JP2005302343A - 膜電極接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、膜電極接合体内の水分量を良好に保つことができ、運転環境の変化によって発電性能が低下することのない、さらに改良された膜電極接合体、およびそれを用いた燃料電池を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】 上記目的を達成するために本発明は、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および前記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、前記電解質膜の浸透圧を浸透圧B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Cとしたとき、前記浸透圧Bと前記浸透圧Cとの関係が、浸透圧B>浸透圧Cであることを特徴とする膜電極接合体を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は燃料電池、特に固体高分子型燃料電池を形成するのに用いられる膜電極接合体に関する。
図5は、固体高分子型燃料電池の要部を示しており、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)1がセパレータ2で挟持されて多数配置されている。膜電極接合体1は、イオン交換樹脂からなる電解質膜10の両面に、触媒担持導電体とイオン交換樹脂を有する触媒層4a、4bが配置されて構成され、さらに、その上にガス拡散層5a、5bが積層される。触媒層4aとガス拡散層5aとで一方の電極(例えば燃料極20)とされ、また、触媒層4bとガス拡散層5bとで他方の電極(例えば空気極30)とされる。セパレータ2に形成された流路を介して、燃料極20には燃料ガス(水素)が、また、空気極30には酸化ガス(酸素、通常は空気)が供給される。
膜電極接合体1における燃料極(陰極)20と空気極(陽極)30で進行する反応式は、次の通りである。
燃料極(陰極):(1/2)H2 → H++e−・・・式1
空気極(陽極):2H++e−+(1/2)O2 → H2O・・・式2
燃料極20で式1の反応式により生成した水素イオンがH+(+H2O)の水和状態で電解質膜(陽イオン交換膜)を透過して空気極30に至り、式2の反応式が進行する。このように水素イオンがH+(+H2O)の水和状態で電解質膜10を透過する都合上、燃料電池の電池特性の向上には、電解質膜10のイオン導電率の向上が不可欠である。このイオン導電率は、水素イオンに対するイオン交換基、例えばスルホン基、カルボキシル基の含有mol数や膜厚、膜中水分量(吸水量)の影響を受ける。具体的には、イオン交換基のmol数が少なかったり、膜厚が厚かったり、あるいは膜中水分量が不足すると、電解質膜10のイオン伝導率の低下を招き結果的には発電性能を低下させてしまう。
従って、発電性能の低下を防止するために、水素ガスを水蒸気により加湿して供給することで電解質膜を適当な吸水状態においたり、膜厚を薄くしたり、あるいは上記のイオン交換基の含有mol数を高めることが一般に行なわれている。このイオン交換基の含有mol数は、イオン交換基1mol当たりのイオン交換樹脂乾燥重量をEW値として定義すれば、このイオン交換基当量重量で規定することができる。すなわち、イオン交換基当量重量(equivalent weight: 本発明でこれをEWと略称する)の値が小さければイオン交換基の含有mol数が大きくなり膜のイオン導電率は高くなり、EW値が大きければ、反対にイオン交換基の含有mol数が小さくなって膜のイオン導電率は低くなる。よって、EW値が小さい陽イオン交換膜を電解質膜に使用することが望ましい。
燃料極および空気極の両電極(両触媒層)における前述の反応式を円滑化するために、両触媒層を、触媒担持導電体を電解質膜の陽イオン交換膜と同一のイオン交換樹脂で被覆することが提案されており、これにより前述の反応式の円滑化ならびに促進が図られる(例えば、特許文献1)。しかし、前記のように電解質膜の強度を確保するためにそのEW値の下限値は1100程度とせざるを得ず、両触媒層のEW値を同じ程度のものとすると、良好な発電効率は得られない。
高分子陽イオン交換膜からなる電解質膜の強度確保と発電率の向上の両立を図ることを目的に、特許文献2では、図6に示すように、燃料極20と空気極30との間に、イオン交換樹脂からなる電解質膜10を挟持してなる膜電極接合体1において、燃料極20と空気極30との双方の触媒層4a、4bのEW値を、電解質膜10のEW値より小さい値とすることが提案されている。具体的には、触媒層4a、4bは、触媒として白金51を担持したカーボン粒子(触媒担持導電体)52とイオン交換樹脂53とで構成され、イオン交換樹脂53のEW値は900、電解質膜10のEW値は1100とされている。燃料極20を構成する触媒層4aのEW値:A、電解質膜10のEW値:B、空気極30を構成する触媒層4bのEW値:C,とすると、その関係は、A<B>Cとなる。これにより、触媒層は小さなEW値であることから、高いイオン導電率で高い吸水状態とすることができ、電極における反応をより促進させることが可能となる。一方、電解質膜のEW値は比較して高い値となるので、膜強度を確保することができる利点がある。
本発明者らは、固体高分子型燃料電池での膜電極接合体において、前記EW値が発電特性にどのような影響を与えるかについて、継続して実験と研究を行なってきているが、その過程で、運転条件が大きくは変化しない環境下では、図6に示した膜電極接合体を持つ燃料電池、すなわち、燃料極20を構成する触媒層4aのEW値:A、電解質膜10のEW値:B、空気極30を構成する触媒層4bのEW値:Cとしたときに、その関係が、A<B>Cとされている膜電極接合体を持つ燃料電池は、EW値をすべて等しくしたものと比較して、良好な発電特性を示すが、運転条件が種々変化する環境下では、発電特性が変動したり、電池寿命が短くなることを経験した。
すなわち、高加湿、高電流密度域での運転が長時間継続すると、低いEW値である空気極30に過剰に生成水が滞留してフラッディングを生じる場合があり、電圧低下の一因となる。運転条件が変化して低加湿下での運転状態となると、高いEW値である電解質膜10中の水分が空気極30と燃料極20の双方に移動(拡散)して電解質膜10が乾燥状態となって、発電性能の低下を引き起こす。燃料電池の運転環境は、特に自動車の駆動源として用いるような場合には大きく変化するものであり、異なった運転環境下でも、発電性能があまり変化しないことが望まれる。
また、特許文献3には、電解質膜と触媒層が接する界面に、電解質膜とは異なる、より高いEW値のプロトン伝導性ポリマー層が形成された膜電極接合体が開示されている。しかしながら、この方法によると、プロトンの伝導媒体であるプロトン同伴水が電解質膜側から空気極側へ移動することは制限できるが、空気極から電解質膜への水の移動も同時に制限されてしまうので、空気極で生成された生成水は電解質膜へと移動できず、高電流密度域ではフラッディングが発生しやすい。また、生成水を空気極側から燃料極側へ移動させることができないため、生成水を燃料極や電解質膜の加湿に有効利用することもできなかった。
特開平5−36418号公報 特開平7−135004号公報 特開平10−334923号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、膜電極接合体内の水分量を良好に保つことができ、運転環境の変化によって発電性能が低下することのない、さらに改良された膜電極接合体、およびそれを用いた燃料電池を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明においては、イオン交換樹脂の水の含みやすさを、浸透圧、および含水率により規定し、以下のような、燃料極、電解質膜、および空気極から構成される膜電極接合体、および、それらを用いた燃料電池を提供する。
まず、本発明は、第1態様において、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、上記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および上記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、上記電解質膜の浸透圧を浸透圧B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Cとしたとき、上記浸透圧Bと上記浸透圧Cとの関係が、浸透圧B>浸透圧Cであることを特徴とする膜電極接合体を提供する。
本態様の膜電極接合体においては、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧C(以下、単に「空気極の浸透圧C」とする場合がある)よりも、電解質膜の浸透圧Bの方が高いので、空気極内の水は、浸透圧の高い電解質膜内へ移動しやすい。そのため、空気極で生成水が大量に生成された場合、生成水はプロトンの伝導媒体であるプロトン同伴水の流れとは逆の方向(電解質膜側)へ逆拡散するので、空気極に水が滞留してしまうフラッディングを防止することができる。
上記発明においては、燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Aとしたとき、上記浸透圧Aと,上記浸透圧Bと、上記浸透圧Cとの関係が、浸透圧A>浸透圧B>浸透圧Cであることが好ましい。上述した浸透圧Bよりも、燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧A(以下、単に「燃料極の浸透圧A」とする場合がある)を大きくすることにより、電解質膜内の水が燃料極内へ逆拡散しやすくなり、過度な乾燥状態であるドライアップを防止することができるからである。また、空気極で生成された生成水を電解質膜を介して燃料極へ移動させることができるので、燃料極の加湿に用いることができ、発電反応により生成した生成水を有効利用することができる。
また、本発明は、第2態様において、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、上記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および上記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、上記電解質膜の含水率を含水率B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Cとしたとき、上記含水率Bと上記含水率Cとの関係が、含水率B>含水率Cであることを特徴とする膜電極接合体を提供する。
本態様の膜電極接合体においては、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率C(以下、単に「空気極の含水率C」とする場合がある)よりも、電解質膜の含水率Bの方が高いので、空気極内の水は、含水率の高い電解質膜内へ移動しやすい。そのため、空気極で生成水が大量に生成された場合、生成水は電解質膜内へ逆拡散するので、フラッディングを防止することができる。
上記発明においては、燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Aとしたとき、上記含水率Aと,上記含水率Bと、上記含水率Cとの関係が、含水率A>含水率B>含水率Cであることが好ましい。上述した含水率Bよりも、燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率A(以下、単に「燃料極の含水率A」とする場合がある)を大きくすることにより、電解質膜内の水が燃料極内へ逆拡散しやすくなり、ドライアップを防止することができるからである。また、空気極で生成された生成水を電解質膜を介して燃料極へ移動させることができるので、燃料極の加湿に用いることができ、発電反応により生成した生成水を有効利用することができる。
本発明は、さらに、上記膜電極接合体を用いたことを特徴とする燃料電池を提供する。上述したような膜電極接合体を燃料電池に用いることにより、膜電極接合体内の水分量を好ましい状態に保つことができるため、運転環境の変化による発電性能の低下が少ない、高性能な燃料電池を得ることができる。
本発明の膜電極接合体を用いることにより、異なった環境下で継続運転した場合でも、一定の発電性能を維持することが可能となり、自動車などへの搭載に適したきわめて実用性の高い、高性能な燃料電池を得ることができる。
本発明は、用いられるイオン交換樹脂の水の含みやすさを、浸透圧、および含水率により規定し、空気極、電解質膜、および燃料極における水の含みやすさに差をつけることにより水分量を良好に保つことが可能になった膜電極接合体、および、それらを用いた燃料電池に関するものである。以下、各態様の膜電極接合体、およびそれを用いた燃料電池について説明する。
A.膜電極接合体
1.第1態様
本発明の第1態様の膜電極接合体は、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および前記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、前記電解質膜の浸透圧を浸透圧B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Cとしたとき、前記浸透圧Bと前記浸透圧Cとの関係が、浸透圧B>浸透圧Cであることを特徴とするものである。
本態様の膜電極接合体においては、空気極の浸透圧Cよりも、電解質膜の浸透圧Bの方が高いので、空気極内の水は、より浸透圧の高い電解質膜内へ移動しやすい。そのため、高湿度下、高電流密度域での運転中に生成された多量の生成水は、プロトンの伝導媒体であるプロトン同伴水の流れとは逆の方向(電解質膜側)へ逆拡散し、フラッディングを防止することができる。フラッディングを防止することで、高電流密度域での発生電圧の低下を抑制することができる。
一方、低湿度下での運転においても、空気極での生成水が電解質膜側へ逆拡散する傾向は維持されるので、電解質膜のドライアップを防止することができ、プロトン同伴水が確保できるため、一定の発電性能を維持することができる。
また、本態様においては、燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Aとしたとき、前記浸透圧Aと,前記浸透圧Bと、前記浸透圧Cとの関係が、浸透圧A>浸透圧B>浸透圧Cであることが好ましい。上記電解質膜の浸透圧Bと空気極の浸透圧Cとの間の差に加え、燃料極の浸透圧Aと電解質膜の浸透圧Bとの間にも差をつけることにより、電解質膜内の水が燃料極内へ逆拡散しやすくなり、燃料極が過度に乾燥してしまうことを防止することができるからである。また、燃料極、電解質膜、および空気極の浸透圧に上記のような差をつけることにより、発電反応中に空気極において生成された生成水を電解質膜、さらには燃料極内へと逆拡散させることにより、空気極のフラッディングの防止と同時に、生成水を電解質膜および燃料極を加湿するために有効に利用することができる。それにより、電解質膜や燃料極を加湿するための水を貯蔵するタンクなどを新たに設けることなく、膜電極接合体内の水分量の調整が可能になる。
図1は本態様の膜電極接合体の構成の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、膜電極接合体1Aは、電解質膜10が中心に配置され、燃料極20と空気極30とで挟持されている。なお、図1のような膜電極接合体の構成は、本発明の各態様の膜電極接合体について共通である。
本態様における浸透圧の求め方として、ナフィオン111(商品名)の浸透圧を求める場合の例を以下に説明する。まず、試料である、5×5cmのナフィオン111を種々の濃度の硫酸水溶液に浸し、そのときの膨潤による試料の寸法変化の量を調べ、浸しても試料の寸法が変化しない硫酸水溶液の濃度を特定する。浸された硫酸水溶液の濃度と、試料中の硫酸濃度が異なる場合は、浸透圧の差から、試料の寸法は変化するが、硫酸水溶液の濃度と試料中の硫酸濃度がつり合うときは、浸透圧もつり合うので、試料の寸法変化はゼロとなる。このことから、試料の寸法変化がゼロであるときの硫酸水溶液の濃度を、試料中の硫酸の濃度とすることができる(以下、試料中硫酸モル濃度とする)。図2は、試料を種々の濃度の硫酸水溶液に浸した際の寸法変化を示したグラフである。図2からわかるように、この試料中硫酸モル濃度は4.8mol/lである。このようにして得られた試料中硫酸モル濃度、その際の試料中硫酸モル濃度を有する硫酸水溶液(以下、試料同濃度硫酸水溶液とする)の水のモル濃度等を下記式にあてはめ、試料の浸透圧がえられる。この試料の場合、浸透圧は10.4MPaであった。
Figure 2005302343
本態様において、上記方法により得られた電解質膜の浸透圧Bと空気極の浸透圧Cとの差は、浸透圧Bの方が浸透圧Cよりも高ければ特に限定されるものではないが、浸透圧Bが浸透圧Cよりも1MPa以上、中でも2MPa以上、特には2.5MPa以上高いことが好ましい。また、燃料極の浸透圧Aと電解質膜の浸透圧Bとの差も、浸透圧Aが浸透圧Bよりも高ければ特に限定されるものではないが、浸透圧Aが浸透圧Bよりも1MPa以上、中でも2MPa以上、特には2.5MPa以上高いことが好ましい。それぞれの浸透圧に上記のような差をつけることにより、空気極から電解質膜へ、電解質膜から燃料極への水の移動が確保されやすくなり、各箇所における水分量の制御をより適切に行うことができるからである。
本態様の膜電極接合体に用いられる電解質膜および触媒層(燃料極および空気極)に用いられるイオン交換樹脂は、それぞれの浸透圧を上述したように調整できるものであれば特に限定されるものではなく、スルホン酸を有するフッ素系樹脂や炭化水素系樹脂など従来用いられているものを用いることができる。例えば、電解質膜は通常用いられるイオン交換膜を用いることができ、フッ素系スルホン酸高分子樹脂の場合には、そのモノマー(テトラフルオロエチレンと、フルオロスルホニル基を含んだパーフルオロビニルエーテル)の共重合および加水分解を経て形成されるので、これらモノマーの量や重合度等を変えることで所望の浸透圧を有する電解質膜を得ることができる。
また、燃料極と空気極を構成する触媒層は、触媒として例えば白金を所定量担持したカーボン粒子を、所望の浸透圧を有する上記のようなイオン交換樹脂(電解質)を含んだ水溶液中に徐々に加えて、ペースト状のカーボン粒子懸濁液を調製し、これをガス拡散層の片面に塗布して乾燥させることにより得ることができる。この際に用いられるイオン交換樹脂は、上記電解質膜に用いたものと同じであっても、異なったものであってもよく、また、空気極に用いられるイオン交換樹脂と燃料極に用いられるイオン交換樹脂も、同じでも異なっていてもよいが、燃料極、電解質膜、および空気極に同じイオン交換樹脂を用いることが好ましい。同じイオン交換樹脂を用いることにより、互いに接合性を高めることができるからである。
上述したような電解質膜を、燃料極と、空気極との間に挟持し、これらをホットプレス等により接合することで、膜電極接合体が得られる。
2.第2態様
本発明の第2態様の膜電極接合体は、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および前記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、前記電解質膜の含水率を含水率B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Cとしたとき、前記含水率Bと前記含水率Cとの関係が、含水率B>含水率Cであることを特徴とするものである。
また、本態様においては、燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Aとしたとき、前記含水率Aと,前記含水率Bと、前記含水率Cとの関係が、含水率A>含水率B>含水率Cであることが好ましい。
本態様の膜電極接合体においては、水の含み易さを含水率により規定し、空気極の含水率Cよりも電解質膜の含水率Bを、電解質膜の含水率Bよりも燃料極の含水率Aを高く(水を含み易く)することにより、フラッディング防止やドライアップ防止等の第1態様と同様の効果を得るものである。
なお、本態様において、含水率は次のように測定される。まず、測定の対象となる膜の乾燥状態の重量を測定する。その膜を25℃の水に数時間浸けた後に取り出し、重量を測定する。その際の重量増加分(吸った水の重量)の、乾燥状態の重量に対する割合(wt%)が、その膜の含水率である。
本態様において、電解質膜の含水率Bと空気極の含水率Cとの差は、含水率Bの方が含水率Cよりも高ければ特に限定されるものではないが、含水率Bが含水率Cよりも1%以上、中でも5%以上、特には10%以上高いことが好ましい。また、燃料極の含水率Aと電解質膜の含水率Bとの差も、含水率Aが含水率Bよりも高ければ特に限定されるものではないが、含水率Aが含水率Bよりも5%以上、中でも10%以上、特には20%以上高いことが好ましい。それぞれの含水率に上記のような差をつけることにより、空気極から電解質膜へ、電解質膜から燃料極への水の移動が確保されやすくなり、各箇所における水分量の制御をより適切に行うことができるからである。
本態様の膜電極接合体に用いられる電解質膜および触媒層(燃料極および空気極)の、上記以外の記載に関しては、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
B.燃料電池
本発明の燃料電池は、上述した膜電極接合体を用いたことを特徴とするものである。燃料電池の運転環境が変化しても、上述した膜電極接合体内では水分量が良好に保たれるため、上述した膜電極接合体を用いて燃料電池を構成することにより、運転環境の変化による発電性能への影響が少ない、高性能な燃料電池を得ることができる。
本発明に用いられる膜電極接合体は、上記「A.膜電極接合体」の記載と同様であるので、ここでの説明は省略する。本発明の燃料電池の最小単位である燃料電池セルは、上述したような、燃料極、電解質膜、および空気極から構成される膜電極接合体がガス拡散層で挟持され、さらには、セパレータで挟持されており、このような燃料電池セルが複数積層されて燃料電池スタックが構成されている。この際に用いられるガス拡散層およびセパレータは、特に限定されるものではなく、通常用いられるものを用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(燃料電池の作製)
単一膜の電解質膜の片側に燃料極、反対側に空気極を配置した、図1に示す構成を有する膜電極接合体を以下のように作製した。本実施例に用いられる燃料極および空気極は、いずれも拡散層と触媒層とから構成され、拡散層は、撥水処理が施されてポリ四フッ化エチレンを50wt%含有するカーボン粒子をカーボン繊維で織布されたカーボンクロス(厚さ0.4mm)に塗り込むことにより作製した。
上記触媒層は、触媒として白金を50wt%担持したカーボン粒子(Pt0.4mg/cm2)を凝集し積層したものであり、以下のようにして作製した。まず、陽イオン交換樹脂溶液(当該樹脂の固形分5wt%をプロパノール、水の混合溶液に配合した溶液)に上記カーボン粒子を徐々に加え、樹脂固形分が1mg/cm2相当になるまでカーボン粒子を混合する。そして、ペースト状のカーボン粒子懸濁液を得て、これを拡散層の片面に塗布して乾燥させてカーボン粒子を陽イオン交換樹脂で固定し、触媒層とした。用いた陽イオン交換樹脂溶液は、フッ素系スルホン酸高分子樹脂であり、燃料極の含水率Aは35wt%、空気極の含水率Cは10wt%とした。
電解質膜は、含水率Bが15wt%で膜厚が30μmの陽イオン交換膜であるパーフルオロカーボンスルホン酸高分子膜のみからなる単一膜である。なお、この陽イオン交換膜の含水率は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとの共重合および加水分解を経て成膜する過程において、モノマーの量や重合度を制御することにより調整することができる。そして、上記電解質膜を上記燃料極と上記空気極との間に挟持し、これらをホットプレス(120℃、100kg/cm2)することで膜電極接合体を完成させた。この膜電極接合体をセパレータで挟持して燃料電池セルを作製し、それを積層して燃料電池スタックを得た。
[比較例1]
(燃料電池の作製)
燃料極の含水率Aを35wt%、電解質膜の含水率Bを15wt%、空気極の含水率Cを20wt%としたこと以外は、上記実施例と同様に燃料電池を作製した。
[比較例2]
(燃料電池の作製)
燃料極の含水率Aを10wt%、電解質膜の含水率Bを15wt%、空気極の含水率Cを20wt%としたこと以外は、上記実施例と同様に燃料電池を作製した。
[性能評価]
実施例、比較例1、および比較例2において製作した燃料電池の性能評価を行なった。上記の各燃料電池について、80℃フル加湿で運転した場合の電流と電圧の関係(I−V特性)を調べた。その結果を図3に示す。この図3から明らかなように、比較例1、および比較例2の燃料電池では、高電流密度においてフラッディングによるセル電圧低下が見られるが、実施例の燃料電池においては電圧の低下が少ない。これは含水率を上記のように傾斜させたことにより、燃料極側への生成水の逆拡散が促進されたことによると解される。
また、上記の各燃料電池について、低加湿条件(加湿温度:50℃)で運転した場合のセル電圧のセル温度に対する依存性を調べた。その結果を図4に示す。図4から明らかなように、実施例は比較例1よりも高温域でのセル電圧が高く、より高温で運転できていることが分かる。これも上記と同様、生成水の逆拡散が促進されたことによりドライアップが生じることなく、電解質膜がより保湿されているためである。
以上より、実施例の燃料電池は、高加湿下においても、低加湿下においても優れた性能を示すことがわかる。
本発明の膜電極接合体の構成の一例を示す概略断面図である。 本発明において浸透圧を求める際、試料を種々の濃度の硫酸水溶液に浸したときの寸法変化を示したグラフである。 本発明の実施例に用いた各燃料電池の、高加湿条件で運転した場合の電流密度とセル電圧の関係を示したグラフである。 本発明の実施例に用いた各燃料電池の、低加湿条件で運転した場合のセル電圧のセル温度に対する依存性を示したグラフである。 従来の燃料電池の要部を示す概略断面図である。 従来の膜電極接合体の構成を示す概略断面図である。
符号の説明
10 … 電解質膜
20 … 燃料極
30 … 空気極

Claims (5)

  1. イオン交換樹脂からなる電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および前記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、前記電解質膜の浸透圧を浸透圧B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Cとしたとき、前記浸透圧Bと前記浸透圧Cとの関係が、浸透圧B>浸透圧Cであることを特徴とする膜電極接合体。
  2. 燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の浸透圧を浸透圧Aとしたとき、前記浸透圧Aと,前記浸透圧Bと、前記浸透圧Cとの関係が、浸透圧A>浸透圧B>浸透圧Cであることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
  3. イオン交換樹脂からなる電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置され、触媒担持導電体および前記イオン交換樹脂を有する触媒層と、を少なくとも備えた膜電極接合体において、前記電解質膜の含水率を含水率B、空気極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Cとしたとき、前記含水率Bと前記含水率Cとの関係が、含水率B>含水率Cであることを特徴とする膜電極接合体。
  4. 燃料ガスが供給される燃料極を構成する触媒層中のイオン交換樹脂の含水率を含水率Aとしたとき、前記含水率Aと,前記含水率Bと、前記含水率Cとの関係が、含水率A>含水率B>含水率Cであることを特徴とする請求項3に記載の膜電極接合体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の膜電極接合体を用いたことを特徴とする燃料電池。
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