本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る発光ダイオード10の断面を示す。
発光ダイオード10は、サファイア基板11を有しており、そのサファイア基板11の一主面11a上に、格子不整合を緩和することを目的としたバッファ層12が50nmの厚さで形成されている。更にバッファ層12の上に、順に、厚さ4μmのn型GaN層13、厚さ50nmのn型InGaN発光層14、クラッド層として厚さ150nmのp型AlGaN層15、厚さ300nmのp型GaN層16が積層されている。n型GaN層13はクラッド層としても働く。
これらのn型GaN層13からp型GaN層16までの各層には、2×1017cm-3の炭素が含有されている。また、第2の実施の形態で述べるように、p型AlGaN層15及びp型GaN層16にSiが微量添加され、これらがエッチングしやすいようになっている。
結晶成長の後、p型GaN層16からn型InGaN層14までが、n型GaN層13が露出するまでエッチングされ、その後、ほぼ全面が厚さ400nmのSiO2 膜17で覆われる。このSiO2 膜17の必要な部分に孔が形成され、p型層16に対してAu−Ni膜18が、n型層13に対してAl膜19が形成され、オーミック電極が配設される。
以下に、発光ダイオード10の製造方法の実施例を順に説明する。
この発光ダイオード10は、周知の有機金属気相成長法(MOCVD法)による気相成長により製造した。用いたガスは、原料ガスとしてアンモニア(NH3 )、シラン(SiH4 )及び四塩化炭素(CCl4 )を用い、キャリアガスとして水素(H2 )及び窒素(N2 )を用いた。有機金属原料として、トリメチルガリウム((CH3 )3 Ga)(以下、TMGと記す)、トリメチルアルミニウム((CH3 )3 Al)(以下、TMAと記す)、トリメチルインジウム((CH3 )3 In)(以下、TMIと記す)、ジメチル亜鉛((CH3 )2 Zn)(以下、DMZと記す)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム((C5 H5 )2 Mg)(以下、Cp2 Mgと記す)を用いた。
まず、有機洗浄、酸洗浄及び熱処理によって洗浄したc面11aを一主面とした単結晶のサファイア基板11をMOCVD装置の反応室に載置された加熱可能なサセプタ上に装着した。次に、常圧でH2 を10L/分の流量で流しながら、温度1050℃で約10分間、サファイア基板11の一主面11aを気相エッチングした。
次に、サファイア基板11を510℃まで降温し、H2 を15L/分、N2 を5L/分、NH3 を10L/分、及びTMGを25cc/分の各流量で6分間流すことによって、バッファ層12を形成した。
次に、サファイア基板11を1020℃まで昇温且つ保温し、H2 を15L/分、N2 を5L/分、NH3 を10L/分、TMGを25cc/分、100ppmのSiH4 を1cc/分、及びCCl4 を5cc/分の各流量で60分流すことによって、n型GaN層13を形成した。
次に、サファイア基板11を800℃まで降温し、H2 を5L/分、N2 を15L/分、NH3 を10L/分、TMGを3cc/分、TMIを100cc/分、SiH4 を1cc/分、DMZを10cc/分、及びCCl4 を5cc/分の各流量で15分流すことによって、n型InGaN層14を形成した。
次に、サファイア基板11を1020℃まで昇温且つ保温し、H2 を15L/分、N2 を5L/分、NH3 を10L/分、TMGを50cc/分、TMAを25cc/分、Cp2 Mgを30cc/分、CCl4 を25cc/分、及びSiH4 を0.1cc/分の各流量で5分流すことによって、p型AlGaN層15を形成した。
更に、サファイア基板を1020℃に保温したまま、H2 を15L/分、N2 を5L/分、NH3 を10L/分、TMGを25cc/分、Cp2 Mgを30cc/分、CCl4 を5cc/分、及びSiH4 を0.1cc/分の各流量で5分程度流すことによって、p型GaN層16を形成した。この様にCCl4 を成長ガスに使用することで各成長層に炭素を含有させることができる。
この後、TMG、Cp2 Mg及びCCl4 の流れを切り、H2 を15L/分、N2 を5L/分、及びNH3 を10L/分の各流量で流しながらサファイア基板11を700℃まで降温した。更に、H2 及びNH3 を切り、N2 を5L/分で保持しながらサファイア基板11をサセプタ上に放置し、室温まで降温した(図8参照)。
ここで、H2 及びNH3 を切り、N2 のみにする温度は300℃以上であることが必要であり、500℃以上であることが望ましい。これは高温の水素雰囲気下では成長結晶膜の表面付近の不純物が活性水素によって不活性化するためであると考えられる。そのため、このような高温の水素雰囲気下では活性化される不純物の割合は1%程度にすぎない。この様な場合には、活性化されていない不純物は格子欠陥を作り、非発光再結合中心となるため素子の効率を著しく低下させる。これに対して上述したような高温で切り替えを行った場合には、添加された不純物の少なくとも7%以上、多くの場合10%以上が活性化されていることが判明した。
また、基板の冷却速度は50℃/分以下であることが望ましい。これ以上の速度で冷却した場合には、特にAlを加えた混晶系、例えばAlGaN等において、結晶に熱応力が掛かるため、結晶表面にクラックが生じることがある。
なお、室温まで降温する際のガスとしては、母体結晶の構成元素の1つであるN2 を用いることが望ましいが、He、Ar等の不活性ガスを用いることも可能である。
この様な工程を経ることで、不純物の活性化率を向上させるために従来とられてきた熱アニール等の工程を必要としなくなるため、工程の簡略化を図ることができ、製造に要する時間の短縮も図ることができる。更に、熱アニール等の後工程を経るよりも高い活性化率を得ることができる。
次に、窒化物系化合物半導体層が成長したサファイア基板11をMOCVD装置から取り出し、レジスト等を用いることによってマスクとし、アルカリ系の水溶液によってn型GaN層13が露出するまでエッチングし、メサ構造とした。その後、CVD装置によって、表面にSiO2 膜17を約400nm形成した。この膜によってメサ構造側面に露出したpn接合界面付近のリーク電流は抑制され、素子の劣化は抑制される。
次に、SiO2 膜17に弗酸系の溶液を用いて、p型GaN層16が約100μm角の大きさで、またn型GaN層13が約100μmφの大きさで露出するように孔を形成した。この孔を通して、p型層16に対して約1μmのAu−Ni膜18を、n型層13に対して約600nmのAl膜19を形成し、オーミック電極とした。以上の工程で発光ダイオードが完成した。
かかる発光ダイオード10における各層の不純物濃度はp型GaN層16中のMg濃度のみが1×1020cm-3であり、n型GaN層13、n型InGaN層14、及びp型AlGaN層15に各々含まれるSi、Zn、Mgの濃度は2×1019cm-3であった。また、n型GaN層13からp型GaN層16までの各層中に含まれる炭素濃度は2×1017cm-3であった。
この様にして形成された発光ダイオード10を約350μm角の大きさでダイシングして、ステム上にマウント、モールドし、ランプ化した。このようにして形成された発光ダイオードにおいては、順方向電流20mAに対して2〜3mW程度の光出力を得ることができ、寿命も約2万時間を実現することができた。これらの値は、炭素を実質的に含まない、即ち、測定時の検出限界以下であるような場合の同様の構造を有する発光ダイオードの特性と比較して約2〜3倍の向上となっている。
この炭素濃度については1×1016cm-3から5×1017cm-3までの領域でこれまで述べてきたような効果が見られた。これより少ない場合には、窒素空孔による深い準位の形成によって取り出し効率に低下が見られた。即ち、炭素添加による効果が現われなかった。一方、この範囲よりも多い場合には、炭素が結晶内において析出し、非発光再結合センターや、結晶欠陥の要因となり、効果が現われなくなった。効果が顕著に現われるためには、炭素濃度が5×1016cm-3以上で且つ5×1017cm-3以下であることが望ましく、更には炭素濃度が1×1017cm-3から3×1017cm-3までの範囲にあるとき、取り出し効率が極大値をとった。
ここでは、発光層をInGaNにした場合について述べたが、発光層がGaN、InGaAlNで形成されている場合でも同様の効果が得られた。
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る発光ダイオード20の断面を示す。
発光ダイオード20は、サファイア基板21を有しており、そのサファイア基板21上に、格子不整合を緩和するためにGaNのバッファ層22が50nmの厚さで形成されている。そのバッファ層22の上に、順に、厚さ3μmのn型GaN層23、厚さ100nmのn型InGaN発光層24、クラッド層として厚さ300nmのp型AlGaN層25、厚さ500nmのp型GaN層26が積層されている。
各層の不純物濃度は以下の通りである。p型GaN層26ではMg濃度が1×1020cm-3、Si濃度は1×1017cm-3である。p型AlGaN層25ではMg濃度が2×1019cm-3、Si濃度は1×1017cm-3である。n型InGaN層24ではSi濃度が2×1019cm-3、Zn濃度が1×1018cm-3である。n型GaN層23中のSi濃度は2×1019cm-3である。
以下に、発光ダイオード20の製造方法の実施例を順に説明する。
まず、有機洗浄、酸洗浄及び熱処理によって洗浄したa面((11-20)面)を主面とした単結晶のサファイア基板21をMOCVD装置の反応室に載置された加熱可能なサセプタ上に装着した。次に、常圧でH2 を10L/分の流量で流しながら、温度1050℃で約10分間、サファイア基板21の一主面を気相エッチングした。
次に、サファイア基板21を510℃まで降温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを25cc/分の各流量で流すことによって、バッファ層22を形成した。
次に、サファイア基板21を1020℃まで昇温且つ保温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを25cc/分、SiH4 を5cc/分の各流量で60分流すことによって、n型GaN層23を形成した。
次に、サファイア基板21を800℃まで降温し、H2 を10L/分、N2 を15L/分、NH3 を5L/分、トリエチルガリウム((C2 H5 )3 Ga)(以下、TEGと記す)を3cc/分、TMIを30cc/分、DMZを1cc/分、SiH4 を1cc/分の各流量で30分流すことによって、n型InGaN層24を形成した。この層形成においてのZn添加は発光中心としての役割と同時に、平坦な薄膜成長を助ける役割をも合わせ持っている。
次に、サファイア基板21を1020℃まで昇温且つ保温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを50cc/分、TMAを25cc/分、Cp2 Mgを50cc/分、SiH4 を1cc/分の各流量で10分間流すことによって、p型AlGaN層25を形成した。
更に、サファイア基板21を1020℃に保温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを25cc/分、Cp2 Mgを100cc/分、SiH4 を1cc/分の各流量で10分程度流すことによって、p型GaN層26を形成した。
この後、TMG、Cp2 Mg、及びSiH4 を切り、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分の各流量で流したまま、サファイア基板21を800℃まで降温した。その後、N2 を10L/分流しながらサファイア基板21をサセプタ上に放置し、室温まで降温した。
次に、窒化物系化合物半導体層が成長したサファイア基板21をMOCVD装置から取り出し、レジスト等を用いることによってマスクとし、アルカリ系の水溶液によってn型GaN層23が露出するまでエッチングし、メサ構造とした。その後、CVD装置によって、表面にSiO2 膜27を約200nm形成した。この膜によってメサ構造側面に露出したpn接合界面付近のリーク電流は抑制され、素子の劣化は抑制される。
次に、SiO2 膜27に弗酸系の溶液を用いて、p型GaN層26が約100μm角の大きさで、またn型GaN層23が約120μmφの大きさで露出するように孔を形成した。この孔を通して、p型GaN層26に対して約2μmのAu−Ni膜28を、n型層23に対して約1μmのAl−Ti膜29を形成し、オーミック電極とした。
このようにして形成された発光ダイオード20を約350μm角の大きさでダイシングして、ステム上にマウント、モールドし、ランプ化した。このようにして形成された発光ダイオード20は、発光強度においても信頼性においても第1の実施の形態で示した発光ダイオード10と同程度の性能を示した。
かかる発光ダイオード20において、本発明の主旨であるp型GaN層26及びp型AlGaN層25におけるSi濃度は上述した通り、いずれの層も2×1017cm-3であった。この濃度においてp型GaN層26及びp型AlGaN層25はエッチング除去することができ、素子を形成することが可能であった。このようにエッチングが可能であった濃度は1×1016cm-3以上を必要とした。一方、Siは本来ドナー性の不純物であるため、過剰の添加は本来p型であるべきGaN層26及びAlGaN層25をn型に変化させてしまうという問題を生じる。そのため、Si濃度の上限は、その層のアクセプター濃度に依存するが、素子形成に必要なp型のキャリア濃度が1×1018cm-3であることから、Si濃度が8×1017cm-3以下ではn型に転じることが少ないということが判明した。更に、Si濃度が5×1017cm-3以下であることが望ましく、5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下の濃度であることが素子形成に最も望ましいものであった。
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係る発光ダイオード30の断面を示す。
発光ダイオード30は、結晶性のAlN基板31を有しており、そのAlN基板31上に、順に、厚さ4μmのn型AlGaN層33、厚さ100nmのn型GaN発光層34、クラッド層として厚さ300nmのp型AlGaN層35、厚さ500nmのp型GaN層36が積層されている。また、n型AlN層33からp型GaN層36までの各層中には酸素が1×1018cm-3含有されている。
以下に、発光ダイオード30の製造方法の実施例を順に説明する。
まず、有機洗浄、酸洗浄及び熱処理によって洗浄したAlN基板31をMOCVD装置の反応室に載置された加熱可能なサセプタ上に装着した。次に、常圧でH2 を10L/分の流量で流しながら、温度1050℃で約10分間、AlN基板の一主面を気相エッチングした。
次に、AlN基板31を1000℃まで降温且つ保温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMAを25cc/分、TMGを50cc/分、SiH4 を1cc/分、0.1%に希釈した酸素(O2 )を20cc/分の各流量で60分流すことによって、n型AlGaN層33を形成した。
次に、AlN基板31を1000℃に保持したまま、H2 を10L/分、N2 を15L/分、NH3 を5L/分、TEGを3cc/分、DMZを10cc/分、SiH4 を1cc/分、希釈した酸素O2 を300cc/分の各流量で4分流すことによって、n型GaN層34を形成した。
次に、AlN基板を1000℃に保温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを50cc/分、TMAを25cc/分、Cp2 Mgを100cc/分、希釈したO2 を200cc/分の各流量で5分間流すことによって、p型AlGaN層35を形成した。
更に、AlN基板を1000℃に保温したまま、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを50cc/分、Cp2 Mgを30cc/分、希釈したO2 を200cc/分の各流量で20分程度流すことによって、p型GaN層36を形成した。
この後、AlN基板31を900℃まで降温し、常圧でNH3 を10L/分、N2 を10L/分の各流量で流しながらこれをサセプタ上に放置した。
窒化物系化合物半導体層が成長したAlN基板31をMOCVD装置から取り出し、レジスト等を用いることによってマスクとし、アルカリ系の水溶液によってn型AlGaN層33が露出するまでエッチングし、メサ構造とした。その後、CVD装置によって、表面にSiO2 膜37を約300nm形成した。この膜によってメサ構造側面に露出したpn接合界面付近のリーク電流は抑制され、素子の劣化は抑制される。
次に、SiO2 膜37に弗酸系の溶液を用いて、p型GaN層36が約100μm角の大きさで、またn型AlGaN層33が約100μmφの大きさで露出するように孔を形成した。この孔を通して、p型GaN層36に対して約2μmのAu−Ni膜38を、n型AlGaN層33に対して約1μmのAl膜39を形成し、オーミック電極とした。
このようにして形成された発光ダイオード30を約400μm角の大きさでダイシングして、ステム上にマウント、モールドし、ランプ化した。このようにして形成された発光ダイオード30は、発光強度においても信頼性においても第1の実施の形態で示した発光ダイオード10と同程度の性能を示した。
かかる発光ダイオード30において各層の不純物濃度はp型GaN層36中のMg濃度のみが1×1020cm-3であり、n型AlGaN層33からp型AlGaN層35までに含まれるSi、Zn、Mg濃度は2×1019cm-3であった。また、本実施の形態の特徴である酸素濃度は上述した値1×1018cm-3を含む1×1018cm-3から1×1020cm-3までの領域で窒素空孔を埋めることによる効果が見られた。これより少ない場合には、発光強度に効果が見られなかった。一方、この範囲よりも多い場合には、装置内で爆発する恐れがあるため、装置の安全性に問題が生じる。この中でも1×1018cm-3から1×1019cm-3の酸素濃度の場合に発光素子として特性が最も向上した。
(第4の実施の形態)
図4は本発明の第4の実施の形態に係る発光ダイオード40の断面を示す。
発光ダイオード40は、サファイア基板11を有しており、そのサファイア基板11の一主面上に、格子不整合を緩和するためにバッファ層42が50nmの厚さで形成されている。そのバッファ層42の上に、順に、厚さ4μmのn型GaN層43、厚さ50nmのn型InGaN発光層44、クラッド層として厚さ150nmのp型AlGaN層45、厚さ300nmのp型GaN層46が積層されている。これらのn型GaN層43及びn型InGaN発光層44には、夫々水素が5×1018cm-3含まれている。
更に、結晶成長の後、n型InGaN層44からp型GaN層46までが、n型GaN層43が露出するまでエッチングされ、その後、ほぼ全面が厚さ400nmのSiO2 膜47で覆われる。このSiO2 膜47の必要な部分に孔が形成され、p型層46に対してAu−Ni膜48が、n型層43に対してAl膜49が形成され、オーミック電極が配設される。
以下に、発光ダイオード40の製造方法の実施例を順に説明する。
まず、有機洗浄、酸洗浄及び熱処理によって洗浄したC面を主面とした単結晶のサファイア基板11をMOCVD装置の反応室に載置された加熱可能なサセプタ上に装着した。次に、常圧でH2 を20L/分の流量で流しながら、温度1100℃で約10分間、サファイア基板11を気相エッチングした。
次に、サファイア基板11を500℃まで降温し、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を5L/分、TMGを25cc/分、TMAを40cc/分の各流量で流すことによって、バッファ層42を形成した。
次に、サファイア基板11を1020℃まで昇温且つ保温し、H2 を20L/分、N2 を10L/分、NH3 を10L/分、TMGを25cc/分、SiH4 を1cc/分の各流量で60分流すことによって、n型GaN層43を形成した。
次に、サファイア基板11を800℃まで降温し、H2 を20L/分、N2 を15L/分、NH3 を10L/分、TEGを3cc/分、TMIを30cc/分、DMZを1cc/分、SiH4 を1cc/分の各流量で15分流すことによってn型InGaN層44を形成した。
次に、サファイア基板11を1020℃まで昇温し、保温した状態で、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を10L/分、TMGを50cc/分、TMAを25cc/分、Cp2 Mgを30cc/分、SiH4 を0.1cc/分の各流量で5分間流すことによって、p型AlGaN層45を形成した。
更に、サファイア基板11を1020℃に保温したまま、H2 を15L/分、N2 を10L/分、NH3 を10L/分、TMGを50cc/分、Cp2 Mgを100cc/分、SiH4 を0.1cc/分の各流量で5分程度流すことによって、p型GaN層46を形成した。上記p型AlGaN層45及びp型GaN層46の成長では第2の実施の形態で述べたエッチングの容易性のためにSiを添加した。
この後、サファイア基板11を800℃まで降温し、常温でN2 を10L/分流しながらサセプタ上に放置した。
窒化物系化合物半導体層が成長したサファイア基板11をMOCVD装置から取り出し、CVD装置によって、表面にSiO2 膜47を約400nm形成した。このSiO2 膜47をマスクとして、周知の反応性イオンエッチング法(RIE法)によってn型GaN層43が露出するまでエッチングし、メサ構造とした。このSiO2 膜47に弗酸系の溶液を用いて、p型GaN層46が約100μm角の大きさで露出するように孔を形成した。この孔を通して、p型層46に対して約1μmのAu−Ni膜48を形成し、またn型層43に対して約600nmのAl膜49を形成し、夫々オーミック電極とした。
このようにして形成された発光ダイオード40を約350μm角の大きさでダイシングした後、ランプ化した。このようにして形成された発光ダイオード40においては、先に述べた発光ダイオード10と同程度の発光強度、信頼性を有していた。
かかる発光ダイオード40における各層の不純物濃度はp型GaN層46中のMg濃度のみが1×1020cm-3であり、n型GaN層43からp型AlGaN層45までに含まれるSi、Zn、Mg濃度は2×1019cm-3であった。また、本発明の主旨であるn型GaN層43及びn型InGaN層44に含まれる水素濃度5×1018cm-3であるが、3×1018cm-3から1×1020cm-3までの領域で、p型AlGaN層45及びp型GaN層46からのMgの拡散を抑制することができた。これより少ない場合には、n型層43及び44へのMgの拡散が著しく、これらの層が補償効果によって絶縁層化する、或いはp型に変化してしまう現象が見られた。一方、これより水素は多い場合にはキャリアの要因となる不純物元素に対して水素が結合し、キャリア不活性化の要因となった。従って、水素濃度が上記の範囲3×1018cm-3から1×1020cm-3である必要がある。更に望ましくは、3×1018cm-3から1×1019cm-3程度の濃度である場合にその効果が顕著に現われた。
(第5の実施の形態)
図5は本発明の第5の実施の形態に係る発光ダイオード50の断面を示す。
第5の実施の形態が上述した4つの実施の形態と大きく異なる点は基板にSiCを使用した点である。各窒化物半導体層における主たる不純物は、SiC基板51がN(窒素)、n型GaN層53がSi、n型InGaN発光層54がSi及びZn、クラッド層であるp型AlGaN層55及びp型GaN層56がMgである。これらの濃度については、上述4つの実施の形態と同様、n型InGaN層54中のZn、p型AlGaN層55中のMgについては2×1019cm-3であり、p型GaN層56中のMgについては1×1020cm-3である。また、Siについては、n型層53及び54で1×1019cm-3程度、p型層55及び56で8×1016cm-3である。その他の不純物としては、n型GaN層53からp型GaN層56までの各層に夫々炭素が1×1018cm-3、酸素が1×1018cm-3含まれている。
製造方法については、これまで述べてきた4つの実施の形態と同様にMOCVD法を用いた。この実施の形態でも第1及び第2の実施の形態と同様の効果を奏することに加えて、結晶欠陥密度も非常に低減し、発光ダイオード10と比較して、発光強度について約2倍、寿命について約3倍の性能向上をはかることができた。
(第6の実施の形態)
図6は本発明の第6の実施の形態に係るレーザダイオード60の断面を示す。
レーザダイオード60は、サファイア基板61を有しており、そのサファイア基板上61に順に、厚さ50nmのGaNバッファ層62、厚さ2μmのn型GaN層63、厚さ500nmのn型AlGaN(Alの組成比0.3)層64、厚さ100nmのアンドープGaN層65、厚さ500nmのp型AlGaN(Alの組成比0.3)層66、厚さ300nmのp型GaN層67が形成されている。
これらの各層の不純物濃度は、n型GaN層63ではSiが2×1019cm-3及びMgが5×1016cm-3、n型AlGaN層64ではSiが2×1019cm-3及びMgが8×1016cm-3、アンドープGaN層65ではMgが1×1017cm-3、p型AlGaN層66ではMgが3×1019cm-3、p型GaN層67ではMgが1×1020cm-3である。
この素子の製造方法はこれまで示してきた実施の形態と同様に行った。n型GaN層63からアンドープGaN層65までの各層には平坦な薄膜形成のために上述した濃度でMgを添加した。かかるMgの濃度は1×1015cm-3〜1×1017cm-3で効果が見られた。これより少ない場合には平坦な薄膜が得られなかった。一方、これより多い場合においてはn型層ではキャリア濃度に低減が見られ、更にSiを添加しなければならず、平坦な膜が得られにくくなった。このため、Mg濃度は1×1015cm-3〜1×1017cm-3が適当で、1×1016cm-3〜1×1017cm-3の濃度であることが望ましい。
(第7の実施の形態)
図7は本発明の第7の実施の形態に係る発光ダイオード70の断面を示す。
発光ダイオード70は、a面((11-20)面)を主面とするサファイア基板71上に形成されたものである。層構造はサファイア基板71から順に、GaNバッファ層72、ZnドープGaN層73、Siドープn型GaN層74、n型InGaN発光層75、Mgドープp型AlGaN層76、Mgドープp型GaN層77である。
GaNバッファ層72は厚さが0.1μmであり、サファイア基板とGaN層との格子不整合とを緩和するためにある。GaN層73は厚さが0.3μmであり、本発明の主旨である2次元成長の促進をはかるためにZnを添加している。Znの濃度は1×1015cm-3〜1×1017cm-3が適当で、1×1015cm-3〜3×1016cm-3の濃度であることが望ましい。Siドープn型GaN層74は厚さが4μmであり、発光層に電子を注入するためにある。また、基板に絶縁物であるサファイアを用いているためにエッチングによってn型層を露出させなければならないため、層74は厚めに形成している。層74のキャリア濃度は2×1018cm-3程度である。
n型InGaN発光層75は厚さが0.3μmである。また、発光波長を450nm程度に合わせるため、Inの組成比は6%である場合には、SiとZnとを同時に添加している。In組成を30%程度まで上げた場合にはSiのみを添加することで発光波長を調整することが可能である。
Mgドープp型AlGaN層76は厚さが0.2μmであり、発光層に正孔を注入する働きをする。また、Alの組成比については、電子のオーバーフローを抑制するためには大きいことが望ましい一方、p型キャリア濃度を確保するためには組成比は小さい方が望ましい。これらの条件の複合により、Alの組成比は5%から25%までの範囲にあることが望ましく、更には10%から20%の間にあることがより望ましい。
Mgドープp型GaN層77は厚さが0.2μmであり、AlGaN層76では良好なオーミック接触をとることが困難であることから形成されたものである。キャリア濃度は1×1018cm-3以上程度あることが望ましく、ここでは2×1018cm-3と設定した。また、p型層76及び77にはエッチングの実現を考慮してSiを微量添加した。
オーミック電極としては、pn両方の層上にNi20nm、Au300nmの積層構造78を形成し、良好なオーミック電極形成のための熱処理をほどこした後、ボンディング用として更にTi50nm、Au2μmの積層構造79を形成した。このような発光ダイオード70においては20mAで2cd程度の輝度を示した。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施の形態では発光素子について説明したが、上記実施の形態で説明した膜をチャネル領域に使用した薄膜トランジスタやエミッタ、ベース、コレクタに使ったヘテロ接合型バイポーラトランジスタ等も実現することができる。この場合結晶性が向上した膜でトランジスタを形成できることから高速動作の可能なデバイスの提供を期待できる。
11、21、61、71…サファイア基板、31…AlN基板、51…SiC基板、12、22、42、62、72…バッファ層、13、23、43、53、63、74…n型GaN層、33…AlGaN層、14、24、44、54、75…n型InGaN発光層、34…GaN発光層、15、25、35、45、55、66、76…p型AlGaN層、16、26、36、46、56、67、77…p型GaN層、64…n型AlGaN層、65…アンドープGaN層、73…ZnドープGaN層。