JP2005501502A - トウモロコシ・イエローストライプ1および関連遺伝子 - Google Patents

トウモロコシ・イエローストライプ1および関連遺伝子 Download PDF

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Abstract

土からキレート鉄の取り込みを媒介する膜タンパク質をコードするトウモロコシのイエローストライプ1遺伝子を提供する。本明細書において、該遺伝子は、鉄の低い生物学的利用能の条件下、アップレギュレートされ、タンパク質生産が増大することが示されている。また、該タンパク質は、銅等の他の金属も輸送することができると示されている。また、本発明は、アラビドプシス遺伝子ファミリーおよびYS1に関連するys11−8と呼ばれる遺伝子産物を提供する。本発明は、遺伝子およびそれらの遺伝子産物、並びに、栄養作物内の鉄取り込みの増大とともに土のレメディエーションのためのトランスジェニック植物を作出し且つ使用する方法を提供する。

Description

【関連出願の説明】
【0001】
本願は、仮特許出願第60/249,222号(2000年11月16日出願)に基づく優先権を主張し、ここにその全文を援用する。
【0002】
(連邦政府の資金提供を受けた研究でなされた発明に対する権利の陳述)
本発明の一部は、米国国立衛生研究所助成金第RO1 GM38148号および米国農務省NRICGP助成金第99−35100−7601号として、米国政府の資金提供を受けてなされた。
【技術分野】
【0003】
本発明は概して、土壌からの鉄および他の金属、例えば重金属の取り込みを担うトウモロコシタンパク質、前記タンパク質をコードする遺伝子、前記遺伝子を含むベクター、前記遺伝子を含む組換え原核および真核細胞、ならびに前記ベクターを使ったトランスジェニック植物細胞、植物組織および植物全体の作出に関する。より具体的に述べると、本発明は、トウモロコシ・イエローストライプ1(yellow stripe 1(ys1))遺伝子およびアラビドプシス(Arabidopsis)のイエローストライプ1様(yellow stripe 1−like)(ysl)遺伝子のクローニングおよび単離に関する。また本発明は、土壌からの鉄の取り込みの増進および金属または重金属汚染土壌のバイオレメディエーションにys1またはyslトランスジェニック植物を使用する方法も提供する。さらに本発明は、植物体内でのFeの分布を変化させること、例えば作物の可食部がより多くの鉄を含むように変化させることを目的とする、ys1またはyslトランスジェニック植物の操作を提供する。
【背景技術】
【0004】
本明細書に記載する全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願について、ここに援用することを個別に明示した場合と同じように、いずれもここに援用される。この開示の一部はCurie,C.ら Nature 2001 49:346−349に報告されており、ここにその全文を援用する。
【0005】
鉄欠乏は、現在世界中で最も一般的なヒトの栄養問題であり、全米国立科学財団および世界保健機関の統計によれば、工業国と発展途上国の両方で、推定30億人がこの問題を抱えている。往々にして、作物は十分な量の鉄を土壌から取り込まず、退緑、低収量、および栄養の質の低下を引き起こす。世界中のほとんどの日常食で、植物は主要な鉄源として役立っている。残念なことにほとんどの作物は生物学的に利用可能な鉄を少量しか含んでいない。加えて、土壌中に利用可能な鉄が少ないことは、植物の生長を制限し、収穫量の低下を招く。世界中の土壌の約3分の1が鉄不足である。植物による鉄の取り込みを低下させる要因は、鉄不足だけではない。植物による鉄の取り込みは、例えば高い土壌pH(アルカリ度)、土壌中の高い石灰含量、石灰質土壌、土壌中の過剰なリン酸塩、高レベルの炭酸水素イオンを含む潅漑用水、過剰な水分と低い土壌温度、ならびに酸性土壌中の過剰量の銅およびマンガンなどの条件によって制限される場合もある。土壌中の鉄の生物学的利用能は高いpHによる影響を特に受け、酸化されてFe23になる。また、土壌における鉄不足は、リン含量の高い肥料を多量に施用した場合、土壌中のCu濃度が高い場合、およびマンガンのレベルが異常に高いまたは低い場合にも起こりうる(Hausenbuiller,RL.「Soil Science」第2版(1978)Wm.C.Brown Co.(アイオワ州ダビューク)の339−362頁)。
【0006】
植物中の鉄欠乏は、葉脈自体は緑色のまま葉脈間の組織が黄化することを視覚的特徴とする退緑を引き起こす。これが植物全体に広がるにつれて、葉の先端部および縁部は褐変し始め、乾燥して脆くなる。重症な場合は退緑が起こった葉の上に壊疽斑点を生じるか、またはその植物の死を引き起こす。鉄の、限られた生物学的利用能は、キレート化、すなわち鉄を結合する分子の特異的排出と再取り込み、および還元、すなわち鉄トランスポーターと共役した形質膜局在型三価鉄還元酵素、と広く定義することができる取り込み戦略の進化をもたらした(Briat,J−Fら,Trends Plant Sci.1997,2:187−193;Mori,S.Curr.Opin.Plant Biol.1999,2:250−253;Yi,Yら,Plant J.1996 10:835−844)。
【0007】
ストラテジー(Strategy)I植物(Briat,J−Fら,Trends Plant Sci.1997 2:187−193)と総称される双子葉植物および非イネ科単子葉植物は、鉄が不十分な条件下で、還元戦略を採用する。これらの生物は、プロトンを排出してその環境を酸性化することによって三価鉄イオンを可溶化し、次いで根の周りにある土壌中の不溶性の鉄(Fe[III])を膜結合型還元酵素によって酵素的に還元し、続いてFe[II]トランスポーターが二価鉄を取り込むことができるようにする。鉄飢餓時にアップレギュレートされる根の三価鉄キレート還元酵素(FRO2)と、根のFe[II]トランスポーター(IRT1)とが、最近、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からクローニングされ、特徴づけられた(Yi,Yら,Plant J.1996 10:835−844;Robinson,NJら,Nature 1999 397:694−697)。
【0008】
イネ科植物種は、ファイトシデロフォア(phytosiderophore)と呼ばれるムギネ酸(MA)ファミリーの低分子量2級アミノ酸による三価鉄キレート化を含む戦略(ストラテジーIIと呼ばれる)によって鉄を獲得する(Briat,J−Fら,Trends Plant Sci.1997 2:187−193)。これらの化合物は六座陽イオンキレート剤として機能する(Tagaki,Sら,J.Plant Nutr.1984 7:469−477)。ファイトシデロフォアは、鉄欠乏ストレスに対する応答として、メチオニン前駆体からニコチンアミンを経由して合成される。植物の根から放出されると、ファイトシデロフォアは、水酸化Feまたはリン酸Feなどに由来するやや溶けにくい鉄をキレートすることができる。この戦略による鉄獲得は、プロトンの放出が鉄の可溶化に無効であって三価鉄還元酵素活性が阻害される高いpHおよび/または高レベルの炭酸水素イオンを持つ土壌では、おそらく非常に有利である。これは、土壌中の鉄が不足している条件下または他の理由で鉄の生物学的利用能が制限されている条件下で、イネ科植物が非イネ科植物種よりも生態学的に優勢であることの説明になっている。ファイトシデロフォアが媒介する鉄の取り込みについてはS.Moriによる詳しい総説がある(ここにその全文を援用するAe,N.,Arihara,N.,Okada,K,およびA.Srinivasan編「Plant Nutrient Acquisition」(2001,Springer−Verlag,東京)の「The role of mugineic acid in iron acquisition: progress in cloning the genes for transgenic rice」)。
【0009】
研究により、三価鉄の還元はファイトシデロフォアが媒介する取り込みにとって必要条件ではないことが示されている。三価鉄還元酵素活性が妨害される生理学的条件(例えば高いpH)ではFe[III]・MAの取り込みは妨害されず、ストラテジーI植物における鉄取り込みを妨害するのに極めて有効な強いFe[II]キレート剤、4,7−ビフェニル−1,10−フェナントロリン−ジスルホン酸(BPDS)は、Fe[III]・MAの取り込みの妨害には無効である。細菌シデロフォアによる鉄の取り込みから類推して、ストラテジーII植物は、Fe・ファイトシデロフォア錯体全体を輸送すると考えられる。この考えを裏付ける証拠は59Fe[III]・[14C]デオキシムギネ酸(DMA)を使った二重標識研究によって得られる(von Wiren,Nら,Plant Physiol.1995 106:71−77)。
【0010】
イネ科ストラテジーII植物であるトウモロコシには、2つの鉄取り込み突然変異体、イエローストライプ1(yellowstripe1)(ys1)とイエローストライプ3(yellowstripe3)(ys3)が報告されている。両突然変異体はよく似た退緑黄縞斑入り葉の表現型を持ち、これは葉に鉄を直接施用することによって復帰させることができる。トウモロコシys1突然変異体はファイトシデロフォア取り込み機構を取り扱う多くの生理学的研究に使用されてきた。トウモロコシにおけるファイトシデロフォア媒介鉄取り込みにYS1が関与することは、いくつかの研究によって示されている。野生型(WT)トウモロコシは同時栽培されたオオムギのファイトシデロフォアを利用することができるようであるが、ホモ接合性ys1突然変異体は、退緑を生じたその外観から判断して、オオムギのファイトシデロフォアを利用することができなかった(Jolley,VDら,J.Plant Nutr.1991 14:45−58;Hopkins,BGら,J.Plant Nutr.1992 15:1599−1612)。ys1突然変異体植物は正常な量のトウモロコシ・ファイトシデロフォア、DMAを産生することが、後に確認された。59Fe−DMAからの59Feの取り込みと、苗条への転流はどちらも、ys1突然変異体植物ではWT対照での20分の1未満だった。これらの取り込み実験から、YS1は、10μM域のKmを持つ高親和性Fe[III]トランスポーターであることが示唆された(von Wiren,Nら,Plant Physiol.1995 106:7177)。
【0011】
本発明者らはトウモロコシys1遺伝子を初めてクローン化し、YS1タンパク質を単離した。YS1は、内在性膜タンパク質の構造的特徴を持つ新規タンパク質であることをここに示す。これは、特にFe−DMA含有培地での鉄取り込みに欠陥を持つ酵母突然変異体の成長を回復させる。さらにys1遺伝子は、根でも苗条でも、鉄飢餓に応答してアップレギュレートされることを、ここに示す。
【0012】
したがって本発明の目的は、鉄の生物学的利用能が土壌中の欠乏または植物による鉄取り込みを阻害する他の条件によって制限されている土壌から栄養学的に有意な量の鉄を取り込む食用植物の能力を改善するという、当技術分野における長年の要望を満たすことである。本発明は、鉄の生物学的利用能が低い条件下で本発明のys1遺伝子を発現させるトランスジェニック植物の作出を可能にする。
【0013】
植物は正常な生長および発生に鉄を必要とし、栄養的価値の面でも植物物質中の鉄は十分なレベルであることが望ましいが、鉄は高レベルに集積すると植物にとって有毒にもなりうる。したがって鉄が過剰な土壌では、収穫量も低下する。本発明者らは、ys1の発現が、その天然プロモーターの制御下にあっては、鉄が過剰に利用可能な条件ではダウンレギュレートされることを、ここに示す。
【0014】
したがって本発明のさらにもう一つの目的は、土壌中の高レベルの鉄に対して耐性を持ち、より高レベルの鉄を土壌から集積することができるトランスジェニック植物が得られるように、ys1の発現が高レベルの鉄によってダウンレギュレートされないベクターを作製することである。これらのトランスジェニック植物は、それら自体が持つ栄養的価値ゆえに有用であるか、または鉄が過剰に豊富な土壌に対して耐性を持たない植物−例えば鉄が過剰に豊富な土壌ではその生長能力が低下する植物−が生長できるように土壌を調節するのに有用である。例えば、耐性の低い植物の周りの局所的鉄濃度を一過性に低下させるために、ys1トランスジェニック植物を、鉄が過剰に豊富な土壌に対して耐性を持たない前記植物と同時に栽培することができる。したがって、この方法では、将来栽培される作物のために生物学的に利用可能な鉄を長期間にわたって低下させることなく、ある範囲の土壌で、鉄を一過性かつ局所的に枯渇させることができるだろう。
【0015】
世界中で耕作されている土壌の12%までが、植物の生長と発生を妨げ収穫量の低下をもたらす高濃度の金属(銅およびマグネシウムなどの重金属を含む)を含有している。また、工業廃棄物などによる土壌全般の金属汚染は、世界中で健康に対する重大な脅威となっている。土壌の金属汚染に関して特に関心が持たれるのは、その多くが植物および/または動物にとって有毒な、重金属による汚染である。植物を利用して行なわれる土壌からの金属の除去はファイトレメディエーション(phytoremediation)と呼ばれており、しばしばファイトエクストラクション(phytoextraction)、バイオレメディエーション、植物バイオレメディエーション(botanical−bioremediation)およびグリーンレメディエーション(Green Remediation)とも呼ばれる。ファイトエクストラクションについては、例えば「Plants that Hyperaccumulate Heavy Metals: Their Role in Phytoremediation, Microbiology, Archaeology, Mineral Exploration and Phytomining」(1998)CAB International(英国オックスフォード)の261〜287頁にS.P.McGrathによる詳しい総説がある。驚いたことに、本発明者らは、ys1が鉄以外の他の金属、例えば銅などを取り込む能力も持っていることを見いだし、これを本願に開示する。しかしトウモロコシは、高レベルの金属を取り込む能力は持つが、高レベルの金属を貯蔵または集積する能力は持たない、大きい高バイオマス植物である。したがって、バイオレメディエーションへのトウモロコシの使用は費用対効果に乏しく、新たな廃棄物処理問題を引き起こすかもしれない。汚染土壌から金属を除去するために植物を利用する場合は、金属超集積体表現型を持つ植物が、高い植物物質収穫能力を持つ植物よりもはるかに重要である。そのような金属超集積体の一つはトラスピ・カエルレセンス(Thlaspi caerulescens)である。トウモロコシ(Zea mays)の場合、植物バイオマス1Kgにつき500mgのZnで収穫量の有意な低下が起こるのに対して、このトラスピ・カエルレセンスは、植物バイオマス1Kgにつき約25,000mgまでのZnに超耐性を持つことができる。超集積植物の他の典型例には、アマランサス・パニキュラータ(Amaranthus paniculata)、カラシナ(Brassica juncea)、アビシニアガラシ(B. carinata)、キャベツ(B. oleracea)、クロガラシ(B. nigra)、アブラナ(B. campestris)、セイヨウアブラナ(B. napus)、ブラシカ・トルニフォルティイ(B. tournifortii)、ダイコン(Raphanus sativus)、シロガラシ(Sinapis alba)、ノハラガラシ(S. arvensis)、シナピス・フレクスオーサ(S. flexuosa)およびシナピス・プベセンス(S. pubescens)などがあるが、これらに限るわけではない。超集積の方法と超集積植物のさらなる典型例は、例えばR.R.Brooksによって「Plants that Hyperaccumulate Heavy Metals: Their Role in Phytoremediation, Microbiology, Archaeology, Mineral Exploration and Phytomining」(1998)CAB International(英国オックスフォード)の55〜94頁に、またReeves RDらによって「Phytoremediation of Toxic Metals」(2000)John Wiley & Sons,Inc.(ニューヨーク)の193〜229頁に、またSalt DEらによって「Phytoremediation of Toxic Metals」(2000)John Wiley & Sons,Inc.(ニューヨーク)の231〜246頁に記載されている。
【0016】
超集積体である植物は、根および苗条細胞中の高レベルの金属に対して耐性(超耐性)を持つことができなればならないが、金属の液胞コンパートメント化が多くの天然超集積植物の超耐性の原因になっているようである。植物は根から苗条に元素を高速に転流する能力を持たなければならない。通常、根の金属濃度は苗条の金属濃度より10倍以上高いが、超集積体では苗条金属濃度が根でのレベルを越える場合もある(Chaney,RLら,Curr.Opin.Biotechnol.1997,8:279−284;Vogeli−Lange Rら,Plant Physiol 1990,92:1086−1093;Ortiz DFら,J Biol Chem 1995,270:4721−4728;Guerinot,ML「Phytoremediation of Toxic Metals」(2000)John Wiley & Sons,Inc.(ニューヨーク)の193〜229頁)。超集積体は高濃度の金属に耐えることができるが、それらの生長は遅いことが多く、それらの金属が毒性を示すであろう植物よりも速くは土壌から金属を取り込まないかもしれない。例えば、トラスピ・カエルレセンス(T. caerulescens)はトマトとほぼ同程度にしか栄養液からZnを集積しなかったが、トマトが30μM Znで激しい損傷を受けたのに対して、トラスピ・カエルレセンスは10,000μM Znまで激しい損傷を受けなかった(Brown SLら,Soil Sci Soc Am J 1995,59:125−133)。
【0017】
ファイトレメディエーションにおける植物による金属の取り扱いで超集積に代わるもう一つの方法は、揮発法(volatilization)と呼ばれている。揮発法は、例えばR.R.Brooksが「Plants that Hyperaccumulate Heavy Metals: Their Role in Phytoremediation, Microbiology, Archaeology, Mineral Exploration and Phytomining」(1998)CAB International(英国オックスフォード)の289〜312頁に記載している。
【0018】
ファイトレメディエーションにとって重要な植物活性の分子的理解はほとんどなされてないが、アラビドプシス(Arabidopsis)および酵母突然変異体によるFe、CdおよびZn取り込みの特徴づけに関する最近の進歩により、商業利用のためのトランスジェニック改良型ファイトレメディエーション栽培品種を開発するための戦略が示されている。また、本発明者らは、アラビドプシス中に存在し、やはり金属を取り込む能力を持つ、一群の関連イエローストライプ1様(yellow stripe 1−like)(YSL)タンパク質も見いだした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明はトウモロコシのイエローストライプ1(yellow stripe 1)(ys1)遺伝子(配列番号1)およびその遺伝子のタンパク質産物(配列番号2)を対象とする。ys1 cDNAの配列はGenBankアクセッション番号AF186234として登録されている。さらに本発明は、アラビドプシスのイエローストライプ1様(yellow stripe 1−like)(ysl)遺伝子(配列番号3、5、7、9、11、13、15および17)ならびにこれらの遺伝子のタンパク質産物(それぞれ配列番号4、6、8、10、12、14、16および18)を対象とする。本発明者らは、ys1遺伝子産物がトウモロコシにおけるファイトシデロフォア媒介性鉄取り込みを担っていることを発見した。本発明者らは、YS1を他の生物に導入できること、そしてYS1はそれらの生物においてファイトシデロフォア媒介性鉄取り込みを媒介できることを見いだし、ここに開示する。さらに本発明者らは、驚いたことに、YS1が形質転換生物への他の金属の取り込みも媒介できることを発見した。ここに開示する本発明の核酸分子は金属イオントランスポーターとして作用するタンパク質をコードするので、本発明によれば、ここに開示する核酸分子の発現パターンおよび/または発現レベルを変化させることにより、任意の植物で、金属イオンホメオスタシスを変化させることが可能になる。したがって本発明の核酸を使って、高度に望ましく商業的に有益で、ユニークかつ農学的に有用な形質を、所望する任意の植物に付与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的の一つはトウモロコシys1核酸およびそれが産生するYS1タンパク質を提供することである。本発明はアラビドプシスのysl核酸およびそれらが産生するYSLタンパク質も提供する。本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の少なくとも6アミノ酸の断片をコードする単離された核酸分子、および配列番号1、3、5、7、9、11、13、15または17を含む核酸分子にハイブリダイズする単離された核酸分子、からなる群より選択される単離された核酸分子を包含する。核酸分子には、本発明のタンパク質をコードする天然核酸分子の機能的等価物を含めることができる。天然核酸分子の機能的等価物には、例えば天然アレル変異体、ならびに本発明の分子をコードする当該核酸分子の能力を実質的に妨げることがないような形でヌクレオチドの挿入、欠失、置換および/または逆位が起こっている改変核酸分子などが含まれるが、これらに限るわけではない。前記アミノ酸置換は保存的であっても、非保存的であってもよい。好ましい機能的等価物は、Sambrookら(1989)「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の条件に従って、シグナル伝達タンパク質コード核酸分子の少なくとも一部に、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる配列(すなわち少なくとも約70%の一致率を持つ配列)を含む。ストリンジェントな条件とは、0.1%SDS、200mM NaCl、6mM Na2HPO4、2mM EDTAからなるpH=6.8の緩衝液中でハイブリダイゼーションが行なわれることを意味する。より好ましい機能的等価物は、シグナル伝達タンパク質コード核酸分子の少なくとも一部に、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる配列(すなわち少なくとも約90%の一致率を持つ配列)を含む。高度にストリンジェントな条件とは、0.1%SDS、10mM NaCl、0.3mM Na2HPO4、0.1mM EDTAからなるpH=6.8の緩衝液中でハイブリダイゼーションが行なわれることを意味する。本発明の核酸分子は、配列番号2に記載の配列に対して、少なくとも約50または60%のアミノ酸配列一致率を持つタンパク質、好ましくは配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18に記載のタンパク質配列に対して、少なくとも約70または75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の配列一致率を持つタンパク質をコードしうる。
【0021】
さらに本発明は、1つまたは複数の発現制御因子に作動可能に連結された核酸分子、例えば上記単離された核酸分子を含むベクターなども包含する。また本発明は、本発明の核酸分子を含むように形質転換された宿主細胞を包含し、さらには、タンパク質の製造方法であって、本発明の核酸分子で形質転換された宿主細胞を前記タンパク質が発現される条件下で培養するステップを含む方法も包含する。
【0022】
さらに本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の少なくとも6アミノ酸の断片を含む単離されたポリペプチド、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の保存的アミノ酸置換を含む単離されたポリペプチド、および配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の天然アミノ酸配列変異体を含む単離されたポリペプチド、からなる群より選択される単離されたポリペプチドも提供する。本発明のポリペプチドは、配列番号2に記載の配列に対して少なくとも約50または60%のアミノ酸配列一致率を持つアミノ酸配列を有するポリペプチド、好ましくは配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18に記載のタンパク質配列に対して少なくとも約70または75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の配列一致率を持つアミノ酸配列を有するポリペプチドも包含する。
【0023】
本発明は、本発明の核酸コンストラクトを含むベクター、ならびに本発明のベクターを含む宿主細胞、組換え植物細胞およびトランスジェニック植物を提供する。より具体的には、本発明は、上記核酸コンストラクトに関してヘミ接合性、ヘテロ接合性またはホモ接合性であるような細胞およびトランスジェニック植物を提供するものであり、ここに前記植物は一倍体、二倍体または倍数体であることができる。本発明の目的の一つは、一コピーまたは多コピーの本発明YS1またはYSLタンパク質産物の1つまたは複数を発現させるような細胞およびトランスジェニック植物を提供することである。多コピーのYS1またはYSLタンパク質の1つを発現させるか、2以上のYS1またはYSLタンパク質を発現させる細胞またはトランスジェニック植物は、例えば細胞もしくはトランスジェニック植物への金属の取り込みを増進するために、または細胞もしくはトランスジェニック植物によって取り込まれる金属の範囲もしくは種類を広げるために、望ましいだろう。
【0024】
さらに本発明は、YS1および/またはYSL、またはそのホモログもしくはオルソログの少なくとも1つを発現するように遺伝子改変されている植物、またはYS1、YSLタンパク質またはそのホモログもしくはオルソログを天然に発現させるかもしれない植物におけるYS1および/またはYSLまたはそのホモログもしくはオルソログの発現を検出するための核酸プローブも提供する。さらに本発明は、生物学的試料または組織切片をYS1、YSLタンパク質またはそのホモログもしくはオルソログの発現について精査するための、YS1、YSLタンパク質に対する抗体またはそのホモログもしくはオルソログに対する抗体の使用も提供する。前記生物学的試料または組織切片は、前記タンパク質を発現させるように遺伝子改変されている植物またはYS1、YSLタンパク質またはそのホモログもしくはオルソログを天然に発現させるかもしれない植物から得られるものであってよい。
【0025】
本発明のさらにもう一つの目的は、栄養学的に有意な量の金属、例えば鉄を、土壌から取り込む植物の能力を改善するという当技術分野における長年の要望を満たすこと、および植物可食部または他の使用可能な植物部分中の金属微量栄養素含量が増加するように植物における金属の沈着を変化させることである。したがって本発明では、特定の栽培条件下で植物における金属イオンの沈着パターンが変化するように本発明のys1またはysl遺伝子産物の少なくとも1つを発現させるトランスジェニック植物を作出することができる。本発明のトランスジェニック植物は、例えば土壌、砂、パーライト、バーミキュライト、水耕法など(ただしこれらに限らない)、任意の適切な培地で栽培することができる。また、本発明のトランスジェニック植物は、標的金属が低濃度、平均濃度または高濃度である条件下で、特定の植物部分に特定の金属を集積するために、使用することもできる。
【0026】
本発明のさらにもう一つの目的は、鉄の生物学的利用能が土壌中の欠乏または植物による鉄取り込みを阻害する他の条件によって制限されている土壌から栄養学的に有意な量の鉄を取り込む食用植物の能力を改善するという、当技術分野における長年の要望を満たすことである。したがって本発明では、鉄の生物学的利用能が低い条件下で本発明のys1またはysl遺伝子産物の少なくとも1つを発現させるトランスジェニック植物を作出することができる。
【0027】
本発明のさらにもう一つの目的は、土壌中の高レベルの鉄に対して耐性を持ち、より高レベルの鉄を土壌から集積することができるトランスジェニック植物が得られるように、ys1またはysl遺伝子の発現が正常な鉄レベルまたは高い鉄レベルによってダウンレギュレートされないベクターを作製することである。例えば、そのようなベクターでは、通常ys1に付随している鉄調節性プロモーターの代わりに、ys1の持続的発現を可能にするプロモーターが使用されるだろう。これらのトランスジェニック植物は、それら自体が持つ栄養的価値ゆえに有用であるか、または鉄が過剰に豊富な土壌に対して耐性を持たない植物−もしくは鉄が過剰に豊富な土壌ではその生長能力が低下する植物−が生長できるように土壌を調節するのに有用である。したがって本発明は、鉄濃度または他の重金属濃度が高い条件下でダウンレギュレートされないプライマーの制御を受けるys1またはyslコード配列を含むベクターを提供する。前記プロモーターは、同じベクター上に位置してもよいし、別個のベクター上に位置してもよい。
【0028】
本発明のもう一つの目的は、土壌からの重金属の取り込みを促進、加速、増進および/または増加させるために、YS1またはYSLタンパク質の少なくとも1つを発現させるトランスジェニック植物を提供することである。トランスジェニック植物は、天然の重金属超集積体であってもよいし、超集積体表現型が発現するように付加的に操作されてもよい。ここに開示する核酸は、金属イオンの沈着パターンを変化させて、高レベルの金属イオンを封鎖することができる組織に金属を効率よく輸送できるようにするためにも、使用することができる。
【0029】
さらに本発明は、バイオレメディエーションに上記トランスジェニック植物を使用する方法も提供する。
【0030】
本発明の他の目的、利点および特徴は、本願明細書および図面を精査すれば、当業者には明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
別段の定義をしない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解している通りの意味を持つ。本発明の実施または試験には、本明細書に記載する方法および材料と類似するまたは等価な方法を使用することができるが、好ましい方法および材料を説明する。
【0032】
本発明のツールおよび方法が、配偶子を産生する全ての植物に当てはまることは、上記の説明から理解されるだろう。そのような植物には、例えばイネ科飼料作物、芝草、観賞用イネ科植物、マメ科飼料作物、地表植被、野菜、畑作物(例えばダイズ、トウモロコシ、コメ、綿、タバコ、モロコシ、フィールドピーなど)、木および装飾花などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0033】
(定義)
本明細書で使用する用語「アレル」は、ある遺伝子の、いくつかある代替型のいずれかを指す。
【0034】
本明細書で使用する用語「キレート剤」は、金属イオンが少なくとも2つの非金属化学化合物に結合して複素環を形成するような形で金属イオンに結合する任意の化学化合物を指す。多くのキレート剤は金属イオンとの間に可溶性またはある程度可溶性の錯体を形成し、それが植物に対する金属の利用能を高め、植物が特定の金属を集積することを可能にするだろう。他のキレート剤は金属との間に不溶性錯体を形成して、(i)金属を濃縮して、それらが植物の根に物理的または化学的に集積(すなわち吸収)する働き、および/または(ii)根域の近傍からの金属の浸出またはその他の除去を防止する働きをしうる。キレート剤の例には以下に挙げるものがあるが、これらに限るわけではない:プルプル酸アンモニウム(ムレキシド)、2,3−ブタンジオンジオキシム(ジメチルグリオキシム)、3,6−ジスルホ−1,8−ジヒドロキシナフタレン(クロモトロプ酸)、ならびにチオ尿素、α−ベンゾインオキシム(クプロン(cupron))、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、ジエチレン−トリアミノ五酢酸(DTPA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジフェニルチオカルバゾン、ニトリロ三酢酸(NTA)、置換1,10−フェナントロリン(例えば5−ニトロ−1,10−フェナントロリン)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(ジエチルジチオカルバメート(クプラール(cupral))、2−テノイル−2−フロイルメタン、テノイル−トリフルオロアセトン、トリエチレンテトラミン、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびクエン酸。例えば、ここにその全文を援用する参考文献「Data for Biochemical Research」(Claredon Press,英国オックスフォード,1986)の399〜415頁、Dawsonら編「Stability Constants of Metal Complexes」などを参照されたい。
【0035】
本明細書で使用する用語「作物」は、任意の商業的目的で栽培される任意の植物を指し、それらの商業的目的には、例えば以下の目的が含まれるが、これらに限るわけではない:種子生産、乾草生産、観賞用途、果実生産、液果生産、野菜生産、油生産、タンパク質生産、植物飼料生産、動物放牧、ゴルフコース、芝生、花生産、造園、砂防、緑肥、土壌の易耕性/健康状態の改善、医薬品/薬物の製造、食品または食品添加物の製造、喫煙製品、パルプ製造、および木材製造。
【0036】
本明細書で使用する用語「他家受粉」または「交雑育種」は、ある植物上のある花の花粉を別の植物のある花の胚珠(柱頭)に(人工的にまたは自然に)適用するプロセスを指す。
【0037】
本明細書で使用する用語「栽培品種」は、園芸技術または作物栽培技術によって作出された植物の変種、株または品種であって、野生の集団には通常見いだされないものを指す。
【0038】
本明細書で使用する用語「雌性」は、胚珠を産生する植物を指す。雌性植物は一般に受精後に種子を産生する。「雌性植物」と呼ばれる植物は、雄性生殖器と雌性生殖器の両方を持つ場合がある。あるいは、「雌性植物」は、天然に(例えば雌雄異株種の場合)、または(例えば雄穂除去による)除雄のせいで、雌性生殖器だけを含む場合もある。
【0039】
本明細書で使用する用語「雑種世代」は、特定の親世代に続く細胞、組織または生物の世代のいずれかを指す。親の交配によって生じる世代は雑種第一代(「F1」または「F1」と表記)であり、F1個体の交配によって生じる世代は雑種第2代(「F2」または「F2」と表記)である。
【0040】
本明細書で使用する用語「配偶子」は、同様の起源を持つが性が反対であるもう一つの配偶子と融合して、新しい個体に発達する潜在能力を持つ接合子を形成する核(およびしばしば細胞質)を有する生殖細胞を指す。配偶子は半数体であり、雌雄に分化している。
【0041】
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、生物学的機能に関係するDNAのセグメントを指す。したがって遺伝子は、コード配列および/またはそれらの発現に必要な調節配列を含むが、これらに限るわけではない。遺伝子は、例えば他のタンパク質のための認識配列などを形成する非発現DNAセグメントを含むこともできる。遺伝子は、例えば興味ある供給源からのクローニングまたは既知配列情報もしくは予想配列情報からの合成など、様々な供給源から得ることができ、所望のパラメータを持つように設計された配列を含みうる。
【0042】
本明細書で使用する用語「遺伝子型」は、個々の細胞、細胞培養、組織、植物または植物群の遺伝子構成を指す。
【0043】
本明細書で使用する用語「異種ポリヌクレオチド」または「異種核酸」または「外因性DNAセグメント」は、その宿主細胞にとって異物である供給源に由来するか、同じ供給源に由来するとすれば、元の形から改変されている、ポリヌクレオチド、核酸またはDNAセグメントを指す。したがって、ある宿主細胞中の異種遺伝子には、その宿主細胞にとって内因性であるが改変されている遺伝子が包含される。したがってこの用語は、その細胞にとって異物もしくは異種であるDNAセグメント、またはその細胞にとって相同であるがその因子が通常見いだされない宿主細胞核酸内の位置に存在するDNAセグメントを指す。外因性DNAセグメントが発現すると、外因性ポリペプチドが生じる。
【0044】
本明細書で使用する用語「異種形質」は、外因性DNAセグメント、異種ポリヌクレオチドまたは異種核酸によって形質転換宿主細胞またはトランスジェニック生物に付与された表現型を指す。
【0045】
本明細書で使用する用語「ヘテロ接合体」は、少なくとも1つの遺伝子座に異なるアレル(与えられた遺伝子の型)が存在している個々の二倍体または倍数体細胞または植物を指す。
【0046】
本明細書で使用する用語「ヘテロ接合性」は、特定の遺伝子座に異なるアレル(与えられた遺伝子の型)が存在することを指す。
【0047】
本明細書で使用する用語「ホモログ」は、別の種に由来する核酸またはペプチド配列と共通する起源および類似する機能を持つ核酸またはペプチド配列を指す。
【0048】
本明細書で使用する用語「ホモ接合体」は、1つまたは複数の遺伝子座に同じアレルを持つ個々の細胞または植物を指す。
【0049】
本明細書で使用する用語「ホモ接合性」は、相同な染色体セグメントの1つまたは複数の遺伝子座に同一のアレルが存在することを指す。
【0050】
本明細書で使用する用語「雑種」は、1つまたは複数の遺伝子が異なる親同士の交配によって得られる任意の個々の細胞、組織または植物を指す。
【0051】
本明細書で使用する用語「超集積体」は、対応する野生型と比較して乾燥バイオマスに占めるパーセンテージが高くなるような量の重金属を取り込んでその組織に貯蔵することができる任意の植物を指す。より具体的には、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約0.5%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。好ましくは、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約1.0%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。より好ましくは、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約1.5%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。さらに好ましくは、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約2.0%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。最も好ましくは、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約2.5%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。最適には、超集積体は、当該植物の乾燥バイオマスの約5.0%に少なくとも等しいかまたはそれを越える量の重金属を貯蔵することができる植物である。あるいは、超集積体は、金属含有土壌中に存在する金属の量より乾燥重量ベースで少なくとも約10倍多い金属を苗条に取り込んで集積することができる任意の植物、または金属含有土壌中に存在する金属の量より乾燥重量ベースで少なくとも約20倍多い金属を根に集積することができる任意の植物であると定義することもできる。
【0052】
超集積植物の例には、以下に挙げるものがあるが、これらに限るわけではない:アリッサム・ピニフォリウム(Alyssum pinifolium)、アマランサス・パニキュラータ(Amaranthus paniculata)、ボルンムエレラ・バルダッキイ亜種マルグラフィイ(Bornmuellera baldaccii ssp. markgrafii)、カラシナ(Brassica juncea)、アビシニアガラシ(B. carinata)、キャベツ(B. oleracea)、クロガラシ(B. nigra)、アブラナ(B. campestris)、セイヨウアブラナ(B. napus)、クロガラシ(B. nigra)、ブラシカ・トルニフォルティイ(B. tournifortii)、ダイコン(Raphanus sativus(L.))、カロドフォラ(Calodophora)属の種、ジカペタルム・ゲロニオイデス(Dichapetalum gelonioides)、フレンチソレル(Rumex scutatus)、シロガラシ(Sinapis alba(L.))、ノハラガラシ(S. arvensis(L.))、シナピス・フレクスオーサ(S. flexuosa)およびシナピス・プベセンス(S. pubescens(L.))、トラスピ・アルペストレ変種カラミナレ(Thlaspi alpestre var. calaminare)、シャグマハギ(Trifolium arvense)、トラスピ・ロツンジフォリウム(Thlaspi rotundifolium)、トラスピ・カエルレセンス(Thlaspi caerulescens)、トラスピ・ゴエシンゲンセ(Thlaspi goesingense)、ビオラ・カラミナリア(Viola calaminaria)、トウモロコシ(Zea mays)、アグロスチス・カピラリエス(Agrostis capillaries)、およびラレア・トリデンテート(Larrea tridentate)(米国特許第5,927,005号;同第6,159,270号;Huang,JWら,New Phytol.1996 134:75−84;Cotter−Howells,JDら,Appl.Geochem.1996 11:335−342;Vazquez,MDら,J&C Presl.Bot.Acta 1994 107:243−250;Reeves,R.D.ら「Phytoremediation of Toxic Metals,I」(RaskinおよびB.D.Ensley編,John Wiley & Sons,Inc.,2000)の12章、193〜229頁)。
【0053】
本明細書で使用する「超集積体遺伝子」は、野生型植物または遺伝子改変もしくは遺伝子操作植物に超集積体表現型を付与する遺伝子産物をコードする任意の核酸配列を指す。
【0054】
本明細書で使用する「同系交配」または「近交系」は比較的純粋な育種株を指す。
【0055】
本明細書で使用する用語「ノックイン」は、ある遺伝子がゲノム中に導入されている細胞、組織または生物を指し、前記遺伝子の起源は外因性でも内因性でもよい。一般に、導入遺伝子の起源が内因性である場合、その遺伝子は改変遺伝子であるだろう。起源が外因性である導入遺伝子は、野生型であってもよいし、改変型であってもよい。
【0056】
本明細書で使用する用語「ノックアウト」は、内因性遺伝子の発現の部分的または完全な抑制が(例えばその遺伝子の少なくとも一部の欠失、その遺伝子の少なくとも一部の第2の配列による置換、停止コドンの導入、重要なアミノ酸をコードする塩基の突然変異、またはイントロン接合部の除去などに基づいて)起こっている細胞、組織または生物を指す。標的遺伝子は破壊、不活化または欠失により、部分的にまたは完全に抑制することができる。前記部分的抑制を本明細書では「ノックダウン」という場合もある。ノックアウトはインビトロ組換え技術およびインビボ組換え技術を使って行なうことができる。遺伝子機能を研究するために、通常は細胞、組織または生物を遺伝子改変して、所定の野生型アレルを突然変異型アレルで置き換える。ノックアウトは、標的遺伝子とクローン化DNAの断片との間の相同組換えを使って、破壊しようとする遺伝子中に「ジャンク(junk)」DNAの断片を挿入することにより、行なうことができる。生物が半数体である場合は、この技術により、その生物が持つ当該遺伝子のただ一つのコピーがノックアウトされることになるだろう。生物が二倍体である場合は、2つのアレルのうちの一方だけがノックアウトされるので、遺伝子のコピーが2つともノックアウトされた二倍体生物を作出するには、従来の育種を行なう必要があるだろう。
【0057】
本明細書で使用する用語「系統」は広義に用いられ、組織培養技術によって単一の親植物から栄養繁殖した植物群、または共通する親に由来するため遺伝的に極めて類似している同系交配植物群を包含する(ただしこれらに限るわけではない)。ある植物が(a)ある特定の系統の材料から再生された一次形質転換体(T0)植物である場合、(b)その系統のT0植物から構成される家系を持つ場合、または(c)(例えば同系交配または自家受粉などにより)共通する祖先を持つために遺伝的に極めて類似している場合に、その植物はその特定の系統に「属する」という。これに関連して「家系」という用語は、例えばヘテロ接合(ヘミ接合)状態またはホモ接合状態にある遺伝子または遺伝子の組合わせがその植物に望ましい形質を付与するように達成される有性交配の観点から見た、植物の系譜を意味する。
【0058】
本明細書で使用する用語「遺伝子座」は、遺伝学的に定義された任意の部位を指す。遺伝子座は、遺伝子、または遺伝子の一部、または何らかの調節的役割を持つDNA配列であってよく、異なる配列によって占められていてもよい。
【0059】
本明細書で使用する用語「雄性」は、花粉粒を産生する植物を指す。「雄性植物」は一般に卵子を受精させるための配偶子を産生する性を指す。「雄性植物」と呼ばれる植物は、雄性生殖器と雌性生殖器の両方を持つ場合がある。あるいは、「雄性植物」は、天然に(例えば雌雄異株種の場合)、または(例えば子房の除去による)除雄のせいで、雄性生殖器だけを含む場合もある。
【0060】
本明細書で使用する用語「集団選抜」は、個々の植物を選抜し、それらの種子の集合体から次世代を増殖させる選抜方式を指す。
【0061】
本明細書で使用する用語「金属」は、好ましくは、金属含有環境に見いだされる金属イオンを指す。この用語がイオン型でない元素状金属も包含することは理解されるだろう。本発明の方法によって集積させることができる金属には、鉛、クロム、水銀、カドミウム、コバルト、バリウム、ニッケル、モリブデン、銅、ヒ素、セレン、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、金、マンガン、銀、タリウム、スズ、ルビジウム、バナジウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、セシウム、ウラン、プルトニウム、およびセリウムなどの安定金属および放射性金属が含まれる。植物は数種類の金属を濃縮することがあり、このことから金属取り込み機序は必ずしも金属特異的でないことが暗示されるので、「金属」という用語は2つ以上の金属も包含するものとする。「金属」という用語は、金属と一般的有機汚染物質との混合物、例えば鉛またはクロムとニトロフェノール、ベンゼン、アルキルベンジルスルホネート(洗剤)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)および/またはハロゲン化炭化水素(例えばトリクロロエチレン)との組合わせなども包含する。「金属」という用語は、少なくとも約5.0の比重を持つ任意の金属が含まれる「重金属」をも包含し、そのような「重金属」であることが好ましい場合もある。さらに「金属」という用語は、当該植物を消費する者にとって栄養的価値を持ちうる任意の金属を包含する。「金属」という用語は、それを消費するかまたはそれと接触する生物にとって有毒な任意の金属も包含する。
【0062】
本明細書で使用する用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびその一本鎖型または二本鎖型のポリマーを指す。特に限定しない限り、これらの用語は、基準核酸と類似する結合特性を持ち天然オリゴヌクレオチドと同様の方法で代謝される既知の天然ヌクレオチド類似体を含む核酸を包含する。別段の表示がない限り、ある特定の核酸配列は、明示した配列に加えて、保存的に改変されたその変異体(例えば縮重コドン置換)および相補配列も、暗黙のうちに包含する。具体的に述べると、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択した(または全ての)コドンの3番目の位置を混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換した配列を作製することによって達成することができる(Batzerら(1991)Nucleic Acid Res.19:5081;Ohtsukaら(1985)J.Biol.Chem.260:2605−2608;Cassolら(1992);Rossoliniら(1994)Mol.Cell.Probes 8:91−98)。核酸という用語は遺伝子、cDNA、および遺伝子がコードするmRNAと同義に用いられる。「核酸」という用語は、当業者に周知の方法を使って実験室で合成されたポリヌクレオチドも包含する。
【0063】
本明細書では、あるDNAセグメントがもう一つのDNAセグメントと機能的な関係に置かれている場合、そのDNAセグメントは「作動可能に連結」されているという。例えば、シグナル配列のためのDNAは、それがあるポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるのであれば、そのポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されており、プロモーターまたはエンハンサーは、それがあるコード配列の転写を刺激するのであれば、そのコード配列に作動可能に連結されている。一般的には、作動可能に連結されたDNA配列は隣接しており、シグナル配列の場合は、隣接していると共に、読み枠が一致している。しかしエンハンサーは、それらが転写を制御するコード配列と隣接している必要はない。連結は、都合のよい制限部位またはその代わりに挿入されたアダプターもしくはリンカーでのライゲーションによって達成される。
【0064】
本明細書で使用する用語「自然受粉」は、遺伝子流動に対して効果的な障壁が設けられている閉鎖受粉とは対照的に、遺伝子流動を自由に受ける植物集団を指す。
【0065】
本明細書で使用する用語「自然受粉集団」または「自然受粉品種」は、標準に選抜された、通常は少なくとも多少の他家受粉を行なうことができる植物であって、多様性を示すかもしれないが、その集団または品種を他の集団または品種と区別する手段となりうる1つまたは複数の遺伝子型または表現型上の特徴も持っているものを指す。他家受粉に対する障壁のない雑種は、自然受粉集団または自然受粉品種である。
【0066】
本明細書で使用する用語「オルソログ」は、別の種に由来する核酸またはペプチド配列と類似する機能を持つ核酸またはペプチド配列を指す。
【0067】
本明細書で使用する用語「胚珠」は雌性配偶体を指し、一方、「花粉」という用語は雄性配偶体を意味する。
【0068】
本明細書で使用する用語「表現型」は、個々の細胞、細胞培養、植物または植物群の遺伝子構成(すなわち遺伝子型)と環境との相互作用によって生じる、それぞれの観察可能な特徴を指す。
【0069】
本明細書で使用する用語「植物」は、植物全体、植物器官(例えば葉、茎、根など)、種子ならびに植物細胞およびその子孫を指す。本発明の方法で使用することができる植物の種類は、一般に、形質転換技術を適用することができる高等植物の種類と同じ程度に広く、単子葉植物と双子葉植物の両方を含む。
【0070】
本明細書で使用する用語「プロモーター」は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に関与するDNAの一領域を指す。
【0071】
本明細書で使用する用語「タンパク質」「ペプチド」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基およびそのポリマーを指す。特に限定しない限り、これらの用語は、基準アミノ酸と類似する結合特性を持ち天然アミノ酸残基と同様の方法で代謝される既知の天然アミノ酸残基類似体を含むアミノ酸を包含する。別段の表示がない限り、ある特定のアミノ酸配列は、明示した配列に加えて、保存的に改変されたその変異体(例えば保存的置換)も、暗黙のうちに包含する。「ポリペプチド」という用語は、当業者に周知の方法を使って実験室で合成されたポリペプチドも包含する。
【0072】
本明細書で使用する用語「組換え体」は、組換えDNAによる形質転換を受けた細胞、組織または生物を指す。最初の組換え体を「R0」または「R0」と呼ぶ。R0を自家受粉させると、「R1」または「R1」と呼ばれる第1形質転換世代が得られる。
【0073】
本明細書で使用する用語「自家受粉した〜」または「自家受粉」は、ある植物上のある花の花粉を同じ植物上の同じまたは異なる花の胚珠(柱頭)に(人工的にまたは自然に)適用することを意味する。
【0074】
本明細書で使用する用語「合成品種」は、特定の一組のクローンまたは種子繁殖系統を異種交配することによって得られる一組の子孫を指す。合成品種は、他家受精、自家受精、きょうだい受精(sib−fertilization)によって得られる種子の混合物を含みうる。
【0075】
本明細書で使用する用語「形質転換」は、細胞への核酸(すなわちヌクレオチドポリマー)の導入を指す。本明細書で使用する用語「遺伝的形質転換」は、細胞へのDNA、特に組換えDNAの導入と取り込みを指す。
【0076】
本明細書で使用する用語「形質転換体」は、形質転換を受けた細胞、組織または生物を指す。最初の形質転換体を「T0」または「T0」と呼ぶ。T0を自家受粉させると、「T1」または「T1」と呼ばれる第1形質転換世代が得られる。
【0077】
本明細書で使用する用語「導入遺伝子」は、その機能が保証されるような形で生物、宿主細胞またはベクターに挿入される核酸を指す。
【0078】
本明細書で使用する用語「トランスジェニック」は、様々な形質転換方法の一つによって外来または改変遺伝子を受容した細胞、細胞培養、生物、植物および植物の子孫を指し、前記外来または改変遺伝子は、その外来または改変遺伝子を受容する植物または生物の種と同じ種または異なる種から得られる。
【0079】
本明細書で使用する用語「転位事象」は、供与部位から標的部位へのトランスポゾンの移動を指す。
【0080】
本明細書で使用する用語「トランスポゾン」は遺伝因子を指し、ある染色体部位から別の染色体部位に移動することができるDNAまたはRNAのセグメントを含むが、これらに限らない。
【0081】
本明細書で使用する用語「品種」は、ある種のなかで形態または機能が他の類似する多くの個体とは異なっている一群の個体からなる、種の下位分類単位を指す。
【0082】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、広く、外因性核酸をコードする任意のプラスミドまたはウイルスを指す。この用語は、ウイルス粒子または細胞への核酸の導入を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物、例えばポリリジン化合物なども包含すると解釈すべきである。ベクターは、細胞への核酸またはその突然変異体の送達に送達媒体として適しているウイルスベクターであってもよいし、同じ目的に適している非ウイルスベクターであってもよい。細胞および組織にDNAを送達するためのウイルスベクターおよび非ウイルスベクターは当技術分野ではよく知られており、例えばMaらの論文(1997,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12744−12746)などに記載されている。ウイルスベクターの例には、組換えワクシニアウイルス、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えアデノ関連ウイルス、組換え鶏痘ウイルスなどがあるが、これらに限るわけではない(Cranageら,1986,EMBO J.5:3057−3063;1994年8月18日に公開された国際特許出願WO94/17810;1994年10月27日公開された国際特許出願W094/23744)。非ウイルスベクターの例には、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体などがあるが、これらに限るわけではない。
【0083】
I.核酸
A.プロモーター
植物中で遺伝子を発現させるのに適したプロモーターの好例は数多くある。プロモーターは、例えばトウモロコシ、コメ、トマト、タバコ、アラビドプシス、アブラナ属(Brassica)など、多くの植物種で同定されている(Odell,T.O.ら(1985)Nature 313:810−812;Marrs,K.A.ら(1993)Dev Genet,Vol.14/1:27−41;Kim(1992)Transgenic Res,Vol.1/4:188−94;Carpenter,J.L.ら(1992)Plant Cell Vol.4/5:557−71;Albani,D.ら(1992)Plant J.2/3:331−42;Rommens,C.M.ら(1992)Mol.Gen.Genet.,Vol.231/3:433−41;Kloeckener−Gruissemら(1992)Embo J,Vol.11/1:157−66;Hamilton,D.A.ら(1992)Plant Mol Biol,Vol.18/2:211−18;Kyozuka,J.ら(1991)Mol.Gen.Genet.,Vol.228/12:40−8;Albani,D.ら(1991)Plant Mol Biol Vol.16/4:501−13;Twell,D.ら(1991)Genes Dev.5/3:496−507;Thorsness,M.K.ら(1991)Dev.Biol Vol.143/1:173−84;McCormick,S.ら(1991)Symp Soc Exp Biol Vol.45:229−44;Guerrero,F.D.ら(1990)Mol Gen Genet Vol.224/2:161−8;Twell,D.ら(1990)Development Vol.109/3:705−13;Bichler,J.ら(1990)Eur J Biochem Vol.190/2:415−26;van Tunenら(1990)Plant Cell Vol.2/5:393−401;Siebertz,B.ら(1989)Plant Cell Vol.1/10:961−8;Sullivan,T.D.ら(1989)Dev Genet Vol.10/6:412−24;Chen,J.ら(1987)Genetics Vol 116/3:469−77)。他のプロモーターをGenBankに見いだすこともできる。CaMV 35Sプロモーターは米国特許第5,034,322号;第5,086,169号;第5,756,324号;第5,633,438号;第5,412,085号;第5,545,546号;第6,172,279号および第6,174,724号に記載されている。
【0084】
B.導入遺伝子および異種核酸
組換えDNA法を使って植物に上手く導入された遺伝子の例は数多くあり、例えば以下の形質をコードするものが挙げられる:種子貯蔵タンパク質、例えば改変7Sマメ科種子貯蔵タンパク質(米国特許第5,508,468号、第5,559,223号および第5,576,203号);除草剤耐性または抵抗性(米国特許第5,498,544号および第5,554,798号;Powellら,Science 232:738−743(1986);Kaniewskiら,Bio/Tech.8:750−754(1990);Dayら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:6721−6725(1991));フィターゼ(米国特許第5,593,963号);細菌、真菌、線虫および害虫に対する抵抗性、例えばBt遺伝子が付与する鱗翅目昆虫に対する抵抗性(米国特許第5,597,945号および第5,597,946号;Hilderら,Nature 330:160−163;Johnsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:9871−9875(1989);Perlakら,Bio/Tech.8:939−943(1990));レクチン(米国特許第5,276,269号);および花色(Meyerら,Nature 330:677−678(1987);Napoliら,Plant Cell 2:279−289(1990);van der Krolら,Plant Cell 2:291−299(1990))。
【0085】
C.部位特異的組換え系
特定のDNA遺伝子座に挿入するためにDNA配列のターゲティングを行なうと同時に、形質転換操作の副産物として生じるランダムに挿入されたDNA配列の除去を可能にするための方法およびコンストラクトは、米国特許第5,527,695号および第6,114,600号に記載されている。これらのランダム挿入を除去する方法の一つは、部位特異的リコンビナーゼ系を利用することである。一般に、部位特異的リコンビナーゼ系は3つの要素、すなわち2対のDNA配列(部位特異的組換え配列)と特殊な酵素(部位特異的リコンビナーゼ)とからなる。部位特異的リコンビナーゼは2つの部位特異的組換え配列の間で起こる組換え反応だけを触媒するだろう。
【0086】
例えばバクテリオファージP1のCre/lox系、酵母のFLP/FRT系、ファージMuのGinリコンビナーゼ、大腸菌のPinリコンビナーゼ、およびpSR1プラスミドのR/RS系など(ただしこれらに限らない)、多くの異なる部位特異的リコンビナーゼ系を使用することができる。好ましい部位特異的リコンビナーゼ系はバクテリオファージP1 Cre/lox系と、酵母FLP/FRT系の2つである。これらの系では、リコンビナーゼ(CreまたはFLP)が、それぞれの部位特異的組換え配列(それぞれloxまたはFRT)と特異的に相互作用して、介在配列の逆位または切り出しを引き起こす。これら2つの系のそれぞれの配列は比較的短い(loxの場合は34bp、FRTの場合は47bp)。酵母のFLP/FRT系は、真核生物(酵母)中で正常に機能し、よく特徴付けられているので、現在のところ、好ましい部位特異的リコンビナーゼ系である。FLP/FRT系は真核生物由来であることから、FLP/FRT系は、真核細胞では、原核部位特異的組換えリコンビナーゼ系よりも効率よく機能することができる。
【0087】
FLP/FRTリコンビナーゼ系は、植物細胞中で効率よく機能することが証明されている。トウモロコシプロトプラストおよびコメプロトプラストにおけるFLP/FRT系の性能に関する実験はどちらも、FRT部位の構造および存在するFLPタンパク質の量が切り出し活性を左右することを示している。一般に、短い不完全なFRT部位の方が、完全な全長FRT部位よりも、削除産物の蓄積量が高くなる。部位特異的組換え系はトウモロコシプロトプラストにおける分子内反応と分子間反応をどちらも触媒することができることから、この系は組込み反応だけでなくDNAの切り出しにも使用できることがわかる。組換え反応は可逆的であり、各方向の反応の効率はこの可逆性によって損なわれる可能性がある。部位特異的組換え配列の構造を改変することは、この状況を改善するためのアプローチの一つである。部位特異的組換え配列は、組換え反応の産物がもはや逆反応の基質として認識されず、よって組込みまたは切り出し事象が安定化されるように、突然変異させることができる。
【0088】
D.ベクター
植物中で外因性DNAを発現させるための発現単位
上述のように本発明のいくつかの態様では、外部から供給した核酸配列を植物中で発現させるために、発現単位(または発現ベクターもしくは発現系)を利用する。植物で使用するための発現単位/系/ベクターを作製する方法は当技術分野では周知であり、本発明での使用に容易に適合させることができる。当業者は、以下に概説する本方法に、任意の適当な植物/ベクター/発現系を容易に使用することができる。
【0089】
タンパク質の発現を調節するために使用される発現制御因子は、そのコード配列に通常付随して見いだされる発現制御因子(相同発現因子)であってもよいし、異種発現制御因子であってもよい。当技術分野では様々な相同および異種発現制御因子が知られており、それらを使って、本発明用の発現単位を容易に作製することができる。例えば転写開始領域は、アグロバクテリウム・ツマファシアンス(Agrobacterium tumafacians)のTiプラスミドに見いだされる様々なオピン開始領域、例えばオクトピン、マンノピン、ノパリンなどのいずれかを含むことができる。あるいは、カリフラワーモザイクウイルス19Sおよび35Sプロモーター(それぞれCaMV19SおよびCaMV35Sプロモーター)などの植物ウイルスプロモーターを使って、植物における遺伝子発現を制御することもできる(例えば米国特許第5,352,605号;第5,530,196号および第5,858,742号)。CaMV由来のエンハンサー配列も利用することができる(例えば米国特許第5,164,316号;第5,196,525号;第5,322,938号;第5,530,196号;第5,352,605号;第5,359,142号;および第5,858,742号)。最後に、例えばプロリフェラ(prolifera)プロモーター、果実特異的プロモーター、Ap3プロモーター、熱ショックプロモーター、種子特異的プロモーターなどの植物プロモーターも使用することができる。
【0090】
配偶子特異的プロモーター、構成的プロモーター(CaMVまたはNosプロモーターなど)、器官特異的プロモーター(トマト由来のE8プロモーターなど)、または誘導性プロモーターは、通例、タンパク質またはアンチセンスコード領域に、当技術分野で知られている標準的技術を使って、ライゲートされる。発現単位は、転写ターミネーターおよび/またはエンハンサー因子などの追加因子を使ってさらに最適化してもよい。
【0091】
したがって、植物での発現のために、発現単位は、通例、タンパク質配列の他に、植物プロモーター領域、転写開始部位および転写終結配列を含むだろう。通例、発現単位の5’および3’末端には、既存のベクターに容易に挿入することができるように、ユニークな制限酵素部位発現単位を含める。
【0092】
異種プロモーター/構造遺伝子またはアンチセンスの組合わせを構築する場合、プロモーターは、好ましくは、そのプロモーターがそれ本来の環境にある時の転写開始部位からの距離とほぼ同じ距離だけ、異種転写開始部位から離れた位置に置く。しかし当技術分野では知られているように、この距離は多少変化させてもプロモーター機能の損失は起こらない。
【0093】
発現カセットは、プロモーター配列の他に、終結が効率よく起こるように、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含むこともできる。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から取得してもよいし、異なる遺伝子から取得してもよい。構造遺伝子によってコードされるmRNAが効率よくプロセシングされるべき場合は、RNAのポリアデニル化を指示するDNA配列も、一般に、ベクターコンストラクトに加えられる。ポリアデニル化配列には、アグロバクテリウム・オクトピンシンターゼシグナル(Gielenら,EMBO J3:835−846(1984))またはノパリンシンターゼシグナル(Depickerら,Mol.and Appl.Genet.1:561−573(1982))などがあるが、これらに限るわけではない。
【0094】
得られた発現単位は、高等植物形質転換に適したベクター中にライゲートするか、または他の方法でそのようなベクターに含まれるように構築する。ベクターは、通例、形質転換植物細胞を培養中に同定するために利用することができる選択可能マーカー遺伝子も含むだろう。通常、マーカー遺伝子は抗生物質耐性をコードするだろう。これらのマーカーには、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、およびゲンタマイシンに対する耐性が含まれる。植物細胞の形質転換後に、ベクターを持つ細胞は、特定の抗生物質を含む培地で生育するというそれらの能力によって同定されるだろう。ベクターを細菌またはファージ宿主中にクローニングすることができるように細菌またはウイルス由来の複製配列も一般に含まれ、好ましくは広宿主域原核生物複製起点を含める。所望のコンストラクトを保持する細菌細胞を選択することができるように、細菌用の選択可能マーカーも含めるべきである。適切な原核生物選択可能マーカーにも、例えばアンピシリン、カナマイシンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0095】
当技術分野では知られているように、ベクターには、さらなる機能をコードする他のDNA配列も存在しうる。例えば、アグロバクテリウム形質転換の場合は、続いて起こる植物染色体への導入に備えて、T−DNA配列も含められるだろう。
【0096】
本発明の配列は、他の様々な核酸分子、例えば発現配列タグ(Expressed Sequence Tag:EST)、エピトープまたは蛍光タンパク質マーカーに融合することもできる。
【0097】
ESTは、相補DNA(cDNA)クローンの3’末端または5’末端から配列決定された、通例300〜400ヌクレオチド長の遺伝子断片である。30,000近いシロイヌナズナESTがフランスとアメリカのコンソーシアムによって作製されている(Delsenyら,FEBS Lett.405(2):129−132(1997);シロイヌナズナデータベース(Arabidopsis thaliana Database),http ://genome.www.stanford.edu/Arabidopsis)。大きなESTデータベースから導出される遺伝子発現パターンの解析に関する解説については、例えばM.R.Fannon,TIBTECH 14:294−298(1996)を参照されたい。
【0098】
生体適合性の蛍光タンパク質プローブ、特にオワンクラゲ(Aequorea victoria)由来の自己集合性緑色蛍光タンパク質(GFP)は、細胞生物学、分子生物学および発生生物学における研究を一変させた。これらを利用すると、生細胞中の生物学的事象を可視化することができるからである(Murphyら,Curr.Biol.7(11):870−876(1997);Grebenokら,Plant J.11(3):573−586(1997);Pangら,Plant Physiol 112(3)(1996);Chiuら,Curr.Biol.6(3):325−330(1996);Plautzら,Gene 173(1):83−87(1996);Sheenら,Plant J.8(5):777−784(1995))。
【0099】
部位特異的突然変異誘発法を使って、可溶性改変GFP(soluble−modified GFP(smGFP))と呼ばれる、可溶性が増加したタイプのコドン改変GFPが開発されている。アラビドプシスに導入すると、コドン改変GFPよりも強い蛍光が観察されたことから、smGFPの方が可溶型かつ機能型として存在する割合が多いので「明るい」と考えられる(Davisら,Plant Mol.Biol.36(4):521−528(1998))。GFPおよびβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子を融合することにより、研究者らはアラビドプシスを含む植物における一過性発現系および安定発現系での使用に最適な一組の二機能性レポーターコンストラクトを作製することができた(Quaedvliegら,Plant Mol.Biol.37(4):715−727(1998))。
【0100】
Bergerら(Dev.Biol.194(2):226−234(1998))は、アラビドプシス胚軸表皮細胞について、GFPマーカー系統の単離を報告している。GFP融合タンパク質を使って、ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)を含む多くのアラビドプシス遺伝子がその位置を特定され、特徴付けられている(Zhuら、Plant Mol.35(3):331−341(1997))。
【0101】
II.形質転換
A.植物形質転換
従来の方法で所望の遺伝子または一組の遺伝子を導入するには、2つの系統間で有性交配を行なった後、雑種子孫とその両親の一方との間で戻し交雑を、所望の特徴を持つ植物が得られるまで繰り返す必要がある。しかしこの方法は有性交雑が可能な植物に限定され、所望の遺伝子以外の遺伝子も導入されることになる。
【0102】
組換えDNA技術により、植物遺伝学者は、害虫に対する抵抗性などの望ましい形質を担う特殊な遺伝子を同定しクローニングすること、およびそれらの遺伝子を既に役立っている植物品種に導入することが可能になり、よって植物研究者は、上記の制約を回避できるようになった。いったん、外来遺伝子が植物に導入されたら、その植物を従来の植物育種手法(例えば系統育種、単粒系統育種法、相反循環選抜)に使用して、目的の遺伝子も含んでいる子孫を作出することができる。
【0103】
遺伝子は相同組換えを使って部位特異的に導入することができる。相同組換えによって内因性遺伝子の部位特異的な改変が可能になるので、先天的または後天的突然変異を矯正し、および/または新しい改変をゲノム中に作り出すことができる。
【0104】
植物における相同組換えおよび部位特異的組込みについては上述した他、例えば米国特許第5,451,513号、第5,501,967号および第5,527,695号で論じられている。
【0105】
遺伝子操作法を使って、1つまたは複数の本発明のys1および/またはysl核酸を発現/過剰発現させる形質転換された細胞、組織および植物全体を作出することができる。バイオレメディエーションの取り組みとして、形質転換植物を、高い金属含量または重金属含量を持つ土壌で栽培した後、収穫することにより、収穫した植物部分に集積された金属または重金属を除去することができる。バイオレメディエーションを目的として形質転換される好ましい植物には、生長が速いという特徴を持ち、バイオマス産生量が高く、広範囲に及ぶ高度に分岐した根系を持つ植物が含まれる。特に好ましいこのタイプの植物には、イネ科飼料植物、特にウシノケグサ属(Festuca);草本(herbs);低木;ならびにユリノキ(Liriodendron tulipifera)、セルベルチア(Serbertia)属、サラノキ(Shorea)属およびニクズク(Myristica)属などの木本があるが、これらに限らない。本発明のys1およびysl核酸を使って形質転換される他の好ましい植物は、超集積植物、特にアブラナ属の植物である。
【0106】
栄養目的の場合、栽培される形質転換植物には、ヒトまたは動物が直接的にまたは加工食品として消費するものを含めることができる。例えば、植物全体に、または1つもしくは複数の特定の植物部分、例えば穀粒、塊茎、果実または種子などに、金属または重金属を集積する形質転換植物を作出することができる。本発明の核酸を使って形質転換される好ましい植物には、人間の食用に広く栽培されている植物、例えばコメ、ダイズ、コムギ、エンバク、ライムギ、キャッサバ、バレイショ、サヤインゲン、ドライピー(dry pea)、レンズマメ、イチゴ、オレンジなどが含まれる。形質転換植物または植物部分の消費により、その生物が消費する当該食品の価値を、特定の重金属に関して向上させることができる。形質転換植物は、1つまたは複数の金属または重金属の含量および/または濃度が低い、または平均的な、または高い、任意の培地で栽培することができる。バイオレメディエーション目的と栄養目的の両方に有用な植物種も使用することができる。例えば、形質転換された飼料作物種はファイトレメディエーションに有効であり、家畜飼料としても役立つだろう。形質転換された飼料作物は放牧動物に消費させることができ、または切断および乾燥して、動物飼料用の干し草を製造することができる。動物飼料として有用な形質転換植物の例には、アルファルファ、クローバー、および飼料として使用される様々なイネ科植物種があるが、これらに限るわけではない。
【0107】
B.形質転換方法
トランスジェニック植物を作出する方法は当業者にはよく知られている。トランスジェニック植物は、現在では、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル・ボンバードメント(粒子加速法またはバイオリスティック・ボンバードメントとも呼ばれる)、ウイルスによる形質転換、およびアグロバクテリウムによる形質転換など(ただしこれらに限らない)、様々な形質転換方法によって作出することできる(例えば米国特許第5,405,765号;第5,472,869号;第5,538,877号;第5,538,880号;第5,550,318号;第5,641,664号;第5,736,369号および第5,736,369号;Watsonら「Recombinant DNA, Scientific American Books」(1992);Hincheeら,Bio/Tech.6:915−922(1988);McCabeら,Bio/Tech.6:923−926(1988);Toriyamaら,Bio/Tech.6:1072−1074(1988);Frommら,Bio/Tech.8:833−839(1990);Mullinsら,Bio/Tech.8:833−839(1990);ならびにRaineriら,Bio/Tech.8:33−38(1990)を参照されたい)。
【0108】
トランスジェニックアルファルファ植物は、これらの方法の多くによって、例えばアグロバクテリウムによる形質転換(Wangら,Australian Journal of Plant Physiology 23(3):265−270(1996);Hoffmanら,Moleuclar Plant−Microbe Interactions 10(3):307−315(1997);Trieuら,Plant Cell Reports 16:6−11(1996))および粒子加速法(米国特許第5,324,646号)によって(ただしこれらに限らない)作出されている。
【0109】
形質転換はクローバーでも、アグロバクテリウムによる形質転換を使って、うまく達成されている(Voiseyら,Biocontrol Science and Technology 4(4):475−481(1994);Quesbenberryら,Crop Science 36(4):1045−1048(1996);Khanら,Plant Physiology 105(1):81−88(1994);Voiseyら,Plant Cell Reports 13(6):309−314(1994))。
【0110】
数多くの飼料作物および芝草種で遺伝的形質転換も報告されている(E.C.Brummerら編「Molecular and Cellular Technologies for Forage Improvement」(CSSA Special Publication No.26, Crop Science Society of America,Inc.,1998)49〜58頁のConger B.V.著「イネ科飼料作物の遺伝的形質転換(Genetic Transformation of Forage Grasses)」)。それらには、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)、トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、レッドフェスク(Festuca rubra L.)、メドーフェスク(Festuca pratensis Huds.)、ペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)、クリーピングベントグラス(Agrostis palustris Huds.)およびレッドトップ(Agrostis alba L.)が含まれる。
【0111】
このような飼料作物および芝草での遺伝子導入の成功は、プロトプラストによるDNAの直接取り込み、およびDNA被覆マイクロプロジェクタイルによる細胞または組織の射撃によって達成されている。どちらの場合も、遺伝子導入後に植物全体の再生が行なわれる。多くの研究が、形質転換のプロトコールを開発し改良することに重点を置き、β−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするレポーター遺伝子uidA、およびホスフィノスリシン系除草剤に対する抵抗性を付与する選択マーカーbarが利用されている。形質転換は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、転写されたRNAのノーザンハイブリダイゼーション解析、可溶性タンパク質(遺伝子産物)のウェスタンブロット解析、および全ゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションによって証明されている。
【0112】
III.ヘミ接合性
アグロバクテリウム形質転換法を使って形成させたトランスジェニック植物は、複数コピーの遺伝子を含むことも考えられるものの、典型的には、一方の染色体上にただ一つの遺伝子を含んでいる。そのようなトランスジェニック植物は追加された遺伝子に関してヘミ接合性であるということができる。各形質転換植物はユニークなT−DNA組込み事象を表すので、そのような植物のより正確な名前は独立分離個体(independent segregant)である(米国特許第6,156,953号)。導入遺伝子座は一般に導入遺伝子の存在および/または不在によって特徴づけられる。一方のアレルが導入遺伝子の不在に相当するヘテロ接合性遺伝子型もヘミ接合性と呼ばれる(米国特許第6,008,437号)。
【0113】
仮に通常のヘミ接合であるとすると、自家受粉は、R1またはR1世代とも呼ばれる第1自家受粉組換え世代に、最大の遺伝子型分離をもたらすだろう。R1世代は、R0またはR0世代とも呼ばれる元の組換え系統を自家受粉させることによって作出される。各インサートは優性アレルとして働くので、連鎖がなく、抵抗性の発現にはヘミ接合性インサートを一つだけ必要であると仮定すると、1つのインサートは3:1に、2つのインサートは15:1に、3つのインサートは63:1に、というように分離するだろう。したがって、比較的少ないR1植物を栽培するだけで、少なくとも1つの抵抗性表現型を見いだすことができる(米国特許第5,436,175号および第5,776,760号)。
【0114】
上述のように、ヘミ接合性トランスジェニック再生植物の自家受粉はF2に相当する子孫が生成するはずであり、そのうちの約25%はホモ接合性トランスジェニック植物となるはずである。F2子孫の自家受粉および非形質転換対照植物への検定交雑を使って、ホモ接合性トランスジェニック植物を同定し、その系統を維持することができる。再生植物のために最初に得た子孫が他家受粉によるものであった場合は、ホモ接合性トランスジェニック植物の同定には、もう一世代の自家受粉が必要だろう(米国特許第5,545,545号)。
【0115】
IV.育種法
自然受粉集団.ライムギ、数多くのトウモロコシおよびテンサイ、イネ科牧草、アルファルファおよびクローバーなどのマメ科植物、カカオ、ココヤシ、アブラヤシおよび一部のゴムなどの熱帯樹木などの作物の自然受粉集団の改良は、本質的に、高度の(しかし決して最大ではない)ヘテロ接合性を保ちつつ、好ましいアレルの固定に向けて遺伝子頻度を変化させることによる。このような集団では均一性が得られることはなく、自然受粉品種における典型性(trueness−to−type)は、個々の植物の特徴ではなくその集団全体としての統計学的特徴である。したがって、自然受粉集団の不均質性は、同系交配系統、クローンおよび雑種の均質性(または事実上の均質性)とは対照的である。
【0116】
集団改良法は自ずから2つのグループ、すなわち集団選抜と通常呼ばれる純粋に表現型選抜に基づく方法と、後代検定による選抜に基づく方法とに分類される。集団間改良では自然育種集団(open breeding populations)の概念を利用し、ある集団から別の集団に遺伝子を流動させる。ある集団(栽培品種、株、生態型、または任意の生殖質源)中の植物を、自然に(例えば風によって)、または手で、もしくはハチ(一般的にはミツバチ(Apis mellifera L.)またはアルファルファハキリバチ(Megachile rotundata F.))によって、他の集団に由来する植物と交配する。両方の供給源に由来する望ましい形質を持つ植物を分離することによって一方の(または時として両方の)集団を改良するために選抜を行なう。
【0117】
自然受粉集団改良には主な方法が基本的に2つある。第1に、採用した選抜方法が集団をひとまとめにして変化させる場合がある。その結果は、孤立したその集団内での無作為交配によって無限に繁殖することができる改良された集団である。第2に、合成品種は、集団改良と同じ最終結果を達成するが、それ自体はそのままでは繁殖できず、親系統または親クローンから再構築する必要がある。自然受粉集団を改良するためのこれらの植物育種法は当業者には周知であり、他家受粉植物を改良するために日常的に使用される育種法の包括的説明は、数多くの教科書および論文、例えばAllard「Principles of Plant Breeding」John Wiley & Sons,Inc.(1960);Simmonds「Principles of Crop Improvement」Longman Group Limited (1979);HallauerおよびMiranda「Quantitative Genetics in Maize Breeding」Iowa State University Press(1981);ならびにJensen「Plant Breeding Methodology」John Wiley & Sons,Inc.(1988)などに記載されている。
【0118】
集団選抜.集団選抜では、望ましい個々の植物を選抜し、収穫し、後代検定を行なわずに種子を混合して、次の世代を生成する。選抜は雌性親だけに基づいて行い、受粉は制御されないので、集団選抜は選抜を伴う無作為交配の一形態に相当する。上述のように、集団選抜の目的は、その集団における優れた遺伝子型の割合を増加させることである。
【0119】
合成品種.合成品種は、考え得る全ての交雑組合せにおける組合せ能力が優れているという理由で選抜されるいくつかの遺伝子型を相互間で交配することによって作出され、自然受粉による品種の維持を行なう。一部のテンサイおよびマメ類(ソラマメ属(Vicia))がそうであるように親が(多かれ少なかれ同系交配の)種子繁殖系統であるか、それともイネ科牧草、クローバーおよびアルファルファがそうであるように親がクローンであるかは、基本的に重要でない。親は、一般組合せ能力に基づいて、時に検定交雑またはトップ交雑によって、より一般的には多交雑によって選抜される。親種子系統は(例えば自配またはきょうだい交配によって)故意に同系交配させることができる。しかし、たとえ親を故意には同系交配させないとしても、系統維持中の系統内での選抜により、多少の同系交配が起こることは保証されるだろう。クローン親は、もちろん、無変化のまま、高いヘテロ接合性を保つだろう。
【0120】
合成品種が親種子生産区から農業経営者に直行することができるか、それともまず1サイクルまたは2サイクルの増殖を経なければならないかは、種子生産量および種子の需要規模に依存する。実際には、イネ科植物とクローバーは一般に1回か2回増殖されるので、元の合成品種からはかなり隔たっている。
【0121】
時には集団選抜が使用されるが、多交雑には一般に後代検定が好ましい。それらは操作が簡単で、目的に対して明白な関連がある、すなわち合成品種における一般組合せ能力を利用するからである。
【0122】
合成品種に入る親系統または親クローンの数は様々である。実際問題として、親系統の数は10〜数百の範囲にあり、100〜200が平均である。100以上のクローンから形成される多系統(broad based)合成品種は、少系統(narrow based)合成品種よりも種子増殖中に安定であると予想される。
【0123】
雑種.雑種は遺伝子型が異なる親同士の交配によって得られる個々の植物である。商業的雑種は現在、トウモロコシ、モロコシ、テンサイ、ヒマワリおよびブロッコリを含む多くの作物に広範に使用されている。雑種は、例えば両親を直接交配する方法(単交雑雑種)、単交雑雑種をもう一つの親と交配する方法(三元または三系交雑雑種)、または2種類の雑種を交配する方法(四元または複交雑雑種)を含む、様々な方法で形成させることができる。
【0124】
厳密に言えば、異系交配(すなわち自然受粉)集団中のほとんどの個体は雑種であるが、この用語は通常は、両親が互いに異なる種または亜種であると認められるほど十分に異なるゲノムを持つ個体である場合に限って用いられる。雑種は、両親のゲノムの定性的および/または定量的相違に依存して稔性である場合も、不稔性である場合もある。ヘテロシスまたは雑種強勢は、通常、雑種の生長力、生存力および稔性をその雑種の形成に用いた親系統と比較して増加させるヘテロ接合性の増加と関係する。最大のヘテロシスは通常、2つの遺伝的に異なる高度な近交系を交配することによって達成される。
【0125】
雑種の生産はよく発達した産業であり、親系統およびそれらの系統を交配することによって得られる雑種の隔離生産が含まれる。雑種生産方法の詳細な説明については、例えば「Hybridization of Crop Plants」第8章161〜176頁のWright著「Commercial Hybrid Seed Production」 などを参照されたい。
【0126】
V.発現アッセイ
さらに本発明は、トウモロコシ(Zea mays)ys1およびアラビドプシス(Arabidopsis)ysl1〜8のDNA配列中の変異を認識する方法、ならびに他の植物の属、種、株、変種または栽培品種中に前記遺伝子またはそのホモログもしくはオルソログを検出する方法を提供する。ある方法では、本発明のys1(配列番号1)またはysl1〜8配列(配列番号3、5、7、9、11、13、15または17)の少なくとも1つの少なくとも一部に一致するかまたは相補的である配列を持つ核酸分子(プローブまたは核酸プローブともいう)を、当業者にはわかるであろう十分なハイブリッド形成条件、例えば本明細書の他の項に記載する中等度にストリンジェントまたは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で導入する。前記プローブは、少なくとも約10個の連続する核酸残基にわたって、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15または17のDNA配列と一致するだろう。好ましくは、前記の一致は、少なくとも約25または30個の連続する核酸残基にわたるだろう。さらに好ましくは、前記の一致は、少なくとも約40または50個の連続する核酸残基にわたるだろう。よりいっそう好ましくは、前記の一致は、少なくとも約60または75個の連続する核酸残基にわたるだろう。さらにいっそう好ましくは、前記の一致は、少なくとも約100または150個の連続する核酸残基にわたるだろう。さらに好ましくは、前記の一致は、少なくとも約200または250個の連続する核酸残基にわたるだろう。最も好ましくは、前記の一致は、少なくとも約300個の連続する核酸残基にわたるか、または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15もしくは17のオープンリーディングフレーム全体またはその相補鎖全体にわたるだろう。DNA配列変異を認識するもう一つの方法は、当技術分野で周知の複数の方法による直接DNA配列解析である。もう一つの態様では、異なる植物の属、種、株、変種または栽培品種が表すYS1またはYSLタンパク質中のDNA配列変異を検出する。もう一つの態様では、前記核酸プローブを使用して、試料または組織切片中のys1および/またはysl配列を、当業者に知られている任意の方法によるインサイチューハイブリダイゼーションを使って検出する。プローブに使用されるys1またはysl配列は、ys1またはyslの存在が決定された任意の植物から得ることができる。特によい双子葉植物用プローブは、アラビドプシスのYSL1〜8の一つをコードするものであり、特によい単子葉植物用プローブは、トウモロコシのYS1をコードするものであるだろう。ある態様では、上記配列はYS1もしくはYSLコード遺伝子またはその断片の一つのアレルに特異的に結合し、もう一つの態様では、複数のアレルに結合するだろう。そのような検出方法には、ポリメラーゼ連鎖反応、制限酵素断片長多型(RFLP)解析、および一本鎖コンフォメーション解析が含まれる。
【0127】
そのような本発明のアッセイに役立つ診断プローブとしては、YS1またはアラビドプシスYSLタンパク質の一つに対する抗体が挙げられる。YS1またはYSL1〜8の少なくとも一つに対する抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、当技術分野で周知の標準的技術を使って製造される(HarlowおよびLaneの「Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988を参照されたい)。これらの抗体は、YS1もしくはYSLまたはそのホモログもしくはオルソログタンパク質を、それらのタンパク質に抗体を結合させた後、その抗体−タンパク質複合体をELISA、ウェスタンブロットなどで検出することによって検出するために使用することができる。これらの抗体を産生させるために使用するYS1またはYSL配列は、上述のYS1またはYSL変異体のいずれであってもよい。抗体は、当技術分野の標準的技術を使って、YS1またはYSL1〜8の少なくとも1つのペプチド配列から製造することもできる(「Protocols in Immunology」(John Wiley & Sons,1994)を参照されたい)。免疫学的に重要な部分を含んでいるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片を製造することもできる。
【0128】
生物学的試料中のYS1またはYSLポリペプチドを抗体プローブで検出または測定するためのアッセイは、どの利用可能な形式に基づいてもよい。例えば、YS1またはYSLポリペプチドが分析物であるイムノアッセイでは、試験試料、典型的には生物学的試料を、抗原−抗体複合体の形成が可能な条件で、抗YS1または抗YSL抗体と共にインキュベートする。様々な形式を使用することができる。例えば「サンドイッチ」アッセイでは、固形支持体に結合した抗体を試験試料と共にインキュベートし、洗浄し、分析物に対する二次標識抗体と共にインキュベートし、支持体を再び洗浄する。分析物は、二次抗体が支持体に結合しているかどうかを決定することによって検出される。不均一系にすることも均一系にすることもできる競合形式では、試験試料を通常は抗体および標識競合抗原と共に、逐次的に、または同時に、インキュベートする。これらの形式および他の形式は、当技術分野ではよく知られている。もう一つの選択肢とて、植物の組織切片を試験試料とし、その組織切片を、組織切片中のタンパク質を抗体で検出するための当業者に周知の方法を使って、YS1および/またはYSLタンパク質の1つまたは複数に対する抗体でプローブしてもよい。前記組織切片は、YS1および/またはYSLタンパク質の1つもしくは複数、またはそのホモログもしくはオルソログの、天然の発現に関して調べようとする植物から得ることができる。または、そのような組織切片は、本発明の手段によって、または他の何らかの手段によって、YS1、YSL1〜8およびそのホモログまたはオルソログからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質を発現させるように遺伝子改変された植物から得ることもできる。
【実施例1】
【0129】
ys1のトランスポゾンタギングおよびクローニング
1番染色体上のP1遺伝子座(P−VVアレル)にある内因性トウモロコシトランスポゾンAcを、記載されているようにランダム突然変異誘発に使用した(Dellaporta,SLら,「The Maize Handbook」(FreelingおよびWalbot編,Springer,ニューヨーク,1993)の219〜233頁)。転位事象についてスクリーニングした後、実生を突然変異体表現型についてスクリーニングしたところ、約25%の頻度で黄縞斑突然変異を分離するファミリーが、目視観察によって同定された。WTおよび突然変異型個体に関して表現型的に分離するファミリーの個体に対して、Acをプローブとして使って、ゲノムブロッティングを行なった。親株から得たDNA、P−VV(Ac供与遺伝子座)およびr−m3もブロッティングテストに含めた。全ての試料を制限酵素SalIで消化した。プローブはAcの内部HindIII断片とした。このブロットにより、9.5kbのAc含有SalI制限m酵素断片と、黄縞斑突然変異表現型との同時分離が確認された。
【0130】
突然変異体植物のDNAからゲノムライブラリーを作製し、図1Aに示す9.5kbのSalIインサートを含むクローンλYS31が同定された。
【0131】
Ac因子に隣接する配列を含むAcフランキングプローブ(YS1−F;図1Aおよび1B参照)をλYS31から作製し、黄縞斑突然変異に関して分離するファミリーのゲノムブロットに対して、プローブとして使用した。ゲノムブロットは、WTおよび突然変異型個体に関して表現型的に分離するファミリーの個体のDNA、ならびに親株、P−VV(Ac供与遺伝子座)およびr−m3に対して行なった。全ての試料を制限酵素SalIで消化した。各突然変異型個体は、9.5kbのSalI断片を示し、ヘテロ接合性野生型植物も同じであった。ある突然変異型植物は、上記9.5kb断片からのAcの転位後に予想されるサイズである5.2kbのSalI断片を示した。注目すべきことに、ヘテロ接合性WT植物もホモ接合性WT植物も、予想される5.2kbのSalI断片を示さなかった。5.2kb断片を欠くのは、おそらく、WT Ys1アレル中のSalI部位でシトシンメチル化が起こっているためだろう。Ac挿入が起こると、その遺伝子座は脱メチル型になり、その遺伝子座からのAc切り出し後しばらくは脱メチル化状態が持続するようである。
【0132】
同時分離解析結果を裏付けるために、黄縞斑突然変異を分離するもう一つのファミリーからDNAを調製して、新しい一組の個体で同時分離を試験することができるようにした。そのDNAをメチル化の影響を受けない酵素EcoRVで消化した。ブロットをまずYS1−Fでプローブし、次にストリッピングし、Acプローブで再プローブした。これらのブロットでは、予想通り、(Acを欠く)短い断片が野生型表現型と同時分離した。
【実施例2】
【0133】
ys1の連鎖解析
ヘテロ接合性Ys1 pr1/ys1−m1::Ac Pr1植物を自家受粉させた。赤(pr1/pr1)および紫(Pr1/−)の子孫を選抜し、それらの黄縞斑表現型を観察した。赤色子孫は黄縞斑に関して主として野生型であったことから、予想通りys1−m1::Acとpr1の間には明らかな連鎖があることがわかった。紫色子孫の間では、ほぼ3分の1の個体が黄縞斑を持ったことから、ここでもys1 m1::Acとpr1の間の明らかな連鎖が示された。
【0134】
新しい黄縞斑突然変異体で連鎖および相補性アッセイを行なった。突然変異体植物を、ys1(ys1−ref)およびys3(ys3−ref)の基準突然変異体アレルに関してホモ接合性である植物に交配して相補性を調べた。新しい黄縞斑突然変異体はys1を補完できなかったが、ys3を補完したことから、新しい突然変異体はys1−m1::Acと呼ばれるys1アレルである。ys1遺伝子座はトウモロコシの5番染色体上にマッピングされ、pr1遺伝子座より8地図単位末端側にある。ys1−m1::Acとpr1の連鎖を調べたところ、新しい突然変異体はpr1に連鎖していることが確認された。
【実施例3】
【0135】
ys1 cDNAのクローニングおよび特徴づけ
YS1−Fプローブを使って、鉄欠乏トウモロコシ植物由来の根cDNAライブラリーをスクリーニングした(Loulergue,Cら,Gene.1998 225:47−57)。3つの完全長またはほぼ完全長ys1 cDNAが回収された。これら3つのcDNAの正確なサイズは選択的ポリアデニル化部位および5’非翻訳領域(UTR)のサイズのせいで異なるが、これらは全て同一のタンパク質をコードしていた。
【0136】
これらのcDNAの配列から、YS1タンパク質は682アミノ酸長で、12個の推定膜貫通ドメインを含むので、YS1がFe・ファイトシデロフォア錯体のトランスポーターであるとすれば予想されるように、YS1はおそらく膜に局在することがわかる。
【0137】
YS1の予想アミノ酸配列は次のとおりである(SOSUIプログラムを使って予測された12個の推定膜貫通ドメインを下線で示す):
MDLARRGGAAGADDEGEIERHEPAPEDMESDPAAAREKELELERVQSWREQVTLR
VVAALLIGFMYSVIVMKIALTTGLVPTLNVSAALMAFLALRGWTRVLERLGVAHRPF
TRQENCVIETCAVACYTIAFGGGFGSTLLGLDKKTYELAGASPANVPGSYKDPGFG
MAGFVAAISFAGLLSLIPLRKVLVIDYKLTYPSGTATAVLINGFHTKQGDKNARMQVR
GFLKYFGLSFVWSFFQWFYTGGEVCGFVQFPTFGLKAWKQTFFFDFSLTYVGAGMIC
SHLVNISTLLGAILSWGILWPLISKQKGEWYPANIPESSMKSLYGYKAFLCIALIMGDG
TYHFFKVFGVTVKSLHQRLSRKRATNRVANGGDEMAALDDLQRDEIFSDGSFPAWA
AYAGYAALTVVSAVIIPHMFRQVKWYYVIVAYVLAPLLGFANSYGTGLTDINMAYNY
GKIALFIFAAWAGRDNGVIAGLAGGTLVKQLVMASADLMHDFKTGHLTMTSPRSLLV
AQFIGTAMGCVVAPLTFLLFYNAFDIGNPTGYWKAPYGLIYRNMAILGVEGFSVLPRH
CLALSAGFFAFAFVFSVARDVLPRKYARFVPLPMAMAVPFLVGGSFAIDMCVGSLA
FVWEKVNRKEAVFMVPAVASGLICGDGIWTFPSSILALAKIKPPICMKFTPGS(配列番号2)。
【0138】
注目すべきことに、YS1の50個のアミノ末端アミノ酸は、このタンパク質のグルタミン酸残基の48%(23個中11個)を含んでいる。これらのうちの一部は、Fe[III]輸送に関与するREGLE(配列番号20)配列を連想させるREKELELELER(配列番号19)という配列の中にある(Stearman,Rら,Science 1996 271:1552−1557)。
【0139】
ys1 cDNAから得られるアミノ酸配列は、様々な配列データベース中の機能がわかっているどのタンパク質にも強い配列類似性を示さないが、単子葉植物と双子葉植物の両方、裸子植物およびコケを含む多様な植物種中の発現配列タグ(EST)クローンには類似性を示す。YS1は、化学浸透圧イオン勾配に反応して通例小さい溶質を輸送する単ポリペプチド二次運搬体を含むメジャー・ファシリテーター・スーパーファミリー(major facilitator superfamily)(MFS;Pao,SSら,Microbiol.Mol.Biol.Rev.1998 62:1−34)に属する仮想酵母タンパク質YGL114(36%ポジティブ;GenBankアクセッション番号P53134)、およびミクソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)のEspB遺伝子(39%ポジティブ;GenBankアクセッション番号AAD47813.1)にも類似性を示す。YS1は、3つの類縁トウモロコシESTがGenBankに存在するので、トウモロコシの遺伝子ファミリーにも属する。
【0140】
YS1のアミノ酸配列は、本発明者らがイエローストライプ1様(YELLOW STRIPE1−LIKE)(YSL)1〜8と名付けた8つの予想アラビドプシスタンパク質(それぞれ配列番号4、6、8、10、12、14、16および18)にも強い完全長類似性を示した。注目すべきことに、YS1のアミノ末端の多数のグルタミン酸残基は、8つのアラビドプシスYS1様ホモログにも保存されている。YS1はYSL1(配列番号4)に対して665アミノ酸残基にわたって73%同一、YSL2(配列番号6)に対して658アミノ酸残基にわたって77%同一、YSL3(配列番号8)に対して668アミノ酸残基にわたって76%同一、YSL4(配列番号10)に対して644アミノ酸残基にわたって69%同一、YSL5(配列番号12)に対して680アミノ酸残基にわたって67%同一、YSL6(配列番号14)に対して604アミノ酸残基にわたって70%同一、YSL7(配列番号16)に対して674アミノ酸残基にわたって69%同一、およびYSL8(配列番号18)に対して454アミノ酸残基にわたって67%同一である。アラビドプシスysl cDNAクローンおよびそれらのタンパク質産物を表1に記載する。
【0141】
【表1】
Figure 2005501502
ysl1のcDNAクローンは、停止コドンを除いて残基10から残基2026(2029に停止コドン)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2196核酸残基長(配列番号3)であり、673アミノ酸残基長(配列番号4)のタンパク質をコードしている。ysl2のcDNAクローンは、残基156から残基2145(2148)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2316核酸残基長(配列番号5)であり、664アミノ酸残基長(配列番号6)のタンパク質をコードしている。ysl3のcDNAクローンにはGenBankアクセッション番号(配列番号7)が割り当てられ、675アミノ酸残基長(配列番号8)のタンパク質をコードすると予想される。ysl4のcDNAクローンにはGenBankアクセッション番号(配列番号9)が割り当てられ、670アミノ酸残基長(配列番号10)のタンパク質をコードすると予想される。ysl5のcDNAクローンは、残基80から残基2221(2224)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2337核酸残基長(配列番号11)であり、714アミノ酸残基長(配列番号12)のタンパク質をコードしている。ysl6のcDNAクローンは、残基42から残基2072(2075)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2327核酸残基長(配列番号13)であり、677アミノ酸残基長(配列番号14)のタンパク質をコードしている。ysl7のcDNAクローンは、残基112から残基2175(2178)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2344核酸残基長(配列番号15)であり、688アミノ酸残基長(配列番号16)のタンパク質をコードしている。ysl8のcDNAクローンは、残基49から残基2220(2223)まで伸びるオープンリーディングフレームを持つ2311核酸残基長(配列番号17)であり、724アミノ酸残基長(配列番号18)のタンパク質をコードしている。
【実施例4】
【0142】
元のYs1突然変異体中の突然変異の分子的特徴づけ
ys1−m1::AcゲノムクローンλYS31の配列をAc挿入部に隣接する領域で決定した。Acは予想通り挿入時に8bpの標的部位重複をもたらした。Acはコード領域内で、翻訳開始部位から649番目のアミノ酸に挿入される。
【0143】
cDNA配列に基づいて選択したプライマーを使って、Ys1野生型およびys1−refアレルを、ゲノムDNAから増幅した。ゲノムブロット解析を、対応するゲノム領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせると、ys1−refアレルは翻訳開始部位から472番目のアミノ酸に大きい挿入を持つことがわかる(上記の配列を参照されたい)。挿入された配列の両端を解析すると、これが長末端反復レトロトランスポゾンであることがわかる(非掲載データ)。
【0144】
さらに2つのys1突然変異体アレルys1:74−1924−1およびys1:5344を増幅し、配列決定した。ys1:74−1924−1突然変異は、フレームシフトを起こしてタンパク質配列のカルボキシ末端側の3分の1を改変してしまう一ヌクレオチド挿入に相当する。ys1:5344アレルは、16塩基対(bp)の欠失に2bpの挿入が伴っている少しだけ複雑な突然変異を持っていて、この突然変異により、タンパク質の最後の膜貫通ドメインでフレームシフトが始まる。ys1−refアレルは野生型Ys1と比較すると2kbの挿入部分を持っている。この産物の配列解析によると、この挿入部分はLTRレトロトランスポゾンであるらしいことがわかる。というのも、これは逆転写物コード領域と推定される領域を含むと共に、このタイプの因子に特有な長末端反復配列および標的部位重複を含むからである(非掲載データ)。ys1−refアレル内のこの挿入位置は、翻訳開始部位から474番目のアミノ酸にあたるコード領域内でもある。これら追加のys1突然変異体アレルおよびys1:refアレルにおける配列破壊は、本発明者らがys1遺伝子をクローニングしたことの最終的な裏付けになる。
【実施例5】
【0145】
酵母機能的相補性:ys1 cDNAの発現は酵母fet3fet4株における鉄輸送欠損を補完する
サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)二重突然変異体fet3fet4(DEY1453株)は、低親和性および高親和性鉄(II)取込み系の両方に欠損を持ち、鉄制限培地では生育することができず(Bide,Dら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996 93:5624−5628)、トウモロコシファイトシデロフォアデオキシムギネ酸と錯化した鉄(Fe−DMA)を利用して生育することができない(Loulergue,C. Gene 1998 225:47−57)。鉄輸送におけるYS1の機能を調べるために、本発明者らは、ys1 cDNAの発現が、唯一の鉄源としてFe−DMAを含む培地でのfet3fet4突然変異体の成長を復活させることができるかどうか調べた。
【0146】
DEY1453(fet3fet4)株に3つのプラスミド、すなわち(1)発現ベクターpYPGE15にクローニングしたys1 cDNA、(2)pFL61ベクターにクローニングしたアラビドプシスIRT1 cDNA(Minet,Mら,1992,Plant J.2:417−422)、および対照として(3)空のpYPGE15ベクターを個別に導入した。IRT1 cDNAは、クエン酸鉄でのDEY1453株の成長を支持することができるシロイヌナズナ鉄トランスポータータンパク質をコードしている。ys1およびIRT1 cDNAはどちらも強力なPGKプロモーターの制御下に置いた(Loulergue,Cら,1998,Gene 225:47−57)。次に、本発明者らは、YS1に基質特異性があるとすれば、その基質特異性を決定するために、2つの異なる鉄源、すなわちFe−クエン酸またはFe−DMAを培地中にどちらも低濃度で使用して、示差的成長試験を行なった。酵母は、5μM Fe−クエン酸、5μM Fe−DMA、または5μM Fe−DMAおよび5μM BPDSを添加した最少培地/Uraで成長させた。Fe−DMA錯体は、von Wiren,Nら,1998 Biochem.Biophys.Acta 1372:143−155に従って調製した。培養は30℃で4日間行なった。3つの酵母培養物希釈液(600nmでの光学密度が0.2、0.02および0.002であるもの)をプレート上にスポットした。
【0147】
Fe−クエン酸を唯一の鉄源として供給した場合、IRT1の発現は、予想通り、fet3fet4の成長を復活させたが、YS1の発現はfet3fet4の成長を復活させなかった。5μM Fe−DMAが存在する場合、YS1発現とIRT1発現はどちらもfet3fet4突然変異体を成長させた。これは培地中に存在する少量の残留非キレートFe(II)のせいかもしれない。鉄をFe−DMAキレートとして供給した場合、ys1はfet3fet4成長欠損を補完するが、鉄をFe−クエン酸として供給した場合は、そのような補完が起こらないことから、ys1はFe−DMAに特異的な鉄トランスポーターをコードすることが示唆される。この点を明らかにするために、Fe−DMA培地から残留Fe(II)が全て除去されるように、強力なFe(II)キレート剤である5μM BPDSを、Fe−DMA培地に添加した。BPDSを添加すると、IRT1による相補性は無くなったが、YS1による相補性には影響しなかった。BPDSの存在下にFe−DMAでの成長を可能にするというYS1の能力は、YS1がファイトシデオフォア結合型Fe(III)のトランスポーターであることを強く示唆している。
【実施例6】
【0148】
若いトウモロコシ小植物体における鉄利用能によるys1 mRNAレベルの調節
トウモロコシにおけるys1遺伝子発現に対するFe飢餓の効果を、ノーザンブロットハイブリダイゼーションを使って解析した。植物を、鉄の存在下(+)または不在下(−)で、発芽後1、5、7または10日間、水耕栽培した(Thoiron,S.ら,1997 Plant Cell Env.20:1051−1060)。1、5および7日齢の小植物体の根ならびに10日齢の小植物体の根および苗条から調製した10μgの全RNAを含むノーザンブロットに、PCRによって得た3’UTR ys1プローブをハイブリダイズさせた。RNA抽出とRNAブロット解析は、Loulergue,C.ら,1998 Gene 225:47−57に記載されているように行なった。ブロットをストリッピングし、コメシトクロムb5レダクターゼをコードするNADPH−第二鉄(NRF)cDNAにハイブリダイズさせた(Bagnaresi,Pら,Biochem.J.1999 338:499−505)。臭化エチジウム染色rRNAも得た。ハイブリダイゼーションシグナルは、PhosphorImager(Storm480,Molecular Dynamics)を使って、3日間の露出後に明らかにした。
【0149】
ys1の発現は、若いトウモロコシ小植物体の根に、発芽の1日後には早くも検出された。ys1 mRNAの存在量は、植物を鉄の不在下で生長させると、数倍に増加した。発芽の5、7、10日後に同じ誘導が観察されたことから、ys1 mRNAの定常状態レベルはトウモロコシ根での鉄飢餓によって増加することが明らかになった。この結果は、鉄十分な条件で栽培したトウモロコシ植物体が低い基礎鉄取込みレベルを示し、鉄欠乏状態では鉄取込み速度の2.8倍の増加を示すという生理学的研究とよく一致する(von Wiren,N.ら,Physiol.Plant 1995 95:611−616)。
【0150】
葉におけるys1の発現を、鉄の存在下(+)または不在下(−)で栽培した10日齢の植物体で調べた。10日齢の鉄飢餓植物体の根は、鉄十分な植物体の根よりも高レベルのys1を発現させた。ys1 mRNAは鉄十分な植物体の葉には検出されなかったが、鉄欠乏植物体の葉には高レベルの集積が検出された。DMAは植物の内部で細胞から細胞に鉄を輸送する鉄運搬体として働くことが考えられる。実際、DMAはコメ植物体の葉に検出されている(Mori,Sら,1991 Plant Soil 130:143−156)。あるいは、構造上DMAに関係するFe(II)およびFe(III)キレート剤ニコチアナミン(von Wiren,Nら,Plant Physiol.1999 119:1107−1114)が、根以外の組織ではYS1による輸送の基質であるのかもしれない。ニコチアナミンはイネ科植物だけでなく全ての植物種に見いだされ、師管液での長距離Fe(II)輸送に関与すると主張されている(von Wiren,Nら,Plant Physiol.1999 119:1107−1114;Stephan,UWら,Plant Soil.1994 165:181−188;Stephan,UWら,Biometals 1996 9:84−90)。この点で、ニコチアナミンを産生するがムギネ酸は産生しない種であるアラビドプシスのYSL遺伝子が、YS1と同様の輸送役割を持っているかもしれないことを指摘しておく。
【実施例7】
【0151】
トウモロコシにおけるYS1によるCuの取込み
YS1のCu輸送能力も調べた。トウモロコシ小植物体をCu欠乏土壌で10日間栽培した。次に、土壌にCu−ニコチアナミンまたはCu−ファイトシデロフォアの形で銅を施用した。それら小植物体の根および葉からRNAを抽出し、実施例6に記載したように、RNAブロット解析にかけた。
【0152】
ys1 mRNA発現はCu不足に応答して根でも葉でも増加することがわかった。さらに、サザンブロット解析により、根ではYS1タンパク質発現の増加も起こることが確認された。
【実施例8】
【0153】
YS1は欠陥酵母におけるCu取込みを補完する
植物での知見を補完するために、本発明者らは、Cuの取込みに欠陥を持つ酵母株を補完するYS1の能力を解析した。
【0154】
実施例5での知見と合致して、ys1で形質転換されCu添加培地で培養されたCu取込み欠損酵母突然変異体は、増殖することができた。したがって、鉄の他にもいくつかのタイプの重金属を輸送するというYS1の能力が確認された。
【0155】
これらの結果は、バイオレメディエーションとの関連で、YS1トランスジェニック植物が土壌の鉄含量を低下させるためだけでなく、土壌中の銅レベルを低下させるためにも役立つことを証明している。したがって、YS1トランスジェニック植物を使用することにより、鉄ならびに銅で汚染された土壌の再生が可能になる。
【実施例9】
【0156】
アラビドプシスYSL2タンパク質による鉄取込み
上記実施例4と同様に、サッカロミセス・セレビシェ二重突然変異体fet3fet4(DEY1453株)を使って、鉄輸送におけるYSL2(配列番号5)の機能を調べた。本発明者らは、ysl2 cDNAの発現が、唯一の鉄源としてFe−ニコチンアミドまたはFe−クエン酸を含む培地でのfet3fet4突然変異体の成長を復活させることができるかどうかを調べた。YSL2は、Fe−ニコチンアミド培地でのfet3fet4の成長を促進することができたが、Fe−クエン酸培地での成長を促進することはできなかった。これは、YSL2が真のFe−ニコチンアミドトランスポーターであることを裏付けている。
【実施例10】
【0157】
栄養としての鉄の取込み量を増加させるためのトランスジェニック植物
鉄含量に乏しい土壌から鉄を取り込む能力が強化されるように、または高い土壌pH(アルカリ度)、土壌中の高い石灰含量、石灰質土壌、土壌中の過剰なリン酸塩、高レベルの炭酸水素イオンを含む潅漑用水、過剰な水分と低い土壌温度、または土壌から鉄を取り込む植物の能力を妨害しうる他の任意の条件によって鉄の取込みが阻害される状況で、鉄を取り込む能力が強化されるように、トランスジェニック植物を操作する。鉄を取込む能力が強化されるように植物を操作することにより、食用植物中の栄養素の生物学的利用能が増加し、植物の生長がよくなり、および/または収穫量が増加する。
【0158】
ys1および/またはysl1〜8の少なくとも1つと、土壌から鉄を取り込むという植物の能力が妨害されうる条件下で前記遺伝子の発現をアップレギュレートするプロモーターとを含み、任意の食用作物のゲノムへのそれらの組込みを可能にする隣接配列を持つベクターを構築する。形質転換実生およびWT実生を、鉄の生物学的利用能が低い様々な条件の典型例となる土壌培地で栽培する。組織に集積される鉄が乾燥バイオマスに占めるパーセンテージが野生型対照の場合よりも高い栽培品種を選抜する。
【0159】
例えば、形質転換されたダイズまたはキャッサバの実生を、鉄の生物学的利用能が低い条件(例えば低い土壌鉄濃度または高い石灰濃度)をまねるように処方された砂/パーライト混合物で、親野生型植物体と並べて栽培することができる。全ての植物体に灌水し、鉄を除いたホーグランド栄養液を定期的に与える。植物体を完熟状態まで生長させた後、乾燥する。総植物体鉄濃度およびその植物体の可食部の鉄濃度をアッセイする。親WT植物体より高レベルの鉄集積を示す形質転換植物体を選抜して、さらなる増殖と、そしておそらくは植物育種、植物選抜および植物生産の当業者には周知の方法による育種計画を実施する。
【実施例11】
【0160】
土壌からの金属の抽出
超集積体である植物種、すなわち同じ条件で栽培されたWT植物体より高レベルの金属を根および他の組織に集積する能力を持ち、その金属がその植物体にとって有毒となることもない植物種は、数多く同定されている。しかし、これらの植物の多くは、土壌にキレート剤を加えなければ、土壌から重金属を抽出することができない。したがって、トウモロコシYS1および/またはアラビドプシスYSL1〜8遺伝子産物の少なくとも1つを発現させ、土壌に化学的キレート剤を常時施用しなくても、金属汚染土壌で栽培および収穫することができる超集積植物を得ることが望ましい。
【0161】
ys1および/またはysl1〜8の少なくとも1つと、土壌中の金属濃度が高い条件下でその遺伝子の発現を可能にするプロモーターとを含み、任意の超集積植物のゲノムへのそれらの組込みを可能にする隣接配列を持つベクターを構築する。例えばカラシナ(Brassica juncea)およびアマランサス・パニキュラータ(Amaranthus paniculata)の形質転換実生およびWT実生を、目的とする重金属汚染条件の典型例となる土壌培地で栽培する。組織に集積される所定の重金属が乾燥バイオマスに占めるパーセンテージが野生型対照の場合よりも高い栽培品種を選抜する。
【0162】
WTの実生および形質転換されたカラシナ(Brassica juncea)およびアマランサス・パニキュラータ(Amaranthus paniculata)の実生を、砂/パーライト混合物に植え、21日間生長させることができる。次に、様々な濃度の様々な金属を含む溶液(キレート剤(例えばHEDTA、EDTA)入り/キレート剤なし)を土壌に加える。土壌1グラムにつき2〜500マイクログラムの金属を適用することができる。次に、植物に灌水し、ホーグランド栄養液を定期的に与える。金属を加えた14日後に、根および土壌中の金属濃度を測定することができる。金属集積能力は、根組織中の金属濃度(乾燥重量ベース)を土壌中の金属濃度(乾燥重量ベース)で割ることによって計算する。
【0163】
親WT植物体より高レベルの鉄集積を示す形質転換植物体を選抜して、さらなる増殖と、そしておそらくは当業者に周知の方法による育種計画および生産を実施する。
【0164】
本明細書および本願特許請求の範囲で使用する単数形「a」「an」および「the」は、文脈上別段の定義がない限り複数の指示対象を包含することに注意しなければならない。したがって、例えば「金属」(a metal)という記載は、そのような金属および重金属の混合物ならびに多数のそのような金属および重金属を包含し、「トランスジェニック植物」(a transgenic plant)という記載は、多数のトランスジェニック植物およびその混合物を包含し、「方法」(the method)という記載は、本明細書に記載するタイプの1つまたは複数の方法もしくはステップを包含する。
【0165】
本明細書に記載した刊行物は単に、その開示が本願出願日前に行なわれたという理由で記載されているにすぎない。本明細書のいかなる記載も、先行発明という理由で、本発明が、そのような公表に先だってなされたとする資格がないとの自白であると解釈してはならない。
【0166】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を持つ。本明細書に記載するものと類似するまたは等価な方法および材料はいずれも本発明の実施または試験に使用することができるが、本明細書には好ましい方法および材料を記載する。本明細書で引用した刊行物は全て、その刊行物を引用する理由となった本発明の特定の側面を開示し説明する目的で、ここに援用する。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1A】λYS31ゲノムクローンに含まれる9.5kb SalI断片の地図である。Ac因子およびプローブ断片YS1−Fの位置を示してある。
【図1B】ys1遺伝子の地図である。エクソンを黒い枠で示す。ys1−m1::Acアレル中のAc因子およびys1:refアレル中のレトロトランスポゾン因子の位置を上下に示す。プローブ断片YS1−Fも示す。

Claims (28)

  1. (a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の少なくとも6個のアミノ酸断片をコードする単離された核酸分子、(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15または17を含む核酸分子の補体にハイブリダイズする単離された核酸分子、(d)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列をコードする核酸分子で且つYS1またはアラビドプシスYSLタンパク質をコードする核酸分子の補体にハイブリダイズする単離された核酸分子、および(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18と少なくとも約79%のアミノ酸配列一致率を示すタンパク質をコードする単離された核酸分子、より成る群から選択される単離された核酸分子。
  2. 前記核酸分子が、一つ以上の発現制御因子に作動可能に連結されている、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 請求項1に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
  4. 請求項1に記載の核酸分子を含む形質転換された宿主細胞。
  5. 請求項3に記載のベクターを含む宿主細胞。
  6. 前記宿主が、原核宿主細胞および真核宿主細胞から成る群より選択される、請求項5に記載の宿主細胞。
  7. 請求項1に記載の核酸分子によってコードされたタンパク質が発現される条件下で、前記核酸分子で形質転換された宿主細胞を培養するステップを含む、ペプチドを製造する方法。
  8. 前記宿主細胞が、原核宿主細胞および真核宿主細胞から成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項7に記載の方法によって製造される単離されたポリペプチド。
  10. (a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の少なくとも6個のアミノ酸断片を含む単離されたポリペプチド、(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18の保存的アミノ酸置換体を含む単離されたポリペプチド、(d)配列番号2の天然アミノ酸配列変異体、および(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16または18と少なくとも約79%のアミノ酸配列一致率を示す単離されたポリペプチドから成る群より選択される、単離されたポリペプチドまたはタンパク質。
  11. 少なくとも一つの請求項1に記載の核酸を含むトランスジェニック植物。
  12. 高蓄積体でもある、請求項11に記載のトランスジェニック植物。
  13. トランスジェニック植物が、高蓄積体表現型を発現するように設計されている、請求項12に記載のトランスジェニック植物。
  14. 金属の高蓄積が、特定の植物組織の中にコンパートメント化される、請求項13に記載のトランスジェニック植物。
  15. 前記特定の植物組織が食用である、請求項14に記載のトランスジェニック植物。
  16. 請求項10に記載のタンパク質を発現するように設計されているトランスジェニック植物。
  17. 高蓄積体でもある、請求項16に記載のトランスジェニック植物。
  18. トランスジェニック植物が、高蓄積体表現型を発現するように設計されている、請求項17に記載のトランスジェニック植物。
  19. 金属の高蓄積が、特定の植物組織の中にコンパートメント化される、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
  20. 前記特定の植物組織が食用である、請求項19に記載のトランスジェニック植物。
  21. 土壌環境から金属を取り入れる方法であって、
    アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、鉛、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、セレン、銀、ストロンチウム、スズ、ウラン、バナジウムおよび亜鉛から成る群より選択される金属を含む土壌環境を同定するステップと、
    前記土壌環境に請求項11乃至20に記載の少なくとも一つの植物を植えるステップと、
    前記植物が前記土壌環境から前記金属を取り入れるために充分な時間にわたって、条件の下で、前記土壌環境に前記植物を維持するステップと、
    を含む、前記方法。
  22. 前記植物に蓄積された金属の濃度が、前記環境の前記金属の濃度よりも高い、請求項21に記載の方法。
  23. 金属が、鉄、クロム、マンガン、セレンおよび銅から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
  24. 植物が、アマランサス(Amaranthus)、ブラシカ(Brassica)、ラファナス(Raphanus)およびシナピス(Sinapis)から成る群より選択される種の植物である、請求項21に記載の方法。
  25. 植物が、アマランサス・パニキュラータ(Amaranthus paniculata)、ダイコン(Raphanus sativus)およびトラスピ・カエルレセンス(Thlaspi caerulescens)より成る群から選択される、請求項24に記載の方法。
  26. 植物が、カラシナ(Brassica juncea)、アビシニアガラシ(B. carinata)、キャベツ(B. oleracea)、クロガラシ(B. nigra)、アブラナ(B. campestris)、セイヨウアブラナ(B. napus)およびブラシカ・トルニフォルティイ(B. tournifortii)から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
  27. 植物が、シロガラシ(Sinapis alba)、ノハラガラシ(S. arvensis)、シナピス・フレクスオーサ(S. flexuosa)およびシナピス・プベセンス(S. pubescens)から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
  28. 少なくとも一つの請求項2に記載の核酸を含む、トランスジェニック植物。
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