〔第1実施形態〕
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用冷却系支持構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
図1には、本発明に係る車両用冷却系支持構造が適用された冷却系10周りの全体構成が平面図で示されている。また、図2には、衝突前後の状態が模式図(側面図)で示されている。
これらの図に示されるように、車両の前端部には、フロントバンパリインフォース12を含んで構成されたフロントバンパが配設されている。このフロントバンパリインフォース12は断面形状がコ字状の長尺状部材であり、車両幅方向を長手方向としてフロントバンパカバーの内側に配置されている。なお、フロントバンパリインフォースの構成は種々あり、二枚の板材を使った閉断面構造のものでもよい。
また、車両前部の両サイドには、左右一対のフロントサイドメンバ14が車両前後方向を長手方向として配置されている。各フロントサイドメンバ14の前端部とフロントバンパリインフォース12の長手方向の端部との間には、車両前後方向に長い筒型形状とされたクラッシュボックス16が介在されている。クラッシュボックス16は、フロントバンパリインフォース12から車両後方側への所定値以上の衝突荷重が入力されることにより軸圧縮変形するクラッシュボックス本体部16Aと、このクラッシュボックス本体部16Aの後端部に一体に形成され又は別体で構成されて溶接により固着された矩形平板状の取付部16Bと、によって構成されている。取付部16Bの四隅には図示しないボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔を使って取付部16Bがフロントサイドメンバ14の前端部にボルト及びナットで固定されている。同様に、クラッシュボックス本体部16Aの前端部も、ボルト及びナット或いは溶接によってフロントバンパリインフォース12の長手方向の端部の後部面に固定されている。
なお、クラッシュボックス16の固定構造には種々あり、後端部と同様に取付用のフランジを前端部にも設置するものや、クラッシュボックス本体部16Aを有底筒状に形成してその底部に雌ねじ付きのボルト挿通孔を予め形成しておくといったもの等がある。
上述したフロントバンパリインフォース12とその車両後方側に配置された図示しないエンジン部品(エンジン前端部品)との間には、車両前後方向の幅が狭いスペースが形成されている。このスペースには、ラジエータコア、ファン、ファンシュラウド等から成り、ラジエータサポート24によってボディー側に支持された冷却系10が配設されている。なお、ラジエータサポート24は正面視で略矩形の枠状に形成されており、ボディー側に結合されている。また、組付状態では、側面視でラジエータサポート24の側部24Bが冷却系10よりも車両前方側へ突出した位置に配置されている(図2(A)参照)。
ラジエータサポート24の上端部24A(車両幅方向を長手方向として配置された長尺状の部分)の中央部には、フード26を閉止状態で維持するためのフードロック20が配設されている。これに対応してフード26の前端部の裏面側には、ねじりコイルスプリング等の付勢手段の付勢力によってフードロック20が係合される被ロック部22が形成されている。なお、フード26を開放させるには、まずドライバの操作領域に配設された図示しないフード開放レバーが操作され、フード26のロック状態が一旦解除される。この時点ではフードロック20が依然として被ロック部22に係合しているため、フード26を開放させることはできない。続いて、フード26が若干持ち上げられたことにより形成された隙間から指を入れて解除操作をすることにより、フードロック20の被ロック部22への係合状態が解除され、フード26を開放させることが可能となる。
ここで、上述したラジエータサポート24の側部24Bとクラッシュボックス16の取付部16Bとの間には、回転変位手段としてのダメージャブラケット28が配設されている。以下、ダメージャブラケット28について詳細に説明する。
図3には、ダメージャブラケット28の斜視図が示されている。この図に示されるように、ダメージャブラケット28は、平面視で断面ハット形状に形成されており、各々同一幅に設定された前部28A及び後部28Bと、この前部28Aと後部28Bとを繋ぎ平断面形状がコ字状とされた塑性変形部としての中間部28Cと、によって構成されている。
前部28Aには上下二箇所にボルト挿通孔30が形成されており、クラッシュボックス16の取付部16Bの内端に設けられた屈曲部16B’(図1参照)にボルト32及びナット34で固定されている。また、後部28Bは、ラジエータサポート24の側部24Bに取り付けられた取付板36に溶接されている。従って、ラジエータサポート24は、ダメージャブラケット28を介してクラッシュボックス16の取付部16Bと連結されている。また、組付状態では、中間部28Cは車両幅方向外側へ向けて配置されている。さらに、中間部28Cは、その上端部から下端部へ向かうにつれて車両幅方向外側への突出量が増加するように形成されている。つまり、中間部28Cは裾広がり形状に形成されている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図1(A)、図2(A)に示される状態が衝突前の状態である。通常の車両走行時においては、ラジエータサポート24の上端部24Aの中央に配設されたフードロック20が、フード26の前端部の裏面側に設けられた被ロック部22に係止され、フード26は閉止状態に保持される。
この状態から前面衝突すると、衝突バリア38からの衝突荷重がフロントバンパリインフォース12に入力される。このため、フロントバンパリインフォース12は、車両後方側へと変位する。フロントバンパリインフォース12の長手方向の端部とフロントサイドメンバ14の前端部との間には、クラッシュボックス16が介在されているため、フロントバンパリインフォース12が車両後方側へ変位すると、クラッシュボックス16が軸圧縮変形される。これにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収される。
図1(B)、図2(B)に示されるように、クラッシュボックス16の変形ストロークが所定ストロークに達すると、フロントバンパリインフォース12がラジエータサポート24の両側部24Bの下部側に干渉する。このため、ラジエータサポート24は車両後方側へ押圧されることになる。これにより、ラジエータサポート24の側部24Bとクラッシュボックス16の取付部16Bとを連結しているダメージャブラケット28に車両後方側への荷重が入力される。
具体的には、まず最初に、ラジエータサポート24の側部24Bと取付板36を介して直接結合されたダメージャブラケット28の後部28Bに車両後方側への衝突荷重が入力される。一方、ダメージャブラケット28の前部28Aはクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’にボルト32及びナット34で固定されているため、入力された衝突荷重は車両後方側への引張荷重としてダメージャブラケット28の中間部28Cに作用する。このため、ダメージャブラケット28の中間部28Cが開く(伸びる)方向へ塑性変形される。
ここで、ダメージャブラケット28の中間部28Cは裾広がり形状に形成されているため、上端部側よりも下端部側の方が塑性変形量が大きくなる。このため、ラジエータサポート24及び冷却系10は、フードロック20の被ロック部22への係合点を中心として車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。その結果、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によれば、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
なお、補足すると、本実施形態では、前面衝突時にラジエータサポート24及び冷却系10がフードロック20を中心として回転変位するが、その際にフードロック20から被ロック部22、つまりフード26へラジエータサポート24及び冷却系10の荷重(自重)や衝突荷重が入力される訳ではない。請求項1記載の「フードロック(20)を中心として」というのは、幾何学的な回転中心がフードロック20の被ロック部22への係合点となるように、という意味である。換言すれば、前面衝突時のラジエータサポート24及び冷却系10の変位挙動がフードロック20を中心とした車両後方側かつ車両上方側への回転変位となるようにダメージャブラケット28の形状及び塑性変形モードが決定されているという意味であり、いわば冷却系10及びラジエータサポート24の回転変位時の仮想中心という意味である。
また、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造では、ダメージャブラケット28の中間部28Cの形状を裾広がり形状とすることで、中間部28Cの塑性変形量を上端部側で少なく下端部側で多くなるように調整したので、フードロック20に近い方では少ない回転変位量となり、フードロック20から遠ざかる方では回転変位量が多くなる。よって、冷却系10をフードロック20を中心として車両後方側かつ車両上方側へ回転変位させる際の挙動と回転変位量(ダメージャブラケット28の塑性変形モード)とが合致する。その結果、本実施形態によれば、冷却系10を円滑に回転変位させることができる。
さらに、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造では、ダメージャブラケット28のボディーへの結合点をクラッシュボックス16の取付部16Bに設定したので、ラジエータサポート24及び冷却系10が車両後方側かつ車両上方側へ回転変位する際の荷重の殆どはクラッシュボックス16の取付部16Bに入力される。つまり、当該荷重がフロントサイドメンバ14に入力されるのを極力抑えることができる。その結果、本実施形態によれば、ダメージャブラケット28からの荷重入力によって、フロントサイドメンバ14に変形等の損傷が発生するのを防止することができる。
また、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造では、ラジエータサポート24及び冷却系10を回転変位させる回転変位手段を板状部材のプレス成形によって構成されたダメージャブラケット28で構成したので、塑性変形する中間部28Cの形状や寸法等を調整することにより、ラジエータサポート24及び冷却系10の回転変位量を任意に調整することができる。その結果、本実施形態によれば、入力荷重に対する冷却系10の回転変位量の最適化を容易に行うことができる。
〔第2実施形態〕
以下、図4〜図6を用いて本発明の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図4〜図6に示されるように、この実施形態では、回転変位手段としてのダメージャブラケット40の構成を変更した点に特徴がある。
具体的に説明すると、この第2実施形態では、板状部材をアコーディオン形状となるようにプレス成形したダメージャブラケット40が使用されている。このダメージャブラケット40は、取付用の前部40A及び後部Bと、両者を繋ぐ塑性変形部としての中間部40Cとによって構成されている。ダメージャブラケット40の中間部40Cは蛇腹状に形成されており(平面視ではジグザグ形状に形成されており)、更に側面視では全体的に裾広がり形状とされている。従って、ダメージャブラケット40は、上端部側よりも下端部側の方が塑性変形長が大きく設定されている。なお、後部40Bには、前述した第1実施形態のダメージャブラケット28と同様にボルト挿通孔30が形成されている。
上記ダメージャブラケット40は、ラジエータサポート24の側部24Bとクラッシュボックス16の取付部16Bとの間に配設されている。前部40Aはラジエータサポート24の側部24Bに溶接されており、又後部40Bはボルト32及びナット34でクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’に固定されている。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図4(A)、図5(A)に示される状態が衝突前の状態である。通常の車両走行時においては、ラジエータサポート24の上端部24Aの中央に配設されたフードロック20が、フード26の前端部の裏面側に設けられた被ロック部22に係止され、フード26は閉止状態に保持される。
この状態から前面衝突すると、衝突バリア38からの衝突荷重がフロントバンパリインフォース12に入力される。このため、フロントバンパリインフォース12は、車両後方側へと変位する。フロントバンパリインフォース12の長手方向の端部とフロントサイドメンバ14の前端部との間には、クラッシュボックス16が介在されているため、フロントバンパリインフォース12が車両後方側へ変位すると、クラッシュボックス16が軸圧縮変形される。これにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収される。
図4(B)、図5(B)に示されるように、クラッシュボックス16の変形ストロークが所定ストロークに達すると、フロントバンパリインフォース12がラジエータサポート24の両側部24Bの下部側に干渉する。このため、ラジエータサポート24は車両後方側へ押圧されることになる。これにより、ラジエータサポート24の側部24Bとクラッシュボックス16の取付部16Bとを連結しているダメージャブラケット40に車両後方側への荷重が入力される。
具体的には、まず最初に、ラジエータサポート24の側部24Bと直接結合されたダメージャブラケット28の前部28Aに車両後方側への衝突荷重が入力される。一方、ダメージャブラケット28の後部28Bはクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’にボルト32及びナット34で固定されているため、入力された衝突荷重は車両後方側への引張荷重としてダメージャブラケット40の中間部40Cに作用する。このため、ダメージャブラケット40の中間部40Cが閉じる(縮む)方向へ塑性変形される。
ここで、ダメージャブラケット40は裾広がり形状に形成されているため、上端部側よりも下端部側の方が塑性変形量が大きくなる。このため、ラジエータサポート24及び冷却系10は、フードロック20の被ロック部22への係合点を中心として車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。その結果、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によれば、前述した第1実施形態と同様に、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
また、本実施形態のダメージャブラケット40においても、前述した第1実施形態のダメージャブラケット28と同様に機能するので、前述した第1実施形態で説明したその他の効果(ダメージャブラケット40を裾広がり形状としたことにより冷却系10を円滑に回転変位させることができる効果、ダメージャブラケット40からの荷重入力によってフロントサイドメンバ14に変形等の損傷が発生するのを防止する効果、塑性変形する中間部40Cの形状や寸法等を調整することによって入力荷重に対する冷却系10の回転変位量の最適化を容易に行うことができる効果)も同様に得られる。
さらに、本実施形態によれば、ダメージャブラケット40の塑性変形方向が第1実施形態のダメージャブラケット28とは逆方向になるため(前者は縮み、後者は伸び)、前部40Aをラジエータサポート24の側部24Aに直接溶接することができる。従って、取付板36が不要になるので、その分、部品点数の削減による構造の簡素化、コスト削減を図ることができる。
なお、本実施形態では、ダメージャブラケット40の中間部40Cを蛇腹状に形成したが、これに限らず、波形状等に形成してもよい。
〔第3実施形態〕
以下、図7〜図11を用いて本発明の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図7には本実施形態に係る車両用冷却系支持構造の衝突前後の状態が平面図で示されており、又図8にはその要部拡大平面図が示されており、更に図9には衝突前後の状態の側面図が示されている。また、図10には本実施形態に係るダメージャブラケット50の組付状態の斜視図が示されており、更に図11にはダメージャブラケット50の単品状態の斜視図が示されている。
これらの図に示されるように、この実施形態では、ラジエータサポート24とクラッシュボックス16とを連結する回転変位手段としてのダメージャブラケット50がアーク溶接によって各部材に接合されている点に特徴がある。
具体的に説明すると、この第3実施形態では、ダメージャブラケット50が平面視で略L字状に形成されており、クラッシュボックス16の本体部16Aに対して平行に配置された前部50Aと、クラッシュボックス16の取付部16Bに対して平行に配置された後部50Bとによって構成されている。前部50Aと後部50Bはいずれも台形状、より具体的には上底(寸法A;図11参照)と下底(寸法B>寸法A)を結ぶ一方の線分が垂直で他方の線分が傾斜した台形状に形成されている。
一方、図8に示されるように、ラジエータサポート24の側部24Bには、平面視で鉤状に屈曲された荷重受け部52が一体に(又は別体で)形成されている。荷重受け部52の基部52Aはラジエータサポート24の側部24Bの外側面から車両前方側へ延出されており、又屈曲部52Bはフロントバンパリインフォース12に対して略平行に配置されている。
上記荷重受け部52の基部52Aの外側面には、矩形平板状の取付板54が当接状態で配置されている。取付板54の前端部の外側面には、上下二箇所にウエルドナット56が予め溶着されている。そして、荷重受け部52の基部52Aの外側面に取付板54がボルト58及びウエルドナット56で固定されている。
さらに、取付板54の後端部の外側面には前述したダメージャブラケット50の前部50Aが当接状態で配置されており、当該前部50Aの斜辺部に沿ってアーク溶接が実施され(アーク溶接部を符号60で示す)、取付板54の後端部の外側面に接合されている。また、ダメージャブラケット50の後部50Bはクラッシュボックス16の取付部16Bの後面でかつ内側の側部に当接状態で配置されており、当該後部50Bの斜辺部に沿ってアーク溶接が実施され(アーク溶接部を符号62で示す)、取付部16Bの後面でかつ内側の側部に接合されている。なお、図9においては、アーク溶接部60、62をスポット溶接の如き「×」印で簡略図示している。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図7(A)、図8(A)、図9(A)に示される状態が衝突前の状態である。通常の車両走行時においては、ラジエータサポート24の上端部24Aの中央に配設されたフードロック20が、フード26の前端部の裏面側に設けられた被ロック部22に係止され、フード26は閉止状態に保持される。
この状態から前面衝突すると、衝突バリア38からの衝突荷重がフロントバンパリインフォース12に入力される。このため、フロントバンパリインフォース12は、車両後方側へと変位する。フロントバンパリインフォース12の長手方向の端部とフロントサイドメンバ14の前端部との間には、クラッシュボックス16が介在されているため、フロントバンパリインフォース12が車両後方側へ変位すると、クラッシュボックス16が軸圧縮変形される。これにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収される。
図7(B)、図8(B)、図9(B)に示されるように、クラッシュボックス16の変形ストロークが所定ストロークに達すると、フロントバンパリインフォース12がラジエータサポート24の両側部24Bに設けられた荷重受け部52の屈曲部52Bに干渉する。このため、ラジエータサポート24は車両後方側へ押圧されることになる。これにより、ラジエータサポート24の側部24Bの取付板54とクラッシュボックス16の取付部16Bとを連結しているダメージャブラケット40に車両後方側への荷重が入力される。ダメージャブラケット50はアーク溶接によって取付板54及びクラッシュボックス16の取付部16Bにそれぞれ溶接されているが、かかるアーク溶接部60、62は車両後方側への荷重(図8(A)の矢印F方向への荷重)には接合強度が弱いため、ダメージャブラケット50の前部50Aは取付板54から離れ、後部50Bは取付板16Bから離れる。
ここで、ダメージャブラケット50は上端部側(上底側)よりも下端部側(下底側)の方が長く形成されているため、上端部側よりも下端部側の方が大きく変位する。このため、ラジエータサポート24及び冷却系10は、フードロック20の被ロック部22への係合点を中心として車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。その結果、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によれば、前述した第1実施形態と同様に、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
また、本実施形態のダメージャブラケット50においても、前述した第1実施形態のダメージャブラケット28と同様に機能するので、前述した第1実施形態で説明したその他の効果(ダメージャブラケット50の上端部側よりも下端部側の方を長くしたしたことにより冷却10を円滑に回転変位させることができる効果、ダメージャブラケット50からの荷重入力によってフロントサイドメンバ14に変形等の損傷が発生するのを防止する効果、ダメージャブラケット50の形状や寸法等を調整することによって入力荷重に対する冷却系10の回転変位量の最適化を容易に行うことができる効果)も同様に得られる。
さらに、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造は、前面衝突時の荷重入力方向に対する接合強度が脆弱になるようにアーク溶接を利用したものといえる。かかるアーク溶接自体は自動車のボディー組立て工程で実施されているため、既存設備を利用して構成を成立させることができるメリットがある。その結果、本実施形態によれば、コストの上昇を抑えることができる。
〔第4実施形態〕
以下、図12〜図15を用いて本発明の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図12〜図15に示される各実施形態は、ダメージャブラケットの車両後方側への変位構造のバリエーションという位置付けであり、車両上方側への回転変位を生じさせるための構成は含んでいない。従って、車両上方側への回転変位の構成については、他の実施形態の構成が付加される。
図12に示されるダメージャブラケット70は、形状的には、前述した第3実施形態のダメージャブラケット50の代替案として好適な例である。このダメージャブラケット70では、前部70Aと後部70Bとを含み平面視でL字状に形成されている点で前述した第3実施形態のダメージャブラケット50と同様であるが、後部70Bの上下二箇所に円弧状の開口72が形成されており、更に各開口72の直下にスポット溶接が施されている点で前述した第3実施形態のダメージャブラケット50とは相違している。因みに、このダメージャブラケット70の場合、後部70Bがクラッシュボックス16の取付部16Bの内側の側部にスポット溶接部74にて接合されており、又前部70Aは前述した第3実施形態の取付板54に接合されている。
上記構成によれば、スポット溶接部74の上方側に円弧状の開口72を形成したことにより、スポット溶接部74の上部周辺の強度が低下する。このため、前面衝突時の荷重がダメージャブラケット70に入力された際に、開口72の周囲に変形が生じ易くなり、その分、スポット溶接部74が剥がれ易くなる。その結果として、ダメージャブラケット70によるラジエータサポート24ひいては冷却系10の車両後方側への変位を成立させるというものである。
また、ダメージャブラケット70をスポット溶接でクラッシュボックス16の取付部16Bに接合しているため、この部分の本来的な接合強度は高い。従って、通常の車両走行時における冷却系10の保持力を十分確保することができるという利点がある。つまり、通常の車両走行時には、ダメージャブラケット70に入力される荷重の殆どが車両下方側への荷重であるが、本実施形態では開口72をスポット溶接部74の上方側に設定したので、冷却系10の保持力が低下するのを防止することができる。
図13(A)、(B)に示される実施形態では、前述した第3実施形態のダメージャブラケット50及び取付板54に替えて、平面視でL字状に形成されたダメージャブラケット76を用い、前部76Aの先端部を荷重受け部52の基部52Aにウエルドナット56及びボルト58で締結し、後部76Bをクラッシュボックス16の取付部16Bに溶接したものである。
上記構成によれば、図13(B)に示されるように、前面衝突時にクラッシュボックス16の本体部16Aの軸圧縮変形が進むにつれて、車両前後方向の長さが長い前部76Aの肉が後部76B側へ移動する(周る)如くしてダメージャブラケット76の前部76Aが塑性変形していく。
図14及び図15に示される実施形態では、クラッシュボックス16の取付部16Bがラジエータサポート24の側部24Bの後方側まで車両幅方向内側へ延長されており(以下、「延長部78」と称す)、かかる延長部78とラジエータサポート24の側部24Bの後面との間に車両上下方向を長手方向とする筒状のダメージャクラッシュボックス80が配設されている。なお、ダメージャクラッシュボックス80の前端部80Aはラジエータサポート24の側部24Bの後面に接合されており、又後端部80Bは前記延長部78に接合されている。また、延長部78の後面とフロントサイドメンバ14の内側の側面との間には、平面視で三角形状の支持壁82が設けられている。
また、上記ダメージャクラッシュボックス80の組付状態における車両前後方向の中間部には括れ部84が一体に形成されている。従って、ダメージャクラッシュボックス80は、車両前後方向の荷重に対して括れ部84で耐力が低く、塑性変形の起点となる機能が付与されている。
上記構成によれば、前面衝突時にダメージャクラッシュボックス80の圧縮座屈変形によってラジエータサポート24及び冷却系10を車両後方側へ変位させる機能に加えて、その際にダメージャクラッシュボックス80が圧縮座屈変形することでエネルギー吸収性能が高められる。
〔第5実施形態〕
以下、図16を用いて本発明の第5実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図16に示されるように、この実施形態では、前述した第4実施形態の図13の構成に規制手段としての制御ブラケット90を設けた点に特徴がある。
具体的には、フロントサイドメンバ14の前端側の内側面には、側面視で台形状の制御ブラケット90が固着されている。制御ブラケット90の前端面は上縁側から下縁側に向かうにつれて後端面からの距離が縮小される傾斜面90Aとされている。傾斜面90Aの傾斜角度は、ラジエータサポート24をどの程度車両後方側かつ車両上方側へ回転変位させるかによって決定されている。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
前面衝突時、フロントバンパリインフォース12の車両後方側への変位によってクラッシュボックス16が軸圧縮変形すると、それに伴ってダメージャブラケット76が車両後方側へ塑性変形しながら変位していく。
ダメージャブラケット76の車両後方側への変位が進むと、まずダメージャブラケット76の後端部が制御ブラケット90の傾斜面90Aの上端側に干渉し、それ以上の車両後方側への変位が規制される。なおもダメージャブラケット76に車両後方側への衝突荷重が入力されると、ダメージャブラケット76は制御ブラケット90の傾斜面90Aに沿うように傾き、ラジエータサポート24を車両後方側かつ車両上方側へ回転変位させる。
このように本実施形態に係る車両用冷却系支持構造では、フロントサイドメンバ14に制御ブラケット90を設け、ダメージャブラケット76の車両後方側への変位が進むと、制御ブラケット90にダメージャブラケット76が干渉してそれ以上の車両後方側かつ車両上方側への回転を阻止するようにしたので、ラジエータサポート24が回転変位し過ぎて他部品(エンジン部品等)と干渉するのを防止することができる。
なお、本実施形態では、ダメージャブラケット76が制御ブラケット90に干渉するように配置したが、これに限らず、ラジエータサポート24の側部24Bに制御ブラケットが直接干渉するようにしてもよい。
また、上記説明においては、図13の作動をベースにして本実施形態の作用・効果を説明したので、ダメージャブラケット76が車両後方側へ変位するのが先で、それから制御ブラケット90の傾斜面90Aにダメージャブラケット76が干渉し車両上方側へ回転変位すると説明したが、前述した第3実施形態までの構成に規制手段を付加すれば、規制手段はラジエータサポート又はダメージャブラケットの車両後方側かつ車両上方側への回転変位時に干渉し、その移動ストロークを規制するという動作になることを補足しておく。
〔第6実施形態〕
以下、図17及び図18を用いて本発明の第6実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図17及び図18に示されるように、この実施形態では、前述した第4実施形態の図14のダメージャクラッシュボックス80の形状を側面視で略台形状に変更した点に特徴がある。
具体的には、本実施形態のダメージャクラッシュボックス94は側面視で台形状に形成されており、前端部94Aは傾斜面とされ、後端部94Bは垂直面とされている。前端部94Aはラジエータサポート24の側部24Bの後面に接合されており、又後端部90Bはクラッシュボックス16の取付部16Bの延長部78に接合されている。
また、上記ダメージャクラッシュボックス94の組付状態における車両前後方向の中間部には括れ部96が一体に形成されている。従って、ダメージャクラッシュボックス94は、車両前後方向の荷重に対して括れ部96で低剛性化されており、変形の起点となる機能が付与されている。
上記構成によれば、図18(A)に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、ダメージャクラッシュボックス94の形状に起因してラジエータサポート24が後傾した状態で保持されている。この状態から前面衝突時になると、図18(B)に示されるように、ダメージャクラッシュボックス94に車両後方側への衝突荷重が入力される。このため、ダメージャクラッシュボックス94は括れ部96を起点として圧縮座屈変形を起こす。このとき、ダメージャクラッシュボックス94が側面視で台形状に形成されているため、上底側よりも下底側の方が塑性変形量が多くなる。これにより、ラジエータサポート24及び冷却系10は、車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。
また、図14に示されるダメージャクラッシュボックス80と同様に、ダメージャクラッシュボックス94が圧縮座屈変形することで前面衝突時のエネルギーを吸収させることができる。
〔第7実施形態〕
以下、図19〜図21を用いて本発明の第7実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図19〜図21に示されるように、この実施形態では、回転変位手段の主要部として離脱ブラケット100を用いた点に特徴がある。
具体的に説明すると、フロントサイドメンバ14の前端部の上面には正面視でL字状に形成された取付ブラケット102が配置されている。取付ブラケット102の垂直部102Aはラジエータサポート24の側部24Bの上部にボルト104及びナット106といった固定具で固定されている。一方、取付ブラケット102の水平部102Bは、フロントサイドメンバ14の前端部の上面に溶接により接合されている。なお、垂直部102A及び水平部102Bの両側部には、フランジが立ち上げられている。
上記取付ブラケット102の垂直部102Aの下部とラジエータサポート24の側部24Bとの間には、略矩形平板状に形成された離脱ブラケット100の上部が挟持された状態で配設されている。図21に示されるように、離脱ブラケット100の前端下部には、折り曲げによる荷重受け部108が一体に形成されている。この荷重受け部108は、離脱ブラケット100の一般部から車両前方側へ所定量突出されており、前面衝突時にフロントバンパリインフォース12に当接するように配置されている。
また、離脱ブラケット100の前端上部には、U字状の切欠110が形成されている。切欠110は車両前後方向を切欠方向として切り欠かれており、かかる切欠110の終端部にてボルト112及びナット114でクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’に取り付けられている。従って、所定値以上の車両後方側への荷重が締結部に入力されると、離脱ブラケット100は車両後方側へ抜けるようになっている。
なお、上記構成における取付ブラケット102及び離脱ブラケット100並びにボルト104、ナット106が本発明における回転変位手段に相当する。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図19及び図20に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、離脱ブラケット100はクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’に締結された状態、つまり離脱していない状態にある。
この状態から前面衝突時になると、フロントバンパリインフォース12に押されてクラッシュボックス16の本体部16Aが軸圧縮変形する。クラッシュボックス16の変形ストロークが所定ストロークに達すると、フロントバンパリインフォース12が離脱ブラケット100の荷重受け部108に当接する。このため、離脱ブラケット100は車両後方側へ押圧され、クラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’への締結トルクを超えた時点で、離脱ブラケット100は締結部から離脱される。その後、クラッシュボックス16の本体部16Aの軸圧縮変形が進むのにつれて取付ブラケット102の垂直部102Aの締結点P(ボルト104及びナット106)を中心としてラジエータサポート24が車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。なお、締結点P回りにラジエータサポート24が回転変位すると、フードロック20の係合点回りにラジエータサポート24が回転変位したのと等価になるように各部の位置関係及び寸法関係が設定されている。その結果、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によれば、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
〔第8実施形態〕
以下、図22〜図24を用いて本発明の第8実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図22〜図24に示されるように、この実施形態では、ラジエータサポート120がラジエータサポートアッパ122とラジエータサポートロア124とに分割されている。そして、ラジエータサポートアッパ122の下端部とラジエータサポートロア124の上端部とが各々二枚のダメージャブラケット126によって相互に連結されている。連結後の状態では、ラジエータサポートロア124の方がラジエータサポートアッパ122に対して所定角度後傾されている。
なお、ラジエータサポート120は、ラジエータサポートアッパ122の両側部の下部側にてボディー側に取り付けられている(ボディーへの取付点を符号「127」で示す)。また、冷却系10は主としてラジエータサポートロア124に後傾した状態で支持されており、ラジエータサポートアッパ122には冷却系10の上端部がブラケット129を介して固定されている。
さらに、図24に示されるように、各ダメージャブラケット126は側面視で台形状に形成されており、その長手方向の中間部には括れ部128が形成されている。従って、ダメージャブラケット126は、括れ部128の形成位置で車両前後方向の荷重入力に対する剛性が低下されている。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図23(A)に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、ダメージャブラケット126はその形状に起因して、ラジエータサポートロア124をラジエータサポートアッパ122に対して所定角度後傾した状態に保持している。
この状態から前面衝突時になると、フロントバンパリインフォース12によってラジエータサポートロア124が車両後方側へ押圧される。これにより、ダメージャブラケット126に車両後方側への荷重が入力され、図23(B)に示されるように、ダメージャブラケット126が車両前後方向へ座屈される。その結果、ラジエータサポートロア124がラジエータサポートアッパ122に対して略平行となるまで回転変位される。従って、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によっても、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
〔第9実施形態〕
以下、図25及び図26を用いて本発明の第9実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図25及び図26に示されるように、この実施形態では、ラジエータサポート130が側面視で左右逆向きの「く」の字状に形成されている点に特徴がある。
具体的に説明すると、ラジエータサポート130は、車両上下方向に沿って配置されたラジエータサポート上部132と、このラジエータサポート上部132の下端部から車両前方側へ屈曲されたラジエータサポート下部134とによって構成されている。ラジエータサポート上部132とラジエータサポート下部134との境界部の後部側には、V字状の切欠136が形成されている。さらに、ラジエータサポート下部134の両側部の前面上部には、ブロック状に形成された干渉用のブラケット138が取り付けられている。側面視で見た場合、ブラケット138はラジエータサポート下部134よりも車両前方側へ向けて突出した状態で配置されている。
なお、冷却系10は、ラジエータサポート下部134の下縁部にマウント140によって支持されている。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図26(A)に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、ラジエータサポート下部134は、ラジエータサポート上部132に対して後傾した状態で配置されている。
この状態から前面衝突時になると、フロントバンパリインフォース12によってラジエータサポート下部134の両側部に設定されたブラケット138が車両後方側へ押圧される。このため、低強度化された切欠136の形成部位に応力集中が生じ、この切欠136が閉じられるようにラジエータサポート下部134がラジエータサポート上部132側へ車両後方側かつ車両上方側へ回転変位される。従って、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によっても、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
また、本実施形態のラジエータサポート130は、前述した第8実施形態のように上下二分割構造とされていないので、形状的な安定性が得られるというメリットがある。また、部品点数も削減されるので、低コスト化を図ることができる。
なお、本実施形態では、ラジエータサポート120の後部側の面に切欠136を形成したが、これに限らず、低強度部としての機能が得られる構成であればすべて適用可能である。例えば、切欠136の替わりに薄肉部を設定するものや、孔を形成するもの等、種々の構成を採用することが可能である。
〔第10実施形態〕
以下、図27〜図30を用いて本発明の第10実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
これらの図に示されるように、この実施形態では、ラジエータサポート140の車体側への締結状態をダメージャブラケット142を使って解除されるように構成した点に特徴がある。
具体的に説明すると、図27に示されるように、クラッシュボックス16の本体部16Aの後端部に配設された取付部16Bは平面視でL字状に形成されており、車室内側の端部は車両後方側へ屈曲されて屈曲部16B’とされている。一方、ラジエータサポート140の側部140Aは平面視でL字状に形成されており、車両前後方向に沿ってクラッシュボックス16の屈曲部16B’の内側面に当接状態で立設されている。さらにラジエータサポート140の側部140Aの前端中央部には、車両前方側へ所定長さ突出する突出部140A’が一体に形成されている。
さらに、ラジエータサポート140の側部140Aの内側(突出部140A’と重なる位置)には、プレートアーム状に形成されたダメージャブラケット142が配置されている。ダメージャブラケット142の基端部142Aは、ラジエータサポート140の側部140Aの内側面の高さ方向中間部付近に当接状態で配置されている。また、ダメージャブラケット142の先端部142Bは、車両前方斜め上方側へ向けてクラッシュボックス16の本体部16Aに沿って平行に延出されている。なお、ダメージャブラケット142の先端部142Bは、ラジエータサポート140の側部140Aの前端よりも車両前方側に位置されかつフロントバンパリインフォース12の後面よりも車両後方側に位置されている。
上記クラッシュボックス16の屈曲部16B’の高さ方向中間部には、後端縁側から車両前方側へ切り込まれたスリット144(図28参照)が形成されている。これに対応して、ラジエータサポート140の側部140Aには、スリット144と重合する位置にボルト挿通孔146(図29参照)が形成されている。さらに、ダメージャブラケット142の基端部142Aにも、ラジエータサポート140に形成されたボルト挿通孔146と同軸上にボルト挿通孔148(図29参照)が形成されている。そして、ダメージャブラケット142の車両幅方向内側から取付ボルト150がボルト挿通孔148、146、スリット144内へこの順に挿入されて、クラッシュボックス16の屈曲部16B’の外側面でナット152と螺合されることにより、ダメージャブラケット142及びラジエータサポート140の側部140Aがクラッシュボックス16の取付部16Bの屈曲部16B’に取り付けられている。さらに、取付ボルト150をナット152に螺合させた後、取付ボルト150の頭部150Aの周囲がダメージャブラケット142の基端部142Aの内側の側面に所定の溶接強度で溶接されている。この溶接強度がダメージャブラケット142の回転開始トルクを決定する。
なお、上記構成において、ダメージャブラケット142、スリット144、取付ボルト150及びナット152が本発明における回転変位手段に相当する。
次に、この実施形態の作用並びに効果について説明する。
図29(A)及び図30(A)に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、ダメージャブラケット142の先端部142Bは、車両前方斜め上方側へ向けてクラッシュボックス16の取付部16B’の前端とフロントバンパリインフォース12の後面との間に位置されている。
この状態から前面衝突時になり、フロントバンパリインフォース12が車両後方側へ変位すると、クラッシュボックス16の本体部16Aが軸圧縮変形される。そして、クラッシュボックス16の本体部16Aの軸圧縮変形ストロークが所定ストロークに達すると、フロントバンパリインフォース12の後面がダメージャブラケット142の前側側面142Cの上部側に当接(干渉)する。そして、更にフロントバンパリインフォース12の車両後方側への変位が進むと、図30(B)に示されるように、フロントバンパリインフォース12の後面によってによってダメージャブラケット142の前側側面142Cが車両後方側へ押圧される。これにより、ダメージャブラケット142に溶接により一体化された取付ボルト150の頭部150Aにボルト緩み方向への回転トルクが作用し、ダメージャブラケット142によって取付ボルト150が図30(B)図示状態において時計方向(図30(B)の矢印A方向)へ所定量回転される。その結果、溶接部154が破断し、取付ボルト150が緩み、取付ボルト150とナット152とによる締結状態が強制的に解除される。
その後、図29(B)及び図30(C)に示されるように、ラジエータサポート140の側部140Aの車体側への固定状態が解除されると、フロントバンパリインフォース12によってラジエータサポート140の突出部140A’が車両後方側へ押圧され、取付ボルト150がクラッシュボックス16の屈曲部16B’に形成されたスリット144から離脱し、ラジエータサポート140及び冷却系10がフードロック20を中心として車両後方側かつ車両上方側(図30(C)の矢印B方向側)へ回転変位される。
従って、本実施形態に係る車両用冷却系支持構造によっても、冷却系10が他部品と干渉して冷却系10自体が損傷を受けたり、フード26が冷却系10と干渉して損傷を受けるのを極力回避することができる。
しかも、通常の車両走行時には、取付ボルト150の頭部150Aが溶接によりダメージャブラケット142の側面に固着されているため、車体振動等の外力が作用しても取付ボルト150が不用意に緩むことはなく、又取付ボルト150の錆付きによる離脱荷重の変動も生じない。従って、本実施形態によれば、前面衝突時にラジエータサポート140を車体側から安定した状態で離脱させることができる。