本発明に係る熱エネルギ回収装置の実施例1を図1から図6に基づいて説明する。尚、ここでは、熱エネルギ回収装置として、内燃機関の排気熱を回収する排気熱回収装置を例に挙げる。
この排気熱回収装置は、排気熱を利用して作動流体を断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱させて駆動力を得るブレイトンサイクル機関であって、図1に示す如く、吸入した作動流体を断熱圧縮する圧縮機10と、この圧縮機10で断熱圧縮された作動流体に高温流体の熱を等圧力で吸熱させる熱交換器20と、この熱交換器20で等圧受熱された作動流体を断熱膨張させる膨張機30とを備えている。
ここで、本実施例1にあっては、圧縮機10へと吸入される作動流体として大気圧の空気(以下「作動ガス」という。)を例示する。
先ず、本実施例1の熱交換器20について説明する。
この熱交換器20は、高温流体が流れる第1流路21と、圧縮機10で断熱圧縮された作動ガスが流れる第2流路22とを備えている。ここで、その第1及び第2の流路21,22は、作動ガスへの吸熱効率(熱交換器効率)を高める為に高温流体の流れ方向と作動ガスの流れ方向とが逆になるよう配置することが好ましい。
本実施例1にあっては、内燃機関(図示略)の排気熱回収用として適用された排気熱回収装置を例示する。これが為、本実施例1の熱交換器20は、その第1流路21に内燃機関の排気ガスが流入するよう図1に示す排気流路40上に配置される。ここで、本実施例1の高温流体たる排気ガスの排気熱を有効利用する為には、熱交換器20が可能な限り内燃機関の燃焼室に近い位置(排気流路40の上流側)に配置されることが好ましい。そこで、本実施例1の熱交換器20は、例えば排気マニホルドの集合部分に配置する。
続いて、本実施例1の圧縮機10について説明する。
この圧縮機10は、容積Vcompが一定のシリンダ11と、このシリンダ11内を往復移動するピストン12と、このピストン12を往復移動させるクランクシャフト(以下「圧縮機側クランクシャフト」という。)13及びコネクティングロッド14と、作動ガスをシリンダ11内に導く吸気流路15と、そのシリンダ11内でピストン12により断熱圧縮された作動ガスを熱交換器20の第2流路22へと導く排気流路16とを備えている。
ここで、その吸気流路15上には、作動ガスをシリンダ11内に流入させる一方、その作動ガスの吸気流路15への逆流を防ぐ逆止弁17が設けられている。本実施例1の逆止弁17としては、圧力差により吸気流路15を連通状態又は閉塞状態に変化させるリード弁17を用いる。また、その排気流路16には、断熱圧縮された作動ガスを熱交換器20の第2流路22に流入させる一方、シリンダ11内への逆流を防ぐ逆止弁18が設けられている。本実施例1の逆止弁18についても同様にリード弁18を用いる。
このようなリード弁17,18を用いることによって圧縮機側クランクシャフト13の回転に同期させる機構を別途設ける必要が無いので、簡易且つ低コストな信頼性の高い圧縮機10の弁構造を構築することができる。
続いて、上記膨張機30について説明する。
本発明に係る膨張機30は、容積Vexpが一定のシリンダ31と、このシリンダ31内を往復移動するピストン32と、このピストン32を往復移動させるクランクシャフト(以下「膨張機側クランクシャフト」という。)33及びコネクティングロッド34と、熱交換器20で等圧受熱された作動ガスをシリンダ31内に導く吸気流路35と、断熱膨張後の作動ガスをシリンダ31の外に導く排気流路36とを備えている。
ここで、この膨張機30には上記膨張機側クランクシャフト33にフライホイール70が具備されており、その膨張機側クランクシャフト33の回転力を利用して内燃機関の駆動力を補填したり、発電機(図示略)を駆動させて蓄電池へ蓄電させたりする。
また、この膨張機30には、上記吸気流路35の開閉を行う開閉弁37と、上記排気流路36の開閉を行う開閉弁38とが設けられている。
本実施例1の開閉弁37,38としては、膨張機側クランクシャフト33の回転に同期して開閉動作を行う図2に示すポペット弁37,38を用いる。
ここでは、ピストン32が上死点から下死点に移動する間において、吸気流路35側のポペット弁37が開弁し、排気流路36側のポペット弁38が閉弁するよう設定する。一方、ピストン32が下死点から上死点に移動する間においては、吸気流路35側のポペット弁37が閉弁し、排気流路36側のポペット弁38が開弁するよう設定する。
これらポペット弁37,38は、例えば、膨張機側クランクシャフト33の回転に伴ってチェーン駆動するカムシャフト(図示略)によりカム駆動される。
以下、本実施例1の如きポペット弁37,38を備えた膨張機30については「膨張機30A」という。
更に、この排気熱回収装置は、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33との間にベルト式無段変速機50を備えている。
このベルト式無段変速機50には、圧縮機側クランクシャフト13を回転軸とするプライマリプーリ51と、膨張機側クランクシャフト33を回転軸とするセカンダリプーリ52とが設けられている。
先ず、プライマリプーリ51は、圧縮機側クランクシャフト13の外周に一体的に配設された固定シーブ51aと、この固定シーブ51aに対向させて配置され、その圧縮機側クランクシャフト13の外周上を軸線方向に摺動可能な可動シーブ51bとを備えている。これら固定シーブ51aと可動シーブ51bとの対向面間には、V字形状の溝51cが形成されている。
続いて、セカンダリプーリ52は、膨張機側クランクシャフト33の外周に一体的に配設された固定シーブ52aと、この固定シーブ52aに対向させて配置され、その膨張機側クランクシャフト33の外周上を軸線方向に摺動可能な可動シーブ52bとを備えている。これら固定シーブ52aと可動シーブ52bとの対向面間には、V字形状の溝52cが形成されている。
このベルト式無段変速機50においては、上記プライマリプーリ51とセカンダリプーリ52の夫々のV字形状の溝51c,52cにベルト53が巻き掛けられており、このベルト53を介してプライマリプーリ51の駆動力がセカンダリプーリ52に伝達される。本実施例1のベルト53としては、多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された金属製の無端ベルトであってもよく、ゴム製の無端ベルトであってもよい。
また、このベルト式無段変速機50においては、そのプライマリプーリ51側のベルト53の巻き掛け半径(接触半径)とセカンダリプーリ52側のベルト53の巻き掛け半径(接触半径)との比で変速比が決められる。
ここで、このベルト式無段変速機50は、可動シーブ51b,52bを回転軸の軸線方向に摺動させて溝51c,52cの幅を変化させることによって、夫々の巻き掛け半径を無段階に変化させ、これにより変速比を無段階に変えるものである。
そこで、本実施例1にあっては、プライマリプーリ51の溝幅を変化させて変速比を変化させる図1に示す変速比変更手段54が設けられている。本実施例1の変速比変更手段54は、プライマリプーリ51の可動シーブ51bを軸線方向に摺動させる為の機構(可動シーブ摺動機構)であり、例えば、駆動源たる電動モータや油圧モータ等のモータと、このモータの駆動力を可動シーブ51bに伝達する歯車群等で構成される。
また、このベルト式無段変速機50には、その変速比変更手段54の動作を制御する制御手段が設けられている。本実施例1にあっては、この制御手段を内燃機関の電子制御装置(ECU)60の一機能として設ける。
この電子制御装置60は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
この電子制御装置60には、上記変速比変更手段54の動作制御機能として、先ず、内燃機関から排出された排気ガス(高温流体)の排気エネルギを算出する排気エネルギ算出機能が設けられている。
ここで、内燃機関の排気エネルギは内燃機関の負荷の状態に応じて一意に定められるものであり、これが為、この排気エネルギ算出機能は、その内燃機関の負荷の状態から排気エネルギを求める。例えば、本実施例1にあっては、機関回転数,スロットル開度,燃料噴射量等の負荷状態を表す情報をパラメータとする排気エネルギのマップ(図示略)を予め実験等を行いバックアップRAM等に用意しておき、その排気エネルギマップから現在熱交換器20に流入する排気エネルギを求める。
尚、その機関回転数,スロットル開度,燃料噴射量等の負荷状態を表す情報は図示しないクランク角センサ,スロットル開度センサやエアフローメータ等の検出信号から電子制御装置60が求めるが、一般に、これらの情報は内燃機関の例えば燃焼制御用として常に求められているので、これを排気エネルギ算出機能の演算処理に利用する。
また、上述した熱交換器20の熱交換器効率は、排気エネルギの大小に依存するものであり、その排気エネルギの大きさに応じて一意に定められる。これが為、この電子制御装置60には、ある排気エネルギの排気ガスが熱交換器20に流入してきた際の熱交換器効率を算出する熱交換器効率算出機能が設けられている。
本実施例1にあっては、その熱交換器効率と排気エネルギとの対応関係を表す図3に示す熱交換器効率/排気エネルギマップを予め実験等を行いバックアップRAM等に用意しておき、熱交換器20へと流入する排気ガスの排気エネルギに応じた熱交換器効率を熱交換器効率/排気エネルギマップから求める。
更に、この電子制御装置60には、熱交換器20においての作動ガスへの入熱量を算出する入熱量算出機能が設けられている。この入熱量算出機能は、上記排気エネルギ算出機能により求められた排気エネルギと上記熱交換器効率算出機能により求められた熱交換器効率とを乗算して入熱量を求める。
また更に、この電子制御装置60には、その入熱量を受けた作動ガスを最も効率良く断熱膨張させ得る膨張機30Aと圧縮機10の最高効率回転数比Nexp/Ncompを算出する最高効率回転数比算出機能が設けられている。
本実施例1にあっては、その最高効率回転数比Nexp/Ncompと入熱量との対応関係を表す図4に示す最高効率回転数比/入熱量マップを予め実験等を行いバックアップRAM等に用意しておき、作動ガスへの入熱量に応じた膨張機30Aと圧縮機10の最高効率回転数比Nexp/Ncompを最高効率回転数比/入熱量マップから求める。
その最高効率回転数比Nexp/Ncompとは、具体的には膨張機側クランクシャフト33と圧縮機側クランクシャフト13との最高効率回転数比Nexp/Ncompのことをいう。そして、この最高効率回転数比Nexp/Ncompは、ベルト式無段変速機50におけるセカンダリプーリ52とプライマリプーリ51との回転数比Np/Nsと同一であるので、その最高効率回転数比Nexp/Ncompからベルト式無段変速機50の変速比γ(=Np/Ns)を求めることができる。
そこで、この電子制御装置60には、膨張機30Aと圧縮機10との最高効率回転数比Nexp/Ncompからベルト式無段変速機50の変速比γを設定する変速比設定機能が設けられている。
また、この電子制御装置60には、その変速比γとなるように変速比変更手段54に変速制御指令を行う変速制御機能が設けられている。
次に、以上示した構成からなる本実施例1の排気熱回収装置の動作について図5のフローチャートに基づき説明する。
ここで例示する排気熱回収装置は、容積Vcomp=V1の圧縮機10と、容積Vcomp=V4の膨張機30Aとを備える。
先ず、電子制御装置60は、排気エネルギ算出機能により、バックアップRAMから排気エネルギマップを読み込み、機関回転数,スロットル開度,燃料噴射量等の内燃機関の負荷状態を表す情報に基づいて、熱交換器20へと流入する排気ガスの排気エネルギを排気エネルギマップから求める(ステップST1)。
続いて、この電子制御装置60は、熱交換器効率算出機能により、バックアップRAMから熱交換器効率/排気エネルギマップを読み込み、上記ステップST1で求めた排気エネルギに対応する熱交換器20の熱交換器効率を熱交換器効率/排気エネルギマップから求める(ステップST2)。
この電子制御装置60は、上記の如く熱交換器20へ流入する排気ガスの排気エネルギと熱交換器20の熱交換器効率を求めた後、入熱量算出機能により、その排気エネルギと熱交換器効率とを乗算して入熱量を求める(ステップST3)。
そして、この電子制御装置60は、最高効率回転数比算出機能により、バックアップRAMから最高効率回転数比/入熱量マップを読み込み、上記ステップST3で求めた入熱量に対応する膨張機30Aと圧縮機10の最高効率回転数比Nexp/Ncompを求める(ステップST4)。
しかる後、この電子制御装置60は、変速比設定機能により上記最高効率回転数比Nexp/Ncompからベルト式無段変速機50の変速比γを設定し(ステップST5)、その変速比γとなるように、変速制御機能が変速比変更手段54に対して変速制御指令を行う(ステップST6)。
これにより、その変速比変更手段54は、指令を受けた変速比γとなるように可動シーブ51bを軸線方向に摺動させる。
例えば、上記ステップST3にて入熱量q1と算出され、上記ステップST4にて最高効率回転数比がNexp/Ncomp=1と算出されたとする。かかる場合、電子制御装置60は、上記ステップST5にて変速比γ=1を設定し、上記ステップST6にて変速比γ=1となるように変速比変更手段54に対して変速制御指令を行う。
これにより、ベルト式無段変速機50の変速比γがγ=1に変更されるので、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33とが同一回転数で回転し、排気熱回収装置は、図6に示す如き断熱圧縮行程→等圧受熱行程→断熱膨張行程→等圧放熱行程を繰り返す。
具体的に、圧縮機10において、上死点にあるピストン12が下降することによりシリンダ11内に負圧が発生するので、逆止弁17が開弁すると共に逆止弁18が閉弁し、吸気流路15から大気圧Paの作動ガスがシリンダ11内に流入する。しかる後、ピストン12が下死点に到達して体積V1,大気圧Paの作動ガスがシリンダ11内に吸気され、ピストン12が上昇し始めると共に逆止弁17が閉弁して断熱圧縮を開始する。そして、ピストン12が上死点に到達して作動ガスが体積V2,圧力Pcにまで断熱圧縮されると、その圧力Pcによって逆止弁18が開弁し、その体積V2,圧力Pcの作動ガスが排気流路16を経て熱交換器20に送出される。
続いて、その熱交換器20においては、その体積V2,圧力Pcの作動ガスに入熱量q1が等圧受熱される。
膨張機30Aにおいては、膨張機側クランクシャフト33の回転に同期してポペット弁37が開弁すると共にポペット弁38が閉弁し、入熱量q1を等圧受熱した体積V3,圧力Pcの作動ガスが吸気流路35からシリンダ31内に断熱膨張しつつ流入する。これにより、上死点にあるピストン32が下降するので、膨張機側クランクシャフト33の回転が付勢される。その作動ガスは、体積V4,大気圧Paまで断熱膨張を続ける。
続いて、そのピストン32は下死点から上昇し始め、これに伴い、膨張機側クランクシャフト33の回転に同期したポペット弁37とポペット弁38とが夫々閉弁すると共に開弁し、大気圧Paまで断熱膨張された体積V4の作動ガスが排気流路36から排気(等圧放熱)される。尚、その際、圧縮機10においては、上述したが如くしてシリンダ11内に体積V1,大気圧Paの作動ガスが吸気される。
このように、この排気熱回収装置は、入熱量q1の場合、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33とが一回転する毎に、図6に示す如き断熱圧縮行程→等圧受熱行程→断熱膨張行程→等圧放熱行程を1サイクル行う。
以降、上述したステップST6にて新たな変速比γについての変速制御指令が為されるまで同様の動作を繰り返す。
ここで、上記ステップST3にて入熱量q2(=q1+q1)と算出され、これにより上述したステップST5にて変速比γがγ=2に設定されたとする。かかる場合、本実施例1の排気熱回収装置は、圧縮機側クランクシャフト13が一回転すると、膨張機側クランクシャフト33は二回転する。
具体的に、本実施例1の排気熱回収装置は、先ず、γ=1の場合と同様に、圧縮機10において体積V1,大気圧Paの作動ガスをシリンダ11内に吸気し、これを断熱圧縮して体積V2,圧力Pcの作動ガスを熱交換器20に送出する。
ここで、本実施例1にあっては、先ず体積V2,圧力Pcの作動ガスが熱交換器20で全入熱量q2の半分の入熱量q1を等圧受熱した時点で、膨張機30Aのポペット弁37が開弁すると共にポペット弁38が閉弁し、図6に示す如く入熱量q1分の体積V3,圧力Pcの作動ガスが断熱膨張しつつピストン32を下降させる。
そして、この膨張機30Aにおいては、下死点にあるピストン32の上昇に伴ってポペット弁37が閉弁すると共にポペット弁38が開弁し、大気圧Paまで断熱膨張された体積V4の作動ガスが排気流路36から排気(等圧放熱)される。
しかる後、再びピストン32が下降し、これに伴ってポペット弁37が開弁する共にポペット弁38が閉弁し、図6に示す如く残りの入熱量q1分の体積V3,圧力Pcの作動ガスが断熱膨張され、その断熱膨張された体積V4,大気圧Paの作動ガスが排気流路36から排気(等圧放熱)される。
即ち、本実施例1の排気熱回収装置は、圧縮機10が体積V1,大気圧Paの作動ガスを吸気する間(圧縮機側クランクシャフト13が半回転する間)に、膨張機30Aにおいては前回圧縮機10が熱交換器20へと送出した作動ガスの入熱量q1分について断熱膨張と等圧放熱を行う(膨張機側クランクシャフト33が一回転する)。そして、この排気熱回収装置は、圧縮機10がシリンダ11内の作動ガスを断熱圧縮する間(圧縮機側クランクシャフト13が更に半回転する間)に、膨張機30Aにおいては前回圧縮機10が熱交換器20へと送出した作動ガスの残りの入熱量q1分について断熱膨張と等圧放熱を行う(膨張機側クランクシャフト33が一回転する)。
このように、本実施例1の排気熱回収装置は、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33との間にベルト式無段変速機50を介在させているので、入熱量に応じて圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33の回転数に差を持たせることができる。これが為、定容方式の圧縮機10と膨張機30Aであっても、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33の回転数の差によって、その圧縮機10と膨張機30Aとの入熱量に応じた容積差を無段階に作り出すことができるので、入熱量に応じた最適な排気熱回収装置の機関効率を得ることができる。
また、このように単体効率が高い定容方式の圧縮機10及び膨張機30Aを適用することができるので、排気熱回収装置の機関効率を向上させることができる。
次に、本発明に係る排気熱回収装置の実施例3を図8から図11に基づいて説明する。
本実施例3の排気熱回収装置は、前述した実施例1の排気熱回収装置におけるベルト式無段変速機50を図8に示す有段変速機80に変更したものであり、他の構成については実施例1と同じである。
この有段変速機80は、圧縮機側クランクシャフト13を回転軸とする入力側スプロケット81と、膨張機側クランクシャフト33を回転軸とする夫々異径の第1から第4の出力側スプロケット82a〜82dと、その入力側スプロケット81と第1から第4の出力側スプロケット82a〜82dの内の何れか一つとの間に巻き掛けられるチェーン(又はコグドベルト)83と、このチェーン(又はコグドベルト)83が巻き掛けられる第1から第4の出力側スプロケット82a〜82dを切り替える変速比変更手段84とで構成される。
この有段変速機80は、例えば、チェーン(又はコグドベルト)83が第1出力側スプロケット82aに巻き掛けられると1速を為し、第2出力側スプロケット82bに巻き掛けられると2速を為し、第3出力側スプロケット82cに巻き掛けられると3速を為し、第4出力側スプロケット82dに巻き掛けられると4速を為す、という4速の変速段を有するものとして例示するが、必ずしもこの段数に限定するものではない。
ここで、この有段変速機80には変速比変更手段84の動作を制御する制御手段が設けられており、本実施例1にあっては、この制御手段を実施例1と同様に内燃機関の電子制御装置(ECU)60の一機能として設けている。
この電子制御装置60には、その変速比変更手段84の動作制御機能として、実施例1と同様の排気エネルギ算出機能,熱交換器効率算出機能,入熱量算出機能及び変速制御機能が設けられている。
また、この電子制御装置60には、入熱量算出機能で求められた入熱量に対応する夫々の変速段の排気熱回収効率を算出する排気熱回収効率算出機能が設けられている。
本実施例3にあっては、入熱量と作動ガスが当該入熱量を受けた際の排気熱回収効率(膨張機30Aの断熱膨張効率)との対応関係を夫々の変速段毎に予め実験等で求め、かかる対応関係のデータをバックアップRAM等に用意しておく。
この排気熱回収効率算出機能は、入熱量算出機能で求められた入熱量に応じて上記の対応関係のデータから各変速段の排気熱回収効率を求める。この演算結果は、例えば図9に示す如く表すことができる。これによれば、1速〜4速での排気熱回収効率e1〜e4の内、最も効率の良いのが2速であることが判る。
そこで、この電子制御装置60には、その演算結果に基づいて排気熱回収効率の良い有段変速機80の変速段(図9の場合は2速)を設定する変速段設定機能が設けられている。
ここで、本実施例3の変速制御機能は、上記変速段設定機能により設定された変速段となるよう変速比変更手段84に変速制御指令を行う。
次に、以上示した構成からなる本実施例3の排気熱回収装置の動作について図10のフローチャートに基づき説明する。
本実施例3にあっても、先ず、電子制御装置60は、実施例1のステップST1〜ST3と同様に、排気エネルギの算出,熱交換器効率の算出,作動ガスへの入熱量の算出を行う(ステップST11〜ST13)。
そして、この電子制御装置60は、排気熱回収効率算出機能により、上記ステップST13で算出された入熱量に対応する夫々の変速段の排気熱回収効率を求める(ステップST14)。
例えば、この排気熱回収効率算出機能により、図9に示す如く各変速段(1速〜4速)の排気熱回収効率e1〜e4が求められる。これが為、この電子制御装置60は、変速段設定機能が最も効率が良い2速を選択し、この2速を変速段として設定する(ステップST15)。
しかる後、この電子制御装置60は、変速制御機能により、変速比変更手段84に対して上記ステップST15にて設定された変速段(2速)となるよう変速制御指令を行う(ステップST16)。
これにより、その変速比変更手段84は、その変速段(2速)となる第2出力側スプロケット82bにチェーン(又はコグドベルト)83を巻き掛ける。
例えば、この有段変速機80の2速が変速比γ=2であれば、前述した実施例1の場合と同様に本実施例3の排気熱回収装置が動作する。
このように、本実施例3の排気熱回収装置は、圧縮機側クランクシャフト13と膨張機側クランクシャフト33との間に有段変速機80を介在させることによって、実施例1と同様の効果を奏することができる。
ここで、本実施例3にあっては、有段変速機80であるが為に圧縮機10と膨張機30Aとの間における容積差のパターンの種類が限定されてしまうが、その有段変速機80は実施例1のベルト式無段変速機50と比して簡易構造であるので低コスト化を図り得る。
また、その容積差のパターンの種類が限られてしまうとしても、予め実験等で各変速段における変速比γの最適化を図ることによって、更には多段化することによって、排気熱回収装置の機関効率を低下させないようにすることができる。
尚、本実施例3の排気熱回収装置は、電子制御装置60の排気熱回収効率算出機能に替えて前述した実施例1と同様の最高効率回転数比算出機能を設けてもよい。
かかる制御機能を備えた電子制御装置60は、先ず、図11のフローチャートに示す如く、実施例1のステップST1〜ST4と同様に、排気エネルギの算出,熱交換器効率の算出,作動ガスへの入熱量の算出,膨張機30Aと圧縮機10の最高効率回転数比Nexp/Ncompの算出を行う(ステップST21〜ST24)。
しかる後、この電子制御装置60は、変速段設定機能により、最高効率回転数比Nexp/Ncompに対応する最も効率の良い変速比(最高効率変速比)を算出し(ステップST25)、この最高効率変速比に最も近い変速比γとなる有段変速機80の変速段を設定する(ステップST26)。そして、この電子制御装置60は、変速制御機能により、変速比変更手段84に対して上記ステップST26にて設定された変速段となるよう変速制御指令を行う(ステップST27)。
このように電子制御装置60を構成することによって、上述したが如き本実施例3の効果を簡易的な処理動作で奏することができる。