JP2005343802A - 非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を用いた癌細胞の増殖を抑制する方法 - Google Patents

非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を用いた癌細胞の増殖を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来癌に対しては禁忌とされてきた非ステロイド性消炎鎮痛剤が一定量以上の濃度で存在する外用剤を用いて、副作用が少なく癌の増殖を経皮的に抑制する方法を提供する。
【解決手段】ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといったいづれかひとつの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)をもっとも望ましくは1000μg/cm以上の分布量で存在する外用剤を貼付又は塗布することで癌細胞の増殖を経皮的に抑制する。この抗癌作用は、(1)血小板存在下に新生血管の増殖を抑制すること、(2)血管内皮(細胞)増殖因子Vascular endothelial growth factor(VEGF)を阻害し、シクロオキシゲナーゼcyclooxigenase(COX)を阻害すること、等による作用機序による癌細胞の増殖を抑制する効果として説明できる。NSAIDsが所定量以上の濃度で存在する癌治療薬としての使用が可能であり、治療対象の拡大に役立つものである。
【選択図】図面なし

Description

本発明は、医学上、非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を貼付又は塗布して癌(Cancer)細胞の増殖を抑制する方法に関するものである。特に、非ステロイド性消炎鎮痛剤の抗癌作用は、肉腫(Sarcoma)に対して有効である。即ち、皮膚に近い表層の悪性腫瘍が対象となる。
癌治療薬の中で今まで、癌に対して、非ステロイド性消炎鎮痛剤(Non−steroidal anti−inflamatory drugs;NSAIDs)の外用剤が有効であるとの発見はなされていなかった。この外用剤が癌の成長を抑制するとの発見は知られていない。本発明の方法が発見されるまでに、NASIDs自体に抗癌作用があるとは知られていなかった。寧ろ、特許文献1(特開平09−208598号公報)に記載のように非ステロイド性消炎鎮痛剤は胃腸障害(潰瘍の発生)などといった副作用を起こすことが知られていた。湿布に代表される外用薬は、癌(Cancer)増殖を助長すると考えられてきた。即ち、医療の現場おいてすら全く逆に考えられいるのが実情であった。特許文献3(特開平06−192084号公報)によれば、癌転移抑制剤としてフルルビプロフェンアキセチルを有効成分とするものが公開されている。
非特許文献1ないし25は、著者(原文のまま)、文献タイトル(文献タイトルの日本語訳)、発行年を付した文献名と掲載頁(原文のまま)の順に示す。
特開平09−208598号公報 特開平11−079998号公報 特開平06−192084号公報 特開2003−286162号公報 特開2002−193793号公報 特開2002−128674号公報 特開2002−193793号公報 特開2000−281570号公報 特開2000−072672号公報 特開平10−114646号公報 特開平05−286857号公報 Enneking, W.F., Spanier, S.S.,Goodman, M.A. A system for the surgical staging of musculoskeletal sarcoma. 筋骨格肉腫の外科的病気分類システム。 Clin.Orthop. 153;106−120 (1980). Thun,M.J., Namboodiri, M.M., Heath, C.W.Jr. Aspirin use and reduced risk of fatal colon cancer. アスピリンの使用と致死的な大腸癌のリスクの低減。 N.Engl.J.Med.325;1593−1596 (1991). Taketo, M.M. COX−2 and colon cancer. COX−2と大腸癌。 Inflamm.Res.1998; 47(suppl 2):112−116. Murphy, V.J., Yang, Z., Rorison, K.A., Baldwin, G.S. Cyclooxygenase−2−selective antagonists do not inhibit growth of colorectal carcinoma cell lines シクロオキシゲナーゼ−2選択性拮抗薬は大腸癌細胞系の増殖を阻害しない。 Cancer Letters 122;25−30(1998). Shah, A.K., Wei, G., Lanman, R.C., Bhargava, V.O., Weir, S.J. Percutaneous absorption of ketoprofen from different anatomical sites in man. ヒトの種々の解剖学的部位からのケトプロフェンの経皮吸収。 Pharm.Res. 13;168−172(1996). 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解決しようとする問題点は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の抗腫瘍効果と転移抑制効果を見出して、NSAIDsを外用剤として癌部の上に経皮的に貼付若しくは塗布して、癌治療において障害となる癌細胞の増殖及び転移を抑制しようとする。
本発明は、癌の成長及び増殖を抑制可能とするため、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといった非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を外用剤として癌の増殖に対して経皮的に抑制作用を有する分量で使用することを最も主要な特徴とする。
本発明の治療方法は、NSAIDsを外用剤とするため、必要量として、ケトプロフェンなら300μg/cm以上、フルルビプロフェンなら350μg/cm以上、インドメタシンとフェルビナクなら600μg/cm以上の分布量のNSAIDsを存在させて癌の増殖を経皮的に抑制するという利点がある。この効果の確認の方法として、動物実験例により必要量を確認することができた。非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤として抗癌作用が生じる必要量は、実施例1,2において望ましい分布量を記載する。
NSAIDsの外用剤は、癌に対して良くないと信じられてきたが、これを外用剤として癌の増殖を経皮的に抑制するという目的を、通常の外用剤としての量以上の分布量で、副作用による癌の周辺部の組織を損なわずに実現した。即ち、外用薬の濃度が1000μg/cm以上がもっとも望ましく、この治療法によれば人への応用時の皮膚への副作用が少ない。
本発明の実施例1は、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといったいづれかひとつの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)をもっとも望ましくは1000μg/cm以上の分量を癌の増殖に対して抑制作用を有する外用剤として貼付若しくは塗布して癌細胞の増殖を経皮的に抑制する方法である。
本発明の実施例2は、NSAIDsを外用剤とするため、ケトプロフェンなら300μg/cm以上、フルルビプロフェンなら350μg/cm以上、インドメタシンとフェルビナクなら各600μg/cm以上1000μg未満の必要量の非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を貼付若しくは塗布して癌の増殖を経皮的に抑制することができる。
本発明の効果におけるNSAIDsの抗癌作用は、非ステロイド性消炎鎮痛剤が実施例1,2に示す一定量以上の濃度で分布させてある、外用剤として用いれば(1)血小板存在下に新生血管の増殖を抑制すること、(2)血管内皮(細胞)増殖因子Vascular endothelial growth factor(VEGF)を阻害し、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxigenase;COX)を阻害すること、等による作用機序による癌細胞の増殖を経皮的に抑制する効果として説明できる。抗癌作用を確保するための分量には、1000μg/cm以上が最も望ましいことが要となる。この癌細胞増殖の抑制方法は消炎鎮痛作用があるNSAIDsの外用剤の抗腫瘍効果と転移抑制効果を見出して、これを新規に癌細胞の抑制方法として利用するものであり、NSAIDsの抗癌作用により抗癌剤として治療対象の拡大におおいに役立つものである。
[動物実験例]
ケトプロフェン外用薬による、もっとも簡単かつ安全なコツ肉腫の抗腫瘍作用について、動物実験例を示す。
動物実験例を示すに当たって悪性腫瘍の治療の現状について説明する。悪性骨軟部腫瘍の治療では、手術による局所コントロールが重要であり、生命予後に密につながっている(非特許文献1)。特に骨肉腫は骨原発の悪性腫瘍の中で最も多く、骨を破壊して増殖する。腫瘍組織中には骨や類骨組織の形成が認められる。若年者に多く、長管骨の骨幹端、特に大腿骨下端や上腕骨上端に好発する。また、早期に血行性に肺などに転移しやすく、予後は不良であったが、化学療法の発達により治療成績は目覚しく向上している。
抗悪性腫瘍薬は、単一で投与されることもあるが、現在では多剤を併用投与することが一般的である。これらの薬物は全身的に投与されることが多く、強い副作用が患者にとっては深刻な問題である。このような薬物による副作用を軽減し、高い薬理効果を得るための方法として、限局した腫瘍巣だけに薬物を投与する局所投与法が近年注目を集めている。貼付薬或いは塗布薬といった外用薬を骨肉腫の患部に経皮的に作用させることは、最も簡単な局所投与法であると考えられる。しかし、あらゆる貼付薬の適応症に腫瘍の記載はなく、腫瘍に対する効果も十分には知られていない。
非ステロイド性消炎鎮痛剤Non−steroidal anti−inflammatory drugs(NSAIDs)は、アスピリンを代表とする鎮痛・解熱・抗炎症作用を持つ化合物群である。近年、アスピリン等のNSAIDs慢性投与患者に大腸癌の発現頻度が低いとの疫学的調査結果に端を発し、大腸癌へのNSAIDsの治療或いは予防効果が期待されている(非特許文献2,3)。しかし、直腸癌のcell lineを用いた実験では、癌細胞の増殖を抑制しないという報告もあり、その有効性は必ずしも一定していない。
NSAIDsの多くは経口で投与されるが、そのうちの一つであるケトプロフェン(ketoprofen=KP)は皮膚透過性が極めて優れており(非特許文献5)、経皮吸収剤としてもよく用いられる。しかし、ケトプロフェンを癌治療に使用する試みは、抗悪性腫瘍薬であるメソトレキセート(methotrexate)を使用した際の副作用の軽減を目的とした報告がある程度である(非特許文献6)。本研究では、移植すると類骨組織を形成することが知られているヒト骨肉種の細胞株であるタカセ骨肉腫cell line osteosarcoma Takase(OST)
(非特許文献7)をヌードマウスの頭蓋骨骨膜下に移植し、OST細胞の増殖に及ぼすケトプロフェン貼付薬の影響について検討した。
[実験材料と方法]
(1) 細胞及び貼付薬
ヒト骨肉腫の細胞株(cell line)であるOST細胞は、金沢大学医学部整形外科学教室の富田勝郎教授から供与されたものを用いた。ヒト臍静脈内皮細胞Human umbilical vein endothelial cells(HUVECs)は、Cronettics社製(San Diego, Ca, USA)のもを用いた。ヒト血小板は、早朝空腹時に10mMのエチレンジアニン4酢酸(10mMEDTA)存在下で採血し、Kimura等の方法(非特許文献8)に従って調整した。
KP貼付薬としては、その薬理効果が24時間持続するテープ(KPを286 μg/cmを含む市販品を用いた。通常はKPを0−3000 μg/cmを含むものを用いる。)を10mmx15mmの大きさに切って使用した。プラシーボ(偽薬)Placebo貼付薬としては、ケトプロフェン(KP)を含まない基材のみのテープを同じ大きさに切って使用した。これらは、久光製薬株式会社から供与された。また、粉末状のケトプロフェン(KP)も久光製薬株式会社から供与されたものを使用した。動物実験において使用された材料、材料の提供者等は実験の信頼性に重きを置いてそのままの表現を用いた。

(2)動物
被検動物として雌性の3週齢のヌードマウス(BALB/cA Jcl−nu/nu)を日本クレア社から購入し、飼料及び水は自由摂取させた。飼育飼料は市販の固形飼料(オリエンタル酵母社,Japan)を与えた。動物を用いた実験は,愛媛大学医学部制定の動物実験に基づいく動物実験管理委員会の許可のもとに行われた。

(3)ヌードマウスへのOST細胞の移植
10%牛胎児血清を含むRPMI−1640培地を用い、OST細胞を60mmディッシュ(Corning社)に培養した。培養液は2日毎に交換した。細胞が約80%confluentの状態に達した時点で(80%の密度になった時点で)、0.02%エチレンジアニン4酢酸(EDTA)を含む0.05%トリプシン溶液を作用させ細胞をディッシュから剥がした。この細胞縣濁液を1500rpmで3分間遠心し、細胞を沈殿させた後、再び同培養液に2.5x10個/mlになるように懸濁した。
エーテル麻酔下に、0.4mlの細胞縣濁液(10個の細胞を含む)をヌードマウスの頭骸骨骨膜下に注入した。注入して4週間後から、頭部の腫瘍部分にKP貼付薬或いはプラシーボ(Placebo偽薬)貼付薬を貼付した。貼付薬は毎日交換した。この処置を4週間施した後、ネンブタール麻酔下で屠殺し、軟X線発生装置(SRO−M50、Sofron社、Japan)を用いて、軟X線(35KV・3.5mA)を90秒間照射して単純レントゲン撮影を行った。レントゲン撮影後に腫瘍を摘出し、その重量を測定した。また、摘出した腫瘍を定法に従って、固定し、薄切りした切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色して、光学顕微鏡下で観察した。実験の結果を示す括弧(1)に後述。

(4)増殖細胞核抗原{抗proliferating cell nuclear antigen(PCNA)抗体}による免疫組織染色
摘出した腫瘍組織をホルマリン固定した後、パラフィン包理し、組織切片を作成した。この切片を脱パラフィン後、非免疫ヤギ血清と10分間反応させ、非特異的結合をブロックした。その後、抗PCNA抗体(PC−10,Dako社)を1時間反応させた後、ビオチン標識2次抗体及びペルオキシターゼ標識ストレプトアビジン(SABキット、Dako社)によって、免疫染色を行った。1視野当たり約400個の細胞を、PCNA陽性細胞と陰性細胞に分けて計測し、1匹当たり5−6視野の細胞総数に対する陽性細胞数の割合を増殖性細胞核抗原標識率(PCNA−labeling index)として算出した。結果は、4匹のヌードマウスから得た値の平均値+−標準偏差として表した。実験の結果を示す括弧(2)に後述。

(5) ヒト臍静脈内皮細胞HUVECsの培養
マルチウエルプレート(Multiwell plate、 Corning社製の実験補助装置12well,corning社)の各wellに、400μlのマトリゲル基底膜気質もしくはマトリゲル基底膜マトリックス(登録商標Matrigelbasement membrane matrix, Becton Dickinson Labware社,USA)を加え、4℃で一晩安定化させた後、700μlの20%牛胎児血清を含むダルベッコMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)に縣濁したHUVECs(5x10個)をマトリゲルゲル上に散布した。各wellの中央に100μlの同培地に縣濁したヒト血小板(0−10個)を含むトランスウエル(transwell, コーニング社製の実験補助装置 直径12mm、Corning社)を静置し、0−10μg/ml(最終濃度)のKPを培地に加え、37℃で12時間培養した。培養後、transwellを取り除き、KIMURA等の方法(非特許文献9)に従って、細胞をホルマリン固定した後、1つのwellから無作為に10視野を選び、偏光顕微鏡(Nicon社、Japan)を用いて写真撮影した。それぞれの写真の管腔形成部の長さを「X−Plan360,d2+」牛片社製のデジタル測定器(Ushikata社,Japan)を用いて計測し、その総計を1well当たりの管腔形成部の長さとした。結果は、4 wellから得られた値の平均値+−標準偏差として表した。実験の結果を示す括弧(4)に後述。

(6)血小板におけるアラキドン酸代謝産物の測定
1mlのハンクスHanks液(PH 7.4)に縣濁したヒト血小板(10個)を、氷冷中で超音波処理し、血小板ホモジネート液を調整した。130μlのホモジネート液に20μlのKP溶液を加え、37℃で5分間過熱した後、50μlの[1−14C]アラキドン酸(37 kBq/ml、New England Nuclea社)を加え5分間反応させた。反応は100μlの0.5N蟻酸を加えることによって停止させた。反応生成物は、KIMURA等の方法(非特許文献8)に従って、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分離し、オートラジオグラフィーによって検出した。該当する代謝産物を切り出し、放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。実験の結果を示す括弧(5)に後述。

(7) 血管内皮(細胞)増殖因子VEGFに与える影響
OST細胞をVEGFのモノクロナール抗体によって特殊染色し、その量を測定した。

(8) アルカリフォスファターゼ(ALP)活性とDNA量の測定
血清中のALP活性は、ALP測定キット(リキテックALP, Roche Diagnostics社)を用いて測定した。DNA量はHinegardnerの方法(非特許文献10)に従って、子牛の胸腺のDNAを標準品として測定した。

(9) 統計学的検定
有意差検定は、学生のT検定(Student’s t−test)を用いて行った。有意差の基準はP<0.05とした。

[結果]

(1) ヌードマウスに移植した骨肉腫の増大に及ぼすケトプロフェン(KP)の影響
ヌードマウスの頭骸骨骨膜下に移植したOST細胞は全例生着し、腫瘍組織は増大した。移植して4週後から基剤のみの貼付薬で更に4週間処理した群(Placebo処理群)の場合、OST細胞は類骨組織を形成し、頭骸骨に浸潤し、これを著しく破壊した。摘出した腫瘍重量は3.54gであった)。この組織には血管が豊富であり、殆ど全ての細胞は成育(viable)しうるものであった。一方、ケトプロフェン(KP)を含む貼付薬で4週間処理した群(KP処理群)では、腫瘍による頭蓋骨の破壊・浸潤は抑制され、腫瘍の平均重量はPlacebo処理群の48%に減少していた。この組織には、血管が少なく、腫瘍の中心部では顕著な壊死が認められた。また、頭部の肉眼的所見においても、ケトプロフェン(KP)処理群では腫瘍増大の抑制が認められた。
腫瘍組織を摘出した後の体重は、Placebo処理群では、骨肉腫を移植していない同週齢のヌードマウス(normal mice群)の体重の62%まで減少したが、KP処理群の体重は12%しか減少しなかった。また、肉眼的所見においても、Placebo処理群のヌードマウスは顕著な悪液質状態を呈したが、KP処理群では全身状態はかなり改善された。
血清ALP値は、Placebo処理群では、正常群の5.6倍の高値を示した。一方、KP処理群では正常群の値近くまで低下したが、有意な差は認められなかった。この結果は、ケトプロフェン(KP)貼付薬で処理したヌードマウスの骨肉腫の病勢は著しく低下しているということを示している。

(2) 腫瘍組織中の増殖細胞核抗原(PCNA)発現に及ぼすケトプロフェン(KP)の影響
細胞が分裂する際、核内にPCNAが発現することはよく知られており、腫瘍細胞の増殖に指標としてよく用いられる(非特許文献11−16)。そこで、移植したOST細胞の増殖に及ぼすケトプロフェン(KP)の影響を分子レベルで明らかにするため、摘出した腫瘍組織切片を抗PCNA抗体を用いて免疫染色し、増殖細胞核抗原標識率(PCNA−labeling index)として算出した。Placebo処理群の腫瘍組織中のほとんどの細胞はPCNA陽性であり、算出されたPCNA−labeling indexは84.6±9.4%(n=4)であった。一方、KP処理群では、PCNA陽性細胞は著しく減少し、PCNA−labeling indexは34.4±5.8%(n=4)に低下した。

(3) 培養したOST細胞の増殖に及ぼすケトプロフェン(KP)の影響
OST細胞の増殖をケトプロフェン(KP)が直接抑制するかどうかを検討するため、ケトプロフェン(KP)非存在下或いは存在下でOST細胞を培養し、ディッシュ当たりのDNA量を測定した。OST細胞をKP非存在下で培養するとDNA量は10日目まで直線的に増加した。10日目のDNA量は、培養初日のそれの8倍以上であった。培地中にケトプロフェン(KP)が存在したときのDNA量の増加曲線は、KP非存在下でのそれと全く同一であった。しかし、100 μg/mlのKP存在下でOST細胞を培養すると、細胞は全て壊死したため、以下の培養系の実験では10 μg/mlまでのKPを用いた。

(4) HUVECsの管腔形成に及ぼすケトプロフェン(KP)の影響
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)をマトリゲル上に散布し、12時間培養すると樹状の管腔構造を形成した。1ウエル当たりの管腔形成部の長さは10.5mmであった。10μg/mlのケトプロフェン(KP)存在下でも、同様の管腔形成が認められた。その長さは12.3mmであり、ケトプロフェン(KP)非存在下で形成された管腔の長さと有意な差は認められなかった。
HUVECsと血小板を共培養すると、管腔形成は血小板の数に依存して増加した。10個の血小板を共培養した倍地中にKPを添加し、形成された管腔の長さを測定した。血小板が存在すると、ケトプロフェン(KP)は管腔形成を用量依存的に阻害した。10μg/mlのケトプロフェン(KP)は、その長さを26.4mm/wellに低下させた。すなわち、ケトプロフェン(KP)は、血小板による管腔形成の増加を15.9mm/wellから7.1mm/wellに減少させた。

(5) 血小板のアラキドン酸代謝に及ぼすKPの影響
ケトプロフェン(KP)存在下で血小板ホモジネート液と[1−14C]アラキドン酸を反応させ、生成物を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分離し、それらの放射活性を測定した。ケトプロフェン(KP)が存在すると、トロンボキサンB(TXB)やヒドロキシヘプタデカトリエン酸(HHT)の生成はケトプロフェン(KP)の容量に依存して低下した。一方、12−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12−HETE)の生成は増加した。この結果は、ケトプロフェン(KP)がサイクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)を阻害したことを示している。

(6) 血管内皮(細胞)増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)の抑制
ヌードマウスに移植したOST細胞中の血管内皮(細胞)増殖因子(VEGF)は、ケトプロフェン(KP)によって抑制された。

[考察]

外用薬が最も汎用されているのは日本といわれるが、その歴史はかなり古い。日本では982年の「医心方」の中で、外用薬が挙げられている。しかし、日本に限らず海外ではさらにその歴史は古く、紀元前2100年頃にメソポタミアで用いられたと言われる。また、レミントン(Remington)によると、紀元前 3000−5000 年のバビロンーアッシリア及びエジプト時代に、既に諸種の脂肪並びに樹脂、蝋などの混合物が膏薬として用いられたことが記載されている。ギリシャ時代にヒポクラテス一派によって現在の貼付製剤の形となってきたと言われている。貼付薬としての最古の記録は、ヨハネ福音書第9章にみることができ、16世紀の方鑑 Antidotary1,2巻(John Jacobs著)に記載されている。
NSAIDsは、酸性NSAIDsと塩基性NSAIDsに分類される。酸性NSAIDsはCOXに対する阻害作用を有してるが、塩基性NSAIDsにその作用はない。酸性NSAIDsのCOX阻害作用は抗炎症効果とよく相関し、薬理作用発現の本体と考えられている(非特許文献11)。今回用いたKPは酸性NSAIDsに属する。
本研究では、ヌードマウスの頭蓋骨骨膜下に移植したヒト骨肉腫(OST細胞)の患部をKP貼付薬で経皮的に処理すると、骨肉腫の病勢は著しく低下し、腫瘍組織の増大が抑制されることが明らかになった。更に、病理組織学的には、KP処理群の腫瘍組織の中心部では広範囲にOST細胞が壊死していることも明らかとなった。これらの結果は、KP貼付薬が骨肉腫に対する抗腫瘍薬として有用であるということを示唆している。
分裂する細胞の周期は、DNA複製前段階(G1期)、DNA合成期(S期)、有糸分裂前期(G2期)、有糸分裂期(M期)の4期に区別される。KP処理群の腫瘍組織中の細胞が、この増殖サイクルのどの段階にあるかを明らかにするため腫瘍組織中のPCNAの免疫染色を行った。PCNAは、
DNA合成が開始される直前のG1期の最後期に出現し始め、S期に最高となり、G2期とM期に再び低下する(非特許文献13)。従って、PCNAは分裂している細胞の指標としてしばしば用いられる(非特許文献12−17).Robbins等(非特許文献16)は、ヒトの悪性腫瘍組織においてPCNA陽性細胞の数が多いほど癌細胞は激しく分裂しており、悪性度も高いと報告している。また、我々は、ヒトの悪性腫瘍組織壊死の始まっている部分ではPCNA陽性細胞の割合は低いと報告した(非特許文献16)。本研究では、Placebo処理群及びKP処理群の腫瘍組織中では、それぞれ85%及び34%の細胞がPCNAを発現していることが明らかになった。この結果は、Placebo処理群の組織中ではほとんどの細胞が分裂しているが、KP処理群の組織では65%の細胞がG1期に遅滞していることを示している。従って、ケトプロフェン(KP)は細胞をG1期に停滞させることによって、腫瘍細胞の増大を抑制したものと推察される。
現在使用されている抗悪性腫瘍薬には、細胞周期の特定の時期(M期或いはS期)に作用し毒性を表す薬物や細胞周期全体に作用して毒性を現す薬物が多い。そこで、ケトプロフェン(KP)がG1期に直接作用して、抗腫瘍作用を表したものかどうかをあきらかにするため、ケトプロフェン(KP)を添加した培地中でOST細胞を培養し、ディッシュ当たりのDNA量の経時的な変化を観察した。ケトプロフェン(KP)を培地に添加しても、添加しなかった場合と同様に、DNA量は直線的に増加した。このことは、ケトプロフェン(KP)存在下でもOST細胞は正常に分裂していることを示している。従って、ケトプロフェン(KP)貼付薬の経皮的に抗腫瘍効果は、ケトプロフェン(KP)がG1期に直接作用して細胞分裂を阻害したために表れたものではないかと考えられる。
一般に、癌細胞の集団が小さく、腫瘍組織内に血管がまだ造成されていない段階では、栄養や酸素の供給は拡散によって行われるため、癌細胞の増殖は遅い。しかし、腫瘍組織内に徐々に血管が新生し始め、癌細胞に栄養や酸素の供給が多くなると、癌細胞は急速に増殖し、腫瘍組織は増大する。そのため、腫瘍の進展や転移の抑制を目的に、血管新生を阻害する物質を用いて悪性腫瘍の増大を抑制する試みが臨床的に行われるようになってきた(非特許文献18)。
血管新生を促進する物質としてCOXの反応成生物であるプロスタグランジンE(PGE)が知られている(非特許文献19−22)。また、腫瘍血管の形成促進因子の一つと考えられている血管内皮(細胞)増殖因子vascular endot helial growth factor(VEGF)をPGEが誘導するという報告もあり、COXを阻害しPGEの生成を低下させると、血管新生は抑制される(非特許文献19,22−23)。今回用いたKPも用量依存的にCOXを阻害した。この結果は、以前報告されたものとよく一致する(非特許文献24,25)。 そこで、HUVECsの管腔形成に及ぼすKPの影響を検討した。HUVECsだけをKP存在下で培養しても、管腔形成に変化は認められなかった。しかし、HUVECsと血小板を共培養し、管腔形成を増加させた条件では、ケトプロフェン(KP)は用量依存的に管腔の形成を阻害した。これらの結果は、ケトプロフェン(KP)は血小板を介して増加した管腔形成のみを阻害することを示している。以上の結果を考え合わせると、ケトプロフェン(KP)貼付薬が骨肉腫の増大を抑制した機序は、ケトプロフェン(KP)が血小板のCOXを阻害し、血管新生が抑制され、その結果、癌細胞への栄養や酸素の供給が低下し、癌細胞の増殖が阻害されたためであると推察される。これは、KP処理群の腫瘍組織中には造成された血管が、Placebo処理群に比べて、少なかったという病理組織学的な結果によっても支持される。
VEGFがケトプロフェン(KP)によって抑制されることを証明したが、これはケトプロフェン(KP)に腫瘍増殖抑制作用があるのみではなく、転移能を抑制する可能性を示唆するものである。局所制圧のみならず、転移を抑制することは極めて理想的な抗癌剤と言える。
近年の化学療法の発達で癌の治療成績は著しく向上した。その反面、抗悪性腫瘍薬を全身投与した場合、非常に強い副作用が現れ、患者に苦痛を強いる結果となっている。このような患者の副作用による苦痛を少しでも軽減するために、近年、局所投与法が注目をあつめている。これは抗悪性腫瘍薬を直接腫瘍組織周辺に投与するため、副作用による患者の苦痛は軽減されると共にその癌細胞に対する抗腫瘍効果も増強される。NSAIDsを服用した場合も、COXは殆どの細胞に存在、或いは誘導されるため、COX阻害に基づくプロスタグランジン(PG)産生の抑制に連動して消化管障害や腎障害等の副作用が出現する。しかし、ヒト骨肉腫細胞を移植した患部をケトプロフェン(KP)貼付薬で経皮的に処置すると腫瘍組織の増大が抑制されたという本研究の成果は、KPは局所性に作用するため、癌細胞の増殖を抑制するのみならず、副作用も軽減されるものと推察される。
抗悪性腫瘍薬の投与は、細胞の増殖サイクルに合わせて、それぞれに有効な薬物を多剤併用し、それぞれの薬理作用を相加的或いは相乗的に高め、かつ副作用の軽減を図ること一般に行われている。そこで、今回用いたケトプロフェン(KP)貼付薬と他の薬剤を併用することによって、副作用を軽減し、骨肉種に対する治療成績を更に向上させることが期待される。
尚、ケトプロフェン(KP)のみならず、他のNSAIDs外用剤(フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナク)にも、同様の効果があった。

[結論]

ケトプロフェン(KP)貼付薬はヌードマウスの頭蓋骨骨膜下に移植したヒト骨肉腫(OST細胞)の増殖を抑制した。また、KP処理群の腫瘍組織中には、Placebo処理群に比べ、血管の造成が少なく、組織の中心部には壊死も認められた。しかし、培地にケトプロフェン(KP)を添加してOST細胞を培養しても、ディッシュ当たりのDNA量は、ケトプロフェン(KP)非存在下で培養したときのそれと同じであった。この結果は、ケトプロフェン(KP)は、OST細胞に直接作用して毒性を表すものではないことを示している。ケトプロフェン(KP)存在下で、HUVECsと血小板を共培養すると、HUVECsによる管腔形成はケトプロフェン(KP)の濃度に依存して低下した。この結果は、ケトプロフェン(KP)は、血管新生を抑制する作用を持っていることを示している。これらの結果を考え合わせると、ケトプロフェン(KP)は腫瘍組織中での血管新生を阻害したため、癌細胞への栄養や酵素の供給が低下し、癌細胞の増殖阻害や中心部の壊死を引き起こしたものと推察される。
動物実験は、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといった非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)が癌増殖を経皮的に抑制することを示している。従来、NSAIDsの外用剤は癌に対しては禁忌とされてきた。しかしながら、本発明は、非ステロイド性消炎鎮痛剤として知られた、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクのいづれかひとつを実施例に示す分量を含有する外用剤を用いて癌細胞の増殖を抑制する方法として、副作用が少ない新たな癌治療の方法を開発する用途にも適用できる。

Claims (3)

  1. 癌の成長及び増殖を抑制可能とするため、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといったいづれかひとつの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を外用剤として癌細胞に経皮的に貼付又は塗布することを特徴とする非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を用いた癌細胞の増殖を抑制する方法。
  2. ケトプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、フェルビナクといったいづれかひとつの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)をもっとも望ましくは1000μg/cm以上の分布量を存在させてある外用剤を癌細胞に経皮的に貼付又は塗布することを特徴とする請求項1に記載の非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を用いた癌細胞の増殖を抑制する方法。
  3. ケトプロフェンなら300μg/cm以上、フルルビプロフェンなら350μg/cm以上、インドメタシンとフェルビナクなら各600μg/cm以上であって1000μg/cm未満のいづれかひとつの非ステロイド性消炎鎮痛剤の分布量を存在させてある外用剤を癌細胞に経皮的に貼付又は塗布することを特徴とする請求項1に記載の非ステロイド性消炎鎮痛剤の外用剤を用いた癌細胞の増殖を抑制する方法。
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