以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
図1は洗濯機1の全体構成を示す垂直断面図である。洗濯機1は全自動型のものであり、外箱10を備える。外箱10は直方体形状で、金属又は合成樹脂により成形され、その上面と底面は開口部となっている。外箱10の上面開口部には合成樹脂製の上面板11を重ね、外箱10にネジで固定する。図1において左側が洗濯機1の正面、右側が背面であり、背面側に位置する上面板11の上面に同じく合成樹脂製のバックパネル12を重ね、外箱10又は上面板11にネジで固定する。外箱10の底面開口部には合成樹脂製のベース13を重ね、外箱10にネジで固定する。これまでに述べてきたネジはいずれも図示しない。
ベース13の四隅には外箱10を床の上に支えるための脚部14a、14bが設けられている。背面側の脚部14bはベース13に一体成型した固定脚である。正面側の脚部14aは高さ可変のネジ脚であり、これを回して洗濯機1のレベル出しを行う。
上面板11には後述する洗濯槽に洗濯物を投入するための洗濯物投入口15が形設される。洗濯物投入口15を蓋16が上から覆う。蓋16は上面板11にヒンジ部17で結合され、垂直面内で回動する。
外箱10の内部には水槽20と、脱水槽を兼ねる洗濯槽30を配置する。水槽20も洗濯槽30も上面が開口した円筒形のカップの形状を呈しており、各々軸線を垂直にし、水槽20を外側、洗濯槽30を内側とする形で同心的に配置される。水槽20をサスペンション部材21が吊り下げる。サスペンション部材21は水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持する。
洗濯槽30は上方に向かい緩やかなテーパで広がる周壁を有する。この周壁には、その最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除き、液体を通すための開口部はない。すなわち洗濯槽30はいわゆる「穴なし」タイプである。洗濯槽30の上部開口部の縁には、洗濯物の脱水のため洗濯槽30を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする環状のバランサ32を装着する。洗濯槽30の内部底面には槽内で洗濯水あるいはすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ33を配置する。
水槽20の下面には駆動ユニット40が装着される。駆動ユニット40はモータ41、クラッチ機構42、及びブレーキ機構43を含み、その中心部から脱水軸44とパルセータ軸45を上向きに突出させている。脱水軸44とパルセータ軸45は脱水軸44を外側、パルセータ軸45を内側とする二重軸構造となっており、水槽20の中に入り込んだ後、脱水軸44は洗濯槽30に連結されてこれを支える。パルセータ軸45はさらに洗濯槽30の中に入り込み、パルセータ33に連結してこれを支える。脱水軸44と水槽20の間、及び脱水軸44とパルセータ軸45の間には各々水もれを防ぐためのシール部材を配置する。
バックパネル12の下の空間には電磁的に開閉する給水弁50が配置される。給水弁50はバックパネル12を貫通して上方に突きだす接続管51を有する。接続管51には水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続される。給水弁50は洗濯槽30の内部に臨む位置に設けた容器状の吸水口53に対して給水を行う。給水口53は図2に示す構造を有する。
図2は給水口53の模型的垂直断面図である。給水口53は正面側が開口しており、その開口部から引き出し53aが挿入される。引き出し53aの内部は複数(実施形態では左右2個)に区画されている。左側の区画は洗剤室54で、洗剤を入れておく準備空間となる。右側の区画は仕上剤室55で、洗濯用の仕上剤を入れておく準備空間となる。洗剤室54の底部には給水口53の内部に向かって開口する注水口54aが設けられている。仕上剤室55にはサイホン部57が設けられている。給水口53は、引き出し53aの下の箇所が洗濯槽30に注水する注水口56となっている。
サイホン部57は、仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなる。内管57aと外管57bの間には水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は給水口53の底部に向かって開口する。外管57bの下端は仕上剤室55の底面と所定の隙間を保ち、ここが水の入口になる。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれるとサイホンの作用が起こり、水はサイホン部57を通って仕上剤室55から吸い出され、給水口53の底部へ、そこから注水口56を通じて洗濯槽30へと落下する。
給水弁50はメイン給水弁50aとサブ給水弁50bからなる。メイン給水弁50aは相対的に流量大、サブ給水弁50bは相対的に流量小に設定されている。流量の大小設定は、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bの内部構造を互いに異ならせることにより実現してもよく、弁の構造そのものは同じとし、これに絞り率の異なる流量制限部材を組み合わせることにより実現してもよい。接続管51はメイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの両方に共通である。
メイン給水弁50aはメイン給水経路52aを通じて給水口53の天井部の開口に接続される。この開口は洗剤室54に向かって開いており、従ってメイン給水弁50aから流れ出した流量大の水流はメイン給水経路52aから洗剤室54に注ぎ込まれる。サブ給水弁50bはサブ給水経路52bを通じて給水口53の天井部の開口に接続される。この開口は仕上剤室55に向かって開いており、従ってサブ給水弁50bから流れ出した流量小の水流はサブ給水経路52bから仕上剤室55に注ぎ込まれる。すなわちメイン給水弁50aから洗剤室54を通って洗濯槽30に注ぐ経路と、サブ給水弁50bから仕上剤室55を通って洗濯槽30に注ぐ経路とは別系統である。
図1に戻って説明を続ける。水槽20の底部には水槽20及び洗濯槽30の中の水を外箱10の外に排水する排水ホース60が取り付けられる。排水ホース60には排水管61及び排水管62から水が流れ込む。排水管61は水槽20の底面の外周寄りの箇所に接続されている。排水管62は水槽20の底面の中心寄りの箇所に接続されている。
水槽20の内部底面には排水管62の接続箇所を内側に囲い込むように環状の隔壁63が固定されている。隔壁63の上部には環状のシール部材64が取り付けられる。このシール部材64が洗濯槽30の底部外面に固定したディスク65の外周面に接触することにより、水槽20と洗濯槽30との間に独立した排水空間66が形成される。排水空間66は洗濯槽30の底部に形設した排水口67を介して洗濯槽30の内部に連通する。
排水管62には電磁的に開閉する排水弁68が設けられる。排水管62の排水弁68の上流側にあたる箇所にはエアトラップ69が設けられる。エアトラップ69からは導圧管70が延び出す。導圧管70の上端には水位スイッチ71が接続される。
外箱10の正面側には制御部80を配置する。制御部80は上面板11の下に置かれており、上面板11の上面に設けられた操作/表示部81を通じて使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット40、給水弁50、及び排水弁68に動作指令を発する。また制御部80は操作/表示部81に表示指令を発する。制御部80は後述するイオン溶出ユニットの駆動回路を含む。
洗濯機1の動作につき説明する。蓋16を開け、洗濯物投入口15から洗濯槽30の中へ洗濯物を投入する。給水口53から引き出し53aを引き出し、その中の洗剤室54に洗剤を入れる。仕上剤室55には仕上剤(柔軟剤)を入れる。仕上剤(柔軟剤)は洗濯工程の途中で入れてもよいし、必要がなければ入れなくてもよい。洗剤と仕上剤(柔軟剤)のセットを終えたら引き出し53aを給水口53に押し込む。
洗剤と仕上剤(柔軟剤)の投入準備を整えた後、蓋16を閉じ、操作/表示部81の操作ボタン群を操作して洗濯条件を選ぶ。最後にスタートボタンを押せば、図10〜図13のフローチャートに従い洗濯工程が遂行される。
図10は洗濯の全体工程を示すフローチャートである。ステップS201では、設定した時刻に洗濯を開始する、予約運転の選択がなされているかどうかを確認する。予約運転が選択されていればステップS206に進む。選択されていなければステップS202に進む。
ステップS206に進んだ場合は運転開始時刻になったかどうかの確認が行われる。運転開始時刻になったらステップS202に進む。
ステップS202では洗い工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択がなされていればステップS300に進む。ステップS300の洗い工程の内容は別途図11のフローチャートで説明する。洗い工程終了後、ステップS203に進む。洗い工程の選択がなされていなければステップS202から直ちにステップS203に進む。
ステップS203ではすすぎ工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS400に進む。ステップS400のすすぎ工程の内容は別途図12のフローチャートで説明する。図10ではすすぎ工程を3回にわたって実施することとし、各回のステップ番号には「S400−1」「S400−2」「S400−3」と枝番号を付して表記している。すすぎ工程の回数は使用者が任意に設定できる。この場合は「S400−3」が最終のすすぎ工程になる。
すすぎ工程終了後、ステップS204に進む。すすぎ工程の選択がなされていなければステップS203から直ちにステップS204に進む。
ステップS204では脱水工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS500に進む。ステップS500の脱水工程の内容は別途図13のフローチャートで説明する。脱水工程終了後、ステップS205に進む。脱水工程の選択がなされていなければステップS204から直ちにステップS205に進む。
ステップS205では制御部80、特にその中に含まれる演算装置(マイクロコンピュータ)の終了処理が手順に従って自動的に進められる。また洗濯工程が完了したことを終了音で報知する。すべてが終了した後、洗濯機1は次の洗濯工程に備えて待機状態に戻る。
続いて図11〜図13に基づき洗い、すすぎ、脱水の各個別工程の内容を説明する。
図11は洗い工程のフローチャートである。ステップS301では水位スイッチ71の検知している洗濯槽30内の水位データのとり込みが行われる。ステップS302では容量センシングの選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS308に進む。選択されていなければステップS302から直ちにステップS303に進む。
ステップS308ではパルセータ33の回転負荷により洗濯物の量を測定する。容量センシング後、ステップS303に進む。
ステップ303ではメイン給水弁50aが開き、給水口53を通じて洗濯槽30に水が注がれる。メイン給水弁50aは流量大に設定されているので水は速やかに洗濯槽30に満ちて行く。洗剤室54に入れられた洗剤も大量の水によって残らず押し流され、水に混じった状態で洗濯槽30に投入される。排水弁68は閉じている。水位スイッチ71が設定水位を検知したらメイン給水弁50aは閉じる。そしてステップS304に進む。
ステップS304ではなじませ運転を行う。パルセータ33が反転回転し、洗濯物と水を攪拌して、洗濯物を水になじませる。これにより、洗濯物に水を十分に吸収させる。また洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がす。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がったときは、ステップS305でメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
「布質センシング」を行う洗濯コースを選んでいれば、なじませ運転と共に布質センシングが実施される。なじませ運転を行った後、設定水位からの水位変化を検出し、水位が規定値以上に低下していれば吸水性の高い布質であると判断する。
ステップS305で安定した設定水位が得られた後、ステップS306に移る。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中に洗濯のための主水流を形成する。この主水流により洗濯物の洗濯が行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、洗濯水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
主水流の期間が経過した後、ステップS307に進む。ステップS307ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにする。これは洗濯槽30の脱水回転に備えるためである。
続いて図12のフローチャートに基づきすすぎ工程の内容を説明する。最初にステップS500の脱水工程が来るが、これについては図13のフローチャートで説明する。脱水後、ステップS401に進む。ステップS401ではメイン給水弁50aが開き、設定水位まで給水が行われる。
給水後、ステップS402に進む。ステップS402ではなじませ運転が行われる。ステップS402のなじませ運転では、ステップS500(脱水工程)で洗濯槽30に貼り付いた洗濯物を剥離し、水になじませ、洗濯物に水を十分に吸収させる。
なじませ運転の後、ステップS403に進む。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がっていたときはメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
ステップS403で設定水位を回復した後、ステップS404に進む。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中にすすぎのための主水流を形成する。この主水流により洗濯物のすすぎが行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、すすぎ水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
主水流の期間が経過した後、ステップS406に移る。ステップS406ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐす。これにより洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにし、脱水回転に備える。
上記説明では洗濯槽30の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を実行するものとしたが、常に新しい水を補給する「注水すすぎ」、あるいは洗濯槽30を低速回転させながら給水口53より洗濯物に水を注ぎかける「シャワーすすぎ」を行うこととしてもよい。
なお最終回のすすぎでは上記と少し異なるシーケンスが実行されるが、これについては後で詳しく説明する。
続いて図13のフローチャートに基づき脱水工程の内容を説明する。まずステップS501で排水弁68が開く。洗濯槽30の中の洗濯水は排水空間66を通じて排水される。排水弁68は脱水工程中は開いたままである。
洗濯物から大部分の洗濯水が抜けたところでクラッチ装置42及びブレーキ装置43が切り替わる。クラッチ装置42及びブレーキ装置43の切り替えタイミングは排水開始前、又は排水と同時でもよい。モータ41が今度は脱水軸44を回転させる。これにより洗濯槽30が脱水回転を行う。パルセータ33も洗濯槽30とともに回転する。
洗濯槽30が高速で回転すると、洗濯物は遠心力で洗濯槽30の内周壁に押しつけられる。洗濯物に含まれていた洗濯水も洗濯槽30の周壁内面に集まってくるが、前述の通り、洗濯槽30はテーパ状に上方に広がっているので、遠心力を受けた洗濯水は洗濯槽30の内面を上昇する。洗濯水は洗濯槽30の上端にたどりついたところで脱水孔31から放出される。脱水孔31を離れた洗濯水は水槽20の内面にたたきつけられ、水槽20の内面を伝って水槽20の底部に流れ落ちる。そして排水管61と、それに続く排水ホース60を通って外箱10の外に排出される。
図13のフローでは、ステップS502で比較的低速の脱水運転を行った後、ステップS503で高速の脱水運転を行う構成となっている。ステップS503の後、ステップS504に移行する。ステップS504ではモータ41への通電を断ち、停止処理を行う。
さて、洗濯機1はイオン溶出ユニット100を備える。イオン溶出ユニット100はメイン給水管52aの下流側に接続される。以下図3〜図9に基づきイオン溶出ユニット100の構造と機能、及び洗濯機1に搭載されて果たす役割につき説明する。
図3は給水弁50、イオン溶出ユニット100、及び給水口53の配置関係を示す部分上面図である。イオン溶出ユニット100の両端はメイン給水弁50aと給水口53とに直接接続されている。すなわちイオン溶出ユニット100は単独でメイン給水経路52aの全体を構成する。サブ給水経路52bは給水口53から突出したパイプとサブ給水弁50bとをホースで連結して構成される。なお図1の模型的表現では、説明の都合上、給水弁50、イオン溶出ユニット100、及び給水口53を洗濯機1の前後方向に並べて描いてあるが、実際の洗濯機ではこれらは前後方向にではなく左右方向に沿って並ぶ形で配置される。
図4〜図8にイオン溶出ユニットの構造を示す。図4は上面図である。図5は垂直断面図で、図4において線A−Aに沿って切断したものである。図6も垂直断面図で、図4において線B−Bに沿って切断したものである。図7は水平断面図である。図8は電極の斜視図である。
イオン溶出ユニット100は透明又は半透明の合成樹脂(無色又は着色)、あるいは不透明の合成樹脂からなるケース110を有する。ケース110は上面の開口したケース本体110aとその上面開口を閉ざす蓋110bとにより構成される(図5参照)。ケース本体110aは細長い形状を有しており、長手方向の一方の端に水の流入口111、他方の端に水の流出口112を備える。流入口111と流出口112はいずれもパイプ形状をなす。流出口112の断面積は流入口111の断面積より小さい。
ケース110は長手方向を水平方向として配置されるものであるが、このように水平に配置されたケース本体110aの底面は、流出口112に向かい次第に下がる傾斜面となっている(図5参照)。すなわち流出口112はケース110の内部空間において最も低位に設けられている。
蓋110bは4本のネジ170によりケース本体110aに固定される(図4参照)。ケース本体110aと蓋110bの間にはシールリング171が挟み込まれている(図5参照)。
ケース110の内部には、流入口111から流出口112へと向かう水流に沿う形で、2枚の板状電極113、114が向かい合わせに配置されている。ケース110の中に水が存在する状態で電極113、114に所定の電圧を印加すると、電極113、114の陽極側から電極構成金属の金属イオンが溶出する。電極113、114は、一例として、2cm×5cm、厚さ1mm程度の銀プレートを約5mmの距離を隔てて配置する構成とすることができる。
電極113、114の材料は銀に限られない。抗菌性を有する金属イオンのもとになる金属であればよい。銀の他、銅、銀と銅の合金、亜鉛などが選択可能である。銀電極から溶出する銀イオン、銅電極から溶出する銅イオン、及び亜鉛電極から溶出する亜鉛イオンは優れた殺菌効果や防カビ効果を発揮する。銀と銅の合金からは銀イオンと銅イオンを同時に溶出させることができる。
イオン溶出ユニット100では、電圧の印加の有無で金属イオンの溶出/非溶出を選択できる。また電流や電圧印加時間を制御することにより金属イオンの溶出量を制御できる。ゼオライトなどの金属イオン担持体から金属イオンを溶出させる方式と比較した場合、金属イオンを投入するかどうかの選択や金属イオンの濃度の調節をすべて電気的に行えるので使い勝手がよい。
電極113、114は完全に平行に配置されている訳ではない。平面的に見ると、ケース110内を流れる水流に関し、上流側から下流側に向かって、言い換えれば流入口111から流出口112の方向に向かって、電極間の間隔が狭くなるように、テーパ状に配置されている(図7参照)。
ケース本体110aの平面形状も、流入口111の存在する端から流出口112の存在する端に向けて絞り込まれている。すなわちケース110の内部空間の断面積は上流側から下流側に向かって漸減する。
電極113、114は正面形状長方形であり、各々端子115、116が設けられる。端子115、116はそれぞれ電極113、114の下縁から垂下する形で、上流側となる電極端より内側に入り込んだ箇所に形設される。
電極113と端子115、及び電極114と端子116はそれぞれ同一の金属素材により一体成形される。電極115、116はケース本体110aの底壁に設けた貫通孔を通じてケース本体110aの下面に導出される。端子115、116がケース本体110aを突き抜ける箇所には、図6の図中拡大図に見られるように水密シール172の処理が施される。水密シール172は後述する第2のスリーブ175とともに二重のシール構造を形成し、ここからの水もれを防ぐ。
ケース本体110aの下面には、端子115、116を隔てる絶縁壁173が一体成形されている(図6参照)。端子115、116は図示しないケーブルを介して制御部80に付属する駆動回路に接続される。
端子115、116のうち、ケース110の中に残っている部分は絶縁物質製のスリーブで保護される。2種類のスリーブが使用される。第1のスリーブ174は合成樹脂製であって、端子115、116の付け根部分に嵌合される。第1のスリーブ174はその一部が電極113、114の一方の側面に張り出す形になっており、この部分の側面に突起を形設し、この突起を電極113、114に設けた透孔に係合させている(図6、7参照)。これにより、スリーブ174からの電極113、114の脱落が防がれている。第2のスリーブ175は軟質ゴム製で、第1のスリーブ174とケース本体110aの底壁との隙間を埋めるとともに、自身とケース本体110aとの隙間、及び自身と電極113、114との隙間からの水もれを防ぐ。
前述のように端子115、116は電極113、114において上流側の箇所にあり、端子115、116に嵌合される第1のスリーブ174により電極113、114の上流側の部分の支えが構成される。蓋110bの内面には第1のスリーブ174の位置に合わせてフォーク形状の支持部176が形設されており(図6参照)、この支持部176が第1のスリーブ174の上縁を挟み、第2のスリーブ175が第1のスリーブ174とケース本体110aとの隙間を埋めていることと相まって、しっかりとした支えを構成する。なおフォーク形状の支持部176は長短の指で電極113、114を挟み、これにより蓋110bの側でも電極113、114の間隔が適切に保たれるようになっている。
電極113、114の下流側の部分もケース110の内面に設けた支持部により支えられる。ケース本体110aの底壁からはフォーク形状の支持部177が立ち上がり、蓋110bの天井面からは同じくフォーク形状の支持部178が、支持部177に向かい合う形で垂下している(図5、8参照)。電極113、114はそれぞれ下流側部分の下縁と上縁を支持部177、178で挟まれ、動かないように保持される。
図7に見られるように、電極113、114は、互いに対向する面と反対側の面が、ケース110の内面との間に空間を生じる形で配置されている。また図5に見られるように、電極113、114はその上縁及び下縁とケース110の内面との間にも空間が生じるように配置されている(支持部176、177、178との接触部分は例外)。さらに、図7と図5のいずれにも見られるように、電極113、114の上流側及び下流側の縁とケース110の内面との間にも空間が置かれている。
なおケース110の幅をもっと狭くせざるを得ない場合は、電極113、114の、互いに対向する側の面と反対側の面をケース110の内壁に密着させるような構成も可能である。
電極113、114に異物が接触しないようにするため、電極113、114の上流側に金網製のストレーナーを配置する。実施形態の場合、図2に示すように、接続管51の中にストレーナー180が設けられている。ストレーナー180は給水弁50の中に異物が入り込まないようにするためのものであるが、イオン溶出ユニット100の上流側ストレーナーも兼ねる。
電極113、114の下流側にも金網製のストレーナー181を配置する。ストレーナー181は長期間の使用により電極113、114がやせ細ったとき、それが折れて破片が流失するのを防ぐ。ストレーナー181の配置場所としては、例えば流出口112を選択することができる。
ストレーナー180、181の配置場所は上記の場所に限定されない。「電極の上流側」「電極の下流側」という条件を満たしさえすれば、給水経路中のどこに配置してもよい。なおストレーナー180、181は取り外し可能とし、捕捉した異物を除去したり、目詰まりの原因物質を清掃したりすることができるようにする。
図9に示すのはイオン溶出ユニット100の駆動回路120である。商用電源121にトランス122が接続され、100Vを所定の電圧に降圧する。トランス122の出力電圧は全波整流回路123によって整流された後、定電圧回路124で定電圧とされる。定電圧回路124には定電流回路125が接続されている。定電流回路125は後述する電極駆動回路150に対し、電極駆動回路150内の抵抗値の変化にかかわらず一定の電流を供給するように動作する。
商用電源121にはトランス122と並列に整流ダイオード126が接続される。整流ダイオード126の出力電圧はコンデンサ127によって平滑化された後、定電圧回路128によって定電圧とされ、マイクロコンピュータ130に供給される。マイクロコンピュータ130はトランス122の一次側コイルの一端と商用電源121との間に接続されたトライアック129を起動制御する。
電極駆動回路150はNPN型トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1、D2、抵抗R1〜R7を図のように接続して構成されている。トランジスタQ1とダイオードD1はフォトカプラ151を構成し、トランジスタQ2とダイオードD2はフォトカプラ152を構成する。すなわちダイオードD1、D2はフォトダイオードであり、トランジスタQ1、Q2はフォトトランジスタである。
今、マイクロコンピュータ130からラインL1にハイレベルの電圧、ラインL2にローレベルの電圧又はOFF(ゼロ電圧)が与えられると、ダイオードD2がONになり、それに付随してトランジスタQ2もONになる。トランジスタQ2がONになると抵抗R3、R4、R7に電流が流れ、トランジスタQ3のベースにバイアスがかかり、トランジスタQ3はONになる。
一方、ダイオードD1はOFFなのでトランジスタQ1はOFF、トランジスタQ4もOFFとなる。この状態では、陽極側の電極113から陰極側の電極114に向かって電流が流れる。これによってイオン溶出ユニット100には陽イオンの金属イオンと陰イオンとが発生する。
イオン溶出ユニット100に長時間一方向に電流を流すと、図9で陽極側となっている電極113が減耗するとともに、陰極側となっている電極114には水中の不純物がスケールとして固着する。これはイオン溶出ユニット100の性能低下をもたらすので、強制的電極洗浄モードで電極駆動回路150を運転できるように構成されている。
強制的電極洗浄モードでは、ラインL1、L2の電圧を逆にして、電極113、114を逆方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ130が制御を切り替える。この場合、トランジスタQ1、Q4がON、トランジスタQ2、Q3がOFFとなる。マイクロコンピュータ130はカウンタ機能を有していて、所定カウント数に達する度に上述の切り替えを行う。
電極駆動回路150内の抵抗の変化、特に電極113、114の抵抗変化によって、電極間を流れる電流値が減少するなどの事態が生じた場合は、定電流回路125がその出力電圧を上げ、電流の減少を防止する。しかしながら、累積使用時間が長くなるとイオン溶出ユニット100が寿命を迎え、強制的電極洗浄モードへの切り替えや、定電流回路125の出力電圧上昇を実施しても電流減少を防げなくなる。
そこで本回路では、イオン溶出ユニット100の電極113、114間を流れる電流を抵抗R7に生じる電圧によって監視し、その電流が所定の最小電流値に至ると、それを電流検知回路160が検出するようにしている。最小電流値を検出したという情報はフォトカプラ163を構成するフォトダイオードD3からフォトトランジスタQ5を介してマイクロコンピュータ130に伝達される。マイクロコンピュータ130は線路L3を介して警告報知手段131を駆動し、所定の警告報知を行わせる。警告報知手段131は操作/表示部81又は制御部80に配置されている。
また、電極駆動回路150内でのショートなどの事故については、電流が所定の最大電流値以上になったことを検出する電流検知回路161が用意されており、この電流検知回路161の出力に基づいてマイクロコンピュータ130は警告報知手段131を駆動する。さらに、定電流回路125の出力電圧が予め定めた最小値以下になると、電圧検知回路162がこれを検知し、同様にマイクロコンピュータ130が警告報知手段131を駆動する。
イオン溶出ユニット100の生成した金属イオンは、次のようにして洗濯槽30に投入される。
金属イオン及び仕上剤として用いられる柔軟剤は最終すすぎの段階で投入される。図14は最終すすぎのシーケンスを示すフローチャートである。最終すすぎでは、ステップS500の脱水工程の後、ステップS420に進む。ステップS420では仕上物質の投入が選択されているかどうかを確認する。操作/表示部81による設定作業で「仕上物質の投入」が選択されていればステップS421に進む。選択されていなければ図12のステップS401に進み、それまでのすすぎ工程と同様のやり方で最終すすぎを遂行する。
ステップS421では投入すべき仕上物質が金属イオンと柔軟剤の2種類であるかどうかを確認する。操作/表示部81による設定作業で「金属イオンと柔軟剤」が選択されていればステップS422に進む。選択されていなければステップS426に進む。
ステップS422ではメイン給水弁50aとサブ給水弁50bの両方が開き、メイン給水経路52aとサブ給水経路52bの両方に水が流れる。
ステップS422は金属イオン溶出工程である。メイン給水弁50aに設定された、サブ給水弁50bに設定された水量よりも多い所定の水量の水流がイオン溶出ユニット100の内部空間を満たしつつ流れる。それと同時に駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極構成金属が銀の場合、陽極側の電極においてAg→Ag++e-の反応が生じ、水中に銀イオンAg+が溶出する。電極間を流れる電流は直流である。金属イオンを添加された水は洗剤室54に入り、注水口54aから注水口56を経て洗濯槽30に注ぎ込まれる。
サブ給水弁50bからはメイン給水弁50aから流れ出すのよりも少量の水が流れ出し、サブ給水経路52bを通じて仕上剤室55に注ぎ込まれる。仕上剤室55に仕上剤(柔軟剤)が入れられていれば、その仕上剤(柔軟剤)はサイホン部57から水と共に洗濯槽30に投入される。金属イオンと同時投入ということになる。仕上剤室55の中の水位が所定高さに達してはじめてサイホン効果が生じるので、時期が来て水が仕上剤室55に注入されるまで、液体の仕上剤(柔軟剤)を仕上剤室55に保持しておくことができる。
所定量(サイホン部57にサイホン作用を起こさせるに足る量か、それ以上)の水を仕上剤室55に注入したところでサブ給水弁50bは閉じる。なおこの水の注入工程すなわち仕上剤投入動作は、仕上剤(柔軟剤)が仕上剤室55に入れられているかどうかに関わりなく、「仕上剤の投入」が選択されていれば自動的に実行される。
洗濯槽30に所定量の金属イオン添加水が投入され、以後金属イオン非添加水を設定水位まで注げばすすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達すると判断されたところで電極113、114への電圧印加は停止する。イオン溶出ユニット100が金属イオンを生成しなくなった後もメイン給水弁50aは給水を続け、洗濯槽30の内部の水位が設定水位に達したところで給水を止める。
上記のようにステップS422で金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時投入するのであるが、これは必ずしも、イオン溶出ユニット100が金属イオンを生成している時間に、サイホン作用で仕上剤(柔軟剤)が洗濯槽30に投入される時間が完全に重ならなければならないということを意味するものではない。どちらかが前後にずれても構わない。イオン溶出ユニット100が金属イオンの生成を停止した後、金属イオン非添加水が追加注水されているときに仕上剤(柔軟剤)が投入されることとしてもよい。要は、一つのシーケンスの中で金属イオンの投入と仕上剤(柔軟剤)の投入がそれぞれ実行されればよい。
前述のとおり、端子115は電極113に、端子116は電極114に、それぞれ同一金属素材で一体成形されている。このため、別の金属部品同士を接合した場合と異なり、電極と端子の間に電位差が生じず、腐食が発生することがない。また一体化することにより製造工程を簡略化することができる。
電極113、114の間隔は、上流側から下流側に向かって狭くなるようにテーパ状に設定してある。このため電極は水の流れに沿い、減耗して板厚が薄くなったとき、ビビリ振動を生じにくく欠けにくい。また過度に変形して短絡する心配もない。
電極113、114はケース110の内面との間に空間を生じる形で支持されている。このため、電極113、114からケース110の内面にかけ金属層が成長し、他方の電極との間に短絡現象を起こすようなことがない。
端子115、116が電極113、114と一体であったとしても、使用に伴い電極113、114が減耗するのは仕方がないが、端子115、116が減耗するのは困る。本実施形態の場合、端子115、116のケース110内に位置する部分は絶縁物質製のスリーブ174、175で保護されており、通電による減耗が少ない。このため、使用途中で端子115、116が折れるといった事態が防がれる。
電極113、114において、端子115、116が設けられる箇所は上流側の端より内側に入り込んだ箇所である。電極113、114は互いの間隔の狭くなった部分より減耗して行く。端の部分の減耗も早いが、端子115、116は電極113、114の中でも上流側の部分ではあるものの全くの端という訳ではなく、そこから内側に入り込んだ箇所に形設されているので、電極の端から始まった減耗が端子に達して端子が根元から折れてしまうといった事態を心配せずに済む。
電極113、114の上流側は第1のスリーブ174と支持部176とにより支持されている。他方電極113、114の下流側は支持部177、178により支持されている。このように上流側と下流側とでしっかり支持されているため、水流の中にあっても電極113、114は振動しない。従って、振動が原因で電極113、114が折れるということがない。
端子115、116はケース本体110aの底壁を貫通して下向きに突出する。このため、蒸気がケース110aに接触したり(風呂水を用いて洗濯を行う場合、洗濯機1の内部に蒸気が侵入しやすい)、通水によりケース110が冷やされたりして、ケース110の外面に結露が生じたとしても、結露水は端子115、116に接続したケーブルを伝って流れ落ち、端子115、116とケース110との境界に滞留しない。従って端子115、116の間が結露水で短絡されるといった事態に発展することがない。ケース本体110aは長手方向を水平にして配置されているので、電極113、114の側面に設けた端子115、116をケース本体110aの底壁より下向きに突出させる構成とするのは容易である。
イオン溶出ユニット100の流出口112は流入口111よりも断面積が小さく、流路抵抗が大きい。このため、流入口111からケース110の中に入り込んだ水はケース110の内部に空気溜まりをつくることなく満ちあふれ、電極113、114をすっかり浸す。従って、電極113、114の中に金属イオン生成に関与しない箇所が生じ、この箇所が溶け残るといった事態は発生しない。
流出口112の断面積が流入口111の断面積より小さいだけでなく、ケース110の内部空間の断面積も上流側から下流側に向かって漸減している。このため、ケース110の内部で乱流や気泡が生じにくく、水流がスムーズになる。気泡が電極に溶け残りを生じさせることもない。金属イオンも速やかに電極113、114を離れ、電極113、114に逆戻りしないので、イオン溶出効率が向上する。
イオン溶出ユニット100は流量大であるメイン給水経路52aに配置されていて、流れる水量が多い。このため、金属イオンはすぐにケース110から運び出され、電極113、114に逆戻りしない。従ってイオン溶出効率が向上する。
流出口112はケース110の内部空間において最も低位に設けられている。このため、イオン溶出ユニット100への通水を停止したとき、イオン溶出ユニット100の中の水はすべて流出口112から流出する。従って寒冷時にケース110内の残水が凍結し、イオン溶出ユニット100が故障する、あるいは破壊するといった事態は発生しない。
電極113、114の上流側にはストレーナー180が存在する。このため、イオン溶出ユニット100に供給される水の中に固形の異物が存在したとしても、その異物はストレーナー180で捕捉され、電極113、114まで届かない。従って異物が電極113、114を傷つけることがなく、また電極間が異物で短絡されて過大な電流が流れたり、金属イオン生成不足になったりすることもない。
電極113、114の下流側にはストレーナー181が存在する。長期間の使用により電極113、114が減耗したりもろくなったりし、折れて破片が流出するようなことがあったとしても、その破片はストレーナー181で捕捉され、それより下流には流れて行かない。従って電極113、114の破片が下流側の物品にダメージを与えるようなことがない。
本実施形態のようにイオン溶出ユニット100を洗濯機1に搭載している場合、ストレーナー180、181がなければ異物や電極の破片が洗濯物に付着することがあり得る。異物や電極の破片は洗濯物を汚したり傷つけたりする可能性があり、また洗濯物に異物や電極の破片が付着したまま脱水乾燥が行われると、後でその洗濯物を着た人がそれらに触れて不快感を憶えたり、極端な場合は負傷するといった事態に結びつきかねないが、ストレーナー180、181があればそのような事態を避けることができる。
なおストレーナー180、181は必ず両方とも配置しなければならないということはない。なくても問題は生じないと判断できればその片方、ないしは両方を廃止することができる。
図14のフローチャートに戻って説明を続ける。ステップS423では金属イオンと仕上剤(柔軟剤)が投入されたすすぎ水を強い水流(強水流)で攪拌し、洗濯物と金属イオンとの接触、及び洗濯物への仕上剤(柔軟剤)の付着を促進する。
強水流で十分に攪拌を行うことにより、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を水に均一に溶け込ませ、洗濯物の隅々にまで行き渡らせることができる。所定時間の間強水流で攪拌を行った後、ステップS424に進む。
ステップS424では一転して弱い水流(弱水流)での攪拌となる。金属イオンを洗濯物の表面に付着させ、その効果を発揮させるのがねらいである。弱いながらも水流が生じていれば、洗濯機1の運転が終了してしまったと使用者が誤解するおそれがないため、ゆるやかに攪拌を行う。しかしながら、すすぎ工程の途中であることを使用者に認識させる手だてがあれば、例えば操作/表示部81に表示を出して使用者の注意を喚起することができれば、攪拌をやめ、水を静止状態に置いても構わない。
洗濯物が金属イオンを吸着するのに十分な程度に設定した弱水流期間の後、ステップS425に進む。ここでは再び強い水流(強水流)で念押しの攪拌を行う。これにより、洗濯物の中で金属イオンの行き渡っていなかった箇所にまで金属イオンを送り込み、しっかりと付着させる。
ステップS425の後、ステップS406に移る。ステップS406ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐす。これにより洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにし、脱水回転に備える。
図15はステップS422からステップS406までにおける各構成要素の動作を示すシーケンス図である。
各ステップの時間配分の一例を掲げる。ステップS423(強水流)は4分、ステップS424(弱水流)は4分15秒、ステップS425(強水流)は5秒、及びステップS406(バランス)は1分40秒とする。ステップS423からステップ406までのトータル時間は10分となる。弱水流期間を水流の静止期間に置き換えてもよい。
注水すすぎが選択された場合は、ステップS425(強水流)は5秒から1分に延長され、一点鎖線で示すようにメイン給水弁50aが開いて給水を行う。またこのとき、ステップS406(バランス)は45秒となる。
水流を生じさせるとき、モータ41はON(正転)、OFF、ON(逆転)、OFFを周期的に繰り返す。ON時間とOFF時間の比率は水量及び/又は洗濯物量によって異なる。例えば定格負荷時の時間比率(ON/OFF)は次のようになる。
ステップS423(強水流) : 1.9/ 0.7
ステップS424(弱水流) : 0.6/10.0
ステップS425(強水流) : 1.4/ 1.0
ステップS406(バランス): 0.9/ 0.4
最終すすぎ工程で金属イオンを投入することとした場合は、投入しない場合に比べ工程のトータル時間が長くなる。金属イオンが洗濯物に十分に吸着されるにはある程度の時間を必要とするため、このようなプログラムとしたのである。これにより、金属イオンを洗濯物に十分に付着させ、所期の抗菌効果を発揮させることができる。
ステップS423(強水流)とステップS424(弱水流)の時間配分は、洗濯槽30内の水量及び/又は洗濯物量にかかわらず一定とすることができる。このようにすれば、制御のプログラミングが容易になる。
ステップS423(強水流)とステップS424(弱水流)の時間配分を、洗濯槽30内の水量及び/又は洗濯物量に応じて変化させることとしてもよい。このようにすれば、強水流期間と弱水流期間の比率を水量や洗濯物量に応じて適切に設定でき、布傷みを低減し、電力も不必要に消費しないこととすることができる。
金属イオンと仕上剤(柔軟剤)とは、本来は別々に投入するのが望ましい。というのは、金属イオンが柔軟剤成分に接触すると化合物に変化し、金属イオンによる抗菌効果が減殺されるからである。しかしながら、すすぎ水の中にはかなりの量の金属イオンが最後まで残り続ける。また効果減殺分は金属イオンの濃度設定によりある程度補償可能である。そこで、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時投入し、抗菌性付与の効果は多少低下するものの、別々に投入してそれぞれにすすぎを行う場合に比べてすすぎ時間を短縮し、家事の効率化を図ったものである。
金属イオンと仕上剤(柔軟剤)が洗濯槽30の中で出会うのは仕方がないにせよ、洗濯槽30に入るまでは接触を避けるのが望ましい。本実施形態の場合、金属イオンはメイン給水経路52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に投入される。仕上剤(柔軟剤)は仕上剤室55から洗濯槽30に投入される。このように金属イオンをすすぎ水に投入するための経路と、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路とが別系統のため、洗濯槽30の中で出会うまでは金属イオンと仕上剤(柔軟剤)との接触は生じず、金属イオンが高濃度の仕上剤(柔軟剤)に接触して化合物となり、抗菌力を失うということがない。
なお、最終すすぎの場合にも洗濯槽30の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を実行するものとして説明を進めたが、「注水すすぎ」で最終すすぎを行ってもよい。その場合、注ぎかける水は金属イオン添加水であるものとする。
「注水すすぎ」の場合、注ぐ水の中に金属イオンを投入できるようにする。このようにすれば、注水すすぎ時にも水中の金属イオン濃度が低下することがなく、必要な量の金属イオンを洗濯物に付着させることができる。抗菌効果に重きを置かない場合は、金属イオン非添加水を注ぐこととして、電極113、114の消耗を抑えることができる。
さて、第1の仕上物質である金属イオンの投入と第2の仕上物質である仕上剤(柔軟剤)の投入はいずれも任意選択事項である。一方の投入をやめることもできるし、両方とも投入をやめることもできる。両方とも投入をやめる場合はステップS420からステップS401に進むことになるが、これについては前に述べた。ここからは2種類の仕上物質のうち一方だけを投入する場合について説明する。
ステップS421において、投入すべき仕上物質が金属イオンと柔軟剤の2種類でないとなれば、その一方のみの投入が選択されているということである。この場合はステップS426に進む。
ステップS426では、投入すべき仕上物質が金属イオンであるかどうかを確認する。金属イオンであればステップS427に進む。そうでなければステップS428に進む。
ステップS427ではメイン給水弁50aが開き、メイン給水経路52aに水が流れる。サブ給水弁50bは開かない。イオン溶出ユニット100に水が流れると、駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。洗濯槽30に所定量の金属イオン添加水が投入され、以後金属イオン非添加水を設定水位まで注げばすすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達すると判断されたところで電極113、114への電圧印加は停止する。イオン溶出ユニット100が金属イオンを生成しなくなった後もメイン給水弁50aは給水を続け、洗濯槽30の内部の水位が設定水位に達したところで給水を止める。
ステップS427の後、ステップS423に進む。以後、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時投入したときと同じようにステップS423(強水流)→ステップS424(弱水流)→ステップS425(強水流)→ステップS406(バランス)と進む。弱水流期間は水流の静止期間に置き換えることができる。
ステップS426で、投入すべき仕上物質が金属イオンではないとなった場合には、仕上剤(柔軟剤)が単独で投入されるということである。このときはステップS428に進む。
ステップS428ではメイン給水弁50aとサブ給水弁50bの両方が開き、メイン給水経路52aとサブ給水経路52bの両方に水が流れる。ただしイオン溶出ユニット100は駆動されず、金属イオンの生成は行われない。サイホン作用を起こさせるに十分な水が仕上剤室55に注ぎ込まれ、仕上剤(柔軟剤)がサイホン部57を通じて洗濯槽30に投入された後は、サブ給水弁50bは閉じる。
メイン給水弁50aはサブ給水弁50bが閉じた後も給水を続け、洗濯槽30の内部の水位が設定水位に達したところで給水を止める。
ステップS428の後、ステップS423に進む。以後、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時投入したときと同じようにステップS423(強水流)→ステップS424(弱水流)→ステップS425(強水流)→ステップS406(バランス)と進む。弱水流期間は水流の静止期間に置き換えることができる。
このように、仕上物質を1種類しか投入しない場合でも強水流→弱水流→強水流の各ステップを実行し、仕上物質が確実に洗濯物に付着するようにする。ただし各ステップの時間配分は、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)とで同じである必要はないので、それぞれに適合するように調整して設定する。
仕上剤(柔軟剤)の場合、洗濯物に付着させるのに金属イオンのように長い時間をかける必要がない。そこで、ステップS428の後にステップS423(強水流)とS406(バランス)のみを置き、ステップS423(強水流)も例えば2分間といった短い時間で済ませることが可能である。
ステップS406でうまくバランスがとれなかったとすると、それに続く脱水工程で洗濯機1は大きく振動する。洗濯物のアンバランスによる振動はタッチセンサ、ショックセンサ、加速度センサなどの物理的な検知手段により、又はモータ41の電圧/電流パターンを解析するなどのソフトウェア的な検知手段により、検知される。
アンバランスが検知された場合は、洗濯槽30の脱水回転が中止され、もう一度水を注いで攪拌し、バランスをとり直す「バランス修正すすぎ」が行われる。
図16は「バランス修正すすぎ」における各構成要素の動作を示すシーケンス図である。給水の後、攪拌Aでしっかりと攪拌を行い、洗濯物の配置状態を変化させる。その後攪拌Bで小刻みな攪拌を行い、脱水回転再開に備えて洗濯物のバランスを整える。時間配分は、例えば給水が2分5秒、攪拌Aが1分、攪拌Bが30秒とされる。
攪拌の際、モータ41はON(正転)、OFF、ON(逆転)、OFFを周期的に繰り返す。ON時間とOFF時間の比率は水量及び/又は洗濯物量によって異なる。例えば定格負荷時の時間比率(ON/OFF)は次のようになる。
攪拌A: 1.9/0.7
攪拌B: 0.9/0.4
最終すすぎ工程において金属イオンが投入された後の脱水工程でアンバランスが検知された場合には、金属イオンを投入しなかった場合のアンバランス検知時とは異なる処理が実行される。
第1の「異なる処理」は、「金属イオン添加水を給水してバランス修正すすぎを行うこと」である。このようにすれば、新たに水を注いでバランス修正すすぎを行う場合でも、その水に金属イオンが添加されているため、洗濯物に施した抗菌処理の効果が薄れない。
このように金属イオン添加水を給水してバランス修正すすぎを行う場合、金属イオン投入量をそれ以前の工程における金属イオン投入量より少なくするとよい。このようにすれば、一度金属イオンで処理した洗濯物に、不必要に多量の金属イオンを補給することがなく、金属イオンの消費を抑えることができる。
第2の「異なる処理」は、「給水されているのが金属イオン非添加水であることを表示及び/又は報知しつつ金属イオン非添加水を給水して攪拌を行うバランス修正すすぎ」である。
バランス修正時に金属イオン添加水を使用すると、設計寿命より早く電極113、114の金属が消費され、金属イオンを使用できなくなる時期が早く到来する可能性がある。上記のようにすれば、金属イオンの消費を抑えるために金属イオン非添加水でバランス修正すすぎを行った場合にはその旨を操作/表示部81で表示する、あるいは音声で報知するなどの手段により、使用者に対し所望の抗菌効果が得られない可能性があることを教えることができる。
第3の「異なる処理」は、「脱水回転の中止と、アンバランスを検知した旨の表示及び/又は報知」である。
このようにすれば、バランス修正すすぎなどを実施せず、アンバランスが生じていることを使用者に知らせて使用者の手で洗濯物のバランスを修正してもらうことにより、金属イオンの消費を抑えつつ、使用者が期待している抗菌効果を得ることができる。
アンバランス検知が複数回にわたる場合、回によって実行される処理を変えることができる。
アンバランスを検知する度に金属イオン添加水でバランス修正すすぎを行っていたのでは金属イオンのもととなる金属、すなわち電極113、114が早く減耗してしまう。上記のようにすれば、金属イオン添加水の使用を伴わないバランス修正の処理などもとり混ぜることにより、電極113、114の減耗を抑えることができる。
洗濯機1の操作の選択肢において、「アンバランス検知後の処理」の選択肢を複数種類用意し、実行される処理の種類及び/又は順序を選択可能とすることができる。
このようにすれば、金属イオンを惜しみなく使って抗菌効果を維持することを優先させるか、あるいは金属イオンの節約を優先させるかなど、使用者の意向に応じた処理をさせることができる。
イオン溶出ユニット100を駆動するにあたり、駆動回路120の定電流回路125は電極113、114間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御する。これにより、単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定になる。単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定であれば、イオン溶出ユニット100に流す水量とイオン溶出時間を制御することにより洗濯槽30内の金属イオン濃度を制御することができることになり、所望の金属イオン濃度を得るのが容易になる。
この時電極113、114間を流れる電流は直流である。もしこれが交流であると、次の現象が起きる。すなわち、金属イオンが例えば銀イオンの場合、一旦溶出した銀イオンが、電極の極性が反転したときに、Ag++e-→Agという逆反応によって電極に戻ってしまう。直流であればそのようなことはない。
電極113、114の内、陰極として使用される側にはスケールが析出する。極性を反転しないまま直流を流し続け、スケールの堆積量が多くなると、電流が流れにくくなり、金属イオンを所定レートで溶出することが難しくなる。また陽極として使用される電極だけ減耗が早まる「片減り」の問題も発生する。そこで、電極113、114の極性は周期的に反転させる。
電極113、114は金属イオンの溶出を続けるうちに次第に減耗し、金属イオンの溶出量が減少する。使用が長期にわたれば金属イオンの溶出量が不安定になったり、所定の溶出量を確保できなくなったりする。そのため、イオン溶出ユニット100は交換可能とされ、電極113、114の寿命が来れば新しいユニットに交換できるようになっている。さらに、電極113、114が耐用限界に達したことを操作/表示部81を通じて使用者に報知し、イオン溶出ユニット100の交換などのメンテナンスを促すようになっている。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
また本発明は、上記実施形態でとり上げたような形式の全自動洗濯機の他、横型ドラム(タンブラー方式)、斜めドラム、乾燥機兼用のもの、又は二層式など、あらゆる形式の洗濯機に応用可能である。