JP2005336316A - 塗料組成物及びフッ素樹脂含有積層体 - Google Patents

塗料組成物及びフッ素樹脂含有積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まないクロムフリープライマーであって、耐蝕性及び被塗装物との耐熱密着性を向上することができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】 アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)とからなる塗料組成物であって、前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)との合計の1〜16質量%であることを特徴とする塗料組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、塗料組成物及びフッ素樹脂含有積層体に関する。
フッ素樹脂は、例えば、塗料組成物に調製し、耐蝕性、非粘着性、耐熱性等が要求される被塗装物に塗装してフッ素樹脂層を形成させることにより、パン金型、炊飯釜等の用途に幅広く利用することができる。しかしながら、フッ素樹脂は、その非粘着性ゆえに、金属、セラミック等からなる被塗装物との密着性に乏しいので、フッ素樹脂とも被塗装物とも親和性を有するプライマーを予め被塗装物に塗装することが行われてきた。
フッ素樹脂層は、一般に耐蝕用途においては厚くする必要があり、厚くするためには、フッ素樹脂からなる塗料組成物を塗布してフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成することよりなる塗装を繰り返して重ね塗りをする必要がある。プライマーは、この長時間の高温での焼成に耐えて被塗装物等との密着性を維持し得る耐熱密着性を有することが求められる。
耐熱密着性に優れたプライマーとして、今日まで、長時間の高温焼成に優れた耐性を有するリン酸クロム系プライマーが幅広く用いられてきた。しかしながら、環境問題への意識が高まり、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まずリン酸クロム系プライマーに匹敵する強い耐熱密着性を有するクロムフリープライマーの開発が長年強く要望されていた。
クロムフリープライマーとして、従来、フッ素樹脂と各種バインダー樹脂との組み合わせが検討されてきた。バインダー樹脂としては、耐熱性の点からポリフェニレンサルファイド〔PPS〕の使用が提案された。
PPSは、ポリマー鎖末端に一般式:−Ph−Y′(式中、Phはフェニレン基を表し、Y′はチオラート基〔−SM;Mはアルカリ金属を表す。〕又はハロゲン原子を表す。)で表される基を有する(例えば、特許文献1参照)。
PPSを用いたプライマー塗膜には、しかしながら、(1)耐熱水性不充分、(2)塗膜に水の浸透があれば末端−SMのM(Na等)がイオン化して金属基材が腐蝕しやすい、(3)例えば半導体製造装置における配管材料等、汚染を嫌う薬液等の流体に塗膜を接触させて使用する用途において、塗膜から金属が溶出する等の問題がある。
従来のPPSの代わりにポリマー鎖末端を−SH又は−Hに変性したPPSを用いたプライマー組成物が提案されている。この組成物としては、この末端変性PPSのほかに、フッ素樹脂、並びに、PAI及び/又はPIをも含むものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この組成物は、[PAI及び/又はPI]:末端変性PASを、質量基準で、好ましくは5:1〜1:50、より好ましくは3:1〜1:20とするものであり、本質的には末端変性PPSを比較的多く添加するものである。
米国特許第3354129号明細書 国際公開第03/29370号パンフレット(第11、12頁等)
本発明の目的は、上記現状に鑑み、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まないクロムフリープライマーであって、耐蝕性及び被塗装物との耐熱密着性を向上することができる塗料組成物を提供することにある。
本発明は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)とからなる塗料組成物であって、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)との合計の1〜16質量%であることを特徴とする塗料組成物である。
本発明は、被塗装物(1)、上記被塗装物(1)上に上記塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜(2)、及び、フッ素樹脂層(3)からなるフッ素樹脂含有積層体であって、上記フッ素樹脂層(3)は、フッ素樹脂(E)からなるものであり、上記被塗装物(1)、上記塗膜(2)及び上記フッ素樹脂層(3)は、この順に積層していることを特徴とするフッ素樹脂含有積層体である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)(以下、「末端変性PAS樹脂(B)」ということがある。)とからなるものである。
本発明の塗料組成物は、被塗装物に塗装することにより塗膜を得るものである。
本明細書において、「塗装」とは、被塗装物等の塗装対象物に塗布し、必要に応じて乾燥し、次いで焼成することよりなる一連の工程を意味する。
上記焼成は、本発明の塗料組成物中の主要な高分子成分の融点以上の温度で加熱することである。
上記加熱の温度は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、末端変性PAS樹脂(B)、及び、所望により用いる後述のフッ素樹脂(D)の各融点等によって異なる。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)である。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、通常、アミド基(−NH−C(=O)−)を主鎖又は側鎖に有し、芳香環を主鎖に有するポリマーである。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、ポリアミドイミド〔PAI〕、ポリアミド、及び/又は、ポリアミド酸(ポリアミック酸)であることが好ましい。
上記PAIは、アミド基と芳香環とイミド基とを有する重縮合体である。上記PAIとしては特に限定されず、例えば、従来公知のPAIの他にも、ポリイミド〔PI〕を酸化することによりアミド基を導入したもの等を用いることができる。
上記ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有する重縮合体である。上記ポリアミドとしては特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド;ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。
上記ポリアミド酸は、アミド基と、カルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体とを有する重縮合体である。上記ポリアミド酸としては特に限定されず、分子量が数千〜数万であるポリアミド酸等が挙げられる。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、本発明の塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものである。
上記「塗料組成物を塗装する際の焼成」は、本発明の塗料組成物を後述のプライマー組成物として用い、次いで上塗り塗料を塗装する場合、(i)このプライマー組成物を塗布した後、上記上塗り塗料を塗装する前に通常行う「焼成」、(ii)上記(i)の焼成の後、上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」、又は、(iii)上記(i)の焼成を行わずに上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」に該当し、本発明の塗料組成物を後述のワンコート法に用いる場合、(iv)上記塗料組成物を塗布した後の「焼成」に該当するが、(i)〜(iv)の何れの焼成をも含み得る概念である。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、上述のように、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであり、この焼成において上記アミド基含有ポリマー(a1)が有する芳香環が通常変化しないので、芳香環を有しているものであるが、本発明の塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においては、アミド基は有していないものである。
本明細書において、上記塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においてアミド基を有しており、更に芳香環をも有している高分子化合物は、上述のアミド基含有性ポリマー(a1)に該当する。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)としては、本発明の塗料組成物を塗布し焼成することにより上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであれば特に限定されず、例えば、PI等であってもよい。
上記PIは、本発明の塗料組成物を塗布し長時間高温で焼成する際に酸化させて主鎖にアミド基を導入することができる。
上記PIにアミド基を導入して得られたアミド基含有ポリマー(a1)は、PAI又はポリアミド酸であり、PAIであるためには、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基に変換したものでなければよく、ポリアミド酸は、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基と、カルボキシル基とに変換したものである。
上記PIにアミド基を導入する方法としては特に限定されず、例えば、PIのイミド基(イミド環)を酸化によって開環する方法、PIのイミド基(イミド環)にアルカリを作用させ加水分解する方法等が挙げられる。
本明細書において、アミド基を導入することとなる分子構造上の部位、例えば、上述の酸化によりアミド基に変化するイミド基等を、アミド基導入部位ということがある。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるものである。
上記「アミド基を有することとなる」とは、本発明の塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点で上記アミド基含有性高分子化合物(A)が必ずしもアミド基を有していなくともよいが、上述の塗料組成物を塗装する際の焼成により化学変化を起こしてこの焼成が終了する前にアミド基が導入されることを意味する。
本明細書において、上記「アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなる」は、本発明の塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点において、アミド基を有しアミド基導入部位を有しないもの、アミド基を有さずアミド基導入部位を有するもの、アミド基を有しかつアミド基導入部位を有するもの、の何れをも含み得る概念である。即ち、本発明の塗料組成物は、上述のアミド基含有ポリマー(a1)とアミド基含有ポリマー前駆体(a2)との両方を含むものであってもよいし、何れか一方のみを含むものであってもよい。
上記末端変性PAS樹脂(B)は、ポリアリレンサルファイド樹脂(以下、「被処理PAS樹脂」ということがある。)に酸処理を行うことにより得られるものである。
本発明の塗料組成物は、上記末端変性PAS樹脂(B)を含有することにより、塗装して得られる塗膜と被塗装物との密着性と耐熱水性とを向上させることができ、また、被塗装物の耐蝕性を向上させることができる。
上記被処理PAS樹脂は、分子鎖中にアリレン基とスルフィド基とを有する芳香族ポリマーである。
本明細書において、「アリレン」とは、aryleneを意味し、allyleneを意味しない。
本明細書において、上記アリレン基とは、芳香族炭化水素の2価基を意味し、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、p,p’−ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、これらのアリレン基は、置換基を有しているものであってもよい。
上記置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、−F、−Cl、−Br、−I等が挙げられる。上記置換基は、アリレン基を構成する芳香環に1〜4個結合しうる。
上記置換基を有しているアリレン基としては、例えば置換フェニレン基等が好ましい。
上記アリレン基としては、フェニレン基が好ましい。
上記被処理PAS樹脂において、主鎖は、アリレン基及びスルフィド基に加え、ケトン基、スルホン基、エーテル基等の官能基からなるものであってもよい。
上記被処理PAS樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
上記被処理PAS樹脂としては、例えば、下記一般式(I)
−(Ar−S)− (I)
(式中、Arは、アリレン基を表す。以下、同様。)で表される繰り返し単位を有するポリアリレンスルフィド、下記一般式(II)
−(Ar−CO−Ar−S)− (II)
で表される繰り返し単位を有するポリアリレンケトンスルフィド、下記一般式(III)
−(Ar−CO−Ar−CO−S)− (III)
で表される繰り返し単位を有するポリアリレンケトンケトンスルフィド、下記一般式(IV)
−(Ar−SO−Ar−S)− (IV)
で表される繰り返し単位を有するポリアリレンスルホンスルフィド等、特開平7−118389号公報に記載されているものを挙げることができる。
上記被処理PASを製造するための方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法等を用いることができる。
上記被処理PAS樹脂は、酸処理を行うことにより、被処理PAS樹脂を構成するポリマーが有する−SCl、−SNa等の末端基(以下、「被処理末端基」ということがある。)を、通常、−SH又は−Hに変換することができる。
上記酸処理は、上記被処理末端基の全てを変性させるものであってもよいが、上記被処理末端基の少なくとも一部を変性させるものであればよく、経済性、処理効率等の工業性を考慮して処理条件を適宜調整することができる。
上記酸処理に用いることができる酸としては、上記被処理末端基を、少なくとも、−SH又は−Hに変換することができる酸であれば特に限定されず、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸及びそれらの酸無水物;アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸及びそれらの酸無水物;安息香酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;蓚酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸及びそれらの酸無水物;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸等の無機酸が例示される。
上記酸処理の方法としては特に限定されず、例えば、塩酸処理によりメルカプト基〔−SH〕又は水素原子に変換させる方法、特開平7−118389号公報に開示されている有機溶剤/水の特定量混合溶媒中で行う方法等が挙げられる。
末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)は、被塗装物との密着性、入手容易性等の点から、ポリマー鎖末端に下記一般式(1)
−Ar−Y (1)
(式中、Arは、アリレン基を表し、Yは、−SH又は−Hを表す。)で表される基を有するものであることが好ましい。
本明細書において、上記「ポリマー鎖末端に下記一般式(1)で表される基を有する」とは、ポリマー鎖末端の少なくとも一部に上記一般式(1)で表される基を有することを意味する。従って、上記末端変性PAS樹脂(B)は、ポリマー鎖末端の全てに上記一般式(1)で表される基を有するものであってもよいし、ポリマー鎖末端に上記一般式(1)で表される基と、上述の被処理末端基とを有するものであってもよい。即ち、上記末端変性PAS(B)は、被処理末端基の全てが変性したものである必要は必ずしもなく、本発明の効果を奏することができる範囲内で上記被処理末端基の少なくとも一部が変性したものであればよい。
上記末端変性PASとしては、数平均分子量が10000〜100000であるものが好ましい。10000未満であると、耐熱性や被塗装物との密着性が不充分となる場合があり、100000を超えると、塗料組成物の粘度が上昇し、塗装作業性が悪化する場合がある。より好ましい下限は、20000であり、より好ましい上限は、50000である。
末端変性PAS樹脂(B)からなる粒子は、平均粒子径が150μm以下であることが好ましい。150μmを超えると、塗料組成物中での分散性に劣る場合がある。
上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、0.1μm以上であってもよい。上記平均粒子径は、より好ましい下限が1μmであり、より好ましい上限が100μmである。
上記末端変性PAS樹脂(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記末端変性PAS樹脂(B)との合計の0.1〜16質量%である。0.1質量%未満であると、得られる塗膜の耐熱性と、金属等の被塗装物に対する密着性とが低下する場合があり、16質量%を超えると、高温下で上記塗膜の熱水処理後の密着性が低下する場合がある。
上記末端変性PAS樹脂(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記末端変性PAS樹脂(B)との合計の1質量%以上であることが好ましく、また、上記合計の13質量%以下であることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、被塗装物との密着性を向上させる点で、更に、窒素含有化合物(C)を含有するものであってもよい。
上記窒素含有化合物(C)は、被塗装物が酸化膜を形成しやすい酸化膜速形成性金属からなるものである場合、特に好ましい。
本明細書において、上記「窒素含有化合物」は、分子中に窒素原子を有する化合物であって、上記アミド基の酸化及び被塗装物の酸化をともに抑制し得るものである。
本明細書において、上記酸化膜速形成性金属は、上記塗料組成物を塗布する時点で既に酸化膜を形成している金属である。
上記酸化膜速形成性金属としては、ステンレス、銅、銅合金等が挙げられる。
上記窒素含有化合物(C)としては、アミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、窒素硫黄含有化合物等が挙げられる。
上記アミン系化合物は、アミノ基を有する化合物であって、上記アミノ基が金属塩等の塩を形成していてもよいものである。
上記アミン系化合物としては特に限定されないが、250℃以上での高温安定性が望まれる点で、芳香族アミン類であることが好ましい。
上記芳香族アミン類としては、フェニル基及び/又はナフチル基を有するものが好ましく、フェニル基及び/又はナフチル基を有する芳香族アミン類としては特に限定されず、例えば、ジナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系化合物は、ベンゾトリアゾールを基本骨格とする化学構造を有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記ベンゾトリアゾール系化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−テトラオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記窒素硫黄含有化合物は、窒素原子と硫黄原子とを有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記窒素硫黄含有化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾチアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チオ尿素類等が挙げられる。
上記ベンゾチアゾール系化合物としてはベンゾチアゾールを基本骨格とする化合物であれば特に限定されず、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾールジスルフィド、2−(N,N′−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。
上記スルフェンアミド系化合物としては、スルフェンアミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、N,N′−シクロヘキシル−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド等が挙げられる。
本明細書において、上記スルフェンアミド系化合物は、スルフェンアミド基を有するとともに、ベンゾチアゾールを基本骨格とする構造部分を有する化合物をも含む概念である。
上記チオ尿素類としては窒素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が炭素数1〜6の飽和又は不飽和の炭化水素基に置換されていてもよいチオ尿素が好ましく、このようなチオ尿素類としては特に限定されず、例えば、N,N′−ジエチルチオ尿素、N,N′−ジブチルチオ尿素、チオ尿素、N,N′−ジフェニルチオ尿素等が挙げられる。
上記窒素含有化合物(C)としては、ベンゾチアゾール系化合物が好適に用いられ、ベンゾチアゾール系化合物のなかでも特に、亜鉛との塩である亜鉛系酸化防止剤が好適に用いられる。
上記末端変性PAS樹脂(B)と上記窒素含有化合物(C)とを組み合わせて用いる場合、上記末端変性PAS樹脂(B)と上記窒素含有化合物(C)とは、質量比で、末端変性PAS樹脂(B):窒素含有化合物(C)=50:50〜99:1となるように組み合わせることが好ましく、末端変性PAS樹脂(B):窒素含有化合物(C)=70:30〜90:10であることがより好ましい。
上記末端変性PAS樹脂(B)と上記窒素含有化合物(C)との合計質量は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、上記末端変性PAS樹脂(B)及び上記窒素含有化合物(C)の合計の0.1〜16質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。16質量%を超えると、初期密着力及び熱水処理後の密着力が低下しやすい。より好ましい下限は、1質量%であり、より好ましい上限は、13質量%である。
本発明の塗料組成物は、更に、フッ素樹脂(D)からなるものであってもよい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(D)を加えたものである場合、塗装することにより、フッ素樹脂(D)を主成分とする第1層、並びに、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び末端変性PAS樹脂(B)を主成分とする第2層の2層構造に分かれた塗膜を形成することができる。本発明の塗料組成物は、上記フッ素樹脂(D)を含む場合、得られる塗膜上に塗装するフッ素樹脂を適宜選択することにより、上記塗膜と上記フッ素樹脂からなるフッ素樹脂層との密着性を向上させることができる。
上記2層構造に分かれた塗膜は、本明細書において、便宜上「2層構造に分かれた」というが、実際には、被塗装物近傍ほどアミド基含有性高分子化合物(A)及び末端変性PAS樹脂(B)の濃度が高く、被塗装物から離れるにつれ末端変性PAS樹脂(B)に代わってフッ素樹脂(D)の濃度が高くなり、塗膜の最表面にはフッ素樹脂(D)が高濃度で存在していると考えられる。従って、上記塗膜は、各成分の配合量によっては、フッ素樹脂(D)からなる層と、アミド基含有性高分子化合物(A)及び末端変性PAS樹脂(B)からなる層との間にアミド基含有性高分子化合物(A)及びフッ素樹脂(D)からなるいわば中間層ともいうべき層が存在する場合がある。
本発明の塗料組成物において、フッ素樹脂(D)は、塗装時の焼成の温度が300℃以上のものであることが好ましい。
上記塗装時の焼成の温度は、一般に、末端変性PAS樹脂(B)の融点かフッ素樹脂(D)の融点のうち高い方の温度以上の温度である。
上記塗装時の焼成は、上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)について上述した「塗装組成物を塗装する際の焼成」と同じものが該当し得る。
本発明の塗料組成物は、300℃以上の温度における数10時間という長時間の焼成を行った後でも被塗装物との密着力低下が起こりにくいものである。このような優れた耐熱密着性は、従来、クロム系プライマーを用いることによってのみ達成することができたものであるが、本発明の塗料組成物は、バインダー成分の役割を果たす6価クロムや6価クロム化合物を用いなくても優れた耐熱密着性を奏することができる。
上記フッ素樹脂(D)は、フッ素を有する単量体を重合して得られるポリマーからなるものである。
上記フッ素樹脂(D)としては、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕からなるフッ素含有単量体群のなかから選ばれる1種又は2種以上のフッ素含有単量体を重合することにより得られた含フッ素ポリマーからなるものであることが好ましく、この含フッ素ポリマーは、上記1種又は2種以上のフッ素含有単量体と、エチレン、プロピレン等のフッ素非含有単量体群から選ばれる1種若しくは2種以上のフッ素非含有単量体とを共重合することにより得られたものであってもよい。
上記フッ素樹脂(D)は、1種若しくは2種以上の上記ポリマーからなるものであってもよい。
上記フッ素樹脂(D)としては、耐蝕性の点でテトラフルオロエチレン系共重合体からなるものであることがより好ましい。
本明細書において、上記「テトラフルオロエチレン系共重合体」は、TFEと、上述のフッ素含有単量体群におけるTFE以外のフッ素含有単量体及び/又はフッ素非含有単量体とを重合し得られたポリマーである。上記TFE以外のフッ素含有単量体、及び、上記フッ素非含有単量体としてはそれぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
上記フッ素樹脂(D)としては、融点が上述の塗装時における焼成の温度未満であり、かつ、上述の焼成の温度において耐熱性を有するものが更に好ましい。
上記フッ素樹脂(D)としては、耐蝕性と耐熱性とを兼ね備えている点でパーフルオロ系樹脂が好ましく採用される。
上記パーフルオロ系樹脂は、通常、300℃以上の焼成温度が要求される樹脂であり、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロビニルエーテル及び/又は微量共単量体とを重合して得られるパーフルオロ系ポリマーからなるものである。上記パーフルオロオレフィンとしては特に限定されず、例えば、TFE、HFP等が挙げられる。上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
上記微量共単量体としては、上記パーフルオロオレフィンでもなくパーフルオロビニルエーテルでもないフッ素含有単量体、並びに/又は、フッ素非含有単量体を1種若しくは2種以上用いることができる。上記パーフルオロ系ポリマーの分子鎖における上記微量共単量体に由来する繰り返し単位は、上記パーフルオロ系ポリマーの全単量体単位の10モル%未満であることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、上記フッ素樹脂(D)が末端官能基を有するポリマーからなる樹脂である場合、得られる塗膜とその塗膜上に積層させるフッ素樹脂層との密着性を、更に向上させることができる。
上記末端官能基としては特に限定されず、例えば、−COOR(Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、−COF、−CONH、−CHOH、−COOM、−SO、−SO(M、M及びMは、同一又は異なり、I族原子若しくは1価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)、−SO 1/2、−SO 1/2(M及びMは、同一又は異なり、II族原子、鉄等の遷移金属、若しくは、2価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)が挙げられる。上記I族原子としては、例えば、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、上記1価の陽イオンとなることができる原子団としては、例えば、アンモニウム基等が挙げられる。上記II族原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄等が挙げられる。
上記末端官能基の量は、フッ素樹脂(D)のポリマー鎖中の炭素数100万個あたり50〜100000個の範囲であることが好ましい。50個未満であると、密着力が低下しやすく、100000個を超えると、焼成時の発泡が激しくなり、塗膜欠陥を生じやすい。フッ素樹脂(D)のポリマー鎖中の炭素数100万個あたり、より好ましい下限は、100個、更に好ましい下限は、200個であり、より好ましい上限は、50000個、更に好ましい上限は、10000個である。
上記末端官能基の量は、赤外分光光度計を用いて測定し得られる値である。
上記末端官能基を有するポリマーにおける末端官能基の量は、通常、適切な触媒、連鎖移動剤及び重合条件を選んで重合することにより調整することができる。
上記末端官能基を有するポリマーにおける官能基の量は、上記官能基を有するモノマーを重合することによって増やすことができる。
上記官能基を有するモノマーを単量体として重合し得られたフッ素樹脂(D)のポリマーを適宜酸、アルカリ等の反応試剤と反応させる事及び熱により処理する事により、上記(末端)官能基は反応試剤及び熱の作用により、化学構造の一部が変化する。
上記フッ素樹脂(D)としては、乳化重合若しくは懸濁重合で得たディスパージョン又は粉末を用いることができるほか、更に、粉砕を行い微粉化した微粉末を用いることができる。
上記フッ素樹脂(D)を粉末で用いる場合の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、後述するフッ素樹脂含有積層体を作成する際、フッ素樹脂層(3)をあまり厚くすることができず、50μmを超えると、本発明の塗料組成物を塗装して得られる塗膜の平滑性が悪くなる場合がある。薄塗り等に使用する場合、平均粒子径のより好ましい上限は、10μmである。膜厚が200μmを超えるライニング等に用いる場合、平均粒子径のより好ましい下限は、1μm、より好ましい上限は、40μmであり、更に好ましい下限は、5μmである。
本明細書において、平均粒子径は、レーザー式測定法によって測定し得られる値である。
上記フッ素樹脂(D)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と末端変性PAS樹脂(B)と上記フッ素樹脂(D)との合計の50〜90質量%であることが好ましい。50質量%未満であると、本発明の塗料組成物を塗装して得られる塗膜と、上記塗膜上に積層するフッ素樹脂層との密着性が悪くなりやすく、90質量%を超えると、上記塗膜と後述の被塗装物との密着性が悪くなりやすい。より好ましい下限は、60質量%であり、より好ましい上限は、85質量%である。
上記数値範囲は、フッ素樹脂(D)の固形分質量についての値である。上記フッ素樹脂(D)の固形分質量は、本発明の塗料組成物を調製するに際し、上記フッ素樹脂(D)を上述のようにディスパージョン等の液状物で配合する場合があるが、この場合、上記液状物中のフッ素樹脂(D)からなる粒子を取り出して得られる粉末の乾燥質量に該当する値である。
本発明の塗料組成物は、得られる塗膜の造膜性、耐蝕性等を向上する目的で、必要に応じ、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、末端変性PAS樹脂(B)、又は、フッ素樹脂(D)の何れでもないその他の200℃以上の耐熱性を有する樹脂を配合したものであってもよい。
上記その他の樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の塗料組成物は、必要に応じ、塗装作業性や得られる塗膜の性質を改善するために、添加剤類を含むものであってもよい。
上記添加剤類としては特に限定されず、例えば、レベリング剤、固体潤滑剤、顔料、光輝材、充填材、顔料分散剤、沈降防止剤、水分吸収剤、表面調整剤、チキソトロピー性付与剤、粘度調整剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、抗蝕剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
本明細書において、上記抗蝕剤は、アミド基の酸化は抑制しないが被塗装物の酸化を抑制する性質を有するものを意味する。
本発明の塗料組成物は、粉体塗料タイプ又は液状塗料タイプの何れであっても製造可能である。
本発明の塗料組成物において、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、適当な溶媒に溶解して溶液として用いてもよい。厚みが100μmを超える塗膜を形成する場合、後述のように粉体塗料タイプであることが好ましいが、本発明の塗料組成物は、被塗装物に満遍なく塗装することができる点で、液状塗料タイプであることが好ましい。
上記液状塗料タイプとしては、本発明の塗料組成物における各成分が被塗装物上に満遍なく行き渡る点で、アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子と、末端変性PAS樹脂(B)からなる粒子と、所望により窒素含有化合物(C)とを分散媒に分散してなるものであることがより好ましい。
上記分散媒としては、例えば、水、有機媒体、水と上記有機媒体との混合溶剤等を用いることができる。上記分散媒として水を用いる場合、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は、ノニオン界面活性剤を分散剤として分散させることができるが、得られる塗膜中に残りにくい点で、ノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。上記分散媒として水を用いる場合、また、フッ素系界面活性剤を併用してもよい。
上記有機媒体としては特に限定されず、例えば、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等の低級アルコール類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(D)を含まないものである場合、上述のアミド基含有性高分子化合物(A)及び末端変性PAS樹脂(B)、並びに、所望により用いる窒素含有化合物(C)及び上述のその他の樹脂を、上記有機媒体及び/又は水に溶解若しくは分散してなるバインダー樹脂液状物として得ることができる。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(D)を含むものである場合、フッ素樹脂(D)からなる粒子を分散させた上記分散媒からなる上記フッ素樹脂(D)分散体と、上記バインダー樹脂液状物とを攪拌混合する方法等により調製することができる。
上記フッ素樹脂(D)分散体は、上記フッ素樹脂(D)からなる粒子を上述の分散媒で濡らしたのち、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の分散剤で分散させて得る方法、上述の分散媒の表面張力をフッ素系界面活性剤等で下げフッ素樹脂(D)からなる粒子を分散させて得る方法等により得ることができる。
上記攪拌混合は、バスケットミル、ダイナモミル、ボールミル等の粉砕分散機を用いて行うことが好ましい。
本発明の塗料組成物は、上記攪拌混合後、所望により貧溶媒で希釈し粘度調整を行って得られたものであってもよい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(D)を含むものである場合、上述のように2層構造に分かれ、被塗装物との密着性に優れた塗膜が得られることから、表層がフッ素樹脂からなる層であるコーティングを施すことを目的とする場合、いわゆるワンコート法によって1回コーティングするだけでもよいし、本発明の塗料組成物をプライマー組成物として用い、このプライマー組成物を塗装することにより形成した塗膜上に上塗り塗料を塗装してもよい。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、被塗装物(1)、塗膜(2)、及び、フッ素樹脂層(3)からなるものであって、上記被塗装物(1)、上記塗膜(2)及び上記フッ素樹脂層(3)は、この順に積層しているものである。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、被塗装物(1)、塗膜(2)及びフッ素樹脂層(3)を含むものであれば、更に、その他の層をも含むものであってもよい。
上記被塗装物(1)は、本発明の塗料組成物を塗装する対象である。
上記被塗装物(1)としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス〔SUS〕、鉄等の金属;耐熱樹脂;セラミック等からなるものが挙げられ、金属からなるものであることが好ましい。
上記金属としては、単体金属又は合金であってよく、また、上記塗膜(2)との密着性が良好である点で、上述の酸化膜速形成性金属であってもよいし、酸化膜遅形成性金属であってもよい。
本明細書において、上記酸化膜遅形成性金属は、ステンレスよりも酸化膜を形成する速度が遅い金属である。上記酸化膜遅形成性金属としては、例えば、アルミニウム、鉄等が挙げられる。
上記被塗装物(1)は、本発明の塗料組成物を塗装することに先立ち、この塗料組成物から塗装により得られる塗膜(2)との密着性を向上させ得る点から、樹脂成分の除去及び粗面化処理を行ったものであることが好ましい。
上記樹脂成分の除去の方法としては、有機溶剤、アルカリ等を用いて行う方法;300℃以上の温度で樹脂成分を分解させる方法等が挙げられる。
上記塗膜(2)は、上記被塗装物(1)上に上述の本発明の塗料組成物を塗装することにより得られるものである。
上記塗膜(2)は、本発明の塗料組成物を塗布し、所望により80〜150℃で10〜60分間乾燥を行った後、焼成を行うことにより上記被塗装物(1)上に形成することができる。
上記塗布の方法としては、本発明の塗料組成物が液状塗料タイプである場合、スプレー塗布、ローラーによる塗布等を用いることが好ましく、本発明の塗料組成物が粉体塗料タイプである場合、静電塗布、流動浸漬塗布又はロトライニング塗布を用いることが好ましい。
上記焼成は、上述のように、本発明の塗料組成物中のアミド基含有性高分子化合物(A)、末端変性PAS樹脂(B)、及び、フッ素樹脂(D)の融点にもよるが、通常、フッ素樹脂(D)の融点以上の温度で10〜60分間加熱することにより行う。
上記塗膜(2)の焼成は、後述する上塗り塗料を塗装する前に行ってもよいし、上塗り塗料を塗装する前には行わず、上塗り塗料を塗布した後に上塗り塗料の焼成と同時に行うものであってもよい。
本発明のフッ素樹脂含有積層体において、上記塗膜(2)は、厚みが1〜300μmであることが好ましい。
上記厚みは、より好ましい下限が5μm以上であり、より好ましい上限が150μmである。
上記フッ素樹脂層(3)は、フッ素樹脂(E)からなるものである。
上記フッ素樹脂(E)としては、例えば、上述したフッ素樹脂(D)と同じものが挙げられる。
上記フッ素樹脂(E)は、上記塗料組成物に使用するフッ素樹脂(D)と同一又は類似の組成を有するフッ素樹脂であってもよいし、上記塗料組成物に使用するフッ素樹脂(D)と非類似の組成を有するフッ素樹脂であってもよい。
上記フッ素樹脂層(3)は、通常、上記塗膜(2)上に形成する。
上記塗料組成物がフッ素樹脂(D)を含むものである場合、塗膜(2)の表面にはフッ素樹脂(D)が多く含まれていることから、上記フッ素樹脂層(3)は、上記塗膜(2)に接触させて形成する場合、上記塗膜(2)の表面との相溶性及び密着性を高める意味で、上記フッ素樹脂(E)として、フッ素樹脂(D)と同一又は類似の組成を有するフッ素樹脂を用いることが好ましい。
上記フッ素樹脂(E)としては、上記塗料組成物がフッ素樹脂(D)を含まないものであっても、上述したフッ素樹脂(D)と同じものを用いてもよい。
上記フッ素樹脂層(3)は、塗膜(2)に接触させて形成する場合、上記塗料組成物が上述のフッ素樹脂(D)を含むものであれば、上記塗膜(2)との密着性を高め得る点で、フッ素樹脂(E)とともにフッ素樹脂(D)を含むものであってもよい。
上記フッ素樹脂層(3)は、例えば、塗膜(2)上にフッ素樹脂層(3)を積層させる場合、上述した塗膜(2)上にフッ素樹脂(E)からなる上塗り塗料を塗装し、フッ素樹脂(E)の融点以上の温度で30〜120分間焼成することにより形成することができる。
上記フッ素樹脂(E)を含有する上塗り塗料は、本発明の塗料組成物と同様に、所望の膜厚によって粉体塗料タイプと液状塗料タイプとが使い分けられ、耐蝕性の観点(厚膜化の観点)では、粉体塗料を用いることが好ましい。フッ素樹脂(E)を含有する上塗り塗料には、本発明の塗料組成物と同様の分散媒、分散剤、添加剤、その他の樹脂等を用いることができる。
また、上記フッ素樹脂層(3)は、フッ素樹脂(E)からなりフィルム状に形成したフッ素樹脂系フィルムであってもよい。この場合、上記未焼成塗膜(2)上に上記フッ素樹脂系フィルムを載置し、加熱圧着により上記未焼成塗膜(2)と上記フッ素樹脂系フィルムとを密着させる等の従来公知の方法等を用いることができる。
上記フッ素樹脂層(3)の膜厚としては特に限定されず、用途にもよるが、膜厚が10μm以上であるものが好ましく、より好ましい下限は20μmである。上記フッ素樹脂層(3)の膜厚が10μm未満であると上記フッ素樹脂含有積層体の表面平滑性が損われる場合がある。特にライニング等の耐蝕用途においてはフッ素樹脂層を厚くする必要があり、耐蝕用途においては上記フッ素樹脂層(3)は、膜厚が200μm以上であるものであることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂層(3)の膜厚が200μm以上であっても、充分な密着性を保持することができ、高温で長時間の焼成が必要なライニング加工に特に有用である。
本発明の含フッ素樹脂含有積層体の用途としては特に限定されず、例えば、従来のPAIエナメル線と比較し耐加工劣化性に優れる点で、耐熱エナメル線等の各種電線の被覆材用途;情報機器部品(紙分離爪、プリンタガイド、ギア、ベアリング)、コネクタ、バーニインソケット、ICソケット、油田用電気部品、リレー、電磁波シールド、リレーケース、スイッチ、カバー、端子板母線等の電気・電子産業関連用途;
バルブシート、油圧用シール、バックアップリング、ピストンリング、ウェアバンド、ベーン、ボールベアリングリテーナー、ローラー、カム、ギア、ベアリング、ラビリンスシール、ポンプ部品、機械的リンク機構、ブッシング、ファスナ、スプラインライナー、ブラケット、油圧ピストン、ケミカルポンプケーシング、バルブ、弁、タワーパッキン、コイルボビン、パッキン、コネクター、ガスケット、バルブシール等の機械工業関連用途;
スラストワッシャ、シールリング、ギア、ベアリング、タペット、エンジン部品(ピストン、ピストンリング、バルブステア)、トランスミッション部品(スプール弁、ボール逆止弁、シーリング)、ロッカーアーム等の車両工業関連用途;
ジェットエンジン部品(ブッシング、ワッシャ、スペーサー、ナット)、パワーコントロールクラッチ、ドアヒンジ用ベアリング、コネクター、チューブクランプ、ブラケット、油圧部品、アンテナ、レドーム、フレーム、燃料系統部品、コンプレッサ部品、ロケットエンジン部品、ウェアストリップ、コネクタシェルフ、宇宙構造体等の航空、宇宙産業関連用途等が挙げられる。その他にも、製罐機ピンカバー、メッキ装置用部品、原子力関連部品、超音波トランデューサ、ポテンショメータシャフト、給水栓部品等の用途が挙げられる。
上記各用途は、本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(D)をも含むものである場合にも、適用することができるが、フッ素樹脂(D)を含まないものである場合に好適である。
本発明の含フッ素樹脂含有積層体の用途としては、本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(D)をも含むものである場合、上記各用途に加え、例えば、攪拌翼、タンク内面、ベッセル、塔、遠心分離器、ポンプ、バルブ、配管、熱交換器、メッキ冶具、タンクローリー内面、スクリューコンベア等の耐蝕用途;半導体工場ダクト等の半導体関連用途;OAロール、OAベルト、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール、インジェクション金型等の工業用離型用途;炊飯釜、ポット、ホットプレート、アイロン、フライパン、ホームベーカリー、パントレー、ガステーブル天板、パン天板、鍋、釜等の家電・厨房関連用途;各種ギアを含む精密機構摺動部材、製紙ロール、カレンダーロール、金型離型部品、ケーシング、バルブ、弁、パッキン、コイルボビン、オイルシール、継ぎ手、アンテナキャップ、コネクター、ガスケット、バルブシール、埋設ボルト、埋設ナット等の工業部品関連用途等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、上述の構成よりなるものであるので、耐蝕性及び被塗装物との耐熱密着性に優れ、各種被塗装物への塗装に好適に使用することができる。また、本発明のフッ素樹脂含有積層体は、耐蝕性及び被塗装物との耐熱密着性に優れており、例えば半導体製造装置における配管材料等、汚染を嫌う薬液等の流体に塗膜を接触させて使用する用途において、塗膜から金属が溶出する等の問題がないので、各種工業装置の部材として好適に使用することができる。
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
調製例1
ポリアミドイミド樹脂〔PAI〕(日立化成工業社製、30%N−メチル−2−ピロリドン溶液)10.00g、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕(融点:310℃、平均粒子径:25μm)6.66g、酢酸処理にて重合体末端を上記一般式(1)で表される基にした末端変性PPS(平均粒子径:15μm)0.33gをN−メチル−2−ピロリドン13.80g、メチルイソブチルケトン9.20gの混合溶剤に加え、ディスパー(商品名:スリーワンモーター、新東科学社製)を用いて溶解分散して塗料組成物を得た。
実施例1
アルミナ粉(商品名:トサエメリー#40、宇治電化学工業社製)を用いて吹き付け圧力1.0MPaでブラスト処理した鉄板(SS400;縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm;平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm、JIS B0601に準拠して表面粗さ形状測定機 サーフコム470A(東京精密社製)を用いて測定)上に、調製例1から得られた塗料組成物を乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥した。得られた塗膜(2)上にPFA粉体塗料(平均粒子径:220μm)、メルトフローレート:6g/10分、ASTM D3307に準拠して測定)を、焼成後の膜厚合計が1mmになるように盛り置きし、350℃で1時間焼成してフッ素樹脂含有積層体Aを得た。
得られたフッ素樹脂含有積層体Aから試験片(長さ100mm×幅10mm)を切り出し、以下のような評価を行った。
耐熱性試験
10mmの幅に切れ目を入れた試験片を350℃の電気炉に入れ、20時間、30時間又は50時間加熱した後、室温に戻し、テンシロン万能試験機を用いてJIS K 6854−1(1999年)に準拠して引っ張り速度50mm/分で試験片に対して90°方向に剥離接着強さを測定した。但し、上記加熱後に試験片の塗膜が剥離した場合、剥離接着強さは0kg/cmとした。結果を表1に示した。
耐熱水処理試験
10mmの幅に切れ目を入れた試験片を90℃以上の熱水に24時間、72時間又は120時間浸漬した後、室温に戻し、耐熱性試験と同様にして試験片に対して90°方向に剥離接着強さを測定した。結果を表2に示した。
剥離状態評価
上記剥離接着強さの試験において、剥離状態を観察し以下のように評価した。
/A:被塗装物と塗膜(2)との間での剥離〔基材剥離〕
/B:塗膜(2)とPFA樹脂層との間での剥離〔層間剥離〕
/C:塗膜(2)自体の破壊による剥離〔凝集破壊〕
実施例2
PAIを11.00g、PPSを0.03gにする以外は調製例1と同様の方法にて得られた塗料組成物を用い、実施例1と同様の方法によりフッ素樹脂含有積層体Bを作製し、評価した。
比較例1
実施例1の末端変性PPS樹脂を被処理PPS樹脂(商品名:ライトンV−1、フィリップス社製)に代える以外は調製例1と同様の方法にて得られた塗料組成物を用い、実施例1と同様の方法により比較用積層体aを作製し、評価した。
比較例2
PFAを6.00g用い、末端変性PPS樹脂も被処理PPS樹脂も添加しなかった以外は調製例1と同様の方法にて得られた塗料組成物を用い、実施例1と同様の方法により比較用積層体bを作製し、評価した。
比較例3
実施例1で使用した塗料組成物の代わりにリン酸クロム系プライマー(商品名:850−314/VM7799=100/35、DuPont社製)を塗装に供した以外は実施例1と同様の方法により比較用積層体cを作製し、評価した。
Figure 2005336316
Figure 2005336316
表1から、長時間の耐熱性試験後における剥離接着強さは、末端変性PPS樹脂、被処理PPS樹脂ともに用いなかった比較例2では著しく低下し、被処理PPS樹脂を用いた比較例1では比較例2よりも向上したが、実施例1〜2では、これら比較例1〜2のみならず、従来より耐熱密着性に優れているとされてきたリン酸クロムプライマーを用いた比較例3よりも遥かに優れていることがわかった。
表2から、耐熱水処理試験後における剥離接着強さは、被処理PPS樹脂を用いた比較例1ではリン酸クロムプライマーを用いた比較例3よりも向上したが、実施例1〜2では、これら比較例1と比較例3よりも遥かに優れていることがわかった。
表1と表2とから、末端変性PPS樹脂、被処理PPS樹脂ともに用いなかった比較例2では、耐熱水処理試験後における剥離接着強さは優れていたが、長時間の耐熱性試験後における剥離接着強さが極めて悪く、長時間の耐熱性と耐熱水性とを兼備する点で、実施例1〜2が優れていることがわかった。
本発明の塗料組成物は、上述の構成よりなるものであるので、耐蝕性及び被塗装物との耐熱密着性に優れ、各種被塗装物への塗装に好適に使用することができる。また、本発明のフッ素樹脂含有積層体は、耐蝕性及び被塗装物との密着性に優れており、例えば半導体製造装置における配管材料等、汚染を嫌う薬液等の流体に塗膜を接触させて使用する用途において、塗膜から金属が溶出する等の問題がないので、各種工業装置の部材として好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)とからなる塗料組成物であって、
    前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、
    末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)との合計の1〜16質量%である
    ことを特徴とする塗料組成物。
  2. 末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)は、ポリアリレンサルファイド樹脂に酸処理を行うことにより得られるものである請求項1記載の塗料組成物。
  3. 末端変性ポリアリレンサルファイド樹脂(B)は、ポリマー鎖末端に下記一般式(1)
    −Ar−Y (1)
    (式中、Arは、アリレン基を表し、Yは、−SH又は−Hを表す。)で表される基を有するものである請求項1又は2記載の塗料組成物。
  4. 更に、窒素含有化合物(C)を含有する請求項1、2又は3記載の塗料組成物。
  5. 更に、フッ素樹脂(D)からなる請求項1、2、3又は4記載の塗料組成物。
  6. 被塗装物(1)、前記被塗装物(1)上に請求項1、2、3、4又は5記載の塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜(2)、及び、フッ素樹脂層(3)からなるフッ素樹脂含有積層体であって、
    前記フッ素樹脂層は、フッ素樹脂(E)からなるものであり、
    前記被塗装物(1)、前記塗膜(2)及び前記フッ素樹脂層(3)は、この順に積層している
    ことを特徴とするフッ素樹脂含有積層体。
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JP2004156657A Pending JP2005336316A (ja) 2004-05-26 2004-05-26 塗料組成物及びフッ素樹脂含有積層体

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009292974A (ja) * 2008-06-06 2009-12-17 Kaneka Corp 金属の防食塗料および防食方法

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