従来のリスク限定型株式売買に各種の方式がある中で、前記「維持率」の概念があり、その「維持率」にも、担保価値に匹敵する委託保証金の残存率を意味する「保証金維持率」の概念が含まれていたが、このような総保証金維持率(以下、「維持率」ともいう)によってリスクを限定する管理手法においては、空売りまでは対応されておらず、あらゆる取引形態においてリスク限定できるような管理システムはこれまでなかった。
又、現在の株式投資方法としては、現物取引と信用取引があるが、短期投資で大きくレバレッジ(てこ)を効かせて、すなわち、元本を大きく増幅して利益を得ようとすると、一般的に信用取引を選択することになる。その意味で信用取引は、一部の個人投資家にとって必要なものである。
しかし、信用取引は、利益を大きくするメリットを持つレバレッジ効果の反作用として、リスクにもレバレッジが効いてしまうという特色を有する。したがって、信用取引においては、そのリスクを小さく抑えるための「損切り」が、他の取引と比較してより重要となる。ところが、希望的観測に偏りがちな顧客が、自ら「損切り」を行うということは、実際には大変難しいのが現状であるので、この難しい「損切り」をきめ細かく代行できる管理システムが望まれている。
又、現物取引と信用取引を投資目的で区別すると、長期投資と短期投資に区別すれば適切な対応となる。すなわち、長期投資なら現物取引、短期投資なら信用取引とするのが一般的である。逆にいえば、現物取引の場合は長期投資の目的であることが多いので、投資家にとっては瞬間的な値下がりを無視しても構わないような錯覚に陥りやすい。さらに、長期保有期間中には、環境が激変して、当該株式の発行会社が倒産する事態も少なからず発生する可能性がある。
一般的には、リスク限定のための「損切り」は、信用取引においてこそ、より重要と考えられていたが、昨今の激動する社会環境を鑑みるに、長期保有する安定株式銘柄であっても、慢性的デフレ傾向もあるので長期的には右肩下がり、すなわち資産価値が減少する可能性を無視できないのが現状である。いわゆる「塩漬け株」と呼ばれて、売れば売却損が顕在化するので、売るに売れない値下がり株を何年も長期保有することが多発している。
このようなわけで長期投資を目的とする現物取引の場合は、「瞬間的な値下がり」と「長期的値下がり」の両側面において、投資家のリスク管理が緩慢になり、損切りのタイミングを逸することによる損失発生の可能性が高くなってしまう条件を備えてしまっている。
したがって、長期投資を目的とする現物取引であっても、短期投資を目的とする信用取引に匹敵する機敏なリスク管理が必要であり、「損切り」の具体的手段を確立しておくことが重要と考えられる。
そして、その信用取引及び現物取引に必要な、顧客口座内の所有株式の「損切り」には、大別すると二種類ある。
第1の「損切り」は、顧客口座内の全ての株式に対して、含み益のある優良株と、含み損のある劣後株との区別なく、証券会社の意思による、証券会社のための最終的債権回収手段としての「総損切り」であり、証券会社が顧客に貸し出し中の貸株及び融資金等を回収するために、当該口座全体を清算することを意味する。ちなみに、「総損切り」を実行するタイミングは、最期通告の数日後である。
第2の「損切り」は、当該口座の清算を意味する最期通告を伴うものでなく、顧客口座内の一部に該当する含み損のある劣後株のみを、顧客の意思で、顧客自身の利益を確保するために、損害の拡大を阻止するように、小さく含み損が出始めたならば機敏に対応し、大きく値下がりする前のタイミングで実行する。いわば「個別損切り」である。
このように、損失発生する株式についての損失発生額を最小限にすることが、相場における格言として「見切り千両」といわれるように、株式投資における総合的判断の要諦とされており、所有する株式の全てについて個別に洩れなく損失最小にする合理的管理を、顧客が望んでも、自ら実現するのは困難なことである。
又、顧客が証券会社に対して、第2の「損切り」の実行を依頼した場合も、値下がりする株式のみを抽出して監視し、その細かい値動きに対応して、自動的に第2の「損切り」の実行を約束できる体制ではなかった。なぜならば、第1の「損切り」が「総損切り」であり、顧客口座内の全ての株式に対して、含み益のある優良株と、含み損のある劣後株との区別なく、証券会社のコンピュータで一括処理することが可能であることに対して、第2の「損切り」は、顧客口座内の個別建玉や個別株式ごとの各別の値動きを追跡して即応し、各別の異なる複数の個別判断が必要なためである。
詳しくは、後ほど図2に沿って説明するように、銘柄A〜Fによる建玉(図2では現物取引も含む)に対して、従来の管理手段により「含み損益を総額のみで一元管理」する場合、値下がり株C,Eが大きく値下がりする(破線)ことにより、残すべき優良株B,D,Fまで含めて損益総額が、例えば−20%の赤字となったらA〜F全部を売却される。
特に、A〜Fが同一銘柄で異なる日時に異なる買値で複数の買建玉として維持された場合、特開2002−92328号公報に示す従来例では、A〜F全部の損益総額が−20%の赤字になるのを待ってから全部を売却される。これは、証券会社等が顧客に株購入資金を融資した場合に、融資金総額についての返済を確実にするための管理システムであった。
このことでわかるように、個別株式(同一銘柄の別建値による別建玉も含む)ごとの値動きに即応し、値下がり株の含み損が拡大するような値動きをする前に、きめ細かく自動的に対応する判断は、極めて困難であり、証券会社側で理想的な第2の「損切り」の実行を請け負える体制を備えるとすれば、証券会社側に莫大な人員を配置して、相当の注意義務を課すことが避けられない課題となる。
このように、第1の「損切り」は、証券会社等から顧客に融資した融資金総額について返済を確実にする「総損切り」を目的とした管理システムである。
そして、この「総損切り」とは異なり、顧客にとって自分自身では困難な損切りの代行サービスとなる第2の「損切り」を正確・確実に実行することの出来るシステムが望まれていた。
さらに、前記第2の「損切り」を実行しようとしたときに、市場にその株の売り買いの相手方がいないために、実際にはその損切りは実行できないという最悪の場合でも、前記「個別損切り」が確実に実行できるシステムが望まれていた。
その第2の「損切り」が可能な管理システムの運用上、「個別株損切り」を顧客が証券会社に依頼する「個別株損切り率」すなわち、建値から何%変動したかで損切り実行すると定める閾値は、市況の変化等により、証券会社と顧客の間でその都度契約により定めることになる。このように、その契約内容ごとの「個別株損切り率」に、その都度あわせることの出来る機能のついたシステムが必要とされ、望まれていた。
又、「個別株損切り」の必要性は、含み損益額の総和がプラス値であるときに、もし顧客が自分の意思で、下落した劣後銘柄のみを損切りできれば、更なる可能性を模索できるのに対し、現実には人の判断力の盲点と考えられる「値上がりと値下がりを相殺勘定すれば全体では儲かっているのだから値下がり銘柄の損切りは、とりあえず見送っても良い」との楽観的判断に偏るのが普通であることからも理解できる。
この「全体では儲かっているとの錯覚」による誤判断に気付いたときには、もはや手遅れで回復は困難となっている。その結果、下落した劣後銘柄は、俗にいう「塩漬け株」となり、売れば含み損が顕在化する。
ここで、従来からある損益額の総和のみによって管理した場合、前記総和がプラス値であるため、証券会社による強制的な反対売買による「総損切り」が実行されることはないが、値下がり率の大きい劣後銘柄は、株式発行会社の倒産も含めて、今後もさらに急落する可能性が大きいと予想されるので、全銘柄の損益額の総和が一括売却されるレベルまで到達すれば、「総損切り」により全銘柄の株式を優良株まで含めて一括売却されてしまう。
逆にいえば、[背景技術]の欄にも記載した従来の技術では、当事者が含み損の発生した株のみに限定した早めの損切りを希望していても、全銘柄の損益額の総和が一括売却されるレベルまで到達する程にまで損害が拡大しない限り、すなわち、顧客にとって確実に規定の損害総額(図2に示すA〜F全部の損益総額が−20%の赤字)を出すまでは、損切り機能が作動しない。
そして、この一括売却のタイミングに遅延がなければ、とりあえず証券会社の損失は最小限に止められるが、顧客にしてみれば、値上がりして今後も有望視されている優良株までが強制売却されてしまう。
又、一般的にリスクが大きいとされる信用取引であっても、買い建玉を転売して手仕舞いする場合は、購入金額の元利合計を超えた損失までしか発生しないことに対し、特に空売り建玉を買い戻して手仕舞い決済する場合は、理論上、発生損失に上限がないので、リスク限定を一層厳格にする管理が望まれる。
そして、顧客及び証券会社は、例えば、空売りした株式を買い戻す反対売買、購入した株式を転売する、等の措置を迅速に講ずるような即応体制を整えて、許容限度内にリスク限定できるように、顧客の私情を排除して合理的に手仕舞いする新しいサービス手段として、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による個々の建玉の管理システムが望まれていた。
さらに、保証金維持率よりも単純明快な、又、信用取引のみならず、融資を受けない現物取引にも応用できる管理システムが望まれていた。
本発明は、前記課題を解決し、信用取引においては、空売りにまで対応し、あらゆる取引形態において、緻密なリスク限定の管理の徹底を可能とし、銘柄別の同日に同価格で取引された同銘柄の建玉を管理の最小単位として、その最小単位の株式ごとに許容限度内に損失を限定できるように、保証金維持率や損失率が指定の閾値に到達したことで、損益状況の悪い建玉のみを抽出し、証券会社等による遅滞無き強制的な手仕舞いによる損切りを信用取引利用の顧客にサービス提供する。さらに、信用取引のみならず現物取引にまで適用して汎用性及び利便性を高めるように考慮したものである。
例えば、複数の銘柄で異なる日に異なる単価で購入したなかで、値下がりして損益状況の悪化した株式のみを、コンピュータの管理システムを利用して抽出し、証券会社等により強制的に手仕舞いすることによって、最少の損失で最大の利益が得られるように、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付き建玉管理システム、顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムを提供することを目的とする。
特に、専門家でない顧客にとって自分の意思だけでは実行が困難とされる、個別株ごとに一律に行う指定率での損切り(ロスカット)を、顧客に代わって証券会社が代行サービスできるコンピュータの仕組みを提供する。
本発明は、前記目的を達成するために提供されるものであり、その請求項1に係る発明は、証券会社が信用供与して金銭、株式の貸借及び/又は売買の信用取引をする顧客と共有する取引情報のうち指定する損益計算値により強制的に手仕舞いされる建玉を管理建玉と定義してその表示を明確にした管理システムであって、取引内容を記憶する取引内容記憶手段と、更新株価を収集する株価情報収集手段と、同一銘柄、同一取引日かつ同一売買価格であれば1単位に併合して表示できる表示枠に、顧客から依頼された個別建玉ごとの自動損切り代行のため、証券会社が強制的に市場で反対売買する株価と、証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する株価の、少なくとも何れか一方を表示する表示手段を備えたことを特徴とする株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項1に係る発明によれば、証券会社の顧客が、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの建玉の管理システムを用いることにより、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位とし、建玉を手仕舞いするか否かについて決定する損益計算値を算出し、更新して表示する。
例えば、実施の形態では、日付と株価及び諸条件が更新されるたびに更新される損益計算値を監視した結果、閾値による判断で強制的に手仕舞いする。当該閾値は顧客から依頼された個別建玉ごとの自動損切り代行のため証券会社と顧客が取引開始前に合意し、私情をはさむ余地なく建玉の買戻しや転売による手仕舞いを、証券会社が定めた時期に遅滞無く又は、直ちに実行するものである。ここでいう合意は、予め証券会社が作成した規約を顧客が承諾すればよい。その規約に法り開設された専用口座内における建玉や所有株式は全て、当該閾値をこのコンピュータシステムに入力するだけで自動的かつ一律にこれらの強制的な手仕舞いが行われることとなる。
なお、「建玉(たてぎょく)」とは、証券取引所又は証券会社による、信用取引や先物取引などにおいて、売買契約をした株式等であって、買戻しや転売によって取引関係を終了する決済をしていないものをいうが、信用取引でない現物取引の場合は、「(購入後未売却の)所有株式」と呼んで区別している。
又、「手仕舞い」とは、前記建玉に対する転売もしくは買い戻しの何れか必要な向きの決済を済ませ、取引関係を終了することをいうが、信用取引でない現物取引の場合は、「売却」と呼んで区別している。
手仕舞いの原因は、建玉ごとに設定された損益計算値の閾値に到達したことであり、その結果、顧客の損益は、当該閾値の定めた通りのリスクに限定される。なぜならば、リスクを限定するために当該閾値を定めているからである。
このようにして、効率良く多数の建玉を常時監視するなかで、運用成績の悪い建玉のみを証券会社等が逐次手仕舞いする。
前記損益計算値の算出は、後ほど説明する数式で示すとおりであるが、その数式による計算に基づいて個別株ごとに該当する管理建玉を迅速に抽出し、表示し、手仕舞いの指示、実行及びその報告に至るまでのサービスを提供する証券会社側の実務負担として、人が簡単に暗算して対応できる性質のものではない。
又、前記数式による計算において、建玉ごとに異なる損益計算値の閾値まで設定するとすれば、顧客も複数の建玉に対しては本人の記憶力及び注意力の限界を超える。そして、抽出された管理建玉の手仕舞いに対しては、私情を排除した管理手段が不可欠である。
したがって、この不可欠な管理手段として適切な情報処理能力を具備したコンピュータシステムを構築して対応している。
そこで、前記損益計算値が設定された閾値に達すると、証券会社により強制的に手仕舞する契約に基づいたそれぞれの証券会社ごとの管理手段を採用し、当該コンピュータシステムにより管理事項を表示し、実行命令を発令する。
その請求項2に係る発明は、前記信用取引には空売りを含むことを特徴とする請求項1に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
このようにしたから、株価が値下がりする予想に基づいて空売りした建玉に関し、その予想が外れて値上がりした場合、株価に上限がないので、買い戻す際に理論的には無限の損失を発生する危険性のある空売りを含む信用取引では、買った株式を転売して終了する現物取引に比べてリスク限定の効果が高い。
その請求項3に係る発明は、証券会社用のバックオフィスコンピュータシステムに対して直接又は間接的に情報交換するインターフェースと、前記証券会社により強制的に市場で反対売買される株価に達すると顧客の私情を排除して自動又は手動により手仕舞い指示の信号が前記証券会社用のバックオフィスコンピュータシステムへ送信される手仕舞い指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項3に係る発明によれば、バックオフィスコンピュータシステムは株式の売買代行を業とする証券会社用として周知の株式売買代行業務処理システムであり、当該システムにインターフェースを介して接続することにより情報交換自在とし、損益計算値が閾値に達すると、管理建玉の表示に沿って手仕舞い指示手段が自動又は手動により手仕舞い指示の信号を当該システムへ送信し、顧客の私情を排除して指示どおりに手仕舞いする。
その請求項4に係る発明は、前記証券会社により強制的に市場で反対売買される株価に到達したとき、前記管理建玉に対する市場での強制反対売買を指示する第1の指示手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項4に係る発明によれば、証券会社と顧客が契約により定めた株価に到達したとき、前記管理建玉に対する市場での強制反対売買を指示する第1の指示手段が作動して強制的に市場内で手仕舞いする。
このとき、前記証券会社にとって、特に前記第1の指示手段はコンピュータ処理可能な無人業務の範囲内であり迅速に手仕舞いできる。
その請求項5に係る発明は、前記証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する株価に到達したとき、前記管理建玉に対する市場外での相対取引による強制反対売買を指示する第2の指示手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項5に係る発明によれば、市場で反対取引する相手方が少ない銘柄の株式について、証券会社から売買の取次を市場に申し出ても、売買方向、指値、及び数量の条件が整合する範囲内の候補者が不在である場合、候補者を募るべく、相手方にとって有利な条件の指値に順次更新しながら同様の申し出を繰り返すが、それでも候補者が不在であれば、前記証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する株価に到達したとき、前記第2の指示手段が作動し、証券会社が契約により定めた特定の相手方と、市場外で前記管理建玉に対する強制反対売買して手仕舞いする。
その請求項6に係る発明は、前記第2の指示手段に情報接続され前記バックオフィスコンピュータシステムを用いて前記市場外での相対取引を実行する相対取引実行手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項6に係る発明によれば、前記第2の指示手段に情報接続されている前記バックオフィスコンピュータシステムを用いることにより、そのシステムが管理する証券会社の顧客に洩れなく迅速な市場外での相対取引による手仕舞い処理のサービスを、人手をかけることなく自動的に提供できる。
。
その請求項7に係る発明は、前記相対取引が実行されたならば監督機関宛てに通報する通報手段を備えたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項7に係る発明によれば、前記第2の指示手段による市場外での相対取引が成立した場合、その旨を監督機関宛てに通報するという法定義務を自動的に履行できる。
その請求項8に係る発明は、前記顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する識別符号発生手段と、前記証券会社が前記顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに前記識別符号を付加する顧客符号化手段と、前記識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にした検索閲覧手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの建玉管理システムである。
請求項8に係る発明によれば、顧客符号化手段により、前記証券会社が前記顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る住所、氏名、電話番号、Eメールアドレス等でなる本人特定情報を除去する代わりの検索目印として前記識別符号を付加したので、第三者であっても、前記取引情報だけを検索閲覧自在とする。しかし、前記検索閲覧手段だけでは、前記識別符号と前記取引情報から本人を特定することはできないので、顧客のプライバシーは保護される。
その請求項9に係る発明は、任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに前記損益計算値を合算する任意建玉合算手段と、前記任意建玉合算手段により合算された合算損益により該当する任意建玉のみを一まとめに手仕舞い指示する第3の指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの建玉管理システムである。
請求項9に係る発明によれば、任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに前記損益計算値を合算する任意建玉合算手段により合算された合算損益に該当する任意建玉を一まとめに手仕舞い指示することができるので合理的である。
その請求項10に係る発明は、銘柄別に即時管理される建玉において、買い建玉残高又は空売りによる売り建玉残高を顧客から証券会社に対する銘柄別受注残高と定義し、銘柄別の株式情報に基づいて証券会社が任意設定可能な銘柄別格付情報を検索自在に記憶する銘柄別格付記憶手段と、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応するか又は証券会社の任意決定により証券会社が受注可能な銘柄別受注枠を設定する銘柄別受注枠設定手段と、前記銘柄別受注枠設定手段により設定された銘柄別受注枠から現時点の銘柄別受注残高を減算して更新した銘柄別更新枠を証券会社内で閲覧自在にする更新枠表示手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項10に係る発明によれば、損失を拡大する危険な方向へと株価が急激に変動する可能性の高い銘柄には低い格付を、逆に危険性の少ないと判断される銘柄には高い格付を証券会社が任意設定し、任意設定された銘柄別の格付を銘柄別格付情報として銘柄別格付記憶手段に記憶する。
このようにして格付し記憶された銘柄別格付情報その他証券会社の任意決定に応じて、銘柄別受注枠設定手段が証券会社の受注可能な許容限度を適切に加減する。加減の程度は証券会社が任意設定した格付に対し一律でも弾力的でもよいが、原則として高い格付の銘柄に対しては大きく、低い格付の銘柄に対しては小さくなるように加減する。
そして、銘柄別受注枠設定手段により適切に設定された銘柄別受注枠から現時点の銘柄別受注残高を減算すれば、ただ今の追加受注可能な銘柄別更新枠が算出されるので、この銘柄別更新枠を更新枠表示手段により、更新しながら証券会社内で閲覧自在にしておく。
このように、更新した銘柄別更新枠を証券会社内で周知させれば、銘柄別に受注枠の限度を判断する権限を付与されていない証券会社の使用人等であっても、顧客からの注文が受注枠の限度を超えているか否かを、銘柄別更新枠を見ることにより瞬時に判断して顧客対応できるので、判断を誤ることにより商機を逃すような心配がない。
又、証券会社等が買取により手仕舞いする可能性の高い銘柄を要注意銘柄として最低に格付し、受注枠を厳重に規制することにより、証券会社が買い取るという顧客にとって確実な損切りが実行される損切り代行サービスを実施する証券会社側の危険負担を軽減でき、買取による損切り代行サービスを証券会社が実施しやすくなる。
その請求項11に係る発明は、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応して、証券会社が顧客から徴収する売買手数料、金利、貸株料又は諸経費の1種類以上を含む取引条件を差別化する差別化手段を備えたことを特徴とする請求項10に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付建玉管理システムである。
請求項11に係る発明によれば、証券会社が顧客から徴収する売買手数料、金利、貸株料又は諸経費(以下、単に「諸経費」ともいう)の1種類以上を含む取引条件に関し、銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応して、取引条件を差別化する差別化手段を備えたことにより、銘柄別に取引条件を加減する権限を付与されていない証券会社の使用人等であっても、証券会社が任意設定した妥当な条件で顧客対応できるので、判断を誤る心配がない。
特に、証券会社等において買取による手仕舞いする可能性の高い銘柄を要注意銘柄として最低格付し、リスクヘッジ効果を含めるように差別化手段が機能する。すなわち、証券会社が顧客から徴収する金利、貸株料又は手数料の1種類以上を含む取引条件を、証券会社側に有利なように設定できる。
逆に、証券会社等において買取による手仕舞いする可能性の少ない銘柄は安全銘柄として高く格付し、証券会社が顧客から徴収する金利、貸株料又は手数料の1種類以上を含む取引条件を、顧客側に有利なように設定できるので、営業促進効果を含めるように差別化手段が機能する。
その請求項12に係る発明は、前記管理建玉についての表示をインターネットを介して前記顧客に告知する告知手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの建玉管理システムである。
請求項12に係る発明によれば、インターネットを利用した株取引に適応できる。
その請求項13に係る発明は、顧客が証券会社から現物取引により購入後未売却の所有株式を証券会社が顧客から依頼された個別株式ごとに強制売却するための取引情報を明確に表示するようにした顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムであって、取引内容を記憶する取引内容記憶手段と、更新株価を収集する株価情報収集手段と、同一銘柄及び同一売買価格であれば1単位に併合して表示できる表示枠に、第1の値下がり率を超えたときに市場内強制売却を指示する損切り指定株価を表示する第1の表示と、第2の値下がり率を超えたときに市場外強制売却を指示する損切り指定株価を表示する第2の表示と、の少なくとも何れかを表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項13に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項1と同等の作用効果がある。
その請求項14に係る発明は、証券会社用のバックオフィスコンピュータシステムに対して直接又は間接的に情報交換するインターフェースと、前記証券会社により強制的に市場で売却される株価に達すると顧客の私情を排除して自動又は手動により売却指示の信号が前記バックオフィスコンピュータシステムへ送信される売却手段と、を備えたことを特徴とする請求項13に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項14に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項3と同等の作用効果がある。
その請求項15に係る発明は、前記証券会社により強制的に市場で売却される株価に到達したとき、前記所有株式に対して市場で強制売却を指示する第1の指示手段を備えたことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項15に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項4と同等の作用効果がある。
その請求項16に係る発明は、前記証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で売却する株価に到達したとき、前記所有株式に対する市場外での相対取引による強制売買を指示する第2の指示手段を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項15の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項16に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項5と同等の作用効果がある。
その請求項17に係る発明は、前記第2の指示手段に情報接続され前記バックオフィスコンピュータシステムを用いて前記市場外での相対取引を実行する相対取引実行手段を備えたことを特徴とする請求項16に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項17に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項6と同等の作用効果がある。
その請求項18に係る発明は、前記相対取引が実行されたならば監督機関宛てに通報する通報手段を備えたことを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項18に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項7と同等の作用効果がある。
その請求項19に係る発明は、前記顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する識別符号発生手段と、前記証券会社が前記顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに前記識別符号を付加する顧客符号化手段と、前記識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にした検索閲覧手段と、を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項18の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項19に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項8と同等の作用効果がある。
その請求項20に係る発明は、任意の銘柄又は任意の所有株式を選択して一まとめに売却指示する第3の指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項19の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項20に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項9と同等の作用効果がある。
その請求項21に係る発明は、銘柄別に即時管理される株式において、その所有株式残高を顧客から証券会社に対する銘柄別受注残高と定義し、銘柄別の株式情報に基づいて証券会社が任意設定可能な銘柄別格付情報を検索自在に記憶する銘柄別格付記憶手段と、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応するか又は証券会社の任意決定により証券会社が受注可能な銘柄別受注枠を設定する銘柄別受注枠設定手段と、前記銘柄別受注枠設定手段により設定された銘柄別受注枠から現時点の銘柄別受注残高を減算して更新した銘柄別更新枠を証券会社内で閲覧自在にする更新枠表示手段と、を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項20の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項21に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項10と同等の作用効果がある。
その請求項22に係る発明は、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応して、証券会社が顧客から徴収する売買手数料又は諸経費の1種類以上を含む取引条件を差別化する差別化手段を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項21の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項22に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項11と同等の作用効果がある。
その請求項23に係る発明は、前記所有株式の値下がり率を含めた前記取引情報をインターネットを介して前記顧客に告知する告知手段を備えたことを特徴とする請求項13ないし請求項22の何れか1項に記載の顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システムである。
請求項23に係る発明によれば、現物取引に限定した範囲において、請求項12と同等の作用効果がある。
その請求項24に係る発明は、証券会社が信用供与して金銭、株式の貸借及び/又は売買の信用取引をする顧客と共有する取引情報のうち顧客から依頼された損切りに係る個別建玉ごとの強制的に手仕舞いされる建玉の表示を明確にした管理システムであって、前記顧客が前記証券会社に預託した委託保証金の金額を記憶する委託保証金記憶手段と、前記顧客が前記証券会社から借用した金銭又は貸株に依存する信用取引に係る建玉についての約定価格を含む取引内容を記憶する取引内容記憶手段と、更新株価を収集する株価情報収集手段と、前記更新株価を前記取引内容に加味するほか、少なくとも未清算金利、未清算貸株料、未清算諸経費の何れかを加味して含み損益を算出する含み損益算出手段と、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の単位として前記取引内容に対応する数式に前記委託保証金と建玉の約定価格及び前記含み損益を更新した数値を代入して保証金維持率を算出する保証金維持率算出手段と、建玉ごとの保証金維持率に関して指定された閾値を記憶する閾値記憶手段と、前記保証金維持率が前記指定の保証金維持率の閾値に到達したことにより前記証券会社が強制的に手仕舞いする管理建玉を抽出する管理建玉抽出手段と、前記管理建玉抽出手段により抽出された手仕舞い実行前の管理建玉を識別可能にして表示する管理建玉表示手段と、を備えたことを特徴とする株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムである。
請求項24に係る発明によれば、証券会社の顧客が、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムを用いることにより、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位とし、建玉を手仕舞いするか否かについて決定する保証金維持率を算出し、更新して表示する。
例えば、実施の形態では、日付と株価及び諸条件が更新されるたびに更新される保証金維持率を監視した結果、閾値による判断で強制的に手仕舞いする。当該閾値は顧客から依頼された個別建玉ごとの自動損切り代行のため証券会社が、顧客と取引開始前に合意し、私情をはさむ余地なく建玉の買戻しや転売による手仕舞いを、証券会社が定めた時期に遅滞無く又は、直ちに実行する。ここでいう合意は、予め証券会社が作成した規約を顧客が承諾すればよい。その規約に法り開設された専用口座内における建玉や所有株式は、全て一律にこれらの強制的な手仕舞いが行われることとなる。
発明の実施に際し、当該信用取引の約定価格に金利、貸株料及び/又は諸経費を交えた取引内容が記憶されており、当該信用取引内容に沿って、委託保証金と、更新株価と、取引後経過日数に対応した未清算金利及び/又は未清算貸株料等を加味した損益を更新すると共に、取引内容に対応する数式により保証金維持率を算出する。
又、実施の形態では、建玉ごとに指定の保証金維持率の閾値が設定されており、保証金維持率が設定された指定の閾値に達すると、証券会社により強制的に手仕舞いされる。
手仕舞いの原因は、建玉ごとに設定された指定の保証金維持率の閾値に到達したことであり、その結果、顧客の損益は、当該閾値の定めた通りのリスクに限定される。なぜならば、リスクを限定するために当該閾値を定めているからである。
このようにして、効率良く多数の建玉を常時監視するなかで、運用成績の悪い建玉のみを証券会社等が逐次手仕舞いする。
前記保証金維持率の算出は、後ほど説明する数式で示すとおり、人が簡単に暗算できる性質のものではなく、しかも建玉ごとに異なる指定の保証金維持率の閾値が設定可能であるため、顧客も複数の建玉に対しては本人の記憶力及び注意力の限界を超え、かつ私情を排除した管理手段が不可欠である。
そこで、前記保証金維持率が、設定された閾値に達すると、証券会社により強制的に手仕舞する契約に基づいた管理手段を採用する。
管理建玉抽出手段により抽出された管理建玉及び当該管理建玉の保証金維持率を証券会社と顧客の双方に表示する管理建玉表示手段が、即刻にも対応すべき管理建玉を識別可能な一覧表等に表示する。なお、管理建玉の表示は、保証金維持率が指定の閾値に達した旨の表示により識別する。例えば数値表示、色分け識別、別表による一覧表、伝送の容易な電子データ等、何れの実施でも識別可能であれば構わない。
その請求項25に係る発明は、前記信用取引には空売りを含むことを特徴とする請求項24に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項25に係る発明によれば、請求項2と同等の作用効果がある。
その請求項26に係る発明は、証券会社用のバックオフィスコンピュータシステムに対して直接又は間接的に情報交換するインターフェースと、保証金維持率が前記閾値に達すると顧客の私情を排除して自動又は手動により手仕舞い指示の信号が前記証券会社用のバックオフィスコンピュータシステムへ送信される手仕舞い指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項24又は請求項25に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項26に係る発明によれば、バックオフィスコンピュータシステムは株式の売買代行を業とする証券会社用として周知の株式売買代行業務処理システムであり、当該システムにインターフェースを介して接続することにより情報交換自在とし、保証金維持率が指定の閾値に達すると、管理建玉の表示に沿って手仕舞い指示手段が自動又は手動により手仕舞い指示の信号を当該システムへ送信し、顧客の私情を排除して指示どおりに手仕舞いする。
そうすることにより、莫大な数の顧客と建玉を迅速正確にリスク限定の管理することができる。又、顧客の私情を排除することにより、事態の悪化を阻止できるので、損失が拡大される心配がない。
したがって、保証金維持率が指定の閾値に到達したとき、顧客の委託保証金の範囲内に限定される損失金額として予め算出可能な損失リスクが閾値で規定され、顧客と証券会社の双方にとって利益になる。
その請求項27に係る発明は、前記保証金維持率が指定の閾値に到達したとき、前記管理建玉に対する市場での強制反対売買を指示する第1の指示手段を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項26の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項27に係る発明によれば、証券会社と顧客が契約により定めた閾値α、例えば指定の保証金維持率α=20%に到達したとき、前記管理建玉に対する市場での強制反対売買を指示する第1の指示手段が作動して強制的に市場内で手仕舞いする。
このとき、前記証券会社にとって、特に前記第1の指示手段はコンピュータ処理可能な無人業務の範囲内であり迅速に手仕舞いできる。
その請求項28に係る発明は、前記保証金維持率が指定の閾値に到達したとき、前記管理建玉に対する市場外での相対取引による強制反対売買を指示する第2の指示手段を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項27の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項28に係る発明によれば、請求項5と同等の作用効果がある。
なお、証券会社自身、又は証券会社の指定する信用保証機関もしくは融資機関等(以下、「証券会社等」ともいう)が、前記契約により定められた特定の相手方となり、気配値で相対取引する。ここにいう指定の保証金維持率β=0%とは、委託保証金と含み損失が一致し、残存保証金が消失したことを意味する。
具体的には、指定の保証金維持率β=0%に到達した瞬間に、市場での取引がなかった場合、当該銘柄に関する取引履歴の延長で推定される仮想の価格を示す気配値又は理論値、例えば、買い建玉に対しては、売り気配値で、顧客が証券会社に強制売却して手仕舞いする。すなわち、下がった株式を証券会社等が顧客から買い取る。
逆に空売り建玉に対しては、買い気配値で、顧客が証券会社等から買い戻した当該株式を貸株者に返却する。すなわち、値上がりした株式を顧客が証券会社等から買い戻してから、当該貸株を貸株者に返却する。なお、当該買い戻しの費用は、空売りの約定代金を証券会社が担保に預かっているので、確実に手仕舞いできる。
そして、これらの強制反対売買について、証券会社と顧客の双方共に拒否できないことが、本発明全体に係る技術思想の必須要件であり、強制の意味するところである。
このようにすれば、指定の保証金維持率が実施の形態でいう閾値α,βに到達したにもかかわらず、市場での手仕舞いが不可能である場合にも、管理建玉に対する強制反対売買の相手方を探すための人為的な努力と時間が不要であり、特に前記第1の指示手段と同様に前記第2の指示手段もコンピュータ処理可能な無人業務の範囲内であり迅速に手仕舞いできる。しかもこれらの信用取引全般にわたり、周知の証券保管振替機構を用いており、コンピュータのファイル間で株式に関する占有権の振替処理、すなわち帳簿の付け替えを行うのみであり、現物株式の引渡しは不要である。
したがって、ある管理建玉に関し、指定の保証金維持率β=0%の閾値に到達した直後に、市場価格が顧客の不利な方向へと急変しても、市場の気配値を採用して強制的に手仕舞いするので、手遅れになった顧客が破綻するようなことも避けられる。
具体的には、顧客が株式を購入していた買い建玉に係る株式会社が倒産し、当該株式に関して市場が買い手不在であっても、指定の保証金維持率β=0%の閾値に到達した時点の株価で、当該株式を瞬時に証券会社自身が買い取って手仕舞いする。あるいは、市場の終値で指定の保証金維持率β=0%の閾値に到達したならば、その終値で翌営業日に遅滞無く手仕舞いすればよい。
なお、証券会社は下がった株式を法外の高値で買い取れば損失補填の罪に問われるが、売り気配の最中にその気配値で買い取ることは損失補填にならないので、合法的処置とされている。つまり、急落して無価値に近づく株式であっても、気配値を表示できる瞬間に手仕舞いすればよい。
その請求項29に係る発明は、前記第2の指示手段に情報接続され前記バックオフィスコンピュータシステムを用いて前記市場外での相対取引を実行する相対取引実行手段を備えたことを特徴とする請求項28に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムである。
請求項29に係る発明によれば、請求項6と同等の作用効果がある。
その請求項30に係る発明は、前記相対取引が実行されたならば監督機関宛てに通報する通報手段を備えたことを特徴とする請求項28又は請求項29に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムである。
請求項30に係る発明によれば、請求項7と同等の作用効果がある。
その請求項31に係る発明は、前記顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する識別符号発生手段と、前記証券会社が前記顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに前記識別符号を付加する顧客符号化手段と、前記識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にした検索閲覧手段と、を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項30の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項31に係る発明によれば、請求項8と同等の作用効果がある。
このように、前記取引情報は、前記検索閲覧手段により前記識別符号を検索目印として、前記証券会社及び顧客本人を始めとして、第三者にも検索閲覧を可能にし、前記証券会社1及びその指定する機関等に属する者で所定の権限を付与された者に限り、所定範囲の情報処理もできるようにすれば、外注業者等に情報処理の依頼が容易にできる。すなわち、外注業者等に高度な守秘義務を課す必要がなくなり、その分の費用が軽減できる。
その請求項32に係る発明は、任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに前記保証金維持率を合算する任意建玉合算手段と、前記任意建玉合算手段により合算された合算維持率により該当する任意建玉のみを一まとめに手仕舞い指示する第3の指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項31の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項32に係る発明によれば、任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに保証金維持率を合算する任意建玉合算手段により合算された合算維持率に該当する任意建玉を一まとめに手仕舞い指示することができるので合理的である。
例えば、ある銘柄の株式を異なる単価で複数の建玉に分けて購入したが、複数の建玉のうち一部の高値買いした建玉のみが閾値に到達した場合も、顧客と証券会社の契約によって当該銘柄に係る全部の建玉を一まとめに手仕舞いすることができる。
なお、任意建玉合算手段が一まとめに保証金維持率を合算するために、建玉を選択する際の選択基準は顧客と証券会社の契約で定める。
そして、閾値に到達した管理建玉を、顧客の私情によって手仕舞いを保留することは本発明全体に係る技術思想により禁止されているが、前記合算維持率に係る任意建玉のなかに閾値に到達した個別の建玉が含まれていても、前記合算維持率が閾値に到達していなければ、これらの任意建玉は一まとめに維持される。
そうはいうものの閾値に到達する以前の建玉を、顧客の意思によって手仕舞いを早めることは自由である。
その請求項33に係る発明は、銘柄別に即時管理される建玉において、買い建玉残高又は空売りによる売り建玉残高を顧客から証券会社に対する銘柄別受注残高と定義し、銘柄別の株式情報に基づいて証券会社が任意設定可能な銘柄別格付情報を検索自在に記憶する銘柄別格付記憶手段と、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応するか又は証券会社の任意決定により証券会社が受注可能な銘柄別受注枠を設定する銘柄別受注枠設定手段と、前記銘柄別受注枠設定手段により設定された銘柄別受注枠から現時点の銘柄別受注残高を減算して更新した銘柄別更新枠を証券会社内で閲覧自在にする更新枠表示手段と、を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項32の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムである。
請求項33に係る発明によれば、請求項10と同等の作用効果がある。
その請求項34に係る発明は、前記銘柄別格付記憶手段の記憶する銘柄別格付情報に対応して、証券会社が顧客から徴収する売買手数料、金利、貸株料又は諸経費の1種類以上を含む取引条件を差別化する差別化手段を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項33の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システムである。
請求項34に係る発明によれば、請求項11と同等の作用効果がある。
その請求項35に係る発明は、前記管理建玉についての表示をインターネットを介して前記顧客に告知する告知手段を備えたことを特徴とする請求項24ないし請求項34の何れか1項に記載の株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システムである。
請求項35に係る発明によれば、請求項12と同等の作用効果がある。
このような管理システムによれば、信用取引における空売り、又は融資を受けない現物取引まで含んで、あらゆる取引形態において、個別株ごとに顧客の委託保証金又は、指定した限度額で損切りを実行し、リスクを限定することが可能になる。
そして、緻密にリスク限定の管理を徹底したいという顧客の要望に答えるべく、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位として、保証金維持率が指定の閾値へ到達した旨の表示を行う。この表示を可能にした、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理システム及びその方法により、昼夜の別なく世界中又は指定地域の株価を常時監視し、指定の保証金維持率の閾値へ到達した場合は、個別株ごとに建玉を強制的に手仕舞いする。
すなわち、証券会社から、その証券会社の顧客に対するサービスとして、許容限度内に損失を限定し、最少の損失で最大の利益を得るように、人の判断のなかで最も重要かつ困難とされる「損切り」に関し、総損切りでなく個別株ごとに、しかも、顧客に代わって証券会社がその代行サービスを提供することが可能となる。
すなわち、個別建玉ごとの損失があっても全体で補えば何とかなると考えがちな顧客が、自分で行うのは大変難しいと言われている顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの損切りを、証券会社が顧客に代わって行う「個別損切り代行サービス」を可能とする「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付き建玉管理システム」、「顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム」、「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システム」を提供できる。
なお、顧客自身が行うのは大変難しい個別建玉ごとの手仕舞いサービスとは、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉又は現物株式を管理の最小単位として、個別対応により強制的かつ速やかに手仕舞いすることを意味する。さらに詳しい効果は、以下の通りである。
(1)本発明によれば、損失額を口座内における全ての個別建玉又は個別株ごとに一律に一定限度額以内におさめることが可能となる。したがって、顧客にとって個別株ごとに細かく確実にリスクを限定した株式の取引が可能となる。
(2)又、信用取引において、保証金維持率が指定の閾値に到達した場合には、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位として、個別対応により強制的かつ速やかに手仕舞いすることから、運用成績の悪い建玉から順に選別して早めに損失額の拡大を防止することが可能となる。
具体例として「塩漬け株」と呼ばれるような値下がり株を売却できずに値下がりしたまま長期間持ち続けることをなくせる。このように、個別株式ごとに管理し、手仕舞いできるので、例えば値下がりした株の含み損が、他の運用成績の良い建玉にまで影響し、まとめて担保処分される事態も避けられる。
(3)又、損益状況に関して、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位として算出することも、複数銘柄にわたる建玉を一まとめにして算出することも自在なことから、顧客は全体あるいは任意の単位での得失を把握して、市場動向や資金力に応じて株式売買を個別銘柄ごとに行うことも、複数銘柄を一まとめにして行うこともでき、取引を柔軟に行うことが可能となる。
(4)又、顧客はインターネットを介して、指定する閾値に到達した管理建玉を識別可能に表示されリアルタイムで一覧できることから、損益状況の悪い建玉には早い時点で、私情を挟む余地なく強制的に手仕舞いされること、又は手仕舞いされたことを告知される。一般的には顧客の私情が逆作用して、損切りが手遅れになり事態を悪化させやすいところを、強制的かつ確実に手仕舞いし、その旨を通知できる。
(5)なお、各種方式のある株式投資のなかでもハイリスクハイリターンとされる信用取引に対して、リスク限定される条件が整備されたならば参入する可能性のある多数の個人投資家の潜在需要を背景にして、個別建玉ごとの指定率での損切り機能付きの管理システムが発明された。
本発明によれば、専門家でない顧客にとって自分の意思だけでは実行が困難とされる、個別株ごとに一律に行う損切り(ロスカット)を、顧客に代わって証券会社が代行サービスできるコンピュータの仕組みを提供できる。その結果、株式の信用取引によって生じる可能性のあった、個人投資家の委託保証金を超える損失の発生を阻止できる。
すなわち、個人投資家が通常の注意義務を遵守しても陥りがちな判断ミスの結果として、損失を拡大したり、塩漬け株をつくったりすることのあった委託保証金の追加差入れ(証券取引所(東京)受託契約基準第47〜48条)という事態をなくすことができる。
つまり、委託保証金の範囲内にリスクを限定するため、本発明に開示した「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付き建玉管理システム」及び「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システム」、そして、より一般的な「顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム」を提供できる。
このように、個人投資家にとって、自分で行うことが大変難しい「個別建玉ごとの指定率での損切り」というサービスを、個人投資家である顧客の求めに応じて証券会社が顧客に提供できるようにした。
(6)又、顧客が現物取引による購入後未売却のため株式保有中、又は株式信用取引による買建てを維持している途中に、当該株式の発行会社が倒産した場合、最終的には当該株価が0円となるが、この場合にも本発明によれば、顧客に対する救済措置が用意されている。
すなわち、確実に株価が0円に収斂する見通しの当該株式に対する市場での買い注文があるとすれば、例えば1円と2円の倍額に変動する間で瞬間的な投機筋に限定され、一般的な換金売却は困難になるにもかかわらず、当該株式を証券会社が市場外で一定価格により買い取れば、顧客のリスクは限定されることになる。
このことは、証券会社が、顧客になり代わってリスクを負担していることになる。そのために、証券会社は正規の業務として顧客の分までリスクヘッジを厳重に徹底する。
(7)この発明により、証券会社は、その顧客それぞれの株式投資における損失リスクの一部分ずつを大規模な資金・建玉・株式にまとめ、証券会社の通常業務として安定確実な実績あるリスクヘッジの手段を行使することが可能となる。
そして、いわゆる株式投資の専門機関である証券会社にとって、大規模な資金等に関するリスクヘッジの手段を行使することは、一般素人の顧客に比べて格段の確実性を持っているので、証券会社にとっては大した負担になるものではない。
すなわち、リスクヘッジは株式投資において必要不可欠であるにもかかわらず、ほとんどが個人投資家の顧客にとって、知識不足等により不確実であったところを、専門機関である証券会社に委ねることで、より確実に対応できる。
(8)又、株式投資を行う顧客は「株式銘柄の乗り換え」に直面することが多いが、例えば下げ気味の銘柄Aから上がり気味の銘柄Bへと「株式銘柄の乗り換え」に際して、判断要素が2点ある。1点目は銘柄Aを切り捨てる判断、2点目は銘柄Bを買う判断である。
本システムによれば、下げ気味の銘柄Aを−20%で売却されれば、前記1点目にいう銘柄Aを切り捨てる判断が不要となり、かつ指定の保証金維持率も優位な数値に改善されて余裕が生じるので、顧客は2点目にいう銘柄Bを買う判断を楽に意思決定できるようになる。
このようなわけで、「株式銘柄の乗り換え」に際しての判断要素を、顧客から一つ減らせるので、より迅速的確な判断を顧客ができるようになる。
(9)要するに、株式投資のための融資、貸株及び仲介斡旋に関する専門機関である証券会社が、豊富な専門知識と経験により、専門家でない個人投資家に対して、危険回避できるように迷うことなく迅速確実な意思決定の支援まで行う。このことにより、従来の証券会社が法定業務の範囲に限定していた業務範囲を、法定枠内で拡大し、株式の信用取引や現物取引に対する潜在需要を顕在化して幅広い需要を喚起し、より安全性を高めて大衆化を可能ならしめる。
(10)更新した銘柄別更新枠を証券会社内で周知させれば、銘柄別に受注枠の限度を判断する権限を付与されていない証券会社の使用人等であっても、顧客からの注文が受注枠の限度を超えているか否かを、銘柄別更新枠の表示値と見比べて瞬時に判断し、顧客対応できるので、危険防止のために過剰反応して商機を逃すような誤判断、又は、安全限度を超える超過受注の心配がない。このことは、証券会社等が買取りその他により手仕舞いする可能性の高い銘柄を要注意銘柄として低めに格付し、受注枠を適切に規制し、証券会社側の危険負担を制御できることを意味する。
(11)銘柄別に取引条件を加減する権限を付与されていない証券会社の使用人等であっても、証券会社が任意設定した妥当な条件で顧客対応できるので、判断を誤る心配がない。特に、証券会社等において買取による手仕舞いする可能性の高い銘柄を要注意銘柄として最低格付し、リスクヘッジ効果を含められる。逆に、証券会社等において買取による手仕舞いする可能性の少ない銘柄は安全銘柄として高く格付し、顧客側に有利なように設定できるので、営業促進効果を含めるように差別化手段が機能する。
(12)バックオフィスコンピュータシステムを用いることにより、そのシステムが管理する証券会社の顧客に洩れなく迅速な市場外での相対取引による手仕舞い処理のサービスに人手をかけることなく自動的に提供できる。又、市場外での相対取引が成立した場合、その旨を、監督機関であるところの、例えば、日本証券業協会宛てに5分以内に通報するという法定義務を自動的に履行できる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下、「本システム」との略称で本発明を呼んだ場合、「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定率での損切り機能付き建玉管理システム」、「顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム」、「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システム」の全部又は何れかを指しており、適宜に区別して説明する。
ただし、文中又は図中に保証金維持率の文言があれば「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による損切り機能付き建玉管理システム」を意味している。
図1は、本システムの基本説明図である。図1には、符号を付していないので、図1に沿ってそのまま説明する。
本システムは、図1の中央部に記載された証券会社のバックオフィスコンピュータシステムに対する支援システムである。すなわち、バックオフィスコンピュータシステムに接続されて、それを内外から支援する支援システムとしての位置付けである。
なお、図1に示す一例は、本システムを外部支援システムとして位置付けた構成であるが、支援システムをバックオフィスコンピュータシステム本体の内部に含んだ構成であっても構わない(図21参照)。
図1に示すように、バックオフィスコンピュータシステムは、証券会社が顧客からの取引注文に応じて株式市場への取り次ぎを実行し、その結果を顧客別の株式売買口座等に記帳して維持管理する機能の全般を備えている。
本システムは、バックオフィスコンピュータシステムと連携動作することにより、証券会社が顧客口座内全株式に指定率で一律に確実かつ自動的に、指定した個別株式ごとの損切りを代行するための「個別株式ごとの損切り代行サービスを実現するためのコンピュータシステム」を構成している。
本システムは、バックオフィスコンピュータシステムと相互に連携動作して、損切り代行サービスを実現するために、取引承諾枠計算手段との連絡、取引情報の授受、市場内売買による第1の損切り実行又は指示、市場外売買による第2の損切り実行又は指示を、リアルタイムで対応する。
又、市場外売買による第2の損切り実行又は指示に伴って、指定官庁その他へ市場外売買の報告もする。
本システムは、顧客との連絡を緊密にし、損切り状況の表示と閲覧をインターネット等により行うことが可能であり、顧客は損切りの「指定率」を証券会社との間で定めれば、その後の取引には全て「指定率」により損切りが実行される。なお、本システムで「指定率」による損切りを実現するために必要不可欠な株価データが、市場から直接又は間接的に収集できるように構成されている。
図2は、本システムの概念図であり、横軸X1は購入銘柄一覧、縦軸Y1は購入株価を基準0%にしての株価変動率を%表示した柱状グラフを用いて本システムの技術思想を説明する。
なお、図2及び後ほど説明する図3に示す本システムにおいては、現物取引を例示し、購入価格よりも20%値下がりしたならば証券会社が市場内で当該株式を強制売却し、もし売れないままに40%値下がりしたならば市場外で当該株式を強制売却、すなわち証券会社が買い取る契約が、顧客と証券会社の間で予め成立していることとする。
図2の左端から銘柄A,B,C,D,E,Fの順で異なる株式を購入し、ある期間が経過した時点における、各銘柄の株価変動及び含み損益を説明する。
銘柄Aは10%下落,銘柄Bは30%上昇,銘柄Cは20%下落(実線の柱),銘柄Dは40%上昇,銘柄Eは40%下落(実線の柱),銘柄Fは10%上昇していることを示している。
なお、全銘柄A〜Fのことを別建値による同一銘柄の別建玉と考えてもよい。ただし、ここでは説明を簡単にするため、銘柄A〜Fを異なる株式とし、全て単価千円で千株を100万円で購入したものと想定する。そうすると、株価変動の%表示は、そのまま、損益額の万円表示に読み替えられる。したがって、図2に示す全銘柄A〜Fの含み損益額の総和は−10+30−20+40−40+10=10万円である。
含み損益額の総和が+10万円であるときに、もし顧客が自分の意思で、下落した銘柄C,Eのみを損切りできれば、更なる可能性を模索できるのに対し、現実には人の判断力の盲点として「全体で儲かっているのだから値下がり銘柄C,Eの損切りはとりあえず見送っても良い」との楽観的判断に偏るのが普通である。
この錯覚による誤判断に気付いたときには、もはや手遅れで回復は困難となっている。その結果、現物取引においては、下落した銘柄C,Eは、俗にいう「塩漬け株」となり、売れば含み損が顕在化する。
ここで、図2に示した内容を、従来からある信用取引での損益額の総和のみによって管理し、総和での総損切りラインを−20%とした場合については、前記総和が+10万円であるため、証券会社による強制的な反対売買による損切りが実行されることはないが、値下がり率の大きい銘柄Cは低落し,Dはさらに急落するものと予想されるので、銘柄C,Dのそれぞれが破線で示すように、例えばあと30%下落すれば、全銘柄A〜Fの損益額の総和が10−30=−20万円となり、全銘柄A〜Fの株式を一括売却されてしまう。これが、「総合管理」の特徴であり、管理システムが正常に機能していても
逆にいえば、当事者が早めの損切りを希望していても、銘柄C,Eのそれぞれが破線で示すように、例えば銘柄Cがあと10%下落して−30%となり、銘柄Eがあと20%下落して−60%になるまで損害の拡大を容認することになり、言い換えれば、顧客が確実に総額で20%の損害を出すまでは、損切り機能が作動しない。
この一括売却のタイミングに遅延がなければ、とりあえず証券会社の損失は最小限に止められるが、顧客にしてみれば、銘柄B,D,Fに示すように値上がりして今後も有望視されているものまで強制売却されてしまう。
ここで、前記総和が+10万円であるようなプラス値の場合、顧客本人には精神的弱さや錯覚のため困難とされていた「個別株ごとの損切り」意思決定及び実行を証券会社が代行し、全体の利益を阻害する銘柄C,Eのみを早めに損切りし、逆に有望視される銘柄B,D,Fを生かすことができれば、顧客にとって効率良く理想的な資産運用形態となり、しかも証券会社にとっても損ではない。
なぜならば、一括売却の場合は、それを実行するタイミングに遅延があれば、損害を拡大していることが多くなり、一括売却しても証券会社の債権回収が不完全になるからである。
つまり、値下がり率の大きい銘柄C,Eはさらに値下がりする予想があるならば、この銘柄C,Eだけでも、個別銘柄ごとに損切りが実行されていれば、これより悪化させることを阻止できたはずである。このように適切な基準により対象を区別して損切りする技術思想を、顧客口座内全建玉について顧客の私情を排除して一律に適用し、指定率での損切り機能を作動させれば優良銘柄B,D,Fのみを生かして、劣後銘柄C,Eのみを損切りすることにより、健全な株式投資を継続できるので、顧客と証券会社の双方にとって利益になる。
図3は、本システムの応用形態の説明図であり、横軸X2は時間、縦軸Y2は購入株価を基準にしての株価変動率を示す株価推移グラフである。これにより、株価推移70上の各ポイント71〜78において実行した株式売買において、個々の経緯及び最終損益を明示している。
ここでも、説明を簡単にするため当該銘柄の株式は、ポイント71において、単価千円で千株を100万円で購入したものと想定する。そうすると、株価変動の%表示は、そのまま、損益額の万円表示に読み替えられる。
ポイント71で購入された株式は、20%値上がりしたポイント72において、一方では利食い売りされると同時に、他方では売却価格と同価格で同一銘柄の同数が購入される。この売りと同時同一同数の買いをポイント72〜77でそれぞれに実行し、ポイント78では、ポイント77での購入価格よりも20%値下がりしたことにより強制売却されて一連の取引を終了する。そうすると最終的には100万円の利益を安全確実に計上できる。
図3に示した一連の取引においては、買値から20%値下がりしたら強制売却される本システムの特徴を利用し、上昇傾向の株式の場合に、どこまでも高値追いをして買い進めても、自動売却機能は、その都度高値に仕切り直した購入価格を更新しているので、直近の購入価格に対して20%値下がりしたら強制売却される。したがって、結果的に安く買って高く売り抜けられるのである。
ここで、本システムを用いずに、当該株式に対する「見切り売りのタイミング」を人の判断だけに頼る場合、図3に示した上昇曲面の株式の場合にあっては、いつの時点で上昇傾向が下落傾向に転ずるかの判断が困難をきわめるので、ポイント72〜77の何れかの中間点で見切り売りするのが常である。結果的に当該株式の最高値の直近であるポイント77まで買い進めることはできず、上昇株であるにもかかわらず、利益を半ば放棄することになる。
このように、本システムを用いた場合は、上昇株であれば安く買って高く売り抜けられ、むだなく利食い売りできるが、用いない場合は、上昇株であるにもかかわらず、利益を半ば放棄することになる。なぜならば、損切りが徹底できないからである。
図4は本システムの概略構成図、図5は本システムにおける業務用コンピュータのブロック構成図、図6は株式売買ファイルの論理構成図、図7は本発明による管理方法の基本を示すフローチャート、図8は顧客端末から本システムへのアクセス手順を示すフローチャート、図9は買い建玉を管理するバランスシートの説明図である。以後は買い建玉の管理に関する説明を主とし、空売り建玉の買戻しにも変形して応用できるものとする。
先ず、本システムの概略構成について図4を参照して説明する。図4に示すように、本システム5は、証券会社1と、顧客端末2と、これらを接続するインターネット3とから構成される。ただし、顧客端末2及びインターネット3は、これらに代わる他の通信手段を用いても構わない。
ここで、証券会社1は、周知の通常業務として、顧客の求めに応じ、証券取引所に株式売買の取り次ぎを依頼する。又、大衆的な個人投資家にはハイリスクとされている信用取引では、顧客が証券会社1に委託保証金を入金し、顧客が株式取引するための資金を委託保証金の所定倍率を限度に融資する機関でもある。
証券会社1が合法的に営むことができる業務の範囲には、証券取引所(東京)受託契約準則第41条[信用取引による有価証券又は金銭の貸付け]でいうように、信用取引による売付け代金及び委託保証金を担保として当該売付け有価証券の貸し付けを行うものと、買付け有価証券及び委託保証金を担保として当該買付け約定価格の全額に相当する金額の貸し付けを行うものが含まれている。
同条2項では有価証券の貸し付け(以下、「貸株」という)に係る品貸料(以下、「貸株料」という)を取引所が定めている。ただし、貸株料は金銭を受け渡す関係が逆転する逆日歩も発生することがあり、すべての行為は適用条文に従うものとする。
証券会社1は、例えば買付け代金の100%の金額を顧客に融資する。証券会社1は顧客に融資すると同時に、買付けられた株券と顧客が買付けのために入金した保証金を担保として預かる。そして、証券会社1は融資情報や損益情報を顧客がインターネット3を介して公衆が閲覧できるようなホームページを開設する。
ここで、証券会社1は、通常業務の大半を処理する周知のバックオフィスコンピュータ100を用いているが、その説明は省略する。又、本システム5は、証券会社1がバックオフィスコンピュータ100により通常業務を完全に処理できていることを前提とし、バックオフィスコンピュータ100とインターフェース30を介して直接又は間接的に情報交換するシステムアダプタ10を主要部として構成されている。
なお、本システム5の範囲については、バックオフィスコンピュータ100とインターフェース30まで含めるものと考えても構わない。
又、システムアダプタ10は、バックオフィスコンピュータ100に内蔵又は付加して一体的な動作も可能であるが、バックオフィスコンピュータ100から離れて設置され、バックオフィスコンピュータ100を小規模にした類似構成とし、顧客端末2とインターネット電子商取引を単独で行うことも可能な構成である。その場合は、証券会社1に付随する外部支援機関(後ほど説明する図16)という位置付けが必須要件であり、そこから逸脱しての株式取引は違法行為とみなされることがある。
システムアダプタ10は業務用コンピュータ11と、WWWサーバ13とから構成され、さらに、業務用コンピュータ11は株式売買ファイル12を、WWWサーバ13はホームページ用ファイル14をそれぞれ備えている。顧客端末2は、証券会社1から例えば株式購入のための購入資金の融資を受けて株式を購入する顧客が使用する端末機である。
又、システムアダプタ10は、買い建玉に限定せず、空売りして買い戻す際の貸株に関する斡旋等の手配窓口を無人で対応することもできる。ただし、全文にわたり空売り機能の詳細な説明を割愛し、主に買い建玉に対する利食い売り又は損切りによる手仕舞いを典型例として説明している。
顧客は顧客端末2を操作して、インターネット3を介して証券会社1のWWWサーバ13にアクセス(後ほど説明する図8)して、取引銘柄に関する融資情報や損益情報を入手する。
次に、証券会社1の業務用コンピュータ11について図5を参照して説明する。業務用コンピュータ11は、株式売買ファイル12を生成・更新するコンピュータであり、図5に示すように、処理部21と、記憶部22と、通信制御部23と、表示部24と、入力部25とから構成される。
処理部21は各種計算処理を行い、記憶部22は各種情報を記憶し、通信制御部23はインターネット3との接続処理を行い、表示部24は各種情報の入力操作等の画面表示を行うと共に指定の保証金維持率が指定する閾値以上になった場合に当該情報の画面表示や印刷出力を行い、入力部25は各種情報の入力操作を行うものである。
なお、ここでいう「保証金維持率が指定する閾値以上になった場合」の処理関する規約は、予め証券会社1が作成した規約を顧客が同意すればよく、一度同意したら、取引の終了まで撤回できない。
業務用コンピュータ11は、入力部25を介して記憶部22に記憶した顧客情報と融資情報、及び通信制御部23とインターネット3を介して得られる外部情報提供機関(図示せず)からの株価情報等を、処理部21で計算処理することにより株式売買ファイル12(後ほど説明する図6)を記憶部22の内部に生成・更新する。
記憶部22は業務用コンピュータ11の内部記憶装置(メモリ)・外部記憶装置(ハードディスク等)を包含したものであり、顧客情報記憶手段60、委託保証金記憶手段61、閾値記憶手段66、取引内容記憶手段62、及び動作プログラムの格納手段として機能する。
入力部25には株価情報収集手段63が配設され、更新された株価情報等(以下、「更新株価」という)を処理部21にも共有させ、処理部21の内部にあって計算プログラム等でなる含み損益算出手段64、保証金維持率算出手段65、管理建玉抽出手段67を連動させる。管理建玉抽出手段67は管理建玉表示手段68に表示命令を送り、表示及び手仕舞いをさせる(後ほど説明する図11,図12参照)。
なお、管理建玉抽出手段67により抽出された管理建玉及び当該管理建玉の指定の保証金維持率を証券会社1と顧客端末2の双方に表示する管理建玉表示手段68が、即刻にも対応すべき管理建玉を識別可能な一覧表等に表示す際、管理建玉の表示は、保証金維持率が指定の閾値α,βに達した旨の表示により識別する。例えば帳票中の数値表示、色分け識別、抽出した別表による一覧表、伝送・解読の容易な電子データ等、何れの実施でも識別可能であれば構わない。
処理部21には含み損益算出手段64も配設されており、投資家が株式取引の目的とする利益追求の成果を計算式により正負の数値に算出して表示する。
典型例として、委託保証金による信用に基づいた融資を用いて安値で購入した株式を、後日に高値で利食い売りできたとすれば、売却差益である粗利から金利と手数料等を差し引いた損益を算出して、証券会社1と顧客の双方に知らせるようにする。
計算式に関しては、取引内容記憶手段62により「空売り建玉」と「買い建玉」等の取引形態の区別に応じた計算式を用い、その計算式に代入する数値は、更新株価と金利の外、記憶部22に具備された委託保証金記憶手段61から委託保証金の金額数値を引用する。なお、閾値記憶手段66の記憶する閾値α,βは証券会社1と顧客が契約により定める数値であり、例えば指定の保証金維持率α=20%(契約により高めの設定も可)で強制的に市場内で手仕舞いし、指定の保証金維持率β=0%(固定値)ならば市場外で相対取引して手仕舞いする。又、その旨の表示も行う(後ほど説明する図11参照)。
次に、株式売買ファイル12の論理構成について図6を参照して説明する。株式売買ファイル12は、図6に示すように、顧客の個人情報に関する顧客情報31と、顧客に対する融資情報32と、空売りする際に顧客が証券会社1の斡旋等で借用する貸株情報33と、取引銘柄の損益情報34とから構成される。
顧客情報31は顧客の氏名、個人ID、住所、電話番号、その他、信用程度の格付に影響する一切の情報であり顧客情報記憶手段60(図5)で記憶され秘密管理されている。融資情報32は委託保証金、融資額、融資日、金利、融資総額等の情報である。貸株情報33は委託保証金、貸株銘柄、株数、貸出日、貸株日数、貸株料等の情報である。損益情報34は取引銘柄、取引内容、株数、約定価格、更新株価、時価総額、保証金維持率、保証金維持率の指定された閾値、例えば指定の保証金維持率α=20%,β=0%、損益等の情報である。
なお、「保証金維持率」と「維持率」は同一であり、帳票の見栄えの問題により、適宜に使い分けている。同様に「保証金維持率の指定された閾値α,β」を「維持率α,β」と略している。
又、証券取引所(東京)受託契約準則の第48条[信用取引に係る受託保証金の維持]により、指定の保証金維持率α=20%を下回ることとなったときは、証券会社1は顧客に担保の追加差入れさせなければならない。そのように、追加差入れをさせる事態になる前に、強制的に手仕舞いしてリスクを限定することのできるコンピュータの仕組みを提供することが、本発明の技術思想である。
図7は本発明による管理方法の基本を示すフローチャートである。
委託保証金記憶段階(S1)では、信用取引を開始する顧客が証券会社1に委託保証金を預託することによって信用取引の前提条件が整えられるので、その委託保証金の金額を本システム5の業務用コンピュータ11が記憶する。
なお、フローチャートでは「段階」の文字を省略している。
取引内容記憶段階(S2)では、顧客が証券会社1から借用した金銭又は貸株によって信用取引した建玉に関し、約定価格を含む取引内容を記憶する。例えば、空売りの場合、「貸株料いくらで、何株、借りた、どの銘柄の貸株を、約定価格いくらで売付けた」等、取引内容のすべてに対応した数式を予め記憶したメモリに、各要件と数値を代入する。しかも、日歩、逆日歩及び金利に関しては取引開始から手仕舞いまでの日付と日数も数式に代入する。
株価情報収集段階(S3)では、昼夜の別なく常に更新株価を収集することもできるが、例えば毎日午後4時に1回と決めて、新聞に掲載される市場の終値と一致させるようにしてもよい。
含み損益算出段階(S4)では、取引内容記憶段階(S2)で記憶された取引内容に対し、更新株価と未清算金利及び/又は未清算貸株料等を加味して含み損益を算出する数式による計算の結果を出す。
保証金維持率算出段階(S5)では、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位として取引内容に対応する数式に委託保証金と建玉の約定価格及び含み損益を更新した数値を代入して保証金維持率を算出する。
管理建玉抽出段階(S6)では、建玉ごとの指定の保証金維持率に関して多段階に設定された閾値の何れかに保証金維持率が到達したことにより証券会社1が強制的に手仕舞いする管理建玉を抽出する。多段階に指定し設定された保証金維持率の閾値とは、例えば指定の保証金維持率α=20%もしくはそれ以上の多種類の数値と、固定されたβ=0%の数値の組み合わせを意味する。
管理建玉表示段階(S7)では、管理建玉抽出段階(S6)により抽出された手仕舞いする管理建玉を識別可能にして証券会社1と顧客の双方に表示する(後ほど説明する図13参照)。例えば、指定の保証金維持率α=20%で市場内の手仕舞い、指定の保証金維持率β=0%で市場外の手仕舞い、すなわち証券会社1自身が反対売買の相手方になって手仕舞いするので、手仕舞いの対象となる建玉をあらわす帳票等に識別可能な目印をつけるか又はリストアップする。なお、予め合意があれば、証券会社1と顧客の双方にでなく、証券会社1のみにリアルタイム表示し、顧客には後日に通知するようにしてもかまわない。
次に、これらの株式売買に関する融資情報32、貸株情報33(説明を省略)及び損益情報34をバランスシート(後ほど説明する図9)として、インターネット3を介して顧客に提供する方法について図8を参照して説明する。
図8は顧客端末2から本システム5へのアクセス手順を示すフローチャートである。
先ず、顧客は顧客端末2に個人IDとパスワードを入力してWWWサーバ13のホームページにアクセスしてサービス要求を行う(S201)。WWWサーバ13は顧客端末2からサービス要求を受けると、業務用コンピュータ11に対して顧客からのサービス要求と顧客に関する認証要求を行う(S202)。
業務用コンピュータ11は顧客端末2から送信されたサービス要求データに含まれている個人ID及びパスワードを予め記憶部22に登録された個人ID及びパスワードと照合する(S203)。業務用コンピュータ11は両者の照合結果が一致した場合のみ、正規の顧客からのサービス要求とみなして、株式売買ファイル12を最新の状態に書き換える更新処理を行う(S204)。
なお、この更新処理は、株式売買ファイル12(図6)がインターネット3を介して得られる外部情報提供機関(図示せず)からの株価情報の受信と同期して更新される等の場合には省略される。
業務用コンピュータ11は更新処理された株式売買ファイル12のうち、顧客に提供するバランスシート40に記載する情報のみをWWWサーバ13にホームページ用情報として送信する(S205)。
WWWサーバ13は業務用コンピュータ11から送信されたバランスシート40に記載する情報をHTML形式で編集してホームページ用ファイル14として生成・更新する(S206)。
次いでWWWサーバ13は顧客端末2に対してバランスシート40をHTML形式で送信する(S207)。顧客端末2は、その内部にWWWサーバ13から送信されたHTML形式の情報を翻訳して画面表示するブラウザ機能を備えており、このブラウザ機能によりバランスシート40を画面表示用に編集して表示する(S208)。このような手順で顧客は顧客端末2の画面上で図9に示すバランスシート40を閲覧することが可能となる。
図9は買い建玉を管理するバランスシート40の説明図である。図9において、バランスシート40は、株式売買ファイル12に格納されている株式の売買に関する情報のうち、買い建玉を管理するのに都合よく帳票が作成されている。すなわち、委託保証金42、融資額43、金利44、融資総額45、購入銘柄46、株数47、約定株価48、時価総額49、最新に更新計算された保証金維持率50、それから保証金維持率の指定された閾値として51に維持率α、52に維持率βを記載している。
なお、維持率α=20%で市場内強制反対売買(手仕舞い)、維持率β=0%で市場外強制反対売買、すなわち証券会社1自身が反対売買の相手方になって手仕舞いする。
それから、今売却した想定の損益53等を含めても良い。
なお、図9に示したバランスシート40は、信用取引による買い建玉を管理するように帳票が構成されているが、これは一例に過ぎず、他の様式でも構わない。例えば、現金により購入した所有株式、又は信用取引による空売り建玉まで含めて合算可能に計算機能を備えた帳票構成にすることもできる。さらに、個別銘柄ごとに生成しても良いし、複数銘柄を一まとめにして生成しても良い(図示せず)。
ただし、本発明の技術思想は主に「専門家でない顧客に対してリスクを限定する(ロスカット)サービスの提供を行うことのできるコンピュータシステムの具現化」が目的なので、そのシステムのアウトプットとしてのバランスシート40は簡潔明瞭で読みやすい帳票であることが望ましく、複数の様式でなる帳票を用意し、それらを区別して適宜に使い分けることが望ましい。
又、バランスシート40に記載する顧客に関する情報は、個人ID41のみである。すなわち、業務用コンピュータ11は株式売買ファイル12を生成・更新した後、バランスシート40に記載する情報をWWWサーバ13に送信する際に、第三者には顧客が誰であるかを特定できないように氏名や住所に関する情報は送信せず、個人ID41のみを送信する。
個人ID41のみを送信することは、顧客のプライバシーに対する守秘義務に関連し、後ほど図12,図16に沿って説明するが、外部支援機関(証券会社1の下請け企業等)にも業務委託しやすくなる。
なお、本実施形態では、業務用コンピュータ11をWWWサーバ13と別体のものとして記載したが、これは論理的な構成を示したものであり、ハードウェア上は同一装置として構成しても良い。又、WWWサーバ13は証券会社1の内部に備えた構成としたが、外部のインターネット・プロバイダのサーバ(図示せず)を間借りする構成としても良い。
図10は買い建玉を管理するバランスシートの一実施例である。
図10において、顧客を特定する情報は個人IDのみであり、「110163様」と記載される。この番号は、顧客から依頼される自動損切り代行を含んだ取引を、証券会社1と顧客とで開始した時に、証券会社1が交付した番号であり、秘密管理される。
株式の銘柄を特定する情報は銘柄名であり、「9999 ××××株式会社」と株式市場における銘柄コードに続いて企業名が記載される。
融資に関する情報としては、この例では、過去に1回の買付けを行っており、その内容が記載される。ただし、株式の売買に関する証券会社1の図示せぬ別頁に表示された精算金台帳に記載されることとなる。この買付けについては、買付け日は「1月10日」、買付け株数は「1,000株」、買付け単価は「220円」、買付け合計は「220,000円」、融資額も「220,000円」になる。
そして、証券会社1が融資した融資額は「220,000円」に対して利息「530円」が発生している。
なお、この買付けに対し、顧客は委託保証金を1月4日に入金しており、入金額は「80,000円」である。
一方、損益に関する情報としては、1月21日現在の株価は大引で「240円」を付けており、時価総額は「240,000円」であり、利食い売りすれば
含み損益=時価総額−約定価格−利息
=24万円−22万円−530円
=19,470円である。
維持率=(保証金+含み損益)/ 約定価格
=(8万円+19,470円)/ 22万円
=0.452=45.2%
なお、百分率に換算して表示するための「×100」は、一義的かつ自明につき、すべての数式から記載を省略し、図も同様とする。ただし、「÷100」は記載を残す。
ここで、保証金維持率の指定された閾値は、予め維持率α=20%で強制的に市場内で手仕舞いし、維持率β=0%ならば市場外で相対取引して手仕舞いするように設定されている。
維持率=45.2%は安全な範囲内であるため、これらの買い建玉は維持できる。
しかし、維持率α=20%になれば市場内で強制売却し、買い手がつかずに売れ残っても維持率β=0%となれば証券会社1が気配値で買い取るので、市場で売れなくとも確実に手仕舞いできる。したがって、保証金の追加徴収、いわゆる追証は発生しない。これによって顧客の損失額は委託保証金と同額で済むので、顧客にとっては、委託保証金以上の損失は発生しない。
図10には、保証金維持率(図では「維持率」と略して記載)が具体的に説明されている。すなわち、株式の取引後、その時価と約定価格の差額に未清算金利及び/又は未清算貸株料等を加味して含み損益を算出し、委託保証金と合わせた残存保証金を約定価格で除して算出される。この維持率には、融資の金利及び/又は貸株料(図示せず)を加味する外、株式売買手数料等(税金込み)まで含めてもよい。
そして、緻密にリスク限定の管理を徹底したいという顧客の要望に答えるべく、銘柄別の同日に同価格で取引された建玉を管理の最小単位として、保証金維持率が指定された閾値へ到達した旨の表示を行う。閾値α(図では「維持率α」と記載)は証券会社1と顧客が契約により定める数値であり、例えば維持率α=20%で強制的に市場内で手仕舞いし、閾値βは維持率β=0%に固定され、そこに到達したならば市場外で相対取引して手仕舞いする。
このように、顧客は証券会社1のホームページにアクセスすることにより、株券の預かり状況、融資内容、本日の株価、今売却した場合の損益をリアルタイムで閲覧することができる。なお、売り建玉を管理するバランスシートに関する図解説明は省略するが、前述した含み損益の計算式において、未清算金利と並んで未清算貸株料等を加味すれば同様に維持率を算出できる。
次に、このような本システム5を利用した株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理方法について図11を参照して説明する。図11は本発明による管理方法の詳細を示すフローチャートである。
まず、株式売買ファイル12の更新処理について図11を参照して説明する。図11において、バックオフィスコンピュータ100は顧客と市場に対して通常業務(S10)の処理を継続している。顧客は更新株価を知り、証券会社1との間で周知の株式信用取引する。
ここで、証券会社1が本システム5を採用し、顧客端末2との間に本システム5を介在させ、株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの指定の保証金維持率による建玉の管理方法を導入し、情報交換(S11)すれば、顧客端末2の画面に表示される帳票類の数字等を時々刻々と(又は毎日)更新(S12)すると共に、指定の保証金維持率を計算し続ける。
ここでいう更新(S12)は、手仕舞いを伴わない建玉があれば維持した状態で、利息(貸株料も加味)、含み損益、及び維持率を更新することを意味している。又、保証金の入金と、買付け又は売付けによる取引開始の際も、図10に例示したようなバランスシートを新規に作成してから更新する。
なお、更新(S12)する際のコンピュータ処理等は、図8に示した手順(S201〜208)のとおりである。ただし、更新株価が受信された場合は、手順(S201〜203)を省略して自動更新し、後ほど説明する手仕舞いを伴う株式売買ファイル12を更新(S23)する際も同様に手順(S201〜203)を省略している。なお、図11では管理方法を説明する便宜上、手仕舞いを伴う場合とそうでない場合の更新手順を区別している。
前記手順(S10〜12)により維持率を計算した結果、閾値と定めた維持率α=20%に到達(S13)したかどうかを監視し、到達したならば、直ちに顧客端末2の画面表示も更新(S14)し、管理建玉表示(S15)により告知すると共に、本システム5から第1の指示をバックオフィスコンピュータ100に発令(S16)し、強制的に市場内で手仕舞し、手仕舞いが成立したかどうかを確認(S17)する。
なお、顧客は常に顧客端末2を操作して図8に示したサービス要求(S201)し、最新情報を閲覧しているものとする。すなわち、インターネット3を利用して株式売買する顧客が顧客端末2を操作しない想定は除外できるので、管理建玉表示(S15)により必ず告知される。
市場内で手仕舞いを確認(S17)して不成立なら、第1の指示(S16)に基づいて、バックオフィスコンピュータ100から通常業務の範囲内で、市場に対し手仕舞いする売付けの申し出を何回でも繰り返すと共に、それでも不成立(S17)ならば維持率β=0%の閾値に到達したかどうかを監視(S18)する。
維持率β=0%の閾値に到達した(S18)ならば、直ちに顧客端末2の画面表示も更新(S19)し、管理建玉表示(S20)により告知すると共に、本システム5から第2の指示(S21)をバックオフィスコンピュータ100に発令し、その時点の気配値を用いて市場外での相対取引による強制反対売買(S22)して手仕舞いする。具体的には証券会社1が反対売買の相手方になり、例えば買い建玉を売り気配値で買い取る。
なお、本発明の技術思想が斬新であるため、市場外での相対取引による強制反対売買(S22)して手仕舞いすることは、本願出願時点における証券会社1では通常業務の範囲外であるが、本システム5ではこのようにして、手仕舞いを伴う株式売買ファイル12の更新(S23)し、更新ファイル表示(S24)する。
一方、第1の指示(S16)に基づく市場内での手仕舞いが成立(S17)したならば、維持率β=0%の閾値に到達したかどうかを監視(S18)する必要もなく、手仕舞いを伴う株式売買ファイル12更新(S23)し、更新ファイル表示(S24)する。
なお、図11の左上に記載された一般の顧客に対して証券会社1は市場との間を仲介し、売買の取り次ぎ等で周知の通常業務(S10)をなしており、本システム5は、それを妨げるものではない。
具体的には、本システム5を随時更新又は間欠更新(例えば毎日1回)し、昼夜の別なく世界中又は指定された市場(例えば東京証券取引所)の株価を常時又は定期的(例えば毎日午後4時に1回)にモニターチェックする。
最新の株価情報により更新した株価を用いて算出した保証金維持率が閾値α,βに到達した建玉に対して、個別に手仕舞いすべき指示を、本システム5から証券会社1へ直接又は間接的に出す。手仕舞いすべき指示は、顧客の私情及び/又は各当事者の恣意を排除して、一意的に事務処理されるのであれば、無人でも人手を介しても何れでも構わない。
そして、午前零時を過ぎると、日割り計算の金利及び/又は貸株料が更新され、平日昼間には株価が更新されるので、これらに伴って保証金維持率も更新される。
このように、保証金維持率が指定する閾値α,β以下になった場合には、証券会社1等では表示部24に手仕舞いの結果等も含めた当該情報をリストアップして印刷出力を行うことや、バランスシート40にその旨の記載を行うことや、インターネット・メール等で顧客に自動通知を行うこともできる。
すなわち、WWWサーバ13にメールサーバ機能を持たせ、顧客の個人IDとメールアドレスを格納しておき、業務用コンピュータ11よりWWWサーバ13に個人ID及び当該情報を送信して、WWWサーバ13が個人IDに対応したメールアドレスを持つ顧客宛に電子メールを自動的に送信する。
なお、株式売買ファイル12の更新は、インターネット3を介して得られる外部情報提供機関(図示せず)からの株価情報の受信と同期して自動的に行うこと、予め定めた日時に自動的に行うこと、図8に示した顧客端末2からのサービス要求(S201)又は業務用コンピュータ11の入力部25からの入力操作により行うこと、あるいはこれらを組み合わせて行う等もできるように動作プログラムを構成する。
又、各計算処理、表示処理、及び株式売買ファイル12の書き換え処理を行う動作プログラムは、図5に示す記憶部22に格納され、処理部21において処理が行われる。すなわち、処理部21の基本構成である含み損益算出手段64、保証金維持率算出手段65、管理建玉抽出手段67により実行される。
保証金維持率の閾値α,βは業務用コンピュータ11の入力部25の入力操作により任意の数値を記憶部22に格納できるように構成する。保証金維持率が指定する閾値α,β以上になった場合に当該情報を表示する表示手段は表示部24である。
又、これらの株式売買に関する融資情報や損益情報は、顧客端末2の入力操作あるいは業務用コンピュータ11の入力部25の入力操作により、個別銘柄又は個別の建玉ごとに計算処理することも、複数銘柄又は複数の建玉を一まとめにして計算処理することも可能なように動作プログラムを構成し、株式売買を個別又は個別の建玉銘柄ごとに行うことも、複数銘柄又は複数の建玉を一まとめにして行うことも可能な態様とする。
図12はシステムアダプタ10の特徴を示す構成図であり、顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する識別符号発生手段81と、証券会社1が顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに前記識別符号を付加する顧客符号化手段82と、前記識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にした検索閲覧手段83と、を備えている外、任意建玉合算手段84と、前述した管理建玉抽出手段67と、管理建玉表示手段68と、管理建玉をインターネット3を介して顧客に告知する告知手段85を備えて利便性を高めている。
図12に示す構成のシステムアダプタ10を用いることにより、顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する識別符号発生段階と、証券会社1が顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに識別符号を付加する顧客符号化段階と、識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にした検索閲覧段階と、を実行できる。
その外、システムアダプタ10を用いることにより、任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに保証金維持率を合算する任意建玉合算段階と、その任意建玉合算段階により合算された合算維持率により該当する任意建玉のみを一まとめに手仕舞い指示する第3の指示段階(後ほど説明する図13)と、を実行できる。さらに管理建玉をインターネット3経由で顧客に告知する告知段階も実行できる。
次に、本システム5の作用及び効果について、主にユーザ(顧客及び証券会社1)の立場から図4から図12を参照して説明する。先ず、顧客は証券会社1の窓口又はインターネット3を利用して証券会社1との間で株式信用取引に関する契約を結ぶ。証券会社1が契約時に顧客に対して個人IDとインターネット利用時に使用するパスワードを交付する。
個人IDとパスワードはそれぞれユニークな番号である。証券会社1の業務用コンピュータ11の記憶部22にこの個人IDとパスワードが登録されると、顧客は本システム5を利用できる状態となる。ここでいう契約は、予め証券会社1が作成した規約を、顧客端末2の画面上に表示され、これを顧客が承諾する操作をした履歴が残ればよく、承諾する操作がなければ、次の手続きへと進めない周知の画面構成でよい。契約の性質上、一度契約したら、取引の終了まで解約できない。
又、契約時には、顧客が維持率α=20%以上の何れかの閾値を定め登録する。又、管理の最小単位は、銘柄別で同日同価格の約定価格で取引きされた株式を意味するが、同一銘柄を一まとめにして管理(後ほど説明する図13)するように契約してもよい。
顧客がこの本システム5を利用して融資情報や損益情報を入手する場合は、顧客端末2から証券会社1のWWWサーバ13上のホームページにアクセスし、個人ID及びパスワードを入力してサービス要求を行う。
WWWサーバ13は顧客端末2からサービス要求を受けると、業務用コンピュータ11に対して顧客からのサービス要求と顧客に関する認証要求を行う。業務用コンピュータ11は顧客端末2から送信されたサービス要求データに含まれている個人ID及びパスワードを予め記憶部22に登録された個人ID及びパスワードと照合する。
業務用コンピュータ11は両者の照合結果が一致した場合のみ、正規の顧客からのサービス要求とみなして、株式売買ファイル12を最新の状態に書き換える更新処理を開始する。
業務用コンピュータ11は、処理部21において金利を基に融資日を起算日とする金利算出と、融資額に金利を加算する損益算出と、株数に通信制御部23とインターネット3を介して得られる外部情報提供機関(図示せず)からの株価情報を乗算する時価総額算出と、損益を時価総額で除算する保証金維持率算出とを行い、これらの計算処理結果を最新情報として株式売買ファイル12の内容を書き換えて更新処理を終了する。
さらに、業務用コンピュータ11は更新処理された株式売買ファイル12のうち、顧客に提供するバランスシート40に記載する情報のみをWWWサーバ13に送信する。WWWサーバ13は業務用コンピュータ11から送信されたバランスシート40に記載する情報をHTML形式で編集してホームページ用ファイル14として生成・更新する。
次いでWWWサーバ13は顧客端末2に対してバランスシート40をHTML形式で送信する。顧客端末2は、その内部に備えたブラウザ機能によりWWWサーバ13から送信されたHTML形式の情報を翻訳してバランスシート40を画面に表示する。
なお、業務用コンピュータ11における維持率計算処理の結果、維持率が指定する閾値α,βに到達した場合には、業務用コンピュータ11の表示部24に、例えば維持率α=20%に到達した旨の表示がなされ、顧客端末2に送信するバランスシート40上にも同様の記載がなされる。該当部を画面上で色付け点滅させる等の工夫があれば好ましい。顧客及び証券会社1等は、この時点で例えば該当株式を市場での売却により手仕舞いするので、株価低落等に伴うリスクを限定することが可能となる。
もし市場で売れ残り、維持率β=0%に到達した場合には、株式の買取表示を行うようにし、証券会社1又は証券会社1が指定する他の機関が、顧客から該当株式を買い取ることとする。これによって顧客の損失額=委託保証金となり、顧客にとっては、委託保証金以上の損失は発生しないようにすることができる。
顧客は顧客端末2に個人ID及びパスワードを入力してWWWサーバ13上のホームページにアクセスすると、バランスシート40(図9)を閲覧することができる。実際の帳票は図10に示した一実施例のとおりである。
次に、多少の変形も織り交ぜた実施例について図12から図24を参照して説明する。図12はシステムアダプタの特徴を示す構成図、図13は買い建玉を管理する担保預り明細、図14は預り金通帳の一実施例、図15は買い建玉を管理する売買レポートの一実施例、図16はシステムアダプタを外部支援機関に設置する方式の構成図である。
図12に示すシステムアダプタ10は既に図4及び図11に沿って基本的な構成、作用及び効果を説明した通り、管理建玉抽出手段67と管理建玉表示手段68を中核とする外に、識別符号発生手段81、顧客符号化手段82、検索閲覧手段83、任意建玉合算手段84、告知手段85を具備している。
なお、システムアダプタ10には、後ほど図22に沿って説明する銘柄別格付記憶手段94、その他を、適宜に追加することができる。
識別符号発生手段81は顧客ごとに対応づけられた識別符号を発生する。具体的には、秘密管理された連続番号発生プログラム及び非公開メモリ等により構成され、証券会社1が顧客と共有する取引情報から本人を特定し得る本人特定情報を除去する代わりに、顧客符号化手段82により識別符号を付加することで、顧客管理の便宜を図る。
要するに顧客の名前等を隠して背番号(識別符号)のみで管理するので、第三者には名前と背番号の照合は出来ない。
一方、検索閲覧手段83は前記識別符号を検索目印として前記取引情報を第三者にも検索閲覧自在にし、インターネット株取引にも対応している。
任意建玉合算手段84は任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに保証金維持率を合算する(図13の右)。任意建玉合算手段84は、図13で示す帳票及び数式からわかるように合算された合算維持率により該当する任意建玉のみを一まとめに手仕舞い指示する第3の指示手段に連動しており、顧客の任意選択する建玉を一まとめに保証金維持率を合算した結果により、合理的な管理思想に沿った建玉の管理を容易に実行できる。
第3の指示手段は、図13の右下に維持37.7%とある合算維持率が20%に到達した場合に発令される。
このことは、閾値記憶手段66(図5の右上)は建玉ごとの指定の保証金維持率に関して、α=20%以上の何れか任意値の多段階に設定された閾値α,βを記憶(図10の右上)できるから、ある範囲内での管理思想に幅をもたせることができる。このため、一まとめの保証金維持率が閾値と定めたα=20%に到達すれば、最小単位の建玉がα=20%の閾値に到達していなくとも、一まとめに手仕舞いされる。
あるいは、一まとめの保証金維持率が指定の閾値と定めたα=20%に到達していなくとも、最小単位の建玉がα=20%の閾値に到達していれば、個別に手仕舞いされる契約でもよい。
なぜならば、閾値α,βに到達した管理建玉を、顧客の私情によって手仕舞いを保留にすることは、本発明全体に係るビジネス上の思想により禁止されているが、閾値α,βに到達する以前の前記建玉を、顧客の意思によって手仕舞いを早めることは自由であるからである。
例えば、ある銘柄の株式を異なる単価で複数の建玉に分けて購入したが、複数の建玉のうち一部の高値買いした建玉のみが閾値α,βに到達し、その他は閾値α,βに到達していない場合も、顧客の意思又は契約によって当該銘柄に係る全部の建玉を手仕舞いすることは自由である。
その際の判断を任意の銘柄又は任意の建玉を選択して一まとめに保証金維持率を合算する任意建玉合算手段84と、前記任意建玉合算手段84により合算された合算維持率に該当する任意建玉のみを一まとめに手仕舞い指示する第3の指示手段に、建玉の管理を委ねると合理的である。
なお、任意建玉合算手段84が一まとめに保証金維持率を合算するために、建玉を選択する際の選択基準は予め証券会社1が作成した規約を顧客が承諾すればよい。
図13から図15に示すように、証券会社1は、「担保預り明細(買い建玉)」「預り金通帳」「売買レポート(買い建玉)」の三種類の帳票によって建玉の管理を行う。これらの帳票は顧客ごとに作成され、インターネット上で24時間何時でも閲覧が可能である。顧客がこれらの通帳を閲覧するときは、個人ID及び暗証番号を入力して、自分の専用取引ページにアクセスする。
図13に示す「担保預り明細」は、担保されている株式の預り状況を示す明細であり、管理番号0001〜0005のうち、0001〜0002に示す2銘柄「伊藤忠」と「丸紅」は6月28日時点に売却済み(図14)のため担保の対象外であり、完全に削除しても構わないが、「0」,「−」又は空欄を表示することで売却済みの履歴としている。
0003〜0005に示す3銘柄「川鉄」「川崎汽船」「ニチロ」の株式がそれぞれ1,000株づつ担保預り中であり、指定の保証金維持率による建玉の管理対象となっている。
0003〜0005に示す3銘柄の建玉は、0003〜0005のうち任意の何れか1つ以上で維持率計算し、その算出された維持率の数値により例えば20%以上(20%を含むかどうかは契約次第)であれば建玉を維持し、20%を下回れば、手仕舞いする旨を表示する。図13の例では、個々の維持率が、27.6%,46.6%,38.5%であり、3銘柄の合算維持率は37.7%となっている。したがって、何れの組み合わせでも、建玉は維持される。
図13に示す「担保預り明細」中、「維持率」の欄、「サイン」の欄及び「任意建玉合算維持率」の欄は、「管理建玉表示手段」を意味しており、本システム5が、維持率を顧客に代わって昼夜の別なく計算し、監視し続ける。維持率が所定の閾値α,βに到達したら、「維持」の文言表示を「手仕舞い」と変化させればよい。
なお、管理建玉の表示は、保証金維持率が指定の閾値α,βに達した旨の表示により識別する。例えば数値表示、色分け識別、別表による一覧表、伝送の容易な電子データ等、何れの実施でも識別可能であれば構わない。
図14に示す「預り金通帳」は、株式の売買に伴う入出金履歴を示す明細である。図15に示す「売買レポート」は、株式の売買履歴を示す明細である。なお、図13〜図15に示す帳票は買い建玉用に作成されたものを例示しているので、空売り建玉用の最適な帳票を別途に用意することが好ましい。
図14に示す「預り金通帳」において、顧客から委託保証金として、5月26日に「250,000円」、5月29日に「236,000円」の入金があり、5月29日に銘柄「伊藤忠」「丸紅」「川鉄」「川崎汽船」及び「ニチロ」までの5銘柄について株式購入し、それぞれの個別株への委託保証金へ出金があったため、差引残高(入出金残高)は「30,000円」になった。6月1日には証券会社1への手数料が支払われたため、差引残高が「19,500円」になった。その後、6月28日に銘柄「伊藤忠」と銘柄「丸紅」について株式売却による入金があり、差引残高が「361,020円」になった。
なお、信用取引による貸株を用いた空売り建玉の管理の場合は、空売り代金の全額を証券会社1が担保預かりとするので、普通預金のように顧客の任意出し入れが許可されたものではないので、通帳を区別するか、図13の担保預り明細に記入すべきであるが、空売り代金を担保預かり通帳に記載する図解と説明は表記上の問題とみなして省略する。
図15に示す「売買レポート」は、銘柄「伊藤忠」について、5月29日の買付けと6月28日の売付けに関し、それぞれの履歴を示したものである。5月29日に株価「447円」で「1,000株」を購入した。これに要した購入金額「447,000円」であり、その全額に対して融資を受けているので、融資額は「447,000円」である。なお、委託保証金「180,000円」を預託している。
その後、6月28日に株価「515円」で「1,000株」を売却した。この売却額「515,000円」に委託保証金「180,000円」を加え、融資額「447,000円」と利息額「3,037円」をそれぞれ差し引くと、この売買による売買精算金は「244,963円」になる。したがって、銘柄「伊藤忠」の信用取引による損益は、売買精算金「244,963円」から委託保証金「180,000円」を差し引いて、「64,963円」になる。
なお、銘柄「伊藤忠」の売買精算金「244,963円」は図14に示す預り金通帳の下から2行目に入金された旨を記帳されている。又、その下の行には、銘柄「丸紅」の売買精算金「96,557円」が記帳されている。これらの売買精算金「244,963円」と「96,557円」には、個別株委託保証金であった「18万円」と「6万円」が証券会社1にとっては不要となり、証券会社1から顧客へ還付された還付金を含んでいる。
なぜならば、信用取引の結果、利食い売りに成功し、金利及び手数料等を清算したからには、個別株ごとの委託保証金「18万円」及び「6万円」は、当然に証券会社1から顧客へ還付されるからである。
他の銘柄についても、売買が行われる都度「預り金通帳」(図14)と「売買レポート」(図15)にその結果が反映される。ここで、「担保預り明細」(図13)は、顧客が売買した全銘柄について、現時点における預り状況(委託保証金維持率を含めた資産状況)を示したものである。
図13に示した「担保預り明細」において、銘柄「伊藤忠」と銘柄「丸紅」については、既に全株式を6月28日に売却済(図14)であるため、損益(確定分)は図15に示した64,963円と図示せぬ36,557を足して合計「101,520円」である。又、保有している銘柄「川鉄」、「川崎汽船」及び「ニチロ」についての含み損益の合計は「−22,323円」になる。ここで、維持(保有)されている個々の建玉の含み損益は、(終値−約定価格)×株数−利息額で求められる。
このように、顧客は証券会社1のホームページにアクセスすることにより、預かり金及び入出金の明細(図14)、売買履歴(図15)、担保されている株式(図13)及び/又は空売り代金の資産状況をリアルタイムに閲覧することができる。ただし、空売り代金の資産状況は図解説明を省略している。
図16はシステムアダプタを外部支援機関(外注又は下請け企業)に設置する方式の構成図であり、システムアダプタ10’は証券会社1’の外注企業等に設置されて、証券会社1’内のインターフェース30’を介してバックオフィスコンピュータシステム100に接続されている。インターフェース30’には窓口、電話、FAX及びインターネットによる応対も含んでいる。あるいは、通称コールセンターと称される部門に、インターフェース30’に相当する装置を設置したと考えても構わない。
なお、本発明は、前記した実施の形態及び実施例に限定されることなく広く変形実施可能である。例えば、バックオフィスコンピュータシステム100にシステムアダプタ10’を内蔵してもよい。
又、本発明における各動作処理は適宜手作業に置き換えることができるので、システムアダプタ10,10’を専門要員等により構成することも可能である。
図17は、信用取引の建玉・管理表(A)を用いた説明図であり、1人の顧客が保有している建玉の損益状況をリアルタイムで表示している。株銘柄「日本農産工業」の1万株を西暦2003年9月22日(以下「03/09/22」と略す)に225円で信用買いし、半年後の一営業日前04/03/19を期限に、建玉を維持している。
表示の日時03/11/07の12:32(以下、時刻は省略)には、株価が204円に下落したことによる差損−(以下、「下落」と「マイナス符号等」を省略)21万円に受払諸経費10,666円を加味した評価損益220,666円。
このときの値下り率9.3%={(204−225)/225}%である。
指定により強制的に手仕舞いをする値下り率、すなわち損切り指定率を15%と定めれば、以下のとおりに表示する。
損切り指定株価={(100−15)/100}×225=191.2…の端数を切り上げた192円が、03/09/22に株式を購入した時点で算出されるので、建玉管理表(A)の右端から1〜2枠左寄りにその旨を明示している。
なお、15%は一例に過ぎず、契約により適宜設定可能であるが、手仕舞い前に変更はできない。
そして、225円で信用買いした株価が204円に下落した段階では、損切り指定株価192円よりも高いので、建玉を維持しているが、この先192円以下にまで下落したならば、即座に損切り実行開始サイン▲が、帳票の右端枠に表示される。
図17は、「株式信用取引における顧客口座内全建玉について一律に実行する個別建玉ごとの建玉管理システム」に含まれた表示の一形態であって、同一銘柄、同一取引日かつ同一売買価格であれば1単位に併合して表示できる表示枠に、顧客から依頼された個別建玉ごとの自動損切り代行のため、証券会社が強制的に市場で売却(買の反対だから売)する株価192円と、損切り実行開始サイン▲を表示する表示手段である。つまり、購入ではじめた建玉は、反対売買である売却により手仕舞いとする。
ここで、損切り実行開始サイン▲が表示されたならば、図7及び図11に沿って説明したように、本システム5からバックオフィスコンピュータ100へと手仕舞いを指示する。そうすると、バックオフィスコンピュータ100は受けた指示どおりに、株銘柄「日本農産工業」の1万株を市場で売却する。このとき、192円で売却成立したならば、評価損益220,666円にてロスカットされ、損害の拡大を阻止できる。
図18は、信用取引の建玉・管理表(B)を用いた説明図であり、図17と大半は重複しているので、重複部分の説明は省略するが、右端の一枠が異なるので、追加して説明する。
損切り指定率を15%(以下、「−15%」又は「85%」との表記で統一してもよい)と定めて市場内での手仕舞いするほか、証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する株価、すなわち「市場外買取り指定株価」158円を損切り指定率30%から算出する計算方法は、以下のとおりである。
損切り指定株価={(100−30)/100}×225=157.5…の端数を切り上げた158円が、03/09/22に株式を購入した時点で算出されるので、建玉管理表(B)の右端の一枠にその旨を明示している。
なお、30%は一例に過ぎず、契約により適宜設定可能であるが、手仕舞い前に変更はできない。
そして、225円で信用買いした株価が192円に下落し、損切り実行開始サイン▲が表示されるとともに、即座に市場内での手仕舞いを指示する。しかし、株銘柄「日本農産工業」の1万株に対して、市場では買い手がつかずに、更なる値下がりを継続した場合には、158円まで下落した時点で、契約どおりに、証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する。つまり、証券会社等が株価158円で1万株を買い取ることにより強制的に手仕舞いする。
図11のS21に示すように本システム5から第2の指示を出すことにより実行し、その前後の処理も同様であるが、「維持率」の概念は用いずに、「損切り指定率」又は「損切り指定株価」だけを手仕舞いの基準に用いている。
次に、現物取引に限定した場合を取り扱うとすれば「顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム」を用いることになり、図19及び図20に沿って説明する。
図19は、現物取引の保有株式・管理表(A)を用いた説明図であり、図20は、現物取引の保有株式・管理表(B)を用いた説明図である。図19及び図20ともに図17と大半が重複し、さらに図19は図20に含まれているので、重複部分の説明を省略し、図20の右端から4枠のみを、追加して説明する。
損切り指定率を20%と定めると、180円まで下落したら市場内での手仕舞いされる。180円の算出方法は以下のとおりである。
損切り指定株価={(100−20)/100}×225=180円
この180円が、03/09/22に株式を購入した時点で算出されるので、保有株式・管理表(B)の右端から3番目の一枠にその旨を明示される。
そのほか、証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買する株価、すなわち「市場外買取り指定株価」135円を損切り指定率40%から算出する計算方法は、以下のとおりである。
損切り指定株価={(100−40)/100}×225=135円
この135円が、03/09/22に株式を購入した時点で算出されるので、保有株式・管理表(B)の右端の一枠にその旨を明示している。
なお、40%は一例に過ぎず、契約により適宜設定可能であるが、手仕舞い前に変更はできない。
そして、225円で信用買いした株価が180円に下落し、損切り実行開始サイン▲が表示されるとともに、即座に市場内での手仕舞いを指示しても、株銘柄「日本農産工業」の1万株に市場では買い手がつかずに、更なる値下がりを継続した場合に、135円まで下落した時点で、契約どおりに、証券会社又は証券会社が指定した者を相手方として市場外で反対売買することにより強制的に手仕舞いする。
図19に示す保有株式・管理表(A)、図20に示す保有株式・管理表(B)は、同一銘柄及び同一売買価格であれば1単位に併合して表示できる表示枠に、第1の値下がり率20%を超えたときに市場内強制売却を指示する損切り指定株価180円を表示する第1の表示と、第2の値下がり率40%を超えたときに市場外強制売却を指示する損切り指定株価135円を表示する第2の表示と、の少なくとも何れかを前記証券会社と顧客の双方に表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする「顧客口座内全株式について一律に実行する個別株式ごとの指定率での損切り機能付き所有株式管理システム」に含まれる。
図17〜図20に示す各種の管理表が、図13〜図15に示す帳票と性質上異なる点は、「維持率」の概念を用いているか否かの違いである。
すなわち、信用取引は証券会社から現金又は貸株等を借用して発生する金利等を加味した維持率による建玉の管理を図13〜図15に沿って説明したが、図17〜図20に示す管理表では信用取引であるなしにかかわらず、維持率の概念を用いずに、強制的に手仕舞いをする値下り率、すなわち損切り指定率だけで管理している。
特に図19,図20に示す帳票は証券会社からの融資を受けずに顧客の資力で購入した保有株式の管理をするためのものである。したがって、異なる購入日(取得日)の株式であっても、取得単価が同じならば、同一の管理基準が適用されるので同一枠に揃えて管理した方がわかりやすい。
図21はバックオフィスコンピュータシステムを用いた市場外での相対取引の説明図である。証券会社1は業務の全般をバックオフィスコンピュータシステム100’で処理しており、顧客20との取引に係る市場80への対応の全てのほか、監督機関としての日本証券業協会93への報告等まで対応できる。
バックオフィスコンピュータシステム100’にはシステムアダプタ10(図4,図12,15参照)が情報を共有できるように接続されている。実際にはバックオフィスコンピュータシステム100’の一部として、システムアダプタ10の機能を実現するプログラムが、内蔵されている構成でもよい。
システムアダプタ10が発令する第1の指示(S16)と第2の指示(S22)による対応(図11参照)を、時間差なく現実に実行することができる。したがって、バックオフィスコンピュータシステム100’は、証券会社1の通常業務に対する処理機能と、第1の指示手段と第2の指示手段まで加えた、ソフトウェアとハードウェア及び情報の全てが具備されたものである。
システムアダプタ10から発令される第1の指示(S16)は、市場80において、強制反対売買することであり、顧客20からその都度に依頼又は承諾する意思表示の有り無しに関わらず、コンピュータ処理だけで完結する。
つまり、証券会社1では、顧客20との取引内容を、バックオフィスコンピュータシステム100’を用いた帳簿で管理しており、その帳簿を構成するデータファイルを更新すれば第1の指示(S16)による市場80内で強制反対取引が実行される。このように、コンピュータ管理による株式取引は、当事者が信頼する帳簿の付け替え作業を意味し、証券会社1では顧客20ごとの株式売買ファイル12(図4参照)を更新すれば足りる。
又、システムアダプタ10から同様に発令される第2の指示(S22)は、バックオフィスコンピュータシステム100’へ遅滞なく伝達されるので、このバックオフィスコンピュータシステム100’の内部に構成された相対取引実行手段91を用いて市場外での相対取引を実行する。
相対取引実行手段91とは、例えば、市場80で買手不在のため売れ残る等、手仕舞いできなかった株式を、気配値で特定の相手方に市場外で買い取ってもらうことを意味しているが、ここでは証券会社1が買い取るので、バックオフィスコンピュータシステム100’の内部に構成された帳簿を付け替えるように、その株式売買ファイル12を更新するだけで完了する。
そして、通報手段92により、前記相対取引が実行されたことを5分以内に監督機関である日本証券業協会93宛てに通報する。
なお、相対取引実行手段91は証券会社1の下部組織として内外支援機関79に位置付けても構わない。その場合は、図4に示した業務用コンピュータ11及び株式売買ファイル12(帳簿)を具備したシステムアダプタ10が、バックオフィスコンピュータシステム100と情報を共有できるように、インターフェース30(図21からは省略)により接続されている。
このように、システムアダプタ10,10’と、バックオフィスコンピュータシステム100,100’との接続が、本発明で開示するところの、専門家でない顧客20にとって自分の意思だけでは実行が困難とされる、個別株ごとに一律に行う損切りを、顧客20に代わって証券会社1が代行サービスできるコンピュータの仕組みであり、リアルタイムに表示及び実行するために、図4,図12に示したようにインターネット3とインターフェース30,30’を用いている。
図22は、銘柄別格付情報に関する説明図であり、銘柄別格付記憶手段94を媒介して銘柄別格付情報を検索自在に記憶し、証券会社1の社員(使用人)等の利用に供するものである。
主体銘柄別格付記憶手段94は、システムアダプタ10,10’に含まれる業務用コンピュータ11(図4参照)の記憶部で、書き込み即読み出し自在に構成されているが、何らかの接続形態を介してバックオフィスコンピュータ100,100’に接続又は内臓されていればよい。
なお、銘柄別格付情報を書き込みできる者は、証券会社1で相応の権限を付与された有資格者に限られており、パスワード等によりセキュリティー管理されるものとし、書き込み内容に対する悪意の改ざん等、不正行為を防止する。一方、書き込まれた銘柄別格付情報の読み出し及び表示は、証券会社1の店内に設置された端末機等の簡単な操作により、誰にでも閲覧できるようにしておくとよい。
銘柄別格付情報は、証券会社1が、株の銘柄別に0〜100点の範囲で任意の格付し、銘柄別格付記憶手段94に登録し、適宜に更新する。格付基準は証券会社1の都合により有利な運用基準を適用すればよい。
銘柄別格付情報の内容は、図22に示すように、銘柄別受注枠、融資金利、諸経費掛率で構成されており、株式銘柄の信頼性に相当する格付情報に対応し、株式の売買に係る危険負担分及び経費負担分を、証券会社1と顧客20とで分担する割合を決定している。
なお、諸経費には売買手数料や貸株料等も含めて諸経費掛率を乗じてもよい。
銘柄別格付情報に対し、例えば、標準的な格付70点の銘柄なら銘柄別受注枠を10万株までとし、融資金利を年利3.0%、諸経費掛け率を1.0倍と定めて証券会社1は顧客20を処遇する。又、標準から外れた格付100点の銘柄なら銘柄別受注枠を100万株までとし、融資金利を0%、諸経費掛け率を0.1倍と定め、格付50点の銘柄なら銘柄別受注枠を1万株までとし、融資金利を年利24.0%、諸経費掛け率を10.0倍と定めている。
なお銘柄別受注枠とは、銘柄別に証券会社1が受注できる最大許容枠であり、株価が不利益な方向へと急変した場合、例えば暴落したときに東証一部で売却不能ならば、市場証券会社1が買い取る契約なので、買い取る可能性が高い銘柄に対しては、危険負担の大きい分だけ、最大許容枠を少なく絞り、逆に危険負担が少なければ、最大許容枠を大きくしてビジネスチャンスを拡大する。
融資金利及び諸経費掛率も低い格付の銘柄には、危険負担の大きい分だけ、高い料金設定にし、リスクヘッジに用立てている。逆に高い格付の銘柄には、顧客20を優遇するように安い料金設定にして、営業促進し、ビジネスチャンスを拡大する。
つまり、証券会社が顧客から徴収する売買手数料、金利、貸株料又は諸経費の1種類以上を含む取引条件を差別化する差別化手段(図示せず)を図4,図12,図21,図16の何れかに示したシステムアダプタ10,10’に含まれる業務用コンピュータ11又はバックオフィスコンピュータシステム100,100’のプログラムにより実現できるように構成されている。
図23は銘柄別格付情報に対応して設定された銘柄別受注枠及び銘柄別更新枠のうち買い建玉のみに限定して表示した説明図である。なお、この図23では売り建玉を省略し、買い建玉のみに限定して簡略化した説明をする。図23において、接客中の証券会社1の社員等が、銘柄別格付情報を読み出した表示形態を例示している。ここで、東京証券取引所の第一部市場(以下、「東証一部」と略す)が、開いている2004年3月2日のAM10:15に、証券会社1の社員等が、店内の端末機を操作して銘柄別格付情報を検索し、銘柄別受注枠に関するリアルタイムの情報を閲覧し、顧客20からの売買注文に対応する判断資料として用いる。
図23に示すように、証券会社1の社員等が、検索キーワードとして、検索コード「5941」又は、銘柄名「世界貿易公社」と入力すれば、格付70点の銘柄であるため銘柄別受注枠を10万株と表示される。ただし、この銘柄別受注枠10万株は、証券会社1にとって格付70点の銘柄に対する最大許容限度であり、銘柄別受注残高が9万株だとすれば、銘柄別受注枠10万株から銘柄別受注残高が9万株を差し引いた残り1万株が、2004年3月2日AM10:15における現在受注可能な余力であり、この1万株を銘柄別更新枠と称している。
証券会社1の社員等は、顧客からの注文が受注枠の限度を超えているか否かを、銘柄別更新枠の表示値と見比べて瞬時に判断し、顧客対応できるので、危険防止のために過剰反応して商機を逃すような誤判断、又は、安全限度を超える超過受注の心配がない。このことは、証券会社等が買取により手仕舞いする可能性の高い銘柄を要注意銘柄として低めに格付し、受注枠を適切に規制し、証券会社側の危険負担を制御できることを意味する。
なお、図23に示したように買い建玉のみならず、空売りによる売り建玉に関する表示(図示せず)と一対に並べて表示することが理想的であるが、そうした場合は、買い建玉残高と、売り建玉残高との相互関係から、それぞれに対する現実的な危険負担とビジネスチャンスをバランスさせる観点から、証券会社1が任意に定めた重み付け数式を適用する数値処理等により、銘柄別更新枠を妥当な数値で表示する。当然のことながら、証券会社1は独自の判断で必要と認める都度に、銘柄別更新枠を適宜妥当な数値に設定し表示することができる。
図24は、銘柄別格付情報に対応して設定された銘柄別受注枠及び銘柄別更新枠により、買い建玉と、空売りによる売り建玉と、を総合表示した説明図であり、図23と同様に検索コード「5941」又は、銘柄名「世界貿易公社」と入力することにより、格付70点の銘柄であるため銘柄別受注枠が10万株と表示されている。
ここで、銘柄別受注残高が8万2千株だとすれば、銘柄別受注枠10万株から銘柄別受注残高の8万2千株を差し引いた残り1万8千株が、2004年3月2日AM10:15における現在受注可能な余力であり、この1万8千株を銘柄別更新枠と称している。
ただし、銘柄別受注残高が8万2千株であることの算出方法として、買い建玉残高9万株から、空売りによる売り建玉残高8千株を、差し引いた残りが8万2千株となる減算値を銘柄別受注残高として用いている。すなわち、空売りは所定期日の到来による買戻しがあるので、買い建玉残高9万株が、空売りによる売り建玉残高8千株の分だけ減殺されることを、所定期日の到来前に略式計算してしまうことを意味している。
又、銘柄別更新枠を超える受注があり、本来ならば受注拒否すべき場合であるにもかかわらず、証券会社1の社員のミス等により超過受注する事故を防ぐ必要がある。そのため、図示せぬ超過受注防止機能及び超過受注警告表示機能を、バックオフィスコンピュータシステム100,100’又はシステムアダプタ10,10’の何れかに具備しておく。そうすれば、超過受注の事故を完全に防止できるばかりでなく、「超過受注のため受注拒否する」旨の意思表示を、顧客20に対して適宜に即答できるので、顧客20からの依頼事項に対する証券会社1の債務不履行という接客上のトラブルをも未然に防止できる。
なお、銘柄別受注残高9万8千株の詳しい内訳は、現在の買い建玉9万株及び空売りによる売り建玉8千株の総合計であるが、証券会社1の社員等が、何らかの手段により銘柄別格付情報を検索し、その銘柄別格付情報に対応した銘柄別受注枠に関するリアルタイムの情報を閲覧し、危険負担の大きい分だけ、最大許容枠を少なく絞り、逆に危険負担が少なければ、最大許容枠を大きくしてビジネスチャンスを拡大する目的で、顧客20からの売買注文の可否等を瞬時に判断するシステムであれば、表示形態等を変形しても構わない。
その他、株式売買ファイル12の論理構成や、バランスシート40の構成等は、図面に記載したものに限定されることなく実施可能である。なお、本システム5には、インターネット3に代わる通信手段があれば、必ずしもインターネット3を用いる必要はない。