JP2005327491A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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恒典 吉村
Koichi Yonemura
浩一 米村
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Kazuhiro Sugie
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Abstract

【課題】アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池における、負極格子耳の腐食を抑制し、長寿命で信頼性の高い鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】 Sbを含まない正極格子からなる正極板と、Sbを含まない負極格子で構成され負極活物質と接する表面の少なくとも一部にSbを含む負極表面層を形成する負極板とからなり、この負極表面層に含むSb量を負極活物質量あたり0.4〜5.0ppmとすることを特徴とする鉛蓄電池とすることで、高温環境下での深放電特性を飛躍的に向上させることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は鉛蓄電池に関するものである。
車両のエンジン始動用やバックアップ電源用といった様々な用途に鉛蓄電池が用いられている。その中でも始動用の鉛蓄電池は、エンジン始動用セルモータへの電力供給とともに、車両に搭載された各種電気・電子機器へ電力を供給する。エンジン始動後、鉛蓄電池はオルタネータによって充電される。ここで、鉛蓄電池の充電と放電とがバランスし、鉛蓄電池のSOC(充電状態)が90〜100%に維持されるよう、オルタネータの出力電圧および出力電流が設定されている。
近年、環境保全の観点から、車両の燃費向上が検討されている。例えば、車両の一時的な停車中にエンジンを停止するアイドルストップ車や、車両の減速を車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを蓄電することによって行う回生ブレーキシステムが実用化されている。
前記したような、アイドルストップ車ではエンジン停止中、鉛蓄電池は充電されない一方で、搭載機器へは電力供給をし続ける必要があるため、必然的に放電深度は深くなる。また、回生ブレーキシステムを搭載した車両では、回生時の電気エネルギーを蓄電するために、鉛蓄電池のSOCを従来より低く、50〜90%程度に制御する必要がある。
従って、これらのシステムを搭載した車両において、鉛蓄電池はより深い放電深度、低いSOCで使用されることになり、このような車両に適用するために、鉛蓄電池は深い放電が行われた時の寿命特性が要求される。このような深放電寿命における鉛蓄電池の劣化要因は深放電による正極における活物質の劣化と活物質−格子界面の高抵抗層の形成によるインピーダンスの増加および負極活物質の充電受入性低下とこれによる正極活物質の充電不足による劣化が主要因であった。
鉛蓄電池の深放電による正極の劣化を抑制するために、例えば特許文献1には鉛−カルシウム−スズ合金の正極格子表面にスズおよびアンチモンを含有する鉛合金層を形成することが示されている。正極格子表面に存在するスズおよびアンチモンは活物質の劣化および活物質−格子界面での高抵抗層の形成を抑制する効果がある。
また、特許文献1の鉛蓄電池のような正極格子表面に配置したアンチモンは、蓄電池の充放電を繰り返すうちに負極活物質表面に電析し、負極の充電電位を貴に移行させる。これにより、蓄電池の充電電圧は低下する。その結果、自動車用をはじめ、鉛蓄電池で一般に用いられている定電圧充電を行った場合、充電電圧の低下に伴い、充電電流は増加する。従って、正極での充電電気量が増加するため、正極活物質の劣化が抑制されるという効果もあった。
特開平3−37962号公報
しかしながら、正極格子表面に存在するアンチモンは負極活物質のみならず、負極格子耳部にも析出する。従来の車両にように、鉛蓄電池のSOCが高頻度で90%以上である場合には、負極格子耳部に移行したアンチモンは鉛蓄電池に殆ど悪影響を及ぼすことがなく、問題とはならなかった。しかしながら、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム
を搭載したような車両は前記したようにSOCが90%未満〜80%の低SOC領域で用いられる頻度が高く、負極格子耳部に析出したアンチモンが、負極格子耳部の腐食に影響することがわかってきた。この負極格子耳部の腐食により、負極格子の集電性が低下し、最終的には断線することによって、蓄電池容量が急激に低下する可能性があった。
一方、Sbの負極格子耳部への析出を抑制するため、正極格子表面に含Sb層を設けない場合、負極活物質へのSbの移行がないので、充電電圧は低下せず、その結果、充電電流が低下し、正極が充電不足となり、短寿命となっていた。
本発明は、前記したような、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池における、負極格子耳の腐食を抑制し、長寿命で信頼性の高い鉛蓄電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の鉛蓄電池は、Sbを含まない正極格子からなる正極板と、Sbを含まない負極格子で構成され負極活物質と接する表面の少なくとも一部にSbを含む負極表面層を形成する負極板と、前記正極・負極板間に介挿されたセパレータとからなり、この負極表面層に含むSb量を負極活物質量あたり0.4〜5.0ppmとすることを特徴とするものである。
これにより、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池において、負極格子耳の腐食を抑制し、長寿命で信頼性の高い鉛蓄電池を提供することができる。
また、Pb−Ca−Sn合金からなる正極格子で構成され、正極活物質と接する表面の少なくとも一部に前記正極格子より高濃度のSnを含む正極表面層を形成すると、更に好適な鉛蓄電池を提供することができる。
本発明の鉛蓄電池によれば、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池において、負極格子耳の腐食を抑制し、長寿命で信頼性の高い鉛蓄電池を提供することができることから、工業上、極めて有用である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の鉛蓄電池に用いる正極格子の母材は実質上Sbを含まない鉛合金により作成される。Sbを含まない鉛合金としては、強度および耐腐食性の面でPb−Ca−Sn合金を用いる。正極格子中のCaの量としては格子強度の観点から、0.03〜0.10質量%、Snの量としては格子強度および耐腐食性の観点より、0.60〜1.80質量%が適切であり、1.20〜1.80質量%であれば更に良い。なお、本発明において、正極格子中に、実質上Sbを含まないとは、0.002質量%以下を意味する。この程度の含有量のSbが正極格子に含まれたとしても、負極にには移行せず、結果として負極における自己放電量や、電解液の減液といった電池のメンテナンスフリー性能に影響を与えることはない。
また、格子の作成方法としては、従来から知られている鋳造格子、連続鋳造格子あるいは、上記鉛合金の圧延体にパンチング加工やエキスパンド加工を施した格子体を用いることができる。
上記の正極格子体に正極活物質ペーストを充填後、熟成乾燥することにより、未化成状態の正極板を得る。なお、正極活物質ペーストとしては、従来から知られているように、鉛酸化物および金属鉛を成分とする鉛粉を水と希硫酸で練合して得ることができる。
次に、負極格子体は母材合金として、実質上Sbを含まない鉛合金により作成される。負極格子に連設される集電耳部におけるSbの存在は腐食の要因となるので、0.001質量%以下とする。また、この母材合金として、正極格子と同様のPb−Ca−Sn合金やPb−Ca合金を用いることができる。なお、Pb−Ca−Sn合金において、Snは前述のように、格子強度を向上したり、鋳造格子作成時の溶融鉛の湯流れ性を向上するので、0.2質量%〜0.6質量%程度添加してもよい。なお、負極格子体中のCa量は正極と同様、格子強度を確保することを主目的として0.03〜0.10質量%添加する。
本発明では、負極格子体の負極活物質と接する表面の少なくとも一部にSbを含む表面層を形成する。なお、この表面層の形成方法として、負極格子体の中骨表面にPb−Sb合金を溶射することができる。また、負極格子の母材合金スラブにPb−Sb合金箔を重ね合わせ、圧延一体化したシートをパンチング加工あるいはエキスパンド加工により、格子体を作成すればよい。
本発明においては、負極表面層に含むSb量を負極活物質量あたり0.4〜5.0ppmとしている。また、Pb−Sb合金箔を負極格子表面上に圧延時に貼り合わせる場合には、Pb−Sb合金箔中に1〜10質量%のSnを含むPb−Sn−Sb合金とすることが好ましい。Snの添加により、合金箔の機械的強度が向上するため、製造工程において合金箔が切断してしまうといった問題を回避できる。また、合金箔の機械的強度向上に伴い、合金箔と負極格子合金母材スラブとを圧延一体化する際、合金箔の張力をより高く設定できるため、合金箔の母材スラブ上での蛇行を抑制し、寸法精度を確保して両者を一体化できる。
また、合金箔の厚みは0.1〜0.2mm程度が取扱い上、好ましい。このような厚みの合金箔を10.0mm厚の母材合金スラブと重ね合わせ、最終厚みを0.8mmまで圧延した場合、0.8mmの圧延シート上に5.0〜10.0μm程度の厚みでPb−Sb層が形成される。
上述により得た負極格子に負極活物質ペーストを充填し、熟成乾燥して未化成状態の負極板を作成する。負極活物質ペーストとして、従来から知られているような鉛粉を水、希硫酸で練合して得ることができる。また、負極活物質中に通常添加する、リグニン、硫酸バリウム、カーボン等の添加剤の添加ももちろん差し支えない。また、リグニンにかえて、ビスフェノールスルホン酸系化合物(例えば、日本製紙株式会社製ビスパース(商品名))を用いることができる。
この負極板および上述の正極板とガラス繊維やポリプロピレン樹脂繊維等の耐酸性繊維で構成したマットセパレータもしくはポリエチレンセパレータとを組み合わせて極板群を構成する。この極板群を用いて鉛蓄電池を構成することにより、本発明の鉛蓄電池を得ることができる。
通常の公称電圧12Vの自動車用鉛蓄電池とする場合、上述の極板群の6個を電槽に収納し、極板群間を直列に接続した後、電槽開口部を蓋で覆うとともに、直列接続において両端に位置する極板群から導出した極柱を蓋にインサート成形された端子ブッシングに挿通し、端子ブッシングと極柱先端を溶接すれば良い。その後、蓋に設けた注液口より希硫酸電解液を注液して、化成充電を行うことにより、完成した蓄電池を得る。
図1に正極表面層と、負極表面層における負極活物質量に対するSb量とをパラメータとして鉛蓄電池を作成した時のサイクル寿命特性、耳腐食量、減液量を示す。
電池形式はJIS D5301「始動用鉛蓄電池」に規定する34B19形鉛蓄電池とした。
サイクル寿命特性試験は、JIS D5301「始動用鉛蓄電池」に規定するB−40により行った。
耳腐食量(%)は、25A放電60秒と15V定電圧充電60秒とを150サイクル繰り返した後に、14.5Vの定電圧充電を1時間行い、6週間保存して、試験前後の耳部断面積の減少割合を比較している。
さらに減液量は、40℃環境下において27A放電60秒と14.5V充電(最大電流27A)90秒とを500サイクル繰り返した後の電解液体積減量(%)を比較している。
同図の電池A、Bから、正極表面層にSbを有していると(電池A)、サイクル寿命特性は良好となるが、耳腐食量の点で特性が悪く、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池において用いるには適していないことがわかる。
同図の電池C−1からC−5を見ると、負極表面層における負極活物質量に対するSb量が増加するほどサイクル寿命特性が向上することがわかる。しかしながら、負極表面層における負極活物質量に対するSb量が6ppmまで増えると耳腐食量及び減液量の面で若干劣るようになる。従って、負極表面層における負極活物質量に対するSb量は0.4〜5.0ppmとすると良い。
また、同図のC−6からC−9とC−2からC−5とを比較すると、正極表面層に正極格子より高濃度のSnを含む電池C−6からC−9の方がサイクル寿命特性の面で優れていることがわかる。この場合にも負極表面層における負極活物質量に対するSb量が、0.2ppmではサイクル寿命特性の面で充分ではなく、6ppmでは減液量の面で若干劣るようになるので、負極表面層における負極活物質量に対するSb量は0.4〜5.0ppmであり、かつ正極表面層に正極格子より高濃度のSnを含むようにすると特に好ましいことがわかる。
本発明によれば、負極格子耳の腐食を抑制し、長寿命で信頼性の高い鉛蓄電池を提供することができることから、アイドルストップ車や回生ブレーキシステム搭載車等に用いられるような低SOC領域で用いられる頻度が高い自動車用鉛蓄電池において、工業上、極めて有用である。
本発明と比較例とを示す特性図

Claims (2)

  1. Sbを含まない正極格子からなる正極板と、Sbを含まない負極格子で構成され負極活物質と接する表面の少なくとも一部にSbを含む負極表面層を形成する負極板と、前記正極・負極板間に介挿されたセパレータとからなり、
    この負極表面層に含むSb量を負極活物質量あたり0.4〜5.0ppmとすることを特徴とする鉛蓄電池。
  2. Pb−Ca−Sn合金からなる正極格子で構成され、正極活物質と接する表面の少なくとも一部に前記正極格子より高濃度のSnを含む正極表面層を形成したことを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010113933A (ja) * 2008-11-06 2010-05-20 Panasonic Corp ペースト式鉛蓄電池

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