JP2005320270A - 新規な電気化学応答性化合物およびその製造方法、ならびに該化合物を用いて標的物質とプローブ分子との結合の有無を検出する方法 - Google Patents

新規な電気化学応答性化合物およびその製造方法、ならびに該化合物を用いて標的物質とプローブ分子との結合の有無を検出する方法 Download PDF

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【課題】 標的分子またはプローブ分子に直接結合させることも可能であり、それを用いてインターカレータを合成することもできる、高感度に検出することが可能な新規な電気化学応答性化合物を提供すること。
【解決手段】 下記式(1)
【化1】
Figure 2005320270

(式中、R1は炭素数2〜5のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。)で表される化合物。

Description

本発明は、電気化学応答性を有する新規なフェロセン化化合物に関する。
生物学的または医学的研究や、臨床の場において、特定の塩基配列を有するDNA、RNA等の核酸やタンパク質等の生体分子を検出するために、それらの生体分子と特異的に結合する物質をプローブとする方法が用いられている。このような方法を用いる場合、標的となる生体分子の検出には、この標的生体分子とプローブ分子とが結合したかどうかを確認する手段が必要となる。
結合の有無を確認する手段として、標的分子を標識しておく方法が良く知られており、蛍光色素等が用いられている。例えば、ある細胞における遺伝子発現解析をするために、その細胞に含まれるRNAを蛍光標識し、固相担体に固定されたプローブcDNAと適当な条件下でハイブリダイゼーションさせた後、固相担体上の蛍光を検出する方法が広く用いられている。しかし、蛍光物質は時間の経過とともに退色するため、迅速に検出する必要がある。
蛍光に代わる検出方法として、導電性物質で生体分子を標識し、電気化学的にこの物質を検出することによって分子間の相互作用を観測する方法がある。
導電性物質で生体分子を標識する方法としては、導電性を有するインターカレータを用いる方法が提案されている(例えば特許文献1および2参照)。インターカレータとは、核酸の塩基間に挿入結合(インターカレーション)する性質を持つ分子をいう。インターカレータは、二本鎖核酸に規則的に縫いこまれるので、二本鎖が形成された量と結合するインターカレータの量に相関関係が得られ、ハイブリダイゼーションを定量的に測定することができる。導電性を有するインターカレータとしては、下記式(2)
Figure 2005320270
や、下記式(3)
Figure 2005320270
で表されるフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体等が利用されている。
特開平9−288080号公報 WO02/053571 Anne, A. et al.; Bioconjugate Chem.,12, 396-405 (2001)
電気化学的検出方法は、蛍光色素のように退色することもなく、リアルタイムでより正確な定量的測定を簡易に行うことができる。しかしこれまでは、主として導電性インターカレータを用いた二本鎖核酸の検出に用いられ、核酸のハイブリダイゼーション以外の生体分子間の相互作用を電気化学的方法により検出することはほとんど行われていなかった。
また、導電性インターカレータによって核酸のハイブリダイゼーションを検出する方法についても、従来よりもバックグラウンド電流の影響を受けにくく、微小な電流も検出できるより高感度なインターカレータが求められている。
そこで、本発明は、標的分子またはプローブ分子に直接結合させることも可能であり、それを用いてインターカレータを合成することもできる、高感度に検出することが可能な新規な電気化学応答性化合物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記事情に鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)
Figure 2005320270
で表される化合物、中でも、式(1)においてm=n=0、R1がエチレン基である化合物は、アミノ基を持つ物質と結合することができるので他の分子に標識として結合させやすいこと、および140mV前後と低い電位で最大電流を流す性質があるので、バックグラウンド電流の影響を受けにくく小さい電流を検出しやすいことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]下記式(1)
Figure 2005320270
(式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。)で表される化合物;
[2]m=n=0である、上記[1]に記載の化合物;
[3]R1がエチレンである、上記[1]または[2]に記載の化合物;
[4]上記[1]に記載の化合物の製造方法であって、下記反応式(A)に示すように、マロン酸ジエチルにBr−R4−CO225(式中、R4はR1よりも炭素数が1少ないアルキレン基を示す。)を反応させて化合物(a)を得、これにヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムを反応させて化合物(b)を得る第一工程と、反応式(B)に示すように、化合物(b)を加水分解して化合物(c)を得、これを脱炭酸して化合物(d)を得る第二工程と、反応式(C)に示すように、化合物(d)にN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させて目的物を得る第三工程と、を含む製造方法;
Figure 2005320270
[5]上記[1]から[3]のいずれか1項に記載の化合物を用いて、被検試料中の標的物質と、電極表面に固定されたプローブ分子との結合の有無を検出する方法であって、前記化合物を標的物質に結合させる工程と、前記被検試料と前記プローブ分子とを接触させ、インキュベートする工程と、前記化合物の電気化学応答を測定する工程と、を含む方法;
[6]前記標的物質およびプローブ分子の少なくとも一方が生体分子である、上記[5]に記載の方法、に関する。
本発明により、核酸、蛋白質等の生体分子をはじめとする様々な物質に対して容易に結合させることができる電気化学応答性を有する新規化合物を提供することができた。この物質は、比較的低電位に最大電流を流すピークがあるので、バックグラウンド電流の影響を受けにくく、微小な電流を検出することができ、被検試料中の標的物質を検出するための標識物質として有用である。
以下、本発明に係る化合物を、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何等限定するものではない。
本発明に係る化合物は上記式(1)で表される新規なフェロセンスクシンイミドエステル(以下「本発明の化合物」ともいう)である。本発明の化合物は、アミノ基を有する化合物に結合させることができ、電気化学的応答性を示すので、被検試料中の標的物質を検出する場合などに用いる標識物質として有用である。
本発明の化合物は、上記式(1)に示されるように、フェロセン部と、スクシンイミドエステル部と、両部をつなぐアルキレン基R1とから構成されている。電圧をかけることによりフェロセン分子間を電流が流れるので、この電流を測定することによって上記フェロセンスクシンイミドエステルを定量的に検出することができる。また、スクシンイミドエステル部はアミン化合物と反応して、収率良くアミド化合物を生成するので、アミノ基を有する物質に結合させることにより標識として用いることができる。
本発明の化合物は、前記式(1)においてm=n=0である無置換のフェロセニル基を含むものも好ましいが、本発明の化合物を、電気化学的に検出するための標識物質として水溶液中で使用する場合は、R2およびR3として水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を含む化合物も、これらの基によって電流量の測定時の電位が変化するので好ましい。
前記式(1)中、mまたはnが0ではなく1または2である場合において、R2またはR3が示す、水溶液中で電子供与基となる基としてはメチル基、メトキシ基、また電子求引基となる基としては、メトキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、ジメチルアミノメチル基およびジメチルアミノエチルアミノカルボニル基等が挙げられる。例えば、ジメチルアミノメチル基の場合には、水溶液中でプロトン化して電子求引基であるジメチルアンモニウムメチル基として機能する。
前記式(1)中、R1で示されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基およびヘキシレン基が挙げられる。
本発明の化合物は、その製造方法に特に制限されないが、次のようにして製造することが好ましい。
即ち、下記反応式(A)に示すように、マロン酸ジエチルにBr−R4−CO225(式中、R4はR1よりも炭素数が1少ないアルキレン基を示す。)を反応させて化合物(a)を得、これにヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムを反応させて化合物(b)を得る第一工程と、反応式(B)に示すように、化合物(b)を加水分解して化合物(c)を得、これを脱炭酸して化合物(d)を得る第二工程と、反応式(C)に示すように、化合物(d)にN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させて目的物を得る第三工程とによって、目的物である本発明の化合物を得ることが好ましい。
Figure 2005320270
また、本発明の化合物において、特にR1がエチレンである場合は、下記反応式(A')に示すように、マロン酸ジエチルにヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムを反応させてフェロセニルメチルマロン酸ジエチルエステルを得て、これを加水分解し2−フェロセニルメチルマロン酸とし、次いで反応式(B’)に示すように、2−フェロセニルメチルマロン酸を脱炭酸して3−フェロセニルプロピオン酸を得て、最後に反応式(C')に示すように、3−フェロセニルプロピオン酸とN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させることにより、目的物である本発明の化合物を得ることが好ましい。
Figure 2005320270
ここで、前記反応式(A')に係る反応は、例えば、マロン酸ジエチルにNa+-OC25を反応させ、Na+CH(COOC252 -を得てからヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムを反応させ、次いでこれに水およびKOHを加えて加熱することにより加水分解し、H+を加えることによって2−フェロセニルメチルマロン酸を得ることができる。
前記反応式(B’)に係る反応は、例えば160℃で加熱することにより行うことができる。加熱後に、クロマトグラフィー、溶媒除去、再結晶等などの分離・精製操作を必要に応じて行う。
前記反応式(C')に係る反応は、例えば、メタロセニルプロピオン酸とN−ヒドロキシスクシンイミドを混合し、これに縮合剤としてDCCを1,4−ジオキサンに溶解したものを滴下することによって行うことができる。反応後は、クロマトグラフィー、減圧での溶媒除去、再結晶等の分離・精製操作を必要に応じて行う。分離・精製操作を行うことにより、本発明の化合物として、より高純度なものを高収率で得ることができる。分離・精製操作は容易に行うことが可能である。
本発明の化合物の用途は特に限定されず、種々の用途に応用できるが、特に、電位を印加することによってフェロセン分子間を流れる電流量を測定することによって検出できること、およびアミノ基を有する化合物に容易に結合させることができることから、各種の標識として用いることができる。
例えば、まず被検試料中に含まれる標的物質に特異的に結合するプローブ分子を電極表面に固定しておき、次に標的物質を本発明の化合物で標識した後、被検試料とプローブ分子とを接触させインキュベートする。そして、本発明の化合物による電気化学的シグナルを検出することによって、本発明の化合物がプローブ分子と結合したかどうかを確認することができる。
本発明に係る方法は特に、標的物質およびプローブ分子の少なくとも一方が生体分子である場合に好適であり、核酸のハイブリダイゼーション、蛋白質−蛋白質相互作用の検出や、生体分子に特異的に結合する化合物のスクリーニング等のために用いることができる。本明細書において生体分子とは、生体由来の分子であれば特に限定されない。例えば本発明の化合物を核酸に結合させ、この核酸がプローブ核酸とハイブリダイズしたかどうかを検出することができる。本発明の化合物は、蛋白質のリジン残基のアミノ基、アミノ糖のアミノ基、脂質に含まれるアミノ基にも結合させることができるので、これらの分子も本発明の化合物で標識することができ、電気化学的に検出することが可能である。
また、本発明の化合物によって、インターカレータを標識することにより、二本鎖核酸を定量的に検出することもできる。電気化学的シグナルの検出には、サイクリックボルタンメトリーやディファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)を用いることができ、標識した物質が、電極表面に固定されたプローブ分子と結合したかどうかを、リアルタイムで高感度かつハイスループットに測定することができる。
本発明の化合物の中でも、m=n=0であってR1がエチレン基である、下記式(4)
Figure 2005320270
で表される化合物は、電位140mV付近において最大電流を流す。140mVは、従来のフェロセン化化合物に最大電流を与える電位よりも低く、バックグラウンド電流の影響を受けにくいので、小さい電流を検出しやすいという利点がある。
本発明の化合物でインターカレータを標識する場合、インターカレータとしては、N,N−ジ置換ナフタレンジイミド、1,5−、2,6−、9,10−ジ置換アントラセン、1,5−、2,6−ジ置換アントラキノン、1,5−、2,6−、4,9−ジ置換アクリジン誘導体等の縫い込み型インターカレータを用いることができ、これらのインターカレータの末端(片端または両端)に本発明の化合物を導入することができる。
以下に、一例として、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を用いてインターカレータを製造する工程の概略を示す。反応式(D)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(5)で表される化合物とを反応させて、式(6)で表される化合物を得る工程と、反応式(E)に示すように式(6)で表される化合物と本発明の化合物(1)とを反応させて目的物を得る工程とからなる。
Figure 2005320270
反応式(D)に係る反応においては、例えばテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で反応物を加熱還流し、その後生成物を再結晶等により分離・精製する等通常の合成法で行われる操作を必要に応じて行う。上記反応式(E)に係る反応においては、例えばまず化合物(6)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の溶媒中で撹拌し、ブトキシカルボニル基(Boc)で保護されたアミノ基の脱保護を行い、続いてクロロホルム、トリエチルアミン等の溶媒中で反応物を撹拌し、減圧での溶媒除去や再結晶等により分離・精製する等の通常の合成方法で行われる操作を必要に応じて行う。
また、本発明の化合物は、上述の縫い込み型インターカレータに加えて、エチジウムブロミド誘導体、アクリジン誘導体等の古典的インターカレータや、デスタマイシン誘導体、DNA結合性金属錯体等のグルーブバインダー型インターカレータにも結合させることができる。本発明の化合物を古典的インターカレータに結合させた構造を図8に、グルーブバインダー型インターカレータに結合させた構造を、図9に示す。
以下に、本発明に係る化合物の有利な効果を示すため、実施例、試験例を示すが、これらは例示的なものであって、本発明は如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではない。
本発明の化合物の一例として、上記式(1)においてm=n=0、R1がエチレン基であるフェロセニルプロピオン酸スクシンイミドを合成した。フェロセニルプロピオン酸の合成は、非特許文献1に従い、これを改良して行った。
(1)フェロセニルメチルマロン酸ジエチルエステルの合成
以下のスキームに従って、化合物(b)を合成した。
Figure 2005320270
マロン酸ジエチル8.35ml(55mmol)の無水エタノール50ml溶液をスターラーで撹拌しながら、ナトリウムエトキシド3.75g(55mmol)の無水エタノール50ml溶液を少しずつ加えた後、3分間撹拌した。この混合溶液にヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウム19.3g(50mmol)を加え、オイルバスで90℃、72時間還流した。還流後、この溶液を超純水200mlで希釈し、1N HClを用いてpH試験しで確認しながら中和した。
この溶液を分液ロートによりジエチルエーテル100mlで2回抽出を行った。抽出液を飽和NaHCO3水溶液で洗浄後(約100ml)、ジエチルエーテル相を取り、MgSO4で乾燥後、減圧留去により残渣を得た。展開溶媒クロロホルム:ヘキサン=1:1のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、TLC(クロロホルム:ヘキサン=1:1)のRf値0.1の橙色成分を分取し、減圧乾燥した。
得られた橙色固体の物質の1H−NMR測定およびIR測定を行った。1H−NMRスペクトルデータを表1に示す。
Figure 2005320270
以上の結果より、得られた化合物は下記式に示す、フェロセニルメチルマロン酸ジエチルエステルであることが確認された(収量14.4g、収率81%)。
Figure 2005320270
尚、上記構造式中のa〜gは、表1中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
(2)2−フェロセニルメチルマロン酸の合成
下記スキームに従って、化合物(b)を用いて2−フェロセニルメチルマロン酸を合成した。
Figure 2005320270
(1)で合成したフェロセニルメチルマロン酸ジエチルエステル13.5g(37mmol)の無水エタノール23mlに、6N KOH水溶液2.5ml(11mmol)を加え、6N KOH溶液とし、24時間還流した。還流後、この溶液を150mlの超純水で希釈して、エバポレータでエタノールを減圧留去した。残った水層を分液ロートを用いてジエチルエーテル150mlで2回洗浄した。水層を、6N HClを用いてpH試験紙で確認しながら中和し、ジエチルエーテル150mlで2回洗浄した。水層にジエチルエーテル150mlを加え、撹拌しながら1N HClを水層が酸性になるまで加えた。ジエチルエーテル層を超純水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮を行い、減圧乾固した。得られた黄色個体の1H−NMR測定およびIR測定を行った。1H−NMRスペクトルデータを表2に示す。
Figure 2005320270
IR(KBr)測定の結果は、3400cm-1(OH)、1710cm-1(C=O)であった。
以上の結果より、得られた化合物は下記式(7)に示す、2−フェロセニルメチルマロン酸であることが確認された。
Figure 2005320270
尚、上記構造式中のa、b、c、dおよびeは、表2中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
(3)3−フェロセニルプロピオン酸の合成
下記スキームに従って、2−フェロセニルメチルマロン酸の脱炭酸を行い、3−フェロセニルプロピオン酸を合成した。
Figure 2005320270
2−フェロセニルメチルマロン酸2.8g(9.3×10-3mol)を100mLナス型フラスコに入れ、160℃で30分間脱炭酸反応を行い、TLCで反応終了を確認した。得られた粗生成物を展開溶媒(クロロホルム:エタノール=95:5)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。Rf値が0.1の目的物を分取した。分取後、クロロホルム、メタノールを減圧留去し、減圧乾固した。黄色固体の物質が得られ、この物質を1H−NMRで同定した。結果を表3に示す。
Figure 2005320270
以上の結果より、得られた化合物は下記式(8)に示す、3−フェロセニルプロピオン酸であることが確認された(収量2.1g、収率88%)。
Figure 2005320270
尚、上記構造式中のa、b、c、dおよびeは、表3中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
(4)3−フェロセニルプロピオン酸スクシンイミドエステルの合成
下記スキームに従い、3−フェロセニルプロピオン酸とN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させ、フェロセニルプロピオン酸スクシンイミドを合成した。
Figure 2005320270
50mlのナス型フラスコに3−フェロセニルプロピオン酸0.40g(1.56mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド0.21g(1.8mmol)を加え、これに1,4−ジオキサン8mlを加えた。DCC(縮合剤)0.37g(1.8mmol)を溶かした1,4−ジオキサン14mlを用意し、これを滴下ロートで上記ナス型フラスコに滴下していった。滴下を約60分かけて行い、滴定終了後、反応追跡をTLCで行った。約16時間撹拌後、溶液を吸引ろ過し固体物DCUreaを除去した。得られた濾液から1,4−ジオキサンを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィーで展開溶媒(クロロホルム:n−ヘキサン=10:1)を用いて、Rf値0.15の橙色成分を分取した。分取した溶液から展開溶媒を減圧留去後、約3時間減圧乾固し、黄色固体を得、この物質を1H−NMRで同定した。結果を表4に示す。
Figure 2005320270
以上の結果より、得られた化合物は式(9)に示す、フェロセニルプロピオン酸スクシンイミドであることが確認された(収量0.46g、収率83%)。
Figure 2005320270
尚、上記構造式中のa、b、c、およびdは、表4中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
[試験例]
上述のように合成された3−フェロセニルプロピオン酸スクシンイミド(以下「Fcpro」と略記する)をオリゴヌクレオチドに結合させ、このオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するプローブDNAとのハイブリダイゼーションの検出を行った。
(1)オリゴヌクレオチド−Fcproの合成
2N−dT20(チミン20量体)25nmolを含むNa2CO3/NaHCO3緩衝液(pH9.0)20μlに、3−フェロセニルプロピオン酸スクシンイミドエステル1.3μmol(0.43mg)を含むDMSO溶液6μlを加えて室温で24時間振とうした。振とう後、全量が1mlになるように0.1M トリエチルアミン酢酸(triethylamine-acetic acid:TEAA)緩衝液(pH7.0)を加え、NAP−10カラム(Parmacia SephadexG-25)を用いてオリゴヌクレオチドに由来する成分を分取した。その際、NAP−10カラムはあらかじめ0.1M TEAA緩衝液15mlで平衡化させた後使用した。全量が1mlになるようにメスアップした試料をカラムにチャージし、1mlの溶液が溶出した後、0.1M TEAA緩衝液を1.5mlチャージした。この直後からの溶出液1.5mlを分取した。得られた溶液を一晩凍結乾燥し、滅菌蒸留水20μlを加えて逆相HPLCにより分析した。HPLCにインジェクトした溶液は、40分の1に希釈して分析した。
HPLCの条件を以下に示す。
カラム:Lichrospher RP-18(Cica-MERCK) 流速:1ml/min
検出波長:260nm 試料注入溶媒:超純水
溶離液A:0.1M TEAA buffer(pH7.0), 10% CH3CN溶液
溶離液B:0.1M TEAA buffer(pH7.0), 40% CH3CN溶液
グラジエント条件
Figure 2005320270
2N−dT20のクロマトグラムを図1に、RT=11分のUVスペクトルを図2に示す。また、dT20−Fcproのクロマトグラムを図3に、RT=21分のUVスペクトルを図4に示す。
HPLCクロマトグラムより反応率100%であることが確認された。また、UV−vis測定および濃度決定により収量は26nmol、収率は100%であることが確認された。
dT20−FcproのMALDI−TOF MSによる測定結果を図5に示す。
測定条件を以下に示す。
Fc-dT20:m/z=6442
Laser intensity:1940 Polarity:Negative
Matrix:3-Hydroxypicolinic acid
(2)dT20−Fcproを用いての電気化学応答の評価
プローブDNAとして、dA20(アデニン20量体)を電極に固定し、10pmol/μlのdT20−Fcproをハイブリダイゼーションさせた。図6に本工程の概念図を示す。この電極を電界溶液に1分間浸漬させ、DPV測定を行った。
DPV測定の条件を以下に示す。
Scan Rate:0.1V/sec、Pulse Amplitude:50mV、Sample Width:16.7msec、
Pulse Width:50msec、Pulse Period:200msec、Quiet Time:2sec、
C.E.:Pt wire、R.E.:Ag/AgCl
測定結果を図7に示す。図7中Aは、dA20修飾電極のみで測定したもの、BはdT20−Fcproを(dA20電極で修飾されていない)SAM電極に接触させインキュベートしたもの、CはdA20修飾電極にdT20−Fcproを接触させインキュベートしたもの、DはdA20修飾電極にdA20−Fcproを接触させインキュベートしたもの、の0.14Vでの電気化学的シグナル変化を表す。
この結果から、Ep=0.14Vにフェロセン由来のピーク電流が得られた。またコン
トロール(A、BおよびD)では、いずれもピーク電流は得られなかった。以上から、Ep=0.14Vに得られたピーク電流は二本鎖形成に由来する応答であることが示され、本発明の化合物がDNA検出のための標識として使用できることが明らかとなった。ピーク電流のばらつきが多少あるが、これは電極によるプローブ固定化量のばらつきが原因とされる。
2N−dT20のクロマトグラムを示す。 2N−dT20のUVスペクトルを示す。 dT20−Fcproのクロマトグラムを示す。 dT20−FcproのUVスペクトルを示す。 dT20−FcproのMALDI−TOF MSによる測定結果を示す。 ハイブリダイゼーション実験の概念図を示す。 ハイブリダイゼーション実験における、0.14Vでの電気化学的シグナル変化を示す。 本発明の化合物を古典的インターカレータに結合させた様子を示す。 本発明の化合物をグルーブバインダー型インターカレータに結合させた構造を示す。

Claims (6)

  1. 下記式(1)
    Figure 2005320270
    (式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。)で表される化合物。
  2. m=n=0である、請求項1に記載の化合物。
  3. 1がエチレンである、請求項1または2に記載の化合物。
  4. 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
    下記反応式(A)に示すように、マロン酸ジエチルにBr−R4−CO225(式中、R4はR1よりも炭素数が1少ないアルキレン基を示す。)を反応させて化合物(a)を得、これにヨウ化フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムを反応させて化合物(b)を得る第一工程と、反応式(B)に示すように、化合物(b)を加水分解して化合物(c)を得、これを脱炭酸して化合物(d)を得る第二工程と、反応式(C)に示すように、化合物(d)にN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させて目的物を得る第三工程と、を含む製造方法。
    Figure 2005320270
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物を用いて、被検試料中の標的物質と、電極表面に固定されたプローブ分子との結合の有無を検出する方法であって、
    前記化合物を標的物質に結合させる工程と、
    前記被検試料と前記プローブ分子とを接触させ、インキュベートする工程と、
    前記化合物の電気化学応答を測定する工程と、を含む方法。
  6. 前記標的物質およびプローブ分子の少なくとも一方が生体分子である、請求項5に記載の方法。

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