によるポリペプチドが様々な方法、例えば、固相法のような化学的方法によって得ることができることは当業者には公知である。大タンパク質量の入手には組換え法の使用が推奨される。クローン化グリオキサールオキシダーゼ遺伝子またはそれらの断片の発現は、当業者に公知である一連の適切な宿主細胞において行うことができる。この目的のため、公知方法の助けを借りて、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子を宿主細胞に導入する。
【0082】
宿主細胞の染色体へのクローン化グリオキサールオキシダーゼ遺伝子の組み込みは本発明の範囲内にある。好ましくは、遺伝子またはそれらの断片をプラスミドに導入し、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子のコーディング領域またはそれらの断片を構成性または誘導性プロモーターに作動可能に連結する。Invitrogen製のピチア・パストリス発現系が特に適する発現系の例である。この目的に適するベクターは、例えば、pPICZおよびその誘導体である。発現は、ここでは、AOXプロモーターの助けを借りて、メタノールを添加することによって誘導することができる。さらに、U.メイジス系における発現も適する。ここで、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子またはそれらの断片の発現は、例えば、誘導性crg1プロモーターまたは構成性otefプロモーター(Botttinら,1996、Spellingら,1994)によって行う。
【0083】
組換えグリオキサールオキシダーゼを産生するための基本的工程は以下のものである:
1.グリオキサールオキシダーゼをコードする天然、合成または半合成DNAの入手。
2.このDNAの、グリオキサールオキシダーゼの単独での、または融合タンパク質としての発現に適する発現ベクターへの導入。
3.この発現ベクターを用いる、適切な、好ましくは真核生物の、宿主細胞の形質転換。
4.グリオキサールオキシダーゼの発現に適する方法での、この形質転換宿主細胞の成長。
5.細胞の収穫および、適切であるならば、適切な公知方法によるグリオキサールオキシダーゼの精製。
【0084】
この文脈において、グリオキサールオキシダーゼのコーディング領域は大腸菌(E.coli)において慣例的な方法を用いて発現させることができる。大腸菌に適する発現系は商業的に入手可能であり、例えば、pETシリーズの発現ベクター、例えば、簡潔な精製および発現した酵素の溶解度を高めるためのチオレドキシン融合のためのpET3a、pET23a、Hisタグを有するpET28aもしくはHisタグを有するpET32a、およびグルタチオンシンセターゼ融合を伴うpGEX、およびその上、pSPORTベクター。これらの発現ベクターでλDE3溶原性大腸菌株、例えば、BL21(DE3)、HMS174(DE3)またはAD494(DE3)を形質転換する。これらの細胞が当業者に馴染みのある標準条件下で成長をはじめた後、IPTGを用いて発現を誘導する。細胞が誘導された後、それらを4℃から37℃の温度で3時間から24時間インキュベートする。
【0085】
これらの細胞を超音波処理により破壊バッファ(10mMから200mMリン酸ナトリウム、100mMから500mM NaCl、pH5から8)中で破壊する。発現したタンパク質はクロマトグラフィー法によって、Hisタグで発現したタンパク質の場合にはNi−NTAカラムでのクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0086】
昆虫細胞培養物(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現が別の有利なアプローチである。
【0087】
代替法として、タンパク質を植物において発現させることもできる。したがって、例えば、少なくとも3種類のグリオキサールオキシダーゼ相同体がアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)に存在し(図8を参照)、これは植物における発現の可能性を強調する。
【0088】
本発明は、本発明によるポリペプチドに結合し、かつそれらの特性を変化させる化合物を発見するための方法にも関する。したがって、この酵素の活性に影響を及ぼす修飾因子が真菌の病原性を制御することが可能である新規殺真菌性活性化合物を構成する。修飾因子はアゴニストであってもアンタゴニストであってもよく、または賦活剤であっても阻害剤であってもよい。特に興味深いものは、グリオキサールオキシダーゼの場合、この酵素を不活性化することによって真菌の病原性を妨げ得るこの酵素の阻害剤である。
【0089】
したがって、本発明は、特には、殺真菌剤の標的としての真菌グリオキサールオキシダーゼの使用およびこれらのポリペプチドの修飾因子を発見する方法におけるそれらの使用にも関する。そのような方法において、グリオキサールオキシダーゼは宿主細胞中で、抽出物中で、もしくは精製形態で直接用いることができ、またはそれらのコードするDNAの発現によって間接的に産生させることができる。上述されている本発明によるポリペプチド(配列番号6および配列番号8に示されるGlo2およびGlo3)は同様にこの用途に適する。真菌の病原性に対する直接的な重要性とは別に、それらは、後に殺真菌剤として活性になる酵素の修飾因子を特定する方法において同様に用いられるGlo1との十分な相同性を有する。
【0090】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼ修飾因子を発見する方法における、本発明によるグリオキサールオキシダーゼをコードする核酸、それらを含むDNA構築体、それらを含む宿主細胞、または本発明によるグリオキサールオキシダーゼに結合する抗体の使用にも関する。
【0091】
「アゴニスト」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの活性を促進または増強する分子を指す。
【0092】
「アンタゴニスト」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの活性を鈍化または妨げる分子を指す。
【0093】
「修飾因子」という用語は、本文脈において用いられる場合、アゴニストまたはアンタゴニストの総称を構成する。修飾因子は本発明によるポリペプチドに結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。修飾因子は、さらに、ある分子に結合し、次にその分子が本発明によるポリペプチドに結合し、したがって、それらの生物学的活性に影響を及ぼす小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。修飾因子は天然基質およびリガンドまたはそれらの構造的もしくは機能的模倣体であり得る。しかしながら、「修飾因子」という用語は、グリオキサールオキシダーゼの天然基質、例えば、酸素、グリオキサールおよびメチルグリオキサールを包含しない。
【0094】
修飾因子は、好ましくは、小有機化学化合物である。
【0095】
本発明によるグリオキサールオキシダーゼへの修飾因子の結合は、それらで処理した真菌の無病原性または死を導く方法で細胞プロセスを変化させ得る。
【0096】
本発明による方法における本発明による核酸またはポリペプチドの使用は、本発明によるポリペプチドに結合する化合物の発見を可能にする。次いで、それらを、例えば植物において、殺真菌剤として、またはヒトおよび動物において抗真菌活性化合物として用いることができる。例えば、本発明による核酸を含み、かつ対応するポリペプチドを発現する宿主細胞、または遺伝子産生物それ自体を、少なくとも1つの化合物と宿主細胞、受容体または個々のポリペプチドとの相互作用を許容する条件下で化合物または化合物の混合物と接触させる。
【0097】
特には、本発明は、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌ポリペプチド、好ましくは植物病原性真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼ、特に好ましくはウスチラゴまたはボトリチス・グリオキサールオキシダーゼ、とりわけ好ましくはU.メイジスおよびB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼおよびそれらと同族であるポリペプチドに結合し、かつ上記コンセンサス配列を有する殺真菌性活性化合物を特定するのに適する方法に関する。しかしながら、これらの方法は、本発明によるグリオキサールオキシダーゼと同族であり、かつここで言及されるもの以外の種から誘導されるポリペプチドを用いて行うこともできる。本発明によるもの以外のグリオキサールオキシダーゼを用いる方法は本発明に包含される。
【0098】
所定の期間で試験物質の数を最大化するため、多数の、化合物を試験するためのアッセイ系および天然抽出物が高スループット数のために設計されている。細胞非含有プロセスをベースとするアッセイ系は精製または半精製タンパク質を必要とする。それらは、主として標的タンパク質に対する物質の潜在効果の検出を目的とする「初期」アッセイに適する。しかしながら、十分な量の問題のポリペプチドを産生する無傷の細胞をベースとするアッセイ系を用いることもできる。本発明の場合、実施例4において説明される活性アッセイと同様に、グリオキサールオキシダーゼを過剰産生する無傷の細胞、例えば、ウスチラゴ・メイジス細胞を用いて、酵素活性を上手く測定することもできる。
【0099】
細胞毒性のような効果は、一般には、これらのイン・ビトロ系においては無視される。これらのアッセイ系は物質の阻害または抑制効果および刺激効果の両者をチェックする。物質の効力は濃度依存性試験系列によってチェックすることができる。試験物質を含まない対照を効果の評価に用いることができる。
【0100】
修飾因子を発見するため、合成反応混合物(例えば、イン・ビトロ翻訳の産生物)または細胞成分、例えば、抽出物もしくはポリペプチドを含むあらゆる他の調製品を、標識物質またはポリペプチドのリガンドと共に、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい候補分子の存在下および不在下でインキュベートすることができる。本発明によるポリペプチドの活性を増加または阻害する候補分子の能力は、標識リガンドの結合の増加もしくは減少から、または標識基質の変換の増加もしくは減少からわかる。十分に結合し、かつ本発明によるポリペプチドの活性の増加を導く分子はアゴニストである。十分に結合するが、本発明によるポリペプチドの生物学的活性を相殺する分子は、おそらくは、良好なアンタゴニストである。
【0101】
本発明によるポリペプチドの修飾因子は酵素試験によって発見することもできる。適切な修飾因子による酵素活性の変化を連結酵素アッセイにおいて直接または間接的に測定することができる。この測定は、例えば、光学的に活性の化合物の減少または増加によって生じる吸収の変化によって行うことができる。したがって、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼの存在下におけるフェノールレッド溶液の脱色によって過酸化水素の放出または消費を検出することができる(実施例4、10および11を参照)。
【0102】
本発明によるポリペプチドの活性を修飾する物質の特定のさらなる可能性は、「シンチレーション近接アッセイ(scintillation proximity assay)」(SPA)(EP 015 473を参照)として知られるものである。このアッセイ系は、ポリペプチド(例えば、U.メイジスまたはB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ)と放射標識リガンド(例えば、小有機分子または第2放射標識タンパク質分子)との相互作用を利用する。ポリペプチドを、閃光性分子が付与された微小球またはビーズに結合させる。放射能が低下するとき、微小球中の閃光性物質が放射活性マーカーの亜原子粒子によって励起し、検出可能な光子が放出される。アッセイ条件は最適化され、それによりリガンドから放出される粒子のみが本発明によるポリペプチドに結合するリガンドによって放出されるシグナルを導く。
【0103】
可能性のある一実施形態においては、例えば、U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼを、相互作用性もしくは結合性試験物質と共に、またはそれら無しに、ビーズに結合させる。用いることができる試験物質は、とりわけ、本発明によるポリペプチドの断片である。結合性リガンドが固定化グリオキサールオキシダーゼに結合するとき、このリガンドは、接触領域区域においてそれ自体が結合するため、固定化グリオキサールオキシダーゼと標識リガンドとの既存の相互作用を阻害するか、または無効化する。ひとたび固定化グリオキサールオキシダーゼへの結合が生じると、閃光を参照してそれを検出することができる。したがって、固定化および遊離標識リガンドの間の既存の複合体は試験物質の結合によって破壊され、これは検出される閃光の強度の低下につながる。この場合、このアッセイ系は補完阻害系の形態をとる。
【0104】
その助けを借りて本発明によるポリペプチドの修飾因子を見出すことができる方法のさらなる例は置換アッセイであり、ここでは、本発明によるポリペプチドおよび潜在的修飾因子をこの目的に適する条件下で本発明によるポリペプチドに結合することが知られる分子、例えば、天然基質もしくはリガンド、または基質もしくはリガンド模倣体と組み合わせる。
【0105】
「競合体」という用語は、本文脈において用いられる場合、他の、おそらくは未だに特定されていない化合物と、グリオキサールオキシダーゼに結合して酵素から後者を置換するか、または後者によって置換されることについて競合する化合物の特性を指す。
【0106】
したがって、本発明は、本発明によるグリオキサールオキシダーゼの酵素活性の修飾因子、好ましくは、阻害剤にも関し、これは、グリオキサールオキシダーゼタンパク質またはそれらと同族であるポリペプチドの修飾因子を特定するための、ここで説明される方法のうちの1つの助けを借りて見出される。
【0107】
植物病原性真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼが殺真菌剤の新規標的を構成し、およびこれらのグリオキサールオキシダーゼの助けを借りて殺真菌剤として用いることができる化合物を見出し、かつ開発できることは未だに開示されていない。この可能性は本発明において最初に説明され、かつ例示される。さらに提供されるものは、それらに必要なグリオキサールオキシダーゼ、およびそれらを入手し、かつ酵素の阻害剤を特定するための方法である。
【0108】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼ修飾因子の殺真菌剤としての使用に関する。
【0109】
本発明によるポリペプチドの助けを借りて見出される殺真菌活性化合物はヒトに対して病原性である真菌種に由来するグリオキサールオキシダーゼとも相互作用することができる;等しく述べようとすることは、これらの真菌において生じる異なるグリオキサールオキシダーゼとの相互作用に常に必要とは限らない。
【0110】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物に対して病原性である真菌によって生じる疾患を治療するための組成物の調製への、グリオキサールオキシダーゼの機能を有するポリペプチドの阻害剤の使用にも関する。
【0111】
「殺真菌剤」または「殺真菌性」という用語は、本文脈において用いられる場合、本発明の目的のため、「抗真菌剤(単数)」または「抗真菌剤」という用語をも包含する。
【0112】
本発明は、さらに、本発明によるポリペプチドの発現を改変する化合物を発見する方法を含む。そのような「発現修飾因子」も新規殺真菌活性化合物であり得る。発現修飾因子は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸の調節領域に結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。さらに、発現修飾因子は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸の調節領域に後に結合し、したがって、それらの発現に影響を及ぼす分子に結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。発現修飾因子はアンチセンス分子でもあり得る。
【0113】
本発明は、グリオキサールオキシダーゼタンパク質またはそれらと同族のポリペプチドの発現修飾因子を特定する上記方法の助けを借りて見出される、グリオキサールオキシダーゼの発現修飾因子にも関する。
【0114】
本発明は、本発明による核酸の発現修飾因子の殺真菌剤としての使用にも関する。
【0115】
本発明による方法は、高スループット・スクリーニング(HTS)を含む。宿主細胞および本発明による核酸を含む細胞非含有調製品および/または本発明によるポリペプチドをこの目的に用いることができる。
【0116】
本発明は、さらに、本発明によるポリペプチドまたはこれらの断片に特異的に結合する抗体に関する。そのような抗体は慣例的な方法で生じる。例えば、それらの抗体は、抗体産生に有効である量の本発明によるポリペプチドまたはそれらの断片を有する免疫適格宿主を皮下注射し、次にこの抗体を得ることによって産生させることができる。さらに、モノクローナル抗体を産生する不死化細胞株をそれ自体公知の方法で得ることができる。これらの抗体は、適切であるならば、検出試薬で標識することができる。そのような検出試薬の好ましい例は、酵素、放射標識された元素、蛍光性化学薬品またはビオチンである。完全な抗体の代わりに、望ましい特異的結合特性を有する断片を用いることもできる。
【0117】
トランスジェニック生物、例えば、細菌、植物または真菌の産生、好ましくは、トランスジェニック植物および真菌の産生、特に好ましくは、トランスジェニック真菌の産生に本発明による核酸を同様に用いることができる。これらは、例えば、野生型から逸脱する本発明によるポリペプチドまたはそれらの変種の発現をベースとするアッセイ系において用いることができる。これらには、上述されるもの以外の遺伝子を修飾することによって、または遺伝子制御配列(例えば、プロモーター)を修飾することによって、本発明によるポリペプチドまたはこれらの変種の発現が変化させられている全てのトランスジェニック植物または真菌がさらに含まれる。
【0118】
トランスジェニック生物は、商業的または工業的な目的で本発明によるポリペプチドを(過剰)産生することで興味深いものでもある;ここで、例えば、それらの天然形態と比較して本発明によるポリペプチドの高程度の発現を示す真菌(例えば、酵母またはウスチラゴ・メイジス)がポリペプチドの修飾因子を特定するための方法(実際にはHTS法も)における使用に特に適する。
【0119】
本発明によるトランスジェニック真菌の製紙における使用もこの文脈において特に興味深いものであり、ここでは公知リグニンペルオキシダーゼとのカップリング、すなわち、増加することができるか、さもなければより多量の活性で両酵素を発現する真菌の活用がリグニンの分解について特に興味深いものである。
【0120】
逆に、本発明の方法によって特定されている、グリオキサールオキシダーゼの生物学的機能を有するポリペプチドの阻害剤の使用も物質の保護について興味深いものである。真菌は、特には、木材の保存における主要な問題である。グリオキサールオキシダーゼはリグニンペルオキシダーゼに過酸化水素を供給するため、最も不活性の木材成分でさえそれらの酸で分解する。しかしながら、結果として、本発明による阻害剤でのグリオキサールオキシダーゼの阻害はリグニンペルオキシダーゼをも阻害し、したがって、内部および外部領域における木材の分解を減少させることができる。
【0121】
さらに、本発明によるトランスジェニック生物、すなわち真菌ではあるが、例えば、藻類または他の微生物、例えば、細菌も、例えば廃水、汚染水路、水処理プラント等における媒体の解毒に用いることができる。この文脈においては、本発明によるポリペプチドおよび対応するトランスジェニック生物の能力を基質スペクトルの関数としてアルデヒドの酸化に、および反応性がより少なく、かつ環境有害性がより少ない酸へのそれらの変換に利用することができる。しかしながら、例えばトランスジェニック過剰産生から得ることができる、グリオキサールオキシダーゼそれ自体も、メチルグリオキサールの除去によるヒトまたは動物身体の解毒について興味深いものである(Thornalley,1996;Thornalleyら,2001)。様々な望ましくない物質を分解する、例えばGlo1で、形質転換された細胞の能力が実施例11および図13に示される。
【0122】
本発明による核酸は、病原体または環境ストレスに対する耐性の増加によって区別されるトランスジェニック植物の産生に用いることもできる。幾つかの作物、例えば、ヒマワリ、アブラナ、アルファルファ、ダイズ、ピーナッツ、トウモロコシ、サトウモロコシ、コムギもしくはコメ、および様々な花、樹木、野菜作物または果実作物、例えば、ブドウ、トマト、リンゴもしくはイチゴは、過酸化水素を発現する(これは、問題の植物に接近する真菌の方法を表す)ことによって区別される真菌、例えば、ボトリチス・シネレアまたは他の真菌種に対して感受性である。本発明によるグリオキサールオキシダーゼは過酸化水素を産生するような酵素である。病原体による植物の感染は、多くの植物において、過敏性応答(HR)として知られるものおよび/または病原体侵入部位での宿主組織の破壊を伴うことがある様々な防御機構の活性化を誘発する。これは病原体が宿主内に蔓延することを防ぐことができる。幾つかの場合、植物は、元の感染病原体から分類学的にかけ離れた病原体の感染に対する全身耐性(全身性獲得耐性、SAR)をも発達させる。観察することができる病原体感染に対する第1応答のうちの1つはスーパーオキシドアニオン、すなわちO2 −、および/または過酸化水素、すなわちH2O2、の蓄積の増加である。H2O2の蓄積は様々な方法での耐性応答の増加を誘発し得る;1.直接抗菌作用によるもの、2.H2O2をペルオキシダーゼの基質として提供すること(これは、リグニンの重合に寄与し、したがって、細胞壁の強化を助ける)によるもの、3.未だに解明されていない機構内で、感染に対する植物の防御において、例えば、サリチル酸蓄積の刺激において、役割を果たす遺伝子の発現を活性化するシグナルとして作用することによるもの。サリチル酸は、次に、幾つかの病原性関連タンパク質(PRP)、例えば、グルカナーゼまたはキチナーゼをコードする遺伝子の発現の内在性トリガーと考えられる。さらに、サリチル酸は酸化バーストを増加させ、したがって、一種のフィードバックプロセスでそれ自体の合成を加速させることができる。さらに、サリチル酸は、H2O2を分解する酵素であるカタラーゼの阻害剤として作用することにより、過敏性の細胞死において役割を果たし得る。最後に、H2O2も防御に適するさらなる化合物、例えば、フィトアレキシンまたは低分子量抗菌性化合物の合成を誘発することができる。
【0123】
したがって、本願において説明されるグリオキサールオキシダーゼは、病原体による攻撃に対する有意の耐性を植物に付与するのに適する。グリオキサールオキシダーゼの活性のため、トランスジェニック植物はPRP遺伝子を発現し、かつサリチル酸を蓄積することが可能である。植物の形質転換に用いられるDNA構築体は、例えば、構成性プロモーターを含むことができ、かつそれらに作動可能に連結するコーディング領域に加えて形質転換体の選択を可能にするマーカー遺伝子をも含むことができる。用いることができるさらなる要素は、ターミネータ、ポリアデニル化配列および植物細胞内での局在化またはこの細胞からのタンパク質の分泌を支配するシグナルペプチドをコードする核酸配列である。
【0124】
植物を形質転換するための様々な方法が既に公知である(例えば、Mikiら(1993)、Gruber and Grosby(1993)およびBevanら,1983も参照)。トランスジェニック植物を産生するための最も開発されているベクター系は、細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に由来するプラスミドである(Bevan,1984)。自然状態では、A.ツメファシエンスは植物に感染してクラウンゴールと呼ばれる腫瘍を産生する。これらの腫瘍はA.ツメファシエンスのTiプラスミド(腫瘍誘導性)によって生じる。Tiプラスミドは、T−DNAと呼ばれるそのDNAの一部を宿主植物の染色体DNAに組み込む。このプラスミドのDNAから腫瘍誘導性領域を除去し、しかしながら植物に遺伝物質を導入するその特性は保持する手段が開発されている。次に、外来遺伝子、例えば、本発明による核酸のうちの1つを、慣例的な組換えDNA技術の助けを借りて、Tiプラスミドに組み込むことができる。続いて、この組換えプラスミドでA.ツメファシエンスを再度形質転換する。その後、この株を植物細胞培養物の感染に用いることができる。しかしながら、このプラスミドを植物に直接挿入することもできる。そのような細胞の無傷の生物への再生は、外来遺伝子を含み、かつその上、それを発現する、すなわち、所望の遺伝子産生物を産生する植物を生じる。
【0125】
A.ツメファシエンスは双子葉類植物に容易に感染するが、多数の農業的に重要な作物植物、例えば、トウモロコシ、コムギまたはコメを含む単子葉植物の形質転換へのベクターとしての使用は、それがこれらの植物に容易には感染しないため、制限される。他の技術、例えば、粒子銃法として知られる「DNA銃」がそのような植物の形質転換に利用可能である。この方法においては、気体発射または粉体爆発のいずれかにより、微小なチタンまたは金微小球をレシピエント細胞または組織に発射する。これらの微小球は関心遺伝子のDNAでコートされており、それにより後者が細胞に到達し、球から徐々に脱着して宿主細胞のゲノムに組み込まれる。
【0126】
内在性遺伝物質にそれを安定に組み込むことができるのは外来性遺伝物質に晒されている細胞のうちの僅かのみである。遺伝子転移に用いられる組織においては、非トランスジェニック細胞が優性である。したがって、無傷の植物の再生の間、トランスジェニック細胞に利益をもたらす選択を適用することが必要である。実際には、植物細胞に転移されるマーカー遺伝子がこの目的に用いられる。これらの遺伝子の産生物は阻害剤、例えば、抗生物質または除草剤を不活性化し、したがって、その阻害剤を補足した栄養培地でのトランスジェニック細胞の成長を許容する。
【0127】
A.ツメファシエンスでの形質転換の場合、葉断片の代わりにプロトプラスト(培養状態で、特定の化学薬品の存在下において、さもなければエレクトロポレーションを用いるときに外来性DNAを取り込む、細胞壁のない単離細胞)を用いることができる。それらを、新たな細胞壁が形成されるまで(例えば、タバコの場合には約2日)組織培養の状態で保持する。次に、アグロバクテリアを添加し、組織培養を継続する。DNA構築体でのプロトプラストの一過性形質転換の簡潔な方法は、ポリエチレングリコール(PEG4000)の存在下におけるインキュベーションである。
【0128】
DNAはエレクトロポレーションによって細胞に導入することもできる。これは生活細胞へのDNAの取り込みを増加させるための物理的方法である。電気パルスは生体膜の透過性を、その膜を破壊することなしに、一時的に増大させる。
【0129】
DNAは微量注入によって導入することもできる。DNAを、ガラスキャピラリの助けを借りて、細胞核の近傍に注入する。しかしながら、強固な細胞壁および大空胞を有する植物細胞の場合にはこれは困難である。
【0130】
さらなる可能性は超音波を利用することである;ヒトにおける聴覚の周波数範囲を上回る音波(20kHz超)で細胞を超音波処理するとき、やはり膜の一時的透過性が観察される。この方法を実施する場合、音波の振幅を非常に正確に調整しなければならず、これは、そうでなければ超音波処理された細胞が破裂して破壊されるためである。
【0131】
本発明によるトランスジェニック植物または、例えば発現を支配するための、シグナル配列もしくは適切なプロモーターを含む適切な構築体を産生する方法は、とりわけ、上記グルコースオキシダーゼ(例えば、A.ニガーに由来する)を発現するトランスジェニック植物について既に説明されている(CN1229139、US5,516,671、WO95/21924、WO99/04012、WO95/14784)。同様の方法を、本発明によるトランスジェニック植物を得るの用いることもできる。
【0132】
真菌の形質転換には広範囲の可能性が存在する。プロトプラスト形質転換(実施例2およびSchulzら,1990を参照)に加えて、さらなる慣用法をこの目的で利用可能である。酢酸リチウム法が酵母に対して頻繁に用いられる(Gietzら,1997)。ここでは、これらの酵母細胞は、化学的手段によりDNAの取り込みについて適格にされる。エレクトロポレーションの場合、電流のパルスによってロードされているDNAを細胞に導入する。別の方法はアグロバクテリウム・ツメファシエンスによる形質転換である。プラスミドから出発して、この細菌は外来性生物にDNAを導入することが可能である。異種配列をこのプラスミドに導入するとき、標的細胞が形質転換される。
【0133】
したがって、本発明は、本発明による核酸の少なくとも1つを含むトランスジェニック植物または真菌、好ましくは、アラビドプシス(Arabidopsis)種のようなトランスジェニック植物または酵母種もしくはウスチラゴ種のようなトランスジェニック真菌、およびそれらのトランスジェニック子孫にも関する。それらには、トランスジェニック植物の植物部分、プロトプラスト、植物組織もしくは植物増殖物質、または本発明による核酸を含むトランスジェニック真菌の個々の細胞、真菌組織、子実体、菌糸体および胞子も包含される。好ましくは、これらのトランスジェニック植物または真菌は本発明によるポリペプチドを野生型から逸脱する形態で含む。しかしながら、本発明によるポリペプチドの発現の程度が非常に低いか、またはそれが全くないことによってのみ生来特徴付けられるトランスジェニック植物または真菌も本発明によるものと考えられる。
【0134】
したがって、本発明は、同様に、トランスジェニック植物および真菌であって、グリオキサールオキシダーゼの活性を有するポリペプチドをコードする配列内に修飾が生成されており、かつ本発明によるポリペプチドの産生および/またはその植物または真菌内に存在する本発明によるポリペプチドの生物学的活性もしくは量の、突然変異誘発によって得られる、増加もしくは減少について選択されているトランスジェニック植物および真菌に関する。
【0135】
「突然変異誘発」という用語は、本文脈において用いられる場合、自発的な突然変異速度を高め、したがって、変異体を単離する方法を指す。この文脈において、変異体は、変異原の助けを借りて、例えば、突然変異の誘発に適する化合物または物理的因子(例えば、塩基類似体、UV線等)を用いてイン・ビボで産生させることができる。所望の変異体は特定の表現型に対する選択によって得ることができる。染色体上の突然変異の位置は、他の公知突然変異との関係で、組換え分析によって決定することができる。問題の遺伝子は遺伝子ライブラリを用いる相補性実験によって特定することができる。突然変異は、有方向的な方式(イン・ビトロ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、誤り易発性PCR等)で、染色体または染色体外DNAに導入することもできる。
【0136】
「変異体」という用語は、本文脈において用いられる場合、修飾された(突然変異生成した)遺伝子を担持する生物を指す。変異体は非修飾遺伝子を担持する野生型との比較によって定義される。
【0137】
「耐性」という用語は、本文脈において用いられる場合、広範囲の機構をベースとする「抵抗能力」の形態を指す。「活動的耐性」の形態は「免疫」(=非感受性植物の耐性)および「寛容」(=その病原体に感受性である植物の耐性)である。中間形態が「転移耐性」であり、ここでは病原体が個々の細胞、細胞複合体または植物器官内に局所的に残存する。この3つのタイプの耐性の間に移行形態が存在する。
【0138】
「病原体」または「病原体による攻撃」という用語は、本文脈において用いられる場合、植物を攻撃し、かつ損害を与えるか、または破壊することができる生物、特には、真菌を指す。この損害は広範囲の症状、例えば、植物の部分の脱色、壊死、成長阻害または死滅をベースとし得る。特定の症状(例えば、脱色、壊死)を生じることによって植物の価値を低下させるが、植物または植物部分の死滅は導かない生物も病原体と呼ばれる。
【0139】
トランスジェニック植物の産生に加えて、病原体による攻撃に対する植物の耐性を高めるのに本発明に基づく別の経路をとることができる。
【0140】
したがって、例えば、グリオキサールオキシダーゼ・エンコーディング遺伝子(配列番号9および11を参照)が不活性化または欠失されているボトリチス・シネレアの変異体(実施例9、B.シネレアBcGlyox1ノックアウト変異体の産生を参照)は、もはや、植物においてこの真菌に典型的である損傷の障害を生じることはできない(実施例9および図9から12を参照)。この変異体の分生子が接種されている植物において、これらの変異体はこの真菌の存在に対する上述の応答を誘発し、その応答が局所的および全身性耐性の確立を導いた。耐性の確立は、非処理植物およびもはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない真菌で処理されている植物を病原体と接触させ(実施例9を参照)、特定の期間にわたって植物の損傷を観察することによって容易に試験することができる。この植物の獲得された耐性はこの文脈においては非特異的であり、すなわち、耐性の誘導または増加に用いられた真菌に対して向けられるだけではなく、広範囲の病原体による攻撃に対して向けられる防御機構を誘導する。
【0141】
したがって、本発明は、病原体による攻撃に対する植物の耐性を誘導または増加させる方法であって、植物を、もはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができず、かつその野生型が好ましくは植物病原性真菌の一因である真菌と接触させることによる方法にも関する。これらの真菌は、好ましくは、グリオキサールオキシダーゼをコードする遺伝子(1つもしくは複数)が不活性化または欠失されている真菌である。遺伝子を欠失または不活性化する方法は熟練研究者に公知である(これもやはり実施例9を参照)。問題の真菌のノックアウト変異体が好ましく用いられる。上記真菌ボトリチス・シネレアまたはその変異体に加えて、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子の適切な欠失または不活性化を伴う他の真菌、例えばU.メイジス変異体、も植物の処理に適する。
【0142】
したがって、本発明は、もはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない真菌、好ましくは植物病原性真菌の、病原体による攻撃に対して処理された植物の耐性を増加または誘導するための植物処理剤としての使用にも関する。本発明によるB.シネレアBcGlyox1変異体がこの目的に特に好ましく用いられる。
【0143】
以下の例は、驚くべきことに、本発明によるポリペプチドが真菌における病原性に必須の酵素を構成することを示し、さらに、この酵素が殺真菌剤を特定するのに適する標的タンパク質であること、それを殺真菌活性化合物を特定するための方法において用いることができること、および対応する方法において特定されたグリオキサールオキシダーゼ修飾因子を殺真菌剤として用いることができることを示す。
【0144】
さらに、グリオキサールオキシダーゼの修飾因子を特定するための方法において用いることができるグリオキサールオキシダーゼの酵素活性を測定する方法の例が説明され(実施例10および22)、殺真菌剤を特定するための本発明による方法は明記される方法には限定されない。
【0145】
同様に、以下の例はウスチラゴ・メイジスおよびボトリチス・シネレアには限定されない。類似の方法および結果が他の真菌に関しても得られる。
(実施例)
【実施例1】
【0146】
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸の単離(「プラスミド・レスキュー」)
プラスミド・レスキューをBolkerら,1995によって記載されるように行った。ゲノムU.メイジスDNAをMluIで切断して再ライゲートし、エレクトロポレーションによって大腸菌株DH5αをそれで形質転換した。
【0147】
U.メイジスの培養
これらの株を28℃でPD培地またはYEPS培地において成長させた(Tsukadaら,1988)。株が液滴の形態で1%木炭を含有するPDプレート培地に適用された後、二核フィラメントの発生が観察された(Holliday,1974)。病原性試験を記載される通りに行った(Gillessenら,1992)。株の一晩培養物を4×107細胞の濃度で再懸濁させ、若年トウモロコシ植物(Gaspar Flint)に注入した。少なくとも80の植物が各々の株または各々の株の組合せに感染し、7日から21日後にそれらをアントシアニン発生および腫瘍発生について検査した。
【0148】
画像処理
個々のウスチラゴ・メイジス細胞の形態を、Zeissアキシオスコープ(axioscope)および示差干渉対照法として知られるものを用いて分析した。細胞の顕微鏡写真を撮影した(Kodak T−64、倍率1000)。
【実施例2】
【0149】
U.メイジスにおけるglo1およびglo2ノックアウト変態の産生
ノックアウトカセットの産生
分子生物学的標準法を、Sambrookら,1989によって記載される通りに行った。glo1ゼロ変異体を産生するため、glo1遺伝子の5’および3’フランクをPCRによって増幅した。UM518株のゲノムDNAをテンプレートして用いた。配列5’−cacggcctgagtggccggtgtgtaaacgatcctttctggaag−3’を有するプライマーLB2および配列5’−cctccaagtttcgagatatcgacc−3’を有するLB1を5’フランクに用いた(1151bp)。プライマーRB1(5’−gtgggccatctaggccgtcaacagcaccaaattcacagcc−3’)およびRB2(5’−atcgtagctcgagtgtatgcttcc−3’)を3’フランクに用いた(1249bp)。プライマーLB2およびRB1で開裂部位SfiI(a)およびSfiI(b)を導入した。これらのアンプリコンをSfiIで制限し、ベクターpBS(ハイグロマイシンBカセット)から単離されている1884bp SfiI断片とライゲートした。この4300bp glo1ノックアウトカセットを、プライマーLB1およびRB2を用いるPCRによって増幅した(Kamper and Schreier,2001)。
【0150】
U.メイジス・プロトプラストの調製
YEPS培地中の培養物50mlを28℃で約5×107/ml(OD0.6から1.0)の細胞密度まで成長させた後、50ml Falcon管内で7分間、2500g(Hereaus、3500rpm)で回転沈降させた。その細胞ペレットを25mlのSCSバッファ(20mMクエン酸ナトリウム pH5.8、1.0Mソルビトール、(20mMクエン酸ナトリウム/1.0Mソルビトールおよび20mMクエン酸/1.0Mソルビトールを混合し、pHメーターを用いてpH5.8にする)に再懸濁させ、再度2500g(3500rpm)で7分間回転させ、そのペレットを2.5mg/ml Novozym234を補足した2mlのSCSバッファ、pH5.8に再懸濁させた。プロトプラストを室温で放出し、そのプロセスを顕微鏡下で5分毎に監視した。その後、プロトプラストを10mlのSCSバッファと混合して1100g(2300rpm)で10分間回転させ、上清を廃棄した。そのペレットを10mlのSCSバッファに慎重に再懸濁させ、再度回転させた。SCSバッファでの洗浄プロセスを2回繰り返し、ペレットを10mlのSTCバッファで洗浄した。最後に、ペレットを500μlの冷STCバッファ(10mMトリス/HCl pH7.5、1.0Mソルビトール、100mM CaCl2)に再懸濁させ、氷上で保持した。アリコートを−80℃で数ヶ月間保存することができる。
【0151】
U.メイジスの形質転換
U.メイジスをSchulzら,1990の方法によって形質転換した。ゲノムU.メイジスDNAをHoffmann and Winston 1987によって記述されるように単離した。
【0152】
この目的のため、最大で10μlのDNA(最適には、3μgから5μg)を2mlエッペンドルフ管に移し、1μlのヘパリン(15μg/μl)(SIGMA H3125)を添加した後、50μlのプロトプラストを添加し、氷上で10分間インキュベートした。STC中の40%(w/w)PEG3350(SIGMA P3640)500μl(フィルター滅菌)を添加してプロトプラスト懸濁液と慎重に混合し、その混合物を氷上で15分間インキュベートした。その混合物を勾配プレートに塗布した(底部寒天:10ml YEPS−1.5%寒天−抗生物質を補足した1Mソルビトール;塗布の直前、この底部寒天層を10ml YEPS−1.5%寒天−1Mソルビトールで覆い、プロトプラストを塗布し、それらのプレートを28℃で3日から4日間インキュベートした)。
【0153】
サザーン分析のため、DNAをEcoRIおよびXhoIで制限した。ジゴキシゲニン(Roche)で標識した1249bp PCR断片(RB1/RB2)をDNAプローブとして用いて検出を行った。
【実施例3】
【0154】
Glo1の過剰産生
Glo1の過剰産生のため、glo1遺伝子を含む3400bp断片を、プライマー5’glo1(5’−cccgggatgacgaggcacctctcctcatc−3’)および3’glo1Not(5’−gcggccgcgaattggtcagacgaatccg−3’)を用いて増幅した。そのアンプリコンをベクターpCR−Topo2.1(Invitrogen)にクローン化した。glo1断片をSmaIおよびNotIでの制限によって再単離し、pCA123のそれぞれの開裂部位にクローン化した。pCA123はプラスミドpotef−SG(Spellingら,1996)から得たプラスミドであり、otefプロモーターをpotef−SGから890bp PvuII/NcoI断片として単離し、PvuII/NcoI−切断ベクターpTEF−SGにライゲートした(Spellingら,1996)。得られるプラスミドにおいて、SGFP遺伝子をNcoI/NotIでの制限によって切除し、pEGFP−N1(Clontech)に由来するNcoI/NotI−切断EGFP対立遺伝子で置き換えた。生じるプラスミドをpCA123と命名する。pCA123から最終的に得られるプラスミドpCA929をSspIで直線化し、それでU.メイジスを形質転換する。用いられるU.メイジス株は、Brunswickにおけるドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルツレン[ジャーマン・コレクション・オブ・マイクロオーガニズムス・アンド・セル・カルチャー]の公共コレクションにおいて株番号UM521として入手可能である。これらの形質転換体を構築体glo1−1で形質転換し、cbx耐性について選択した(Keonら,1991)。
【0155】
得られる株ウスチラゴ・メイジスBAY−CA95は本発明によるポリペプチドGlo1の過剰産生に用いることができる。これはBrunswickにおけるDSMZに番号DSM14509として寄託された。
【実施例4】
【0156】
細胞破壊、抽出物の分画、および酵素活性のアッセイ
グリオキサールオキシダーゼ活性を無傷の細胞、細胞抽出物および膜画分において決定した。
【0157】
グリオキサールオキシダーゼを発現する、寄託番号DSM14509として寄託されているウスチラゴ・メイジス株の細胞を最小培地またはPD培地において0.6から3のOD600nmまで成長させて回転沈降させ、再懸濁させることによって20のOD600nmとした。液体窒素中において乳棒および乳鉢で粉砕することによって細胞抽出物を得た。以下の工程の全ては4℃で行った。細胞残留物および細胞残骸を5000rpmおよび8000rpmでの分画遠心によって除去した。13000rpmで45分間回転させることによって膜を単離した。膜沈殿を、0.5%Tween−20を補足した50mMトリス/HClバッファ、pH8に再懸濁させた。
【0158】
Glo1活性は酵素反応をフェノールレッドおよびペルオキシダーゼと組み合わせることによって測定することができる。グリオキサールオキシダーゼ活性はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)反応を基質としてのフェノールレッドと組み合わせることによって検出した。ここで、50μlのアッセイ容積は10μlの試料、15μlの50mMリン酸カリウムバッファ、pH6、5μlの100mMメチルグリオキサール溶液、5μlのHRP(190U/ml)および5μlの56mMフェノールレッド溶液からなる(Kersten and Kirk 1987)。28℃で4時間インキュベートした後、NaOHを0.5Mの濃度まで添加した。吸収A550nmは「Tecan plus」リーダーで決定した。活性酵素はフェノールレッドの脱色を参照して特定される。
【0159】
酵素の活性に影響を及ぼす基質または物質混合物は、実験において適切な対照を用いて、試験物質の存在および不在における酵素活性を比較することによって特定することができる。
【0160】
グリオキサールオキシダーゼの他の基質を、メチルグリオキサールが基質として用いられた上記プロセスにおいて用いることもできる。次に、無傷の細胞に加えて、膜画分を用いることができる。利用可能な基質には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリオキサレート、グリセロールアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、ヒドロキシアセトンおよびグルタルアルデヒドも含まれるが、形成されるH2O2の量は他の点で同一の条件下において同じでならなければならない必要はない。
【実施例5】
【0161】
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸の単離
用いられる株
野生型B05.10株を分析、形質転換および野生型比較株として用いた。B05.10はSAS56(van der Vlugt−Bergmansら,1993)の派生体である。
【0162】
寒天プレート上での培養
B.シネレアを20℃、暗所において、様々な炭素源が補足された、Oxoid麦芽寒天またはOxoid Czapek−Dox寒天を含有するプレート(スクロース30.00g、NaNO3 3.00g、MgSO4×7H2O 0.50g、KCl 0.50g、FeSO4×7H2O 0.01g、K2HPO4 1.00g、寒天13.00g、蒸留H2O 1000.00ml;pHを7.2とする)上で成長させた。
【0163】
分生子の単離
菌糸成長によって完全に覆われているプレートを用いて分生子(高級真菌の無性胞子)単離を行った。これらのプレート上で胞子形成を誘導するため、それらをUV光(270nm−370nm)に16時間露出した。0.05%(v/v)Tween80を含有する無菌水5mlを用いて誘導後7日から14日真菌に胞子を形成させたプレートから分生子を洗い流した。その懸濁液をガラスウールを通して濾過し、114×gで遠心(5’)することによって1回洗浄し、無菌水に再懸濁させた。
【0164】
B.シネレア株およびノックアウト変異体の保存
B.シネレアの野生型および変異体の分生子を、12mM NaClを含有する75%(v/v)グリセロール中、−80℃で凍結した。
【0165】
グリセロールオキシダーゼ遺伝子bcglyoxlの単離
ラムダEMBL3中のB.シネレア、SAS56株のゲノムライブラリ(van der Vlugt−Bergmansら,1997)をグリオキサールオキシダーゼ遺伝子の存在についてスクリーニングした。用いられたプローブは、長さが385塩基対であり、かつおそらくはファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼと相同であるものと特定されているT4株のcDNA断片であった。この断片はEMBLデータベースに受付番号AL113811として寄託されている。様々なハイブリダイズ相を精製し、ファージDNAを単離した。これらのファージのうちの1つに由来する、ハイブリダイズする4.1kbp BamHI制限断片をStratagene製のpBluescript(登録商標)SKII(−)ファージミドにクローン化した後、配列決定した。クローン化断片の特徴が図5に示される。
【実施例6】
【0166】
ゲノムDNAのサザーンブロット分析
ゲノムDNAの単離
液体培養の菌糸体をMiracloth(Calbiochem)を通す濾過によって収穫し、凍結乾燥した。乾燥した菌糸体を液体窒素中でホモジナイズした。3ml TES(100mMトリス−HCl、pH8.0、10mM EDTAおよび2%(w/v)SDS)および60μlプロテイナーゼK(20μg/μl)を添加し、その懸濁液を60℃で1時間インキュベートした。続いて、840μlの5M NaClおよび130μlの10%(w/v)臭化N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(CTAB)を添加し、インキュベーションを65℃で20分間継続した。次に、その懸濁液を、4.2mlのクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を添加することによって処理した後、簡単に混合して氷上で30分インキュベートし、続いて18000×gで5分間回転させた。水性上部相を除去して1350μlの7.5M 酢酸NH4を添加し、その混合物を氷上で1時間インキュベートして18000×gで15分間回転させた。0.7容量のイソプロパノールを添加してDNAを沈殿させた。そのDNAをガラス棒で除去し、70%(v/v)エタノールで洗浄して乾燥させた。最後に、ゲノムDNAを1mlのTE(10mMトリス−HCl、pH7.5および0.1mM EDTA、2.5U RNaseA)に溶解し、50℃で30分間インキュベートしてエタノールで沈殿させた。
【0167】
サザーンブロット分析
合計容積100μl中1μgのゲノムDNAを望ましい制限酵素で完全に開裂した。DNA断片を0.8%(w/v)アガロースゲルで分離した後、Amersham製のHybond(商標)−N+膜に、アルカリ性ブロットについてプロトコルに指定されるようにブロットした。この目的のため、まずDNA含有ゲルを、染料の色が変化するまで、0.25M HClに入れた。そのゲルを蒸留水で洗浄した後、Sambrook et al(1989)に記載されるように、0.4M NaOHをブロット溶液として用いてキャピラリブロットを行った。DNAの転移の後、膜を2×SSC(0.3M NaClおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7)で簡単に洗浄し、乾燥させた。UV処理(312nm、0.6J/cm2)によってDNAを膜に固定した。
【0168】
「Random Primers DNA Labelling System」(Life Technologies)の助けを借りて放射標識プローブを調製した。この目的のため、20ngのDNA断片(「プローブ」、図5を参照)を製造者のプロトコルに従って標識した。標識されたDNAをSephadex G50カラムで精製した。
【0169】
ハイブリダイゼーションはChurch and Gilbert(1984)によって記載されるように行った。この目的のため、ブロットをハイブリダイゼーションバッファ(0.25Mリン酸バッファ、pH7.2、1mM EDTA、1%(w/v)BSAおよび7%(w/v)SDS)中、65℃で30分間予備ハイブリダイズさせた。その後、ブロットを、標識プローブを含有するハイブリダイゼーションバッファと65℃で40時間ハイブリダイズさせた。ブロットを3回洗浄した(30分、65℃、2×SSCおよび0.1%(w/v)SDS中)。Kodak X−OMAT ARフィルムを用いてオートラジオグラフィーを行った。
【0170】
これらのハイブリダイゼーションの結果が図6に示される。3つの制限(SalI、BamHLおよびEcoRI)の全てにおいてこのプローブで単一のバンドが特定された。ハイブリダイズしたBamHI断片はサイズが4kbpであった。
【実施例7】
【0171】
cDNAのクローン化
Life Technologies製のSuperscript(商標)一工程RT−PCR系によって完全cDNA断片を得た。この目的のため、B.シネレア、B05.10株からTRIzolプロトコルに従ってTRIzol(登録商標)試薬を用いて単離されている全RNA 0.1μg(TRIzol試薬はフェノールおよびチオシアン酸グアニジニウムの単相性溶液である;クロロホルムの添加およびそれに続く遠心の後、イソプロパノールを用いて水相からRNAを沈殿させる)に逆転写を施し、遺伝子特異的プライマーの助けを借りて増幅した。そのcDNAをベクターpCR(登録商標)4−TOPO(登録商標)(Invitrogen)に直接クローン化し、完全に配列決定した。
【0172】
このcDNA配列により、キチン結合ドメインおよびグリオキサールオキシダーゼドメインをコードする配列間のイントロンの存在が確認された。
【実施例8】
【0173】
BcGlyox1の発現
BcGlyox1の発現を、トマトの葉の時間に基づく感染の経過を参照して研究した。B.シネレアB05.10株の分生子を、10mMグルコースおよび10mM(NH4)H2PO4を補足したB5培地において2時間予備インキュベートして発芽を刺激した。トマト(リコペルシコン・エスクレンツム(Lycopersicon esculentum)栽培変種マネーメーカー遺伝子型Cf4)の葉に、噴霧により、ml当たり106胞子を含む培地を接種した。これらの葉を20℃および>95%の大気湿度でインキュベートした後、接種後定期的な間隔で収穫し、−80℃で保存した。
【0174】
凍結乾燥され、かつ液体窒素中にホモジナイズされている菌糸体から、乳棒および乳鉢を用いて組織を粉末に粉砕することによりRNAを抽出した。物質のグラム当たり2mlのグアニジウムバッファ、pH7を添加した。このバッファは8.0M塩酸グアニジウム、20mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、20mM EDTAおよび50mM β−メルカプトエタノール、pH7.0で構成されていた。その懸濁液を2回、1回は等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(IAA)(25:24:1 v/v/v)で、1回はクロロホルム/IAA(24:1 v/v)で抽出した。12000×g、4℃で45分間遠心した後、8M LiClの容積の1/3を水相に添加した。次に、その懸濁液を氷上で一晩インキュベートし、12000×gで15分間回転させた。沈殿を2M LiClで1回、70%(v/v)エタノールで2回洗浄し、風乾して1mlのTEに溶解した。RNA濃度は260nmで分光光度的に決定した。代替法として、凍結乾燥物質からRNAを得るのに、製造者の指示に従ってTRIzol(登録商標)試薬(Life Technologies)も用いた。
【0175】
ゲル電気泳動において全RNAを流すため、試料を以下のように変性した。3.6μlの6M脱イオングリオキサール、10.7μlのジメチルスルホキシドおよび2.0μlの0.1Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7を3.7μlの溶液中10μgの全RNAに添加した。この試料を50℃で60分間インキュベートして簡単に回転させ、液体窒素中で凍結して氷上で再度解凍した。その試料を1.4%(w/v)アガロースゲルにおいて分離した、ゲルおよびランニング・バッファは0.01Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7.0を含有していた。ゲルを流した後、分離したRNA断片をキャピラリ・ブロット法(Sambrookら,1989)により、0.025Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7を含有するブロッティング溶液を用いて、Hybond(商標)−N+膜(Amersham)に移した。RNAが転移した後、その膜を乾燥させ、UV処理(312nm、0.6J/cm2)によってRNAを膜上に固定した。ハイブリダイゼーション・プロトコルはDNAハイブリダイゼーションについて述べられる通りである。
【実施例9】
【0176】
B.シネレアBcGlyoxIノックアウト変異体の産生
ベクター構築
NruI−HindIII断片が除去され、かつハイグロマイシン耐性カセットで置換されているBCGlyoxI遺伝子を含む相同組み換え用のベクター(pHyGLYOXI、図8を参照)でB.シネレアを形質転換した。
【0177】
プロトプラストの調製
形質転換のためのプロトプラストを得るため、1リットルの1%(w/v)麦芽抽出物(Oxoid)を2×108B.シネレア分生子(B05.10株)に接種した。2時間後、発芽している分生子を、180rpmのロータリー・シェーカーにおいて、20℃で24時間インキュベートした。22.4μmふるいによって菌糸体を収穫し、5mg/ml Glucanex(ベータ−グルカン多糖を加水分解するための熱安定性ベータ−グルカナーゼ)を補足した、0.6M KClおよび50mM CaCl2を含有するKC溶液50ml中でインキュベートした。このようにしてプロトプラストが調製された後、その懸濁液を22.4μmおよび10μmふるいを通して濾過した。プロトプラストを洗浄し、100μl当たり107プロトプラストの濃度まで再懸濁させた。
【0178】
形質転換および形質転換体の選択
EcoRIで開裂してフェノールで抽出されている、2μgの形質転換ベクターpHyGLYOX1を95μlのKCで希釈し、2μlの5mMスペルミジンを添加した。氷上で5分間インキュベートした後、100μlのプロトプラスト懸濁液をDNAに添加し、全てを氷上でさらに5分間インキュベートし、10mMトリス−HCl、pH7.4中の25%(v/v)PEG3350および50mM CaCl2を含有するポリエチレングリコール(PEG)溶液100μlを添加してその懸濁液を混合した。室温で20分後、500μlのPEGを添加し、容器を室温でさらに10分間静置した。最後に、200μlのKC溶液を添加した。
【0179】
形質転換されたプロトプラストを含む形質転換反応物を200mlのSH寒天と混合し、直ちに20のペトリ皿に分配した。SH寒天は、0.6Mスクロース、5mM HEPES、pH6.5、1.2%(w/v)精製寒天および1mM NH4(H2PO4)を含有する。20℃で24時間インキュベートした後、50μg/mlハイグロマイシンを含有する等量のSH寒天を添加した。出現した個々のコロニーを、さらなる選択のため、100μg/mlハイグロマイシンを含有する麦芽寒天プレートに移した。次に、成長するコロニーをハイグロマイシンを含有しない麦芽寒天プレートに移し、UV光(近UV)で処理することによって胞子形成を誘発した。単胞子単離体を得るため、分生子を単離して希釈し、100μg/mlハイグロマイシンを補足した麦芽寒天プレートに塗布した。これらのプレートから得られたコロニーを単離し、さらなる分析に用いた。
【0180】
形質転換体のサザーン分析
形質転換体をサザーン分析にかけた。DNAを単離してEcoRVで切断し、電気泳動で分離し、ブロットしてプローブとハイブリダイズさせた(上記参照)。ノックアウト形質転換体の場合、そのようなハイブリダイゼーションは300bpの断片を生じるはずである。緩慢成長表現型を有する全ての形質転換体が300bpの断片を示した。
【0181】
形質転換体の成長分析
高ハイグロマイシン含量のプレート上で成長した形質転換体の全てはハイグロマイシンを含有しない麦芽寒天プレート上でも正常に成長した。これらの形質転換体を、単糖を炭素源として含有する合成寒天培地上で成長させたとき、形質転換体は緩慢に成長するか、または成長を停止した。試験した糖の例はヘキソース、ペントースおよびトリオースであった。発芽および菌糸発生の両者は悪影響を受けるか、または完全に妨げられた。この成長欠陥は、例えば、トリプトンまたはペプトンを添加することによって補うことができる。成長阻害はアルギニンを培地に添加することによって完全に修復することができる。100μM以上の濃度のアルギニンが、単糖を含有する培地上での真菌の成長を完全に回復させることができる。
【0182】
バイオアッセイ
バイオアッセイを行い、BcGlyox1変異体の病原性を野生型B.シネレア(B05.10株)のものと比較した。
【0183】
トマト(リコペルシコン・エスクレンツム)およびリンゴ(Alkmene and Cox Orange)の切除した葉および果実に分生子懸濁液を接種した(Benitoら,1998;ten Haveら,1998)。バラおよびガーベラ雑種の切除した花に乾燥分生子をまぶした(van Kanら,1997)。接種された宿主組織を暗所において15℃で(トマトの葉および果実、バラおよびガーベラ)または明所において20℃で(リンゴ)インキュベートした。
【0184】
試験したBcGlyox1変異体は全ての実験構成において原発性の壊死病変を生じることができず、それに対して野生型は原発性の病変を生じ、これは幾つかの場合には隣接組織まで蔓延した(図9から12を参照)。
【0185】
野生型とは異なり、BcGlyox1変異体はB5培地中で単糖の存在下(標準培地)においては発芽しないため、分生子を室温で2時間、1%強麦芽抽出物中で予備インキュベートすることによって発芽を刺激した。これは野生型および変異体の効率的な発芽を導いた。これらの予備インキュベートした懸濁液を同様に接種に用い、他の欠陥または欠損による変異体の病原性を排除した。しかしながら、これらの実験でさえ、変異体が試験組織に感染できないことを示した(図9から12)。
【0186】
最後に、単糖の利用に関する変異体の問題を排除するため、接種懸濁液にアルギニンをさらに添加した。傷ついたリンゴへの変異体分生子および野生型のアルギニン含有懸濁液の接種は、両者の場合において壊死組織が発生することを明らかにした。野生型の病変は、最終的に全ての組織が腐敗するまで、数日間蔓延した。変異体によって生じた病変は2日から3日間蔓延し、そこで直ちに蔓延が完全に停止した。
【実施例10】
【0187】
グリオキサールオキシダーゼの酵素活性の発現の検出
イン・ビトロおよびイン・ビボ、例えば、実施例3に説明されるように産生される本発明によるU.メイジス細胞(CA95)におけるグリオキサールオキシダーゼの活性は、基質メチルグリオキサールの変換に基づき、以下の反応を利用して検出することができる:
工程1:
メチルグリオキサール+O2→ピルベート+H2O2
工程2:
H2O2+10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red(登録商標))→レゾルフィン+H2O
Amplex Red(登録商標)はH2O2と1:1の化学量論で反応し、レゾルフィン(7−ヒドロキシ−3H−フェノキサジン−3−オンナトリウム塩)を生じる。蛍光を550nmの励起波長および595nmの放射で測定する。このアッセイにおいては10mMメチルグリオキサールの基質濃度を用いた。無傷の細胞を用いるとき、グリオキサールオキシダーゼ濃度が低く、したがって、反応をより長時間進行させなければならないことを考慮しなければならない。したがって、例えば、非常に良好な読み取り値は9時間のインキュベーション後に得られた。1mMメチルグリオキサールの濃度では、所定の窓においては反応は観察されなかった。100mMメチルグリオキサールの添加は変換速度の僅かな増加を生じるだけであったが、2mMから10mMメチルグリオキサールでの変換速度の増加は速度論の直線部分の範囲内である(図13)。
【実施例11】
【0188】
阻害剤を特定するための酵素アッセイ
酵素アッセイを50μlの総容積で行った。この目的のため、アッセイしようとする基質を10μl基質溶液(50mMメチルグリオキサール、2.5%(v/v)DMSO)の状態で384マイクロタイタープレートに導入した。メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKM値は前もって決定されていた(図14を参照)。阻害効果について試験しようとする候補化合物の濃度は、実施されるアッセイにおける基質の最終濃度が10μMであるようなものであった。次の工程において、20μlの細胞溶液(過剰産生株Bay−CA95の細胞(OD600=5);0.2M 2,2−ジメチルスクシネートバッファ、pH5、4℃に冷却)を添加した。20μlの検出溶液(125μM Amplex Red(登録商標)試薬(100%DMSO中の20mM貯蔵溶液)、2.5U/mlセイヨウワサビペルオキシダーゼ、62.5mMリン酸ナトリウムバッファ、pH7.4)を混合物に添加した。その混合物を30℃で9時間インキュベートした。その後、蛍光の増加をλ=550nm(吸収)およびλ=595nm(放射)で測定し、Bay−CA95細胞の存在下における測定の結果を野生型U.メイジス518細胞の存在下における測定の結果と比較した(図15も参照)。このアッセイにおいて用いられた物質は以下の最終濃度で存在していた:c(2,2−ジメチルスクシネート/NaOH)=40mM、c(Amplex Red(登録商標)(分子プローブ))=50μM、c(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)=0.001U/μl、c(メチルグリオキサール)=10mM、OD(Bay−CA95)=1、c(リン酸ナトリウムバッファ)=25mM。候補化合物の阻害効果は相対蛍光度の減少からわかり、阻害剤を特定した。表IIはグリオキサールオキシダーゼ阻害剤として作用する化合物の例を示す。表IIは、個々の化合物について決定されているpI50値も示す。p150値は、酵素の50%阻害を導く物質のモル濃度を示すIC50値として知られるものの負の常用対数である。例えば、8のpI50値は10nMの濃度での酵素の最大阻害の半分に相当する。図15は、グリオキサールオキシダーゼの活性に対する化合物(表II、実施例3)の効果の例を示す。
【0189】
【表3】
【実施例12】
【0190】
特定されているグリオキサールオキシダーゼ阻害剤の殺真菌効果の実証
例として、とりわけベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)に対する、化合物の抗真菌作用(防御作用)を試験した。この真菌はリンゴ黒星病として知られるものを生じ、これはリンゴ類果樹における葉の黒色および緑色斑点につながる。これらの病変は拡大し、かつ融合する。重度に感染した葉は死に、これは木がそれらの葉を夏に失うことにつながり得る。感染は果実に対する有害効果も有する。果実の黒星病は、コルク化および変形した果実を伴う、皮の灰色病変として現れる。
【0191】
活性化合物の適切な調製品を調製するため、1重量部の活性化合物を、例えば、24.5重量部のアセトンおよび24.5重量部のジメチルホルムアミドおよび乳化剤としての1.0重量部のアルキルアリールポリグリコールエーテルと混合し、その濃縮物を水で所望の濃度に希釈する。
【0192】
防御活性について試験するため、若年植物に活性化合物の調製品を述べられる適用率で噴霧する。噴霧コーティングが乾燥した後、それらの植物にリンゴ黒星病病原体ベンツリア・イナエクアリスの水性分生子懸濁液を接種し、インキュベーション・キャビネット内に1日間、約20℃および100%相対大気湿度で留める。
【0193】
次に、植物を約21℃および約90%の相対大気湿度の温室に入れる。
【0194】
接種後1日から12日に、試験を評価する。0%は対照に相当する効力を意味し、それに対して100%の効力は疾病が観察されないことを意味する。
【0195】
250ppmの濃度で、実施例4の化合物(表I)は45%の効力を示した。
【0196】
図及び配列表
図1は、配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。U.メイジスGlo1とP.クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼとの類似性は44%であり、これに対して同一性は38%である。銅イオンの配位に重要なものである保存位置は灰色の背景に対して示される。
【0197】
図2は、(A)glo1ゼロ変異体を特定するためのサザーン分析。各々の場合において述べられるウスチラゴ株の各々のゲノムDNA 1μgをEcoRIおよびXhoIで切断し、1%アガロースゲルにおいて分離してブロットした。ジゴキシゲニン標識DNAプローブ(1200bp;図2Bに示されるような、プライマーRB1/RB2でのPCR断片)を用いてハイブリダイゼーションを行った。個々のレーンにおいて適用されたDNAは以下の株から単離した:
レーン2:野生型Um518;レーン3:野生型Um521;レーン4−8:Um518の形質転換体(518#0、518#1、518#4、518#6、518#8);レーン9−13:Um521の形質転換体(521#1、521#5、521#7、521#8、521#9)。レーン1における1kbプラスDNAマーカーはサイズマーカーとして作用した。
(B)glo1ゼロ変異体を産生するための相同組換えの模式的表示。プライマーRB1およびRB2はハイブリダイゼーションのためのDNAプローブとして用いられるPCR産生物を定義する(Kamper and Schreire(2001)も参照)。
【0198】
図3は、glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。問題の培養物をPD培地において0.8のOD600まで成長させ、H2Oで洗浄した後、0.2%ケルツァン(Bayer AG)溶液に再懸濁させた。大文字はゼロ変異体を示し、一方小文字は野生型を示す。A、b、c、F、G、JおよびKはUm518株またはそれらの派生体であり、c、d、e、H、J、LおよびMはUm521株およびそれらの派生体である。
【0199】
【化2】
【0200】
図4は、(デルタ)glo1株の表現型。(デルタ)glo1対立遺伝子をU.メイジス株Um521(alb1)およびUm518(a2B2)に導入した。これらの株は全て、単独または述べられる組合せのいずれかで、PC木炭プレート培地に滴下により適用した。48時間接種した後、白色空中菌糸の存在が接合の成功を示す。
【0201】
図5は、B.シネレアBcGlyox1配列の主な特徴。BcGLYOX1のタンパク質配列は、植物タンパク質(例えば、1型キチナーゼ、レクチン)において見出すことができる多糖結合ドメインとの相同性を有する短い配列が続く、推定シグナルペプチド開裂部位を含む。このドメインは、グリオキサールオキシダーゼをコードするP.クリソスポリウム遺伝子およびガラクトースオキシダーゼをコードする遺伝子(ダクチリウム・デンドロイデス(Dactylium dendroides)に由来)との相同性を有する触媒ドメインに先行する。BcGlyox1遺伝子は、P.クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼに典型的である通常のCu2+結合部位をも含む。遺伝子を単離するのに用いられる開裂部位も示される。単離に用いられるB.シネレア断片の位置およびサザーン分析に用いられるDNAプローブと同様に、見出されたイントロンがマークされた。
【0202】
図6は、図に示されるように3種類の異なる制限酵素で切断されたB.シネレア(B05.10株)のゲノムDNAを用いるサザーンブロット。制限されたDNAはB.シネレアに由来する放射標識385bp断片とハイブリダイズした。
【0203】
図7は、ノックアウト変異体の産生に用いられ、かつ元のベクターのNruI−HindIII断片を置換するハイグロマイシン耐性カセットを含むベクターpHyGLYOX1の調製。
【0204】
図8は、ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。例として、関心保存アミノ酸が灰色の背景に対して示される。
【0205】
図9は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したリンゴ(Alkmene and Cox Orange)にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を接種した。接種した宿主組織に20℃で明所において接種した。試験したBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図9、A4aおよびR3a)、それに対して野生型は原発性病変を生じ(図9、B05.10)、それはある程度隣接組織に蔓延した。麦芽抽出物と共に予備インキュベートした懸濁液の場合(実施例9を参照)、それらの変異体が試験組織に感染できないことも明らかとなった。
【0206】
図10は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したトマト(リコペリコン・エスクレンツム)にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を接種した。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。試験したBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図10、左、A4a、および中央、R3aのトマト)、それに対して野生型B05.10は原発性病変を生じ(図12、右のトマト)、それはある程度隣接組織に蔓延した。
【0207】
図11は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したトマト(リコペリコン・エスクレンツム)の葉にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を各々の場合において一方の側に接種した。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。試験されているBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図11、葉の右半分)、それに対して野生型は原発性病変を生じ(図11、葉の左半分)、それは隣接組織に蔓延した。
【0208】
図12は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したガーベラ雑種の花に乾燥B.シネレア分生子(実施例9を参照)をまぶした。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。全ての実験構成において、試験したBcGlyox1変異体は原発性壊死病変を生じることができず(図12A)、それに対して野生型は原発性病変を生じ、それはある程度隣接組織に蔓延した(図12B)。
【0209】
図13は、異なる基質濃度の関数としてのグリオキサールオキシダーゼによるメチルグリオキサールの変換の比較。
Glo1の発現を、Glo1が過剰産生されるCA95細胞(U.メイジス株BAY−CA95、実施例3を参照)におけるメチルグリオキサール(MG)の酵素変換を基準にして、無傷の細胞において検出した(実施例10を参照)。この試験においては10mMメチルグリオキサールの基質濃度を用いる。1mMメチルグリオキサールの濃度では、所定の範囲において反応は観察されなかった。100mMメチルグリオキサールの添加は変換速度の僅かな増加を生じるのみであり、それに対して2mMから10mMメチルグリオキサールでの変換速度の増加は速度論の直線範囲内にある。この試験は無傷の細胞だけではなく、細胞断片(膜画分)でも行った。
【0210】
図14は、メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKMを決定するためのLineweaver−Burkプロット。
反応をセイヨウワサビペルオキシダーゼと組み合わせることにより、アッセイを継続的に行った(実施例10を参照)。Amplex Red(登録商標)(分子プローブ)の変換を蛍光定量的に監視した(λ(exc)=550nm;λ(em)=595nm)。反応容積は50μlであった。約180分のインキュベーション期間(ラグ相)の後およびブランク値を差し引いた後に変換速度を決定した。
【0211】
図15は、本発明による阻害剤の添加によるGlo1の阻害。
【0212】
実施例10において説明されるように、検出試薬Amplex Red(登録商標)との組合せアッセイ系を用いてGlo1活性を行った。Bay−CA95細胞(CA95)の代わりに、U.メイジス野生型518細胞を対照として用いた。本発明による方法において特定された化合物のうちの1つ(表II、実施例3)(阻害剤)を10μMおよび100μMの2種類の異なる濃度で用いた。
【0213】
配列番号1
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1をコードする核酸配列(cDNA)。
【0214】
配列番号2
配列番号1に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1のアミノ酸配列。
【0215】
配列番号3
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1をコードする核酸配列(ゲノムDNA)。
【0216】
配列番号4
配列番号3に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1のアミノ酸配列。
【0217】
配列番号5
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo2をコードする核酸配列(cDNA)。
【0218】
配列番号6
配列番号5に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo2のアミノ酸配列。
【0219】
配列番号7
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo3をコードする核酸配列(cDNA)。
【0220】
配列番号8
配列番号7に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo3のアミノ酸配列。
【0221】
配列番号9
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸配列(cDNA)
【0222】
配列番号10
配列番号9に示される配列によってコードされるB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼのアミノ酸配列。
【0223】
配列番号11
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸配列(2つのエクソン、エクソン1およびエクソン2、並びにイントロンを含むゲノムDNA)
【0224】
配列番号12
配列番号11に示される配列によってコードされるB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼのアミノ酸配列(この配列表においてはエクソン1および2は連結していた)。
【0225】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1−1】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−2】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−3】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−4】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図2】(A)glo1ゼロ変異体を特定するためのサザーン分析。(B)glo1ゼロ変異体を産生するための相同組換えの模式的表示。
【図3】glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。
【図4】(デルタ)glo1株の表現型。
【図5】B.シネレアBcGlyox1配列の主な特徴。
【図6】3種類の異なる制限酵素で切断されたB.シネレア(B05.10株)のゲノムDNAを用いるサザーンブロット。
【図7】ノックアウト変異体の産生に用いられ、かつ元のベクターのNruI−HindIII断片を置換するハイグロマイシン耐性カセットを含むベクターpHyGLYOX1の調製。
【図8−1】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−2】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−3】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−4】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−5】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図9】ノックアウト変異体の無病原性。
【図10】ノックアウト変異体の無病原性。
【図11】ノックアウト変異体の無病原性。
【図12】ノックアウト変異体の無病原性。
【図13】異なる基質濃度の関数としてのグリオキサールオキシダーゼによるメチルグリオキサールの変換の比較。
【図14】メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKMを決定するためのLineweaver−Burkプロット。
【図15】本発明による阻害剤の添加によるGlo1の阻害。
【0001】
本発明は殺真菌剤を特定するための方法並びにグリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌ポリペプチドをコードする核酸、それらによってコードされるポリペプチド、および殺真菌剤の標的としてのそれらの使用および新規殺真菌活性化合物の特定へのそれらの使用、並びにこれらのポリペプチドの修飾因子を発見する方法、並びに、最後に、グリオキサールオキシダーゼの機能を有する真菌ポリペプチドをコードする配列を含むトランスジェニック生物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば農業において、毎年相当の損害につながる望ましくない真菌の成長は真菌剤の使用によって制御することができる。真菌剤に対する要求は、それらの活性、それらのコストおよび、特には、生態学的安定性に関して絶えず増加している。したがって、強力かつ生態学的に安定な新規殺真菌剤に発展可能な新規物質または物質クラスに対する需要が存在する。一般には、そのような新規先導化合物は温室試験において探索することが必要である。しかしながら、そのような試験は多大な労力の投入および多大な財政的投入を必要とする。したがって、温室において試験することができる物質の数が制限される。そのような試験の代替物は高スループットスクリーニング法(HST)として知られるものの使用である。これは、多数の個々の物質を、細胞に対するそれらの効果、個々の遺伝子産生物または遺伝子に関して自動化法において試験することを包含する。特定の物質が効果を有することが見出されたとき、それらを通常のスクリーニング法において研究し、かつ適切であるならば、さらに開発することができる。
【0003】
殺真菌剤の有利な標的が必須生合成経路において頻繁に探索される。理想的な殺真菌剤は、さらに、真菌の病原性の発現において決定的な重要性を有する遺伝子産生物を阻害する物質である。そのような殺真菌剤の一例は、例えば、真菌のメラニン生合成を阻害し、したがって、無傷の付着器(付着器官)の形成を妨げる活性物質カルプロパミドである。しかしながら、真菌に対してそのような役割を果たす既知遺伝子産生物の数は非常に少数のみである。さらに、対応する生合成経路の阻害によって標的細胞の栄養要求を導き、結果として、病原性の損失を導く殺真菌剤が公知である。したがって、例えば、エチリモールの添加によるアデノシンデアミナーゼの阻害はブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)における病原性の有意の低下を導く(Hollomon,D.W.1979)。
【0004】
バシジオミセテス(Basidiomycetes)に属する真菌ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)は欠乏条件下において木材リグニンを分解することが可能である。この分解はマンガン依存性リグニンペルオキシダーゼ(MnPs)およびリグニンペルオキシダーゼ(LiPs)によって酵素的に生じる。過酸化水素(H2O2)がこれらの酵素の基質として作用する(Kerstenら,1990)。過酸化水素は、以下の反応を触媒するグリオキサールオキシダーゼによって提供される:
RCHO+O2+H2O → RCO2H+H2O
この反応においては、アルデヒド官能基がカルボン酸に酸化され、それに対して元素状酸素が過酸化水素に還元される。この酵素の基質特異性は広範であるため、一連の単純アルデヒド、α−ジカルボニル化合物および様々なα−ヒドロキシカルボニル化合物、例えば、HCHO、CH3CHO、CH2OHCHO、CHOCHO、CHOCOOH、CH2OHCOCH2OH、CHOCHOHCH2OHまたは他のCH3COCHOが基質として受容される。加えて、リグニンペルオキシダーゼによるリグニンモデル基質の変換の他の産生物もグリオキサールオキシダーゼによって変換され(Kerstenら,1995)、特には、リグノセルロースの主成分で成長する場合における中間代謝物としてのグリオキサールおよびメチルグリオキサールが変換される(Kerstenら,1993)。グリオキサールオキシダーゼによってリグニンを分解する真菌ファネロカエテ・クリソスポリウムの能力を別にすると、この酵素が真菌に対して発揮する他の機能は知られていない。
【0005】
ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼは、リグニン生分解経路の必須成分を構成する銅金属酵素である(Whittakerら,1996)。この酵素は分泌される。グリオキサールオキシダーゼは、まずペルオキシダーゼに過酸化水素を提供し、次に、リグノ分解培養の培地中に二次代謝物として見出される、メチルグリオキサールおよびグリオキサールを主要基質として変換する(Kerstenら,1987)。
【0006】
立体視的研究は、真菌金属酵素ガラクトースオキシダーゼにおける場合と同様に、銅イオンに結合する異常フリーラジカルが活性中心に存在することを示している。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼと本発明によるU.メイジス(U.maydis)グリオキサールオキシダーゼ1(Glo1)との相同性比較(図1を参照)およびB.シネレア(B.cinerea)との相同性比較もU.メイジス酵素をラジカル銅オキシダーゼとして知られる酵素クラスに割り当てる。この酵素クラスにおいては、触媒モチーフは、それに結合するラジカルを有し、かつ銅イオンに結合するアミノ側鎖によって形成される(式I)。
【0007】
【化1】
【0008】
最後に、ガラクトースオキシダーゼおよびファネロカエテ・グリオキサールオキシダーゼの配列整列化とそれに続く部位特異的突然変異誘発(Whittakerら,1999)が他の触媒的に重要なアミノ酸を割り当てることを可能にした。EPR立体視研究により銅(II)複合体中に2つの窒素リガンドが特定され、吸収およびラマン分光によって活性中心内にチロシンおよびチロシン−システイン二量体リガンドが特定された。これらのアミノ酸は以下のアミノ酸および位置であった:
チロシンリガンド1:Tyr178(U.メイジス)およびTyr273(B.シネレア)、
チロシンリガンド2:Tyr452(U.メイジス)およびTyr499(B.シネレア)、
ヒスチジンリガンド1:His453(U.メイジス)およびHis500(B.シネレア)、
ヒスチジンリガンド2:His555(U.メイジス)およびHis597(B.シネレア)、
システイン残基:Cys105(U.メイジス)およびCys209(B.シネレア)。
【0009】
したがって、これらの保存されたアミノ酸(これらはCu2+イオン結合に特有であり、かつ本発明によるポリペプチドの全てに存在する)はこれらの酵素の構造的に特有の特徴である。電子1個を伝達しながらプロセスを触媒する他のラジカル酵素とは対照的に、2個の電子がこの触媒中心によって伝達される。最も完全に研究されている、このクラスのラジカル銅オキシダーゼからの酵素はガラクトースオキシダーゼであり、その結晶構造も解明されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ファネロカエテ・クリソスポリウム以外の真菌生物に由来するグリオキサールオキシダーゼは未だに不明である。
【0011】
今や完全なcDNAクローンおよびグリオキサールオキシダーゼをコードする対応遺伝子(ゲノム配列またはcDNA配列)が本発明内でウスチラゴ・メイジス(Ustilago maydis)およびボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)から単離されている。
【0012】
黒穂病真菌ウスチラゴ・メイジス、担子菌類はトウモロコシ植物を攻撃する。この疾病はトウモロコシが成長する全ての地域において生じるが、乾燥年の間のみに重要性を帯びる。典型的な症状はこぶ様のこぶし大腫脹(ブリスター)であり、これは全ての地上植物部分に形成される。これらのこぶは、まず、白っぽい灰色粗膜によって覆われる。この膜が破裂すると、ウスチロスポア(ustilospore)の黒色塊(これは最初はグリース状であり、後に粉末状となる)が放出される。ウスチラゴ(Ustilago)属のさらなる種は、例えば、U.ヌーダ(U.nuda)(オオムギおよびコムギの裸黒穂病を生じる)、U.ニグラ(U.nigra)(オオムギの墨黒穂病を生じる)、U.ホーデイ(U.hordei)(オオムギの堅黒穂病を生じる)およびU.アベナエ(U.avenae)(オート麦の裸黒穂病を生じる)である。
【0013】
真菌ボトリチス・シネレア、子嚢菌類は「灰色カビ(grey mould)」として知られるものを生じる。これは農業において深刻な損害を一貫して生じる疾病であり、したがって、積極的に制御される。これは植物の全ての部分に感染することができるが、特には、ベリー類の熟成に対して有害である。この普遍的な真菌は雑食性であり、かつ木材および植物残滓上で腐生菌として、さもなければ菌糸もしくは菌核として生存する。これは創傷を介して侵入するが、開花後に花の残滓を介して植物に感染することも可能である。これは未熟なベリー類においては顕在しない;その発症が劇症であるのは熟成が開始された後のみである。
【0014】
今や、ノックアウト変異体が上記ゲノムDNAまたはその断片の助けを借りてU.メイジスおよびB.シネレアの両者において産生されている;驚くべきことに、両者の場合、すなわち、担子菌類および子嚢菌類(これらの両者は植物病原性である)において、それらは真菌の無病原性を導いた。これらの異なる遺伝子、すなわち、glo1、glo2およびglo3(これらは全てグリオキサールオキシダーゼをコードする)がウスチラゴ・メイジスにおいて特定できることに注意しなければならない。本発明の文脈においては、遺伝子glo1(配列番号1および3を参照)の場合において上述の効果が得られ、それに対して、対照的に、glo2のノックアウトには真菌の病原性に対する効果がないことが見出されている。glo3は、glo1と同様に、病原性決定基としての無病原性スクリーニングの間に変異体として特定された。これらの異なる表現型の理由は、異なる酵素の発現パターン、それらの細胞局在化、さもなければ酵素の特異的活性において特定することができる。しかしながら、明らかに、この真菌の病原性において決定的な役割を果たすのは間違いなくglo1である。
【0015】
CL13株の形態学的に注目すべき変異体がREMI変異原性アプローチ(制限酵素介在統合、例えば、Kahmann and Basse 1999を参照)において既に単離されている(M.Bolker and R.Kahmann、未公開)。このREMI変異体#5662は、鱗状、無光沢の表現型によって区別される。加えて、この変異体は注目すべきメラニン沈着を示す。
【0016】
病原性試験においてはトウモロコシ植物の感染は検出されず、すなわち、この変異体は無病原性である。グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸を得るためプラスミド・レスキュー実験を行った。
【0017】
今や、本発明の範囲内で、プラスミド・レスキュー実験(実施例1を参照)により、挿入部位に隣接する配列を再単離することが可能になっている。このようにして、グリオキサールオキシダーゼをコードする配列、この場合にはglo1が単離される。この文脈において、挿入が推定ORFの開始コドンの770bp下流で生じていることが配列決定で明らかとなった。その推定アミノ酸配列はファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼとの類似性を示す。このウスチラゴ遺伝子はglo1(グリオキサールオキシダーゼ1)と命名された。REMI挿入と変異体の観察された表現型との相関が常に上手くいくわけではないので、本発明の目的に沿って表現型と遺伝子との明白な関係を確立するため、2つのハプロイド株Um518およびUm521におけるglo1遺伝子をさらに削除した(実施例2を参照)。まず、推定glo1 ORFのそれぞれ5’および3’の1151bpおよび1249bpDNA断片をPCRによって増幅した。次に、これらの断片を制限酵素SfiIで開裂させ、1931ヌクレオチドがglo1遺伝子のORFから除去されるようにSfiI開裂ハイグロマイシンBカセット(pBS−hhnからの1884bp断片)でライゲートした(図2BおよびKamper and Schreier,2001を参照)。このノックアウトカセットを同様にPCRによって増幅した(実施例2を参照)。相同組換えの場合においては、glo1のN末端部分をハイグロマイシンBカセットで置換する。glo1特異的DNAプローブを用いるこれらの形質転換体のサザーン分析によりゼロ変異体を選択した(図2Aを参照)。10の形質転換体のうちの8つがサザーン分析において期待される制限パターンを示すことが明らかとなった。株518Δglo1#1、518Δglo1#4または521Δglo1#7および521Δglo1#9をさらなる分析のために選択した。
【0018】
図4からわかるように、glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。したがって、glo1ゼロ変異体の取り扱いも、プレート培地上で成長するとき、野生型株と比較して細胞が互いに接着することがかなり少ないことを示す。この表現型をより詳細に特徴付けるため、研究、例えば、顕微鏡研究を行うことができる。この目的のため、細胞をスライドに付着させ、微分干渉対照顕微鏡で観察する(図4)。野生型株と比較して細胞が伸長していることが明らかとなる。さらに、空胞形成の増加を観察することができる。さらに、変異体細胞の細胞質分裂が悪影響を受け、隔壁の発達の増加が観察される(図3も参照)。形状が球状であり、かつ非分離細胞凝集体の中央に位置する細胞も注目に値する。まとめると、多面的な形態学的欠陥の全ての徴候が本発明によるゼロ変異体において観察される。
【0019】
さらに、適合性glo1ゼロ変異体の混合物が無病原性であることも注目すべきである。glo1ゼロ対立遺伝子の病原性に対する効果を研究するため、本発明の目的に沿って植物感染を行った。この目的のため、各々の場合において2つの独立した適合性glo1ゼロ変異体を成長させ、洗浄して混合した。次に、これらの混合物を若いトウモロコシ植物に注入した。比較のため、適合性野生型株(Um518およびUm521)でトウモロコシ植物を感染させた。対照実験においては1週間後に腫瘍形成が既に観察されたのに対して、適合性変異体の混合物においてはいかなる症状も見出されれなかった。注入後2週間で、対照感染における102の感染植物のうちの97が腫瘍を形成していた。さらに3つの植物はアントシアニン色を示しており、これは真菌感染に典型的なものである。したがって、102の感染植物のうちの100(98%)が病原性の症状を示した(表Iを参照)。適合性変異体の混合物での感染の場合、腫瘍形成もアントシアニン色も観察されなかった(表Iを参照)。これは、glo1の適合性ゼロ変異体がトウモロコシ植物に感染することができず、すなわち、それらの病原性が不完全であることを意味する。
【0020】
【表1】
【0021】
glo1ゼロ変異体の接合挙動が制限されることがさらに注目に値する。したがって、適合glo1変異体株の混合物における二核フィラメントの形成はもはや観察することができない。変異体を適合野生型と交配させるとき、二核菌糸(図4を参照)の形成に関して接合挙動に関する残留活性を観察することができ、これは細胞融合が不完全であると結論付けることを可能にする。
【0022】
B.シネレアにおける対応ノックアウト変異体の研究は全く類似する結果をもたらす。ここでもやはり、グリオキサールオキシダーゼをコードする遺伝子の破壊がB.シネレアにおける不完全な病原性を導くことが明瞭に示された(実施例9および図9から12を参照)。
【0023】
したがって、これらの結果から、グリオキサールオキシダーゼが、1つの特定の真菌の場合だけではなく植物病原性真菌それ自体の場合においても、病原性の発生において特別な役割を果たすことが結論付けられた。このように、植物病原性真菌の病原性、宿主における生存可能性および生活環に対するグリオキサールオキシダーゼの重要性が最初に認識され、かつ新規特異的殺真菌剤を探索するための最適標的として初めて特定された。このように、この標的の助けを借りて完全に新規のリード構造を特定する可能性が初めて提供されている。グリオキサールオキシダーゼを阻害する化合物から開始して新規殺真菌剤を得ることができる。
【0024】
ゲノム配列およびcDNA配列並びに、その上、それらを得るための方法の説明によって、植物病原性真菌の2つの異なる亜門から殺真菌剤を特定するための方法において用いるのに適するグリオキサールオキシダーゼがさらに得られ、対応する標的、すなわち、グリオキサールオキシダーゼの助けを借りて、特定されているこれらの殺真菌剤を特徴付け、かつさらに開発することが可能である。
【0025】
したがって、本発明は、病原性真菌のグリオキサールオキシダーゼの完全なゲノム配列またはcDNAを初めて提供し、この酵素の阻害剤の特定へのそれらの使用またはそれらによってコードされるポリペプチドの使用、およびそれらの殺真菌剤としての使用を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼをコードするファネロカエテ・クリソスポリウム核酸配列(Kerstenら,1995)、559アミノ酸を有するPCGLX1G_1PRT(受付番号L47286としてEMBLで、または受付番号Q01772としてSPTREMBLで利用可能;(タンパク質ID=AAA87594.1))、および559アミノ酸を有するPCGLX2G_1PRT(受付番号L47287としてEMBLで、または受付番号Q01773としてSPTREMBLで利用可能(タンパク質ID=AAA87595.1))を除く、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関する。これらのタンパク質配列は、Thr308によるLys308の一アミノ酸置換を除いて同一である。ヌクレオチド配列の同一性は98%である。
【0027】
本発明による核酸を用いて、グリオキサールオキシダーゼをコードし、かつ、ゲノムプロジェクトの脈絡における結果として公衆に利用可能でありながら、機能または生物学的重要性が割り当てられていないさらなる核酸配列を他の真菌から特定することが同様に可能であった。これらはクリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒトに対して病原性であり、クリプトコッカス髄膜炎および肺炎の原因である真菌(CRYNE_cneo001022.コンティグ6786(4064bp)、相同性領域2704−1393、CRYNE_cneo001022.コンティグ7883(13487bp);相同性領域:916−1695、468−2185、2100−2345、CRYNE b6f10cnf1;相同性領域:1−564、CRYNE_4_コンティグ456;相同性領域:930−19およびCRYNE_cneo001022.コンティグ6828(4546bp);相同性領域:4364−3840を参照)、パンカビとして知られるアスコミセタ・ニューロスポラ・クラッサ(Ascomyceta Neurospora crassa)(NEUCR_コンティグ1887(スーパーコンティグ127);相同性領域:14411−15889を参照)および植物病原性コメイモチ病真菌マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)に由来する配列である。このように、グリオキサールオキシダーゼはヒトに対して病原性である真菌においても生じることが見出されている。ヒトに対して病原性であるこれらの真菌においても、この酵素が僅かとは言えない生理学的役割を果たし、したがって、酵素修飾因子の興味深い標的であるか、またはこれらの真菌においても抗真菌剤の作用部位としての役割を果たすものと推定することができる。
【0028】
特には、本発明は、植物病原性真菌、好ましくは、アスコミセテスおよびバシジオミセテス亜門の真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関し、ボトリチスおよびウスチラゴ属が特に好ましい。
【0029】
特に好ましくは、本発明は、ウスチラゴ・メイジスおよびボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸に関する。
【0030】
本発明は、特に好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7を有するウスチラゴ・メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸並びに配列番号9および配列番号11を有するボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸並びに配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12に示されるポリペプチドをコードする核酸またはそれらの活性断片に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明による核酸は、特には、一本鎖もしくは二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)の形態をとる。好ましい実施形態は、イントロンを含んでいてもよいゲノムDNAおよびcDNAの断片である。
【0032】
本発明による核酸は、好ましくは、植物病原性真菌のcDNAに対応するDNA断片の形態をとる。
【0033】
本発明による核酸は、特に好ましくは、以下のものから選択される配列を含む:
a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11に示される配列、
b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列、
c)Cu2+配位に適する、式(I)によるアミノ酸チロシン1および2、ヒスチジン1および2並びにシステインを含むポリペプチドをコードする配列、
d)長さが少なくとも14塩基対である、a)からc)に定義される配列の部分配列、
e)a)からc)に定義される配列との50%同一性、特に好ましくは70%同一性、とりわけ好ましくは90%同一性を有する配列、
f)a)からc)に定義される配列と相補的である配列、並びに
g)遺伝子暗号の縮重のため、a)からc)に定義される配列と同じアミノ酸配列をコードする配列。
【0034】
本発明による核酸のとりわけ好ましい実施形態は、ウスチラゴ・メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする、配列番号1および3に示される配列または配列番号5もしくは配列番号7の配列を有するcDNA分子である。
【0035】
本発明による核酸のさらなるとりわけ好ましい実施形態は、ボトリチス・シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする、配列番号9もしくは11に示される配列を有するcDNA分子である。
【0036】
「完全」グリオキサールオキシダーゼという用語は、本文脈において用いられる場合、その転写単位の完全コーディング領域がATG開始コドンで始まり、出発生物内に存在する遺伝子の全ての情報担持エクソン領域を含み、かつグリオキサールオキシダーゼをコードし、並びに正確な転写終止に必要なシグナルが存在するグリオキサールオキシダーゼを記述する。
【0037】
「活性断片」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有し、すなわち、反応
RCHO+O2+H2O → RCO2H+H2O2
を触媒することが可能であるポリペプチドを依然としてコードする、グリオキサールオキシダーゼをコードするもはや完全ではない核酸を記述する。
【0038】
この生物学的機能が実際に依然として存在するのかどうかを決定するのに活性アッセイを用いることができ、このアッセイは、例えば、H2O2を、例えば、H2SO4での酸性化およびTiOSO4溶液の添加によって検出することをベースとする([TiO2 *aq]SO4の形成は黄色がかったオレンジ色の呈色を導く)。グリオキサールオキシダーゼ活性は既知グルコースオキシダーゼにおいて観察することもできる。しかしながら、その主活性が上記反応の触媒であるグリオキサールオキシダーゼとの比較において、この活性は顕著に低下する。したがって、「生物学的活性」という用語は、その主活性がこの反応の触媒ではないグルコースオキシダーゼのようなポリペプチドまで拡張しようとするものではない。「活性断片」は、グリオキサールオキシダーゼをコードする上記完全核酸より短い。本文脈において、核酸は配列の3’末端および/または5’末端の両者が除去されていてもよい;さもなければ、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性に対する決定的な悪影響を持たない配列の部分が欠失、すなわち、除去されていてもよい。依然として特徴付けまたは生じるグリオキサールオキシダーゼ断片の使用を可能にする、より低い、さもなければ、適切であるならば、高い活性がここで用いられるこの用語の目的に十分であるものと見なされる。「活性断片」という用語はグリオキサールオキシダーゼ・アミノ酸配列をも指すことができ、この場合、上述されているものに同様に適用され、上に定義される完全配列との比較でもはや特定の部分を含んではいないが酵素の生物学的活性に対する決定的な悪影響が発揮されていないポリペプチドに適用される。
【0039】
これらの断片の好ましい長さは1200ヌクレオチド、好ましくは900ヌクレオチド、とりわけ好ましくは300ヌクレオチド、または400アミノ酸、好ましくは300アミノ酸、とりわけ好ましくは100アミノ酸である。
【0040】
「遺伝子」という用語は、本文脈で用いられる場合、ポリペプチド鎖の合成の責を担う、細胞ゲノムからのセグメントの名称である。
【0041】
「ハイブリダイズする」という用語は、本文脈において用いられる場合、一本鎖核酸分子が相補鎖との塩基対形成を受けるプロセスを記述する。これは、本発明による核酸のコンセンサス領域または他の既知領域にまたがる短い領域に特に関連し、それらの領域はグリオキサールオキシダーゼをコードするさらなる核酸を特定するためのPCR実験の実施に有利に用いられる。例えば、ここに開示される配列情報から出発して、さらなる相同遺伝子の、またはウスチラゴ・メイジスもしくはボトリチス・シネレア以外の真菌からのDNA断片をこのようにして単離することができ、これらのDNA断片は、それぞれ、配列番号1および配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するグリオキサールオキシダーゼと同じ特性または類似する特性を有するグリオキサールオキシダーゼをコードする。
【0042】
「cDNA」という用語は、本文脈において用いられる場合、RNA分子の一本鎖または二本鎖コピーの名称であり、したがって、生物学的に活性のmRNAのコピーであれば、イントロンがなく、すなわち、遺伝子のコーディング領域の全てが連続形態で存在する。
【0043】
さらなる真菌グリオキサールオキシダーゼを特定するための上記PCR法に主として用いることができるハイブリダイゼーション条件は、以下の式を用いておおよそ算出される。
【0044】
融点Tm=81.5℃+16.6log[c(Na+)]+0.41(%G+C))−500/n(Lottspeich and Zorbas,1998)。
【0045】
この式において、cは濃度であり、かつnはハイブリダイズする配列セグメントの塩基対での長さである。>100bpの配列については、500/nの項が低下する。洗浄は最高の厳密性をもって5℃から15℃の温度、Tmおよび15mM Na+のイオン強度の下で行う(0.1×SSCに相当)。RNA試料をハイブリダイゼーションに用いる場合、融点は10℃から15℃高い。
【0046】
上述の核酸の同一性の程度は、好ましくは、プログラムCLUSTALWまたはプログラムBLASTXバージョン2.0.4の助けを借りて決定する(Altschulら,1997)。
【0047】
本発明は、さらに、本発明による核酸および同種または異種プロモーターを含むDNA構築体に関する。
【0048】
「同種プロモーター」という用語は、本文脈において用いられる場合、その源生物において問題の遺伝子の発現を制御するプロモーターを指す。
【0049】
「異種プロモーター」という用語は、本文脈において用いられる場合、その源生物において問題の遺伝子の発現を制御するプロモーター以外の特性を有するプロモーターを指す。
【0050】
異種プロモーターの選択は、実験に原核細胞もしくは真核細胞を用いるのか、または細胞非含有系を用いるのかに依存する。異種プロモーターの例は、植物細胞用のカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、酵母細胞用のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、および原核細胞もしくは細胞非含有系用のT3、T7もしくはSP6プロモーターである。
【0051】
真菌発現系、例えば、ピチア・パウトリス(Pichia pastoris)系を好ましく用いることができるはずであり、この場合の転写はメタノール誘導性AOXプロモーターによって駆動される。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの異種発現は既にこの系に対して示されている(Whittaker,M.ら,1999)。
【0052】
本発明は、さらに、本発明による核酸、本発明による調節領域または本発明によるDNA構築体を含むベクターに関する。用いることができるベクターは、分子生物学研究室において用いられる全てのファージ、プラスミド、ファージミド、ファスミド、コスミド、YAC、BAC、人工染色体または微粒子銃粒子である。
【0053】
好ましいベクターは、植物細胞に対してはpBIN(Bevan,1984)およびその誘導体、酵母細胞に対してはpFL61(Minetら,1992)もしくは、例えば、p4XXprom.ベクターシリーズ(Mumbergら,1995)、細菌細胞に対してはpSPORTベクター(Life Technologies)、または細菌細胞、植物、P.パストリス、S.セレビシアエもしくは昆虫細胞における様々な発現系に対してはGatewayベクター(Life Technologies)である。
【0054】
本発明は、本発明による核酸、本発明によるDNA構築体または本発明によるベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0055】
「宿主細胞」という用語は、本文脈において用いられる場合、本発明による核酸を天然には含まない細胞を指す。
【0056】
適切な宿主細胞は原核細胞、好ましくは、大腸(E.coli)だけではなく、真核細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス、昆虫、植物、カエル卵母細胞および哺乳動物細胞株の細胞である。
【0057】
真菌細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)およびピチア・パストリスが発現に好ましく用いられる。ファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼは、例えば、A.ニズランスおよびP.パストリスにおいて上手く発現した(Kerstenら,1995;Whittakerら,1999)。
【0058】
本発明によるポリペプチドの発現に用いることができる他のものは、特には、ウスチラゴ・メイジス細胞である。この目的に特に適する細胞は、ドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツァイルクルツレンGmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zeilkulturen GmbH)[ジャーマン・コレクション・オブ・マイクロオーガニズムス・アンド・セル・カルチャー(German collection of microorganisms and cell cultures)](DSMZ)、Mascheroder Weg 1b in 38124 Brunswickに2001年9月13日、DSM 14 509として寄託されているU.メイジス株の細胞である。
【0059】
これらの寄託細胞は実施例3において説明されるようにして得たものであり、例えば、実施例4に示される、元の株の野生型細胞のアッセイで区別することができる。寄託番号DSM 14 509の株は、グリオキサールオキシダーゼ活性を検出し、かつその株を本発明による方法において用いることができるようにするのに十分な量および活性で本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼを発現することが可能である。
【0060】
寄託番号DSM 14 509の株は本発明の主題である。
【0061】
本発明は、さらに、本発明の核酸によってコードされるグリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドに関する。
【0062】
本発明によるポリペプチドは、好ましくは、以下のうちから選択されるアミノ配列を含む:
a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12に示される配列、
b)Cu2+配位に適する、式(I)に示されるアミノ酸チロシン1、チロシン2、ヒスチジン1、ヒスチジン2およびシステインを含む配列、
c)長さが少なくとも15アミノ酸である、a)およびb)に定義される配列の部分配列、
d)a)およびb)に定義される配列との少なくとも20%、好ましくは25%、特に好ましくは40%、とりわけ好ましくは60%、最も好ましくは75%の同一性を有する配列、並びに
e)a)からd)に定義される配列と同じ生物学的活性を有する配列。
【0063】
「ポリペプチド」という用語は、ここで用いられる場合、通常ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短いアミノ酸鎖および通常タンパク質と呼ばれるより長いアミノ酸鎖の両者を指す。これは、天然プロセス、例えば、翻訳後処理、または技術の現状である化学法のいずれかによって修飾されていてもよいアミノ酸鎖を包含する。そのような修飾は1つのポリペプチドにおいて様々な点で複数回、例えば、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、アミノ末端および/またはカルボニル末端で生じ得る。これらには、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビン、ヘム部分、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体、脂質もしくは脂質誘導体またはホスファチジルイノシトールとの共有結合、環化、ジスルフィド架橋の形成、脱メチル化、シスチン形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解処理、リン酸化、セレニル化およびアミノ酸のtRNA介在付加が含まれる。
【0064】
本発明によるペプチドは「成熟」タンパク質の形態であってもよく、大きいタンパク質(例えば、融合タンパク質)の一部の形態であってもよい。これらは、さらに、分泌またはリーダー配列、簡潔な生成を可能にする配列、例えば、ポリヒスチジン残基、またはさらなる安定化エピトープを有することができる。
【0065】
本発明によるポリペプチド、特には、配列番号2、4、6、8、10および12に示されるポリペプチドは、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼを構成する必要はなく、完全な真菌グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する限りこれらの断片を構成するだけでもよい。配列番号2、4、6、8または配列番号10および12に示されるアミノ酸配列を有する、グリオキサールオキシダーゼと同じタイプの生物学的活性を発揮するポリペプチドは依然として本発明によるものと考えられる。この文脈において、本発明によるポリペプチドはウスチラゴ・メイジスもしくはボトリチス・シネレアまたは植物病原性真菌から推定可能である必要はなく、例えばグリオキサールオキシダーゼ間の関係により、様々な生物、例えば、ヒトに対して病原性である真菌、さもなければ植物から誘導することができる(図8も参照)。本発明によるものと考えられるポリペプチドは、とりわけ、例えば以下の真菌のグリオキサールオキシダーゼ、またはこれらの断片に相当するポリペプチド、およびそれらの生物学的活性を依然として有するポリペプチドでもある:
例えば、プラスモジオホロミセテス(Plasmodiophoromycetes)、オオミセテス(Oomycetes)、キトリジオミセテス(Chytridiomycetes)、ジゴミセテス(Zygomycetes)、アスコミセテス(Ascomycetes)、バシジオミセテス(Basidiomycetes)およびジューテロミセテス(Deuteromycetes)。
【0066】
ピチウム(Pythium)種、例えば、ピチウム・ウルチマム(Pythium ultimum)、フィトフトラ(Phytophthora)種、例えば、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、シュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)種、例えば、シュードペロノスポラ・フムリ(Pseudoperonospora humuli)もしくはシュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、プラスモパラ(Plasmopara)種、例えば、プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ブレミア(Bremia)種、例えば、ブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、ペロノスポラ(Peronospora)種、例えば、ペロノスポラ・ピシ(Peronospora pisi)もしくはP.ブラシカエ(P.brassicae)、エリシフェ(Erysiphe)種、例えば、エリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)、スファエロテカ(Sphaerotheca)種、例えば、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、ポドスファエラ(Podosphaera)種、例えば、ポドスファエラ・ロイコトリカ(Podosphaera leucotricha)、ベンツリア(Venturia)種、例えば、ベンツリア・イナエカリス(Venturia inaequalis)、ピレノホラ(Pyrenophora)種、例えば、ピレノホラ・テレス(Pyrenophora teres)もしくはP.グラミネア(P.graminea)(分生子形態:ドレクスレラ(Drechslera)、syn:ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)、コクリオボーラス(Cochliobolus)種、例えば、コクリオボーラス・サチブス(Cochliobolus sativus)(分生子形態:ドレクスレラ、syn:ヘルミントスポリウム)、ウロミセス(Uromyces)種、例えば、ウロミセス・アッペンジクラツス(Uromyces appendiculatus)、プシニア(Puccinia)種、例えば、プシニア・レコンジタ(Puccinia recondita)、スクレロチニア(Sclerotinia)種、例えば、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、チレチア(Tilletia)種、例えば、チレチア・カリエス(Tilletia caries);ウスチラゴ(Ustilago)種、例えば、ウスチラゴ・ヌーダ(Ustilago nuda)もしくはウスチラゴ・アベナエ(Ustilago avenae)、ペリクラリア(Pellicularia)種、例えば、ペリクラリア・ササキイ(Pellicularia sasakii)、ピリクラリア(Pyricularia)種、例えば、ピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、フサリウム(Fusarium)種、例えば、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、ボトリチス種、セプトリア(Septoria)種、例えば、セプトリア・ノドラム(Septoria nodorun)、レプトスファエリア(Leptosphaeria)種、例えば、レプトスファエリア・ノドラム(Leptosphaeria nodorum)、セルコスポラ(Cercospora)種、例えば、セルコスポラ・カネッセンス(Cercospora canescens)、アルターナリア(Alternaria)種、例えば、アルターナリア・ブラシカエ(Alternaria brassicae)またはシュードセルコスポレラ(Pseudocercosporella)種、例えば、シュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス。
【0067】
特に興味深い他のものは、例えば、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、コクリオブルス・ヘテロストロフス(Cochliobulus heterostrophus)、ネクトリア・ヘマトコッカス(Nectria hematococcus)およびフィトフトラ(Phytophthora)種である。
【0068】
既に上で考察されるように、本発明のポリペプチドは抗真菌剤の作用部位として、したがって、ヒトまたは動物に対して病原性である真菌の制御にも用いることができる。この文脈において特に興味深いものは、例えば、ヒトに対して病原性であり、かつ以下に述べられる症状を生じる以下の真菌である:
ダーマトフィテス(Dermatophytes)、例えば、トリコフィトン(Trichophyton)種、ミクロスポラム(Microsporum)種、エピダーモフィトン・フロッコサム(Epidermophyton floccosum)または、例えば水虫(足白癬)を生じる、ケラトミセス・アジェロイ(Keratomyces ajelloi)。
【0069】
酵母、例えば、ソア食道炎(soor oesophagitis)および皮膚炎を生じる、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)または、例えば肺クリプトコッカス症、さもなければトルロシス(torulosis)を生じ得る、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)。
【0070】
カビ、例えば、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、A.フラブス(A.flavus)、例えば気管支肺アスペルギルス症または真菌性敗血症を生じる、A.ニガー(A.niger)、ケカビ(Mucor)種、アブシジア(Absidia)種、または、例えば接合菌症(管内真菌症)を生じる、リゾプス(Rhizopus)種、例えば慢性肉芽腫性咽頭炎および気管炎を生じる、リノスポリジウム・シーベリ(Rhinospqridium seeberi)、例えば皮下菌腫を生じる、マズレラ・ミセトマチス(Madurella mycetomatis)、例えば細胞内皮性細胞真菌症およびダーリング病を生じる、ヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、肺性コクシジオイデス症および敗血症を生じる、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、例えば南アメリカ分芽菌症を生じる、パラコクシジオイデス・ブラシリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、例えばギルクリスト病および北アメリカ分芽菌症を生じる、ブラストミセス・ダーマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、例えばケロイド分芽菌症およびロボ病を生じる、ロボア・ロボイ(Loboa loboi)、並びに、例えばスポロトリクム症(肉芽腫性皮膚真菌症)を生じる、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)。
【0071】
本発明によるポリペプチドは、天然グリオキサールオキシダーゼの対応領域との比較により、それらが完全グリオキサールオキシダーゼの少なくとも1つの生物学的活性を発揮する限り、欠失またはアミノ酸置換を有することができる。保存置換が好ましい。そのような保存置換には、1つのアミノ酸を以下の群からの他のアミノ酸で置換する変種が含まれる:
1.非極性であるか、または低極性である小脂肪族残基:Ala、Ser、Thr、ProおよびGly;
2.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、GluおよびGln;
3.極性の正に荷電した残基:His、ArgおよびLys;
4.大脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、ValおよびCys;並びに
5.芳香族残基:Phe、TyrおよびTrp。
【0072】
以下のリストは好ましい保存置換を示す:
【0073】
【表2】
【0074】
したがって、本発明は、少なくともグリオキサールもしくはメチルグリオキサールまたはそれらの誘導体の変換における酸素の還元による過酸化水素形成の生化学的反応においてグリオキサールオキシダーゼと同様に作用し、かつ配列番号2および4または配列番号6もしくは8および配列番号10もしくは12に示される配列と100アミノ酸、好ましくは250アミノ酸の長さにわたって、特に好ましくはその全長にわたって少なくとも20%の同一性、好ましくは25%の同一性、特に好ましくは40%の同一性、とりわけ好ましくは60%の同一性、最も好ましくは75%の同一性、最終的に絶対的に好ましくは90%の同一性を有するポリペプチドにも関する。
【0075】
アミノ酸配列の同一性の程度は、好ましくは、BLASTP+BEAUTYプログラム(Altschulら,1997)の助けを借りて決定する。
【0076】
本発明によるポリペプチドの特に好ましい実施形態は、配列番号2、4、6および8並びに配列番号10および12に示されるアミノ酸配列を有するグリオキサールオキシダーゼである。
【0077】
特に好ましくは、本発明は、Cu2+配位部位の形成に適する上記アミノ酸を含む本発明によるポリペプチドに及ぶ:
チロシンリガンド1:(例えば、Tyr178(U.メイジス)またはTyr273(B.シネレア))、
チロシンリガンド2:(例えば、Tyr452(U.メイジス)またはTyr499(B.シネレア))、
ヒスチジンリガンド1:(例えば、His453(U.メイジス)またはHis500(B.シネレア))、
ヒスチジンリガンド2:(例えば、His555(U.メイジス)またはHis597(B.シネレア))、および
システイン残基:(例えば、Cys105(U.メイジス)またはCys209(B.シネレア))。
【0078】
本発明による核酸は通常の方法で調製することができる。例えば、核酸分子は完全な化学合成によって調製することができる。本発明による核酸分子の短片を化学的に合成し、そのようなオリゴヌクレオチドを放射標識するか、さもなければ蛍光色素で標識することも可能である。標識されたオリゴヌクレオチドも、真菌mRNAから出発して生成されたcDNAライブラリの探索に用いることができる。問題のDNA断片を単離するため、標識オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるクローンを選択する。単離されたDNAの特徴付けの後、本発明による核酸が簡潔な方法で得られる。
【0079】
本発明による核酸は、PCR法により、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを用いて生成することもできる。
【0080】
「オリゴヌクレオチド(複数)」という用語は、本文脈において用いられる場合、10個以上のヌクレオチド、好ましくは15個から30個のヌクレオチドからなるDNA分子を指す。これらは化学的に合成され、プローブとして用いることができる。
【0081】
本発明によるポリペプチドが様々な方法、例えば、固相法のような化学的方法によって得ることができることは当業者には公知である。大タンパク質量の入手には組換え法の使用が推奨される。クローン化グリオキサールオキシダーゼ遺伝子またはそれらの断片の発現は、当業者に公知である一連の適切な宿主細胞において行うことができる。この目的のため、公知方法の助けを借りて、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子を宿主細胞に導入する。
【0082】
宿主細胞の染色体へのクローン化グリオキサールオキシダーゼ遺伝子の組み込みは本発明の範囲内にある。好ましくは、遺伝子またはそれらの断片をプラスミドに導入し、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子のコーディング領域またはそれらの断片を構成性または誘導性プロモーターに作動可能に連結する。Invitrogen製のピチア・パストリス発現系が特に適する発現系の例である。この目的に適するベクターは、例えば、pPICZおよびその誘導体である。発現は、ここでは、AOXプロモーターの助けを借りて、メタノールを添加することによって誘導することができる。さらに、U.メイジス系における発現も適する。ここで、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子またはそれらの断片の発現は、例えば、誘導性crg1プロモーターまたは構成性otefプロモーター(Botttinら,1996、Spellingら,1994)によって行う。
【0083】
組換えグリオキサールオキシダーゼを産生するための基本的工程は以下のものである:
1.グリオキサールオキシダーゼをコードする天然、合成または半合成DNAの入手。
2.このDNAの、グリオキサールオキシダーゼの単独での、または融合タンパク質としての発現に適する発現ベクターへの導入。
3.この発現ベクターを用いる、適切な、好ましくは真核生物の、宿主細胞の形質転換。
4.グリオキサールオキシダーゼの発現に適する方法での、この形質転換宿主細胞の成長。
5.細胞の収穫および、適切であるならば、適切な公知方法によるグリオキサールオキシダーゼの精製。
【0084】
この文脈において、グリオキサールオキシダーゼのコーディング領域は大腸菌(E.coli)において慣例的な方法を用いて発現させることができる。大腸菌に適する発現系は商業的に入手可能であり、例えば、pETシリーズの発現ベクター、例えば、簡潔な精製および発現した酵素の溶解度を高めるためのチオレドキシン融合のためのpET3a、pET23a、Hisタグを有するpET28aもしくはHisタグを有するpET32a、およびグルタチオンシンセターゼ融合を伴うpGEX、およびその上、pSPORTベクター。これらの発現ベクターでλDE3溶原性大腸菌株、例えば、BL21(DE3)、HMS174(DE3)またはAD494(DE3)を形質転換する。これらの細胞が当業者に馴染みのある標準条件下で成長をはじめた後、IPTGを用いて発現を誘導する。細胞が誘導された後、それらを4℃から37℃の温度で3時間から24時間インキュベートする。
【0085】
これらの細胞を超音波処理により破壊バッファ(10mMから200mMリン酸ナトリウム、100mMから500mM NaCl、pH5から8)中で破壊する。発現したタンパク質はクロマトグラフィー法によって、Hisタグで発現したタンパク質の場合にはNi−NTAカラムでのクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0086】
昆虫細胞培養物(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現が別の有利なアプローチである。
【0087】
代替法として、タンパク質を植物において発現させることもできる。したがって、例えば、少なくとも3種類のグリオキサールオキシダーゼ相同体がアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)に存在し(図8を参照)、これは植物における発現の可能性を強調する。
【0088】
本発明は、本発明によるポリペプチドに結合し、かつそれらの特性を変化させる化合物を発見するための方法にも関する。したがって、この酵素の活性に影響を及ぼす修飾因子が真菌の病原性を制御することが可能である新規殺真菌性活性化合物を構成する。修飾因子はアゴニストであってもアンタゴニストであってもよく、または賦活剤であっても阻害剤であってもよい。特に興味深いものは、グリオキサールオキシダーゼの場合、この酵素を不活性化することによって真菌の病原性を妨げ得るこの酵素の阻害剤である。
【0089】
したがって、本発明は、特には、殺真菌剤の標的としての真菌グリオキサールオキシダーゼの使用およびこれらのポリペプチドの修飾因子を発見する方法におけるそれらの使用にも関する。そのような方法において、グリオキサールオキシダーゼは宿主細胞中で、抽出物中で、もしくは精製形態で直接用いることができ、またはそれらのコードするDNAの発現によって間接的に産生させることができる。上述されている本発明によるポリペプチド(配列番号6および配列番号8に示されるGlo2およびGlo3)は同様にこの用途に適する。真菌の病原性に対する直接的な重要性とは別に、それらは、後に殺真菌剤として活性になる酵素の修飾因子を特定する方法において同様に用いられるGlo1との十分な相同性を有する。
【0090】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼ修飾因子を発見する方法における、本発明によるグリオキサールオキシダーゼをコードする核酸、それらを含むDNA構築体、それらを含む宿主細胞、または本発明によるグリオキサールオキシダーゼに結合する抗体の使用にも関する。
【0091】
「アゴニスト」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの活性を促進または増強する分子を指す。
【0092】
「アンタゴニスト」という用語は、本文脈において用いられる場合、グリオキサールオキシダーゼの活性を鈍化または妨げる分子を指す。
【0093】
「修飾因子」という用語は、本文脈において用いられる場合、アゴニストまたはアンタゴニストの総称を構成する。修飾因子は本発明によるポリペプチドに結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。修飾因子は、さらに、ある分子に結合し、次にその分子が本発明によるポリペプチドに結合し、したがって、それらの生物学的活性に影響を及ぼす小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。修飾因子は天然基質およびリガンドまたはそれらの構造的もしくは機能的模倣体であり得る。しかしながら、「修飾因子」という用語は、グリオキサールオキシダーゼの天然基質、例えば、酸素、グリオキサールおよびメチルグリオキサールを包含しない。
【0094】
修飾因子は、好ましくは、小有機化学化合物である。
【0095】
本発明によるグリオキサールオキシダーゼへの修飾因子の結合は、それらで処理した真菌の無病原性または死を導く方法で細胞プロセスを変化させ得る。
【0096】
本発明による方法における本発明による核酸またはポリペプチドの使用は、本発明によるポリペプチドに結合する化合物の発見を可能にする。次いで、それらを、例えば植物において、殺真菌剤として、またはヒトおよび動物において抗真菌活性化合物として用いることができる。例えば、本発明による核酸を含み、かつ対応するポリペプチドを発現する宿主細胞、または遺伝子産生物それ自体を、少なくとも1つの化合物と宿主細胞、受容体または個々のポリペプチドとの相互作用を許容する条件下で化合物または化合物の混合物と接触させる。
【0097】
特には、本発明は、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌ポリペプチド、好ましくは植物病原性真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼ、特に好ましくはウスチラゴまたはボトリチス・グリオキサールオキシダーゼ、とりわけ好ましくはU.メイジスおよびB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼおよびそれらと同族であるポリペプチドに結合し、かつ上記コンセンサス配列を有する殺真菌性活性化合物を特定するのに適する方法に関する。しかしながら、これらの方法は、本発明によるグリオキサールオキシダーゼと同族であり、かつここで言及されるもの以外の種から誘導されるポリペプチドを用いて行うこともできる。本発明によるもの以外のグリオキサールオキシダーゼを用いる方法は本発明に包含される。
【0098】
所定の期間で試験物質の数を最大化するため、多数の、化合物を試験するためのアッセイ系および天然抽出物が高スループット数のために設計されている。細胞非含有プロセスをベースとするアッセイ系は精製または半精製タンパク質を必要とする。それらは、主として標的タンパク質に対する物質の潜在効果の検出を目的とする「初期」アッセイに適する。しかしながら、十分な量の問題のポリペプチドを産生する無傷の細胞をベースとするアッセイ系を用いることもできる。本発明の場合、実施例4において説明される活性アッセイと同様に、グリオキサールオキシダーゼを過剰産生する無傷の細胞、例えば、ウスチラゴ・メイジス細胞を用いて、酵素活性を上手く測定することもできる。
【0099】
細胞毒性のような効果は、一般には、これらのイン・ビトロ系においては無視される。これらのアッセイ系は物質の阻害または抑制効果および刺激効果の両者をチェックする。物質の効力は濃度依存性試験系列によってチェックすることができる。試験物質を含まない対照を効果の評価に用いることができる。
【0100】
修飾因子を発見するため、合成反応混合物(例えば、イン・ビトロ翻訳の産生物)または細胞成分、例えば、抽出物もしくはポリペプチドを含むあらゆる他の調製品を、標識物質またはポリペプチドのリガンドと共に、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい候補分子の存在下および不在下でインキュベートすることができる。本発明によるポリペプチドの活性を増加または阻害する候補分子の能力は、標識リガンドの結合の増加もしくは減少から、または標識基質の変換の増加もしくは減少からわかる。十分に結合し、かつ本発明によるポリペプチドの活性の増加を導く分子はアゴニストである。十分に結合するが、本発明によるポリペプチドの生物学的活性を相殺する分子は、おそらくは、良好なアンタゴニストである。
【0101】
本発明によるポリペプチドの修飾因子は酵素試験によって発見することもできる。適切な修飾因子による酵素活性の変化を連結酵素アッセイにおいて直接または間接的に測定することができる。この測定は、例えば、光学的に活性の化合物の減少または増加によって生じる吸収の変化によって行うことができる。したがって、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼの存在下におけるフェノールレッド溶液の脱色によって過酸化水素の放出または消費を検出することができる(実施例4、10および11を参照)。
【0102】
本発明によるポリペプチドの活性を修飾する物質の特定のさらなる可能性は、「シンチレーション近接アッセイ(scintillation proximity assay)」(SPA)(EP 015 473を参照)として知られるものである。このアッセイ系は、ポリペプチド(例えば、U.メイジスまたはB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ)と放射標識リガンド(例えば、小有機分子または第2放射標識タンパク質分子)との相互作用を利用する。ポリペプチドを、閃光性分子が付与された微小球またはビーズに結合させる。放射能が低下するとき、微小球中の閃光性物質が放射活性マーカーの亜原子粒子によって励起し、検出可能な光子が放出される。アッセイ条件は最適化され、それによりリガンドから放出される粒子のみが本発明によるポリペプチドに結合するリガンドによって放出されるシグナルを導く。
【0103】
可能性のある一実施形態においては、例えば、U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼを、相互作用性もしくは結合性試験物質と共に、またはそれら無しに、ビーズに結合させる。用いることができる試験物質は、とりわけ、本発明によるポリペプチドの断片である。結合性リガンドが固定化グリオキサールオキシダーゼに結合するとき、このリガンドは、接触領域区域においてそれ自体が結合するため、固定化グリオキサールオキシダーゼと標識リガンドとの既存の相互作用を阻害するか、または無効化する。ひとたび固定化グリオキサールオキシダーゼへの結合が生じると、閃光を参照してそれを検出することができる。したがって、固定化および遊離標識リガンドの間の既存の複合体は試験物質の結合によって破壊され、これは検出される閃光の強度の低下につながる。この場合、このアッセイ系は補完阻害系の形態をとる。
【0104】
その助けを借りて本発明によるポリペプチドの修飾因子を見出すことができる方法のさらなる例は置換アッセイであり、ここでは、本発明によるポリペプチドおよび潜在的修飾因子をこの目的に適する条件下で本発明によるポリペプチドに結合することが知られる分子、例えば、天然基質もしくはリガンド、または基質もしくはリガンド模倣体と組み合わせる。
【0105】
「競合体」という用語は、本文脈において用いられる場合、他の、おそらくは未だに特定されていない化合物と、グリオキサールオキシダーゼに結合して酵素から後者を置換するか、または後者によって置換されることについて競合する化合物の特性を指す。
【0106】
したがって、本発明は、本発明によるグリオキサールオキシダーゼの酵素活性の修飾因子、好ましくは、阻害剤にも関し、これは、グリオキサールオキシダーゼタンパク質またはそれらと同族であるポリペプチドの修飾因子を特定するための、ここで説明される方法のうちの1つの助けを借りて見出される。
【0107】
植物病原性真菌に由来するグリオキサールオキシダーゼが殺真菌剤の新規標的を構成し、およびこれらのグリオキサールオキシダーゼの助けを借りて殺真菌剤として用いることができる化合物を見出し、かつ開発できることは未だに開示されていない。この可能性は本発明において最初に説明され、かつ例示される。さらに提供されるものは、それらに必要なグリオキサールオキシダーゼ、およびそれらを入手し、かつ酵素の阻害剤を特定するための方法である。
【0108】
したがって、本発明は、グリオキサールオキシダーゼ修飾因子の殺真菌剤としての使用に関する。
【0109】
本発明によるポリペプチドの助けを借りて見出される殺真菌活性化合物はヒトに対して病原性である真菌種に由来するグリオキサールオキシダーゼとも相互作用することができる;等しく述べようとすることは、これらの真菌において生じる異なるグリオキサールオキシダーゼとの相互作用に常に必要とは限らない。
【0110】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物に対して病原性である真菌によって生じる疾患を治療するための組成物の調製への、グリオキサールオキシダーゼの機能を有するポリペプチドの阻害剤の使用にも関する。
【0111】
「殺真菌剤」または「殺真菌性」という用語は、本文脈において用いられる場合、本発明の目的のため、「抗真菌剤(単数)」または「抗真菌剤」という用語をも包含する。
【0112】
本発明は、さらに、本発明によるポリペプチドの発現を改変する化合物を発見する方法を含む。そのような「発現修飾因子」も新規殺真菌活性化合物であり得る。発現修飾因子は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸の調節領域に結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。さらに、発現修飾因子は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸の調節領域に後に結合し、したがって、それらの発現に影響を及ぼす分子に結合する小有機化学分子、ペプチドまたは抗体であり得る。発現修飾因子はアンチセンス分子でもあり得る。
【0113】
本発明は、グリオキサールオキシダーゼタンパク質またはそれらと同族のポリペプチドの発現修飾因子を特定する上記方法の助けを借りて見出される、グリオキサールオキシダーゼの発現修飾因子にも関する。
【0114】
本発明は、本発明による核酸の発現修飾因子の殺真菌剤としての使用にも関する。
【0115】
本発明による方法は、高スループット・スクリーニング(HTS)を含む。宿主細胞および本発明による核酸を含む細胞非含有調製品および/または本発明によるポリペプチドをこの目的に用いることができる。
【0116】
本発明は、さらに、本発明によるポリペプチドまたはこれらの断片に特異的に結合する抗体に関する。そのような抗体は慣例的な方法で生じる。例えば、それらの抗体は、抗体産生に有効である量の本発明によるポリペプチドまたはそれらの断片を有する免疫適格宿主を皮下注射し、次にこの抗体を得ることによって産生させることができる。さらに、モノクローナル抗体を産生する不死化細胞株をそれ自体公知の方法で得ることができる。これらの抗体は、適切であるならば、検出試薬で標識することができる。そのような検出試薬の好ましい例は、酵素、放射標識された元素、蛍光性化学薬品またはビオチンである。完全な抗体の代わりに、望ましい特異的結合特性を有する断片を用いることもできる。
【0117】
トランスジェニック生物、例えば、細菌、植物または真菌の産生、好ましくは、トランスジェニック植物および真菌の産生、特に好ましくは、トランスジェニック真菌の産生に本発明による核酸を同様に用いることができる。これらは、例えば、野生型から逸脱する本発明によるポリペプチドまたはそれらの変種の発現をベースとするアッセイ系において用いることができる。これらには、上述されるもの以外の遺伝子を修飾することによって、または遺伝子制御配列(例えば、プロモーター)を修飾することによって、本発明によるポリペプチドまたはこれらの変種の発現が変化させられている全てのトランスジェニック植物または真菌がさらに含まれる。
【0118】
トランスジェニック生物は、商業的または工業的な目的で本発明によるポリペプチドを(過剰)産生することで興味深いものでもある;ここで、例えば、それらの天然形態と比較して本発明によるポリペプチドの高程度の発現を示す真菌(例えば、酵母またはウスチラゴ・メイジス)がポリペプチドの修飾因子を特定するための方法(実際にはHTS法も)における使用に特に適する。
【0119】
本発明によるトランスジェニック真菌の製紙における使用もこの文脈において特に興味深いものであり、ここでは公知リグニンペルオキシダーゼとのカップリング、すなわち、増加することができるか、さもなければより多量の活性で両酵素を発現する真菌の活用がリグニンの分解について特に興味深いものである。
【0120】
逆に、本発明の方法によって特定されている、グリオキサールオキシダーゼの生物学的機能を有するポリペプチドの阻害剤の使用も物質の保護について興味深いものである。真菌は、特には、木材の保存における主要な問題である。グリオキサールオキシダーゼはリグニンペルオキシダーゼに過酸化水素を供給するため、最も不活性の木材成分でさえそれらの酸で分解する。しかしながら、結果として、本発明による阻害剤でのグリオキサールオキシダーゼの阻害はリグニンペルオキシダーゼをも阻害し、したがって、内部および外部領域における木材の分解を減少させることができる。
【0121】
さらに、本発明によるトランスジェニック生物、すなわち真菌ではあるが、例えば、藻類または他の微生物、例えば、細菌も、例えば廃水、汚染水路、水処理プラント等における媒体の解毒に用いることができる。この文脈においては、本発明によるポリペプチドおよび対応するトランスジェニック生物の能力を基質スペクトルの関数としてアルデヒドの酸化に、および反応性がより少なく、かつ環境有害性がより少ない酸へのそれらの変換に利用することができる。しかしながら、例えばトランスジェニック過剰産生から得ることができる、グリオキサールオキシダーゼそれ自体も、メチルグリオキサールの除去によるヒトまたは動物身体の解毒について興味深いものである(Thornalley,1996;Thornalleyら,2001)。様々な望ましくない物質を分解する、例えばGlo1で、形質転換された細胞の能力が実施例11および図13に示される。
【0122】
本発明による核酸は、病原体または環境ストレスに対する耐性の増加によって区別されるトランスジェニック植物の産生に用いることもできる。幾つかの作物、例えば、ヒマワリ、アブラナ、アルファルファ、ダイズ、ピーナッツ、トウモロコシ、サトウモロコシ、コムギもしくはコメ、および様々な花、樹木、野菜作物または果実作物、例えば、ブドウ、トマト、リンゴもしくはイチゴは、過酸化水素を発現する(これは、問題の植物に接近する真菌の方法を表す)ことによって区別される真菌、例えば、ボトリチス・シネレアまたは他の真菌種に対して感受性である。本発明によるグリオキサールオキシダーゼは過酸化水素を産生するような酵素である。病原体による植物の感染は、多くの植物において、過敏性応答(HR)として知られるものおよび/または病原体侵入部位での宿主組織の破壊を伴うことがある様々な防御機構の活性化を誘発する。これは病原体が宿主内に蔓延することを防ぐことができる。幾つかの場合、植物は、元の感染病原体から分類学的にかけ離れた病原体の感染に対する全身耐性(全身性獲得耐性、SAR)をも発達させる。観察することができる病原体感染に対する第1応答のうちの1つはスーパーオキシドアニオン、すなわちO2 −、および/または過酸化水素、すなわちH2O2、の蓄積の増加である。H2O2の蓄積は様々な方法での耐性応答の増加を誘発し得る;1.直接抗菌作用によるもの、2.H2O2をペルオキシダーゼの基質として提供すること(これは、リグニンの重合に寄与し、したがって、細胞壁の強化を助ける)によるもの、3.未だに解明されていない機構内で、感染に対する植物の防御において、例えば、サリチル酸蓄積の刺激において、役割を果たす遺伝子の発現を活性化するシグナルとして作用することによるもの。サリチル酸は、次に、幾つかの病原性関連タンパク質(PRP)、例えば、グルカナーゼまたはキチナーゼをコードする遺伝子の発現の内在性トリガーと考えられる。さらに、サリチル酸は酸化バーストを増加させ、したがって、一種のフィードバックプロセスでそれ自体の合成を加速させることができる。さらに、サリチル酸は、H2O2を分解する酵素であるカタラーゼの阻害剤として作用することにより、過敏性の細胞死において役割を果たし得る。最後に、H2O2も防御に適するさらなる化合物、例えば、フィトアレキシンまたは低分子量抗菌性化合物の合成を誘発することができる。
【0123】
したがって、本願において説明されるグリオキサールオキシダーゼは、病原体による攻撃に対する有意の耐性を植物に付与するのに適する。グリオキサールオキシダーゼの活性のため、トランスジェニック植物はPRP遺伝子を発現し、かつサリチル酸を蓄積することが可能である。植物の形質転換に用いられるDNA構築体は、例えば、構成性プロモーターを含むことができ、かつそれらに作動可能に連結するコーディング領域に加えて形質転換体の選択を可能にするマーカー遺伝子をも含むことができる。用いることができるさらなる要素は、ターミネータ、ポリアデニル化配列および植物細胞内での局在化またはこの細胞からのタンパク質の分泌を支配するシグナルペプチドをコードする核酸配列である。
【0124】
植物を形質転換するための様々な方法が既に公知である(例えば、Mikiら(1993)、Gruber and Grosby(1993)およびBevanら,1983も参照)。トランスジェニック植物を産生するための最も開発されているベクター系は、細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に由来するプラスミドである(Bevan,1984)。自然状態では、A.ツメファシエンスは植物に感染してクラウンゴールと呼ばれる腫瘍を産生する。これらの腫瘍はA.ツメファシエンスのTiプラスミド(腫瘍誘導性)によって生じる。Tiプラスミドは、T−DNAと呼ばれるそのDNAの一部を宿主植物の染色体DNAに組み込む。このプラスミドのDNAから腫瘍誘導性領域を除去し、しかしながら植物に遺伝物質を導入するその特性は保持する手段が開発されている。次に、外来遺伝子、例えば、本発明による核酸のうちの1つを、慣例的な組換えDNA技術の助けを借りて、Tiプラスミドに組み込むことができる。続いて、この組換えプラスミドでA.ツメファシエンスを再度形質転換する。その後、この株を植物細胞培養物の感染に用いることができる。しかしながら、このプラスミドを植物に直接挿入することもできる。そのような細胞の無傷の生物への再生は、外来遺伝子を含み、かつその上、それを発現する、すなわち、所望の遺伝子産生物を産生する植物を生じる。
【0125】
A.ツメファシエンスは双子葉類植物に容易に感染するが、多数の農業的に重要な作物植物、例えば、トウモロコシ、コムギまたはコメを含む単子葉植物の形質転換へのベクターとしての使用は、それがこれらの植物に容易には感染しないため、制限される。他の技術、例えば、粒子銃法として知られる「DNA銃」がそのような植物の形質転換に利用可能である。この方法においては、気体発射または粉体爆発のいずれかにより、微小なチタンまたは金微小球をレシピエント細胞または組織に発射する。これらの微小球は関心遺伝子のDNAでコートされており、それにより後者が細胞に到達し、球から徐々に脱着して宿主細胞のゲノムに組み込まれる。
【0126】
内在性遺伝物質にそれを安定に組み込むことができるのは外来性遺伝物質に晒されている細胞のうちの僅かのみである。遺伝子転移に用いられる組織においては、非トランスジェニック細胞が優性である。したがって、無傷の植物の再生の間、トランスジェニック細胞に利益をもたらす選択を適用することが必要である。実際には、植物細胞に転移されるマーカー遺伝子がこの目的に用いられる。これらの遺伝子の産生物は阻害剤、例えば、抗生物質または除草剤を不活性化し、したがって、その阻害剤を補足した栄養培地でのトランスジェニック細胞の成長を許容する。
【0127】
A.ツメファシエンスでの形質転換の場合、葉断片の代わりにプロトプラスト(培養状態で、特定の化学薬品の存在下において、さもなければエレクトロポレーションを用いるときに外来性DNAを取り込む、細胞壁のない単離細胞)を用いることができる。それらを、新たな細胞壁が形成されるまで(例えば、タバコの場合には約2日)組織培養の状態で保持する。次に、アグロバクテリアを添加し、組織培養を継続する。DNA構築体でのプロトプラストの一過性形質転換の簡潔な方法は、ポリエチレングリコール(PEG4000)の存在下におけるインキュベーションである。
【0128】
DNAはエレクトロポレーションによって細胞に導入することもできる。これは生活細胞へのDNAの取り込みを増加させるための物理的方法である。電気パルスは生体膜の透過性を、その膜を破壊することなしに、一時的に増大させる。
【0129】
DNAは微量注入によって導入することもできる。DNAを、ガラスキャピラリの助けを借りて、細胞核の近傍に注入する。しかしながら、強固な細胞壁および大空胞を有する植物細胞の場合にはこれは困難である。
【0130】
さらなる可能性は超音波を利用することである;ヒトにおける聴覚の周波数範囲を上回る音波(20kHz超)で細胞を超音波処理するとき、やはり膜の一時的透過性が観察される。この方法を実施する場合、音波の振幅を非常に正確に調整しなければならず、これは、そうでなければ超音波処理された細胞が破裂して破壊されるためである。
【0131】
本発明によるトランスジェニック植物または、例えば発現を支配するための、シグナル配列もしくは適切なプロモーターを含む適切な構築体を産生する方法は、とりわけ、上記グルコースオキシダーゼ(例えば、A.ニガーに由来する)を発現するトランスジェニック植物について既に説明されている(CN1229139、US5,516,671、WO95/21924、WO99/04012、WO95/14784)。同様の方法を、本発明によるトランスジェニック植物を得るの用いることもできる。
【0132】
真菌の形質転換には広範囲の可能性が存在する。プロトプラスト形質転換(実施例2およびSchulzら,1990を参照)に加えて、さらなる慣用法をこの目的で利用可能である。酢酸リチウム法が酵母に対して頻繁に用いられる(Gietzら,1997)。ここでは、これらの酵母細胞は、化学的手段によりDNAの取り込みについて適格にされる。エレクトロポレーションの場合、電流のパルスによってロードされているDNAを細胞に導入する。別の方法はアグロバクテリウム・ツメファシエンスによる形質転換である。プラスミドから出発して、この細菌は外来性生物にDNAを導入することが可能である。異種配列をこのプラスミドに導入するとき、標的細胞が形質転換される。
【0133】
したがって、本発明は、本発明による核酸の少なくとも1つを含むトランスジェニック植物または真菌、好ましくは、アラビドプシス(Arabidopsis)種のようなトランスジェニック植物または酵母種もしくはウスチラゴ種のようなトランスジェニック真菌、およびそれらのトランスジェニック子孫にも関する。それらには、トランスジェニック植物の植物部分、プロトプラスト、植物組織もしくは植物増殖物質、または本発明による核酸を含むトランスジェニック真菌の個々の細胞、真菌組織、子実体、菌糸体および胞子も包含される。好ましくは、これらのトランスジェニック植物または真菌は本発明によるポリペプチドを野生型から逸脱する形態で含む。しかしながら、本発明によるポリペプチドの発現の程度が非常に低いか、またはそれが全くないことによってのみ生来特徴付けられるトランスジェニック植物または真菌も本発明によるものと考えられる。
【0134】
したがって、本発明は、同様に、トランスジェニック植物および真菌であって、グリオキサールオキシダーゼの活性を有するポリペプチドをコードする配列内に修飾が生成されており、かつ本発明によるポリペプチドの産生および/またはその植物または真菌内に存在する本発明によるポリペプチドの生物学的活性もしくは量の、突然変異誘発によって得られる、増加もしくは減少について選択されているトランスジェニック植物および真菌に関する。
【0135】
「突然変異誘発」という用語は、本文脈において用いられる場合、自発的な突然変異速度を高め、したがって、変異体を単離する方法を指す。この文脈において、変異体は、変異原の助けを借りて、例えば、突然変異の誘発に適する化合物または物理的因子(例えば、塩基類似体、UV線等)を用いてイン・ビボで産生させることができる。所望の変異体は特定の表現型に対する選択によって得ることができる。染色体上の突然変異の位置は、他の公知突然変異との関係で、組換え分析によって決定することができる。問題の遺伝子は遺伝子ライブラリを用いる相補性実験によって特定することができる。突然変異は、有方向的な方式(イン・ビトロ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、誤り易発性PCR等)で、染色体または染色体外DNAに導入することもできる。
【0136】
「変異体」という用語は、本文脈において用いられる場合、修飾された(突然変異生成した)遺伝子を担持する生物を指す。変異体は非修飾遺伝子を担持する野生型との比較によって定義される。
【0137】
「耐性」という用語は、本文脈において用いられる場合、広範囲の機構をベースとする「抵抗能力」の形態を指す。「活動的耐性」の形態は「免疫」(=非感受性植物の耐性)および「寛容」(=その病原体に感受性である植物の耐性)である。中間形態が「転移耐性」であり、ここでは病原体が個々の細胞、細胞複合体または植物器官内に局所的に残存する。この3つのタイプの耐性の間に移行形態が存在する。
【0138】
「病原体」または「病原体による攻撃」という用語は、本文脈において用いられる場合、植物を攻撃し、かつ損害を与えるか、または破壊することができる生物、特には、真菌を指す。この損害は広範囲の症状、例えば、植物の部分の脱色、壊死、成長阻害または死滅をベースとし得る。特定の症状(例えば、脱色、壊死)を生じることによって植物の価値を低下させるが、植物または植物部分の死滅は導かない生物も病原体と呼ばれる。
【0139】
トランスジェニック植物の産生に加えて、病原体による攻撃に対する植物の耐性を高めるのに本発明に基づく別の経路をとることができる。
【0140】
したがって、例えば、グリオキサールオキシダーゼ・エンコーディング遺伝子(配列番号9および11を参照)が不活性化または欠失されているボトリチス・シネレアの変異体(実施例9、B.シネレアBcGlyox1ノックアウト変異体の産生を参照)は、もはや、植物においてこの真菌に典型的である損傷の障害を生じることはできない(実施例9および図9から12を参照)。この変異体の分生子が接種されている植物において、これらの変異体はこの真菌の存在に対する上述の応答を誘発し、その応答が局所的および全身性耐性の確立を導いた。耐性の確立は、非処理植物およびもはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない真菌で処理されている植物を病原体と接触させ(実施例9を参照)、特定の期間にわたって植物の損傷を観察することによって容易に試験することができる。この植物の獲得された耐性はこの文脈においては非特異的であり、すなわち、耐性の誘導または増加に用いられた真菌に対して向けられるだけではなく、広範囲の病原体による攻撃に対して向けられる防御機構を誘導する。
【0141】
したがって、本発明は、病原体による攻撃に対する植物の耐性を誘導または増加させる方法であって、植物を、もはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができず、かつその野生型が好ましくは植物病原性真菌の一因である真菌と接触させることによる方法にも関する。これらの真菌は、好ましくは、グリオキサールオキシダーゼをコードする遺伝子(1つもしくは複数)が不活性化または欠失されている真菌である。遺伝子を欠失または不活性化する方法は熟練研究者に公知である(これもやはり実施例9を参照)。問題の真菌のノックアウト変異体が好ましく用いられる。上記真菌ボトリチス・シネレアまたはその変異体に加えて、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子の適切な欠失または不活性化を伴う他の真菌、例えばU.メイジス変異体、も植物の処理に適する。
【0142】
したがって、本発明は、もはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない真菌、好ましくは植物病原性真菌の、病原体による攻撃に対して処理された植物の耐性を増加または誘導するための植物処理剤としての使用にも関する。本発明によるB.シネレアBcGlyox1変異体がこの目的に特に好ましく用いられる。
【0143】
以下の例は、驚くべきことに、本発明によるポリペプチドが真菌における病原性に必須の酵素を構成することを示し、さらに、この酵素が殺真菌剤を特定するのに適する標的タンパク質であること、それを殺真菌活性化合物を特定するための方法において用いることができること、および対応する方法において特定されたグリオキサールオキシダーゼ修飾因子を殺真菌剤として用いることができることを示す。
【0144】
さらに、グリオキサールオキシダーゼの修飾因子を特定するための方法において用いることができるグリオキサールオキシダーゼの酵素活性を測定する方法の例が説明され(実施例10および22)、殺真菌剤を特定するための本発明による方法は明記される方法には限定されない。
【0145】
同様に、以下の例はウスチラゴ・メイジスおよびボトリチス・シネレアには限定されない。類似の方法および結果が他の真菌に関しても得られる。
(実施例)
【実施例1】
【0146】
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸の単離(「プラスミド・レスキュー」)
プラスミド・レスキューをBolkerら,1995によって記載されるように行った。ゲノムU.メイジスDNAをMluIで切断して再ライゲートし、エレクトロポレーションによって大腸菌株DH5αをそれで形質転換した。
【0147】
U.メイジスの培養
これらの株を28℃でPD培地またはYEPS培地において成長させた(Tsukadaら,1988)。株が液滴の形態で1%木炭を含有するPDプレート培地に適用された後、二核フィラメントの発生が観察された(Holliday,1974)。病原性試験を記載される通りに行った(Gillessenら,1992)。株の一晩培養物を4×107細胞の濃度で再懸濁させ、若年トウモロコシ植物(Gaspar Flint)に注入した。少なくとも80の植物が各々の株または各々の株の組合せに感染し、7日から21日後にそれらをアントシアニン発生および腫瘍発生について検査した。
【0148】
画像処理
個々のウスチラゴ・メイジス細胞の形態を、Zeissアキシオスコープ(axioscope)および示差干渉対照法として知られるものを用いて分析した。細胞の顕微鏡写真を撮影した(Kodak T−64、倍率1000)。
【実施例2】
【0149】
U.メイジスにおけるglo1およびglo2ノックアウト変態の産生
ノックアウトカセットの産生
分子生物学的標準法を、Sambrookら,1989によって記載される通りに行った。glo1ゼロ変異体を産生するため、glo1遺伝子の5’および3’フランクをPCRによって増幅した。UM518株のゲノムDNAをテンプレートして用いた。配列5’−cacggcctgagtggccggtgtgtaaacgatcctttctggaag−3’を有するプライマーLB2および配列5’−cctccaagtttcgagatatcgacc−3’を有するLB1を5’フランクに用いた(1151bp)。プライマーRB1(5’−gtgggccatctaggccgtcaacagcaccaaattcacagcc−3’)およびRB2(5’−atcgtagctcgagtgtatgcttcc−3’)を3’フランクに用いた(1249bp)。プライマーLB2およびRB1で開裂部位SfiI(a)およびSfiI(b)を導入した。これらのアンプリコンをSfiIで制限し、ベクターpBS(ハイグロマイシンBカセット)から単離されている1884bp SfiI断片とライゲートした。この4300bp glo1ノックアウトカセットを、プライマーLB1およびRB2を用いるPCRによって増幅した(Kamper and Schreier,2001)。
【0150】
U.メイジス・プロトプラストの調製
YEPS培地中の培養物50mlを28℃で約5×107/ml(OD0.6から1.0)の細胞密度まで成長させた後、50ml Falcon管内で7分間、2500g(Hereaus、3500rpm)で回転沈降させた。その細胞ペレットを25mlのSCSバッファ(20mMクエン酸ナトリウム pH5.8、1.0Mソルビトール、(20mMクエン酸ナトリウム/1.0Mソルビトールおよび20mMクエン酸/1.0Mソルビトールを混合し、pHメーターを用いてpH5.8にする)に再懸濁させ、再度2500g(3500rpm)で7分間回転させ、そのペレットを2.5mg/ml Novozym234を補足した2mlのSCSバッファ、pH5.8に再懸濁させた。プロトプラストを室温で放出し、そのプロセスを顕微鏡下で5分毎に監視した。その後、プロトプラストを10mlのSCSバッファと混合して1100g(2300rpm)で10分間回転させ、上清を廃棄した。そのペレットを10mlのSCSバッファに慎重に再懸濁させ、再度回転させた。SCSバッファでの洗浄プロセスを2回繰り返し、ペレットを10mlのSTCバッファで洗浄した。最後に、ペレットを500μlの冷STCバッファ(10mMトリス/HCl pH7.5、1.0Mソルビトール、100mM CaCl2)に再懸濁させ、氷上で保持した。アリコートを−80℃で数ヶ月間保存することができる。
【0151】
U.メイジスの形質転換
U.メイジスをSchulzら,1990の方法によって形質転換した。ゲノムU.メイジスDNAをHoffmann and Winston 1987によって記述されるように単離した。
【0152】
この目的のため、最大で10μlのDNA(最適には、3μgから5μg)を2mlエッペンドルフ管に移し、1μlのヘパリン(15μg/μl)(SIGMA H3125)を添加した後、50μlのプロトプラストを添加し、氷上で10分間インキュベートした。STC中の40%(w/w)PEG3350(SIGMA P3640)500μl(フィルター滅菌)を添加してプロトプラスト懸濁液と慎重に混合し、その混合物を氷上で15分間インキュベートした。その混合物を勾配プレートに塗布した(底部寒天:10ml YEPS−1.5%寒天−抗生物質を補足した1Mソルビトール;塗布の直前、この底部寒天層を10ml YEPS−1.5%寒天−1Mソルビトールで覆い、プロトプラストを塗布し、それらのプレートを28℃で3日から4日間インキュベートした)。
【0153】
サザーン分析のため、DNAをEcoRIおよびXhoIで制限した。ジゴキシゲニン(Roche)で標識した1249bp PCR断片(RB1/RB2)をDNAプローブとして用いて検出を行った。
【実施例3】
【0154】
Glo1の過剰産生
Glo1の過剰産生のため、glo1遺伝子を含む3400bp断片を、プライマー5’glo1(5’−cccgggatgacgaggcacctctcctcatc−3’)および3’glo1Not(5’−gcggccgcgaattggtcagacgaatccg−3’)を用いて増幅した。そのアンプリコンをベクターpCR−Topo2.1(Invitrogen)にクローン化した。glo1断片をSmaIおよびNotIでの制限によって再単離し、pCA123のそれぞれの開裂部位にクローン化した。pCA123はプラスミドpotef−SG(Spellingら,1996)から得たプラスミドであり、otefプロモーターをpotef−SGから890bp PvuII/NcoI断片として単離し、PvuII/NcoI−切断ベクターpTEF−SGにライゲートした(Spellingら,1996)。得られるプラスミドにおいて、SGFP遺伝子をNcoI/NotIでの制限によって切除し、pEGFP−N1(Clontech)に由来するNcoI/NotI−切断EGFP対立遺伝子で置き換えた。生じるプラスミドをpCA123と命名する。pCA123から最終的に得られるプラスミドpCA929をSspIで直線化し、それでU.メイジスを形質転換する。用いられるU.メイジス株は、Brunswickにおけるドイチェ・サムルンク・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルツレン[ジャーマン・コレクション・オブ・マイクロオーガニズムス・アンド・セル・カルチャー]の公共コレクションにおいて株番号UM521として入手可能である。これらの形質転換体を構築体glo1−1で形質転換し、cbx耐性について選択した(Keonら,1991)。
【0155】
得られる株ウスチラゴ・メイジスBAY−CA95は本発明によるポリペプチドGlo1の過剰産生に用いることができる。これはBrunswickにおけるDSMZに番号DSM14509として寄託された。
【実施例4】
【0156】
細胞破壊、抽出物の分画、および酵素活性のアッセイ
グリオキサールオキシダーゼ活性を無傷の細胞、細胞抽出物および膜画分において決定した。
【0157】
グリオキサールオキシダーゼを発現する、寄託番号DSM14509として寄託されているウスチラゴ・メイジス株の細胞を最小培地またはPD培地において0.6から3のOD600nmまで成長させて回転沈降させ、再懸濁させることによって20のOD600nmとした。液体窒素中において乳棒および乳鉢で粉砕することによって細胞抽出物を得た。以下の工程の全ては4℃で行った。細胞残留物および細胞残骸を5000rpmおよび8000rpmでの分画遠心によって除去した。13000rpmで45分間回転させることによって膜を単離した。膜沈殿を、0.5%Tween−20を補足した50mMトリス/HClバッファ、pH8に再懸濁させた。
【0158】
Glo1活性は酵素反応をフェノールレッドおよびペルオキシダーゼと組み合わせることによって測定することができる。グリオキサールオキシダーゼ活性はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)反応を基質としてのフェノールレッドと組み合わせることによって検出した。ここで、50μlのアッセイ容積は10μlの試料、15μlの50mMリン酸カリウムバッファ、pH6、5μlの100mMメチルグリオキサール溶液、5μlのHRP(190U/ml)および5μlの56mMフェノールレッド溶液からなる(Kersten and Kirk 1987)。28℃で4時間インキュベートした後、NaOHを0.5Mの濃度まで添加した。吸収A550nmは「Tecan plus」リーダーで決定した。活性酵素はフェノールレッドの脱色を参照して特定される。
【0159】
酵素の活性に影響を及ぼす基質または物質混合物は、実験において適切な対照を用いて、試験物質の存在および不在における酵素活性を比較することによって特定することができる。
【0160】
グリオキサールオキシダーゼの他の基質を、メチルグリオキサールが基質として用いられた上記プロセスにおいて用いることもできる。次に、無傷の細胞に加えて、膜画分を用いることができる。利用可能な基質には、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリオキサレート、グリセロールアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、ヒドロキシアセトンおよびグルタルアルデヒドも含まれるが、形成されるH2O2の量は他の点で同一の条件下において同じでならなければならない必要はない。
【実施例5】
【0161】
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸の単離
用いられる株
野生型B05.10株を分析、形質転換および野生型比較株として用いた。B05.10はSAS56(van der Vlugt−Bergmansら,1993)の派生体である。
【0162】
寒天プレート上での培養
B.シネレアを20℃、暗所において、様々な炭素源が補足された、Oxoid麦芽寒天またはOxoid Czapek−Dox寒天を含有するプレート(スクロース30.00g、NaNO3 3.00g、MgSO4×7H2O 0.50g、KCl 0.50g、FeSO4×7H2O 0.01g、K2HPO4 1.00g、寒天13.00g、蒸留H2O 1000.00ml;pHを7.2とする)上で成長させた。
【0163】
分生子の単離
菌糸成長によって完全に覆われているプレートを用いて分生子(高級真菌の無性胞子)単離を行った。これらのプレート上で胞子形成を誘導するため、それらをUV光(270nm−370nm)に16時間露出した。0.05%(v/v)Tween80を含有する無菌水5mlを用いて誘導後7日から14日真菌に胞子を形成させたプレートから分生子を洗い流した。その懸濁液をガラスウールを通して濾過し、114×gで遠心(5’)することによって1回洗浄し、無菌水に再懸濁させた。
【0164】
B.シネレア株およびノックアウト変異体の保存
B.シネレアの野生型および変異体の分生子を、12mM NaClを含有する75%(v/v)グリセロール中、−80℃で凍結した。
【0165】
グリセロールオキシダーゼ遺伝子bcglyoxlの単離
ラムダEMBL3中のB.シネレア、SAS56株のゲノムライブラリ(van der Vlugt−Bergmansら,1997)をグリオキサールオキシダーゼ遺伝子の存在についてスクリーニングした。用いられたプローブは、長さが385塩基対であり、かつおそらくはファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼと相同であるものと特定されているT4株のcDNA断片であった。この断片はEMBLデータベースに受付番号AL113811として寄託されている。様々なハイブリダイズ相を精製し、ファージDNAを単離した。これらのファージのうちの1つに由来する、ハイブリダイズする4.1kbp BamHI制限断片をStratagene製のpBluescript(登録商標)SKII(−)ファージミドにクローン化した後、配列決定した。クローン化断片の特徴が図5に示される。
【実施例6】
【0166】
ゲノムDNAのサザーンブロット分析
ゲノムDNAの単離
液体培養の菌糸体をMiracloth(Calbiochem)を通す濾過によって収穫し、凍結乾燥した。乾燥した菌糸体を液体窒素中でホモジナイズした。3ml TES(100mMトリス−HCl、pH8.0、10mM EDTAおよび2%(w/v)SDS)および60μlプロテイナーゼK(20μg/μl)を添加し、その懸濁液を60℃で1時間インキュベートした。続いて、840μlの5M NaClおよび130μlの10%(w/v)臭化N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(CTAB)を添加し、インキュベーションを65℃で20分間継続した。次に、その懸濁液を、4.2mlのクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を添加することによって処理した後、簡単に混合して氷上で30分インキュベートし、続いて18000×gで5分間回転させた。水性上部相を除去して1350μlの7.5M 酢酸NH4を添加し、その混合物を氷上で1時間インキュベートして18000×gで15分間回転させた。0.7容量のイソプロパノールを添加してDNAを沈殿させた。そのDNAをガラス棒で除去し、70%(v/v)エタノールで洗浄して乾燥させた。最後に、ゲノムDNAを1mlのTE(10mMトリス−HCl、pH7.5および0.1mM EDTA、2.5U RNaseA)に溶解し、50℃で30分間インキュベートしてエタノールで沈殿させた。
【0167】
サザーンブロット分析
合計容積100μl中1μgのゲノムDNAを望ましい制限酵素で完全に開裂した。DNA断片を0.8%(w/v)アガロースゲルで分離した後、Amersham製のHybond(商標)−N+膜に、アルカリ性ブロットについてプロトコルに指定されるようにブロットした。この目的のため、まずDNA含有ゲルを、染料の色が変化するまで、0.25M HClに入れた。そのゲルを蒸留水で洗浄した後、Sambrook et al(1989)に記載されるように、0.4M NaOHをブロット溶液として用いてキャピラリブロットを行った。DNAの転移の後、膜を2×SSC(0.3M NaClおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7)で簡単に洗浄し、乾燥させた。UV処理(312nm、0.6J/cm2)によってDNAを膜に固定した。
【0168】
「Random Primers DNA Labelling System」(Life Technologies)の助けを借りて放射標識プローブを調製した。この目的のため、20ngのDNA断片(「プローブ」、図5を参照)を製造者のプロトコルに従って標識した。標識されたDNAをSephadex G50カラムで精製した。
【0169】
ハイブリダイゼーションはChurch and Gilbert(1984)によって記載されるように行った。この目的のため、ブロットをハイブリダイゼーションバッファ(0.25Mリン酸バッファ、pH7.2、1mM EDTA、1%(w/v)BSAおよび7%(w/v)SDS)中、65℃で30分間予備ハイブリダイズさせた。その後、ブロットを、標識プローブを含有するハイブリダイゼーションバッファと65℃で40時間ハイブリダイズさせた。ブロットを3回洗浄した(30分、65℃、2×SSCおよび0.1%(w/v)SDS中)。Kodak X−OMAT ARフィルムを用いてオートラジオグラフィーを行った。
【0170】
これらのハイブリダイゼーションの結果が図6に示される。3つの制限(SalI、BamHLおよびEcoRI)の全てにおいてこのプローブで単一のバンドが特定された。ハイブリダイズしたBamHI断片はサイズが4kbpであった。
【実施例7】
【0171】
cDNAのクローン化
Life Technologies製のSuperscript(商標)一工程RT−PCR系によって完全cDNA断片を得た。この目的のため、B.シネレア、B05.10株からTRIzolプロトコルに従ってTRIzol(登録商標)試薬を用いて単離されている全RNA 0.1μg(TRIzol試薬はフェノールおよびチオシアン酸グアニジニウムの単相性溶液である;クロロホルムの添加およびそれに続く遠心の後、イソプロパノールを用いて水相からRNAを沈殿させる)に逆転写を施し、遺伝子特異的プライマーの助けを借りて増幅した。そのcDNAをベクターpCR(登録商標)4−TOPO(登録商標)(Invitrogen)に直接クローン化し、完全に配列決定した。
【0172】
このcDNA配列により、キチン結合ドメインおよびグリオキサールオキシダーゼドメインをコードする配列間のイントロンの存在が確認された。
【実施例8】
【0173】
BcGlyox1の発現
BcGlyox1の発現を、トマトの葉の時間に基づく感染の経過を参照して研究した。B.シネレアB05.10株の分生子を、10mMグルコースおよび10mM(NH4)H2PO4を補足したB5培地において2時間予備インキュベートして発芽を刺激した。トマト(リコペルシコン・エスクレンツム(Lycopersicon esculentum)栽培変種マネーメーカー遺伝子型Cf4)の葉に、噴霧により、ml当たり106胞子を含む培地を接種した。これらの葉を20℃および>95%の大気湿度でインキュベートした後、接種後定期的な間隔で収穫し、−80℃で保存した。
【0174】
凍結乾燥され、かつ液体窒素中にホモジナイズされている菌糸体から、乳棒および乳鉢を用いて組織を粉末に粉砕することによりRNAを抽出した。物質のグラム当たり2mlのグアニジウムバッファ、pH7を添加した。このバッファは8.0M塩酸グアニジウム、20mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、20mM EDTAおよび50mM β−メルカプトエタノール、pH7.0で構成されていた。その懸濁液を2回、1回は等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(IAA)(25:24:1 v/v/v)で、1回はクロロホルム/IAA(24:1 v/v)で抽出した。12000×g、4℃で45分間遠心した後、8M LiClの容積の1/3を水相に添加した。次に、その懸濁液を氷上で一晩インキュベートし、12000×gで15分間回転させた。沈殿を2M LiClで1回、70%(v/v)エタノールで2回洗浄し、風乾して1mlのTEに溶解した。RNA濃度は260nmで分光光度的に決定した。代替法として、凍結乾燥物質からRNAを得るのに、製造者の指示に従ってTRIzol(登録商標)試薬(Life Technologies)も用いた。
【0175】
ゲル電気泳動において全RNAを流すため、試料を以下のように変性した。3.6μlの6M脱イオングリオキサール、10.7μlのジメチルスルホキシドおよび2.0μlの0.1Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7を3.7μlの溶液中10μgの全RNAに添加した。この試料を50℃で60分間インキュベートして簡単に回転させ、液体窒素中で凍結して氷上で再度解凍した。その試料を1.4%(w/v)アガロースゲルにおいて分離した、ゲルおよびランニング・バッファは0.01Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7.0を含有していた。ゲルを流した後、分離したRNA断片をキャピラリ・ブロット法(Sambrookら,1989)により、0.025Mリン酸ナトリウムバッファ、pH7を含有するブロッティング溶液を用いて、Hybond(商標)−N+膜(Amersham)に移した。RNAが転移した後、その膜を乾燥させ、UV処理(312nm、0.6J/cm2)によってRNAを膜上に固定した。ハイブリダイゼーション・プロトコルはDNAハイブリダイゼーションについて述べられる通りである。
【実施例9】
【0176】
B.シネレアBcGlyoxIノックアウト変異体の産生
ベクター構築
NruI−HindIII断片が除去され、かつハイグロマイシン耐性カセットで置換されているBCGlyoxI遺伝子を含む相同組み換え用のベクター(pHyGLYOXI、図8を参照)でB.シネレアを形質転換した。
【0177】
プロトプラストの調製
形質転換のためのプロトプラストを得るため、1リットルの1%(w/v)麦芽抽出物(Oxoid)を2×108B.シネレア分生子(B05.10株)に接種した。2時間後、発芽している分生子を、180rpmのロータリー・シェーカーにおいて、20℃で24時間インキュベートした。22.4μmふるいによって菌糸体を収穫し、5mg/ml Glucanex(ベータ−グルカン多糖を加水分解するための熱安定性ベータ−グルカナーゼ)を補足した、0.6M KClおよび50mM CaCl2を含有するKC溶液50ml中でインキュベートした。このようにしてプロトプラストが調製された後、その懸濁液を22.4μmおよび10μmふるいを通して濾過した。プロトプラストを洗浄し、100μl当たり107プロトプラストの濃度まで再懸濁させた。
【0178】
形質転換および形質転換体の選択
EcoRIで開裂してフェノールで抽出されている、2μgの形質転換ベクターpHyGLYOX1を95μlのKCで希釈し、2μlの5mMスペルミジンを添加した。氷上で5分間インキュベートした後、100μlのプロトプラスト懸濁液をDNAに添加し、全てを氷上でさらに5分間インキュベートし、10mMトリス−HCl、pH7.4中の25%(v/v)PEG3350および50mM CaCl2を含有するポリエチレングリコール(PEG)溶液100μlを添加してその懸濁液を混合した。室温で20分後、500μlのPEGを添加し、容器を室温でさらに10分間静置した。最後に、200μlのKC溶液を添加した。
【0179】
形質転換されたプロトプラストを含む形質転換反応物を200mlのSH寒天と混合し、直ちに20のペトリ皿に分配した。SH寒天は、0.6Mスクロース、5mM HEPES、pH6.5、1.2%(w/v)精製寒天および1mM NH4(H2PO4)を含有する。20℃で24時間インキュベートした後、50μg/mlハイグロマイシンを含有する等量のSH寒天を添加した。出現した個々のコロニーを、さらなる選択のため、100μg/mlハイグロマイシンを含有する麦芽寒天プレートに移した。次に、成長するコロニーをハイグロマイシンを含有しない麦芽寒天プレートに移し、UV光(近UV)で処理することによって胞子形成を誘発した。単胞子単離体を得るため、分生子を単離して希釈し、100μg/mlハイグロマイシンを補足した麦芽寒天プレートに塗布した。これらのプレートから得られたコロニーを単離し、さらなる分析に用いた。
【0180】
形質転換体のサザーン分析
形質転換体をサザーン分析にかけた。DNAを単離してEcoRVで切断し、電気泳動で分離し、ブロットしてプローブとハイブリダイズさせた(上記参照)。ノックアウト形質転換体の場合、そのようなハイブリダイゼーションは300bpの断片を生じるはずである。緩慢成長表現型を有する全ての形質転換体が300bpの断片を示した。
【0181】
形質転換体の成長分析
高ハイグロマイシン含量のプレート上で成長した形質転換体の全てはハイグロマイシンを含有しない麦芽寒天プレート上でも正常に成長した。これらの形質転換体を、単糖を炭素源として含有する合成寒天培地上で成長させたとき、形質転換体は緩慢に成長するか、または成長を停止した。試験した糖の例はヘキソース、ペントースおよびトリオースであった。発芽および菌糸発生の両者は悪影響を受けるか、または完全に妨げられた。この成長欠陥は、例えば、トリプトンまたはペプトンを添加することによって補うことができる。成長阻害はアルギニンを培地に添加することによって完全に修復することができる。100μM以上の濃度のアルギニンが、単糖を含有する培地上での真菌の成長を完全に回復させることができる。
【0182】
バイオアッセイ
バイオアッセイを行い、BcGlyox1変異体の病原性を野生型B.シネレア(B05.10株)のものと比較した。
【0183】
トマト(リコペルシコン・エスクレンツム)およびリンゴ(Alkmene and Cox Orange)の切除した葉および果実に分生子懸濁液を接種した(Benitoら,1998;ten Haveら,1998)。バラおよびガーベラ雑種の切除した花に乾燥分生子をまぶした(van Kanら,1997)。接種された宿主組織を暗所において15℃で(トマトの葉および果実、バラおよびガーベラ)または明所において20℃で(リンゴ)インキュベートした。
【0184】
試験したBcGlyox1変異体は全ての実験構成において原発性の壊死病変を生じることができず、それに対して野生型は原発性の病変を生じ、これは幾つかの場合には隣接組織まで蔓延した(図9から12を参照)。
【0185】
野生型とは異なり、BcGlyox1変異体はB5培地中で単糖の存在下(標準培地)においては発芽しないため、分生子を室温で2時間、1%強麦芽抽出物中で予備インキュベートすることによって発芽を刺激した。これは野生型および変異体の効率的な発芽を導いた。これらの予備インキュベートした懸濁液を同様に接種に用い、他の欠陥または欠損による変異体の病原性を排除した。しかしながら、これらの実験でさえ、変異体が試験組織に感染できないことを示した(図9から12)。
【0186】
最後に、単糖の利用に関する変異体の問題を排除するため、接種懸濁液にアルギニンをさらに添加した。傷ついたリンゴへの変異体分生子および野生型のアルギニン含有懸濁液の接種は、両者の場合において壊死組織が発生することを明らかにした。野生型の病変は、最終的に全ての組織が腐敗するまで、数日間蔓延した。変異体によって生じた病変は2日から3日間蔓延し、そこで直ちに蔓延が完全に停止した。
【実施例10】
【0187】
グリオキサールオキシダーゼの酵素活性の発現の検出
イン・ビトロおよびイン・ビボ、例えば、実施例3に説明されるように産生される本発明によるU.メイジス細胞(CA95)におけるグリオキサールオキシダーゼの活性は、基質メチルグリオキサールの変換に基づき、以下の反応を利用して検出することができる:
工程1:
メチルグリオキサール+O2→ピルベート+H2O2
工程2:
H2O2+10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red(登録商標))→レゾルフィン+H2O
Amplex Red(登録商標)はH2O2と1:1の化学量論で反応し、レゾルフィン(7−ヒドロキシ−3H−フェノキサジン−3−オンナトリウム塩)を生じる。蛍光を550nmの励起波長および595nmの放射で測定する。このアッセイにおいては10mMメチルグリオキサールの基質濃度を用いた。無傷の細胞を用いるとき、グリオキサールオキシダーゼ濃度が低く、したがって、反応をより長時間進行させなければならないことを考慮しなければならない。したがって、例えば、非常に良好な読み取り値は9時間のインキュベーション後に得られた。1mMメチルグリオキサールの濃度では、所定の窓においては反応は観察されなかった。100mMメチルグリオキサールの添加は変換速度の僅かな増加を生じるだけであったが、2mMから10mMメチルグリオキサールでの変換速度の増加は速度論の直線部分の範囲内である(図13)。
【実施例11】
【0188】
阻害剤を特定するための酵素アッセイ
酵素アッセイを50μlの総容積で行った。この目的のため、アッセイしようとする基質を10μl基質溶液(50mMメチルグリオキサール、2.5%(v/v)DMSO)の状態で384マイクロタイタープレートに導入した。メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKM値は前もって決定されていた(図14を参照)。阻害効果について試験しようとする候補化合物の濃度は、実施されるアッセイにおける基質の最終濃度が10μMであるようなものであった。次の工程において、20μlの細胞溶液(過剰産生株Bay−CA95の細胞(OD600=5);0.2M 2,2−ジメチルスクシネートバッファ、pH5、4℃に冷却)を添加した。20μlの検出溶液(125μM Amplex Red(登録商標)試薬(100%DMSO中の20mM貯蔵溶液)、2.5U/mlセイヨウワサビペルオキシダーゼ、62.5mMリン酸ナトリウムバッファ、pH7.4)を混合物に添加した。その混合物を30℃で9時間インキュベートした。その後、蛍光の増加をλ=550nm(吸収)およびλ=595nm(放射)で測定し、Bay−CA95細胞の存在下における測定の結果を野生型U.メイジス518細胞の存在下における測定の結果と比較した(図15も参照)。このアッセイにおいて用いられた物質は以下の最終濃度で存在していた:c(2,2−ジメチルスクシネート/NaOH)=40mM、c(Amplex Red(登録商標)(分子プローブ))=50μM、c(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)=0.001U/μl、c(メチルグリオキサール)=10mM、OD(Bay−CA95)=1、c(リン酸ナトリウムバッファ)=25mM。候補化合物の阻害効果は相対蛍光度の減少からわかり、阻害剤を特定した。表IIはグリオキサールオキシダーゼ阻害剤として作用する化合物の例を示す。表IIは、個々の化合物について決定されているpI50値も示す。p150値は、酵素の50%阻害を導く物質のモル濃度を示すIC50値として知られるものの負の常用対数である。例えば、8のpI50値は10nMの濃度での酵素の最大阻害の半分に相当する。図15は、グリオキサールオキシダーゼの活性に対する化合物(表II、実施例3)の効果の例を示す。
【0189】
【表3】
【実施例12】
【0190】
特定されているグリオキサールオキシダーゼ阻害剤の殺真菌効果の実証
例として、とりわけベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)に対する、化合物の抗真菌作用(防御作用)を試験した。この真菌はリンゴ黒星病として知られるものを生じ、これはリンゴ類果樹における葉の黒色および緑色斑点につながる。これらの病変は拡大し、かつ融合する。重度に感染した葉は死に、これは木がそれらの葉を夏に失うことにつながり得る。感染は果実に対する有害効果も有する。果実の黒星病は、コルク化および変形した果実を伴う、皮の灰色病変として現れる。
【0191】
活性化合物の適切な調製品を調製するため、1重量部の活性化合物を、例えば、24.5重量部のアセトンおよび24.5重量部のジメチルホルムアミドおよび乳化剤としての1.0重量部のアルキルアリールポリグリコールエーテルと混合し、その濃縮物を水で所望の濃度に希釈する。
【0192】
防御活性について試験するため、若年植物に活性化合物の調製品を述べられる適用率で噴霧する。噴霧コーティングが乾燥した後、それらの植物にリンゴ黒星病病原体ベンツリア・イナエクアリスの水性分生子懸濁液を接種し、インキュベーション・キャビネット内に1日間、約20℃および100%相対大気湿度で留める。
【0193】
次に、植物を約21℃および約90%の相対大気湿度の温室に入れる。
【0194】
接種後1日から12日に、試験を評価する。0%は対照に相当する効力を意味し、それに対して100%の効力は疾病が観察されないことを意味する。
【0195】
250ppmの濃度で、実施例4の化合物(表I)は45%の効力を示した。
【0196】
図及び配列表
図1は、配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。U.メイジスGlo1とP.クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼとの類似性は44%であり、これに対して同一性は38%である。銅イオンの配位に重要なものである保存位置は灰色の背景に対して示される。
【0197】
図2は、(A)glo1ゼロ変異体を特定するためのサザーン分析。各々の場合において述べられるウスチラゴ株の各々のゲノムDNA 1μgをEcoRIおよびXhoIで切断し、1%アガロースゲルにおいて分離してブロットした。ジゴキシゲニン標識DNAプローブ(1200bp;図2Bに示されるような、プライマーRB1/RB2でのPCR断片)を用いてハイブリダイゼーションを行った。個々のレーンにおいて適用されたDNAは以下の株から単離した:
レーン2:野生型Um518;レーン3:野生型Um521;レーン4−8:Um518の形質転換体(518#0、518#1、518#4、518#6、518#8);レーン9−13:Um521の形質転換体(521#1、521#5、521#7、521#8、521#9)。レーン1における1kbプラスDNAマーカーはサイズマーカーとして作用した。
(B)glo1ゼロ変異体を産生するための相同組換えの模式的表示。プライマーRB1およびRB2はハイブリダイゼーションのためのDNAプローブとして用いられるPCR産生物を定義する(Kamper and Schreire(2001)も参照)。
【0198】
図3は、glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。問題の培養物をPD培地において0.8のOD600まで成長させ、H2Oで洗浄した後、0.2%ケルツァン(Bayer AG)溶液に再懸濁させた。大文字はゼロ変異体を示し、一方小文字は野生型を示す。A、b、c、F、G、JおよびKはUm518株またはそれらの派生体であり、c、d、e、H、J、LおよびMはUm521株およびそれらの派生体である。
【0199】
【化2】
【0200】
図4は、(デルタ)glo1株の表現型。(デルタ)glo1対立遺伝子をU.メイジス株Um521(alb1)およびUm518(a2B2)に導入した。これらの株は全て、単独または述べられる組合せのいずれかで、PC木炭プレート培地に滴下により適用した。48時間接種した後、白色空中菌糸の存在が接合の成功を示す。
【0201】
図5は、B.シネレアBcGlyox1配列の主な特徴。BcGLYOX1のタンパク質配列は、植物タンパク質(例えば、1型キチナーゼ、レクチン)において見出すことができる多糖結合ドメインとの相同性を有する短い配列が続く、推定シグナルペプチド開裂部位を含む。このドメインは、グリオキサールオキシダーゼをコードするP.クリソスポリウム遺伝子およびガラクトースオキシダーゼをコードする遺伝子(ダクチリウム・デンドロイデス(Dactylium dendroides)に由来)との相同性を有する触媒ドメインに先行する。BcGlyox1遺伝子は、P.クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼに典型的である通常のCu2+結合部位をも含む。遺伝子を単離するのに用いられる開裂部位も示される。単離に用いられるB.シネレア断片の位置およびサザーン分析に用いられるDNAプローブと同様に、見出されたイントロンがマークされた。
【0202】
図6は、図に示されるように3種類の異なる制限酵素で切断されたB.シネレア(B05.10株)のゲノムDNAを用いるサザーンブロット。制限されたDNAはB.シネレアに由来する放射標識385bp断片とハイブリダイズした。
【0203】
図7は、ノックアウト変異体の産生に用いられ、かつ元のベクターのNruI−HindIII断片を置換するハイグロマイシン耐性カセットを含むベクターpHyGLYOX1の調製。
【0204】
図8は、ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。例として、関心保存アミノ酸が灰色の背景に対して示される。
【0205】
図9は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したリンゴ(Alkmene and Cox Orange)にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を接種した。接種した宿主組織に20℃で明所において接種した。試験したBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図9、A4aおよびR3a)、それに対して野生型は原発性病変を生じ(図9、B05.10)、それはある程度隣接組織に蔓延した。麦芽抽出物と共に予備インキュベートした懸濁液の場合(実施例9を参照)、それらの変異体が試験組織に感染できないことも明らかとなった。
【0206】
図10は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したトマト(リコペリコン・エスクレンツム)にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を接種した。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。試験したBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図10、左、A4a、および中央、R3aのトマト)、それに対して野生型B05.10は原発性病変を生じ(図12、右のトマト)、それはある程度隣接組織に蔓延した。
【0207】
図11は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したトマト(リコペリコン・エスクレンツム)の葉にB.シネレア分生子の懸濁液(実施例9を参照)を各々の場合において一方の側に接種した。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。試験されているBcGlyox1変異体(ノックアウト変異体)は原発性壊死病変を生じることができず(図11、葉の右半分)、それに対して野生型は原発性病変を生じ(図11、葉の左半分)、それは隣接組織に蔓延した。
【0208】
図12は、ノックアウト変異体の無病原性。
切除したガーベラ雑種の花に乾燥B.シネレア分生子(実施例9を参照)をまぶした。接種した宿主組織を15℃で暗所においてインキュベートした。全ての実験構成において、試験したBcGlyox1変異体は原発性壊死病変を生じることができず(図12A)、それに対して野生型は原発性病変を生じ、それはある程度隣接組織に蔓延した(図12B)。
【0209】
図13は、異なる基質濃度の関数としてのグリオキサールオキシダーゼによるメチルグリオキサールの変換の比較。
Glo1の発現を、Glo1が過剰産生されるCA95細胞(U.メイジス株BAY−CA95、実施例3を参照)におけるメチルグリオキサール(MG)の酵素変換を基準にして、無傷の細胞において検出した(実施例10を参照)。この試験においては10mMメチルグリオキサールの基質濃度を用いる。1mMメチルグリオキサールの濃度では、所定の範囲において反応は観察されなかった。100mMメチルグリオキサールの添加は変換速度の僅かな増加を生じるのみであり、それに対して2mMから10mMメチルグリオキサールでの変換速度の増加は速度論の直線範囲内にある。この試験は無傷の細胞だけではなく、細胞断片(膜画分)でも行った。
【0210】
図14は、メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKMを決定するためのLineweaver−Burkプロット。
反応をセイヨウワサビペルオキシダーゼと組み合わせることにより、アッセイを継続的に行った(実施例10を参照)。Amplex Red(登録商標)(分子プローブ)の変換を蛍光定量的に監視した(λ(exc)=550nm;λ(em)=595nm)。反応容積は50μlであった。約180分のインキュベーション期間(ラグ相)の後およびブランク値を差し引いた後に変換速度を決定した。
【0211】
図15は、本発明による阻害剤の添加によるGlo1の阻害。
【0212】
実施例10において説明されるように、検出試薬Amplex Red(登録商標)との組合せアッセイ系を用いてGlo1活性を行った。Bay−CA95細胞(CA95)の代わりに、U.メイジス野生型518細胞を対照として用いた。本発明による方法において特定された化合物のうちの1つ(表II、実施例3)(阻害剤)を10μMおよび100μMの2種類の異なる濃度で用いた。
【0213】
配列番号1
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1をコードする核酸配列(cDNA)。
【0214】
配列番号2
配列番号1に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1のアミノ酸配列。
【0215】
配列番号3
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1をコードする核酸配列(ゲノムDNA)。
【0216】
配列番号4
配列番号3に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1のアミノ酸配列。
【0217】
配列番号5
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo2をコードする核酸配列(cDNA)。
【0218】
配列番号6
配列番号5に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo2のアミノ酸配列。
【0219】
配列番号7
U.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo3をコードする核酸配列(cDNA)。
【0220】
配列番号8
配列番号7に示される配列によってコードされるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo3のアミノ酸配列。
【0221】
配列番号9
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸配列(cDNA)
【0222】
配列番号10
配列番号9に示される配列によってコードされるB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼのアミノ酸配列。
【0223】
配列番号11
B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼをコードする核酸配列(2つのエクソン、エクソン1およびエクソン2、並びにイントロンを含むゲノムDNA)
【0224】
配列番号12
配列番号11に示される配列によってコードされるB.シネレア・グリオキサールオキシダーゼのアミノ酸配列(この配列表においてはエクソン1および2は連結していた)。
【0225】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1−1】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−2】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−3】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図1−4】配列番号1および配列番号3に示される本発明によるU.メイジス・グリオキサールオキシダーゼGlo1、Glo2およびGlo3、B.シネレア・グリオキサールオキシダーゼ並びに既知のファネロカエテ・クリソスポリウム・グリオキサールオキシダーゼの間の相同性の決定(BESTFIT)。
【図2】(A)glo1ゼロ変異体を特定するためのサザーン分析。(B)glo1ゼロ変異体を産生するための相同組換えの模式的表示。
【図3】glo1ゼロ変異体は多面的な形態学的欠陥を示す。
【図4】(デルタ)glo1株の表現型。
【図5】B.シネレアBcGlyox1配列の主な特徴。
【図6】3種類の異なる制限酵素で切断されたB.シネレア(B05.10株)のゲノムDNAを用いるサザーンブロット。
【図7】ノックアウト変異体の産生に用いられ、かつ元のベクターのNruI−HindIII断片を置換するハイグロマイシン耐性カセットを含むベクターpHyGLYOX1の調製。
【図8−1】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−2】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−3】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−4】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図8−5】ウスチラゴ・メイジス(Ustmay)、ボトリチス・シネレア(botcinglox)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(PCGLX2G_1)に由来するグリオキサールオキシダーゼをコードする配列または配列断片およびアラビドプシス・タリアナに由来する(グリオキサールオキシダーゼをコードする)様々な推定ORF(ATF5K20.25推定、ATF15B8_19推定、ATAC2130_11、AC012188_20)の間の配列整列化。
【図9】ノックアウト変異体の無病原性。
【図10】ノックアウト変異体の無病原性。
【図11】ノックアウト変異体の無病原性。
【図12】ノックアウト変異体の無病原性。
【図13】異なる基質濃度の関数としてのグリオキサールオキシダーゼによるメチルグリオキサールの変換の比較。
【図14】メチルグリオキサールに対するグリオキサールオキシダーゼのKMを決定するためのLineweaver−Burkプロット。
【図15】本発明による阻害剤の添加によるGlo1の阻害。
Claims (38)
- 化合物をグリオキサールオキシダーゼ阻害アッセイにおいて試験することを特徴とする、殺真菌剤を特定するための方法。
- グリオキサールオキシダーゼ阻害アッセイにおいて特定された化合物の殺真菌活性を真菌に対してアッセイすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- グリオキサールオキシダーゼを発現する細胞をグリオキサールオキシダーゼ阻害アッセイにおいて用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 受付番号L47286およびL47287のファネロカエテ・クリソスポリウムを除く、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有する真菌ポリペプチドをコードする核酸。
- 植物病原性真菌に由来するポリペプチドをコードすることを特徴とする、請求項4に記載の核酸。
- バシジオミセテスまたはアスコミセテスに由来するポリペプチドをコードすることを特徴とする、請求項4または5に記載の核酸。
- ウスチラゴおよびボトリチスに由来するポリペプチドをコードすることを特徴とする、請求項4に記載の核酸。
- 一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの形態をとることを特徴とする、請求項4から7のいずれか1項に記載の核酸。
- ゲノムDNAの断片の形態またはcDNAの形態をとることを特徴とする、請求項4から8のいずれか1項に記載の核酸。
- 以下のものから選択される配列を含む、請求項4から9のうちの1項に記載の核酸:
a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11に示される配列、
b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列、
c)Cu2+配位に適するアミノ酸チロシン1、チロシン2、ヒスチジン1、ヒスチジン2およびシステインを含むポリペプチドをコードする配列、
d)長さが少なくとも14塩基対である、a)からc)に定義される配列の部分配列、
e)a)からc)に定義される配列との50%同一性、特に好ましくは70%同一性、とりわけ好ましくは90%同一性を有する配列、
f)a)からc)に定義される配列と相補的である配列、並びに
g)遺伝子暗号の縮重のため、a)からc)に定義される配列と同じアミノ酸配列をコードする配列。 - 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸および異種または同種プロモーターを含むDNA構築体。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸または請求項11に記載のDNA構築体を含むベクター。
- 核酸が、原核または真核細胞における該核酸の発現を保証する調節配列に作動可能に連結する、請求項12に記載のベクター。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸、請求項11に記載のDNA構築体または請求項12または13に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 原核細胞の形態をとることを特徴とする、請求項14に記載の宿主細胞。
- 真核細胞の形態をとることを特徴とする、請求項14に記載の宿主細胞。
- 寄託番号DSM14509のウスチラゴ・メイジス株。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸によってコードされる、グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチド。
- 配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10または配列番号12に示される配列と少なくとも20%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項18に記載のポリペプチド。
- 請求項18または19に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
- 以下の工程:
(a)それ自体公知の方法での完全化学合成、または
(b)オリゴヌクレオチドの化学合成、オリゴヌクレオチドの標識、オリゴヌクレオチドと、真菌細胞に由来するゲノムDNAもしくはmRNAから出発して生成されるゲノムライブラリもしくはcDNAライブラリのDNAとのハイブリダイズ、所望の核酸を含むクローンの選択およびこれらのクローンからのハイブリダイズするDNAの単離、または
(c)オリゴヌクレオチドの化学合成およびPCRによる標的DNAの増幅
を含む、請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸を産生するための方法。 - (a)請求項14から16のいずれか1項に記載の宿主細胞を、請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸の発現を保証する条件下で培養する工程、または
(b)請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸をイン・ビトロ系において発現させる工程、および
(c)細胞、培養培地またはイン・ビトロ系からポリペプチドを得る工程、
を含む、請求項18または19に記載のポリペプチドを産生するための方法。 - (a)請求項14から16のいずれか1項に記載の宿主細胞、請求項17に記載の株の細胞または請求項18もしくは19に記載のポリペプチドを化合物または化合物の混合物と、化合物とポリペプチドとの相互作用を許容する条件下で接触させる工程、並びに
(b)ポリペプチドに特異的に結合する化合物を決定する工程、並びに任意に、
(c)ポリペプチドの活性に影響を及ぼす化合物を決定する工程、
を含む、請求項18または19に記載のポリペプチドに結合し、および/またはこのポリペプチドの活性を修飾する化合物を発見する方法。 - (a)請求項14から16のいずれか1項に記載の宿主細胞または請求項17に記載の株の細胞を化合物または化合物の混合物と接触させる工程、
(b)ポリペプチド濃度を決定する工程、および
(c)ポリペプチドの発現に特異的に影響を及ぼす化合物を特定する工程、
を含む、請求項18または19に記載のポリペプチドの発現を修飾する化合物を発見する方法。 - 真菌グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチド、それをコードする核酸、またはこれらの核酸を含むDNA構築体もしくは宿主細胞の、新規殺真菌活性化合物の発見への使用。
- 真菌グリオキサールオキシダーゼ、それらをコードする核酸、またはこれらの核酸を含むDNA構築体もしくは宿主細胞の、請求項23または24に記載の方法における使用。
- グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドの修飾因子の殺真菌剤としての使用。
- グリオキサールオキシダーゼの生物学的活性を有するポリペプチドの修飾因子の、動物またはヒトに対して病原性である真菌によって生じる疾患を治療するための組成物の調製への使用。
- 請求項23または24に記載の方法によって見出される殺真菌活性物質。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸、請求項8に記載のDNA構築体、または請求項12または13に記載のベクターの、トランスジェニック植物または真菌の産生への使用。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸、請求項11に記載のDNA構築体、または請求項18または19に記載のベクターの導入後に、対応する野生型細胞と比較して請求項15または16に記載のポリペプチドの細胞内濃度が増加することを特徴とする、トランスジェニック植物、植物部分、プロトプラスト、植物組織または植物増殖物質。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸、請求項11に記載のDNA構築体、または請求項12もしくは13に記載のベクターの導入後に、対応する野生型細胞と比較して請求項18もしくは19に記載のポリペプチドの細胞内濃度が増加することを特徴とする、トランスジェニック真菌、真菌細胞、真菌組織、プロトプラスト、または真菌増殖物質。
- 対応する内在性ポリペプチドと比較して生物学的活性または発現パターンが修飾されている請求項18または19に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする、植物、植物部分、植物組織または植物増殖物質。
- 対応する内在性ポリペプチドと比較して生物学的活性または発現パターンが修飾されている請求項18または19に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする、真菌、真菌細胞、真菌組織、または真菌増殖物質。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸が突然変異誘発によって修飾されていることを特徴とする、請求項33に記載の植物、植物部分、プロトプラスト、植物組織または植物増殖物質の産生方法。
- 請求項4から10のいずれか1項に記載の核酸が突然変異誘発によって修飾されていることを特徴とする、請求項34に記載の真菌、真菌細胞、真菌組織、プロトプラストまたは真菌増殖物質の産生方法。
- 植物をもはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない真菌と接触させることを特徴とする、病原体の攻撃に対する該植物の耐性を誘導または増加させる方法。
- もはやグリオキサールオキシダーゼを発現することができない植物病原性真菌の、植物の耐性の誘導または増加への使用。
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
DE10145095 | 2001-09-13 | ||
DE10159375 | 2001-12-04 | ||
DE10221725A DE10221725A1 (de) | 2001-09-13 | 2002-05-16 | Glyoxaloxidasen aus Pilzen |
PCT/EP2002/009772 WO2003023028A1 (de) | 2001-09-13 | 2002-09-02 | Glyoxaloxidasen aus pilzen |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005502358A true JP2005502358A (ja) | 2005-01-27 |
Family
ID=27214600
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003527093A Withdrawn JP2005502358A (ja) | 2001-09-13 | 2002-09-02 | 真菌グリオキサールオキシダーゼ |
Country Status (6)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20030140370A1 (ja) |
EP (1) | EP1293562B1 (ja) |
JP (1) | JP2005502358A (ja) |
AT (1) | ATE346141T1 (ja) |
DE (1) | DE50208755D1 (ja) |
WO (1) | WO2003023028A1 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104928316A (zh) * | 2015-05-08 | 2015-09-23 | 昆明理工大学 | 拟南芥过氧化氢酶基因cat的植物表达载体及其应用 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US3689536A (en) * | 1968-05-03 | 1972-09-05 | Theodore E Majewski | Salicylic acid and halo-substituted salicylic acid salts of oxydianiline |
WO1995014784A1 (en) * | 1993-11-24 | 1995-06-01 | Monsanto Company | Method of controlling plant pathogens |
AUPM379294A0 (en) * | 1994-02-10 | 1994-03-03 | Commonwealth Scientific And Industrial Research Organisation | Expression of the glucose oxidase gene in transgenic organisms |
GB9703739D0 (en) * | 1997-02-22 | 1997-04-09 | Agrevo Uk Ltd | Fungicide test method |
US6166291A (en) * | 1997-07-18 | 2000-12-26 | Pioneer Hi-Bred International, Inc. | Production of pathogen resistant plants |
US6251629B1 (en) * | 1997-10-07 | 2001-06-26 | Smithkline Beecham Corporation | ABC transporter |
-
2002
- 2002-09-02 EP EP02019172A patent/EP1293562B1/de not_active Expired - Lifetime
- 2002-09-02 JP JP2003527093A patent/JP2005502358A/ja not_active Withdrawn
- 2002-09-02 AT AT02019172T patent/ATE346141T1/de not_active IP Right Cessation
- 2002-09-02 WO PCT/EP2002/009772 patent/WO2003023028A1/de active Application Filing
- 2002-09-02 DE DE50208755T patent/DE50208755D1/de not_active Expired - Lifetime
- 2002-09-12 US US10/242,576 patent/US20030140370A1/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2003023028A1 (de) | 2003-03-20 |
US20030140370A1 (en) | 2003-07-24 |
EP1293562A1 (de) | 2003-03-19 |
EP1293562B1 (de) | 2006-11-22 |
DE50208755D1 (de) | 2007-01-04 |
WO2003023028A9 (de) | 2004-08-12 |
ATE346141T1 (de) | 2006-12-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Hardham et al. | Phytophthora cinnamomi | |
Segmüller et al. | BcSAK1, a stress-activated mitogen-activated protein kinase, is involved in vegetative differentiation and pathogenicity in Botrytis cinerea | |
Bolton et al. | The novel Cladosporium fulvum lysin motif effector Ecp6 is a virulence factor with orthologues in other fungal species | |
Temme et al. | Does Botrytis cinerea ignore H2O2-induced oxidative stress during infection? Characterization of Botrytis activator protein 1 | |
Schouten et al. | Resveratrol acts as a natural profungicide and induces self‐intoxication by a specific laccase | |
JP2004536577A (ja) | ミオイノシトールオキシゲナーゼ | |
Zhang et al. | veA gene acts as a positive regulator of conidia production, ochratoxin A biosynthesis, and oxidative stress tolerance in Aspergillus niger | |
Li et al. | Extracellular superoxide dismutase VdSOD5 is required for virulence in Verticillium dahliae | |
Zuo et al. | Identification and characterization of differentially expressed ESTs of Gossypium barbadense infected by Verticillium dahliae with suppression subtractive hybridization | |
Cui et al. | Mitochondrial and peroxisomal Lon proteases play opposing roles in reproduction and growth but co-function in the normal development, stress resistance and longevity of Thermomyces lanuginosus | |
Yuan et al. | ChSte7 is required for vegetative growth and various plant infection processes in Colletotrichum higginsianum | |
EP1167528A1 (en) | Botrytis cinerea laccase | |
JP2005502358A (ja) | 真菌グリオキサールオキシダーゼ | |
Zhang et al. | Characterization of cmcp Gene as a Pathogenicity Factor of Ceratocystis manginecans | |
KR100824107B1 (ko) | 신규의 단백질, 이를 암호화하는 유전자 및 이들을이용하는 방법 | |
DE10221725A1 (de) | Glyoxaloxidasen aus Pilzen | |
ES2257587T3 (es) | Aleno oxido sintasa y divinil eter sintasa de la familia de enzimas cyp74 aisladas de physcomitrella patens, secuencias de nucleotidos que las codifican y procedimiento para la produccion de plantas resistentes a los patogenos. | |
US20230416704A1 (en) | Lactonase and stabilized mutants thereof for treating fungal infections in plants | |
Zhao* et al. | cDNA cloning and characterization of a cotton peptide methionine sulfoxide reductase (cMsrA) | |
WO2003020957A2 (de) | Verwendung von fructose-1,6-bisphosphate aldolase zum identifizieren von neuen fungizid wirksamen substanzen | |
AU2004201516A1 (en) | A method of controlling fungal pathogens and agents useful for same | |
Xian et al. | Identification and functional analysis of glyoxal oxidase gene from rubber tree anthracnose. | |
JP2002065282A (ja) | シイタケラッカーゼ遺伝子 | |
US6998120B2 (en) | Dual roles of pepper esterase as a biocontrol agent | |
Wang | Characterization of scytalone dehydratase and reductase genes and expression of melanin biosynthesis genes in Ophiostoma floccosum |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050630 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20060821 |