本発明における車両用ドア構造の第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
図1に示される如く、本実施形態の自動車車体10の側面10Aには、フロントサイドドア用の開口部12とリヤサイドドア用の開口部14とがセンタピラー16を挟んで形成されており、フロントサイドドア用の開口部12の周囲は、センタピラー16、ルーフサイドレール20、フロントピラー22、ロッカ24で構成されている。また、リヤサイドドア用の開口部14の周囲は、センタピラー16、ロッカ24、クオータパネル26、ルーフサイドレール20で構成されている。
車体10のフロントサイドドア用の開口部12には、フロントサイドドア30が開口部12を開閉可能に取付けられており、車体10のリヤサイドドア用の開口部14には、リヤサイドドア32が開口部14を開閉可能に取付けられている。
図2に示される如く、フロントサイドドア30は、ドアアウタパネル34とドアインナパネル36とを周囲で互いに結合したドア本体を有するプレスドア構造となっており、ドア本体内にはドアガラスが昇降可能に配設されている。
図3に示される如く、ドアアウタパネル34の外周部における下部34A近傍には、下端部34Bに沿った方向である車体前後方向(図3の矢印A方向)と交差する方向である車体上下方向(図3の矢印B方向)又は、略車体上下方向に延設された第1補強手段としての複数の第1ビード40、42、44、46、48が形成されている。これらの第1ビード40、42、44、46、48はドアアウタパネル34の一部を部分的に曲げ変形させることによって凸形状に形成されている。
なお、第1ビード40、42、44、46、48の形状を明確にするため、第1ビード40、42、44、46、48における底部となる面にはハッチングを付した。また、ハッチングを付した面の外周線と該外周線から、該外周線の外側の各ビード全体の外周線に伸びる線は稜線である。
従って、第1補強手段がビードであるため、ドアアウタパネル34に第1補強手段をプレス加工によって容易に形成することができるようになっている。
なお、ドアアウタパネル34の車体前方側の第1ビード40、42、44は、その長手方向が車体上方後側から車体下方前側に向って傾斜しており、前端部の第1ビード40の垂直線に対する傾斜角度が他の第1ビード42、44の傾斜角より大きくなっている。また、ドアアウタパネル34の車体後方側の第1ビード46、48は車体上方前側から車体下方後側に向って傾斜している。
図1に示される如く、各第1ビード40、42、44、46、48はそれぞれ車幅方向内側に向って凸状に隆起しており、車体前後方向に沿って所定の間隔で形成されている。また、複数の第1ビード40、42、44、46、48の下端部40A、42A、44A、46A、48Aは、ヘミング加工されたドアアウタパネル34の下端部34B付近まで伸びている。
また、第1ビード40の下端部40Aは、フロントサイドドア用の開口部12の周囲を構成するフロントピラー22の下部22Aに、車体側面視(車体を車体側方から水平に見た状態)でオーバラップしており、第1ビード42、44、46、48の少なくとも下端部42A、44A、46A、48Aは、それぞれフロントサイドドア用の開口部12の周囲を構成するロッカ24の前側上部24Aに車体側面視でオーバラップしている。
従って、ドアアウタパネル34の下部34A近傍を複数の第1ビード40、42、44、46、48によって補強できると共に、側突時にドアアウタパネル34に作用した荷重を、車体10に形成されたフロントサイドドア用の開口部12の周囲であるフロントピラー22の下部22Aとロッカ24の前側上部24Aに、第1ビード40、42、44、46、48の少なくとも下端部40A、42A、44A、46A、48Aから効果的に伝達することができるようになっている。
図3に示される如く、ドアアウタパネル34の外周部における下部34A近傍には、下端部34Bの外周に沿った方向である車体前後方向(図3の矢印A方向)に沿って延設された第2補強手段としての第2ビード50が形成されている。
従って、第2補強手段がビードであるため、ドアアウタパネル34に第2補強手段をプレス加工によって容易に形成することができるようになっている。
なお、第2ビード50は第1ビード40、42、44、46の上下方向中間部と連結されており、互いに交差している。また、第2ビード50の前端部50Aは、第1ビード40より車体前方へ達しており、第2ビード50の後端部50Bは、第1ビード48の近傍に達している。
従って、第1ビード40、42、44、46と第2ビード50とを連結することによって、ドアアウタパネル34の面剛性を更に向上できると共に、ドアアウタパネル34に作用した荷重を第2ビード50によって、第1ビード40、42、44、46に効果的に伝達することができるようになっている。
図4に示される如く、第2ビード50は車幅方向外側に向って凸状に隆起しており、第1ビード40、42、44、46、48は車幅方向内側に向って凸状に隆起している。
従って、第2ビード50の凸方向と第1ビード40、42、44、46、48の凸方向は車幅方向において逆方向になっている。この結果、第1ビード40、42、44、46と第2ビード50との連結部における車幅方向の凸部の高さH1が、第1ビード40、42、44、46のドアアウタパネル34からの高さH2と第2ビード50のドアアウタパネル34からの高さH3に比べて大きくなっている。
第1ビード40、42、44、46、48と第2ビード50は、図2に示される如く、ドアアウタパネル34の下部34Aの車幅方向外側に配設されるモール54によって覆われており、ドア意匠面には現れないようになっている。
なお、ドアアウタパネル34の下部34Aの上端縁部には、モール54の上端縁部との干渉を防止するための凹部55が車体前後方向に沿って形成されている。また、図3に示される如く、凹部55の後端部付近の下方側には、モール54を固定するための取付孔57が形成されており、第1ビード40の上端部にも、モール54を固定するための取付孔59が形成されている。また、第1ビード40の上端は凹部55に達しており、第1ビード46の上端も凹部55に達している。
また、ロッカ24の車幅方向外側には、ロッカモール56が配設されている。
図5及び図6に示される如く、ドアアウタパネル34における第1ビード42と第2ビード50の上方近傍の部位34Fと対向するドアインナパネル36の部位には、スピーカ58が取付けられている。
従って、スピーカ58と対向するドアアウタパネル34の部位34Fの剛性を、部位34Fの下方に隣接して形成された第1ビード42と第2ビード50とによって向上できるため、スピーカ58の振動によって、スピーカ58と対向するドアアウタパネル34の部位34Fが振動するのを抑制できるようになっている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、ドアアウタパネル34の車体下方側の外周部近傍である下部34A近傍に、下端部34Bの方向となる車体前後方向(図3の矢印A方向)と交差する方向である車体上下方向(図3の矢印B方向)又は、略車体上下方向に延設された第1ビード40の下端部40Aがフロントサイドドア用の開口部12の周囲を構成するフロントピラー22の下部22Aに車体側面視でオーバラップしており、第1ビード42、44、46、48の少なくとも下端部42A、44A、46A、48Aが、それぞれフロントサイドドア用の開口部12の周囲を構成するロッカ24の前側上部24Aに車体側面視でオーバラップしている。
この結果、ドアアウタパネル34の下部34Aを複数の第1ビード40、42、44、46、48によって補強でき、ドアアウタパネル34の下部34Aにおける面の変形に対する剛性(以後、面剛性という)を向上できる。このため、耐ノイズ性能及び耐振性能(以後、NV性能という)が向上すると共に、側突時にフロントサイドドア30のドアアウタパネル34の下部が他車両のバンパK(図2参照)等により押圧された場合に、ドアアウタパネル34の下部の変形を抑制できる。
また、側突時にドアアウタパネル34の下部の変形を抑制できるため、衝突が終了するまで、ドアアウタパネル34に作用した荷重を、車体10に形成されたフロントサイドドア用の開口部12の周囲であるフロントピラー22の下部22Aとロッカ24の前側上部24Aに、第1ビード40、42、44、46、48の少なくとも下端部40A、42A、44A、46A、48A、から効果的に伝達することができる。
このため、側突時にフロントサイドドア30の車室内への侵入量を抑制できると共に、車体側で受ける荷重の増加が可能となる。即ち、車体側で大きな荷重を支持できる。
また、本実施形態では、図2に示される如く、第1ビード40、42、44、46、48によってフロントサイドドア30の下端ヘミング部30Aの剛性が向上する。この結果、フロントサイドドア30の下端ヘミング部30Aとロッカモール56との隙間W1や段差W2の精度を向上できる。このため、車室内への水入り防止やフロントサイドドア30の下端の凍結防止が容易になる。
また、本実施形態では、第1ビード40、42、44、46と、ドアアウタパネル34の外周部における下部34A近傍に、下端部34Bの方向である車体前後方向(図3の矢印A方向)に沿って延設された第2ビード50とが連結されているため、ドアアウタパネル34の下部の面剛性を更に向上し、NV性能を更に向上できると共に、ドアアウタパネル34に作用した荷重を第2ビード50によって、第1ビード40、42、44、46に効果的に伝達することができる。このため、側突時にフロントサイドドア30の車室内への侵入量を更に効果的に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
また、本実施形態では、図1に示される如く、第2ビード50によってフロントサイドドア30の前端ヘミング部30Bと後端ヘミング部30Cの剛性が向上する。この結果、フロントサイドドア30の前端ヘミング部30Bと、フェンダーとの見切り10Bとの隙間や段差や、後端ヘミング部30Cとリヤサイドドア32との見切り10Dとの隙間や段差の精度を向上できる。このため、車室内への水入り防止やフロントサイドドア30の前端、後端の凍結防止が容易になる。また、風きり音の低減や、空力及び燃費の向上が可能となる。
また、本実施形態では、第1補強手段が第1ビード40、42、44、46であり、第2補強手段が第2ビード50であるため、ドアアウタパネル34に第1補強手段と第2補強手段とを容易に形成することができる。
また、本実施形態では、第1ビード40、42、44、46の凸方向と第2ビード50の凸方向とが逆方向であるため、第1ビード40、42、44、46と第2ビード50との連結部における車幅方向の凸部の高さH1を、第1ビード40、42、44、46のドアアウタパネル34からの高さH2と第2ビード50のドアアウタパネル34からの高さH3に比べて大きくできる。この結果、第1ビード40、42、44、46と第2ビード50との連結部において、ドアアウタパネル34が折れ難くなる。このため、側突時に第1ビード40、42、44、46と第2ビード50との連結部を起点としてフロントサイドドア30が変形することを抑制でき、側突時にフロントサイドドア30の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
また、本実施形態では、図5及び図6に示される如く、ドアアウタパネル34における第1ビード42と第2ビード50の上方近傍の部位34Fと対向するドアインナパネル36の部位に、スピーカ58が取付けられている。この結果、スピーカ58の振動によって、スピーカ58と対向するドアアウタパネル34の部位34Fが振動するのを第1ビード42と第2ビード50によって抑制できる。このため、ドアアウタパネル34の振動による車室内での音質低下を防止できる。
なお、上記実施形態では、第2ビード50が第1ビード40、42、44、46の上下方向中間部と連結されており、互いに交差しているが、これに代えて、図7(A)に示される如く、第1補強手段としての例えば、側面形状が矩形の第1ビード60の上下に第2補強手段としての第2ビード62をそれぞれ形成し、上方の第2ビード62と第1ビード60の上端部とを連結し、下方の第2ビード62と第1ビード60の下端部とを連結した構成としても良い。
なお、第1ビード60の形状を明確にするため、第1ビード60における底部となる面にはハッチングを付した。また、ハッチングを付した面の外周線と該外周線から、該外周線の外側の各ビード全体の外周線に伸びる線は稜線である。
また、第1補強手段としての第1ビード60の数、配設位置及び延設方向も上記実施形態に限定されない。
また、図7(B)に示される如く、第1補強手段としての第1ビード60を前後方向外側の2個を上部を接近させてハ字状に傾斜させ、前後方向内側の3個の長手を垂直方向にし、これらの第1ビード60の上方に第2補強手段としての第2ビード62を形成し、第2ビード62と第1ビード60の上端部とを連結した構成としても良い。また、図7(C)に示される如く、第1補強手段としての第1ビード60を前後方向外側の2個を下部を接近させて逆ハ字状に傾斜させ、前後方向内側の3個の長手を垂直方向にし、これらの第1ビード60の下方に第2補強手段としての第2ビード62を形成し、第2ビード62と第1ビード60の下端部とを連結した構成としても良い。
また、上記実施形態では、ドアアウタパネル34の外周部における下部34A近傍に第2補強手段としての第2ビード50を形成し、第1ビード40、42、44、46と第2ビード50とを連結したが、これに代えて、図8(A)〜(C)に示される如く、第2補強手段としての第2ビード62を第1補強手段としての第1ビード60と連結しない構成としても良い。また、図8(A)に示される如く、第2ビード62を第1ビード60の上下に形成しても良い。また、図8(B)に示される如く、第2ビード62を第1ビード60の上方に形成しても良い。また、図8(C)に示される如く、第2ビード62を第1ビード60の下方に形成し、4個の第1ビード60の長手を垂直としても良い。
また、上記実施形態では、ドアアウタパネル34の外周部における下部34A近傍に第2補強手段としての第2ビード50を形成したが、これに代えて、図9(A)〜(C)に示される如く、第2補強手段としての第2ビードを形成せず、第1補強手段としての第1ビード60のみの構成としても良い。
なお、図9(A)では、ドアアウタパネル34に前後2本の長い第1ビード60が車体側面視においてハ字状に形成されており、前側の第1ビード60はドアアウタパネル34の下部34Aの前後方向中央上部から前方下部に向って延設され、後側の第1ビード60はドアアウタパネル34の下部34Aの前後方向中央上部から後方下部に向って延設されている。
また、図9(C)では、ドアアウタパネル34に前後4本の第1ビード60が車体側面視においてハ字状に形成されており、前側の2本の第1ビード60はドアアウタパネル34の下部34Aの前後方向中央上部側から前方下部側に向って延設され、後側の2本の第1ビード60はドアアウタパネル34の下部34Aの前後方向中央上部側から後方下部側に向って延設されている。
また、上記実施形態では、各第1ビード40、42、44、46、48の凸方向をそれぞれ車幅方向内側としたが、これに代えて、各第1ビード40、42、44、46、48の凸方向をそれぞれ車幅方向外側(車幅方向内側を凹方向)とした構成としても良い。
また、上記実施形態では、第2ビード50の凸方向を車幅方向外側としたが、これに代えて、第2ビード50の凸方向を車幅方向内側(車幅方向外側を凹方向)とした構成としても良い。
次に、本発明における車両用ドア構造の第2実施形態を図10に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図10に示される如く、本実施形態では、リヤサイドドア32のドアアウタパネル64の外周部における下部64A近傍には、下端部64Bの外周に沿った方向である車体前後方向(図10の矢印A方向)と交差する方向である車体上下方向(図10の矢印B方向)又は、略車体上下方向に延設された第1補強手段としての複数の第1ビード70、72、74、76が形成されている。これらの第1ビード70、72、74、76はドアアウタパネル64の一部を部分的に曲げ変形させることによって凸形状に形成されている。
なお、第1ビード70、72、74、76の形状を明確にするため、第1ビード70、72、74、76における底部となる面にはハッチングを付した。また、ハッチングを付した面の外周線と該外周線から、該外周線の外側の各ビード全体の外周線に伸びる線は稜線である。
従って、第1補強手段がビードであるため、ドアアウタパネル64に第1補強手段をプレス加工によって容易に形成することができるようになっている。
なお、第1ビード70、72、74、76はその長手方向が車体上方後側から車体下方前側に向って傾斜しており、前端部の第1ビード70の垂直線に対する傾斜角度が他の第1ビード72、74、76の傾斜角より大きくなっている。
各第1ビード70、72、74、76はそれぞれ車幅方向内側に向って凸状に隆起しており、車体前後方向に沿って所定の間隔で形成されている。また、複数の第1ビード70、72、74、76の下端部70A、72A、74A、76Aは、ヘミング加工されたドアアウタパネル64の下端部64B付近まで伸びている。
第1実施形態の図1上に示したように、第1ビード70の下端部70Aは、リヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するセンタピラー16の下部16Aに車体側面視でオーバラップしており、第1ビード72、74の下端部72A、74Aは、それぞれリヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するロッカ24の後側上部24Bに車体側面視でオーバラップしている。また、第1ビード76の少なくとも下端部76Aは、リヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するクオータパネル26の前側下部26Aに車体側面視でオーバラップしている。
従って、ドアアウタパネル64の下部64A近傍を複数の第1ビード70、72、74、76によって補強できると共に、側突時にドアアウタパネル64に作用した荷重を、車体10に形成されたリヤサイドドア用の開口部14の周囲であるセンタピラー16の下部16Aとロッカ24の後側上部24Bとクオータパネル26の前側下部26Aに、第1ビード70、72、74、76の少なくとも下端部70A、72A、74A、76Aから効果的に伝達することができるようになっている。
図10に示される如く、ドアアウタパネル64の外周部における下部64A近傍には、下端部64Bの方向である車体前後方向(図10の矢印A方向)に沿って延設された第2補強手段としての第2ビード80が形成されている。
従って、第2補強手段がビードであるため、ドアアウタパネル64に第2補強手段をプレス加工によって容易に形成することができるようになっている。
なお、第2ビード80は第1ビード72、74、76の上下方向中間部と連結されており、互いに交差している。また、第2ビード80の前端部80Aは、第1ビード70の近傍に達しており、第2ビード80の後端部80Bは、第1ビード76より車体後方へ達している。
従って、第1ビード72、74、76と第2ビード80とを連結することによって、ドアアウタパネル64の面剛性を更に向上できると共に、ドアアウタパネル64に作用した荷重を第2ビード80によって、第1ビード72、74、76に効果的に伝達することができるようになっている。
また、第2ビード80は車幅方向外側に向って凸状に隆起しており、第1ビード70、72、74、76の凸方向と逆方向になっている。
従って、第1実施形態の図4上に示したように、第1ビード72、74、76と第2ビード80との連結部における車幅方向の凸部の高さH1が、第1ビード72、74、76のドアアウタパネル64からの高さH2と第2ビード80のドアアウタパネル64からの高さH3に比べて大きくできるようになっている。
なお、各第1ビード70、72、74、76と第2ビード80は、ドアアウタパネル64の下部64Aの車幅方向外側に配設されるモール(図示省略)によって覆われており、ドア意匠面には現れないようになっている。
また、ドアアウタパネル64の下部64Aの上端縁部には、モールの上端縁部との干渉を防止するための凹部65が車体前後方向に沿って形成されている。また、第1ビード72、74、76の上端は凹部65に達している。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、ドアアウタパネル64の車体下方側の外周部近傍である下部64A近傍に、下端部64Bの方向である車体前後方向(図10の矢印A方向)と交差する方向である車体上下方向(図10の矢印B方向)又は、略車体上下方向に延設された第1ビード70の下端部70Aが、リヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するセンタピラー16の下部16Aに車体側面視でオーバラップしており、第1ビード72、74の下端部72A、74Aが、それぞれリヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するロッカ24の後側上部24Bに車体側面視でオーバラップしている。また、第1ビード76の少なくとも下端部76Aが、リヤサイドドア用の開口部14の周囲を構成するクオータパネル26の前側下部26Aに車体側面視でオーバラップしている。
この結果、ドアアウタパネル64の下部64Aを複数の第1ビード70、72、74、76によって補強でき、ドアアウタパネル64の下部64Aの面剛性を向上できる。このため、NV性能が向上すると共に、側突時にリヤサイドドア32のドアアウタパネル64の下部が他車両のバンパ等により押圧された場合に、ドアアウタパネル64の下部の変形を抑制できる。
また、側突時にドアアウタパネル64の下部64Aの変形を抑制できるため、衝突が終了するまで、ドアアウタパネル64に作用した荷重を、車体10に形成されたフロントサイドドア用の開口部12の周囲であるセンタピラー16の下部16Aとロッカ24の後側上部24Bとクオータパネル26の前側下部26Aに、第1ビード70、72、74、76の少なくとも下端部70A、72A、74A、76Aから効果的に伝達することができる。
このため、側突時にリヤサイドドア32の車室内への侵入量を抑制できると共に、車体側で受ける荷重の増加が可能となる。
また、本実施形態では、第1ビード70、72、74、76によってリヤサイドドア32の下端ヘミング部32Aの剛性が向上する。この結果、リヤサイドドア32の下端ヘミング部32Aとロッカモールとの隙間や段差の精度を向上できる。このため、車室内への水入り防止やリヤサイドドア32の下端の凍結防止が容易になる。
また、本実施形態では、第1ビード72、74、76と、ドアアウタパネル64の外周部における下部64A近傍に、下端部64Bに沿った方向である車体前後方向(図10の矢印A方向)に沿って延設された第2ビード80とが連結されているため、ドアアウタパネル64の下部の面剛性を更に向上し、NV性能を更に向上できると共に、ドアアウタパネル64に作用した荷重を第2ビード80によって、第1ビード72、74、76に効果的に伝達することができる。このため、側突時にリヤサイドドア32の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
また、本実施形態では、第1実施形態の図1上に示したように、第2ビード80によってリヤサイドドア32の前端ヘミング部32Bと後端ヘミング部32Cの剛性が向上する。この結果、リヤサイドドア32とフロントサイドドア30との見切り部(境目)10Dや、リヤサイドドア32とクオータパネル26との見切り部(境目)10Eとの隙間や段差の精度を向上できる。このため、車室内への水入り防止やリヤサイドドア32の前端、後端の凍結防止が容易になる。また、風きり音の低減や、空力及び燃費の向上が可能となる。
また、本実施形態では、第1補強手段が第1ビード70、72、74、76であり、第2補強手段が第2ビード80であるため、ドアアウタパネル64に第1補強手段と第2補強手段とを容易に形成することができる。
また、本実施形態では、第1ビード70、72、74、76の凸方向と第2ビード80の凸方向とが逆方向であるため、第1ビード72、74、76と第2ビード80との連結部における車幅方向の凸部の高さH1を、第1ビード72、74、76のドアアウタパネル64からの高さH2と第2ビード80のドアアウタパネル64からの高さH3に比べて大きくできる。この結果、第1ビード70、72、74、76と第2ビード80との連結部において、ドアアウタパネル64が折れ難くなる。このため、側突時に第1ビード70、72、74、76と第2ビード80との連結部を起点としてリヤサイドドア32が変形することを抑制でき、側突時にリヤサイドドア32の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
次に、本発明における車両用ドア構造の第3実施形態を図11及び図12に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図11に示される如く、本実施形態では、フロントサイドドア30内のドアアウタパネル34の車幅方向内側に配設された補強用棒状体であるインパクトビーム90が第2補強手段となっており、インパクトビーム90はドアアウタパネル34の前端部34Cの上下方向中央部近傍から後端部34Dの下部に向って傾斜している。なお、インパクトビーム90の前端部及び後端部は、ドアインナパネル36に結合されている。
また、インパクトビーム90の後部90Aは、第1ビード46の上端部46Bと第1ビード48の上端部48Bとに接着剤91(図12参照)、溶接、リベット等によって連結されている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、第1実施形態の作用効果に加えて、強度及び剛性の高いインパクトビーム90の後部90Aと第1ビード46、48の上端部46B、48Bとを連結したため、インパクトビーム90とドアアウタパネル34との双方の剛性及び強度を向上できる。また、インパクトビーム90の側突時の耐力が増加する。この結果、側突時にフロントサイドドア30の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
また、強度及び剛性の高いインパクトビーム90によって、ドアインナパネル36と、第1ビード40、42、44、46、48で補強されたドアアウタパネル34と、が繋がることで、フロントサイドドア30全体の剛性及び強度が大幅に増加する。この結果、側突時にフロントサイドドア30の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となることに加えて、フロントサイドドア30の耐久性が大きく向上する。
なお、上記実施形態では、インパクトビーム90をドアアウタパネル34の前端部34Cの上下方向中央部近傍から後端部34Dの下部に向って傾斜して配置したが、図13(A)〜(C)に示される如く、インパクトビーム90をドアアウタパネル34の下端部34Bと略並行に配設しても良い。また、図13(A)〜(C)に示される如く、第1補強手段としての第1ビード92の数、配設位置及び延設方向も図11に示す実施形態に限定されない。
なお、第1ビード92の形状を明確にするため、第1ビード92における底部となる面にはハッチングを付した。また、ハッチングを付した面の外周線と該外周線から、該外周線の外側の各ビード全体の外周線に伸びる線は稜線である。
次に、本発明における車両用ドア構造の第4実施形態を図14及び図15に従って説明する。
なお、第2実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図14に示される如く、本実施形態では、リヤサイドドア32内に配設されたインパクトビーム94が第2補強手段となっており、インパクトビーム94はドアアウタパネル64の下端部64Bと略並行に配設されている。
図15に示される如く、インパクトビーム94はパイプ材等で構成されている。なお、インパクトビーム94の前端部及び後端部は、ドアインナパネル98に結合されている。
図14に示される如く、インパクトビーム94の前後方向中間部は、第1ビード72、74、76の上端部72B、74B、76Bに接着剤96、溶接、リベット等によって接合されている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、第2実施形態の作用効果に加えて、強度及び剛性の高いインパクトビーム94の前後方向中間部と、第1ビード72、74、76の上端部72B、74B、76Bとを連結したため、インパクトビーム94とドアアウタパネル64との双方の剛性及び強度を向上できる。また、インパクトビーム94の側突時の耐力が増加する。この結果、側突時にリヤサイドドア32の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となる。
また、強度及び剛性の高いインパクトビーム94によって、ドアインナパネル98と、第1ビード70、72、74、76で補強されたドアアウタパネル64とが繋がることで、側突時にリヤサイドドア32全体の剛性及び強度が大幅に増加する。この結果、側突時にリヤサイドドア32の車室内への侵入量を更に抑制できると共に、車体側で受ける荷重の更なる増加が可能となることに加えて、リヤサイドドア32の耐久性が大きく向上する。
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、第1ビード60の形状は図8(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面が上端部においてビード全体の外周線に達している形状に代えて、図16(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面の全周がビード全体の外周線から離間している形状としても良い。また、図17(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面が下端部においてビード全体の外周線に達している形状としても良い。
第1ビード60の形状は図9(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面が上端部においてビード全体の外周線に達している形状に代えて、図18(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面の全周がビード全体の外周線から離間している形状としても良い。また、図19(A)〜(C)に示される如く、第1ビード60のハッチングを付した底部となる面が下端部においてビード全体の外周線に達している形状としても良い。
また、上記各実施形態では、フロントサイドドア30の下部とリヤサイドドア32の下部をモールで覆うことで、第1ビードと第2ビードがドア意匠面には現れない構成にしたが、これに代えて、フロントサイドドア30の下部とリヤサイドドア32の下部をモールで覆わず、第1ビードと第2ビードがドア意匠面には現れる構成としても良い。
また、上記各実施形態では、フロントサイドドア30又はリヤサイドドア32の下部に少なくとも一方の端部が車体に形成されたドア開口の周囲に車体側面視で重なる複数の第1補強手段を形成したが、これに代えて、フロントサイドドア30又はリヤサイドドア32の下部以外の外周部である上部、前部、後部に少なくとも一方の端部が車体に形成されたドア開口の周囲に車体側面視で重なる複数の第1補強手段を形成した構成としても良い。
また、上記各実施形態では、第1補強手段と第2補強手段をビードとしたが、これに代えて、第1補強手段と第2補強手段を板厚部等のビード以外の構成としても良い。
また、本発明の車両用ドア構造はフロントサイドドア30とリヤサイドドア32以外にもバックドア等の他の車両用ドアにも適用可能である。