JP2005281725A - 高炉炉底部の耐火物の損耗防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高炉の生産性に悪影響を与えることなく高炉炉底耐火物の異常損耗や特定円周方位における異常損耗を防止する方法の提供。
【解決手段】休風中の高炉の少なくとも1本の羽口1から、パイプ3を水平より下方に傾斜させて炉内へ挿入し、炉内パイプの先端から炭材を吹き込む高炉炉底耐火物の損耗防止方法。この炭材によって、コークス充填層内に溶銑難透過層が形成または拡大され、炉底部の溶銑の流動が少なくなり、炉底部煉瓦の溶損が防止される。吹き込む炭材は、最大粒径3mm以下のコークス粒であることが望ましい。
【選択図】図1
【解決手段】休風中の高炉の少なくとも1本の羽口1から、パイプ3を水平より下方に傾斜させて炉内へ挿入し、炉内パイプの先端から炭材を吹き込む高炉炉底耐火物の損耗防止方法。この炭材によって、コークス充填層内に溶銑難透過層が形成または拡大され、炉底部の溶銑の流動が少なくなり、炉底部煉瓦の溶損が防止される。吹き込む炭材は、最大粒径3mm以下のコークス粒であることが望ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、高炉の操業方法に関し、特に高炉の炉底部の耐火物が溶銑の流動等により損耗するのを防止する方法に関する。
銑鉄製造用の高炉は、近年大型化が進み、内容積で5000m3を超えるものも少なくない。このような大型化と相俟って、高炉の改修には莫大な費用がかかることから、最近の高炉操業においては、銑鉄を安定に製造することもさることながら、少しでも炉命を延ばすことが、重要な操業上の課題になっている。
高炉の寿命判断は、生産計画に沿った吹き止めを除けば、炉本体の損傷程度に基づいてなされる。寿命判断の要点は、休風時の補修により操業を継続するのに必要な炉体を維持することが可能か否かにあり、特に炉内面の維持が重要となる。
近年の高炉操業においては、稼働開始以降は定期的に、あるいは必要に応じて、休風時に炉内面の補修をおこなっている。高炉炉体の中で羽口より上部の炉内側壁部については、補修技術の進歩により、ある程度の炉体維持が可能となっている。しかし、羽口より下方の炉体側壁部及び炉底部については、溶銑および溶滓が存在する部位であること、および羽口より下部の内容物を排出して空にすることが容易でないこと等により、損傷部を抜本的に補修することは不可能である。
上記の事情から、羽口より下部(以下、これを「炉底部」という)の炉内側壁部および底部(以下、それぞれ「炉底側壁」および「炉底底部」と記す)の著しい損傷は、高炉の寿命を決すると言ってよい。したがって、高炉の炉命延長のために最も重要なのは、炉底側壁および炉底底部の損傷の抑止である。
炉底部の煉瓦の損耗機構は複雑であるが、煉瓦表面が、そこに接触して流動する溶銑の高温にさらされるために溶損することが損耗の主たる原因である。炉底部の煉瓦の損耗状態は、損耗部付近に配置された炉底温度計または熱流計で測定される炉底熱負荷(熱流束)の上昇によって検知される。
さて、高炉の寿命を決する炉底部の煉瓦の極度の損耗を回避するための対策は、設備面からの対策と操業面からの対策の二つに大別される。前者には、炉底部煉瓦の熱伝導度や耐溶損性などの耐火物としての品質向上や熱的物性の異なる煉瓦(カーボン系煉瓦、シャモット系煉瓦)の配材の最適化がある。しかし、ひとたび稼働を開始すれば、炉底部の損耗防止の中心は操業上の対策に限定されることは言うまでもない。
さて、高炉の寿命を決する炉底部の煉瓦の極度の損耗を回避するための対策は、設備面からの対策と操業面からの対策の二つに大別される。前者には、炉底部煉瓦の熱伝導度や耐溶損性などの耐火物としての品質向上や熱的物性の異なる煉瓦(カーボン系煉瓦、シャモット系煉瓦)の配材の最適化がある。しかし、ひとたび稼働を開始すれば、炉底部の損耗防止の中心は操業上の対策に限定されることは言うまでもない。
上記の操業上の対策としては、従来から種々の方法が提案されている。それらの方法を分類すると、
(a)炉底通銑量を減少させる方法、
(b)溶銑流動性を低下させる方法、
(c)炉底通液性(コークフリー層を含む)の分布を操作する方法
の3つになる。以下、それぞれについて具体的な方法を挙げ、その問題点について説明する。
(a)炉底通銑量を減少させる方法、
(b)溶銑流動性を低下させる方法、
(c)炉底通液性(コークフリー層を含む)の分布を操作する方法
の3つになる。以下、それぞれについて具体的な方法を挙げ、その問題点について説明する。
(a)炉底通銑量を減少させる方法
この方法には下記の(1)〜(3)がある。
この方法には下記の(1)〜(3)がある。
(1) 休風により溶銑凝固層を成長せしめ耐火物の浸食を防止する方法[特許文献1(特公昭59−33162号公報)]
(2) 定常送風と減風とを繰り返して熱負荷を低下させる方法[特許文献2(特公昭59−10968号公報)]
(3) 円周方向の特定方位の熱負荷軽減対策として熱風弁を操作して当該方位の送風量を減少させる方法[特許文献3(特公平5−63522号公報)]
上記特許文献1および特許文献2の方法は、高炉の生産性そのものを低下させることを意味し、特許文献3の方法も羽口上部の炉内状態に偏差を与える手法であって、長時間実施すれば安定操業そのものに悪影響を与えることは必至である。
(2) 定常送風と減風とを繰り返して熱負荷を低下させる方法[特許文献2(特公昭59−10968号公報)]
(3) 円周方向の特定方位の熱負荷軽減対策として熱風弁を操作して当該方位の送風量を減少させる方法[特許文献3(特公平5−63522号公報)]
上記特許文献1および特許文献2の方法は、高炉の生産性そのものを低下させることを意味し、特許文献3の方法も羽口上部の炉内状態に偏差を与える手法であって、長時間実施すれば安定操業そのものに悪影響を与えることは必至である。
(b)溶銑流動性を低下させる方法
この方法には下記の(1)と(2)がある。
この方法には下記の(1)と(2)がある。
(1) 高炉に含TiO2鉄源原料を装入し、Ti混入による溶銑の粘度の上昇を利用して同部近傍の溶銑流速の低下を図る方法。これは、炉底熱負荷の急上昇時の操業面での対処法として一般化しているが、炉内通気性の悪化を伴うため、生産性低下や操業安定度低下が問題となる。
(2) 熱負荷上昇部位に近い羽口から、または炉底湯流れを考慮に入れて所定角度ずれた方位の羽口から、含Ti鉄源を吹き込んで熱負荷上昇部位に歩留まらせることを狙った方法[特許文献4(特開昭60−228611号公報)、特許文献5(特開平3−274209号公報)]。
しかし、上記のような局所的な熱負荷上昇は、炉底通液性の異常によって生じていることから、常に高い的中率で含Ti鉄源の吹込み位置を決めることは困難である。また、この方法は、羽口上部の炉内状態に円周方向偏差を与える手法であるため、上述の熱風弁による送風制御と同様に安定操業に悪影響を与える危険を伴う。
(c)炉底通液性(コークフリー層を含む)分布を操作する方法
この方法には下記の(1)〜(3)がある。
この方法には下記の(1)〜(3)がある。
(1) 炉底湯溜まり領域(出銑口設置高さより下方の炉内領域)の充填層の特性に着眼した方法で、炉底湯溜まり空間のコークスの沈下度合いを測る指数を導入して、これに基づいて操業を行う方法[特許文献5(特開平1−116014号公報)]。
過去の高炉解体調査結果によれば、高炉炉底湯溜まり部にはコークス充填層があり、底部においては溶銑のみで占められている領域(これが「コークフリー層」である。)も存在している。このことは、湯溜まりの溶銑が流れやすい部分と流れにくい部分とが存在することを意味している。したがって、炉底湯溜まり部に占めるコークス充填層の比率を高めれば、望ましくは完全にコークス充填層だけにすれば、溶銑の偏流を抑えることができ、それにより炉底煉瓦の損耗が防止できると予想される。
このような予想に基づいてなされた発明が上記特許文献5に示されている方法である。その方法は、コークス充填層の湯溜まり部への沈下度合いを支配する因子のうち、操業状態で決定される因子である炉内容物の自重による鉛直下方への応力と送風によるガス圧損とを適正に維持するための指針を提供するものである。
しかし、実際の高炉操業においては、原燃料条件、生産量、高炉ガス発生量、その他の制約により、特許文献5に記載の指針を守っていくことは容易ではない。したがって、操業条件の操作では炉底熱負荷を常に望ましい状態に維持することは困難である。加えて、特に炉底側壁の熱負荷については、上述のような視点での管理を行っても、同部の熱負荷上昇を完全には予防することはできず、まして、時として起こる円周方向の特定方位における熱負荷の異常上昇対策としては、このような操業方法では不充分である。
(2) 炉内装入物分布を操作し、炉内コークスの反応劣化を利用して炉底湯溜まりに溶銑の低透過層(コークスが溶銑、溶滓を巻き込んで粉状の形態で存在する層)を形成させる方法[非特許文献1(CAMP-ISIJ, Vol.14(2001), p.746)。
この方法は、具体的には炉中心部の鉱石とコークスの堆積重量比率(「O/C」)を増減させることにより、炉中心を降下するコークスの直接還元、浸炭反応を介した粉化の促進や抑制を行うことにより、溶銑の低透過層を制御する方法である。しかし、実操業に適用する場合には次のような問題が生じる。即ち、
(a) 炉中心のO/Cを増加させれば同部のガス流量が減少して、圧損が増加する危険がある。
(a) 炉中心のO/Cを増加させれば同部のガス流量が減少して、圧損が増加する危険がある。
(b) コークスの反応劣化は鉱石融着帯付近から既に進行しているため、これを過度に進めれば滴下帯の通気性が悪化し、炉下部での圧損増加も併発する。
(c) 炉芯あるいは炉底湯溜まり部のコークスの更新速度は非常に遅いために即効性に乏しい。
(d) 炉中心に装入されたコークスは、炉芯や湯溜まり部において軸対象に拡散するから、特定方位の制御には適さず、効果発現に要するコークス量も多くなる。
(3) マッドガンの先端にキッシュグラファイトを装填して、出銑口よりマッドと共に湯溜まり内に注入することによって溶銑難透過層(コークスが溶銑、溶滓を巻き込んで粉状の形態で存在する層)の欠損部位を修復する方法[特許文献6(特開平05−78720号公報)]。
この方法によれば、出銑口を選択することで、その方位周辺での溶銑難透過層の維持は図れるものの、実高炉の出銑口の本数は高々4本程度しかないため、任意の方位に対し的確に目的を達することはできない。
本発明の課題は、高炉の生産性に悪影響を与えることなく高炉炉底部の耐火物の異常損耗や特定円周方位における異常損耗を防止する方法を提供することにある。
前記のように、炉底湯溜まりには溶銑のほかにコークス充填層も存在する。また、溶銑層中にあるコークスはすべてが塊状粒子であるのではなく、一部領域では溶銑、溶滓を巻き込んだ粉状の形態で存在することが炉解体調査によって明らかにされている。本発明者らは、これらの現象に着目して上記課題を解決するため種々実験を行った。それによって得られた知見は以下のとおりである。
(A)コークスが溶銑、溶滓を巻き込んだ紛状の形態で存在する領域、即ち、「溶銑難透過層」は、コークス塊粒子で構成される充填層に比べて格段に通液性に劣る。従って、この溶銑難透過層の生成の促進、さらにはその生成領域の拡大ができれば、炉底部への溶銑お溶滓の流入を抑えることができて、炉底煉瓦の損耗を予防することができる。
(B)溶銑難透過層の生成領域を的確に制御するには、炉底湯溜まり部の充填層を直接操作する必要があり、制御対象部位の存在位置に制約を受けずに制御可能であることが必須である。
(C)これらのことは、羽口からパイプを介して炉底湯溜まり部に炭材を吹き込むことにより可能となる。
本発明は上記の知見を基づいてなされた発明であり、その要旨は以下のとおりである。
(1)休風中の高炉の少なくとも1本の羽口から、パイプを水平より下方に傾斜させて炉内へ挿入し、そのパイプの先端から炭材を吹き込むことを特徴とする高炉の炉底部の耐火物の損耗防止方法。
(2)炭材が最大粒径3mm以下のコークス粒である上記(1)に記載の高炉の炉底部の耐火物の損耗防止方法。
(3)炉内パイプ先端の前にレースウエイを形成させながら炭材を吹き込む上記(1)または(2)に記載の高炉の炉底部の耐火物の損耗防止方法。
本発明方法によれば、高炉の生産性に悪影響を与えることなく、高炉炉底部の耐火物の異常損耗や特定円周方位における異常損耗を防止することができる。
図1は、本発明の実施形態を示す概念図である。この図は、高炉炉底部の模式的縦断面図であり、1は羽口、2は出銑口を示す。本発明方法を実施するには、先ずパイプ3を図示のように水平より下向きに傾斜させて羽口から炉内に挿入する。そして、炉内パイプの先端から炭材を炉底部に吹き込むことにより炭材を拡散させ、溶銑難透過層の空隙率を下げる。図中の4が炭材の拡散部である。
図1の破線の矢印9は、炉心コークスの動きを示すもので、図中の(A)は炉心コークスにパイプの先端を向けて、また(B)は出銑口2近くの溶銑難透過層に向けて、それぞれ炭材を吹き込んでいる状態を示す。この(A)の方法については後述する。このようにして溶銑難透過層の空隙率を下げることにより、溶銑難透過層の下部にある溶銑の流動を抑制して高炉炉底部の耐火物の損耗を防止することができる。
以下、本発明の方法において規定した条件について説明する。
1.休風中の高炉の少なくとも1本の羽口からパイプを挿入すること:
溶銑難透過層を大きく形成する必要がある場合や、図1に示すように複数箇所に炭材を吹き込む必要がある場合には、パイプを複数本挿入する必要がある。また、既に大きな溶銑難透過層が存在している場合は、それを維持するために必要な炭材の吹き込み量は少なくてよく、パイプ1本を挿入すれば足りる。この方法では、複数の羽口を使用することができるので適当な方位の羽口を選ぶことにより、いずれの位置にも炭材の吹き込みが可能である。パイプとしては鋼管を用いれば、吹込み終了後の該パイプの回収は必ずしも必要なく、炉内投棄しても差し支えはない。なお、本発明の方法は、操業中に実施することは困難であるため、休風時に行う。
溶銑難透過層を大きく形成する必要がある場合や、図1に示すように複数箇所に炭材を吹き込む必要がある場合には、パイプを複数本挿入する必要がある。また、既に大きな溶銑難透過層が存在している場合は、それを維持するために必要な炭材の吹き込み量は少なくてよく、パイプ1本を挿入すれば足りる。この方法では、複数の羽口を使用することができるので適当な方位の羽口を選ぶことにより、いずれの位置にも炭材の吹き込みが可能である。パイプとしては鋼管を用いれば、吹込み終了後の該パイプの回収は必ずしも必要なく、炉内投棄しても差し支えはない。なお、本発明の方法は、操業中に実施することは困難であるため、休風時に行う。
2.パイプを水平より下方に傾斜させて炉内へ挿入すること:
空隙率を操作したい溶銑難透過層は、羽口レベルより下方に形成する必要があるため、パイプは水平より下向きに挿入しなければならない。その俯角は、炭材吹込み位置をどこにするかにもよるが、およそ10°〜25°である。なお、パイプの内径は40〜70mm程度とするのが望ましい。
空隙率を操作したい溶銑難透過層は、羽口レベルより下方に形成する必要があるため、パイプは水平より下向きに挿入しなければならない。その俯角は、炭材吹込み位置をどこにするかにもよるが、およそ10°〜25°である。なお、パイプの内径は40〜70mm程度とするのが望ましい。
3.炭材の吹き込み:
炉底部の湯溜まり部に溶銑難透過層を形成するため、さらには溶銑難透過層が存在する場合にはその層の成長、維持を図るために、小粒の炭材を湯溜まり部に吹き込みむ。小粒炭材は羽口部から炉内に挿入されたパイプ内を気流に乗せて吹き込む。炭材としてはコークス粉や石炭粉等を用いることができ、なかでもコークス粉が最適である。
炉底部の湯溜まり部に溶銑難透過層を形成するため、さらには溶銑難透過層が存在する場合にはその層の成長、維持を図るために、小粒の炭材を湯溜まり部に吹き込みむ。小粒炭材は羽口部から炉内に挿入されたパイプ内を気流に乗せて吹き込む。炭材としてはコークス粉や石炭粉等を用いることができ、なかでもコークス粉が最適である。
溶銑難透過層の空隙を効果的に埋めるため、吹き込むべき小粒炭材のサイズを適正化することが望ましい。炉底内コークス充填層の粒径を直接知ることは一般に困難であるが、本発明者らが吹止め高炉の炉底部のボーリングを行って調査したところ、塊状コークスのサイズは、最大径で20〜25mmであった。この粒子が造る溶銑難透過層の空隙のサイズは塊粒子のサイズの概ね10〜15%程度であるので、吹き込むべき小粒炭材は、少なくともこの空隙をすり抜けられないと、コークス充填層の前で瞬時に詰まってしまい、吹き込み領域は拡大せず、効果は小さくなる。したがって、小粒炭材のサイズは最大粒径で3mm以下とするのが好ましい。
これに加え、吹き込み条件を適正化すれば、さらに発明の効果は高まる。すなわち、挿入したパイプの先端の前に小型のレースウェイを形成させるべく、キャリアーガスの流速を調整するのである。
これにより、パイプ先端部で小粒炭材が瞬時に目詰まりを起こすのを防止することができ、同時に気流搬送力を高めて小粒炭材を周辺に拡散させることが可能になる。レースウェイ形成に要するキャリアーガスの流速は、大きいほど望ましい。安定なレースウェイを形成する上で、深度は少なくとも充填層粒子径の4〜5倍程度は必要であり、内径50mm程度のパイプを想定すれば、風速として100m/s以上とするのがよい。
キャリアーガスは、吹き込みパイプ内での小粒炭材の発火、燃焼を回避する観点から、窒素などの不活性ガスが望ましいが、空気を使用する場合は、風速を大きめに設定するなどの発火、燃焼回避の対策を講ずる必要がある。
炉底湯溜まりに供給されるコークスは、主に炉頂から炉中心部に装入されたコークスである。このような高炉内充填層のフローパターンの特徴を利用すれば、炉底充填層の中の広範囲にわたり溶銑難透過層を形成させることが可能である。即ち、図1に(A)で示したように、小粒炭材を炉中心軸付近に吹き込めば、空隙率が低下したコークス充填層をフローパターンに乗せて、炉底部充填層内に拡大させることが可能である。また、吹込みパイプを進退させつつ小粒炭材を吹き込む操作を行えば、該パイプの挿入軸を中心としたより広い範囲の充填層の空隙率を操作することが可能である。
図2は、溶銑難透過層を想定した高炉炉底溶銑流動シミュレーションの結果を示す図である。同図中、5は耐火煉瓦、6は溶銑難透過層、7は炉底湯溜まり内コークス充填層、8は溶銑である。
炉底部の溶銑流動に及ぼす充填状態の影響を解析したところによると、図2に示すように、溶銑難透過層6が炉底湯溜まり内コークス充填層の下層部全面に生成した場合、溶銑難透過層の空隙率が0.2未満であれば、これより下部にある溶銑は出銑操作によっても殆ど流動しない。したがって、炭材の吹き込みは溶銑難透過層の空隙率が0.2未満となるようにするのが好ましい。この値は、高炉炉頂におけるコークス充填層の空隙率が概ね0.5程度であることと比較すれば大幅に小さい。
以下、本発明の効果を模型試験の結果によって示す。先ず、試験の手順を説明する。
図3は試験に用いた装置の概念図である。同図に示すように、円筒容器10に最大径20〜25mmに整粒したコークス11を充填し、容器内充填層の嵩密度を測定した。つぎに、層内に内径50mmの中空パイプ12を挿入し、パイプ先端が容器中心軸上にあるように固定した上で、ホッパー14内の炭材(コークス粉)をパイプ12に導入し、送風機13により容器内に吹き込んだ。吹き込み終了後、上層から充填物を掻き出しながら吹き込んだ小粒炭材の炉内滞留量の分布を測定した。試験条件は下記のとおりである。
小粒炭材の粒子径 :0.1〜1mm、1〜3mm、3〜5mm
キャリアーガス線速度:70m/s、100m/s、120m/s
吹込み炭材量 : 最大100kg
小粒炭材吹込み量は最大100kgに設定し、層内目詰まりによって送風圧が大幅に上昇した場合は、上記の100kgに達する前であっても吹込みを中止した。試験後は吹込み口前(パイプ先端の前)の直径0.7m、高さ0.7mの円筒形領域内15(図3の破線で囲った部分)で回収された内容物を初期充填粒子と吹込み炭材とに仕訳けて、それぞれの重量からその領域の空隙率を算出した。試験結果を表1に示す。
キャリアーガス線速度:70m/s、100m/s、120m/s
吹込み炭材量 : 最大100kg
小粒炭材吹込み量は最大100kgに設定し、層内目詰まりによって送風圧が大幅に上昇した場合は、上記の100kgに達する前であっても吹込みを中止した。試験後は吹込み口前(パイプ先端の前)の直径0.7m、高さ0.7mの円筒形領域内15(図3の破線で囲った部分)で回収された内容物を初期充填粒子と吹込み炭材とに仕訳けて、それぞれの重量からその領域の空隙率を算出した。試験結果を表1に示す。
表1から明らかなように、炭材の最大粒径を3mm以下にすることで、充填層の空隙率を効果的に低下させ得ること、さらに、キャリアーガス線速度を100m/s以上にすれば、該サイズの炭材を効果的に充填層空隙低下に機能させることが可能となることが分かる。
炭材の粒子最大径が5mmの場合は、すべて「(□)」である。これは、吹込み口前での急激な目詰まりの進行によって、小粒炭材が層内に充分に広がらなかったため、空隙率が0.2未満にならなかったことを意味する。
「○」印で示した所定量(100kg)の吹込みができたケースでは、これ以上の小粒炭材を吹き込むことも可能であるため、吹込み量をさらに増すことで、より広範囲で充填層の空隙率を低下させる効果を期待することができる。
本発明の方法を適用すれば、羽口より上方領域の充填構造には影響を及ぼさないので、高炉本体の生産性に影響を与えず、かつ、安定操業を阻害することもなく、高炉炉底の熱負荷の異常上昇、耐火物溶損の問題を解決することができる。
1.羽口
2.出銑口
3.パイプ
4.炭材拡散層
5.耐火物
6.溶銑難透過層
7.炉底湯溜まり内コークス充填層
8.溶銑
9.炉心コークスの動き方向
10.円筒容器
11.コークス
12.パイプ
15.サンプリング領域
2.出銑口
3.パイプ
4.炭材拡散層
5.耐火物
6.溶銑難透過層
7.炉底湯溜まり内コークス充填層
8.溶銑
9.炉心コークスの動き方向
10.円筒容器
11.コークス
12.パイプ
15.サンプリング領域
Claims (3)
- 休風中の高炉の少なくとも1本の羽口から、パイプを水平より下方に傾斜させて炉内へ挿入し、そのパイプの先端から炭材を吹き込むことを特徴とする高炉の炉底部の耐火物の損耗防止方法。
- 炭材が最大粒径3mm以下のコークス粒であることを特徴とする請求項1に記載の高炉炉底部の耐火物の損耗防止方法。
- 炉内に挿入したパイプ先端の前にレースウエイを形成させながら炭材を吹き込むことを特徴とする請求項1または2に記載の高炉炉底耐火物の損耗防止方法。
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