しかしながら、特許文献1に記載のプラズマ処理装置のように、マイクロ波を同軸導波管や平面アンテナ部材といった導体中に伝播させると、これら導体中において銅損等の伝播ロスが生じる。この伝播ロスは、周波数が高くなるほど、また、同軸伝送距離や平面アンテナ部材の面積が大きくなるほど、大きくなる。したがって、特許文献1に記載の技術を用いて液晶表示装置等の比較的大型の基板に対応したプラズマ処理装置を設計しても、マイクロ波の減衰が大きく、効率良くプラズマを生成させることが困難である。また、特許文献1に記載のプラズマ処理装置は、円形の平面アンテナ部材からマイクロ波が放射されるように構成されているため、液晶表示装置のような角型基板に適用する場合、基板の角部においてプラズマが不均一になってしまうという問題もある。
また、特許文献2に記載のプラズマ処理装置のように、矩形の導波管内を伝播させたマイクロ波を2つのスロットから放射させる場合、生成されたプラズマ中に負イオンが多く存在すると、プラズマの両極性拡散係数が小さくなってしまうという問題がある。そのため、特許文献2に記載の技術では、プラズマの生成がマイクロ波の放射されているスロット近傍に偏ってしまう。また、このプラズマの偏りは、プラズマの圧力が高い場合にいっそう顕著となる。したがって、特許文献2に記載のプラズマ処理装置では、負イオンが生成されやすい酸素、水素、及び塩素等を含むガスを原料としたプラズマ処理を大型基板に施すことが難しく、特に、ガスの圧力が高い場合にはさらに困難となる。さらに、プラズマ処理を施す基板の処理面に対し、導波管アンテナを構成するスロットの分布が局在するため(均一でないため)、プラズマ密度が不均一となり易い。
特許文献3に記載の技術では、複数の導波管にマイクロ波を導入する方法が記載されていない。このため、複数の導波管にマイクロ波を導入するためには、1つの導波管に対して1台のマイクロ波電源を用意する必要があると考えられる。したがって、特許文献3に記載の技術では、装置が複雑になり易い。特に、特許文献3に記載の技術を用いて大型基板に対応するような大型のプラズマ処理装置を設計する場合、多数のマイクロ波電源を必要とするだけでなく、これらを同時に動作させなければならないという問題がある。
しかも、特許文献3に記載の技術では、導波管同士がプラズマの拡散を考慮した間隔を置いて配置されているため、結合孔を被処理基板の被処理面の全面に対応するように均一に分布させるのが難しい。また、結合孔の数だけ真空を封じるシールを設ける必要があるため、真空容器の構造が複雑化し易い。しかも、真空容器の天板の加工費が増加するため、装置価格が高くなり易いという問題もある。
特許文献4に記載の技術では、マイクロ波の供給方向と各導波管相当部分の長手方向とが平行であるため、導入部においてマイクロ波を複数の導波管相当部分に均一となるように分配することが困難であり、しかも、大型基板に対応するような大型のプラズマ処理装置への対応が難しい。さらに、導入部が設けられているため、装置のフットプリントが大きくなり易いという問題もある。
特許文献5に記載の技術では、マイクロ波発振器から供給されたマイクロ波が、マイクロ波分配器を通って、複数の誘電体線路に分配されるように構成されている。この場合、マイクロ波分配器と複数の誘電体通路とが同一平面上にあるが、マイクロ波分配器が大きくなり易いため、結果として、装置のフットプリントも大きくなり易い。
本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、大面積の被処理体を均一に処理でき、フットプリントが小さく装置高さが低いコンパクトなプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
本発明のプラズマ処理装置は、電磁波源にて発振され、電磁波分配用導波管によって伝播されるとともに複数の電磁波放射用導波管に分配され、これら電磁波放射用導波管によって伝播されながら、これら電磁波放射用導波管に設けられたスロットから処理容器内に放射された電磁波によって、この処理容器内にプラズマを生成させ、このプラズマよって被処理体にプラズマ処理を行うように構成されている。
本発明の請求項1に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐し、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用導波管と、これら電磁波放射用導波管に夫々設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電磁波放射用導波管の幅a
2、前記電磁波放射用導波管の高さb
2、及び、前記電磁波放射用導波管が互いに並ぶ周期pは、前記電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長をλ
0、前記電磁波分配用導波管の幅をa
1、前記電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率をε
r1、前記電磁波源から出力された電磁波の前記電磁波分配用導波管内における波長λ
g1を
としたときに、
λ
0>p>a
2>b
2 …(2)
の関係を満たすように設定されている。
なお、電磁波分配用導波管内の幅a1とは、電磁波分配用導波管の内形の幅をさしている。電磁波放射用導波管内の幅a2とは、電磁波放射用導波管の内形の幅をさしている。電磁波放射用導波管内の高さb2とは、電磁波放射用導波管の内形の高さをさしている。
本発明の請求項1に記載のプラズマ処理装置によれば、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に設けられている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、電磁波を均一に放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、電磁波放射用導波管周期pが電磁波の自由空間波長λ0未満となるように設定されているため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
本発明の請求項2に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐し、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用導波管と、これら電磁波放射用導波管に夫々設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電磁波放射用導波管の幅a2、前記電磁波放射用導波管の高さb2、及び、前記電磁波放射用導波管が互いに並ぶ周期pは、前記電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長をλ0、前記電磁波分配用導波管の幅をa1、前記電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率をεr1、前記電磁波源から出力された電磁波の前記電磁波分配用導波管内における波長λg1を上記(1)式で示される値としたときに、上記(2)式を満たし、且つ、
p=(λg1/2)±α (ただし、αはλg1の5%以内とする) …(3−1)
の関係を満たすように設定されている。
本発明の請求項2に記載のプラズマ処理装置によれば、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に設けられている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、電磁波を均一に放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、電磁波放射用導波管周期pが電磁波の自由空間波長λ0未満となるように設定されているため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
また、電磁波放射用導波管周期pを電磁波の電磁波分配用導波管内における波長λg1の略1/2とすることで、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置に各電磁波放射用導波管を配置することができる。したがって、各電磁波放射用導波管への給電の調整を容易に行うことができる。
なお、「電磁波放射用導波管周期pが電磁波の電磁波分配用導波管内における波長λg1の略1/2である」とは、上述した(3−1)式のように、p=λg1/2で誤差がλg1の5%以内、すなわち、電磁波放射用導波管周期pが、
(λg1/2)−0.05λg1≦p≦(λg1/2)+0.05λg1 …(3−2)
を満たすように設定されていることを意味している。
本発明の請求項3に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管から分岐して設けられた複数の電磁波放射用導波管と、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されて、導波管アンテナを夫々構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、電磁波伝播方向に沿って互いに隣り合うスロットの間隔dは、前記電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長をλ0としたときに、
λ0>d …(4)
の関係を満たすように設定されている。
本発明の請求項3に記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管から分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、上記(4)式のように、電磁波伝播方向に沿って互いに隣り合うスロットの間隔d(以下、単に、スロット間隔dという)が、電磁波源から出力される電磁波の自由空間波長λ0未満となるように設定されているため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
なお、電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率εr1が約1であるような場合、すなわち、電磁波分配用導波管内が空洞であって空気で満たされているような場合、互いに隣り合うスロット同士が干渉するのを抑制するためには、スロット間隔dは
d>λ0/2 …(5)
となるように設定するのが好ましい。ただし、電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率εr1が1以上、例えば、電磁波分配用導波管内が誘電体部材で満たされているような場合、互いに隣り合うスロット同士の干渉を抑制しようとすると、スロット間隔dは(5)式から外れることがある。その場合には、スロット間隔dは必ずしも(5)式を満たすように設定しなくてもよい。
より好ましくは、スロット間隔dは、電磁波放射用導波管内の誘電体の比誘電率をε
r2、電磁波源から出力された電磁波の電磁波放射用導波管内における波長λ
g2を
としたときに、
d=λ
g2/2 …(7)
とするとよい。このようにすることにより、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置に各スロットを配置させることができる。つまり、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置で電磁波を処理容器内に放射することができる。
本発明の請求項4に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐し、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用導波管と、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されて、導波管アンテナを夫々構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電磁波放射用導波管の幅a2、前記電磁波放射用導波管の高さb2、及び、前記電磁波放射用導波管が互いに並ぶ周期pは、前記電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長をλ0、前記電磁波分配用導波管の幅をa1、前記電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率をεr1、前記電磁波源から出力された電磁波の前記電磁波分配用導波管内における波長λg1を上記(1)式で示される値としたときに、上記(2)式を満たすとともに上記(3−1)式を満たすように設定されており、且つ、電磁波伝播方向に沿って互いに隣り合うスロットの間隔dは、前記電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長をλ0としたときに、上記(4)式を満たすように設定されている。
本発明の請求項4に記載のプラズマ処理装置によれば、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、電磁波放射用導波管周期pを電磁波の自由空間波長λ0未満となるように設定しているため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
また、電磁波放射用導波管周期pを電磁波の電磁波分配用導波管内における波長λg1の略1/2とすることで、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置に各電磁波放射用導波管を配置することができる。したがって、各電磁波放射用導波管への給電の調整を容易に行うことができる。
なお、「電磁波放射用導波管周期pが電磁波の電磁波分配用導波管内における波長λg1の略1/2である」とは、上述した(3−1)式のように、p=λg1/2で誤差がλg1の5%以内、すなわち、電磁波放射用導波管周期pが、上記(3−2)式を満たすように設定されていることを意味している。
さらに、上記(4)式のように、スロット間隔dが電磁波の自由空間波長λ0未満となるように設定されているため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
なお、電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率εr1が約1であるような場合、すなわち、電磁波分配用導波管内が空洞であって空気で満たされているような場合、互いに隣り合うスロット同士が干渉するのを抑制するためには、スロット間隔dは上記(5)式を満たすように設定するのが好ましい。ただし、電磁波分配用導波管内の誘電体の比誘電率εr1が1以上、例えば、電磁波分配用導波管内が誘電体部材で満たされているような場合、互いに隣り合うスロット同士の干渉を抑制しようとすると、スロット間隔dは(5)式から外れることがある。その場合には、スロット間隔dは必ずしも(5)式を満たすように設定しなくてもよい。
より好ましくは、スロット間隔dは上記(7)式を満たすように設定するとよい。このようにすることにより、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置に各スロットを配置させることができる。つまり、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置で電磁波を処理容器内に放射することができる。
ところで、上述のようなプラズマ処理装置において、電磁波放射用導波管の各スロットで分配しきれなかった余分な電磁波は、電磁波放射用導波管終端において反射され、電磁波放射用導波管内を終端側に向かって伝播されてきた電磁波と干渉して、この電磁波を乱してしまう。つまり、上述のようなプラズマ処理装置において、電磁波放射用導波管の各スロットで分配しきれなかった余分な電磁波が電磁波放射用導波管の終端にまで達するのは、あまり好ましくない。
そのため、本発明の請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を実施する場合、本発明の請求項5に記載のプラズマ処理装置のように、各電磁波放射用導波管に設けられた複数のスロットのうち、前記電磁波分配用導波管から最も離れた位置に設けられたスロットの面積を、他のスロットの面積よりも大きく設定するとともに、前記電磁波分配用導波管から最も離れた位置にあるスロットの中心位置と、該スロットが設けられている電磁波放射用導波管の終端との距離を、前記電磁波源から出力された電磁波の前記電磁波放射用導波管内における波長λg2の1/4に設定するのが好ましい。
このように、各電磁波放射用導波管に設けられた複数のスロットのうち、電磁波分配用導波管から最も離れた位置に設けられたスロット(マッチングスロット(整合スロット)、以下、マッチングスロットと言う)の面積を、他のスロットの面積よりも大きく設定することにより、電磁波放射用導波管の各スロットで分配しきれなかった余分な電磁波を、前記マッチングスロットを介して処理容器内に良好に放射することができる。したがって、電磁波放射用導波管終端で反射してくる電磁波(反射波)の影響を抑えることができる。
また、マッチングスロットの中心位置と、このマッチングスロットが設けられている電磁波放射用導波管の終端との距離が、電磁波源から出力された電磁波の電磁波放射用導波管内における波長λg2の1/4となるように設定することにより、マッチングスロットで処理容器内に放射しきれずに電磁波放射用導波管終端で反射してくる電磁波(反射波)の影響を抑えることができる。
ただし、電磁波放射用導波管の高さb2が電磁波放射用導波管の幅a2の1/2を超えると、マッチングスロットのパラメータをどのように変化させても、入射電力を実質的に100%処理容器内に放射する設計が非常に困難となることが解析により分かっている。
したがって、電磁波放射用導波管に上述のようなマッチングスロットを設ける場合、本発明の請求項6に記載のプラズマ処理装置のように、電磁波放射用導波管の高さb2を電磁波放射用導波管の幅a2の1/2以下に設定するのが好ましい。このようにすることにより、マッチングスロットのパラメータを所定の値に設定することで、入射電力を実質的に100%処理容器内に放射することができる。
本発明の請求項7に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管から分岐して設けられた複数の電磁波放射用導波管と、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されて、導波管アンテナを夫々構成する複数のスロットと、これらスロットと対向するように設けられた誘電体材料からなる電磁波放射窓と、内部に前記スロットから放射された電磁波が前記電磁波放射窓を介して入射される処理容器とを具備し、前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電磁波放射窓の厚さt1は、前記電磁波源から出力された電磁波の該電磁波放射窓内における波長λwの1/2の整数倍に設定されている。
本発明の請求項7に記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管から分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、電磁波放射窓の厚さt1が、電磁波源から出力された電磁波の該電磁波放射窓内における波長λwの1/2の整数倍に設定されているため、この電磁波放射窓の表面における電磁波の反射を抑制することができる。したがって、電磁波を効率良く処理容器内に導くことができる。
ところで、誘電体材料からなる電磁波放射窓とスロットとの距離が近いと、電磁波放射窓がスロットの結合に影響を与え易い。そのため、本発明の請求項7に記載のプラズマ処理装置を実施する場合、本発明の請求項8に記載のプラズマ処理装置のように、電磁波放射窓とこれに対向するスロットとの距離t2を、電磁波源から出力された電磁波の自由空間波長λ0の1/8以上に設定するのが好ましい。これにより、誘電体部材からなる電磁波放射窓がスロット近傍に位置することに起因するスロットの結合への影響を抑制することができる。
本発明の請求項9に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐し、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用導波管と、これら電磁波放射用導波管に夫々設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、各電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力をπ分岐により同相給電する。
本発明の請求項9に記載のプラズマ処理装置によれば、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に設けられている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、このプラズマ処理装置では、各電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力をπ分岐により同相給電するように構成されている。このような構成とすることにより、電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管との分岐箇所の数を、電磁波放射用導波管の本数の半分にすることができる。したがって、電磁波分配用導波管の構造を簡略化することができる。
本発明の請求項10に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐し、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用導波管と、これら電磁波放射用導波管に夫々設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電する。
本発明の請求項10に記載のプラズマ処理装置によれば、互いに平行に並べて設けられた複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管の電界面又は磁界面から垂直方向に分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に設けられている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、このプラズマ処理装置では、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電するように構成されている。このような構成とすることにより、電磁波放射量の周波数に対する変化を小さくすることができる。また、共振特性も単峰性となるため、アンテナとしてのスロットの設計が容易になる。さらに、互いに隣り合う電磁波放射用導波管に位相の異なる電磁波が供給されるため、互いに隣り合う電磁波放射用導波管の間における電磁波もれを抑制することができる。また、位相給電は同相給電と比べて電磁波の周波数に対してさほど敏感ではないため、装置の設計が容易であり、しかも、比較的広い周波数範囲の電磁波を使用することができる。
なお、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電する場合には、例えば、電磁波分配用導波管から電磁波放射用導波管にT分岐により電磁波を分配するように設計することで実現可能である。
また、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電する場合、本発明の請求項11に記載のプラズマ処理装置のように、前記電磁波放射用導波管が互いに並ぶ周期pを、前記電磁波源から出力された電磁波の前記電磁波分配用導波管内における波長λg1の1/2に設定し、前記電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管との結合部分に、夫々、前記電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管とを連通させる複数の給電窓を設け、前記電磁波分配用導波管内に、各電磁波放射用導波管に夫々対応させて複数の誘導性壁を設けることで、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電するように設計するとよい。このようにすることにより、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電することができる。
また、本発明の請求項11に記載のプラズマ処理装置のように、電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管との結合部分(分岐箇所)に、夫々、電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管とを連通させる複数の給電窓を設ける場合、これら給電窓の大きさを調整することにより、電磁波分配用導波管と各電磁波放射用導波管との結合量を制御することができる。
しかも、前記電磁波分配用導波管内に、各電磁波放射用導波管に夫々対応させて複数の誘導性壁を設けているため、給電窓を設けたことにより生じる反射波を、誘導性壁で生じる反射波によって打ち消すことができる。
さらに、互いに隣接する電磁波放射用導波管に、夫々、同一量の電力を逆相給電する場合、本発明の請求項12に記載のプラズマ処理装置のように、前記複数の誘導性壁を、前記電磁波放射用導波管が分岐している面と対向する面に、夫々対応する電磁波放射用導波管側に向かって張出すように設けるとともに、各誘導性壁を、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、張出し長さhが長くなるように設定するとよい。また、各誘導性壁は、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、前記電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸が、対応する給電窓の前記電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸に対して電磁波伝播方向側にオフセットするように設定するとよい。さらに、各給電窓は、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、開口幅wが大きくなるように設定するとよい。また、各給電窓は、電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど、前記電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸が、対応する電磁波放射用導波管の中心軸に対して電磁波伝播方向側にオフセットするように設定するとよい。
誘導性壁の電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸が、対応する給電窓の電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸に対して電磁波伝播方向側にオフセットする量を、以下、誘導性壁のオフセット量S3という。また、給電窓の電磁波放射用導波管の長手方向と平行な中心軸が、対応する電磁波放射用導波管の中心軸に対して電磁波伝播方向側にオフセットする量を、以下、給電窓のオフセット量S2という。
一般に、電磁波源から離れている電磁波放射用導波管ほど、電磁波の供給量が低減し易い。これに対し、各給電窓の開口幅wを、電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定することにより、各電磁波放射用導波管に均一に電磁波を供給することができる。
また、各給電窓のオフセット量(シフト量)S2を、電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど大きくすることにより、電磁波の位相のずれを補正することができる。したがって、互いに隣り合う電磁波放射用導波管を180度ずれた位相で良好に結合させることができる。
さらに、各誘導性壁の張出し長さh及び各誘導性壁のオフセット量(シフト量)S3を調整することにより、誘導性壁において、所望の振幅及び位相に制御した反射波を発生させることができる。これにより、給電窓を設けたことにより生じる反射波を打ち消すことができる。
各給電窓の開口幅wを電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定するとともに、各給電窓のオフセット量S2を電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど大きく設定する場合には、各誘導性壁の張出し長さhを、電磁波伝播方向側に配置されているものほど長く設定し、各誘導性壁のオフセット量S3を、電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定することにより、誘導性壁において、給電窓を設けたことにより生じる反射波を打ち消すように制御された反射波を生じさせることができる。
本発明の請求項13に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管から分岐して設けられた複数の電磁波放射用導波管と、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されて、導波管アンテナを夫々構成する複数のスロットと、これらスロットと対向するように設けられた誘電体材料からなる複数の電磁波放射窓と、内部に前記スロットから放射された電磁波が前記電磁波放射窓を介して入射される処理容器とを具備し、前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、各電磁波放射窓は、2以上の電磁波放射用導波管と対応するように設けられているとともに、前記電磁波放射窓と前記処理容器との間に夫々、前記処理容器の真空を保持するための封止手段が設けられている。
本発明の請求項13に記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管から分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが、各電磁波放射用導波管に、電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
また、プラズマ処理装置が備える電磁波放射窓には、ほぼ大気圧とほぼ真空に近い圧力とのガス圧力差、つまり約1kg/cm2(9.80665×104Pa)の力がかかる。このため、各電磁波放射窓の厚さt1は、この力に耐え得るような厚さにする必要がある。このプラズマ処理装置では、各電磁波放射窓が、2以上の電磁波放射用導波管と対応するように設けられているとともに、電磁波放射窓と処理容器との間に、前記処理容器の真空を保持するための封止手段が設けられている。そのため、全ての電磁波放射用導波管と対応するように1つの電磁波放射窓を設ける場合と比べて、各電磁波放射窓の厚さt1を薄くすることができる。また、1つの電磁波放射用導波管に対応するように1つの電磁波放射窓を設ける場合と比べて、電磁波放射窓を支持する梁の数を少なくすることができるため、処理容器内への電磁波の放射効率を向上させることができる。したがって、処理容器内において均一にプラズマを発生させることができる。
本発明の請求項14に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管から分岐して設けられた複数の電磁波放射用導波管と、導波管アンテナを構成する複数のスロットが設けられているとともに、各電磁波放射用導波管の一部を規定するスロット板と、これらスロットと対向するように設けられた誘電体材料からなる電磁波放射窓と、内部に前記スロットから放射された電磁波が前記電磁波放射窓を介して入射される処理容器とを具備し、前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記複数のスロットが、前記電磁波放射窓が配置されている全領域に対応して周期的に配置されている。
なお、ここで言う「電磁波放射窓が配置されている全領域」とは、電磁波放射窓が1つである場合には、その電磁波放射窓に対応する領域、電磁波放射窓が複数である場合には、これら電磁波放射窓の全てを含む最小の矩形で囲まれる領域をさしている。
本発明の請求項14に記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管から分岐するように構成されている。また、このプラズマ処理装置は、各電磁波放射用導波管の一部を規定するスロット板を備えている。スロット板には、導波管アンテナを構成する複数のスロットが設けられている。このような構成のプラズマ処理装置では、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、このプラズマ処理装置では、複数のスロットが、電磁波放射窓が配置されている全領域に対応して周期的に配置されているため、処理容器内により均一に電磁波を入射させることができる。したがって、処理容器内においてより均一にプラズマを発生させることができる。
本発明の請求項15に記載のプラズマ処理装置は、電磁波を出力する電磁波源と、この電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管と、この電磁波分配用導波管から分岐して設けられた複数の電磁波放射用導波管と、これら電磁波放射用導波管に夫々設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、内部に前記スロットから放射された電磁波が入射される処理容器とを具備し、前記スロットから前記処理容器の内部に入射された電磁波によってプラズマを生成させ、このプラズマによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電磁波分配用導波管及び前記複数の電磁波放射用導波管のうちの少なくとも1つの導波管に対応させて、チョークが設けられている。
本発明の請求項15に記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電磁波放射用電磁波が、電磁波源から出力された電磁波を伝播する電磁波分配用導波管から分岐するように構成されている。そして、導波管アンテナを構成する複数のスロットが電磁波放射用導波管に夫々設けられている。そのため、プラズマ処理を施す被処理体の大きさや形状によらず、この被処理体を均一にプラズマ処理することができる。しかも、装置のフットプリントが小さく、装置高さが低い、コンパクトなプラズマ処理装置を得ることができる。
また、導波管は、同軸管のように電磁波の伝播損失の原因となる中心導体を有していないため、電磁波の伝播損失が小さく、大電力で電磁波を伝播させることができる。したがって、電磁波を大電力で伝播するようなプラズマ処理装置であっても容易に設計することができる。
さらに、1台の電磁波源から、電磁波分配用導波管を介して、複数の電磁波放射用導波管に電磁波を供給することができる。したがって、各電磁波放射用導波管に周波数の同じ電磁波を供給することができるため、均一電磁波を放射可能な導波管アンテナを設計し易い。
加えて、このプラズマ処理装置では、電磁波分配用導波管及び複数の電磁波放射用導波管のうちの少なくとも1つの導波管に対応させて、チョークが設けられている。そのため、上記導波管を構成する際に生じる接合面等から電磁波が漏洩するのを抑制することができる。したがって、上記導波管を構成する際の加工精度や接合方法を簡易なものとすることができる。
なお、本発明の請求項1乃至15に記載のプラズマ処理が備える電磁波分配用導波管及び各電磁波放射用導波管としては、矩形導波管を好適に用いることができる。また、本発明の請求項1乃至14に記載のプラズマ処理が備える電磁波分配用導波管及び各電磁波放射用導波管は、いずれも、中空、すなわち、内部が空気で満たされている状態としてもよく、また、内部が誘電体部材で満たされている状態としてもよい。したがって、「電磁波分配用導波管内の誘電体」及び「電磁波放射用導波管内の誘電体」は空気を含む。
「電磁波分配用導波管内の誘電体」及び「電磁波放射用導波管内の誘電体」としては、電磁波の損失が少ないものを選択するのが好ましい。電磁波の損失は、誘電体の誘電率と誘電体損失角(誘電正接tanδ)との積で決まり、その積が小さいほど電磁波の損失は小さい。したがって、「電磁波分配用導波管内の誘電体」及び「電磁波放射用導波管内の誘電体」としては、誘電率と誘電体損失角との積が小さい誘電体、例えば、石英(合成石英)やフッ素樹脂等を用いるのが好ましい。また、アルミナは、石英やフッ素樹脂等と比べると、誘電率と誘電体損失角との積が若干大きいが、機械的強度が大きく、しかも、安価である点から、「電磁波分配用導波管内の誘電体」及び「電磁波放射用導波管内の誘電体」として好ましい。
ところで、本発明の請求項1乃至6、請求項9乃至12、並びに、請求15に記載のプラズマ処理装置は、例えば、電磁波放射用導波管を処理容器の外部に設けるとともに、処理容器に電磁波放射窓を設け、スロットから放射された電磁波を電磁波放射窓を介して処理容器内に入射させるものと、電磁波放射用導波管を処理容器の内部に設け、スロットから放射された電磁波をダイレクトに処理容器内に入射させるものとの双方を設計することが可能である。また、本発明の請求項7,8,13,14に記載のプラズマ処理装置は、上述した前者のように設計することが可能である。
上述した前者の場合、電磁波放射窓は、例えば、導電性部材からなる梁によって支持することで、処理容器の壁の一部として設けることができる。しかしながら、この場合、電磁波が処理容器に入射される際に入射面となる電磁波放射窓の内面近傍に導電性部材からなる梁が設けられることとなり、プラズマが処理容器内に広がり難い。
一方、上述した後者の場合、複数のスロットが処理容器内に開放している状態で、これらスロットを各電磁波放射用導波管に設ける必要があるが、これは、各電磁波放射用導波管の壁の一部を兼ねるようなスロット板にスロットを形成することで、比較的容易に実現することができる。しかしながら、この場合、スロットの出口近傍が導体で形成されることとなり、プラズマが処理容器内に広がり難い。
そのため、前者のようなプラズマ処理装置を設計したい場合には、本発明の請求項17に記載のプラズマ処理装置のように、梁を処理容器の内側から被覆用の誘電体部材で覆うのが好ましい。また、この場合、梁とともに電磁波放射窓を処理容器の内側から被覆用の誘電体部材で覆ってもよい。このようにすることにより、処理容器内において、プラズマを良好に拡散させることができるとともに、表面波を伝播させることができる。なお、被覆用の誘電体部材は、一体に形成したものであっても、分割して形成したものであってもよい。
また、後者のようなプラズマ処理装置を設計したい場合には、本発明の請求項16に記載のプラズマ処理装置のように、処理容器内に、複数のスロットを処理容器の内側から覆う被覆用の誘電体部材を設けるのが好ましい。このようにすることにより、処理容器内において、プラズマを良好に拡散させることができる。なお、被覆用の誘電体部材は、一体に形成したものであっても、分割して形成したものであってもよい。
また、複数のスロットを覆うように処理容器内に被覆用の誘電体部材を設けると、処理容器内において表面波プラズマを生成させることができる。すなわち、処理容器の内部に所定のプロセスガスを導入するとともに、この処理容器の内部に電磁波を入射させると、プロセスガスが励振されてプラズマが生じ、電磁波を入射させた領域近傍(スロットの出口近傍)のプラズマ内の電子密度が増加する。電磁波を入射させた領域近傍のプラズマ内の電子密度が増加していくと、電磁波は、プラズマ内を伝播することが困難となり、このプラズマ内で減衰する。したがって、電磁波を入射させた領域近傍から離れた領域には電磁波が届かなくなるため、プロセスガスが電磁波によって励振される領域は、電磁波を入射させた領域近傍に限られるようになる。これにより、表面波プラズマが生じる。
表面波プラズマを用いたプラズマ処理では、イオンによる被処理体の損傷を抑制することができる。すなわち、表面波プラズマが生成されている状態では、電磁波によるエネルギーが与えられてプロセスガス等の電離が生じる領域が、電磁波を入射させた領域の近傍に局在する。そのため、電磁波を入射させた領域から所定の距離だけ離れた位置に被処理体を設けることで、被処理体の被処理面近傍の電子温度を低く保つことができる。つまり、被処理体の被処理面近傍に生じるシースの電界の増大を抑制することができるため、被処理体へのイオンの入射エネルギーが低くなり、イオンによる被処理体の損傷が抑制される。
したがって、複数のスロットを処理容器の内側から覆うように被覆用の誘電体部材を設けることにより、プラズマ処理を施す被処理体に与えるイオン損傷を抑制することが可能なプラズマ処理装置を得ることができる。
本発明の請求項1乃至17のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を実施する場合、電磁波源としては、工業用周波数帯(ISM周波数帯)である13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、24.125GHzの周波数の電磁波を供給するものを好適に用いることができる。このようにすることにより、通信用周波数帯への影響を小さくすることができるので、漏洩電磁波の遮蔽等を容易に行うことができる。
電磁波としてマイクロ波を処理容器内に供給したい場合には、本発明の請求項18に記載のプラズマ処理装置のように、周波数が2.45GHzの電磁波源を用いるのが好ましい。電磁波源の周波数としては、2.45GHzが現在標準となっている。したがって、このような電磁波源は、安価であり、種類も豊富である。また、周波数範囲を2.45GHz±50MHzとすることで、工業用周波数帯となり、通信用周波数帯への影響を小さくすることができ、装置の漏洩電磁波の遮蔽等が容易になる。したがって、周波数が2.45GHzの電磁波源を採用することにより、電磁波としてマイクロ波を処理容器内に供給することができる。
本発明の請求項1乃至18のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を実施する場合、本発明の請求項19に記載のプラズマ処理装置のように、各電磁波放射用導波管に設けられた複数のスロットが、互いに平行な一対の仮想線上に交互に配置されるようにするのが好ましい。このようにすることにより、電磁波放射用導波管で導かれる電磁波を、該電磁波放射用導波管に設けられた複数のスロットから良好に処理容器内に放出することができる。
本発明の請求項20に記載のプラズマ処理方法では、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を用いて、被処理体に、プラズマ酸化、プラズマ成膜、又は、プラズマエッチングを行う。
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を用いて、被処理体にプラズマ処理(プラズマ酸化、プラズマ成膜、又は、プラズマエッチング)を行うことで、被処理体の形状や大きさによらず、この被処理体に均一にプラズマ処理を施すことができる。
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
図1乃至図4に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置1は、電磁波源2、電磁波分配用導波管3、複数個例えば10個の電磁波放射用導波管4、スロット板5、処理容器としての真空容器6、及び、複数個例えば10個の電磁波放射窓7等を備えている。電磁波放射用導波管4及びスロット板5により、平面導波管アレイ10が構成されている。このプラズマ処理装置1は、平面導波管アレイ10が真空容器6の外部に設けられている。
前記電磁波源2としては、例えば、2.45GHzのマイクロ波を供給するマイクロ波源を用いることができる。この電磁波源2は、前記電磁波分配用導波管3の一端部と結合している。
前記電磁波分配用導波管3及び前記複数の電磁波放射用導波管4としては、夫々、矩形導波管を用いることができる。各電磁波放射用導波管4は、内形の高さb2が内形の幅a1の1/2以下となるように、その大きさ(内形)が設定されている。また、電磁波分配用導波管3の内形は各電磁波放射用導波管4の内形と実質的に同じ大きさに設定されている。
各電磁波放射用導波管4は、電磁波分配用導波管3の電界面(E面)又は磁界面(H面)から垂直方向に分岐し、且つ、互いに平行に並べて設けられている。上述のように、本実施形態においては、電磁波分配用導波管3は矩形導波管であるため、長辺を含む導波管面が電磁波の電界方向に対して垂直なH面となり、短辺を含む導波管面が電磁波の電界方向に対して平行なE面となる。本実施形態では、各電磁波放射用導波管4は、電磁波分配用導波管3の短辺を含む導波管面(E面)から垂直方向に分岐している。
また、このプラズマ処理装置1は、各電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力がπ分岐によって同相給電されるように構成されている。詳しくは、図1及び図4に示すように、電磁波分配用導波管3を構成する壁のうち、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の間の領域に対応させて、給電窓21を設けている。本実施形態では、電磁波放射用導波管4が10個設けられているため、給電窓21はその半分の5個設けられることとなる。また、これら給電窓21と対応するように、電磁波分配用導波管3内には、5個の誘導性柱22が設けられている。このようにすることにより、図1に矢印で示すように、電磁波源2にて発振され、電磁波分配用導波管3によって伝播された電磁波は、実質的に垂直に曲げられ、各電磁波放射用導波管4に、同位相且つ同一量の電力でπ分岐される。
また、このプラズマ処理装置1では、電磁波放射用導波管4同士が隣接して配置され、且つ、各電磁波放射用導波管周期pが、電磁波源2から出力された電磁波(本実施形態では電磁波)の自由空間波長をλ0、電磁波源2から出力された電磁波の電磁波分配用導波管3内における波長をλg1としたとき、
λ0>p>a2>b2
且つ
p=(λg1/2)±α (ただし、αはλg1の5%以内とする)
を満たすように設定されている。
なお、電磁波の電磁波分配用導波管3内における波長λg1は、[課題を解決する手段]で記載した(1)式から求めることができる。本実施形態では、電磁波分配用導波管3内は空洞なので、(1)式中の比誘電率εr1は略1である。
図1に示すように、各電磁波放射用導波管4には、導波管アンテナを夫々構成する前記複数のスロット5aが電磁波伝播方向に沿って互いに並べて配置されている。詳しくは、複数のスロット5aは、図2及び図3に示すように、各電磁波放射用導波管4の底面を規定する(各電磁波放射用導波管4の底壁をなす)スロット板5に形成されている。
各電磁波放射用導波管4に設けられた複数のスロット5aは、互いに平行な一対の仮想線I上に交互に配置されている。そして、電磁波伝播方向に沿って互いに隣り合うスロット5aの間隔dは、電磁波源2から発振される電磁波の自由空間波長λ0よりも小さくなるように設定されている。
また、本実施形態では、電磁波放射用導波管4の各スロット5aで分配しきれなかった余分な電磁波を前記真空容器6内に放射するため、各電磁波放射用導波管4に設けられた複数のスロット5aのうち、電磁波分配用導波管3から最も離れた位置に、マッチングスロット5bを設けている。このマッチングスロット5bの面積は、他のスロット5aの面積よりも大きく設定されている。
なお、本実施形態のプラズマ処理装置1では、上述のように、電磁波放射用導波管4の高さb2が電磁波放射用導波管4の幅a2の1/2以下となるようにしているため、マッチングスロット5bのパラメータを所定の値とすることにより、入射電力を実質的に100%真空容器6内に放射するように設計することが可能である。
また、マッチングスロット5bのパラメータを所定の値としても、電磁波のごく一部が電磁波放射用導波管4の終端4aで反射されるおそれがある。このように、電磁波放射用導波管4の終端4aで反射してくる電磁波(反射波)の影響を抑えるため、本実施形態では、各電磁波放射用導波管4の終端4aと各マッチングスロット5bとの距離rを、電磁波源2から出力された電磁波の電磁波放射用導波管4内における波長λg2の1/4となるように設定している。
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、上述のように、電磁波放射用導波管4同士が隣接して配置されるように設計されている。このようにすることにより、複数のスロット5aは、電磁波放射窓7が配置されている全領域に対応して周期的に配置されることとなる。複数のスロット5aを電磁波放射窓7が配置されている全領域に対応させて周期的に配置することにより、前記真空容器6内に電磁波を均一に供給することができる。したがって、真空容器6内において、プラズマを均一に生成することができる。
前記平面導波管アレイ10は、以下のようにして形成することができる。まず、アルミニウムブロック等の金属ブロックから各電磁波放射用導波管4の一部となる断面矩形状の溝を所定本数削り出す。金属ブロックの溝を削り出した面と略同面積を有する金属製の板材を用意する。この板材に、各溝に対応するように複数のスロット5aを形成することでスロット板5とする。金属ブロックに形成された複数の溝を前記スロット板5で覆う。これにより、各溝とスロット板5とにより囲まれた領域に、電磁波放射用導波管4としての矩形導波管が形成されるとともに、各電磁波放射用導波管4に複数のスロット5aが設けられる。この場合、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4を仕切る壁は、これら電磁波放射用導波管4で共有することとなる。なお、平面導波管アレイ10は、電磁波放射用導波管4となる矩形導波管を所定本数作製し、これらを組み立てるようにして形成してもよい。
図2に示すように、前記真空容器6は、容器本体31と天板32とを備えて、その内部に、被処理体100をプラズマ処理するための処理室6aを有している。容器本体31は、底壁31a及び側壁31bを有して上方に開口している。天板32は、容器本体31が有する前記開口を閉塞するように、この容器本体31を上方から覆っている。容器本体31と天板32との間は、封止手段としてのO−リング(図示せず)によって気密が保持されている。
真空容器6は、前記処理室6a内を真空状態或いはその近傍にまで減圧することが可能な強度に形成されている。真空容器6を形成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属材料を用いることができる。また、処理室6a内には、被処理体100を支持する支持台33が設けられている。
容器本体31は、処理室6a内にプロセスガスを導入するためのガス導入口34と、処理室6a内のガスを排気するためのガス排気口35とを有している。処理室6a内は、ガス導入口34を介してプロセスガスを収容するガスシリンダ(図示せず)と連通されている。一方、処理室6a内は、ガス排気口35を介して、真空排気システム(図示せず)と連通されている。真空排気システムとしては、例えば、ターボ分子ポンプを用いることができる。したがって、この真空排気システムを稼動させることにより、処理室6a内を所定の真空度に達するまで排気することができる。
図2及び図3に示すように、天板32は、開口部36を有しており、この開口部36を跨ぐように、金属製の複数の梁37が所定の間隔をあけて掛け渡されている。これらの梁37は、真空容器6の一部を構成している。これにより、開口部36は、複数の電磁波放射窓7に夫々対応するように、複数の細長小開口38に分割されている。本実施形態では、開口部36は、10個の電磁波放射窓7に夫々対応するように10個の細長小開口38に分割されている。各梁37は、その下部側に寄せて側面から細長小開口38の中心側に向かって水平に張出す窓受け部37aを有している。
図2及び図3に示すように、前記電磁波放射窓7は、夫々、その上部側に寄せて外周面から水平方向に張出す張出し部7aを有して、断面略T字状に形成されている。各電磁波放射窓7は、細長小開口38に嵌合するとともに、梁37に支持された状態で、細長小開口38を閉塞させるように、天板32に設けられている。梁37の窓受け部37aと電磁波放射窓7の張出し部7aとの間(電磁波放射窓7と真空容器6との間)は、封止手段としてのO−リング46により気密が保たれている。
電磁波分配用導波管3及び複数の電磁波放射用導波管4のうちの少なくとも1つ、例えば、所定の電磁波放射用導波管4に対応させて、チョーク40が設けられている。このようにすることにより、該電磁波放射用導波管4を構成する際に生じる接合面等から電磁波が漏洩するのを抑制することができる。したがって、電磁波放射用導波管4を構成する際の加工精度や接合方法を簡易なものとすることができる。
また、プラズマにより、真空容器65の梁37や、電磁波放射窓7の気密を保持するO−リングが加熱され、変形したり損傷したりするおそれがある。そのため、このようなプラズマ処理装置1では、冷却手段を設けるのが好ましい。本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波放射窓7同士の間、すなわち、電磁波放射窓7を保持する梁37内に冷却手段としての水冷管39を設けている。このようにすることにより、プラズマの発生を妨げることなく、効率良く梁37や真空容器6と電磁波放射窓7との間の気密を保持するO−リング等を冷却することができる。
ところで、上述のように、電磁波放射窓7を分割する場合、電磁波が真空容器6内に入射する電磁波入射面F、すなわち、電磁波放射窓7の外面のうちの真空容器6の内側となる面の近傍に、導体製(金属製)の梁37が露出することとなる。そのため、梁37及び梁37の近傍にプラズマが広がり難い。
梁37及び梁37の近傍にもプラズマが広がり易くするためには、梁37(金属)においてプラズマ中の電子等が消滅するのを抑制するために、少なくとも梁37が真空容器6内(処理室6a内)に露出している部分を被覆用の誘電体部材41によって覆うのが好ましい。本実施形態のプラズマ処理装置1では、梁37が真空容器6内に露出している部分及び電磁波放射窓7の電磁波入射面Fを被覆用の誘電体部材41で覆っている。被覆用の誘電体部材41としては、例えば、石英、フッ素樹脂、或いは、アルミナ等を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。このようにすることにより、真空容器6内においてプラズマを良好に拡散させることができる。
また、真空容器6内を低圧力状態とすると、電磁波放射窓7には、ほぼ大気圧と、ほぼ真空に近い圧力とのガス圧力差、つまり、約9.80665×104Pa(1kg/cm2)の力がかかる。このため、電磁波放射窓7の厚さt1は、この差圧に耐え得るような厚さにする必要がある。
下記表1に示すように、電磁波放射窓7を例えば直径300mmの円形状あるいは250mm角の矩形状の合成石英板で形成すると、該電磁波放射窓7の厚さは約30mm必要になる。ところが、電磁波放射窓7の厚さが厚くなると、電磁波の損失が大きくなる。ましてや、1m角程度の大型基板に対応するプラズマ処理装置1の場合では、電磁波放射窓7の厚さが厚くなり過ぎ、実現不可能である。
このため、本実施形態では、100cm×9cmの電磁波放射窓7を10個設け、10個の電磁波放射窓7と真空容器6との間で夫々真空が保持されているようになっている。
図2及び図3に示すように、各電磁波放射用導波管4は、真空容器6の外部に、各電磁波放射用導波管4と夫々対向するように設けられている。すなわち、各電磁波放射用導波管4に設けられた複数のスロット5aは、夫々、電磁波放射窓7と対向するように設けられることとなる。
次に、本実施形態のプラズマ処理装置1における各電磁波放射窓7と各電磁波放射用導波管4との関係を説明する。
各電磁波放射窓7は、電磁波放射用導波管4の1本毎に対応して、該電磁波放射用導波管4の幅a2とほぼ同等の幅或いは電磁波放射用導波管4の幅a2よりも狭い幅を有するように形成されている。また、電磁波放射用導波管4の長手方向の長さと電磁波放射窓7の長手方向の長さとがほぼ一致するように、電磁波放射窓7及び電磁波放射用導波管4が設計されている。そして、電磁波放射用導波管4の長手方向と電磁波放射窓7の長手方向とはほぼ一致するようにその位置関係が決定されている。このようにすることにより、電磁波放射窓7を複数に分割しながら、しかも、梁37で電磁波が遮られることなく、電磁波を有効的に真空容器6内に導入させることができる。
なお、電磁波放射窓7の長手方向の長さが電磁波放射用導波管4の長手方向の長さよりも短くなるようにしてもよい。この場合、電磁波放射窓7を支持する真空容器6の天板32の梁37を縦横方向に交差して形成することができる。つまり、電磁波放射用導波管4の長手方向の長さよりも短い小さな電磁波放射窓7を形成できるので、電磁波放射窓7の厚さt1をさらに薄くすることができる。
次に、1000mm×1000mmサイズの平面導波管アレイ10に用いる電磁波放射用導波管4のサイズについて検討結果を示す。電磁波源2の周波数としては、2.45GHzのものが最も量産され、現在、標準となっており、安価であり、種類も豊富である。このため、周波数は2.45GHzとして、次の手順で電磁波放射用導波管4のサイズとスロット5aの数等を設計した。なお、ここでは、金属製の梁37の影響が無いとして設計した。
電磁波放射用導波管4の幅a2と、それとほぼ対応する電磁波放射用導波管周期pの設計し得る最小値と最大値について検討した。検討した結果、プラズマが無い自由空間中に置いた通信用のアンテナで一様開口分布を実現するならば、電磁波放射用導波管周期pの設計可能範囲は大体65mm以上110mm以内とするのが好適であることがわかった。
以上のように、本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、電磁波の伝播方向が電磁波分配用導波管3から各電磁波放射用導波管4にほぼ直角に曲げられて分配される。したがって、上述した特許文献4や特許文献5に記載のプラズマ処理装置1よりも多数の電磁波放射用導波管4に電磁波を良好に分配することができる。したがって、大面積の被処理体100に対応可能なプラズマ処理装置1を設計することができる。また、分岐部分のフットプリントが小さいため、装置のフットプリントを小さくすることができる。しかも、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4とは、夫々、同一平面上にある。すなわち、本実施形態のプラズマ処理装置1は1層型である。したがって、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4とが重なるように設けられる多層型と比較して、装置高さを低く、コンパクトにすることができる。
しかも、各電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力をπ分岐により同相給電するように構成しているため、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4との分岐箇所の数を、電磁波放射用導波管4の本数の半分にすることができる。したがって、電磁波分配用導波管3の構造を簡略化することができる。
さらに、複数の電磁波放射用導波管4に夫々対応するように複数の電磁波放射窓7を設けているため、電磁波放射窓7の厚さt1を従来よりも薄くすることができる。したがって、大型のプラズマ処理装置1を実現でき、大面積の基板を均一なプラズマ密度で処理することができる。
さらに、上記特許文献4に記載の技術では、結合孔から等しい電磁波電力が放射され、プラズマが形成されるため、所定間隔を設けて導波管を配置するようにしている。また、プラズマは拡散により拡がるため、プラズマ密度はガウス分布を持つ。そのため、上記特許文献4に記載の技術では、このガウス分布を重ね合わせて、均一化を図るようにしている。
これに対し、本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波を、直線状の電磁波分配用導波管3により、これらとほぼ直角に分岐し、且つ、互いに接触するように並べて複数の電磁波放射用導波管4に分配している。そのため、スロット5aから電磁波放射窓7を通して、角型で大面積の被処理体100であっても、この被処理体100側に向けて、均一なエネルギー密度で電磁波を放射することができる。したがって、均一なプラズマ密度のプラズマを発生させることができる。
また、本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、電磁波放射用導波管周期pが、λ0>p>a2>b2、且つ、p=(λg1/2)±α(ただし、αはλg1の5%以内とする)の関係を満たすようにしている。そのため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。しかも、電磁波の波長の振幅が常に一定となる位置に各電磁波放射用導波管4を配置することができる。したがって、各電磁波放射用導波管4への給電の調整を容易に行うことができる。
また、スロット間隔dが、λ0>dの関係を満たすようにしている、そのため、いわゆるグレーティングローブと呼ばれるサイドローブ(指向性の悪化)の発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態では、1台の電磁波源2から、電磁波分配用導波管3を通じて、複数の電磁波放射用導波管4に電磁波を供給するようにしているため、すべての電磁波放射用導波管4において電磁波の周波数を同一とすることができる。したがって、均一なエネルギー密度を放射するようなアンテナを設計し易い。なお、各電磁波放射用導波管4に供給される電磁波の周波数が異なると、アンテナを電磁波の干渉を考慮して設計する必要があるため、面倒である。
また、各電磁波放射窓7は複数のスロット5aに対応するように設けられているので、真空容器6の天板32の加工費を低減でき、装置価格を低減することができる。
なお、本実施形態のプラズマ処理装置1では、プラズマ処理として、プラズマ酸化、プラズマ成膜、プラズマエッチング、あるいはプラズマアッシングを行うことが可能である。また、本実施形態のプラズマ処理装置1を用いることにより、角型大面積の被処理体100のプラズマ処理を良好に行うことができる。さらに、本実施形態のプラズマ処理装置1で生成されるプラズマは、高電子密度で電子温度が低くかつ均一性が良いため、非常に良好なプラズマ酸化、プラズマエッチング、プラズマ成膜のプラズマ処理方法を提供できる。
以下、本発明の第2の実施形態を、図5を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、第1の実施形態のプラズマ処理装置1に用いた平面導波管アレイ10を4つ組み合わせることで1つの大型平面導波管アレイ11を構成している。真空容器6は、この大型平面導波管アレイ11に対応するように形成されている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
本実施形態のように、電磁波源2を4台にすることにより、電磁波源2が1台の場合に比較して4倍の面積に対応できる。つまり、同形状の平面導波管アレイ10を複数組み合わせることで、さらに大面積の被処理体100をプラズマ処理可能なプラズマ処理装置1を容易に設計することができる。
以下、本発明の第3の実施形態を、図6乃至図9を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、各電磁波放射用導波管4を真空容器6の内部に設けている。また、真空容器6の内部で生成されたプラズマが各電磁波放射用導波管4内や電磁波分配用導波管3内に侵入するのを抑制するために、各電磁波放射用導波管4内に、第1の誘電体部材42を夫々設けている。
詳しくは、本実施形態のプラズマ処理装置1は、図6乃至9に示すように、電磁波源2、電磁波分配用導波管3、複数個例えば20個の電磁波放射用導波管4、スロット板5、及び、真空容器6等を備えている。電磁波放射用導波管4及びスロット板5により、平面導波管アレイ10が構成されている。このプラズマ処理装置1は、平面導波管アレイ10が真空容器6の内部に設けられており、真空容器6の側壁31bを介して、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4とが結合されている。
前記電磁波分配用導波管3及び前記複数の電磁波放射用導波管4としては、夫々、例えば、矩形導波管を用いることができる。各電磁波放射用導波管4は、その内部が第1の誘電体部材42で満たされている。第1の誘電体部材42としては、例えば、石英(合成石英)、フッ素樹脂、或いは、アルミナ等を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波放射用導波管4は、内形の高さb2が内形の幅a2の1/2以下となるように、その大きさが設定されており、内部に合成石英からなる第1の誘電体部材42が設けられている。
ところで、電磁波の周波数が矩形導波管内の基本モードで伝送できるようにするためには、矩形導波管の管内比誘電率をε、矩形導波管の内形寸法の長径をa、電磁波の波長λとしたときに、
(λ/ε0.5)<2a …(8)
の条件を満たすように設計することで実現可能である。
上述のように、電磁波分配用導波管3内は、空気(比誘電率ε=約1)で満たされており、各電磁波放射用導波管4内は、第1の誘電体部材42(合成石英、比誘電率ε=約3.8)によって満たされている。すなわち、電磁波分配用導波管3内の誘電体の比誘電率εr1は約1、各電磁波放射用導波管4内の誘電体の比誘電率εr2は約3.8である。そして、電磁波分配用導波管3から分配された電磁波は、各電磁波放射用導波管4内に設けられた第1の誘電体部材42内を伝播する。
したがって、電磁波放射用導波管4の内形寸法(幅a2及び高さb2)は、電磁波放射用導波管4の内形寸法(幅a1及び高さb1)を第1の誘電体部材42の比誘電率の平方根で割ったサイズとする必要がある。具体的には、合成石英は、比誘電率が約4であるため、電磁波放射用導波管4の幅a1及び高さb1は、電磁波放射用導波管4の幅a2及び高さb2の約2倍の大きさに設定するのが好ましい。真空容器6内には、各電磁波放射用導波管4の底面を規定する(底壁をなす)スロット板5が設けられている。各電磁波放射用導波管4内に第1の誘電体部材42を設けることで、真空容器6内で生成されたプラズマが各電磁波放射用導波管4内や電磁波分配用導波管3内に侵入するのを抑制することができる。
真空容器6内には、金属製のスロット板5を覆うように被覆用の誘電体部材41が設けられている。このようにすることにより、真空容器6内において、プラズマを良好に拡散させることができる。なお、被覆用の誘電体部材41としては、例えば、石英(合成石英)、フッ素樹脂、或いは、アルミナ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、電磁波放射用導波管4と真空容器6との間には、封止手段としてのO−リング(図示せず)が設けられており、このO−リングにより、真空容器6の気密が保持されるようになっている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、大面積の被処理体100を均一に処理でき、フットプリントが小さく装置高さが低いコンパクトなプラズマ処理装置1を得ることができる。
また、各電磁波放射用導波管4内に第1の誘電体部材42が設けられている。そのため、真空容器6内で生成されたプラズマが各電磁波放射用導波管4内や電磁波分配用導波管3内に侵入するのを抑制することができる。
さらに、真空容器6の気密は、電磁波放射用導波管4と真空容器6との間で保持されるように構成されている。そのため、封止手段を電磁波放射用導波管4の断面積程度とすることができる。
また、スロット板5を被覆用の誘電体部材41によって覆っているため、表面波を伝播させることができる。また、被覆用の誘電体部材41は真空容器6内に設けられているため、装置が大型化した場合でも、被覆用の誘電体部材41の板厚を厚くして強度を高める等の必要がない。そのため、被覆用の誘電体部材41に起因するコストアップが無い。しかも、被覆用の誘電体部材41の板厚が厚くなることによる影響、すなわち、電磁波の伝播に対する被覆用の誘電体部材41の影響も変化しないため、電磁波を均一に放射するための装置設計も容易になる。したがって、大面積基板においても、安定で均一なプラズマにより基板を処理することができる。
さらに、真空容器6に合成石英等の誘電体材料からなる電磁波放射窓(第1の実施形態の電磁波放射窓7に相当)を設ける必要がなくなるため、電磁波放射窓や、電磁波放射窓と真空容器6の壁との間の封止手段を全て省略することができる。したがって、真空容器6及びプラズマ装置自体の構成をさらに単純化させることができる。
しかも、電磁波放射窓自体を省略できることから、当然のことながら電磁波放射窓の強度(合成石英窓の厚さ)についても考慮する必要がなくなる。したがって、大面積の被処理体100に対応する大型の真空容器6を備えたプラズマ処理装置1を容易に設計することができる。また、電磁波放射窓の大型化に伴うコストアップも無い。さらに、電磁波放射窓が電磁波の伝播に与える影響も無くすことができるため、真空容器6内に電磁波を均一に放射可能な装置設計も容易になる。したがって、大面積基板のような被処理体100であっても、安定で均一なプラズマによりプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置1が得られる。
また、スロット板5を覆うように被覆用の誘電体部材41を設けることにより、真空容器6内において表面波を伝播させることができる。しかも、被覆用の誘電体部材41は、真空容器6の内部側からスロット板5を覆っている。装置が大型化した場合でも、被覆用誘電体部材の板厚等を変更する必要が無い。したがって、被覆用の誘電体部材41のコストアップが無く、しかも、被覆用の誘電体部材41が電磁波に与える影響も変化しない。しかも、電磁波を均一に放射するための装置設計も容易であるため、大面積基板においても、安定で均一なプラズマにより被処理体100をプラズマ処理することができる。
以下、本発明の第4の実施形態を、図10を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、各電磁波放射用導波管4を真空容器6の内部に設けている。複数個例えば10個の電磁波放射用導波管4は、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の間に間隙を設けた状態で、平行に並べて配置されている。本実施形態では、電磁波放射用導波管4の幅a2が9cmあるのに対し、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の内面間距離を3cmとしている。各電磁波放射用導波管4内には、第1の誘電体部材42が設けられている。なお、図10では、理解を容易にするために、第1の誘電体部材42が設けられている領域に斜線を付している。
また、各電磁波放射用導波管4と電磁波分配用導波管3との結合部分に給電窓21が設けられている。そして、各電磁波放射用導波管4には、夫々、電磁波分配用導波管3からT分岐により同相給電又は逆相給電されるように構成されている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第3の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の間隔を種々に変化させ、発生したプラズマ特性の発光状態を、真空容器6の下面に設置したCCDカメラで観察した。この結果、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の距離が電磁波放射用導波管4の内形の長辺(本実施形態では幅a2)よりも近接している状態では、真空容器6内に均一にプラズマを発生させることができることがわかった。この結果から、隣り合う電磁波放射用導波管4の内面間の距離が電磁波放射用導波管4の長いほうの内径以内で近接するように、各電磁波放射用導波管4を配置するのが好ましいことがわかった。
本実施形態のプラズマ処理装置1のように、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の間には間隙を設けてもよく、このようにしても、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以下、本発明の第5の実施形態を、図11を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、各電磁波放射用導波管4を真空容器6の内部に設けている。複数個例えば20個の電磁波放射用導波管4は、互いに隣接するように、平行に並べて配置されている。各電磁波放射用導波管4内には、第1の誘電体部材42が設けられており、電磁波分配用導波管3内には、第2の誘電体部材43が設けられている。なお、図11では、理解を容易にするために、第1及び第2の誘電体部材42,43が設けられている領域に斜線を付している。
第2の誘電体部材43としては、例えば、石英(合成石英)、フッ素樹脂、或いは、アルミナ等を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、電磁波分配用導波管3の内部に、合成石英からなる第2の誘電体部材43が設けられている。したがって、電磁波源2で発振された電磁波は、電磁波分配用導波管3内の第2の誘電体部材43中を伝播し、各電磁波放射用導波管4に分配され、各電磁波放射用導波管4内の第1の誘電体部材42中を伝播し、各スロット5a内を通って、スロット5aから真空容器6内に放射される。
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波分配用導波管3内の比誘電率εr1と各電磁波放射用導波管4内の比誘電率εr2とが実質的に同じである。したがって、電磁波分配用導波管3の内形は各電磁波放射用導波管4の内形と実質的に同じ大きさに設定することができる。
さらに、各電磁波放射用導波管4と電磁波分配用導波管3との結合部分には、夫々、給電窓21が設けられている。そして、各電磁波放射用導波管4には、夫々、電磁波分配用導波管3からT分岐により同相給電又は逆相給電されるように構成されている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第3の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波分配用導波管3内に第2の誘電体部材43が設けられている。このようにすることにより、電磁波分配用導波管3の内形を各電磁波放射用導波管4の内形と実質的に同じ大きさとすることができるため、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4との間の結合構造を簡単な構造とすることができる。
以下、本発明の第6の実施形態を、図12乃至15を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、各電磁波放射用導波管4を真空容器6の外部に設けている。また、このプラズマ処理装置1では、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力を逆相給電するように構成されている。
詳しくは、電磁波放射用導波管周期pは、電磁波源2から出力された電磁波の電磁波分配用導波管3内における波長λg1の1/2となるように設定されている。電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4との結合部分には、夫々、電磁波分配用導波管3と各電磁波放射用導波管4とを連通させる複数の給電窓21が設けられている。電磁波分配用導波管3内には、各電磁波放射用導波管4に夫々対応させて複数の誘導性壁23が設けられている。このようにすることにより、図12に矢印で示すように、電磁波源2にて発振され、電磁波分配用導波管3によって伝播された電磁波は、実質的に垂直に曲げられ、互いに隣接する電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力が逆相給電される。
すなわち、図15に模式的に示すように、電磁波の波長は半波長毎に磁界の向きが反転する。そのため、電磁波放射用導波管周期pを上記波長λg1の1/2とするとともに、半波長毎に給電窓21を設けることで、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4に給電される電磁波の磁界の向きを逆相とすることができる。
また、電磁波分配用導波管3内には、電磁波放射用導波管4が分岐している面と対向する面に、夫々対応する電磁波放射用導波管4側に向かって張出すように複数の誘導性壁23が設けられている。このようにすることにより、給電窓21を設けたことにより生じる反射波を、誘導性壁23で生じる反射波によって打ち消すことができる。
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波放射窓7の厚さt1が、電磁波源2から出力された電磁波の該電磁波放射窓7内における波長λwの1/2の整数倍に設定されている。また、電磁波放射窓7とこれに対向するスロット5aとの距離t2が、電磁波源2から出力された電磁波の自由空間波長λ0の1/8以上となるように設定されている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、互いに隣接する電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力を逆相給電するように構成されているため、電磁波放射量の周波数に対する変化を小さくすることができる。また、共振特性も単峰性となるため、アンテナとしてのスロット5aの設計が容易になる。さらに、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4に位相の異なる電磁波が供給されるため、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4の間における電磁波もれを抑制することができる。また、逆相給電は同相給電と比べて電磁波の周波数に対してさほど敏感ではないため、装置の設計が容易であり、しかも、比較的広い周波数範囲の電磁波を使用することができる。
本実施形態のプラズマ処理装置1によれば、電磁波放射窓7の厚さt1を上記波長λwの1/2の整数倍としているため、電磁波放射窓7の表面における電磁波の反射を抑制することができる。したがって、電磁波を効率良く真空容器6内に導くことができる。しかも、電磁波放射窓7とこれに対向するスロット5aとの距離t2を上記自由空間波長λ0の1/8以上としているため、誘電体部材からなる電磁波放射窓7がスロット5a近傍に位置することに起因するスロット5aの結合への影響を抑制することができる。
以下、本発明の第7の実施形態を、図16乃至25を参照して説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置1では、第6の実施形態と同様、各電磁波放射用導波管4が真空容器6の外部に設けられているとともに、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4に、夫々、同一量の電力を逆相給電するように構成されている。
以下、説明を容易にするために、電磁波放射用導波管4に導波管番号Nを付すとともに、各電磁波放射用導波管4に設けられた複数のスロット5aにスロット番号Mを付す。導波管番号Nは、電磁波分配用導波管3の終端3a側から、N=1,N=2・・・と番号を付す。スロット番号は、電磁波分配用導波管3側から、M=1,M=2・・・と番号を付す。また、本実施形態のプラズマ処理装置1に関する各パラメータは、以下、表2に示すとおりである。
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、各給電窓21は、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、開口幅wが大きくなるように設定されている。さらに、各給電窓21は、電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど、前記電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l2が、対応する電磁波放射用導波管4の長手方向に沿う中心軸l2に対して電磁波伝播方向側にオフセットしている。
各誘導性壁23は、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、張出し長さhが長くなるように設定されている。また、各誘導性壁23は、電磁波伝播方向側に配置されているものほど、前記電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l3が、対応する給電窓21の前記電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l2に対して電磁波伝播方向側にオフセットするように設定されている。
誘導性壁23の電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l3が、対応する給電窓21の電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l2に対して電磁波伝播方向側にオフセットする量を、以下、誘導性壁23のオフセット量S3という。また、給電窓21の電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l3が、対応する電磁波放射用導波管4の長手方向に沿う中心軸l1に対して電磁波伝播方向側にオフセットする量を、以下、給電窓21のオフセット量S2という。
各電磁波放射用導波管4と、対応する給電窓21の幅w、対応する給電窓21のオフセット量s
2、対応する誘導性壁23の張出し長さh、及び対応する誘導性壁23のオフセット量s
3との関係は、以下、表3に示すとおりとしている。
なお、表3で示した給電窓21の幅w、給電窓21のオフセット量s2、誘導性壁23の張出し長さh、及び誘導性壁23のオフセット量s3は、上記表2に記載の各パラメータ等を考慮して解析した値の一例であり、これらに限定されるものではない。
また、スロット5aの電磁波放射用導波管4の長手方向と平行な中心軸l
4が電磁波放射用導波管4の長手方向に沿う中心軸l
1に対して外側にオフセットする量(以下、スロット5aのオフセット量s
1という)を調整することで、各スロット5aからの電磁波放射量を制御することができる。また、各スロット5aの長さ(以下、スロット長xという)を調整することで、共振(透過位相が0の)の状態を保つように制御することができる。本実施形態のプラズマ処理装置1では、スロット長x及びスロットのオフセット量s
1を、表4に示すように調整している。
なお、表4で示したスロット長x及びオフセット量s1は、上記表2に記載の各パラメータ等を考慮して解析した値の一例であり、これらに限定されるものではない。
また、図17及び図18に示すように、各電磁波放射窓7は、2以上の電磁波放射用導波管4と対応するように設けられている。また、電磁波放射窓7と真空容器6との間には、夫々、真空容器6の真空を保持するための封止手段、例えばO−リングが設けられている。なお、他の構成は、図示しない構造も含めて第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
図22は、電磁波放射窓7からの距離と電子密度・電子温度との関係を示している。図22に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、電磁波放射窓7との距離が離れているほど、電子密度及び電子温度を低くすることができることがわかった。したがって、このプラズマ処理装置1では、電磁波を入射させた領域から所定の距離だけ離れた位置に被処理体100を設けることで、被処理体100の被処理面近傍に生じるシースの電界の増大を抑制することができる。したがって、被処理体100へのイオンの入射エネルギーが低くなるため、プラズマ処理中において、イオンが被処理体100に損傷を与えるのを抑制することができる。
以上のように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、以下のような効果を奏する。すなわち、電磁波源2から離れている電磁波放射用導波管4ほど、電磁波の供給量が低減し易いが、各給電窓21の開口幅wを、電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定することにより、各電磁波放射用導波管4に均一に電磁波を供給することができる。
各給電窓21のオフセット量(シフト量)S2を、電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど大きくすることにより、電磁波の位相のずれを補正することができる。したがって、互いに隣り合う電磁波放射用導波管4を180度ずれた位相で良好に結合させることができる。
各誘導性壁23の張出し長さh及び各誘導性壁23のオフセット量(シフト量)S3を調整することにより、誘導性壁23において、所望の振幅及び位相に制御した反射波を発生させることができる。これにより、給電窓21を設けたことにより生じる反射波を打ち消すことができる。
各給電窓21の開口幅wを電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定するとともに、各給電窓21のオフセット量S2を電磁波伝播方向側とは反対側に配置されているものほど大きく設定する場合には、各誘導性壁23の張出し長さhを、電磁波伝播方向側に配置されているものほど長く設定し、各誘導性壁23のオフセット量S3を、電磁波伝播方向側に配置されているものほど大きく設定することにより、誘導性壁23において、給電窓21を設けたことにより生じる反射波を打ち消すように制御された反射波を生じさせることができる。
各スロット5aのオフセット量s1を調整する(各スロット5aのオフセット量s1を互いに異ならせる)ことにより、電磁波放射量を制御することができる。また、各スロット長xを調整する(各スロットのスロット長x互いに異ならせる)ことにより、共振(透過位相が0の)の状態を保つように制御することができる。
さらに、各電磁波放射窓7は、2以上の電磁波放射用導波管4と対応するように設けられている。また、電磁波放射窓7と真空容器6との間には、夫々、真空容器6の真空を保持するための封止手段、例えばO−リングが設けられている。そのため、全ての電磁波放射用導波管4と対応するように1つの電磁波放射窓7を設ける場合と比べて、各電磁波放射窓7の厚さt1を薄くすることができる。また、1つの電磁波放射用導波管4に対応するように1つの電磁波放射窓7を設ける場合と比べて、電磁波放射窓7を支持する梁37の数を少なくすることができるため、真空容器6内への電磁波の放射効率を向上させることができる。したがって、真空容器6内において均一にプラズマを発生させることができる。
以下、nチャンネル型及びpチャンネル型の多結晶シリコン薄膜トランジスタの形成する場合を例にとって、本実施形態のプラズマ処理装置1を用いたプラズマ処理方法を説明する。
図24は、nチャンネル型及びpチャンネル型の多結晶シリコン薄膜トランジスタの形成する際のプロセスフローの一例を示す図であり、図25(A)〜(E)は、nチャンネル型及びpチャンネル型の多結晶シリコン薄膜トランジスタを形成する際の各プロセスにおける素子断面図を示している。
まず、被処理体100としての基板200を用意する。基板200としては、例えば、大きさ320mm×400mm×1.1mmのガラス板を用いることができる。
図25(A)に示すように、洗浄した基板200上に、TEOSガスを用いたPE−CVD法(プラズマCVD法)により、厚さ200nmの酸化シリコン膜(SiO2膜)をベースコート膜201(図25(A)参照)として形成する(図24のS1)。
その後、SiH4及びH2ガスを用い、PE−CVD法によりアモルファスシリコン膜を厚さ50nm成膜する(図24のS2)。このアモルファスシリコン膜は、5〜15原子%の水素を含むため、そのままレーザーを照射すると、水素が気体となり、急激に体積膨張して、膜が吹き飛ぶ。このため、アモルファスシリコン膜を形成した基板200を、水素の結合が切れる350℃以上で約1時間保って水素を逃がす(図24のS3)。
その後、キセノンクロライド(XeCl)エキシマレーザー光源から波長308nmのパルス光(670mJ/パルス)を、光学系により0.8mm×130mmに成形する。前記レーザー光を360mJ/cm2の強度で、前記基板200上のアモルファスシリコン膜に照射する。アモルファスシリコンは、レーザー光を吸収して溶融し、液相となる。その後、アモルファスシリコンは、温度が下がって固化する。これにより、多結晶シリコンが得られる。前記レーザー光は200Hzのパルスであり、溶融と固化は1パルスの時間内で終了する。このため、レーザー照射により、1パルス毎に溶融と固化とを繰り返すことになる。基板200を移動させながらレーザー照射することにより、大面積を結晶化できる。特性のバラツキを抑えるため、個々のレーザーパルス光の照射領域を95〜97.5%重ね合わせて照射するとよい(図24のS4)。
この多結晶シリコン層を、フォトリソグラフィー工程(図24のS5)、エッチング工程(図24のS6)により、図25(A)に示すように、ソース、チャネル、ドレインに対応する島状多結晶シリコン層216にパターンニングし、nチャネルTFT領域202、pチャネルTFT領域203、画素部TFT領域204を形成する(ここまでが、図25(A)に対応)。
この後、Poly-Si TFTで最も重要なゲート絶縁膜(図24のS7)の成膜を本実施形態のプラズマ処理装置1を用いて行う。上記ベースコート膜201(図24(A))上に島状多結晶シリコン層216を有する基板200を、温度を350℃にした支持台33にセットする。その後、Arガスと酸素ガスをAr/(Ar+O2)=95%の比率で混合したガスをガス導入口34から処理室6a内に導入して80Paに保つ。2.45GHzの電磁波源2から5kWの電力を投入し、酸素プラズマを立てて、プラズマ酸化を行う。酸素プラズマは、酸素ガスを反応性の高い酸素原子活性種に分解するため、この酸素原子活性種により島状多結晶シリコン層216が酸化され、第1のゲート絶縁膜205としての光酸化膜(SiO2膜)が形成される(図24(B)参照)。このプラズマ処理装置1では、3分間で膜厚約3nmの第1のゲート絶縁膜205を形成することができた(S8)。
次に、プラズマ酸化用のガスを排気し、連続して、第2のゲート絶縁膜206となるSiO2膜を成膜するために、基板温度350℃のまま、TEOSガスを流量30sccm、酸素ガス流量を流量7500sccm、圧力が267Pa(2Torr)となるように処理室6aに導入するとともに、電磁波源2から450Wの電力を投入し、プラズマCVD法によりSiO2膜からなる第2のゲート絶縁膜206を成膜する。このプラズマ処理装置1では、2分間で膜厚30nmの第2ゲート絶縁膜206を形成することができた(S9)。
このプラズマ処理方法によれば、プラズマ酸化による第1のゲート絶縁膜205の成膜工程(S8)及び高密度・低損傷なプラズマCVD法による第2ゲート絶縁膜206の成膜工程(S9)を、連続して真空中で、しかも生産性を落とすことなく行うことができる。また、これにより、半導体(島状多結晶シリコン層216)と第1ゲート絶縁膜205との界面を良好な界面とすることができるとともに、厚くて実用に耐える絶縁膜を速く形成することができる。
この後は、従来と同じ工程によりPoly-Si TFTを形成する。まず、基板200を基板温度350℃で、2時間、窒素ガス中でのアニールにより、SiO2膜からなる第1ゲート絶縁膜205の高密度化を行う(S10)。高密度化処理で、SiO2膜の密度が高くなり、リーク電流、耐圧が向上する。
その後、スパッタ法によりTiをバリア金属として100nm成膜した後、同様にスパッタ法によりAlを400nm成膜した(S11)。このAlからなる金属層を、フォトリソグラフィー法(S12)によりパターニング(エッチング)を行い(S13)、図24(C)に示すように、ゲート電極207を形成する。
その後、フォトリソグラフィー工程でpチャネルTFT250のみをフォトレジスト(図示せず)で覆う(図24のS14)。次に、イオンドーピング法により、ゲート電極207をマスクとして、燐を80keVで6×1015/cm2をnチャネルTFT260のn+ソース・ドレインコンタクト部209にドープする(図24のS15)。
その後、フォトリソグラフィー工程でnチャネルTFT領域202及び画素部TFT領域204のnチャネルTFT260をフォトレジストで覆う(図24のS16)。イオンドーピング法により、ゲート電極207をマスクとして、ボロンを60keV、1×1016/cm2でpチャネルTFT領域203(図25(A)参照)のpチャネルTFT250(図25(C)参照)のP+ソース・ドレインコンタクト部210にドープする(図24のS17)。
その後、上述のように処理した基板200を基板温度350℃で2時間アニールし、イオンドープした燐とボロンを活性化させる(図24のS18)。そして、TEOSガスを用いたプラズマCVD法により、SiO2からなる層間絶縁膜208を成膜する(図24のS19)(図25(C)参照)。
次に、フォトリソグラフィー工程(図24のS20)及びエッチング工程(図24のS21)で、n+ソース・ドレインコンタクト部209及びP+ソース・ドレインコンタクト部210へのコンタクトホールを図25(D)に示すようにパターニングする。そして、Tiをバリア金属(図示せず)として膜厚100nmスパッタした後、Alを膜厚400nmスパッタする(図24のS22)。さらに、フォトリソグラフィー法(図24のS23)及びエッチング工程(図24のS24)により、ソース電極213、ドレイン電極212をパターニングする(図25(D)参照)。
さらに、図25(E)に示すように、プラズマCVD法でSiO2膜からなる保護膜211を膜厚300nm成膜する(図24BのS25)。さらに、画素部TFT領域204(図25(A)参照)のnチャネルTFT260(図25(C)参照)のドレイン電極212を露出させるように、ITOからなる画素電極214(後述する)との接続用のコンタクトホールを、フォトリソグラフィー工程(図24のS26)及びエッチング工程(図24のS27)によってパターニングする。
この後、水素アニール炉内に、窒素ガス流量:水素ガス流量=97:3として混合したガスを略大気圧で流し、基板温度400℃で80分処理する。前記水素プラズマ処理を省略した場合は、前記と同一条件で、1時間処理する必要がある。
その後、別の反応室に移動させ、ITOを150nm成膜する(図24のS29)。ITOをフォトリソグラフィー工程(図24のS30)及びエッチング工程(図24のS31)でパターニングすることにより、画素電極214を形成する。これにより、TFT基板215は完成する(図25(E)参照)。その後、基板検査を行う(図24のS32)。
このTFT基板215及びカラーフィルタ(図示せず)が形成されたガラス基板(図示せず)に対し、ポリイミドを塗布し、ラビングした後、これらの基板を貼り合わせた。その後、この貼り合わせた基板を、各パネルに分断する。
これらのパネルを真空槽に入れ、皿に入れた液晶の中にパネルの注入口を浸し、槽に空気を導入することにより、その圧力で液晶をパネルに注入する。その後、注入口を樹脂で封止することにより、液晶パネルが完成する(図24のS33)。
その後、偏向板の貼り付け、周辺回路、バックライト、ベゼル等の取り付けにより、液晶モジュールが完成する(図24のS34)。
この液晶モジュールは、パソコン、モニター、テレビ、携帯端末等に使用できる。従来のように、ラズマ酸化膜が無く、通常のプラズマCVD法によりSiO2膜を成膜した場合、TFTの閾値電圧は、1.9V±0.8Vであったが、本実施形態のプラズマ処理装置1により、上述のようにプラズマ処理することにより、シリコン酸化膜と多結晶シリコン(島状多結晶シリコン層216)の界面特性と、絶縁膜バルク特性の改善により、TFTの閾値電圧は、1.5V±0.6Vに改善された。また、閾値電圧のバラツキが減少したため、良品率が大きく向上した。さらに、プラズマ酸化膜と、高密度・低損傷なプラズマCVD膜との積層構造により、カバレッジが良く、かつCVD膜の特性がよいため、ゲート絶縁膜の膜質を従来の80〜100nmから、30nmと約1/3に薄くでき、オン電流を約3倍に向上できた。
以上のように、本実施形態のプラズマ処理方法によれば、上述したようなプラズマ処理装置1を用いているため、被処理体100としての基板を良好にプラズマ酸化することができるとともに、良好にプラズマ成膜することができる。なお、本実施形態のプラズマ処理装置1を用いることで、被処理体100としての基板をプラズマエッチングすることも可能である。
なお、本実施形態のプラズマ処理方法は、第7の実施形態で説明したプラズマ処理装置1だけでなく、第1乃至第6の実施形態で説明したプラズマ処理装置1のいずれを用いても、被処理体100としての基板を良好にプラズマ酸化することができるとともに、良好にプラズマ成膜することができる。また、第1乃至第6のプラズマ処理装置1のいずれを用いても、被処理体100としての基板をプラズマエッチングすることができる。
本発明のプラズマ処理装置1及びプラズマ処理方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々に実施することができる。
1…プラズマ処理装置、 2…電磁波源、 3…電磁波分配用導波管、 4…電磁波放射用導波管、 5…スロット板、 5a…スロット、 6…真空容器(処理容器)、 7…電磁波放射窓、 21…給電窓、 23…誘導性壁、 40…チョーク、 41…被覆用の誘電体部材、 46…O−リング(封止手段)