JP2005501552A - 高スループット小分子薬物発見のための培養ヒト肥満細胞および好塩基球の産生 - Google Patents

高スループット小分子薬物発見のための培養ヒト肥満細胞および好塩基球の産生 Download PDF

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Abstract

CD34陰性前駆細胞、粘膜肥満細胞、結合組織型肥満細胞および好塩基細胞の増殖集団を作製しスクリーニングするための方法を提供する。本方法は細胞の均一な増殖集団を作出する。この増殖集団は高スループットスクリーニング法、例えばエキソサイトーシスを変化させる物質を求めるスクリーニングにおける使用に好適なサイズの、均一な集団を含んでいる。本発明は、この増殖集団を少なくとも一つの候補生物活性物質でスクリーニングし、変化した表現型を持つ細胞を検出するためにその細胞を評価することを包含する。本発明はさらに、変化した表現型を惹起する候補生物活性物質を単離することを包含する。加えて、記載の方法に従って形成された細胞もまた本発明に包含される。

Description

【技術分野】
【0001】
本出願は2001年8月31日出願の米国特許出願第60/316723号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、好ましくは人間の、培養肥満細胞および好塩基球の均一な大集団、ならびに肥満および好塩基球前駆細胞集団を作製するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
少なくとも二つの型の肥満細胞が知られている。これらには、気道または肺および腸粘膜の肥満細胞(「粘膜の」またはMCT)、ならびに皮膚、リンパ節および腸粘膜下組織を包含する結合組織の肥満細胞(MCTC)が包含される。気道肥満細胞の大半はトリプターゼを含むがキマーゼとカルボキシペプチダーゼAを含まない。これに比して殆どの結合組織肥満細胞はトリプターゼ、キマーゼおよびカルボキシペプチダーゼAを含む。異なる組織の肥満細胞は形態学的にも識別できる。Bingham,C.O. et al., J.Allergy Clin.Immunol. 105:S527-S534(2000年2月)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
【0004】
肥満細胞の前駆体は骨髄から生じ、CD34+単核細胞として循環中に入る。気道および組織の粘膜および粘膜下組織の部位へと移動した後、肥満細胞前駆体は組織特異的発達を受けて成熟肥満細胞となる。成熟肥満細胞は特徴として非常に顆粒化している。Kempuraj,D. et al., Blood 93:3338-46(1999年5月15日)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
【0005】
肥満細胞内部の顆粒は、セリンプロテアーゼ、トリプターゼおよびキマーゼ、血管作用性物質、例えばヒスタミン、ならびに神経作用性物質、例えばセロトニンおよび神経成長因子を包含する、前もって形成された炎症仲介物質を含有している。前もって形成されたこれらの仲介物質の迅速な放出は、調節的エキソサイトーシスの形態である脱顆粒として知られるプロセスであり、一般に活性化事象、例えば肥満細胞の高親和性IgEレセプター(Fcεレセプター)の架橋、または補体成分、神経ペプチドもしくはその他の物質による刺激によって開始する。肥満細胞の活性化はさらに、アラキドン酸代謝産物、ならびに腫瘍壊死因子α(TNF-α)、IL-5およびIL-13を包含するデノボ合成された種々のサイトカインの合成と放出を導く。Church,M. and Levi-Schaffer,F., J.Allergy Clin.Immunol. 99:155-60(1997年2月);Bingham,C.O. et al., J.Allergy Clin.Immunol. 105:S527-S534(2000年2月)を参照されたく、これらは引用により本明細書の一部とする。
【0006】
肥満細胞からの仲介物質の放出は、即時および遅延相過敏症ならびに炎症、アレルギー、寄生虫感染および喘息において重要な役割を果たしている。米国だけでも5000万人以上が喘息、鼻炎またはその他何らかの形のアレルギーに苦しんでいる。アレルギーの治療は依然として、肥満細胞の放出する仲介物質を遮断すること(抗ヒスタミン薬)、ステロイドのような非特異的抗炎症薬および肥満細胞安定剤に限定されており、それらはアレルギーの徴候を限定するうえで僅かに有効であるに過ぎない。Perou et al., J.Biol.Chem. 272(47):29790(1997)およびBarbosa et al., Nature 382:262(1996)を参照されたく、これらはいずれも引用により本明細書の一部とする。さらに、肥満細胞が、多発性硬化症を包含する神経疾患の発症と重篤度に関与していることを研究が示唆している。Secor, et al., J.Exp.Med. 191:813-21(2000年3月6日)。肥満細胞はその遍在的分布の故に、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、および間質性膀胱炎を包含するその他様々な病態に関係しているようである。Church,M. and Levi-Schaffer,F., J.Allergy Clin.Immunol 99:155-60(1997年2月)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
【0007】
歴史的には、肥満細胞活性化に影響を及ぼす小分子物質を求める高スループットスクリーニングは、大規模スクリーニングの遂行に必要な、充分多数の単一且つ均一な肥満細胞集団を、再現性を持って作製または取得することができないということによって限定されてきた。最終分化したそれらの性質のため、そしてしばしば特化した深部組織微小環境に局在するという事実のため、培養でこれらの細胞を多数樹立することは極めて困難であった。したがって、単一のドナーから肥満細胞を精製することは労働集約的であり、大規模な小分子薬発見または常套的な遺伝子スクリーニングにとってはあまりに少なすぎる数の細胞しか得られないのが典型的である。
【0008】
幾つかの増殖因子およびサイトカインが肥満細胞の発達、成熟および/または活性化の様々な相を刺激できることが示されている。Steel因子、c-kitリガンド、または肥満細胞増殖因子とも呼ばれる幹細胞因子(SCF)が、肥満細胞の発達、生存および機能を支持することが知られている。CD34+細胞を50週間の間SCFで処理することにより、1015の肥満細胞集団を作製したと、少なくとも1つのグループが報告している。Kinoshita, et al., Blood 94:496-508(1999年7月15日)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。ところがこのようにして樹立した培養は性質が均質ではない、即ち全てが粘膜肥満細胞ではなかった。さらに、2ヶ月後、この細胞は、徐々に粘膜肥満細胞ではなく結合組織型肥満細胞の表現型特性であるトリプターゼ/キマーゼ陽性になっていった。この方法は、無関係なグループによる再現性も悪かった。
【0009】
幾つかのグループは、IL-6が、CD34陽性細胞からのヒト肥満細胞の、SCFにより誘導される発達を増強することを報告している。例えばSaito, et al.,は、SCFとIL-6の両者と共に4-8週間培養した後に肥満細胞増殖の僅かな増強があることを報告した。Saito,H. et al., J.Immunol. 157:343-50(1996)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。対照的にKinoshita et al.,(上記)は、IL-6がSCF処理された肥満細胞の増殖を阻害すると報告している。さらに他のグループは、SCF処理した肥満細胞にIL-6を加えてもそれらの生存を促進するだけであると報告している。Yanagida,M., et al. Blood 86:3705-14(1995)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。概してこれらのグループからの報告は、過去の方法は変動的結果を産み、高スループットスクリーニングには適さない比較的少数の肥満細胞集団を生成することを示した。
【0010】
好塩基球は肥満細胞と同様骨髄から生じ、極めて顆粒化している。好塩基球は肥満細胞と同じ仲介物質を数多く合成し、同じ高親和性Fcεレセプターを発現する。したがって、好塩基球もまた抗原に対する即時過敏症反応を仲介する。さらに、好塩基球は細胞性過敏症に参加する。肥満細胞と異なり好塩基球は骨髄で成熟し、そこから炎症の組織部位へと動員される。好塩基球と肥満細胞はそれらの表面マーカー発現パターンに基づいても識別できる。
【0011】
チロシンキナーゼレセプター分子flt-3は広範な組織分布を持つ。flt-3のリガンドは同定されている(flt-3リガンド)。flt-3リガンドは骨髄と脾臓の造血前駆細胞の拡張を刺激し、造血前駆細胞の動員を刺激する。Robinson, et al., J.Hematother. & Stem Cell Res. 9:711-720(2000)を参照されたい。
【0012】
Zhang et al.は、他の因子と共に使用する時、SCFとflt-3リガンドが、臍帯血細胞のインビトロ拡張に相乗効果を持つことを立証した。Zhang,X. et al., Chin.J.Biotechnol. 15:189-94(1999)を参照されたい。しかしながらこの報告にある拡張した細胞は表現型が特性決定されておらず、完全に分化した機能的な粘膜肥満細胞は記載されていなかった。
【0013】
したがって、粘膜、気道型肥満細胞の均一な大集団をインビトロで作製する方法を提供することが本発明の1つの目的である。同様に本発明はまた、結合組織型肥満細胞および好塩基細胞の均一な大集団を作製する方法をも提供する。
【発明の開示】
【0014】
発明の要約
上に概説した目的に鑑み、本発明は、CD34陰性細胞の増殖した集団を作製する方法を提供する。このCD34陰性細胞の増殖集団を1またはそれ以上のサイトカインおよび/または増殖因子と接触させて、粘膜肥満細胞の増殖集団、結合組織型肥満細胞の増殖集団、または好塩基細胞の増殖集団を作製することができる。さらに本発明は、本発明に係る増殖集団をスクリーニングする方法、および、本明細書に記載の方法に従って作製した増殖集団を包含する。
【0015】
本方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させ、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製することを含む。次いでこのCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させ、粘膜肥満細胞の最終分化集団を形成させる。幾つかの側面では、少なくとも1個のCD34陽性細胞を臍帯血から取得する。
【0016】
これに代わる本発明の側面では、CD34陰性細胞の増殖集団をIL-4および幹細胞因子と接触させ、結合組織型肥満細胞の増殖集団を形成させる。さらに別の側面では、CD34陰性細胞の増殖集団をIL-3および幹細胞因子と接触させ、好塩基細胞の増殖集団を形成させる。
【0017】
幾つかの側面では、本発明方法で使用するCD34陽性細胞はヒトCD34陽性細胞である。好ましい態様では、記載の方法で使用するこのサイトカインおよび増殖因子はヒト由来のものである。例えば、IL-6は好ましくはヒトIL-6である。さらに、本発明方法で使用するIL-4は好ましくはヒトIL-4である。好ましくは本発明方法で使用するIL-3はヒトIL-3である。本明細書に記載する幹細胞因子は好ましくはヒト幹細胞因子である。本発明で使用するflt-3リガンドは好ましくはヒトflt-3リガンドである。
【0018】
本発明はさらに、粘膜肥満細胞の増殖集団をスクリーニングする方法を包含する。このスクリーニング方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し、このCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を形成させ、この粘膜肥満細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし、そしてこの粘膜肥満細胞の増殖集団を、変化した表現型を有する肥満細胞に関して評価することを含む。この評価は、例えばトリプターゼまたはヘキソースアミニダーゼについて検定することにより、または当分野で知られるその他様々な検定により実施できる。
【0019】
本方法のさらなる側面は、候補生物活性物質のライブラリーを粘膜肥満細胞の増殖集団に添加することを含む。さらに別の側面では、この候補生物活性物質は小分子候補生物活性物質である。
【0020】
加えて、本発明は、結合組織型肥満細胞の増殖集団をスクリーニングする方法を包含する。このスクリーニング方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し、このCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を形成させ、この結合組織型肥満細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし、そしてこの結合組織型肥満細胞の増殖集団を、変化した表現型を有する肥満細胞に関して評価することを含む。この評価は、例えばトリプターゼまたはヘキソースアミニダーゼについて検定することにより、または当分野で知られるその他様々な検定により実施できる。
【0021】
本方法のさらなる側面は、候補生物活性物質のライブラリーを結合組織型肥満細胞の増殖集団に添加することを含む。さらに別の側面では、この候補生物活性物質は小分子候補生物活性物質である。
【0022】
さらに別の側面では、本発明は、好塩基細胞の増殖集団をスクリーニングする方法を包含する。このスクリーニング方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し、このCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を形成させ、この好塩基細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし、そしてこの好塩基細胞の増殖集団を、変化した表現型を有する好塩基細胞に関して評価することを含む。この評価はトリプターゼまたはヘキソースアミニダーゼについて検定することにより実施できる。この評価は例えばトリプターゼまたはヘキソースアミニダーゼについて検定することにより、または当分野で知られるその他様々な検定により実施できる。
【0023】
変化した表現型とは、肥満細胞の該増殖集団または好塩基細胞の該増殖集団のうち少なくとも1個の細胞の脱顆粒の減少であってよい。変化した表現型とはさらに、少なくとも1個の細胞の、ロイコトリエンを産生する能力またはデノボ合成されるサイトカインを産生する能力における変化であってよい。本方法のさらなる側面は、変化した表現型を惹起する候補生物活性物質を単離する事を含む。
【0024】
本方法のさらなる側面は、候補生物活性物質のライブラリーを好塩基細胞の増殖集団に添加することを含む。さらに別の側面では、この候補生物活性物質は小分子候補生物活性物質である。
【0025】
本発明に係る候補生物活性物質はペプチドであってよい。幾つかの側面では、スクリーニングは、このペプチドをコードしている核酸を、本発明に係る肥満細胞または好塩基細胞に導入することによって実施する。本発明の幾つかの態様では、このペプチドはランダムまたは偏倚ランダムペプチドである。このペプチドは或いはcDNAから、gDNAから、またはmRNAから誘導することができる。
【0026】
本発明で使用するflt-3リガンドは配列番号1またはそのフラグメントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有することができる。本発明に係る幹細胞因子は配列番号2またはそのフラグメントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有することができる。本方法に係るIL-6は配列番号3またはそのフラグメントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有することができる。本方法に係るIL-4は配列番号4またはそのフラグメントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有することができる。本方法に係るIL-3は配列番号5またはそのフラグメントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有することができる。
【0027】
本発明に係る細胞の増殖集団は108-1011の細胞を含み得る。故に、優先的に少なくとも108の細胞、より好ましくは少なくとも109の細胞、さらに好ましくは少なくとも1010の細胞、そして最も好ましくは少なくとも1011の細胞のサイズである、CD34陰性細胞の集団もまた本発明において提供する。優先的に少なくとも108の細胞、より好ましくは少なくとも109の細胞、さらに好ましくは少なくとも1010の細胞、そして最も好ましくは少なくとも1011の細胞のサイズである、粘膜肥満細胞の集団もまた本発明において提供する。優先的に少なくとも108の細胞、より好ましくは少なくとも109の細胞、さらに好ましくは少なくとも1010の細胞、そして最も好ましくは少なくとも1011の細胞のサイズである、結合組織型肥満細胞の集団もまた本発明において提供する。優先的に少なくとも108の細胞、より好ましくは少なくとも109の細胞、さらに好ましくは少なくとも1010の細胞、そして最も好ましくは少なくとも1011の細胞のサイズである、好塩基細胞の集団もまた提供する。
【0028】
本発明は増殖した細胞集団を包含する。即ち、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を形成させることによって製造した、粘膜肥満細胞の増殖集団が、本発明の一つの側面である。
【0029】
加えて、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を形成させることによって製造した、結合組織型肥満細胞の増殖集団が、本発明のもう一つの側面である。
【0030】
少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を形成させることによって製造した、好塩基細胞の増殖集団が、本発明のさらなる側面である。或る態様では、この好塩基細胞はマーカーCD11b、CD13およびCD25について陽性であるがCD14、CD54およびCD117については陰性である。好ましい態様では、この好塩基球は高親和性IgEレセプターを有するという特徴を持つ。
【0031】
好ましい態様では、単一集団の細胞は全て、1つの個体の細胞から誘導しまたは該細胞から拡張する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、候補物質、例えば小分子、ペプチドまたはcDNAフラグメント等のスクリーニングにおける使用に好適な、CD34陰性前駆細胞、肥満細胞および好塩基細胞の増殖集団を作製するための方法を提供するものである。さらに本発明は、本発明に係る増殖集団をスクリーニングする方法を提供する。さらに本発明は、記載した方法により作製した増殖細胞を包含する。
【0033】
本発明は、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を生成する方法を提供する。本方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製する事を含む。本発明に係るCD34陰性前駆細胞は、造血細胞、例えば肥満細胞または好塩基細胞のスクリーニングまたは生成に有用である。
【0034】
「先祖」細胞、または「前駆」細胞とは、特異的に最終分化細胞型へと分化または成熟することのできる細胞である。本発明に係るCD34陰性前駆体とは、SCFおよびflt-3による処理が、CD34陽性細胞からCD34陰性細胞への変換を仲介した細胞である。さらに、本発明に係るCD34陰性前駆細胞は、粘膜肥満細胞、結合組織型肥満細胞または好塩基細胞に分化できる。したがって一つの態様では、この増殖集団のCD34陰性前駆細胞は粘膜肥満細胞前駆体である。別の態様では、CD34陰性前駆細胞は結合組織型前駆細胞である。さらに別の態様では、CD34陰性前駆細胞は好塩基球前駆細胞である。
【0035】
本発明に係る方法は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させることを含む。「CD34陽性」または「CD34+」細胞とは、CD34に特異的な抗体が認識し結合するCD34表面抗原を発現する細胞である。CD34は早期造血細胞の表現型マーカーである。CD34は見掛けの分子量105kDAないし120kDaの単量体I型内在性貫膜糖蛋白である。この蛋白は、9個までの複合N型グリカンおよび高度にシアリル化された多数のO結合グリカンによってかなりグリコシル化された、373アミノ酸バックボーンである。例えばJ.Biol.Regul.Homeost.Agents, Jan-Mar.;15(1):1-13(2001);Rev.Clin.Exp.Hematol.Mar; 5(1):42-61(2001)を参照されたく、これらはいずれも引用により本明細書の一部とする。CD34抗原の表面発現を検出するための幾つかのCD34モノクローナル抗体が市販されている。
【0036】
CD34+細胞は下記のような哺乳動物CD34+細胞であってよい。好ましくは本発明に係るCD34+細胞は齧歯類CD34+細胞である。より好ましくはCD34+細胞はヒトCD34+細胞である。
CD34+細胞は種々の組織または血液材料から取得できる。或る態様ではCD34+細胞を骨髄から取得する。好ましい態様では、CD34+細胞を血液から取得する。より好ましい態様ではCD34+細胞を臍帯血から取得する。
【0037】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドと接触させることを含む、CD34陰性細胞の増殖集団を作製するための方法を提供する。「flt-3リガンド」とはflt-3(「CD135」または「flk2」とも言う)に結合するポリペプチドである。flt-3は、CD34+細胞を包含する前駆細胞および幹細胞上に一般的に見出されるレセプター分子である。
【0038】
完全長ヒトflt-3リガンドおよび他の哺乳動物からクローニングまたは精製されたそれは、細胞外ドメイン、貫膜ドメインおよび細胞内ドメインを含む。
したがって、flt-3リガンドはflt-3リガンドの貫膜型であってよい。さらに、flt-3リガンドは細胞内ドメインをも含み得る。好ましい態様では、flt-3リガンドは可溶性であり、そして完全長細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは、flt-3リガンドは配列番号1の配列を有する。
【0039】
加えて、flt-3リガンドは配列番号1の生物活性フラグメントを包含し得る。本発明の目的のための「生物活性」とは、flt-3リガンドがflt-3を発現している細胞に結合できることを意味する。さらに、「生物活性」とは以下の活性のうち1またはそれ以上を包含し得る:インビトロで細胞増殖を刺激できる;インビボで前駆細胞の拡張および動員を刺激できる;CD117(c-kit)のような他の因子と相乗作用して増殖能を増大させる事ができる;および、インビボで樹状細胞およびナチュラルキラー細胞の産生を増大させることにより免疫系を活性化できる。
【0040】
flt-3リガンドはさらに、配列番号1の生物活性変異体またはそのフラグメントを包含できる。「flt-3リガンド変異体」とは、配列番号1と実質上相同的なポリペプチドまたはそのフラグメントを指す。flt-3リガンド変異体は配列番号1またはそのフラグメントに比較して1またはそれ以上の欠失、挿入または置換を持っていてよい。flt-3リガンド変異体は好ましくは天然flt-3リガンドアミノ酸配列と少なくとも80%一致し、より好ましくは少なくとも90%一致する。幾つかの場合、この一致は95-98%にもなる。
一致パーセントの決定は標準法による。変異体は標準法によって製造し、または天然に存在する。
【0041】
flt-3リガンドは様々な供給源から得られる。或る態様では、flt-3リガンドは下記のような哺乳動物flt-3リガンドである。好ましくはflt-3リガンドはマウス由来のものである。より好ましくはflt-3リガンドはヒト由来のものである。
【0042】
flt-3リガンドは或る範囲の濃度で1またはそれ以上のCD34+細胞に供給できる。好ましくはflt-3リガンドを5-40ng/mlで供給する。より好ましくはflt-3リガンドを10-30ng/mlで供給する。さらに好ましくはflt-3リガンドを20ng/mlで供給する。最も好ましくは配列番号1のflt-3リガンドを20ng/mlで供給する。
【0043】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させることを含む、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製する方法を提供するものである。「幹細胞因子」(「SCF」、「c-kitリガンド」または「スティール因子」とも言う)は造血増殖因子、または造血の初期に働くサイトカインであり、メラニン産生と受精能にとって必須でもある。天然SCFは貫膜型または可溶性型のいずれかとして骨髄ストロマ細胞によって合成される。SCFはスティール座遺伝子から誘導され、c-kitプロトオンコジーン産物に対するリガンドとして結合し、未熟な造血細胞のコロニー成長を促進し、そして肥満細胞の発達を支援する。SCFは造血階層の複数のレベルで作用して、細胞の生存、増殖、分化、接着および機能活性化を促進する。それは肥満細胞および赤血球系統で特に重要であるのみならず、多能性幹細胞および前駆細胞、巨核球、ならびにリンパ系前駆体の部分集合にも作用する。
【0044】
本発明の目的のため、「幹細胞因子」とは、貫膜または可溶性型の両者、またはそれらの変異体もしくはフラグメントを指す。好ましくは本発明に係る幹細胞因子は配列番号2の配列を有する。
【0045】
さらに、幹細胞因子は配列番号2の生物活性フラグメントを包含できる。本発明の目的のための「生物活性」とは、幹細胞因子がCD34+細胞に肥満細胞への分化を惹起できる事;或いはこの幹細胞因子が、IL-6と合した時に、増殖したCD34陰性前駆細胞に肥満細胞への分化を惹起できる事を意味する。
【0046】
幹細胞因子はまた、配列番号2またはそのフラグメントの生物活性変異体を包含する。「幹細胞因子変異体」とは、配列番号2またはそのフラグメントと実質上相同的なポリペプチドを指す。幹細胞因子変異体は配列番号2またはそのフラグメントと比較して1またはそれ以上の欠失、挿入または置換を持つことができる。幹細胞因子変異体は好ましくは天然幹細胞因子アミノ酸配列と少なくとも80%一致し、より好ましくは少なくとも90%一致する。幾つかの場合、この一致は95-98%もの高値である。
【0047】
幹細胞因子は下記のように齧歯類およびヒトを包含する哺乳動物から誘導できる。好ましくは本発明に係る幹細胞因子は齧歯類から誘導する。より好ましくは本発明に係る幹細胞因子はヒト幹細胞因子である。
【0048】
本発明に係る幹細胞因子は種々の濃度でCD34陽性細胞またはCD34陰性前駆細胞と接触させることができる。好ましくは幹細胞因子を20ng/mlないし300ng/mlで供給する。より好ましくは本発明に係る幹細胞因子を150ng/mlないし250ng/mlで供給する。さらに好ましくは幹細胞因子を200ng/mlで供給する。最も好ましくは配列番号2の幹細胞因子を200ng/mlで供給する。
【0049】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させることを含む、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製する方法を提供するものである。
【0050】
本発明は、CD34陽性細胞を臍帯血から取得する場合の方法を包含する。好ましくはこの臍帯血は1つの個体から取得する。好ましくは臍帯血は哺乳動物臍帯血である。より好ましくはこれは齧歯類臍帯血である。最も好ましくは本発明に係る臍帯血はヒト臍帯血である。
【0051】
好ましい態様では、CD34陰性前駆細胞の増殖集団は、1つの個体または患者由来の細胞から拡張または誘導する。或る態様では、この1つの個体または患者は、喘息またはその他の肥満細胞の脱顆粒を含む病態を持つ者である。別の態様では、この1つの個体は、好塩基球の脱顆粒を含む病態を持つ者である。「1つの個体から誘導された」とは、その細胞が1つの個体から取得した血液または組織試料から増殖または培養されていることを意味する。好ましくは、1個の試料を1つの個体から採取する。より好ましくは、1個の試料を1つの個体の臍帯血から取得する。
【0052】
別の態様では、本発明に係る増殖細胞集団を多数の個体から拡張できる。
CD34陰性前駆細胞の増殖集団は1つの個体から誘導した少なくとも106の細胞の集団であり;より好ましくは、この増殖集団は1つの個体から誘導した少なくとも107の細胞を含み;さらに好ましくは、この増殖集団は1つの個体から誘導した少なくとも108の細胞を含む。最も好ましくはこの増殖細胞は1つの個体から誘導した少なくとも109の細胞を含む。幾つかの態様では、この増殖集団は1つの個体から誘導した少なくとも1010の細胞を含む。尚別の態様では、この増殖集団は1つの個体から誘導した少なくとも1011の細胞を含む。所望の集団の大きさは、意図する個別的用途に関係する様々な因子に依存するであろう。所望の大きさは例えば、実施しようとする検定の種類、スクリーニングされる候補物質当たりの使用細胞数、および与えられたスクリーニングで使用する候補物質の数に依存し得る。
【0053】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;そして、このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の最終分化集団を形成させることを含む、粘膜肥満細胞の増殖集団を作製するための方法を提供する。
【0054】
本発明方法は、CD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を形成させる事を規定する。本明細書中、「粘膜の」、「粘膜型」、「気道」、または「気道型」肥満細胞とは、肺から得られる肥満細胞に特有の肥満細胞を指す。粘膜肥満細胞は、高親和性IgEの特異的結合およびIgEレセプターと抗IgE抗体の架橋時の顆粒放出;ヒスタミンを含有する顆粒を有する事;キマーゼの放出がない事、ならびにトリプターゼの放出を特徴とする。好ましくは、本発明に係る粘膜肥満細胞は、トリプターゼ/キマーゼ陽性(結合組織)表現型に対してトリプターゼ陽性/キマーゼ陰性表現型を示す。
【0055】
本発明方法は、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4、IL-6、またはIL-3と接触させることを規定する。「IL-6」とは、IL-1およびTNFに応答して単核貪食細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞およびその他の細胞によって合成され、Bリンパ球に影響を及ぼすことが知られているサイトカインである、インターロイキン6を指す。Abbas,A.K., et al., eds., CELLULAR AND MOLECULAR IMMUNOLOGY, Second Ed., W.B.Saunders Co., Philadelphia,(1994) pp.250-251を参照されたい。
【0056】
したがって好ましい態様では、本発明に係るIL-6は可溶性である。さらに好ましくはIL-6は配列番号3の配列を有する。
【0057】
さらに、IL-6は配列番号3の生物活性フラグメントを包含できる。本発明の目的のための「生物活性」とは、IL-6が、増殖したCD34陰性前駆細胞から粘膜肥満細胞への分化を増強できることを意味する。「生物活性」とはさらに、以下の事のうち1またはそれ以上を包含できる:破骨細胞の形成を刺激できる;破骨細胞の活性増大を刺激できる;および、腫瘍細胞のための増殖因子として作用できる。
【0058】
IL-6はさらに、配列番号3またはそのフラグメントの生物活性変異体を包含できる。「IL-6変異体」とは、配列番号3またはそのフラグメントと実質上相同的なポリペプチドを指す。IL-6変異体は配列番号3またはそのフラグメントに比較して1またはそれ以上の欠失、挿入または置換を持ち得る。IL-6変異体は好ましくは天然IL-6アミノ酸配列と少なくとも80%一致し、より好ましくは少なくとも90%一致する。幾つかの場合、一致は95-98%にもなる。
【0059】
IL-6は様々な供給源から得られる。或る態様では、下記のようにIL-6は哺乳動物IL-6である。好ましくはIL-6は齧歯類由来のものである。より好ましくはIL-6はヒト由来である。
【0060】
IL-6は或る範囲の濃度でCD34陰性前駆細胞の増殖集団に供給できる。好ましくはIL-6を20-300ng/mlで供給する。より好ましくはIL-6を150-250ng/mlで供給する。さらに好ましくはIL-6を200ng/mlで供給する。最も好ましくは配列番号3のIL-6を200ng/mlで供給する。
【0061】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;そして、このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の最終分化集団を形成させることを含む、結合組織型肥満細胞の増殖集団を作製するための方法を提供する。
【0062】
本発明方法は、CD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を形成させる事を規定する。本明細書中、「結合組織型」肥満細胞または「皮膚肥満細胞」とは、結合組織、例えば皮膚、リンパ節および腸管粘膜下組織から得られる肥満細胞に特有の肥満細胞を指す。結合組織型肥満細胞は、高親和性IgEの特異的結合およびIgEレセプターと抗IgE抗体の架橋時の顆粒放出;粘膜肥満細胞に比して比較的高レベルのヒスタミンを含有する顆粒を有する事;ならびにキマーゼおよびトリプターゼ両者の放出を特徴とする。好ましくは、本発明に係る結合組織型肥満細胞はトリプターゼ/キマーゼ陽性(結合組織)表現型を示す。
【0063】
本発明の幾つかの態様では、本方法はCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させることを規定する。「IL-4」とは、4-αヘリックスサイトカインファミリーの一員でありアレルギー反応の重要な調節物質であるインターロイキン4を指す。
【0064】
したがって好ましい態様では、本発明に係るIL-4は可溶性である。さらに好ましくはIL-4は配列番号4の配列を有する。
【0065】
さらに、IL-4は配列番号4の生物活性フラグメントを包含できる。本発明の目的のための「生物活性」とは、IL-4が、増殖したCD34陰性前駆細胞から結合組織型肥満細胞への分化を増強できることを意味する。「生物活性」とはさらに、以下の事のうち1またはそれ以上を包含できる:B細胞の増殖および活性化を惹起できる、Th1細胞の分化とインターフェロンYの産生を阻害できる、Th2細胞またはCD8+ T細胞の分化を刺激できる、および/またはナチュラルキラー細胞の増殖を阻害できる。
【0066】
IL-4はさらに、配列番号4またはそのフラグメントの生物活性変異体を包含できる。「IL-4変異体」とは、配列番号4またはそのフラグメントと実質上相同的なポリペプチドを指す。IL-4変異体は配列番号4またはそのフラグメントに比較して1またはそれ以上の欠失、挿入または置換を持ち得る。IL-4変異体は好ましくは天然IL-4アミノ酸配列と少なくとも80%一致し、より好ましくは少なくとも90%一致する。幾つかの場合、一致は95-98%にもなる。
【0067】
IL-4は様々な供給源から得られる。或る態様では、下記のようにIL-4は哺乳動物IL-4である。好ましくはIL-4は齧歯類由来のものである。より好ましくはIL-4はヒト由来である。
【0068】
IL-4は或る範囲の濃度でCD34陰性前駆細胞の増殖集団に供給できる。好ましくはIL-4を20-300ng/mlで供給する。より好ましくはIL-4を150-250ng/mlで供給する。さらに好ましくはIL-4を200ng/mlで供給する。最も好ましくは配列番号3のIL-4を200ng/mlで供給する。
【0069】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性(CD34+)細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;そして、このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させて結合組織型肥満細胞の最終分化集団を形成させることを含む、好塩基細胞の増殖集団を作製するための方法を提供する。
【0070】
本発明方法は、CD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を形成させる事を規定する。
【0071】
本発明の或る態様では、本方法はCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させることを規定する。「IL-3」とは、4-αヘリックスサイトカインファミリーのもう一つの成員であるインターロイキン3を指す。IL-3はまた、多系統コロニー刺激因子として知られ、既知の全ての成熟細胞型へと分化する細胞の拡張を促進することに関わっている。
【0072】
したがって好ましい態様では、本発明に係るIL-3は可溶性である。さらに好ましくはIL-3は配列番号5の配列を有する。
【0073】
さらに、IL-3は配列番号3の生物活性フラグメントを包含できる。本発明の目的のための「生物活性」とは、IL-3が、増殖したCD34陰性前駆細胞から好塩基細胞への分化を増強できることを意味する。「生物活性」とはさらに、骨髄培養からの巨核球、好中球、またはマクロファージのコロニー形成を刺激する能力をも包含する。IL-3、IL-4、IL-6、および幹細胞因子のさらなる活性については、Busse,W.W., et al., N.Engl.J.Med. 344:350-62(2001年2月)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
【0074】
IL-3はさらに、配列番号5またはそのフラグメントの生物活性変異体を包含できる。「IL-3変異体」とは、配列番号5またはそのフラグメントと実質上相同的なポリペプチドを指す。IL-3変異体は配列番号5またはそのフラグメントに比較して1またはそれ以上の欠失、挿入または置換を持ち得る。IL-3変異体は好ましくは天然IL-3アミノ酸配列と少なくとも80%一致し、より好ましくは少なくとも90%一致する。幾つかの場合、一致は95-98%にもなる。
【0075】
IL-3は様々な供給源から得られる。或る態様では、下記のようにIL-3は哺乳動物IL-3である。好ましくはIL-3は齧歯類由来のものである。より好ましくはIL-3はヒト由来である。
【0076】
IL-3は或る範囲の濃度でCD34陰性前駆細胞の増殖集団に供給できる。好ましくはIL-3を20-50ng/mlで供給する。或いはIL-3を20-40ng/mlで供給する。さらに別の態様ではIL-3を30-50ng/mlで供給する。
【0077】
「成熟」とは、本発明に係る肥満細胞または好塩基細胞が、組織から精製された細胞がそうであるように脱顆粒検定に応答することを意味する。「成熟」細胞は一般に非分割性であり、即ちこれらは最終分化している。本発明の目的のための「成熟」粘膜肥満細胞は、例えば完全に機能的な粘膜型肥満細胞である。
【0078】
「成熟」した肥満細胞および好塩基細胞は、活性化される能力を持っている。或る態様では、活性化した肥満細胞または好塩基球は、脱顆粒する細胞である。別の態様では、活性化した肥満細胞または好塩基細胞は、サイトカインを産生する細胞である。幾つかの態様では、活性化はIgEレセプターとの架橋による。別の態様では、活性化は他の生理的刺激による。
【0079】
本発明は、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6、IL-4またはIL-3と接触させる方法を包含する。好ましくはこのCD34陰性前駆細胞は、flt-3リガンドを含有する培養基から取り出し、本質上flt-3リガンドが培養基中に残存しないよう、幹細胞因子およびサイトカインを含有する培地に移す。換言すれば、CD34陰性前駆細胞とSCFおよびIL-6、IL-4またはIL-3との接触は、好ましくは実質上flt-3リガンドを含まない培地を用いて実施する。或いはこの前駆体を、flt-3リガンドを全く含有しない培地を用いて接触させる。
【0080】
上に指摘したように、本発明はflt-3リガンド、幹細胞因子、IL-6、IL-4、IL-3およびCD34陽性細胞(群)(これらのいずれかまたは全てが哺乳動物から誘導できる)を使用する方法を包含する。哺乳動物である供給源は、齧歯類(ラット、マウス、ハムスター、モルモット等)、霊長類、または農場の動物(羊、山羊、豚、牛、馬等)を包含できる。哺乳動物供給源はさらに、バッファロー、シカ、ウサギ、ミンク、有袋類、またはイルカおよびクジラを包含する海洋哺乳類を包含できる。
【0081】
本発明方法に従って製造した細胞もまた包含される。或る態様によればこの細胞は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製することにより;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させることにより製造した、粘膜肥満細胞の増殖集団である。得られた集団は粘膜肥満細胞の増殖集団である。
【0082】
別の態様によればこの細胞は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製することにより;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させることにより製造した、結合組織型肥満細胞の増殖集団である。このようにして作製した細胞は結合組織型肥満細胞の増殖集団である。
【0083】
造血細胞は、CDマーカー蛋白の表面マーカー発現または種々のIgもしくはIgレセプター分子の表面マーカー発現に基づいて識別できる。例えば、粘膜および結合組織型肥満細胞は典型的には、高親和性IgEレセプター、CD54およびCD117の表面発現について陽性であり、そしてCD15、CD34、CD25およびCD11bの表面発現について陰性である。いずれの型の肥満細胞もCD13およびCD14マーカーについては陽性であるかも知れないし陰性であるかも知れない。即ち、本発明に係る粘膜肥満細胞は好ましくはCD34陰性細胞であり、高親和性IgEレセプター分子を発現する。好ましくは粘膜肥満細胞はCD54およびCD117をも発現する。好ましくは本発明に係る粘膜肥満細胞はさらに、有意なレベルのCD25またはCD11bを発現しない。幾つかの態様では本発明に係る粘膜肥満細胞はさらに、CD15およびCD34の発現について陰性である。
【0084】
加えて、本発明に係る結合組織型肥満細胞は、好ましくはCD34陰性細胞であり、高親和性IgEレセプター分子を発現する。好ましくはこの結合組織型肥満細胞はさらに、CD54およびCD117を発現する。好ましくは本発明に係る結合組織型肥満細胞はまた、有意なレベルのCD25またはCD11bを発現しない。幾つかの態様では、本発明に係る結合組織型肥満細胞はさらに、CD15およびCD34の発現について陰性でもある。
【0085】
さらに別の態様によれば、この細胞は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製することにより;そしてこのCD34陰性前駆細胞の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させることによって製造した、好塩基細胞の増殖集団である。得られる増殖集団は好塩基細胞の増殖集団である。
【0086】
好塩基球は、高親和性IgEの特異的結合およびIgEレセプターと抗IgE抗体の架橋時の顆粒放出、ならびに例えばヒスタミンおよびヘパリンを含有する顆粒を有する事を特徴とする。好塩基球は典型的にはCD11b、CD13およびCD25の表面発現について陽性であるが、CD14およびCD117の発現については陰性である。例えばValent,P. et al., Adv.Immunol. 52:335-339(1992);およびAgis, et al., Immunol. 87:535-43(1996)を参照されたく、これらは引用により本明細書の一部とする。したがって或る態様では、本発明に係る好塩基球はCD11b陽性であり、CD13陽性であり、そしてCD25陽性である。別の態様では、本発明に係る好塩基球はCD14陰性でありCD117陰性である。本発明に係る好塩基球はまた、CD54陽性でもある。
【0087】
上に論じた表面マーカー発現パターンは記載の具体的実施例に限定されないことが、当業者には理解できるであろう。例えば、血液から単離した好塩基球は、培養中に発達した好塩基球に比して多少異なるマーカー発現パターンを有するかも知れない。さらに、好塩基球、結合組織型肥満細胞および粘膜肥満細胞のマーカー発現パターンには、例えば細胞の供給源、培養条件、抗体製造の変動性等に依存して変動性があるかも知れない。加えて、肥満細胞に関しては、それらが存在している個別的深部組織微小環境がそれらの表面マーカー発現パターンに影響を及ぼす。したがって、肥満細胞の究極的「運命」(マーカーの性格)はそれらを取り巻く細胞によって決定される。
【0088】
いったん製造されたならば、増殖集団の組成物には様々な適用が見出せる。例えば、好ましい態様では、この増殖細胞を高スループットスクリーニング(HTS)法に使用する。
【0089】
本発明は、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を形成させ;この肥満細胞を少なくとも1つの候補生物活性物質を用いてスクリーニングし;そしてこの肥満細胞を、変化した表現型を持つ肥満細胞について評価することを含む、粘膜肥満細胞の集団をスクリーニングする方法を包含する。
【0090】
本発明はさらに、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を形成させ;この肥満細胞を少なくとも1つの候補生物活性物質を用いてスクリーニングし;そしてこの肥満細胞を、変化した表現型を持つ肥満細胞について評価することを含む、結合組織型肥満細胞の集団をスクリーニングする方法を包含する。
【0091】
本発明はさらに、少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆体の増殖集団を作製し;このCD34陰性前駆体の増殖集団を幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を形成させ;この好塩基細胞を少なくとも1つの候補生物活性物質を用いてスクリーニングし;そしてこの好塩基細胞を、変化した表現型を持つ好塩基細胞について評価することを含む、好塩基細胞の集団をスクリーニングする方法を包含する。
【0092】
好ましい態様では、候補生物活性物質を、エキソサイトーシスを調節する能力についてスクリーニングするために、本発明を使用する。候補生物活性物質は、エキソサイトーシスが刺激される前、最中または後に(好ましくは前に)細胞集団と合することができる。幾つかの例では、細胞に及ぼす候補生物活性物質(本明細書中「候補物質」とも称する)の影響(ここではエキソサイトーシスが誘導されないまたはエキソサイトーシスが阻害される)を決定することが望ましい。候補生物活性物質は細胞集団に外部から添加することができ、または本明細書にさらに記載するように細胞内に導入することもできる。
【0093】
本明細書中使用する「候補生物活性物質」または「外因性化合物」は、任意の分子、例えば蛋白、オリゴペプチド、有機小分子、多糖類、ポリヌクレオチドを表現している。一般に、様々な濃度に対する異なる反応を得るため、異なる物質濃度を用いて多数の検定混合物を並行してランする。典型的にはこれらの濃度のうち1つ、即ち濃度零または検出レベル以下が負の対照としての役割を有する。
【0094】
候補物質は多数の化学クラスを包含するが、典型的にはこれらは有機分子、好ましくは100より大きく約2500ダルトンより小さな分子量を有する小さな有機化合物である。候補物質は蛋白との構造的相互作用に必要な官能基、特に水素結合を含み、典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシまたはカルボキシ基、好ましくは該化学官能基のうち少なくとも2個を含む。候補物質はしばしば、1またはそれ以上の上記官能基で置換された、環状炭素もしくはヘテロ環構造および/または芳香族もしくはポリ芳香族構造を含む。候補物質はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、これらの誘導体、構造類似体または組み合わせを包含する生体分子の中に見出される。ペプチドが特に好ましい。
【0095】
本発明は、候補生物活性物質のライブラリーを肥満細胞の集団に添加する、本明細書記載の方法を包含する。
【0096】
候補物質は合成または天然化合物のライブラリーを包含する多岐にわたる供給源から取得する。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を包含する、多様な有機化合物および生体分子のランダムなおよび方向性を持った合成のための多くの手段が利用できる。別法として、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形の天然化合物のライブラリーが利用でき、または容易に製造できる。加えて、天然のまたは合成により作製したライブラリーおよび化合物は、常套的化学的、物理的および生化学的手段によって容易に修飾できる。既知の薬理物質を、方向性のあるまたはランダムな化学修飾、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化に付して構造類似体を作製することができる。
【0097】
好ましい態様では、候補生物活性物質は蛋白である。本明細書中の「蛋白」とは、少なくとも2個の共有結合したアミノ酸を意味し、蛋白、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを包含する。蛋白は天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチド疑似構造でできていてよい。したがって本明細書で使用する「アミノ酸」または「ペプチド残基」とは、天然に存在するアミノ酸と合成アミノ酸の両者を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは本発明の目的のためのアミノ酸であると考える。「アミノ酸」はさらに、プロリンおよびヒドロキシプロリンのようなイミノ酸残基をも包含する。側鎖は(R)または(S)配置のいずれかであってよい。好ましい態様では、アミノ酸は(S)またはL配置である。天然に存在しない側鎖を使用する場合、例えばインビボ分解を防止または遅延させるため、非アミノ酸置換基を使用することができる。
【0098】
好ましい態様では、候補生物活性物質は天然に存在する蛋白または天然に存在する蛋白のフラグメントである。したがって、例えば蛋白を含有する細胞抽出物、または蛋白性細胞抽出物のランダムなまたは目的にかなった消化物を使用することができる。このようにして、本明細書に記載の系でスクリーニングするための、原核生物および真核生物の蛋白のライブラリーが作製できる。この態様で特に好ましいのは、細菌、真菌、ウイルス、および哺乳動物蛋白のライブラリーであり、哺乳動物のライブラリーが好ましく、ヒト蛋白が特に好ましい。
【0099】
本発明は、候補生物活性物質がペプチドであり、そのペプチドがランダムペプチドである、本明細書記載の方法を包含する。
【0100】
好ましい態様では、候補生物活性物質は約5ないし約30アミノ酸のペプチドであり、約5ないし約20アミノ酸が好ましく、約7ないし約15が特に好ましい。このペプチドは、上に概説した天然に存在する蛋白の消化物、ランダムペプチド、または「偏倚した」ランダムペプチドであってよい。本明細書中の「ランダム化した」または文法的同等語句は、各々の核酸およびペプチドがそれぞれ本質上ランダムなヌクレオチドおよびアミノ酸より成ることを意味している。一般にこれらのランダムペプチド(または下に論ずる核酸)は化学合成されるため、これらは任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を任意の位置に組み込むことができる。ランダム化した蛋白または核酸を作製するための合成工程を設計して、その配列の長さ全体にわたり可能な組み合わせの全部または殆どを作製でき、そのようにして、ランダム化した候補生物活性蛋白物質のライブラリーを形成させることができる。
【0101】
或る態様では、このライブラリーは完全にランダム化され、いかなる位置においても配列の優先性または不変性は無い。好ましい態様では、このライブラリーは偏倚している。即ち、配列内の幾つかの位置は一定に維持されるか、または限られた数の可能性から選択される。例えば、好ましい態様では、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、例えば疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的に偏った(小さいまたは大きい)残基、システインが創成される方向の、架橋のため、SH-3ドメインのためのプロリン、燐酸化部位等のためのセリン、スレオニン、チロシンまたはヒスチジン、またはプリンに対して、定められたクラス内でランダム化される。
【0102】
好ましい態様では、候補生物活性物質は核酸である。本明細書中の「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または文法的同等語句は、共有結合した少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。本発明に係る核酸は一般にホスホジエステル結合を含むが、幾つかの例では、下に概説するように、例えばホスホロアミド(Beaucage, et al., Tetrahedron, 49(10):1925(1993)およびその参考文献;Letsinger, J.Org.Chem., 35:3800(1970); Sprinzl, et al., Eur.J.Biochem., 81:579(1977); Letsinger, et al., Nucl.Acids Res., 14:3487(1986);Sawai, et al., Chem.Lett., 805(1984), Letsinger, et al., J.Am.Chem.Soc., 110:4470(1988);およびPauwels, et al., Chemica Scripta, 26:141(1986))、ホスホロチオアート(Mag, et al., Nucleic Acids Res., 19:1437(1991);および米国特許第5644048号)、ホスホロジチオアート(Briu, et al., J.Am.chem.Soc., 111:2321(1989))、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照されたい)、およびペプチド核酸バックボーンおよび結合(Egholm, J.Am.Chem.Soc., 114:1895(1992);Meier, et al., Chem.Int.Ed.Engl., 31:1008(1992);Nielsen, Nature, 365:566(1993);Carlsson, et al., Nature, 380:207(1996)、これらは全て引用により本明細書の一部とする))を含む代替バックボーンを有する核酸類似体を包含する。その他の類似体核酸は、正のバックボーンを持つもの(Denpcy, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 92:6097(1995));非イオン性バックボーンを持つもの(米国特許第5386023;5637684;5602240;5216141;および4469863号;Kiedrowshi, et al., Angew.Chem.Intl.Ed. English, 30:423(1991);Letsinger, et al., J.Am.Chem.Soc., 110:4470(1988);Letsinger, et al., Nucleoside & Nucleotide, 13:1597(1994);Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580,“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S.Sanghui and P.Dan Cook;Mesmaeker, et al., Bioorganic & Medicinal Chem.Lett., 4:395(1994);Jeffs, et al., J.Biomolecular NMR, 34:17(1994);Tetrahedron Lett., 37:743(1996))および非リボースバックボーンを持つもの(米国特許第5235033および5034506号ならびにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580,“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S.Sanghui and P.Dan Cookに記載のものを包含する)を包含する。1またはそれ以上の炭素環式糖類を含む核酸もまた核酸の定義内に包含される(Jenkins, et al., Chem.Soc.Rev.,(1995)pp.169-176)。幾つかの核酸類似体がRawls,C & E News, June 2, 1997, page 35に記載されている。これらの参考文献は全て引用により本明細書の一部とする。これらのリボース-燐酸バックボーンの修飾を行って、標識のようなさらなる部分の付加を容易にし、または生理的環境における係る分子の安定性および半減期を増大させることができる。
【0103】
加えて、天然に存在する核酸と類似体の混合物も作製できる。或いは、異なる核酸類似体の混合物、および天然に存在する核酸と類似体の混合物が作製できる。核酸は、特記したように一本鎖であっても二本鎖であってもよく、または二本鎖もしくは一本鎖配列両方の一部分を含んでいてもよい。核酸はDNA(ゲノムおよびcDNAの両者)、RNAまたはハイブリッドであってよく、ここでこの核酸はデオキシリボおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キササニン、ヒポキササニン、イソシトシン、イソグアニン等を包含する塩基の任意の組み合わせを含む。
【0104】
蛋白について一般的に上に記載したように、核酸候補生物活性物質は天然に存在する核酸、ランダム核酸、または「偏倚した」ランダム核酸であってよい。例えば、蛋白について上に概説したように、原核生物または真核生物ゲノムの消化物を使用することができる。
【0105】
好ましい態様では、候補生物活性物質は有機化学部分であり、極めて多様な該物質が文献上で入手できる。
好ましい態様では、異なる候補生物活性物質のライブラリーを使用する。好ましくはこのライブラリーは、確率的に特定の標的との結合を可能にするに充分な範囲の多様性を提供するために、構造的に充分多様なランダム化した物質の集団を提供すべきである。したがって、その成員の少なくとも1つが標的に対する親和性を与える構造を有するようになるよう、候補生物活性物質のライブラリーは充分大きくなければならない。候補生物活性物質ライブラリーが必要とする絶対的サイズを判断することは困難であるが、自然は免疫反応について1つのヒントを提供している:107-108の異なる抗体という多様性は、或る生物の直面する最も可能性ある抗原と相互作用するに充分な親和性を持つ少なくとも1つの組み合わせを提供する。公表されているインビトロ選択技術はさらに、107ないし108のライブラリーサイズであれば、標的に対する親和性を持つ構造の発見にとって充分であることを示している。本明細書に一般的に提起されたような7ないし20アミノ酸長のペプチドの全組み合わせを持つライブラリーは、207ないし2020の異なる物質をコードしている可能性を有する。したがって、107ないし108の異なる分子を持つライブラリーを用いて、本方法は、7アミノ酸のための理論的に完全な相互作用ライブラリーの「作業」部分集合、および2020のライブラリーのための形状の部分集合を実現する。したがって好ましい態様では、少なくとも106、好ましくは少なくとも107、より好ましくは少なくとも108、そして最も好ましくは少なくとも109の異なる配列を、本方法で同時に分析する。好ましい方法はライブラリーサイズと多様性を最大化する。
【0106】
候補生物活性物質を細胞または細胞の部分集団に合しまたは添加する。異なる態様にとって好適な細胞型は上に概説してある。本明細書中、「細胞の部分集団」とは、少なくとも2個の細胞を意味し、少なくとも約103が好ましく、少なくとも約106が特に好ましく、少なくとも約108がとりわけ好ましい。本発明に係る細胞の単一の増殖集団を適宜分割して、1つのスクリーニングでの使用にとって望ましいサイズの部分集団とすることができる。
【0107】
候補生物活性物質と増殖細胞を合する。当業者には理解できるであろうが、これは、候補物質を細胞の表面に、または細胞を含む培地に、または細胞が増殖しているもしくは接触している表面に加えること;該物質を、例えば該物質を細胞中に導入するであろうベクターを用いて細胞中に添加すること(即ち、該物質が核酸または蛋白である場合)、を包含する多くの方法で達成できる。
【0108】
本発明は、スクリーニングを、該候補生物活性物質をコードしている核酸を含むレトロウイルスベクターを細胞に導入することによって行う、上記の方法を包含する。幾つかの態様では、レトロウイルスベクターをCD34陽性細胞中に導入する。好ましさの程度がより低い態様では、レトロウイルスベクターを本発明に係る増殖集団中に導入する。
【0109】
好ましい態様では、PCT US97/01019およびPCT US97/01048(いずれも引用により本明細書の一部とする)に一般的に概説されているように、候補生物活性物質は、レトロウイルスベクターを用いて増殖細胞中に導入される核酸または蛋白(この文脈における蛋白とは、蛋白、オリゴペプチド、およびペプチドを包含する)のいずれかである。一般に、レトロウイルスベクターのライブラリーは、ヘルパーを欠損し且つ必要な全トランス蛋白(gag、polおよびenvを包含する)を産生できるレトロウイルスパッケージングセルライン、ならびにΨパッケージングシグナルをcis位に有するRNA分子を用いて作製する。簡潔に述べると、このライブラリーをレトロウイルスDNA組み立て物バックボーン中で作製し;標準オリゴヌクレオチド合成を行って候補物質、または蛋白、例えばランダムペプチドをコードしている核酸のいずれかを、当分野で周知の技術を用いて作製する。DNAライブラリーを作製した後、このライブラリーを第一プライマー中にクローニングする。第一プライマーはレトロウイルス組み立て物中に挿入される「カセット」としての役割を有する。第一プライマーは一般に、例えば必要な調節配列(例えば翻訳、転写、プロモーター等)、融合相手、制限エンドヌクレアーゼ(クローニングおよびサブクローニング)部位、停止コドン(好ましくは3個のフレーム全てにおいて)、第二鎖のプライミングのための相補性領域(小さな欠失または挿入がランダム領域に起こるかも知れないため、好ましくは停止コドン領域の末端に)等を包含する幾つかの要素を含んでいる。
【0110】
次に第二プライマーを加えるが、一般にこれは第一プライマーをプライミングするための相補性領域の幾らかまたは全て、および所望により、サブクローニングのための第二のユニークな制限部位にとって必要な配列で構成されている。DNAポリメラーゼを加えて二本鎖オリゴヌクレオチドを作製する。この二本鎖オリゴヌクレオチドを適当なサブクローニング制限エンドヌクレアーゼで開裂し、下記の標的レトロウイルスベクター中にサブクローニングする。
【0111】
多くの適当なレトロウイルスベクターが使用できる。一般にレトロウイルスベクターは、内部リボソームエントリー部位(IRES)の調節下にある選択マーカー遺伝子(これはビシストロンオペロンを実現し、よって一様に高レベルのペプチドを発現する細胞の選択を大いに促進する);および、5’LTRに対してセンスまたはアンチセンスに位置する第二遺伝子の発現をさせるプロモーター、を含むことができる。好適な選択遺伝子は、ネオマイシン、ブラストシジン、ブレオマイシン、ピューロマイシン、およびハイグロマイシン耐性遺伝子、ならびに自己蛍光マーカー、例えば緑色蛍光蛋白、酵素マーカー、例えばlacZ、およびCD8等といった表面蛋白を包含するがこれらに限定されない。
【0112】
好ましいベクターはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)(Hawley et al., Gene Therapy 1:136(1994))および修飾されたMFGウイルス(Rivere et al., Genetics 92:6733(1995))、およびPCT US97/01019に概説されたpBABEに基づくベクターを包含する。
【0113】
レトロウイルスは候補物質の発現のための誘導的および構成的プロモーターを包含できる(IL-4誘導εプロモーターから識別できる)。例えば、選択プロセスの或る相の間だけペプチドの発現を誘導することが必要である状況が存在する。誘導的および構成的プロモーターはいずれも数多く知られている。
【0114】
加えて、1つのベクターが標的細胞に組み込まれた後にレトロウイルス挿入物の誘導的発現をさせるレトロウイルスベクターを作製することが可能であり;重要なことに、この系全体が1つのレトロウイルス内部に入っている。3’LTRエンハンサー/プロモーターレトロウイルス欠失突然変異体の自己不活性化(SIN)特徴を組み込んだTet-誘導的レトロウイルスが設計されている(Hoffman et al., PNAS USA 93:5185(1996))。細胞におけるこのベクターの発現は、テトラサイクリンまたはその他の活性類似体の存在下では事実上検出不能である。しかしながらTetの不在下では、発現が始まり誘導後48時間以内に最大に達し、誘導的レトロウイルスを持っている細胞集団全体の発現が均一に増大する。この事は、発現が、感染した細胞集団内で均一に調節されていることを示している。類似の関連した系は、Tetの存在下でDNAに結合し、Tetの不在下で除去されるよう、突然変異したTet DNA-結合ドメインを使用する。これらの系のいずれも好適である。
【0115】
好ましい態様では、候補生物活性物質は融合相手と結合している。本明細書中の「融合相手」または「官能基」とは、そのクラスのライブラリーの全成員に共通の機能または能力を付与する、候補生物活性物質と結合した配列を意味する。融合相手はヘテロローガス(即ち、宿主細胞にとって天然でない)、または合成(いかなる細胞にとっても天然でない)であってよい。好適な融合相手は、a) コンホメーション上制限されたまたは安定な形態の候補生物活性物質を提供する、下記定義による表示構造;b) 候補生物活性物質を細胞下または細胞外コンパートメントに局在させる、下記定義によるターゲッティング配列;c) 候補生物活性物質またはそれらをコードしている核酸のいずれかを精製または単離させる、下記定義によるレスキュー配列;d) 候補生物活性物質またはそれをコードしている核酸に安定性または分解からの防御、例えば蛋白分解に対する耐性を付与する、安定性配列;e) ペプチドの二量体化をさせる二量体化配列;f) 標識またはリポーター分子といった検出配列、またはg) a)、b)、c)、d)、e)、もしくはf)の任意の組み合わせ、ならびにリンカー配列および必要に応じたその他の蛋白を包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0116】
好ましい態様では、融合相手は表示構造である。本明細書中の「表示構造」または文法的同等語句は、候補生物活性物質と融合した場合にその候補物質にコンホメーション上制限された形態をとらせる配列を意味する。蛋白は大抵コンホメーション上制限されたドメインを介して互いに相互作用する。当分野で知られるように、自由に回転するアミノおよびカルボキシ末端を持つ小ペプチドは強力な機能を持つことができるが、ペプチド疑似合成に対する側鎖の位置を予想することができないため、そのようなペプチド構造の薬理物質への変換は困難である。故に、コンホメーション上制限された構造のペプチドの提示は、後の医薬品製造を利すると同時に、該ペプチドと標的蛋白の高親和性相互作用を導く見込みがある。この事実は、細菌ファージ系で生物学的に作製される短ペプチドを用いる組み合わせライブラリー作製系において認められている。幾人かの研究者が、ランダム化されたペプチド構造を示し得る小ドメイン分子を組み立てている。
【0117】
候補生物活性物質は核酸またはペプチドのいずれかであってよいが、表示構造は好ましくはペプチド候補物質と共に使用する。したがって、合成表示構造、即ち人工ポリペプチドはランダム化されたペプチドをコンホメーション上制限されたドメインとして表示できる。一般にこのような表示構造は、そのランダム化されたペプチドのN末端に結合した第一部分、および該ペプチドのC末端に結合した第二部分を含む。即ち、このペプチドは表示構造内部に挿入されるが、下記に概説するように変化が施されることもある。ランダム化された発現生成物の機能的単離を増強するため、標的細胞で発現された時に最小の生物活性を有するよう、表示構造を選択または設計する。
【0118】
好ましい表示構造は、外部ループ上にこれを表示することにより、該ペプチドへのアクセス能を最大化する。したがって、好適な表示構造は、ミニボディ構造、構造にとって必須でない残基がランダム化されているβシートターンおよびコイルドコイルステム構造上のループ、亜鉛フィンガードメイン、システイン結合(ジスルフィド)構造、トランスグルタミナーゼ結合構造、環状ペプチド、Bループ構造、ヘリックスバレルまたはバンドル、ロイシンジッパーモチーフ等を包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0119】
好ましい態様では、表示構造は、ランダム化されたペプチドを外部ループに表示させるコイルドコイル構造である。例えば、Myszka et al., Biochem. 33:2362-2373(1994)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。この系を利用して研究者は適当な標的と高親和性相互作用できるペプチドを単離した。一般にコイルドコイル構造は6ないし20のランダム化された位置を考慮に入れている。
【0120】
好ましいコイルドコイル表示構造は以下の通りである:
MGCAALESEVSALESEVASLESEVAALGRGDMPLAAVKSKLSAVKSKLASVKSKLAACGPP(配列番号6)。下線の領域が過去に規定されたコイルドコイルロイシンジッパー領域を表す(Martin et al., EMBO J. 13(22):5303-5309(1994)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする)。太字(大文字)のGRGDMP(配列番号7)領域はループ構造を表し、ランダム化されたペプチド(即ち、候補生物活性物質。一般に本明細書では(X)n[式中、Xはアミノ酸残基であり、nは少なくとも5または6の整数である]で示す)と適切に置換された場合には様々な長さを取り得る。太字領域の置換は、下線領域に制限エンドヌクレアーゼ部位をコードさせることによって促進され、それによりこれらの位置にランダム化されたオリゴヌクレオチドが直接取り込まれることが可能となる。例えば、好ましい態様は、二重下線のLE部位にXhol部位を、そして二重下線のKL部位にHindIII部位を作出する。
【0121】
好ましい態様では、表示構造はミニボディ構造である。「ミニボディ」は本質的に最小の抗体相補性領域で構成されている。ミニボディ表示構造は一般に、折り畳まれた蛋白において三次構造の単一面に沿って提示される2つのランダム化領域を提供する。例えばBianchi et al., J.Mol.Biol.236(2):649-59(1994)およびその引用文献を参照されたく、これらは全て引用により本明細書の一部とする。研究者は、この最小ドメインが溶液中で安定である事を示し、そして、ファージ選択系を組み合わせライブラリー中で使用して、プロ炎症性サイトカインIL-6に対して高い親和性Kd=10-7を示すペプチド領域を持つミニボディを選択している。
【0122】
好ましいミニボディ表示構造は以下の通りである:
MGRNSQATSGFTFSHFYMEWVRGGEYIAASRHKHNKYTTEYSASVKGRYIVSRDTSQSILYLQKKKGPP(配列番号8)。太字(大文字)の下線領域はランダム化され得る領域である。イタリックのフェニルアラニンは最初のランダム化領域において不変でなければならない。このペプチド全体をコイルドコイル態様の3オリゴヌクレオチド変形物にクローニングし、そのようにして2つの異なるランダム化領域が同時に取り込まれるようにする。この態様は末端の非パリンドロームBstXI部位を利用する。
【0123】
好ましい態様では、表示構造が一般に2個のシステイン残基を含む配列であり、その結果ジスルフィド結合が形成され、コンホメーション上の制限を受けた配列を産む。この態様は、分泌ターゲッティング配列を使用する場合特に好ましい。当業者には理解できるであろうが、スペーサーまたはリンカー配列を伴うまたは伴わない数多くのランダム配列がシステイン残基と隣接し得る。別の態様では、有効な表示構造がランダム領域自身によって作製され得る。例えば、ランダム領域は、適当な酸化還元条件の下で、表示構造に類似の高度に架橋した構造のコンホメーションをもたらす、システイン残基で「処理する」ことができる。同様に、ランダム化領域を、βシートまたはαヘリックス構造を付与する一定数の残基を含むよう調節することができる。
【0124】
好ましい態様では、融合相手はターゲッティング配列である。当業者には理解できるであろうが、細胞内に蛋白を局在させることは、有効濃度を上げ機能を決定するための単純な方法である。例えば、ミトコンドリア膜に局在したRAF1はBCL-2の抗アポトーシス作用を阻害できる。同様に、膜結合したSosはTリンパ球においてRas仲介シグナル伝達を誘導する。これらの機構はリガンドの探索空間を限定する原理に依拠していると考えられ、換言すれば、原形質膜への蛋白局在が、リガンドの探索を、細胞質の三次元空間とは対照的に膜付近の限定された次元の空間に限定しているのである。これとは別に、蛋白の濃度もまた局在の性格によって単純に増大し得る。この蛋白を核内へと往復させることでそれらが小さな空間に閉じこめられ、それにより濃度が上がる。最後に、リガンドまたは標的は特定のコンパートメントに局在することができ、インヒビターはそれに応じて局在せねばならない。
【0125】
したがって、好適なターゲッティング配列は、発現生成物の生物活性を保持しつつその発現生成物を前もって定められた分子または分子クラスに結合させることができる(例えば酵素インヒビターまたは基質配列を使用して或るクラスの関連酵素にターゲッティングする)結合配列;自身または同時結合蛋白の選択的分解をシグナル伝達する配列;および、候補発現生成物を前もって定められた細胞の場所(これは、 a) 細胞下位置、例えばゴルジ、小胞体、核、仁、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、分泌小胞、リソソーム、および細胞膜;ならびにb) 分泌シグナルを介した細胞外位置、を包含する)に構成的に局在させることのできるシグナル配列、を包含するがこれらに限定される訳ではない。細胞下位置または分泌を介した細胞外への局在が特に好ましい。
【0126】
好ましい態様では、ターゲッティング配列は核局在シグナル(NLS)である。NLSは一般に、それらが存在する蛋白全体を細胞の核に向かわせる働きをする、短い正に荷電した(塩基性)ドメインである。数多くのNLSアミノ酸配列が報告されており、それらは、例えばSV40(サルウイルス)ラージT抗原(Pro Lys Lys Lys Arg Lys Val(配列番号9))、Kalderon(1984), et al., Cell, 39:499-509;ヒトレチン酸レセプターβ核局在シグナル(ARRRRP(配列番号10));NFκB p50(EEVQRKRQKL(配列番号11);Ghosh et al., Cell 62:1019(1990);NFκB p65(EEKRKRTYE(配列番号12);Nolan et al., Cell 64:961(1991);およびその他(例えばBoulikas, J.Cell.Biochem. 55(1):32-58(1994)を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする)といった単一の塩基性NLS、ならびに、Xenopus(アフリカツメガエル)蛋白、核質(Ala Val Lys Arg Pro Ala Ala Thr Lys Lys Ala Gly Gln Ala Lys Lys Lys Lys Leu Asp(配列番号13))、Dingwall, et al., Cell, 30:449-458, 1982およびDingwall, et al., J.Cell Biol., 107:641-849; 1988)のNLSによって例示される二重塩基性NLSを包含する。多くの局在研究は、合成ペプチドに取り込まれたまたは通常は細胞核にターゲッティングされないリポーター蛋白上に合体したNLSは、これらのペプチドおよびリポーター蛋白が核に濃縮されるようにすることを証明している。例えば、Dingwall, and Laskey, Ann.Rev.Cell Biol., 2:367-390, 1986;Bonnerot, et al., Procl.Natl.Acad.Sci.USA, 84:6795-6799, 1987;Galileo, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 87:458-462, 1990を参照されたい。
【0127】
好ましい態様では、ターゲッティング配列は膜係留シグナル配列である。多くの細胞内事象が原形質膜に起始しているという事実に加え、多くの寄生虫および病原体が膜に結合するため、この事は特に有用である。したがって、膜結合したペプチドライブラリーは、これらのプロセス中の重要な要素の同定のためにも、そして有効なインヒビターの発見のためにも有用である。本発明はランダム化した発現生成物を細胞外にまたは細胞質空間に表示するための方法を提供する。細胞外表示のためには、膜係留領域をペプチド表示構造のカルボキシ末端に提供する。ランダム化された発現生成物領域は細胞表面に発現され、細胞外空間に表示され、その結果それは他の表面分子(それらの機能を発揮する)と、または細胞外媒質に存在する分子と結合できる。係る分子の結合は、該分子と結合するペプチドを発現する細胞に機能を付与できる。細胞質領域は中性であるか、または細胞外ランダム化発現生成物領域が結合した時にその細胞に機能を付与するドメインを含み得る(キナーゼの活性化、ホスファターゼ、機能を奏効させるための他の細胞成分の結合)。同様に、ランダム化発現生成物含有領域は細胞質領域内部に入っており、貫膜領域と細胞外領域は不変のまま、または定められた機能を有する。
【0128】
膜係留配列は当分野で周知であり、哺乳動物の貫膜分子の遺伝子幾何学に基づいている。ペプチドはシグナル配列(本明細書ではssTMと称する)に基づいてこの膜に挿入され、疎水性貫膜ドメイン(本明細書ではTM)を必要とする。この貫膜蛋白は、貫膜ドメインの5’がコードされている領域が細胞外であり、配列3’が細胞内となるように膜内に挿入される。無論、これらの貫膜ドメインが可変領域の5’に位置するならば、これらは細胞内ドメインとしてそれを係留する役割を果たし、幾つかの態様ではそれが望ましいかも知れない。ssTMおよびTMは多岐にわたる膜結合蛋白で知られており、これらの配列は特定の蛋白由来の対として、または各成分が異なる蛋白に由来して、適宜使用できる。或いはこの配列は合成によるものであり、人工的デリバリードメインとして全体をコンセンサスから誘導したものであってもよい。
【0129】
当業者には理解できるであろうが、ssTMおよびTMを包含する膜係留配列は多岐にわたる蛋白で知られており、これらのうち任意のものを使用できる。特に好ましい膜係留配列は、CD8、ICAM-2、IL-8R、CD4およびLFA-1から誘導されるものを包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0130】
有用な配列は、1) クラスI内在性膜蛋白、例えばIL-2レセプターβ鎖(残基1-26はシグナル配列であり、241-265は貫膜残基である。Hatakeyama et al., Science 244:551(1989)およびvon Heijne et al., Eur.J.Biochem. 174:671(1988)を参照されたい。)およびインスリンレセプターβ鎖(残基1-27はシグナルであり、957-959は貫膜ドメインであり、960-1382は細胞質ドメインである。Hatakeyama(上記)およびEbina et al., Cell 40:747(1985)を参照されたい);2) クラスII内在性膜蛋白、例えば中性エンドペプチダーゼ(残基29-51は貫膜ドメインであり、2-28は細胞質ドメインである。Malfroy et al., Biochem.Biophys.Res.Commun. 144:59(1987)を参照されたい);3) タイプIII蛋白、例えばヒトシトクロムP450 NF25(Hatakeyama、上記);および4) タイプIV蛋白、例えばヒトP-糖蛋白(Hatakeyama、上記)由来の配列を包含する。CD8およびICAM-2が特に好ましい。例えば、CD8およびICAM-2由来のシグナル配列は、転写物の5’最末端にある。これらはCD8の場合はアミノ酸1-32で構成され(MASPLTRFLSLNLLLLGESILGSGEAKPQAP(配列番号14);Nakauchi et al., PNAS USA 82:5126(1985)、ICAM-2の場合は1-21で構成される(MSSFGYRTLTVALFTLICCPG(配列番号15);Staunton et al., Nature(London)339:61(1989))。
【0131】
これらのリーダー配列は組み立て物を膜へとデリバリーし、一方ランダム候補領域の3’に位置する疎水性貫膜ドメインは、組み立て物を膜に係留する役割を持つ。これらの貫膜ドメインは、CD8由来のアミノ酸145-195(PQRPEDCRPRGSVKGTGLDFACDIYIWAPLAGICVALLLSLIITLICYHSR(配列番号16);Nakauchi、上記)およびICAM-2由来の224-256(MVIIVTVVSVLLSLFVTSVLLCFIFGQHLRQQR(配列番号17);Staunton、上記)によって包含される。
【0132】
これとは別に、膜係留配列はGPIアンカーを包含し、これは例えばDAFにおけるグリコシル-ホスファチジルイノシトール結合を介した該分子と脂質二重層の間の共有結合をもたらす(PNKGSGTTSGTTRLLSGHTCFTSTGLLGTLVTMGLLT(配列番号18)。太字(大文字)のセリンはアンカーの部位である;Homans et al., Nature 333(6170):269-72(1988)、およびMoran et al., J.Biol.Chem. 266:1250(1991))。これを行うために、Thy-1由来のGPI配列を、貫膜配列の代わりに可変領域の3’にカセット化することができる。
【0133】
同様に、ミリスチル化配列が膜係留配列として働くことができる。c-srcのミリスチル化はこれを原形質膜に補充することが知られている。この蛋白の最初の14アミノ酸が単独でこの機能を担っているとすれば、これは単純且つ効果的な膜局在化の方法である:MGSSKSKPKDPSQR(配列番号19)(Cross et al., Mol.Cell.Biol.4(9):1834(1984);Spencer et al., Science 262:1019-1024(1993)、いずれも引用により本明細書の一部とする)。このモチーフはリポーター遺伝子の局在化において有効であることが既に示されており、TCRのゼータ鎖の係留に使用できる。このモチーフは、組み立て物を原形質膜に局在化させるため、可変領域の5’に位置している。パルミトイル化といったようなその他の修飾を、原形質膜に組み立て物を係留するために使用することができる;例えば、G蛋白共役レセプターキナーゼGRK6配列由来のパルミトイル化配列(LLQRLFSRQDCCGNCSDSEEELPTRL(配列番号20)、太字のシステインがパルミトイル化される;Stoffel et al., J.Biol.Chem 269:27791(1994));ロドプシン由来のもの(KQFRNCMLTSLCCGKNPLGD(配列番号21);Barnstable et al., J.Mol.Neurosci. 5(3):207(1994)) ;およびp21 H-ras 1蛋白(LNPPDESGPGCMSCKCVLS(配列番号22);Capon et al., Nature 302:33(1983))。
好ましい態様では、ターゲッティング配列はリソソームターゲッティング配列であり、例えばLamp-2のようなリソソーム分解配列(KFERQ(配列番号23);Dice, Ann.N.Y.Acad.Sci. 674:58(1992);またはLamp-1由来のリソソーム膜配列(MLIPIAGFFALAGLVLIVLIAYLIGRKRSHAGYQTI(配列番号24)、Uthayakumar et al., Cell.Mol.Biol.Res. 41:405(1995))またはLamp-2(LVPIAVGAALAGVLILVLLAYFIGLKHHHAGYEQF(配列番号25)、Konecki et al., Biochem.Biophys.Res.Comm. 205:1-5(1994)、いずれも貫膜ドメインをイタリクスで、細胞質ターゲッティングシグナルを下線付きで示す)を包含する。
【0134】
これに代わり、ターゲッティング配列は、ミトコンドリアマトリックス配列(例えば酵母アルコールデヒドロゲナーゼIII;MLRTSSLFTRRVQPSLFSRNILRLQST(配列番号26);Schatz, Eur.J.Biochem. 165:1-6(1987));ミトコンドリア内膜配列(酵母シトクロムcオキシダーゼサブユニットIV;MLSLRQSIRFFKPATRTLCSSRYLL(配列番号27);Schatz、上記);ミトコンドリア膜間腔配列(酵母シトクロムc1;MFSMLSKRWAQRTLSKSFYSTATGAASKSGKLTQKLVTAGVAAAGITASTLLYADSLTAEAMTA(配列番号28);Schatz、上記)またはミトコンドリア外膜配列(酵母70kD外膜蛋白;MKSFITRNKTAILATVAATGTAIGAYYYYNQLQQQQQRGKK(配列番号29);Schatz、上記)を包含するミトコンドリア局在化配列であってよい。
【0135】
標的配列はさらに、カルレティキュリン(KDEL(配列番号30);Pelham, Royal Society London Transactions B; 1-10(1992))またはアデノウイルスE3/19K蛋白(LYLSRRSFIDEKKMP(配列番号31);Jackson et al., EMBO J. 9:3153(1990)由来の配列を包含する、小胞体配列であってよい。
【0136】
さらに、ターゲッティング配列は、ペルオキシソーム配列(例えば、ルシフェラーゼ由来のペルオキシソームマトリックス配列;SKL;Keller et al., PNAS USA 4:3264(1987));ファルネシル化配列(例えば、P21 H-ras 1;LNPPDESGPGCMSCKCVLS(配列番号32)、太字のシステインはファルネシル化される;Capon、上記);ゲラニルゲラニル化配列(例えば、蛋白rab-5A;LTEPTQPTRNQCCSN(配列番号33)、太字のシステインはゲラニルゲラニル化される;Farnsworth, PNAS USA 91:11963(1994));または破壊配列(サイクリンB1;RTALGDIGN(配列番号34);Klotzbucher et al., EMBO J. 1:3053(1996))をも包含する。
【0137】
好ましい態様では、ターゲッティング配列は、候補翻訳生成物の分泌をさせることのできる分泌シグナル配列である。可変ペプチド領域の5’に位置し、このペプチド領域から開裂して細胞外空間への分泌を奏効させる分泌シグナル配列が多数知られている。分泌シグナル配列と、無関係の蛋白へのそれらの転移可能性はよく知られている。例えばSilhavy, et al.(1985) Microbiol.Rev. 49, 398-418。この事は、宿主細胞以外の標的細胞、例えばレトロウイルスに感染した細胞の表面に結合できるペプチド、または該標的細胞の生理に影響を及ぼすことのできるペプチドの生成にとって特に有用である。好ましいアプローチでは、融合生成物は、分泌シグナルペプチド-表示構造-ランダム化発現生成物領域-表示構造を連続して含むよう配列されている。このようにして、ペプチドのライブラリーを発現するようにさせた細胞の近傍で増殖した標的細胞を、分泌されたペプチドに浸す。ペプチドの存在に応答して、例えば表面レセプターへのペプチド結合によって、またはインターナライズされ細胞内標的に結合することによって、生理的変化を表している標的細胞、および分泌細胞は、様々な選択スキームのうちいずれかによって局在化され、その効果を惹起しているペプチドが決定される。効果の例は、デザイナーサイトカイン(即ち、造血幹細胞を分割させその全能性を維持させ得る幹細胞因子)、癌細胞に自発的アポトーシスを受けさせる因子、標的細胞の細胞表面に結合してそれらを特異的に標識する因子等、様々なものの効果を包含する。
【0138】
IL-2(MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号35);Villinger et al.,J.Immunol. 155:3946(1995))、成長ホルモン(MATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSAFPT(配列番号36);Roskam et al., Nucleic Acids Res. 7:305(1979));プレプロインスリン(MALWMRLLPLLALLALWGPDPAAAFVN(配列番号37);Bell et al., Nature 284:26(1980));およびインフルエンザHA蛋白(MKAKLLVLLYAFVAGDQI(配列番号38);Sekikawa et al., PNAS 80:3563))(非下線-下線接合点の間で開裂が起こる)由来のシグナルを包含する好適な分泌配列が知られている。特に好ましい分泌シグナル配列は分泌サイトカインIL-4由来のシグナルリーダー配列であって、これは以下のようなIL-4の最初の24アミノ酸を含む:MGLTSQLLPPLFFLLACAGNFVHG(配列番号39)。
【0139】
好ましい態様では、融合相手はレスキュー配列である。レスキュー配列は、候補物質またはそれをコードしている核酸を精製または単離するのに使用できる配列である。即ち、例えばペプチドレスキュー配列は、Niアフィニティーカラムと共に使用するためのHis6タグ、および、検出、免疫沈降またはFACS(蛍光細胞分析分離)のためのエピトープタグといった精製配列を包含する。好適なエピトープタグはmyc(市販の9E10抗体と共に使用するためのもの)、細菌酵素BirAのBSPビオチニル化標的配列、fluタグ、lacZ、およびGSTを包含する。
【0140】
これに代わりレスキュー配列は、PCR、関連技術、またはハイブリダイゼーションによってレトロウイルス組み立て物の迅速容易な単離を可能にするプローブ標的部位としての役割を有するユニークなオリゴヌクレオチド配列であってもよい。
【0141】
好ましい態様では、融合相手は、候補生物活性物質またはそれをコードしている核酸に安定性を付与する安定性配列である。即ち例えば、ペプチドは、VarshavskyのN-End則によりペプチドをユビキチン化から保護するため、開始メチオニンの後にグリシンを組み込む事(MGまたはMGG0)によって安定化され得、そのようにして細胞質中での長い半減期が付与される。同様に、C末端の2個のプロリンは、カルボキシペプチダーゼ作用に充分耐性であるペプチドを与える。プロリンの前の2個のグリシンの存在は、可撓性を付与し、そしてジプロリンにおける構造開始事象が、候補ペプチド構造中に増殖しないようにする。したがって、好ましい安定性配列は以下の通りである:MG(X)nGGPP(配列番号40)(式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは少なくとも4である整数である)。
【0142】
或る態様では、融合相手は二量体化配列である。二量体化配列は、通常の生理的条件下で結合を存続させるに充分な親和性をもって或るランダムなペプチドを別のランダムなペプチドと共有結合させる。もし細胞当たり2個のペプチドが作出され次いでそれが二量体化して108(104 X 104)の有効なライブラリーを形成するとすれば、この事により、ランダムなペプチドの小さなライブラリー(例えば104)が効率的に大きなライブラリーとなる事が可能である。それはまた、必要とあらばより長いランダムペプチド、または構造的により複雑なランダムペプチド分子の形成を可能にする。この二量体はホモまたはヘテロ二量体であってよい。
【0143】
二量体化配列は自己凝集する単一の配列、または各々が異なるレトロウイルス組み立て物で生成される2つの配列であってよい。即ち、二量体化配列1を伴う第一のランダムペプチド、および二量体化配列2を伴う第二のランダムペプチドの両者をコードしている核酸は、細胞内に導入され核酸が発現される時、二量体化配列1が二量体化配列2と結合して新たなランダムペプチド構造を形成する。
【0144】
好適な二量体化配列は多岐にわたる配列を包含する。数多くの蛋白-蛋白相互作用部位が知られている。加えて、二量体化配列は、酵母2ハイブリッド系のような標準法、常套的生化学的親和結合研究を使用して、または本方法を使用しても解明することができる。
融合相手は生物学および活性が許す限り、その構造の任意の場所に位置させることができる(即ち、N末端、C末端、内部)。
【0145】
好ましい態様では、融合相手は、PCT US 97/01019に一般的に記載されるように、候補物質が妨害されずに標的である可能性のある物質と相互作用するようにさせることのできる、リンカーまたは接続する配列を包含する。例えば、候補生物活性物質がペプチドである場合、有用なリンカーはグリシン-セリンポリマー(例えば(GS)n、(GSGGS)n(配列番号41)および(GGGS)n(配列番号42)。ここでnは少なくとも1である整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、およびシェーカーカリウムチャネルのための接続配列のようなその他の可撓性リンカー、ならびに当業者の認める多様なその他の可撓性リンカーを包含する。グリシン-セリンポリマーは、これらの両アミノ酸が比較的組織立っておらず、故に構成成分間の中性接続配列として働くことができるため、好ましい。第二に、セリンは親水性であり、故に球体のグリシン鎖となっているかも知れないものを可溶化できる。第三に、類似の鎖が一本鎖抗体のような組換え蛋白のサブユニットを連結する際に有効であることが示されている。
【0146】
本発明の好ましい態様は、融合相手に連結した候補生物活性物質を包含する。好ましい態様では、融合相手は検出配列、例えば標識またはリポーター分子を包含する。
或る態様ではリポーター分子は緑色蛍光蛋白(GFP)であってよい。Aequorea Victoria由来の緑色蛍光蛋白(本明細書では「aGFP」と称する)は238アミノ酸蛋白である。この蛋白および幾つかの点突然変異体の結晶構造が解明されている(Ormo et al., Science 273, 1392-5, 1996;Yang et al., Nature Biotechnol. 14, 1246-51, 1996)。修飾されたトリペプチドから成るこの発蛍光団は比較的堅固なβ-can構造内部に埋没しており、溶媒のアクセスから殆ど完全に防御されている。この蛋白の蛍光は幾つかの点突然変異に対して感受性である(Phillips,G.N., Curr.Opin.Struct.Biol. 7,821-27, 1997)。発蛍光トリペプチドへの溶媒アクセスを許す該構造の破壊は蛍光を消光させるため、この蛍光は該蛋白の天然構造が保持されていることの鋭敏な指標であると思われる。
【0147】
Renilla mulleri由来のGFP(本明細書では「rGFP」と称する)が近年報告されており、WO99/49019を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
Ptilosarcus gurneyi由来のGFP(本明細書では「rGFP」と称する)が近年報告されており、WO99/49019を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。
ペプチドとGFPとの融合がU.S.S.N. 09/169015、現在米国特許第6180343号;U.S.S.N.に詳細に記載されており、これは引用により本明細書の一部とする。
【0148】
好ましい態様では、候補生物活性物質は直接または間接的に標識される。本明細書中「標識される」とは、或る化合物が、該化合物の検出を可能にする少なくとも1個の結合したポリペプチド、要素、アイソトープまたは化学化合物を有する事を意味する。一般に、標識は4つのクラス:a) アイソトープ標識、これは放射性または重アイソトープであってよい;b) 磁性、電気的、熱的;c) 着色またはルミネセンス色素;およびd) 検出できる蛋白または検出できる生成物を生成する蛋白;に分類できるが、標識は、酵素および磁性粒子のような粒子をも包含する。好ましい標識はGFPのようなルミネセンスリポーター分子を包含する。好ましい態様では、候補生物活性物質を直接標識する、即ちこの物質は標識を含む。別の態様では、候補生物活性物質を間接的に標識する。好適な標識は、ユーロピウムおよびテルビウムの複合体を包含する蛍光ランタノイド複合体、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラサイトグリーン、スティルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(登録商標)、テキサスレッド、FITC、PE、cy3、cy5およびRichard P.Hauglandによる6th Edition of the Molecular Probes Handbook(これは引用により本明細書の一部とする)に記載のその他のものを包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0149】
本発明で使用する候補生物活性物質はcDNA、gDNA、RNAおよび上記のランダムまたはランダム化したペプチドを包含する。好ましい態様では、生物活性物質は上記の融合相手と結合する。候補生物活性物質が蛋白またはペプチドである場合、これらは蛋白融合相手のN末端に結合できる。幾つかの態様では、ペプチドまたは蛋白物質は融合相手のC末端に結合する。別の態様では、ペプチドまたは蛋白物質は、融合相手の生物学と活性が許すならば融合相手の構造の内部に結合する。
【0150】
同様に、候補生物活性物質がcDNA、gDNAまたはRNAである場合、これらは核酸融合相手と結合できる。核酸候補生物活性物質は核酸融合相手の3’末端に結合できる。幾つかの態様では核酸物質は核酸融合相手の5’末端に結合する。別の態様では核酸物質は核酸融合相手の内部に結合する。
【0151】
加えて、表示構造を包含する融合相手は修飾され、ランダム化され、そして/または成熟して、ランダム化された発現生成物の表示の向きを変更する。例えば、ループ基部の決定基は、ランダム化されたアミノ酸配列を維持している内部ループペプチドの三次構造を僅かに改変するよう修飾されることがある。
好ましい態様では、融合相手の組み合わせを利用する。即ち、例えば、表示構造、ターゲッティング配列、レスキュー配列、および安定性配列の数多くの組み合わせを、リンカー配列を用いてまたは用いずに利用することができる。
【0152】
このように、候補物質はこれらの構成成分を包含し、これを利用して、異なるペプチドをコードし得る異なるランダムヌクレオチド配列をそれぞれ含むフラグメントのライブラリーを作製できる。次いでライゲーション生成物をE.coliのような細菌中に導入し、得られたライブラリーから、一般にKitamura, PNAS USA 92:9146-9150(1995)(引用により本明細書の一部とする)に概説されるようにDNAを調製する。
【0153】
レトロウイルスパッケージング系へのライブラリーDNAのデリバリーは感染性ウイルスへの変換をもたらす。好適なレトロウイルスパッケージング系セルラインは、WO94/19478;Soneoka et al., Nucleic Acid Res. 23(4)628(1995);Finer et al., Blood 83:43(1994)に記載のBingおよびBOSC23セルライン;Pheonixパッケージングライン、例えば下記のPhiNX-ecoおよびPhiNX-ampho;292T+gag-polおよびレトロウイルスエンベロープ;PA317;ならびにMarkowitz et al., Virology 167:400(1988)、Markowitz et al., J.Virol. 62:1120(1988)、Li et al., PNAS USA 93:11658(1996)、Kinsella et al., Human Gene Therapy 7:1405(1996)(これらは全て引用により本明細書の一部とする)に概説されるセルラインを包含するがこれらに限定される訳ではない。好ましい系はPCT US97/01019に開示のPhiNX-ecoおよびPhiNX-amphoまたは類似のセルラインを包含する。
【0154】
一般に候補物質は、物質-標的相互作用に好適な反応条件下で細胞に添加する。一般にこれは生理的条件である。インキュベーションは最適活性を促進する任意の温度、典型的には4および40℃の間で実施できる。インキュベーション時間は最適活性のために選択するが、迅速高スループットスクリーニングを促進するように最適化することもできる。典型的には0.1および1時間の間で充分である。過剰の試薬は一般に除去または洗い流す。
候補物質が核酸である場合、燐酸カルシウム、電気穿孔、および注入といった当分野で既知の方法を用いてこれらを細胞に導入できる。一般に、エキソサイトーシス刺激を生理的条件下で細胞と組み合わせる。インキュベーションは最適活性を促進する任意の温度、典型的には4および40℃の間で実施できる。インキュベーション時間は最適活性のために選択するが、迅速高スループットスクリーニングを促進するように最適化することもできる。
【0155】
この検定には様々なその他の試薬も使用できる。これらには、最適な蛋白-蛋白結合を促進し、そして/または非特異的またはバックグラウンド相互作用を低下させるために使用できる、塩、中性蛋白、例えばアルブミン、洗浄剤等のような試薬が包含される。その他の面で検定の効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤等もまた使用できる。成分の混合物をエキソサイトーシスの検出を実現する任意の順序で添加できる。細胞の洗浄またはすすぎは当業者が認めるように異なる回数で実施し、これは濾過および遠心分離の使用を包含し得る。第二標識部分を使用する場合、非特異結合を低下させるため、これらは好ましくは過剰の非結合標的分子が取り除かれた後に添加する;しかしながら幾つかの状況下では全成分を同時に添加できる。
【0156】
好ましい態様では、蛍光細胞分析分離(FACS)を用いて細胞を選別する。一般に、FACS選別に存在する剪断力の存在下で結合を保持するにはKD<1μMが好ましい。好ましい態様では、非常に高速で、例えば毎秒約5000選別事象より速く細胞を選別し、毎秒約10,000選別事象より速いのが好ましく、毎秒約25000選別事象より速いのが特に好ましく、約50,000ないし100,000より速い速度がとりわけ好ましい。
【0157】
刺激および染色のために加工された細胞を一般に氷上で緩衝液に溶解し、サイトメトリー前に濾過する。細胞はFACSCAN(Becton Dickinson Inc., レーザー線488nm)またはMo-Flo(Cytomation,Inc.,レーザー線350nM広帯域(UV)、488nm、および647nm)サイトメーターを用いて分析できる。所望により細胞をMo-Floを用いて選別する。
【0158】
細胞を顕微鏡分析する場合、一般に刺激または染色後の細胞をガラススライド上にマウントし、カバーグラスを載せる。標準BFP、FITC、またはTRITC(例えば)フィルターセットを使用して、明視野および倒立顕微鏡(即ちTE300、Nikon)上の蛍光顕微鏡でこれらを直接視覚化する。標準FITCおよびTRITC(例えば)フィルターセットを用いる倒立共焦点走査顕微鏡(Zeiss,Inc., Bio-Rad,Inc.)を用いて画像を得ることもできる。
【0159】
この選別は、所望のエキソサイトーシス性を有する細胞の部分集団をもたらす。好ましい態様では、エキソサイトーシスを調節する少なくとも1つの候補生物活性物質が同定されるパラメータを設定する。
【0160】
好ましい態様では、生物活性物質を特性決定する。これは当業者が認めるように進め、一般にその物質の構造、実体、結合親和性および機能の分析を包含する。一般に、同定されたならばその生物活性物質を再合成し標的細胞と合して、様々な条件下および他の種々の物質の存在下または不在下でエキソサイトーシスの調節を検証する。生物活性物質はエキソサイトーシスを調節する治療的有効量を製造し適当な薬用担体と合することができる。
【0161】
好ましい態様では、細胞集団または部分集団を、候補物質と共にまたはこれを伴わずに、そしてエキソサイトーシス刺激または阻害をしつつまたはせずに、様々な実験条件に付すことができる。条件の変化は、pH、温度、緩衝液または塩濃度等の変化を包含するがこれらに限定されない。好ましい態様では、pHは一般に、通常約0.5ないし約3pH単位を増大または低下させることによって変化させる。或いは温度を変化させ、これは約5℃ないし約30℃の増大または低下が好ましい。同様に、塩濃度を修飾することができ、これは約0.1Mないし約2Mを増大または低下させるのが好ましい。
【0162】
本明細書に提供する検定の工程は順序を変えることができるということが、当業者には理解できるであろう。もっとも本明細書には様々な選択枝(化合物、選択される性質または工程の順序について)が提供されているが、この選択枝は個別的に提供されるものであり、各々を本明細書に提供する他の選択枝から個別的に分離できるという事も明らかである。さらに、検定の感度を上げる、当分野で明白且つ既知の工程は、本発明の範囲内にあることが意図されている。例えば、さらなる洗浄工程、または分離、単離工程があり得る。さらに、幾つかの場合、検出は細胞内でなされるが、培地内で行えることもあり、その逆もまたあり得るという事が分かっている。
【0163】
本発明はまた、スクリーニングの実施にロボット工学を使用することをも包含する。好ましい態様では、本発明はステーションまたはステーションのセットにおいて液体をローディングおよびアンローディングするための構成要素を包含する液体取り扱い構成要素を包含する。この液体取り扱い系は多くの構成要素を含むロボット系を包含できる。加えて、本明細書に概説する任意のまたは全ての工程は自動化でき、即ち、例えばこの系を完全にまたは部分的に自動化することができる。
【0164】
当業者が認めるように、使用可能な多岐にわたる構成要素があり、それらは、1またはそれ以上のロボットアーム;微量プレートの位置決めのためのプレートハンドラー;カートリッジおよび/またはキャップを持つホルダー;蓋を取り除いて非交差汚染プレート上に置くための、自動化された蓋またはキャップハンドラー;使い捨てチップで試料を分配するためのチップ部品;試料分配のための洗浄可能なチップ部品;96ウェルローディングブロック;冷却試薬棚;微量定量プレートピペット置き場(所望により冷却する);プレートおよびチップ用の積み重ねタワー;およびコンピューターシステムを包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0165】
完全にロボット化された系または微量液体系は、スクリーニング実施の全工程を遂行するための高スループットピペット操作を包含する、自動化した液体、粒子、細胞および生物の取り扱いを包含する。これは、吸引、分配、混合、希釈、洗浄、正確な体積での移動;回収、およびピペットチップの廃棄;ならびに一回の試料吸引から複数のデリバリーを行うための同体積での反復ピペット操作といったような、液体、粒子、細胞、および生物の操作を包含する。これらの操作は、交差汚染のない液体、粒子、細胞、および生物の移動である。この装置は、フィルター、膜、および/または娘プレートへの微量プレート試料の自動複製、高密度移動、全プレート連続希釈、ならびに高処理能力稼働を実施することができる。
【0166】
好ましい態様では、この検定構成要素に対する特異性を持つ、化学的に誘導体化した粒子、プレート、カートリッジ、管、磁性粒子、またはその他の固相マトリックスを使用する。微量プレート、管または任意の固相マトリックスの結合表面は、非極性表面、高極性表面、共有結合を促進する修飾デキストラン被覆、抗体被覆、融合蛋白またはペプチドを結合させたアフィニティー媒質、組換え蛋白AまたはGのような表面固定化蛋白、ヌクレオチド樹脂または被覆を包含し、その他のアフィニティーマトリックスが本発明において有用である。
【0167】
好ましい態様では、マルチウェルプレート、マルチ管、ホルダー、カートリッジ、ミニチューブ、深ウェルプレート、微量遠心管、冷却バイアル、矩形ウェルプレート、フィルター、チップ、光ファイバー、ビーズ、およびその他の固相マトリックスのためのプラットホーム、または様々な容量のプラットホームが、処理能力をさらに上げるためのグレードアップ可能なモジュラープラットホーム上に設置されている。このモジュラープラットホームは、可変速度楕円軌道振盪機、および原料試料、試料および試薬希釈のための複数位置作業デッキ、検定プレート、試料および試薬の貯蔵場所、ピペットチップ、ならびに能動洗浄ステーションを包含する。
【0168】
好ましい態様では、インキュベートしている試料に4℃ないし100℃までの正確な温度制御を施すための制御されたブロックまたはプラットホームといったような熱交換器の温度を安定化するために、温度循環器と温度調節系を使用する;これはステーションの温度制御器に加えてまたはその代わりに使用する。
【0169】
好ましい態様では、単一または複数の磁性プローブ、アフィニティープローブ、またはピペッターを持つ交換可能なピペットヘッド(単一または多チャネル)が、液体、粒子、細胞、および生物をロボット工学的に操作する。マルチウェルまたはマルチ管磁性分離器またはプラットホームが単一または複数の試料フォーマットで液体、粒子、細胞、および生物を操作する。
【0170】
幾つかの態様では、例えば電子的検出を行わない場合この計測器類は検出器を包含し、その検出器は、その標識および検定に応じた多岐にわたる異なる検出機であってよい。好ましい態様では、有用な検出器は、蛍光の複数チャネルを有する顕微鏡;単一および二重波長終点および動力学的能力、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ルミネセンス、消光、二光子励起、および強度再配分を伴う蛍光、紫外線および可視光分光光度検出が可能なプレート読み取り機;データと画像を捕捉し定量可能なフォーマットに変換するためのCCDカメラ;ならびにコンピューターワークステーションを包含する。
【0171】
ロボット装置は、マルチウェルプレートまたは管における細胞培養の増殖および形質転換のために、そして危険な操作のために、無菌層流または換気フード中に装備することができ、または封じ込められた独立系である。生細胞は、生細胞検定の時系列のために、温度、湿度および気体を制御した、制御増殖条件の下で増殖させることができる。細胞の自動化形質転換および自動コロニー採取器は、所望の細胞の迅速なスクリーニングを促進する。
【0172】
フローサイトメトリーまたは毛細管電気泳動フォーマットを、磁性およびその他のビーズ、粒子、細胞、および生物の個別的捕捉に使用できる。
【0173】
可撓性ハードウェアおよびソフトウェアは、複数の応用に機器を適合させる。ソフトウェアプログラムのモジュールは方法の創出、修飾、および実行を可能にする。システム診断モジュールは、機器の配列、正しい接続、およびモーターの運転を可能にする。注文生産の道具、実験器具、ならびに液体、粒子、細胞および生物の移動パターンは、異なった応用の遂行を可能にする。データベースは方法とパラメータの貯蔵を可能にする。ロボットおよびコンピューターインターフェイスは機器間の交信を可能にする。
【0174】
好ましい態様では、ロボット装置は、メモリーと交信する中央処理ユニットおよび母線を介した一組の入力/出力装置(例えばキイボード、マウス、モニター、プリンター等)を包含する。また、下に概説するように、これは本発明に係る多重化装置のためのCPUに加えた、または該CPUに代わるものであるかも知れない。中央処理ユニット、メモリー、入力/出力装置、および母線の間の一般相互作用は当分野で知られている。即ち、実行しようとする実験に応じた様々な異なる方法がCPUメモリーに保存される。
【0175】
ロボットによるこれらの液体取り扱い系は、緩衝液、試薬、試料、洗浄液、検定成分、例えば標識プローブ等を包含する異なった数多くの試薬を利用できる。
本発明はさらに、該候補生物活性物質が小分子候補生物活性物質である、上記方法を包含する。
本発明は、該候補生物活性物質がペプチドであり、該ペプチドをコードしている核酸を該増殖細胞に導入することによってスクリーニングを実施する、上記方法を包含する。
【0176】
好ましい態様では、本発明は、肥満細胞または好塩基細胞の増殖集団を、変化した表現型を持つ少なくとも1個の細胞についてスクリーニングするための方法を提供する。本明細書中、「変化した」とは、与えられた表現型における任意の変化を意味する。
或る態様では、表現型は増殖集団の細胞の脱顆粒状態である。
【0177】
細胞を本明細書に記載の方法に従って作製したならば、集団の細胞型を確認するための酵素的、脱顆粒、またはその他の検定を実施する前に、所望によりその細胞をプライミングできる。したがって、幾つかの態様では、本発明に係る細胞検定はプライミング工程を包含する。「プライミング」とは、培養中の樹立細胞にIL-4およびIgEを添加するための標準法の使用を含む。これらの物質は活性化工程の3-7日前に添加する。培養の樹立にとって必須ではないものの、プライミングは刺激に対する細胞の応答能力を改善する。好ましい態様では、本発明に係るスクリーニングまたは検定は、IL-4およびIgEを、本発明方法を用いて作製した増殖細胞集団、好ましくは肥満細胞に、活性化工程の前に添加する工程を包含する。別の態様では、本発明に係る工程にはプライミング工程は含まれない。
【0178】
変化した表現型は、別の細胞に比較して或る細胞のエキソサイトーシスの量、または異なる条件下での同じ細胞のエキソサイトーシスの量が減少または増加していることであってよい。この測定は、条件の全てが各測定について同じである状況で、または様々な条件下で、生物活性物質有りまたは無しで、またはエキソサイトーシスプロセスの異なる段階で、測定できる。例えば、エキソサイトーシスの測定は、候補生物活性物質が存在する細胞集団および候補生物活性物質が存在しない細胞集団で測定できる。別の例では、細胞集団の条件または環境が互いに相違する場合のエキソサイトーシスの測定がなされる。例えば細胞を、生理的シグナル、例えばエキソサイトーシスインデューサー(即ちCa++、イオノマイシン等)、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、増殖因子、活動電位、または他の細胞(即ち細胞-細胞接触)の存在下または不在下で評価できる。別の例では、エキソサイトーシスの測定をエキソサイトーシスプロセスの異なる段階で行う。さらに別の例では、条件が同じであり、且つ変化が1つの細胞または細胞集団と別の細胞または細胞集団の間にある場合のエキソサイトーシスの測定を行う。
【0179】
スクリーニングの方法は、変化した表現型について増殖細胞を評価することを含む。「評価する」とは、目的とする表現型における変化を検出または決定する任意の方法を包含する。或る態様では、評価とは、米国特許出願第09/062330号(引用により本明細書の一部とする)に記載のマルチパラメータFACS検定の使用を包含する。
【0180】
エキソサイトーシス経路における変化の評価または検出を可能にする多数のパラメータがあり、これらは光散乱、蛍光色素取り込み、蛍光色素放出、顆粒暴露、表面顆粒酵素活性、および顆粒特異的蛋白の量を包含するがこれらに限定されない。これらのパラメータの1またはそれ以上を検定または測定することにより、エキソサイトーシスの変化のみならずエキソサイトーシス経路の異なる工程の変化を検出することが可能である。
【0181】
好ましい態様では、候補生物活性物質を本明細書に記載の細胞と合する。幾つかの場合、候補生物活性物質を、エキソサイトーシスのインヒビターと共にまたはプロエキソサイトーシス刺激無しで細胞と合することができる。好ましくはプロエキソサイトーシス刺激物質を細胞集団に加えるが、これはその色素の蛍光シグナルの劇的な増大をもたらす。この増大した細胞付随シグナルは、スチリル色素の共役エンドサイトーシスによるものであり、時間および強度の両方においてエキソサイトーシス応答に比例する。逆に、エキソサイトーシスが阻害されまたは誘導されない場合このシグナルは増大しない。異なる時点で、または異なる細胞集団で蛍光を測定し、この測定値を相互にまたは標準に対して比較することによって変化を決定する。一般に、基線から少なくとも約50%の変化が好ましく、少なくとも約75%-100%の変化がより好ましく、少なくとも約250%の変化が特に好ましく、少なくとも約1000-2000%の変化がとりわけ好ましい。この場合の基線とは、エキソサイトーシス刺激前の細胞のスチリル色素取り込みを意味する。
【0182】
好ましいスチリル色素は、FM1-43、FM4-64、FM14-68、FM2-10、FM4-84、FM1-84、FM14-27、FM14-29、FM3-25、FM3-14、FM5-55、RH414、FM6-55、FM10-75、FM1-81、FM9-49、FM4-95、FM4-59、FM9-40、およびこれらの組み合わせを包含するがこれらに限定される訳ではない。FM1-43のような好ましい色素は、水中では弱い蛍光性であるに過ぎないが膜に結合した時には極めて蛍光性であり、その結果、色素の取り込みが容易に識別できる。好適な色素は市販品が入手可能であり、即ちMolecular Probes,Inc., of Eugene, Oregon,”Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals”, 6th Edition, 1996、特に17章、より具体的には17章の2項(引用された関連する章を含む)(引用により本明細書の一部とする)。好ましくはこの色素は溶液で提供され、その場合、色素濃度は約25ないし1000-5000nMであり、約50ないし約1000nMが好ましく、約50ないし250が特に好ましい。スチリル色素の使用は、Betz, et al., Current Opinion in Neurobiology, 6:365-371(1996)にさらに記載されており、これもまた引用により本明細書の一部とする。好ましくは蛍光色素の取り込みは、少なくとも一つ、好ましくは二つのエキソサイトーシス活性のインジケーターと組み合わせて測定する。
【0183】
別の好ましい態様では、蛍光色素放出の変化を評価する。本発明は、部分的には、リソゾーム、さらに低pH染色エキソサイトーシス顆粒の染色に通常用いられる低pH濃縮色素の発見を目的としている。一般に、これらの色素は細胞によって受動的に取り込まれ、顆粒で濃縮され得る。しかしながらこの細胞は色素を取り込むよう、即ち共役したエンドサイトーシスによって誘導され得る。好ましい態様では、細胞集団を、色素が細胞に取り込まれるように低pH濃縮色素に浸す。好ましくはこの細胞を洗浄する。この細胞はプロエキソサイトーシス刺激物質および/またはインヒビターに暴露することができる。好ましい態様では、候補生物活性物質を、細胞集団および好ましくはプロエキソサイトーシス刺激物質と合する。蛍光を評価する。細胞間の、または同じ細胞の異なる時点での蛍光色素放出の変化がエキソサイトーシスの変化を示す。好ましくは、変化は細胞間のものであり、最も好ましくは異なる生物活性物質が添加された細胞間のものである。基線から少なくとも約5%の変化が好ましく、少なくとも約25%がより好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、そして少なくとも約100%がとりわけ好ましい。この場合の基線とは、刺激前の細胞中の色素の量を意味する。
【0184】
この態様では、低pH濃縮色素が好ましい。このような低pH濃縮色素はアクリジンオレンジ、LYSOTRACKER(登録商標)レッド、LYSOTRACKER(登録商標)グリーン、およびLYSOTRACKER(登録商標)ブルーを包含するがこれらに限定される訳ではない。このような色素は商業的に、即ち特に17章、17章の4項、および引用の「関連する章」、即ち23章を包含するMolecular Probes(上記)から入手できる。好ましい態様ではこの色素を溶液で加えるが、この場合、色素は約50nMないし約25μMの濃度であり、約5μMないし約25μMが好ましく、約1ないし5μMが特に好ましい。低pH濃縮色素の使用は一般にHaller, et al., Cell Calcium, 19(2):157-165(1996)に記載されており(リソゾーム研究に関して)、これは引用により本明細書の一部とする。
【0185】
蛍光色素放出の変化を評価する別の態様では、上清中に放出される蛍光を評価する。この態様では、エンドサイトーシスされた膜を可逆的に標識するスチリル色素、または低pH濃縮色素を使用する。この態様では、色素が細胞中に受動的にまたは誘導によって取り込まれるよう、細胞集団を色素に浸す。次いで好ましくはこの細胞を洗浄する。この細胞をプロエキソサイトーシス刺激物質および/またはインヒビターに、そして所望により候補生物活性物質に暴露することができる。プロエキソサイトーシス刺激物質に暴露された細胞は、色素を細胞外培地に放出する。培地中の蛍光を測定または検出できる。このプロセスは時に細胞の脱染と呼ばれる。所望により、培地中の色素の検出を改善および促進する物質を添加することができる。例えば、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)のようなミセル形成洗浄剤は蛍光を増大させ、それにより少量のエキソサイトーシス活性の検出を可能にする。色素放出の変化は、同じ細胞における、細胞間、そして最も好ましくは、異なる生物活性物質が添加された細胞間でのエキソサイトーシスの変化を示すであろう。一般に、基線から少なくとも約5%の変化が好ましく、少なくとも約25%がより好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、そして少なくとも約100%がとりわけ好ましい。この場合の基線とは、エキソサイトーシス刺激前の色素の放出を意味する。好ましくは、培地中で測定された色素放出を、少なくとも一つの他のエキソサイトーシスインジケーターの評価と合する。
【0186】
好ましい態様では、顆粒暴露の変化を測定する。顆粒はエキソサイトーシスの間に培地に暴露され、即ち顆粒は細胞膜と融合し、それらの内容物を暴露/放出する。故に、顆粒の暴露はエキソサイトーシス活性の指標であり、その不在はエキソサイトーシスが誘導されなかったこと、または阻害されたことの指標である。好ましくは顆粒の暴露は、顆粒と特異的に結合する検出可能物質により検出される。本発明で使用する検出可能物質の一例は、二価イオン依存的に燐脂質(ホスファチジルセリン)との特異的結合を示す蛋白ファミリーの一員であるアネキシンVである。ホスファチジルセリンの細胞表面暴露はアポトーシスの証明となる初期シグナルであるため、この蛋白はアポトーシス(プログラムされた細胞死)の測定に広く利用されている。驚くべき事に、アネキシンVが分泌プロセス中に細胞表面で暴露される時、これがエキソサイトーシス顆粒に特異結合する;細胞内部の顆粒が標識されない、事がここに決定された。本発明ではアネキシンVのこの性質を利用して、そのエキソサイトーシス依存性結合に基づく単一エキソサイトーシス検定を創出する。細胞をエキソサイトーシス刺激する時、その細胞は、時間および強度の両方においてそのエキソサイトーシス応答に比例したアネキシン結合と蛍光シグナルの増大を示す。
【0187】
この態様では、アネキシンを直接または間接的に標識し、細胞集団と合する。アネキシンは商業的に、即ちPharMingen, San Diego, California、またはCaltag Laboratories, Millbrae, Californiaから入手できる。好ましくはアネキシンは、約100ng/mlないし約500ng/mlの濃度、より好ましくは約500ng/mlないし約1μg/ml、最も好ましくは約1μg/mlないし約5μg/mlの溶液で提供する。好ましい態様では、このアネキシンを直接標識し、例えばアネキシンは、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアナート(FITC)、Alexa色素、TRITC、AMCA、APC、トリカラー、Cy-5および当分野で知られるその他のものまたは市販品が入手できるもので標識できる。これに代わる好ましい態様では、アネキシンを第一標識、例えばビオチンのようなハプテンで標識し、第二蛍光標識、例えば蛍光性ストレプトアビジンを使用する。当業者の認めるその他の第一および第二標識対を利用することもできる。
【0188】
好ましい態様では、細胞を、通常エキソサイトーシスを惹起する条件に付す。所望により候補生物活性物質をこの細胞に添加する。幾つかの場合、候補物質がこの阻害を逆転させ得るかどうかを決定するためにエキソサイトーシスのインヒビターを含める事、または該物質がエキソサイトーシスを誘導するかどうかを決定するためにエキソサイトーシス刺激物質無しで候補生物活性物質を添加する事が望ましいかも知れない。好ましくは細胞を洗浄し、蛍光を顕微鏡またはフローサイトメーターで検出する。アネキシン結合の検出における変化は、それらと共に同じ条件および/または物質を用いた時の、同じ細胞における、または異なる細胞間のエキソサイトーシスの変化を示している。一般に基線から少なくとも約25%の変化が好ましく、少なくとも約50%がより好ましく、少なくとも約100が特に好ましく、少なくとも約500%がとりわけ好ましい。この場合の基線とはエキソサイトーシス刺激前のアネキシン結合の量を意味する。
【0189】
別の好ましい態様では、顆粒暴露をベルベリンまたはルテニウムレッドのようなカチオン性色素によって検出する。このようなカチオン性色素は分泌顆粒を特異的に染色する。したがって、エキソサイトーシスが起こり分泌顆粒が細胞表面に露出する時、蛍光の増大が検出できる。好ましい態様では、カチオン性色素をエキソサイトーシス刺激物質および/またはインヒビターの存在下または不在下に、そして所望により候補生物活性物質の存在下または不在下に、細胞集団と合する。特に好ましい態様では、ベルベリンを細胞およびエキソサイトーシス刺激物質および候補生物活性物質と合し、この候補生物活性物質がエキソサイトーシス活性を調節し得るかどうかを決定する。好ましくは細胞を洗浄し、次いで蛍光を測定する。好ましい態様では、カチオン性色素の評価を少なくとも一つの他のエキソサイトーシスのインジケーターの評価と組み合わせる。この色素を当分野で既知の細胞と合する。ベルベリンを記載している一般方法論は、Berlin and Enerback, Int.Arch.Allergy Appl.Immunol., 73(3):256-262(1984)に記載されており、これは引用により本明細書の一部とする。一般に基線から少なくとも約5%の変化が好ましく、少なくとも約25%がより好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、少なくとも約100%がとりわけ好ましい。この場合の基線とは刺激前の色素結合の量を意味する。
【0190】
同様に、本明細書に概説したものと類似の様式で顆粒蛋白上の炭水化物に結合することから、Con A-FITCを使用できる。
【0191】
別の好ましい態様では、表面顆粒酵素活性の変化を測定する。分泌顆粒は、エキソサイトーシスプロセスの一部として放出されるプロテアーゼおよびグリコシダーゼといった酵素を含有する。これらの酵素は低pHの故にしばしば顆粒内部で不活性であるが、生理的pHの細胞外培地に暴露される時活性となる。これらの酵素活性は、細胞外培地の成分としての色素産生基質または蛍光生成基質を用いて測定できる。これにより様々なアプローチでエキソサイトーシス細胞の検出ができる。
【0192】
本明細書中時に集団に基づく酵素検定と呼ばれる或る態様では、色素産生基質または蛍光生成基質の開裂によるシグナルの生成を培地中で定量することができる。即ち、培地中の検出可能反応生成物の量は、存在する酵素の量に、したがってエキソサイトーシスの量に関連する。この態様では、検出可能となるのは細胞ではなく培地である。
【0193】
好ましい態様では、細胞をエキソサイトーシス刺激に、そして所望により候補生物活性物質に付す。色素産生または蛍光生成基質を培地に添加し、酵素が細胞外基質を開裂するのに伴うシグナルの変化を評価する。
【0194】
本明細書で時に「in situ酵素学検定」と呼ばれる別の好ましい態様では、開裂時に沈殿する蛍光生成基質を利用する。即ち、エキソサイトーシス時にはかなりの量の酵素活性が細胞/顆粒に結合したままとなり、活性部位に沈殿する蛍光基質を用いて視覚化することができる。例えば、グルクロニダーゼの基質、例えばELF-97グルクロニドはエキソサイトーシス細胞上に沈殿するがそれ以外の細胞には沈殿せず、よって該細胞は増大した蛍光を示し得る。この蛍光はエキソサイトーシスの直接指標であり、エキソサイトーシスされた酵素のpH最適値を反映するpH依存性である。この方法はさらに、それらの酵素プロファイルに基づき顆粒の異なるサブタイプを識別する方法をも提供する。
【0195】
好ましい態様では、細胞集団をエキソサイトーシス刺激に付し、次いで検出可能な基質と共にインキュベートする。候補生物活性物質を所望により加える。細胞を洗浄し、次いで顕微鏡またはフローサイトメーターで観察する。
【0196】
好ましい顆粒酵素はキマーゼ、トリプターゼ、アリールスルファターゼA、β-ヘキソースアミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-D-ガラクトシダーゼを包含するがこれらに限定されない。基質はELF-97グルクロニド、N-アセチルβ-Dグルコロニド、ペプチドと共役したELF-97等を包含し、これらの多くは商業的に、即ちMolecular Probes(上記)、特に10章、より具体的には10章の2項、および引用の「関連する章」、から入手できる。
【0197】
検出可能な基質とは、基質が本明細書でさらに記載するような蛍光分子を含む事、または該基質もしくは開裂した基質に特異的な蛍光分子、即ち蛍光性抗体によって検出できる事を意味する。好ましい態様では、この基質は二つの蛍光性蛋白、即ち青色および緑色蛍光蛋白(BFPおよびGFP)より成る検出可能分子ならびにその他の類似分子を含む。当分野で知られるように、これら二つの蛋白を極めて接近して保持するGFPおよびBFPの組み立て物は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を実現する。即ち、GFPの励起スペクトルはBFPの発光スペクトルと部分重複する。したがって、BFPの励起はGFPの発光をもたらす。プロテアーゼ開裂部位がGFPとBFPの間となるように作り替えて「FRET組み立て物」を製造するならば、このFRET組み立て物を、該組み立て物を開裂する活性プロテアーゼに暴露させる時、GFPおよびBFP分子が分離する。したがって、GFPの励起はBFP発光およびBFP発光の喪失をもたらす。
【0198】
好ましくは、FRET組み立て物の二つの蛍光蛋白の間に挿入されたプロテアーゼ依存開裂部位は、顆粒特異的酵素に特異的である。したがって、FRET組み立て物を、このFRET組み立て物の開裂部位に特異的な顆粒特異的プロテアーゼの検出に利用することができる。この態様では、細胞または培地と合せられるプロテアーゼ基質はFRET組み立て物を包含する。このFRET系は、開裂状態および非開裂状態における検出可能分子の検出を可能にし、この二つを識別する。この系はXu et al., Nucleic Acid Res. 26(8):2034(1998);およびMiyawaki et al., Nature 388(6645):882-887(1997)にさらに記載されており、いずれも引用により本明細書の一部とする。
【0199】
細胞または培地に添加する基質の量は部分的には酵素の特異活性および基質自身に依存するが、一般に約250nMないし約1mM、約1μMないし約100μMが好ましく、約1μMないし約10μMが特に好ましい。一般に基線から少なくとも約5%の変化が好ましく、少なくとも約25%がより好ましく、少なくとも約100%が特に好ましく、そして少なくとも約1000%がとりわけ好ましい。この場合の基線とは、エキソサイトーシスの誘導前の基質開裂の量を意味する。
【0200】
好ましい態様では、顆粒特異的蛋白の量の変化を測定する。分泌顆粒は、これら蛋白の特異的性質の故に顆粒コンパートメントに特異的にターゲッティングする蛋白を含有する。エキソサイトーシス誘導時にこの顆粒特異的蛋白が表面に露出し検出される。
【0201】
好ましい態様では、検出可能な顆粒特異的蛋白を細胞集団と合し、エキソサイトーシスを誘導することが分かっている条件に付す。所望により、生物活性候補物質を該細胞集団および検出可能な顆粒特異的蛋白と合し、顆粒特異的蛋白を検出する。顆粒特異的蛋白はVAMPおよびシナプトタグミンを包含するがこれらに限定されない。エキソサイトーシス中に放出される仲介物質もまた顆粒特異的蛋白の定義に包含され、セロトニン、ヒスタミン、ヘパリン、ホルモン類等を包含するがこれらに限定されない。
【0202】
顆粒蛋白の定量は幾つかの方法で実施できる。或る態様では、顆粒特異的蛋白に対する標識された抗体(例えば蛍光抗体)を利用する。別の態様では、細胞を、顆粒蛋白と検出可能分子を含む融合蛋白を含むように作り替える。好ましい態様では、検出可能分子を検出のために細胞に添加する。例えば、直接または間接的に標識した抗体が利用できる。好ましい態様は第一標識抗体を利用し、これには蛍光標識が好ましい。別の態様は、第一および第二標識、例えば標識した第二抗体を使用する。一般にこの態様は、直接または間接的に標識され得る顆粒蛋白または化合物と特異的に結合する任意の物質が使用できる。
【0203】
好ましい態様では、標識を細胞中に組み入れる。例えば、顆粒特異的蛋白と検出可能分子の融合蛋白である組換え蛋白を細胞集団に導入する。これは一般に、顆粒特異的蛋白と検出可能分子を含む融合蛋白をコードしている融合核酸で該細胞を形質転換することにより実施する。これは一般に当分野で知られるように実施し、細胞型に依存する。一般に、哺乳動物細胞のためにはレトロウイルスのベクターおよび方法が好ましい。
【0204】
融合蛋白は当分野で既知の方法によって組み立てる。例えば、顆粒特異的蛋白をコードしている核酸を、検出可能分子をコードしている核酸にライゲーションする。本明細書中、検出可能分子とは、検出可能分子を含む細胞または化合物をそれを含まない細胞または化合物から識別できるようにする分子、即ち時に抗原TAGと呼ばれるエピトープ、または蛍光分子を意味する。好ましい蛍光分子はGFP、BFP、YFP、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼを包含する酵素を包含するがこれらに限定されない。これらの組み立て物は、エキソサイトーシス時に顆粒内部のエピトープが細胞表面に露出ししかる後検出され得るように作製できる。エピトープは好ましくは細胞質膜上に一般的に見出されない任意の検出可能ペプチドであるが、幾つかの例では、エピトープがその細胞上に通常見出されるならば増大を検出することができる。もっともこれは一般に好ましくない。
【0205】
好ましい態様では、融合蛋白または検出可能な顆粒特異的蛋白を含有する細胞集団をエキソサイトーシス条件に付す。所望により候補生物活性物質および/またはエキソサイトーシスインヒビターが含まれる。好ましくは細胞を洗浄する。蛍光を細胞上で検出する。一般に基線から少なくとも約5%の変化が好ましく、少なくとも約25%がより好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、そして少なくとも約100%がとりわけ好ましい。一般にこの場合の基線とは、エキソサイトーシス刺激前の蛍光の量を意味する。
【0206】
本明細書に記載の発明では、同じ特性のエキソサイトーシスを、バックグラウンドの低下およびより高い特異性をもたらす複数のパラメータによって評価する。対照的に、二つの異なるまたは無関係の特性を同時評価するためにかつてFACSが利用されており、これはこれら二つの特性を有する細胞を同定するものであるが、合した特性に対するバックグラウンドを低下させない。しかしながら本発明は、複数のエキソサイトーシス性質の同定に加え、他の細胞特性の同定と組み合わせることができる。例えば、細胞の一般的健康状態のパラメータを、カルシウム応答を示す色素Indo-1または生存性を示すカルセインブルーを用いて決定し選択することができる。当業者により常套的に同定されるその他の特性は、細胞の大きさ、細胞の形態、酸化還元状態、DNA含有量、核酸配列、クロマチン構造、RNA含有量、総蛋白、抗原、脂質、表面蛋白、細胞内レセプター、酸化的代謝、DNA合成および分解ならびに細胞内pHを包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0207】
好ましい態様では、細胞をエキソサイトーシスを通常惹起する条件に付す。プロエキソサイトーシス物質は、イオノマイシン、Ca++、イオノフォア(イオノマイシン、AZ3187)、化合物48/80、サブスタンスP、補体C3a/C5a、トリプシン、トリプターゼ、インスリン、インターロイキン-3、特異的IgE、アレルゲン、抗IgE、または抗IgGレセプター抗体を包含する。これらは当分野で知られるように化合物に応じた濃度で、一般に1ピコモルないし10μMの範囲で提供する。幾つかの場合、細胞を、エキソサイトーシスを阻害する物質と合することが望ましいかも知れない。エキソサイトーシスインヒビターはウォルトマンニンおよびGenestein、ならびに当分野で知られるその他のものを包含するがこれらに限定されない。
【0208】
以下の実施例は上に記載の本発明を利用する方法をより詳細に記載すると共に、本発明の様々な側面を実施するために考えられる最良の様式を開示する役割を有する。本実施例は本発明の真の範囲を限定するものでは決してなく、例示目的で供するものであることは明白である。本明細書に引用する文献は全て本明細書の一部とする。
【実施例】
【0209】
実施例
実施例 1CD34+ 細胞の拡張
本発明者等は、比較的小さいサイズのCD34陽性細胞の出発集団(1-5 x 106細胞)を、比較的多数のCD34陰性前駆細胞(約2-4 x 109細胞)へと拡張した。この拡張法は後の長期肥満細胞および好塩基細胞培養の良好な樹立の最もユニークな側面である。以下は、CD34陰性前駆細胞の増殖集団の樹立に使用した培養法および試薬の詳細な説明である。
【0210】
培養基:
成分:
a) Gibco STEMPRO-34(登録商標)SFM完全培地:
- STEMPRO-34(登録商標)-34 SFM、cat.#:10640、500mL
- STEMPRO-34(登録商標)-34栄養補足液、cat.#:10641、13mL
b) L-グルタミン:200mM溶液、Mediatech、cat.#:MT25-005-CI
- STEMPRO-34(登録商標)500mL当たり5mLを添加
c) ペニシリン/ストレプトマイシン溶液、100X、HyClone、cat.#:SV30010
- STEMPRO-34(登録商標)500mL当たり5mLを添加
【0211】
培地を作製する方法は培養の長期健康にとって重要であるため、STEMPRO-34(登録商標)完全培地を作製する際には細部にわたり注意を払うことが望ましい。このプロセスの最も可変的部分は、栄養補足液13mLを融解し混合した後STEMPRO-34(登録商標)無血清基本成分に添加する方法である。栄養補足液は37℃水浴で融解し、これが完全に溶液となるまで、ボルテックスまたは振盪することなく攪拌せねばならない。攪拌中は溶液となっていない脂質があるかどうか留意する。脂質が存在し成分の概観が均一でない場合は、水浴に戻し、この栄養補足液の概観が均一となるまで攪拌プロセスを反復する。この成分は直ちに溶液となることもあるが、数回の攪拌サイクルの後であることもあり、また全く溶液とならないこともある。数時間後に成分が依然として溶液となっていない場合、これを廃棄して新たなものを融解する。融解後に均一でない栄養補足液は断じて使用してはならない。
【0212】
以下のように調製する:
- フィルターユニット/フラスコに50%の無血清STEMPRO-34(登録商標)を加える
- 13mLの栄養補足液に注ぐ
- 栄養補足液の容器をおよそ10mLのSTEMPRO-34(登録商標)ですすぎ、STEMPRO-34(登録商標)/栄養補足液の組み合わせと合する
- L-グルタミンおよびPen-Strepを加える
- 総容量を適当な最終レベルにする
- 濾過する
【0213】
サイトカイン:
a) 組換えヒト幹細胞因子、Peprotech、cat.#:300-07
- 滅菌milliQ水で100ug/mLに再構成する
- 等分し、1mLアリコートを-20Cで保存する
b) 組換えヒトflt-3-リガンド、Peprotech、cat.#:300-19
- 滅菌milliQ水で100ug/mLに再構成する
- 等分し、100uLアリコートを-20Cで保存する
c) 組換えヒトインターロイキン-6、Peprotech、cat.#:200-06
- 滅菌10mM酢酸で100ug/mLに再構成する
- 等分し、1mLアリコートを-20Cで保存する
【0214】
Allcells(Berkeley, CA)は単一ドナーから単離したCD34+細胞を供給した。
【0215】
Allcellsが典型的に供給したCD34+細胞の品質と数には或る程度の変動があるため、新たに送達された細胞を15mLコニカル管に移し、STEMPRO-34(登録商標)で10mLとした。
【0216】
生存(明輝相)細胞について細胞計数を行い、この細胞を1200rpmで遠心分離してペレットとした。この細胞は極めて小さいため、細胞計数の実施にあたり焦点を合わせたりはずしたりすることが重要である。さもないと生存細胞を見落としたり死亡細胞を生存細胞であると誤ったりし易い。
【0217】
細胞を、STEMPRO-34(登録商標)に入れた200ng/mL SCF/20ng/mL flt-3リガンド中275K/mLに再懸濁した。40uL SCFおよび4uL flt-3リガンドを加えたSTEMPRO-34(登録商標)20mLを50mLコニカル管に加えた。溶液を、30mLシリンジに取り付けた0.2umアクロディスクフィルターに通すことにより滅菌濾過した。使用前に培地を常に滅菌濾過することが重要である。
【0218】
CD34+細胞をSCFおよびflt-3リガンドに暴露した後ほぼ4日目に、細胞計数を行うことにより培養の密度を確認した。新鮮なSCF/flt-3含有培地をフラスコに添加することにより、培養を275K/mLに希釈した。
【0219】
7日目に培養を滅菌管に移し、細胞計数を行った。細胞を1200rpmで遠心分離し、新鮮なSCF/flt-3含有培地中275K/mLとなるように再懸濁した。再懸濁の4日後に新鮮な培地を加え、ほぼ7日毎に再懸濁することによりこのサイクルをさらにほぼ2回反復してこの集団を最大に拡張した。
【0220】
培養が大きくなり複数のフラスコに維持され、培養を再懸濁しようとする時、全フラスコの内容物を単一容器に合し、細胞計数を実施した。このことにより正確な細胞計数の達成が保証され、集団全体について処理が或る程度均一であることとなった。合する前に各フラスコを顕微鏡下で汚染について個別に調べ、集団全体の汚染を防止した。
【0221】
17-24日の間に培養は衰微し始め、前のように速やかに拡張しなくなった(「衰微」とは、死んだ細胞が集団内に現れるようになる、即ち全細胞数のおよそ5-10%が死んだ細胞であることを意味する)。培養の完全な衰退は僅か24時間以内に起こり得るため、この間細胞を毎日監視する必要がある。衰微が起こってしまったならば、細胞を計数し、850rpmで15分間遠心沈降させ、350K/mLで再懸濁し、この培養からさらに1または2回の分割を試行強制した。培養の衰退を回避するため、さらにこの細胞を毎日監視した。
【0222】
15%より多い細胞死が明らかとなり、まずまずの量の細胞残屑が培養に存在するようになった時、このCD34陰性前駆細胞はいつでも使用できる。
【0223】
実施例 2 :粘膜肥満細胞への前駆細胞の最終分化
拡張したCD34陰性前駆体集団を所望の最終生成物、例えば最終分化した粘膜肥満細胞へと進めるため、第二相を実施することができる。粘膜培養ヒト肥満細胞(CHMC)を臍帯血から単離したCD34+細胞から誘導し、上記のようにCD34陰性前駆細胞の増殖集団を形成するよう処理した。培養を425K/mLで蒔き、15%のさらなる培地をほぼ4または5日目に細胞計数を実施せずに加えたことを除いては、この培養についての4-5日目の添加/7日目の再懸濁サイクルは本質上同一のままとした。さらに、サイトカイン組成物を、flt-3リガンドが無くSCFおよびIL-6の両者を完全STEMPRO-34(登録商標)培地に最終200ng/mLとなるまで添加するといったように改変した。
【0224】
I相とII相を一諸におよそ5週間遠心分離した。1-3週間の間に培養中に若干の死亡および残屑が明らかとなり、2-5週間の間に、小パーセンテージの培養はもはや懸濁液の状態でなくなり、培養容器表面に付着している相となった。
【0225】
培養が各サイクルの7日目に再懸濁されることになっている1相の間に、全フラスコの内容物を単一容器に合し、この後細胞計数を行って集団全体の均一性を確実とした。それらを合する前に各フラスコを顕微鏡下で汚染について個別に調べ、集団全体の汚染を防止した。
【0226】
フラスコを合する際、体積のおよそ75%を共有容器に移し、フラスコに約10mL前後を残した。残量の入ったフラスコ側面を強く側面を叩き、付着した細胞を取り除いた。最初の叩きに対して適切な角度で叩きを反復し、細胞を完全に取り除いた。
【0227】
フラスコを数分間45度の角度に傾けて残量を計数容器に移した。この細胞を950rpmで15分間遠心した後、フラスコ当たり35-50mLを蒔いた(425K/mL)。
【0228】
実施例 3 :結合組織型肥満細胞への前駆細胞の最終分化
CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記のように調製し、トリプターゼ/キマーゼ陽性(結合組織)表現型を形成するよう処理する。この方法は粘膜肥満細胞についての実施例2と同様に実施するが、IL-6の代わりにIL-4を使用する。得られた細胞は結合組織肥満細胞を代表する。
【0229】
実施例 4 :好塩基細胞への前駆細胞の最終分化
同様に、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記実施例1で製造し、好塩基細胞の増殖集団を形成させるために使用した。このCD34陰性細胞は上記実施例2と同様に処理したが、IL-6の代わりにIL-3を20-50ng/mL使用した。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】図1は、flt-3リガンドのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
【図2】図2は、幹細胞因子のアミノ酸配列を示す(配列番号2)。
【図3】図3は、IL-6のアミノ酸配列を示す(配列番号3)。
【図4】図4は、IL-4のアミノ酸配列を示す(配列番号4)。
【図5】図5は、IL-3のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
【図6】培養したヒト肥満細胞(CHMC)の活性化を示す。図6Aは、1:250の抗IgE、1:1000の抗IgE、または2μMのイオノマイシン(「Iono」)で活性化した後のヘキソースアミニダーゼ酵素活性(肥満細胞の脱顆粒の常套的尺度)を示す。抗IgEによる活性化は生理的活性化を示し、イオノマイシンによる活性化は非生理的(最大)活性化を示す。図6Bは、トリプターゼ酵素活性を示し、本発明に係るCHMCの脱顆粒の監視にトリプターゼ酵素活性検定を使用することの有用性を立証する。
【図7A】別々の3個体から作製したCHMCの特性決定を示す。別個の集団CHMC.1、CHMC.2およびCHMC.3を、肥満細胞に特異的な系統(IgEレセプター、CD54、CD117)、または肥満細胞に陰性の系統(CD11bおよびCD25)である事が知られている細胞表面マーカー、ならびに肥満細胞において可変的発現パターンを有するCD13およびCD14によって特性決定した。
【図7B】別々の3個体から作製したCHMCの特性決定を示す。別個の集団CHMC.1、CHMC.2およびCHMC.3を、肥満細胞に特異的な系統(IgEレセプター、CD54、CD117)、または肥満細胞に陰性の系統(CD11bおよびCD25)である事が知られている細胞表面マーカー、ならびに肥満細胞において可変的発現パターンを有するCD13およびCD14によって特性決定した。
【図7C】別々の3個体から作製したCHMCの特性決定を示す。別個の集団CHMC.1、CHMC.2およびCHMC.3を、肥満細胞に特異的な系統(IgEレセプター、CD54、CD117)、または肥満細胞に陰性の系統(CD11bおよびCD25)である事が知られている細胞表面マーカー、ならびに肥満細胞において可変的発現パターンを有するCD13およびCD14によって特性決定した。
【図8】ウサギ抗ヒトIgEポリクローナル抗体を用いてCHMC上の高親和性レセプターを架橋することにより刺激した、CHMCの脱顆粒、ロイコトリエン、およびサイトカイン産生プロファイルを示す。図8A、8B、および8Cは、刺激したまたは刺激しなかったCHMCの培養上清(3例ずつ実施)においてそれぞれヘキソースアミニダーゼ活性、トリプターゼ活性およびヒスタミン放出によって測定した脱顆粒を示す。図8Dは、刺激したおよび刺激しなかったCHMCからのロイコトリエン-4(LTC4)生成を示す。図8E-8Gは、刺激したまたは刺激しなかったCHMCの培養上清由来のIL-5、IL-13およびTNF-αについてのELISA結果をそれぞれ示す。「SNT」は上清を指し、「Post X-link」は抗体との架橋工程後を意味する。
【図9】粘膜CHMCの細胞表面マーカーの特性決定の結果を示す。

Claims (36)

  1. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法。
  2. b) 前記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を前記幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. b) 前記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を前記幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. b) 前記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を前記幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を作製する、
    ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記少なくとも1個のCD34陽性細胞がヒトCD34陽性細胞である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記少なくとも1個のCD34陽性細胞を臍帯血から取得する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記IL-6がヒトIL-6である、請求項2に記載の方法。
  8. 前記IL-4がヒトIL-4である、請求項3に記載の方法。
  9. 前記IL-3がヒトIL-3である、請求項4に記載の方法。
  10. 前記flt-3リガンドがヒトflt-3リガンドである、請求項1に記載の方法。
  11. 前記幹細胞因子がヒト幹細胞因子である、請求項1、2、3または4に記載の方法。
  12. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして、
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法。
  13. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして、
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法。
  14. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして、
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法。
  15. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を作製し;
    c) 上記粘膜肥満細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし;そして
    d) 上記粘膜肥満細胞の増殖集団を、変化した表現型を持つ肥満細胞について評価する、
    ことを含む、粘膜肥満細胞の増殖集団をスクリーニングする方法。
  16. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を作製し;
    c) 上記結合組織型肥満細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし;そして
    d) 上記結合組織型肥満細胞の増殖集団を、変化した表現型を持つ肥満細胞について評価する、
    ことを含む、結合組織型肥満細胞の増殖集団をスクリーニングする方法。
  17. a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を該幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を作製し;
    c) 上記好塩基細胞の増殖集団を少なくとも1つの候補生物活性物質でスクリーニングし;そして
    d) 上記好塩基細胞の増殖集団を、変化した表現型を持つ好塩基細胞について評価する、
    ことを含む、好塩基細胞の増殖集団をスクリーニングする方法。
  18. 候補生物活性物質のライブラリーを粘膜肥満細胞の該増殖集団に加える、請求項15に記載の方法。
  19. 候補生物活性物質のライブラリーを結合組織型肥満細胞の該増殖集団に加える、請求項16に記載の方法。
  20. 候補生物活性物質のライブラリーを好塩基細胞の該増殖集団に加える、請求項17に記載の方法。
  21. 候補生物活性物質が小分子候補生物活性物質である、請求項15、16、または17に記載の方法。
  22. 前記候補生物活性物質がペプチドであり、スクリーニングを、前記ペプチドをコードしている核酸を該肥満細胞に導入することによって行う、請求項15、16または17に記載の方法。
  23. 前記ペプチドがランダムペプチドである、請求項22に記載の方法。
  24. 前記ペプチドをcDNAから誘導する、請求項22に記載の方法。
  25. 前記ペプチドをgDNAから誘導する、請求項22に記載の方法。
  26. 前記ペプチドをmRNAから誘導する、請求項22に記載の方法。
  27. 前記CD34陰性細胞の増殖集団が少なくとも107の細胞を含む、請求項1、15、16または17に記載の方法。
  28. 前記CD34陰性細胞の該増殖集団が少なくとも108の細胞を含む、請求項1、15、16または17に記載の方法。
  29. 前記CD34陰性細胞の増殖集団が少なくとも109の細胞を含む、請求項1、15、16または17に記載の方法。
  30. 前記CD34陰性細胞の該増殖集団が少なくとも1010の細胞を含む、請求項1、15、16または17に記載の方法。
  31. 前記CD34陰性細胞の該増殖集団が少なくとも1011の細胞を含む、請求項1、15、16または17に記載の方法。
  32. 前記変化した表現型が、肥満細胞の該増殖集団の少なくとも1個の細胞の脱顆粒の低下である、請求項15、16または17に記載の方法。
  33. 前記変化した表現型を惹起する候補生物活性物質を単離することをさらに含む、請求項15、16または17に記載の方法。
  34. 粘膜肥満細胞の増殖集団を、
    a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-6と接触させて粘膜肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法によって製造する、粘膜肥満細胞の増殖集団。
  35. 結合組織型肥満細胞の増殖集団を、
    a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-4と接触させて結合組織型肥満細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法によって製造する、結合組織型肥満細胞の増殖集団。
  36. 好塩基細胞の増殖集団を、
    a) 少なくとも1個のCD34陽性細胞をflt-3リガンドおよび幹細胞因子と接触させてCD34陰性前駆細胞の増殖集団を作製し;そして
    b) 上記CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記幹細胞因子およびIL-3と接触させて好塩基細胞の増殖集団を作製する、
    ことを含む方法によって製造する、好塩基細胞の増殖集団。
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