第1の発明は、洗濯物を収容すると共にドラム駆動モータで回転駆動される回転ドラムと、前記回転ドラムを内包する水槽と、前記ドラム駆動モータの回転を制御する制御手段と、本体の設置条件を入力する設置条件入力手段とを備え、脱水工程時に、前記回転ドラムをその内周壁に前記洗濯物が張り付きやすくなる第1の所定回転速度まで立ち上げ、前記内周壁に前記洗濯物が均等に張り付いているか否かの布バランス判定を実行し、前記布バランス判定でバランス良好と判定されなかったときには前記布バランス判定動作を繰り返し、良好と判定されたときは前記回転ドラムの回転数を脱水回転速度になるように制御すると共に、前記バランス判定を行なう際の判定値を、前記設置条件に応じて変更するもので、設置場所における設置条件に適した脱水制御が可能となり、例えば、木造住宅等の振動の影響を受けやすい場所に設置されても不要に振動が大きくなったり、布バランスが良好でないと判断され、布ほぐし行程や布バランス行程、予備脱水工程、バランス判定工程が繰り返され、洗濯に要する全体時間が徒に長くなったり、アンバランス異常と判定され脱水運転が中断される事も無く、また鉄筋コンクリート住宅のように、振動の影響を受けにくい場所に設置された場合には、布バランス修正動作繰り返しによる洗濯に要する全体時間が徒に長くなることを抑えることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明のドラム式洗濯機に、運転コースや、洗い、すすぎ、脱水等の運転内容を設定する入力設定手段を備え、設置条件入力手段を前記入力設定手段に設けたもので、引越しやリホーム等により設置場所が変更された場合にも、利用者が再設定するのを忘れる事も無く、しかも容易に設置条件を変更できる。
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明のドラム式洗濯機に運転コース等の設定状態を表示する表示手段を備え、設定された設置条件を前記表示手段で表示するもので、引越しやリホーム等により設置場所が変わった場合でも、現在の設定内容を容易に確認できるため間違えることなく新しい設置条件の入力を行うことができる。
第4の発明は、特に、第3の発明の設定された設置条件の表示を、設置条件入力手段が操作された時のみ行なうもので、通常の使用時には通常の運転内容のみが表示され、表示の煩雑さを抑えた利用者にわかりやすい表示とすることができる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の設置条件入力手段によって入力された設置条件に応じて、脱水回転速度を変えるようにしたもので、例えば、木造住宅等の振動の影響を受けやすい場所に設置された場合において、脱水回転速度を下げるようにすれば、異常振動の発生をさらに抑制することができる。
第6の発明は、特に、第5の発明の設置条件入力手段によって入力された設置条件に応じて、脱水回転速度での運転時間を変えるようにしたもので、例えば、設置条件に応じて
脱水回転速度が下げられた時に、脱水時間を延長するようにすれば、脱水が不完全になることなく通常の脱水性能が得られるものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯機について、図1〜6を用いて説明する。図1は、本実施の形態におけるドラム式洗濯機のが概略断面図である。
図において、ドラム式洗濯機の洗濯機筐体9内に図示しないサスペンション構造により水槽3が支持され、この水槽3内には有底円筒形に形成された回転ドラム1がその回転軸方向を水平方向から傾斜させて配置されている。
前記回転ドラム1は、有底円筒形の開口部側を洗濯機筐体9の正面側に、底面側を洗濯機筐体9の背面側にして、回転軸方向が正面側から背面側に向けて下向き傾斜となるようにして水槽3内に配置され、水槽3の背面に取り付けられたドラム駆動モータ5によって回転駆動される。水槽3の正面側には洗濯物を回転ドラム1内から出し入れするための開口部8が形成され、この開口部8に対向させて洗濯機筐体9の正面側に形成された傾斜面には開閉自在に扉体7が設けられている。
前記開口部8は上向きに開口し、扉体7は上向き傾斜面に設けられているので、扉体7を開くことにより回転ドラム1に対して洗濯物を出し入れする作業を容易に行うことができ、扉体7の一部あるいは全体を透明体によって形成することにより、回転ドラム1内を外部から透視することも容易となる。
上記構成のように回転ドラム1を傾斜配置すると、洗濯物を出し入れする作業が容易になることや、回転ドラム1内に給水された水が背面側に溜まって少ない水量でも深い貯水状態が得られて節水につながる利点がある反面、回転ドラム1内に収容した洗濯物は、最も低い位置となる底面側の下部に集まり、洗濯物個々の位置を入れ替えてすべての洗濯物に満遍なく洗浄力を与える作用や脱水動作において洗濯物が回転ドラム1の内周壁に均等に張り付く状態が得がたい課題が発生する。
この課題を解決する手段として、本実施の形態においては、回転ドラム1の内周壁の複数位置に設けられた撹拌突起6の形状と、ドラム駆動モータ5による回転ドラム1の回転駆動の制御とにより洗濯物の位置入れ替えを行うようにしている。
前記撹拌突起6は、回転ドラム1の回転軸方向から所定の傾き角度方向に長く形成された頂上部を有する形状に形成され、回転ドラム1が回転すると、回転ドラム1の低い位置に偏りがちになる洗濯物を高い位置に移動させる作用を効果的に得ることができる。このような撹拌突起6が内周壁の複数箇所に取り付けられた回転ドラム1を回転させると、傾斜した回転ドラム1内で低い位置側に偏りがちになる洗濯物は高い位置側に持ち上げられるようになるので、回転ドラム1を傾斜配置しても洗濯物は回転ドラム1の低い側に偏らずに充分に撹拌され、洗濯物の場所の入れ替わりと混ざりがよく、洗浄効果を低下させることがない。
また、洗濯物の量が少ない場合には洗濯液の量も少なく、全ての洗濯物が満遍なく浸る状態が得られるようにするには洗濯物の場所の入れ替わりが充分になされるように撹拌する必要があるが、洗濯物の位置の入れ替えが充分になされるので、洗いむらがなく洗浄力を向上させることができる。
図2は、本実施の形態におけるドラム式洗濯機の制御構成を示す回路図で、ドラム式洗濯機の運転を制御する制御手段16は、ドラム駆動モータ5、給水弁12、排水弁11の動作を制御するように構成されている。洗濯機筐体9の表面に設けられた操作パネル33には、入力設定手段17及び表示手段18が設けられ、入力設定部17から運転コース等を選択しそれを入力すると、表示部18に選択状態及び運転状態の表示がなされ、制御手段16は制御手順に応じてドラム駆動モータ5、給水弁12、排水弁11を運転手順に対応して制御する。
図3は、入力設定手段17の一例を示すもので、洗い時間を設定する洗い時間設定手段17a、すすぎ回数を設定する回数設定手段17b、脱水時間を設定する脱水時間設定手段17c、洗濯コースを選択するコース選択ボタン17d、運転を開始又は一時停止する時に操作するスタート・一時停止ボタン17e、電源を入れるときに操作する電源入ボタン17f、電源を切る時に操作する電源切りボタン17g、本ドラム式洗濯機の設置場所の設置条件を入力する設置条件入力手段32が設けられている。
また、表示手段18として、設定する洗い時間を表示する洗い時間表示手段18a、設定するすすぎ回数を表示するすすぎ回数表示手段18b、設定する脱水時間を表示する脱水時間表示手段18c、選択されるコースを表示する洗濯コース表示手段18d、洗剤量表示兼、残時間表示を行う7セグメントLED18g、7セグメントLED18gが投入する洗剤の量(杯)を表示するときに点灯する洗剤量表示手段18e、7セグメントLED18gが残りの運転時間を表示するときに点灯する残時間表示手段18f、後述の設置条件表示手段18hが設けられている。
次に、制御手段16によって運転制御されるドラム式洗濯機の動作について、図1〜図3を参照して説明する。
扉体7を開いて回転ドラム1内に洗濯物を投入し、給水部15に設けられた洗剤投入口(図示せず)から洗剤を投入し、図3に示す操作パネル33より電源入ボタン17fを押して電源をONし、コース選択ボタン17dから洗濯物の種類に応じた運転コースの選択を入力し、スタート・一時停止ボタン17eを押して運転開始の操作入力を行うと、制御手段16による運転制御が開始される。
本ドラム式洗濯機の設置場所の設置条件の入力は、最初にそれを設置する時にのみ行われ、それは制御手段16に記憶されているが、引越し時、リホーム、配置換え等でドラム式洗濯機の設置場所を変更した場合などでも都度、設置条件入力手段32を押すことで設定することができ、設定されている設置条件は、設置条件表示手段18hにより表示される。
通常電源がONされた時には、設置条件は表示されていない。そして設置場所を、例えば木造住宅から鉄筋コンクリート住宅に変更した時は、設置条件入力手段32を1回押すことにより、現在制御手段16に記憶されている設置条件が設置条件表示手段18hに表示され、さらに設置条件入力手段32を押すことにより再設定することができる。
ドラム式洗濯機の運転は基本的に、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の順に実行され、乾燥機能が設けられている場合には、任意に乾燥工程を実施することができる。
まず、制御手段16は、回転ドラム1内に投入された洗濯物の量を検知するために、駆動回路22に回転ドラム1を所定回転速度で回転駆動する制御指令を出力する。駆動回路22により駆動制御されたドラム駆動モータ5が回転ドラム1を回転させることにより、ドラム駆動モータ5が洗濯物の量に対応して受ける負荷状態から、布量検知手段27は洗濯物の量を検知する。
即ち、ドラム駆動モータ5は直流ブラシレスモータで構成され、図2に示すように、駆動回路22は、ドラム駆動モータ5のステータを構成する3相巻線の第1〜3巻線5a、5b、5cに対する通電を制御するインバータ23のスイッチング素子23a〜23fをスイッチング制御する。
前記インバータ23への直流電力の供給は、商用電力28をダイオードブリッジ回路29、チョークコイル30、平滑コンデンサ31で整流した直流が用いられており、ドラム駆動モータ5が受ける負荷状態は、入力電流にほぼ比例するので、負荷検出手段24はインバータ23への直流電力供給回路と直列に接続された抵抗器25の両端電圧から電流検知回路26により入力電流値を検出するので、布量検知手段27はその電流値から回転ドラム1内に投入された洗濯物の量を検知する。この布量検知手段27によって検知された洗濯物の量は後述する制御動作に用いるため、制御手段16内に設けられたメモリ(図示せず)に記憶される。
次に、制御手段16は負荷駆動手段20に給水弁12を開く制御指令を出力し、給水弁12が開かれて、給水部15に接続された給水ホース15aから供給される水道水は給水部15に投入されている洗剤を混入させながら水槽3内に給水される。水槽3内への給水量は布量検知手段27によって検知された洗濯物の量に対応する給水時間で設定される。
また、水槽3内に給水された水の水位は、水槽3に設けられた水位検知手段19で検出され、規定水位にまで達すると水位検知手段19から制御手段16に規定水位検知信号が入力され、制御手段16は負荷駆動手段20に給水弁12を閉じる制御指令を出力して給水を停止する。
水槽3内に給水された水は、回転ドラム1に形成された多数の透孔2を通じて回転ドラム1内に浸入すると共に一部が収容された洗濯物に吸水され、水槽3内の水位は低下するので、補給のための給水が同様に実施される。
上記制御動作により洗い工程を開始することができるので、制御手段16はドラム駆動モータ5による回転ドラム1の回転駆動の制御指令を駆動回路22に出力する。回転ドラム1は所定回転速度で正方向に所定時間回転駆動された後、所定時間回転駆動が停止され、次いで、逆方向に所定時間回転駆動された後、所定時間回転駆動が停止される制御動作を1サイクルとして所要時間繰り返す第1の撹拌制御動作が実行される。前記所定回転速度は、回転ドラム1の内周面の複数位置に設けられた撹拌突起6によって引っ掛けられた洗濯物が回転ドラム1の回転により回転方向に持ち上げられ、遠心力より自重が勝る高さ位置から落下する挙動を示す回転速度である。
持ち上げられた洗濯物が落下することにより洗濯物には叩き洗いの作用が及び、これが繰り返されることにより洗剤を含む水を吸水している洗濯物から汚れを落とす洗浄作用がなされる。また、積み重なった洗濯物から撹拌突起6に接するものだけが抜き出されるので、洗濯物の位置を入れ替える作用がなされる。回転ドラム1の回転速度が所定回転速度より遅い場合には、撹拌突起6が洗濯物を持ち上げることができず、回転ドラム1の回転速度が所定回転速度より早い場合には、遠心力の影響が大きくなるため、持ち上げられた洗濯物がその自重により落下しない状態となる。また、回転ドラム1の回転方向を反転させることにより、洗濯物に捩れが生じることが抑制され、位置の入れ替えも効果的になされる。
洗濯物を持ち上げて落す叩き洗いの作用は、回転ドラム1内に収容された洗濯物の量によって影響を受けるので、洗濯物の量によって所定回転速度は変化させるのが、より好ましい制御方法となる。即ち、回転ドラム1内に収容された洗濯物の量は前述したように布量検知手段27によって検知されて記憶されているので、洗濯物の量が予め設定された所定量より多いときには、制御手段16は所定回転速度より減少させた回転速度になるように制御する。
一方、記憶された洗濯物の量が予め設定された所定量より少ないときには、制御手段16は所定回転速度を増加させた回転速度になるように制御する。前記第1の撹拌制御動作を所要の洗濯時間繰り返すように制御しても洗濯物の位置を入れ替えながら洗濯する効果が得られるが、第1の撹拌制御動作を所要時間実行した後、第2の撹拌制御動作を実行するのが、より好ましい効果を得ることができる。
第2の撹拌制御動作では、回転ドラム1は第1の撹拌制御動作より速い所定回転速度で正方向に所定時間回転駆動された後、所定時間回転駆動が停止され、次いで、逆方向に正方向回転時の回転数と同じ所定回転速度で所定時間回転駆動された後、所定時間回転駆動が停止される制御動作を1サイクルとして、これが所要時間繰り返される。この第2の撹拌制御動作における所定回転速度は、回転ドラム1を回転させることによる遠心力によって洗濯物を回転ドラム1の内周壁に張り付かせることができる回転速度である。
洗濯物が回転ドラム1の内周壁に張り付くことにより、塊状になっていた洗濯物も展開状態に広げられ、回転ドラム1の上方に移動していた洗濯物は所定時間で回転が停止されたとき、惰性で回転する回転ドラム1の内周壁から離れて落下する。この張り付きによる広がりと落下の挙動がなされることにより、洗濯物の位置移動や形の変化が生じ、叩き洗いの作用も効果的になされる。
上記第1及び第2の各撹拌制御動作を交互に実行する制御動作が所要時間継続されることにより、洗濯物は回転ドラム1内で前後に位置入れ替えがなされると同時に、挙動が異なる叩き洗いの作用が及び、傾斜配置された回転ドラム1にあっても洗浄性能を低下させることなく、全ての洗濯物に均等な洗浄力を与えることができる。
以上のようにして洗い工程が終了すると、制御手段16は排水弁11を開く制御指令を負荷駆動手段20に出力するので、水槽3内にある汚れた洗濯水が排水経路10を経て排出される排水制御動作が実行される。更に、制御手段16はドラム駆動モータ5を高速回転させて洗濯物に含まれた洗濯水を脱水させる制御指令を駆動回路22に出力するので、洗い工程後の脱水動作が実施される。
所定時間の脱水動作が実施された後、制御手段16は排水弁11を閉じ、給水弁12を開いて水槽3内に新たに水道水を給水するすすぎ工程を開始する。すすぎ工程においても回転ドラム1は正転、逆転をしながら回転駆動される撹拌動作がなされるが、前述した洗い工程における第1の撹拌制御動作及び/又は第2の撹拌制御動作を実行することにより、同様に洗濯物の位置の入れ替えにより叩き洗いの作用が全ての洗濯物に満遍なく及ぶため、すすぎムラのないすすぎ洗いが実施される。
図4に示すように、洗い工程の後、通常は2回のすすぎ工程が実施され、各すすぎ工程の後に脱水動作が実行されて洗濯物に含まれた水の脱水がなされ、2回目のすすぎ工程における脱水動作は脱水工程となる。即ち、脱水動作は、前述の洗い工程を含めて排水後に回転ドラム1を高速回転させて洗濯物から脱水する脱水動作として実行される。各工程における脱水動作を確実に行わせるためには、洗濯物を回転ドラム1の内周壁に均等に張り付けた状態にして、洗濯物に含まれた水が遠心力により透孔2から水槽3内に抜け出るようにする必要がある。
洗濯物が回転ドラム1内で偏った状態にあると脱水が円滑になされないばかりでなく、重心位置の偏りにより回転ドラム1に振れや振動が発生するので、脱水動作の開始にあたっては脱水立ち上げ動作が実行される。
以下に脱水動作の制御手順について、図5を用いて順を追って説明する。
図5は、制御手段16により、脱水動作における立ち上げ動作を実行する制御手順を示すものである。尚、各手順に示された番号S1、S2…は制御手順のステップ番号であって、本文中に添記する番号に一致する。
脱水動作が開始されると、設置条件入力手段32によって入力された設置条件に応じて布バランスの良否を判定する判定値Yが設定される。設置場所が鉄筋コンクリート住宅の場合は判定値A、木造住宅の場合は、判定値Aよりも小さい判定値Bが設定される(S1)。次に判定繰り返し回数の初期化(N=1)がなされた後(S2)、ドラム駆動モータ5を第1の所定回転速度(例えば、90r/min)に立ち上げる(S3)。このドラム駆動モータ5を第1の所定回転速度に立ち上げるまでの所要時間は、布量検知手段27によって検知されて制御手段16に記憶されているデータに基づいて制御される。
図6(a)に示すように、洗濯物の量が多いときには、第1の所定時間t1で第2の所定回転速度(例えば、40r/min)まで立ち上げたドラム駆動モータ5の回転速度を第2の所定時間t2まで維持し、第3の所要時間t3までの時間で第1の所定回転速度に立ち上げるようにする。洗濯物の量が少ないときには、図6(b)に示すように、第2の所定時間t2から第1の所定回転速度に達するまでの時間(t2〜t3´)を短くするように制御する。この制御により洗濯物に作用する重力より遠心力が大きくなるので、洗濯物が回転ドラム1の内周壁に張り付いた状態になりやすくなる。
回転ドラム1の内周壁に洗濯物が均等に張り付いた状態にあれば、回転ドラム1は回転ムラなく正常に回転するので布バランスの判定において(S4)、バランス良好と判定されるので、制御手段16はドラム駆動モータ5を高速回転させる脱水動作(S10)により洗濯物から脱水させることができる。
前記布バランスの判定は回転ドラム1の回転ムラを検出することによりなされる。図2に示すように、直流ブラシレスモータに構成されたドラム駆動モータ5のステータには、ロータが有する永久磁石(図示せず)に対峙できるように電気角で120度の間隔でホールICからなる位置検出手段21a、21b、21cが設けられており、ロータが1回転すると前記永久磁石の磁界が位置検出手段21a、21b、21cで検出されるので、電気角120度の間隔でパルスが制御手段16に入力される。
このパルス入力に基づいて制御手段16は、スイッチング素子23a〜23fのオン・オフ状態を切り換え、ステータの第1巻線5a、第2巻線5b、第3巻線5cへの通電を制御するので、第1巻線5a、第2巻線5b、第3巻線5cにより発生する磁界によってロータが回転する。
また、スイッチング素子23a、23c、23eはそれぞれパルス幅変調(PWM)により制御され、所定の繰り返し周波数で通電比が制御されることによりロータの回転数を制御するように構成され、制御手段16は3つの位置検出手段21a、21b、21cから出力されるパルス周期からロータの回転数を算出して設定回転数になるようにスイッチング素子23a、23c、23eをPWM制御する。
従って、回転ドラム1の回転速度を所定の回転速度に保っている状態で位置検出手段21a、21b、21cからのパルスが所定間隔で出力されないことが検出されると、回転ドラム1に回転ムラが生じている状態、即ち洗濯物の内周壁への張り付きが悪く、布バランスが悪い状態と判定できる。
従って、ドラム駆動モータ5の回転速度の変動幅を布バランスの判定値として設定することにより、回転ドラム1内の洗濯物のアンバランス状態を検知することができる。実際はこの回転ムラを検出する方法としては3相のうち1相から測定を行う。例えば、位置検出手段21aの場合、回転ドラム1が1回転すると、入力パルスは4回カウントすることができるが、この入力パルスの時間をそれぞれ測定した結果をT1、T2、T3、T4とし、それぞれを回転速度に換算したものをR1、R2、R3、R4とする。
回転ドラムに回転ムラが無く、安定して回転している場合は、R1=R2=R3=R4=90r/minとなるが、回転ムラがある場合は、一例として87r/min〜93r/minというように±3r/min変動する。この変動幅が大きくなる程回転ムラが大きく布バランス状態が悪いことになる。
前記布バランスの判定(S4)において検出される布バランス値Xが、ステップ1において設定された判定値と比べ大きい場合(S5)、すなわち鉄筋コンクリート住宅であればX>A、木造住宅であればX>Bのときに回転ドラム1に回転ムラが生じる状態、即ち洗濯物の偏りがある状態と判定される。布バランスが良好ではないとき、制御手段16は回転ドラム1の回転を停止し(S6)、判定繰り返し回数Nが所定回数(例えば、N=16)に達しているか否かを判定して(S7)、所定回数に達していなければ、判定繰り返し回数Nに1を加算し(S8)、ステップS3からの手順に戻って再度立ち上げ動作を実行する。
上記動作を繰り返す工程は、布の状態を変えてやることで洗濯物が回転ドラム1の内周壁に張り付きやすくしているものである。
また、ステップS7で判定繰り返し回数Nが所定回数(例えば、N=16)に達しているか否かを判定して、所定回数に達した場合には、立ち上げ動作の繰り返しによっても洗濯物の偏り状態が改善されない状態と判断され、異常報知により使用者に洗濯物の絡まりなどを解消するように促す(S9)。
上記動作を繰り返した後、鉄筋コンクリート住宅の場合、ステップS5で布バランスが良好と判定されれば、所定の脱水回転速度(例えば、900r/min)で脱水動作(S10)を行い、洗濯物を脱水する。
すなわち、布バランスの判定値を小さくすることで、布のアンバランス判定を厳しくし、振動を押さえることができる。逆に布バランスの判定値を大きくすることで、アンバランス判定を緩め、脱水が立ち上がりやすくなり、洗濯に要する全体時間が徒に長くなるということは起きにくくなる。
以上のように、木造住宅などのように振動の影響を受けやすい場所に設置される時には、振動の発生をなるべく抑えるため布バランスの判定値を小さくし、鉄筋コンクリート住宅のように振動の影響を受けにくい場所に設置される場合は、判定値を大きくすることにより、少しの布の片寄りで、アンバランス異常と判定されることを防ぎ、洗濯に要する全体時間が徒に長くなるということは起きにくくなる。
以上のように、設置場所によって布バランスの判定値を変更することにより、脱水動作を設置条件に合わせて、円滑になされるように制御することができる。
さらに、図7のように、木造住宅など振動の影響を受けやすい場所である設定がなされた場合、脱水回転速度を、振動の影響を受けにくい場所で脱水する際の脱水回転速度よりも低く制御するように設定する(S12)ことで、脱水時の振動をより低減させることができる。さらに、脱水回転速度を低く制御した場合、脱水時間を延長する(S13)ことにより必要な脱水性能を維持することができる。ここでステップS1からステップS10までは図5と同じである為説明を省略する。
なお、設置条件として、本実施例では鉄筋コンクリート住宅と木造住宅としているが、集合住宅や一戸建て住宅、さらに現在の多様な住環境に応じた条件設定を行ってもよい。
また、図3のように設置条件入力手段32を入力設定手段17に設けることにより、引越しやリホーム等などで、設置条件を変更しなければならない場合でも、利用者が容易に変更することができる。
さらに、現在設定されている設置条件を設置条件表示手段18hで表示することにより利用者がよりわかりやすく、再設定する際にも誤りなく設定することができる。また、表示を通常非表示とし、設置条件入力手段32が押されたときのみ表示することにより、見た目の煩雑さを抑えたよりわかりやすい表示とすることができる。