JP2005336072A - 腎障害抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係る腎障害抑制剤は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)複合体を有効成分として含有することを特徴とし、特に、糖尿病性腎症のように酸化ストレスが原因となって生じた又は生じる可能性がある腎障害に対して有効である。また、有効成分である上記SOD複合体は、経口投与でも有効であり、長期投与に適している。
【選択図】 図1
Description
また、患者1人当りの透析費用は年間数百万円にも上る。糖尿病性腎症に起因する透析患者の数は、日本の新規透析導入患者の約30%と第1位を占めており、その数は年々増え続けているため、透析費用が保健医療費を破綻させるほど圧迫している。従って、社会全体の経済的損失も無視できない。
そして、このような酸化ストレスが、膵組織だけでなく腎組織も損傷させることが糖尿病性腎症を引き起こす原因の一つであると言われている。
SODの作用: 2O2 −+2H+ → H2O2+O2
カタラーゼの作用: 2H2O2 → O2+2H2O
グルタチオンペルオキシダーゼの作用: ROOH+2GSH → ROH+2H2O+GSSG
なお、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼの存在量が不十分の場合には、そして特に細胞病変に起因して鉄の存在量が非常に少ない場合には、過酸化水素は以下のスキームによって、毒性がより強いヒドロキシラジカルに転化される(フェントン反応)。
フェントン反応:
O2 −+Fe3+ → Fe2++O2
Fe2++H2O2 → Fe3++OH−+OH0
O2 −+H2O2 → O2+OH−+OH0
しかしながら、抗酸化ビタミンやポリフェノール等のSOD様作用成分は、SODとよく似た作用を持つに過ぎず、酵素(生体触媒)としてのSOD能力には遠く及ばない。また、糖尿病性腎症の発症に関与しているとされる抗酸化酵素の糖化失活は不可逆的であるため、失活してしまった抗酸化酵素の作用を補うことは、SOD様作用成分の摂取だけでは困難である。
また、レシチン以外にも半減期を延長させるべく修飾されたSODに関する様々な検証が行われているが、注射投与による安全性を高めるためには消化抵抗性を持つ修飾剤を選択することが出来ない。そのため、注射投与を目的としたSOD誘導体について経口投与での効果が検証された例は皆無である。
また、特許文献2には、スーパーオキシドジスムターゼを含有する経口投与用の医薬組成物が記載されている。しかしながら、この文献には、SODが腎障害に有効であることは記載されていない。
また、特許文献3には、細胞又は臓器の変質が認められる治療用医薬品を製造するためにSODを使用することが記載されている。しかしながら、この文献には、細胞を用いた実験結果しか記載されておらず、SODが腎障害に有効であることも、経口投与が可能であることも記載されていない。
非特許文献1には、魚類である鮭の赤身の色素であるアスタキサンチンが腎障害改善作用を有することが記載されている。しかしアスタキサンチンはSOD様作用成分に過ぎず、糖化失活したSODを直接補充するものではない。
また、本発明の第二の目的は、経口摂取によって生体内のSOD活性を誘導し得る、特に酸化ストレス性腎障害に有効な腎障害抑制剤を提供することにある。
本発明において腎障害抑制剤は、主として、生体内の酸化ストレスを是正することにより、腎障害に対し予防的及び治療的効果を発揮すると考えられる。
有効成分であるSOD複合体は、消化抵抗性を持っているため、分解されずに腸管から吸収されると同時に、生体に対する異物として認識され、免疫系を刺激する。そのためSOD複合体は、生体の防御反応の一環として内因性SOD及びその他の抗酸化酵素活性、例えばカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等を誘導し、活性酸素抑制系に対して全体的に改善効果を与えると考えられる。
本発明の腎障害抑制剤は経口投与で有効なため、糖尿病性腎症のような長期投与が必要な場合や慢性疾患に適用する場合にも適しており、非常に利用価値高い。
複合体を形成するSODとしては、ヒト由来SODでなければ、いかなる起源の異種SODを用いても良いが、SOD含量の高いメロン果実から抽出されるSODを用いることが好ましい。
SODはそのまま用いても良いし、薬学上許容される塩を用いても良い。また本発明においては、天然SODに部位特異的変異法等の方法を行って配列中のアミノ酸の一部を他のアミノ酸に変換したものや、一部のアミノ酸を化学的に修飾したものであっても、SOD活性を失っていないものである限り、SODとして用いることができる。
具体的に好ましい複合体としては、SODと少なくともプロラミンを含む1種または2種以上の付加物質との複合体が挙げられる。プロラミンは、植物起源、特に種々の穀類(小麦、ライ麦、大麦、エンバク、米、キビ及びトウモロコシ等)から誘導される天然(すなわち、非変性)の不溶性蛋白であり、特に小麦から得られるプロラミン(グリアジン)が好ましい。
SOD複合体は、特表平10-511944に記載の方法により製造することが可能であるほか、市販品(商品名「オキシカイン(登録商標)」、製造会社ISOCELL S.A.)を用いることができる。
すなわち、有効成分であるSOD複合体は、経口摂取される際に消化抵抗性を持っているため、分解されずに腸管から吸収されると同時に、生体に対する異物として認識され、免疫系を刺激する。異物として認識されたSOD複合体は、マクロファージ等が産生する活性酸素等により分解を受けるが、SOD複合体自体が活性酸素を分解してしまうため、SOD複合体は本質的に分解されにくい。そのためSOD複合体は、生体内において手強い異物として認識され、生体の防御反応の一環として内因性SOD及びその他の抗酸化酵素活性、例えばカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等を誘導し、活性酸素抑制系に対して全体的に改善効果を与えると考えられる。
また、SOD複合体を含有する経口投与剤は、その作用メカニズムから、高血糖状態における糖毒性により又は酸化ストレスにより引き起こされる広範な二次的疾患の抑制にも効果がある。
本発明による腎障害改善効果は、腎障害に関する一般的な検査方法により総合的に判定すればよいが、例えば、本発明の腎障害抑制剤を投与し続けながら、1回又は1クール投与の前後、又は、投与経過中に、尿中蛋白(得に尿中アルブミン)の有無又は量、血圧または尿量などの検査項目をそれらの正常値と対比する。
経口投与する場合の投与量は、予防的又は保健的に用いるのか、治療的に用いるのかでも異なるが、通常は成人1人1日当り、SOD量として1mg〜25mg又は100〜2,500単位を1〜4回程度に分けて投与すればよい。なお、SOD複合体含有経口剤を、腎障害以外の障害又は疾患、例えば高血糖状態における糖毒性により引き起こされる二次的疾患の抑制に用いる場合も、通常は上記投与量の範囲内で効果が得られる。
なお、本発明においてSODの1単位とは、McCordとFridovichの方法に従い、キサンチン/キサンチンオキシダーゼにより発生させたO2 −により発色する系の550nmの吸光度が直線的に増加する濃度域において、1分間の吸光度変化0.025を、O2 −を消去することにより50%に阻害するときに試験系(3.0ml)中に含まれるSOD量である(McCord, J.M. & Fridovich, I. : J. Biol. Chem., 244, 6049-6055 (1969))。
また、糖尿病性腎症の改善もしくは予防を目的として摂取する場合は、一般的に糖尿病に効果を持つとされる、グァバエキス、サラシアエキス、桑の葉エキス、キクイモエキス、石蓮花エキス、バナバエキス、クロム、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、難消化デキストリン等と組み合わせても良い。
実験動物には、レプチン受容体に異常を持つ2型糖尿病(NIDDM)自然発症動物モデルであるdb/db雌性マウスを用いた。実験動物は6週間の順化を行ったのち各5頭ずつプラセボ(デキストリン)摂取群及び、SOD複合体(商品名「オキシカイン(登録商標)」、製造会社ISOCELL S.A.)摂取群に割り当てた。
投与は、食餌に混合しての経口投与とした。試験食は、食餌量を6g/mice/dayと仮定し、市販粉末飼料にデキストリン及びSOD複合体がそれぞれ5mg/mice/dayとなるように混合して12週間投与した。
6、10、14及び、18週齢に体重、血糖(随時)を測定し、尿を採取して尿量、尿中アルブミン排泄量及び尿中8OHdG(8−ヒドロキシデオキシグアノシン)排泄量を測定した。また、12週齢時には、腹腔糖負荷試験を行った。
尿中アルブミン排泄量の測定結果は、図1に示した通りである。プラセボ摂取群及びSOD複合体摂取群は、投与を開始した6週齢から10週齢までは、それほど大きな差がなかったが、10週齢以降は、プラセボ摂取群において尿中アルブミンが漸増したのに対して、SOD複合体摂取群においては漸減し、18週齢時点で大きな差を生じていた。
従って、SOD複合体は糖尿病を改善するものではなく、腎障害を改善するものである。
Claims (4)
- スーパーオキシドジスムターゼ複合体を有効成分として含有し、経口摂取用に処方された腎障害抑制剤。
- 前記スーパーオキシドジスムターゼ複合体は、スーパーオキシドジスムターゼと少なくともプロラミンとの複合体である、請求項1に記載の腎障害抑制剤。
- 腎障害が酸化ストレス性腎障害である、請求項1又は2に記載の腎障害抑制剤。
- 酸化ストレス性腎障害が糖尿病性腎症である、請求項3に記載の腎障害抑制剤。
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