JP2005328319A - 水中通信システム - Google Patents

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Abstract

【課題】水中の多重反射による符号間干渉の影響を少なくし、安定した効率のよい通信を可能とする水中通信システムを提供する。
【解決手段】水上局と水中局間に形成される音響伝搬路の時間的応答から、直接波と遅延波の到来時間を検出し、直接波と予め定められた許容遅延時間以降に予め定められた閾値以上の遅延波との遅延時間を送波間隔として、水中局から水上局へデータを送信する。
【効果】浅海域における多重反射などの影響に対して、水上局と水中局との間で安定した水中通信ができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、超音波を伝送媒体とした水中通信システムに関し、特に浅海域における多重反射などの影響に対して、水上局と水中局との間で安定した通信を行うことが可能な水中通信システムに関する。
従来、海水中でのデジタルデータ通信では、超音波を伝送媒体とした通信システムが用いられている。海中では、送信側から受信側に直接到来する直接波の他に、海面や海底などに反射して到来する遅延波が存在する。特に浅海域では、音波の距離減衰も小さいため、大きなパワーを有する多数の遅延波が生じ、データの伝送エラーを生じさせる大きな原因となる。以下、従来の水中通信システムについて、図9、図10を用いて説明する。
図9は、従来技術における、水中局と水上局からなる水中通信システムの超音波伝搬を説明するための説明図である。
図9において、水中局10で収集された海底地形データや物体探知データは、超音波の周波数帯域の変調信号に変換され、水中局10に備えられた送波器100から送信されて、水上局20に備えられた受波器200で受信される。受信された信号は、水上局20でデジタル処理され、無線アンテナ3を介して、別の水上局や陸上の基地局に伝送される。
受波器200で受信される超音波には、実線のパスRdに沿って、受波器200に直接到来する直接波の他、破線のパスRsのように、海面1で反射して到来する遅延波、一点鎖線のパスRb1のように、海面1で反射して到来する遅延波、二点鎖線のパスRb2のように、海底2と海面1で反射して到来する遅延波など、多数の遅延波が存在する。これら遅延波は、直接波に重畳して、受信信号の振幅や位相を変化させる、いわゆるマルチパス・フェージング環境を作り出すため、データの伝送エラーを生じさせる原因となる。
図10は、図9において、受波器200で受信されたパルスの時間的な応答を示したパルス応答波形図である。図10(a)は全体の時間的応答を示す図、図10(b)、10(c)は、図10(a)における、A部、B部付近の拡大図である。
ここで、送波器100の深度Dtは150m、海底2から送波器100までの距離Hは50m、海面1と受波器200までの距離Drは10cm、送波器100と受波器200までの水平距離Lは200m、パルスの帯域は20kHz〜70kHz、シンボルレートは8000ボー(baud)としている。図10(b)に示したパルス波形のうち、パルスA1は、図9に示す実線のパスRdに沿って伝達された直接波であり、パルスA2は、図9に示す破線のパスRsに沿って伝達された遅延波である。また、同10(c)に示したパルス波形のうち、パルスB1は、図9に示す一点鎖線のパスRb1に沿って伝達された遅延波であり、パルスB2は、図9に示す二点鎖線のパスRb2に沿って伝達された遅延波である。図9、図10から、特に浅海域では、数百シンボルの時間的遅れをもって、大きなパワーを有する遅延波が存在することがわかる。
このようなマルチパス・フェージング環境下においても、安定した水中通信を可能とする技術が知られている(例えば、特許文献1:「多重超音波による水中超音波伝送装置及び超音波伝送方法」、特許文献2:「水中通信方式」)。特許文献1に記載の技術は、海面反射に起因して発生する不感領域(ヌル領域)を、異なる周波数の搬送波を用いて補間することにより、データ受信の確実性を向上させるものである。
また、特許文献2に記載の技術では、スタートパルス、データパルス、エンドパルスで構成された受信信号のFSK(Frequency Shift Keying)変調波を周波数分析し、この変調波の周波数帯域内に、スタートパルスが存在しているか否かを検出して、スタートパルスの存在が確認されると、検出した信号の時間的に分離した周波数分析結果を用いて、コード判定を行うものである。
特開平9−55707号公報
特開2004−15762号公報
上述したように、特に、浅海域における水上局と水中局とのデータ通信では、数百シンボルの時間的な遅れをもって、大きなパワーの遅延波が到来する。このような遅延波が到来すると、フェージングによる音響伝搬路の周波数選択性は、非常に細かく細分化され、多くの不感領域が形成される。また、不感領域の変化は、水上局と水中局の位置関係に大きく依存するため、上述の従来技術では、通信の安定性が劣化する可能性があった。
本発明の目的は、水中の多重反射による符号間干渉の影響を少なくし、安定した効率のよい通信を可能とする水中通信システムを提供することにある。
本発明の目的は、浅海域における多重反射などの影響に対して、水上局と水中局との間で安定した水中通信を行うことが可能な水中通信システムを提供することにある。
本発明の水中通信システムは、水上局と水中局間に形成される音響伝搬路の時間的応答を検出する手段と、検出された時間的応答から直接波と遅延波の到来時間間隔に基づいて送信間隔を制御する手段とを具備している。
本発明の水中通信システムでは、水中局は、水上局から送信された既知の送信パルスを受信し、受信信号を電気信号に変換する受波器と、受波器から得られた信号と既知の送信パルスとの相関値を求める相関処理部と、相関値から直接波と遅延波との遅延時間を検出し、予め定められた許容遅延時間と予め定められた相関閾値とを超える遅延波の最大遅延時間を求める遅延時間検出部と、最大遅延時間を最大フレーム長として送信データのデータフレーム系列を生成し、最大遅延時間の間隔でデータフレーム系列を出力する信号生成部と、信号生成部の出力によって変調された変調信号を生成する変調部と、変調信号をアナログ信号に変換するD/A変換器と、アナログ信号を増幅する送信アンプと、送信アンプの電気出力を音響パワーに変換して水中に送信する送波器とを具備している。
本発明の水中通信システムでは、データフレーム系列は、フレーム先頭を表すフレーム同期系列Fs(図4中の41)と、データ系列と、フレーム末尾を表すフレーム同期系列Fe(図4中の42)とから構成されており、データ系列はフレーム同期系列Fs(図4中の41)とフレーム同期系列Fe(図4中の42)との間に時間的に挟まれて位置しており、水上局は、フレーム同期系列Fs(図4中の41)とフレーム同期系列Fe(図4中の42)とを検出して、データ系列の変調信号を抽出するフレーム同期部と、データ系列の変調信号に含まれるデータのシンボル長を求めるシンボル長検出部と、データ系列の変調信号を復調し、受信データを出力する復調部とを備えている。
このような構成によって、逐次変化する音響伝搬路の時間的応答特性に対応して、データの送受信を行う時間間隔が決定されるため、水中におけるデータの送受信を、安定且つ効率よくできる。
本発明の水中通信システムでは、フレーム同期系列Fs(図4中の41)とフレーム同期系列Fe(図4中の42)は、鋭い自己相関関数を有するバーカー(Barker)符号あるいはM系列符号を用いる。このため、確実なフレーム同期と受信データのシンボル数の検出が行え、水中におけるデータの送受信を、安定且つ効率よくできる。
本発明の水中通信システムでは、水上局は、mを自然数、Tをシンボルレートとして、タップ間隔T/m、タップ数nの、受信シンボルデータを等化する適応等化器を備えており、水中局の遅延時間検出部における許容遅延時間はT・n/m以上となっている。
また、本発明の水中通信システムでは、適応等化器に判定帰還形適応等化器を用いる。この場合、Tをシンボルレート、nbを判定帰還形適応等化器のフィードバックフィルタのタップ数として、水中局の遅延時間検出部における許容遅延時間はT・nb以上とする。このような構成及び手法を用いて、比較的短い間隔で到来する遅延波の符号間干渉の影響は適応等化器で除去され、適応等化器で等化が不可能な遅延波の影響も除外可能であり、水中におけるデータの送受信を安定且つ効率よくできる。
本発明の水中通信システムでは、以上のような構成によって、水上局と水中局との間で安定且つ効率のよい水中通信が可能となる。また、浅海域における多重反射などの影響に対して、より具体的には、直接波が到来してから比較的長い遅延時間を経て到来する、大きなパワーの遅延波に対しても、水上局と水中局との間で安定した水中通信が可能となる。
本発明の水中通信方式は、超音波を伝送媒体として水上局と水中局との間でデジタルデータを送受信する水中通信方式であって、水上局と水中局間における音響伝搬路の時間的応答を検出して、検出された時間的応答から直接波と遅延波の到来時間間隔に基づいて送波間隔を制御することを特徴とする水中通信方式であり、本発明の水中通信方式は、水中局において、受波器により、水上局から送信された既知の送信パルスを受信し、受信信号を電気信号に変換し、相関処理部により、受波器から得られた信号と既知の送信パルスとの相関値を求め、相関値から直接波と遅延波との遅延時間を検出し、遅延時間検出部により、予め定められた許容遅延時間と予め定められた相関閾値とを超える遅延波の最大遅延時間を求め、信号生成部により、最大遅延時間を最大フレーム長として送信データのデータフレーム系列を生成し、最大遅延時間の間隔でデータフレーム系列を出力し、変調部により、信号生成部の出力によって変調された変調信号を生成し、D/A変換器により、変調信号をアナログ信号に変換し、送信アンプによりアナログ信号を増幅して、送波器により、送信アンプの電気出力を音響パワーに変換して水中に送信することを特徴とする水中通信方式である。
本発明の上記の水中通信方式では、データフレーム系列は、フレーム先頭を表すフレーム同期系列Fsと、データ系列と、フレーム末尾を表すフレーム同期系列Feとから構成されており、データ系列はフレーム同期系列Fsとフレーム同期系列Feとの間に時間的に挟まれて位置しており、水上局において、フレーム同期部により、フレーム同期系列Fsとフレーム同期系列Feとを検出して、データ系列の変調信号を抽出し、シンボル長検出部により、データ系列の変調信号に含まれるデータのシンボル長を求め、復調部により、データ系列の変調信号を復調し、受信データを出力することを特徴とする。この特徴によって、逐次変化する音響伝搬路の時間的応答特性に対応して、データの送受信を行う時間間隔が決定できるので、水中におけるデータの送受信を安定且つ効率よく実行できる。
また、本発明の上記の水中通信方式では、フレーム同期系列Fsとフレーム同期系列Feは、バーカー(Barker)符号あるいはM系列符号であることを特徴とする。このため、確実なフレーム同期と受信データのシンボル数の検出が行え、水中におけるデータの送受信を安定且つ効率よく実行できる。
また、本発明の上記の水中通信方式では、水上局は、mを自然数、Tをシンボルレートとして、適応等化器により、タップ間隔T/m、タップ数nの、受信シンボルデータを等化し、水中局の遅延時間検出部における許容遅延時間をT・n/m以上とすることを特徴とする。
また、本発明の上記の水中通信方式では、適応等化器は判定帰還形適応等化器であり、Tをシンボルレート、nbを判定帰還形適応等化器のフィードバックフィルタのタップ数として、水中局の遅延時間検出部における許容遅延時間をT・nb以上とすることを特徴とする。
以上説明した方式によって、比較的短い間隔で到来する遅延波の符号間干渉の影響は適応等化器で除去され、適応等化器で等化が不可能な遅延波の影響も除外できるので、水中におけるデータの送受信を、安定且つ効率よく実行できる。
本発明の水中通信方式では、水上局と水中局との間で安定且つ効率のよい水中通信を行うことが可能となる。また、浅海域における多重反射などの影響に対して、より具体的には、直接波が到来してから比較的長い遅延時間を経て到来する、大きなパワーの遅延波に対しても、水上局と水中局との間で安定した水中通信を行うことが可能となる。
本発明の水中通信システム及び水中通信方式によれば、直接波と遅延波の到来時間間隔でデータを送受信することにより、遅延波による干渉の影響を小さくし、誤りの少ない安定した水中通信が可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図10を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において使用しているパラメータT1、T2、TI、TFにおけるTに続く、大文字1、2、I、Fは、図中にでは下付きの小文字として示されている。
以下の説明では、図9に示したような位置関係にある水中局10と水上局20との間の水中通信を考え、図9に図示しない水中局10の受波器110と送波器100とは同じ位置にあるものとし、図9に図示しない水上局20に備えられた送波器と受波器200とは同じ位置にあるものとする。また、受波器110と送波器100は、海面1からの深度Dtが150m、海底2からの距離Hが50mに位置しており、水上局20に備えられた図9に図示しない送波器と受波器200は、海面1からの距離Drが10cmに位置し、送波器100と受波器200との水平距離Lは200mとする。また、シンボルレートTは8000ボー(baud)、データ通信に使われる周波数帯域は、42kHz〜58kHzとする。
図1は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局10の装置構成を示すブロック図である。
図2は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水上局20の装置構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の相関処理部で得られる相関関数の一例を示す特性図である。図3において、縦軸は相関値(相関関数の相対値)、横軸はシンボルレートTで正規化した時間をそれぞれ示す。
図4は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられるデータフレーム系列の構成を示す図である。
図5は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の信号生成部から出力されるデータフレーム系列のタイミングを示す図である。
図6は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の信号生成部から出力されるデータフレーム系列の別のタイミングを示す図である。
図1において、水中局10に備えられた受波器110は、水上局20から送信された既知のパルス信号を受信する。このパルス信号には、例えば、チャープ信号を用いる。受波器110で受信されたパルス信号は、受信アンプ111で増幅され、A/D変換器112でアナログ信号からデジタル信号に変換され、相関処理部113に出力される。相関処理部113では、水上局20から送信された既知のパルス信号をレプリカ信号とした相関演算を行い、相関関数を計算する。
図3は、上述した位置関係に水中局10と水上局20が位置する場合の、相関処理部113で得られる相関関数の一例を示した特性図である。ここで、パルス信号は、上記周波数帯域を有するパルス幅1msのチャープ信号としており、横軸の時間軸は、上記シンボルレートTで正規化した時間を示している。図3のように得られた相関関数をもとに、図1に示す遅延時間検出部114では、予め定められた許容遅延時間と予め定められた相関閾値とを超える遅延波の最大遅延時間ΔTを求める。例えば、許容遅延時間を30シンボル、相関閾値をT1における相関値の1/10として、直接波がT1で検出されたとする。遅延時間検出部114では、さらにT2における遅延波を検出し、ΔT=T1−T2を最大遅延時間として出力する。
図1に示す遅延時間検出部114から得られた最大遅延時間ΔTをもとに、図1に示す信号生成部120では、一度に送信するデータフレームの長さTFが、最大遅延時間ΔT以下になるように、送信データ30からデータを抽出し、図4に示すような、データフレーム系列40を生成する。データフレーム系列40は、フレーム先頭に位置するフレーム同期系列41と、後述する適応等化器220のタップ係数初期化に使われるトレーニング系列45と、送信データ30から抽出されたデータ系列43と、フレーム末尾に位置するフレーム同期系列42とから構成されている。確実な同期を行うために、フレーム同期系列41とトレーニング系列45との間や、データ系列43とフレーム同期系列42との間には、ポーズ44を挿入してもよい。
信号生成部120は、このようにして生成したデータフレーム系列を最大遅延時間ΔT以上の間隔TIで、次々と変調部121に出力する。即ち、信号生成部120からは、図5に示すようなタイミングで、データフレーム系列40が出力される。
なお、最大遅延時間ΔTが非常に長い場合には、図6のように、データフレーム長さTFが最大遅延時間ΔTの1/2以下になるように、送信データ30からデータを抽出し、2つのデータフレーム系列40を最大遅延時間ΔT以上の間隔TIで出力するようにしてもよい。同様に、3つ以上のデータフレーム系列40を、最大遅延時間ΔT以上の間隔TIで出力するようにしてもよい。これによって、フレーム同期や等化の精度が向上し、伝送誤差を低減することができる。
変調部121で変調された変調信号は、D/A変換器122でデジタル信号からアナログ信号に変換され、送信アンプ123で増幅された後、送波器100で音響パワーに変換されて水中へ送信される。水中へ送信された信号は、水上局20に備えられた受波器200で受信され、受信アンプ211で増幅された後に、低域通過フィルタ(LPF)212を介して、A/D変換器213でアナログ信号からデジタル信号に変換される。ここで、低域通過フィルタ(LPF)212のカットオフ周波数は、A/D変換器213のサンプリング周波数から決まるナイキスト周波数とすればよい。
変換されたデジタル信号は、デジタル自動ゲイン制御回路(AGC)214でスケーリングされ、帯域外雑音を除去するために帯域通過フィルタ(BPF)215に入力される。帯域通過フィルタ(BPF)215を通過した受信信号は、次にフレーム同期部216に入力される。
フレーム同期部216では、データフレーム系列40のフレーム同期系列41とフレーム同期系列を相関処理によって検出し、データフレーム系列40のフレーム同期系列41との間に挟まれたトレーニング系列45とデータ系列43ヲ抽出して、復調部218に出力する。シンボル長検出部217は、フレーム同期部216での相関処理の結果を参照し、抽出したトレーニング系列45とデータ系列43に含まれるシンボル数を演算する。データ系列43が正しく抽出されるか否かは、フレーム同期の精度に依存するため、フレーム同期系列41やフレーム同期系列42では、バーカー(Barker)符号かM系列符号のように鋭い相関関数を有するものを使用するのが望ましい。
復調部218で復調された信号はシンボル長検出部217から求められたシンボル数に相当する長さ分だけ、デシメータ219で適応等化器220のタップ間隔T/m(但し、mは自然数)にダウンサンプルされ、適応等化器220に入力される。適応等化器220は、トレーニング系列45を用いてタップ係数の初期化を行い、データ系列43を等化して受信データ31を出力する。適応等化器220は、線形適応等化器を用いてもよいが、望ましくは判定帰還形適応等化器を用いた方が、推定精度がよく、トレーニング系列45によるトレーニング回数も少なくすることができる。
ここで、適応等化器220の動作について説明する。適応等化器220のタップ間隔をT/m(但し、mは自然数)、タップ数をnとすると、適応等化器220では、直接波が到来してからT・n/m以内に到来する遅延波による符号間干渉は等化の対象になるが、T・n/m以上経てから後に到来する遅延波は、等化ができない。
即ち、図3に示したような、直接波が到来した時刻T1から約380シンボル遅れて到来する時刻T2の遅延波を等化の対象とするには、適応等化器220に少なくとも380タップ以上のタップ数がなければならない。等化精度を向上させるためにmを大きくしたり、伝送速度を早くするためにシンボルレートTを大きくすると、数千タップ以上のタップ数を必要としなければならず、実時間での処理が困難になる。
従って、図9のような水中通信では、破線のパスRsに沿って到来する遅延波は適応等化器220によって等化できるが、一点鎖線のパスRb1や二点鎖線のパスRb2に沿って到来する遅延波は等化処理が困難であり、通信の安定性を劣化させる要因となる。以下、図7、図8を用いて、データフレーム系列の長さと通信の安定性について説明する。
図7は、本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水上局の判定帰還形適応等化器の等化誤差関数の一例を示す特性図である。図7において、縦軸は平均二乗誤差を示し、横軸はシンボルレートTで正規化した時間を示す。
図8は、本発明の実施例の方式、従来方式にいての、判定帰還形適応等化器から出力される4位相偏移変調受信データの受信点配置図である。図8(a)は従来方式による結果、図8(b)は本発明の実施例の方式による結果を示す。図8(a)、図8(b)は、受信点の複素面での配置を示し、実数部Reは位相が同じである同相成分を示し、虚数部Imは直交成分を示す。
図7は、適応等化器220に判定帰還形適応等化器を用いた場合の、判定帰還形適応等化器の等化誤差関数の一例を示した特性図である。ここで、雑音のない伝送路の特性は図10の場合と同じであり、判定帰還形適応等化器のフィードフォワードフィルタにおけるタップ数を8、タップ間隔をT/2とし、フィードバックフィルタにおけるタップ数を3、タップ間隔をTとした。また、変調方式は4位相偏移変調方式とし、1ビット当たりの信号エネルギー対雑音電力比を12dBとした。図7から明らかなように、1500シンボル分のデータフレーム系列に対し、遅延波A2(図10(b)参照)の影響は除去されるが、遅延波B1、B2(図10(c)参照)が干渉する時間以後は、等化誤差が非常に大きくなっている。
図8から明らかなように、本発明の実施例の水中通信方式では、安定したエラーの少ない水中通信が可能になることがわかる。
上述の例の判定帰還形適応等化器では、直接波の到来時刻から3シンボル分の遅れまでの遅延波までが等化できるため、図10(b)の遅延波A2の符号間干渉は除去できるが、図10(c)の遅延波については等化できない。従って、直接波が到来してから3シンボル以上遅れて到来する遅延波に対して、最大遅延時間ΔTを検出すればよい。即ち、水上局20が、mを自然数、Tをシンボルレートとして、タップ間隔T/m、タップ数nの、受信シンボルデータを等化する適応等化器220を備えている場合には、水中局10の遅延時間検出部114における許容遅延時間はT・n/m以上とすればよく、適応等化器220が、フィードバックフィルタのタップ数nbの判定帰還形適応等化器である場合には、水中局10の遅延時間検出部114における許容遅延時間はT・nb以上とすればよい。
このように本発明によれば、適応等化器220で等化できない、例えば、図9に示す、一点鎖線のパスRb1や二点鎖線のパスRb2に沿って到来する遅延波の最大遅延時間ΔTを検出し、送受信するデータフレーム系列40の長さをΔT以下にし、且つ、ΔT以上の間隔で送受信するため、直接波から比較的時間を経て到来する遅延波の符号間干渉の影響を避けることができ、安定した水中通信が可能になる。
本発明の水中通信システム及び水中通信方式は、水中における離れた2点間でデジタルデータの送受信を行うために利用され、主に浅海域において海底探査や海中環境を調査する水中航送体などの水中局と、海面上付近に浮遊した通信ブイなどの水上局との間でデジタルデータを送受信するために利用される。
本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の装置構成を示すブロック図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水上局の装置構成を示すブロック図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の相関処理部で得られる相関関数の一例を示した特性図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられるデータフレーム系列の構成図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の信号生成部から出力されるデータフレーム系列のタイミング図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水中局の信号生成部から出力されるデータフレーム系列の別のタイミング図。 本発明の実施例の水中通信システムに用いられる水上局の判定帰還形適応等化器の等化誤差関数の一例を示した特性図。 本発明の実施例の方式、従来方式にいての、判定帰還形適応等化器から出力される4位相偏移変調受信データの受信点配置図。 従来技術における、水中局と水上局からなる水中通信システムの超音波伝搬を説明するための説明図。 図9において、受波器200で受信されたパルスの時間的な応答を示したパルス応答波形図。
符号の説明
1…海面、2…海底、3…無線アンテナ、10…水中局、20…水上局、30…送信データ、31…受信データ、40…データフレーム系列、41、42…フレーム同期系列、43…データ系列、44…ポーズ、45…トレーニング系列、100…送波器、110…受波器、111、211…受信アンプ、112、213…A/D変換器、113…相関処理部、114…遅延時間検出部、120…信号生成部、121…変調部、122…D/A変換器、123…送信アンプ、200…受波器、212…低域通過フィルタ(LPF)、214…デジタル自動ゲイン制御回路(AGC)、215…帯域通過フィルタ(BPF)、216…フレーム同期部、217…シンボル長検出部、218…復調部、219…デシメータ、220…適応等化器。

Claims (6)

  1. 超音波を伝送媒体として水上局と水中局との間でデジタルデータを送受信する水中通信システムにおいて、前記水上局と前記水中局間における音響伝搬路の時間的応答を検出する手段と、検出された前記時間的応答から直接波と遅延波の到来時間間隔に基づいて送波間隔を制御する手段とを具備することを特徴とする水中通信システム。
  2. 請求項1に記載の水中通信システムにおいて、前記水中局は、前記水上局から送信された既知の送信パルスを受信し、前記受信信号を電気信号に変換する受波器と、前記受波器から得られた信号と前記既知の送信パルスとの相関値を求める相関処理部と、前記相関値から直接波と遅延波との遅延時間を検出し、予め定められた許容遅延時間と予め定められた相関閾値とを超える遅延波の最大遅延時間を求める遅延時間検出部と、前記最大遅延時間を最大フレーム長として送信データのデータフレーム系列を生成し、前記最大遅延時間の間隔で前記データフレーム系列を出力する信号生成部と、前記信号生成部の出力によって変調された変調信号を生成する変調部と、前記変調信号をアナログ信号に変換するD/A変換器と、前記アナログ信号を増幅する送信アンプと、前記送信アンプの電気出力を音響パワーに変換して水中に送信する送波器とを具備することを特徴とする水中通信システム。
  3. 請求項2に記載の水中通信システムにおいて、前記データフレーム系列は、フレーム先頭を表すフレーム同期系列Fsと、データ系列と、フレーム末尾を表すフレーム同期系列Feとから構成されており、前記データ系列は前記フレーム同期系列Fsと前記フレーム同期系列Feとの間に時間的に挟まれて位置しており、水上局は、前記フレーム同期系列Fsと前記フレーム同期系列Feとを検出して、前記データ系列の変調信号を抽出するフレーム同期部と、前記データ系列の変調信号に含まれるデータのシンボル長を求めるシンボル長検出部と、前記データ系列の変調信号を復調し、受信データを出力する復調部とを備えていることを特徴とする水中通信システム。
  4. 請求項3に記載の水中通信システムにおいて、前記フレーム同期系列Fsと前記フレーム同期系列Feは、バーカー(Barker)符号あるいはM系列符号であることを特徴とする水中通信システム。
  5. 請求項2、3、4の何れか記載の水中通信システムにおいて、水上局は、mを自然数、Tをシンボルレートとして、タップ間隔T/m、タップ数nの、前記受信シンボルデータを等化する適応等化器を備えており、前記水中局の前記遅延時間検出部における前記許容遅延時間はT・n/m以上であることを特徴とする水中通信システム。
  6. 請求項5に記載の水中通信システムにおいて、前記適応等化器は判定帰還形適応等化器であり、Tをシンボルレート、nbを前記判定帰還形適応等化器のフィードバックフィルタのタップ数として、前記水中局の前記遅延時間検出部における前記許容遅延時間がT・nb以上であることを特徴とする水中通信システム。
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