JP2005336478A - 硬化性組成物、その硬化物およびその成形体 - Google Patents

硬化性組成物、その硬化物およびその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐熱性、耐熱水性、導電性、モールド成形性に優れ、高い導電性の硬化物が得られる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物(A)及び炭素質材料(B)を少なくとも含む硬化性組成物である。さらに、炭素ー炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(C)と反応性モノマーを含む硬化性組成物が好ましい。炭素質材料(B)は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチュ−ブから選ばれた1種または2種以上の組み合わせが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、特に燃料電池用セパレータに好適に使用可能な硬化性組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、耐熱水性、導電性に優れ、更にモールド成形性に優れた耐熱水性硬化性組成物、該硬化性組成物から得られるべき硬化物、成形体、燃料電池用セパレータ、および該セパレータの製造方法に関する。
従来より、高い導電性が求められる用途に対しては、金属や炭素材料等の材料が用いられてきた。中でも、炭素材料は導電性に優れ、金属のような腐食がなく、耐熱性、潤滑性、熱伝導性、耐久性等にも優れた材料であることから、エレクトロニクス、電気化学、エネルギー、輸送機器等の分野で重要な役割を果たしてきた。そして、炭素材料と高分子材料の組み合わせによる複合材料においても目覚ましい発展を遂げ、その結果、このような複合材料も高性能化、高機能性化の一躍を担って来た。特に、高分子材料との複合化により成形加工性の自由度が向上したことが、導電性が要求される各分野で炭素材料が発展してきた一つの理由である。
導電性が要求される炭素材料との用途としては、回路基板、抵抗器、積層体、電極等の電子材料や、ヒーター、発熱装置部材、集塵フィルタエレメント等の部材等が挙げられる。これらの用途においては、導電性と共に高い耐熱性が要求されている。
他方、近年、環境問題、エネルギー問題の観点から、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素と酸素を利用して電気分解の逆反応で発電し、水以外の排出物がないクリーンな発電装置である。この燃料電池の分野においても、炭素材料と高分子材料が大きな役割を担うことができる。燃料電池は、その電解質の種類に応じて数種類に分類されるが、これらの中でも、固体高分子型燃料電池は低温で作動するため、自動車や民生用として最も有望である。このような燃料電池は、例えば、高分子固体電解質、ガス拡散電極、触媒、セパレータから構成された単セルを積層することによって、高出力の発電が達成できる。
上記構成を有する燃料電池において、上記セパレータは、発電のための反応によって生成する水と常時接触している。前記固体型燃料電池の作動温度は約80℃と言われているが、作動時間が長いことが想定される用途では、長時間の使用に耐え得る耐熱性、特に耐熱水性が特に要求される。
また、燃料電池の単セルを仕切るためのセパレータには、通常、燃料ガス(水素等)と酸化剤ガス(酸素等)を供給し、発生した水分(水蒸気)を排出するための流路(溝)が形成されている。それゆえ、セパレータにはこれらのガスを完全に分離できる高い気体不透過性と、内部抵抗を小さくするために高い導電性が要求される。更には、熱伝導性、耐久性、強度等に優れていることが要求される。
これらの要求を達成する目的で、従来より、この燃料電池用セパレータは金属材料と炭素材料の両面から検討されてきた。金属材料は耐食性の問題から、表面に貴金属や炭素を被覆させる試みがされてきたが、充分な耐久性が得られず、更に被覆にかかるコストが問題になる。
一方、燃料電池用セパレータ用の炭素材料に関しても多く検討が成され、膨張黒鉛シートをプレス成形して得られた成形品、炭素焼結体に樹脂を含浸させ硬化させた成形品、熱硬化性樹脂を焼成して得られるガラス状カーボン、炭素粉末と樹脂を混合後成形した成形品等が燃料電池用セパレータ用材料の例として挙げられる。
例えば、特開平8−222241号公報(特許文献1)には、炭素質粉末に結合材を加えて加熱混合後CIP成形(Cold Isostatic Pressing;冷間等方圧加工法)し、次いで焼成、黒鉛化して得られた等方性黒鉛材に熱硬化性樹脂を含浸、硬化処理し、溝を切削加工によって彫るという煩雑な工程が開示されている。
また、特開昭60−161144号公報(特許文献2)には、炭素粉末または炭素繊維を含む紙に熱硬化性樹脂を含浸後、積層圧着し、焼成することが開示されている。特開2001−68128号公報(特許文献3)には、フェノール樹脂をセパレータ形状の金型に射出成形し、焼成することが開示されている。
これらの例のように焼成処理された材料は高い導電性、耐熱性を示すが、焼成に要する時間が長く生産性が乏しく、また、曲げ強度が劣るという問題もある。更に、切削加工が必要な場合は、量産性が更に乏しく高コストであるため、将来普及する材料としては難しい面が多い。
一方、量産性が高く低コストが期待できる手段としてモールド成形法が考えられているが、それに適用可能な材料としては、炭素質材料と樹脂のコンポジットが一般的である。例えば、特開昭58−53167号公報(特許文献4)、特開昭60−37670号公報(特許文献5)、特開昭60−246568号公報(特許文献6)、特公昭64−340号公報(特許文献7)、特公平6−22136号公報(特許文献8)には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛、カーボンからなるセパレータが、特公昭57−42157号公報(特許文献9)には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とグラファイト等の導電性物質とからなる双極隔離板が、特開平1−311570号公報(特許文献10)には、フェノール樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂に膨張黒鉛およびカーボンブラックを配合してなるセパレータが開示されている。また、特開平11−154521号公報(特許文献11)には、難燃剤であるブロム化エポキシ樹脂を用いて、高温での使用状態における劣化を防止するセパレータが開示されている。
特開平08−222241号公報 特開昭60−161144号公報 特開2001−068128号公報 特開昭58−053167号公報 特開昭60−037670号公報 特開昭60−246568号公報 特公昭64−000340号公報 特公平06−022136号公報 特公昭57−042157号公報 特開平01−311570号公報 特開平11−154521号公報
上述したような従来の熱硬化性樹脂と炭素質材料から成る種々の硬化体は、電極ヒーター、発熱装置部材、燃料電池セパレータなどの多くの用途において要求される高い耐熱性に対して、充分な性能を有していなかった。
また、特に燃料電池用セパレータに関しては、耐熱性と併せて耐熱水性も要求される。しかしながら、上述したような従来の熱硬化性樹脂と炭素材料からなる硬化体は、燃料電池用セパレータ用途に関して要求される高い耐熱水性に対して、充分な性能を有していなかった。すなわち、その構造にエステル結合や、ウレタン結合を有する熱硬化性樹脂は、燃料電池から発生する熱水により、加水分解を起こしてしまう場合があった。このため、使用時間が長時間となることが想定される自動車用途や家電製品用途においては、従来の熱硬化性樹脂と炭素材料からなる硬化体を用いた場合には、充分な耐久性を有する製品を得ることが出来なかった。
また、熱硬化性樹脂と炭素質材料からなる種々の硬化性組成物は、炭素質材料の配合比を高くするとモールド成形時の流動性が著しく低下し、燃料電池セパレータのような硬化物表面にガスを流すための流路を形成する場合、モールド成形にて高い収率で硬化物を得ることが非常に困難であった。
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消した硬化性組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、耐熱性、耐熱水性、導電性、モールド成形性(圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、射出圧縮成形等)、とりわけ成形性に優れ、高い導電性の硬化物が得られる硬化性組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、該組成物をモールド成形して得られる、耐熱性、耐熱水性、導電性、および放熱性に優れた低コストな硬化物、成形体、燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(特に、ジエン化合物の1,2−重合体)にフッ素原子が結合した化合物が、炭素質材料との組合せにおいて、モールド成形性に優れる硬化性組成物を与えるのみならず、その硬化物が優れた耐熱水性、導電性をも有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[21]の事項に関する。
〔1〕 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物(A)及び炭素質材料(B)を少なくとも含む硬化性組成物。
〔2〕 更に、炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(C)を含む〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕 更に(D)反応性モノマーを含む〔1〕または〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔5〕 側鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体が、主鎖は飽和しているモノマー単位を60モル%以上含有する〔4〕に記載の硬化性組成物。
〔6〕 側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖は飽和しているモノマー単位を60モル%以上含有する重合体が、ジエン化合物を主モノマーとして重合されたものである〔5〕に記載の硬化性組成物。
〔7〕 ジエン化合物がブタジエン、ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である〔6〕に記載の硬化性組成物。
〔8〕 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、1,2−ポリブタジエン及び/または3,4−ポリイソプレンである〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔9〕 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、下記式(1)または式(2):
Figure 2005336478
のモノマー単位を60モル%以上含む重合体である〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔10〕 炭素質材料(B)が、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブからなる群から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせである〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔11〕 炭素質材料(B)が、その嵩密度が1g/cm3となるように加圧された状態において、加圧方向に対して直角方向の粉末電気比抵抗が0.1Ωcm以下であるものである〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔12〕 炭素質材料(B)が0.05〜10質量%のホウ素を含有する〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔13〕 〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化して得られる耐熱水性導電性硬化物。
〔14〕 硬化物のガラス転位温度が160℃以上、JIS K 6911による曲げ強度が30MPa以上である〔13〕に記載の耐熱水性導電性硬化物。
〔15〕 30mm×30mm×3mmの試験片を180℃、168時間で耐熱水性試験を行ったときの質量変化率が、−1.5〜+1.5%である〔13〕または〔14〕に記載の耐熱水性導電性硬化物。
〔16〕 〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする、両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体。
〔17〕 〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化、成形して得られる両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池用セパレータ。
〔18〕 ガラス転位温度が160℃以上、JIS K 6911における曲げ強度が30MPa以上であって、且つ30mm×30mm×3mmの試料片を180℃、168時間で耐熱水性試験を行ったときの質量変化率が、−1.5〜+1.5%である〔17〕に記載の燃料電池用セパレータ。
〔19〕 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形または射出圧縮成形のいずれかの方法により製造された〔13〕に記載の耐熱水性導電性成形体の製造方法。
〔20〕 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形または射出圧縮成形のいずれかの方法により製造された〔17〕に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
〔21〕 〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の硬化性組成物からなる燃料電池セパレータ用硬化性組成物。
本発明の硬化性組成物は、その硬化体として、優れた物性(例えば、耐熱性、耐熱水性、導電性、および/又は放熱性)を有し、更に成形性を与えることができるため、従来実現が困難であった領域の材料、例えば、燃料電池用セパレータ、電極、回路基板、抵抗器、ヒーター、集塵フィルタエレメント、電池用集積体、面状発熱体、電磁波材料等各種用途・部品に広く適用が可能であり、特に固体高分子型燃料電池等の燃料電池セパレータ用素材として有用である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物(A)と、炭素質材料(B)とを少なくとも含む。ここで「フッ素原子が結合した」とは、フッ素原子が炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物の、炭素−炭素二重結合部へ付加された状態、またはフッ素原子が、該炭化水素化合物の水素原子(炭素−炭素二重結合部の水素原子であっても、他の水素原子であっても良い)と置換された状態を意味する。
(二重結合を複数個有する炭化水素)
本発明における炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物は、炭素と水素を基本の構成元素とする化合物であるが、酸素、窒素原子を含んでいても構わない。但し、熱水による加水分解を避けるため、エステル結合やウレタン結合、アミド結合を有する構造は極力少ない化合物が好ましい。当該化合物が重合体である場合には、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合の(合計)結合数は、モノマー単位の総数の5%以内が望ましい。
このような化合物は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体であることが更に好ましい。当該重合体は単独重合体でも、共重合体であっても良い。また、単独重合体、即ちモノマーは1種類の重合体であっても、そのミクロ構造は重合方法(触媒、温度等の条件)によって異なる場合がある。例えば、ブタジエンの単独重合体の場合、そのモノマー単位が1,4−cis結合または1,4−trans結合を主体とするものは、主鎖に炭素−炭素二重結合を有しており、その性状は常温においてゴム状態である。この重合体は一般にポリブタジエンゴムと呼ばれる。一方、1位と2位の炭素が主鎖を形成しているモノマー単位(1,2−結合)を主体とした重合体は、分子量が高くなるといわゆる樹脂状態を示す。分子量が低い(重合度が低い)場合は粘稠な液体となる。
上記ジエン化合物の場合には、側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖が飽和しているモノマー単位とは、好ましくは1,2−結合を意味する。なお、全モノマー単位数とは、例えば、ポリブタジエンの場合、1,2−結合、1,4−cis結合、1,4−trans結合を1つのモノマー単位としてカウントしたものの総和である。他のモノマーが共重合されていればそのモノマーの1つを1つのモノマー単位としてカウントする。モノマー単位とは重合体において原料となるモノマーの1つ1つに相当する部分をいう。
本発明において、側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖は飽和している(炭素−炭素一重結合を意味する)モノマー単位はその重合体を構成する全モノマー単位数に対して、60モル%以上存在することが好ましく、70モル%が更に好ましく、85モル%以上が最も好ましい。この量比が60モル%未満では側鎖の炭素−炭素二重結合を反応させて硬化させた場合の硬化性が不充分となる場合がある。また、炭素質材料を含んだ硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度、ガラス転移温度(Tg)も低下する傾向がある。
側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖は飽和しているモノマー単位は、以下の式(1)または式(2):
Figure 2005336478
で示されるモノマー単位が好ましい。
(ジエンポリマー)
また、側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖は飽和しているモノマー単位を60モル%以上含有する重合体は、先に記載したジエン化合物(ブタジエン、ペンタジエン、イソプレン等)を主モノマー(原料となるモノマー中の50モル%以上を占めるモノマー)とする重合体が好ましい(本発明ではこのようなジエン化合物を主モノマーとする重合体を「ジエンポリマー」と称する場合がある)。このジエンポリマーは複数のジエン化合物モノマーの共重合体であってもよい。また、側鎖の炭素−炭素二重結合の一部が水添(水素添加により飽和炭素−炭素結合となる)されていてもよい。
本発明において使用可能なジエンポリマーの具体例としては、1,2−ポリブタジエン、3,4−ポリペンタジエン、3,4−ポリイソプレン、ポリシクロペンタジエン等を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。本発明において、ジエンポリマーは好ましくは1,2−ポリブタジエン、3,4−ポリイソプレンであり、より好ましくは、1,2−ポリブタジエンである。これらの重合体はミクロ構造としてポリブタジエンの3,4−結合に相当するモノマー単位を含んでいても構わない。更にジエン化合物以外のモノマーが共重合されていてもよい。ジエン化合物以外のモノマーとしては無水マレイン酸、メタクリル酸などが挙げられる。3,4−結合のモノマー単位および他のモノマーによるモノマー単位は、全モノマー単位数の40モル%未満が好ましく、30モル%未満が更に好ましく、15モル%未満がより好ましい。
ジエンポリマーは、表面張力が低いことが特徴である。表面張力とは、物質表面の疎水性、親水性を表すパラメータであり、本発明における(A)成分の重合体は疎水性であることが好ましい。親水性が大きくなると、水との親和性が増加し、その結果、耐熱水性が低下する傾向を有するため、過大な親水性は好ましくない。
このようなジエンポリマーの合成方法は、特に制限されない。合成方法の具体例は、「第4版 実験化学講座 高分子合成(社団法人 日本化学会編 丸善株式会社発行 平成4年5月6日 第4版)」の41頁「実験例2・20 コバルト触媒による1,2−ポリブタジエンとcis−1,4−ポリブタジエンの合成」や、「第4版 実験化学講座 高分子合成(社団法人 日本化学会編 丸善株式会社発行 平成4年5月6日 第4版)」の48頁「実験例2・26 (Pr−O)4Ti−有機アルミニウム系触媒による3,4−ポリイソプレンの合成」に記載されているものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、合成したジエンポリマーのミクロ構造の確認には、特に制限はなくどのような方法でも確認できる。例えば、核磁気共鳴法(以下、「NMR法」と略す。)や、フーリエ変換赤外分光法(以下、「FT−IR法」と略す。)等で行うことができる。これらの具体的例としては、「高分子合成の実験法(株式会社 化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」45頁 「実験例223 赤外スペクトルによるポリブタジエンのミクロ構造の測定」の項や、「高分子合成の実験法(株式会社 化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」49頁 「実験例225 NMRによるポリブタジエンのミクロ構造の測定」の項や、「高分子合成の実験法(株式会社 化学同人発行1984年3月1日第8刷発行)」51頁「実験例 226 NMRによるポリイソプレンのミクロ構造の測定」の項に記載されている。
本発明におけるジエンポリマーの分岐構造、末端構造に特に制限はなく、種々の変性を加えたものも使用できる。それらの具体例としては、アクリル変性、メタクリル変性、カルボキシ変性、無水マレイン変性、エポキシ変性等種々の構造のものが挙げられるが、これに限定するものではない。
(炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物)
本発明の炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物(以下「(A)成分」ということもある。)は、前記炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物をフッ素ガスと反応させることにより得ることができる。
フッ素化反応としては、特に制限されるものはなく、公知の回分式方法や連続式方法を用いることができる。ここで用いるフッ素ガス濃度は特に制限されるものはないが、反応の制御を容易にするためにフッ素ガスを不活性ガスで希釈して、フッ素ガス濃度を50容量%以下としたものが好ましい。ここで使用される不活性ガスとしては窒素、アルゴン等が挙げられる。
(A)成分のフッ素原子含有量は、公知の元素分析の手法により定量することができる。例えば実施例において後述するように、(A)成分を酸素気流下で燃焼し、発生するガスを純水に溶かし、陰イオンクロマトグラフィー法にて定量することにより算出できる。
本発明における(A)成分中のフッ素原子含有量は、(A)成分に対して、1〜70質量%が好ましく、1〜60%が更に好ましく、特に2〜50%がより好ましい。フッ素原子含有量が1質量%未満では硬化物の特性に対してその改良効果を得ることが困難となる傾向がある。一方、(A)成分中のフッ素原子含有量が70質量%を越えると、硬化特性が低下する傾向がある。
(炭素質材料)
本発明における炭素質材料(以下「(B)成分」ということもある。)としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが挙げられる。
本発明における(B)成分は、その嵩密度が1g/cm3となるように加圧圧縮したときの、加圧方向に対して直角方向の粉末電気比抵抗ができるだけ低いことが望ましい。このような炭素質材料の粉末電気比抵抗値は0.1Ωcm以下であることが好ましく、更に0.07Ωcm以下であることがより好ましい。炭素質材料の粉末電気比抵抗が0.1Ωcmを超えると、硬化して得られる硬化物の導電性が低くなり、所望の硬化物が得られ難くなる傾向がある。
この炭素質材料粉末の電気比抵抗の測定法を図1に示す。図1において1、1’は銅板からなる電極、2は樹脂からなる圧縮ロッド、3は受け台、4は側枠で、いずれも樹脂からなる。5は試料の炭素質材料粉末である。6は試料の下端で、紙面に垂直方向の中央部に設けられている電圧測定端子である。
この図1に示す四端子法を用いて、以下のようにして試料の電気比抵抗を測定する。試料を圧縮ロッド2により圧縮する。電極1より電極1’へ電流(I)を流す。端子6により端子間の電圧(V)を測定する。このとき電圧は試料を圧縮ロッドにより嵩密度1.5g/cm3としたときの値を用いる。試料の電気抵抗(端子間)をR(Ω)とするとR=V/Iとなる。これからρ=R・S/Lにより電気比抵抗を求めることができる〔ρ:電気比抵抗、S=試料の通電方向、即ち加圧方向に対し、直角方向の断面積(cm2)、Lは端子6間の距離(cm)である。〕。実際の測定では試料は直角方向の断面は横が約1cm、縦(高さ)が0.5〜1cm、通電方向の長さ4cm、端子間の距離(L)は1cmである。
(人造黒鉛)
本発明の(B)炭素質材料の一例である上記人造黒鉛を得るためには、通常は先ずコークスを製造する。コークスの原料は石油系ピッチ、石炭系のピッチ等が用いられる。これらの原料を炭化してコークスとする。コークスから黒鉛化粉末にするには一般的にコークスを粉砕後黒鉛化処理する方法、コークス自体を黒鉛化した後粉砕する方法、あるいはコークスにバインダーを加え成形、焼成した焼成品(コークスおよびこの焼成品を合わせてコークス等という)を黒鉛化処理後粉砕して粉末とする方法等がある。原料のコークス等はできるだけ、結晶が発達していない方が良いので、2000℃以下、好ましくは1200℃以下で加熱処理したものが適する。
黒鉛化方法は、粉末を黒鉛ルツボに入れ直接通電するアチソン炉を用いる方法、黒鉛発熱体により粉末を加熱する方法等を使用することができる。
コークス、人造黒鉛および天然黒鉛等の粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。また、微粉砕機であるスクリーンミル、ターボミル、スーパーミクロンミル、ジェットミルでも条件を選定することによって使用可能である。これらの粉砕機を用いてコークスおよび天然黒鉛等を粉砕し、その際の粉砕条件の選定、および必要により粉末を分級し、平均粒径や粒度分布をコントロールする。
コークス粉末、人造黒鉛粉末および天然黒鉛粉末等を分級する方法としては、分離が可能であれば何れでも良いが、例えば、篩分法や強制渦流型遠心分級機(ミクロンセパレーター、ターボプレックス、ターボクラシファイアー、スーパーセパレーター)、慣性分級機(改良型バーチュウアルインパクター、エルボジェット)等の気流分級機が使用できる。また湿式の沈降分離法や遠心分級法等も使用できる。
(膨張黒鉛粉末)
上記した膨張黒鉛粉末は、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛等高度に結晶構造が発達した黒鉛を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末である。
(炭素繊維)
上記した炭素繊維としては、重質油、副生油、コールタール等から作られるピッチ系と、ポリアクリロニトリルから作られるPAN系が挙げられる。
気相法炭素繊維とは、例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を原料に、フェロセン等の遷移金属触媒の存在下で、水素ガスとともに800〜1300℃で熱分解反応させることによって得られる。更に、その後約2500〜3200℃で黒鉛化処理することが好ましい。より好ましくは、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒とともに約2500〜3200℃で黒鉛化処理する。
本発明においては、繊維径が0.05〜10μm、繊維長が1〜500μmの気相法炭素繊維を用いることが好ましく、より好ましくは繊維径が0.1〜5μm、繊維長が5〜50μmであり、更に好ましくは繊維径が0.1〜0.5μm、繊維長が10〜20μmである。
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブとは、近年その機械的強度のみでなく、電界放出機能や、水素吸蔵機能が産業上注目され、更に磁気機能にも目が向けられ始めている。この種のカーボンナノチューブは、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバー等とも呼ばれている。カーボンナノチューブにはチューブを形成するグラファイト膜が一層である単層カーボンナノチューブと、多層である多層カーボンナノチューブがある。本発明では、単層および多層カーボンナノチューブのいずれも使用可能であるが、単層カーボンナノチューブを用いた方が、より高い導電性や機械的強度の硬化物が得られる傾向があるため好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば、斉藤・板東「カーボンナノチューブの基礎」(P23〜P57、コロナ社出版、1998年発行)に記載のアーク放電法、レーザ蒸発法および熱分解法等により作製し、更に純度を高めるために水熱法、遠心分離法、限外ろ過法、および酸化法等により精製することによって得られる。より好ましくは、不純物を取り除くために約2500〜3200℃の不活性ガス雰囲気中で高温処理する。更に好ましくは、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒とともに、不活性ガス雰囲気中、約2500〜3200℃で高温処理する。
本発明においては、繊維径が0.5〜100nm、繊維長が0.01〜10μmのカーボンナノチューブを用いることが好ましく、より好ましくは繊維径が1〜10nm、繊維長が0.05〜5μmであり、更に好ましくは繊維径が1〜5nm、繊維長が0.1〜3μmである。
本発明における気相法炭素繊維とカーボンナノチューブの繊維径、および繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した数百本分の各繊維の直径と長さを測定し、その数平均をとったものである。
(カーボンブラック)
本発明のカーボンブラックとしては、天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるファーネスカーボン、天然ガスの熱分解により得られるサーマルカーボン等が挙げられる。
(ホウ素)
また、本発明の(B)成分の炭素質材料に含まれるホウ素は、炭素質材料の全質量を基準として、炭素材料中に0.05〜10質量%含まれることが好ましい。ホウ素量が0.05質量%未満では、ホウ素含有の目的とする高導電性の黒鉛粉末が得られ難い傾向がある。他方、ホウ素量が10質量%を超えて含まれていても、炭素材料の導電性向上の改善効果は小さくなる傾向がある。炭素質材料に含まれるホウ素の量の測定方法は特に制限はなく、どのような測定方法でも測定できる。本発明では誘導型プラズマ発光分光分析法(以下、「ICP」と略す。)又は誘導型プラズマ発光分光質量分析法(以下、「ICP−MS」と略す。)により測定した値を用いる。具体的には試料に硫酸および硝酸を加え、マイクロ波加熱(230℃)して分解(ダイジェスター法)し、更に過塩素酸(HClO4)を加えて分解したものを水で希釈し、これをICP発光分析装置にかけて、ホウ素量を測定する。
本発明の炭素質材料としては、0.05〜10質量%のホウ素を含有するものが好ましい。ホウ素を含有させる方法としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ等の単品、あるいはそれらの1種以上の混合物にホウ素源として、B単体、B4C、BN、B23、H3B03等を添加し、よく混合して約2500〜3200℃で黒鉛化処理することによって、炭素質材料中にホウ素を含有させることができる。ホウ素化合物の混合が不均一な場合には、黒鉛粉末が不均一になるだけでなく、黒鉛化時に焼結する可能性が高くなる。ホウ素化合物を均一に混合させるために、これらのホウ素源は50μm以下、好ましくは20μm以下程度の粒径を有する粉末にしてコークス等の粉末に混合することが好ましい。
ホウ素を添加しない場合、黒鉛化すると黒鉛化度(結晶化度)が下がり、格子間隔が大きくなり、高導電性の黒鉛粉末が得られない場合がある。また、黒鉛中にホウ素および/またはホウ素化合物が混合されている限り、ホウ素の含有の形態は特に制限されないが、黒鉛結晶の層間に存在するもの、黒鉛結晶を形成する炭素原子の一部がホウ素原子に置換されたものも、より好適なものとして挙げられる。また、炭素原子の一部がホウ素原子に置換された場合のホウ素原子と炭素原子の結合は、共有結合、イオン結合等どのような結合様式であっても構わない。
(A成とB成分の質量比)
本発明における(A)成分と(B)成分との質量比は、0.01:1〜4:1の割合であることが好ましい。より好ましくは、0.01:1〜1.5:1の割合である。(A)成分の質量比が(B)成分の4倍を超えると、硬化物の導電性が低くなる傾向があるため好ましくない。また、(A)成分の添加量が(B)成分の0.01倍未満になると、成形性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
(炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(C)及び配合比)
本発明においては、(A)成分に加えて炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(C)(以下「(C)成分」ということもある。)を配合してもよい。(C)成分を配合する場合は、(A)成分と(C)成分の質量の総和を、前記(A)成分の質量と読み替えて、フッ素原子含有量を前記範囲に調整することが好ましい。なお、下記(D)成分である反応性モノマーを使用する場合は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総和を、上記の(A)成分と読み替えた質量比とする。
(反応性モノマー(D))
本発明の硬化性組成物は反応性モノマー(D)(以下「(D)成分」ということもある。)を含んでもよい。反応性モノマーとしては、特に制限はなく、種々のものが使用できる。例えば、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を含有するラジカル反応性モノマーを反応速度のコントロール、粘度調整、架橋密度の向上、機能付加等を目的に添加することができる。ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を含有するラジカル反応性モノマーとしては不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステルおよびその誘導体、架橋性多官能モノマー等が挙げられる。
(不飽和脂肪酸エステル)
上記した不飽和脂肪酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸芳香族エステル;フルオロメチル(メタ)アクリレート、クロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、α−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
(芳香族ビニル化合物、等)
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
上記飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステルおよびその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等がある。
(架橋性多官能モノマー)
また、上記した架橋性多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステルジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ω−(メタ)アクリロイロキシピリエトキシ)フェニル)プロパン、等のジ(メタ)アクリレート;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸アリル、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、等の二官能の架橋性モノマー;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストーリルトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレートのような四官能の架橋性モノマー等が挙げられる。
これらの反応性モノマーの中でも、耐熱性、耐熱水性等を向上させるためには架橋性多官能モノマーの添加が望ましい。また、熱水による加水分解を避けるため、エステル結合、ウレタン結合等加水分解を受ける結合部位を有する反応性モノマーの使用量は少ない方が好ましいが、他の物性とのバランスで適切な量とすることができる。
反応性モノマーの使用量は(A)成分と(C)成分との総和100質量部に対して1〜40質量部、より好ましくは2〜30質量部、特に3〜25質量部であることが好ましい。反応性モノマーが40質量部を越えると、本発明の硬化物、燃料電池用セパレータの耐熱水性が充分でなくなる場合がある。
(添加剤)
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、滑剤、増粘剤、架橋剤、架橋助剤、硬化開始剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、可塑剤、低収縮剤、チクソ剤、界面活性剤、溶剤、ガラスファイバー、無機繊維フィラー、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、撥水剤、親水性付与剤等の添加剤を含んでもよい。
硬化開始剤としては有機過酸化物やアゾ化合物等熱によりラジカルを発生する化合物が好ましい。有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等の公知のものを使用可能な。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパオーキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メタンパイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物は(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総和100質量部に対して、0.2〜10質量部添加することが好ましく、より好ましくは、0.5〜8質量部、更に好ましくは0.8〜6質量部である。添加量が10質量部を超えると有機過酸化物の分解により発生するガスが増加し、硬化物の気密性低下の原因となることがある。一方、0.2質量部未満では、硬化物の架橋密度が低くなるため強度が低下し、更に耐久性も低下する場合がある。
(硬化性組成物の製造法)
本発明における硬化性組成物は特に制限されないが、例えば、該硬化性組成物の製造方法において、上記した各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般的に用いられている混合機、混練機を使用し、硬化が開始しない温度で一定に保ちながら、なるべく均一に混合させるのが好ましい。また、有機過酸化物を添加する場合は、その他の全ての成分を均一に混合してから、最後に有機過酸化物を加えて混合するのがよい。
本発明における耐熱水性硬化性組成物は、混練または混合した後、モールド成形機や金型への材料供給を容易にする目的で、粉砕あるいは造粒することができる。粉砕には、ホモジナイザー、ウィレー粉砕機、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル、ブレンダー)等が使用でき、材料同士の凝集を防ぐため冷却しながら粉砕することが好ましい。造粒には、押出機、ルーダー、コニーダー等を用いてペレット化する方法、あるいはパン型造粒機等を使用する。
(硬化性組成物の成形)
得られた硬化性組成物は、厚み精度の良い硬化物を得るために、押出機、ロール、カレンダー等を用いて硬化が始まらない温度で所定の厚み、幅のシートに一度成形する。より厚みを精度良く成形するためには、押出機で成形後、ロールやカレンダーで圧延することが好ましい。シート中のボイドやエアーをなくすためには、真空状態で押出成形することが好ましい。
得られたシートは目的の大きさにカットまたは、打ち抜き、そのシートを両面溝付きの金型内に1枚、または2枚以上並列に並べるか、重ねて挿入し、圧縮成形機で熱硬化することによって、硬化物を得る。欠陥のない良品を得るためには、硬化の際にキャビティ内を真空にすることが好ましい。硬化後は製品の反りを矯正するために、10〜50℃に制御された押さえ板で、3MPa以上で加圧して冷却することが好ましい。
(硬化)
硬化の条件としては、組成物の種類に応じて最適温度を選定、探索することができる。例えば、120〜250℃の温度範囲で、30〜1800秒間という範囲で適宜決定することができる。また、硬化後、150〜250℃の温度範囲で10〜600分間アフターキュアーを施すことによって完全な硬化を実施し得る。アフターキュアーは5MPa以上に加圧して行うことによって製品の反りを抑制できる。
(耐熱水性導電性硬化物の物性)
上記のようにして硬化された本発明の耐熱水性導電性硬化物は、ガラス転位温度(以下「Tg」ということもある。)が160℃以上であることが好ましい。より好ましくは170℃以上であり、更に好ましくは180℃以上である。Tgが160℃より低いと、得られた硬化物が充分な耐熱性を有し難くなる傾向がある。
Tgの測定は、島津製作所(株)製のサーモアナライザー(TMA−50)を用いてTMA法で測定を行う。試験片のサイズは、3×3×5(mm)を用い、窒素を50mL/min.の雰囲気下で、昇温速度5℃/min.で30℃から250℃までの線膨張係数を測定し、その不連続点を求めることにより決定した。
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、曲げ強度が30MPa以上であることが好ましい。より好ましくは35MPa以上であり、更に好ましくは40MPa以上である。曲げ強度が30MPaより小さいと得られた硬化物が充分な強度を有し難くなる傾向がある。曲げ強度の測定は、JIS K 6911に規定されている方法で測定する。具体的には、試験片(80mm×10mm×4mm)をスパン間隔64mm、曲げ速度2mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定する。
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、体積固有抵抗が2×10-2Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは8×10-3Ωcm以下であり、更に好ましくは5×10-3Ωcm以下である。体積固有抵抗が2×10-2Ωcmより大きいと、充分な導電性が得られず、好ましくない。体積固有抵抗は、JIS K 7194に準拠した四探針法で測定する。
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、接触抵抗が2×10-2Ωcm2以下であることが好ましい。より好ましくは1×10-2Ωcm2以下であり、更に好ましくは7×10-3Ωcm2以下である。接触抵抗は2×10-2Ωcm2より大きいと、充分な導電性が得られ難い傾向がある。接触抵抗値は、試験片(20mm×20mm×2mm)と炭素板(1.5×10-3Ωcm、20mm×20mm×1mm)を接触させ、それを二つの銅板ではさみ、98Nの荷重を加える。そして、1Aの定電流を貫通方向に流して、試験片と炭素板の界面にプラスとマイナスの端子を接触させて電圧を測定することによって抵抗値を計算し、その値に接触している断面積を積算して接触抵抗値とする。
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、熱伝導率が1.0W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは4.0W/m・K以上であり、更に好ましくは10W/m・K以上である。熱伝導率が1.0W/m・Kより小さくなると、材料の放熱性が悪くなり、使用中に高温になるため好ましくない。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法(t1/2法、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置 LF/TCM FA8510B 理学電気社製)により、試験片(φ10mm、厚さ 1.7mm)を温度80℃、真空中、照射光ルビーレーザー光(励起電圧2.5kV)の条件で測定できる。
(耐熱水性)
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、耐熱水性を高くできることが特徴である。耐熱水性の指標としては、例えば吸水率や質量変化率が挙げられる。これらは、JIS K 7202に準拠した方法で測定できる。
例えば、一定の大きさの試験片を耐圧容器に入れ、一定容量の蒸留水中を加え、一定温度のオーブン中で一定時間の試験を行い、試験前後の試験片の質量変化を測定することにより求めることができる。
本発明の耐熱水性導電性硬化物は、試験片のサイズが30mm×30mm×3mmで、50mlの蒸留水を加えた状態で、180℃で168hr試験後の質量変化率が−1.5〜+1.5%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、−1.0〜+1.0%の範囲内である。
質量変化率が、−1.5%より少なくなるか、あるいは+1.5%より大きくなると、長時間使用したときの質量変化が大きくなり、成形品の寸法が大きく変化し、好ましくない。また、質量変化率が−1.5%より少なくなると、材料が劣化し、ヒビや割れが多くなり、特に好ましくない。
本発明における導電性硬化物は、曲げ強度(破断時)と曲げ歪み(破断時)の良好なバランスを保つことが好ましい。曲げ強度のみが大きい硬化物は、脆い材料となる。また、歪みのみが大きい硬化物は、強度に劣る。したがって、曲げ強度と歪みのバランスがとれた硬化物を作成することが望ましい。このような観点からも、本発明における硬化性組成物を用いて得られる耐熱水性導電性硬化物は、曲げ強度と歪みのバランスのとれた優れた性能を示す。
(硬化物のホウ素含有量)
本発明における耐熱水性導電性硬化物は、0.1ppm以上のホウ素を含有することが好ましい。より好ましくは0.5ppm以上であり、更に好ましくは1ppm以上である。ホウ素の含有量が0.1ppm未満では、高い導電性が得られ難くなる傾向がある。ホウ素量の測定方法は炭素質材料(B)の場合と同様である。但し、ICP−MS法を用いる。
(耐熱水性導電性成形体)
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体において、流通するガスとしては空気、酸素、水素、窒素、水蒸気等があげられる。またガスの流路の形状、サイズは成形体の用途や大きさにより適宜設定することができる。本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、Tgが160℃以上であることが好ましい。より好ましくは170℃以上であり、更に好ましくは180℃以上である。Tgが160℃より低いと、得られた成形体が充分な耐熱性を有し難くなる傾向がある。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、曲げ強度が30MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、35MPa以上であり、更に好ましくは40MPa以上である。曲げ強度が30MPaより小さいと得られた成形体が充分な強度を有し難くなる傾向がある。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、体積固有抵抗は2×10-2Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは8×10-3Ωcm以下であり、更に好ましくは5×10-3Ωcm以下である。体積固有抵抗が2×10-2Ωcmより大きいと、充分な導電性が得られず、好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、接触抵抗は2×10-2Ωcm2以下であることが好ましい。より好ましくは1×10-2Ωcm2以下であり、更に好ましくは7×10-3Ωcm2以下である。接触抵抗は2×10-2Ωcm2より大きいと、成形体は充分な導電性が得られず、好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、熱伝導率が1.0W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは4.0W/m・K以上であり、更に好ましくは10W/m・K以上である。熱伝導率が1.0W/m・Kより小さくなると、材料にかかる負担が大きくなり好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、0.1ppm以上のホウ素を含有することが好ましい。より好ましくは0.5ppm以上であり、更に好ましくは1ppm以上である。ホウ素の含有量が0.1ppm未満では、高い導電性が得られ難くなる傾向がある。
本発明のセパレータの流路の形状、サイズは、セパレータ自体のサイズ、形状、ガスの流量等に応じて適宜設定すればよい。一般的には流路の断面は長方形であり、深さは0.5mm前後、幅は1.0mm前後であるが、これらに限定されるものではない。本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、Tgが160℃以上であることが好ましい。より好ましくは170℃以上であり、更に好ましくは180℃以上である。Tgが160℃より低いと、得られた燃料電池セパレータが充分な耐熱性を有し難くなる傾向がある。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、曲げ強度が30MPa以上であることが好ましい。より好ましくは35MPa以上であり、更に好ましくは40MPa以上である。曲げ強度が30MPaより小さいと得られた燃料電池セパレータが充分な強度を有し難くなる傾向がある。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、体積固有抵抗は2×10-2Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは8×10-3Ωcm以下であり、更に好ましくは5×10-3Ωcm以下である。体積固有抵抗が2×10-2Ωcmより大きいと、充分な導電性が得られず、好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、接触抵抗は2×10-2Ωcm2以下であることが好ましい。より好ましくは1×10-2Ωcm2以下であり、更に好ましくは7×10-3Ωcm2以下である。接触抵抗は2×10-2Ωcm2より大きいと、燃料電池セパレータは充分な導電性が得られず、好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、熱伝導率が1.0W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは4.0W/m・K以上であり、更に好ましくは10W/m・K以上である。熱伝導率が1.0W/m・Kより小さくなると、材料の放熱性が悪くなり、使用中に高温になるため好ましくない。また、燃料電池セパレータの発熱のために、運転温度を一定に保つコントロールが難しくなり好ましくない。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池セパレータは、0.1ppm以上のホウ素を含有することが好ましい。より好ましくは0.5ppm以上であり、更に好ましくは1ppm以上である。ホウ素の含有量が0.1ppm未満では、高い導電性が得られ難くなる傾向がある。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体は、本発明の硬化性組成物を一般の熱硬化性樹脂の成形法で硬化、成形することで得ることができる。
(燃料電池セパレータの製造方法)
燃料電池セパレータの製造方法は特に制限されない。この製造方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。より好ましくは、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にして成形する。
本発明の両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池用セパレータは、本発明の硬化性組成物を一般の熱硬化性樹脂の成形法で硬化、成形することで得ることができる。ガスを流すための流路は本発明の硬化性組成物を一旦硬化させた後、機械加工により、当該流路(溝等)を形成してもよい。また、ガス流路の反転形状を有する金型を使用し圧縮成形等によって、硬化性組成物の硬化とガス流路形成を同時に行ってもよい。
燃料電池用セパレータの製造方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。より好ましくは、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にして成形する。
圧縮成形において成形サイクルを挙げるには、多数個取り金型を用いることが好ましい。更に好ましくは、多段プレス(積層プレス)方法を用いると小さな出力で多数の製品を成形できる。平面状の製品で面精度を向上させるためには、一度未硬化のシートを成形してから圧縮成形することが好ましい。
射出成形においては、更に成形性を向上させる目的で、炭酸ガスを成形機シリンダーの途中から注入し、材料中に溶かし込んで超臨界状態で成形することができる。製品の面精度を挙げるには、射出圧縮方法を用いることが好ましい。射出圧縮法としては、金型を開いた状態で射出して閉じる方法、金型を閉じながら射出する方法、閉じた金型の型締め力をゼロにして射出してから型締め力をかける方法等を用いる。
金型温度は組成物の種類に応じて最適温度を選定、探索することが重要である。例えば、120〜250℃の温度範囲で、30〜1800秒間という範囲で適宜決定することができる。また、硬化後、150〜250℃の温度範囲で10〜600分間アフターキュアーを施すことによって完全な硬化を実施し得る。アフターキュアーは5MPa以上に加圧して行うことによって製品の反りを抑制できる。
本発明における硬化性組成物は、モールド成形が容易なため、厚み精度を要求される分野の複合材料として最適である。更に、その硬化体は、黒鉛の導電性や熱伝導性を限りなく再現でき、耐熱性、耐熱水性、耐食性、成形精度に優れる点で極めて高性能なものが得られる。これらの硬化性組成物ないし硬化体の用途は特に制限されないが、該用途の具体例としては、燃料電池用セパレータ、電極、電磁波シールド、放熱材料、電池用集積体、電子回路基板、抵抗器、ヒーター、集塵フィルタエレメント、電池用集積体、面状発熱体、電磁波材料等を挙げることができる。
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。
以下の実施例において用いた材料を、以下に示す。
(A)成分:炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物
<A−1>
1,2−ポリブタジエン(日本曹達(株)製 B−1000(分子量:1,000、1,2−結合:90%、45℃における粘度:1.0Pa・s))280gを1,000mlオートクレーブに仕込み、反応器内を窒素により置換した後、反応容器を30℃に維持し、フッ素/窒素混合ガス(フッ素濃度:7.0%)を3.0L/hの流量で導入した。反応器内の圧力は常圧に維持し、排気ラインより窒素、未反応のフッ素、および副生するフッ化水素を10%−ヨウ化カリウム水溶液を通した後、排出した。27時間反応を継続した後、反応器内を窒素により置換した。内容物をトルエン1000mlに溶解し、分液ロートを用いて水100mlで5回洗浄した。溶媒を減圧留去し、部分フッ素化1,2−ポリブタジエンを得た。部分フッ素化率は元素分析により算出した。部分フッ素化1,2−ポリブタジエン約10mgを精秤し、酸素フラスコ燃焼法にて酸素気流下で燃焼させた。発生ガスを純水で200mLに定容し、陰イオンクロマトグラフィー法にてフッ素量を測定した。得られた部分フッ素化1,2−ポリブタジエンのフッ素含有量は1.4%であった。
(B)成分:炭素質材料
<B−1>:ホウ素含有黒鉛微紛
非針状コークスである新日鉄化学(株)製LPC−Sコークス(以下「コークスA」という。)をパルベライザー〔ホソカワミクロン(株)製〕で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により所望の粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用い、気流分級を行った。この調整した微粉砕品の一部14.4kgに炭化ホウ素(B4C)0.6kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。これを内径40cm、容積40リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れてアルゴンガス雰囲気下2900℃の温度で黒鉛化した。これを放冷後、粉末を取り出し、14kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒径20.5μm、B含有量1.3質量%であった。
<B−2>:ホウ素を含有しない黒鉛微紛
コークスAをパルベライザーで2〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミルで微粉砕した。その後、分級により所望の粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアーを用い、気流分級を行った。これを内径40cm、容積40リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて2900℃の温度で黒鉛化した。これを放冷後、粉末を取り出し黒鉛微粉を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒径20.5μm、B含有量0wt%であった。
<B−3>:気相法炭素繊維
気相法炭素繊維(以下、「VGCF」と略す。昭和電工登録商標。)は、昭和電工(株)製 VGCF−G(繊維径0.1〜0.3μm、繊維長10〜50μm)を用いた。
<B−4>: カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略す。)は以下の方法で得た。
直径6mm、長さ50mmのグラファイト棒に、先端から中心軸に沿って直径3mm、深さ30mmの穴をあけ、この穴にロジウム(Rh):白金(Pt):グラファイト(C)を質量比率1:1:1の混合粉末として詰め込み、陽極を作製した。一方、純度99.98質量%のグラファイトからなる、直径13mm、長さ30mmの陰極を作製した。これらの電極を反応容器に対向配置し、直流電源に接続した。そして、反応容器内を純度99.9体積%のヘリウムガスで置換し、直流アーク放電を行った。その後、反応容器内壁に付着した煤(チャンバー煤)と陰極に堆積した煤(陰極煤)を回収した。反応容器中の圧力と電流は、600Torrと70Aで行った。反応中は、陽極と陰極間のギャップが常に1〜2mmになるように操作した。
回収した煤は、水とエタノールが質量比で1:1の混合溶媒中に入れ超音波分散させ、その分散液を回収して、ロータリエバポレーターで溶媒を除去した。そして、その試料を陽イオン界面活性剤である塩化ベンザルコニウムの0.1%水溶液中に超音波分散させた後、5000rpmで30分間遠心分離して、その分散液を回収した。更に、その分散液を350℃の空気中で5時間熱処理することによって精製し、繊維径が1〜10nm、繊維長が0.05〜5μmのカーボンナノチューブを得た。
(C)成分:炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物
<C−1>
1,2−ポリブタジエン:JSR(株)製 RB−810(150℃、21.2Nにおけるメルトインデックス:3g/10min.、1,2−結合:90%)
<C−2>
末端変性ポリブタジエン:日本曹達(株)製 TE−2000(末端メタクリル変性品、50℃における粘度:54.9Pa・s、1,2−結合:90%以上)
(D)成分:反応性モノマー
<D−1>
ジビニルベンゼン:新日鐵化学(株)製 DVB−960(ジビニルベンゼン含有率95〜97%品)
<D−2>
スチレン:和光純薬工業(株)製 特級
<硬化開始剤>
ジクミルパーオキサイド:日本油脂(株)製 パークミルD
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン:日本油脂(株)製 パーヘキサ25B
<熱硬化性樹脂>
フェノール樹脂:昭和高分子(株)製レゾール樹脂 BRL−274
ビニルエステル樹脂:昭和高分子(株)製 VR−77
以下の表1に各実施例、比較例における炭素質材料以外の組成(質量比)、表2に硬化性組成物の組成(質量比)を示した。
Figure 2005336478
Figure 2005336478
実施例1〜実施例7、比較例1
上記の表1、表2に示した組成の原材料をニーダーを用いて温度90℃で10分間混練した。その混練物を100mm×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて金型170℃、圧力30MPaで12分間加圧加熱し、硬化させて硬化物を得た。
比較例2
上記の表1、表2に示した組成の原材料をニーダーを用いて、温度90℃で10分間混練した。その混練物を100×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成型機を用いて金型120℃、圧力30MPaで15分間加圧加熱し、硬化させて硬化体を得た。
上記実施例および比較例で得られた硬化体の物性測定結果を表3に示す。
Figure 2005336478
硬化物の物性の測定方法を以下に示す。
体積固有抵抗は、JIS K 7194に準拠し、四探針法により測定した。
曲げ強度および曲げ歪みは、島津製作所(株)製のオートグラフ(AG−10kNI)を用いて測定を行った。JIS K 6911法で、試験片(80mm×10mm×4mm)をスパン間隔64mm、曲げ速度2mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
ガラス転位温度は、島津製作所(株)製のサーモアナライザー(TMA−50)を用いてTMA法で測定を行った。試験片のサイズは、3×3×5(mm)を用い、窒素を50mL/min.の雰囲気下で、昇温速度5℃/min.で30℃から250℃までの線膨張係数を測定することにより求めた。
耐熱水性の測定は、JIS K 7209に準拠し、試験片(30mm×30mm×3mm)をフッ素樹脂製の容器に入れ、蒸留水を50ml加え、SU316L製の耐圧容器に入れ、180℃のオーブン内で回転させながら168hr試験を行った。試験前後の質量を測定し、質量変化率を算出した。
成形性(円盤フローテスト)は、組成物10gを160℃に調整されたプレス機へ投入し、18t荷重をかけたときの材料が広がり(直径、mm)を評価した。
表3に示すように、本発明における硬化性組成物を用いて得られた硬化物および成形体は、耐熱水性、耐熱性、機械強度、導電性に優れ、また、成形時の流動性も良好であった。
実施例8
実施例1で用いた組成物を、280×200×1.5mmのサイズで1mmピッチの溝が両面にできる平板を成形できる金型に投入し、500t圧縮成形機を用いて、金型温度170℃、60MPaの加圧下で10分間硬化して両面溝付きの燃料電池用セパレータ形状の平板(図2)を得た。
炭素質材料粉末の電気比抵抗の測定法を示す模式断面図である。 実施例8で作製した燃料電池用セパレータ形状の平板を示す模式平面図である。
符号の説明
1 銅板からなる電極
2 樹脂からなる圧縮ロッド
3 受け台(樹脂製)
4 側枠(樹脂製)
5 試料(炭素質材料粉末)
6 電圧測定端子

Claims (21)

  1. 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物にフッ素原子が結合した化合物(A)及び炭素質材料(B)を少なくとも含む硬化性組成物。
  2. 更に、炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物(C)を含む請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 更に(D)反応性モノマーを含む請求項1または2に記載の硬化性組成物。
  4. 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  5. 側鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体が、主鎖は飽和しているモノマー単位を60モル%以上含有する請求項4に記載の硬化性組成物。
  6. 側鎖に炭素−炭素二重結合を有し、主鎖は飽和しているモノマー単位を60モル%以上含有する重合体が、ジエン化合物を主モノマーとして重合されたものである請求項5に記載の硬化性組成物。
  7. ジエン化合物がブタジエン、ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項6に記載の硬化性組成物。
  8. 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、1,2−ポリブタジエン及び/または3,4−ポリイソプレンである請求項1に記載の硬化性組成物。
  9. 炭素−炭素二重結合を複数個有する炭化水素化合物が、下記式(1)または式(2):
    Figure 2005336478
    のモノマー単位を60モル%以上含む重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。
  10. 炭素質材料(B)が、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブからなる群から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせである請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  11. 炭素質材料(B)が、その嵩密度が1g/cm3となるように加圧された状態において、加圧方向に対して直角方向の粉末電気比抵抗が0.1Ωcm以下であるものである請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  12. 炭素質材料(B)が0.05〜10質量%のホウ素を含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる耐熱水性導電性硬化物。
  14. 硬化物のガラス転位温度が160℃以上、JIS K 6911による曲げ強度が30MPa以上である請求項13に記載の耐熱水性導電性硬化物。
  15. 30mm×30mm×3mmの試験片を180℃、168時間で耐熱水性試験を行ったときの質量変化率が、−1.5〜+1.5%である請求項13または14に記載の耐熱水性導電性硬化物。
  16. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする、両面または片面にガスを流すための流路が形成された耐熱水性導電性成形体。
  17. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化、成形して得られる両面または片面にガスを流すための流路が形成された燃料電池用セパレータ。
  18. ガラス転位温度が160℃以上、JIS K 6911における曲げ強度が30MPa以上であって、且つ30mm×30mm×3mmの試料片を180℃、168時間で耐熱水性試験を行ったときの質量変化率が、−1.5〜+1.5%である、請求項17に記載の燃料電池用セパレータ。
  19. 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形または射出圧縮成形のいずれかの方法により製造された、請求項13に記載の耐熱水性導電性成形体の製造方法。
  20. 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形または射出圧縮成形のいずれかの方法により製造された、請求項17に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  21. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる燃料電池セパレータ用硬化性組成物。
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