JP2005289941A - 徐放材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 薬剤成分の放散速度や期間等を綿密に制御できる徐放材を提供する。
【解決手段】 担体に担持された薬剤成分を徐放し得る形態をとる徐放剤を、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器に包有させた徐放材を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は徐放剤を用いた材としての徐放材に関し、さらに詳しくは、芳香剤等の香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤、各種の医薬や生理活性物質等、種々の機能や作用を有する化学物質(本明細書においては、以下、これらの化学物質を「薬剤成分」と言い、かつ、その分子を「機能性分子」という。)をシリカゲル細孔内に貯留するとともに、これらの薬剤成分を経時的に徐々に放出させる徐放剤を、さらに精密に制御された薬剤成分透過・浸透性容器に入れ、より精密な徐放機能を持たせた徐放材に関する。
様々な産業分野において、薬剤成分を徐々に放出させて使用したいという要求がある。
かかる目的から、従来、(i)粒子状の薬剤成分をセルロース等の分子で被覆して徐放性のマイクロカプセルとする技術(特許文献1)や、(ii)大環状の化学構造を有する化合物を合成し、これに機能性分子を包接させて、徐放性の包接化合物とする技術(特許文献2)、(iii)既知の雲母、カオリン、スメクタイト系粘土鉱物、シリカゲルやコロイダルシリカ、ゼオライト、セピオライト等の多孔性物質を徐放剤用担体とし、これに薬剤成分を含浸させる技術(特許文献3〜11)、(iv)上記の多孔性物質に薬剤成分を含浸させた後、更に多孔性物質の表面を適当な材料で被覆してマイクロカプセル化する技術(特許文献12)、(v)機能性分子をそのままでないしは多孔性物質に含浸させて、さらに穴の開いたフィルムで覆ったり、穴の開いた包装体に収容して用いる技術(特許文献13〜15)などが知られている。
特開平3−145404号公報 特開平4−297529号公報 特開昭62−57486号公報 特開昭62−209161号公報 特開昭63−1442号公報 特開平2−202575号公報 特開平2−239176号公報 特開平3−229634号公報 特開平4−91023号公報 特開平4−224511号公報 特開平4−300801号公報 特開平2−30038号公報 特開平5−294805号公報 特開平7−165272号公報 特開平10−158112号公報
しかし、上記の特許文献1〜15に代表される従来技術にはそれぞれ課題があった。
例えば、有機高分子を担体として使用する場合には、担体の強度が課題となることが多かったし、従来のシリカ等の無機材料を用いた場合には、少量含有される不純物の影響で担持薬剤成分が分解するという課題が危惧された他、徐放性能を制御するために厚さや成分等を微妙に調製した被覆層を設ける必要があることも多く、生産工程が複雑になっていた。また、被覆層を形成する必要がある場合の被覆層の材料は高価なものが多い。さらに、穴の開いたフィルムで覆ったり、包装体に収容して用いる技術も、単にガス成分の出入りを緩徐にするためだけの目的に用いられており、積極的に精密に徐放効果を制御できるような効果までは得られていなかった。
以上の背景から、生産が容易且つ安価であり、担持できる薬剤成分の種類やその分子の大きさに対する選択の幅が広く、これらを多量に含浸可能であるとともに、純度が高く含浸させる薬剤成分にダメージを与えず、加えて耐水性や耐熱性、長期における物性安定性等にも優れた担体に薬剤成分を担持した徐放剤を構成要素とする徐放材であって、なおかつその放散速度や期間等を綿密に制御できる徐放材が望まれていた(以下、徐放剤を主たる構成要素とし、他の部材と併せて製品としたものを徐放材と呼称する。)。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、薬剤成分の放散速度や期間等を綿密に制御できる徐放材を提供することにある。
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、担体に担持された薬剤成分を徐放し得る徐放剤を、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器に収容することによって、上記課題が効果的に解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、担体に担持された薬剤成分を徐放し得る徐放剤と、該徐放剤を包有し、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器とを備えたことを特徴とする徐放材に存する。
本発明の徐放材は、従来の徐放材と比較して、徐放性能がより正確に制御可能であるとともに、長期にわたり安定した徐放効果を得ることが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の徐放材は、担体に担持された薬剤成分を徐放し得る徐放剤と、この徐放剤を包有し、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器とを備えたものである。なお、本発明においては、担体に担持された薬剤成分を徐放し得る剤を「徐放剤」と称し、この徐放剤を主たる構成要素とし、これを(必要に応じて他の部材とともに)容器に包有させた材を「徐放材」と称する。
まず、本発明の徐放材に使用される徐放剤の担体について説明する。担体の種類は特に制限されず、本発明の趣旨に反するものでない限り、任意のものを選択可能である(なお、本明細書において「本発明の趣旨に反する」とは、例えば、本発明の徐放材の薬剤成分や担体等の構成要素と好ましくない反応を引き起こしたり、その徐放性能を大きく損なったりする等、本発明の目的とする作用や効果に反するものをいう。)。
使用可能な担体の例としては、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、粘土、活性炭、シクロデキストリン、各種樹脂によるマイクロカプセル等が挙げられる。これらの中でも、物理的強度が強く、生産コストが安く、かつ非常に多くの薬剤成分に対して不活性であって好ましくない副反応を引き起こさないという理由から、シリカゲルが好ましい。以下、担体としてシリカゲルを用いる場合について説明する。
本発明の徐放材で担体として使用するシリカゲル(以下適宜「本発明の徐放材用シリカゲル担体」等と略する。)は、細孔容積及び比表面積が以下の範囲にあることが好ましい。具体的に、細孔容積の値は、通常0.05ml/g以上、中でも0.6ml/g以上、また、通常3.0ml/g以下、中でも2.0ml/g以下であることが好ましい。細孔容積が小さ過ぎると担持できる薬剤成分の量が必然的に少量となり好ましくない一方で、細孔容積が大き過ぎると、一般に細孔径も細孔容積に比例して大きくなり、薬剤成分の放散速度が不必要に速まってしまうために好ましくなく、細孔容積が大きい状態のまま放散速度を抑えようとすると、担体外表面の細孔径を別途小さくするという非常に高価な手段を用いるしかなくなり、いずれによせ産業上好ましくない。さらには、シリカゲル骨格の強度が弱まり、物理的に強度の低い徐放薬剤となりその視点からもやはり好ましくない。また、比表面積の値は、通常100m2/g以上、中でも300m2/g以上、また、通常1500m2/g以下、中でも1000m2/g以下、更には900m2/g以下の範囲に存在することが好ましい。比表面積が小さ過ぎることに関しては、まずシリカゲルの細孔がほとんど封孔していることによって比表面積が小さい場合には、薬剤成分の担持量が極めて少量となり、好ましくない。また、シリカゲルの細孔径が非常に大きくて表面の平滑性が高く、比表面積が小さい場合には、薬剤成分の放散速度が不必要に速まってしまうために好ましくない。一方で、比表面積が大き過ぎると、担体表面上において、薬剤成分にとって好ましくない副反応が起こる確率が上がるためやはり好ましくない。これらの細孔容積及び比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
また、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、最頻細孔径Dmaxが35nm未満であることが好ましい。最頻細孔径Dmaxは、気体や液体の吸着や吸収に関する特性であり、最頻細孔径Dmaxが小さいほど吸着や吸収性能が高い。従って、種々の特性の中で最頻細孔径Dmaxは、特に触媒担体や薬剤担体,吸着剤として使用するシリカゲルにとって重要な物性である。本発明の徐放材用シリカゲル担体のより好ましい最頻細孔径Dmaxは、中でも20nm以下、更には18nm以下である。また、下限は特に制限されないが、通常は1nm以上である。
なお、上記の最頻細孔径Dmaxは、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線をプロットして求められる。ここで、細孔分布曲線とは、微分細孔容積、すなわち、細孔直径d(nm)に対する微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd))を言う。上記のVは、窒素ガス吸着容積を表す。
更に、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、上記の最頻細孔径Dmaxの値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常50%以上、中でも60%以上であることが好ましい。このことは、本発明の徐放材用シリカゲル担体が有する細孔の直径が、最頻細孔径Dmax付近の細孔で揃っていることを意味する。なお、上記の最頻細孔径Dmax±20%の範囲にある細孔の総容積について、特に上限は無いが、通常は全細孔の総容積の90%以下である。
かかる特徴に関連して、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、上記のBJH法により算出された最頻細孔径Dmaxにおける微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2ml/g以上、特に5ml/g以上、また、通常20ml/g以下、特に12ml/g以下の範囲であることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻細孔径Dmaxの付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
加えて、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことが好ましい。このことは、本発明の徐放材用シリカゲル担体をX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において結晶質であるシリカゲルとは、X線回折パターンで0.6nm(d-spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。結晶性構造を有するシリカゲルの例として、ミセルテンプレートシリカが挙げられる。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて、極めて生産性に優れている。
また、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、不純物の含有率が非常に低く、極めて高純度であることが好ましい。具体的には、シリカゲル中に存在することでその物性に影響を与えることが知られている、アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、中でも100ppm以下、更には50ppm以下、特に30ppm以下の範囲であることが好ましい。このように不純物の影響が少ないことが、本発明の徐放材用シリカゲル担体が高い耐熱性や耐水性などの優れた性質を発現できる大きな要因の一つである。なお、金属不純物の含有率は、後述する実施例で用いたICP発光分析法やフレーム炎光法に代表される、各種の元素分析法によって求めることができる。
更に、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、その構造に歪みが少ないことが好ましい。ここで、シリカゲルの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすことができる。以下、シリカゲルの構造的な歪みと、前記のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連について、詳しく説明する。
本発明の徐放材用シリカゲル担体は非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、・・と呼ばれる。
Figure 2005289941
本発明の徐放材用シリカゲル担体は、上記のQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(I)を満足することが好ましい。
−0.0705×Dmax−110.36>δ (I)
従来のシリカゲルでは、上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式(I)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる。よって、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、従来のシリカゲルに比べて、Q4ピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明の徐放材用シリカゲル担体において、Q4ピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
本発明の徐放材用シリカゲル担体において、Q4ピークのケミカルシフトδは、上記式(I)の左辺(−0.0705×Dmax−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ4ピークの最小値は−113ppmである。
本発明の徐放材用シリカゲル担体が有する、優れた耐熱性や耐水性と、上記の様な構造的歪みの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカゲルは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性が発現されるものと考えられる。なお、Q3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカゲルの構造的な歪みが現れにくい。
上記の特徴に関連して、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3の値が、通常1.3以上、中でも1.5以上であることが好ましい。ここで、Q4/Q3の値とは、上述したシリカゲルの繰り返し単位の中で、−OSiが3個結合したSi(Q3)に対する−OSiが4個結合したSi(Q4)のモル比を意味する。一般に、この値が高い程、シリカゲルの熱安定性が高いことが知られており、ここから、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、熱安定性に極めて優れていることが判る。これに対して、結晶性である前述のミセルテンプレートシリカは、Q4/Q3の値が1.3を下回ることが多く、耐熱性が低い。
なお、Q4ピークのケミカルシフト及びQ4/Q3の値は、実施例の説明において後述する方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
本発明の徐放材用シリカゲル担体は、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシドを加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する工程縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続きシリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法で製造することができる。
本発明の徐放材用シリカゲル担体の原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカゲルの原料として好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には30ppm以下、特に10ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカゲル中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2モル以上、好ましくは3モル以上、特に好ましくは4モル以上、また、通常20モル以下、好ましくは10モル以下、特に好ましくは8モル以下の水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
これらの溶媒を使用しない場合、本発明の徐放材用シリカゲル担体の製造のためには、特に加水分解の際の攪拌速度が重要である。すなわち、シリコンアルコキシドと加水分解用の水は初期には分液しているため、攪拌によりエマルジョン化し、反応を促進させる。この際の攪拌速度は通常30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。斯かる条件を満足しない場合には、本発明の徐放材用シリカゲル担体を得るのが困難になる。なお、加水分解によりアルコールが生成して液が均一液となり、発熱が収まった後には、均一なヒドロゲルを形成させるために攪拌を停止することが好ましい。
結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本発明においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、即ち、これらがテンプレートとしての機能を発揮する程の量は存在しない条件下で、加水分解を行なうことが好ましい。
反応時間は、反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸,アルカリ,塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、斯かる添加物の使用は、後述するように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明の徐放材用シリカゲル担体の製造においてはあまり好ましくない。
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明の徐放材用シリカゲル担体を製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを安定した熟成、あるいは乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲の徐放材用シリカゲル担体を製造することができない。
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、又は該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗,乾燥,放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段としては、ヒドロゲルの硬度を参考にすることができる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲の徐放材用シリカゲル担体を得ることができる。
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体の何れでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、また、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍以下の範囲の水を加えてスラリー状とし、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは10時間以下の範囲で実施される。水熱処理に使用される水には、低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、その他の有機溶媒などが含まれてもよい。また、シリカゲルを膜状あるいは層状に粒子、基板、あるいは管などの基体上に形成させた材料の場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理とでは通常、最適条件が異なっているため、この方法で本発明の徐放材用シリカゲル担体を得ることは一般的に難しい。
以上の水熱処理条件において温度を高くすると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。水熱処理温度としては、通常100℃以上、通常200℃以下の範囲であることが好ましい。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明の徐放材用シリカゲル担体を得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3の値が極端に小さくなったりする。
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001%以上、特に好ましくは0.005%以上、また、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下の範囲である。
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃以上、600℃以下で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため、最高900℃の温度で焼成することもある。
乾燥(又は焼成)後のシリカゲルを、必要に応じて公知の各種手法により粉砕及び/又は分級することで、本発明の徐放材用シリカゲル担体を得ることができる。なお、必要に応じて、粉砕及び/又は分級後のシリカゲルを公知の各種手法により成形(例えば、球状,錠剤状,押出品,ペレット品等の形状に成形)して、これを本発明の徐放材用シリカゲル担体として使用するのも好ましい。
本発明の徐放材用シリカゲル担体の形状は特に限定されず、粉末状、粒状、球状、微粉凝集体、微粉を用いた成形体等の各種の形状の中から、用途に応じて適宜選択することができる。上述の粉砕,分級,成形等の有無及び条件については、選択した形状に応じて適宜決定すればよい。
本発明の徐放材用シリカゲル担体は、従来のシリカゲル等と比較して、よりシャープな細孔分布を有するとともに、その細孔径をより精密に制御することが可能である。従って、徐放材用担体に使用する場合に、細孔内に担持させる各種薬剤(被担持成分)の分子サイズに応じて細孔径を精密に制御することができ、担持できる薬剤成分の種類やその分子の大きさに対する選択の幅が広い。また、細孔内に担持させる各種薬剤中の機能性分子の分子サイズに応じて細孔径を適切に制御することによって、安定した速度で被担持薬剤成分を放散させることが可能であり、放散速度を制御するために一般に使用されている添加物の使用量を減らすことができると期待される。加えて、細孔特性等の品質再現性が高いので、徐放量や徐放速度の振れ幅が非常に問題となる高機能徐放薬剤等の分野においても、安全性が高く品質が安定した徐放性製品を提供することが可能となる。
また、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、非常に高純度である上に、細孔壁が比較的厚く、シロキサン結合角の歪みが少ない均質で安定な構造を有するので、過酷な使用条件においても細孔特性等の物性変化が少ないという特徴を有する。従って、従来のシリカゲル等と比較して、耐熱性や耐水性等の各種物性に優れているともに、農薬などの長期にわたる使用条件下や、高分子材料への添加時における高温成形加工等の過酷な条件下で使用した場合、或いは、反応性が高く担体を劣化させ易い被担持薬剤成分等と使用した場合でも、これらの各種物性が安定して維持されるものと考えられる。また、非常に高純度であることから、被担持薬剤成分に対して不要な活性を示すことが無く、各種薬剤成分を安定に担持できるものと期待される。
更に、本発明の徐放材用シリカゲル担体は、同程度の細孔径を有する従来のシリカゲル等と比較して、比較的より高比表面積かつ高細孔容積という特徴を有するので、被担持薬剤成分の担持可能容量がより大きく、これらを多量に担持可能である上に、被担持薬剤成分の吸着能力がより優れている。これによって、被担持薬剤成分を長期にわたり安定して、経時的に徐々に放散することができると考えられる。加えて、非結晶性であるので、生産が容易であり価格も安く抑えられる。
なお、本発明において使用する担体の形状や大きさは特に制限されず、担体の種類や担持させる薬剤成分の種類、併用する容器の物性、目的とする徐放材の用途等によって適宜選択すればよい。上述のシリカゲル担体の場合を例によると、その形状は通常は粒子状であり、その粒経は通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、また、通常5cm以下、好ましくは3cm以下の範囲である。なお、非常に細かい粒径のものを用いる際には、通常他の部材と複合化させて使用することが操作上好ましい。
続いて、上述の担体に担持させる薬剤成分について説明する。薬剤成分の種類は特に制限されず、目的とする徐放材の用途に応じて適宜選択すればよい。例としては、芳香剤等の香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤、各種の医薬や生理活性物質等、種々の機能や作用を有する化学物質が挙げられる。
本発明の徐放材用シリカゲル担体に香料を担持して徐放性香料として使用する場合、その香料成分等は用途に応じて自由に選択することができる。具体例としては、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類;脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類;脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類;脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類;脂肪族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類;脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類;アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類;酸アマイド類、脂肪族ラクトン、環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系のカルボン酸族エステル;脂肪族環状カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類;ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物などの合成香料;動物、植物からの天然香料;天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料などを挙げることができる。これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を適宜併用してもよい。
香料成分をその官能性(機能)によって分類した場合、具体例としては、ペパーミント、プチグレイン、シトロネラ、スペアミント、ライム、マンダリンなどの気分をリフレッシュさせる香料、安息香酸、ゼラニウム、乳香、白檀、マジョラム、ラベンダー、ラバンディンなどのリラックスさせる香料、スィートオレンジ、ジャーマンカモマイル、ローマンカモマイル、リンデンなどの心地よい眠りを誘う香料、フェンネル、カルダモン、クラリーセージ、ブラックペッパー、ジュニパー、パーチュリー、ヒソップ、メリッサ、没薬、コリアンダー、アンジエリカルート、スターアニス、タラゴン、サッサフラスなどの強壮・活力あふれる気分にさせる香料、イランイラン、ビターオレンジ、ジャスミン、ダマクローズ、チャイナローズ、べチバー、チュベローズ、バイオレットリーフ、アーモンドビター、バニラ、バルサムなどの気分を高めムードづくりに役立つ香料、バジル、ローズマリー、ローレルなどの集中力向上に役立つ香料、サイプレス、カンファー、ベルガモット、ユーカリ、ローズウッド、ニアウリ、シダーリーフ、シナモンリーフなどのエアーフレッシュ効果を有する香料、更にカラマスルート、オリスルート、グリーンハーブ、フローラルなどの香料が挙げられる。
また、本発明の徐放材用シリカゲル担体に抗菌剤を担持して徐放性抗菌剤として使用する場合、その抗菌成分等は用途に応じて自由に選択することができる。具体例としては、例えばヒバオイル、月桃オイル、ペニーロイヤル、レモングラス、レモン、スパイスクラベンダー、ナツメグ、オレガノ、セージ、ジンジャー、セーボリー、タイム、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリル、オールスパイス、シダーウッド、シナモンバーク、クローブバッズ、カユブテ、パイン、ティートゥリー、カプサイシン、スクワレン、スクワラン、アーモンドオイル、ノニルフェノールスルホン酸銅、ジネブ、アンゼブ、チウラム、ポリオキシン、シクロヘキシミド、ヒアルロン酸化合物等である。
上記以外の薬剤の例としては、例えば、農薬用殺虫剤としてのサリチオン、マラソン、ジメトエート、ダイアジノン、ジエチルアミド、2−エチルチオメチルフェニルメチルカルバメート、チオリン酸、2−メチル−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸等があり、除草剤としてはクロメトキシニル、二トラリン、3−(3,3−ジメチルウレイド)フェニルーターシャリーブチルカルバメート等があり、害虫忌避剤・防虫剤としてはエンペントリン等のピレスロイド系化合物、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳、N,N−ジエチル−m−トルアミド等があり、肥料としては尿素、硫安、硝安等のアンモニア化合物、過燐酸石灰、重過燐酸石灰等のリン化合物、カリを含む化合物等がある。更に、医薬や生理活性物質としては、吸入によって肺や粘膜を経由して作用するもの、経皮吸収によって作用するものが好適に用いられる。
上述の各種薬剤成分が本発明の徐放材用シリカゲル担体に担持されている状態としては、固体状でも液体状でも良く、また、水や溶媒・分散媒等に溶解又は分散した溶液状・分散液状などの何れの状態であっても良い。更に、これらの薬剤成分は、水溶性であっても油溶性であっても良い。
これらの薬剤成分の徐放材用シリカゲル担体への担持方法には特に制限はなく、任意の方法を用いることができる。担持方法の例としては以下のものが挙げられる。これらの方法は単独に用いても良く、適宜に組み合わせて用いても良い。
i)担持させる薬剤成分を容器に密封し、加熱して機能性分子をガス化させ、本発明の徐放材用シリカゲル担体をこのガス中に晒して、その細孔中に薬剤成分の機能性分子を吸着させる方法。
ii)薬剤成分を加熱して溶融させ、その溶融液中に本発明の徐放材用シリカゲル担体を浸漬して薬剤成分を含浸させる方法。
iii)薬剤成分を溶媒に溶解し、その溶液に本発明の徐放材用シリカゲル担体を浸漬して細孔内に薬剤成分を含浸させ、その後溶媒を蒸発させる方法。
iv)その他、本発明の徐放材用シリカゲル担体と薬剤成分とを適当な量比で混合した後にその混合物を薬剤成分の融点以上に加熱する方法、薬剤成分の原料物質を本発明の徐放材用シリカゲル担体の細孔中に含浸させた後に、加熱等により細孔中で薬剤成分を合成する方法等。
以上のような含浸処理の後、更に、本発明の徐放材用シリカゲル担体の表面を高分子膜やデキストリンや各種樹脂、シリケート等で覆うことにより、薬剤成分の放出速度が一層遅くなるように調節することもできる。一方、以上のプロセスにより製造した徐放剤における薬剤成分の濃度が高すぎる場合には、これを粘土やシリカゲル等の安価な粉体やバインダで増量してから後述する容器に収納し、本発明の徐放材とすることも良い。
更には、従来より徐放剤の材料として用いられている各種高分子樹脂材料と併用してもよい。具体的に、例えば高分子樹脂材料中に薬剤成分を分散させた形態の徐放剤へ応用する際には、先述の高分子樹脂材料(又はその溶液)に、薬剤成分とともに本発明のシリカゲルよりなる薬剤担体を分散させ、これをスプレードライ等の従来公知の方法によって微粒子化することで、徐放剤を得ることができる。この際、本発明のシリカゲルよりなる担体は、その特性や徐放剤調製時の条件によって高分子樹脂材料(又はその溶液)中に均一に分散させることができるので、安定した品質の徐放剤を得ることが可能となる。
こうして調製した徐放剤を、さらに、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器(本明細書ではこれを適宜「薬剤成分透過・浸透性容器」又は単に「容器」という。)に包有させることによって、本発明の徐放材とすることが出来る。
薬剤成分透過・浸透性容器としては、何らかの手段で薬剤成分を透過又は浸透させ得るものであれば、その種類は特に制限されない。例としては、薬剤成分が少なくとも透過・浸透できる空孔が一箇所以上開いている容器や、薬剤成分が浸透・拡散により容器の外部へと到達し得る容器などが、好適に用いられる。
容器が空孔を有する場合、個々の空孔の大きさは通常、通過させる薬剤成分の大きさ(ファンデルワールス半径)の2倍以上、好ましくは5倍以上、また、通常2m2以下、好ましくは1m2以下の範囲である。空孔の数についても、容器あたり一個以上の空孔を有していることが必要条件であるが、特に制限されない。また、空孔は容器の全面に設けてもよく、一部のみに設けても良い。但し、空孔が徐放剤又はその担体を通過させ得る大きさである場合には、少なくとも容器から徐放剤や担体がこぼれ出るような位置に空孔を設けるのは好ましくない。また、本発明の徐放材中における全空孔面積についても、用途等や薬剤成分の種類に応じて適宜設計すれば良く、こちらについても特には制限されない。容器の素材としては、樹脂、紙、木材、金属、セラミックス等が挙げられる。中でも樹脂、ガラスや素焼き等のセラミックスが好ましい。樹脂の具体例としては、天然ゴム、セルロース、絹、羊毛等の天然高分子や、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、ナイロン等の人工高分子が挙げられる。中でも人工高分子が好ましく、光硬化性のもの等も好ましく用いられる。これらの素材は一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
また、容器の形態も制限されず、目的とする徐放材の用途等に応じて適宜適切な値を選択すればよいが、代表的なものとしては以下の(i)〜(iii)の形態が挙げられる。
(i)筒状、箱状、又は袋状等の形状(これらを総称して「中空状」というものとする。)であって、その内部に徐放剤を包有したもの。
(ii)薄膜、板、フィルム等の形状(これらを総称して「シート状」というものとする。)であって、その上に徐放剤を展伸したものを何層かに積層したり、シートごと何重かに折り畳んだり巻いたりしたもの(積層したものを「積層体」、折り曲げたものを「折畳物」、巻いたものを「巻回物」というものとする。)。
(iii)薬剤成分に対して透過性又は浸透性を示す樹脂からなる成形体であって、その中に徐放剤を練り込んで分散させたもの。成形体の形状は任意であるが、例としては、方体、多面体、多角柱体、円柱体等の固体状;筒状、箱状、袋状等の中空状;薄膜、板、フィルム等のシート状などが挙げられる。シート状の場合には、積層体、折畳物、巻回物等の形態で用いても良い。
また、薬剤成分が浸透・拡散し得る容器としては、徐放材の使用条件下においてその一部又は全部が液体又は無定形固体の状態(分子が運動可能な状態)にある容器が挙げられる。
具体的な態様としては、例えば、天然ゴム、セルロース、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、ナイロン、シリコン樹脂等の無定形の樹脂や、各種ゲル状物質を用いて容器を形成すればよい。また、例えば加温することなどによって分子が運動可能な状態になる素材を用いて容器を形成することも好ましい。これらの素材は、容器の全面に用いてもよく、一部のみに設けてもよい。また、容器の形状も特に制限されず、上述した各種の形状とすることができる。
また、別の態様として、その一部が外部に開放された入れ物(これを外装容器と呼ぶ。)に液体を溜置したものを容器として、その液体内に徐放剤を入れて使用するという態様も挙げられる。液体の種類としては、薬剤成分と好ましくない反応を引き起こすものでない限り、特に制限されるものではなく、使用する薬剤成分の種類や、目的とする徐放材の用途・性能等に応じて、適切な液体を選択すればよい。代表的な例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ドデカン、テトラデカンなどの炭化水素化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル化合物、アセトン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル化合物、酢酸エチル、フタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル等のエステル類、酢酸等のカルボン酸類、無水酢酸等の酸無水物類、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物類、トリエチルアミン等のアミン類、ピリジン、ピロリジン等のその他の含N化合物類、シメチルスルホキシドなどの含S化合物類、シリコーンオイル、各種ワックス系として使用される物質等に代表される有機溶媒、イオン性液体等の無機溶媒などが挙げられる。また、外装容器の素材や形状等も特に制限されない。具体的に、外装容器の素材としては、併用する薬剤成分や液体との間で好ましくない反応を引き起こさない限りにおいて、適切な素材を選択すればよい。代表的な例としては、ガラスに代表されるセラミックスやステンレス鋼に代表される金属等の無機材、テフロン(登録商標)類、天然ゴム、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、ナイロン等の有機材が挙げられる。外装容器の形状は、薬剤成分の放散性能に影響を及ぼす場合がある(例えば、開放部が大きいほど、放散速度が速くなる傾向がある。)ので、目的とする徐放材の用途・性能等に応じて、適切な形状を選択すればよい。
こうして作製された本発明の徐放材の使用形態は特に限定されず、その目的に応じて、そのままの状態で、又は、他の徐放材の使用方法に倣い適宜な形状にさらなる成形加工を施されたり、通気・通水性の容器にさらに封入されたりして、適宜使用される。
また、放散速度を制御する目的から、放散時の温度を制御したり、本発明の徐放材近傍の雰囲気(大気中での使用の場合は空気、水中での使用の場合はその水などを指す)の対流・循環の程度を制御することも好ましい。
以上説明した本発明の徐放材は、担体に担持された薬剤成分を徐放し得る徐放剤を、さらに、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器に包有させることによって、徐放性能を正確に制御することが可能となる。具体的には、使用する容器の形状、空孔の個数、個々の空孔の大きさ、容器内における徐放剤の所在位置から空孔までの距離等を精密に設計することによって、薬剤成分の放散速度や期間等を綿密に制御することが出来る。例えば、容器が有する空孔を大きくしたり、容器が有する空孔の数を増やしたり、容器に対する全空孔面積を拡げたり、容器内における徐放剤の所在位置から空孔までの距離を小さくしたりすることによって、薬剤成分の徐放速度を速めることが出来る一方で、これらのパラメータを逆に調整することによって、薬剤成分の放散速度を遅くすることが可能である。また、同量の薬剤成分を用いた場合でも、放散速度を遅くすれば、放散期間を長くすることができる。更には、同じ放散速度であっても、温度を低く維持したり、担持容量の大きな担体(例えば、細孔容量の大きなシリカゲル等)を用いて多量の薬剤成分を担持させることによって、放散期間を長くすることができる。
更に、先述した利点を有する徐放材用シリカゲル担体を用い、その細孔内に各種薬剤成分を被担持成分として担持させた徐放剤を用いることにより、従来のシリカゲル等の徐放材シリカゲル担体を用いた従来の徐放剤・徐放材と比較して、その一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器に入れる以前でも、被担持成分の放散速度や放散期間、徐放量の経時的変化等の各種徐放性能をより正確に制御することができる。さらには、上述のように綿密に設計された容器に収納することで、さらなる放散速度や放散期間を精密に制御することが可能となる。また、従来の徐放剤・徐放材と比較して、より多くの被担持成分を徐放材用シリカゲル担体に担持させることができるとともに、薬剤成分の被担持成分の変性や劣化が少ないので、長期にわたり安定した徐放効果が得られるものと考えられる。
以上列挙した各種の利点を有することから、本発明の徐放材は、芳香剤等の香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤、各種の医薬や生理活性物質等、種々の機能や作用を有する化学物質を利用する様々な産業分野に供与、好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において、以下の実施例に制限されること無く、任意に変形して実施することができる。
(1)徐放材用シリカゲル担体の分析方法:
(1−1)細孔容積、比表面積:
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻細孔径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
(1−2)粉末X線回折:
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行なった。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
(1−3)金属不純物の含有量:
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
(1−4)固体Si−NMR測定:
Bruker社製固体NMR装置(「MSL300」)を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、CP/MAS(Cross Polarization / Magic Angle Spinning)プローブの条件で測定した。具体的な測定条件を下の表1に示す。
Figure 2005289941
測定データの解析(Q4ピーク位置の決定)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解析を行なう。この解析には、サーモガラテック(Thermogalatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」を使用することができる。
(2)徐放材用シリカゲル担体の製造及び評価:
・実施例1〜4:
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。100rpmで撹拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。実施例1については、このまま120℃×6Hr真空乾燥を行ない、実施例2以降のものについては、このシリカヒドロゲル450gと純水450gを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、実施例2については140℃×3Hr、実施例3については160℃×3Hr、実施例4については200℃×3Hrの条件で、それぞれ水熱処理を実施した。所定時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、得られたシリカゲルを水洗することなく150℃で恒量となるまで真空乾燥した。乾燥後、いずれも平均粒径200μmの粉体のシリカゲルを得た。これらをそれぞれ実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体とする。
得られた実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体の諸物性を表2に示す。何れのシリカゲルにおいても、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められない。なお、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体の不純物金属含有率は、何れについても、ナトリウム0.3ppm以下、カリウム0.2ppm以下、カルシウム0.3ppm以下であり、チタン、アルミニウムをはじめその他の金属は検出されなかった。
・参考例1,2:
富士シリシア化学(株)製のシリカゲルCARIACT G−3を参考例1の徐放材用シリカゲル担体として、同CARIACT G−6を参考例2の徐放材用シリカゲル担体として用いた。それらの諸物性を下の表2に示す。粉末X線回折図によれば、参考例1及び2の何れのシリカゲルについても、周期的構造による低角度側のピークは認められない。また、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値δは、参考例1及び2の何れのシリカゲルも、実施例1〜4のいずれの徐放材用シリカゲル担体より大きく、且つ前述した式(I)の左辺{−0.0705×(Dmax)−110.36}より計算される値より大きな値(よりプラス側に存在する値)となった。すなわち、参考例のシリカゲルは、実施例の本発明の徐放材用シリカゲル担体と比べてその構造に歪みが多く、物性変化を受け易いものと判断される。
・徐放材用シリカゲル担体の水中熱安定性試験:
実施例並びに参考例のシリカゲルに、各々純水を加えて40重量%のスラリーを調製した。容積60mlのステンレススチール製のミクロボンベに、上記で調製したスラリー約40mlを入れて密封し、280±1℃のオイルバス中に3日間浸漬した。ミクロボンベからスラリーの一部を抜出し、5A濾紙で濾過した。濾滓は100℃で5時間真空乾燥した。この試料について比表面積を測定した結果を表2及び表3に示す。実施例の徐放材用シリカゲル担体は、参考例のシリカゲルに比べて、比表面積の減少が少なく、水熱安定性に優れていた。
Figure 2005289941
表2の結果から、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体は、参考例1及び2に代表される従来のシリカゲルと比較して、よりシャープで制御された細孔分布を有していることが分かる。従って、徐放材用シリカゲル担体として使用した場合に、細孔内に担持させた薬剤成分の所望される放散速度に応じて細孔径を適切に制御することによって、薬剤成分を安定した任意の速度で徐放させることが可能であると考えられる。
また、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体は、参考例1及び2に代表される従来の徐放材用シリカゲル担体と比較して、金属不純物が少なく遥かに高純度であるとともに、シロキサン結合角の歪みが少ない均質で安定な構造を有していることから、反応性が低く、耐熱性や耐水性等に優れており、且つ、過酷な使用条件においても細孔特性等の物性変化が少ないことが分かる。従って、徐放材用シリカゲル担体として使用した場合に、被担持薬剤成分に対して不要な活性を示すことが無く、安定に担持できるとともに、変性や劣化が生じ難いものと考えられる。
従って、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体は、薬剤成分を被担持成分として担持させて徐放材として使用した場合に、参考例1及び2に代表される従来のシリカゲルを用いて作成した徐放材と比較して、より優れた徐放性能を得ることができるものと推測される。
なお、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体は粉砕された破砕状の粒子として得られたが、公知の成形技術により他の形状(例えば球状,錠剤状,押出品,ペレット品等)に成形しても良い。
[3]徐放剤の製造:
実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体は、各種薬剤成分を担持させることにより、薬剤成分を貯留すると共に経時的に徐々に放出させる徐放剤として使用することができる。被担持時の状態、担持させる手法については、上に詳述した通りである。さらに、その徐放剤を薬剤成分透過・浸透性容器に入れて使用することで、より精密に徐放挙動を制御可能にした徐放材として好適に使用することができる。
具体例として、実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体に、イソチオシアン酸アリルを含浸させて、徐放剤を作製した。
まず、実施例1の徐放材用シリカゲル担体3.0gにイソチオシアン酸アリル1.3g(イソチオシアン酸アリルの常温での比重d=1.013を用いて、総細孔容積の100%分に相当する量を算出した。)を添加して転動し、イソチオシアン酸アリル担持シリカゲルを得た(これを実施例1の徐放剤とする。)。得られた徐放剤におけるイソチオシアン酸アリルの含浸率は31.5重量%であった。
以下、同様にして、他の実施例2〜4の徐放材用シリカゲル担体についても、イソチオシアン酸アリルを含浸させて、徐放剤を作製した(これらをそれぞれ実施例2〜4の徐放剤とする)。なお、各徐放剤におけるイソチオシアン酸アリルの含浸量は、特記せぬ限り総細孔容積の100%分となるようにして製造した。
また、上述の参考例2のシリカゲルにも、同様の手順でイソチオシアン酸アリルを含浸させて、徐放剤を作製した(これを参考例2の徐放剤とする)。イソチオシアン酸アリルの含浸量は、やはりシリカゲルの総細孔容積の100%分となるようにして製造した。
更に比較例として、ポリエステル繊維を担体として用い、繊維3.0gに対してイソチオシアン酸アリル2.6gを染込ませたものも作製した(これを比較例1の徐放剤とする)。
[4]徐放性能評価等:
製造した徐放剤・徐放材の各種性能は、例えば以下の手法により評価することができる。
<薬剤成分担持量評価>
担持される薬剤成分が有機物である場合には、担持前後の重量増分が目安となる他、熱重量分析法による重量減分を担持量の目安とする方法、担持された薬剤成分を溶媒等で抽出し、滴定法、吸光光度法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、赤外吸収分光法、NMR等の手段で定量する方法、担持された薬剤成分を担持状態のまま滴定法、全炭素量分析法、各種分光分析法等により定量する方法などがある。
<徐放性能評価>
薬剤成分が液体への溶出により徐放される系の簡易な評価法としては、薬剤成分を担持した徐放剤をガラスカラム等に充填し、一定速度で水等の溶媒(実際の使用条件に類似した溶媒の種類、温度、pH等の条件を道宜選択する)を流通させ、溶出してくる薬剤成分の濃度を全炭素量分析法、滴定法、吸光光度法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、赤外吸収分光法、NMR等の方法で経時的に追跡する方法や、薬剤成分を担持した徐放剤・徐放材をガラスビーカーやフラスコ中にて実際の使用条件に類似した環境の溶媒中に浸漬し、一定温度に保持して、溶媒中に溶出してくる薬剤成分の濃度を上記分析法にて経時的に追跡する方法などがある。
薬剤成分が揮発により徐放される系においては、徐放剤の経時的な重量減を追跡する方法が最も簡便である他、上記の方法に準じる方法として、徐放剤・徐放材を液体の代わりに空気などの気体と接触させ、揮発した薬剤成分を含む気体を経時的にサンプリングして、その気体における薬剤成分の含有量をガスクロマトグラフィー等により分析する方法などがある。
これら徐放剤・徐放材に担持される薬剤成分の種類や使用形態は様々であるので、簡易評価が難しい場合には、徐放剤・徐放材を実際の使用条件に供し、その徐放性能の評価を各用途における実使用効果として直接観察する方法(人の鼻や口による官能評価、人の脳波の測定等によるリラクゼーション効果等の確認・評価、殺菌・抗菌・防カビ・防虫性能の持続性評価、消臭効果の持続性評価、農薬・肥料・消毒・除草剤・動物忌避剤・誘引効果の確認と持続性評価)等を行なっても良い。これらの各種評価方法は、評価の目的や評価対象の徐放剤・徐放材の種別に応じて適宜選択される。
実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体を用いて製造した徐放剤・徐放材は、先述したような利点を有しているので、有効成分の放散速度や放散期間、放散量の経時的変化等の各種徐放性能について評価を行なった場合に、従来の徐放剤・徐放材、例えば参考例1及び2のシリカゲルを用いた徐放剤・徐放材と比較して、より制御された正確な徐放性能が得られると共に、その機能が長期にわたって安定して得られる。
以下に、各実施例及び各参考例のシリカゲルを用いて製造した徐放剤・徐放材の性能を、その重量減によって追跡した実験の結果を示す。なお、何れの実験も空気中、25℃の条件下で行なった。
・徐放材用シリカゲル担体種の影響:
実施例1〜4の徐放材用シリカゲル担体、参考例2のシリカゲル、並びにポリエステル繊維を用いて作製した徐放剤(実施例1〜4,参考例2及び比較例1の徐放剤)について、各々徐放剤(実施例1は4.0g、実施例2は5.6g、実施例3は6.5g、実施例4は7.3g、参考例2は5.7g、比較例1は5.6g)を底面直径55mm、高さ29mmの円筒形容器に収容し、上面のみを開放系とした徐放材を調製し、その徐放材の大気中における徐放性能を重量減少によって測定した。担持したイソチオシアン酸アリル減少曲線を図1に示す。
図1から、細孔径の大きさによって、薬剤の放散速度と放散期間を制御することが出来ることがわかる。
・収容容器種の影響:
更に、実施例2〜4の徐放剤(実施例2は5.4g、実施例3は6.2g、実施例4は6.9g)を底面直径55mm、高さ29mmの円筒形容器に収容し、上面のみを開放系とした徐放材(これらを各々実施例2a〜4aの徐放材とする)、同じく実施例2〜4の徐放剤(実施例2は5.4g、実施例3は6.2g、実施例4は6.9g)を底面直径24mm、高さ25mmの円筒形容器に収容し、上面のみを開放系とした徐放材(これらを各々実施例2b〜4bの徐放材とする)、さらに、同じく実施例2〜4の徐放剤(実施例2は5.4g、実施例3は6.2g、実施例4は6.9g)を底面直径16mm、高さ40mmの円筒形容器に収容し、上面のみを開放系とした徐放材(これらを各々実施例2c〜4cの徐放材とする)を調製し、その徐放材の大気中における徐放性能を重量減少によって測定した。各々について担持したイソチオシアン酸アリルの初期状態からの減少曲線を図2(2a・2b・2cの比較)、図3(3a・3b・3cの比較)、図4(4a・4b・4cの比較)に示す。
これらの結果から、日間による室内の湿度や風量の誤差をはるかに凌いで、徐放剤を収容する容器の設計によって、薬剤の放散速度と放散期間を制御することが出来ることがわかる。
従って、徐放材用シリカゲル担体の種類(細孔径等)の綿密な設計と、収容容器の綿密な設計との組み合わせによる相乗効果によって、非常に精密な薬剤徐放性能を得ることが可能であることがわかる。
<分解性評価>
分解性に富むイソチオシアン酸アリルのシリカゲル表面における分解挙動を、GC−MS(日本電子製JMS−700型質量分析装置、GC:HP6890型、カラム:J&W製DB−1、カラム温度:35℃〜300℃まで15℃/分で昇温、注入口温度:280℃、スプリット比:1/20、イオン化電圧:70eV、イオン化電流:300μA、イオン化温度:200℃、試料量:気相部;0.2mL,ジクロロメタン抽出相;1.0μL)を用いたTIC(総イオンクロマトグラム)による分解物同定法並びに人の鼻による官能試験によって調べた。
シリカゲルとしては、実施例1の徐放材用シリカゲル担体及び参考例1のシリカゲルを用いた。各々のシリカゲル0.2gに、イソチオシアン酸アリル0.04gを添加して転動し、分解試験に供するための各徐放剤を得た(これらを以下、それぞれ実施例A及び参考例Aの徐放剤とする)。得られた実施例A及び参考例Aの徐放剤をそれぞれ2ccのGCバイアルに仕込み、更にステンレス製ミクロボンベに内蔵し、80℃にて30時間にわたって密閉系で加熱することにより、分解試験を行なった。
30時間後に取り出してみたところ、実施例A及び参考例Aの徐放剤ともに黄色に変色していた。バイアル中の気相部についてGC−MS分析を行なったところ、実施例A及び参考例Aのいずれの気相部からもCO2、SO2、COS、CS2が検出され、その量には両者で優位差がなかった。下記表3として、分解試験後における気相部のGC−MS分析結果を示す。
Figure 2005289941
しかしながら、黄色に変色した徐放剤にジクロロメタンを2.5mL注入して残存するイソチオシアン酸アリルを抽出し、得られた抽出液についてGC−MS分析を行なったところ、参考例Aの徐放剤は、イソチオシアン酸アリルの残量が極めて少なく、実施例Aの徐放剤に残っていた量の半分以下であった。下記表4として、分解試験後における各徐放剤のジクロロメタン抽出液のGC−MS分析結果を示す。
Figure 2005289941
また、分解試験後の気相部に関する匂いの官能試験を複数の人間に対して実施したところ、100%の人間がいずれの場合も原料の匂いとは異なるものになっていると答え、また、70%近くの人が、実施例Aの徐放剤に比べて参考例Aの徐放剤の方が、より不快な臭いへの変質度合いが高いと回答した。
これらの分解性評価試験の結果は、徐放剤用の担体として従来のシリカゲルを用いた場合(参考例Aの徐放剤)よりも、本発明の徐放材剤シリカゲルを用いた場合(実施例Aの徐放剤)の方が、被担持物であるイソチオシアン酸アリルの分解を抑え、長期にわたって安定して使用できる徐放剤を提供できる可能性を十分に示唆している。
本発明の徐放材は、従来の徐放材用担体と比較して、生産が容易且つ安価であり、被担持薬剤成分の種類や被担持成分分子の大きさに対する選択の幅が広く、より多量の被担持薬剤成分が担持可能である上に、純度が高いので担持する薬剤分への悪影響が少なく、加えて、耐水性や耐熱性に優れており、しかも細孔特性等の各種物性が長期間にわたって安定して維持されるように設計された徐放材用シリカゲル担体を使用し、その細孔内に各種薬剤成分の被担持成分を担持させているので、従来の徐放剤・徐放材と比較して、その一部分が薬剤成分を透過あるいは浸透させるように設計された容器に入れる以前でも被担持成分の放散速度や放散期間、徐放量の経時的変化等の各種徐放性能をより正確に制御することができる。さらには綿密に設計された容器に収容して使用することで、さらなる放散速度や放散期間を精密に制御することが可能となる。
従って、本発明は各種薬剤成分について正確な徐放性能が要求される分野、例えば、芳香剤等の香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤、各種の医薬や生理活性物質等、種々の機能や作用を有する化学物質を利用する様々な産業分野に好適に用いることができ、産業上の利用可能性は極めて高い。
実施例1〜4,参考例2及び比較例1の徐放剤を用いて作成した徐放材について測定したイソチオシアン酸アリル減少曲線である。 実施例2a〜2cの徐放材について測定したイソチオシアン酸アリル減少曲線である。 実施例3a〜3cの徐放材について測定したイソチオシアン酸アリル減少曲線である。 実施例4a〜4cの徐放材について測定したイソチオシアン酸アリル減少曲線である。

Claims (9)

  1. 担体に担持された薬剤成分を徐放し得る徐放剤と、
    該徐放剤を包有し、少なくともその一部分が薬剤成分を透過又は浸透させ得る容器とを備えた
    ことを特徴とする徐放材。
  2. 該容器が、その少なくとも一部に該薬剤成分に対して透過性又は浸透性を示す部位を有する、中空状の容器である
    ことを特徴とする、請求項1記載の徐放材。
  3. 該容器が、その少なくとも一部に該薬剤成分に対して透過性又は浸透性を示す部位を有する、シート状の積層体、巻回物、又は折畳物である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の徐放材。
  4. 該容器の少なくとも一部が、該薬剤成分に対して透過性又は浸透性を示す樹脂からなる成形体であるとともに、
    該徐放剤が、該成形体に分散されてなる
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の徐放材。
  5. 該担体がシリカゲルである
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の徐放材。
  6. 該シリカゲルについて、
    (a)細孔容積が0.05ml/g以上、3.0ml/g以下であり、
    (b)比表面積が100m2/g以上、1500m2/g以下であり、
    (c)最頻細孔径(Dmax)が35nm未満であり、
    (d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上であり、
    (e)非晶質であり、
    (f)金属不純物の総含有率が500ppm以下であり、且つ、
    (g)固体Si−NMRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(I)を満足する
    −0.0705×(Dmax)−110.36>δ (I)
    ことを特徴とする、請求項5記載の徐放材。
  7. 該シリカゲルの最頻細孔径(Dmax)における微分細孔容積が、2ml/g以上、20ml/g以下である
    ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の徐放材。
  8. 該シリカゲルの固体Si−NMR測定におけるQ4/Q3ピークの値が、1.3以上である
    ことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の徐放材。
  9. 該シリカゲルがシリコンアルコキシドを加水分解する工程を経て製造されたものである
    ことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の徐放材。

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