JP2005315779A - 火点放射計測方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ランス先端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出する。
【解決手段】 上吹吹錬法において、
送酸を行うランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度をランスを介して計測し、ランスの下端の送酸孔を含む部分を前記ランスを介して撮影する。
そして、この撮影した画像における送酸孔に相当する部分の形状属性を抽出し、この抽出された形状属性が予め定められた条件を満たすとき、計測された分光放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、製鉄工場における転炉や鍋に収容されている溶銑に対してランスを介して酸素を吹き付けることによって、この溶銑の成分(組成)を目標成分(組成)に調整する上吹吹錬プロセス(工程)に係わり、特に、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光を測定する火点放射計測方法、及び火点放射計測装置に関する。
転炉は、高炉から供給される銑鉄と別途準備されるスクラップ等を主原料とし、これに、石灰等の副原料を加えたのち、上方からランスを介して酸素を吹き付け、溶銑内部に含まれる珪素Siや炭素C等の鉄以外の物質を酸化によって除去し、目標成分(組成)と温度とを有した鋼を精錬して出鋼して、次の鋳造工程へ供給する機能を有している。また、鍋は、転炉に供給される溶銑に対する予備処理を実施している。
このような機能を有した転炉や鍋の実際の運転(操業)において、この転炉や鍋に収容された溶銑に対する吹錬プロセス(工程)期間中において、溶銑に対する断続的なサンプリング実施による溶銑成分、温度の計測を行うことは可能である。
しかし、実際に酸素を吹き付ける吹錬中における溶銑成分の連続的なモニタは困難なため、吹錬開始前の溶銑の成分、温度、溶銑量等と、ランスからの送酸量、ランス位置、送酸時間等から吹錬中の溶銑成分を計算、推定し、運転終了時の溶銑成分が所定の目標成分になるように運転の制御を行い、所定の目標成分に到達したと判断された時点で吹錬を終了している。
このため、吹錬終了時の推定溶銑成分に対して、実際の溶銑成分にはバラツキが発生し、必ずしも想定した目標成分にならず、追加吹錬の実施や成分調整、或いは次工程での処理負荷の増加が発生し、運転時間の増加、運転費用の増加を招いている。
これに対して、吹錬実施中の溶銑成分等をオンラインで連続的に計測し運転を適切に制御する試みが提案されている。
転炉や鍋等の容器内の溶銑の成分を直接オンラインで計測する方法として、特許文献1において、レーザビーム等を容器内の溶銑(溶融金属)に照射して、それに伴う発光の分光分析を行うことにより溶融成分を計測する手法が提唱されている。
また、特許文献2において、レーザ光を用いず、送酸ランスの下方(前方)に生成される火点からの放射光を分光分析して、この分析結果に基づいて溶銑成分を推定する法が提案されている。
さらに、ランスや炉体(炉底等)ノズル等を介して、溶銑自体からの放射光を計測して、溶銑温度をオンラインで計測する方法も、特許文献3に提案されている。
特開昭58―102137号公報 特開昭62−67430号公報 特開昭62−226025号公報
しかしながら上述した各オンラインで転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分を、直接的又は間接的に測定する各手法においてもまだ改良すべき次のような課題があった。
すなわち、特許文献2に記載された火点放射光の分光分析手法においては、ランス内に光ファイバを装入し、ランス先端から入射するランスの下方(前方)に生成される火点からの放射光を検出して、炉外の分光分析装置等に伝播し、検出光の分光分析を行う。
しかし、ランス先端からの入射光のレベルは、例えばランス先端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因により大きく変動し、この火点放射光に対する安定した計測、分析を行うのは困難である。特に、このような外乱要因により入射する光が変動した場合、この変動が、実際の吹錬状態、溶銑状態の変化に伴う光の変動であるか、外乱による変動であるかを判別することができないので、誤計測となる場合がある。
また、溶銑の正確な成分分析を実施する為には溶銑の正確な温度等の情報も必要であり、入射光のレベル変動が大きいと、この点からも運転(操業)中に連続して正確な成分分析を行うのは困難である。
さらに、特許文献2に記載された火点放射光の分光分析手法においては、ランス内への光ファイバの装入、敷設が必要であるため、ランスの構造が複雑となり、ランスの施設内への組込みが複雑化し、保守管理が煩雑になる懸念がある。また、特許文献1に記載された方法においても同様の課題がある。
さらに、特許文献3に記載されたランスや炉体ノズル等を介して溶銑からの放射光を計測し、温度を計測(算出)する方法も、同様な問題点や、溶銑の実効放射率の変動により温度が変動する為、溶銑の正確な温度を計測することは困難であるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、たとえ、ランス先端の送酸孔からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出でき、脱珪、脱炭反応等の吹錬プロセスの進行状態を推定すること、脱珪、脱炭反応の開始、終了や、反応速度の変化等の特定条件への到達、通過等を精度よく検出することができる火点放射計測方法、及び火点放射計測装置を提供することを目的とする。
上記課題を解消するために本発明の火点放射計測方法は、上吹転炉吹錬法において、送酸を行うランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を前記ランスを介して計測し、ランスの下端の送酸孔を含む部分を前記ランスを介して撮影し、この撮影した画像における送酸孔に相当する部分の形状属性を抽出し、この抽出された形状属性が予め定められた条件を満たすとき、計測された分光放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出する。
先ず、このように構成された火点放射計測方法において、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度を求めて、この放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出できる動作原理を説明する。
火点の放射光は、ランスから供給される酸素の酸化により発生する脱珪、脱炭反応等の燃焼、発熱に伴い放射され、その放射光輝度は、火点での脱珪、脱炭の反応状態により変化する。
火点からの放射光輝度は溶銑、溶鋼の状態(温度、重量等)やランスからの送酸条件等によっても変化するが、放射光輝度の時間的な相対変化、すなわち、放射光輝度の時間推移パターンの変化(吹錬開始時における放射光輝度一定の状態から吹錬中途時における輝度が減少又は増加する状態への変化、吹錬終了時における減少又は増加状態から放射光輝度一定状態への変化等)は、主に火点における反応効率により定まると考えられる。
したがって、火点が発する放射光の放射光輝度を計測し、その時間的な相対変化を検出することにより、吹錬プロセスの進行状態を推定すること、あるいは、吹錬プロセスの特定条件への到達或いは通過(脱珪、脱炭反応等の開始、終了や、反応速度の変化等)を検出する事が可能となる。
例えば、溶銑の脱炭処理においては、送酸ランスより酸素を溶銑に吹き付けることにより溶銑中の炭素と供給した酸素を反応させ、CO、CO2を生成し、溶銑の脱炭を行う。この時、溶銑中の炭素濃度が高い場合にはランスを介した送酸量が一定であれば、脱炭反応量はほぼ一定であり、一定の割合で溶銑中の炭素濃度が減少すると考えられるが、溶銑中の炭素濃度が減少すると、一定の送酸を行った場合でも反応効率が低下し、脱炭反応量が減少すると考えられる。
この時、吹錬の進行に伴い、溶銑中の炭素濃度が減少し、脱炭反応量が減少すると、脱炭反応に伴い発生する熱量も減少することになり、火点の放射輝度が減少すると考えられ、火点放射輝度の相対変化を観察することにより、脱炭反応の進行状況を推定することが可能と考えられる。
このように、この発明においては、火点の放射光輝度の各時点における分光分析結果ではなくて、火点の放射光輝度の相対的な時間変化から溶銑の成分の変化を検出するようにしているので、たとえ、ランス先端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出できる。
また、火点における脱珪反応や脱炭反応等の反応の種類に応じて、火点放射輝度の前述した時間変化の顕著な一つ又は複数の波長の分光放射光輝度における時間変化を選択的に観察することにより、分光する前の放射光輝度の時間変化を観察する場合に比較して、溶銑の変化をより適切に、安定して検出することが可能となる。
しかし、計測された分光放射光輝度は、当然、送酸孔から入射する火点放射光全体の光量により変化するため、計測された分光放射光輝度の変化が、外乱要因により入射光量が変化したものか、火点放射輝度自体が変化したものかを判別することは困難となる場合がある。
そこで、本発明では、ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影し、この撮影した送酸孔の形状に基づいて、ランスの下端の送酸孔部ヘのスラグ・メタル付着、ヒューム等の外乱要因を把握して、この外乱要因が計測結果に影響することを防止している。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、抽出された形状属性が予め定められた条件を満たすとき、計測された分光放射光輝度を抽出された形状属性で補正した後、補正後の分光放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出するようにしている。
このように構成された火点放射計測方法においては、送酸孔部の実際の形状はスラグ・メタル付着等に大きく影響される。また、計測された分光放射光輝度は送酸孔部の実質的な形状に応じて変化する。したがって、この計測された分光放射光輝度を撮影した送酸孔の形状属性で補正することによって、溶銑の成分の変化をより正しく検出できる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法における形状属性として面積を採用している。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、ランスの上端部にランスの下端の送酸孔を直接目視可能な開口を設け、この開口を介して、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を計測するとともにランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影するようにしている。
このように構成された火点放射計測方法においては、ランス下端の送酸孔を含む部分をランス上端からランス内側を介して撮影し、かつ送酸孔下方に発生する火点の放射光の分光放射光輝度を計測するので、ランスの構造が簡素化され、ランス及び計測機器の施設内への組込みが簡素化し、保守管理作業が簡単になる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を、線形波長分布フィルタ(LVF:Linear Variable Filter)とライン受光センサにより構成される分光計測センサを用いて計測するようにしている。
このように火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を計測する分光計測センサを線形波長分布フィルタとライン受光センサにより構成することにより、分光計測センサを小型、軽量に構成でき、この分光計測センサを簡単にランスの上端に取付けることが可能となる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、ランスの下端の送酸孔を含む部分を、入射光量調整手段を有するCCDカメラで撮影するようにしている。
このCCDカメラは、通常のカメラに比較して、格段に広い入射光輝度の許容範囲を有するので、上述した発明の作用効果をより一層向上できる。
さらに別の発明の火点放射計測装置は、少なくとも溶銑を収容した容器に上方から送酸を行うランスの上端開口部に設置され、前記ランスの下端の送酸孔下部から前記ランス内を伝搬する光を2つの伝搬経路に分岐する光分岐手段と、この光分岐手段における一方の伝搬経路を用いて、ランス下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度又は分光放射光輝度を計測する受光手段と、光分岐手段における他方の伝搬経路を用いて、ランス下端部の画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段への入射光レベルを調整する手段と、撮影手段にて撮影されたランス下端部の画像を入力し、画像中の送酸孔に相当する部分の形状属性を算出する画像処理手段と、この画像処理手段で算出された形状属性を用いて、前記受光手段で計測された放射光輝度又は分光放射光輝度を補正する輝度補正手段と、この輝度補正手段で補正された放射光輝度又は分光放射光輝度の時間変化に基づいて、溶銑の成分の変化を検出する信号処理手段とを備えている。
このように構成された火点放射計測装置においても、上述した火点放射計測方法とほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
本発明の火点放射計測方法及びその装置においては、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の分光放射光輝度の計測と送酸孔を含む部分の撮影とを実施し、撮影で得られた画像における送酸孔の形状属性が予め定められた条件を満たすとき、計測された分光放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出するようにしている。
したがって、たとえ、ランス下端からの入射光のレベルが、ランス下端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出でき、脱珪、脱炭反応等の吹錬プロセスの進行状態を推定すること、脱珪、脱炭反応の開始、終了や、反応速度の変化等の特定条件への到達、通過等を精度よく検出することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係わる火点放射計測方法及び火点放射計測装置が適用される吹錬プロセスを用いる転炉の模式図である。
容器としての転炉の上端開口を有する炉体1内に溶銑2が収容されている。この炉体1の上方に約7m長のランス3が設けられている。このランス3は、図2の断面模式図に示すように、酸素8が通流する50mm径の内側管3aと、この内側管3aを囲む冷却水10が通流する外側管3bとの二重構造になっており、このランス3の下端に4個の10mm径の送酸孔4a、4b、4c、4が形成されている。なお、この明細書においては4個の送酸孔4a、4b、4c、4dを総称して送酸孔4と称する。
このランス3の下端の送酸孔4の下方に火点5が形成される。このランス3の上端に分岐管6が取付けられており、この分岐管6の一方に酸素8を供給する酸素ホース7が接続されている。また、このランス3の上端近傍に外側管3aに冷却水10を通流させるための一対の冷却水ホース9、11が接続されている。
分岐管6の他方に計測ケース13が取付けられており、この計測ケース13の底壁に、ランス3の下端の送酸孔4を直接目視可能な開口12が形成されている。計測ケース13の開口12の対向位置に、ハーフミラ−14aとミラ−14bとで構成された光学分岐器14が配設されている。光学分岐器14のハーフミラ−14aの対向位置にレンズ15を介してモノクロのCCDカメラ16が取付けられている。光学分岐器14のミラ−14bの対向位置にレンズ17及び光拡散板18を介して分光計測センサ19が取付けられている。
なお、計測ケース13の開口12には、光学分岐器14、レンズ15,17、CCDカメラ16、及び分光計測センサ19を外部の悪環境から保護するための保護ガラスが組込まれている。この保護ガラスは、必要に応じてエアーパージされる。
光拡散板18は、光学分岐器14のミラー14b及びレンズ17を介して入射された、ランス3の下端の送酸孔4の下方の火点5が発する放射光を、放射光分光計測センサ19の受光面に均一に入射させる機能を有する。しかし、この光拡散板18を用いず、直接、放射光を分光計測センサ19の受光面に入射させることも可能である。
この分光計測センサ19は、図3(a)に示すように、線形波長分布フィルタ20(LVF:Linear Variable Filter)と、SSGC(Stainless Steel Grating Collimator)21と、ライン受光センサ22により構成されている。
線形波長分布フィルタ20は、透過波長特性が1次元方向に分布している板形状プリズムであり、図3(a)の下方から均一な光をレンズ17を介して入射すると、線形波長分布フィルタ20の図3(a)におけける横方向に分布する各透過位置に応じた各波長の光が図中上方へ出力する。線形波長分布フィルタ20の各透過位置から出力された各波長の光は、この線形波長分布フィルタ20の上方に配設されたライン受光センサ22を構成する各受光素子に入射される。このライン受光センサ22の各受光素子は、指定された波長の光の強度を電気信号に変換して出力する。
なお、波長間の干渉等の影響を低減するため、線形波長分布フィルタ20とライン受光センサ22との間にSSGC21が挿入されている。
したがって、このように構成された分光計測センサ19は、ランス3の下端の送酸孔4の下方の火点5が発する放射光に対して、図3(b)に示すように分光分析を実施して、各波長における各分光放射光輝度Pを計測して、通信ケーブル23を介して、コンピュータ等の情報処理装置からなる信号処理装置24へ送出する。
分光計測センサ19の特性は、線形波長分布フィルタ20の特性、及びライン受光センサ22の特性により決まり、この実施形態の分光計測センサ19では600nm―1100nmの波長域の分光計測が可能である。なお、他の特性の線形波長分布フィルタ20及びライン受光センサ22を使用し、計測波長域を変更することも可能である。
図4は、分光計測センサ19にて計測した火点5からの放射光の特定波長(1020nm)における分光放射光輝度Pを、吹錬の開始時刻からの時間tを横軸にして示したものである。なお、図中、「KS−1」「KS−2」は吹錬条件の相違を示す。
なお、図4には、吹錬の開始時刻からの各時間tにおいて、炉体1内の溶銑2をサンプリング実施して、溶銑2内の珪素Si、炭素Cの実際の成分比の測定結果も同時に記載されている。
一方、CCDカメラ16は、光学分岐器14のハーフミラー14a及びレンズ15を介して、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分をランス3の内側から撮影し、この撮影した二次元の画像を通信ケーブル25を介して、前述した信号処理装置24へ送出する。
レンズ15は、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分の像を拡大して、CCDカメラ16へ入射する機能を有している。具体的には、ランス長約7m、内側管径50mmのランス3に対し、焦点距離300mmのレンズ15を取付けたCCDカメラ16を採用している。CCDカメラ16で、ランス先端部位置で200×250mm相当の視野範囲を撮影する。そして、ランス3の下端の4個の送酸孔4a〜4dの中心位置が撮影された画像における中央部分に位置するようにCCDカメラ16を光学分岐器14にレンズ15を介して位置決めする。
実施形態の場合、CCDカメラ16で撮影されたランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像における各送酸孔4a〜4dは画像全体に対して1/15以下の寸法となるが、画像上での各送酸孔4a〜4dの形状、状態は判別可能であり、計測処理上は問題ない大きさである。
撮影に用いるレンズ15の焦点距離を長くし、画像上の各送酸孔4a〜4dの寸法を拡大することは可能であるが、実際の転炉の運転(操業)においては、運転に伴う振動等によるランス3自体の曲がり(撓み)等により、CCDカメラ16に対する送酸孔4の相対位置が変位し、送酸孔4が画像の視野外となる可能性があるため、CCDカメラ16の視野範囲を広く設定している。
実施形態では、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を撮影するカメラとして、通常のCCDカメラに対してダイナミックレンジの広いCCDカメラ16(例えばCMOS―CCDカメラ)を使用することも可能である。図5に示すように、従来のカメラがカメラに対する入射輝度と撮像画像中の輝度との関係が線形であるのに対して、CMOS―CCDカメラ16は、高輝度入射時或いは低輝度入射時の画像上の輝度への変換特性が緩やかな特性を有する。このように、CMOS―CCDカメラ16は、広い撮影可能輝度範囲を有するので、特に火点放射光のように、高輝度光が入射、変動した場合でも画像上では飽和が発生せず、適切な送酸孔の画像を得ることが可能である。
なお、従来のCCDカメラとレンズとの組合せにおいて、レンズ絞りの自動調整機構や、シャッタ速度の制御機構を設けることによりカメラヘの入射輝度レベルの調整や、カメラ感度の調整を行い、撮像画像と調整機構での調整量から入射光輝度を算出するものとし、実質的に広い入射光範囲に対応することも可能である。
図6に、ランス3を用いて炉体1内に収容された溶銑2に酸素8を吹き付ける吹錬動作中において、CMOS−CCDカメラ16で撮影したランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像を示す。画像上では送酸孔4部は送酸により発生する火点5からの放射光が入射するため、高輝度領域となる。
また、図7(a)、(b)、(c)、(d)に、ランス3を用いて炉体1内に収容された溶銑2に酸素8を吹き付ける吹錬動作を開始してからの経過時間t=600秒、t=1200秒、t=1500秒、t=1600秒において、CMOS−CCDカメラ16で撮影したランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像を示す。時間経過に伴って、実際の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着に起因して、画像内における送酸孔4に相当する部分の形状、及び面積が変化していることが理解できる。特に、ランス先端への付着が発生した場合、複数の送酸孔4のうち、いくつかについては、画像上で確認不能となることもわかる。
CMOS−CCDカメラ16は、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を連続して撮影し、撮影したランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像を画像(ビデオ)信号として通信ケーブル25を介して信号処理装置24へ送出する。
このような構成の転炉において、炉体1に収納された溶銑2に含まれる珪素Siをランス3から供給される酸素8で酸化して取除く場合を想定する。この場合、ランス3から酸素8の供給時間tと、珪素Siの成分比(濃度)、火点5が発する放射光の分光された複数の分光放射光輝度のうちの検出対象の物質(この実施形態においては珪素Si)にて定まる特定波長の分光放射光輝度Pとの関係は、概略、図8(a)に示すように変化する。
吹錬開始前には、ランスの前方(下方)には火点は生成されないが、ランス前方には高温の溶銑が存在する事から、火点からの放射光輝度に対して相対的に低輝度な放射光が観察される。
吹錬(送酸)を開始すると、ランスより溶銑に吹き付けられる酸素により火点が生成され、火点部分での脱珪反応による放射光が発生するので、吹錬開始直後に放射光輝度が急激に上昇する。
火点生成後、吹錬の進行(珪素成分比の減少)に伴い放射光輝度は増加していくが、吹錬開始後のある時点で、放射光輝度はほぼ一定値を示すようになる。この時、溶銑中の珪素成分比は、微小値になっており、脱珪反応はほぼ終了したと判断される。
なお、図8(a)に示した分光放射光輝度P及び珪素Siの成分比の時間特性は、図4に示す実測値によって実証されている。
そして、信号処理装置24は、吹錬開始時刻から、CMOS−CCDカメラ16から入力される画像、及び分光計測センサ19から入力される火点5が発する放射光の分光放射光輝度Pから、画像にて定まる条件を満たしたとき、この求めた火点5が発する放射光の分光放射光輝度Pの時間変化を監視して、この時間変化から、脱珪反応が発生した事や、脱珪反応が終了した事を検出する。
図9、図10は信号処理装置24の上述した検出動作の一例を示す流れ図である。
図示しない酸素供給源に対して、吹錬開始を指示して、ランス3を介して、炉体1内に収容された溶銑2に対する酸素8の吹き付けを開始する(ステップS1)。その結果、ランス3の下端の送酸孔4の下方に火点5が発生する。
例えば、1秒等の単位時間(サンプリング時間)Δt経過後に(S2)、分光計測センサ19から入力された各波長の分光放射光輝度のうち成分変化の検出対象の物質(この実施形態においては珪素Si)にて定まる特定波長の分光放射光輝度Pを読取る(S3)。同時に、CMOS−CCDカメラ16から入力される画像を読取る(S4)。
次に、今回読取ったランス3の下端の送酸孔4を含む部分の二次元の画像を構成する各画素の輝度を所定の基準値で2値化して、画像中の高輝度部分すなわち送酸孔4に相当する部分の抽出を行う(S5)。ここで、例えば、2値化処理による抽出を行う際の基準値は、予め定めておくか、画像中の最大輝度及び最小輝度等を考慮して決定する。次に、2値化等により抽出された送酸孔4に相当する部分の画像上での面積Aを算出する(S6)。
この算出された送酸孔4に相当する部分の画像上での面積Aが、ランス3の下端の実際の送酸孔4においてスラグ、メタルの付着やヒューム発生が生じていない場合の画像上での基準面積As及び予め定められた範囲ΔAにて定めた許容範囲AS―ΔAに入っているか否かを判断して(S7)、例えば、図7(d)に示すように、面積Aが許容範囲を外れた場合には、今回読取った分光放射光輝度Pは、実際の火点5の分光放射光輝度と大きく離れていると判断して、この分光放射光輝度Pを無効として、破棄する(S8)。そして、S2へ戻り、単位時間Δt経過後に次の分光放射光輝度Pを読取る(S3)。
送酸孔4に相当する部分の画像上での面積Aが、例えば、図7(a)に示すように、許容範囲AS―ΔAに入っている場合(S7)、今回読取った分光放射光輝度Pを画像上での面積Aで補正する(S9)。具体的には、分光放射光輝度Pに、[基準面積As/面積A]を乗算することにより今回の分光放射光輝度P’を得る。この理由は、火点5の分光放射光輝度Pが一定であったとしても、実際の送酸孔4の面積が低下すると、分光計測センサ19に入射する光量が減少し、計測される分光放射光輝度Pは低下するので、この低下分を補償する必要があるからである。
ここで、ランスへの付着が無く、[画像上での基準面積As≒画像上での面積A]の場合、特に補正は行わないものとし、P’=Pとする。
輝度の算出初期値として、図8(b)に示すように、吹錬開始前の放射光輝度をP0とし、初期輝度として記憶しておく。今回の(補正された)分光放射光輝度P'と前回の分光放射光輝度との差△Pを算出する(S10)。
この輝度の差△Pが予め定められた規定値Pa未満の場合(△P<Pa)で(S11)、変化フラグが0の場合には(S13)、分光放射輝度の計測、算出処理を繰り返す。
輝度の差△Pが規定値Pa以上の場合には(S11)、送酸により火点が生成されて脱珪反応が開始したと判断して、脱珪反応開始を出力し(S14)、変化フラグを1に設定する(S15)。変化フラグが1の状態で、△Pが規定値PaとPbとの間にある場合(Pb<△P<Pa)には、分光放射輝度の計測、算出処理を繰り返す。
変化フラグが1の状態で(S13)、△Pが規定値Pb以下となり(S12)、且つ、輝度P’が初期輝度P0以上ある場合には、脱珪反応が終了したものと判断し、脱珪反応終了検知信号を出力し(S16)、変化フラグを0とする(S17)。そして、図示しない酸素供給源に対して吹錬終了を指示して、炉体1内に収容された溶銑2に対する酸素8の吹き付けを終了させる(S18)。
なお、ΔPが規定値Pb以下となった場合であっても、輝度値P’が初期輝度P0と同等値(P’≒P0)の場合には、吹錬が中断(以上終了)したものと判断し、変化フラグを0、初期輝度P0を0とし、判定処理を中断し、初期状態に戻る。
このように構成された火点放射計測方法においては、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を、ランス3の上端に設けられた計測ケース13に収納されたCCDカメラ16でもって、ランス3の内側から撮影する。同時に、ランス3の下端の送酸孔4の下方の火点5の放射光の各波長の分光放射光輝度Pを計測ケース13に収納された分光計測センサ19でもって、ランス3の内側から計測する。
そして、この撮影した図6、図7に示す画像におけ送酸孔4の形状の面積Aを求めて、ランス3の下端の送酸孔4部ヘのスラグ・メタル付着、ヒューム等に起因して、求めた面積Aが、例えば図7(d)に示すように、許容範囲を外れた場合は、測定された分光放射光輝度Pを破棄している。また、求めた面積Aが、例えば、図7(a)に示すように、許容範囲に入っている場合は、求めた分光放射光輝度Pに、[基準面積As/面積A]を乗算して、この分光放射光輝度Pを補正する。そして、この補正後の分光放射光輝度Pの時間変化から溶銑2の成分の変化を検出している。
したがって、ランス3下端の送酸孔4部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因で実際の送酸孔4の形状や面積が変化したとしても、送酸孔4の下方に発生する火点5が発する放射光の分光放射光輝度Pをより正確に求めることができる。
さらに、火点5の放射光のうち一つ又は複数の特定波長における分光放射光輝度Pの時間変化から溶銑2の例えば珪素Siの成分比の変化開始時点、及び溶銑2の例えば珪素Siの成分比が目標成分比に到達した時点を検出するようにしているので、分光する前の放射光輝度の時間変化を観察する場合に比較して、溶銑の変化をより適切に、安定して検出することが可能となる。その結果、たとえ、前述したようにランス3の下端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑2の成分の変化をオンラインで精度よく検出できる。
さらに、CMOS−CCDカメラ16や、線形波長分布フィルタ19とライン受光センサ22により構成される分光計測センサ19を採用することによって、このCMOS−CCDカメラ16や分光計測センサ19を簡単にランス3の上端に取付けることが可能となる。
本発明の一実施形態に係わる火点放射計測方法が適用される吹錬プロセスを用いた転炉の模式図 同実施形態の火点放射計測方法が適用される転炉のランスの構造を示す図 同実施形態の火点放射計測方法で採用される分光計測センサの概略構成及び測定例を示す図 同実施形態の火点放射計測方法で測定される放射光の分光放射光輝度特性(時間特性)を示す図 同実施形態の火点放射計測方法で採用されるCCDカメラの特性を示す図 同CCDカメラで撮影された画像を示す図 同じく同CCDカメラで撮影された画像を示す図 同実施形態の火点放射計測方法の動作原理を説明するための図 同実施形態の火点放射計測方法の動作を示す流れ図 同じく同実施形態の火点放射計測方法の動作を示す流れ図
符号の説明
1…炉体、2…溶銑、3…ランス、4.4a,4b,4c,4d…送酸孔、5…火点、6…分岐管、8…酸素、12…開口、13…計測ケース、14…光学分岐器、15,17…レンズ、16…CCDカメラ、18…光拡散板、19…分光計測センサ、20…線形波長分布フィルタ、21…SSGC、22…ライン受光センサ、23,25…通信ケーブル、24…信号処理装置

Claims (7)

  1. 上吹吹錬法において、
    送酸を行うランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を前記ランスを介して計測し、
    前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を前記ランスを介して撮影し、
    この撮影した画像における送酸孔に相当する部分の形状属性を抽出し、
    この抽出された形状属性が予め定められた条件を満たすとき、前記計測された分光放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出する
    ことを特徴とする火点放射計測方法。
  2. 前記抽出された形状属性が予め定められた条件を満たすとき、前記計測された分光放射光輝度を前記抽出された形状属性で補正した後、補正後の分光放射光輝度の時間変化から前記溶銑の成分の変化を検出することを特徴とする請求項1記載の火点放射計測方法。
  3. 前記抽出された形状属性は面積であることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2記載の火点放射計測方法。
  4. 前記ランスの上端部に前記ランスの下端の送酸孔を直接目視可能な開口を設け、この開口を介して、前記ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を計測するとともに前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の火点放射計測方法。
  5. 前記火点が発する放射光の一つ又は複数波長における分光放射光輝度を、線形波長分布フィルタとライン受光センサにより構成される分光計測センサを用いて計測することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の火点放射計測方法。
  6. 前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を、入射光量調整手段を有するCCDカメラで撮影することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の火点放射計測方法。
  7. 少なくとも溶銑を収容した容器に上方から送酸を行うランスの上端開口部に設置され、前記ランスの下端の送酸孔下部から前記ランス内を伝搬する光を2つの伝搬経路に分岐する光分岐手段と、
    この光分岐手段における一方の伝搬経路を用いて、ランス下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度又は分光放射光輝度を計測する受光手段と、
    前記光分岐手段における他方の伝搬経路を用いて、ランス下端部の画像を撮影する撮影手段と、
    この撮影手段への入射光レベルを調整する手段と、
    前記撮影手段にて撮影されたランス下端部の画像を入力し、画像中の送酸孔に相当する部分の形状属性を算出する画像処理手段と、
    この画像処理手段で算出された形状属性を用いて、前記受光手段で計測された放射光輝度又は分光放射光輝度を補正する輝度補正手段と、
    この輝度補正手段で補正された放射光輝度又は分光放射光輝度の時間変化に基づいて、溶銑の成分の変化を検出する信号処理手段と
    を備えたことを特徴とする火点放射計測装置。
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