JP2005315778A - 火点放射計測方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ランス先端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出する。
【解決手段】上吹吹錬法において、送酸を行うランスの下端の送酸孔を含む部分をランスを介して撮影し、この撮影した画像の輝度分布からランスの下端の送酸孔4の下方に発生する火点5が発する放射光の放射光輝度Sを求め、この求めた放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、製鉄工場における転炉や鍋に収容されている溶銑に対してランスを介して酸素を吹き付けることによって、この溶銑の成分(組成)を目標成分(組成)に調整する上吹吹錬プロセス(工程)に係わり、特に、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光を測定する火点放射計測方法、及び火点放射計測装置に関する。
転炉は、高炉から供給される銑鉄(溶銑)と別途準備されるスクラップ等を主原料とし、これに、石灰等の副原料を加えたのち、上方からランスを介して酸素を吹き付け、溶銑内部に含まれる珪素Siや炭素C等の鉄以外の物質を酸化によって除去し、目標成分(組成)と温度とを有した鋼を精錬して出鋼して、次の鋳造工程へ供給する機能を有している。また、鍋は、転炉に供給される溶銑に対する予備処理を実施している。
このような機能を有した転炉や鍋の実際の運転(操業)において、この転炉や鍋に収容された溶銑に対する吹錬プロセス(工程)期間中において、溶銑に対する断続的なサンプリング実施による溶銑成分、温度の計測を行うことは可能である。
しかし、実際に酸素を吹き付ける吹錬中における溶銑成分の連続的なモニタは困難なため、吹錬開始前の溶銑の成分、温度、溶銑量等と、ランスからの送酸量、ランス位置、送酸時間等から吹錬中の溶銑成分を計算、推定し、運転終了時の溶銑成分が所定の目標成分になるように運転の制御を行い、所定の目標成分に到達したと判断された時点で吹錬を終了している。
このため、吹錬終了時の推定溶銑成分に対して、実際の溶銑成分にはバラツキが発生し、必ずしも想定した目標成分にならず、追加吹錬の実施や成分調整、或いは次工程での処理負荷の増加が発生し、運転時間の増加、運転費用の増加を招いている。
これに対して、吹錬実施中の溶銑成分等をオンラインで連続的に計測し運転を適切に制御する試みが提案されている。
転炉や鍋等の容器内の溶銑の成分を直接オンラインで計測する方法として、特許文献1において、レーザビーム等を容器内の溶銑(溶融金属)に照射して、それに伴う発光の分光分析を行うことにより溶銑成分を計測する手法が提唱されている。
また、特許文献2において、レーザ光を用いず、送酸ランスの下方(前方)に生成される火点からの発光(放射光)を分光分析して、この分析結果に基づいて溶銑成分を推定する法が提案されている。
さらに、ランスや炉体(炉底等)ノズル等を介して、溶銑自体からの放射光を計測して、溶銑温度をオンラインで計測する方法も、特許文献3に提案されている。
特開昭58―102137号公報 特開昭62−67430号公報 特開昭62−226025号公報
しかしながら上述した各オンラインで転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分を、直接的又は間接的に測定する各手法においてもまだ改良すべき次のような課題があった。
すなわち、特許文献2に記載された火点放射光の分光分析手法においては、ランス内に光ファイバを装入し、ランス先端から入射するランスの下方(前方)に生成される火点からの発光(放射光)を検出して、炉外の分光分析装置等に伝播し、検出光の分光分析を行う。
しかし、ランス先端からの入射光のレベルは、例えばランス先端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因により大きく変動し、この火点放射光に対する安定した計測、分析を行うのは困難である。特に、このような外乱要因により入射する光が変動した場合、この変動が、実際の吹錬状態、溶銑状態の変化に伴う光の変動であるか、外乱による変動であるかを判別することができないので、誤計測となる場合がある。
また、溶銑の正確な成分分析を実施する為には溶銑の正確な温度等の情報も必要であり、入射光のレベル変動が大きいと、この点からも運転(操業)中に連続して正確な成分分析を行うのは困難である。
さらに、特許文献2に記載された火点放射光の分光分析手法においては、ランス内への光ファイバの装入、敷設が必要であるため、ランスの構造が複雑となり、ランスの施設内への組込みが複雑化し、保守管理が煩雑になる懸念がある。また、特許文献1に記載された方法にも同様の問題がある。
さらに、特許文献3に記載されたランスや炉体ノズル等を介して溶銑からの放射光を計測し、温度を計測(算出)する方法でも、同様の問題や、溶銑の実効放射率の変動により温度が変動する為、溶銑の正確な温度を計測することは困難であるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、たとえ、ランス先端の送酸孔からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出でき、脱珪、脱炭反応等の吹錬プロセスの進行状態を推定すること、脱珪、脱炭反応の開始、終了や、反応速度の変化等の特定条件への到達、通過等を精度よく検出することができる火点放射計測方法、及び火点放射計測装置を提供することを目的とする。
上記課題を解消するために本発明の火点放射計測方法は、上吹吹錬法において、送酸を行うランスの下端の送酸孔を含む部分をランスを介して撮影し、この撮影した画像の輝度分布からランスの下端の送酸孔の下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度を求め、この求めた放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出するようにしている。
先ず、このように構成された火点放射計測方法において、ランスの下端の送酸孔下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度を求めて、この放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出できる動作原理を説明する。
火点の放射光は、ランスから供給される酸素の酸化により発生する脱珪、脱炭反応等の燃焼、発熱に伴い放射され、その放射光輝度は、火点での脱珪、脱炭の反応状態により変化する。
火点からの放射光輝度は溶銑、溶鋼の状態(温度、重量等)やランスからの送酸条件等によっても変化するが、放射光輝度の時間的な変化、すなわち、放射光輝度の時間推移パターンの変化(吹錬開始時における放射光輝度一定の状態から吹錬中途時における輝度が減少又は増加する状態への変化、吹錬終了時における減少又は増加状態から放射光輝度一定状態への変化等)は、主に火点における反応効率により定まると考えられる。
したがって、火点が発す放射光の放射光輝度を計測し、その時間的な相対変化を検出することにより、吹錬プロセスの進行状態を推定すること、あるいは、吹錬プロセスの特定条件への到達或いは通過(脱珪、脱炭反応等の開始、終了や、反応速度の変化等)を検出する事が可能となる。
例えば、溶銑の脱炭処理においては、送酸ランスより酸素を溶銑に吹き付けることにより溶銑中の炭素と供給した酸素を反応させ、CO、CO2を生成し、溶銑の脱炭を行う。この時、溶銑中の炭素濃度が高い場合にはランスを介した送酸量が一定であれば、脱炭反応量はほぼ一定であり、一定の割合で溶銑中の炭素濃度が減少すると考えられるが、溶銑中の炭素濃度が減少すると、一定の送酸を行った場合でも反応効率が低下し、脱炭反応量が減少すると考えられる。
この時、吹錬の進行に伴い、溶銑中の炭素濃度が減少し、脱炭反応量が減少すると、脱炭反応に伴い発生する熱量も減少することになり、火点の放射輝度が減少すると考えられ、火点放射輝度の相対変化を観察することにより、脱炭反応の進行状況を推定することが可能と考えられる。
このように、この発明においては、火点の放射光輝度の各時点における分光分析結果ではなくて、火点の放射光輝度の相対的な時間変化から溶銑の成分の変化を検出するようにしているので、たとえ、ランス先端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出できる。
さらに、本発明においては、ランス下端の送酸孔を含む部分をランスを介して撮影し、この撮影した画像の輝度分布から、ランス下端の送酸孔の下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度を求めている。したがって、ランス下端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因で撮影した画像における送酸孔部の位置がずれたとしても、送酸孔の下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度をより正確に求めることができる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、ランスの上端部にランスの下端の送酸孔を直接目視可能な開口を設け、この開口を介して、ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影するようにしている。
このように構成された火点放射計測方法においては、ランス下端の送酸孔を含む部分をランス上端からランス内側を介して撮影するので、ランスの構造が簡素化され、ランス及び計測機器の施設内への組込みが簡素化し、保守管理作業が簡単になる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、撮影した画像の輝度分布から、画像における送酸孔に相当する部分を抽出し、この送酸孔に相当する部分の最大輝度又は平均輝度を、この送酸孔に相当する部分の代表輝度として求め、この求めた代表輝度を火点が発する放射光の放射光輝度とする。
このように構成された火点放射計測方法においては、外乱、振動等により撮影位置、撮影方向のズレや、ランス自体の撓み等による変形に起因して、ランス先端の送酸孔の位置と撮影位置との相対位置が変化し、撮影された画像中の送酸孔の位置が変動した場合でも、送酸孔に相当する部分を正確に判別する事ができる。さらに、火点が発する放射光の放射光輝度を送酸孔に相当する部分の最大輝度又は平均輝度としているので、より正確に、かつより安定に火点が発する放射光の輝度を求めることができる。
また別の発明は、上記発明の火点放射計測方法において、抽出した画像における送酸孔に相当する部分の面積に応じて、代表輝度の最大輝度又は平均輝度の算出方法を選択するようにしている。
ランス下端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着の発生等の要因で送酸孔の実際の面積が変化し、撮影した画像の輝度分布から例えば2値化処理等で求めた送酸孔に相当する部分の面積が変化する。
そこで、本発明の火点放射計測方法においては、例えば、面積が小さい場合は得られる火点の放射輝度が低いので最大輝度を代表輝度として採用し、面積が大きい場合は得られる火点の放射輝度が高いので平均輝度を代表輝度として採用している。したがって、送酸孔の状態に左右されず、安定して送酸孔から入射する火点放射輝度を計測することが可能となる。
また別の発明は、上述した発明の火点放射計測方法において、ランスの下端の送酸孔を含む部分をランスを介してカメラで撮影し、この送酸孔を含む部分からカメラに入射する光の輝度をカメラの感度範囲内に収める輝度調整を行うようにしている。
ランスの下端の送酸孔から入射する放射光輝度は火点における反応状態等により大きく変化する。したがって、このように構成された火点放射計測方法においては、送酸孔を含む部分からカメラに入射する光の輝度をカメラの感度範囲内に収める輝度調整を行うので、火点の放射輝度が極端に変動した場合でも、画像中の送酸孔を含む部分(火点からの放射光)が飽和等により、正確な計測、判別ができなくなることが防止される。
また別の発明の火点放射計測装置は、少なくとも溶銑を収容した容器に上方から送酸するために設置されたランスの上端開口部に設定され、ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影する撮影手段と、この撮影手段にて撮影された画像中の送酸孔の輝度を算出する画像処理手段と、算出された送酸孔の輝度の時間変化に基づいて、溶銑の成分の変化を検出する信号処理手段とを備えている。
本発明の火点放射計測方法、及び火点放射計測装置においては、ランス下端の送酸孔を含む部分をランスを介して撮影し、撮影した画像の輝度分布から火点が発する放射光の放射光輝度を求め、求めた放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出すようにしている。
したがって、たとえ、ランス下端からの入射光のレベルが、ランス下端の送酸孔部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑の成分の変化をオンラインで精度よく検出でき、脱珪、脱炭反応等の吹錬プロセスの進行状態を推定すること、脱珪、脱炭反応の開始、終了や、反応速度の変化等の特定条件への到達、通過等を精度よく検出することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係わる火点放射計測方法及び火点放射計測装置が適用される吹錬プロセスを用いる転炉の模式図である。
容器としての転炉の上端開口を有する炉体1内に溶銑2が収容されている。この炉体1の上方に約7m長のランス3が設けられている。このランス3は、図2の断面模式図に示すように、酸素8が通流する約50mm径の内側管3aと、この内側管3aを囲む冷却水10が通流する外側管3bとの二重構造になっており、このランス3の下端に4個の10mm径の送酸孔4a、4b、4c、4が形成されている。なお、この明細書においては4個の送酸孔4a、4b、4c、4dを総称して送酸孔4と称する。
このランス3の下端の送酸孔4の下方に火点5が形成される。このランス3の上端に分岐管6が取付けられており、この分岐管6の一方に酸素8を供給する酸素ホース7が接続されている。また、このランス3の上端近傍に外側管3aに冷却水10を通流させるための一対の冷却水ホース9、11が接続されている。
分岐管6の他方に計測ケース13が取付けられており、この計測ケース13の底壁に、ランス3の下端の送酸孔4を直接目視可能な開口12が形成されている。計測ケース13の開口12の対向位置にレンズ14を介してモノクロのCMOS―CCDカメラ15が取付けられている。CMOS―CCDカメラ15は、レンズ14及び開口12を介して、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分をランス3の内側から撮影し、この撮影した二次元の画像を通信ケーブル16を介して、コンピュータ等の情報処理装置からなる信号処理装置17へ送出する。
なお、計測ケース13の開口12には、レンズ14及びCMOS―CCDカメラ15を外部の悪環境から保護するための保護ガラスが組込まれている。この保護ガラスは、必要に応じてエアーパージされる。
レンズ14は、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分の像を拡大して、CMOS―CCDカメラ15へ入射する機能を有している。具体的には、ランス長約7m、内側管径50mmのランス3に対し、焦点距離300mmのレンズ14を取付けたCMOS―CCDカメラ15を採用している。CMOS―CCDカメラ15で、ランス先端部位置で200×250mm相当の視野範囲を撮影する。そして、ランス3の下端の4個の送酸孔4a〜4dの中心位置が撮影された画像における中央部分に位置するようにCMOS―CCDカメラ15を開口12にレンズ14を介して位置決めする。
実施形態の場合、CMOS―CCDカメラ15で撮影されたランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像における各送酸孔4a〜4dは画像全体に対して1/15以下の寸法となるが、画像上での各送酸孔4a〜4dの形状、状態は判別可能であり、計測処理上は問題ない大きさである。
撮影に用いるレンズ14の焦点距離を長くし、画像上の各送酸孔4a〜4dの寸法を拡大することは可能であるが、実際の転炉の運転(操業)においては、運転に伴う振動等によるランス3自体の曲がり(撓み)等により、CMOS―CCDカメラ15に対する送酸孔4の相対位置が変位し、送酸孔4が画像の視野外となる可能性があるため、CMOS―CCDカメラ15の視野範囲を広く設定している。
実施形態においては、ランス3の上端の計測ケース13の底壁に設けた開口12にレンズ14を介してCMOS―CCDカメラ15を設置し、このCMOS―CCDカメラ15でランス3の下端の送酸孔4を含む部分の撮影を行った。しかし、このCMOS―CCDカメラ15の大きさがランス3の内側管3a内に対する送酸上問題がない大きさであれば、このCMOS―CCDカメラ15をランス3内に挿入して撮影を行うことも可能である。
さらに、レンズ及び光ファイバにより構成される伝送光学系をランス3内に挿入し、ランス3外のCMOS―CCDカメラに接続し、このCMOS―CCDカメラで撮影を行うことも可能である。また、ランス3の上端に直接開口12を形成し、この開口12にレンズ及び光ファイバにより構成される伝送光学系のみを取付け、遠隔位置に設置したCMOS―CCDカメラに接続し、このCMOS―CCDカメラで撮影を行うことも可能である。
実施形態では、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を撮影するカメラとして、通常のCCDカメラに対してダイナミックレンジの広いCMOS―CCDカメラ15を使用した。図3に示すように、従来のCCDカメラがカメラに対する入射輝度と撮像画像中の輝度との関係が線形であるのに対して、CMOS―CCDセンサ15は、高輝度入射時或いは低輝度入射時の画像上の輝度への変換特性が緩やかな特性を有する。このように、CMOS―CCDカメラ15は、広い撮影可能輝度範囲を有するので、特に火点放射光のように、高輝度光が入射、変動した場合でも画像上では飽和が発生せず、入射光の輝度を計測することが可能である。
なお、実施形態では、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を撮影するカメラとして、CMOS―CCDカメラ15を採用したが、従来のCCDカメラとレンズの組合せにおいて、レンズ絞りの自動調整機構や、シャッタ速度の制御機構を設けることによりカメラヘの入射輝度レベルの調整や、カメラ感度の調整を行い、撮像画像と調整機構での調整量から入射光輝度を算出するものとし、実質的に広い入射光範囲に対応することも可能である。
図4に、ランス3を用いて炉体1内に収容された溶銑2に酸素8を吹き付ける吹錬動作中において、CMOS―CCDカメラ15で撮影したランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像を示す。画像上では送酸孔4部は送酸により発生する火点5からの放射光が入射するため、高輝度領域となる。CMOS―CCDカメラ15は、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を連続して撮影し、撮影したランス3の下端の送酸孔4を含む部分の画像を画像(ビデオ)信号として信号処理装置17へ送出する。
このような構成の転炉において、炉体1に収納された溶銑2に含まれる珪素Siをランス3から供給される酸素8で酸化して取除く場合を想定する。この場合、ランス3から酸素8の供給時間tと、珪素Siの成分比(濃度)、火点5が発する放射光の放射光輝度Sとの関係の例を図5(a)に示す。
すなわち、吹錬開始前には、ランスの前方(下方)には火点は生成されないが、ランス前方には高温の溶銑が存在する事から溶銑からの放射光が観察される。
吹錬(送酸)を開始すると、ランスより溶銑に吹き付けられる酸素により火点が生成され、火点部分での脱珪反応による放射光が発生するので、吹錬開始直後に放射光輝度が急激に上昇する。その後、脱珪反応の進捗に伴い放射光輝度は徐々に上昇する。吹錬の進行に伴い、溶銑中の珪素成分比が減少し、ある値以下となると、放射光輝度の増加速度が上昇する。
吹錬が進行し、さらに脱珪反応が進行すると、放射光輝度はさらに上昇していくが、脱珪反応が終了し、溶銑中の珪素成分比が微小値となると、放射光輝度はほぼ一定値を示すようになる。
これらの図5(a)に示す放射光輝度の時間変化特性の変化から、特定の珪素成分比への到達や、脱珪反応の終了を検出することが可能となる。
また、図5(a)に示す時間変化特性の関係は、図8に示す実測値により証明されている。なお、図8の実測値は特定の操業条件下における結果であり、送酸条件や溶銑中の他成分(炭素等)の成分比率等の吹錬条件によって放射光輝度と珪素成分比との関係は変化する場合もある事から、操業条件等に対する火点放射輝度の時間変化特性の差異をあらかじめ把握し、適切な時間変化特性の変化の検出処理を行う必要がある。
そして、信号処理装置17は、吹錬開始時刻からCMOS−CCDカメラ15から入力される画像から、火点5が発する放射光の放射光輝度を求め、この求めた火点5が発する放射光の放射光輝度の時間変化を監視して、この時間変化から、脱珪反応の開始したこと、及び脱珪反応の終了を検出する。
図6は信号処理装置17の上述した検出動作を示す流れ図である。
図示しない酸素供給源に対して、吹錬開始を指示して、ランス3を介して、炉体1内に収容された溶銑2に対する酸素8の吹き付けを開始する(ステップS1)。その結果、ランス3の下端の送酸孔4の下方に火点5が発生する。そして、CMOS−CCDカメラ15から入力される画像に図4に示すランス3の下端の送酸孔4を含む部分が現れることを確認する。画像に送酸孔4が現れないと、CMOS−CCDカメラ15に対して、輝度レベル調整信号を送出して、画像に送酸孔4が現れるように、CMOS−CCDカメラ15の感度を調整する(S2)。
例えば、1秒等の単位時間(サンプリング時間)Δt経過後に(S3)、CMOS−CCDカメラ15から入力される画像を読取る(S4)。次に、今回読取った画像の代表の放射光輝度Sの算出処理を実施する(S5)。
図7は、この代表放射光輝度の算出処理を示すサブルーチンである。今回読取った画像中の最大輝度及び最小輝度を求め(Q1)、あらかじめ設定した基準値との比較を行う。最大輝度値が基準値より小さい場合、或いは最小輝度値が基準値より大きい場合(Q2)には、正常な火点放射光が撮像されていないものと判断し、処理を終える(Q8)。
次に、2値化処理等により画像中の高輝度部分すなわち送酸孔4に相当する部分の抽出を行う(Q3、Q4)。ここで、例えば、2値化処理による抽出を行う際の基準値は、あらかじめ定めておくか、画像中の最大輝度及び最小輝度等を考慮して決定する。次に、2値化等により抽出された送酸孔4に相当する部分の画像上での面積を算出し、さらに、送酸孔4に相当する部分を構成する画像画素毎の輝度を算出する(Q5)。
この時、画像中に複数の高輝度部分が存在する場合には、高輝度部分の位置、大きさから送酸孔4であるかどうかを判断する。判断基準としては、あらかじめ確認可能な画像上の送酸孔4の想定位置及び想定面積(あるいは、前回処理時の送酸孔4の位置及び面積)に最も近いものを送酸孔4として判断する。
次に、送酸孔4に相当する部分の画像上の面積をあらかじめ設定した基準値と比較し(Q6)、基準値に対して面積が小さい場合或いは基準値に対して極端に面積が大きい場合には、スラグやメタルの付着等による送酸孔4の閉塞、入射輝度減少や画像の一時的な変動等が発生しているものとして、輝度レベル算出を行わず、処理を終える(Q8)。
次に、抽出した送酸孔4に相当する部分の各画素の輝度を用いて、送酸孔4に相当する部分の最大輝度或いは平均輝度を算出する。そして、抽出した送酸孔4に相当する部分の面積が規定値より大きい場合には平均輝度をこの抽出した送酸孔4に相当する部分の代表の放射光輝度Sとする。また、抽出した送酸孔4に相当する部分の面積が規定値より小さい場合には最大輝度をこの抽出した送酸孔4に相当する部分の代表の放射光輝度Sとする(Q7)。
なお、代表の放射光輝度Sの算出は、上述したように、酸孔部分(高輝度部分)の最大値を算出する方法、送酸孔部分の平均値を算出する方法等が考えられるが、実際の火点放射光の変動との対応が得られるのであれば、どのような処理でも構わない。
代表の放射光輝度Sの算出が終了すると、このサブルーチンを終了して(Q8)、図6のS6へ戻る。
図6のS5にて、正常な代表の放射光輝度Sが求まると、今回求めた代表の放射光輝度Sと前回、前々回求めた代表の放射光輝度Sとの移動平均を算出して、この移動平均を新たに今回の放射光輝度Sとする(S6)。このように移動平均を採用することによって、放射光輝度Sに含まれる雑音成分を低減できる。
図5(b)に示すように、輝度の算出初期において、吹錬開始前の放射光輝度SをS0とし、初期輝度として記憶しておく。今回の放射光輝度Sと移動平均された前回の放射光輝度との差ΔSを算出する(S7)。
この輝度の差△Sが図5(b)に示す予め定められた規定値Sa未満の場合(△S<Sa)や(S8)、△Sが予め定められた規定値SbとSc間にある場合(Sc<△S<Sb)や、△Sが規定値Sc以下或いは△Sが規定値Sb以上で(S9)、かつ変化フラグ1が0の場合には(S10)、S3へ戻り、画像取り込み処理と画像からの輝度算出処理を繰り返す。各規定値Sa、Sb、Scの大小関係は、図5(b)に示すように、Sc<Sb<Saである。
S8にて、輝度の差△Sが規定値Sa以上の場合には、送酸により火点が生成された脱珪反応が開始したと判断し、脱珪反応開始信号を出力し(S11)、変化フラグ1を1に設定する(S12)。なお、変化フラグ1が1の状態で、△Sが規定値SbとSc間にある場合(Sc<△S<Sb)には輝度算出処理を繰り返す。
S10にて、変化フラグ1が1の状態で、輝度の差△Sが規定値Sc以下となり、さらに輝度値が初期輝度S0と同等値(S≒S0)と成った場合には、吹錬が中断(以上終了)したものと判断し、変化フラグ1を0、初期輝度S0を0とし、判定処理を中断し、初期状態に戻る。
また、S10にて、変化フラグ1が1の状態で、輝度の差ΔSがSb以上となった場合には、特定計測成分比に到達(通過)したものと判断し、変化フラグ2を1とするとともに、特定成分比到達検知信号を出力する(S13)。変化フラグ1及び2が1の状態で、輝度の差△SがSc以下となり、且つ、輝度Sが初期輝度S0以上ある場合には、脱珪反応が終了したものと判断し、変化フラグ1及び2を0とするとともに、脱珪反応終了検知信号を出力する。
そして、図示しない酸素供給源に対して吹錬終了を指示して、炉体1内に収容された溶銑2に対する酸素8の吹き付けを終了させる(S15)。
図8は、信号処理装置17で前述した最大値の計算手法を用いて算出された火点5の放射光輝度Sを、吹錬の開始時刻からの時間tを横軸にして示したものである。なお、図8には、吹錬の開始時刻からの各時間tにおいて、炉体1内の溶銑2をサンプリング実施して、溶銑2内の珪素Siの実際の成分比の測定結果も同時に記載されている。
このように構成された火点放射計測方法においては、ランス3の下端の送酸孔4を含む部分を、ランス3の上端に設けられた計測ケース13に収納されたCMOS−CCDカメラ15でもって、ランス3の内側から撮影し、信号処理装置17において、この撮影した画像の輝度分布からランス下端の送酸孔4の下方に発生する火点5が発する放射光の放射光輝度Sを求めている。したがって、ランス3下端の送酸孔4部へのスラグ、メタルの付着やヒューム(煙)の発生等の外乱要因で撮影した画像における送酸孔部の位置がずれたとしても、送酸孔4の下方に発生する火点5が発する放射光の放射光輝度Sをより正確に求めることができる。
さらに、火点5の放射光輝度Sの時間変化から溶銑2の例えば珪素Siの成分比の変化開始時点、及び溶銑2の例えば珪素Siの成分比が目標成分比に到達した時点を検出するようにしているので、たとえ、前述したようにランス3の下端からの入射光のレベルが外乱要因により大きく変動したとしても、転炉や鍋等の容器内に収容された溶銑2の成分の変化をオンラインで精度よく検出できる。
なお、上述した実施形態の火点放射計測方法においては、溶銑2の監視対象の成分を珪素Siとしたが、溶銑2の監視対象の成分を炭素Cとすることも可能である。この場合、図5の放射光輝度Sの時間変化特性、及び成分比の時間変化特性を、それぞれ、炭素Cに対応する時間変化特性に変更する必要がある。
さらに、実施形態においては、代表の放射光輝度Sを求める画像処理として、図7に示す処理を行ったが、同等の結果が得られるのであれば処理の手順等は異なっていても問題はない。運転(操業)条件、画像撮像条件によっては、単純な画像中の最大輝度の検出や、画像中の一定位置の輝度を算出する等の簡素な処理で火点5の放射光輝度Sの変化の計測、監視を行うことも可能であり、処理負荷を低減することが可能である。
本発明の一実施形態に係わる火点放射計測方法及び火点放射計測装置が適用される吹錬プロセスを用いた転炉の模式図 同実施形態の火点放射計測方法が適用される転炉のランスの構造を示す図 同実施形態の火点放射計測方法で採用されるCMOS−CCDカメラの特性を示す図 同CMOS−CCDカメラで撮影された画像を示す図 同実施形態の火点放射計測方法の動作原理を説明するための図 同実施形態の火点放射計測方法の動作を示す流れ図 同じく同実施形態の火点放射計測方法の動作を示す流れ図 同実施形態の火点放射計測方法で測定される放射光の輝度特性(時間特性)を示す図
符号の説明
1…炉体、2…溶銑、3…ランス、4.4a,4b,4c,4d…送酸孔、5…火点、6…分岐管、8…酸素、12…開口、13…計測ケース、14…レンズ、15…CMOS−CCDカメラ、16…通信ケーブル、17…信号処理装置

Claims (6)

  1. 上吹吹錬法において、
    送酸を行うランスの下端の送酸孔を含む部分を前記ランスを介して撮影し、
    この撮影した画像の輝度分布から前記ランスの下端の送酸孔の下方に発生する火点が発する放射光の放射光輝度を求め、
    この求めた放射光輝度の時間変化から溶銑の成分の変化を検出する
    ことを特徴とする火点放射計測方法。
  2. 前記ランスの上端部に前記ランスの下端の送酸孔を直接目視可能な開口を設け、この開口を介して、前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影することを特徴とする請求項1記載の火点放射計測方法。
  3. 前記撮影した画像の輝度分布から、前記画像における送酸孔に相当する部分を抽出し、
    この送酸孔に相当する部分の最大輝度又は平均輝度を、この送酸孔に相当する部分の代表輝度として求め、
    この求めた代表輝度を前記火点が発する放射光の放射光輝度とする
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の火点放射計測方法。
  4. 前記抽出した前記画像における送酸孔に相当する部分の面積に応じて、前記代表輝度の最大輝度又は平均輝度の算出方法を選択することを特徴とする請求項3記載の火点放射計測方法。
  5. 前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を前記ランスを介してカメラで撮影し、
    この送酸孔を含む部分から前記カメラに入射する光の輝度を前記カメラの感度範囲内に収める輝度調整を行う
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の火点放射計測方法。
  6. 少なくとも溶銑を収容した容器に上方から送酸するために設置されたランスの上端開口部に設定され、前記ランスの下端の送酸孔を含む部分を撮影する撮影手段と、
    この撮影手段にて撮影された画像中の送酸孔の輝度を算出する画像処理手段と、
    前記算出された送酸孔の輝度の時間変化に基づいて、溶銑の成分の変化を検出する信号処理手段と
    を備えたことを特徴とする火点放射計測装置。
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