本発明の目的は、新たなデータフォーマット/新たな再生アルゴリズムが追加されたときに生じる互換性の問題を回避することができる、マルチメディアデータを保存し、再生するマルチメディアデータ保存/再生システムを提供することである。
この目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載のマルチメディアデータを保存し、再生するマルチメディアデータ保存/再生システムを提供する。更に、本発明は、請求項13に記載のマルチメディアデータを再生するマルチメディアデータ再生方法を提供する。更に、本発明は、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品及び請求項15に基づくコンピュータにより読取可能な記録媒体を提供する。本発明の更なる特徴及び好ましい実施例については各従属請求項において定義する。
本発明に係るマルチメディアデータ保存/再生システムは、マルチメディアデータを保存し、再生するマルチメディアデータ保存/再生システムにおいて、再生されるマルチメディアデータファイルを保存するマルチメディアコンテンツアーカイブと、第1のフォーマットのマルチメディアデータファイルを第2のフォーマットのマルチメディアデータファイルに変換するための情報を含む変換アルゴリズム記述ファイルを保存する変換アルゴリズムアーカイブと、マルチメディアコンテンツアーカイブ及び変換アルゴリズムアーカイブに接続された少なくとも1つの再生器機とを備え、変換アルゴリズムアーカイブに保存されている各マルチメディアデータファイルは、少なくとも変換アルゴリズム記述ファイルの1つにそれぞれリンクされ、少なくとも1つの再生器機は、特定のマルチメディアデータファイルがそれぞれリンクされている変換アルゴリズム記述ファイルに基づいて、特定のマルチメディアデータファイルを再生する。
本発明の重要な特徴は、各マルチメディアデータファイルに少なくとも1つの「個別の(individual)」リンクを割り当てる点である。換言すれば、各マルチメディアデータファイルは、「自己(own)」のリンクを有する。このリンクは、好ましくは、マルチメディアデータファイルがマルチメディアコンテンツアーカイブに加えられた際に作成される。したがって、特定のマルチメディアデータファイルに割り当てられているリンクの変更/削除は、他のマルチメディアデータファイルに割り当てられている他のリンクに影響しない。これに対し、従来の保存/再生システムでは、マルチメディアデータファイルに割り当てられているリンクをファイル拡張子毎に取り扱う。換言すれば、このような従来の保存/再生システムでは、複数のマルチメディアデータファイルに対し、単一の「共通(common)」リンクのみが使用されている。更に、このような既存の保存/再生システムでは、マルチメディアデータファイルに割り当てられているリンク(共通リンク)は、変換アルゴリズム記述ファイルを指さず、実行可能な変換/再生アルゴリズムを指している。例えば、マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)PC環境においては、ファイル拡張子「pdf」を有する全てのマルチメディアデータファイルは、同じ実行可能な変換/再生アルゴリズム(例えば「アクロバットリーダー(Acrobat Reader:商標)」)にリンクされる。ここで、更新処理のために、この共通リンクが変更された場合(例えば、共通リンクが指す実行可能な変換/再生アルゴリズムが他の実行可能な変換/再生アルゴリズムに置換された場合)、既存の幾つかのマルチメディアデータファイルが再生できなくなるという問題が生じることがある(すなわち、更新された変換/再生アルゴリズムは、これらの既存のマルチメディアデータファイルを再生する場合、問題を生じる可能性がある)。本発明に基づく「個別のリンクの概念」により、新たなマルチメディアデータファイルが加えられても、既存の変換/再生アルゴリズムが変更されても、再生機能を維持することができる。
好ましくは、変換アルゴリズム記述ファイルは、ハードウェアに依存しない手法で符号化されている。再生器機及び変換アルゴリズムアーカイブに接続された処理装置又は再生器機自体は、変換アルゴリズムアーカイブに保存されている共通のハードウェアに依存しない変換アルゴリズム記述ファイルから、それぞれの再生器機で実行可能なハードウェアに依存した変換アルゴリズムを導出することができる。換言すれば、異なるハードウェアに基づく再生器機は、単一の変換アルゴリズム記述ファイルから異なるハードウェアに依存した変換アルゴリズムを導出ことができる。このようにして、高い柔軟性を実現することができる。
実行可能な各変換アルゴリズムは、好ましくは、特定の第1のフォーマットのマルチメディアデータファイルのデータを、再生器機によって再生可能な第2のフォーマットのデータにそれぞれ変換する。
マルチメディアデータ保存/再生システムは、好ましくは、再生器機に接続され、実行可能な変換アルゴリズムを保存する記憶装置を備える。例えば、処理装置によって生成された実行可能な変換アルゴリズムは、処理装置から記憶装置に転送することができる。再生器機が特定の実行可能な変換アルゴリズムを必要とする場合、再生器機は、自ら記憶装置に接続し、適切な実行可能な変換アルゴリズムを検索する。記憶装置は、再生器機の一部であってもよく、マルチメディアコンテンツアーカイブの一部であってもよく、変換アルゴリズムアーカイブの一部であってもよい。
マルチメディアデータ保存/再生システムは、好ましくは、マルチメディアデータファイルと変換アルゴリズム記述ファイルとの間の全てのリンク情報を含み、マルチメディアコンテンツアーカイブ及び/又は変換アルゴリズムアーカイブ及び/又は再生器機内に保存されるリンクテーブルを備える。
マルチメディアデータファイルから少なくとも1つの変換アルゴリズム記述ファイルへのリンクは、好ましくは、マルチメディアデータファイルからリンクテーブルのリンクテーブルエントリを指す単一のリンクと、それぞれリンクテーブルエントリから変換アルゴリズム記述ファイルの1つを指す少なくとも1つのリンクとの組合せとして実現される。本明細書における「保存されている各マルチメディアデータファイルは、少なくとも変換アルゴリズム記述ファイルの1つにそれぞれにリンクされる」という表現は、保存されている各マルチメディアデータファイルについて、それぞれマルチメディアデータファイルから変換アルゴリズム記述ファイルの1つを指す2つのリンクの少なくとも1つの連結を意味する。それぞれのリンクの連結は、マルチメディアデータファイルの1つに割り当てられた「個別のリンク(individual link)」である。
各変換アルゴリズム記述ファイルは、好ましくは、マルチメディアデータファイルのデータを解析するハードウェアに依存しない機能、及び/又は特定の第1のフォーマットのマルチメディアデータファイルのデータを第2のフォーマットのデータに変換する変換アルゴリズムのハードウェアに依存しない表現、及び/又は変換アルゴリズム記述ファイルによって表現されている変換アルゴリズムを用いて、マルチメディアデータファイルのデータが変換される可能な出力フォーマットの記述を含む。
マルチメディアデータファイルのデータを解析する機能は、例えば、変換アルゴリズム記述ファイルを伴わずに、マルチメディアデータファイルがマルチメディアコンテンツアーカイブに加えられた際に用いることができる。この場合、マルチメディアデータファイルのコンテンツを復号することができる変換アルゴリズム記述ファイルを見つけるために、それぞれの変換アルゴリズム記述ファイルの各解析機能によって、マルチメディアデータファイルを解析する必要がある。変換アルゴリズムアーカイブ内に保存されている変換アルゴリズム記述ファイルにおいて、適切な変換アルゴリズム(「コーデック(codec)」)が検出できない場合、及びマルチメディアデータファイルに関する変換アルゴリズム記述ファイルが提供されていない場合、再生システムは、マルチメディアコンテンツアーカイブにマルチメディアデータファイルを追加する処理を止めてもよい。この解析機能の更なる目的は、マルチメディアデータファイルの完全性を検証することである。すなわち、マルチメディアデータファイルのコンテンツを復号して再生する前に、解析機能に割り当てられている変換アルゴリズム記述ファイル内に含まれている変換アルゴリズムによってマルチメディアデータファイルのコンテンツを適切に処理できるか否かを、解析機能によって確認してもよい。
マルチメディアデータファイルは、例えばオーディオデータファイル、ビデオデータファイル、汎用画像データファイル又はコンテナデータファイルであり、コンテナデータファイルは、複数のオーディオデータファイル、ビデオデータファイル、汎用画像データファイル又はコンテナデータファイル自体を含んでいてもよい。但し、本発明は、これに制限されるものではない。用語「マルチメディアデータファイル」は、マルチメディアに関連して用いることができるあらゆる種類のデータファイルを含む。用語「汎用画像」とは、画素指向又はベクトル指向のフォーマットを有するあらゆる種類の視覚的表現を意味する。写真は、画素指向の表現であり、図面は、ベクトル指向フォーマットの具体例である。汎用画像は、コンテンツの少なくとも1つの画像を含んでいる。同じコンテンツを解像度、品質、描写の種類(例えば視野角、色方式)が異なる複数の手法で表現してもよい。また、汎用画像は、相関性がない画像のシーケンスを含む複数のページを有する文書であってもよい。
リンクテーブルは、好ましくは、オーディオデータファイル、ビデオデータファイル又は汎用画像データファイルである各マルチメディアデータファイルについて、それぞれ(リンクテーブルエントリから)変換アルゴリズム記述ファイルを指す少なくとも1つのリンクを提供する。
リンクテーブルは、コンテナデータファイルである各マルチメディアデータファイルに関する複数のリンクを含み、各リンクは、コンテナデータファイル内に含まれているマルチメディアデータファイルを復号するために用いられる変換アルゴリズム記述ファイルを指し、各復号可能なマルチメディアデータファイルについて、それぞれ対応する変換アルゴリズム記述ファイルを指す少なくとも1つのリンクが提供される。復号可能なマルチメディアデータファイルの少なくとも1つは、コンテナデータファイル自体であってもよい。
また、本発明に係る再生方法は、上述したマルチメディアデータ保存/再生システムを用いてマルチメディアデータを再生する再生方法において、再生器機によって、再生されるマルチメディアデータファイルに割り当てられたリンク情報を解析し、リンク情報が指している変換アルゴリズム記述ファイルを解析し、変換アルゴリズム記述ファイルに対応する実行可能な変換アルゴリズムがこの再生器機及び/又はこの再生器機に接続された記憶装置において既に利用可能であるか否かを判定し、この再生器機において実行可能な変換アルゴリズムが未だ利用可能ではない場合、処理装置を用いて、変換アルゴリズム記述ファイルから実行可能な変換アルゴリズムを生成し、実行可能な変換アルゴリズムを用いて、マルチメディアデータファイルに関するデータを再生に適した出力フォーマットを有するデータに変換し、出力データを再生する。
更に、本発明は、コンピュータ又はデジタルシグナルプロセッサにより実行されて、上述したマルチメディアデータ保存/再生システムを実現するコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品を提供する。更に、本発明は、このコンピュータプログラム製品を記録したコンピュータにより読取可能な記録媒体を提供する。
本発明の好ましい実施形態として図1に示すマルチメディアデータ保存/再生システム1は、再生されるマルチメディアデータファイルを保存するマルチメディアコンテンツアーカイブ2と、第1のフォーマットのマルチメディアデータファイルを第2のフォーマットのマルチメディアデータファイルに変換するための情報を含む変換アルゴリズム記述ファイルを保存する変換アルゴリズムアーカイブ3と、幾つかの再生器機(ここでは、それぞれマルチメディアコンテンツアーカイブ2及び変換アルゴリズムアーカイブ3に接続された第1の再生器機4a及び第2の再生器機4b)とを備える。更に、マルチメディアデータ保存/再生システム1は、第1及び第2の再生器機4a、4b及び変換アルゴリズムアーカイブ3に接続された処理装置5を備える。第1の再生器機4aは、記憶装置6に接続されている。
マルチメディアコンテンツアーカイブ2に保存されている各マルチメディアデータファイルには、個別のリンクが割り当てられている。各リンクは、変換アルゴリズムアーカイブ3に保存されている少なくとも1つの変換アルゴリズム記述ファイルを指している。これらのリンクは、マルチメディアコンテンツアーカイブ2、変換アルゴリズムアーカイブ3及び/又は再生器機4a、4b内に保存されるリンクテーブル7内に纏められていてもよい。
変換アルゴリズムアーカイブ3内に保存される変換アルゴリズム記述ファイルは、ハードウェアに依存しない手法(hardware independent manner)で符号化されている。処理装置5は、変換アルゴリズムアーカイブ3内に保存されている変換アルゴリズム記述ファイルから、再生器機4a、4bのそれぞれによって実行可能なハードウェアに依存した変換アルゴリズムを生成することできる。
各実行可能な変換アルゴリズムは、特定の第1のフォーマットを有するマルチメディアデータファイルのデータを、再生器機4a、4bがそれぞれ再生できる第2のフォーマットのデータに変換することができる。
マルチメディアデータファイル内に含まれているデータの再生処理は、好ましくは以下の通りである。
第1のステップにおいて、再生器機(例えば第1の再生器機4a)は、再生するマルチメディアデータファイルに割り当てられているリンク情報を解析する。第2のステップにおいて、再生器機4aは、リンク情報が指している変換アルゴリズム記述ファイルを解析する。第3のステップにおいて、再生器機4aは、変換アルゴリズム記述ファイルに対応する実行可能な変換アルゴリズムが、再生器機4a及び/又は記憶装置6において、既に利用可能であるか否かを判定する。実行可能な変換アルゴリズムが再生器機4aにおいて未だ利用可能ではない場合、再生器機4aは、第4のステップにおいて、処理装置5を起動して、変換アルゴリズム記述ファイルから実行可能な変換アルゴリズムを生成させる。第5のステップにおいて、再生器機4aは、実行可能な変換アルゴリズムを用いて、マルチメディアデータファイル内に含まれているデータを再生に適した出力フォーマットを有するデータに変換する。そして、第6のステップにおいて、再生器機4aは、データを再生する。
以下、図2A及び図2Bを参照して、本発明に基づくリンク概念の原理を説明する。
マルチメディアデータファイル10がマルチメディアコンテンツアーカイブ2に追加されると、リンクテーブル11内において、少なくとも1つの対応するリンクエントリがセットされる。これらのリンクエントリは、それぞれマルチメディアデータファイル10に割り当てられた「個別のリンク」の情報を含み、個別のリンクのそれぞれは、マルチメディアデータファイル10から変換アルゴリズム記述ファイル12を指している。図2Aでは、図面を簡潔にするために、これらの個別のリンクのうち、1つのリンクのみを示している。
コンテナデータファイル13がマルチメディアコンテンツアーカイブ2に追加される場合、幾つかのリンクエントリがリンクテーブル11に追加される。このコンテナデータファイル13内に含まれている各マルチメディアデータファイルは、それぞれ、各マルチメディアデータファイルから対応する変換アルゴリズム記述ファイル14を指す少なくとも1つの個別のリンクを「所有」している。更に、リンクテーブル11は、それぞれコンテナデータファイル13から、変換アルゴリズム記述ファイル14を復号/抽出するための情報を含むコンテナ変換アルゴリズム記述ファイル15を指す少なくとも1つの付加的なエントリを含んでいる。図2Bでは、図面を簡潔にするために、これらの個別のリンクのうち、1つのリンクのみを示している。
コンテナ変換アルゴリズム記述ファイル15の目的は、以下の通りである。個別に関連し、又はリンクされている変換アルゴリズム(コーデック)によって、コンテナデータファイル13の個々のコンポーネントファイルを復号できるようにするには、その前に、コンテナデータファイル13からコンポーネントファイルを抽出する中間的な分離処理(demultiplexing operation)が必要である。この分離処理は、コンテナ変換アルゴリズム記述ファイル15内に含まれている独立した変換アルゴリズムによって実行される。例えば、まず、コンテナ変換アルゴリズム記述ファイル15の変換アルゴリズムによって、オーディオデータ及びビデオデータがインタリーブされた合成ファイル又はストリーム(composed file or stream)は、2つの独立したストリーム、すなわち独立したビデオストリームと独立したオーディオストリームとに分離される。そして、関連するビデオ変換アルゴリズム(コーデック)によって、ビデオストリームをビデオ再生フォーマットに復号することができ、同様に、関連するオーディオ変換アルゴリズム(コーデック)によって、オーディオストリームを復号することができる。
マルチメディアデータファイル10、13から変換アルゴリズム記述ファイル12、14、15へのリンクは、好ましくは、マルチメディアデータファイル10、13からリンクテーブル7、11のリンクテーブルエントリを指す単一の第1のリンクと、それぞれのリンクテーブルエントリから変換アルゴリズム記述ファイル12、14、15の1つを指す少なくとも1つの第2のリンクとの組合せとして実現される。
図2A、2Bでは、コンテナデータファイル13の如何なるコンポーネントファイルもコンテナデータファイル自体でない場合を示している。但し、コンテナデータファイルのコンポーネントファイルは、コンテナデータファイル自体であってもよく、このような場合を図2Cに示す。コンテナデータファイル16(「外側」のコンテナデータファイル)は、幾つかのコンポーネントファイルを含む。コンポーネントファイルの1つはコンテナデータファイル自体(「内側」のコンテナデータファイル)である。コンテナデータファイル16に割り当てられているリンクテーブル11のリンクエントリは、コンテナデータファイル16内に含まれているマルチメディアデータファイルを復号又は抽出する機能を含むコンテナ変換アルゴリズム記述ファイル17を指している。更に、このリンクテーブルエントリは、リンクテーブル11の更なるリンクテーブルエントリを示す他の幾つかのリンクを含んでいる。各リンクは、コンテナデータファイル16内に含まれているマルチメディアデータファイルの1つに割り当てられている。図2Cにおいては、図面を簡潔にするために、コンテナデータファイル16内に含まれているコンテナデータファイルに関するリンクのみを示している。これらのリンクは、コンテナデータファイル16自体に含まれているコンテナデータファイル(「外側」のコンテナデータファイル)内に含まれているマルチメディアデータファイル(「内側」のコンテナデータファイル)を復号又は抽出する機能を含むコンテナ変換アルゴリズム記述ファイル15へのリンクを含んでいる。更に、内側のコンテナデータファイルに関するリンクの組は、内側のコンテナデータファイル内に含まれているマルチメディアデータファイルに割り当てられる変換アルゴリズム記述ファイル14へのリンクを含んでいる。換言すれば、図2Cは、コンテナデータファイルは、ネストされている、すなわちコンテナデータファイルのコンポーネントファイルが、それら自体、通常異なるフォーマットのコンテナファイルであってもよいことを示している。このため、2つの異なる種類のコンテナ変換アルゴリズム記述ファイル(それぞれ参照番号15、17によって示す。)が必要である。再帰的にネストされたコンテナフォーマットに符号化されたマルチメディアデータファイル10についての関連付け(個別のリンク)は、コンテナファイルのフォーマットを復号できるコーデックへのリンクと、外側のコンテナファイルに埋め込まれている各コンテナコンポーネントに必要とされる独立したリンクテーブルエントリの組へのリンクのリストとを含むテーブルエントリによって構成される。
また、本発明は、以下のように表現することもできる。
マイクロソフトウィンドウズPC環境では、2段階の処理によって、マルチメディアコンテンツファイルを再生アルゴリズムに関連付けている。第1の段階においては、オペレーティングシステムは、コンテンツを取り扱うと考えられるアプリケーションへのファイル拡張子のマッピングテーブルを用いる。ファイル拡張子とアプリケーションの間のマッピングは、アプリケーションのインストール時に作成される。特定のファイル拡張子を有するファイルのコンテンツを取り扱うことができると主張するアプリケーションが複数個インストールされている場合、これらのアプリケーションの1つのみがファイル拡張子に関連付けられる。そして、オペレーティングシステムは、そのファイル拡張子に関連付けられた特定のアプリケーションを起動する。第2の段階においては、起動されたアプリケーションは、マルチメディアファイルのコンテンツを解析し、コンテンツを再生するために、どのコーデックを用いるかを決定する。(用語「コーデック」は、マルチメディアデータを第1のフォーマットから第2のフォーマットに変換する変換アルゴリズムに関連する全ての情報の「総和」を意味する。より技術的には、用語「コーデック」は、圧縮器/伸張器(COmpressor/DECompressor)、又は、正式には、コーダ/デコーダ(COder/DECoder)の頭文字を取って名付けられている。圧縮又は符号化処理により、データは、例えば、データサイズを削減し、保存又は伝送に適したフォーマットに変換される。これとは逆の伸張又は復号処理は、データを元のデータフォーマットに戻し、再生器機によってコンテンツを再生できるようにする。)アプリケーションが適切な実行可能なコーデックをインストールしていない場合、且つコンピュータがインターネットに接続されている場合、アプリケーションは、適切な実行可能なコーデックを中央サーバから検索するよう試みる。このコーデックの検索は、再生アプリケーションを実行するマシンアーキテクチャによって実行できる適切なコーデックをサーバが提供できる場合にのみ成功する。適切な実行可能なコーデックがシステムにインストールされておらず、適切な実行可能なコーデックをインターネットサーバから検索することができない場合、アプリケーションは、コンテンツを再生できないことをユーザに通知する。アプリケーションの具体例としては、マイクロソフトメディアプレイヤ(Microsoft Media Player:商標)及びリアルワンプレイヤ(RealOne Player:商標)等がある。
民生用電子(consumer electronics:CE)機器又はPCのためのデジタルマルチメディアコンテンツが用いるデータフォーマットの数は、増加し続けている。新たなコンテンツフォーマットが登場すると、このコンテンツを再生できるように、新たなコーデックを含むよう既存の再生器機を更新する必要があるが、これにより、従来のフォーマット(legacy format)で符号化され、アーカイブされたコンテンツへのアクセスに弊害が生じることもある。新たな再生器機は、増え続ける従来のフォーマットをサポートする必要がある。従来のデータ符号化フォーマットに対するサポートがなされないと、再生器機は、このようなフォーマットのデータにアクセスし、復号することができなくなる。
すなわち、民生用電子機器(CE)環境においては、機器の能力は、多くの場合、固定されている。CE機器は、ベンダによって設計時にサポートされている限定された数のコーデックフォーマットのコンテンツのみしか復号することができない。新たなコーデックフォーマットが市場に普及した場合、既存の機器は、このコンテンツを取り扱うことができない。
コンテンツ再生器機を新たなコーデックで更新することによって生じる弊害を回避するために、本発明では、コンテンツアーカイブに、コーデック記述のアーカイブと、コンテンツアーカイブ内の各コンテンツファイルをコーデックアーカイブ内のコーデックの適切な組に関連付けるリンクテーブルとを追加する。コンテンツを長い期間に亘ってアクセスできることを保証するために、再生器機が次世代機器に置換された場合、必要なコーデックは、ハイレベルの記述にアーカイブされる。そして、処理装置は、再生器機のために、ハイレベルの記述から実行可能なコーデックを取り出す。
本発明が提案するシステムは、マルチメディアコンテンツファイルのアーカイブと、コーデック記述のアーカイブと、マルチメディアコンテンツファイルとメタコーデックの間を関連付けるリンクテーブルと、マルチメディアコンテンツを再生する複数の再生器機とを備える。本発明の基本的な原理においては、前述の項目が異なる機器に分散されているか、又は単一の機器に統合されているかは、重要ではない。
コンテンツアーカイブは、複数のマルチメディアコンテンツファイルを含んでおり、各ファイルは、複数のファイルフォーマットの1つによって符号化されている。ファイルフォーマットは、オーディオフォーマット、ビデオフォーマット、汎用画像フォーマット、コンテナフォーマットに分類できる。コンテナフォーマットにより、ファイルフォーマットをネストすることができ、すなわち、コンテナフォーマットのファイルは、異なるファイルフォーマットを有する複数のファイルを含むことができる。これは、少なくとも1つのビデオフォーマットのファイルと、少なくと1つのオーディオフォーマットのファイルとを含むAVファイル等で広く用いられている。
コーデックアーカイブは、コンテンツアーカイブ内で用いられている全てのフォーマットに関する複数のコーデック記述を含んでいる。コーデック記述は、少なくとも、コンテンツファイル内のデータを解析するメソッドと、コーデックによってサポートされている出力フォーマットの記述と、コンテンツデータを、サポートされた出力フォーマットの1つに復号する複数のメソッドとから構成されている。好ましい実施形態では、コーデック記述は、例えばXML文書によって、階層構造で表現されている。
サポートされた出力フォーマットの記述は、例えばオーディオ、ビデオ、静止画像、又はコンテナから抽出されたファイル等の出力データの種類を示している。この記述は、更に、出力サンプルの解像度も示す。また、ビデオ又は画像データの場合、この記述は、出力色空間も示す。
コンテンツデータを解析することにより、解析されたデータをコーデックが適切に復号することができるか否かが示される。
コンテンツデータを、サポートされた出力フォーマットの1つに復号するメソッドは、デコーダアルゴリズムのハードウェア又は実装(implementation)に依存しない記述である。この実装に依存しない記述は、コンテンツデータにアクセスする特定の再生器機にコーデックを示すために、後で用いられる。この記述は、処理装置が機器固有の実行可能なフォーマットに変換できる、複数の符号化言語の1つによって符号化されたデコーダアルゴリズムである。
リンクテーブルは、コンテンツアーカイブ内のファイルと、コーデックアーカイブ内の一組のコーデック記述との間を関連付ける表現を含んでいる。コンテナフォーマットによって符号化されていないコンテンツファイルについては、この関連付けは、コンテンツデータを適切に復号するために用いられるコーデックへの単一のリンクを有するテーブルエントリを含む。コンテナフォーマットで符号化されているコンテンツファイルについては、この関連付けは、コンテナファイルフォーマットを復号することができるコーデックへのリンクと、コンテナファイルに埋め込まれている各ファイルのために必要とされる一組のコーデックへのリンクのリストとを有するテーブルエントリを含む。
再生器機は、マルチメディアコンテンツを再生する。再生器機は、例えば、聴覚コンテンツ、視覚コンテンツ、触覚コンテンツ(haptic content)又はこれらのいずれかの組合せを含む、少なくとも一種類の復号されたコンテンツを再生できる。
処理装置は、コンテンツアーカイブと、コーデックアーカイブと、リンクテーブルと、再生器機内においてインスタンス化することができるコーデック記述の実行可能なコーデックへの変換を維持する。
特定のクライアントにおけるコンテンツアーカイブからコンテンツファイルを再生する処理の概要を以下に示す。a.再生器機がコンテンツファイルを選択し、コンテンツファイルに関連するリンクテーブルエントリを読み出す。b.再生器機がリンクエントリから参照された一組のコーデック記述を読み出す。c.再生器機が再生器機のマシンアーキテクチャに適した実行可能なコーデックがコーデックキャッシュにあるか否かを判定する。d.コーデックキャッシュにマシン実行可能なコーデックが存在していないときには、再生器機は、処理装置を起動し、マシン独立コーデック記述を実行可能なマシン依存コーデックに変換させる。e.再生器機は、実行可能なコーデックをロードし、コンテンツファイルを読み出し、コンテンツデータをサポートされた出力フォーマットの1つに復号し、そして、復号した出力データを再生する。
本発明に基づくマルチメディアデータ保存/再生システムは、以下のような利点を有する。
・コンテンツアーカイブに含められるあらゆるコンテンツファイルは、登録時に、後に、コンテンツを適切に再生するために必要とされる適切なコーデックの組に関連付けられる。この関連付けは、コンテンツがコンテンツアーカイブに保存されている限り、削除されない。また、あるコーデックを参照するコンテンツファイルが1つでもある限り、そのコーデックは、アーカイブから削除されない。したがって、新たなコーデックを必要とする新たなコンテンツを追加しても、既存のコンテンツとコーデック間の関連付けに弊害が生じることはない。これに対し、PC環境では、関連付けは、ファイル単位ではなく、ファイル拡張子単位で行っている。このような環境では、新たなコンテンツファイルのために関連付けを変更すると、アーカイブ内の既存のコンテンツを再生する能力に影響が生じる。
・コーデックは、デコーダアルゴリズムの実装に依存しない記述として保存されるので、新たなコーデックをコーデックアーカイブに加える際、後にどの再生器機がコンテンツを再生するかについては知る必要がない。
・内部のマシンアーキテクチャが既存のデバイスとは異なる次世代再生器機がコンテンツアーカイブに接続されると、本発明では、コーデックアーカイブに保存されているコーデック記述から、実行可能なコーデックを確実に生成することができる。
・新たな再生器機によってコンテンツにアクセスし、再生を行うために既存のフォーマットで符号化された既存のコンテンツを新たな符号化フォーマットに変換する必要はない。
以上の説明から明らかなように、リンクテーブルの概念は、好ましくは、コンテンツファイルからリンクテーブルエントリを指す1つの個別のリンクと、少なくとも1つのリンクを有する、リンクテーブルエントリから変換アルゴリズム記述ファイルを指す一組のリンクとを含む。
1 システム、2 マルチメディアコンテンツアーカイブ、3 変換アルゴリズムアーカイブ、4a 第1の再生器機、4b 第2の再生器機、5 処理装置、6 記憶装置、7 リンクテーブル、10 マルチメディアデータファイル、11 リンクテーブル、12 変換アルゴリズム記述ファイル、13 コンテナデータファイル、14 変換アルゴリズム記述ファイル、15 コンテナ変換アルゴリズム記述ファイル、16 コンテナデータファイル、17 コンテナ変換アルゴリズム記述ファイル