JP2005324575A - 車両姿勢制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両がスピンするような急激な姿勢変化に対しても対応でき、車両の姿勢の安定化を図ることができる車両姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】 横滑り防止制御などによって車両の姿勢の安定化が図られるようになっているが、タイヤがバーストしたような場合には、横滑り防止制御のみでは十分に車両の姿勢の安定化を図れない場合があり得る。このような場合に、タイヤ空気圧調整機構によってバーストしていないタイヤの空気圧を減圧することで、より車両の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【選択図】 図8
【解決手段】 横滑り防止制御などによって車両の姿勢の安定化が図られるようになっているが、タイヤがバーストしたような場合には、横滑り防止制御のみでは十分に車両の姿勢の安定化を図れない場合があり得る。このような場合に、タイヤ空気圧調整機構によってバーストしていないタイヤの空気圧を減圧することで、より車両の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
【選択図】 図8
Description
本発明は、タイヤ空気圧を制御することにより、車両の安定化を図る車両姿勢制御装置に関するものである。
従来、車両の姿勢を制御する方法として、ABS制御や横滑り防止制御(Vehicle stavility control)がある。ABS制御では、車両に備えられる車輪がタイヤスリップによってロック傾向に陥ることを防止すべく、車輪速度が目標車輪速度に追従するように、車輪に発生させる制動力を制御し、スリップ率を調整する。横滑り防止制御では、車両がオーバーステア状態もしくはアンダーステア状態になることを防止すべく、制御対象輪に対して制動力を付加することで、車両が理想的な旋回状態の軌跡をたどるように制御する(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−20648号公報
しかしながら、従来のABS制御や横滑り防止制御などの車両姿勢制御装置では、タイヤがバーストした場合のように、車両がスピンする程に急激に姿勢変化を起こすような場合には、十分に対応できない可能性がある。このような場合にも、精度良く車両の姿勢を制御し、車両の安定化を図ることができる車両姿勢制御が望まれる。
本発明は上記点に鑑みて、車両がバーストしてスピンするような急激な姿勢変化に対しても対応でき、車両の姿勢の安定化を図ることができる車両姿勢制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両姿勢急変検出手段によって、車両の姿勢が急変したことが検出されたときに、タイヤ空気圧減少検出手段によって検出された車輪とは異なる車輪を減圧対象輪として、該減圧対象輪に備えられたタイヤ空気圧調整機構により、該減圧対象輪のタイヤ空気圧を減少させるようになっていることを特徴としている。
このように、タイヤがバーストしたような場合のように車両の姿勢が急変した場合に、減圧対象輪に備えられたタイヤ空気圧調整機構により、該減圧対象輪のタイヤ空気圧を減少させる。これにより、車両がスピンするような急激な姿勢変化に対しても対応でき、車両の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
例えば、請求項2に示されるように、車両の姿勢を示す物理量として車両の横滑り角を用い、この横滑り角が所定のしきい値を超えている場合に、車両の姿勢が急変したものとすることができる。
請求項3に記載の発明は、タイヤ空気圧減少検出手段は、横滑り角検出手段によって検出された横滑り角に基づいて、車両がオーバーステア状態であるかアンダーステア状態であるかを検出し、これら各状態からタイヤ空気圧の減少を検出するようになっていることを特徴としている。
このように、横滑り角に基づいて求められる車両の状態から、タイヤ空気圧の減少を検出することができる。
請求項4に記載の発明では、タイヤ空気圧検出手段によって各車輪それぞれのタイヤ空気圧を検出させ、タイヤ空気圧減少検出手段は、タイヤ空気圧検出手段が検出したタイヤ空気圧に基づいて、タイヤ空気圧の減少を検出することを特徴としている。
このように、タイヤ空気圧検出手段によって求められるタイヤ空気圧から、タイヤ空気圧の減少を検出するようにしても良い。
請求項5に記載の発明では、タイヤ空気圧減少検出手段によってタイヤ空気圧の減少が検出されると、送信機に向けてタイヤ空気圧を減少させる旨を示す信号が送られ、タイヤ空気圧調整機構によってエアバルブが開かれることで、タイヤ空気圧が減少させられるようになっていることを特徴としている。
このように、送信機に備えられたタイヤ空気圧調整機構によってエアバルブを開くことで、タイヤ空気圧を減少させることが可能である。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態における車両姿勢制御装置に適用されるブレーキ装置のブロック構成を示した図である。また、図2は、車両姿勢制御装置に適用されるタイヤ空気圧検出制御装置のブロック構成を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態における車両姿勢制御装置に適用されるブレーキ装置のブロック構成を示した図である。また、図2は、車両姿勢制御装置に適用されるタイヤ空気圧検出制御装置のブロック構成を示す図である。
図1に示されるブレーキ装置は、例えば、後輪駆動の4輪車に備えられるもので、左前輪と右後輪のブレーキを制御する第1の配管系統と、右前輪と左後輪のブレーキを制御する第2の配管系統からなる2配管系(X配管系)を備えている。
車両に制動力を加える際に乗員によって踏み込まれるブレーキペダル1は、倍力装置2などを介してブレーキ液圧発生源となるマスタシリンダ3に接続されており、乗員がブレーキペダル1を踏み込むと、マスタシリンダ3に配設されたマスタピストンを押圧し、マスタシリンダ圧(以下、M/C圧という)を発生させる。このマスタシリンダ3は、プライマリ室3aとセカンダリ室3bの2部屋に分かれており、プライマリ室3a側は第1の配管系統に伝えるブレーキ液圧を発生させ、セカンダリ室3b側は第2の配管系統に伝えるブレーキ液圧を発生させている。
また、マスタシリンダ3には、このマスタシリンダ3の2部屋それぞれと連通する連通通路3c、3dを有するマスタリザーバ3eが備えられている。このマスタリザーバ3eは、連通通路3c、3dを通じてマスタシリンダ3へブレーキ液を供給したり、マスタシリンダ3内の過剰なブレーキ液を貯留したりする。
マスタシリンダ3におけるプライマリ室3aとセカンダリ室3bは、ブレーキ液圧制御アクチュエータ4を介して、各車輪に備えられたホイールシリンダ5a〜5bに接続されている。ブレーキ液圧制御アクチュエータ4には、プライマリ室3aと左前輪および右後輪のホイールシリンダ5a、5cとをつなぐブレーキ配管を構成する第1の配管系統と、セカンダリ室3bと右前輪および左後輪のホイールシリンダ5b、5dとをつなぐブレーキ配管を構成する第2の配管系統が形成されている。
これら第1、第2の配管系統には、電磁弁、ポンプおよびポンプ駆動用のモータなどの周知な構成部品が備えられており、各車輪に備えられるホイールシリンダ5a〜5dに対して圧力(以下、W/C圧という)を自動加圧させられるようになっている。このようなブレーキ液圧制御アクチュエータ4により、ブレーキペダル1が踏み込まれている場合に実行されるABS制御だけでなく、ブレーキペダル1が踏み込まれていない場合にも実行される横滑り防止制御が実行できるようになっている。なお、このようなブレーキ液圧制御アクチュエータ4の構成に関しては、周知なものとなっているため、ここでは詳細については省略する。
また、ブレーキ装置には、ブレーキ液圧制御アクチュエータの各構成部品を駆動する制御信号やタイヤ空気圧検出制御装置への制御信号を出力するブレーキECU6が備えられている。このブレーキECU6には、マスタシリンダ3に発生させられたM/C圧を検出する圧力センサ7、車両に備えられた各種センサ、具体的には、ステアリング角度を検出するステアリングセンサ9、車両のヨー角を検出するヨーレイトセンサ10および各車輪の回転状態を検出する車輪速度センサ11a〜11dの検出信号が入力されるようになっている。そして、ブレーキECU6は、これら各センサからの検出信号に基づいて各種演算や判定などを行い、ブレーキ液圧制御アクチュエータの各構成部品を駆動する制御信号や、タイヤ空気圧検出制御装置への制御信号を発生させるようになっている。
一方、図2に示される車両用タイヤ空気圧検出制御装置は、車両に取り付けられるもので、送信機12、受信機13および警報部14を備えて構成されている。
図1に示されるように、送信機12は、車両1における各車輪15a〜15dに取り付けられるもので、車輪15a〜15dに取り付けられたタイヤの空気圧を検出すると共に、その検出結果を示す検出信号のデータを送信フレーム内に格納して送信する役割と、受信機13側から送られるタイヤ空気圧制御信号を受け取り、それに応じたタイヤ空気圧を調整する役割を果たす。一方、受信機13は、車両における車体16側に取り付けられるもので、送信機12から送信される送信フレームを受信し、その中に格納された検出信号に基づいて各種処理や演算等を行うことでタイヤ空気圧を求める役割と、ブレーキECU6から送られる制御信号に基づいて、タイヤ空気圧制御信号を送信機12側に送る役割を果たす。
図3(a)、(b)に、これら送信機12と受信機13のブロック構成を示す。また、図4に、送信機12の部分断面模式図を示す。これらの図を参照して、送信機12と受信機13の詳細について説明する。
送信機12は、図3(a)および図4に示されるように、センシング部21、マイクロコンピュータ22、アンテナ23、電源24およびタイヤ空気圧調整機構25を備えた構成となっており、電源24からの電力供給に基づいて作動するようになっている。
センシング部21は、例えばダイアフラム式の圧力センサや温度センサを備えた構成とされ、タイヤ空気圧に応じた検出信号や温度に応じた検出信号を出力するようになっている。
マイクロコンピュータ22は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のもので、制御部(第1制御部)22aや送受信部22bなどを備え、ROM内に記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行するようになっている。
制御部22aは、センシング部21からの検出信号を受け取り、その信号を必要に応じて信号処理したのち、これを検出結果を示すデータとして、どの車輪15a〜15dに取り付けられた送信機12であるかを示すID情報と共に、送信フレーム内に格納する。その後、制御部22aは、送受信部22bを通じて送信フレームを受信機13に向けて送信するようになっている。この受信機13に送信フレームを送る処理は、上記プログラムに従って実行されるようになっている。
また、制御部22aは、アンテナ23および送受信部22bを通じて受け取った受信機13からのタイヤ空気圧制御信号に基づいてタイヤ空気圧調整機構25を駆動し、タイヤ空気圧を調整するようになっている。
送受信部22bは、アンテナ23を通じて、タイヤ空気圧制御信号を含む電波を受け取って制御部22aに送る入力部としての機能と、制御部22aから送られてきた送信フレームを受信機13に向けて送信する出力部としての機能を果たすものである。
電源24は、送信機2に備えられるセンシング部21やマイクロコンピュータ22、タイヤ空気圧調整機構25を駆動するための電力供給を行うものである。
タイヤ空気圧調整機構25は、図4に示されるように、シリンダ部25a、蓋部25b、スプリング25c、樹脂部25dおよびコイル25eを備えた構成とされている。
シリンダ部25aは、エアバルブにおけるエア注入口を構成するもので、このシリンダ部25aの内壁面には、蓋部25bが摺動するガイド溝(図示せず)と、エア注入およびエア抜きをするためのエア流通溝25fとが、シリンダ部25aの軸方向と平行に形成されている。シリンダ部25aにおける先端位置は、蓋部25bよりも小径とされ、蓋部25bのストッパとして機能するようになっている。
蓋部25bは、金属で構成され、シリンダ部25bの中空部内に配置されて、シリンダ部25aに備えられたガイド溝に沿ってシリンダ部25aの内壁面を摺動できるようになっている。この溝部25bは、シリンダ部25bの内壁面と接するようになっているが、シリンダ25bに備えられたエア流通溝25fとは接しないようになっている。このため、蓋部25bがシリンダ部25aの先端位置から離れたときに、エア流通溝25fを通じてエア注入およびエア抜きが行えるようになっている。
スプリング25cは、一端が樹脂部25dに固定され、他端が蓋部25bに接するように配置されている。このスプリング25cにより、蓋部25bがシリンダ部25bの先端位置側に付勢されるようになっている。
樹脂部25dは、シリンダ部25aの内壁に例えば接着剤などによって固定され、スプリング25cの一端を保持するようになっている。この樹脂部25dには、貫通穴25gが設けられており、この貫通穴25gを通じて、エア注入およびエア抜きが行えるようになっている。
コイル25eは、制御部22aからの制御信号によって駆動され、磁気吸引力を発生させることで金属で構成された蓋部25bを吸引し、エアバルブを開いてエア抜きを行うようになっている。
以上のように構成される送信機12は、各車輪15a〜15dのホイールにおけるエア注入バルブに取り付けられ、センシング部21がタイヤの内側に露出するように配置される。これにより、該当するタイヤ空気圧を検出し、各送信機12に備えられたアンテナ23を通じて、所定周期毎(例えば、1分毎)の所定の送信タイミングで送信フレームを送信するようになっている。
受信機13は、送信機12から送られてくる送信フレームに基づいて、タイヤ空気圧の検出を行うと共に、ブレーキECU6からの制御信号に基づいて、タイヤ空気圧を減圧させるべきか否かを判定し、タイヤ空気圧を減圧させる際には、その旨を示すタイヤ空気圧制御信号を送信機12に向けて発生させるようになっている。具体的には、受信機13は、アンテナ31とマイクロコンピュータ32を備えた構成となっている。
アンテナ31は、例えば、タイヤの数、すなわち送信機12の数に対応した個数備えられている。各アンテナ31は、車体6のうち各送信機12の位置と対応する場所に設置されており、例えば、各送信機12から所定間隔離れた位置において車体6に固定されている。このアンテナ31は、タイヤ空気圧制御信号の送信用と送信フレームの受信用を兼ねた共用アンテナとなっているが、別々の構成とすることも可能である。
マイクロコンピュータ32は、CPU、ROM、RAM、I/Oおよびカウンタなどを備えた周知のもので、送受信部32aや制御部(第2制御部)32b、不揮発性のEEPROM等で構成されたメモリ32cなどを備え、ROM内に記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行するようになっている。
送受信部32aは、各アンテナ31を通じて、制御部32bからのタイヤ空気圧制御信号を出力する出力部としての機能と、受信された各送信機12からの送信フレームを入力し、その送信フレームを制御部32bに送る入力部としての機能を果たすものである。
制御部32bは、車内LAN(CAN)等を通じてブレーキECU6からの制御信号や各センサからの検出結果を示すデータを受け取り、これら制御信号やデータに基づいて所定の処理を実行し、タイヤ空気圧制御信号を出力するか否かを判定すると共に、その判定結果に応じてタイヤ空気圧制御信号を送受信部32aおよびアンテナ31を通じて送信機12に送る。さらに、制御部32bは、送受信部32aから送られてきた送信フレームを受け取り、それに格納された各送信機12が取り付けられた車輪を示すID情報に基づいて、送られてきた送信フレームが車輪15a〜15dのいずれのものかを特定するようになっている。
また、制御部32bでは、受け取った送信フレームに格納された検出結果を示すデータに基づいて各種信号処理および演算等を行うことにより各車輪15a〜15dそれぞれのタイヤ空気圧を求めると共に、求めたタイヤ空気圧に応じた電気信号を警報部4に出力するようになっている。
具体的には、制御部32bは、タイヤ空気圧が所定のしきい値を下回ったか否かを判定し、その判定結果に基づき、タイヤ空気圧の低下したことを示す信号を警報部4に出力するようになっている。
メモリ32cは、制御部32bでの演算結果を示す各種データや、タイヤ空気圧の検出結果を、各車輪15a〜15d毎に記憶するものである。
警報部14は、図1に示されるように、ドライバが視認可能な場所に配置され、例えば車両におけるインストルメントパネル内に設置される警報ランプや警告表示器(ディスプレイ)、もしくは警報ブザーによって構成される。この警報部14は、例えば受信機13における制御部32bからタイヤ空気圧の低下を示す信号が送られてくると、その旨を示す警報を行うことでドライバにタイヤ空気圧の低下を伝えるようになっている。以上のようにしてタイヤ空気圧検出制御装置が構成されている。
続いて、上記のように構成されたブレーキ装置およびタイヤ空気圧検出制御装置を備えた車両姿勢制御装置の作動について説明する。
図5〜図7は、ブレーキ装置におけるブレーキECU6が実行する処理のフローチャートを示している。また、図8は、タイヤ空気圧検出制御装置における受信機13の制御部32bが実行する処理のフローチャートを示している。これらの図を参照して、車両姿勢制御装置が実行する各処理の詳細について説明する。
まず、ブレーキECU6では、図5〜図7に示すフローチャートにしたがって、横滑り防止制御が実行される。図5は、横滑り防止制御の全体を示すフローチャート、図6は、横滑り防止制御における制御輪の制御を示すフローチャート、図7は、横滑り防止制御における非制御輪の制御を示すフローチャートである。これらの図に示される横滑り防止制御の各処理は、車両に備えられるイグニッションスイッチがオンされたのち、車両走行中常に実行される。
横滑り防止制御が実行されると、図3に示す各処理が各車輪毎に行われる。例えば、左前輪について処理が終了すると、次に右後輪について処理が行われ、各車輪全て処理が終了したら、再度左前輪についての処理が行われるという形で処理が成される。
この横滑り防止制御では、車両の旋回中にオーバステア状態になった場合には、旋回方向に応じて左右前輪のいずれかに制動力を与えるような制御を行うことにより、オーバステア状態を回避する。例えば、図9に示すように、車両が左に旋回した場合に実際の旋回状態が目標とする旋回状態よりも内側に切り込まれるような状態となるオーバステアが発生したときには、図中の斜線部で示したように、右前輪15aに制動力を与えるという制御が実行される。
また、右に旋回した場合のオーバステア状態は左前輪15bに制動力を与えてオーバステア状態を回避するような制御を行い、さらに車両がアンダーステア状態になった場合には、両後輪15c、15dに制動力を与えてアンダーステア状態を回避するような制御が行われる。
これらオーバステアとアンダーステアの制御に関しては、制御対象となる車輪(以下、制御輪という)が異なるという点に関して異なるが、制御手法としては同じであるため、以下の説明では図9に示すようなオーバステアが発生し、右前輪15aに制動力を与える横滑り防止制御を行う場合についてのみ説明する。
まず、ステップ101では、横滑り防止制御の開始条件の判定を行い、車両の横滑り角が所定角よりも大きいか否かが判定される。ここでいう横滑り角は、ヨーレイトセンサ10によって検出されるヨーレイトにより求められる実際の車両旋回角度と、ステアリングセンサ9により検出されるステアリング角度と車輪速センサ11a〜11dにより検出される車速から設定される目標旋回角度との差にて求めている。本実施形態では、車両の姿勢を示す物理量としてこの横滑り角を用いているが、この分野において一般的に知られている他の物理量を用いることも可能である。
そして、ステップ101でYesと判定されれば、横滑り防止制御開始を示すフラグ(以下、横滑り防止制御中フラグという)をセットしたのち、ステップ103に進む。また、ステップ101でNoと判定されれば、ステップ111に進んで後述する制動判定フラグをリセットしたのち、ステップ109に進む。
ステップ103では、現在処理を行っている車輪が旋回外輪であるか否かの判定が行われる。これにより、制御輪と非制御輪とが区別される。そして、制御輪と非制御輪を示すデータが制御信号に含められ、タイヤ空気圧検出制御装置における受信機13側に出力される。
例えば、図9に示すオーバステア状態のときには、横滑り防止制御される車輪は右前輪15aであるため、右前輪15aに対してはステップ105に進む処理が行われ、その他の車輪に対してはステップ107に進む処理が行われる。そして、右前輪15aに関しては、ステップ105で制御輪における処理が行われたのちステップ109に進む。また、右前輪15a以外の車輪15b〜15dに関しては、ステップ107で非制御輪における処理が行われたのちステップ109に進む。
ステップ109では、制動中であるか否かの判定が行われる。制動中であるか否かは、圧力センサ8によって検出されるM/C圧によって判定される。すなわち、制御輪に対して後述する増圧出力の指令が出されていないときには、運転者がブレーキペダル1を踏み込まない限りM/C圧は増加しない。このため、増圧出力の指令が出されていない場合において、M/C圧が増圧していくときには制動判定フラグを立てて、制動中であるとしている。
また、ステップ109で、制動中でなければ制動判定フラグがリセットされ、現在処理が行われている車輪の処理が終了される。そしてこの後、他の車輪の処理に移行される。また、ステップ109で制動中であれば、そのまま現在処理が行われている車輪の処理が終了され、他の車輪の処理に移行される。
次に、制御輪の制御及び非制御輪の制御を図6、図7に基づいて説明する。ここでは車両が制動中であるか非制動中であるかに分けて説明する。
〔非制動中における処理〕
非制御輪に関しては、ステップ201で、制動中であるか否かが判定される。この判定は、前述した制動判定フラグが立っているか否かに基づいて成される。非制動中である場合には、このステップ201でNoと判定される。したがって、ステップ205に進んで保持出力を設定されて処理が終了される。
非制御輪に関しては、ステップ201で、制動中であるか否かが判定される。この判定は、前述した制動判定フラグが立っているか否かに基づいて成される。非制動中である場合には、このステップ201でNoと判定される。したがって、ステップ205に進んで保持出力を設定されて処理が終了される。
この保持出力が設定されると、各非制御輪に対応した各制御弁が遮断状態に制御され、W/C圧が保持される。
一方、制御輪に関しては、ステップ301で、制動中であるか否かが判定される。この判定は、非制御輪における判定と同様に行われ、非制動中である場合にはNoと判定される。そして、ステップ303に進み、非制動時における処理が行われる。
ステップ303では、制御輪(ここでは右前輪15a)の実際の車輪速度が目標の車輪速度によりも大きいか否かが判定される。目標の車輪速度は、現在のスリップ角の状態に応じた車輪速度として予め設定されているものであり、右前輪15aにおける実際の車輪速度がこの目標の車輪速度より大きいか否かが判定される。
そして、ステップ303でYesと判定されると、実際の車輪速度を目標の車輪速度に近づけるために増圧出力処理が行われたのち、処理が終了される。この増圧出力の指令がされると、制御輪に対応した各制御弁が駆動され、W/C圧が増加させられるように各制御弁の弁位置が調整される。
また、この増圧出力の指令がされるとブレーキ液圧制御アクチュエータ4に備えられたモータが駆動され、ポンプが駆動される。これにより、例えばマスタリザーバ3内のブレーキ液が吸引され、その吸引されたブレーキ液によってW/C圧が増加させられる。
ステップ303でNoと判定されると、ステップ305に進み、制御輪(右前輪15a)における実際の車輪速度が目標の車輪速度よりも小さいか否かが判定される。ステップ305でYesと判定されると、減圧出力の指令がされて処理が終了される。この減圧出力の指令がされると、制御輪に対応する各制御弁が駆動され、W/C圧を減少させられるように各制御弁の弁位置が調整される。
これにより、各ホイールシリンダ5a〜5dにW/C圧を発生させているブレーキ液がリリースされ、W/C圧が減圧される。したがって、右前輪15aにおける実際の車輪速度が目標の車輪速度に近づくことになる。
また、ステップ305でNoと判定されると、右前輪15aにおける実際の車輪速度が目標の車輪速度と一致しているものとして、保持出力の指令がされて処理を終了する。これにより、制御輪に対応した各制御弁が駆動され、各制御弁が遮断状態にされてW/C圧が保持される。したがって、車輪速度が維持される。
〔制動中における処理〕
非制御輪に関しては、ステップ201で、制動中であるためYesと判定される。このため、ステップ203に進んだのち、制動増圧出力の指令が成されて処理が終了される。
非制御輪に関しては、ステップ201で、制動中であるためYesと判定される。このため、ステップ203に進んだのち、制動増圧出力の指令が成されて処理が終了される。
この制動増圧出力の指令がされると、各非制御輪に対応した各制御弁が駆動され、制動中であってもW/C圧を増加させられるように、各制御弁の弁位置が調整される。このため、ドライバによるブレーキペダル1の操作によってM/C圧が増加すると、各配管系統を通じて、各非制御輪のW/C圧が増圧させられる。
一方、制御輪に関しては、ステップ301で、制動中であるためYesと判定される。このため、ステップ313に進んで制動時における処理が実行される。
ステップ313では、制御輪(右前輪15a)の実際の車輪速度が目標の車輪速度によりも大きいか否かが判定される。そして、ステップ313でYesと判定されると、実際の車輪速度を目標の車輪速度に近づけるために制動増圧出力の指令が成され、処理が終了される。この制動増圧出力の指令がされると、制御輪に対応した各制御弁が駆動され、制動中であってもW/C圧を増加させられるように、各制御弁の弁位置が調整される。
これにより、ドライバによるブレーキペダル1の操作によってM/C圧が増加すると、その増加したM/C圧によって右前輪15aにおけるW/C圧も増圧させることが可能となる。
また、ステップ313でNoと判定されると、ステップ315に進み、右前輪15aにおける実際の車輪速度が目標の車輪速度よりも小さいか否かが判定される。そして、ステップ315でYesと判定されると、制動減圧出力の指令が成され、処理が終了される。この制動減圧出力の指令がされると、制御輪に対応した各制御弁が駆動され、W/C圧を減少させられるように各制御弁の弁位置が調整される。
この処理は、非制動時における減圧出力が設定されたときと同様であり、制御輪に対応したW/C圧を減圧して、制御輪の実際の車輪速度が目標の車輪速度に近づくようにしている。
また、ステップ315でNoと判定されると、制動保持出力の指令が成され、処理が終了される。この制動保持出力の指令がされると、制御輪に対応した各制御弁が駆動され、W/C圧を保持できるように各制御弁の弁位置が調整される。
以上のようにして、非制動中と制動中それぞれの場合に応じた横滑り防止制御が成され、実際の車輪速度を目標の車輪速度に近づけることで、車両の横滑りを防止し、姿勢の安定化が図られるようになっている。
続いて、タイヤ空気圧検出制御装置においては、受信機13の制御部32bにて、図8に示すフローチャートにしたがって、タイヤ空気圧減圧処理が実行される。
まず、ステップ401では、横滑り防止制御中フラグおよび制御輪と非制御輪のデータの読み込みが実行される。ここでいう横滑り防止制御中フラグは、図5におけるステップ101でセットされるものであり、この横滑り防止制御中フラグの読み込みにより、車両の姿勢が横滑り防止制御を実行しなければならないような状態になっているか否かが判る。
また、このステップ401で、制御輪と非制御輪を示すデータの読み込みが行われる。このデータは、図5のステップ103においてブレーキECU6から出力されたものである。制御輪と非制御輪は、オーバーステア状態かアンダーステア状態かを示すデータとなるものであるため、制御輪と非制御輪が判れば、バーストしているかもしれない車輪がどれであるかを特定することが可能となる。例えば、オーバーステア状態は、旋回内輪の方が旋回外輪よりも車輪の回転半径が小さくなっているために発生している場合があり、その場合には旋回内輪側の車輪のタイヤがバーストしている可能性がある。したがって、制御輪と非制御輪を読み込むことで、タイヤがバーストしている可能性がある車輪を特定できる。なお、制御部32bのうち、このタイヤがバーストしている可能性がある車輪を特定する処理を実行する部分が、タイヤ空気圧減少検出手段に相当する。
続く、ステップ403では、横滑り防止制御中であるか否かが判定される。このステップでNoと判定されるような場合には、車両の姿勢も安定しており、タイヤがバーストしているとは考えられないため、そのまま処理が終了される。そして、このステップでYesと判定されるような場合には、車両の姿勢が不安定になっており、タイヤがバーストしている可能性もあるため、ステップ405に進む。
ステップ405では、車両姿勢が急変し、タイヤ空気減圧が必要であるか否かが判定される。ここでは、図5のステップ101でしきい値として用いられた車両横滑り角よりも、さらに大きな車両横滑り角、つまり横滑り防止制御では対応しきれないと考えられる程度の値をしきい値として用い、現在発生している横滑り角がこのしきい値を超える程度であるか否かによって判定している。なお、制御部32bのうち、このステップ405の処理を実行する部分が車両姿勢急変検出手段に相当する。
このように、横滑り防止制御によって車両の姿勢を安定化できる程度にしか車両の姿勢が変化していないのであれば、タイヤがバーストしたとは考えられない。したがって、タイヤ空気圧の減圧が行わないまま処理が終了される。この場合には、横滑り防止制御のみによって車両の姿勢の安定化が図られることになる。
一方、横滑り防止制御によって車両の姿勢を安定化できない程、車両の姿勢が急変した場合には、タイヤがバーストしたものと考えられる。したがって、タイヤ空気減圧が必要であるものとして、ステップ407に進み、減圧対象輪の送信機12に向けてタイヤ空気圧を減圧させるというタイヤ空気圧制御信号が出力される。
このようなタイヤ空気圧制御信号が出力されると、送信機12では、アンテナ23および送受信部22bを通じて制御部23aにその旨が入力される。そして、制御部23aがタイヤ空気圧調整機構25を駆動することで、減圧対象輪のタイヤ空気圧が減圧される。
具体的には、制御部23aからコイル25eへの通電が行われ、コイル25eの磁気吸引力によって蓋部25bが吸引される。これにより、スプリング25cの弾性力に抗して蓋部25bが樹脂部25d側に摺動し、エアバルブが開かれる。これにより、樹脂部25dの貫通穴25gおよびシリンダ部25aのエア流通溝25fを通じてエア抜きが行われ、タイヤ空気圧が減圧される。
以上説明したように、横滑り防止制御などによって車両の姿勢の安定化が図られるようになっているが、タイヤがバーストして車両がスピンするような場合には、横滑り防止制御のみでは十分に車両の姿勢の安定化を図れない場合があり得る。このような場合には、バーストしていないタイヤの空気圧を減圧することで、より車両の姿勢の安定化を図ることが可能となる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、バーストした場合にタイヤ空気圧を減圧する場合について説明したが、車両の姿勢の急変の度合いに応じて、もしくは、バーストしたタイヤの空気圧に応じて、ここでの減圧量を変化させるようにしても良い。
上記実施形態では、バーストした場合にタイヤ空気圧を減圧する場合について説明したが、車両の姿勢の急変の度合いに応じて、もしくは、バーストしたタイヤの空気圧に応じて、ここでの減圧量を変化させるようにしても良い。
また、上記実施形態では、車両横滑り角に基づいて、車両の姿勢の急変を検出するようにしたが、タイヤ空気圧検出制御装置によって検出されるタイヤ空気圧から、それを検出するようにしても良い。例えば、タイヤ空気圧の減少勾配が所定のしきい値を超えるような場合には、タイヤがバーストしているものとして、車両の姿勢が急変してタイヤ空気減圧の必要性があるものとしても良い。この場合、タイヤがバーストしていると考えられる車輪以外の車輪を減圧対象輪として設定することもできる。
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
1…ブレーキペダル、3…マスタシリンダ、4…ブレーキ液圧制御アクチュエータ、
5a〜5d…ホイールシリンダ、6…ブレーキECU、12…送信機、
13…受信機、14…警報部、15a〜15d…車輪、21…センシング部、
22…マイクロコンピュータ、22a…制御部、22b…送受信部、
23…送信アンテナ、31…受信アンテナ、32…マイクロコンピュータ、
32a…送受信部、32b…制御部、32c…メモリ。
5a〜5d…ホイールシリンダ、6…ブレーキECU、12…送信機、
13…受信機、14…警報部、15a〜15d…車輪、21…センシング部、
22…マイクロコンピュータ、22a…制御部、22b…送受信部、
23…送信アンテナ、31…受信アンテナ、32…マイクロコンピュータ、
32a…送受信部、32b…制御部、32c…メモリ。
Claims (5)
- 車両の姿勢を示す物理量を検出する車両姿勢検出手段と、
前記車両姿勢検出手段が検出した前記物理量に基づき、前記車両の姿勢が急変したことを検出する車両姿勢急変検出手段と、
前記車両に備えられた各車輪のうち、どの車輪のタイヤ空気圧が他の車輪のタイヤ空気圧に比べて減少したかを検出するタイヤ空気圧減少検出手段と、
前記車両に備えられた各車輪それぞれに備えられ、前記各車輪のタイヤ空気圧を減少させるタイヤ空気圧調整機構と、を備えた車両姿勢制御装置であって、
前記車両姿勢急変検出手段によって、前記車両の姿勢が急変したことが検出されたときに、前記タイヤ空気圧減少検出手段によって検出された車輪とは異なる車輪を減圧対象輪として、該減圧対象輪に備えられた前記タイヤ空気圧調整機構により、該減圧対象輪のタイヤ空気圧を減少させるようになっていることを特徴とする車両姿勢制御装置。 - 前記車両の横滑り角を検出する横滑り角検出手段を備え、
前記車両姿勢急変検出手段は、前記横滑り角検出手段で検出された前記横滑り角が所定のしきい値を超えている場合に、前記車両の姿勢の急変を検出するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の車両姿勢制御装置。 - 前記タイヤ空気圧減少検出手段は、前記横滑り角検出手段によって検出された前記横滑り角に基づいて、前記車両がオーバーステア状態であるかアンダーステア状態であるかを検出し、これら各状態から前記タイヤ空気圧の減少を検出するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の車両姿勢制御装置。
- 前記各車輪それぞれのタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出手段を備え、
前記タイヤ空気圧減少検出手段は、前記タイヤ空気圧検出手段が検出したタイヤ空気圧に基づいて、前記タイヤ空気圧の減少を検出するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両姿勢制御装置。 - 前記各車輪それぞれのタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出手段を備え、
前記タイヤ空気圧検出手段は、前記各車輪のエアバルブに備えられた、前記各車輪それぞれのタイヤ空気圧に応じた信号を送信する送信機を備え、前記タイヤ空気圧調整機構は、この送信機に備えられており、
前記タイヤ空気圧減少検出手段によって前記タイヤ空気圧の減少が検出されると、前記送信機に向けてタイヤ空気圧を減少させる旨を示す信号が送られ、前記タイヤ空気圧調整機構によって前記エアバルブが開かれることで、タイヤ空気圧が減少させられるようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両姿勢制御装置。
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