JP2005287309A - 遺伝子導入を増強するための薬剤および方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はトランスフェクションにおける遺伝子導入を増強するための薬剤および方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、トランスフェクションにおける遺伝子導入効率を高めるオリゴペプチドを提供する。また本発明は、該オリゴペプチドおよびトランスフェクション試薬を含むトランスフェクション組成物を提供する。また本発明は、該オリゴペプチド、核酸、およびトランスフェクション試薬を含む混合物を細胞に接触させる工程を含むトランスフェクションの方法を提供する。また本発明は、該オリゴペプチドおよびトランスフェクション試薬を含むトランスフェクションキットを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、遺伝子導入効率を上昇させるための薬剤および方法等に関する。本発明の薬剤は、核酸を細胞に導入し目的遺伝子を効率良く発現させるために有用である。
バイオテクノロジーの発達に伴って、核酸を細胞に効率的に導入する手段の必要性が高まっている。特に近年、遺伝子治療やアンチセンス医薬等の技術の進歩に伴って、特定の遺伝子を標的組織の細胞内に効率良く導入するための方法の開発が盛んに行われている(Smith, L.C. & Nordstrom, J.L. Curr Opin Mol Ther. 2(2), 150-4 (2000), Lundstrom, K. Trends Biotechnol. 21(3), 117-22 (2003), Sandrin, V. et al., Curr Top Microbiol Immunol. 281, 137-78 (2003), Bitzer, M. et al., J Gene Med. 5(7), 543-53 (2003))。現在、細胞中に遺伝子を導入する方法としては、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などの化学的・物理的手段を用いる導入方法、およびウイルスベクターを利用する生物学的方法が用いられている。それらの中でも、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、リポソームなどの薬剤を用いた遺伝子導入は、操作が簡単で安全性に優れ、比較的細胞毒性も低いことから多用されている。しかしながら、これらの方法は一般に遺伝子の導入効率が低くいという欠点がある。
Smith, L.C. & Nordstrom, J.L. Curr Opin Mol Ther. 2(2), 150-4 (2000) Lundstrom, K. Trends Biotechnol. 21(3), 117-22 (2003) Sandrin, V. et al., Curr Top Microbiol Immunol. 281, 137-78 (2003) Bitzer, M. et al., J Gene Med. 5(7), 543-53 (2003)
本発明は、遺伝子導入効率を上昇させるための薬剤および方法を提供する。本発明において提供される薬剤および方法は、所望の核酸を細胞に導入し目的遺伝子を効率良く発現するために有用である。
本発明者らは、トランスフェクションの効率を上昇させる新たな薬剤を検索した結果、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を含むオリゴペプチドが、トランスフェクションによる遺伝子発現効率を著しく向上させることを見出した。通常のトランスフェクション法では、遺伝子発現効率の低さが問題になっているが、このオリゴペプチドを用いることにより、遺伝子発現効率を上昇させ、in vitroでの遺伝子発現だけでなく、遺伝子治療等in vivoでの遺伝子発現効率を上昇させることが可能となる。
すなわち本発明は、遺伝子導入効率を上昇させるための薬剤および方法等に関し、より具体的には、請求項の各項に記載の発明に関する。なお同一の請求項を引用する請求項に記載の発明の1つまたは複数の組み合わせからなる発明は、それらの請求項に記載の発現に既に意図されている。すなわち本発明は、
〔1〕配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、トランスフェクション増強剤、
〔2〕オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、〔1〕に記載のトランスフェクション増強剤、
〔3〕遺伝子導入キットであって、配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチド、およびトランスフェクション試薬、を含むキット、
〔4〕オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、〔3〕に記載のキット、
〔5〕ウイルスゲノムと結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに含む、〔3〕または〔4〕に記載のキット、
〔6〕ウイルス蛋白質がアデノウイルスのコア蛋白質VIIである、〔5〕に記載のキット、
〔7〕核酸をさらに含む、〔3〕から〔6〕のいずれかに記載のキット、
〔8〕トランスフェクション試薬がカチオン性脂質である、〔3〕から〔7〕のいずれかに記載のキット、
〔9〕遺伝子導入細胞の製造方法であって、(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチド、(b)核酸、および(c)トランスフェクション試薬、を含む混合物を細胞に接触させる工程、を含む方法、
〔10〕該混合物が、ウイルスゲノムと直接結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに含む、〔9〕に記載の方法、
〔11〕ウイルス蛋白質がアデノウイルスのコア蛋白質VIIである、〔10〕に記載の方法、
〔12〕オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の方法、
〔13〕トランスフェクション試薬がカチオン性脂質である、〔9〕から〔12〕のいずれかに記載の方法、に関する。
また本発明においてトランスフェクションとは、核酸を細胞内に導入することを意味する。「トランスフェクト」および「トランスフェクション」という語句は、核酸の導入の方法、導入される核酸の形態、または細胞内へ取り込まれるメカニズムを限定するものではない。
本発明は、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を含むオリゴペプチドを含む、トランスフェクションによる遺伝子導入増強剤を提供する。このオリゴペプチドを用いることにより、トランスフェクションによる遺伝子導入の効率を向上させることが可能である。本発明における遺伝子導入は、(a)該オリゴペプチド、(b)核酸、および(c)所望のトランスフェクション試薬、を含む混合物を、標的とする真核細胞に接触させる工程、により実施することができる。混合の順序は任意であってよいが、好ましくは、トランスフェクション試薬を核酸溶液に混合する前に、まずオリゴペプチドと核酸とを混合し、両者の複合体を形成させ、その後トランスフェクション試薬を混合し、三者の複合体を形成させた後、これを細胞に接触させることが好ましい。しかし、あらかじめ該オリゴペプチドをトランスフェクション試薬に結合しておき、これを核酸に混合するようにすれば、操作を簡略化することも可能である。本発明の方法は、一過的 (トランジェント) な核酸の導入、および恒常的 (constitutive) または安定 (stable) な核酸の導入において適用することができる。
上記複合体と細胞との接触は、細胞をこの複合体と共にインキュベートする(例えば in vitroまたはex vivoで)か、あるいは複合体を生物に注入する(in vivoで)ことにより実施することができる。インキュベーションは、体外(in vitroまたはex vivo)で行う場合であれば、例えば細胞106 個当たり核酸 1 pg〜1000μg、好ましくは10 pg〜100μg、より好ましくは0.1 ng〜100μgの存在下に実施するとよい。In vivo投与では、例えば0.01〜10 mgの核酸を使用することができる。
本発明においてオリゴペプチドとは40残基以内の鎖長からなるポリペプチドである。本発明のオリゴペプチドは、配列番号:7のアミノ酸配列を含む40残基以内の所望のオリゴペプチドであってよいが、好ましくは配列番号:7のアミノ酸配列を含む、30残基以内、より好ましくは25残基以内、より好ましくは23残基以内、22残基以内、21残基以内、または20残基以内のオリゴペプチドである。特に、配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドは好ましい。配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドの片方または両方の末端には、数個(例えば1、2、3、または4個)のアミノ酸を付加してもよい。また、オリゴペプチドはジスルフィド結合を含有させてもよい。また、鎖状ペプチド、環状ペプチド、または枝分かれペプチドであってもよい。また、オリゴペプチド修飾されていてもよく、例えばリン酸化ペプチド (Ser(PO3H2)、Thr(PO3H2)、Tyr(PO3H2)誘導体)、ホスホノペプチド (リン酸化ペプチドのカルバ型誘導体) (Ser(PO3H2)、Thr(PO3H2)、Tyr(PO3H2)に対応するホスファターゼ抵抗性誘導体)、硫酸化ペプチド (Tyr(SO3H))、アミノ基修飾誘導体(Acetyl化、Succinyl化、Biotinyl化、Boc化、Z化、Dnp化、Dns化、Myristoyl化など種々の修飾)、チオール基修飾誘導体(Farnesyl化、Geranyl化、Biotinyl化など)、糖ペプチド [Asn(GlcNAc)、Ser(GalNAc)、Thr(GalNAc)含有ペプチドなど]、非天然アミノ酸含有ペプチドを含んでもよい。また、ペプチド結合の修飾、アミノ酸誘導体、保護ペプチドを含んでもよい。これらの化学修飾された任意の配列からなるオリゴペプチドは、商業的に入手可能である(例えば株式会社ペプチド研究所, Osaka, Japan)。
オリゴペプチドと核酸との混合は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは0〜28℃、例えば室温で行い、1分から24時間、例えば3分から8時間、好ましくは5分から30分静置させるとよい。オリゴペプチドは、1 pg〜1000μg、好ましくは10 pg〜100μg、より好ましくは0.1 ng〜100μg程度用いるとよい。
混合の比率は、好ましくは、核酸に対してオリゴペプチドを重量比で0.1から50、好ましくは 0.2から10、より好ましくは0.5から10、より好ましくは1から10、より好ましくは2から8にするとよい。トランスフェクション試薬は、その種類に応じて核酸の量に対して適した比率を混合すればよく、例えば核酸 1μg に対して、0.1から300 nmol、好ましくは 0.1から200 nmol、より好ましくは1から100 nmol、より好ましくは1から 50 nmol で混合するとよい。
上記のオリゴペプチドを用いることにより、該オリゴペプチドなしでトランスフェクションを行った場合に比べ、遺伝子導入効率は統計学的に有意(例えば有意水準 p<0.05)に上昇する。遺伝子導入効率の上昇は、該オリゴペプチドなしの場合と比べ、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8倍以上、より好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上、より好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上である。ここで遺伝子導入とは、核酸を細胞内に導入することを意味する。また遺伝子導入とは、該核酸が導入された細胞内でその核酸の作用を発揮することであってもよい。例えば発現単位(プロモーターおよびその下流に連結された遺伝子)を含む核酸を遺伝子導入することにより、該発現単位にコードされる遺伝子が細胞内で発現(転写、翻訳、またはその両方)する。また遺伝子導入効率とは、細胞への核酸の導入の効率を言い、例えば全細胞中のトランスフェクションされた細胞の割合、細胞集団における核酸の取り込み量、または全細胞集団における導入遺伝子の発現レベルである。該遺伝子が細胞内で発現される場合は、好ましくは、全細胞集団における導入遺伝子の発現レベルである。発現レベルは、例えばトランスフェクションの24時間後に測定する。細胞集団における導入遺伝子の発現レベルは、細胞試料を調製し、全細胞蛋白質 1 mg相当の細胞抽出物当りの該核酸の発現量を測定する。発現量は、mRNAレベル、蛋白質レベル、または該蛋白質の活性レベルにより決定することができる。
また本発明のオリゴペプチドを用いたトランスフェクションにおいては、ウイルスゲノムと結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに用いることが好ましい。すなわち、(a) 配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチド、(b) 核酸、(c) 該ウイルス蛋白質またはその機能的同等物、および (d) トランスフェクション試薬、を含む混合物を細胞に接触させる。混合物の調製は、好ましくは (a) 該ウイルス蛋白質または機能的同等物と核酸とを混合する工程、(b) (a)の混合物に該オリゴペプチドをさらに混合する工程、(c) (b)の混合物にトランスフェクション試薬をさらに混合する工程を含む方法により行う。得られた混合物を真核細胞に接触させる工程により、該細胞に核酸を導入することができる。ウイルスゲノムと結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物の混合の比率は、好ましくは、核酸 1μg に対して、1から500 nmol、好ましくは 1から200 nmol、より好ましくは1から50 nmol、より好ましくは1から10 nmol で混合するとよい。
また、該オリゴペプチドと該ウイルス蛋白質またはその機能的同等物とは、予め混合しておいてもよい。両者を含む複合体を形成させておき、これに核酸およびトランスフェクション試薬を混合し、トランスフェクションを行ってもよい。
上記ウイルス蛋白質は、ウイルス粒子においてウイルスゲノムと直接結合している蛋白質を言い、好ましくは、ウイルスが感染後、細胞内に取り込まれる蛋白質である。さらに好ましくは、トランスフェクションにおいて使用されるウイルス蛋白質は、該蛋白質が由来するウイルスにおいて、ウイルスが感染後、ウイルスゲノムと共に細胞内に取り込まれるウイルス蛋白質である。このような蛋白質は、本発明のトランスフェクションにおいて、核酸が細胞内に取り込まれた後でも該核酸と結合している。細胞内での結合は、実施例に記載したように、標識した核酸と蛋白質の細胞内局在を検出することにより知ることができる。また本発明において用いられるウイルス蛋白質は、好ましくは、感染後に、核もしくは核膜に存在(細胞質にも存在してよい)する蛋白質である。
ウイルス蛋白質としては、好ましくはアデノウイルスコア蛋白VII(adenovirus core protein VII)が用いられる。アデノウイルスのゲノムDNA(約36,000 bp)は、ウイルス粒子の中で塩基性蛋白質であるコア蛋白VII(core protein VII:Genbank Accession No. BK000408, DAA00649), コア蛋白V(core protein V:Accession No. BK000408, DAA00650)及びコア蛋白μ(core protein μ:Accession No. BK000408, DAA00651)とともに凝集されており、クロマチン様の構造をとっている。コア蛋白VIIは分子量19kDaの主要なDNA結合蛋白質であり、僅かではあるがhistone H3(Accession No. M26150)およびsperm basic protein(Accession No. M60331, M60332)とのアミノ酸配列の類似性を有している(Sung, M.T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80, 2902-2906 (1983))。コア蛋白Vは、コア蛋白VIIとDNAとの複合体の外殻を形成し、コア蛋白VIIよりは緩くDNAと結合している(Chatterjee, P.K. et al., J. Mol. Biol. 188, 23-37 (1986), Fedor M.J. & Daniell, E., J. Virol. 47, 370-375 (1983))。コア蛋白μは、19アミノ酸の小さい塩基性の強いペプチドで、アデノウイルスDNAの凝集に関与していると考えられている(Anderson, C.W. et al., Virology 172, 506-512 (1989), Keller, M. et al., Biochemistry 41, 652-659 (2002))。
アデノウイルス粒子は細胞に感染後、細胞質において段階的にコートが外されていく。アデノウイルスゲノムとコア蛋白との複合体はカプシド蛋白(capsid protein:Accession No. BK000408, DAA00653)とともに細胞膜から細胞質側核膜へ移行し、その時カプシド蛋白が核膜上のNuclear Pore Complex (NPC) に結合し(Greber, U.F., Rev. Med. Virol. 8, 213-222 (1998))、NPCを介して核へ移行する(Trotman, L.C. et al., Nat. Cell Biol. 3, 1092-1100 (2001))。カプシド蛋白解離後、核移行中に或いは核移行後直ぐに、コア蛋白Vもアデノウイルスゲノムから解離するが、コア蛋白VIIは感染初期の間は常に、アデノウイルスゲノムとの結合を維持している(Chatterjee, P.K. et al., EMBO J. 5, 1633-1644 (1986), Matthews, D.A. & Russell, W.C., J. Gen. Virol. 79, 1671-1675 (1998))。このアデノウイルスゲノムとコア蛋白VIIとの複合体(以下、アデノコアと略す)は、アデノウイルスの初期遺伝子の転写のための及び初回複製のための、真の鋳型(template)になり得る構造である。
アデノウイルスの初期遺伝子の発現に関与するホスト側の因子として、Template Activating Factor (TAF) が同定されている。TAFにはTAF-I/SET(Matsumoto, K. et al., J. Biol. Chem. 268, 10582-10587 (1993), Nagata, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 4279-4283 (1995), Okuwaki, M. et al., J. Mol. Biol. 311, 41-55 (2001))、TAF-II/NAP-I(Kawase, H. et al., Genes Cells 1, 1045-1056 (1996), Okuwaki, M. et al., FEBS Lett. 506, 272-276 (2001))、TAF-III/nucleophosmin/B23(Okuwaki, M. et al., FEBS Lett. 506, 272-276 (2001))の3種類が知られている。TAF-Iはアデノコアに結合し、nucleaseの感受性を上昇するため(Okuwaki, M. & Nagata, K. J. Biol. Chem. 273, 34511-34518 (1998))、DNA、コア蛋白及びTAF-Iの三重複合体を形成することによって、アデノコアを改造(remodeling)し、転写・複製のためのmachineryがDNAに接近し易いようにしているものと考えられている。アデノコアの構成成分であるコア蛋白VIIを、本発明のオリゴペプチドと併用することで、遺伝子導入試薬による遺伝子導入効率を有意に上昇させることが可能である。
コア蛋白質VIIが由来するアデノウイルスの血清型または株は特に制限されず、所望の型のアデノウイルスの蛋白質VIIを用いることができる。またウイルスの宿主に制限はなく、所望の宿主に感染するウイルス由来の蛋白質VIIを用いることができる。具体的には、例えば Human adenovirus type 5(例えばAccession No. BK000408, DAA00649)、Human adenovirus type 2(例えばAccession No. BK000407, DAA00606)、Human adenovirus type 11(例えばAccession No. BK001453, DAA01654)、Human adenovirus type 11 strain Slobitski(例えばAccession No. AF532578, AAP49207)、Human adenovirus type 12(例えばAccession No. BK000405, DAA00558)、Human adenovirus type 35 strain Holden(例えばAccession No. AY128640, AAN17482)、Human adenovirus B(例えばAccession No. NC_004001, NP_852697)、Human adenovirus B strain 35p(例えばAccession No. AY271307, AAP92347)、Human adenovirus E(例えばAccession No. NC_003266, NP_478406)、Human adenovirus F(例えばAccession No. NC_001454, NP_040858)、Human adenovirus type 4(例えばAccession No. U70921, AAC83411)、Mastadenovirus(例えばAccession No. M73811, AAA75346)などのコア蛋白質VII(major core proteinとも呼ばれる)を好適に用いることができる。これらの蛋白質は、前駆体および成熟体のどちらでも用いることができるが、好ましくは成熟蛋白質またはその断片が用いられる。
また上記のウイルス蛋白質と機能的に同等の蛋白質を用いて、トランスフェクションを行うこともできる。機能的に同等の蛋白質とは、上記のウイルス蛋白質のアミノ酸配列と有意なホモロジーを示す蛋白質であって、核酸と結合する活性を有し、該核酸の細胞へのトランスフェクションによる遺伝子導入を増強する能力を持つ蛋白質のことを言う。例えば機能的に同等の蛋白質は、上記のウイルス蛋白質のアミノ酸配列とホモロジーを示す蛋白質であって、核酸と結合する活性を有し、トランスフェクションにおいて該核酸からの遺伝子発現を増強する能力を持つ蛋白質であってよい。このような蛋白質は、上記のウイルス蛋白質の天然型のアミノ酸配列を適宜改変して作製することができる。また、機能的の同等の蛋白質は、天然のウイルス蛋白質の核酸結合断片、あるいは他の蛋白質またはペプチド断片が付加された融合蛋白質であってもよい。機能的に同等の蛋白質は、好ましくは成熟コア蛋白質VII全長のアミノ酸鎖(例えば配列番号:6)の連続した70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を含む蛋白質である。また部分断片は、一般に、蛋白質VII中に存在する塩基性アミノ酸に富む領域を有している。具体的には、10アミノ酸の領域に5つ以上、好ましくは6つ以上の塩基性アミノ酸(特にLysおよび/またはArg)を含む領域を有する。他の蛋白質またはペプチド断片が付加された蛋白質としては、実施例に記載したような、Hisタグまたは他のペプチドタグが付加された蛋白質等が挙げられる。また、機能的に同等の蛋白質としては、具体的には野生型蛋白質のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、および/または付加したアミノ酸配列を含む蛋白質、野生型蛋白質のアミノ酸配列(例えば配列番号:6)と70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ配列を含む蛋白質、ならびに野生型遺伝子のコード領域(例えば配列番号:5)の一部または全部を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸がコードする蛋白質であって、トランスフェクション効率を促進する活性を保持している所望の蛋白質を用いることができる。変異の導入は、公知の変異導入方法に従って実施することができる。例えば目的の変異を入れたオリゴヌクレオチドを用いて変異蛋白質をコードする核酸を構築することが可能である。
アミノ酸の置換、欠失、および/または付加においては、改変されるアミノ酸数は、通常50以内、好ましくは40以内、30以内、好ましくは25以内、より好ましくは20以内、より好ましくは15以内、より好ましくは10以内、より好ましくは8以内、より好ましくは5以内である。特にアミノ酸を保存的に置換した蛋白質は活性が維持されやすい。保存的置換は、例えば塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸 (例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸 (例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸 (例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸 (例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族アミノ酸 (例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などの各グループ内のアミノ酸間の置換などが挙げられる。アミノ酸配列の同一性は、例えばBLASTPプログラム(Altschul, S. F. et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410)を用いて決定することができる。例えばNCBI(National Center for Biothchnology Information)のBLASTのウェブページにおいてLow complexityを含むフィルターは全てOFFにして、デフォルトのパラメータを用いて検索を行う(Altschul, S.F. et al. (1993) Nature Genet. 3:266-272; Madden, T.L. et al. (1996) Meth. Enzymol. 266:131-141; Altschul, S.F. et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Zhang, J. & Madden, T.L. (1997) Genome Res. 7:649-656)。パラメータの設定は、例えばopen gapのコストは11、extend gapのコストは1、wordsizeは2、Dropoff (X) for blast extensions in bitsは7、X dropoff value for gapped alignment (in bits)は15、final X dropoff value for gapped alignment (in bits)は25にする。スコアのためのマトリックスとしてBLOSUM62を用いる。例えば2つの配列の比較を行うblast2sequencesプログラム(Tatiana A et al. (1999) FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)により、2配列のアライメントを作成し、配列の同一性を決定することができる。ギャップはミスマッチと同様に扱い、野生型蛋白質のアミノ酸配列全体(例えば配列番号:6の全長)に対する同一性の値を計算する。アライメントにおける野生型蛋白質の外側のギャップは無視して同一性の値を計算すればよい。また、ハイブリダイゼーションにおいては、野生型蛋白質のコード配列(例えば配列番号:5)を含む核酸、またはハイブリダイズの対象とする核酸のどちらかからプローブを調製し、それが他方の核酸にハイブリダイズするかを検出することにより同定することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、例えば 5xSSC (1×SSC は 150 mM NaCl, 15 mM sodium citrateを含む)、7%(W/V) SDS、100μg/ml 変性サケ精子DNA、5xデンハルト液(1xデンハルト溶液は0.2%ポリビニールピロリドン、0.2%牛血清アルブミン、および0.2%フィコールを含む)を含む溶液中、48℃、好ましくは50℃、より好ましくは52℃でハイブリダイゼーションを行い、その後ハイブリダイゼーションと同じ温度、より好ましくは60℃、さらにこの好ましくは65℃、最も好ましくは68℃で2xSSC中、好ましくは1xSSC中、より好ましくは0.5xSSC中、より好ましくは0.1xSSC中で、振蘯しながら2時間洗浄する条件である。
上記のウイルス蛋白質、および本発明のオリゴペプチドは、薬学的に許容される担体と共に適宜組成物とすることができる。このような組成物は、トランスフェクションによる遺伝子導入増強剤として有用な試薬および医薬となる。また、該ウイルス蛋白質および/またはオリゴペプチドを有効成分として含む遺伝子導入増強組成物は、後述のトランスフェクションキットの要素となる。担体としては、例えばリン酸緩衝液、生理食塩水、蒸留水、培養液、血清等が挙げられるが、それらに限定されない。また、適当な塩と共に凍結乾燥物としてもよい。また本発明のオリゴペプチドは、トランスフェクション増強剤、トランスフェクション併用剤、またはトランスフェクション補助剤としても有用である。
また、本発明において使用される上記ウイルス蛋白質および/またはオリゴペプチドは、単離または精製されていることが好ましい。ポリペプチドの精製度は、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して決定することができる。本発明の遺伝子導入増強剤は、好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーにおいて、該ポリペプチドが試料中のポリペプチドの中で最も強いバンドまたはピークとして検出される。該ポリペプチドは、試料中に存在する全ポリペプチドに対する割合 (重量/重量) が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上である。より好ましくは90%以上である。ポリペプチドは合成ポリペプチドまたは組み換えポリペプチドであることが好ましい。合成ポリペプチドとは、化学合成により合成されたポリペプチドであり、組み換えポリペプチドとは、該ポリペプチドを発現する核酸を内因的に有さない細胞に、該ポリペプチドを発現する組み換え核酸を導入して生産されたポリペプチドである。なお「ポリペプチド」とは、特定の鎖長のものを限定する意図はなく、ペプチド、オリゴペプチド、蛋白質も含む。また組み換え核酸とは、遺伝子組み換え技術により作製された核酸であり、両端の鎖が自然の状態と同じように配置されていない核酸および自然界にない合成配列を含む核酸が含まれる。
また、上記ウイルス蛋白質は、他のウイルス蛋白質(特に同種のウイルスのウイルス蛋白質)またはその断片が実質的に含まれていないことが好ましい。また、上記ウイルス蛋白質は、全ウイルスまたは全ウイルス溶解物(特に同種のウイルスの)から分離されていることが好ましい。他のウイルス蛋白質が実質的に含まれていない蛋白質とは、目的の蛋白質が、それ以外の所望の1つのウイルス蛋白質に比べ、重量比で5倍以上、好ましくは6倍以上、好ましくは7倍以上、好ましくは10倍以上、好ましくは20倍以上で含まれていることを言う。例えば、アデノウイルス蛋白質VIIを用いる場合は、アデノウイルスの他の蛋白質(例えばアデノウイルスのコアに含まれないウイルス蛋白質、例えばウイルス性核酸ポリメラーゼまたはその断片、ウイルス外殻蛋白質など)を含まなくてよい。
トランスフェクション試薬としては、核酸の細胞への導入を媒介する所望の化合物または組成物が用いられる。好ましくはリン脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール結合脂質、カチオンポリマー、およびデンドリマーなどが挙げられる。これらの試薬はリポソーム系、非リポソーム系の試薬が含まれる。また、トランスフェクション試薬は、天然または合成化合物であってよい。例えば、HVJリポソームなどのウイルス由来リポソーム等もトランスフェクション試薬として用いることができる。
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、レシチン(卵黄レシチンまたは大豆レシチンなど)、リゾレシチン等の天然リン脂質、またはそれらの修飾物(例えば水素添加物)が挙げられる。リン脂質の疎水性部分を構成するアシル基の種類については特に限定されず、例えばラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基等のアシル基が挙げられる。
カチオン性脂質とは、分子内に正電荷を有する原子団を有する脂質である。より具体的には、カチオン性脂質は、1つ以上、典型的には2つ以上の脂肪酸鎖と正電荷を有する基から構成された分子であってよい。正電荷の原子団としては四級アンモニウム基またはコリン基等が挙げられる。カチオン性脂質は、例えばドデシル(C12)またはヘキサデシル(セチル、C16)脂肪酸鎖を有してよいが、それらに限定されない。またカチオン性脂質は、一価カチオン性脂質または多価カチオン性脂質であってよい。具体的なカチオン性脂質としては、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド (DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン (DOTAP)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド (DMRIE)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド (DDAB)、ジオクタデシルジアンモニウムブロミド (DODAB)、ジオクタデシルジアンモニウムクロリド (DODAC)、1-[2-(オレオイルオキシ)-エチル]-2-オレオイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド (DOIC)、ジオレオイルホスファチジルコリン (DOPC)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウムブロミド (DLRIE) などが挙げられる。さらに、リポスペルミン、特に、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[スペルミンカルボキシアミドエチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸 (DOSPA)、1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド (DOSPER) も好適に用いられる。また、ジおよびテトラ-アルキル-テトラ-メチルスペルミン、例えば テトラメチルテトラパルミトイルスペルミン (TMTPS)、テトラメチルテトラオレイルスペルミン (TMTOS)、テトラメチルテトララウリルスペルミン (TMTLS)、テトラメチルテトラミリスチルスペルミン (TMTMS) およびテトラメチルジオレイルスペルミン (TMDOS) 等も挙げられるがそれらに限定されない。
また、その他のリポポリアミン(例えばジオクタデシルアミドグリシルスペルミン (DOGS)、3β[N-n',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール (DC-Chol)、パルミトイルホスファチジルエタノールアミン-5-カルボキシスペルミルアミド (DPPES)、並びに、WO96/17823およびWO97/18185に開示されているリポポリアミンなどであってもよい (Behr, J.P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1989, 86(18):6982-6986)。また、アミジニウム基を含む脂質(例えば特許出願WO97/31935の脂質)を用いることもできる。
また、トランスフェクション試薬として他のポリカチオンを用いてもよい。このような例としては、WO98/54130およびWO99/51581を例示できる。さらに、他の適用なカチオンポリマーとしては、ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、ポリエチレンイミン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(4-ビニル-N-アルキルピリジニウムハライド)、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、プトレシン、ヘキサメチレンテトラミン、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド (AMBTAC)、3-アクリルアミド-3-メチルブチルトリメチルアンモニウムクロリド (AMBTAC) などが挙げられる (Barton et al., Comprehensive Organic Chemistry, Vol. 2, Pergamon Press, p.90; Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd ed., Wiley Interscience, Vol.11, p.489; Mahler & Cordes, Biological Chemistry,Harper International Edition, p.124)。
ポリエチレングリコール (PEG) 結合脂質としては、製薬学的に許容され、PEG鎖を有する脂質であればよいが、脂質としては天然または合成リン脂質、PEG鎖としてはPEGの平均分子量が1000〜12000ダルトン (Da) 程度のものが好ましい。PEGにより細胞との相互作用が上昇し、核酸導入効率の向上が期待できる。PEG結合脂質としては、PEG2000-ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンなどを例示できる。
また、トランスフェクション試薬としては、天然または人工リポソームを用いてもよい。例えば、ウイルスリポソーム、人工膜リポソーム、ウイルス破砕物から再構成させたリポソーム等であってよい。例えば、エンベロープウイルスを不活化したり、または破砕してリポソームを再構成させることができる。一例を挙げれば、HVJ (Hemmaggulutinating Virus of Japan)-リポソームなど、マイナス鎖RNAウイルスから作られるリポソームが挙げられる。ウイルスの不活化は、例えばUV照射により行うことができる。またリポソームは、例えば振盪および超音波により調製することができる(「ライフサイエンスにおけるリポソーム/実験マニュアル」シュプリンガー・フェアラーク東京 (1992) pp.282〜287参照)。また不活性化したセンダイウイルス粒子、またはリポソーム及び核酸を混合した組成物(膜融合リポソーム)の製造が知られている(金田安史:BIOTHERAPY,8,1265(1994))。あるいは破砕ウイルスの再構成は、例えば、ウイルス可溶化物からリポソームを再構成させ、いわゆるビロソーム(virosome)を調製することにより実施できる(Bagai et al., 1993, Biochem. Biophys. Acta 1152, 15-25)。具体的には、ウイルスを Triton X-100 などの界面活性剤で可溶化した後、不溶性のゲノム-蛋白質複合体を遠心除去する。エンベロープおよびエンベロープ蛋白質を含む可溶化液から界面活性剤を除くことにより粒子を再構成させ、ビロソームを調製することができる。ビロソームは粒子径を均一化するために、遠心分離(例えば12000rpm, 10分)により粒子サイズが揃ったビロソームを分離して回収することができる。これらを本発明におけるトランスフェクション試薬として用いることができる。
デンドリマーとは、3つ以上、典型的には5以上の分子枝を持つカチオン性の樹状分枝を有する分子を言い、典型的にはカチオン性スターバーストポリマーが挙げられる。これらは層状の球形成長によりアンモニウムコアまたはエチレンジアミンコアから派生する球形ポリマーであってよい。典型的なデンドリマーは、コアから放射状に結合する反復単位が層状の構造をとっており、この層はジェネレーション (generation) とも呼ばれる (D.A.Tomaliaおよび H.D.Durst(1993)E.Weber ed., Topics in Current Chemistry,vol. 165, Supramolecular Chemistry I-Directed Synthesis and Molecular Recognition,Sprlnger-Verlag,Berlin,193-313)。デンドリマーのサイズ、形態、および表面電荷密度は、コア、反復単位、ジェネレーション数、および表面の官能基によって調節される(US5,527,524、US5,338,532、US4,694,064、US4,568,737、US4,507,466、およびWO88/01179、WO88/01178、WO95/24221、WO95/012397、WO96/22321、WO96/31549、US5,266,106 参照)。反復単位は、好ましくはアミドアミンである。またジェネレーション数は、例えば3〜20(G3〜G20)、好ましくは5〜15(G5〜G15)、より好ましくは5〜10(G5〜G10)である。デンドリマー表面は、リジンまたはアルギニンのようなカチオン性アミノ酸が付加されていてもよい。あるいは、グラフト化デンドリマーを用いることもできる。具体的なデンドリマーとしては分枝状ポリアミンが挙げられ、例えば Poly(amidoamine) (PAMAM)、より具体的には STARBURST (登録商標)(Dendritech,Inc.)、SUPERFECT (登録商標)(QIAGEN)などが挙げられる(J.F.Kukowska-Latolla et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 4897-4902; A. Bielinska et al., 1996, Nucleic Acids Res. 24: 2176-2182; J. Haensler & R. Szoka, 1993, Bioconjugate Chem. 4: 372-379; M.X. Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem. 7P 703-714)。デンドリマーを用いたトランスフェクションについては、WO95/2422l、WO93/19768、およびWO95/02397を参照することができる。DNA:デンドリマーの荷電比は、1:5〜1:50の間であることが好ましい (J.F.Kukowska-Latollaら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 93:4897-4902)。
トランスフェクション試薬は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。好ましくは、1種以上のカチオン性脂質が用いられる。例えば、カチオン性脂質は、必要に応じて他の脂質、特に中性脂質(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン (DPhPE)、またはコレステロールなど)と組み合わされてよい。DOSPAおよびDOPEの3:1 (w/w) 混合物またはDOTMEおよびDOPEの1:1 (w/w) 混合物を含むカチオン性脂質組成物は、一般的に本発明のトランスフェクション組成物として有用である。また、カチオン性脂質と中性脂質との混合物からなるトランスフェクション試薬としては、例えばGeneFECTOR (登録商標) およびMultiFECTOR (登録商標)(VennNova Inc.) が例示できる。
トランスフェクションに用いられる核酸は、任意のポリヌクレオチドであってよく、デオキシリボ核酸 (DNA)、リボ核酸 (RNA)、またはそれらのハイブリッドであってよい。また核酸は修飾されていてもよく、ホスホロチオエート誘導体、ホスフォロジチオエート誘導体、またはメチルホスホネート誘導体、およびペプチド核酸(PNA)が含まれる。また核酸は、1本鎖、2本鎖、または3本鎖などであってよい。また、核酸は環状であっても直鎖状であってもよい。核酸はオリゴ核酸であってもよく、長鎖の核酸であってもよい。具体的に例示すれば、核酸はcDNA、ゲノムDNA、オリゴDNA、アンチセンス核酸(Drug Delivery System,10,91-97,1995)、デコイ(The Journal of Biological Chemistry,267,12403-12406,1994)、siRNA、リボザイム(The Drug Delivery System,10,91-97,1995)、三重鎖DNA(細胞工学、13巻、No.4、277-285、1994)、プラスミド(Methods Enzymology,221,317-327,1993)、RNAベクター等であってよい。好ましくは、核酸は1本鎖または2本鎖のDNAまたはRNAである。最も好ましくは2本鎖DNAである。核酸としては、好ましくは天然または組み換えウイルスゲノムを構成し得る核酸(全長ウイルスゲノム核酸等)以外の核酸が用いられる。また鎖長は例えば10塩基以上、好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは30塩基以上、さらに好ましくは50塩基以上、さらに好ましくは100塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上、より好ましくは800塩基以上、より好ましくは900塩基以上、より好ましくは1000塩基以上、より好ましくは2000塩基以上、より好ましくは3000塩基以上である。好ましい態様の1つでは、DNAは転写単位を有する。転写単位とは、プロモーターを有しており、その下流に所望の遺伝子が連結されている核酸のことである。該遺伝子の下流には、好ましくはポリアデニレーションシグナルが結合している。このようなDNAは、例えばプラスミドであってよい。プラスミドは環状でもよく、あるいは切断して直鎖化してもよい。プロモーターとしては、ウイルス由来または真核細胞由来のプロモーターを用いることができ、例えばポリオーマウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルスまたはシミアンウイルス40に由来するプロモーターを使用することができる。あるいは、特定の細胞型において転写活性を持つプロモーター(組織特異的転写調節配列を含むプロモーター)を使用することもできる。このようなプロモーターは、当業者には周知である。
核酸が、本発明のオリゴペプチドと上記ウイルス蛋白質と共に複合体を形成することで、細胞内に導入された時に、該核酸が核内において転写に適した活性化状態に維持されると考えられる。また該複合体は、核酸の核への移行を促進し、該核酸からの遺伝子発現を促進すると考えられる。本発明のオリゴペプチドと上記ウイルス蛋白質を用いたトランスフェクションは、所望の発現ベクターを細胞に導入する時に、該ベクターからの目的遺伝子の発現効率を上昇させるために特に有用である。すなわち本発明は、本発明のオリゴペプチドおよび/または上記ウイルス蛋白質またはそれと機能的に同等な蛋白質を含む、トランスフェクションにおける導入遺伝子の発現効率を上昇させる薬剤にも関する。
遺伝子としては、蛋白質をコードしても、しなくてもよい。例えば、疾患に対して治療または予防効果を持つ蛋白質をコードする所望の遺伝子を用いることができる。このような蛋白質は、投与対象が有する内因的遺伝子であってもよく、あるいは治療効果を有する外来遺伝子であってもよい。蛋白質をコードしない核酸としては、アンチセンス、リボザイム、siRNA等をコードする核酸が挙げられる。蛋白質としては、所望の構造蛋白質または調節蛋白質、酵素などが挙げられ、それらにはサイトカイン、ホルモン、受容体、受容体断片、抗体、抗体断片、各種のシグナル分子などが含まれる。また、所望の抗原蛋白質をコードする核酸を用いることで、該抗原に対する免疫を誘導するために用いることができる。
また本発明は、本発明のオリゴペプチドおよびトランスフェクション試薬を含むトランスフェクション組成物に関する。該組成物は、ウイルスゲノムと結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに含んでよい。また該組成物は核酸をさらに含んでもよい。本発明のトランスフェクション組成物は、必要に応じて薬学的に許容される担体または媒体と適宜組み合わせることができる。「薬学的に許容される担体または媒体」とは、細胞への導入であるトランスフェクションを有意に阻害しない材料である。このような担体または媒体としては、例えば滅菌水、生理食塩水、培養液、血清、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられ、これらを適宜組み合わせて製剤化することが考えられる。また本発明の遺伝子導入増強剤およびトランスフェクション組成物は、脱イオン水、デキストロース水溶液等の担体または媒体を含んでいてもよい。また、安定化剤(例えばコレステロール等のステロール類)を含んでいてもよい。また、抗酸化剤(例えばトコフェロールまたはビタミンEなど)を含んでいてもよい。さらに、その他にも、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。また保存剤やその他の添加剤を添加することができる。また、ワクチンとして用いるためには、免疫反応を増強するためのアジュバントをさらに含んでもよい。本発明の組成物は、水溶液、カプセル、懸濁液、シロップなどの形態であり得る。また本発明の組成物は溶液、凍結乾燥物、またはエアロゾルの形態の組成物であってよい。凍結乾燥物の場合は安定化剤としてソルビトール、シュークロース、アミノ酸及び各種蛋白質等を含んでいてもよい。本組成物は試薬として、および医薬として有用である。個体に投与されるトランスフェクション薬剤の投与量は、投与方法および投与部位、個体の年齢、体重および疾患状態などに応じて適宜調整し得る。
また本発明は、本発明のトランスフェクション組成物の遺伝子導入における使用に関する。本発明のトランスフェクション組成物は、特に真核生物細胞、より詳細には、高等真核生物細胞(動物細胞を含む)のトランスフェクションに適用され得る。例えば初代培養細胞または樹立細胞系に核酸を導入するために使用することができる。このような細胞としては、例えば動物細胞、具体的には、繊維芽細胞、筋細胞、神経細胞(ニューロン、星状細胞、グリア細胞)、肝細胞、造血系細胞(リンパ球、CD34陽性細部、樹状細胞等)、上皮細胞、多分化能を持つ細胞、特に造血幹細胞、および胚性幹(ES)細胞等が挙げられる。核酸のトランスフェクションは、インビトロ、エクスビボ、またはエクスビボで行われる。本発明の方法は、有用な遺伝子産物を発現するトランスフェクトされた細胞を産生するために用いられ得る。また本発明の方法は、トランスジェニック動物の作製の工程として使用され得る。本発明の方法は、遺伝子治療、ウイルス防御、ならびにアンチセンス、アンチジーン核酸、siRNA、リボザイム、もしくはデコイなどの細胞への導入の方法を含む、細胞への核酸の導入を必要とする任意の治療方法における工程として有用である。これらの方法は、インビボおよびエクスビボ遺伝子治療における癌処置、ならびに診断方法においても有用である。また、本発明のトランスフェクション組成物は、真核生物細胞の任意のトランスフェクションにおける研究試薬として利用され得る。またトランスフェクション組成物は、治療適用および診断適用され得る。
本発明のトランスフェクション組成物を投与する場合は、該組成物は、局所、皮膚、経口、経腸、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、眼内、経皮、気管内、腹腔内等の経路で、インビボおよびエクスビボで投与するように調剤することができる。例えば、本発明の組成物は所望臓器に直接注射するための注射用製剤または局所投与用として医薬的に許容される担体を含んでよい。このような担体としては、生理食塩水などの等張滅菌溶液、滅菌水、血清等が挙げられる。また、溶解により注射剤として調整可能な乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物としてもよい。投与に使用する核酸の用量および投与回数は、投与方法、疾患、投与遺伝子、または治療期間等のパラメーターに応じて適宜調整され得る。投与方法については、特に組織(例えば腫瘍などを含む)または循環経路への直接注射や、体外に取り出した細胞にトランスフェクション後に、その細胞を移植するex vivo投与が挙げられる。投与対象となる組織は特に制限はないが、例えば筋肉、皮膚、結合組織等が挙げられる。投与対象としては特に制限はないが、例えば、ニワトリ、ウズラ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ネコ、ウシ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、サル、およびヒトなどを含む鳥類、哺乳動物、およびその他の脊椎動物が挙げられる。
また本発明は、本発明のオリゴペプチドおよびトランスフェクション試薬を含む、トランスフェクションキットに関する。本発明のキットには、ウイルスゲノムと直接結合するウイルス蛋白質またはそれと機能的に同様な蛋白質をさらに含んでもよい。また本発明のキットは、核酸をさらに含んでもよい。キットに含まれる各成分は、包装された処方物として、例えば、各成分が容器等の隔離のためのデバイスの中に提供される包装処方物として提供することができる。さらに、包装処方物は、細胞への核酸の導入においてトランスフェクション組成物を使用するための使用説明書を含むことができる。1つの態様において、キットは、本発明のオリゴペプチドおよびカチオン性脂質を含む。また、カチオン性脂質を含むトランスフェクションキットは、必要に応じて、中性脂質、他のトランスフェクション試薬、他の遺伝子発現増強薬剤、または添加剤、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。キットにおける各成分の相対的量は、トランスフェクション組成物の調製を容易にするために調整し得る。キットの成分は、適切な媒体または担体と混合されていてもよい。またキットには、トランスフェクションのコントロールとして用いられる標準核酸を含んでもよい。このような核酸としては、マーカー蛋白質(例えばルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、GFP等)を発現するベクター等が挙げられる。また必要に応じて、例えば、DEAEデキストランおよび/またはクロロキンのような他のトランスフェクション増強薬剤、ならびに他の添加剤を含み得る。
本発明のキットは、診断のためのキットともなる。例えば、診断用キットは、本発明のオリゴペプチド、およびトランスフェクション試薬に加えて、診断用核酸を含む。診断用核酸は、細胞内物質の存在を検出するために使用することができる核酸であり、例えば、細胞中にトランスフェクトされたときに、細胞内物質(例えば、蛋白質、低分子、ステロイド、ホルモン、または核酸)に応答して、該核酸の発現または細胞内の遺伝子の発現を増加または減少させる核酸が挙げられる。またキットは、治療用核酸を含むことができ、このようなキットは治療キットとなる。核酸としては、天然または人工の配列を含む核酸であってよく、特に治療用蛋白質をコードする核酸が挙げられる。具体的には、細胞において発現が不足している遺伝子、細胞中において望ましくない遺伝子の発現を阻害するための核酸(アンチセンス、siRNA等)、または細胞中において望ましくない蛋白質の活性を阻害する蛋白質(阻害因子、抗体、可溶性受容体)などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本明細書中に引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
1)精製アデノウイルスコアVII蛋白質の調製
精製蛋白調製のために、まず大腸菌によるアデノウイルスコアVII前駆体蛋白質(Pre-VII)発現プラスミド(pET14b-(XhoI)-pre-VII)の構築を行った。アデノウイルスコアVII前駆体遺伝子のORF(配列番号:3)を含むDNA断片を以下のプライマーセット(5'-GCCTCGAGATGTCCATCCTTATATCGCCC-3' (配列番号:1)、5'-GCCTCGAGCTAGTTGCGCGGGGGGCGGG-3' (配列番号:2))を用いてPCRでアデノウイルス5型遺伝子(Ad5:Accession No. BK000408)を鋳型にPCRで増幅した。DNA配列を確認後、PCR産物をXhoIで切断し、大腸菌のタンパク質発現ベクターで、アミノ末端に6個のヒスチジンからなるヒスチジンタグを含むpET14b(Novagen, Madison, WI)のXhoIサイトに挿入した(pET14b-pre-VII)。
ヒスチジンタグつきpre-VII (His-pre-VII) の発現とヒスチジンタグ精製はNovagenのプロトコールに従って行った。His-pre-VIIは0.1 mg/mlアンピシリンを含むLB培地で生育させた大腸菌BL21(DE3)株から最終濃度0.2 mg/ml IPTGの添加により37℃で2時間発現誘導させた。大腸菌を遠心で回収し、超音波処理で破壊した。His-pre-VIIを含む不溶性画分を遠心で回収し、His-pre-VIIは6 M Ureaを含むバッファーを用いて可溶化し、Ni-NTA(Novagen)で6 M Urea存在下精製した。His-pre-VIIは水に透析し、凍結乾燥した。His-pre-VIIはバッファーA(20 mM Tris-HCl pH7.9, 0.5 M NaClおよび6 M urea)に溶解し、さらにHiPrep Sephacryl S-200 カラムクロマトグラフィーで精製した。精製したHis-pre-VIIは水に透析し、-30℃で保存した。Protein VII(配列番号:6)は報告された条件(Webster, A. et al., Cell 72, 97-104 (1993), Mangel, W.F. et al., J Biol Chem 271, 536-43 (1996), Mangel W.F. et al., Trends Biochem Sci 22, 393-398 (1997))で、His-pre-VIIのアデノウイルスプロテアーゼ切断により調製した。His-pre-VIIは0.5 mg/ml His-pre-VII, 0.5 mg/ml salmon sperm DNA, プロテアーゼ活性化ペプチドである50 mM polypeptide VIc (NH2-GVWSLKRRCF-COOH), 10 mg/ml ヒスチジンタグつきアデノウイルスプロテアーゼ(His-Ad protease), 20 mM Tris-HCl pH 7.9を含む溶液で37℃で6時間切断した。溶液のNaClとUreaの濃度をそれぞれ0.5 M, 6 Mにあわせた後UnoSカラム(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules, CA)にロードし、protein VIIは20 mlの0.5 M-1.5 M NaCl(バッファーA)の直線勾配で溶出した。精製したprotein VIIは水に透析し、-30℃で保存した。3 Lの培養液からのprotein VIIの収量は約3mgであった。His-pre-VIIおよびprotein VIIの濃度はそれぞれモル吸光定数22,190および16,500、分子量24,514および19,400を用いてUV260 nmの吸光度から計算した。
2)アデノウイルスコアVII或いはアデノウイルスコアVII前駆体とプラスミドDNAとの複合体形成による遺伝子発現効率の向上
まず、精製アデノウイルスコアVII蛋白(配列番号:6)或いはアデノウイルスコアVII前駆体蛋白質(配列番号:4)とプラスミドDNAとの複合体形成の確認を行った。それぞれの精製蛋白質0.25, 0.5, 1 , 1.5, 2及び3 nmol/5μlと、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子発現プラスミド(pSV-Luc:TOYOBO, Kyoto, JAPAN)200 ng/5μlとを混合し、室温にて10分静置した。アガロースゲル電気泳動にて複合体形成の確認を行った(図1)。蛋白添加なし(lane 1, 8)の場合は、単体のプラスミドの分子量の位置に泳動されているが、アデノウイルスコアVII蛋白或いはアデノウイルスコアVII前駆体蛋白と混合した場合は、蛋白量依存的に単体分子量のDNAは減少し、高分子量位置(図1中で "Ori" と記載)に残存していることが確認された。それぞれの蛋白質は1 nmolでほぼ100%のDNAと複合体を形成していることが確認された。
この精製アデノウイルスコアVII蛋白或いはアデノウイルスコアVII前駆体蛋白質とプラスミドDNAとの複合体を用いて、カチオン性リポソーム(Lipofection法)による遺伝子発現効率を調べた。遺伝子導入はTransIT(Mirus Corporation, Madison, WI)を使用し、添付の方法に従って行った。詳しくは下記のように行った。トランスフェクション時の細胞密度が50-80%になるように、その前日にHeLa細胞を24 wellディッシュにおよそ5 x 104 cells/0.5 ml MEM(10%FCS)/wellでまいて培養を開始した。1 wellあたりのトランスフェクション反応液としては、5μlのTE(10 mM Tris-HCl pH7.9, 0.5 mM EDTA)に溶解した40 ng/μl のpSV-Luc (総量として200 ng/5μl) と0.25, 0.5, 1 , 1.5, 2及び3 nmolのコア蛋白VIIを含む5μlの蛋白溶液を混合し、最終容量10μlで室温10分間放置してDNA-コア蛋白VII複合体を再構成した。一方、リポソーム溶液はTransITのマニュアル(Mirus)に従って行い、50μlの Opti-MEM(-) (GIBCO-BRL, Rockville, MD) と0.8μlのTransITを混合し、室温で10分間放置し形成させた。リポソーム溶液とDNA-タンパク質複合体を混合し、さらに室温で10分間放置することで、リポソーム-DNA-コア蛋白VII複合体を形成した。この溶液を培地に加えた時間をトランスフェクション後0時間とし、実験に用いるまでインキュベーター中で培養した。遺伝子導入24時間後に、細胞のlysateを用いてluciferase活性を測定した。詳しくは下記のように行った。培地を除き、wellの壁沿いに0.2 mlのLuciferase cell lysis buffer (25 mM Tris-phosphate pH7.8, 10% glycerol, 0.2% Triton X-100) を加えて室温で5分間放置した後、細胞溶解液を回収した。時間を置いて測定した時にはこの時点で溶解液を液体窒素で凍らせて、-30℃で保存した。Luciferase活性の測定は25μlのLuciferase Reagent(Promega, Madison, WI)を3.5 mlチューブに分注し、5μlの細胞溶解液を加えMiniLumat LB9506 (BERTHOLD)を用いて15秒間の発光を測定して行った。細胞溶解液のタンパク質濃度は次のように測定した。96 well plateに4μlの細胞溶解液を加えた。濃度の標準として0.5〜8 mg BSA/wellを用いた。0.2 mlのBradford試薬(Nacalai tesque, Kyoto)を混合し、室温で10分間程度放置し、OD600 nmでの吸光度をBioLumin960(Molecular Dynamics)用いて測定した。結果を図2に示した。蛋白添加なしの場合を1として相対値で表しているが、精製アデノウイルスコアVII蛋白及びアデノウイルスコアVII前駆体蛋白質の両者において、遺伝子発現効率の向上が観察された。アデノウイルスコアVII前駆体蛋白質の場合は2倍程度の向上であるが、アデノウイルスコアVII蛋白の場合は5倍の向上が観察され、より効果が強いことが確認された。
3)遺伝子導入後の細胞内におけるアデノウイルスコアVIIとプラスミドDNAとの複合体形成の確認
アデノウイルスコアVII蛋白とDNAとの複合体の細胞導入後の挙動を解析する一環として、細胞内での局在について解析した。ローダミン(rhodamine)でラベルしたプラスミドDNAとアデノウイルスコアVII蛋白とで複合体を形成し、Lipofection法にてHeLa細胞に導入した。細胞導入4時間後及び16時間後、抗コアVII蛋白抗体を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。抗コアVII蛋白抗体は、5ヶ月齢のSDラット(Tokyo JKKENN DOUBUTSU Inc.)に精製コアVII前駆体蛋白質100μgを完全アジュバント(Sigma, St.Louis, MO)とともに免疫することにより調製した。この時、2週間隔で30μg及び50μgの精製コアVII前駆体蛋白質を完全アジュバントとともに投与しboostをかけた。細胞への遺伝子導入後、プラスミドDNAとアデノウイルスコアVII蛋白は細胞質内でも複合体を形成していることが確認された(図3)。
4)オリゴペプチドによる遺伝子発現効率の向上
200 ng pSV-Lucに、100 ngまたは200 ngのアデノウイルスコアVII蛋白を混合し、室温で10分間放置することでDNA-コアVII蛋白複合体を形成させた。この溶液にさらに200, 300, 400, 500, 600, 700, 800 ngのオリゴペプチド(YAKMKRRRRRVARRHRRRP (配列番号:7))(このオリゴペプチドを「RRR」とも称す) を加え10分間室温に放置した。DNA-コアVII蛋白-オリゴペプチド複合体は、上述の2)の条件でHeLa細胞にリポフェクション法によりトランスフェクションし、その約24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、RRRオリゴペプチドはトランスフェクション効率を有意に上昇させた。核酸との混合比は、調べた中では核酸:オリゴペプチドが1:1のときのトランスフェクション効率が最も高く、1:4まで明らかな増強効果が見られた。
本発明のオリゴペプチドは、汎用のトランスフェクション試薬と併用して遺伝子導入効率を上昇させることができるため、広い適用範囲を持つ。これにより、プラスミド、オリゴDNA、RNAを含む所望の核酸を真核細胞に導入することができるので、細胞内での蛋白質の発現、蛋白質製造、細胞の形質転換、およびトランスジェニック動物の作製のために有用である。また、蛋白質をコードする核酸を細胞内に導入することを通して、その蛋白質の細胞内での作用、および薬剤に対する応答を解析すれば、医薬品および農薬等の開発にも有用である。更に、治療核酸または治療蛋白質を導入するためにインビボまたはエクスビボで本発明の組成物を用いれば、病気の治療および予防に利用することも可能である。
アデノウイルスコアVII蛋白とプラスミドDNAとの複合体形成の確認を示す図である。ルシフェラーゼ遺伝子 (pSV-Luc) を含むプラスミドDNAをVII蛋白質またはpre-VII蛋白質と混合し、DNA−蛋白質複合体をアガロース電気泳動で分離した。DNAはSyber Goldで染色した。"Ori"は電気泳動の開始点 (origin)、"nc DNA" は nicked circular DNA (ニックの入った環状DNA)、"cc DNA" は closed circular DNA (ニックのない環状DNA) を表す。 アデノウイルスコアVII蛋白とプラスミドDNAとの複合体形成後の遺伝子発現効率の変化を示す図である。レポーター遺伝子のアッセイにより、Luciferase活性を測定した。DNA−蛋白質複合体をHeLa細胞にリポフェクション法でトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後 (24 hpt) に、ルシフェラーゼ活性 (Relative Light Unit; RLU) を測定した。 遺伝子導入細胞内におけるアデノウイルスコアVII蛋白とプラスミドDNAとの複合体の確認を示す図である。RhodamineラベルしたDNA (赤色) (パネルA) およびRhodamineラベルしたDNA−VII複合体 (パネルB) をリポフェクション法によりHeLa細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション後の図示した時間 (hpt) に、細胞を固定し抗VII抗体 (緑色) で染色した。パネルAはRhodamine (赤色) シグナルを、パネルBはコアVII蛋白 (緑色) シグナルを表す。VII蛋白質はトランスフェクトされた細胞内でもDNAと複合体を形成していた。 アデノウイルスコアVII蛋白、プラスミドDNA、RRRオリゴペプチドの複合体形成後の遺伝子発現効率の変化を示す図である。レポーター遺伝子のアッセイにより、Luciferase活性を測定した。複合体を、図2と同様にHeLa細胞にリポフェクション法でトランスフェクションした。トランスフェクションの約24時間後 (24 hpt) に、ルシフェラーゼ活性 (RLU) を測定した。横軸は、核酸に対するオリゴペプチドのレシオ (重量比) を表す。

Claims (13)

  1. 配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、トランスフェクション増強剤。
  2. オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のトランスフェクション増強剤。
  3. 遺伝子導入キットであって、配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチド、およびトランスフェクション試薬、を含むキット。
  4. オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、請求項3に記載のキット。
  5. ウイルスゲノムと結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに含む、請求項3に記載のキット。
  6. ウイルス蛋白質がアデノウイルスのコア蛋白質VIIである、請求項5に記載のキット。
  7. 核酸をさらに含む、請求項3に記載のキット。
  8. トランスフェクション試薬がカチオン性脂質である、請求項3に記載のキット。
  9. 遺伝子導入細胞の製造方法であって、(a)配列番号:7のアミノ酸配列を含むオリゴペプチド、(b)核酸、および(c)トランスフェクション試薬、を含む混合物を細胞に接触させる工程、を含む方法。
  10. 該混合物が、ウイルスゲノムと直接結合するウイルス蛋白質またはその機能的同等物をさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. ウイルス蛋白質がアデノウイルスのコア蛋白質VIIである、請求項10に記載の方法。
  12. オリゴペプチドが配列番号:7のアミノ酸配列からなる、請求項9に記載の方法。
  13. トランスフェクション試薬がカチオン性脂質である、請求項9に記載の方法。
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