JP2005305162A - 半月板修復スカフォールド - Google Patents

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Abstract

【課題】 半月板組織の損傷を治療するための方法とデバイスを提供する。
【解決手段】 本半月板修復デバイスは、生体適合性を有し、生体適合性を有する組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとを含んでなる。組織修復スカフォールドは、半月板中の欠損部に接触して配置するのに適しており、半月板組織を支えるための構造および/または組織の成長を促進する構造を与えられることが好ましい。組織修復スカフォールドに取り付けられた細胞成長導管フラップは、滑膜と組織修復スカフォールドとの間の受け渡しを可能とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、一般的には、半月板欠損部を修復するための方法および装置に関し、特に、細胞の成長を促進する能力の高められた組織修復スカフォールドデバイスに関する。
半月板は、関節の骨間にある特殊組織である。たとえば、膝では、半月板は、脛骨と大腿骨の間にある関節の周辺面に位置するCの字状の線維軟骨部分である。この組織は、関節の健康上、関節に安定性を与えること、衝撃吸収性を与えることおよび関節に潤滑性を与え栄養を届けること等の重要な機能を発揮する。その結果、半月板の損傷により、変性性関節炎等の衰弱性の容態が引き起こされ得る。
半月板の損傷、特に断裂は、比較的ありふれた損傷である。このような損傷は、仕事関連の活動中、競技大会中、あるいは、その他多くの状況や活動における、転落、過剰な活動等の、突然のねじり型損傷の結果生じ得る。さらに、断裂は加齢と共に徐々に発達し得る。いずれにせよ、断裂は、半月板の外側の厚い部分に生じ、あるいは内部の薄い部分にまで達し得る。半月板の小部分だけが関与する断裂もあるが、半月板のほぼ全体に影響を及ぼす断裂もある。
残念ながら、損傷を受けた半月板は、身体の他の部分で起こるような通常の治ゆプロセスを経ることができない。半月板−滑膜接合部における半月板の周辺部は、高度に血管性であり(レッドゾーン)、半月板の内側の三分の二には完全に血管がなく(ホワイトゾーン)、これら二つの間に、小さな遷移領域がある(レッド−ホワイトゾーン)。機能の部分的または完全な消失を引き起こす、半月板への変性性または外傷性の断裂は、しばしば、組織が再生の可能性をほとんど持たないホワイトゾーンで起こる。このような断裂は、強い関節痛と固着(locking)とを起こし、長期的には、半月板の機能が消失し、骨関節炎に至る。
米国特許第5,468,253号明細書 米国特許出願,名称「不織布組織スカフォールド(Nonwoven Tissue Scaffold)」,アトーニードケット番号22956−261 米国特許出願第10/729,046号,名称「生育可能組織修復インプラントとその使用方法(Viable Tissue Repair Implants and Methods of Use)」,2003年12月5日出願
現在、半月板の損傷についてはいくつかの治療法が存在するが、半月板の修復または再生の可能な治療オプションはほとんど存在しない。半月板損傷の大部分は、部分的な半月板切除で不安定な組織を除去することによって治療される。組織が除去されると、それ以上の治療は行われない。短期的には、大部分の患者は、本療法で良好な効果が得られるが、手術後何年かして(すなわち、約10年以上後に)変性性骨関節症を発症することがしばしばある。除去された組織の量は、変性の程度と速度とに関連づけられてきた。半月板組織の大部分が損傷に関係しているときには、半月板の全切除が行われる。患者が、半月板の全切除後に痛みを感じており、その場合に顕著な関節の変性がなければ、半月板同種異系移植の二次治療が可能である。同種異系移植の採用は、組織が入手できるかどうかおよび適用範囲が狭いことにより制限を受ける。
半月板の血管性領域で安定化できる半月板の断裂については、断裂を、縫合糸またはこれと同等の半月板修復デバイスで修復することができる。これらの修復は約60%〜80%のケースで成功しているが、修復基準を満たす損傷の割合は15%以下である。修復基準は、断裂の血管分布や断裂のタイプのみならず、半月板の安定性と完全性、膝の安定性および年令や活動等の患者に関わる因子に基づいている。修復に失敗した場合、次に可能な治療としては、半月板の部分切除または全切除がある。
したがって、本技術分野では、半月板組織の再生を促し得る新しい組織修復デバイスおよびこのような組織修復デバイスを使用する方法へのニーズが存在し続けている。
本発明は、組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップ(cell growth conduit flap)とを有する生体適合性のある半月板修復デバイス等の、損傷を受けた半月板組織の治療のための方法と装置とを提供する。本組織修復スカフォールドは、半月板欠損部と接触して配置するのに適しており、半月板組織を支えおよび/または組織の成長を促進する構造を与えることができる。細胞成長導管フラップは組織修復スカフォールドに取り付けられ、滑膜と組織修復スカフォールドとの間の受け渡しを行う。
本発明の一態様では、細胞成長導管フラップが、滑膜から組織修復スカフォールドおよび半月板欠損部への細胞や栄養素のような生体物質の移動を可能とするための導管を提供する。これらの生体物質が、血管新生を起こさない損傷または欠損部位で、急速で有効な組織再生を促進するものであることが好ましい。
本発明の他の一態様では、組織修復スカフォールドおよび/または細胞成長導管フラップが、生体吸収性物質から造られている。ある態様では、組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、グリコリド、ラクチドおよびジオキサノンからなる群から選ばれたモノマーに由来する合成ポリマーから造られている。さらに他の一態様では、組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、同一の材料から造られている。
半月板修復デバイスには、組織修復スカフォールド上または組織修復スカフォールド内に配置された生育可能組織であって、組織修復スカフォールドに隣接する本来の(native)組織と一体化するのに有効な生育可能組織を含められることが好ましい。さらに、本組織修復スカフォールドに、細胞の成長を促進するのに有効な少なくとも一つの生理活性物質を含めることができる。生理活性物質の例としては、多血小板血漿、軟骨由来の形態形成タンパク質、ヒトの組み替え成長因子およびこれらの組み合わせがある。
本発明の他の一態様では、細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとの相対的な配置が、Tの字状になるようになっている。あるいは、細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとを、Lの字を形成するような向きに配置することができる。
他の一態様では、細胞成長導管フラップを取り付けた半月板修復デバイスを与えることによる、半月板欠損部の外科的修復方法が本発明に含まれる。組織修復スカフォールドを、半月板欠損部に接触させるように外科的に配置し、細胞成長導管フラップを、脛骨に接触させるように外科的に配置する。細胞成長導管フラップは、細胞および栄養素を滑膜から半月板欠損部に移動させることができ、これによって、半月板の治癒を促進する。
本発明は、半月板組織への欠損または損傷を外科的に修復するために使用される、生体適合性を有する半月板修復デバイスを提供する。本デバイスには、半月板欠損部に接触して配置するのに適した、生体適合性を有する組織修復スカフォールドおよび、組織修復スカフォールドに取り付けられ、滑膜と組織修復スカフォールドとの間で物質の受け渡しを可能とするのに効果的な細胞成長導管フラップが含まれる。
半月板は、脛骨と大腿骨との間にあり、半月板がない場合には不適合な脛骨プラットホームの表面と大腿顆の表面との間に、大きな表面の関節接合を提供する。図1は、半月板10、脛骨12および大腿骨14を有する膝の分解図である。内部にあるより薄いホワイトゾーン18と外側にあるより厚いレッドゾーン19の間のおおむね楔形の断面を示すために、半月板10の一部が取り外されている。
半月板の断裂21等の半月板組織への損傷は、半月板のどこでも発現し得る。残念ながら、半月板の損傷の回復は、膝の関節内の条件が厳しいことと、典型的には栄養素と新しい細胞とが不足することのため、可能であるとしても、緩慢である。この問題は、血管新生がほとんど完全に欠如しているため、ホワイトゾーン18内で特に顕著である。従来の治療法では、損傷を受けた半月板組織の部分的な除去が必要であるが、本発明では、半月板の断裂部を支え、組織再生を促進するためのデバイスが提供される。
図2〜図5を参照して、本発明の半月板修復デバイス20には、損傷を受けた組織を支え、新組織の成長のためのプラットホームの働きをすることができる、生体適合性を有する組織修復スカフォールド22および、半月板組織損傷部位への細胞と栄養素とのマイグレーションを容易にするための細胞成長導管フラップ24とが含まれる。
図2は、組織の再生を促進するために、半月板組織の欠損部に組織修復スカフォールド22が配置される、本発明の半月板修復デバイス20の一形態を示すものである。ある形態では、半月板切除の必要性を避けるために、スカフォールド22を使用して、断裂した半月板組織の治癒を促進することができる。たとえば、スカフォールドを断裂した領域21に挿入し、適切な場所に縫合して緩んだ半月板組織を安定化することができる。スカフォールド22を適切な場所に固定できれば、それ以上の断裂を減少または排除でき、スカフォールドが、細胞成長のためのマトリックスを提供することができる。
スカフォールド22は、組織の固定に加えて、あるいはその代わりに、種々の機能を発揮し得る。ある形態では、スカフォールド22が、新しい組織の成長を促進、誘導する構造を与えることができる。さらに、スカフォールドが、組織再生を促進するべく、種々の物質を送り込むための媒介体の役割を演じることができる。損傷を受けた組織への生理活性剤および細胞等の物質の送り込みが特に好ましい場合がある。
好ましくは図2に示すように脛骨の表面に載せるのに適した導管フラップ24は、埋植されたデバイスの機械的安定性を増大させるのに役立ち得る。半月板インプラントは、通常、膝関節内で、デバイスを大腿骨の表面の方へ押す傾向のある力を受けるが、半月板の脛骨側に置かれた導管フラップは、修復デバイスを適切な場所に固定するのに役立ち得る。導管フラップを適切な場所に固定して、デバイスをしっかりとめるのに役立つようにでき、さらに、半月板の脛骨側上に導管フラップを配置することにより、好ましくは導管フラップが対抗する力を受けるようになる。このようにして、埋植されたデバイスが組織欠損部位から滑り出て、組織再生を妨害する可能性がより少なくなる。
導管フラップはまた、生体物質が損傷を受けた半月板組織に到達するための経路を提供し、従って、半月板の断裂の急速な治癒を促進するのに効果的である。特に、導管フラップは、自己由来の生体物質(たとえば細胞栄養素、細胞、潤滑用流体および/または血液用補給物質(blood supply)が、スカフォールドと損傷部位とに到達しおよび/またはスカフォールドと損傷部位とで維持されることを可能とする。通常半月板部分に達することができないこれらの物質は、半月板内の新組織の成長のために必要な物質である。
導管フラップ24は、レッドゾーンまたは脛骨表面のような血管新生の多い領域にアクセスすることができるように、スカフォールド22から延在できることが好ましい。導管フラップが滑膜まで延在していることがより好ましい。滑膜は、半月板の軟骨表面を潤滑し、軟骨表面に栄養を与える透明な滑液を生じ、吸収する。滑膜は、生育可能細胞と血管用補給物質の大きな供与源でもある。図2は、修復スカフォールド22と導管フラップ24とが、実質的に互いに垂直に向いており、その交差点26で結合している、「L」の字状の修復デバイス22の一形態を表している。導管フラップは、半月板の断裂部21から滑膜中にまで延在し、それによって、滑液、細胞および血液用補給物質やその他の生体物質が半月板の断裂部に到達するための通路を造ることができる。
導管フラップ24の材料の特性と構造とにより、生体物質の導通が可能となる。ある形態では、導管フラップの多孔率またはボイド空間のレベルが高く有利である結果、導通路が生じる。たとえば、開放性の多孔構造、すなわち、ボイド空間同士の間の相互連結により、流体および/または細胞が、導管フラップを通して、密度が高く線維状の組織からなる近隣の半月板を通るより容易に動くことができる。さらに、スカフォールド中の多孔率またはボイド空間は、滑膜から移動する生体物質および/または埋植された生理活性物質のような埋植材料を保持する役割を演じる。
他の一形態では、導管フラップに、生体物質の導通を可能とするための内部または外部の特徴的部分が含まれる。たとえば、細胞成長導管フラップ内または細胞成長導管フラップ表面上のチャネルにより、滑液物質およびその他の生体物質が半月板の組織欠損部に到達することができる。
さらに他の一形態では、導管フラップを、生体物質を半月板欠損部に向けて引き寄せるのに適するようにすることができる。たとえば、導管フラップに、たとえば吸収性物質等の液体に対しウイッキング性を示し得る物質を含ませることができる。導管フラップが、その一端で滑膜と接触して配置されたとき、生体物質は、組織スカフォールドや損傷部位の方へ引き寄せられる。導管フラップおよび/またはスカフォールドが、欠損部位に隣接してある吸収された生体物質を保持することができることが好ましい。
導管フラップ用材料の特性としては、密度が約150mg/mL〜350mg/mLの範囲にあることが好ましく、200mg/mL〜275mg/mLであることがより好ましい。ある形態では、導管フラップを、生体吸収性を有する合成ポリマー材料から造ることができる。このような材料の例は、約5μm〜50μmの範囲の直径を有する合成ポリマー繊維から作製し得る。
導管フラップの他の好ましい特性には、摩損を起こすことが少ないか摩損を起こすことがないため、インプラントが隣接した軟骨に引き起こす損傷が最小限になるような組織接触表面がある。たとえば、導管フラップには、インプラントと隣接組織との間における運動に起因する損傷を最小限にする低摩擦表面または低摩擦コーティングが含まれ得る。
図3は、スカフォールドと導管フラップとがTの字の形状を有するような向きに配置されている半月板修復デバイス20の他の一形態を示している図である。この場合、スカフォールド22の端が、導管フラップ24を、第一の部分30および第二の部分32に分割している。導管フラップ24の第一の部分30は、「L」の字状の形態における導管の場合と同様、血管新生の多い領域に延在している。第二の部分32は血管新生の少ない領域に延在している。第二の部分は、半月板組織、特に緩んだ半月板組織への支えとなり、また、生体物質をさらなる半月板領域に渡すための導管となる。
他の一形態では、半月板修復デバイス20が、失われた半月板組織の再生を支援することができる。半月板の一部分が破壊されるか、取り除かれた場合、本発明のスカフォールドは、なくなった半月板組織の代わりになり、それによって、新しい細胞の成長を促進することができる。スカフォールドは、導管フラップを通して送り込まれた生体物質とともに、新しい細胞が成長して、なくなった半月板組織を再生させることができる環境を提供する。
図4は、楔形のスカフォールド22が、なくなった半月板組織の代用となるのに適している、そのような形態の一つを示している図である。導管フラップ24が、スカフォールドから血管化ゾーンに向けて延在するように、底の部分でスカフォールド22に取り付けられていることが好ましい。導管フラップ24は、このように、新組織の成長のために必要な栄養素、細胞、潤滑材料および/またはその他の材料のための経路を提供する。
半月板修復デバイスは、膝の関節内、特に半月板欠損部内に配置できるようなサイズであることが好ましい。本デバイスの寸法は、半月板欠損部のサイズと位置とを含む因子に依存して変る。当業者ならば、ある範囲の寸法が可能であることを認識できるであろう。本デバイスは、導管フラップが滑膜にまで延在するようにしつつ、適切な程度まで欠損部を満たせるほど十分大きいことが好ましい。逆に、本デバイスの寸法、特に導管フラップの寸法は、本デバイスが、膝の関節嚢の外の組織に損傷を引き起こさない程度に充分小さいことが好ましい。たとえば、本デバイスのサイズを、滑膜をあまり越えて延在しないようにしてある形態がある。一般的には、また、単なる例示としては、半月板修復デバイスの長さと幅とを、約0.5cm〜5cmの範囲にすることができる。
ある形態では、組織修復スカフォールドを半月板内の欠損部または断裂部に前もってサイズ合わせすることができる。あるいは、その代わりに、本デバイスのサイズを大きめにし、欠損部位内に合うように切断することもできる。たとえば、導管フラップが滑膜に到達でき、かつ、スカフォールドが半月板欠損部内に合う適切なサイズのものとなるように、外科医が、欠損部位または欠損の画像を見て半月板修復デバイスを切断できるのである。
当業者ならば、スカフォールド22と導管フラップ24とが、縫合、ヒートシーリング、化学結合、溶剤による結合、接着剤による結合、折り曲げまたは巻き取りシーリング、機械的プレス等の種々の技術によって係合できることを認識できよう。たとえば、導管フラップの一部分を、スカフォールドに対して折り曲げ、所望の位置でスカフォールドに固定することができる。ある形態では、スカフォールドと導管フラップとを一緒に縫合することが好ましい。
他の一形態では、スカフォールドと導管フラップとを、外科手術の前にあるいは外科手術中に、単一の材料片から形成し、トリミングして、所望の形状とサイズにすることができる。この単一片は、その後、折り曲げて、たとえば「L」の字状等に折り曲げて、所望の配置にすることが好ましい。
本発明のデバイスの他の一形態では、細胞成長導管フラップを、スカフォールド20なしで使用することができる。半月板の断裂の治療が、組織欠損部中に組織修復スカフォールドを配置することを必要とせず、半月板の断裂に生体物質を与えるのに導管フラップだけが用いられる場合がある。図6は、導管フラップ24だけが使用され、滑膜と組織欠損部21との間に配される場合を示している図である。あるいは、図7に示すように、導管フラップを、滑膜から組織欠損部を越える領域まで延在するのに適したものとすることができる。
半月板修復デバイスの組織スカフォールドと導管フラップとを形成するために使用される材料は、修復される半月板の断裂を支えるのに要する応力に耐えるに十分な強度を与えるものである限り、種々のものが可能である。さらに、本デバイスを形成するのに用いられる材料は、生体適合性を有し、ほとんどまたは全く異物反応を引き起こさないものであることが好ましい。スカフォールドと導管フラップとは、同一の生体適合性を有する材料から形成することも異なる生体適合性を有する材料から形成することもできる。
本半月板修復デバイスは、本デバイスを形成するのに用いられる材料と本デバイスを製造するのに用いられるプロセスの選択により、十分な強度と物性とを発揮することができる。典型的な形態では、本デバイスが、生体再吸収性または生体吸収性の材料から形成される。より好ましくは、身体環境で、時宜を得たやり方で再吸収する能力を有する生体再吸収性または生体吸収性の材料から形成される。生体再吸収性または生体吸収性の材料は、たとえば一年未満で再吸収できることが好ましい。
本発明の一形態では、半月板修復デバイスを、生体適合性を有するポリマーから形成することができる。本発明に係る導管フラップまたはスカフォールドを造るのに、種々の生体適合性を有するポリマーを使用することができる。これらの生体適合性を有するポリマーは、合成ポリマー、天然ポリマーまたはこれらの組み合わせであり得る。ここで用いられる用語「合成ポリマー」は、天然に生じる生体物質から造られるものであるとしても、天然には見出されないポリマーを意味する。用語「天然ポリマー」は、天然に生じるポリマーを意味する。
組織修復デバイスが少なくとも一つの合成ポリマーを含む形態では、適切な生体適合性を有する合成ポリマーとして、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン由来のポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基含有ポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)ならびにこれらのブレンド物およびコポリマーからなる群から選ばれたポリマーを含めることができる。本発明に用いられる適切な合成ポリマーとしては、コラーゲン、ラミニン、グリコサミノグリカン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギナート、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、シルク、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖、ポリヌクレオチドおよびこれらの組み合わせ中にある配列に基づく生合成ポリマーを含めることもできる。
本発明の目的に係る脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸ならびにD−,L−およびメソラクチドを含む);グリコリド(グリコール酸を含む);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシ吉草酸エステル;1,4−ジオキセパン−2−オン(そのダイマー,1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;シュウ酸エチレン;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンの、ホモポリマーおよびコポリマーならびにこれらのポリマーブレンド物があるが、これらに限られるわけではない。本発明で使用される脂肪族ポリエステルとしては、直鎖状、枝分かれ状またはスター構造を有するホモポリマーまたはコポリマー(ランダム、ブロック、セグメント化、テーパードブロック(tapered blocks)、グラフト、トリブロック等)があり得る。他の有用なポリマーとしては、ポリホスファゼン、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネートおよびε−カプロラクトンから造られた、コモノマー、ターモノマー(termonomer)およびより高次の混合モノマーをベースとするポリマーがある。
ある形態では、半月板修復デバイスに、少なくとも一つの天然ポリマーが含まれる。天然のポリマーの適切な例としては、フィブリンベースの物質、コラーゲンベースの物質、ヒアルロン酸ベースの物質、糖タンパク質ベースの物質、セルロースベースの物質、シルクおよびこれらの組み合わせがあるが、これらに限られるわけではない。
さらに別の一形態では、半月板修復デバイスに、たとえば、動物の、胃、膀胱、消化系、呼吸系、泌尿系、外皮系、生殖管または肝臓基底膜に見出されるような、天然に生じる細胞外基質物質(「ECM」)が含まれる。ECMは、たとえば、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ等のほ乳類の消化管に由来するものであることが好ましい。ブタの腸管に由来するものであることが最も好ましい。ECMは、好ましくは、小腸粘膜下組織(「SIS」)である。このSISには、粘膜の底部と共に、粘膜下組織、特に粘膜筋板および細胞層を含めることができる。
本発明の他の形態では、半月板修復デバイスを、たとえば、1dLあたり0.1g(g/dL)のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)のポリマー溶液中、25℃で測定したときのインヘレント粘度が約1.2dL/g〜4dL/gの範囲、より好ましくは、約1.2dL/g〜2dL/gの範囲、最も好ましくは約1.4dL/g〜2dL/gの範囲のポリマー等のエラストマーコポリマーから形成することができる。適切なエラストマーは、良好な引っ張り強さと良好な回復特性と共に、高い伸び率と低いモジュラスを示すものであることも好ましい。本発明の好ましい形態では、本エラストマーが、約200%を超える伸び率を示す。伸び率は約500%を超えることが好ましい。これらの伸びとモジュラス特性に加えて、本エラストマーは、約500psi(換算値は35.2kg/cm2)を超える引っ張り強さと約50lbs/インチ(換算値は8.94kg/cm)を超える引き裂き強さも有するべきである。引っ張り強さは約1,000psi(換算値は70.4kg/cm2)を超えることが好ましく、引き裂き強さは約80lbs/インチ(換算値は14.3kg/cm)を超えることが好ましい。
生体適合性を有するエラストマーの例としては、ε−カプロラクトンとグリコリドとのエラストマーコポリマーであって、ε−カプロラクトン対グリコリドのモル比が約35:65〜約65:35のもの、より好ましくは45:55〜35:65の範囲のもの;ε−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらのブレンド物および乳酸ポリマーならびに乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマーであって、ε−カプロラクトン対ラクチドのモル比が、約95:5〜約30:70のもの、より好ましくは、45:55〜30:70のものまたは約95:5〜約85:15の範囲のもの;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサ−2−オン)とラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらのブレンド物および乳酸ポリマーならびに乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマーであって、p−ジオキサノン対ラクチドのモル比が約40:60〜約60:40の範囲のもの;ε−カプロラクトンとp−ジオキサノンのエラストマーコポリマーであって、ε−カプロラクトン対p−ジオキサノンのモル比が約30:70〜約70:30の範囲のもの;p−ジオキサノンとトリメチレンカーボネートとのエラストマーコポリマーであって、p−ジオキサノン対トリメチレンカーボネートのモル比が約30:70〜約70:30の範囲のもの;トリメチレンカーボネートとグリコリド(ポリグリコール酸を含む)とのエラストマーコポリマーであって、トリメチレンカーボネート対グリコリドのモル比が約30:70〜約70:30の範囲のもの;トリメチレンカーボネートとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらのブレンド物および乳酸ポリマーならびに乳酸コポリマーを含む)とのエラストマーコポリマーであって、トリメチレンカーボネート対ラクチドのモル比が約30:70〜約70:30の範囲のもの;およびこれらのブレンド物があるが、これらに限られるわけではない。適切な生体適合性を有するエラストマーの他の例は、特許文献1に記載されている。
本発明の他の一形態では、半月板修復デバイスを、ジオキサン溶剤中で造られたε−カプロラクトンとグリコリドが35:65のコポリマーであるエラストマーから、ポリジオキサノンのメッシュを含んで、形成することができる。他の一形態では、本組織修復デバイスを形成するのに使用されるエラストマーが、ε−カプロラクトンとラクチドが40:60のコポリマーで、ポリジオキサノンのメッシュを含むものであり得る。さらに他の一形態では、エラストマーが、ε−カプロラクトンとグリコリドが35:65のコポリマーと、ε−カプロラクトンとラクチドが40:60のコポリマーとの50:50ブレンド物である。ポリジオキサノンのメッシュは、一層の厚みの二次元メッシュの形状または多層の厚みの三次元メッシュの形状であり得る。
本発明のさらに他の一形態では、半月板修復デバイスを、開放セル多孔構造の細孔を有するポリマー発泡体成分から形成することができる。その孔径は種々のものが可能であるが、組織の内殖が可能なサイズのものが好ましい。孔径は、約50μm〜1,000μmの範囲がより好ましく、約50μm〜500μmの範囲がさらにより好ましい。ポリマー発泡体成分には、オプションで、補強成分(たとえば、上記繊維製品等)を含めることができる。ポリマー発泡体成分が補強成分を含む形態では、発泡体成分の細孔が補強成分のメッシュを貫通し、補強成分とインターロックするように、発泡体成分を補強成分と一体化することができる。
一つの成分からもう一つの成分へ、勾配様の構造を持って移行するポリマーブレンド物を使用して半月板修復デバイスを形成することが好ましい場合もある。たとえば、ε−カプロラクトン−コ−グリコリドのエラストマーとε−カプロラクトン−コ−ラクチドとを(たとえば、約5:95のモル比で)ブレンドすることにより、より軟らかいスポンジ状の物質からより固い硬質物質へ移行するデバイスを作製することができる。当業者ならば、同様の勾配効果を得るために、または、異なる勾配(たとえば異なる吸収プロフィール、応力応答プロフィール、異なる程度の弾性または異なる多孔率)を与えるために他のポリマーブレンド物を使用できることを明らかに認識するであろう。
当業者ならば、生体適合性を有する本発明の組織修復デバイスを形成するための適切な材料の選択がいくつかの因子に依存することを認識するであろう。これらの因子には、生体内での機械的な性能;細胞付着性、増殖、マイグレーションおよび分化の観点からの材料に対する細胞の応答性;生体適合性;および、オプションで、生体吸収(または生分解)速度が含まれる。他の関連因子としては、化学組成、成分の空間分布、ポリマーの分子量および結晶化度が含まれる。
生体内の条件の下での吸収時間の相違も、本発明に係るデバイスを形成するときに二つの異なるコポリマーを組み合わせるための基礎となり得る。たとえば、ε−カプロラクトンとグリコリドの35:65コポリマー(比較的速吸収性のポリマー)と、ε−カプロラクトンとL−ラクチドの40:60コポリマー(比較的遅吸収性のポリマー)とをブレンドして、生体適合性を有する半月板修復デバイスを形成することができる。使用される処理技術に依存して、これら二つの成分は、相互にランダムに連結した連続的二相となることも、これら二つの成分層間で良好に一体化された界面を有する積層タイプの複合体形状の勾配様の構造を持つこともできる。
この複合体インプラントを形成するのに用いられる半月板修復デバイスには、たとえば、織り構造、編み構造、縦編み構造(すなわちレース様構造)、不織構造および組みひも構造を有する、任意の吸収性または非吸収性の繊維製品からなる補強材料を含めることもできる。ある形態では、補強材料がメッシュ様の構造を有する。上記の構造のいずれについても、材料の密度もしくは肌理、材料の編みもしくは織りのタイプ、材料の厚みを変更することにより、または材料に粒子を埋め込むことにより、材料の機械的特性を変えることができる。材料の機械的特性は、メッシュ内に、繊維が互いに物理的に結合し、または、たとえば接着剤やポリマー等の他の剤と物理的に結合するサイトを造ることにより、変えることもできる。
補強成分を造るのに用いられる繊維には、モノフィラメント、ヤーン、糸、組みひもまたは繊維束を含めることができる。これらの繊維には、生体吸収性の材料(たとえばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカーボネート(TMC)、これらのコポリマーまたはブレンド物)を含む、どのような生体適合性を有する材料から造ることもできる。これらの繊維は、また、天然ポリマーに基づく、どのような生体適合性を有する材料(たとえば、シルクおよびコラーゲンベースの材料)からでも造ることができる。これらの繊維は、また、たとえば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリ(ビニルアルコール)等の、非再吸収性である、どのような生体適合性を有する繊維からでも造ることができる。ある形態では、ラクチドとグリコリドが95:5のコポリマーから繊維が作製される。
また、この半月板修復デバイスも、さらにいかなる補強材料も、組織の内殖を許容する細孔または穿孔を有する、薄い、穿孔含有エラストマーシートから造ることもできる。そのようなシートは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリジオキサノン(PDO)のブレンド物またはコポリマーから造ることができる。
当業者ならば、本発明に係る複合品インプラントを補強するために一層以上の補強材料を使用できることを認識できよう。さらに、同一の構造および化学的性質のまたは異なる構造と化学的性質の生体分解性の繊維製品(たとえば、メッシュ等)を、重ね合わせて、優れた機械的強度を有する、生体適合性のある半月板修復デバイスを造ることができる。
ある形態では、本発明に係る半月板修復デバイスに、高密度の不織ポリマー材料が含まれる。好ましくは、不織材料には、繊維、フィラメントまたはフィルム様のフィラメント構造体の層またはネットワークをインターロックすることによって造られる、柔軟な多孔構造が含められる。不織布を造るのに用いられるポリマー材料には、上記にリストされる生体吸収性の合成ポリマー材料を含めることができる。不織布には、さらに、スカフォールドを補強するための生体適合性を有する発泡体を含めることができる。このような材料の例は、現在米国特許庁に係属中の特許文献2に開示されている。
本発明に係る半月板修復デバイスには、生育可能組織の供給源を含められることが好ましい。生育可能組織の供与源には種々異なるものがあり得、この組織供与源には種々の形態のものがあり得る。しかしながら、ある形態では、組織が細かく切り刻まれた組織フラグメントの形状を取り、このことにより、再生と治癒反応の有効性が高められる。他の一形態では、生育可能組織が、特許文献3に開示されたように、組織の再生および/またはリモデリングの能力を有する生細胞を含む健常な組織から採取された組織のスライスまたは組織片の形状であり得る。組織スライスは、損傷部位または欠損部位での埋植に適した形状を持つように採取することが好ましい。採取した組織スライスは、組織スライス内の生細胞が、外へマイグレーションし、増殖して、修復部位のまわりの組織と一体化することができるような寸法になっていることが好ましい。
ここで使用される用語「スライス」は、上述のいずれかのタイプの組織に由来し、組織インプラントを造るために使用される、薄い切片、細長片またはかけらを意味する。組織スライスは、約1mmより薄い厚さを有することが好ましく、約200μm〜約500μmの範囲の厚さを有することがより好ましい。薄いプロフィールを有することにより、組織スライスからの細胞の適切なマイグレーションが確実になる。しかしながら、これらのパラメータは、組織スライスからの細胞のマイグレーションにあまり影響を及ぼさないので、組織スライスは、欠損部への埋植に適切なものであれば、どのような長さのものでもまたどのような幅のものでも可能であると考えられる。
本発明に係るデバイスに組織フラグメントが使用される場合、各々の組織フラグメントの粒径も種々変えることができる。組織サイズを、約0.1mm3〜3mm3の範囲、約0.5mm3〜1mm3の範囲、約1mm3〜2mm3の範囲または約2mm3〜3mm3の範囲とする例を挙げることができるが、これらに限られるわけではない。しかしながら、組織の粒径としては1mm3未満が好ましい。
組織供与源が由来する適切な組織としては、たとえば、軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、骨組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、脂肪組織、腎臓組織、骨髄、肝臓組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、維管束組織、血液およびこれらの組み合わせがある。組織インプラントを造るのに使用される組織は、オートジェニックな(autogeneic)組織、同種異系の(allogeneic)組織または異種の(xenogeneic)組織であり得る。好ましい形態では、生育可能組織が、オートジェニックな半月板組織である。
生育可能組織は、オプションで、キャリア(ゲル様キャリアまたは接着剤等)等の他の種々の材料と組み合わせることもできる。ゲル様キャリアには、生体ヒドロゲルまたは合成ヒドロゲル、たとえばヒアルロン酸、フィブリン接着剤、フィブリンクロット、コラーゲンゲル、コラーゲンベースの接着剤、アルギン酸ゲル、架橋アルギナート、キトサン、合成アクリレートベースのゲル、多血小板血漿(PRP)、貧血小板血漿(PPP)、PRPクロット、PPPクロット、血液、血餅、血液成分、血液成分クロット、マトリゲル(Matrigel)、アガロース、キチン、キトサン、多糖、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、可溶化基底膜またはこれらの組み合わせがあり得るが、これらに限られるわけではない。適切な接着剤としては、ヒアルロン酸、フィブリン接着剤、フィブリンクロット、コラーゲンゲル、コラーゲンベースの接着剤、アルギン酸ゲル、架橋アルギナート、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリンベースの接着剤、イガイ類ベースの接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)ベースの接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)ベースの接着剤、セルロースベースの接着剤、多糖ベースの接着剤、合成アクリレートベースの接着剤、多血小板血漿(PRP)、貧血小板血漿(PPP)、PRPクロット、PPPクロット、血液、血餅、血液成分、血液成分クロット、ポリエチレングリコールベースの接着剤、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate)(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカンおよびこれらの組み合わせがあるが、これらに限られるわけではない。
生育可能組織は、生育可能組織の周囲の細胞外マトリックスからの組織のマイグレーションを容易にするためのマトリックス消化酵素と接触させることもできる。これらの酵素は、細胞外マトリックスから組織欠損部あるいは損傷部またはスカフォールド材料への細胞のマイグレーション速度を増大するために使用することができる。本発明において使用することができる適切なマトリックス消化酵素としては、コラゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、ペプチダーゼ、サーモリシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ゼラチナーゼおよびプロテアーゼがあるが、これらに限られるわけではない。ゲル−キャリア中の細かく刻まれた組織粒子の濃度は、約1mg/cm3〜1,000mg/cm3の範囲が好ましく、約1mg/cm3〜200mg/cm3の範囲がより好ましい。
本発明に係る他の一形態では、生理活性剤を、半月板修復デバイス内に組み入れ、および/または、半月板修復デバイスに塗布することができる。さらに/あるいは生育可能組織に塗布することができる。生育可能組織の添加前に、生理活性剤をデバイス内に組み入れ、またはデバイス上に塗布することが好ましい。生理活性剤は、損傷部位に存在する場合に影響を受けた組織の治癒および/または再生を促進する種々のエフェクターの中から選択することができる。実際に治癒を推進あるい促進する化合物または剤であることに加え、エフェクターには、感染を防ぐ化合物または剤(たとえば、抗菌剤や抗生物質)、炎症を減少させる化合物または剤(たとえば、抗炎症剤)、癒着の形成を防止しまたは最小にする、酸化再生セルロース等の化合物、(たとえば、Ethicon社から入手可能なINTERCEED(登録商標)およびSURGICEL(登録商標))、ヒアルロン酸および免疫系を抑制する化合物または剤(たとえば、免疫抑制剤)を含めることもできる。
本発明に係るインプラント内に存在する他のタイプのエフェクターとしては、異種のまたは自己由来の成長因子、タンパク質(マトリックスタンパク質等)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛剤、ウィルス、ウィルス粒子および細胞の諸タイプが含まれ得るが、これらに限られるわけではない。一以上の、同一または異なる機能のエフェクターをインプラント内に組み入れてもよいと理解される。
適切なエフェクターの例としては、損傷組織の治癒および/または再生を推進することが知られている異種または自己由来の多数の成長因子がある。これらの成長因子は、直接半月板修復デバイスに組み入れることができ、あるいはその代わりに、本デバイスに、成長因子の供与源(たとえば血小板等)を含めることができる。ここで使用される「生理活性剤」には、次の一以上を含めることができる。すなわち、走化性の剤;治療薬{たとえば、抗生物質、ステロイド性および非ステロイド性の鎮痛剤および抗炎症剤、抗拒絶反応薬(たとえば免疫抑制剤および抗癌薬)};種々のタンパク質{たとえばショートターム(short term)ペプチド、骨形態形成タンパク質、糖タンパク質およびリポタンパク質};細胞付着性メディエーター;生物活性のあるリガンド;インテグリン結合配列;リガンド;種々の成長および/または分化剤およびこれらのフラグメント{たとえば、上皮細胞成長因子(EGF)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(たとえばbFGF)、血小板由来の成長因子(PDGF)、インシュリン由来の成長因子(たとえばIGF−1、IGF−II)および形質転換成長因子(たとえばTGF−β I〜III)、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形態形成タンパク質(たとえば、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−12)、ソニックヘッジホッグ、成長分化因子(たとえばGDF5、GDF6、GDF8)、ヒトの組み替え成長因子(たとえばMP52)、軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP−1)};特定の成長因子のアップレギュレーションに影響を及ぼす小分子;テネイシン−C;ヒアルロン酸;コンドロイチン硫酸;フィブロネクチン;デコリン;トロンボエラスチン;トロンビン由来のペプチド;ヘパリン結合ドメイン;ヘパリン;ヘパラン硫酸;DNAフラグメントおよびDNAプラスミドの一以上を含めることができる。適切なエフェクターには、同様に、上述の剤のアゴニストおよびアンタゴニストが含められる。成長因子には、上述の成長因子の組み合わせを含めることもできる。さらに、成長因子は、血液中の血小板から供給される自己由来の成長因子でもあり得る。この場合、血小板からの成長因子は、種々の成長因子の内容の不明確な混合物(undefined cocktail)である。このような他の物質が、整形外科分野における治癒価値を有する場合、これらの物質の少なくとも一部は、本発明において用途があり、このような物質は、別途明示的に限定されない限り、「生理活性剤」の意味内に含められるべきであると考えられる。
エフェクターとしての使用に適した生体由来の剤としては、次の一以上が含められる。すなわち、骨(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片)および骨派生物;たとえば半月板組織とその派生物等の軟骨(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);靭帯(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片)およびその派生物;たとえば粘膜下組織等の腸管組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば粘膜下組織等の胃組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば粘膜下組織等の膀胱組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば粘膜下組織等の栄養組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば粘膜下組織等の呼吸組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば粘膜下組織等の生殖組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);たとえば肝臓基底膜等の肝臓組織の派生物(自家移植片、同種異系移植片および異種移植片);皮膚組織の派生物;多血小板血漿(PRP)、貧血小板血漿、骨髄穿刺液、デミネラライズド(demineralized)骨基質、インシュリン由来の成長因子、全血、フィブリンおよび血餅の一以上が含められる。精製ECMおよび他のコラーゲン供与源も、適切な生体由来の剤である。このような他の物質が、整形外科分野における治癒価値を有する場合、これらの物質の少なくとも一部は、本発明において用途があり、このような物質は、別途明示的に限定されない限り、「生体由来の剤」の意味内に含めるべきであると考えられる。
生体由来の剤には、生物学的にリモデリング可能なコラーゲン組織マトリックスも含まれる。用語「生物学的にリモデリング可能なコラーゲン組織マトリックス」および「天然に発生する、生物学的にリモデリング可能なコラーゲン組織マトリックス」には、その供給源の如何に拘わらず、皮膚、動脈、静脈、心膜、心臓弁、硬膜、靭帯、骨、軟骨、膀胱、肝臓、胃、筋膜および小腸からなる群から選ばれた天然組織に由来するマトリックスが含まれる。用語「天然に発生する、生物学的にリモデリング可能なコラーゲン組織マトリックス」は、清潔にし、処理し、殺菌し、オプションで架橋したマトリックス材料を意味することを意図するものであるが、天然の繊維を精製し、精製された天然繊維からマトリックス材料を再形成することは、天然に発生する、生物学的にリモデリング可能なコラーゲン組織マトリックスの定義の範疇に属するわけではない。
インプラント内に存在し得るタンパク質には、インプラント内に収納された細胞または他の生物源(たとえば血小板等)から分泌されるタンパク質および分離された形態でインプラント内に存在するタンパク質が含まれる。分離された形態のタンパク質は、一般的に、約55%以上の純度を有する。すなわち、他の細胞タンパク質、細胞分子、細胞破片等から分離されている。分離されたタンパク質は、少なくとも65%の純度を有することがより好ましく、少なくとも約75%〜95%の純度を有することがもっとも好ましい。上記にもかかわらず、当業者ならば、約55%未満の純度を有するタンパク質でも、本発明の範疇に属するものと考えられることを認識するであろう。ここで用いられる用語「タンパク質」には、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチドおよびこれらのフラグメントが含まれる。エフェクターとして有用なタンパク質の例には、プレイオトロフィン、エンドセリン、テネイシン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、マイクロフィラメント、中間径フィラメント、抗体、エラスチン、フィブリリンおよびこれらのフラグメントがあるが、これらに限られるわけではない。
細胞の癒合に役立つ高荷電の多糖であるグリコサミノグリカンは、本発明に係るエフェクターとしても役立ち得る。エフェクターとして有用なグリコサミノグリカンの例としては、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナン(別名ヒアルロン酸)およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限られるわけではない。
本発明に係る半月板修復デバイスには、エフェクターとして役に立つ細胞を組み入れることもできる。本発明に係るエフェクターとして役立つ適切な細胞タイプには、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞プロジェニター、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、脂肪細胞、単核細胞、プラズマ細胞、肥満細胞、臍帯細胞、間質細胞、間葉幹細胞、上皮細胞、筋芽細胞、腱細胞、靭帯線維芽細胞、ニューロン、骨髄細胞、滑膜細胞、ES細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血始原細胞;成体組織から分離された幹細胞;遺伝子形質転換細胞;軟骨細胞と他の細胞との組み合わせ;骨細胞と他の細胞との組み合わせ;滑膜細胞と他の細胞との組み合わせ;骨髄細胞と他の細胞との組み合わせ;間葉細胞と他の細胞との組み合わせ;間質細胞と他の細胞との組み合わせ;幹細胞と他の細胞との組み合わせ;ES細胞と他の細胞との組み合わせ;成体組織から分離された前駆細胞と他の細胞との組み合わせ;末梢血始原細胞と他の細胞との組み合わせ;成体組織から分離された幹細胞と他の細胞との組み合わせ;および、遺伝子形質転換細胞と他の細胞との組み合わせがあるが、これらに限られるわけではない。他の細胞が、整形外科分野における治癒価値を有する場合、これらの細胞の少なくとも一部は、本発明において用途があり、このような細胞は、別途明示的に限定されない限り、「細胞」の意味内に含めるべきであると考えられる。
細胞には、一般的に、同族リガンド(たとえば刺激物質)に応答性を有する受容分子を表面に有する。刺激物質は、その同族受容体と接触している場合に、リセプターを持つ細胞が特定の生物学的作用を生じるように誘導するリガンドである。たとえば、刺激物質(またはリガンド)に応答して、細胞が、有意水準の二次メッセンジャー(Ca+2等)を生じ、この二次メッセンジャーが、ついで、細胞プロセスに、(本実施例と調和した)プロテインキナーゼCのような、タンパク質のリン酸化等の後続効果をもたらし得る。場合によっては、一旦細胞が適切な刺激物質で刺激されると、細胞は、通常、タンパク質(糖タンパク質、プロテオグリカンおよびリポタンパク質を含む)の形の細胞メッセンジャーを分泌する。この細胞メッセンジャーは、抗体(たとえば、プラズマ細胞から分泌された抗体)、ホルモン(たとえばパラクリンホルモン、オートクリンホルモンまたは外分泌(exocrine)ホルモン)、サイトカイン、または、これらの天然あるいは合成フラグメントであり得る。
本発明に係る半月板修復デバイスは、核酸、ウィルスまたはウィルス粒子が、少なくとも一つの対象遺伝子産物をエンコードする対象遺伝子を特定の細胞または細胞型に運ぶ、遺伝子治療技術に使用することもできる。したがって、生物学的なエフェクターは、核酸(たとえばDNA、RNAまたはオリゴヌクレオチド)、ウィルス、ウィルス粒子または非ウイルスベクターであり得る。ウィルスおよびウィルス粒子は、DNAウィルスあるいはRNAウィルスであるか、または、DNAウィルスあるいはRNAウィルスに由来するものであり得る。対象遺伝子産物は、タンパク質、ポリペプチド、干渉リボ核酸(iRNA)およびこれらの組み合わせからなる群から選ぶことが好ましい。
一旦、適用できる核酸および/またはウィルス剤(すなわちウィルスまたはウィルス粒子)を半月板修復デバイスに組み入れれば、本デバイスを、ついで、一種の生物学的応答を惹起するために、埋植することができる。核酸またはウィルス剤は、ついで、細胞に取り込まれ、その細胞により、エンコードするタンパク質が局所的に産生され得る。ある形態では、核酸またはウィルス剤は、細かく切り刻まれた組織懸濁液の組織フラグメント内の細胞により取り込まれ得る。また、別の形態では、核酸またはウィルス剤が、損傷した組織部位の周囲の組織中の細胞によって取り込まれ得る。当業者ならば、産生されたタンパク質が、組織が損傷や病気を治癒する能力の向上を促進し、伝染病に立ち向かい、あるいは炎症性反応を減少させる、上述のタイプのタンパク質またはそれらに類似したタンパク質であり得ることを認識するであろう。核酸は、組織回復プロセスや他の正常な生物学的プロセスに否定的な影響を及ぼし得る望ましくない遺伝子産物の形質発現を遮断するのに用いることもできる。DNA、RNAおよびウィルス剤は、しばしば、このような形質発現遮断機能(遺伝子形質発現ノックアウトとしても知られている)を得るために用いられる。
当業者ならば、医学の原理と適用できる治療対象とに基づいて、生理活性剤の識別を外科医が行ってもよいことを認識するであろう。組織修復デバイスの製造前、製造中あるいは製造後に、または本デバイスの外科的配置の前、配置中あるいは配置後に、生理活性剤または組織修復インプラントのエフェクターを組織修復デバイス内に組み入れることができることが理解される。
例として、生理活性剤を含んだ適切な容器中に、半月板修復デバイスを置くことによって、生理活性剤を半月板修復デバイスに組み入れることができる。適切な長さの時間後および適切な条件の下、本デバイスに生理活性剤が含浸される。あるいは、たとえば、適切に計った注射器を使用して、生物学的な剤(biological agent)をスカフォールドおよび/または導管フラップ中に注入することにより、生理活性剤を半月板修復デバイス内に取り入れることができる。本デバイスに適切な生理活性剤を組み込むために、当業者に周知の他の方法を使用することができる。このような技術としては、混合、プレス、スプレッディング(spreading)、遠心分離および生理活性剤を本デバイスに配置することが含まれる。あるいは、本デバイスに注入する前に、生理活性剤をゲル様キャリアと混合することができる。
他の一形態では、外科的に埋植された、生理活性剤を持たない半月板修復デバイスに生物学的な剤を注入することができる。あるいは、少なくとも一つの生理活性剤を含むインプラントに、追加量の生理活性剤を加えることができる。外科的に埋植されたデバイス内に生理活性剤を組み入れる一つの方法として、適切に計った注射器を使用して注入する方法がある。
半月板修復デバイスに含まれる生理活性剤の量は、装置のサイズ、気孔率、生活性成分の種類および組織修復インプラントの意図された目的等の種々の因子に従って異なる。当業者ならば、組織の治癒を促進および/または捗らせるために、所与の用途において与えられるべき生理活性剤の適切な量を容易に決めることができるであろう。
本発明に係る半月板修復デバイスを患者の体内に入れた後、損傷を受けたまたは断裂した半月板組織内に本デバイスを固定することが好ましい。ある形態では、本修復デバイスが適切な場所にしっかりととどまるように、本修復デバイスを隣接する組織に固定する。本修復デバイスは、半月板組織や脛骨組織のような、軟組織および/または硬組織にしっかり止めることができる。他の一形態では、損傷を受けたまたは緩んだ組織を適切な場所に保持するために、本修復デバイスを、半月板組織にさらに固定し、または代替的に固定する場合がある。本修復デバイスを緩んだ半月板組織とつなぐことにより、損傷を受けた組織領域を支え、それによって急速な治癒を促進することができる。当業者ならば、本デバイスを硬組織および/または軟組織に固定するために、たとえば、干渉フィット(interference fit)、縫合、接着剤、ステープル、組織の仮縫い、ピンおよび/または他の公知の外科用固定技術等の種々の技術を使用できることを認識するであろう。
本発明には、少なくとも本組織修復デバイスの一部を半月板欠損部と接触させて配置することにより、本発明に係る組織修復デバイスで、半月板欠損部を外科的に修復する方法も含まれる。ある形態では、スカフォールドを半月板の組織断裂部に配置し、細胞成長導管フラップを脛骨表面に接触して配置する。当業者ならば、血液のような生体材料が本修復デバイスと脛骨表面との間に薄層を形成する場合に導管フラップを脛骨表面の近くに配置することが、脛骨表面との接触に含まれることを認識するであろう。本デバイスは、ついで、適切な場所に固定される。この場合、縫合糸がスカフォールドおよび半月板を貫通して延在していることが好ましい。
本半月板修復デバイスは、あらゆるタイプの半月板組織欠損を固定するのに使用することができる。たとえば、本デバイスを、バケツ柄状断裂、縦断裂、横断裂、変性断裂、ラジアル方向の断裂、フラップ状断裂およびオウム嘴状断裂等の断裂の修復に使用することができる。
ある形態では、本方法に、さらに、半月板組織の再生に必要な生体物質の流れを推進するために、組織欠損部でのまたはその近傍でのブリージング(bleeding)を誘発するステップを含めることができる。半月板および/または滑膜は、本組織修復デバイスを埋植する前にやすり掛け(rasp)することが好ましい。
本半月板修復デバイスは、埋植した後に適切な場所に固定することが好ましい。ある形態では、図2〜図4に示すように、デバイス20を適切な場所に縫合する。縫合糸28は、半月板の一部およびスカフォールド22を貫通して延在し、本修復デバイスを損傷を受けたまたは断裂した半月板組織にしっかりと取り付ける。あるいは、半月板および導管フラップ24を貫通して縫合糸を延在させることができる。図5は、縫合糸28が、組織スカフォールドと導管フラップの両方を半月板組織に固定している様子を示している図である。導管フラップが単独で使われる場合、図6および図7に示すように、導管フラップを半月板に縫合することが好ましい。
以下の例は、本発明の原理とその実際を例示するものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲と精神内に属するその他多くの形態があることは、当業者には明らかであろう。
実施例
50/50 PDS/VICRYLの不織材料から造られた組織修復インプラントを使って、組織インプラントの滑膜の近傍への配置を比較評価した。インプラントは、約11mm×7mm×1mmの寸法と、236.6mg/mLの密度を持っていた。
本研究において使用した動物は、ヌビアヤギであった。後膝関節への内側進入路を造った。内側側副靱帯の両側の関節嚢を切開した。内側側副靱帯を分離し、中間物質をカットした。生体組織検査用孔開け器を使って、半月板の中央部分に、全厚に渡る欠損を造った。血液の血小板を濃縮して、多血小板血漿(PRP)を造り、このPRPから組織インプラントにクロットを造った。ついで、以下に説明するように、組織インプラントを関連PRPクロットと共に、欠損中に配置した。
本組織インプラントは、修正インサイドアウト技術(modified inside-out technique)を使用して、二つのポリプロピレン水平マットレス縫合糸で安定化した。内側側副靱帯は、ロッキングループ縫合パターンを使用して、二つの縫合アンカー{ミテック ワールドワイド社(Mitek Worldwide)(マサチューセッツ州、Norwood)の、Ethibond #2付きSuper QuickAnchor Plus}で安定化した。関節嚢は、連続縫合パターンで閉じた。残りの、筋膜層、筋肉層、皮下層および皮膚層を閉じた。皮膚を閉じた後、脚を改造シュローダー−トーマス副子に置いた。それぞれのヤギの副子の下の部位に、一動物につき100μgの投与量のフェンタニール・パッチを置いた。外科手術後約28日目に、各々の動物から副子を取り除いた。総体的分析と組織病理学研究のために、ヤギを外科手術の6週間後に殺処分した。半月板を取り除き、10%の中性緩衝ホルマリンで固定した。サンプルはパラフィンで処理し、セクションに切り分け、ヘマトキシリン−エオジンで着色した。
図8と図9は、組織インプラントを、滑膜近傍または少し離れた場所に置いた結果を示している図である。図8において、組織インプラントは、半月板欠損部に置かれているが、脛骨表面まで延在してはいない。図9では反対に、インプラントの一部が、脛骨表面上に延在して、半月板の周辺で滑膜と接触している。インプラントを滑膜と接触して配置することによって、半月板欠損が、細胞を成長させるために充分な生体物質を受け取っている。このようにして、より多くのパンヌスが脛骨表面に形成される。この結果は、より効果的な半月板修復デバイスを示している。
当業者ならば、上記の諸形態に基づく、本発明の更なる特徴および効果を認識できるであろう。したがって、本発明は、添付の請求項によって示されること以外には、これまで詳細に開示し説明したことにより制限されるべきものではない。ここに引用した全ての出版物と参照文献は、参照によりその全体が本明細書に明確に包含される。
本発明に係る好ましい実施態様は以下の通りである。
(1)生体適合性を有する半月板修復デバイスであって、半月板の欠損部と接触して配置するのに適した、生体適合性を有する組織修復スカフォールドと、当該組織修復スカフォールドに取り付けられており、脛骨表面に接触して、半月板組織欠損部へ生体物質を受け渡すのに適した細胞成長導管フラップとを含んでなる修復デバイス。
(2)前記細胞成長導管フラップが、滑膜から前記組織修復スカフォールドならびに前記半月板組織欠損部への細胞および栄養素の移動を可能とするための導管を提供する、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(3)前記細胞成長導管フラップが滑膜に接触するのに適したものである、実施態様(2)に記載の修復デバイス。
(4)前記組織修復スカフォールドが、生体吸収性物質から造られたものである、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(5)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、相異なる材料から造られている、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(6)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、同一の材料から造られている、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(7)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、グリコリド、ラクチドおよびジオキサノンからなる群から選ばれたモノマーに由来する少なくとも一つのポリマーを含んでなる、実施態様(6)に記載の修復デバイス。
(8)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとがポリジオキサノンを含んでなる、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(9)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとがグリコリドとL−ラクチドとのコポリマーを含んでなる、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(10)前記組織修復スカフォールドが、天然ポリマー、合成ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも一つの材料から形成されたものである、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(11)さらに、前記組織修復スカフォールド上または組織修復スカフォールド内に配置された生育可能組織であって、組織修復スカフォールドに隣接する本来の組織と一体化するのに有効な生育可能組織を含んでなる、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(12)さらに、細胞の成長を促進するのに有効な少なくとも一つの生理活性物質を含んでなる、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(13)前記生理活性物質が、多血小板血漿、軟骨由来の形態形成タンパク質、ヒトの組み替え成長因子およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたものである、実施態様(12)に記載の修復デバイス。
(14)前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが単一片から形成されたものである、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(15)前記細胞成長導管フラップが、前記組織修復スカフォールドに対し実質的に垂直方向にあるような向きに配置されている、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(16)前記細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとが、Tの字状になるように、それぞれに対し配置されている、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(17)前記細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとが、Lの字状になるように、それぞれに対し配置されている、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(18)前記細胞成長導管フラップが、前記組織修復スカフォールドの厚さより薄い、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(19)前記細胞成長導管フラップの密度が約150mg/mL〜350mg/mLの範囲にある、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(20)前記細胞成長導管フラップの空隙体積が約50%〜95%の範囲にある、実施態様(1)に記載の修復デバイス。
(21)半月板欠損部の外科的修復方法であって、細胞成長導管フラップを取り付けた組織修復スカフォールドを与え、当該細胞成長導管フラップを脛骨表面に接触して配置する一方、当該組織修復スカフォールドを半月板欠損部に接触させるように配置し、当該組織修復スカフォールドを適切な場所に固定することを含み、当該細胞成長導管フラップが、細胞および栄養素を半月板欠損部に移動させ、これによって、半月板の治癒を促進できる、方法。
(22)さらに、細胞成長導管フラップを配置する前に半月板にやすり掛けする工程を有する、実施態様(21)に記載の方法。
(23)さらに、細胞成長導管フラップを配置する前に滑膜にやすり掛けする工程を有する、実施態様(21)に記載の方法。
(24)さらに、細胞成長導管フラップを滑膜と接触するように配置することを含む、実施態様(21)に記載の方法。
(25)半月板欠損部の外科的修復方法であって、細胞成長導管フラップを与え、当該細胞成長導管フラップを、半月板組織欠損部と脛骨表面とに接触して配置し、細胞成長導管フラップを適切な場所に固定することを含み、当該細胞成長導管フラップが、細胞および栄養素を半月板欠損部に移動させ、これによって半月板の治癒を促進することが効果的にできる、方法。
(26)前記細胞成長導管フラップを滑膜に接触して配置する、実施態様(25)に記載の方法。
(27)前記細胞成長導管フラップが、滑膜から半月板組織欠損部へ細胞および栄養素の移動を可能にする導管を与える、実施態様(25)に記載の方法。
(28)さらに、前記細胞成長導管フラップを配置する前に、半月板にやすり掛けする工程を有する、実施態様(25)に記載の方法。
(29)さらに、前記細胞成長導管フラップを配置する前に、滑膜にやすり掛けする工程有する、実施態様(25)に記載の方法。
本発明は、詳細な説明と以下の図面とにより、より充分に理解されるであろう。
半月板の膝関節の分解図である。 本発明に係る半月板修復デバイスのある形態の側面図である。 本発明に係る半月板修復デバイスの他の一形態の側面図である。 本発明の他の一形態に係る半月板修復デバイスの側面図である。 本発明に係る半月板修復デバイスのさらに他の一形態の側面図である。 本発明に係る半月板修復デバイスの他の一形態の側面図である。 本発明の他の一形態に係る半月板修復デバイスの側面図である。 半月板の縁から少し離れた位置にある、埋植組織修復スカフォールドの顕微鏡写真である。 半月板の縁の近くの脛骨の表面にある、埋植組織修復スカフォールドの顕微鏡写真である。
符号の説明
10 半月板
12 脛骨
14 大腿骨
18 ホワイトゾーン
19 レッドゾーン
20 半月板修復デバイス
21 断裂
22 組織修復スカフォールド
24 細胞成長導管フラップ
26 交差点
28 縫合糸
30 第一の部分
32 第二の部分

Claims (21)

  1. 生体適合性を有する半月板修復デバイスであって、
    半月板の欠損部と接触して配置するのに適した、生体適合性を有する組織修復スカフォールドと、
    当該組織修復スカフォールドに取り付けられており、脛骨表面に接触して、半月板組織欠損部へ生体物質を受け渡すのに適した細胞成長導管フラップと
    を含んでなる修復デバイス。
  2. 前記細胞成長導管フラップが、滑膜から前記組織修復スカフォールドならびに前記半月板組織欠損部への細胞および栄養素の移動を可能とするための導管を提供する、請求項1に記載の修復デバイス。
  3. 前記細胞成長導管フラップが滑膜に接触するのに適したものである、請求項2に記載の修復デバイス。
  4. 前記組織修復スカフォールドが、生体吸収性物質から造られたものである、請求項1に記載の修復デバイス。
  5. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、相異なる材料から造られている、請求項1に記載の修復デバイス。
  6. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、同一の材料から造られている、請求項1に記載の修復デバイス。
  7. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが、グリコリド、ラクチドおよびジオキサノンからなる群から選ばれたモノマーに由来する少なくとも一つのポリマーを含んでなる、請求項6に記載の修復デバイス。
  8. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとがポリジオキサノンを含んでなる、請求項1に記載の修復デバイス。
  9. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとがグリコリドとL−ラクチドとのコポリマーを含んでなる、請求項1に記載の修復デバイス。
  10. 前記組織修復スカフォールドが、天然ポリマー、合成ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも一つの材料から形成されたものである、請求項1に記載の修復デバイス。
  11. さらに、前記組織修復スカフォールド上または組織修復スカフォールド内に配置された生育可能組織であって、組織修復スカフォールドに隣接する本来の組織と一体化するのに有効な生育可能組織を含んでなる、請求項1に記載の修復デバイス。
  12. さらに、細胞の成長を促進するのに有効な少なくとも一つの生理活性物質を含んでなる、請求項1に記載の修復デバイス。
  13. 前記生理活性物質が、多血小板血漿、軟骨由来の形態形成タンパク質、ヒトの組み替え成長因子およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたものである、請求項12に記載の修復デバイス。
  14. 前記組織修復スカフォールドと細胞成長導管フラップとが単一片から形成されたものである、請求項1に記載の修復デバイス。
  15. 前記細胞成長導管フラップが、前記組織修復スカフォールドに対し実質的に垂直方向にあるような向きに配置されている、請求項1に記載の修復デバイス。
  16. 前記細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとが、Tの字状になるように、それぞれに対し配置されている、請求項1に記載の修復デバイス。
  17. 前記細胞成長導管フラップと組織修復スカフォールドとが、Lの字状になるように、それぞれに対し配置されている、請求項1に記載の修復デバイス。
  18. 前記細胞成長導管フラップが、前記組織修復スカフォールドの厚さより薄い、請求項1に記載の修復デバイス。
  19. 前記細胞成長導管フラップの密度が約150mg/mL〜350mg/mLの範囲にある、請求項1に記載の修復デバイス。
  20. 前記細胞成長導管フラップの空隙体積が約50%〜95%の範囲にある、請求項1に記載の修復デバイス。
  21. 半月板欠損部の外科的修復方法であって、
    細胞成長導管フラップを取り付けた組織修復スカフォールドを与え、
    当該細胞成長導管フラップを脛骨表面に接触して配置する一方、当該組織修復スカフォールドを半月板欠損部に接触させるように配置し、
    当該組織修復スカフォールドを適切な場所に固定する
    ことを含み、
    当該細胞成長導管フラップが、細胞および栄養素を半月板欠損部に移動させ、これによって、半月板の治癒を促進できる、
    方法。
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