JP2005320240A - 防曇防汚ガラス物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動車および建築物の窓ガラスならびにメガネ等に使用できる防曇防汚ガラス物品を提供する。
【解決手段】 ガラス基材の表面に、アルカリ遮断膜、光触媒膜、ならびに酸化珪素単分子相当層またはポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含むオルガノシランもしくはその加水分解物の層をその順に積層してなる防曇防汚ガラス物品であって、前記光触媒膜またはアルカリ遮断層にフッ素が含有されてなる防曇防汚ガラス物品である。
【選択図】なし

Description

本発明は、防曇防汚ガラス物品、特に自動車、建築用の防曇防汚ガラス板およびメガネ、鏡、レンズ、ショーケースやその他の防曇防汚ガラス物品に関するものである。
主に自動車および建築の分野では、古くから防曇防汚ガラス板に対する強いニーズがある。特に自動車においては、安全走行の観点から窓ガラスへの防曇防汚性付与が重要な課題になりつつある。
従来から、ガラス物品への様々な防曇防汚コーティングが検討されてきた。例えば、界面活性剤を含有した有機及び/または無機薄膜のコーティング(以下「方法1」、例えば特許文献1)、親水性ポリマーのコーティング(以下「方法2」、例えば特許文献2)、親水性有機官能基を含有する有機無機複合膜のコーティング(以下「方法3」、例えば特許文献3)等である。
また最近、光触媒として作用する酸化チタン薄膜をガラス表面に被覆した防曇防汚ガラスが提案された(以下「方法4」、例えば非特許文献1)。これは、ガラスの表面の酸化チタンが紫外光を吸収しそのエネルギーにより、ガラス表面に吸着した有機物が効率よく酸化分解される結果、著しい親水性を有する清浄な表面が得られることを利用したものである。また材料的に全て無機物で構成され機械的な強度にも優れている他、一旦汚れが付着しても光さえ当たれば、再び表面が清浄化され、親水性表面が復活する。表面が親水性を維持すれば、都会型汚れである親油性の黒い汚れが付き難く、また付いた汚れは降雨により除去され易く(例えば、非特許文献2、非特許文献3)、いわゆるセルフクリーニング性を持ち、防汚材料として使用できる。
特開平7−117202号公報 特許1344292号公報 特開平6−220428号公報 「セラミックス」誌、第31巻、pp.837−840(1996年) 小松澤俊樹、中家俊和、「新規汚れ防止型塗料」、「塗装技術」誌、1995年1月号、pp.94−99 (1995年) 田中正一、「汚染劣化と耐汚染性塗料技術(工業用塗料)」、「塗装技術」誌、1996年10月増刊号、pp.95−102 (1995年)
前記方法1は、初期性能には優れているものの、徐々に界面活性剤が消費されることから、寿命が短いという欠点がある。
前記方法2は、用途によっては有効な手段であるが、自動車、建築等の比較的大きな機械的強度が要求されるガラスに適用することはできない。
前記方法3は、防曇性能と機械的強度を両立させるために考案されたものであるが、いずれも性能面で限界がある。また、一旦汚れが付着した場合には防曇性能が著しく低下するという問題もある。
前記方法4は原理的には他の方法では実現できない特徴を有しているものの、自動車および建物の内部における紫外光の強度は非常に弱いことから、実用に供する様な防曇防汚ガラス物品は今までのところ得られていない。
本発明は、自動車および建築物の窓ガラスならびにメガネ等に使用できる優れた長期防曇防汚性能を有する防曇防汚ガラス物品を提供することを目的としている。
本発明は、ガラス基材の表面に、アルカリ遮断膜、光触媒膜、ならびに酸化珪素層またはポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含むオルガノシランもしくはその加水分解物の層からなる有機物付着防止層をその順に積層してなる防曇防汚ガラス物品であって、前記光触媒膜が酸化チタンを10重量%以上含みかつフッ素原子を含有してなる防曇防汚ガラス物品ある。
また本発明は、前記光触媒膜が酸化チタンからなりかつフッ素原子を含有してなる前記防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、前記光触媒膜が0.002〜1重量%のフッ素原子を含有してなる前記防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、ガラス基材の表面に、アルカリ遮断膜、光触媒膜、ならびに酸化珪素層またはポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含むオルガノシランもしくはその加水分解物の層からなる有機物付着防止層をその順に積層してなる防曇防汚ガラス物品であって、前記光触媒膜が酸化チタンを10重量%以上含みかつ前記アルカリ遮断膜がフッ素原子を含有してなる防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、前記光触媒膜が酸化チタンからなる前記防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、前記アルカリ遮断膜が0.002〜10重量%のフッ素原子を含有してなる前記防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、前記光触媒膜がさらにフッ素原子を含む前記防曇防汚ガラス物品である。
また本発明は、前記有機物付着防止層が0.5〜5の厚み方向平均分子層数を有する前記防曇防汚ガラス物品である。
ここで、Ra値、Sm値はJIS B0601(1994)記載の方法により定義され、原子間力顕微鏡(例えば、セイコー電子株式会社製SPI3700)や電子顕微鏡(例えば、株式会社日立製作所製H−600)を用いて観察、測定した断面曲線から計算できる。
光触媒を用いて優れた防曇防汚機能を得るためには三つの条件を同時に満足する必要がある。一つは、光触媒膜の表面に吸着した、曇りや汚れの原因となる有機物を効率よく酸化分解すること(高光触媒活性)である。二つ目は、有機物が表面に吸着しにくいこと(吸着防止性)である。三つ目は、特に、防曇性に必要なことであるが、水滴が付着したときの見かけの接触角を小さくすること(低接触角化)である。以上の三つが満足されて初めて、長期にわたる良好な防曇防汚性能が発現できることになる。
本発明において、光触媒としては,TiO,ZnO,ZnS,WO,Fe,GaAs,CdSe,GaAsP,CdS,SrTiO,GaP,In,MoO等が用いられるが、光触媒活性の高さと化学的な安定性から,現在最も広範に用いられている光触媒はTiOであり,本発明にも特に好適に使用することができる。以下代表的に酸化チタンについて説明する。
ガラス基材表面に直接に酸化チタン膜のような光触媒膜をコーティングしても、高い光触媒活性は得られない。これは、アルカリ金属を含有するガラス基材の中から熱処理の際に拡散して出てきたNaイオンのようなアルカリ金属イオンが酸化チタン膜の結晶性を低下させるからである。この酸化チタン膜の結晶性の低下を防止するために、本発明において、ガラス基材に酸化珪素膜その他のアルカリ遮断膜を設け、その上に酸化チタンからなる光触媒膜または酸化チタンを含む光触媒膜をコーティングする。光触媒膜として酸化チタンを含む膜を用いる場合は、酸化チタンの含有率が、10重量%以上であることが好ましい。酸化チタンが10重量%より少ないと、表面の光触媒活性が低くなりすぎ実用的ではない。
[アルカリ遮断膜]前記アルカリ遮断膜としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化セリウムからなる群より選ばれる単成分または多成分の組成からなるものが好適に使用される。これらの中で、酸化珪素(シリカ)単成分または主成分が酸化珪素である多成分のものが好ましく、酸化珪素と酸化ジルコニウムの2成分系金属酸化物であることがさらに好ましい。主成分が酸化珪素である金属酸化物は屈折率が低くガラス板の光学的特性を大きく損なうことなく成膜を行うことができ好ましく、酸化珪素と酸化ジルコニウムの2成分系金属酸化物では、アルカリ遮断性能が非常に高いのでさらに好ましく、酸化ジルコニウムの含有率は1重量%以上30重量%以下のものが特に好ましい。含有率が1重量%より低いとアルカリ遮断性能向上効果は酸化珪素単体とあまり差がなく、30重量%より高いとアルカリ遮断性能向上効果がもはや向上しないばかりか、屈折率増大による反射率向上が起こる傾向が強くなりガラス板の光学的特性を制御し難くなるので好ましくない。
前記アルカリ遮断膜の厚みは、10nm以上300nm以下であることが好ましい。厚みが10nmより薄いとアルカリ遮断効果が充分でなく、また300nmより厚いと膜による干渉色が顕著に認められるようになりガラス板の光学特性を制御し難くなるので好ましくない。
前記アルカリ遮断膜は公知の方法で形成できる。例えば、ゾルゲル法(例えば、山本雄二、神谷寛一、作花済夫、窯業協会誌、90、328〜333(1982))、液相析出法(例えば特公平1−59210、特公平4−13301)、真空成膜法(真空蒸着、スパッタ)、焼付け法・スプレーコート(例えば特開昭53−124523、特開昭56−96749)、CVD法(例えば特開昭55−90441、特開平1−201046、特開平5−208849)などが例示できる。
ゾルゲル法による、アルカリ遮断膜は、加水分解・縮重合可能な有機金属化合物またはクロロシリル基含有化合物またはそれらの加水分解物を含む塗布液をガラス基材上に塗布、乾燥、および必要に応じて熱処理することにより形成される。
前記微粒子の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の単体または混合体が好ましく、水がさらに好ましい。
前記アルカリ遮断膜形成用塗布液中に含ませる加水分解・縮重合可能な有機金属化合物としては、金属アルコキシド、例えば、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどが、単体あるいは混合体として好ましく用いられ、高分子量タイプのアルキルシリケート、例えばコルコート株式会社製「エチルシリケート40」や三菱化学株式会社製「MS56」なども用いることができる。前記有機金属化合物加水分解物として、市販のアルコキシシラン加水分解液、例えばコルコート株式会社製「HAS−10」、株式会社日板研究所製「セラミカG−91」、「G−92−6」、日本曹達株式会社製「アトロンNSI−500」などを用いることができる。
前記アルカリ遮断膜形成用塗布液中に含ませるクロロシリル基含有化合物とは、クロロシリル基(−SiCl3−n、ここでnは1,2,または3であり、Xは水素、またはそれぞれ炭素数が1〜10のアルキル基、アルコキシ基、またはアシロキシ基である)を分子内に少なくとも1個有する化合物であり、その中でも、少なくとも2個の塩素を有する化合物が好ましく、シランSi2n+2(ここでnは1〜5の整数)の中の少なくとも2個の水素を塩素で置換し、他の水素を必要に応じて前記アルキル基、アルコキシ基、またはアシロキシ基で置換したクロロシランおよびその縮重合物が好ましく、例えば、テトラクロロシラン(四塩化珪素、SiCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、トリクロロモノメチルシラン(SiCHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、およびCl−(SiClO)−SiCl(nは1〜10の整数)等を挙げることができる。前記クロロシリル基含有化合物の加水分解物も使用することができ、これらの中から、単独でまたは複数を組み合わせて使用することができるが、最も好ましいクロロシリル基含有化合物はテトラクロロシランである。クロロシリル基は反応性が非常に高く、自己縮合または基材表面と縮合反応をすることにより緻密な被膜を形成する。
前記有機金属化合物またはクロロシリル基含有化合物またはそれらの加水分解物を含む溶液の溶媒は、実質的に前記有機金属化合物またはクロロシリル基含有化合物またはそれらの加水分解物を溶解すれば基本的に何でも良いが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が最も好ましく、前記有機金属化合物、クロロシリル基含有化合物、それらの加水分解物の合計を1〜30重量%の濃度で含有させる。
前記有機金属化合物の加水分解には水が必要である。これは、酸性、中性の何れでも良いが、加水分解を促進するためには、触媒作用を有する塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、スルホン酸等で酸性にした水を用いるのが好ましい。酸の添加量は特に限定されないが、有機金属化合物に対してモル比で0.001〜5が良い。添加酸量が、モル比で0.001より少ないと、有機金属化合物の加水分解の促進が充分でなく、またモル比で5より多くても、もはや加水分解促進の効果が向上せず、好ましくない。
前記有機金属化合物の加水分解に必要な水の添加量は、有機金属化合物に対してモル比で0.1〜100が良い。水添加量がモル比で0.1より少ないと、有機金属化合物の加水分解の促進が充分でなく、またモル比で100より多いと、液の安定性が低下する傾向になり好ましくない。
前記クロロシリル基含有化合物を用いる場合には、必ずしも水や酸の添加は必要ではない。付加的に全く水や酸を添加しなくても、溶媒中に含まれていた水分や雰囲気中の水分などにより加水分解が進行する。また、この加水分解に伴って液中に塩酸が遊離し、さらに加水分解が進行する。しかし、付加的に水や酸を加えても何ら差し支えない。
前記有機金属化合物やクロロシリル基含有化合物またはそれらの加水分解物を溶媒とともに混合し、必要に応じて水、酸触媒、および分散助剤を添加して、コーティング液を調製する。この時、有機金属化合物とクロロシリル基含有化合物は単独で用いても混合して用いてもどちらでも良い。
前記有機金属化合物またはクロロシリル基含有化合物を溶媒に溶かし、触媒と水を加え、10℃と溶液の沸点の間の所定の温度で5分間から2日間加水分解させ、アルカリ遮断膜形成用コーティング液を得る。なお、クロロシリル基含有化合物を用いる場合には触媒および水は特別に添加する必要はない。また、有機金属化合物の加水分解工程を省略するために、前記市販の有機金属化合物加水分解物溶液を用いても良い。得られたコーティング液は、その後コーティング方法に応じて適当な溶媒で希釈しても構わない。
次に、液相析出法によるアルカリ遮断膜は、例えば、1〜4mol/L濃度の珪フッ化水素酸のシリカ過飽和水溶液に珪酸塩ガラス基材を25〜50℃で1〜4時間浸漬することにより前記水溶液中から酸化珪素が基材の表面に析出し、アルカリ遮断酸化珪素膜が形成される。前記シリカ過飽和珪フッ化水素酸の水溶液は、1〜4mol/L濃度の珪フッ化水素酸水溶液に溶解させ、さらにホウ酸を1×10−4〜100×10−4mol/Lの濃度になるように添加することにより得られる。
[光触媒膜]前記アルカリ遮断膜の上にコーティングする光触媒膜の光触媒活性は膜厚に強く依存する。膜厚が薄すぎると光を充分に吸収できず、厚すぎると膜中で生じた光キャリヤーが膜の外側表面まで拡散できないために、ともに触媒活性が低下する。使用条件によっても最適な膜厚は異なるが、10nm〜500nmの範囲、より好ましくは50〜200nmの範囲で良好な光触媒活性を発現させることができる。
本発明における酸化チタンからなる光触媒膜または酸化チタンを含む光触媒膜は通常の薄膜製造方法を利用して作製されるが、中でもゾルゲル法が好ましく適用される。ゾルは、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドと他の金属アルコキシドを同時に加水分解させて得られる。また酸化チタン微粒子を無機バインダー(チタン以外の金属のアルコキシドを含有する)中に分散させた市販の液を用いるのが簡単であり、好ましく用いられる。市販の液の例としては、「ST−K03」(石原産業株式会社製、酸化チタン含有量5重量%、無機バインダー含有量5重量%)および「CA−62」(多木化学株式会社製、酸化チタン含有量6重量%、バインダー量1.5重量%)等が挙げられる。
これらアルカリ遮断膜の上に酸化チタン系薄膜を形成した後に、緻密化や酸化チタン結晶性の向上のために、好ましくは450〜650℃で10分〜2時間の条件で加熱処理する。
[光触媒膜へのフッ素ドープ]さらに前記光触媒膜中に微量のフッ素原子をドーピングすることにより、さらに光触媒活性を増大させることが可能である。ドーパントとしてはトリフルオロ酢酸等が使用できる。これらトリフルオロ酢酸をはじめとするドーパントは、その後の熱処理によって分解し、原子状態のフッ素として酸化チタン結晶格子中にドーピングされる。フッ素原子の大きさは酸素原子の大きさとほぼ同じであるので、ドーピングされたフッ素原子は主に酸化チタンの酸素原子と置換された形で存在するものと考えられる。
ゾルゲル法で酸化チタン系光触媒膜を形成する場合、その原料であるチタンアルコキシドの溶液や酸化チタン微粒子分散液中に熱分解可能なフッ素化合物、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)を添加することにより、焼成等の熱処理後の膜中にはフッ素原子が0.002〜1重量%ドープされ、さらに光触媒活性を増大させることができる。
また、真空蒸着法や化学気相蒸着(CVD)法で酸化チタン光触媒膜を形成する場合も、原料中にフッ素化合物を添加することで同様のフッ素原子ドープが可能である。
膜中のフッ素原子ドープ量が0.002重量%より少ないと、光触媒活性の増大効果があまり顕著でなく、また1重量%より多くても光触媒活性がもはや増大しないので好ましくない。
一方、アルカリ遮断膜中にフッ素原子をドープすることによっても、熱処理により酸化チタン系膜中にフッ素原子が拡散して、同様のドープ効果が得られる。アルカリ遮断膜中のフッ素原子ドープ量は0.002重量%以上10重量%以下が好ましい。アルカリ遮断膜中のフッ素原子ドープ量が0.002重量%より少ないと、光触媒層の光触媒活性の増大効果があまり顕著でなく、また10重量%より多くても光触媒層の光触媒活性がもはや増大しないので好ましくない。
アルカリ遮断膜中へのフッ素原子ドープは、ゾルゲル法や真空蒸着法や焼付け法やスプレーコート法やCVD法等によりアルカリ遮断膜を作成する場合では、その原料中にフッ素化合物を添加する方法が通常用いられる。また、液相析出法により酸化珪素のアルカリ遮断膜を形成する場合には、原料溶液(珪フッ化水素酸のシリカ過飽和溶液)中にフッ素が0.1〜10%含まれているので、この原料溶液に特別にフッ素化合物を添加する必要はなくそのまま使用できる。
[有機物付着防止層]前記の光触媒膜の上に下記のような有機物付着防止層を形成させることが好ましい。活性の高い酸化チタン膜のような光触媒膜は、紫外線照射直後には5度以下の小さな接触角を有していてかなり良好な初期防曇性能を有している。しかし、その表面に、有機物を吸着し易いため、吸着有機物量増加により経時的に防曇性能が劣化しやすい。本発明において、光触媒膜表面にSiOx単分子相当層(xは1〜2)を形成することが好ましく、それにより、高い光触媒活性を維持しながら、かつ、有機物の吸着が効果的に抑制され、そして防曇性の劣化が防止される。有機物付着防止層である、SiOxの単分子相当層の形成は、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのような珪素化合物の蒸気を光触媒表面に化学吸着させたり有機珪素化合物、例えばテトラアルコキシシランを含む液を光触媒膜表面に塗布したりした後に、酸素存在下で紫外光を照射したり加熱したりしてこれを分解することにより好適に行うことができ、その他に、真空蒸着法、LB法、液相析出法などの方法で直接に、SiOxの単分子相当層を形成させてもよい。またSiOx単分子相当層に代えて、ポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含む有機金属化合物またはその加水分解物で光触媒膜表面を被覆することにより、防汚性能が顕著に向上する。これら有機金属化合物は紫外光の照射や温度上昇など外的要因により次第に分解され最終的にはSiOx等の金属酸化物単分子相当層を形成し防汚性能は維持される。ここで、単分子相当層とは、実質的に単分子層であって、厚み方向に分子が平均して0.5〜5個配置された分子の層を指す。
前記有機金属化合物の分子内に含まれるポリアルキレンオキシド基としては、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基などが主に使用される。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数が1〜10の鎖状アルキル基、およびシクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数が3〜10の環状アルキル基が主に使用される。前記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロヘキセニル基などの炭素原子数が1〜10の基が主に使用される。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などが主に使用される。これらの官能基、例えばポリエチレンオキシド基を分子内に含む有機金属化合物としては、[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]トリアルコキシシラン、[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]トリクロロシランのようなオルガノシラン、および[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]トリアルコキシチタンのような有機チタン化合物を挙げることができる。
これら官能基は無極性または低極性であるので、汚れ付着性が低く水滴に対する接触角の上昇が抑えられ、すなわち防曇持続性や親水維持性が良好となり好ましい。特にポリアルキレンオキシド基を含むオルガノシランを用いて作製した前記防曇防汚物品は、防曇特性が良好で防曇持続性や親水維持性(すなわち防汚性)が特に優れており、特に好ましい。前述したように、親水維持性が高いと、防汚性が良好である。
また前記官能基は非反応性または低反応性であるので、汚れ成分と化学的結合を生じることもなく、汚れが表面に固定されることもなく、表面に付着した汚れが拭き取りなどにより簡単に除去できるので、たとえ汚れによって防曇性が消失しても簡単に防曇性を復活させることができる。
前記ポリアルキレンオキシド基を含むオルガノシランは、分子内にアルコキシル基やクロロ基を有するアルコキシシランやクロロシランであることが好ましい。アルコキシル基やクロロ基は容易に加水分解を受けて、オルガノシランが光触媒膜表面に強固に化学結合できる状態になるので、より防曇持続性の高い製品になる。前記オルガノシランの中で、ポリエチレンオキシド基を含有するアルコキシシラン、特に[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]トリアルコキシシラン、例えば[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランが最も好適である。
前記オルガノシランまたはその加水分解物を前記光触媒膜表面に結合または付着させる方法としては、前記オルガノシランまたはその加水分解物が前記光触媒膜表面に接触する方法なら何でも良い。例えば、前記オルガノシランまたはその加水分解物を含む液体を光触媒膜表面に塗布する方法(塗布法)、前記オルガノシランまたはその加水分解物を含む液体に光触媒膜形成物品を浸漬する方法(液相化学吸着法)、前記オルガノシランまたはその加水分解物の蒸気中に光触媒膜形成物品を置き吸着させる方法(気相化学吸着法)などが挙げられる。
前記方法のうち塗布法が、最も簡単でコストも低く特に好ましい。前記塗布の方法は、公知の技術を用いれば良く、特に限定されないが、スピンコーター、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等の装置を用いる方法や、浸漬引き上げ法(ディップコーティング法)、流し塗り法(フローコーティング法)などの方法や、塗布液を含ませた布や紙を光触媒膜表面に接触させ適当な力をかけて擦る方法(ラビング法)や、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法が用いられる。
前記オルガノシランを溶かす溶媒は、特に限定されないが、安全性やコストや作業性の観点から水、アルコール類、ケトン類が単独または混合して、好ましく用いられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどが挙げられる。
前記オルガノシランは必要に応じて加水分解させて用いる。オルガノシラン溶液に水と必要に応じて酸触媒を加え、一定温度下で一定時間加水分解を行い、必要に応じて希釈して塗布に用いる。
加水分解の条件は特に限定されないが、20〜60℃の温度で3分間〜50時間行うのが好ましい。温度が20℃より低かったり時間が3分間より短い場合には加水分解の促進が充分でなく、また温度が60℃より高かったり時間が50時間より長くても、もはや加水分解促進の効果が向上せず、また塗布液寿命が短くなるので好ましくない。
前記酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の他、酢酸、ギ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸が用いられる。酸の添加量は特に限定されないが、オルガノシランに対してモル比で0.0001〜5が良い。添加酸量が、モル比で0.0001より少ないと、オルガノシランの加水分解の促進が充分でなく、またモル比で5より多くても、もはや加水分解促進の効果が向上せず、酸が過剰となり好ましくない。
加水分解のため添加する水の量は特に限定されないが、オルガノシランに対してモル比で0.1以上が良い。添加水量が、モル比で0.1より少ないと、オルガノシランの加水分解の促進が充分でなく好ましくない。
一方、例えば[アルコキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]トリクロロシランのような加水分解速度が大きい、ポリアルキレンオキシド基含有オルガノシランでは、光触媒膜表面に吸着した水分のみで充分な加水分解が進行し脱水縮合反応により表面に固定できる場合がある。この場合には、溶存水分を充分に減じた非水系溶媒を用いて塗布液を調合した方が、得られる防曇物品の耐候性や防曇防汚性や防曇持続性や親水維持性の優れたものが得られるので好ましい。非水系溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、トルエンなどが例示できる。
塗布に用いるオルガノシラン溶液の濃度は特に限定されないが、0.001〜5重量%が好ましく用いられる。濃度が0.001重量%より低いと得られる防曇防汚物品に充分な防曇持続性や親水維持性の向上が認め難くなり、また5重量%より高くても防曇性能や防汚性能がそれ以上良くならないので経済的でなく好ましくない。
オルガノシラン溶液塗布後の光触媒膜は、20〜180℃の温度で、3分間〜3時間乾燥または熱処理するのが好ましい。この処理により、オルガノシランの光触媒膜表面への結合が強くなり防曇防汚物品の耐久性、防曇持続性および親水維持性が向上する。温度が20℃より低かったり時間が3分間より短い場合には前記効果が充分でなく好ましくない。温度が180℃より高いとオルガノシランが分解する場合があるので好ましくない。また、時間が3時間より長くても、もはや前記効果が向上しないので生産性の観点から好ましくない。
前記光触媒膜表面上にオルガノシラン単分子相当層を形成すれば、防曇持続性や防汚性が向上する。このオルガノシラン層は、紫外線照射や温度上昇等の外的要因により次第に分解され最終的にはSiOxの単分子相当層となり、防曇持続性や防汚性が維持される。
本発明による防曇防汚ガラスは、優れた防曇防汚性能とその維持性を有していることが明らかであり、機械的耐久性も良好であることから、自動車、建築およびメガネ用のガラスとして好適に使用することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
ジルコニウムブトキシド5重量部をアセト酢酸エチル1重量部に加え、30℃で2時間攪拌した(A液)。一方別に、テトラエトキシシラン50重量部、2−プロパノール1000重量部、1Nの硝酸2.5重量部、および水50重量部を加え、30℃で2時間攪拌した(B液)。A液とB液を混合し50℃で3時間、さらに30℃で1日間攪拌養生して、アルカリ遮断膜用ゾル液を得た。
酸化セリウム系研磨剤で表面研磨・洗浄し、さらに純水中で超音波洗浄を行い乾燥したソーダライム珪酸塩ガラス板(65mm×150mm×3mm)を、上記アルカリ遮断膜用ゾル液に浸漬し、ガラス板を10cm/minの速度で引き上げてゾルを塗布した。その後、これを室温で数分間乾燥させ、さらに500℃で3時間熱処理し、厚み約30nmの平坦で凹凸のないシリカ−ジルコニア薄膜(シリカ92重量%、ジルコニア8重量%)が形成されたガラス板を得た。
次に、フッ素原子ドープ酸化チタン膜の作製方法について述べる。353mL(1.2mol)のチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)に攪拌しながら248mL(2.4mol)のアセチルアセトン(AcAc)をビュレットを用いて徐々に滴下し、約1時間攪拌することにより安定なTi(AcAc)(OiPr)錯体溶液を得た(母液)。一方、無水エタノール1398mLにトリフルオロ酢酸(TFA)0.75gを溶解させた溶液を調製した。この溶液に先の母液を加えた後、充分に攪拌することにより、均一なフッ素原子ドープ酸化チタン膜用コーティング溶液を得た。前記平坦なシリカ−ジルコニア薄膜被覆ソーダライム珪酸塩ガラス基板を、このフッ素原子ドープ酸化チタン膜用コーティング液中に浸漬後、32mm/minの速度で引き上げ、室温で30分間乾燥後、さらに、500℃で30分間焼成することにより、フッ素原子が約0.38重量%ドープされた厚み約60nmのアナタース型酸化チタン膜を成膜した。
このようにして、(ガラス基板/シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜)サンプルを作製した。
さらに以下に述べる方法により、前記フッ素原子ドープアナタース型酸化チタン膜の表面にSiOx単分子層膜を形成させた。80℃に保温された真空デシケータ中に前記(ガラス基板/シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜)サンプルをセットした後、200μLの1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロクサン(TMCTS)を注射器で注入した。その状態で30分保持してから、100℃に昇温し、デシケータ中を真空引きしながら30分間加熱することにより未反応のTMCTSを除去した。この方法により、酸化チタン膜上にTMCTSの単分子膜を形成させた。さらに、500W高圧水銀灯を用いて、8cmの距離から1時間光照射することにより、TMCTS膜を酸化して、SiOxの単分子相当膜に変換した。このようにしてサンプルG(ガラス基板/シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜/SiOx単分子相当膜)を得た。酸化チタン膜中のフッ素原子ドープ量は0.38重量%であり膜厚は約60nmであった。表面粗さを前記原子間力顕微鏡を用いて求めたところ、Raが0.2nm未満、Sm=420nmであり、平滑であることがわかった。
(比較例1)基板として10cm角のソーダライム珪酸塩ガラス板(NaO約13%、KO約0.8%含有)を用意した。このガラス板の表面は算術平均粗さ(Ra)が0.2nm未満でありかつ凹凸の平均間隔(Sm)は400nmである平滑表面となっていた。
次に、ディッピング(ゾルゲル)法による酸化チタン薄膜のコーティング法について説明する。85.6g(0.3mol)のチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiPr))に攪拌しながら60.3g(0.6mol)のアセチルアセトン(AcAc)をビュレットを用いて徐々に滴下し、約1時間攪拌して安定なTi(AcAc)(OiPr)錯体溶液を得た(母液)。この母液をエタノールで3.3倍に希釈してコーティング溶液とした。前記ソーダライム珪酸塩ガラス基板をコーティング液中に浸漬後、4.6cm/分の引き上げ速度で膜を形成させ、500℃で30分間焼成を行なった。得られたサンプルをサンプルA(ガラス基板/酸化チタン膜)とする。X線回折による分析の結果、サンプルAの酸化チタン膜は非晶質であることが確認された。そしてサンプルAの酸化チタン薄膜の厚みは約50nmであった。また原子間力顕微鏡による測定の結果、サンプルAの酸化チタン膜の表面は算術平均粗さ(Ra)が0.2nm未満でありかつ凹凸の平均間隔(Sm)は400nmである平滑表面となっていた。
このサンプルAの表面に、実施例1と同様にしてSiOx単分子相当膜を形成し、サンプルA’(ガラス基板/酸化チタン膜/SiOx単分子相当膜、比較例1)を得た。
このサンプルGおよびA’を、紫外線が当たらず、人が絶えず出入りする部屋の室内に放置し続け、その表面が汚れて防曇性が低下する程度を、呼気を吹きかけたときの曇り程度により評価した(呼気テスト)。すなわち表面を清浄にした直後のサンプルは呼気を吹きかけても曇りを生じないが、室内放置により大気中の汚れ成分がサンプル表面に吸着して呼気テストにより曇るようになる。室内放置を始めてから曇りが生じ始めるまでの時間(防曇維持時間)を防曇維持性の指標とした。この値が大きい程防曇維持性が高いといえる。さらに、室内放置により呼気テストで曇りが生じたサンプルに再度0.8mW/cmの強度の紫外線(360〜370nm)を連続して照射し、呼気テストにより曇りが生じなくなるまでに要する紫外線照射時間(防曇回復時間)を防曇回復性の指標とした。なお、0.8mW/cmの紫外線(360〜370nm)照射強度は、冬季、曇天、正午で北緯35゜の戸外の地面での太陽光からの紫外線(360〜370nm)照射強度の2〜5倍に相当する。この防曇回復時間が小さい程防曇回復性が高いといえる。24時間以上の防曇維持性と2時間以内の防曇回復性を満足することが多くの用途において要求される。さらに一般的には、防曇維持時間を防曇回復時間で除した値、すなわち、[防曇維持時間]/[防曇回復時間]の値が40以上のものが防曇ガラス物品として好適に使用することができる。
また、防汚維持性を以下の屋外暴露試験によって行った。兵庫県伊丹市で屋外に試験ガラス板を垂直に設置して、雨水が試験ガラス板表面を流れ落ちる軒下垂直面を模した環境下で、6カ月間暴露試験を行い、試験後のガラス板の汚染状態評価を、下記表1の基準による目視評価にて行った。
(表1)
=========================
評価 汚染状態
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎ ほとんど汚れが気にならない
○ 若干汚れており、薄く筋状汚れが見える
△ 汚れており、筋状汚れが目立つ
× 汚れが著しく、筋状汚れがかなり目立つ
=========================
サンプルGおよびA’の各種評価結果を表2に示す。サンプルA’(比較例1)は良好な防曇防汚維持性を有するものの、防曇回復性が劣っている。これに対して、サンプルG(実施例1)は良好な防曇維持性を有すると同時に防曇回復性が著しく改善されていることが明らかである。また、サンプルA’(比較例1)は防汚性が低いのに対して、サンプルG(実施例1)は良好な防汚性を有していることが明らかである。
実施例1で作製した、SiOx単分子相当膜形成前のサンプル(ガラス基板/平坦シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜)表面に、以下の方法で、ポリエチレンオキシド基を分子内に含むオルガノシラン層(厚み約4nm)を形成した。
1Lのエタノールに0.1N酢酸を1mL添加し攪拌した。このエタノールを主体とする液798gに[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(チッソ株式会社製「SIM6492.7」、含有率90%、分子量460〜590、エチレンオキサイド単位6〜9)を2g添加し30℃で1時間攪拌して塗布液を調製した。
実施例1のサンプル(ガラス基板/平坦シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜)を上記塗布液に浸漬し、5cm/minの速度で引き上げることにより、液を塗布した。これを120℃で30分間乾燥、熱処理し、室温まで冷やした後に純水で軽く洗浄して、ポリエチレンオキシド基を分子内に含むオルガノシラン層(厚み約4nm)を形成させた。このサンプルに、500W高圧水銀灯を用いて、8cmの距離から24時間光照射し、オルガノシラン層を酸化して、SiOxの単分子相当膜に変換した。このサンプルをサンプルJ(=ガラス基板/平坦シリカ−ジルコニア膜/フッ素原子ドープ酸化チタン膜/SiOx単分子相当膜)とする。このサンプル表面の算術平均粗さ(Ra)と凹凸の平均間隔(Sm)を、原子間力顕微鏡を用いて求めたところ、Raが0.2nm未満でありかつSmが430nmである平滑表面となっていた。
実施例1に述べたのと同じ方法で防曇防汚性能を評価した結果を表2に示す。これより、サンプルJは優れた防曇防汚ガラスであることが明らかである。
基板としてゾルゲル法により約80nm厚のフッ素原子ドープ平坦シリカ膜をコーティングした寸法65mm×150mm×3mmのソーダライム珪酸塩ガラス板を用意した。フッ素原子ドープ平坦シリカ膜は、以下の方法で成膜した。
テトラメトキシシラン50重量部、エタノール530重量部、2−プロパノール530重量部、1N硝酸2.5重量部、水30重量部およびトリフルオロ酢酸(TFA)1.4gを加え、50℃で2時間攪拌し、さらに30℃で1日間攪拌養生して、アルカリ遮断膜用ゾル液を得た。
酸化セリウム系研磨剤で表面研磨・洗浄し、さらに純水中で超音波洗浄を行い乾燥したソーダライム珪酸塩ガラス板(100mm×100mm×3mm)を、上記アルカリ遮断膜用ゾル液に浸漬し、ガラス板を30cm/minの速度で引き上げてゾルを塗布した。その後、これを室温で数分間乾燥させ、さらに200℃で3時間熱処理し、厚み約90nmでフッ素が約3重量%ドープされたフッ素原子ドープ平坦シリカ膜が形成されたガラス板を得た。
このフッ素原子ドープ平坦シリカ膜形成ガラス板上に、以下の方法で厚み約50nmの光触媒膜(酸化チタン酸化珪素)を形成した。すなわち、市販の光触媒コーティング液ST−K03(石原産業株式会社製、酸化チタン微粒子含有率5重量%、無機バインダー5重量%)を、エタノールを用いて4重量倍に希釈した。この液を前記フッ素原子ドープ平坦シリカ膜が形成されたガラス板上に、スピンコーティング法(1500rpm、10秒、液量4ml)にて成膜し、500℃で1時間熱処理して、光触媒薄膜を形成した。化学分析の結果、この光触媒薄膜は、酸化チタン約50重量%と酸化珪素約50重量%からなることを確認した。
この光触媒膜中には、フッ素原子ドープ平坦シリカ膜から拡散してきたと推定されるフッ素が約0.1重量%ドープされていることがラザフォード・バックスキャッタリング法により確認された。さらにこの光触媒膜の上に、実施例2記載の方法でSiOx単分子相当層を形成した。
このサンプルをサンプルN(=ガラス基板/平坦フッ素原子ドープシリカ膜/フッ素原子ドープ酸化チタン酸化珪素膜/SiOx単分子相当層)とする。このサンプル表面の算術平均粗さ(Ra)と凹凸の平均間隔(Sm)を、原子間力顕微鏡を用いて求めたところ、Raが1.2nmでありかつSmが20nmであった。
実施例1に述べたのと同じ方法で防曇防汚性能を評価した結果を表2に示す。これより、サンプルNは優れた防曇防汚ガラスであることが明らかである。
[比較例2]実施例1で使用した10cm角のソーダライム珪酸塩ガラス板を処理することなくそのままでサンプルOとして各種防曇防汚性能を評価し、その結果を表2に示した。(比較例2)
(表2)
================================

ン 防曇 防曇
プ 維持時間 回復時間 (イ)/(ロ) 曝露試験後
ル (時間) (時間) 防汚状態評価
(イ) (ロ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例
1 G 40 0.25 160 ◎
2 J 60 0.6 100 ◎
3 N 48 0.3 160 ◎
比較例
1 A’ 10 5 2 ×
2 O 20 0 − ×
================================

Claims (10)

  1. ガラス基材の表面に、アルカリ遮断膜、光触媒膜、ならびに酸化珪素層またはポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含むオルガノシランもしくはその加水分解物の層からなる有機物付着防止層をその順に積層してなる防曇防汚ガラス物品であって、前記光触媒膜が酸化チタンを10重量%以上含みかつフッ素原子を含有してなる防曇防汚ガラス物品。
  2. 前記光触媒膜が酸化チタンからなりかつフッ素原子を含有してなる請求項1に記載の防曇防汚ガラス物品。
  3. 前記光触媒膜が0.002〜1重量%のフッ素原子を含有してなる請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の防曇防汚ガラス物品。
  4. 前記アルカリ遮断膜がフッ素原子を含む請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防曇防汚ガラス物品。
  5. 前記アルカリ遮断膜が0.002〜10重量%のフッ素原子を含有してなる請求項4に記載の防曇防汚ガラス物品。
  6. ガラス基材の表面に、アルカリ遮断膜、光触媒膜、ならびに酸化珪素層またはポリアルキレンオキシド基、アルキル基、アルケニル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に含むオルガノシランもしくはその加水分解物の層からなる有機物付着防止層をその順に積層してなる防曇防汚ガラス物品であって、前記光触媒膜が酸化チタンを10重量%以上含みかつ前記アルカリ遮断膜がフッ素原子を含有してなる防曇防汚ガラス物品。
  7. 前記光触媒膜が酸化チタンからなる請求項6に記載の防曇防汚ガラス物品。
  8. 前記アルカリ遮断膜が0.002〜10重量%のフッ素原子を含有してなる請求項6または請求項7のいずれか一項に記載の防曇防汚ガラス物品。
  9. 前記有機物付着防止層は、0.5〜5の厚み方向平均分子層数を有する請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の防曇防汚ガラス物品。
  10. 前記有機物付着防止層は、酸化珪素からなる請求項1ないし請求項9に記載のいずれか一項に記載の防曇防汚ガラス物品。
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