JP2005501229A - Fkbp51/52及びcyp40により媒介される哺乳類の発毛 - Google Patents
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Abstract
本発明は、発毛を調節する非免疫抑制性作用物質を特定するための薬物スクリーニングアッセイと、発毛の調節のためのこうした作用物質の使用法とに関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚科学、細胞生物学、及び分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、発毛を調節する非免疫抑制性作用物質を特定するための薬物スクリーニングアッセイと、発毛の調節のためのこうした作用物質の使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制物質FK506、ラパマイシン、及びサイクロスポリンAは、臓器移植患者における拒絶反応を予防するために普通に使用されている公知のT細胞特異的免疫抑制物質である。T細胞において、FK506及びサイクロスポリンAは、カルシニューリンが転写因子NF/AT(活性化T細胞の核因子)を脱リン酸化するのを防止し、これにより、核への転座を阻害し、受容体の媒介によるインターロイキン−2等のサイトカインの合成及び分泌の増加を防止することで、T細胞の増殖を防止する(ハイトマン,J.ら,1992,The New Biologist 4: 448-460)。
【0003】
FK506及びサイクロスポリンAは、イムノフィリンと呼ばれる内因性の受容体タンパク質と結合することで作用する。その構造、及び特定の薬物との結合親和性に基づき、イムノフィリンは、二クラスのタンパク質に区分されており、FK506との親和性を有するタンパク質は、FK506結合タンパク質(FKBP)と呼ばれ、一方、サイクロスポリンとの親和性を有するものは、サイクロフィリンと呼ばれる。FKBPとサイクロフィリンとは、両方とも、同様のペプチジルプロリルイソメラーゼを保有しており、結果として、タンパク質のフォールディングと輸送とにとって重要であると考えられているタンパク質のシストランス異性化を発生させる。加えて、FKBPとサイクロフィリンとは、両方とも、情報伝達に関与する様々なタンパク質と相互作用する能力により特徴付けられる。
【0004】
FKBP群のいくつかの構成要素は、計算された分子量に従って特定及び命名されている(レイン,WSら,1991,J. Protein Chem. 10: 151-160、米国特許番号第5,763,590号)。サイクロフィリンA及びFKBP12は、当初、それぞれサイクロスポリンA及びFK506結合タンパク質として分離され、カルシニューリンの阻害を通じて、免疫抑制活性を発揮することが明らかとなった。FKBP51は、T細胞において発現し、遙かに弱い有効性でカルシニューリンを阻害することが発見されており、これはFK506の免疫抑制活性の媒介に多数のイムノフィリンが関与する可能性を示唆している。FKBP51は、プロゲステロン受容体複合体の構成要素であることも明らかになっている(ネア,S.C.ら,1997,Mol. Cell Biol. 17: 594-603)。FKBP52は、不活性ステロイド受容体複合体の構成要素として最初に発見された(スミス,D.F.ら,1993,J. Biol. Chem. 268: 18365-71)。FKBP52の1乃至149番目の残基であるN末端領域は、FKBP12との55%の相同性を有するが、しかしながら、FK506と複合体形成する時、免疫抑制活性を有しない。FKBP52は、カゼインキナーゼIIによりリン酸化され、イソメラーゼ活性から独立したシャペロン活性を有することが発見されている(ミヤタ,Y.ら,1997,Proc. Natl. Accad. Sci. USA 94: 14500-14505)。CyP40は、サイクロスポリンAとの低い親和性のみを有し、そのため、サイクロスポリンAの免疫抑制効果をほんの僅かに減少させる能力しかない。
【0005】
Hsp90は、最も豊富な熱ショックタンパク質である。信号伝達に関与する多数の転写因子及びタンパク質キナーゼは、hsp90との複合体を形成することが発見されている(プラット,W.B.ら,1999,Cell Signal 11: 938-851、プラット及びトフト,1997,Endocrine Rev. 18: 306-360)。転写因子と複合体形成する時、hsp90複合体は、テトラトリコペプチド反復(TPR)モチーフを伴う高分子量イムノフィリンを含むことが分かっている(デュイナ,A.A.ら,1996,Science 274: 1713-1715、ボーズ,S.ら,1996,Science 274: 1715-1717)。こうしたイムノフィリンは、FKBP52及びCyP40を含む(オーウェンス=グリロ,J.K.,1995,J. Biol. Chem. 270: 20479-20484、ミヤタ,Y.ら,1997,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 14500-14505、シルバースタイン,A.M.ら,1999,J. Biol. Chem. 274: 36980-36986)。
【0006】
脱毛の原因には、老化と、男性ホルモンの作用と、毛嚢への血液供給の欠失と、頭皮の異常とが含まれる。加えて、遺伝的性質が、脱毛の原因となる場合がある。例えば、男性ホルモン性脱毛症は、遺伝的に決定されると考えられている。最近では、丘疹状の病変を伴う無毛症と言われる、遺伝性脱毛症の希な常染色体性劣性形態が、ヒトの「無毛」遺伝子における突然変異により生じることが分かっている(アフマド,W.ら,1998,Science 279: 720-724)。この形態の脱毛症になる個人では、毛髪は、通常、頭皮からなくなり、患者は、非常に薄い眉毛及び睫毛を有する。マウス無毛遺伝子のヒト相同体における突然変異は、先天性全身脱毛症と丘疹状の病変を伴う無毛症とにつながる。無毛遺伝子における突然変異を有するマウスにおいて、毛母細胞では、早期の大量なアポトーシスが、Bcl−2発現の付随的な減少と共に生じると思われ、これは、無毛遺伝子産物が毛嚢における細胞増殖と、分化と、アポトーシスとを規制する役割を果たす可能性を示している。ヒト無毛遺伝子は、最近分離され、WO99/383965において説明されている。
【0007】
FK506及びサイクロスポリンAの局所適用は、投与量に依存する形で発毛を刺激することが報告されている(セインズブリ,T.S.L.ら,1991,Transplant. Proc. 23: 3332-3334)。例えば、FK506及びサイクロスポリンAは、マウス及びラットといった実験動物において発毛を刺激することが明らかになっている(WO98/55090、マウラ,M.,1997,Am. J. Path. 150: 1433、ヤマモト,S.ら,1993,J. Invest. Dermatol. 102:160)。FK506及びサイクロスポリンAと関連する作用物質との効果については、説明されている(ツジ,Y.ら,1999,Exp. Dermatol. 8: 366-7、マッケルウィ,K.I.ら,1997,Br. J. Dermatol. 137:491-7、イワブチ,T.ら,1995,J. Dermatol. Sci. 9:64-9、ヤマモト,S.及びカトウ,R.,1994,J. Dermatol. Sci. 7 Supp. 1: 547-54、ヤマモト,S.ら,1994,J. Invest. Dermatol. 102: 160-4)。
【0008】
加えて、日本特許出願第11−174041号では、ステロイド受容体との複合体を形成できる免疫抑制物質結合タンパク質、つまりFKBP52又はサイクロフィリン40との結合は可能だが、FKBP12等、ステロイド受容体との複合体を形成できないFKBPとは結合しない発毛刺激剤を特定する方法が説明されている。
【0009】
FK506及びサイクロスポリンAにより刺激される哺乳類の発毛のメカニズムは、依然として未知である。発毛刺激物質として使用できる可能性にもかかわらず、FK506及びサイクロスポリンAといった免疫抑制物質は、免疫抑制のような有毒の副作用をも示す。そのため、発毛の調節物質として有効な非免疫抑制物質を特定及び開発する必要がある。本発明は、免疫抑制物質FK506及びサイクロスポリンAが発毛を調節する際の信号経路の発見に基づくものである。この発見は、発毛を調節し得る非免疫抑制物質のための薬物スクリーニングアッセイを提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、発毛を調節する非免疫抑制物質を特定するための薬物スクリーニングアッセイと、発毛の調整のためのこうした物質の使用法方とに関連する。本発明は、特定のイムノフィリン、すなわちFK506及びサイクロスポリンAと、CyP40と、が発毛を調節する際の信号伝達経路の発見に基づくものである。ここで開示するように、FKBP51/52タンパク質は、毛嚢の真皮乳頭において発現することが分かっている。加えて、FKBP51/52は、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、細胞内の無毛タンパク質と、との複合体を形成することが分かっている。真皮乳頭細胞のFK506又はサイクロスポリンAとの接触も、Gli3標的遺伝子と、BMP4と、HNF3βとの発現を刺激することが分かっている。本発明の経路は、発毛を刺激するために使用できる非免疫抑制物質を特定する方法の基盤としての役目を果たす。
【0011】
本発明は、FKBP51/52、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質(hairless protein) を含め、FKBP51/52及びCyP40信号伝達経路の構成要素を調節する物質、つまり、こうした構成要素のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する物質を、スクリーニングするためのアッセイに関する。本発明の実施形態では、FKBP51/52又はCyP40の活性及び又はhsp90、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質との関連性を特異的に調節する作用物質の合理的ドラッグデザインに関する方法が提供される。本発明は、更に、本発明の経路の構成要素、つまりFKBP51/52と、CyP40と、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質との相互作用及び又は活性を調節する作用物質を特定するための細胞系アッセイと無細胞系アッセイとを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、本発明は、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択されたタンパク質とを発現する細胞、或いは、これらを含む調製物を、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物に接触させた細胞又は調製物内における、FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルを判定するステップと、
(iii)(ii)で得られた複合体形成レベルを、試験化合物が存在しない状態でのFKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルと比較するステップ、
を含み、試験化合物が存在する状態と存在しない状態とでの複合体形成レベルの差は、発毛調節活性との正相関を有する方法を提供する。
【0013】
本明細書での使用において、「調製物」という用語は、細胞構成要素を自然な状態で発現する細胞から、或いはその構成要素を発現するように遺伝子操作された細胞から、分離、抽出、又は部分的に精製された少なくとも一つの細胞構成要素を含む、或いは合成的に作成された構成要素を含む、組成物を指し、この組成物は、詳述する方法を遂行するために使用することができる。こうした調製物には、一部として、標準的な手法により作成された細胞の断片と、合成済み又は精製済みの構成要素を組み合わせることで作成された細胞構成要素の水性緩衝液とが含まれる。
【0014】
本明細書での使用において、「発毛調節活性との正相関」という語句は、試験作用物質により発毛を刺激又は阻害できることを生物活性が示唆する試験化合物の生物活性の観察結果を指す。
【0015】
本発明の別の実施形態では、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子反応要素の転写制御下で核ホルモン受容体及びレポータ遺伝子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、細胞内のレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(ii)試験化合物が存在しない状態でのレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(iii)(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルを比較するステップと、
を含み、ステップ(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法が提供される。
【0016】
本発明は、更に、発毛を促進し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物を含む試料を試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と結合するか否かを判定するステップと、
(iii)試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と、FKBP51/52、CyP40、核ホルモン受容体、hsp90タンパク質、及びその組み合わせで構成されるグループから選択された結合相手との間での複合体形成を阻害するか否かを判定するステップと、
を含み、試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と結合する能力と、複合体形成を阻害する能力とは、両方とも、発毛促進活性との正相関を有する方法を提供する。
【0017】
本発明は、更に、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、核ホルモン受容体と、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物とを発現する細胞を、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物の細胞核への核転座レベルを判定するステップと、
(iii)試験化合物が存在しない状態での各転座レベルを判定するステップと、
(iv)(ii)及び(iii)において測定した核転座レベルを比較するステップと、
を含み、ステップ(ii)及び(iii)で測定された核転座レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法に関する。
【0018】
特定された作用物質は、発毛を調節するために使用できる。こうした作用物質は、遺伝因子と、老化と、局部的な皮膚の状態と、身体全体に影響する病気すなわち全身性疾患と、により生じる禿の治療に特に有用である。こうした疾患には、一部として、男性型禿頭症と、女性型禿頭症と、中毒性禿頭症と、円形脱毛症と、瘢痕性脱毛症とが含まれる。加えて、この作用物質は、放射線又は化学療法に関連する脱毛の対象者を治療するのに使用することができる。
【0019】
したがって、本発明は、FKBP51/52、CyP40、又はhsp90と、無毛、Gli3、AFX−1、及びhsp90で構成されるグループから選択された少なくとも一つのタンパク質との間での複合体形成を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法を包含する。
【0020】
本発明は、無毛、AFX−1、及びGli3タンパク質で構成されるグループから選択されたタンパク質の核転座を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法を提供する。
【0021】
本発明の更に別の実施形態では、無毛、AFX−1、又はGli3により媒介される遺伝子発現を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法が提供される。
詳細な説明
本発明は、特定のイムノフィリン、すなわちFKBP51と、FKBP52と、CyP40とが発毛を調節する際の信号伝達経路の発見に基づくものである。FK506及びサイクロスポリンAといった作用物質が発毛を調節する際の経路の発見は、免疫系への影響を低減しながら発毛を促進するために使用可能な作用物質のスクリーニング標的を提供する。
【0022】
本発明は、信号伝達経路の構成要素の相互作用及び又は活性を調節する作用物質を特定するためのアッセイを包含する。こうした構成要素は、例えば、FKBP51/52と、CyP40と、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質とを含む。細胞系及び無細胞系アッセイの両方を使用して、FKBP51/52及びCyP40信号伝達経路の活性を増加又は減少させる作用物質を特定することができる。本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40のhsp90、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質との結びつきを特異的に促進又は阻害する作用物質の合理的ドラッグデザインを提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、前記の方法により設計又は特定された作用物質を提供する。更に、本発明は、発毛増強のための前記作用物質の使用法を提供する。特に、こうした作用物質は、遺伝因子、老化、及び又は局部的な皮膚状態から生じる場合がある禿の治療に使用することができる。
【0024】
FKBP51/52/CyP40の活性の調節において有用な作用物質のスクリーニングアッセイ
本発明は、FKBP51/52又はCyP40活性、或いはFKBP51/52又はCyP40遺伝子発現を調節し、したがって発毛の調節に有用である可能性がある作用物質又は組成物を特定するためのスクリーニングアッセイシステムに関する。
【0025】
発毛に関与するタンパク質の組み換え発現
発毛を調節する作用物質又は組成物を特定するためのスクリーニングアッセイを開発する目的から、FKBP51/52又はCyP40タンパク質、及び又はFKBP51/52及びCyP40と相互作用するタンパク質、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質を、組み換え発現させる必要性が生じる可能性がある。FKBP51及びFKBP52のcDNA配列及び推定アミノ酸配列は、特徴付けが成されており(PubMedアクセッション番号U71321及びM88279)、これは参照により本明細書に組み込むものとする。FKBP51/52という用語は、本明細書での使用において、FKBP51及びFKB52タンパク質の一方又は両方を指す。CyP40のcDNA配列及び推定アミノ酸配列は、特徴付けが成されており(アクセッション番号D63861)、これは参照により本明細書に組み込むものとする。hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛のcDNA配列及び推定アミノ酸配列についても、特徴付けが成されており(PubMedアクセッション番号NMO18411(無毛)、NM000168(Gli3)、NM005348(hsp90)、アクセッション番号U10072)、これらは参照により本明細書に組み込むものとする。簡略化のため、以下では、FKBP51/52について、組み換え発現の説明が行われるが、しかしながら、この方法は、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質の組み換え発現に関して利用することも可能である。
【0026】
FKBP51/52ヌクレオチド配列は、当業者に知られている様々な種類の方法を使用して分離することができる。例えば、FKBP51/52を発現することが知られている組織からのRNAを使用して構築したcDNAライブラリを、標識したFKBP51/52特異的プローブを使用してスクリーニングすることができる。代わりに、ゲノムライブラリをスクリーニングし、FKBP51又はFKB52タンパク質をコード化する核酸分子を導くことができる。更に、FKBP51/52核酸配列は、既知のFKBP51/52ヌクレオチド配列に基づいて設計された二つのオリゴヌクレオチドプライマを使用したポリメラーゼ鎖反応(PCR)を実行して導くことができる。反応のテンプレートは、FKBP51/52を発現することが知られている細胞株又は組織から作成されたmRNAの逆転写により得られるcDNAにすることができる。
【0027】
FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、及びペプチド断片、FKBP51/52の突然変異、切断、又は欠失形態、及び又はFKBP51/52融合タンパク質は、様々な用途で作成することが可能であり、その一部には、FKBP51/52媒介発毛の規制に関与する他の細胞遺伝子産物の特定と、発毛を調節するのに使用可能な作用物質のスクリーニングとが含まれる。FKBP51/52融合タンパク質は、酵素、蛍光タンパク質、及びポリペプチドタグ又は発行タンパク質との融合を含み、これらはすべて標識機能を提供する。
【0028】
FKBP51/52ポリペプチド及びペプチドは化学的に合成可能だが(例えば、クレイトン,1983,Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co., N. Y. を参照)、FKBP51/52から導かれる大きなポリペプチド及び全長FKBP51/52タンパク質は、FKBP51/52遺伝子配列及び又はその他のコード配列を含む核酸を発現させるための当業者に広く知られる手法を使用した組み換えDNA技術により、有利に生産することができる。こうした方法は、FKBP51/52ヌクレオチド配列と、適切な転写及び翻訳調節信号とを含む発現ベクタを構築するために使用できる。こうした方法は、例えば、in vitro組み換えDNA手法と、合成手法と、in vivo遺伝子組み換えと、を含む(例えば、サンブルックら,1989,Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N. Y. 及びオースベルら,1989,Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Y. において説明されている手法を参照)。
【0029】
様々な宿主−発現ベクタ系を利用して、FKBP51/52ヌクレオチド配列を発現させることができる(例えば、FKBP52の発現に関する米国特許第5,763,590号を参照)。FKBP51/52ペプチド又はポリペプチドが溶性の誘導体として発現し、分泌されない場合には、このペプチド又はポリペプチドは、宿主細胞から回収することができる。代わりに、FKBP51/52ペプチド又はポリペプチド分泌される場合には、このペプチド又はポリペプチドは、培地から回収することができる。
【0030】
本発明の目的において使用できる発現系には、一部として、FKBP51/52をコード化するヌクレオチド配列を含む組み換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクタにより形質転換させたバクテリア等の微生物、FKBP51/52をコード化するヌクレオチド配列を含む組み換え酵母発現ベクタにより形質転換させた酵母、或いは、哺乳類又は昆虫細胞若しくは哺乳類又は昆虫ウイルスから導いたプロモータを含んだFKBP51/52組み換え発現構成体を含む哺乳類細胞系又は昆虫細胞系が含まれる。
【0031】
適切な発現系は、FKBP51/52の正確な修飾、処理、及び細胞内局在の発生を確保するために選択できる。この目的のためには、FKBP51/52タンパク質を適切に修飾及び処理する能力を備えた真核宿主細胞が好ましい。スクリーニングを目的とする細胞株の作成に望まれるような組み換えFKBP51/52タンパク質の長期的な高産出量の生産には、安定した発現が好ましい。複製の起源を含む発現ベクタを使用せずに、宿主細胞は、適切な発現調節要素と、例えば、tie、hgprt、dhfr、neo、及びhygro遺伝子等の選択可能な標識遺伝子とにより制御されたDNAにより形質転換することができる。異種DNAの導入に続いて、改変細胞は、濃縮培地において一乃至二日間培養し、その後、選択培地に切り替えることができる。こうした改変細胞株は、FKBP51/52遺伝子産物の内因性活性を調節する作用物質をスクリーニング及び評価するのに特に有用である可能性がある。
【0032】
加えて、一部の事例においては、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用するために、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質といった不活性結合タンパク質を共発現させる必要がある。FKBP51/52の発現に関する上で説明した方法は、こうした結合タンパク質を共発現させるために、同様に使用することができる。
【0033】
無細胞系アッセイ
本発明に従って、FKBP51/52又はCyP40と相互作用すなわち結合し、こうしたタンパク質の活性を調節する作用物質を特定するために、無細胞系アッセイシステムを使用することができる。こうした作用物質は、FKBP51/52又はCyP40活性のアンタゴニスト又はアゴニストとして作用する場合があり、発毛の調節に使用することができる。特に、こうした作用物質は、FKBP51/52又はCyP40と、その結合相手、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質との間での複合体の形成を妨害又は防止する機能を果たすことができる。簡略化のため、以下では、FKBP51/52について、無細胞系アッセイの説明が行われるが、しかしながら、これはCyP40についても同様に利用することが可能である。
【0034】
様々な機能領域に対応するペプチドを含む組み換えFKBP51/52、又はFKBP51/52融合タンパク質は、FKBP51/52と相互作用する作用物質を特定するために、発現させ、アッセイにおいて使用することができる。
【0035】
この目的のために、溶性FKBP51/52を組み換え発現させ、FKBP51/52と結合する作用物質を特定するために、無細胞系アッセイにおいて利用することができる。組み換え発現FKBP51/52ポリペプチド、又は一つ以上のFKBP51/52機能領域を含む融合タンパク質は、上で説明したように作成可能であり、無細胞系スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。こうした機能領域の一つは、タンパク質/タンパク質相互作用にとって重要なテトラトリコペプチド反復(TPR)である。例えば、全長FKBP51/52、又は一つ以上の領域が欠失しているがTRPは保持されているような溶性切断FKBP51/52、TPRモチーフに対応するペプチド、或いはアッセイシステムにおける利点(結果として生じる複合体を標識又は分離する等)を提供するタンパク質又はポリペプチドと融合したFKBP51/52TPRモチーフを含む融合タンパク質を利用することが可能である。TPRモチーフと相互作用する作用物質を特定したい場合には、FKBP51/52TPRモチーフに対応するペプチドと、FKBP51/52TPRモチーフを含む融合タンパク質とを使用することができる。FKBP51/52タンパク質は、未処理又は半精製抽出物の一部として存在することもある。
【0036】
FKBP51/52と結合する作用物質を特定するために使用するアッセイの原理には、FKBP51/52と試験作用物質との反応混合物を、二種類の構成要素が相互作用及び結合可能であり、したがって反応混合物内で除去及び又は検出可能な複合体が形成される条件下において、これらに十分な時間に渡って、調製することが含まれる。その後、結合した試験作用物質の独自性が判断される。
【0037】
スクリーニングアッセイは、一般に知られる様々な方法のいずれかにより達成される。例えば、こうしたアッセイを実施する方法の一つには、FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、又は試験物質を固相に固定し、反応の終わりに、固相に付着したFKBP51/52/試験作用物質複合体を検出することが含まれる。こうした方法の一実施形態では、FKBP51/52反応物が固体面に固定され、試験作用物質は、固定されず、直接又は間接的に標識することができる。
【0038】
実際には、マイクロタイタプレートを固体面として都合良く利用することができる。固定構成要素は、非共有又は共有結合により固体面で不動化する。固体面は、事前に準備し、保管することができる。アッセイを実施するためには、非不動化構成要素を、固定構成要素で覆われた固体面に追加する。反応完了後には、形成された任意の複合体が固体面で不動化された状態を維持するような条件下で、未反応構成要素を(例えば洗浄により)除去する。固体面で不動化された複合体の検出は、多数の方法で達成することができる。事前に不動化されない構成要素が前もって標識されている場合、表面で不動化された標識の検出は、複合体の形成を示す。前もって不動化されない構成要素が事前に標識されない場合は、例えば前もって不動化されない構成要素に特異的な標識済みの抗体を使用する等、間接的な標識を使用して、固体面上の複合体を検出することができる。
【0039】
代わりに、反応は液相において実施され、反応生成物は、FKBP51/52タンパク質、融合タンパク質、又は試験作用物質に特異的な不動化抗体を使用して、未反応構成要素から分離され、複合体は、複合体のその他の構成要素に特異的な標識済みの抗体を使用して検出される。
【0040】
本発明に従って、無細胞系アッセイシステムは、細胞内でのFKBP51/52と一つ以上の他のタンパク質との間での相互作用に直接的に干渉する作用物質を特定するために使用することができる。FKBP51/52と相互作用するタンパク質は、この解説の目的から、「結合相手」と呼ばれる。こうした結合相手は、FKBP51/52信号伝達経路に関与する可能性が高い。こうした結合相手には、一部として、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質とが含まれる。そのため、一つ以上のこうした結合相手のFKBP51/52との相互作用を調節する作用物質を特定することが望ましい。こうした作用物質は、一つ以上のこうした結合相手のFKBP51/52との相互作用に干渉すること、或いはこれを妨害することが可能であり、発毛の調節において有用である可能性がある。代わりに、作用物質は、一つ以上の結合相手とFKBP51/52との間の親和性を増加させるもの、或いは相互作用を向上させるものとして特定される可能性がある。
【0041】
FKBP51/52部分と一つ以上の結合相手との間での相互作用に干渉する作用物質を特定するために使用されるアッセイシステムの基本原理には、FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又は融合タンパク質と、一つ以上の結合相手とを含む反応混合物を調製し、構成要素が相互作用及び結合可能であり、したがって複合体が形成される条件下において、これらに十分な時間に渡って、反応混合物を培養することが含まれる。阻害活性に関して作用物質を試験するためには、試験作用物質が存在する状態と存在しない状態との両方において、反応混合物を調製する。試験作用物質は、最初から反応混合物に含めることが可能であり、或いはFKBP51/52部分を(複数の)結合相手に追加した後の時点で追加することも可能である。対照反応混合物は、試験作用物質なしで、或いはプラシーボと共に、培養される。その後、FKBP51/52部分と(複数の)結合相手との間での任意の複合体の形成が検出される。試験作用物質を含む反応混合物に存在せず、対照反応には存在する複合体の形成は、FKBP51/52と(複数の)相互作用での結合相手との相互作用に試験作用物質が干渉したことを示す。
【0042】
FKBP51/52と結合相手との相互作用に干渉する作用物質のアッセイは、不均質又は均質なフォーマットにおいて実施することができる。不均質アッセイには、FKBP51/52部分の生成物、又は結合相手を固体面に固定し、反応の終わりに、固体面に付着した複合体を検出することが含まれる。均質アッセイでは、全ての反応が液相で実施される。いずれのアプローチにおいても、反応物の追加順序は、試験する作用物質に関する様々な情報を取得するために変化させることができる。例えば、競合により相互作用に干渉する試験作用物質は、試験物質が存在する状態で反応を実施することで、すなわち、FKBP51/52部分及び相互作用での結合相手よりも先に、或いはこれらと同時に、試験物質を反応混合物に追加することで、特定できる。代わりに、予備形成される複合体を妨害する試験作用物質、例えば、複合体から構成要素の一つを駆逐する高い結合定数を備えた作用物質は、複合体が形成された後で反応混合物に試験作用物質を追加することで試験できる。様々なフォーマットについては、下で簡単に説明する。
【0043】
特定の実施形態では、不動化のためにFKBP51/52の融合を準備することができる。例えば、FKBP51/52又は例えばTPRモチーフに対応するペプチド断片は、pGEX−5X−1等の融合ベクタを使用して、結果として生じる融合タンパク質において結合活性が維持されるような形で、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)と融合させることができる。相互作用での結合相手、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、又は無毛タンパク質は、この技術で通常実施される方法を使用して、モノクローナル抗体を発生させるために精製及び使用することができる。モノクローナル抗体の生成は、こうした抗体が存在しており、広く利用可能である場合、省略することができる。この抗体は、この技術で通常実施される方法により、例えば、放射性同位体125Iにより標識することができる。例えば、不均質アッセイにおいては、GST−FKBP51/52融合タンパク質を、グルタチオンアガロースビーズに固定することができる。相互作用での結合相手は、その後、試験作用物質が存在する状態又は存在しない状態において、相互作用及び結合が発生可能な形で、追加することができる。反応期間の終わりには、未結合物質を洗い流し、このシステムに標識済みモノクローナル抗体を追加し、複合化した構成要素に結合させることができる。FKBP51/52遺伝子産物と相互作用での結合相手との間の相互作用は、グルタチオンアガロースビーズに関連して残存する放射能の量を測定することで検出できる。試験作用物質による相互作用の阻害が成功すれば、測定される放射能が減少することになる。
【0044】
代わりに、GST−FKBP51/52融合タンパク質と相互作用での結合相手とは、固体のグルタチオンアガロースビーズが存在しない状態で、水中において混合することができる。試験作用物質は、化学種の相互作用が可能となっている間に、又はその後で、追加することができる。この混合物は、その後、グルタチオンアガロースビーズに追加することが可能であり、未結合物質は洗い流す。同様に、FKBP51/52の結合相手との相互作用の阻害の程度は、標識済み抗体を追加し、ビーズに関連する放射能を測定することで検出できる。
【0045】
本発明の代替実施形態では、均質アッセイを使用することができる。このアプローチにおいて、FKBP51/52部分の予備形成複合体と相互作用での結合相手とは、FKBP51/52又はその結合相手のいずれかが標識されるが、複合体の形成により、標識の生成する信号が消えるように調製される。予備形成複合体の化学種の一つと競合し駆逐する試験物質を追加すると、バックグラウンドを上回る信号が生成されることになる。これにより、FKBP51/52の結合相手との相互作用を妨害する試験物質は、特定可能となる。
【0046】
本発明に従って、無細胞系アッセイは、更に、FKBP51/52に関連する酵素活性を直接的に阻害する作用物質をスクリーニングするために使用することができる。こうした活性には、その一部として、プロリンイソメラーゼ活性が含まれる。例えば、ハリソン及びスタイン(1980,Biochem. 29: 3813-3816)に従って、パークら(1992,Biol. Chem. 267: 3316-3324)により説明された修正と共に実行されたペプチジルプロリル・シストランスイソメラーゼアッセイは、FKBP51/52の活性レベルを測定するために使用できる。この目的のために、FKBP51/52及び試験作用物質の反応混合物質は、基質が存在する状態で調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較される。
【0047】
本発明の限定されない実施形態では、FKBP51/52と、試験作用物質と、基質との反応混合物が調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較され、これにおいて、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルの減少は、FKBP51/52の阻害物質が特定されたことを示す。代わりに、FKBP51/52と、試験作用物質と、基質との反応混合物が調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較され、これにおいて、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルの増加は、FKBP51/52のアゴニストが特定されたことを示す。
【0048】
細胞系アッセイ
本発明に従って、FKBP51/52又はCyP40の活性を規制する作用物質を特定するために、細胞系アッセイシステムを使用することができる。加えて、FKBP51/52/hsp90/無毛/AFX−1/Gli3複合体又はCyP40/hsp90/無毛/AFX−1/Gli3は、細胞内で核ホルモン受容体と結合すると考えられている。したがって、細胞系アッセイは、核ホルモン受容体を発現する細胞を使用して実行することができる。こうした核ホルモン受容体には、一部として、アンドロゲン、ビタミンD、レチノイン酸、アリル炭化水素、及び甲状腺ホルモン受容体が含まれる。こうした細胞を使用する時、試験作用物質の活性は、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態、或いは存在しない状態で、テストすることができる。以下では、FKBP51/52の活性を規制する作用物質の特定について、細胞系アッセイの説明が行われるが、しかしながら、こうした細胞系アッセイは、CyP40の活性を規制する作用物質を同様に特定するために使用することが可能である。
【0049】
本発明は、FKBP51/52の酵素活性を活性化する作用物質を特定する方法を提供し、これは、(i)FKBP51/52を発現する細胞を試験作用物質に接触させ、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、(ii)別個の実験において、FKBP51/52タンパク質を発現する細胞をビヒクル対照と接触させ、パート(i)と本質的に同じ条件で、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、その後、(iii)パート(i)において測定されたFKBP51/52の活性レベルを、パート(ii)におけるFKBP51/52の活性レベルと比較することと、を含み、これにおいて、ビヒクル対照が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルと比較して、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の活性レベルが増加している場合、これは試験作用物質がFKBP51/52の酵素活性化物質であることを示す。
【0050】
本発明は、更に、FKBP51/52の酵素活性を阻害する作用物質を特定する方法を提供し、これは、(i)FKBP51/52を発現する細胞を、FK506が存在する状態で、試験作用物質に接触させ、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、(ii)別個の実験において、FKBP51/52を発現する細胞を、FK506が存在する状態で接触させ、パート(i)と本質的に同じ条件で、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、その後、(iii)パート(i)において測定されたFKBP51/52の活性レベルを、パート(ii)におけるFKBP51/52の酵素活性レベルと比較することと、を含み、これにおいて、ビヒクル対照が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルと比較して、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の活性レベルが減少している場合、これは試験作用物質がFKBP51/52の酵素阻害物質であることを示す。
【0051】
こうした細胞系を利用する際には、FKBP51/52タンパク質を発現する細胞を、試験作用物質又はビヒクル対照(例えば、プラシーボ)に曝露する。曝露後又は曝露中には、細胞を検査し、FKBP51/52の酵素活性、或いはFKBP51/52に依存する信号伝達経路自体の活性を測定することができる。
【0052】
試験分子がFKBP51/52の酵素活性を調節する能力は、標準的な生化学的又は生理学的手法を使用して測定可能であり、例えば、化学的、生理学的、生物学的、又は表現型変化と、宿主細胞遺伝子又はレポータ遺伝子の誘導と、宿主細胞のキナーゼ活性の変化と、その他とにより測定される。例えば、FKBP51/52に関連するペプチジルプロピルイソメラーゼ活性を測定することができる。こうした活性のアッセイは、ハリソン及びスタイン(1980,Biochem. 29: 3813-3816)、パーク,S.T.ら(1992,J. Biol. Chem. 267: 3316-3324)、及び米国特許第5,763,590号において説明されるものを含む。代わりに、BMP4又はHNF3βといった、FKBP51/52信号伝達経路の活性により調節されることが知られている遺伝子の発現を検査し、FKBP51/52又は活性の調節物質を特定することができる。
【0053】
加えて、動物モデルを利用して、脱毛を改善することが可能な作用物質を特定することができる。こうした動物モデルは、このような疾患を治療するのに有効である可能性がある薬物と、製薬と、治療法と、介入法とを特定するための試験基質として使用することができる。例えば、動物モデルは、発毛を調節する能力を示すと思われる作用物質に曝露することが可能であり、曝露する動物でこうした発毛を引き出すのに十分な濃度で、十分な時間時間に渡って、これを行うことができる。この曝露に対する動物の反応は、発毛の調節を検査することでモニタできる。本発明の特定の実施形態では、C3Hマウスモデルを使用して、試験化合物が発毛を開始させる能力を測定することができる。通常は、生後七週間のメスのC3Hマウスを実験に使用する。マウスの腰部の毛を電気バリカンで剪毛し、その後、試験作用物質を投与する。試験動物発毛の目視観測により、試験作用物質が発毛を調節する能力に関する判定が行われることになる。加えて、Dundee Baldラットモデル動物又は化学療法により処置したマウスを使用することもできる。介入法に関して、疾患に似た症状の何らかの態様を逆転させる任意の処置は、ヒトにおける治療的介入法の候補と考えるべきである。試験作用物質の投与量は、下で説明するように、用量反応曲線を導くことで判定できる。
【0054】
合理的ドラッグデザイン
本発明の実施形態では、コンピュータモデリング及び検索技術を、FKBP51/52、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質の間でのタンパク質相互作用を調節できる作用物質の特定に使用することができる。例えば、FKBP51/52又はCyP40の結合部位の知識と、FKBP51/52又はCyP40とhsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛といったタンパク質との間での複合体の研究と、に基づいて、FKBP51/52又はCyP40信号伝達経路の潜在的な調節物質を特定することが可能である。
【0055】
結合部位の三次元幾何学構造は、既知の方法を使用して決定することが可能であり、これには、完全な分子構造を決定可能なX線結晶法が含まれる。一方、固相又は液相NMRを使用して、特定の分子内距離を決定することもできる。他の任意の実験的構造決定方法を使用して、部分的又は完全な幾何学構造を取得することができる。この幾何学構造は、複合タンパク質又は作用物質により測定することが可能であり、これは決定された活性部位の精度を高める可能性がある。
【0056】
不完全又は不十分な精度の構造が決定された場合、コンピュータに基づく数値モデリング方法を使用して、構造を完成させること、或いは精度を向上させることができる。認められた任意のモデリング方法を使用可能であり、これには、タンパク質等の特定のバイオポリマに限定されたパラメータ化モデル、分子運動の計算に基づく分子力学モデル、熱のアンサンブルに基づく統計力学モデル、又は複合モデルが含まれる。殆どのタイプのモデルに関して、構成する原子及び基の間の力を表す標準分子力場が必要であり、これは、物理化学において知られている力場から選択することができる。不完全な又は精度の低い実験構造は、こうしたモデリング方法により計算された完全な精度の高い構造に対する制約として働く可能性がある。
【0057】
実験、モデリング、或いはこうした方法の組み合わせのいずれかにより、結合部位の構造が決定された後、調節作用物質の候補は、作用物質を、その分子構造に関する情報と共に収容するデータベースを検索することで特定できる。こうした検索では、決定された結合部位構造と一致し、活性部位を定める基と相互作用する構造を有する作用物質が求められる。こうした検索は、手動で行うことが可能だが、好ましくは、コンピュータにより支援される。この検索で発見された作用物質は、潜在的な発毛調節作用物質である。
【0058】
代わりに、こうした方法は、既知の発毛調節作用物質を修飾し、その活性を改善するために使用することができる。既知の作用物質は修飾可能であり、修飾の構造的影響は、上で説明した実験的及びコンピュータモデリング方法を使用して判定することができる。改変構造は、その後、作用物質の活性部位構造と比較し、適合性又は相互作用の改善が生じたかを判断することができる。これにより、側鎖基の変化等による組成における体系的変化を迅速に評価し、例えば、CyP40との親和性を強め、同時にサイクロスポリンA又はBとの親和性を弱めるためのサイクロスポリンAの修飾等、特異性又は活性が改善された修飾調節作用物質又はリガンドを得ることができる。
【0059】
FKBP51/52又はFKBP51/52結合タンパク質の結合部位の特定に基づいて、調節作用物質を特定するのに有用な、その他の実験的及びコンピュータモデリング方法は、当業者に明らかである。加えて、CyP40又はCyP40結合タンパク質の結合部位の特定に基づいて、調節作用物質を特定するのに有用な実験的及びコンピュータモデリング方法は、当業者に明らかである。
【0060】
分子モデリングシステムの例には、CHARMm及びQUANTAプログラム(マサチューセッツ州ウォルサム、Polygen Corporation)がある。CHARMmは、エネルギ最小化及び分子力学関数を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、及び解析を実行する。QUANTAでは、分子相互の行動を対話式に構築、修飾、視覚化、及び解析することができる。
【0061】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングは、多数の論文において検討されており、これには、ロティビネンら,1988,Acta Pharmaceut. Fennica 97: 159-166、リプカ,1988,New Scientist 54-57、マッキナリ及びロスマン,1989,Ann. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29: 111-122、ペリー及びデイビス,1989,OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design, pp. 189-193 (Alan R. Liss, Inc.)、ルイス及びディーン,1989,Proc. R. Soc. Lond. 236: 125-140 and 141-162等があり、核酸構成要素のモデル受容体に関しては、アスキュら,1989,J. Am. Chem. Soc. 111: 1082-1090がある。化学物質を選別し画像で表現するその他のコンピュータプログラムは、BioDesign(カリフォルニア州パサディナ)、Allelix,Inc.(カナダ、オンタリオ州ミシサーガ)、及びHypercube,Inc.(オンタリオ州ケンブリッジ)といった企業から入手できる。ここで説明するように、FKBP51/52は、多数の既知の転写因子と結合し、その一部には、AFX−1と、Gli3と、無毛タンパク質が含まれる。したがって、上で説明したモデリングが、最初、特定のタンパク質に特異的な薬物への応用のために設計されたとしても、領域が特定された後、DNA又はRNAの領域に特異的な薬物の設計に適合させることが可能である。
【0062】
FKBP51/52又はCyP40の発現を規制する作用物質のアッセイ
本発明に従って、細胞系アッセイシステムを使用して、細胞内でFKBP51/52又はCyP40の発現を調節する作用物質をスクリーニングすることができる。アッセイは、転写又は翻訳レベルのいずれかで、FKBP51/52又はCyP40の発現を規制する作用物質をスクリーニングするために設計することができる。以下で説明するアッセイは、FKBP51/52遺伝子発現を規制することが可能な作用物質を特定するために設計されているが、しかしながら、こうしたアッセイは、CyP40遺伝子発現を規制する作用物質を特定するために、同様に使用することができる。
【0063】
一実施形態では、レポータ分子をコード化するDNAを、FKBP51/52遺伝子の規制因子に結び付け、適宜の完全な細胞、細胞抽出物、又はライセートにおいて使用し、FKBP51/52遺伝子発現を調節する作用物質を特定することができる。こうしたレポータ分子には、一部として、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、成長ホルモン、又は胎盤性アルカリフォスファターゼが含まれる。こうした構成物を細胞に導入することで、FKBP51/52遺伝子発現の調節物質を特定するためのスクリーニングアッセイに有用な組み換え細胞が提供される。
【0064】
細胞を試験作用物質に曝露させた後、レポータ遺伝子の発現レベルは、FKBP51/52発現を規制する試験作用物質の能力を判定するために、数量化することができる。酵素が細胞から分泌される場合、アルカリフォスファターゼアッセイは、本発明の実施において特に有用であり、その後、分泌されたアルカリフォスファターゼに関して、組織培養の上澄みを検査することが可能である。加えて、アルカリフォスファターゼ活性は、ブロンスタイン,I.ら,1994,Biotechniques 17: 172-177において説明されているような熱量測定、生物発光、又は化学発光アッセイにより測定することができる。こうしたアッセイは、薬品スクリーニングのための単純で、感度が高く、容易に自動化可能な検出システムを提供する。
【0065】
FKBP51/52の翻訳を調節する作用物質を特定するためには、FKBP51/52転写物を含む細胞又はin vitro細胞ライセートを、FKBP51/52のmRNAの翻訳の調節に関して試験することができる。FKBP51/52の翻訳の阻害物質を検査するためには、in vitro翻訳抽出物において、FKBP51/52のmRNAの翻訳を調節する能力に関して、試験作用物質を試験する。
【0066】
本発明の実施形態において、FKBP51/52の発現レベルは、FKBP51/52のmRNA転写の翻訳を阻害又は防止するアンチセンス又はリボザイムアプローチ、或いはFKBP51/52遺伝子の転写を阻害する三重螺旋アプローチを使用して調節することができる。こうしたアプローチは、発毛を調節するために利用することができる。
【0067】
アンチセンスアプローチには、FKBP51/52のmRNAの少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)の設計が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補mRNA転写物と結合し、翻訳を妨げる。完全な相補性は、好ましいものの、必要ではない。当業者は、ハイブリッド複合体の融点を判定する標準的な手順を使用して、許容できる不一致の度合いを確認することができる。
【0068】
本発明の更に別の実施形態では、FKBP51/52mRNA転写物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を使用して、FKBP51/52のmRNAの翻訳とFKBP51/52の発現を妨げることができる(例えば、1990年10月4日発行のPCT公報WO90/11364、サーバら,1990,Science 247: 1222-1225を参照)。
【0069】
代わりに、内因性FKBP51/52遺伝子発現は、FKBP51/52遺伝子の規制領域に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列(つまり、FKBP51/52のプロモータ又はエンハンサ)を標的にすることで、体内の標的細胞においてFKBP51/52遺伝子の転写を妨げる三重螺旋構造を形成し、低減することができる(ヘレン,C.ら,1991,Anticancer Drug Des. 6: 569-584、及びマーヘル,LJ,1992,Biassays 14: 807-815を参照)。
【0070】
本発明のオリゴヌクレオチド、すなわちアンチセンス、リボザイム、及び三重螺旋形成オリゴヌクレオチドは、この技術で知られている標準的な方法により、例えば自動化されたDNAシンセサイザ(Biosearch、Applied Biosystems、その他で市販されるもの等)を使用して、合成することができる。代わりに、組み換え発現ベクタを、本発明のオリゴヌクレオチドの発現を導くように構築することができる。こうしたベクタは、この技術において標準的な組み換えDNA技法により構築できる。特定の実施形態では、ウイルスベクタ等のベクタは、標的細胞における抑制性オリゴヌクレオチドのin vivo発現を目標とした遺伝子治療用途で設計することができる。
【0071】
Gli3、AFX−1、及び又は無毛転写因子の転写活性を規制する作用物質のアッセイ
本発明に従って、FKBP51/52、CyP40、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質により媒介される転写活性化を調節する作用物質を特定するためにアッセイを策定することができる。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、FK506をFKBP51/52/hsp90複合体に結合させること、或いはサイクロスポリンAをCyP40/hsp90複合体に結合させることは、複合体からのジンクフィンガ転写因子の無毛又はGli3の活性化及び又は放出を促進する。無毛及び又はGli3タンパク質の核転座は、結果として標的遺伝子の転写促進と毛の生産の刺激とを発生させる。
【0072】
本発明に従って、調節する作用物質を特定するためにアッセイを使用することができる。Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質の核への転座を調節する作用物質を特定するためにアッセイを使用することができる。このアッセイの目的から、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質は、GFP等の容易に検出可能なペプチドタグによりタグを付けることができる。こうしたアッセイは、タグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質を発現する細胞を、FK506又はサイクロスポリンAが存在する状態で、試験作用物質に接触させることを含む。代わりに、このアッセイでは、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、核ホルモン受容体を発現する細胞を使用することができる。試験作用物質を曝露させるのに続いて、例えば、核の中に存在するタグ付きタンパク質の量を測定することで、核の中に位置するタグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質の量を測定する。ビヒクル対照が存在する状態で実施した同じアッセイと比較して、試験作用物質が存在する状態で、核の中に検出されるタグ付きタンパク質の量が減少した場合には、無毛及び又はGli3核転座の調節物質が特定される。
【0073】
加えて、Gli3、AFX−1、又は無毛タグ付きタンパク質を発現する細胞は、FKBP51/52/hsp90又はCyP40/hsp90複合体からの無毛、AFX−1、及び又はGli3の解離を調節する作用物質を検査するのに使用できる。こうしたアッセイは、FK506又はサイクロスポリンAが存在する状態で、FK506――又はサイクロスポリンA――により媒介される前記複合体からの無毛、AFX−1、及び又はGli3の解離を阻害する作用物質を特定するために実行することができる。例えば、タグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質を発現する細胞は、FK506が存在する状態で、試験作用物質に接触させる。試験作用物質との接触に続いて、細胞ライセートを作成することが可能であり、その後、FKBP51/52又はCyP40タンパク質複合体の免疫沈降が生じる。この免疫沈降複合体は、その後、タグ付きのGli3、AFX−1、又は無毛タンパク質の存在又は欠如を判定するために分析される。
【0074】
Gli3転写因子の下流標的遺伝子は、FK506及びサイクロスポリンA処理により規制される。例えば、BMP4は、Gli3経路の下流標的遺伝子であり、BMP4の発現は、FK506及びサイクロスポリンAが存在する状態で刺激される。したがって、本発明の特定の実施形態において、Gli3反応因子、例えば5’TGGGTGGTC−3’を含む構成物は、様々な種類のレポータ遺伝子のいずれかと結び付けることが可能であり、FKBP51/52を発現する細胞に導入することができる。こうしたレポータ遺伝子には、上で述べたように、その一部として、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、GUS、成長ホルモン、又は胎盤性アルカリフォスファターゼが含まれる。試験作用物質に対する細胞の曝露に続いて、レポータ遺伝子の発現レベルを数量化し、試験作用物質がレポータ遺伝子の転写を規制する能力を判定することができる。FK506により誘導される転写のアンタゴニストの特定が望ましい事例において、この細胞は、FK506と試験作用物質との両方に接触させる。この細胞から分泌される酵素であるため、アルカリフォスファターゼアッセイは、本発明の実施において特に有用である。したがって、分泌されたアルカリフォスファターゼに関して、組織培養の上澄みを検査することが可能である。加えて、アルカリフォスファターゼ活性は、上で説明したような熱量測定、生物発光、又は化学発光アッセイにより測定することができる。
【0075】
試験作用物質の免疫抑制活性
本発明は、免疫抑制の副作用なしで、発毛を調節し得る作用物質の特定に関する。したがって、本発明に従って、発毛の潜在的な調節物質として特定された任意の作用物質は、免疫反応を抑制する能力に関しても試験される。
【0076】
試験作用物質の免疫抑制効果を測定するためのアッセイは、例えば、リンパ球刺激アッセイを含み、サイトカイン産出量、すなわちIL−2産出量を測定するためのアッセイを実行することが可能である。こうしたアッセイの一つは、次のように実行される。
【0077】
安楽死(CO2により窒息)させた生後七週乃至16週の範囲の成体のオスC3Hマウス(インディアナ州インディアナポリスのHarlan Sprague Dawley,Incが市販する生きたマウス)から脾臓を摘出する。この脾臓を、直ちにハンクス平衡塩類溶液(HBSS、メリーランド州ゲイサーズバーグのGibco−BRLが市販)に入れる。次に、この脾臓を磨りガラスのスライドグラスの間ですりつぶし、殺菌したスクリーンで濾過し、組織の破片を取り除く。結果として生じた細胞懸濁物を、等しい体積のFicoll−Paque Plus(ニュージャージ州ピスカタウェイが市販)により沈降させ、脾細胞を収集するために、20℃で、約40分間、400Gで遠心分離する。この脾細胞は、使い捨てのピペットを使用して界面から収集し、HBSSにより二回洗浄し、その後、20℃で、10分間、100Gで遠心分離する。脾細胞は、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco−BRL)と、ペニシリン(50U/ml)と、ストレプトマイシン(100μg/ml)と、L−グルタミン(2mM)と、2−メルカプトエタノール(10-5M)と、N−2ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10mM)とを含むフェノールレッドフリーのRPMI1640(Gibco−BRLが市販する培地)で構成される5乃至10mlの細胞培地に再懸濁させる。この細胞について、例えばトリパンブルーを使用して、計数し、生存率をチェックする。脾細胞を106細胞/mlで溶媒に再懸濁し、ピペットにより105細胞/ウェルで96ウェル丸底プレートに入れる。脾細胞は、試験化合物が存在する状態又は存在しない状態で、50μl/ウェルのコンカナバリンA(最終アッセイ濃度=5μg/ml)を追加して活性化させる。試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)による原液として作成され、その後、溶媒で稀釈して、50μl/ウェルで追加し、アッセイにおけるDMSOの最終濃度が0.05%未満になるようにする。このプレートを、37℃、5%CO2で、48時間培養する。細胞は、1μCi/ウェルのメチ−3H−チミジン(イングランド、バッキンガムシャのAmershamが市販)によりパルス標識し、更に24時間培養する。その後、この細胞をGF/Cフィルタプレート(イリノイ州ダウナーズグローブのPackardが市販)上に取り出し、Microscint20(Packard)において可溶化し、TopCountマイクロプレートシンチレーション及びルミネッセンスプレートカウンタ(Packard)において計数する。活性は、試験化合物が存在しない状態での対照活性のパーセンテージとして測定され、試験化合物濃度に対してプロットされる。このデータを、四つのパラメータによる曲線の当てはめ(Sigmaplot)に適合させ、IC50値を計算する。ここでの使用において、試験化合物が非免疫抑制性であるとみなされるのは、この方法を使用することで、(サイクロスポリンAのIC50/試験化合物のIC50)×100の比率が0.02以下となる場合、すなわち、ここで定義されるように、非免疫抑制性試験化合物がサイクロスポリンAの#2%の免疫抑制活性を有する場合である。
【0078】
細胞生存率は、MTT(3−[4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル]2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド)色素アッセイにより、ネルソンら,J. Immunol., 1993, 150(6):2139-2147において説明されるように評価されるが、無血清、フェノールレッドフリーのRPMI1640においてアッセイが実施される場合は例外となり、この色素は100μL/ウェルのDMSOにおいて可溶化し、SpectraMax Plusマイクロプレートリーダ(カリフォルニア州メンロパークのMolecular Device)により、540nmのODにおいて、650nmのバックグラウンド補正で読み取りが行われる。
【0079】
代わりに、試験作用物質が免疫抑制効果を有するか否かを判定するために、動物実験を実施することができる。
【0080】
本発明に従ってスクリーニングできる作用物質
上で説明したアッセイでは、FKBP51/52の活性を調節する作用物質を特定することができる。例えば、FKBP51/52の活性に影響を与える作用物質には、一部として、FKBP51/52と結合して、FKBP51/52の活性を調節する作用物質が含まれる。代わりに、作用物質は、FKBP51/52とは直接的に結合しないが、FKBP51/52の信号伝達に関与するタンパク質の活性を改変することでFKBP51/52の活性を改変できるものとして特定できる。更に、(FKBP51/52の全長又は切断形態を調節できるように、転写に影響を与える、或いはスプライシング事象に干渉する分子、例えばタンパク質又は小有機分子等、を含め、FKBP51/52遺伝子発現に影響を与えることで)FKBP51/52遺伝子活性に影響を与える作用物質を、本発明のスクリーンを使用して特定することができる。
【0081】
本発明に従ってスクリーニングできる作用物質には、一部として、小有機又は無機作用物質と、ペプチドと、抗体及びその断片と、FKBP51/52に結合し、FKBP51/52の任意の既知又は未知の基質により誘発される活性を模倣するか(つまりアゴニスト)、或いはFKBP51/52の任意の既知又は未知の基質により誘発される活性を阻害する(つまりアンタゴニスト)その他の有機作用物質(例えばペプチドミメティック)とが含まれる。FKBP51/52と結合して、FKBP51/52の活性を高める(アゴニスト)或いはFKBP51/52の活性を阻害する(アンタゴニスト)作用物質が、特定されることになる。FKBP51/52の活性を改変/調節するタンパク質と結合する作用物質が、特定されることになる。
【0082】
作用物質には、一部として、例えばランダムペプチドライブラリの構成要素のような可溶性ペプチド等のペプチド(ラム,K.S.ら,1991,Nature 354: 82-84、ホートン,R.ら,1991,Nature 354: 84-86等を参照)と、D及び又はL型アミノ酸により作成された、組み合わせ化学に由来する分子ライブラリと、ホスホペプチド(ランダム、又は部分縮重した方向性のあるホスホペプチドライブラリの構成要素等)(ソンヤン,Z.ら,1993,Cell 72: 767-778等を参照)と、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、又は一本鎖抗体、及びFab、F(ab’)2FV、及びFAb発現ライブラリ断片、及びそのエピトープ結合断片)と、小有機又は無機分子とが含まれる。
【0083】
本発明に従ってスクリーニング可能なその他の作用物質には、一部として、(遺伝子発現に関与する規制領域又は転写因子と相互作用すること等により)FKBP51/52遺伝子又はFKBP51/52信号伝達経路に関与するその他の遺伝子の発現に影響を与える小有機分子、或いは、FKBP51/52の活性又はFKBP51/52の活性を調節することに関与する他の何らかの因子の活性に影響を与えるような作用物質、例えばFKBP51/52を修飾し、これによりFKBP51/52の酵素活性を不活性化するタンパク質等が含まれる。
【0084】
発毛の調節物質を含む組成物及びその使用法
本発明は、上で述べたアッセイを使用して特定したFKBP51/52又はCyP40アゴニスト又はアンタゴニスト等、有効な量のFKBP51/52又はCyP40調節作用物質に細胞を接触させることを含む、発毛を調節する方法を提供する。FKBP51/52又はCyP40阻害物質すなわちアンタゴニストの「有効な量」とは、発毛を検出可能なほどに減少させる量である。FKBP51/52又はCyP40活性化物質すなわちアゴニストの「有効な量」とは、発毛を検出可能なほどに増加させる量である。
【0085】
本発明は、更に、こうした処置が必要な対象において発毛を調節する方法を提供し、これは、上で述べたように特定されたFKBP51/52又はCyP40の活性を調節する有効な量の作用物質を対象に投与することを含む。
【0086】
本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40の活性の一つ以上の活性化物質又は阻害物質を含む組成物を提供する。この組成物は、FKBP51/52又はCyP40に直接的に作用することが可能であり、或いは代わりに、FKBP51/52又はCyP40信号伝達経路に関与するタンパク質に作用することができる。
【0087】
本発明は、更に、FKBP51/52、CyP40、或いはFKBP51/52、CyP40が媒介する信号伝達の活性、及び又はFKBP51/52又はCyP40の発現を調節し、これにより発毛を調節し得る有効な量の作用物質を含む薬品組成と、製薬において許容される担体を提供する。特定の実施形態において、「製薬において許容される」という用語は、動物での使用、特に人間での使用に関して、連邦又は州政府の規制機関により承認されること、或いは、米国薬局方又はその他の一般に認められる薬局方に記載されることを意味する。「担体」という用語は、治療物質が投与される際に伴う稀釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。適切な薬品担体の例は、ゲンナロら(編)のRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (ISBN 0-683-306472)において説明されている。
【0088】
本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40の発現又は活性を調節する作用物質の投与による、発毛に関連する様々な疾患の治療を提供する。こうした作用物質には、一部として、FKBP51/52又はCyP40アゴニスト及びアンタゴニストが含まれる。こうした疾患には、一部として、男性型禿頭症と、女性型禿頭症と、中毒性禿頭症と、円形脱毛症と、瘢痕性脱毛症とが含まれる。加えて、この作用物質は、放射線又は化学療法に関連する脱毛の対象を治療するのに使用することができる。
【0089】
本発明の作用物質は、好ましくは、ヒトでの試験及び使用の前に、望ましい治療的又は予防的活性に関して、動物系において、in vitroで、及びその後、in vivoで、試験される。例えば、特定の治療物質の投与が示唆されるか否かを決定するのに使用されるin vitroアッセイには、FKBP51/52又はCyP40を発現する細胞を治療物質に曝露させるか、或いはこの細胞にその他の方法で治療物質を投与する、in vitro細胞株アッセイが含まれ、これにおいて、こうした治療物質のFKBP51/52又はCyP40に対する効果は、その後、FKBP51/52又はCyP40の活性が観察された時に観察される。本発明の特定の実施形態においては、作用物質がCyP40又はFKBP51/52により媒介される信号伝達経路を規制する能力が検査される。
【0090】
本発明は、必要な対象に有効な量の本発明の発毛調節作用物質を投与することを含む治療及び又は予防の方法を提供する。好適な態様において、この作用物質は、十分に精製されている。対象は、好ましくは動物であり、更に好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。
【0091】
発毛を調節し得る作用物質を投与するためには、リポソームによるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル等、様々な伝達システムが知られており、これらを使用することが可能である。導入の方法には、一部として、皮内と、局所と、筋肉内と、腹腔内と、静脈と、皮下と、鼻腔内と、硬膜外と、経口との経路が含まれる。作用物質は、例えば、注入又は静脈内ボーラス、及び上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜)からの吸収により、任意の都合の良い経路で投与可能であり、その他の生物活性作用物質と一緒に投与することができる。投与は、全身又は局所にすることが可能であり、好ましくは、局所適用のものが採用される。
【0092】
特定の実施形態では、本発明の組成物を身体の特定のエリアに局部的に投与することが望ましい場合がある。これは、制限的ではない例として、局所適用により達成できる。本発明の方法に従って特定された活性化合物は、一般に、少なくとも一つのこうした化合物を、薬品において許容されるビヒクル又は稀釈剤と共に含む、薬品組成物の形態で投与される。こうした組成物は、一般に、局所適用のために固体又は液体ビヒクル又は稀釈剤を必要に応じて利用する従来の方法で、溶液と、オイルと、ゲルと、クリームと、ゼリーと、ペーストと、ローションと、軟膏と、塗剤と、リーブオン及びリンスオフヘアコンディショナと、シャンプと、エアゾールと、その他との形態に調製される。
【0093】
本発明の方法に従って特定された活性化合物の適用のためのビヒクルの例には、水溶液又は水アルコール溶液、水中油型又は油中水型の乳液、乳化ゲル、又は二相系が含まれる。好ましくは、本発明による組成物は、ローション、クリーム、ミルク、ゲル、マスク、ミクロスフィア又はナノスフィア、或いはベシクルの分散の形態をとる。ベシクルの分散の場合、ベシクルを作成する脂質は、イオン型又は非イオン型、或いはこれらの混合にすることが可能である。
【0094】
活性化合物を含む局所組成物は、例えば、水、アルコール、アロエゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びEオイル、鉱油、プロピレングリコール、プロピオン酸PPG−2ミリスチル、及びその他といった、この技術で公知の様々な担体物質と、任意の様々なタイプの透過促進剤、増粘剤、pH安定剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、及びその他と、に混合することができる。
【0095】
局所的担体において使用するのに適したその他の物質には、この技術において知られているように、例えば、エモリエントと、溶剤と、湿潤剤と、濃化剤と、パウダとが含まれる。
【0096】
本発明の組成物は、更に、カリウムチャネル開放剤と、抗アンドロゲン物質と、甲状腺ホルモン及びその誘導体及び類縁物質と、プロスタグランジンアゴニスト又はアンタゴニストと、レチノイドと、トリテルペンと、この技術で知られている、或いは今後特定されるその他の物質と、といった、その他の発毛調節作用物質を、随意的に含むことができる。
【0097】
特定の疾患の治療において効果的となる本発明の作用物質の量は、疾患の性質に依存し、標準的な臨床手法により決定することができる。最適な投与量の範囲の特定を支援するために、in vitroアッセイを随意的に採用することができる。処方において採用する正確な投与量は、投与経路と疾患の性質とに依存し、医師の判断に応じて、各患者の状況を考慮して、決定するべきである。有効な投与量は、in vitro又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定することができる。
【0098】
本発明は、更に、本発明の薬品組成物の一つ以上の材料を含んだ一つ以上のコンテナを備える薬品パック又はキットを提供する。こうした(複数の)コンテナには、薬品又は生物学商品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関により規定された形式の通告を随意的に関連付けることが可能であり、この通告は、ヒトへの投与に関する、製造、使用、又は販売規制機関による承認を反映したものとなる。このキットは、更に、発毛を調節する、すなわち刺激又は阻害する、組成物の使用法を指示する印刷済みの取扱説明書又は印刷ラベルを備えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
以下の例は、本発明の作成及び実施の好適な形態を例示しているが、代替の方法を利用して同じものを得ることができるため、これは本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0100】
例:FKBP51/52により媒介される発毛
以下に提示する例は、(i)FKBP51及びFKBP52が、真皮乳頭において選択的に発現することと、(ii)FKBP51/52が、hsp90、AFX−1、Gli3、及び無毛タンパク質と共沈することと、(iii)BMP4及びHNF3β遺伝子、及びGli3反応性遺伝子の発現が、FK506により活性化されることを実証する。
【0101】
材料及び方法
逆転写
様々なヒト細胞におけるFKBP51、FKBP52、及びCyP40のmRNAの検出には、市販のRT−PCRキット(Promega Access RT−PCRキット)を使用した。ヒトFKBP51に関して使用されたプライマの配列は、TGAAGAAAGCCCCACAGC(SEQ ID NO:1)(フォワードプライマ)と、CTCCAAAACCATATCTTGGTCC(SEQ ID NO:2)(リバースプライマ)とである。ヒトFKBP52に関するプライマ配列は、ACATTGCCATAGCCACCA(SEQ ID NO:3)(フォワードプライマ)と、AGCCAAGACACGATCTTC(SEQ ID NO:4)(リバースプライマ)とである。ヒトCyP40に関するプライマ配列は、TGAAGGAAGGAGATGACGGG(SEQ ID NO:5)(フォワードプライマ)と、TCCTCAGGGAAATCTGGATGA(SEQ ID NO:6)(リバースプライマ)とである。
【0102】
トータルRNAは、TRIZOL試薬(Life Technologies)を使用し、製造会社の指示に従って、細胞株から抽出した。このRNAを、DNaseにより処理し、ゲノムDNAによる潜在的な汚染を取り除き、その後、RT−PCR反応に使用した。PCR反応産物は、2%アガロースゲル上で動かし、増幅された産物を視覚化し、適切な制限酵素により消化し、産物を確認した。
【0103】
組織の抽出
ヒト皮膚組織は、氷上でTPER試薬(イリノイ州ロックフォードのPierce)を10:1(抽出緩衝液:組織、体積:重量)の比率で使用し、プロテアーゼ阻害物質(Protease Inhibitor Cocktail、1:50の稀釈、ミズーリ州セントルイスのSigma)が存在する状態で、Polytronホモジナイザを使用して抽出し、ライセートを形成した。
【0104】
抗体のマグネチックレジン・プロテインGセファロースとの結合
使用される抗体には、抗hsp90(1mg/ml BSAを伴うモノクローナルIgG1、TL)及び抗FKBP52(抗ペプチドポリクローナルN17及びC19 Abs、Santa Cruz Biotechnologies)が含まれる。抗体は、Amicon Microcon−30を使用して、濃縮し、PBSにより三回洗浄した。抗体は、中性pHのPBS緩衝液において、37℃で一晩、トシル活性化Dyna M−450ビーズと結合させた。レジンは、トリスHCl、pH8により、4時間、37℃でブロックした。
【0105】
免疫沈降
FK506は、最終濃度1μMで、ライセートに追加した。抗体複合体は、TPER緩衝液において、6℃で一晩、免疫沈降させた。複合体は、トリス/生理食塩水(4℃)により十回洗浄し、その後、1M NH4CO3又は20mMトリス、pH7.4、0.3M NaCl(5×100μl)、及び0.1%TFA、5%MeOH(5×100μl)により溶出させた。複合体を濃縮し、緩衝液は、食塩溶出のために交換するか、或いは、TFA/MeOH溶出のために真空下で体積を低減した。試料は、−20℃で保存した。
【0106】
プロテアーゼ消化
タンパク質は、1M GnHCl、100mM NH4CO3、0.5mM DTTに懸濁し、トリプシン(Promega)又はgluC(Roche)により、約18時間、37℃で、消化を施した。消化物は、60%アセトニトリル、0.1%TFAにより溶出したC18 ZipTips(Millipore)を使用して脱塩した。
【0107】
質量分析による解析
ペプチド消化物は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析計により解析した。基本的に、ペプチドは、ドライドロップレット法が使用されたマトリックス(1:1の試料:α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、20mg/mI−HCCA、30%アセトニトリル、0.1%TFA)と混合した。ペプチドは、リフレクタモードのVoyager DE−Proスペクトロメータ(PE BioSystems)を使用して、陽イオン加速電圧20kV、グリッド電圧12.8kV、誘導線電圧1400Vで、100ns遅延抽出を使用して解析した。64スキャンより大きいものをスペクトル毎に平均化した。ブラジキニン及びACTH(18乃至39番目のアミノ酸残基)の30乃至50fmol毎に、内部質量標準として使用した。
【0108】
データベース検索
ペプチドスペクトルは、ProFound[http://nt2/prowl/prowl.html]又はRADRAS(OSI internal)を使用して比較した。質量誤差許容量は、通常30ppmとした。不完全な開裂部を一つ許容した。修飾は、最初に考慮しなかった。SWISSPROTとGENBANK NRデータベースとの両方を検索した。
【0109】
サイクロスポリンA及びFK506処理によるBMP4及びHNF3βのmRNAの誘導
一次的ヒト皮膚繊維芽細胞(BMP4検出のため)及び皮膚ケラチノサイト(HNF3β検出のため)を培養し、1uMのサイクロスポリンA又はFK506により処理した。トータルRNAは、処理二日目及び四日目に取り出した。リアルタイムPCRを使用して、BMP4及びHNF3βのmRNAレベルを数量化した。ABI PRISM 7700配列検出装置と、TaqMan PCRキットと、蛍光染料で標識され、市販ソフトで設計されたPCRプライマとを使用して、RNA数量化を行った。図3に提示した結果は、サイクロスポリンAとFK506との両方がBMP4及びHNF3βのmRNAを上昇規制することを示している。
【0110】
加えて、Gli3の下流標的遺伝子は、皮膚繊維芽細胞及び皮膚ケラチノサイトといった皮膚細胞におけるサイクロスポリンA及びFK506処理により上昇規制されることが分かった。図3に示すように、BMP4及びHNF3βのmRNAレベルは、サイクロスポリンA又はFK506処理により誘導された。
【0111】
FK506及びサイクロスポリンAによる甲状腺ホルモン受容体(TR)媒介転写の誘導
四つのタンデム甲状腺ホルモン応答要素(TRE)(AGGTCA CAGG AGGTCA)(下線の配列は反復される)(SEQ ID NO:7)を、単一のオリゴヌクレオチドとチミジンキナーゼ(TK)プロモータの結紮された5’において、標準の手順を使用して合成した。プラスミド(TRE−TK/pUV120puro)は、結果として生じた、デウェットJr.ら、1986,Methods Enzymol 133: 3-14のH.pyralisからのルシフェラーゼレポータ遺伝子のTRE/TKプロモータ5’を、SV40プロモータの制御下で発現する抗生物質ピューロマイシンに対する耐性を与えるタンパク質をコード化する遺伝子と共に結び付けることで構築した。このプラスミドにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子の発現は、TRE−TKプロモータの直接的な制御下にあり、甲状腺ホルモン核受容体(TR)のアゴニストにより誘導できる。HeLa細胞(ATCC、Manassas、VA20108、#CCL−2)には、標準的な手順を使用したエレクトロポレーションで、プラスミドDNAによるトランスフェクションを行い、薬物耐性細胞株は、ミシガン州セントルイスのSigma−Aldrich Corp.のピューロマイシンを使用して選択した。薬物耐性細胞株(HeLa/TRE)は、甲状腺ホルモンに対する感応性により選択し、その後の実験では、トランスフェクションが安定した単一のクローン株を使用した。
【0112】
質量分析実験は、hsp90と、サイクロフィリン40、FKBP51、又は52のいずれかと、無毛のジンクフィンガ転写因子と、核ホルモン受容体(甲状腺ホルモン受容体、アンドロゲン受容体、ビタミンD受容体、又はグルココルチコイド受容体)とをある程度含むタンパク質複合体により、発毛が媒介される可能性が高いことを示唆した。
【0113】
イムノフィリン信号の送信における甲状腺ホルモン核受容体の役割を確立するために、甲状腺ホルモン核受容体信号の送信を増加させる能力について、サイクロスポリンA、FK506、及び甲状腺ホルモンT3を評価した。HeLa/TRE細胞を、1ウェル当たり10,000細胞の濃度で、96ウェルマイクロタイタプレートにおいて、1%チャコール処理FCSと、2mMグルタミンと、抗体(ペニシリン及びストレプトマイシン)とを含むDMEM培地に接種した。この細胞は、サイクロスポリンA又はFK506(ミシガン州セントルイスのSigma−Aldrich Corp.、カリフォルニア州サンディエゴのCalbiochem−Nova biocheryl Corp.)の濃度を上昇させ(20nM、2nm、200pm、及び20pM)、16時間に渡って処理し、ルシフェラーゼレポータ遺伝子の活性を測定した(デウェットJr.ら、1986,Methods Enzymol 133: 3-14)。
【0114】
結果
真皮乳頭(DP)細胞は、発毛にとって決定的である。培養したヒト真皮乳頭細胞において、CyP40及びFKBP51/52を、RT−PCRを使用して検出した(図2)。FKBP51/52のレベルは、FKBP12/13のレベルよりも遙かに大きい。FK506の免疫抑制効果を媒介するFKBP12/13のレベルは、検出限界に近く、その発現レベルが非常に小さいことを示している。ヒト真皮乳頭繊維芽細胞及びケラチノサイトにおける発現パターンについても研究し、同一であることを発見した。
【0115】
ヒト頭皮皮膚に由来するhsp90及びFKBP52免疫沈降複合体の質量分析による解析から、三種類の転写因子の存在が明らかになっている。この因子には、無毛のジンクフィンガタンパク質、ソニックヘッジホッグ誘導因子Gli−3、及びAFX−1が含まれる。
【0116】
データは、ヒトの皮膚のFK506がhsp90タンパク質複合体との無毛の相互作用を改変できることも示唆している。無毛は、その後、核に転座し、発毛を規制する遺伝子の転写を刺激することが可能である。
【0117】
加えて、BMP4及びHNF3といったGli3の下流標的遺伝子は、FK506処理により上昇規制されることが発見された(図3)。
【0118】
イムノフィリン作用に関連するhsp90及びFKBP52複合体は、モノクローナル抗体と、プロテアーゼ消化と、ペプチド質量の質量分析測定と、データベース検索により、ヒト頭皮皮膚抽出物から特定された。以下のタンパク質は、質量分析による解析を行ったトリプシン及び又はGluC消化物から特定された。
【0119】
表1
抗hsp90及び抗FKBP52
ヒト皮膚抽出物+FK506
30ppm(SWISSPROT)
タンパク質の折り畳み、イムノフィリン、ストレス応答
【0120】
このデータは、サイクロスポリンA又はFK506が、投与量に依存する形で、甲状腺ホルモン受容体媒介転写を誘導することを示している。hsp90複合体におけるサイクロスポリン40(サイクロスポリンA)又はFKBP51/52(FK506)タンパク質とのリガンドの結合は、甲状腺ホルモン受容体の転写活性を明らかに活性化する。甲状腺ホルモン受容体の修飾タンパク質である無毛タンパク質も、サイクロスポリンA又はFK506の作用を調節し、これにより発毛を規制することができる。
【0121】
等価物
本発明は、本発明の個別の態様の単一の例示を意図した本明細書記載の特定の実施形態により範囲を限定されることはなく、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲に含まれる。実際に、本発明の様々な変形は、本明細書で図示及び説明したものとは別に、前記の説明と添付図面とから当業者には明らかとなろう。本明細書では様々な印刷物が引用されており、その内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明の前記その他の目的、その様々な特徴、及び本発明自体は、以下の添付図面と共に以下の説明を読むことで、より完全に理解されよう。
【図1】FKBP51/52と、CyP40と、ステロイド受容体と、hsp90と、その他の結合相手との間での相互作用の提案モデルを表す説明図である。
【図2】培養したヒト真皮乳頭細胞において、FKBP51と、FKBP52と、CyP40との発現がRT−PCRを使用して検出されることを実証する、ヒト真皮乳頭RNAのRT−PCR解析を示す図である。
【図3A】FK506及びサイクロスポリンA治療の四日後におけるBMP4転写の刺激を実証するグラフである。
【図3B】FK506及びサイクロスポリンA治療の四日後におけるHNF3β転写の刺激を実証するグラフである。
【図4】サイクロスポリンA又はFK506によるTR媒介転写の誘導を示すグラフである。
【0001】
本発明は、皮膚科学、細胞生物学、及び分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、発毛を調節する非免疫抑制性作用物質を特定するための薬物スクリーニングアッセイと、発毛の調節のためのこうした作用物質の使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制物質FK506、ラパマイシン、及びサイクロスポリンAは、臓器移植患者における拒絶反応を予防するために普通に使用されている公知のT細胞特異的免疫抑制物質である。T細胞において、FK506及びサイクロスポリンAは、カルシニューリンが転写因子NF/AT(活性化T細胞の核因子)を脱リン酸化するのを防止し、これにより、核への転座を阻害し、受容体の媒介によるインターロイキン−2等のサイトカインの合成及び分泌の増加を防止することで、T細胞の増殖を防止する(ハイトマン,J.ら,1992,The New Biologist 4: 448-460)。
【0003】
FK506及びサイクロスポリンAは、イムノフィリンと呼ばれる内因性の受容体タンパク質と結合することで作用する。その構造、及び特定の薬物との結合親和性に基づき、イムノフィリンは、二クラスのタンパク質に区分されており、FK506との親和性を有するタンパク質は、FK506結合タンパク質(FKBP)と呼ばれ、一方、サイクロスポリンとの親和性を有するものは、サイクロフィリンと呼ばれる。FKBPとサイクロフィリンとは、両方とも、同様のペプチジルプロリルイソメラーゼを保有しており、結果として、タンパク質のフォールディングと輸送とにとって重要であると考えられているタンパク質のシストランス異性化を発生させる。加えて、FKBPとサイクロフィリンとは、両方とも、情報伝達に関与する様々なタンパク質と相互作用する能力により特徴付けられる。
【0004】
FKBP群のいくつかの構成要素は、計算された分子量に従って特定及び命名されている(レイン,WSら,1991,J. Protein Chem. 10: 151-160、米国特許番号第5,763,590号)。サイクロフィリンA及びFKBP12は、当初、それぞれサイクロスポリンA及びFK506結合タンパク質として分離され、カルシニューリンの阻害を通じて、免疫抑制活性を発揮することが明らかとなった。FKBP51は、T細胞において発現し、遙かに弱い有効性でカルシニューリンを阻害することが発見されており、これはFK506の免疫抑制活性の媒介に多数のイムノフィリンが関与する可能性を示唆している。FKBP51は、プロゲステロン受容体複合体の構成要素であることも明らかになっている(ネア,S.C.ら,1997,Mol. Cell Biol. 17: 594-603)。FKBP52は、不活性ステロイド受容体複合体の構成要素として最初に発見された(スミス,D.F.ら,1993,J. Biol. Chem. 268: 18365-71)。FKBP52の1乃至149番目の残基であるN末端領域は、FKBP12との55%の相同性を有するが、しかしながら、FK506と複合体形成する時、免疫抑制活性を有しない。FKBP52は、カゼインキナーゼIIによりリン酸化され、イソメラーゼ活性から独立したシャペロン活性を有することが発見されている(ミヤタ,Y.ら,1997,Proc. Natl. Accad. Sci. USA 94: 14500-14505)。CyP40は、サイクロスポリンAとの低い親和性のみを有し、そのため、サイクロスポリンAの免疫抑制効果をほんの僅かに減少させる能力しかない。
【0005】
Hsp90は、最も豊富な熱ショックタンパク質である。信号伝達に関与する多数の転写因子及びタンパク質キナーゼは、hsp90との複合体を形成することが発見されている(プラット,W.B.ら,1999,Cell Signal 11: 938-851、プラット及びトフト,1997,Endocrine Rev. 18: 306-360)。転写因子と複合体形成する時、hsp90複合体は、テトラトリコペプチド反復(TPR)モチーフを伴う高分子量イムノフィリンを含むことが分かっている(デュイナ,A.A.ら,1996,Science 274: 1713-1715、ボーズ,S.ら,1996,Science 274: 1715-1717)。こうしたイムノフィリンは、FKBP52及びCyP40を含む(オーウェンス=グリロ,J.K.,1995,J. Biol. Chem. 270: 20479-20484、ミヤタ,Y.ら,1997,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 14500-14505、シルバースタイン,A.M.ら,1999,J. Biol. Chem. 274: 36980-36986)。
【0006】
脱毛の原因には、老化と、男性ホルモンの作用と、毛嚢への血液供給の欠失と、頭皮の異常とが含まれる。加えて、遺伝的性質が、脱毛の原因となる場合がある。例えば、男性ホルモン性脱毛症は、遺伝的に決定されると考えられている。最近では、丘疹状の病変を伴う無毛症と言われる、遺伝性脱毛症の希な常染色体性劣性形態が、ヒトの「無毛」遺伝子における突然変異により生じることが分かっている(アフマド,W.ら,1998,Science 279: 720-724)。この形態の脱毛症になる個人では、毛髪は、通常、頭皮からなくなり、患者は、非常に薄い眉毛及び睫毛を有する。マウス無毛遺伝子のヒト相同体における突然変異は、先天性全身脱毛症と丘疹状の病変を伴う無毛症とにつながる。無毛遺伝子における突然変異を有するマウスにおいて、毛母細胞では、早期の大量なアポトーシスが、Bcl−2発現の付随的な減少と共に生じると思われ、これは、無毛遺伝子産物が毛嚢における細胞増殖と、分化と、アポトーシスとを規制する役割を果たす可能性を示している。ヒト無毛遺伝子は、最近分離され、WO99/383965において説明されている。
【0007】
FK506及びサイクロスポリンAの局所適用は、投与量に依存する形で発毛を刺激することが報告されている(セインズブリ,T.S.L.ら,1991,Transplant. Proc. 23: 3332-3334)。例えば、FK506及びサイクロスポリンAは、マウス及びラットといった実験動物において発毛を刺激することが明らかになっている(WO98/55090、マウラ,M.,1997,Am. J. Path. 150: 1433、ヤマモト,S.ら,1993,J. Invest. Dermatol. 102:160)。FK506及びサイクロスポリンAと関連する作用物質との効果については、説明されている(ツジ,Y.ら,1999,Exp. Dermatol. 8: 366-7、マッケルウィ,K.I.ら,1997,Br. J. Dermatol. 137:491-7、イワブチ,T.ら,1995,J. Dermatol. Sci. 9:64-9、ヤマモト,S.及びカトウ,R.,1994,J. Dermatol. Sci. 7 Supp. 1: 547-54、ヤマモト,S.ら,1994,J. Invest. Dermatol. 102: 160-4)。
【0008】
加えて、日本特許出願第11−174041号では、ステロイド受容体との複合体を形成できる免疫抑制物質結合タンパク質、つまりFKBP52又はサイクロフィリン40との結合は可能だが、FKBP12等、ステロイド受容体との複合体を形成できないFKBPとは結合しない発毛刺激剤を特定する方法が説明されている。
【0009】
FK506及びサイクロスポリンAにより刺激される哺乳類の発毛のメカニズムは、依然として未知である。発毛刺激物質として使用できる可能性にもかかわらず、FK506及びサイクロスポリンAといった免疫抑制物質は、免疫抑制のような有毒の副作用をも示す。そのため、発毛の調節物質として有効な非免疫抑制物質を特定及び開発する必要がある。本発明は、免疫抑制物質FK506及びサイクロスポリンAが発毛を調節する際の信号経路の発見に基づくものである。この発見は、発毛を調節し得る非免疫抑制物質のための薬物スクリーニングアッセイを提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、発毛を調節する非免疫抑制物質を特定するための薬物スクリーニングアッセイと、発毛の調整のためのこうした物質の使用法方とに関連する。本発明は、特定のイムノフィリン、すなわちFK506及びサイクロスポリンAと、CyP40と、が発毛を調節する際の信号伝達経路の発見に基づくものである。ここで開示するように、FKBP51/52タンパク質は、毛嚢の真皮乳頭において発現することが分かっている。加えて、FKBP51/52は、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、細胞内の無毛タンパク質と、との複合体を形成することが分かっている。真皮乳頭細胞のFK506又はサイクロスポリンAとの接触も、Gli3標的遺伝子と、BMP4と、HNF3βとの発現を刺激することが分かっている。本発明の経路は、発毛を刺激するために使用できる非免疫抑制物質を特定する方法の基盤としての役目を果たす。
【0011】
本発明は、FKBP51/52、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質(hairless protein) を含め、FKBP51/52及びCyP40信号伝達経路の構成要素を調節する物質、つまり、こうした構成要素のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する物質を、スクリーニングするためのアッセイに関する。本発明の実施形態では、FKBP51/52又はCyP40の活性及び又はhsp90、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質との関連性を特異的に調節する作用物質の合理的ドラッグデザインに関する方法が提供される。本発明は、更に、本発明の経路の構成要素、つまりFKBP51/52と、CyP40と、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質との相互作用及び又は活性を調節する作用物質を特定するための細胞系アッセイと無細胞系アッセイとを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、本発明は、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択されたタンパク質とを発現する細胞、或いは、これらを含む調製物を、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物に接触させた細胞又は調製物内における、FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルを判定するステップと、
(iii)(ii)で得られた複合体形成レベルを、試験化合物が存在しない状態でのFKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルと比較するステップ、
を含み、試験化合物が存在する状態と存在しない状態とでの複合体形成レベルの差は、発毛調節活性との正相関を有する方法を提供する。
【0013】
本明細書での使用において、「調製物」という用語は、細胞構成要素を自然な状態で発現する細胞から、或いはその構成要素を発現するように遺伝子操作された細胞から、分離、抽出、又は部分的に精製された少なくとも一つの細胞構成要素を含む、或いは合成的に作成された構成要素を含む、組成物を指し、この組成物は、詳述する方法を遂行するために使用することができる。こうした調製物には、一部として、標準的な手法により作成された細胞の断片と、合成済み又は精製済みの構成要素を組み合わせることで作成された細胞構成要素の水性緩衝液とが含まれる。
【0014】
本明細書での使用において、「発毛調節活性との正相関」という語句は、試験作用物質により発毛を刺激又は阻害できることを生物活性が示唆する試験化合物の生物活性の観察結果を指す。
【0015】
本発明の別の実施形態では、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子反応要素の転写制御下で核ホルモン受容体及びレポータ遺伝子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、細胞内のレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(ii)試験化合物が存在しない状態でのレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(iii)(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルを比較するステップと、
を含み、ステップ(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法が提供される。
【0016】
本発明は、更に、発毛を促進し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物を含む試料を試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と結合するか否かを判定するステップと、
(iii)試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と、FKBP51/52、CyP40、核ホルモン受容体、hsp90タンパク質、及びその組み合わせで構成されるグループから選択された結合相手との間での複合体形成を阻害するか否かを判定するステップと、
を含み、試験化合物が、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物と結合する能力と、複合体形成を阻害する能力とは、両方とも、発毛促進活性との正相関を有する方法を提供する。
【0017】
本発明は、更に、発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、核ホルモン受容体と、無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物とを発現する細胞を、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子産物の細胞核への核転座レベルを判定するステップと、
(iii)試験化合物が存在しない状態での各転座レベルを判定するステップと、
(iv)(ii)及び(iii)において測定した核転座レベルを比較するステップと、
を含み、ステップ(ii)及び(iii)で測定された核転座レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法に関する。
【0018】
特定された作用物質は、発毛を調節するために使用できる。こうした作用物質は、遺伝因子と、老化と、局部的な皮膚の状態と、身体全体に影響する病気すなわち全身性疾患と、により生じる禿の治療に特に有用である。こうした疾患には、一部として、男性型禿頭症と、女性型禿頭症と、中毒性禿頭症と、円形脱毛症と、瘢痕性脱毛症とが含まれる。加えて、この作用物質は、放射線又は化学療法に関連する脱毛の対象者を治療するのに使用することができる。
【0019】
したがって、本発明は、FKBP51/52、CyP40、又はhsp90と、無毛、Gli3、AFX−1、及びhsp90で構成されるグループから選択された少なくとも一つのタンパク質との間での複合体形成を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法を包含する。
【0020】
本発明は、無毛、AFX−1、及びGli3タンパク質で構成されるグループから選択されたタンパク質の核転座を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法を提供する。
【0021】
本発明の更に別の実施形態では、無毛、AFX−1、又はGli3により媒介される遺伝子発現を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法が提供される。
詳細な説明
本発明は、特定のイムノフィリン、すなわちFKBP51と、FKBP52と、CyP40とが発毛を調節する際の信号伝達経路の発見に基づくものである。FK506及びサイクロスポリンAといった作用物質が発毛を調節する際の経路の発見は、免疫系への影響を低減しながら発毛を促進するために使用可能な作用物質のスクリーニング標的を提供する。
【0022】
本発明は、信号伝達経路の構成要素の相互作用及び又は活性を調節する作用物質を特定するためのアッセイを包含する。こうした構成要素は、例えば、FKBP51/52と、CyP40と、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質とを含む。細胞系及び無細胞系アッセイの両方を使用して、FKBP51/52及びCyP40信号伝達経路の活性を増加又は減少させる作用物質を特定することができる。本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40のhsp90、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質との結びつきを特異的に促進又は阻害する作用物質の合理的ドラッグデザインを提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、前記の方法により設計又は特定された作用物質を提供する。更に、本発明は、発毛増強のための前記作用物質の使用法を提供する。特に、こうした作用物質は、遺伝因子、老化、及び又は局部的な皮膚状態から生じる場合がある禿の治療に使用することができる。
【0024】
FKBP51/52/CyP40の活性の調節において有用な作用物質のスクリーニングアッセイ
本発明は、FKBP51/52又はCyP40活性、或いはFKBP51/52又はCyP40遺伝子発現を調節し、したがって発毛の調節に有用である可能性がある作用物質又は組成物を特定するためのスクリーニングアッセイシステムに関する。
【0025】
発毛に関与するタンパク質の組み換え発現
発毛を調節する作用物質又は組成物を特定するためのスクリーニングアッセイを開発する目的から、FKBP51/52又はCyP40タンパク質、及び又はFKBP51/52及びCyP40と相互作用するタンパク質、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質を、組み換え発現させる必要性が生じる可能性がある。FKBP51及びFKBP52のcDNA配列及び推定アミノ酸配列は、特徴付けが成されており(PubMedアクセッション番号U71321及びM88279)、これは参照により本明細書に組み込むものとする。FKBP51/52という用語は、本明細書での使用において、FKBP51及びFKB52タンパク質の一方又は両方を指す。CyP40のcDNA配列及び推定アミノ酸配列は、特徴付けが成されており(アクセッション番号D63861)、これは参照により本明細書に組み込むものとする。hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛のcDNA配列及び推定アミノ酸配列についても、特徴付けが成されており(PubMedアクセッション番号NMO18411(無毛)、NM000168(Gli3)、NM005348(hsp90)、アクセッション番号U10072)、これらは参照により本明細書に組み込むものとする。簡略化のため、以下では、FKBP51/52について、組み換え発現の説明が行われるが、しかしながら、この方法は、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質の組み換え発現に関して利用することも可能である。
【0026】
FKBP51/52ヌクレオチド配列は、当業者に知られている様々な種類の方法を使用して分離することができる。例えば、FKBP51/52を発現することが知られている組織からのRNAを使用して構築したcDNAライブラリを、標識したFKBP51/52特異的プローブを使用してスクリーニングすることができる。代わりに、ゲノムライブラリをスクリーニングし、FKBP51又はFKB52タンパク質をコード化する核酸分子を導くことができる。更に、FKBP51/52核酸配列は、既知のFKBP51/52ヌクレオチド配列に基づいて設計された二つのオリゴヌクレオチドプライマを使用したポリメラーゼ鎖反応(PCR)を実行して導くことができる。反応のテンプレートは、FKBP51/52を発現することが知られている細胞株又は組織から作成されたmRNAの逆転写により得られるcDNAにすることができる。
【0027】
FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、及びペプチド断片、FKBP51/52の突然変異、切断、又は欠失形態、及び又はFKBP51/52融合タンパク質は、様々な用途で作成することが可能であり、その一部には、FKBP51/52媒介発毛の規制に関与する他の細胞遺伝子産物の特定と、発毛を調節するのに使用可能な作用物質のスクリーニングとが含まれる。FKBP51/52融合タンパク質は、酵素、蛍光タンパク質、及びポリペプチドタグ又は発行タンパク質との融合を含み、これらはすべて標識機能を提供する。
【0028】
FKBP51/52ポリペプチド及びペプチドは化学的に合成可能だが(例えば、クレイトン,1983,Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co., N. Y. を参照)、FKBP51/52から導かれる大きなポリペプチド及び全長FKBP51/52タンパク質は、FKBP51/52遺伝子配列及び又はその他のコード配列を含む核酸を発現させるための当業者に広く知られる手法を使用した組み換えDNA技術により、有利に生産することができる。こうした方法は、FKBP51/52ヌクレオチド配列と、適切な転写及び翻訳調節信号とを含む発現ベクタを構築するために使用できる。こうした方法は、例えば、in vitro組み換えDNA手法と、合成手法と、in vivo遺伝子組み換えと、を含む(例えば、サンブルックら,1989,Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N. Y. 及びオースベルら,1989,Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Y. において説明されている手法を参照)。
【0029】
様々な宿主−発現ベクタ系を利用して、FKBP51/52ヌクレオチド配列を発現させることができる(例えば、FKBP52の発現に関する米国特許第5,763,590号を参照)。FKBP51/52ペプチド又はポリペプチドが溶性の誘導体として発現し、分泌されない場合には、このペプチド又はポリペプチドは、宿主細胞から回収することができる。代わりに、FKBP51/52ペプチド又はポリペプチド分泌される場合には、このペプチド又はポリペプチドは、培地から回収することができる。
【0030】
本発明の目的において使用できる発現系には、一部として、FKBP51/52をコード化するヌクレオチド配列を含む組み換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクタにより形質転換させたバクテリア等の微生物、FKBP51/52をコード化するヌクレオチド配列を含む組み換え酵母発現ベクタにより形質転換させた酵母、或いは、哺乳類又は昆虫細胞若しくは哺乳類又は昆虫ウイルスから導いたプロモータを含んだFKBP51/52組み換え発現構成体を含む哺乳類細胞系又は昆虫細胞系が含まれる。
【0031】
適切な発現系は、FKBP51/52の正確な修飾、処理、及び細胞内局在の発生を確保するために選択できる。この目的のためには、FKBP51/52タンパク質を適切に修飾及び処理する能力を備えた真核宿主細胞が好ましい。スクリーニングを目的とする細胞株の作成に望まれるような組み換えFKBP51/52タンパク質の長期的な高産出量の生産には、安定した発現が好ましい。複製の起源を含む発現ベクタを使用せずに、宿主細胞は、適切な発現調節要素と、例えば、tie、hgprt、dhfr、neo、及びhygro遺伝子等の選択可能な標識遺伝子とにより制御されたDNAにより形質転換することができる。異種DNAの導入に続いて、改変細胞は、濃縮培地において一乃至二日間培養し、その後、選択培地に切り替えることができる。こうした改変細胞株は、FKBP51/52遺伝子産物の内因性活性を調節する作用物質をスクリーニング及び評価するのに特に有用である可能性がある。
【0032】
加えて、一部の事例においては、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用するために、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び無毛タンパク質といった不活性結合タンパク質を共発現させる必要がある。FKBP51/52の発現に関する上で説明した方法は、こうした結合タンパク質を共発現させるために、同様に使用することができる。
【0033】
無細胞系アッセイ
本発明に従って、FKBP51/52又はCyP40と相互作用すなわち結合し、こうしたタンパク質の活性を調節する作用物質を特定するために、無細胞系アッセイシステムを使用することができる。こうした作用物質は、FKBP51/52又はCyP40活性のアンタゴニスト又はアゴニストとして作用する場合があり、発毛の調節に使用することができる。特に、こうした作用物質は、FKBP51/52又はCyP40と、その結合相手、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質との間での複合体の形成を妨害又は防止する機能を果たすことができる。簡略化のため、以下では、FKBP51/52について、無細胞系アッセイの説明が行われるが、しかしながら、これはCyP40についても同様に利用することが可能である。
【0034】
様々な機能領域に対応するペプチドを含む組み換えFKBP51/52、又はFKBP51/52融合タンパク質は、FKBP51/52と相互作用する作用物質を特定するために、発現させ、アッセイにおいて使用することができる。
【0035】
この目的のために、溶性FKBP51/52を組み換え発現させ、FKBP51/52と結合する作用物質を特定するために、無細胞系アッセイにおいて利用することができる。組み換え発現FKBP51/52ポリペプチド、又は一つ以上のFKBP51/52機能領域を含む融合タンパク質は、上で説明したように作成可能であり、無細胞系スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。こうした機能領域の一つは、タンパク質/タンパク質相互作用にとって重要なテトラトリコペプチド反復(TPR)である。例えば、全長FKBP51/52、又は一つ以上の領域が欠失しているがTRPは保持されているような溶性切断FKBP51/52、TPRモチーフに対応するペプチド、或いはアッセイシステムにおける利点(結果として生じる複合体を標識又は分離する等)を提供するタンパク質又はポリペプチドと融合したFKBP51/52TPRモチーフを含む融合タンパク質を利用することが可能である。TPRモチーフと相互作用する作用物質を特定したい場合には、FKBP51/52TPRモチーフに対応するペプチドと、FKBP51/52TPRモチーフを含む融合タンパク質とを使用することができる。FKBP51/52タンパク質は、未処理又は半精製抽出物の一部として存在することもある。
【0036】
FKBP51/52と結合する作用物質を特定するために使用するアッセイの原理には、FKBP51/52と試験作用物質との反応混合物を、二種類の構成要素が相互作用及び結合可能であり、したがって反応混合物内で除去及び又は検出可能な複合体が形成される条件下において、これらに十分な時間に渡って、調製することが含まれる。その後、結合した試験作用物質の独自性が判断される。
【0037】
スクリーニングアッセイは、一般に知られる様々な方法のいずれかにより達成される。例えば、こうしたアッセイを実施する方法の一つには、FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、又は試験物質を固相に固定し、反応の終わりに、固相に付着したFKBP51/52/試験作用物質複合体を検出することが含まれる。こうした方法の一実施形態では、FKBP51/52反応物が固体面に固定され、試験作用物質は、固定されず、直接又は間接的に標識することができる。
【0038】
実際には、マイクロタイタプレートを固体面として都合良く利用することができる。固定構成要素は、非共有又は共有結合により固体面で不動化する。固体面は、事前に準備し、保管することができる。アッセイを実施するためには、非不動化構成要素を、固定構成要素で覆われた固体面に追加する。反応完了後には、形成された任意の複合体が固体面で不動化された状態を維持するような条件下で、未反応構成要素を(例えば洗浄により)除去する。固体面で不動化された複合体の検出は、多数の方法で達成することができる。事前に不動化されない構成要素が前もって標識されている場合、表面で不動化された標識の検出は、複合体の形成を示す。前もって不動化されない構成要素が事前に標識されない場合は、例えば前もって不動化されない構成要素に特異的な標識済みの抗体を使用する等、間接的な標識を使用して、固体面上の複合体を検出することができる。
【0039】
代わりに、反応は液相において実施され、反応生成物は、FKBP51/52タンパク質、融合タンパク質、又は試験作用物質に特異的な不動化抗体を使用して、未反応構成要素から分離され、複合体は、複合体のその他の構成要素に特異的な標識済みの抗体を使用して検出される。
【0040】
本発明に従って、無細胞系アッセイシステムは、細胞内でのFKBP51/52と一つ以上の他のタンパク質との間での相互作用に直接的に干渉する作用物質を特定するために使用することができる。FKBP51/52と相互作用するタンパク質は、この解説の目的から、「結合相手」と呼ばれる。こうした結合相手は、FKBP51/52信号伝達経路に関与する可能性が高い。こうした結合相手には、一部として、hsp90と、Gli3と、AFX−1と、無毛タンパク質とが含まれる。そのため、一つ以上のこうした結合相手のFKBP51/52との相互作用を調節する作用物質を特定することが望ましい。こうした作用物質は、一つ以上のこうした結合相手のFKBP51/52との相互作用に干渉すること、或いはこれを妨害することが可能であり、発毛の調節において有用である可能性がある。代わりに、作用物質は、一つ以上の結合相手とFKBP51/52との間の親和性を増加させるもの、或いは相互作用を向上させるものとして特定される可能性がある。
【0041】
FKBP51/52部分と一つ以上の結合相手との間での相互作用に干渉する作用物質を特定するために使用されるアッセイシステムの基本原理には、FKBP51/52タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又は融合タンパク質と、一つ以上の結合相手とを含む反応混合物を調製し、構成要素が相互作用及び結合可能であり、したがって複合体が形成される条件下において、これらに十分な時間に渡って、反応混合物を培養することが含まれる。阻害活性に関して作用物質を試験するためには、試験作用物質が存在する状態と存在しない状態との両方において、反応混合物を調製する。試験作用物質は、最初から反応混合物に含めることが可能であり、或いはFKBP51/52部分を(複数の)結合相手に追加した後の時点で追加することも可能である。対照反応混合物は、試験作用物質なしで、或いはプラシーボと共に、培養される。その後、FKBP51/52部分と(複数の)結合相手との間での任意の複合体の形成が検出される。試験作用物質を含む反応混合物に存在せず、対照反応には存在する複合体の形成は、FKBP51/52と(複数の)相互作用での結合相手との相互作用に試験作用物質が干渉したことを示す。
【0042】
FKBP51/52と結合相手との相互作用に干渉する作用物質のアッセイは、不均質又は均質なフォーマットにおいて実施することができる。不均質アッセイには、FKBP51/52部分の生成物、又は結合相手を固体面に固定し、反応の終わりに、固体面に付着した複合体を検出することが含まれる。均質アッセイでは、全ての反応が液相で実施される。いずれのアプローチにおいても、反応物の追加順序は、試験する作用物質に関する様々な情報を取得するために変化させることができる。例えば、競合により相互作用に干渉する試験作用物質は、試験物質が存在する状態で反応を実施することで、すなわち、FKBP51/52部分及び相互作用での結合相手よりも先に、或いはこれらと同時に、試験物質を反応混合物に追加することで、特定できる。代わりに、予備形成される複合体を妨害する試験作用物質、例えば、複合体から構成要素の一つを駆逐する高い結合定数を備えた作用物質は、複合体が形成された後で反応混合物に試験作用物質を追加することで試験できる。様々なフォーマットについては、下で簡単に説明する。
【0043】
特定の実施形態では、不動化のためにFKBP51/52の融合を準備することができる。例えば、FKBP51/52又は例えばTPRモチーフに対応するペプチド断片は、pGEX−5X−1等の融合ベクタを使用して、結果として生じる融合タンパク質において結合活性が維持されるような形で、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)と融合させることができる。相互作用での結合相手、すなわちhsp90、Gli3、AFX−1、又は無毛タンパク質は、この技術で通常実施される方法を使用して、モノクローナル抗体を発生させるために精製及び使用することができる。モノクローナル抗体の生成は、こうした抗体が存在しており、広く利用可能である場合、省略することができる。この抗体は、この技術で通常実施される方法により、例えば、放射性同位体125Iにより標識することができる。例えば、不均質アッセイにおいては、GST−FKBP51/52融合タンパク質を、グルタチオンアガロースビーズに固定することができる。相互作用での結合相手は、その後、試験作用物質が存在する状態又は存在しない状態において、相互作用及び結合が発生可能な形で、追加することができる。反応期間の終わりには、未結合物質を洗い流し、このシステムに標識済みモノクローナル抗体を追加し、複合化した構成要素に結合させることができる。FKBP51/52遺伝子産物と相互作用での結合相手との間の相互作用は、グルタチオンアガロースビーズに関連して残存する放射能の量を測定することで検出できる。試験作用物質による相互作用の阻害が成功すれば、測定される放射能が減少することになる。
【0044】
代わりに、GST−FKBP51/52融合タンパク質と相互作用での結合相手とは、固体のグルタチオンアガロースビーズが存在しない状態で、水中において混合することができる。試験作用物質は、化学種の相互作用が可能となっている間に、又はその後で、追加することができる。この混合物は、その後、グルタチオンアガロースビーズに追加することが可能であり、未結合物質は洗い流す。同様に、FKBP51/52の結合相手との相互作用の阻害の程度は、標識済み抗体を追加し、ビーズに関連する放射能を測定することで検出できる。
【0045】
本発明の代替実施形態では、均質アッセイを使用することができる。このアプローチにおいて、FKBP51/52部分の予備形成複合体と相互作用での結合相手とは、FKBP51/52又はその結合相手のいずれかが標識されるが、複合体の形成により、標識の生成する信号が消えるように調製される。予備形成複合体の化学種の一つと競合し駆逐する試験物質を追加すると、バックグラウンドを上回る信号が生成されることになる。これにより、FKBP51/52の結合相手との相互作用を妨害する試験物質は、特定可能となる。
【0046】
本発明に従って、無細胞系アッセイは、更に、FKBP51/52に関連する酵素活性を直接的に阻害する作用物質をスクリーニングするために使用することができる。こうした活性には、その一部として、プロリンイソメラーゼ活性が含まれる。例えば、ハリソン及びスタイン(1980,Biochem. 29: 3813-3816)に従って、パークら(1992,Biol. Chem. 267: 3316-3324)により説明された修正と共に実行されたペプチジルプロリル・シストランスイソメラーゼアッセイは、FKBP51/52の活性レベルを測定するために使用できる。この目的のために、FKBP51/52及び試験作用物質の反応混合物質は、基質が存在する状態で調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較される。
【0047】
本発明の限定されない実施形態では、FKBP51/52と、試験作用物質と、基質との反応混合物が調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較され、これにおいて、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルの減少は、FKBP51/52の阻害物質が特定されたことを示す。代わりに、FKBP51/52と、試験作用物質と、基質との反応混合物が調製され、FKBP51/52の酵素活性は、試験作用物質が存在しない状態で観察された活性と比較され、これにおいて、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルの増加は、FKBP51/52のアゴニストが特定されたことを示す。
【0048】
細胞系アッセイ
本発明に従って、FKBP51/52又はCyP40の活性を規制する作用物質を特定するために、細胞系アッセイシステムを使用することができる。加えて、FKBP51/52/hsp90/無毛/AFX−1/Gli3複合体又はCyP40/hsp90/無毛/AFX−1/Gli3は、細胞内で核ホルモン受容体と結合すると考えられている。したがって、細胞系アッセイは、核ホルモン受容体を発現する細胞を使用して実行することができる。こうした核ホルモン受容体には、一部として、アンドロゲン、ビタミンD、レチノイン酸、アリル炭化水素、及び甲状腺ホルモン受容体が含まれる。こうした細胞を使用する時、試験作用物質の活性は、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態、或いは存在しない状態で、テストすることができる。以下では、FKBP51/52の活性を規制する作用物質の特定について、細胞系アッセイの説明が行われるが、しかしながら、こうした細胞系アッセイは、CyP40の活性を規制する作用物質を同様に特定するために使用することが可能である。
【0049】
本発明は、FKBP51/52の酵素活性を活性化する作用物質を特定する方法を提供し、これは、(i)FKBP51/52を発現する細胞を試験作用物質に接触させ、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、(ii)別個の実験において、FKBP51/52タンパク質を発現する細胞をビヒクル対照と接触させ、パート(i)と本質的に同じ条件で、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、その後、(iii)パート(i)において測定されたFKBP51/52の活性レベルを、パート(ii)におけるFKBP51/52の活性レベルと比較することと、を含み、これにおいて、ビヒクル対照が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルと比較して、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の活性レベルが増加している場合、これは試験作用物質がFKBP51/52の酵素活性化物質であることを示す。
【0050】
本発明は、更に、FKBP51/52の酵素活性を阻害する作用物質を特定する方法を提供し、これは、(i)FKBP51/52を発現する細胞を、FK506が存在する状態で、試験作用物質に接触させ、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、(ii)別個の実験において、FKBP51/52を発現する細胞を、FK506が存在する状態で接触させ、パート(i)と本質的に同じ条件で、FKBP51/52の酵素活性レベルを測定することと、その後、(iii)パート(i)において測定されたFKBP51/52の活性レベルを、パート(ii)におけるFKBP51/52の酵素活性レベルと比較することと、を含み、これにおいて、ビヒクル対照が存在する状態でのFKBP51/52の酵素活性レベルと比較して、試験作用物質が存在する状態でのFKBP51/52の活性レベルが減少している場合、これは試験作用物質がFKBP51/52の酵素阻害物質であることを示す。
【0051】
こうした細胞系を利用する際には、FKBP51/52タンパク質を発現する細胞を、試験作用物質又はビヒクル対照(例えば、プラシーボ)に曝露する。曝露後又は曝露中には、細胞を検査し、FKBP51/52の酵素活性、或いはFKBP51/52に依存する信号伝達経路自体の活性を測定することができる。
【0052】
試験分子がFKBP51/52の酵素活性を調節する能力は、標準的な生化学的又は生理学的手法を使用して測定可能であり、例えば、化学的、生理学的、生物学的、又は表現型変化と、宿主細胞遺伝子又はレポータ遺伝子の誘導と、宿主細胞のキナーゼ活性の変化と、その他とにより測定される。例えば、FKBP51/52に関連するペプチジルプロピルイソメラーゼ活性を測定することができる。こうした活性のアッセイは、ハリソン及びスタイン(1980,Biochem. 29: 3813-3816)、パーク,S.T.ら(1992,J. Biol. Chem. 267: 3316-3324)、及び米国特許第5,763,590号において説明されるものを含む。代わりに、BMP4又はHNF3βといった、FKBP51/52信号伝達経路の活性により調節されることが知られている遺伝子の発現を検査し、FKBP51/52又は活性の調節物質を特定することができる。
【0053】
加えて、動物モデルを利用して、脱毛を改善することが可能な作用物質を特定することができる。こうした動物モデルは、このような疾患を治療するのに有効である可能性がある薬物と、製薬と、治療法と、介入法とを特定するための試験基質として使用することができる。例えば、動物モデルは、発毛を調節する能力を示すと思われる作用物質に曝露することが可能であり、曝露する動物でこうした発毛を引き出すのに十分な濃度で、十分な時間時間に渡って、これを行うことができる。この曝露に対する動物の反応は、発毛の調節を検査することでモニタできる。本発明の特定の実施形態では、C3Hマウスモデルを使用して、試験化合物が発毛を開始させる能力を測定することができる。通常は、生後七週間のメスのC3Hマウスを実験に使用する。マウスの腰部の毛を電気バリカンで剪毛し、その後、試験作用物質を投与する。試験動物発毛の目視観測により、試験作用物質が発毛を調節する能力に関する判定が行われることになる。加えて、Dundee Baldラットモデル動物又は化学療法により処置したマウスを使用することもできる。介入法に関して、疾患に似た症状の何らかの態様を逆転させる任意の処置は、ヒトにおける治療的介入法の候補と考えるべきである。試験作用物質の投与量は、下で説明するように、用量反応曲線を導くことで判定できる。
【0054】
合理的ドラッグデザイン
本発明の実施形態では、コンピュータモデリング及び検索技術を、FKBP51/52、CyP40、hsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質の間でのタンパク質相互作用を調節できる作用物質の特定に使用することができる。例えば、FKBP51/52又はCyP40の結合部位の知識と、FKBP51/52又はCyP40とhsp90、Gli3、AFX−1、及び又は無毛といったタンパク質との間での複合体の研究と、に基づいて、FKBP51/52又はCyP40信号伝達経路の潜在的な調節物質を特定することが可能である。
【0055】
結合部位の三次元幾何学構造は、既知の方法を使用して決定することが可能であり、これには、完全な分子構造を決定可能なX線結晶法が含まれる。一方、固相又は液相NMRを使用して、特定の分子内距離を決定することもできる。他の任意の実験的構造決定方法を使用して、部分的又は完全な幾何学構造を取得することができる。この幾何学構造は、複合タンパク質又は作用物質により測定することが可能であり、これは決定された活性部位の精度を高める可能性がある。
【0056】
不完全又は不十分な精度の構造が決定された場合、コンピュータに基づく数値モデリング方法を使用して、構造を完成させること、或いは精度を向上させることができる。認められた任意のモデリング方法を使用可能であり、これには、タンパク質等の特定のバイオポリマに限定されたパラメータ化モデル、分子運動の計算に基づく分子力学モデル、熱のアンサンブルに基づく統計力学モデル、又は複合モデルが含まれる。殆どのタイプのモデルに関して、構成する原子及び基の間の力を表す標準分子力場が必要であり、これは、物理化学において知られている力場から選択することができる。不完全な又は精度の低い実験構造は、こうしたモデリング方法により計算された完全な精度の高い構造に対する制約として働く可能性がある。
【0057】
実験、モデリング、或いはこうした方法の組み合わせのいずれかにより、結合部位の構造が決定された後、調節作用物質の候補は、作用物質を、その分子構造に関する情報と共に収容するデータベースを検索することで特定できる。こうした検索では、決定された結合部位構造と一致し、活性部位を定める基と相互作用する構造を有する作用物質が求められる。こうした検索は、手動で行うことが可能だが、好ましくは、コンピュータにより支援される。この検索で発見された作用物質は、潜在的な発毛調節作用物質である。
【0058】
代わりに、こうした方法は、既知の発毛調節作用物質を修飾し、その活性を改善するために使用することができる。既知の作用物質は修飾可能であり、修飾の構造的影響は、上で説明した実験的及びコンピュータモデリング方法を使用して判定することができる。改変構造は、その後、作用物質の活性部位構造と比較し、適合性又は相互作用の改善が生じたかを判断することができる。これにより、側鎖基の変化等による組成における体系的変化を迅速に評価し、例えば、CyP40との親和性を強め、同時にサイクロスポリンA又はBとの親和性を弱めるためのサイクロスポリンAの修飾等、特異性又は活性が改善された修飾調節作用物質又はリガンドを得ることができる。
【0059】
FKBP51/52又はFKBP51/52結合タンパク質の結合部位の特定に基づいて、調節作用物質を特定するのに有用な、その他の実験的及びコンピュータモデリング方法は、当業者に明らかである。加えて、CyP40又はCyP40結合タンパク質の結合部位の特定に基づいて、調節作用物質を特定するのに有用な実験的及びコンピュータモデリング方法は、当業者に明らかである。
【0060】
分子モデリングシステムの例には、CHARMm及びQUANTAプログラム(マサチューセッツ州ウォルサム、Polygen Corporation)がある。CHARMmは、エネルギ最小化及び分子力学関数を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、及び解析を実行する。QUANTAでは、分子相互の行動を対話式に構築、修飾、視覚化、及び解析することができる。
【0061】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングは、多数の論文において検討されており、これには、ロティビネンら,1988,Acta Pharmaceut. Fennica 97: 159-166、リプカ,1988,New Scientist 54-57、マッキナリ及びロスマン,1989,Ann. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29: 111-122、ペリー及びデイビス,1989,OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design, pp. 189-193 (Alan R. Liss, Inc.)、ルイス及びディーン,1989,Proc. R. Soc. Lond. 236: 125-140 and 141-162等があり、核酸構成要素のモデル受容体に関しては、アスキュら,1989,J. Am. Chem. Soc. 111: 1082-1090がある。化学物質を選別し画像で表現するその他のコンピュータプログラムは、BioDesign(カリフォルニア州パサディナ)、Allelix,Inc.(カナダ、オンタリオ州ミシサーガ)、及びHypercube,Inc.(オンタリオ州ケンブリッジ)といった企業から入手できる。ここで説明するように、FKBP51/52は、多数の既知の転写因子と結合し、その一部には、AFX−1と、Gli3と、無毛タンパク質が含まれる。したがって、上で説明したモデリングが、最初、特定のタンパク質に特異的な薬物への応用のために設計されたとしても、領域が特定された後、DNA又はRNAの領域に特異的な薬物の設計に適合させることが可能である。
【0062】
FKBP51/52又はCyP40の発現を規制する作用物質のアッセイ
本発明に従って、細胞系アッセイシステムを使用して、細胞内でFKBP51/52又はCyP40の発現を調節する作用物質をスクリーニングすることができる。アッセイは、転写又は翻訳レベルのいずれかで、FKBP51/52又はCyP40の発現を規制する作用物質をスクリーニングするために設計することができる。以下で説明するアッセイは、FKBP51/52遺伝子発現を規制することが可能な作用物質を特定するために設計されているが、しかしながら、こうしたアッセイは、CyP40遺伝子発現を規制する作用物質を特定するために、同様に使用することができる。
【0063】
一実施形態では、レポータ分子をコード化するDNAを、FKBP51/52遺伝子の規制因子に結び付け、適宜の完全な細胞、細胞抽出物、又はライセートにおいて使用し、FKBP51/52遺伝子発現を調節する作用物質を特定することができる。こうしたレポータ分子には、一部として、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、成長ホルモン、又は胎盤性アルカリフォスファターゼが含まれる。こうした構成物を細胞に導入することで、FKBP51/52遺伝子発現の調節物質を特定するためのスクリーニングアッセイに有用な組み換え細胞が提供される。
【0064】
細胞を試験作用物質に曝露させた後、レポータ遺伝子の発現レベルは、FKBP51/52発現を規制する試験作用物質の能力を判定するために、数量化することができる。酵素が細胞から分泌される場合、アルカリフォスファターゼアッセイは、本発明の実施において特に有用であり、その後、分泌されたアルカリフォスファターゼに関して、組織培養の上澄みを検査することが可能である。加えて、アルカリフォスファターゼ活性は、ブロンスタイン,I.ら,1994,Biotechniques 17: 172-177において説明されているような熱量測定、生物発光、又は化学発光アッセイにより測定することができる。こうしたアッセイは、薬品スクリーニングのための単純で、感度が高く、容易に自動化可能な検出システムを提供する。
【0065】
FKBP51/52の翻訳を調節する作用物質を特定するためには、FKBP51/52転写物を含む細胞又はin vitro細胞ライセートを、FKBP51/52のmRNAの翻訳の調節に関して試験することができる。FKBP51/52の翻訳の阻害物質を検査するためには、in vitro翻訳抽出物において、FKBP51/52のmRNAの翻訳を調節する能力に関して、試験作用物質を試験する。
【0066】
本発明の実施形態において、FKBP51/52の発現レベルは、FKBP51/52のmRNA転写の翻訳を阻害又は防止するアンチセンス又はリボザイムアプローチ、或いはFKBP51/52遺伝子の転写を阻害する三重螺旋アプローチを使用して調節することができる。こうしたアプローチは、発毛を調節するために利用することができる。
【0067】
アンチセンスアプローチには、FKBP51/52のmRNAの少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)の設計が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補mRNA転写物と結合し、翻訳を妨げる。完全な相補性は、好ましいものの、必要ではない。当業者は、ハイブリッド複合体の融点を判定する標準的な手順を使用して、許容できる不一致の度合いを確認することができる。
【0068】
本発明の更に別の実施形態では、FKBP51/52mRNA転写物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を使用して、FKBP51/52のmRNAの翻訳とFKBP51/52の発現を妨げることができる(例えば、1990年10月4日発行のPCT公報WO90/11364、サーバら,1990,Science 247: 1222-1225を参照)。
【0069】
代わりに、内因性FKBP51/52遺伝子発現は、FKBP51/52遺伝子の規制領域に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列(つまり、FKBP51/52のプロモータ又はエンハンサ)を標的にすることで、体内の標的細胞においてFKBP51/52遺伝子の転写を妨げる三重螺旋構造を形成し、低減することができる(ヘレン,C.ら,1991,Anticancer Drug Des. 6: 569-584、及びマーヘル,LJ,1992,Biassays 14: 807-815を参照)。
【0070】
本発明のオリゴヌクレオチド、すなわちアンチセンス、リボザイム、及び三重螺旋形成オリゴヌクレオチドは、この技術で知られている標準的な方法により、例えば自動化されたDNAシンセサイザ(Biosearch、Applied Biosystems、その他で市販されるもの等)を使用して、合成することができる。代わりに、組み換え発現ベクタを、本発明のオリゴヌクレオチドの発現を導くように構築することができる。こうしたベクタは、この技術において標準的な組み換えDNA技法により構築できる。特定の実施形態では、ウイルスベクタ等のベクタは、標的細胞における抑制性オリゴヌクレオチドのin vivo発現を目標とした遺伝子治療用途で設計することができる。
【0071】
Gli3、AFX−1、及び又は無毛転写因子の転写活性を規制する作用物質のアッセイ
本発明に従って、FKBP51/52、CyP40、Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質により媒介される転写活性化を調節する作用物質を特定するためにアッセイを策定することができる。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、FK506をFKBP51/52/hsp90複合体に結合させること、或いはサイクロスポリンAをCyP40/hsp90複合体に結合させることは、複合体からのジンクフィンガ転写因子の無毛又はGli3の活性化及び又は放出を促進する。無毛及び又はGli3タンパク質の核転座は、結果として標的遺伝子の転写促進と毛の生産の刺激とを発生させる。
【0072】
本発明に従って、調節する作用物質を特定するためにアッセイを使用することができる。Gli3、AFX−1、及び又は無毛タンパク質の核への転座を調節する作用物質を特定するためにアッセイを使用することができる。このアッセイの目的から、無毛、AFX−1、及び又はGli3タンパク質は、GFP等の容易に検出可能なペプチドタグによりタグを付けることができる。こうしたアッセイは、タグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質を発現する細胞を、FK506又はサイクロスポリンAが存在する状態で、試験作用物質に接触させることを含む。代わりに、このアッセイでは、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、核ホルモン受容体を発現する細胞を使用することができる。試験作用物質を曝露させるのに続いて、例えば、核の中に存在するタグ付きタンパク質の量を測定することで、核の中に位置するタグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質の量を測定する。ビヒクル対照が存在する状態で実施した同じアッセイと比較して、試験作用物質が存在する状態で、核の中に検出されるタグ付きタンパク質の量が減少した場合には、無毛及び又はGli3核転座の調節物質が特定される。
【0073】
加えて、Gli3、AFX−1、又は無毛タグ付きタンパク質を発現する細胞は、FKBP51/52/hsp90又はCyP40/hsp90複合体からの無毛、AFX−1、及び又はGli3の解離を調節する作用物質を検査するのに使用できる。こうしたアッセイは、FK506又はサイクロスポリンAが存在する状態で、FK506――又はサイクロスポリンA――により媒介される前記複合体からの無毛、AFX−1、及び又はGli3の解離を阻害する作用物質を特定するために実行することができる。例えば、タグ付きの無毛、AFX−1、又はGli3タンパク質を発現する細胞は、FK506が存在する状態で、試験作用物質に接触させる。試験作用物質との接触に続いて、細胞ライセートを作成することが可能であり、その後、FKBP51/52又はCyP40タンパク質複合体の免疫沈降が生じる。この免疫沈降複合体は、その後、タグ付きのGli3、AFX−1、又は無毛タンパク質の存在又は欠如を判定するために分析される。
【0074】
Gli3転写因子の下流標的遺伝子は、FK506及びサイクロスポリンA処理により規制される。例えば、BMP4は、Gli3経路の下流標的遺伝子であり、BMP4の発現は、FK506及びサイクロスポリンAが存在する状態で刺激される。したがって、本発明の特定の実施形態において、Gli3反応因子、例えば5’TGGGTGGTC−3’を含む構成物は、様々な種類のレポータ遺伝子のいずれかと結び付けることが可能であり、FKBP51/52を発現する細胞に導入することができる。こうしたレポータ遺伝子には、上で述べたように、その一部として、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、GUS、成長ホルモン、又は胎盤性アルカリフォスファターゼが含まれる。試験作用物質に対する細胞の曝露に続いて、レポータ遺伝子の発現レベルを数量化し、試験作用物質がレポータ遺伝子の転写を規制する能力を判定することができる。FK506により誘導される転写のアンタゴニストの特定が望ましい事例において、この細胞は、FK506と試験作用物質との両方に接触させる。この細胞から分泌される酵素であるため、アルカリフォスファターゼアッセイは、本発明の実施において特に有用である。したがって、分泌されたアルカリフォスファターゼに関して、組織培養の上澄みを検査することが可能である。加えて、アルカリフォスファターゼ活性は、上で説明したような熱量測定、生物発光、又は化学発光アッセイにより測定することができる。
【0075】
試験作用物質の免疫抑制活性
本発明は、免疫抑制の副作用なしで、発毛を調節し得る作用物質の特定に関する。したがって、本発明に従って、発毛の潜在的な調節物質として特定された任意の作用物質は、免疫反応を抑制する能力に関しても試験される。
【0076】
試験作用物質の免疫抑制効果を測定するためのアッセイは、例えば、リンパ球刺激アッセイを含み、サイトカイン産出量、すなわちIL−2産出量を測定するためのアッセイを実行することが可能である。こうしたアッセイの一つは、次のように実行される。
【0077】
安楽死(CO2により窒息)させた生後七週乃至16週の範囲の成体のオスC3Hマウス(インディアナ州インディアナポリスのHarlan Sprague Dawley,Incが市販する生きたマウス)から脾臓を摘出する。この脾臓を、直ちにハンクス平衡塩類溶液(HBSS、メリーランド州ゲイサーズバーグのGibco−BRLが市販)に入れる。次に、この脾臓を磨りガラスのスライドグラスの間ですりつぶし、殺菌したスクリーンで濾過し、組織の破片を取り除く。結果として生じた細胞懸濁物を、等しい体積のFicoll−Paque Plus(ニュージャージ州ピスカタウェイが市販)により沈降させ、脾細胞を収集するために、20℃で、約40分間、400Gで遠心分離する。この脾細胞は、使い捨てのピペットを使用して界面から収集し、HBSSにより二回洗浄し、その後、20℃で、10分間、100Gで遠心分離する。脾細胞は、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco−BRL)と、ペニシリン(50U/ml)と、ストレプトマイシン(100μg/ml)と、L−グルタミン(2mM)と、2−メルカプトエタノール(10-5M)と、N−2ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10mM)とを含むフェノールレッドフリーのRPMI1640(Gibco−BRLが市販する培地)で構成される5乃至10mlの細胞培地に再懸濁させる。この細胞について、例えばトリパンブルーを使用して、計数し、生存率をチェックする。脾細胞を106細胞/mlで溶媒に再懸濁し、ピペットにより105細胞/ウェルで96ウェル丸底プレートに入れる。脾細胞は、試験化合物が存在する状態又は存在しない状態で、50μl/ウェルのコンカナバリンA(最終アッセイ濃度=5μg/ml)を追加して活性化させる。試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)による原液として作成され、その後、溶媒で稀釈して、50μl/ウェルで追加し、アッセイにおけるDMSOの最終濃度が0.05%未満になるようにする。このプレートを、37℃、5%CO2で、48時間培養する。細胞は、1μCi/ウェルのメチ−3H−チミジン(イングランド、バッキンガムシャのAmershamが市販)によりパルス標識し、更に24時間培養する。その後、この細胞をGF/Cフィルタプレート(イリノイ州ダウナーズグローブのPackardが市販)上に取り出し、Microscint20(Packard)において可溶化し、TopCountマイクロプレートシンチレーション及びルミネッセンスプレートカウンタ(Packard)において計数する。活性は、試験化合物が存在しない状態での対照活性のパーセンテージとして測定され、試験化合物濃度に対してプロットされる。このデータを、四つのパラメータによる曲線の当てはめ(Sigmaplot)に適合させ、IC50値を計算する。ここでの使用において、試験化合物が非免疫抑制性であるとみなされるのは、この方法を使用することで、(サイクロスポリンAのIC50/試験化合物のIC50)×100の比率が0.02以下となる場合、すなわち、ここで定義されるように、非免疫抑制性試験化合物がサイクロスポリンAの#2%の免疫抑制活性を有する場合である。
【0078】
細胞生存率は、MTT(3−[4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル]2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド)色素アッセイにより、ネルソンら,J. Immunol., 1993, 150(6):2139-2147において説明されるように評価されるが、無血清、フェノールレッドフリーのRPMI1640においてアッセイが実施される場合は例外となり、この色素は100μL/ウェルのDMSOにおいて可溶化し、SpectraMax Plusマイクロプレートリーダ(カリフォルニア州メンロパークのMolecular Device)により、540nmのODにおいて、650nmのバックグラウンド補正で読み取りが行われる。
【0079】
代わりに、試験作用物質が免疫抑制効果を有するか否かを判定するために、動物実験を実施することができる。
【0080】
本発明に従ってスクリーニングできる作用物質
上で説明したアッセイでは、FKBP51/52の活性を調節する作用物質を特定することができる。例えば、FKBP51/52の活性に影響を与える作用物質には、一部として、FKBP51/52と結合して、FKBP51/52の活性を調節する作用物質が含まれる。代わりに、作用物質は、FKBP51/52とは直接的に結合しないが、FKBP51/52の信号伝達に関与するタンパク質の活性を改変することでFKBP51/52の活性を改変できるものとして特定できる。更に、(FKBP51/52の全長又は切断形態を調節できるように、転写に影響を与える、或いはスプライシング事象に干渉する分子、例えばタンパク質又は小有機分子等、を含め、FKBP51/52遺伝子発現に影響を与えることで)FKBP51/52遺伝子活性に影響を与える作用物質を、本発明のスクリーンを使用して特定することができる。
【0081】
本発明に従ってスクリーニングできる作用物質には、一部として、小有機又は無機作用物質と、ペプチドと、抗体及びその断片と、FKBP51/52に結合し、FKBP51/52の任意の既知又は未知の基質により誘発される活性を模倣するか(つまりアゴニスト)、或いはFKBP51/52の任意の既知又は未知の基質により誘発される活性を阻害する(つまりアンタゴニスト)その他の有機作用物質(例えばペプチドミメティック)とが含まれる。FKBP51/52と結合して、FKBP51/52の活性を高める(アゴニスト)或いはFKBP51/52の活性を阻害する(アンタゴニスト)作用物質が、特定されることになる。FKBP51/52の活性を改変/調節するタンパク質と結合する作用物質が、特定されることになる。
【0082】
作用物質には、一部として、例えばランダムペプチドライブラリの構成要素のような可溶性ペプチド等のペプチド(ラム,K.S.ら,1991,Nature 354: 82-84、ホートン,R.ら,1991,Nature 354: 84-86等を参照)と、D及び又はL型アミノ酸により作成された、組み合わせ化学に由来する分子ライブラリと、ホスホペプチド(ランダム、又は部分縮重した方向性のあるホスホペプチドライブラリの構成要素等)(ソンヤン,Z.ら,1993,Cell 72: 767-778等を参照)と、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、又は一本鎖抗体、及びFab、F(ab’)2FV、及びFAb発現ライブラリ断片、及びそのエピトープ結合断片)と、小有機又は無機分子とが含まれる。
【0083】
本発明に従ってスクリーニング可能なその他の作用物質には、一部として、(遺伝子発現に関与する規制領域又は転写因子と相互作用すること等により)FKBP51/52遺伝子又はFKBP51/52信号伝達経路に関与するその他の遺伝子の発現に影響を与える小有機分子、或いは、FKBP51/52の活性又はFKBP51/52の活性を調節することに関与する他の何らかの因子の活性に影響を与えるような作用物質、例えばFKBP51/52を修飾し、これによりFKBP51/52の酵素活性を不活性化するタンパク質等が含まれる。
【0084】
発毛の調節物質を含む組成物及びその使用法
本発明は、上で述べたアッセイを使用して特定したFKBP51/52又はCyP40アゴニスト又はアンタゴニスト等、有効な量のFKBP51/52又はCyP40調節作用物質に細胞を接触させることを含む、発毛を調節する方法を提供する。FKBP51/52又はCyP40阻害物質すなわちアンタゴニストの「有効な量」とは、発毛を検出可能なほどに減少させる量である。FKBP51/52又はCyP40活性化物質すなわちアゴニストの「有効な量」とは、発毛を検出可能なほどに増加させる量である。
【0085】
本発明は、更に、こうした処置が必要な対象において発毛を調節する方法を提供し、これは、上で述べたように特定されたFKBP51/52又はCyP40の活性を調節する有効な量の作用物質を対象に投与することを含む。
【0086】
本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40の活性の一つ以上の活性化物質又は阻害物質を含む組成物を提供する。この組成物は、FKBP51/52又はCyP40に直接的に作用することが可能であり、或いは代わりに、FKBP51/52又はCyP40信号伝達経路に関与するタンパク質に作用することができる。
【0087】
本発明は、更に、FKBP51/52、CyP40、或いはFKBP51/52、CyP40が媒介する信号伝達の活性、及び又はFKBP51/52又はCyP40の発現を調節し、これにより発毛を調節し得る有効な量の作用物質を含む薬品組成と、製薬において許容される担体を提供する。特定の実施形態において、「製薬において許容される」という用語は、動物での使用、特に人間での使用に関して、連邦又は州政府の規制機関により承認されること、或いは、米国薬局方又はその他の一般に認められる薬局方に記載されることを意味する。「担体」という用語は、治療物質が投与される際に伴う稀釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。適切な薬品担体の例は、ゲンナロら(編)のRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (ISBN 0-683-306472)において説明されている。
【0088】
本発明は、更に、FKBP51/52又はCyP40の発現又は活性を調節する作用物質の投与による、発毛に関連する様々な疾患の治療を提供する。こうした作用物質には、一部として、FKBP51/52又はCyP40アゴニスト及びアンタゴニストが含まれる。こうした疾患には、一部として、男性型禿頭症と、女性型禿頭症と、中毒性禿頭症と、円形脱毛症と、瘢痕性脱毛症とが含まれる。加えて、この作用物質は、放射線又は化学療法に関連する脱毛の対象を治療するのに使用することができる。
【0089】
本発明の作用物質は、好ましくは、ヒトでの試験及び使用の前に、望ましい治療的又は予防的活性に関して、動物系において、in vitroで、及びその後、in vivoで、試験される。例えば、特定の治療物質の投与が示唆されるか否かを決定するのに使用されるin vitroアッセイには、FKBP51/52又はCyP40を発現する細胞を治療物質に曝露させるか、或いはこの細胞にその他の方法で治療物質を投与する、in vitro細胞株アッセイが含まれ、これにおいて、こうした治療物質のFKBP51/52又はCyP40に対する効果は、その後、FKBP51/52又はCyP40の活性が観察された時に観察される。本発明の特定の実施形態においては、作用物質がCyP40又はFKBP51/52により媒介される信号伝達経路を規制する能力が検査される。
【0090】
本発明は、必要な対象に有効な量の本発明の発毛調節作用物質を投与することを含む治療及び又は予防の方法を提供する。好適な態様において、この作用物質は、十分に精製されている。対象は、好ましくは動物であり、更に好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。
【0091】
発毛を調節し得る作用物質を投与するためには、リポソームによるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル等、様々な伝達システムが知られており、これらを使用することが可能である。導入の方法には、一部として、皮内と、局所と、筋肉内と、腹腔内と、静脈と、皮下と、鼻腔内と、硬膜外と、経口との経路が含まれる。作用物質は、例えば、注入又は静脈内ボーラス、及び上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜)からの吸収により、任意の都合の良い経路で投与可能であり、その他の生物活性作用物質と一緒に投与することができる。投与は、全身又は局所にすることが可能であり、好ましくは、局所適用のものが採用される。
【0092】
特定の実施形態では、本発明の組成物を身体の特定のエリアに局部的に投与することが望ましい場合がある。これは、制限的ではない例として、局所適用により達成できる。本発明の方法に従って特定された活性化合物は、一般に、少なくとも一つのこうした化合物を、薬品において許容されるビヒクル又は稀釈剤と共に含む、薬品組成物の形態で投与される。こうした組成物は、一般に、局所適用のために固体又は液体ビヒクル又は稀釈剤を必要に応じて利用する従来の方法で、溶液と、オイルと、ゲルと、クリームと、ゼリーと、ペーストと、ローションと、軟膏と、塗剤と、リーブオン及びリンスオフヘアコンディショナと、シャンプと、エアゾールと、その他との形態に調製される。
【0093】
本発明の方法に従って特定された活性化合物の適用のためのビヒクルの例には、水溶液又は水アルコール溶液、水中油型又は油中水型の乳液、乳化ゲル、又は二相系が含まれる。好ましくは、本発明による組成物は、ローション、クリーム、ミルク、ゲル、マスク、ミクロスフィア又はナノスフィア、或いはベシクルの分散の形態をとる。ベシクルの分散の場合、ベシクルを作成する脂質は、イオン型又は非イオン型、或いはこれらの混合にすることが可能である。
【0094】
活性化合物を含む局所組成物は、例えば、水、アルコール、アロエゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びEオイル、鉱油、プロピレングリコール、プロピオン酸PPG−2ミリスチル、及びその他といった、この技術で公知の様々な担体物質と、任意の様々なタイプの透過促進剤、増粘剤、pH安定剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、及びその他と、に混合することができる。
【0095】
局所的担体において使用するのに適したその他の物質には、この技術において知られているように、例えば、エモリエントと、溶剤と、湿潤剤と、濃化剤と、パウダとが含まれる。
【0096】
本発明の組成物は、更に、カリウムチャネル開放剤と、抗アンドロゲン物質と、甲状腺ホルモン及びその誘導体及び類縁物質と、プロスタグランジンアゴニスト又はアンタゴニストと、レチノイドと、トリテルペンと、この技術で知られている、或いは今後特定されるその他の物質と、といった、その他の発毛調節作用物質を、随意的に含むことができる。
【0097】
特定の疾患の治療において効果的となる本発明の作用物質の量は、疾患の性質に依存し、標準的な臨床手法により決定することができる。最適な投与量の範囲の特定を支援するために、in vitroアッセイを随意的に採用することができる。処方において採用する正確な投与量は、投与経路と疾患の性質とに依存し、医師の判断に応じて、各患者の状況を考慮して、決定するべきである。有効な投与量は、in vitro又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定することができる。
【0098】
本発明は、更に、本発明の薬品組成物の一つ以上の材料を含んだ一つ以上のコンテナを備える薬品パック又はキットを提供する。こうした(複数の)コンテナには、薬品又は生物学商品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関により規定された形式の通告を随意的に関連付けることが可能であり、この通告は、ヒトへの投与に関する、製造、使用、又は販売規制機関による承認を反映したものとなる。このキットは、更に、発毛を調節する、すなわち刺激又は阻害する、組成物の使用法を指示する印刷済みの取扱説明書又は印刷ラベルを備えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
以下の例は、本発明の作成及び実施の好適な形態を例示しているが、代替の方法を利用して同じものを得ることができるため、これは本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0100】
例:FKBP51/52により媒介される発毛
以下に提示する例は、(i)FKBP51及びFKBP52が、真皮乳頭において選択的に発現することと、(ii)FKBP51/52が、hsp90、AFX−1、Gli3、及び無毛タンパク質と共沈することと、(iii)BMP4及びHNF3β遺伝子、及びGli3反応性遺伝子の発現が、FK506により活性化されることを実証する。
【0101】
材料及び方法
逆転写
様々なヒト細胞におけるFKBP51、FKBP52、及びCyP40のmRNAの検出には、市販のRT−PCRキット(Promega Access RT−PCRキット)を使用した。ヒトFKBP51に関して使用されたプライマの配列は、TGAAGAAAGCCCCACAGC(SEQ ID NO:1)(フォワードプライマ)と、CTCCAAAACCATATCTTGGTCC(SEQ ID NO:2)(リバースプライマ)とである。ヒトFKBP52に関するプライマ配列は、ACATTGCCATAGCCACCA(SEQ ID NO:3)(フォワードプライマ)と、AGCCAAGACACGATCTTC(SEQ ID NO:4)(リバースプライマ)とである。ヒトCyP40に関するプライマ配列は、TGAAGGAAGGAGATGACGGG(SEQ ID NO:5)(フォワードプライマ)と、TCCTCAGGGAAATCTGGATGA(SEQ ID NO:6)(リバースプライマ)とである。
【0102】
トータルRNAは、TRIZOL試薬(Life Technologies)を使用し、製造会社の指示に従って、細胞株から抽出した。このRNAを、DNaseにより処理し、ゲノムDNAによる潜在的な汚染を取り除き、その後、RT−PCR反応に使用した。PCR反応産物は、2%アガロースゲル上で動かし、増幅された産物を視覚化し、適切な制限酵素により消化し、産物を確認した。
【0103】
組織の抽出
ヒト皮膚組織は、氷上でTPER試薬(イリノイ州ロックフォードのPierce)を10:1(抽出緩衝液:組織、体積:重量)の比率で使用し、プロテアーゼ阻害物質(Protease Inhibitor Cocktail、1:50の稀釈、ミズーリ州セントルイスのSigma)が存在する状態で、Polytronホモジナイザを使用して抽出し、ライセートを形成した。
【0104】
抗体のマグネチックレジン・プロテインGセファロースとの結合
使用される抗体には、抗hsp90(1mg/ml BSAを伴うモノクローナルIgG1、TL)及び抗FKBP52(抗ペプチドポリクローナルN17及びC19 Abs、Santa Cruz Biotechnologies)が含まれる。抗体は、Amicon Microcon−30を使用して、濃縮し、PBSにより三回洗浄した。抗体は、中性pHのPBS緩衝液において、37℃で一晩、トシル活性化Dyna M−450ビーズと結合させた。レジンは、トリスHCl、pH8により、4時間、37℃でブロックした。
【0105】
免疫沈降
FK506は、最終濃度1μMで、ライセートに追加した。抗体複合体は、TPER緩衝液において、6℃で一晩、免疫沈降させた。複合体は、トリス/生理食塩水(4℃)により十回洗浄し、その後、1M NH4CO3又は20mMトリス、pH7.4、0.3M NaCl(5×100μl)、及び0.1%TFA、5%MeOH(5×100μl)により溶出させた。複合体を濃縮し、緩衝液は、食塩溶出のために交換するか、或いは、TFA/MeOH溶出のために真空下で体積を低減した。試料は、−20℃で保存した。
【0106】
プロテアーゼ消化
タンパク質は、1M GnHCl、100mM NH4CO3、0.5mM DTTに懸濁し、トリプシン(Promega)又はgluC(Roche)により、約18時間、37℃で、消化を施した。消化物は、60%アセトニトリル、0.1%TFAにより溶出したC18 ZipTips(Millipore)を使用して脱塩した。
【0107】
質量分析による解析
ペプチド消化物は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析計により解析した。基本的に、ペプチドは、ドライドロップレット法が使用されたマトリックス(1:1の試料:α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、20mg/mI−HCCA、30%アセトニトリル、0.1%TFA)と混合した。ペプチドは、リフレクタモードのVoyager DE−Proスペクトロメータ(PE BioSystems)を使用して、陽イオン加速電圧20kV、グリッド電圧12.8kV、誘導線電圧1400Vで、100ns遅延抽出を使用して解析した。64スキャンより大きいものをスペクトル毎に平均化した。ブラジキニン及びACTH(18乃至39番目のアミノ酸残基)の30乃至50fmol毎に、内部質量標準として使用した。
【0108】
データベース検索
ペプチドスペクトルは、ProFound[http://nt2/prowl/prowl.html]又はRADRAS(OSI internal)を使用して比較した。質量誤差許容量は、通常30ppmとした。不完全な開裂部を一つ許容した。修飾は、最初に考慮しなかった。SWISSPROTとGENBANK NRデータベースとの両方を検索した。
【0109】
サイクロスポリンA及びFK506処理によるBMP4及びHNF3βのmRNAの誘導
一次的ヒト皮膚繊維芽細胞(BMP4検出のため)及び皮膚ケラチノサイト(HNF3β検出のため)を培養し、1uMのサイクロスポリンA又はFK506により処理した。トータルRNAは、処理二日目及び四日目に取り出した。リアルタイムPCRを使用して、BMP4及びHNF3βのmRNAレベルを数量化した。ABI PRISM 7700配列検出装置と、TaqMan PCRキットと、蛍光染料で標識され、市販ソフトで設計されたPCRプライマとを使用して、RNA数量化を行った。図3に提示した結果は、サイクロスポリンAとFK506との両方がBMP4及びHNF3βのmRNAを上昇規制することを示している。
【0110】
加えて、Gli3の下流標的遺伝子は、皮膚繊維芽細胞及び皮膚ケラチノサイトといった皮膚細胞におけるサイクロスポリンA及びFK506処理により上昇規制されることが分かった。図3に示すように、BMP4及びHNF3βのmRNAレベルは、サイクロスポリンA又はFK506処理により誘導された。
【0111】
FK506及びサイクロスポリンAによる甲状腺ホルモン受容体(TR)媒介転写の誘導
四つのタンデム甲状腺ホルモン応答要素(TRE)(AGGTCA CAGG AGGTCA)(下線の配列は反復される)(SEQ ID NO:7)を、単一のオリゴヌクレオチドとチミジンキナーゼ(TK)プロモータの結紮された5’において、標準の手順を使用して合成した。プラスミド(TRE−TK/pUV120puro)は、結果として生じた、デウェットJr.ら、1986,Methods Enzymol 133: 3-14のH.pyralisからのルシフェラーゼレポータ遺伝子のTRE/TKプロモータ5’を、SV40プロモータの制御下で発現する抗生物質ピューロマイシンに対する耐性を与えるタンパク質をコード化する遺伝子と共に結び付けることで構築した。このプラスミドにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子の発現は、TRE−TKプロモータの直接的な制御下にあり、甲状腺ホルモン核受容体(TR)のアゴニストにより誘導できる。HeLa細胞(ATCC、Manassas、VA20108、#CCL−2)には、標準的な手順を使用したエレクトロポレーションで、プラスミドDNAによるトランスフェクションを行い、薬物耐性細胞株は、ミシガン州セントルイスのSigma−Aldrich Corp.のピューロマイシンを使用して選択した。薬物耐性細胞株(HeLa/TRE)は、甲状腺ホルモンに対する感応性により選択し、その後の実験では、トランスフェクションが安定した単一のクローン株を使用した。
【0112】
質量分析実験は、hsp90と、サイクロフィリン40、FKBP51、又は52のいずれかと、無毛のジンクフィンガ転写因子と、核ホルモン受容体(甲状腺ホルモン受容体、アンドロゲン受容体、ビタミンD受容体、又はグルココルチコイド受容体)とをある程度含むタンパク質複合体により、発毛が媒介される可能性が高いことを示唆した。
【0113】
イムノフィリン信号の送信における甲状腺ホルモン核受容体の役割を確立するために、甲状腺ホルモン核受容体信号の送信を増加させる能力について、サイクロスポリンA、FK506、及び甲状腺ホルモンT3を評価した。HeLa/TRE細胞を、1ウェル当たり10,000細胞の濃度で、96ウェルマイクロタイタプレートにおいて、1%チャコール処理FCSと、2mMグルタミンと、抗体(ペニシリン及びストレプトマイシン)とを含むDMEM培地に接種した。この細胞は、サイクロスポリンA又はFK506(ミシガン州セントルイスのSigma−Aldrich Corp.、カリフォルニア州サンディエゴのCalbiochem−Nova biocheryl Corp.)の濃度を上昇させ(20nM、2nm、200pm、及び20pM)、16時間に渡って処理し、ルシフェラーゼレポータ遺伝子の活性を測定した(デウェットJr.ら、1986,Methods Enzymol 133: 3-14)。
【0114】
結果
真皮乳頭(DP)細胞は、発毛にとって決定的である。培養したヒト真皮乳頭細胞において、CyP40及びFKBP51/52を、RT−PCRを使用して検出した(図2)。FKBP51/52のレベルは、FKBP12/13のレベルよりも遙かに大きい。FK506の免疫抑制効果を媒介するFKBP12/13のレベルは、検出限界に近く、その発現レベルが非常に小さいことを示している。ヒト真皮乳頭繊維芽細胞及びケラチノサイトにおける発現パターンについても研究し、同一であることを発見した。
【0115】
ヒト頭皮皮膚に由来するhsp90及びFKBP52免疫沈降複合体の質量分析による解析から、三種類の転写因子の存在が明らかになっている。この因子には、無毛のジンクフィンガタンパク質、ソニックヘッジホッグ誘導因子Gli−3、及びAFX−1が含まれる。
【0116】
データは、ヒトの皮膚のFK506がhsp90タンパク質複合体との無毛の相互作用を改変できることも示唆している。無毛は、その後、核に転座し、発毛を規制する遺伝子の転写を刺激することが可能である。
【0117】
加えて、BMP4及びHNF3といったGli3の下流標的遺伝子は、FK506処理により上昇規制されることが発見された(図3)。
【0118】
イムノフィリン作用に関連するhsp90及びFKBP52複合体は、モノクローナル抗体と、プロテアーゼ消化と、ペプチド質量の質量分析測定と、データベース検索により、ヒト頭皮皮膚抽出物から特定された。以下のタンパク質は、質量分析による解析を行ったトリプシン及び又はGluC消化物から特定された。
【0119】
表1
抗hsp90及び抗FKBP52
ヒト皮膚抽出物+FK506
30ppm(SWISSPROT)
タンパク質の折り畳み、イムノフィリン、ストレス応答
【0120】
このデータは、サイクロスポリンA又はFK506が、投与量に依存する形で、甲状腺ホルモン受容体媒介転写を誘導することを示している。hsp90複合体におけるサイクロスポリン40(サイクロスポリンA)又はFKBP51/52(FK506)タンパク質とのリガンドの結合は、甲状腺ホルモン受容体の転写活性を明らかに活性化する。甲状腺ホルモン受容体の修飾タンパク質である無毛タンパク質も、サイクロスポリンA又はFK506の作用を調節し、これにより発毛を規制することができる。
【0121】
等価物
本発明は、本発明の個別の態様の単一の例示を意図した本明細書記載の特定の実施形態により範囲を限定されることはなく、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲に含まれる。実際に、本発明の様々な変形は、本明細書で図示及び説明したものとは別に、前記の説明と添付図面とから当業者には明らかとなろう。本明細書では様々な印刷物が引用されており、その内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明の前記その他の目的、その様々な特徴、及び本発明自体は、以下の添付図面と共に以下の説明を読むことで、より完全に理解されよう。
【図1】FKBP51/52と、CyP40と、ステロイド受容体と、hsp90と、その他の結合相手との間での相互作用の提案モデルを表す説明図である。
【図2】培養したヒト真皮乳頭細胞において、FKBP51と、FKBP52と、CyP40との発現がRT−PCRを使用して検出されることを実証する、ヒト真皮乳頭RNAのRT−PCR解析を示す図である。
【図3A】FK506及びサイクロスポリンA治療の四日後におけるBMP4転写の刺激を実証するグラフである。
【図3B】FK506及びサイクロスポリンA治療の四日後におけるHNF3β転写の刺激を実証するグラフである。
【図4】サイクロスポリンA又はFK506によるTR媒介転写の誘導を示すグラフである。
Claims (27)
- 発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(v)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択されたタンパク質とを発現する細胞、或いは、これらを含む調製物を、試験化合物に接触させるステップと、
(vi)試験化合物に接触させた細胞又は調製物内における、FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルを判定するステップと、
(vii)(ii)で得られた複合体形成レベルを、試験化合物が存在しない状態でのFKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、無毛、AFX−1、及びGli3で構成されるグループから選択された少なくとも一種類のタンパク質との間での複合体形成レベルと比較するステップと、
を含み、
試験化合物が存在する状態と存在しない状態とでの複合体形成レベルの差が、発毛調節活性との正相関を有する方法。 - 複合体形成のレベルが、イムノアッセイを使用して検出されることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 試験化合物が免疫抑制活性を有するか否かを判定するステップを更に含み、こうした活性の欠如が、複合体形成レベルを改変する試験化合物が存在する状態で、発毛調節作用物質としての有用性との正相関を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛、AFX−1、又はGli3遺伝子反応要素の転写制御下で核ホルモン受容体及びレポータ遺伝子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、細胞内のレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(ii)試験化合物が存在しない状態でのレポータ遺伝子発現レベルを測定するステップと、
(iii)(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルを比較するステップと、
を含み、
ステップ(i)及び(ii)で測定されたレポータ遺伝子発現レベルの差が、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法。 - ステップ(i)が、核ホルモン受容体リガンドの存在する状態で実行されることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 試験化合物が免疫抑制活性を有するか否かを判定するステップを更に含み、こうした活性の欠如が、レポータ遺伝子発現レベルを改変する試験化合物が存在する状態で、発毛調節作用物質としての有用性との正相関を有することを特徴とする請求項4記載の方法。
- 核ホルモン受容体が、アンドロゲン核ホルモン受容体と、ビタミンD核ホルモン受容体と、レチノイン酸核ホルモン受容体と、アリル炭化水素核ホルモン受容体と、甲状腺刺激核ホルモン受容体とにより構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 発毛を促進し得る化合物を特定する方法であって、
(i)無毛遺伝子産物を含む試料を試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物が、無毛遺伝子産物と結合するか否かを判定するステップと、
(iii)試験化合物が、無毛遺伝子産物と、FKBP51/52、CyP40、核ホルモン受容体、hsp90タンパク質、及びその組み合わせで構成されるグループから選択された結合相手との間での複合体形成を阻害するか否かを判定するステップと、
を含み、
試験化合物が、無毛遺伝子産物と結合する能力と、複合体形成を阻害する能力とは、両方とも、発毛促進活性との正相関を有する方法。 - 発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、核ホルモン受容体と、無毛遺伝子産物とを発現する細胞を、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)無毛遺伝子産物の細胞核への核転座レベルを判定するステップと、
(iii)試験化合物が存在しない状態での各転座レベルを判定するステップと、
(iv)(ii)及び(iii)において測定した核転座レベルを比較するステップと、
を含み、
ステップ(ii)及び(iii)で測定された核転座レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法。 - 試験化合物が免疫抑制活性を有するか否かを判定するステップを更に含む、請求項8又は9記載の方法。
- 発毛を促進し得る化合物を特定する方法であって、
(i)AFX−1遺伝子産物を含む試料を試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物が、AFX−1遺伝子産物と結合するか否かを判定するステップと、
(iii)試験化合物が、AFX−1遺伝子産物と、FKBP51/52、CyP40、核ホルモン受容体、hsp90タンパク質、及びその組み合わせで構成されるグループから選択された結合相手との間での複合体形成を阻害するか否かを判定するステップと、
を含み、
試験化合物が、AFX−1遺伝子産物と結合する能力と、複合体形成を阻害する能力とは、両方とも、発毛促進活性との正相関を有する方法。 - 発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、核ホルモン受容体と、AFX−1遺伝子産物とを発現する細胞を、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)AFX−1遺伝子産物の細胞核への核転座レベルを判定するステップと、
(iii)試験化合物が存在しない状態での各転座レベルを判定するステップと、
(iv)(ii)及び(iii)において測定した核転座レベルを比較するステップと、
を含み、
ステップ(ii)及び(iii)で測定された核転座レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法。 - 試験化合物が免疫抑制活性を有するか否かを判定するステップを更に含む、請求項11又は12記載の方法。
- 発毛を促進し得る化合物を特定する方法であって、
(i)Gli3遺伝子産物を含む試料を試験化合物に接触させるステップと、
(ii)試験化合物が、Gli3遺伝子産物と結合するか否かを判定するステップと、
(iii)試験化合物が、Gli3遺伝子産物と、FKBP51/52、CyP40、核ホルモン受容体、hsp90タンパク質、及びその組み合わせで構成されるグループから選択された結合相手との間での複合体形成を阻害するか否かを判定するステップと、
を含み、
試験化合物が、Gli3遺伝子産物と結合する能力と、複合体形成を阻害する能力とは、両方とも、発毛促進活性との正相関を有する方法。 - 発毛を調節し得る化合物を特定する方法であって、
(i)FKBP51/52又はCyP40と、hsp90と、核ホルモン受容体と、Gli3遺伝子産物とを発現する細胞を、核ホルモン受容体リガンドが存在する状態で、試験化合物に接触させるステップと、
(ii)Gli3遺伝子産物の細胞核への核転座レベルを判定するステップと、
(iii)試験化合物が存在しない状態での各転座レベルを判定するステップと、
(iv)(ii)及び(iii)において測定した核転座レベルを比較するステップと、
を含み、
ステップ(ii)及び(iii)で測定された核転座レベルの差は、試験化合物の発毛調節活性との正相関を有する方法。 - 試験化合物が免疫抑制活性を有するか否かを判定するステップを更に含むことを特徴とする請求項14又は15の方法。
- FKBP51/52、CyP40、又はhsp90と、無毛、Gli3、及びAFX−1で構成されるグループから選択された少なくとも一つのタンパク質との間での複合体形成を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 無毛、AFX−1、及びGli3タンパク質で構成されるグループから選択されたタンパク質の核転座を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- AFX−1又はGli3により媒介される遺伝子発現を調節する化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項1のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項4のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項8のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項9のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項11のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項12のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項14のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
- 請求項15のアッセイにより特定された化合物を哺乳類に投与するステップを含む、哺乳類の発毛を調節する方法。
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