JP2005311151A - 格子整合トンネルダイオードの製造方法および格子整合トンネルダイオード - Google Patents

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Abstract

【課題】不純物を高濃度でドープしても、格子定数の変化が少ない結晶を成長させ、格子欠陥の少ない良質な薄膜を有する格子整合トンネルダイオードの製造方法および格子整合トンネルダイオードを提供する。
【解決手段】格子整合トンネルダイオードの製造方法において、二元または三元のIII −V族化合物半導体基板上にIV族元素からなる両性不純物を添加することによりp型半導体層を形成する工程と、引き続いて前記p型半導体層表面にAuとIV族元素からなる両性不純物を成分とする金属合金を同時蒸着する工程と、引き続いて熱処理する工程とを施し、当該p型半導体層の一部をn型半導体層に変換してpn接合を形成する。
【選択図】図5

Description

本発明は、格子整合トンネルダイオードの製造方法およびそれによって製造される格子整合トンネルダイオードに関するものであり、このトンネルダイオードは、1GHzから100GHz帯のマイクロ波周波数帯で動作する発振デバイスであり、携帯電話等の無線通信に利用される。
従来、マイクロ波周波数で動作するデバイスとしては、ショットキー・ゲートバイアスにより電流変調させる金属ショットキー電界効果トランジスタ、半導体中の電荷の衝突によるイオン化と走行時間効果を利用したインパッドダイオード、III −V族化合物半導体の伝導帯における電子遷移効果を用いたガンダイオードや順方向にバイアスされた不純物を高濃度でドープしたpn接合におけるトンネル効果を利用したトンネルダイオード等(下記特許文献1,2)がある。
特開平6−069520号公報 特開平8−274376号公報 L.Pauling,The Nature of the Chemical Bond,3rd ed.,p.205,Cornell University Press,1960
しかしながら、金属ショットキー電界効果トランジスタをGaAs(砒化ガリウム)等の化合物半導体で作製すると、半導体の表面準位密度が高いために1/f雑音が高くなる問題があった。インパッドダイオードはなだれ増倍過程の不規則な揺らぎのために雑音が大きくなる。
一方、トンネルダイオードは空乏層が狭く、トンネル効果を用いているために殆どショット雑音しかなく、両側の抵抗も非常に低いので直列抵抗による抵抗雑音も十分低い。また、短絡安定型であり、消費電力を小さくできることやダイナミックレンジを大きくできる特徴があるため、金属ショットキー電界効果トランジスタやインパッドダイオードよりもマイクロ波デバイスとして有望である。
しかし、一方で、III −V族化合物半導体を用いたトンネルダイオードはバレー電流の劣化が大きく、安定性が問題とされてきた。これは、p型不純物として主にZn(亜鉛)が用いられていることによる。例えば、III −V族化合物の一つであるGaAsにおいて、当該化合物を構成するGa(ガリウム)とAs(砒素)の四面体配位共有結合半径が上記非特許文献1によれば、それぞれ1.26Åと1.18Åであるのに対して、Znは1.31Åである。このように、ZnはGaとAsに比べて四面配位共有結合半径が大きいために、過剰なZnがGaAsに混入すると欠陥を生じさせる。
また、n型不純物として例えばSn(錫)を用いた場合には、Snの四面体配位共有結合半径は1.40Åであり、Znの値よりもさらに大きいため、pn接合界面で格子不整合に起因した欠陥が形成される。n型不純物として、四面体配位共有結合半径がGaAsの構成元素であるGaとAsよりも大きなTe(テルル)、またはGaとAsより小さなSe(セレン)を添加(ドープ)した場合にもSnをドープした場合と同様の結果となる。
このように、欠陥が多いと熱励起電流が大きくなるため、トンネル電流のピーク/バレー比率が小さくなり、素子が不安定となる。また、これらの不純物を高濃度にドープして急峻な不純物濃度分布をもつp+ + 接合を作製することにより、動作の初期にはトンネル効果を示すダイオード特性が得られたとしても、引き続き動作させた場合には短時間でトンネル効果を示す特性が消滅してしまう問題があった。これは、動作中にpn接合部の不純物濃度分布が緩やかになったためと考えられる。
III −V族化合物半導体としてGaP(リン化ガリウム)を用いて作製したトンネルダイオードにおいても、p型不純物としてZn、n型不純物としてSn,Te,Seの内の少なくとも一つをドープした場合には、P(リン)の四面体配位共有結合半径が、1.10Åであるため、GaAsの場合と同様に、pn接合部に格子不整合が生じるために特性の劣化が生じる。
本発明は、上記状況に鑑みて、不純物を高濃度でドープしても、格子定数の変化が少ない結晶を成長させ、格子欠陥の少ない良質な薄膜を有する格子整合トンネルダイオードの製造方法および格子整合トンネルダイオードを提供することを目的とする。
本発明においては、p層とn層に同じ不純物をドープする。
ここでは、GaAsトンネルダイオードの製造方法について説明する。p層とn層にドープする両性不純物としてはGe(ゲルマニウム)を用いる。Geの四面体配位共有結合半径は、Gaよりは小さくAsよりは大きい1.22Åであるため、Geを高濃度でドープしても格子定数の変化は小さい。
そこで、最初にGaを溶媒として液相エピタキシャル成長法を用いてGeをドープしたp型GaAs層を形成する。これは、Ga溶媒を用いると、成長溶液中のGa成分が過剰にあるため、GaAs成長層中にドープされるGe不純物は結晶格子のGaサイトに比べてAsサイトに多く入るためである。
次に、Au−Ge(金−ゲルマニウム)合金電極を蒸着し、450℃で熱処理することで、p型GaAs層の一部をn型GaAs層に変換する。その原理としては、まず、熱処理により、蒸着されたAu−Ge合金が溶融し、これにGaAsの一部が溶解する。そして、この溶解により生じた液相中のGa成分とAs成分がほぼ等しいため、冷却により生じるGaAs再結晶層中に取り込まれるGe不純物は、結晶格子のAsサイトに比べてGaサイトに多く入る。そのためGaAs再結晶層はn型となる。すなわち、GaAsのGa格子点にGeが置換された結果、p型GaAs層の一部がn型GaAs層に変換され、pn接合が形成される。
この方法によれば、Geを高濃度でドープしてもGaAsは格子定数が変化しないため、p層とn層の格子定数を一致させることが可能であり、格子整合したp+ + 接合を形成できる。そしてp+ + 接合のp+ 層とn+ 層の両方に同じGeがドープされているので不純物の相互拡散は無視できる程少なく、そのためpn接合部におけるアクセプタとドナーの濃度分布は安定で急峻な状態を維持できる。さらに、Au−Ge合金は面状にもどんなパターン状にも蒸着できるので、合金ドットを乗せてアロイするのに比べて任意の形状が容易に形成できる特徴を有する。
同様の方法で、他の化合物半導体を用いたトンネルダイオードも製造できる。たとえば液相エピタキシャル法で、Gaを溶媒とし、両性不純物としてSi(シリコン)をドープしたp型GaP層を成長し、この層の表面にAu−Si(金−シリコン)合金を蒸着後、熱処理することによりp型GaP層の一部をn型GaP層に変換し、pn接合を作製できる。Siの四面体配位共有結合半径は1.17Åであり、Gaの値1.26Åよりも小さく、Pの値1.10Åよりも大きいため、GaPにSiを高濃度でドープしても格子定数の変化は小さい。そのため、GaPに両性不純物としてSiをドープすることにより、格子整合したトンネルダイオードを製造することができる。
本発明について概略すると以下のようになる。
まず、III −V族化合物半導体への添加不純物として、四面体配位共有結合半径が化合物を構成するIII 族元素とV族元素との間の値をもつIV族元素を選ぶ。次に、III −V族化合物を構成するIII 族元素を溶媒として用い、それに所定量のIII −V族化合物及びIV族元素を溶質とした溶液を所定の温度でIII −V族化合物半導体結晶基板に接触させて徐冷させる。この徐冷によって液晶エピタキシャル成長用溶液中で過飽和になった溶質(III −V族化合物半導体)が当該基板上に析出してエピタキシャル成長層を形成する。そのとき液晶エピタキシャル成長用溶液中に含まれるIII 族元素成分が過剰であるから、IV族の両性不純物原子は結晶のIII 族サイトに比べてV族サイト側に多く入りやすいため、所定のアクセプタ濃度を持つp型層をエピタキシャル成長させることができる。勿論、成長温度および冷却速度は適宜選ぶ必要がある。
このようにして得られたp型層の表面に、使用するIII −V族化合物半導体の構成元素以外の成分からなる金属に両性不純物であるIV族不純物を適宜添加した材料を蒸着し熱処理により合金化することにより、n型の再結晶層が得られる。その結果、急峻な不純物濃度分布をもつp+ + 接合が製作できる。
勿論、このn型層は上記の蒸着合金法以外の方法でも製作できる。例えば、上記の液相エピタキシャル成長法で得たIV族元素の両性不純物を高濃度にドープしたp型成長層表面に、適当な方法、例えばイオン注入法でIV族元素の両性不純物を注入してp型領域の一部をn型に変換する方法や、p型成長層表面上に気相成長法でIV族元素の両性不純物をドープしたn型層を成長させる方法などを用いても、pn接合が形成できる。
(1)不純物濃度が高くても格子欠陥の少ない良質な半導体薄膜を成長できるため、バレー電流の劣化が小さく、安定なトンネルダイオードを製造することができる。
(2)トンネルダイオードの特徴である雑音を低下させるとともに、消費電力を低く、ダイナミックレンジを広くできることで、マイクロ波デバイスとしてのトンネルダイオードの復活が期待できる。
格子整合トンネルダイオードの製造方法において、二元または三元のIII −V族化合物半導体基板上にIV族元素からなる両性不純物を添加することによりp型半導体層を形成する工程と、引き続いて前記p型半導体層表面にIII −V族元素以外の成分からなる金属(Au)とIV族元素からなる両性不純物を成分とする金属合金を同時蒸着する工程と、引き続いて熱処理する工程とを施し、当該p型半導体層の一部をn型半導体層に変換してpn接合を形成し、格子整合トンネルダイオードを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明においては、まず、液相エピタキシャル成長法を用いてIII −V族化合物半導体基板上に両性不純物であるIV族元素をドープして、高濃度にアクセプタを含むp型層を成長させる。ここでは、GaAs半導体基板上にGeをドープしたp型層をエピタキシャル成長させる場合を例にとって説明する。
まず、エピタキシャル成長装置の概略について説明する。
図1は本発明の実施例を示す液層エピタキシャル成長法により、GeドープGaAs層を成長するために用いた成長装置の主要部の一例を示す断面模式図である。
この図において、20は高純度カーボン製のボート(以下、カーボンボートと略称する)であり、このカーボンボート20は固定されたホルダー部18と移動可能なスライダー11から構成されている。12はGaAs半導体基板、13はGa−As−Ge成長用溶液、14はその成長用溶液13の飽和補償用のGaAs原料結晶、15は石英管である。また、この石英管15内にはパラジウム膜を透過させることにより精製した高純度水素ガスH2 が供給されている。なお、図1に示すように、カーボンボート20のホルダー部18にはGa−As−Ge成長用溶液13と飽和補償用のGaAs原料14を設置するための溶液溜を備えている。
さらに、16はスライダー11を動かすための石英製操作棒である。また、17は温度を計測するサーモカップルである。図1には示されていないが、石英管15は管状電気炉中に設置されており、成長装置の主要部を所定の温度に加熱できるようになっている。
次に、エピタキシャル成長の手順を簡単に説明する。
(1)まず、GaAs半導体基板12用として、適当な面方位、例えば(100)を持つGaAs半導体ウエハを準備する。勿論面方位は(100)以外でも差し支えない。また、このGaAs半導体基板12の導電型はn型、p型の何れでも良いが、ここでは半絶縁性の基板を所要の大きさにカットして用いた。また、Ga−As−Ge成長用溶液13の飽和補償用として、この成長用溶液13の下側にGaAs原料結晶14を入れた。本実施例ではGaAs原料結晶14としてアンドープのGaAs多結晶を用いた。なお、GaAs半導体基板12、およびGaAs原料結晶14は成長用カーボンボート20内に設置前に、通常行われているエッチングおよび洗浄等の方法で前処理してある。
また、Ga−As−Ge成長用溶液13は、成長温度でGaAs溶質をGa溶媒に飽和溶解させたものに両性不純物であるGeを適量添加したものでよいが、本実施例ではGa−As−Ge三元状態図をもとに、900℃で飽和溶液となるように調整した。具体的には、Ga(純度:6N)を15g、GaAs多結晶(純度:6N)を2.4g、Ge(純度:6N)を2.0gそれぞれ秤量した後、エッチング、洗浄、乾燥処理したものを石英アンプルに真空封じして、950℃に加熱し、当該溶液の組成が十分均一になるように攪拌混合した後、室温まで急冷した。そして、石英アンプルから取り出して、Ga−As−Ge成長用溶液13として、図1に示すように、成長用カーボンボート20のホルダー部18に設けた溶液溜内に設置した。
図2は、本発明の実施例を示すGeドープp型GaAs層のエピタキシャル成長に用いた温度プログラムの一例を示す図である。
この図に示すように、電気炉を用いて900℃に昇温後、その温度で3時間保持して、Ga−As−Ge成長用溶液13がその温度で十分飽和状態に達した後、冷却速度0.1℃/分で徐冷し、3℃冷却したところで石英操作棒16を操作してスライダー11を動かし、GaAs半導体基板12を、その下面全体がホルダー部18に設けた溶液溜内のGa−As−Ge成長用溶液13の上面に接触する位置に移動し、GaAs半導体基板12の下面へのGaAsのエピタキシャル成長を開始した。そして、600℃まで徐冷を行った後、スライダー11を動かしてGaAs半導体基板12とGa−As−Ge成長用溶液13とを切り離してGaAsのエピタキシャル成長を終了させた。
以上に述べた方法で、液相エピタキシャル成長法により、半絶縁性GaAs半導体基板12上にp型不純物としてGeを高濃度にドープした厚さ350μmのGaAs層を成長させることができた。van der Pauw法に基づくHall効果の測定から、得られたp型GaAs成長層の正孔濃度は約1×1019cm-3で、トンネルダイオードの製作に対して十分高い正孔濃度であることが分かった。また、成長方向に沿って、拡がり抵抗分布を測定し、その正孔濃度分布を調べたところ、正孔濃度分布は成長方向に対して一様であった。
さらに、X線回折法を用いて、成長前の不純物無添加のGaAs半導体基板とGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層との格子定数差を評価した。評価に用いたX線回折装置は回転陰極を用いた高輝度のX線源から出たX線ビームを、4結晶モノクロメータで回折して測定試料に照射する方法をとっており、ビームの拡がりが非常に小さく極めて平行なX線束を測定試料に照射できる。そのため試料結晶の小さな格子定数差によるBragg角の差を検出できるので、相対的であるが、基板と成長層の格子定数の差を精密に測定できる。
図3は上記したX線回折装置を用いてGaAs半導体基板とGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層との格子定数差を評価したものである。なお、図3では、測定において基板及び成長層ともに厚さが厚いので、表面からのX線の入射が困難なため、試料を斜めに研磨して基板と成長層の界面を出した上で、基板と成長層の両方にX線が入射できるようにして測定した。この図に示すように、ピークは1つしか観察されず、その半値幅も12.49秒と狭い。これは、後述の図4と比較すると、GaAs半導体基板とGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層との格子定数が差が殆ど無いことを示している。
図4は比較のために成長前の不純物無添加のGaAs半導体基板のX線ロッキングカーブを示す。これによれば、ロッキングカーブの半値幅が9.58秒と非常にシャープなピークが観察された。
この図4と、図3に示したGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層と基板の両方からのX線ロッキングカーブを比較することにより、不純物無添加の基板とGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層との格子定数差が極めて小さく、また成長後の基板と成長層の両方の結晶性が良いことがわかった。
以上に述べたように、液相エピタキシャル成長で得られたp型エピタキシャル成長層は十分厚いので、適当な厚み、例えば150μmを残して研磨により除去し、その表面を鏡面に研磨し、さらに適当な方法でエッチングして機械加工により結晶欠陥を取り除いて、例えば次項(2)のトンネルダイオードの製造工程断面図の図5(a)に示すように、GaAs半導体基板1上にトンネルダイオードの製作に必要なGeを高濃度ドープしたp型エピタキシャル成長層2を得ることができた。
(2)次に、格子整合トンネルダイオードの製作について図5を参照しながら説明する。
(2−1)上記(1)で述べたごとくGaAs半導体基板1上に液相エピタキシャル法で成長したp型エピタキシャル成長層(p型GaAs層)2の表面に、プラズマCVD法などにより、図5(b)に示すように、窒化シリコン膜(SiNx )などを堆積被覆させて結晶成長防止膜3を形成する。
(2−2)次に、図5(c)に示すように、結晶成長防止膜3上にポジまたはネガのフォトレジスト膜4を塗布する。
(2−3)このフォトレジスト膜4上にマスク乾板(図示なし)を乗せて露光する。マスク乾板は、フォトレジスト膜4の一部が窓として除去されるようなパターンを有する。例えば、トンネルダイオードの接合面積をきめる窓5とp−GaAs領域にオーム性接触を形成するための窓6を有するパターンを形成する。ここで窓5及び窓6の面積と形状、ならびに窓5と窓6の相互間の間隔は、デバイスの性能を考慮して適宜選んでよい。一例を挙げれば、本実施例においては窓5の形状を直径10μmの円形、窓6の大きさと形状を一辺が20μmの正方形、窓5と窓6の相互間の距離を50μmとしている。次いで、露光されたフォトレジスト膜4をAZディベロッパーなどの現像液を用いて現像する。そして、上述のパターンを有するフォトレジスト膜4を結晶成長防止膜3上に残す。次に、リアクティブイオンエッチング法などにより、フォトレジスト膜4のパターンに従って、フォトレジスト膜4と結晶成長防止膜3の一部をエッチング除去する。このエッチング除去により、図5(d)に示すように、結晶成長防止膜3の下のp型GaAs層2が露出する。
(2−4)次に、図5(e)に示すように、アセトンなどを用いてフォトレジスト膜4を除去する。
(2−5)この上に、Al等で作製したマスク乾板(図示なし)を乗せ、図5(f)に示すように、露出させたp型GaAs層2上に12.5重量パーセントのGeを含む組成のAu−Ge合金膜7を蒸着する。マスク乾板は、窓5のみにAu−Ge合金膜7を蒸着させ得るようなパターンを有する。
(2−6)大気中で温度450℃まで急熱し、その後急冷する。このプロセスにはいろいろ方法があるが、その一つとして温度450℃に加熱したホットプレートに試料を1〜5分程度のせ、その後当該試料をホットプレートからおろし、温度を室温にもどすだけで実現できる。このプロセスにより、図5(g)に示すように、p型GaAs層2の一部がn型GaAs層8に変換され、pn接合が形成され、格子整合トンネルダイオードが作製される。このプロセスでn型に変換されたGeドープGaAsは電子濃度が(1〜3)×1019cm-3程度でトンネルダイオードを製作するのに十分な濃度である。また、このようにGeを高濃度ドープしても格子定数が変化しないため、p型GaAs層2とn型GaAs層8の格子定数を一致させることができる。
(2−7)この上にAl等で作製したマスク乾板(図示なし)を乗せ、図5(h)に示すように、露出させたp型GaAs層2上にZn−Ni−Au(亜鉛−ニッケル−金)合金9を蒸着する。マスク乾板は、窓6のみにZn−Ni−Au合金9を蒸着させ得るようなパターンを有する。そして、後熱処理によりp型GaAs層2とZn−Ni−Au合金9との間にオーム性接触電極が形成される。このようにして、図6に示すようなGaAs格子整合トンネルダイオードが製作できる。
図6は上記の手順で製作したGaAs格子整合トンネルダイオードを動作させるための結線の一例を示すもので、p型GaAs層2がプラス、n型GaAs層8がマイナスとなるように直流電圧を印加し、トンネル特性を測定する。なお、10は直流電源である。
図7は試作したGaAs格子整合トンネルダイオードの室温における電流−電圧特性の一例を示す図である。なお、この試料を製作するときに用いた窓5の形状は直径10μmの円形であった。
この図から、試作したGaAs格子整合トンネルダイオードの電流−電圧特性は電圧0.1Vから電圧0.6Vまでの範囲でトンネルダイオード特有の典型的な負性コンダクタンス領域をもつことがわかる。また、ピーク点の電流は0.4A、またバレー点の電流は0.02A、電圧は0.62Vであった。
図8は本発明の第2実施例を示す格子整合トンネルダイオードの製造工程断面図であり、GaAs格子整合トンネルダイオードの製作プロセスでモノクロルベンゼン膜を用いたものである。
(1)まず、図8(a)に示すように、GaAs半導体基板21上に液相エピタキシャル法で成長したp型GaAs層22を形成する。
(2)次に、図8(b)に示すように、このp型GaAs層22の表面に、ポジまたはネガのフォトレジスト膜23を塗布する。
(3)次に、図8(c)に示すように、このフォトレジスト膜23上にモノクロルベンゼン膜24を形成する。
(4)次に、マスク乾板(図示なし)を乗せて露光する。マスク乾板はモノクロルベンゼン膜24、およびフォトレジスト膜23の一部が窓として除去されるようなパターンを有する。例えば、トンネルダイオードの接合面積をきめる窓25とp−GaAs領域にオーム性接触を形成するための窓26を有するパターンを形成する。露光されたフォトレジスト膜23をAZディベロッパーなどの現像液を用いて現像すると、図8(d)に示すように、窓25と26が形成される。
(5)この上に、Al等で作製したマスクを乗せ、図8(e)に示すように、露出させたp型GaAs層22上に12.5重量パーセントのGeを含む組成のAu−Ge合金膜27を蒸着する。マスク乾板は、窓25のみにAu−Ge合金膜27を蒸着させ得るようなパターンを有する。
(6)大気中で温度450℃まで急熱し、その後急冷する。このプロセスにより、図8(f)に示すように、p型GaAs層22の一部がn型GaAs層28に変換され、pn接合が形成され、格子整合トンネルダイオードが作製される。このプロセスでn型に変換されたGeドープGaAsは電子濃度が(1〜3)×1019cm-3程度で格子整合トンネルダイオードを製作するのに十分な濃度である。また、このようにGeを高濃度ドープしても格子定数が変化しないため、p型GaAs層22とn型GaAs層28の格子定数を一致させることができる。
(7)この上にAl等で作製したマスク乾板(図示なし)を乗せ、図8(g)に示すように、露出させたp型GaAs層22上にZn−Ni−Au合金29を蒸着する。マスク乾板は、窓26のみにZn−Ni−Au合金29を蒸着させ得るようなパターンを有する。そして、後熱処理によりp型GaAs層22とZn−Ni−Au合金29との間にオーム性接触電極が形成される。
このようにして、GaAsトンネルダイオードが製作できる。
(8)次に、図8(h)に示すように、モノクロルベンゼン膜24およびフォトレジスト膜23の両者を除去し、GaAs格子整合トンネルダイオードの製作を終了する。
本発明の第3実施例として、GaP半導体基板を用いたトンネルダイオードの製作について述べる。
Siの四面体配位共有結合半径は1.17Åであり、Gaの値1.26Åよりも小さく、P(リン)の値1.10Åよりも大きいため、GaPにSiを高ドープしても格子定数の変化は小さい。そこで、GaPに添加するIV族の両性不純物としてSiを選び、液相エピタキシャル成長法を用いて適当な面方位、例えば(100)面方位をもつp型GaP基板上に、高濃度にアクセプタを含むp型層を成長させる。成長には、GaAs半導体基板上にGeドープp型層をエピタキシャル成長させる場合と同様に図1に示す装置を用いた。
Siドープp型GaPエピタキシャル成長の概略について説明する。
図9は本発明の第3実施例を示す液層エピタキシャル成長法によりSiドープしたGaP層を成長するために用いた成長装置の主要部の一例を示す断面模式図である。
この実施例においては、図1のGaAs半導体基板12に替えてGaP半導体基板31、Ga−As−Ge成長溶液13に替えてGa−P−Si成長用溶液33、飽和補償用のGaAs原料結晶14に替えて飽和補償用のGaP原料結晶34、例えば不純物無添加のGaP原料結晶を設置する。その他は図1と同様であるため、図1と同様の符号を用いた。
次に、Siドープp型GaP層のエピタキシャル成長の手順を簡単に説明する。GaP半導体基板31、およびGaP原料結晶34は成長用カーボンボート20内に設置前に、通常行われているエッチングおよび洗浄等の方法で前処理してある。また、Ga−P−Si成長溶液33は900℃で飽和溶液となるように調整した。具体的には重量比でGa(純度:6N)が15g、GaP多結晶(純度:6N)が0.4g、Si(純度:6N)が0.2gの割合になるようそれぞれ秤量した後、エッチング、洗浄、乾燥処理したものを石英アンプルに真空封じし、950℃に加熱し、当該溶液の組成が十分均一になるように攪拌混合した後、室温まで急冷した。そして、均質化されたGa−P−Si合金をアンプルから取り出し、その中から成長に必要な量、例えば20gのGa−P−Si合金を成長用溶液33として、図9に示すようにカーボンボート20のホルダー部18の所定のところに設置した。
Siドープp型GaP層のエピタキシャル成長に用いた温度プログラムはGaAs成長用に用いたものとほぼ同様である。すなわち、電気炉を用いて900℃に昇温後、その温度で3時間保持して、Ga−P−Si成長用溶液33がその温度で十分飽和状態に達した後、冷却速度0.5℃/分で徐冷し、3℃冷却したところで石英操作棒16を操作してスライダー11を動かし、GaP半導体基板31をその下面全体がGa−P−Si成長用溶液33の上面に接触する位置に移動し、GaP半導体基板31の下面へのGaPのエピタキシャル成長を開始した。そして、780℃まで徐冷を行った後、スライダー11を動かしてGaP半導体基板31とGa−P−Si成長用溶液33とを切り離してGaPのエピタキシャル成長を終了させた。
以上に述べたように、液相エピタキシャル成長法により、p型GaP半導体基板31上にp型不純物としてSiを高濃度にドープした厚さ30μmのp型GaP層を成長させることができた。van der Pauw法に基づくHall効果の測定から、得られたp型GaP成長層の正孔濃度は約1×1019cm-3程度で、トンネルダイオードの製作に対して十分高い正孔濃度であった。また、その正孔濃度分布は成長方向に対して一様であった。
本実施例でも第1実施例と同様に4結晶モノクロメータを用いたX線回折装置を用いて、GaP半導体基板とエピタキシャル成長層との格子定数差が極めて小さいことを確認した。
以上に述べたSi高濃度ドープp型半導体エピタキシャル成長層を用いてGaPトンネルダイオードを製作できる。p型GaP半導体エピタキシャル成長層の厚みは第1実施例で述べたGaAsの場合と比べ薄いので、成長層表面をケミカルポリッシュ、エッチング、洗浄、乾燥したものを用いた。GaPトンネルダイオードの製作プロセスは、pn接合を製作するためにAu−Si(共晶成分:金に3.16重量パーセントのSiを含む)合金を蒸着し、適当な温度、例えば550℃で熱処理することにより、p型GaP層の一部をn型GaP層に変換する点を除けば、第1実施例及び第2実施例の場合と同様である。
そしてSi高濃度トープp型GaPに上記のようにAu−Si合金を蒸着後合金することにより、当該Si高濃度ドープp型GaP層の一部をトンネル効果を引き起こすに十分なキャリヤー濃度である略1×1019cm-3程度の高濃度Siをドープしたn型領域に変換でき、pn接合を容易に形成してトンネルダイオードを製作できることは言うまでもない。もちろん、Si高濃度ドープp型GaP領域へのオーム性接触電極はZn−Ni−Au等を合金することにより容易に製作できる。
以上の実施例において、液相エピタキシャル成長法を用いて、GaAs基板上に高濃度Geドープp型GaAs層を成長し、その後成長層表面にAu−Geを蒸着合金してpn接合を製作する方法、あるいはGaP基板上に高濃度のSiドープp型GaP層を成長し、その後Au−Siを蒸着合金してpn接合を製作する方法によりトンネルダイオードを製作している。IV族の両性不純物原子は結晶のIII 族サイトに比べてV族サイト側に多く入りやすいから、所定のアクセプタ濃度を持つp型層をエピタキシャル成長させることができる。勿論、成長温度および冷却速度は適宜選ぶ必要がある。このようにして得られたp型層の表面に、III −V族化合物半導体の構成元素以外の成分からなる金属に両性不純物であるIV族不純物を適量ドープした材料を蒸着し熱処理により合金することにより、n型の再結晶層が得られる。その結果、急峻な不純物濃度分布をもつp+ + 接合が製作できる。
勿論、上記の液相エピタキシャル成長法で成長したIV族両性不純物ドープp型層の表面に、当該III −V族化合物半導体結晶の構成に関与する元素以外のBi(ビスマス)等の成長層への偏析が少ない低融点金属に当該半導体溶質とIV族の両性不純物を添加した成長溶液を用いて、液相エピタキシャル法によりn型層を成長することにより、pn接合を形成させてもよい。さらにまた、上記の液相エピタキシャル成長法で成長したIV族両性不純物ドープp型層に対してpn接合を形成するための両性不純物ドープのn型層は、イオン注入法、ハイドライドやクロライドを用いた気相成長法、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシャル法、ホットウォール成長法などの気相成長法で形成してもよい。特に、ハイドライトやクロライドを用いた気相成長法、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシャル法、ホットウォール成長法などの気相成長法では、III 族元素に比べてV族元素の解離圧が高いため、成長用基板に供給するIII 族分子に比べてV族分子の供給量(圧)を圧倒的に多く(高く)しないと成長が得られない。すなわち、気相成長法ではいわゆるV/III 比を大きくするため、IV族の両性不純物をドープした場合、当該不純物はIII −V族化合物結晶格子のIII 族サイト側に多く入り易く、そのためこれらの方法で成長したエピタキシャル成長層は多くの場合n型となる。
本発明はこれに限らず、InAsやGaSb等の二元化合物半導体やInGaAs、InGaP、AlGaAs、GaAsP、AlGaP等の三元混晶半導体に適用してもよい。また、トンネルダイオードのデバイス構造として図6以外の構造、例えば、半導体基板1としてp型基板を用い、当該基板1側にオーム性接触電極を付けて電極9とし、当該電極9と電極8とをダイオードの2端子として用いてもよいことは明白である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の格子整合トンネルダイオードの製造方法および格子整合トンネルダイオードは、1GHzから100GHz帯のマイクロ波周波数帯で動作する発振デバイスとして携帯電話等の無線通信分野のデバイスへの利用が可能である。
本発明の実施例を示す液層エピタキシャル成長法により、GeドープGaAs層を成長するために用いた成長装置の主要部の一例の断面模式図である。 本発明の実施例を示すGeドープp型GaAs層のエピタキシャル成長に用いた温度プログラムの一例を示す図である。 X線回折装置を用いてGaAs半導体基板とGeを高濃度ドープしたGaAsエピタキシャル成長層との格子定数差を評価した図である。 比較のための成長前の不純物無添加のGaAs半導体基板のX線ロッキングカーブを示す図である。 本発明の第1実施例を示す格子整合トンネルダイオードの製造工程断面図である。 本発明によって製造された格子整合トンネルダイオードを動作させる結線の一例を示す図である。 試作したGaAsトンネルダイオードの室温における電流−電圧特性の一例を示す図である。 本発明の第2実施例を示す格子整合トンネルダイオードの製造工程断面図である。 本発明の第3実施例を示す液層エピタキシャル成長法によりSiドープしたGaP層を成長するために用いた成長装置の主要部の一例の断面模式図である。
符号の説明
1,12,21 GaAs半導体基板
2,22 p型エピタキシャル成長層(p型GaAs層)
3 結晶成長防止膜
4,23 フォトレジスト膜
5,6,25,26 窓
7,27 Au−Ge合金膜
8,28 n型GaAs層
9,29 Zn−Ni−Au合金
10 直流電源
11 カーボンボートのスライダー
13 Ga−As−Ge成長用溶液
14 飽和補償用のGaAs原料結晶
15 石英管
16 石英製操作棒
17 温度を計測するサーモカップル
18 カーボンボートのホルダー部
20 カーボンボート
24 モノクロルベンゼン膜
31 GaP半導体基板
33 Ga−P−Si成長用溶液
34 飽和補償用のGaP原料結晶

Claims (5)

  1. (a)二元または三元のIII −V族化合物半導体基板上にIV族元素からなる両性不純物を添加することによりp型半導体層を形成する工程と、
    (b)引き続いて前記p型半導体層表面にIII −V族元素以外の成分からなる金属とIV族元素からなる両性不純物を成分とする金属合金を同時蒸着する工程と、
    (c)引き続いて熱処理する工程とを施し、当該p型半導体層の一部をn型半導体層に変換してpn接合を形成することを特徴とする格子整合トンネルダイオードの製造方法。
  2. (a)III −V族化合物の一つであるGaAs半導体基板上にIV族元素であるGeを不純物として添加してp型半導体層を形成する工程と、
    (b)引き続いて当該p型半導体層表面にAu−Ge金属合金を蒸着する工程と、
    (c)引き続いて熱処理する工程とを施し、当該p型半導体層の一部をn型半導体層に変換することを特徴とする格子整合トンネルダイオードの製造方法。
  3. (a)III −V族化合物の一つであるGaP半導体基板上にIV族元素であるSiを不純物として添加してp型半導体層を形成する工程と、
    (b)引き続いて当該p型半導体層表面にAu−Si金属合金を蒸着する工程と、
    (c)引き続いて熱処理する工程とを施し、前記p型半導体層の一部をn型半導体層に変換することを特徴とする格子整合トンネルダイオードの製造方法。
  4. (a)二元または三元のIII −V族化合物半導体基板上にIV族元素からなる両性不純物を添加することによりp型半導体層を形成する工程と、
    (b)引き続いて前記p型半導体層表面にIV族元素からなる両性不純物を添加したn型半導体層を成長する工程により、
    (c)pn接合を形成することを特徴とする格子整合トンネルダイオードの製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項記載のトンネルダイオードの製造方法によって製造される格子整合トンネルダイオード。
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