JP2005335183A - フッ素樹脂含有積層体 - Google Patents

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亮一 深川
Toshio Miyatani
敏雄 宮谷
Daisuke Sanpei
大輔 三瓶
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Abstract

【課題】 高温で長時間焼成を行っても層間密着性を維持するフッ素樹脂含有積層体を提供する。
【解決手段】 基材(1)、上記基材(1)上に金属粉末及び/又はセラミックス粉末を溶射することにより形成した下地層(2)、並びに、上記下地層(2)上に塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜(3)を含むフッ素樹脂含有積層体であって、上記塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)、及び、フッ素樹脂(C)からなる塗料組成物であり、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることを特徴とするフッ素樹脂含有積層体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フッ素樹脂含有積層体に関する。
フッ素樹脂は、塗料組成物に調製し、パン金型、炊飯釜等の耐蝕性、非粘着性、耐熱性等が要求されるものの基材に塗装してフッ素樹脂被膜を形成させることに幅広い用途がある。しかしながら、フッ素樹脂は、その非粘着性ゆえに、金属等からなる基材との接着性に乏しいという問題があった。
接着性を改善する目的で、金属基材の表面を粗面化処理した上に下地塗装を行ったのち、フッ素樹脂を塗装し、次いでこれを乾燥、焼き付けすることによりフッ素樹脂被膜を形成することが行われてきた。しかしながら、フッ素樹脂被膜は、金属製のヘラや固い異物等があたると損傷しやすいという問題があった。
金属基材の表面を粗面化処理したのち、下地層として金属粉末又は金属とセラミックスの複合粉末を溶射して厚さ20〜50μmの層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法により金属溶射層上に形成したフッ素樹脂被膜は、金属溶射層との密着が不充分であり、スチーム等が浸透することにより層間剥離しやすくなるという問題があった。
特開昭52−150342号公報
本発明の目的は、上記現状に鑑み、高温で長時間焼成を行っても層間密着性を維持することができるフッ素樹脂含有積層体を提供することにある。
本発明は、基材(1)、上記基材(1)上に金属粉末及び/又はセラミックス粉末を溶射することにより形成した下地層(2)、並びに、上記下地層(2)上に塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜(3)を含むフッ素樹脂含有積層体であって、上記塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)、及び、フッ素樹脂(C)からなる塗料組成物であり、
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることを特徴とするフッ素樹脂含有積層体である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、基材(1)、下地層(2)、及び、塗膜(3)を含むものである。
上記下地層(2)は上記基材(1)上に、上記塗膜(3)は上記下地層(2)上にそれぞれ接している。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、上記基材(1)、下地層(2)、及び、塗膜(3)を含むものであれば、例えば、後述するフッ素樹脂層(4)等の他の層を含むものであってもよい。
上記基材(1)における下地層(2)との接触面の材質としては金属粉末及び/又はセラミック粉末を溶射することができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属;鉄、アルミニウム等からなる合金類;耐熱性樹脂;アルミナ、アルミナ/酸化チタン等のセラミックス;ガラス;ほうろう等が挙げられる。
上記金属としては、アルミニウム、鉄、銅等が挙げられる。
上記合金類としては、例えば、ステンレス、アルミニウム/亜鉛合金、アルミニウム/珪素合金、アルミニウム/ニッケル合金、アルミニウム/マグネシウム合金等が挙げられる。
上記基材(1)は、下地層(2)の形成に先立ち、樹脂成分の除去及び粗面化処理を行ったものであることが好ましい。上記樹脂成分の除去の方法としては、有機溶剤、アルカリ等を用いた方法;300℃以上の温度で樹脂成分を分解させる方法等により行う。上記粗面化処理は、通常、表面粗さが5〜20μm程度となるように行うものである。
上記下地層(2)は、金属粉末及び/又はセラミックス粉末を溶射することにより形成されるものである。
上記下地層(2)を形成することにより、基材(1)と塗膜(3)との間の耐熱密着性を向上することができ、耐磨耗性及び薬品耐食性を向上することができる。
上記金属粉末としては特に限定されず、例えば、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、アルミニウム等の金属単体;ステンレス;アルミニウム/亜鉛合金、アルミニウム/珪素合金、アルミニウム/ニッケル合金、アルミニウム/マグネシウム合金等のアルミニウム合金等からなる粉末が挙げられ、被覆欠陥の発生が少ない点でアルミニウム合金からなる粉末を用いることが好ましい。
上記セラミックス粉末としては、例えば、シリカ;アルミナ、アルミナ/酸化チタン等のアルミニウム系セラミックス等からなる粉末が挙げられる。
上記「溶射」は、例えば、粉末溶射器を用いて酸素−アセチレンフレームで溶融させながら行う等の常法により行うことができる。
上記下地層(2)の膜厚としては、基材(1)と塗膜(3)との間の耐熱密着性の点で、10〜150μmであることが好ましい。より好ましい下限は、30μm、より好ましい上限は、50μmである。
上記塗膜(3)は、上記下地層(2)上に塗料組成物を塗装することにより得られるものである。
本明細書において、「塗装」とは、上記下地層(2)等の塗装対象物に塗布し、必要に応じて乾燥し、次いで焼成することよりなる一連の工程を意味する。
上記焼成は、通常、下地層(2)上において本発明のフッ素樹脂含有積層体を構成する主要な高分子成分の融点以上の温度で加熱することにより行う。
上記塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)、及び、フッ素樹脂(C)からなる塗料組成物である。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)である。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、通常、アミド基(−NH−C(=O)−)を主鎖又は側鎖に有し、芳香環を主鎖に有するポリマーである。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、ポリアミドイミド〔PAI〕、ポリアミド、及び/又は、ポリアミド酸(ポリアミック酸)であることが好ましい。
上記PAIは、アミド基と芳香環とイミド基とを有する重縮合体である。上記PAIとしては特に限定されず、例えば、従来公知のPAIの他にも、ポリイミド〔PI〕を酸化することによりアミド基を導入したもの等を用いることができる。
上記ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有する重縮合体である。上記ポリアミドとしては特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド;ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。
上記ポリアミド酸は、アミド基と、カルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体とを有する重縮合体である。上記ポリアミド酸としては特に限定されず、分子量が数千〜数万であるポリアミド酸等が挙げられる。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものである。
上記「塗料組成物を塗装する際の焼成」は、上記塗料組成物を後述のプライマー組成物として用い、次いで上塗り塗料を塗装する場合、(1)このプライマー組成物を塗布した後、上記上塗り塗料を塗装する前に通常行う「焼成」、(2)上記(1)の焼成の後、上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」、又は、(3)上記(1)の焼成を行わずに上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」に該当し、上記塗料組成物を後述のワンコート法に用いる場合、(4)上記塗料組成物を塗布した後の「焼成」に該当するが、(1)〜(4)の何れの焼成をも含み得る概念である。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、上述のように、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであり、この焼成において上記アミド基含有ポリマー(a1)が有する芳香環が通常変化しないので、芳香環を有しているものであるが、上記塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においては、アミド基は有していないものである。
本明細書において、上記塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においてアミド基を有しており、更に芳香環をも有している高分子化合物は、上述のアミド基含有性ポリマー(a1)に該当する。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)としては、上記塗料組成物を塗布し焼成することにより上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであれば特に限定されず、例えば、PI等であってもよい。上記PIは、上記塗料組成物を塗布し長時間高温で焼成する際に酸化させて主鎖にアミド基を導入することができる。上記PIにアミド基を導入して得られたアミド基含有ポリマー(a1)は、PAI又はポリアミド酸であり、PAIであるためには、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基に変換したものでなければよく、ポリアミド酸は、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基と、カルボキシル基とに変換したものである。
上記PIにアミド基を導入する方法としては特に限定されず、例えば、PIのイミド基(イミド環)を酸化によって開環する方法、PIのイミド基(イミド環)にアルカリを作用させ加水分解する方法等が挙げられる。本明細書において、アミド基を導入することとなる分子構造上の部位、例えば、上述の酸化によりアミド基に変化するイミド基等を、アミド基導入部位ということがある。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるものである。
上記「アミド基を有することとなる」とは、上記塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点で上記アミド基含有性高分子化合物(A)が必ずしもアミド基を有していなくともよいが、上述の塗料組成物を塗装する際の焼成により化学変化を起こしてこの焼成が終了する前にアミド基が導入されることを意味する。
本明細書において、上記「アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなる」は、上記塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点において、アミド基を有しアミド基導入部位を有しないもの、アミド基を有さずアミド基導入部位を有するもの、アミド基を有しかつアミド基導入部位を有するもの、の何れをも含み得る概念である。即ち、上記塗料組成物は、上述のアミド基含有ポリマー(a1)とアミド基含有ポリマー前駆体(a2)との両方を含むものであってもよいし、何れか一方のみを含むものであってもよい。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化を抑制することができるものである。上記抗酸化性物質(B)は、酸化還元電位が、アミド基の酸化還元電位より低いものであって、イミド基の酸化還元電位と同程度であるか又はイミド基の酸化還元電位に比べて高いものが好ましく、イミド基の酸化還元電位に比べて高いものがより好ましい。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化に優先して自己酸化されることによって上記アミド基の酸化を遅らせることができるものと考えられる。上記抗酸化性物質(B)としては、上記アミド基の酸化を充分に抑制し得る点から、酸化状態が低い物質が好ましいと考えられる。上記抗酸化性物質(B)としては、上記アミド基の酸化を抑制することができるとともに、耐熱性物質であることがより好ましい。上記抗酸化性物質(B)が耐熱性物質であると、上記塗料組成物を塗装する際の焼成を長時間行っても、上記抗酸化性物質(B)が分解や劣化を起こしにくいので、上記アミド基の酸化を抑制し続け、上記アミド基含有性高分子化合物(A)による下地層(2)との密着性を維持することができる。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化に優先して自己酸化する自己酸化能のほかに、上記酸化されたアミド基を還元する還元能を有していてもよい。
上記抗酸化性物質(B)は、上述のアミド基の酸化を抑制する性質に加えて、下地層(2)の酸化を抑制する性質を有するものであってもよい。
上記抗酸化性物質(B)としては、例えば、ポリアリレンサルファイド〔PAS〕;窒素含有化合物;錫、亜鉛、燐等の金属;硫黄等が挙げられる。上記抗酸化性物質(B)としては、半導体製造工程等アミンの使用や金属イオンの溶出を嫌う場合、PASが好ましく用いられる。
上記PASとしては特に限定されず、例えば、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンサルファイド〔PPS〕等が挙げられ、なかでも、PPSが好適に用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、窒素含有化合物も好ましく用いられる。
本明細書において、上記「窒素含有化合物」は、分子中に窒素原子を有する化合物であって、上記アミド基の酸化及び下地層(2)の酸化をともに抑制し得るものである。
上記窒素含有化合物としては、アミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、窒素硫黄含有化合物等が挙げられる。
上記アミン系化合物は、アミノ基を有する化合物であって、上記アミノ基が金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記アミン系化合物としては特に限定されないが、250℃以上での高温安定性が望まれる点で、芳香族アミン類であることが好ましい。芳香族アミン類としては、フェニル基及び/又はナフチル基を有するものが好ましく、フェニル基及び/又はナフチル基を有する芳香族アミン類としては特に限定されず、例えば、ジナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系化合物は、ベンゾトリアゾールを基本骨格とする化学構造を有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記ベンゾトリアゾール系化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−テトラオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記窒素硫黄含有化合物は、窒素原子と硫黄原子とを有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記窒素硫黄含有化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾチアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チオ尿素類等が挙げられる。上記ベンゾチアゾール系化合物としてはベンゾチアゾールを基本骨格とする化合物であれば特に限定されず、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾールジスルフィド、2−(N,N′−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。
上記スルフェンアミド系化合物としては、スルフェンアミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、N,N′−シクロヘキシル−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド等が挙げられる。本明細書において、上記スルフェンアミド系化合物は、スルフェンアミド基を有するとともに、ベンゾチアゾールを基本骨格とする構造部分を有する化合物をも含む概念である。
上記チオ尿素類としては窒素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が炭素数1〜6の飽和又は不飽和の炭化水素基に置換されていてもよいチオ尿素が好ましく、このようなチオ尿素類としては特に限定されず、例えば、N,N′−ジエチルチオ尿素、N,N′−ジブチルチオ尿素、チオ尿素、N,N′−ジフェニルチオ尿素等が挙げられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、下地層(2)が酸化膜を形成しやすい酸化膜速形成性金属からなるものである場合、上記窒素含有化合物を用いることが好ましく、上記窒素含有化合物をPASと併用することが下地層(2)との接着性を向上させる点で好ましい。上記酸化膜速形成性金属は、少なくとも上記塗料組成物の塗装における焼成により、ステンレスと同程度に酸化膜を形成しやすいものであればよく、下地層(2)として上記塗料組成物を塗布する時点で既に酸化膜を形成しているものであってもよい。上記酸化膜速形成性金属としては、ステンレス等が挙げられる。
上記窒素含有化合物としては、ベンゾチアゾール系化合物が好適に用いられ、ベンゾチアゾール系化合物のなかでも特に、亜鉛との塩である亜鉛系酸化防止剤が好適に用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、下地層(2)が酸化膜遅形成性金属からなる
ものである場合、上記窒素含有化合物を用いてもよいが、用いなくとも上記塗料組成物の塗装における焼成により下地層(2)との接着性に著しい低下は見られない点で、上記窒素含有化合物を用いなくてもよく、下地層(2)の酸化を抑制する性質を必ずしも有しないが上述のアミド基の酸化を抑制する性質を有するものを用いることで充分であり、例えば、PASのみを用いてもよい。本明細書において、上記酸化膜遅形成性金属は、ステンレスよりも酸化膜を形成する速度が遅い金属である。上記酸化膜遅形成性金属は、酸化膜形成性の程度が相違する点で、上述の酸化膜速形成性金属とは異なる。上記酸化膜遅形成性金属としては、例えば、アルミニウム、鉄等が挙げられる。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%である。20質量%を超えると、熱水処理後の密着力が低下しやすく、0.1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。上記抗酸化性物質(B)としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組み合わせて用いる場合、抗酸化性物質(B)の質量は、組み合わせた全ての抗酸化性物質(B)の合計質量である。
上記抗酸化性物質(B)としては、PAS及び/又は窒素含有化合物が好ましく用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としてPASを単独で用いる場合、PASは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)とPASとの合計の1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。20質量%を超えると、熱水処理後の密着力が低下しやすい。好ましい下限は、3質量%、好ましい上限は、18質量%であり、より好ましい下限は5質量%、より好ましい上限は、15質量%である。
上記抗酸化性物質(B)として窒素含有化合物を単独で用いる場合、上記窒素含有化合物は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記窒素含有化合物との合計の0.1〜5質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。5質量%を超えると、初期密着力及び熱水処理後の密着力が低下しやすい。より好ましい上限は、3質量%であり、更に好ましい上限は、1質量%である。
上記抗酸化性物質(B)としてPASとその他の抗酸化性物質とを組み合わせて用いる場合、上記PASと上記その他の抗酸化性物質とは、質量比で、PAS:その他の抗酸化性物質=50:50〜99:1となるように組み合わせることが好ましい。上記その他の抗酸化性物質としては、上述の抗酸化性物質(B)のうちPAS以外のものが挙げられ、なかでも、窒素含有化合物が好ましく用いられる。上記その他の抗酸化性物質としては、窒素含有化合物、錫、亜鉛、燐等の金属;硫黄等が挙げられる。
上記フッ素樹脂(C)は、フッ素を有する単量体を重合して得られる重合体からなるものである。
上記フッ素樹脂(C)としては、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、及び、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル〔PAVE〕からなるフッ素含有単量体群のなかから選ばれる1種又は2種以上のフッ素含有単量体を重合することにより得られた含フッ素重合体からなるものであることが好ましく、この含フッ素重合体は、上記1種又は2種以上のフッ素含有単量体と、エチレン、プロピレン等のフッ素非含有単量体群から選ばれる1種若しくは2種以上のフッ素非含有単量体とを共重合することにより得られたものであってもよい。
上記フッ素樹脂(C)としては、耐蝕性の点でテトラフルオロエチレン系共重合体からなるものであることがより好ましい。
本明細書において、上記「テトラフルオロエチレン系共重合体」は、TFEと、上述のフッ素含有単量体群におけるTFE以外のフッ素含有単量体及び/又はフッ素非含有単量体とを重合し得られた重合体である。上記TFE以外のフッ素含有単量体、並びに、上記フッ素非含有単量体としてはそれぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
上記フッ素樹脂(C)としては、融点が上述の塗装時における焼成の温度未満であり、かつ、上述の焼成の温度において耐熱性を有するものが更に好ましい。
上記フッ素樹脂(C)としては、耐食性と耐熱性とを兼ね備えている点でパーフルオロ系樹脂が好ましく採用される。
上記パーフルオロ系樹脂は、通常、300℃以上の焼成温度が要求される樹脂であり、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロビニルエーテル及び/又は微量共単量体とを重合して得られるパーフルオロ系重合体からなるものである。上記パーフルオロオレフィンとしては特に限定されず、例えば、TFE、HFP等が挙げられる。上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
上記微量共単量体としては、上記パーフルオロオレフィンでもなくパーフルオロビニルエーテルでもないフッ素含有単量体、並びに/又は、フッ素非含有単量体を1種若しくは2種以上用いることができる。上記パーフルオロ系重合体の分子鎖における上記微量共単量体に由来する繰り返し単位は、上記パーフルオロ系重合体の全単量体単位の10モル%未満であることが好ましい。
上記フッ素樹脂(C)としては、乳化重合若しくは懸濁重合で得たディスパージョン又は粉末を用いることができるほか、更に、粉砕を行い微粉化した微粉末を用いることができる。
上記フッ素樹脂(C)を粉末で用いる場合の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、フッ素樹脂層をあまり厚くすることができず、50μmを超えると、上記塗料組成物を塗装して得られる塗膜の平滑性が悪くなる場合がある。薄塗り等に使用する場合、平均粒子径のより好ましい上限は、10μmである。膜厚が200μmを超えるライニング等に用いる場合、平均粒子径のより好ましい下限は、1μm、より好ましい上限は、40μmであり、更に好ましい下限は、5μmである。
本明細書において、平均粒子径は、レーザー式測定法によって測定し得られる値である。
上記フッ素樹脂(C)は、塗装時の焼成の温度が300℃以上のものであることが好ましい。上記塗装時の焼成の温度は、一般的に、フッ素樹脂(C)の融点以上の温度である。上記塗装時の焼成は、上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)について上述した「塗料組成物を塗装する際の焼成」と同じものが該当し得る。
上記フッ素樹脂(C)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)と上記フッ素樹脂(C)との合計の50〜90質量%であることが好ましい。50質量%未満であると、上記塗料組成物を後述のプライマー組成物として用いる場合、上記プライマー組成物を塗装して得られた塗膜(3)と、上記塗膜(3)上に積層するフッ素樹脂層(4)との密着性が悪くなりやすく、90質量%を超えると、上記塗膜(3)と上述の下地層(2)との密着性が悪くなりやすい。より好ましい下限は、60質量%であり、より好ましい上限は、85質量%である。
上記数値範囲は、フッ素樹脂(C)の固形分質量についての値である。上記フッ素樹脂(C)の固形分質量は、上記塗料組成物を調製するに際し、上記フッ素樹脂(C)を上述のようにディスパージョン等の液状物で配合する場合があるが、この場合、上記液状物中のフッ素樹脂(C)からなる粒子を取り出して得られる粉末の乾燥質量に該当する値である。
上記塗料組成物は、上記塗料組成物から得られる塗膜の造膜性、耐腐蝕性等を向上する目的で、必要に応じ、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、抗酸化性物質(B)、又は、フッ素樹脂(C)の何れでもないその他の200℃以上の耐熱性を有する樹脂を配合したものであってもよい。
上記その他の樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
上記塗料組成物は、必要に応じ、塗装作業性や上記塗料組成物から得られる塗膜の性質を改善するために、添加剤類を含むものであってもよい。
上記添加剤類としては特に限定されず、例えば、レベリング剤、固体潤滑剤、顔料、光輝材、充填材、顔料分散剤、沈降防止剤、水分吸収剤、表面調整剤、チキソトロピー性付与剤、粘度調整剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、抗蝕剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
本明細書において、上記抗蝕剤は、アミド基の酸化は抑制しないが下地層(2)の酸化を抑制する性質を有するものを意味する。
上記塗料組成物は、粉体塗料タイプ又は液状塗料タイプの何れであっても製造可能である。上記塗料組成物において、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び上記抗酸化性物質(B)は、適当な溶媒に溶解して溶液として用いてもよい。厚みが100μmを超える塗膜を形成する場合、後述のように粉体塗料タイプであることが好ましいが、上記塗料組成物は、下地層(2)に満遍なく塗装することができる点で、液状塗料タイプであることが好ましい。上記液状塗料タイプとしては、フッ素樹脂(C)からなる粒子を分散媒に分散している分散体中に、アミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)を溶解又は分散しているものであることが好ましく、厚膜化のためには、アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子と、抗酸化性物質(B)からなる粒子と、フッ素樹脂(C)からなる粒子とを分散媒に分散してなるものであることがより好ましい。上記塗料組成物は、上述のその他の樹脂を配合した液状塗料タイプである場合、上記分散媒の種類と上記その他の樹脂の溶解性等にもよるが、通常上記その他の樹脂からなる粒子をも上記分散媒に分散してなるものである。
上記分散媒は、水又は有機媒体を用いることができる。上記分散媒として水を用いる場合、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は、ノニオン界面活性剤を分散剤として分散させることができるが、得られる塗膜中に残りにくい点で、ノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。上記分散媒として水を用いる場合、また、フッ素系界面活性剤を併用してもよい。
上記有機媒体としては特に限定されず、例えば、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等の低級アルコール類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
上記分散媒としては、更に、水と上記有機媒体との混合溶剤も使用可能である。
上記塗料組成物は、上述のアミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)並びに所望により用いる上述のその他の樹脂を上記有機媒体及び/又は水に溶解若しくは分散してなるバインダー樹脂液状物と、フッ素樹脂(C)分散体とを攪拌混合する方法等により調製することができる。上記フッ素樹脂(C)分散体は、上記フッ素樹脂(C)からなる粒子を上述の分散媒で濡らしたのち、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の分散剤で分散させて得る方法、上述の分散媒の表面張力をフッ素系界面活性剤等で下げフッ素樹脂(C)からなる粒子を分散させて得る方法等により得ることができる。
上記攪拌混合は、バスケットミル、ダイナモミル、ボールミル等の粉砕分散機を用いて行うことが好ましい。上記塗料組成物は、上記攪拌混合後、所望により貧溶媒で希釈し粘度調整を行ってもよい。
上記塗料組成物において、アミド基含有性高分子化合物(A)を粒子の状態として使用する場合、上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径は、フッ素樹脂(C)からなる粒子の平均粒子径に比べて相対的に小さいことが好ましく、20μm以下であることが好ましい。上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径は上記範囲内であれば、好ましい下限を0.01μm、より好ましい下限を0.1μmとすることができる。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子、上記抗酸化性物質(B)からなる粒子及び上記フッ素樹脂(C)からなる粒子は、上述の粉体塗料タイプにおけるものであってもよいが、特に、これらの各粒子が分散媒に分散している分散体におけるものである場合、上記平均粒子径の条件を満たすことが好ましい。上記塗料組成物を上述の粉体塗料として用いる場合、上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径のより好ましい上限は、200μm、更に好ましい上限は、150μmである。上記フッ素樹脂(C)からなる粒子の平均粒子径は、上述のように0.1〜50μmであることが好ましい。
上記塗膜(3)は、上記塗料組成物を塗布し、所望により80〜150℃で10〜60分間乾燥を行った後、焼成を行うことにより上記下地層(2)上に形成することができる。
上記塗膜(3)の塗布の方法としては、上記塗料組成物が液状塗料タイプである場合、スプレー塗布、ローラーによる塗布等を用いることが好ましく、上記塗料組成物が粉体塗料タイプである場合、静電塗布、流動浸漬塗布又はロトライニング塗布を用いることが好ましい。
上記塗料組成物は、300℃以上の温度における数10時間という長時間の焼成を行った後でも下地層(2)との密着力低下が起こりにくいものである。このような優れた耐熱密着性は、従来、クロム系プライマーを用いることによってのみ達成することができたものであるが、上記塗料組成物は、6価クロムや6価クロム化合物を用いなくても優れた耐熱密着性を奏することができる。
上記塗膜(3)の厚みは、10〜300μmであることが好ましい。上述の液状塗料タイプの塗料組成物を用いる場合、塗膜(3)の厚みは10〜100μmであることが好ましく、厚みが100μmを超える塗膜は、粉体塗料タイプの塗料組成物を用いて得ることが好ましい。
上記塗膜(3)は、フッ素樹脂(C)を主成分とする第1層、並びに、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び上記抗酸化性物質(B)を主成分とする第2層の2層構造を有する塗膜である。
上記2層構造を有する塗膜は、本明細書において、便宜上「2層構造を有する」というが、実際には、下地層(2)近傍ほどアミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)の濃度が高く、下地層(2)から離れるにつれ抗酸化性物質(B)に代わってフッ素樹脂(C)の濃度が高くなり、塗膜の最表面にはフッ素樹脂(C)が高濃度で存在していると考えられる。従って、上記塗膜は、各成分の配合量によっては、フッ素樹脂(C)からなる層と、アミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)からなる層との間にアミド基含有性高分子化合物(A)及びフッ素樹脂(C)からなるいわば中間層ともいうべき層が存在する場合がある。
上記塗膜(3)の第1層上に後述するフッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層(4)を積層する場合、上記第1層中のフッ素樹脂(C)と上記フッ素樹脂(D)との相溶性により、フッ素樹脂層(4)との接着性に優れた塗膜を形成することができる。
上記塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を有し、上述のように2層構造を有する下地層(2)との密着性に優れた塗膜(3)が得られるので、表層としてフッ素樹脂からなる層を形成することを目的とする場合、上記塗料組成物をいわゆるワンコート法によって1回コーティングするだけでもよいし、上記塗料組成物を塗装することにより形成した塗膜(3)上に上塗り塗料を塗装してもよい。
上記塗料組成物は、プライマー組成物として好適に用いることができる。
上記プライマー組成物は、上塗り塗料を塗装することに先立ち、被塗装物上に塗装する下塗り用塗料組成物である。本明細書において、プライマー組成物は、プライマーということがある。上記上塗り塗料は、塗装して得られる塗装物の用途にもよるが、耐蝕性、非粘着性等のフッ素樹脂の一般的な特性を付与し得る点で、フッ素樹脂(D)からなる塗料であることが好ましい。本明細書において、上記上塗り塗料として上記フッ素樹脂(D)からなる塗料を塗装して得られる塗膜は、フッ素樹脂層(4)である。上記フッ素樹脂(D)については、後述する。本明細書において、上記「上塗り塗料」は、上記「塗料組成物」には含まれない概念である。
上記フッ素樹脂含有積層体は、上述の基材(1)、下地層(2)、及び、塗膜(3)に加え、更に、フッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層(4)を含むものであってもよい。上記基材(1)、下地層(2)、塗膜(3)及び上記フッ素樹脂層(4)は、この順に積層しているものである。
上記フッ素樹脂(D)としては、フッ素樹脂(C)と同じものを用いてもよい。
上記塗料組成物を下地層(2)上に塗装し形成される塗膜(3)の表面には、フッ素樹脂(C)が多く含まれており、上記塗膜(3)の表面との相溶性及び接着性を高める意味で、上記塗膜(3)上に形成するフッ素樹脂層(4)におけるフッ素樹脂(D)としては、フッ素樹脂(C)と同一又は類似の組成を有するフッ素樹脂(D)を用いることが好ましい。
上記フッ素樹脂(D)は、パーフルオロ系樹脂であることが好ましい。
上記フッ素樹脂層(4)は、上記塗料組成物の塗装により得られる塗膜(3)との密着性を高め得る点で、フッ素樹脂(D)とともにフッ素樹脂(C)を含むものであってもよい。
上記塗料組成物から得られる塗膜(3)とフッ素樹脂層(4)との密着性は、フッ素樹脂(C)として末端官能基を有するポリマーからなる樹脂を利用することにより向上させることができる。
上記末端官能基としては特に限定されず、例えば、−COOR(Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、−COF、−CONH、−CHOH、−COOM、−SO、−SO(M、M及びMは、同一又は異なり、I族原子若しくは1価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)、−SO 1/2、−SO 1/2(M及びMは、同一又は異なり、II族原子、鉄等の遷移金属、若しくは、2価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)が挙げられる。上記I族原子としては、例えば、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、上記1価の陽イオンとなることができる原子団としては、例えば、アンモニウム基等が挙げられる。上記II族原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄等が挙げられる。
上記末端官能基の量は、フッ素樹脂(C)のポリマー分子鎖中の炭素数100万個あたり50〜100000個の範囲であることが好ましい。50個未満であると、密着力が低下しやすく、100000個を超えると、焼成時の発泡が激しくなり、塗膜欠陥を生じやすい。フッ素樹脂(C)のポリマー分子鎖中の炭素数100万個あたりより好ましい下限は、100個、更に好ましい下限は、500個であり、より好ましい上限は、50000個、更に好ましい上限は、10000個である。上記末端官能基の量は、赤外分光光度計を用いて測定し得られる値である。
上記末端官能基を有するポリマーにおける末端官能基の量は、通常、適切な触媒、連鎖移動剤及び重合条件を選んで重合することにより調整することができる。
上記末端官能基を有するポリマーにおける官能基の量は、上記官能基を有するモノマーを重合することによって増やすことができる。
上記官能基を有するモノマーを単量体として重合し得られたフッ素樹脂(C)のポリマーを適宜酸、アルカリ等の反応試剤と反応させること及び熱により処理することにより、上記(末端)官能基は反応試剤及び熱の作用により、化学構造の一部が変化する。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、例えば、上記塗料組成物を塗装して得られた塗膜(3)上に、フッ素樹脂(D)からなる上塗り塗料を塗装し、フッ素樹脂(D)の融点以上の温度で30〜120分間焼成することにより得られたものであってもよい。
フッ素樹脂(D)からなる上塗り塗料は、上記塗料組成物と同様に、所望の膜厚によって粉体塗料タイプと液状塗料タイプとが使い分けられ、耐食性の観点(厚膜化の観点)では、粉体塗料を用いることが好ましい。フッ素樹脂(D)からなる上塗り塗料には、上記塗料組成物と同様の分散媒、分散剤、添加剤、その他の樹脂等を用いることができる。
フッ素樹脂層(4)は、フッ素樹脂(D)からなる粉体塗料を塗装することにより形成したものであることが好ましい。
フッ素樹脂層(4)は、膜厚が200μm以上であるものであることが好ましい。
上記塗料組成物は、フッ素樹脂層(4)の膜厚が200μm以上であっても、充分な密着性を保持することができ、高温で長時間の焼成が必要なライニング加工に特に有用である。
本発明のフッ素樹脂含有積層体の用途としては、例えば、攪拌翼、タンク内面、ベッセル、塔、遠心分離器、ポンプ、バルブ、配管、熱交換器、メッキ冶具、タンクローリー内面、スクリューコンベア等の耐蝕用途;半導体工場ダクト等の半導体関連用途;OAロール、OAベルト、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール、インジェクション金型等の工業用離型用途;炊飯釜、ポット、ホットプレート、アイロン、フライパン、ホームベーカリー、パントレー、ガステーブル天板、パン天板、鍋、釜等の家電・厨房関連用途;各種ギアを含む精密機構摺動部材、製紙ロール、カレンダーロール、金型離型部品、ケーシング、バルブ、弁、パッキン、コイルボビン、オイルシール、継ぎ手、アンテナキャップ、コネクター、ガスケット、バルブシール、埋設ボルト、埋設ナット等の工業部品関連用途等が挙げられ、なかでも、家電・厨房関連用途に好適である。
本発明のフッ素樹脂含有積層体の用途としては、例えば、
従来のPAIエナメル線と比較し耐加工劣化性に優れる点で、耐熱エナメル線等の各種電線の被覆材用途;
情報機器部品(紙分離爪、プリンタガイド、ギア、ベアリング)、コネクタ、バーニインソケット、ICソケット、油田用電気部品、リレー、電磁波シールド、リレーケース、スイッチ、カバー、端子板母線等の電気・電子産業関連用途;
バルブシート、油圧用シール、バックアップリング、ピストンリング、ウェアバンド、ベーン、ボールベアリングリテーナー、ローラー、カム、ギア、ベアリング、ラビリンスシール、ポンプ部品、機械的リンク機構、ブッシング、ファスナ、スプラインライナー、ブラケット、油圧ピストン、ケミカルポンプケーシング、バルブ、弁、タワーパッキン、コイルボビン、パッキン、コネクター、ガスケット、バルブシール等の機械工業関連用途;
スラストワッシャ、シールリング、ギア、ベアリング、タペット、エンジン部品(ピストン、ピストンリング、バルブステア)、トランスミッション部品(スプール弁、ボール逆止弁、シーリング)、ロッカーアーム等の車両工業関連用途;
ジェットエンジン部品(ブッシング、ワッシャ、スペーサー、ナット)、パワーコントロールクラッチ、ドアヒンジ用ベアリング、コネクター、チューブクランプ、ブラケット、油圧部品、アンテナ、レドーム、フレーム、燃料系統部品、コンプレッサ部品、ロケットエンジン部品、ウェアストリップ、コネクタシェルフ、宇宙構造体等の航空、宇宙産業関連用途等が挙げられる。
本発明のフッ素樹脂含有積層体の用途としては、ほかにも、製罐機ピンカバー、メッキ装置用部品、原子力関連部品、超音波トランデューサ、ポテンショメータシャフト、給水栓部品等の用途等が挙げられる。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、上述の構成よりなるので、フッ素樹脂からなる層と下地層との密着性に優れ、耐磨耗性、耐食性に優れたものとすることができる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)塗料組成物の調製
ポリアミドイミド樹脂〔PAI〕(商品名:HI−680、日立化成工業社製、30%N−メチル−2−ピロリドン溶液)10.00g、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル共重合体〔PFA〕(融点:305℃、平均粒子径:25μm)6.66g、ポリフェニレンサルファイド樹脂〔PPS〕(商品名:ライトンV−1、フィリップス社製、平均粒子径:80μm)0.33gをN−メチル−2−ピロリドン 13.80g、メチルイソブチルケトン9.20gの混合溶剤に加え、ディスパー(商品名:スリーワンモーター、新東科学社製)を用いて溶解分散して本発明の塗料組成物Aを得た。
(2)フッ素樹脂含有積層体の形成
アルミナ粉(商品名:トサエメリー#40、宇治電化学工業社製)を用いて吹き付け圧力1.0MPaでブラスト処理したアルミニウム合金板(縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm、平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm)上に、Ni 30質量%、Cr 20質量%、Si 1.5質量%、Ti 0.5質量%、Al 0.5質量%、Co 0.5質量%、Fe 47質量%からなる合金粉末(平均粒子径 100μm)を、粉末溶射器を用いて酸素−アセチレンフレームで溶融させながら溶射し、厚さ30μmの下地層を形成した。
次に、上記塗料組成物を乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥し、乾燥塗膜を得た。
得られた乾燥塗膜上に、PFA粉体塗料(平均粒子径:20μm、メルトフローレート:20g/10分)を用いて、焼き付け後の膜厚が20μmとなるように静電塗装し、380℃で20分間焼き付けを行い、フッ素樹脂含有積層体を得た。
比較例1
アルミナ粉(商品名:トサエメリー#40、宇治電化学工業社製)を用いて吹き付け圧力1.0MPaでブラスト処理したアルミニウム合金板上に、上記塗料組成物を乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥し、乾燥塗膜を得た。
得られた乾燥塗膜上に、PFA粉体塗料(平均粒子径:20μm、メルトフローレート:20g/10分)を用いて、焼付け後の膜厚が20μmとなるように静電塗装し、380℃で20分間焼き付けを行い、積層体aを得た。
比較例2
塗料組成物に代えて、DuPont社製の420−703(クロムフリープライマ−)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、積層体bを得た。
耐磨耗性試験
SUS304製の金属へらをフッ素樹脂含有積層体又は積層体に対して45°の角度に置き、この金属へらに500gの荷重をかけ、摺動距離を75mmとして積層体の表面を摺動した。摺動距離1往復を1サイクルとし積層体に損傷を生じたサイクル数をカウンターで読み取り、1000回、3000回の表面状態を目視により観察し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
◎ ほとんど磨耗なし
○ 多少磨耗あり
△ 20−25%磨耗
× 50%以上磨耗
耐食性試験
JIS Z 2371に準拠して、塩水噴霧試験を行った。このときの試験片として、得られた塗膜(3)にクロスカットを行って金属基材に達する深い傷をつけたものを用い、この試験片に5質量%食塩水を35℃で連続的に48時間噴霧した跡の被膜表面及び断面の状態を目視により観察し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
◎ ほとんど腐食跡なし
○ 白い腐食跡が多少あり
× 膨れが発生
Figure 2005335183
表1から、基材上に合金粉末を溶射した実施例1は、耐磨耗性、耐食性ともに優れていたが、溶射をしなかった比較例1と、プライマーとして既存のクロムフリープライマー(420−703)を用いた比較例2とでは、耐磨耗性と耐食性との両立ができないことがわかった。
本発明のフッ素樹脂含有積層体は、例えば、塗膜の耐磨耗性や耐食性が要求される調理器具に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 基材(1)、前記基材(1)上に金属粉末及び/又はセラミックス粉末を溶射することにより形成した下地層(2)、並びに、前記下地層(2)上に塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜(3)を含むフッ素樹脂含有積層体であって、
    前記塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)、前記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)、及び、フッ素樹脂(C)からなる塗料組成物であり、
    前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、
    前記抗酸化性物質(B)は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%である
    ことを特徴とするフッ素樹脂含有積層体。
  2. 抗酸化性物質(B)は、ポリアリレンサルファイドである請求項1記載のフッ素樹脂含有積層体。
  3. フッ素樹脂(C)は、パーフルオロ系樹脂である請求項1又は2記載のフッ素樹脂含有積層体。
  4. 更に、フッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層(4)を含む請求項1、2又は3記載のフッ素樹脂含有積層体であって、
    基材(1)、下地層(2)、塗膜(3)及び前記フッ素樹脂層(4)は、この順に積層しているフッ素樹脂含有積層体。
  5. フッ素樹脂(D)は、パーフルオロ系樹脂である請求項4記載のフッ素樹脂含有積層体。
  6. フッ素樹脂層(4)は、フッ素樹脂(D)からなる粉体塗料を塗装することにより形成したものである請求項4又は5記載のフッ素樹脂含有積層体。
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