JP2005276668A - 有機el素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機EL素子において、互いに間隔を置いて配設された電極間で、有機化合物層を介して電流が漏れることに起因する発光輝度の変動を防止する。
【解決手段】 絶縁性の基板10と、この基板上に互いに間隔を置いて配設された複数の第1電極11と、これらの第1電極11を上から覆う状態に形成された、少なくとも発光層を含む有機化合物層12、13と、この有機化合物層12、13を間に挟んで、第1の電極11と交差対向するように配置された第2電極14とを備えてなる有機EL素子において、複数の第1電極11どうしの間に、所定電位に保たれて有機化合物層12、13と導通する接地電極15を設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子に関するものである。
従来、例えば特許文献1および2に示されているように、絶縁性の透明基板と、この基板上に互いに間隔を置いて配設された複数の透明陽極と、この透明陽極を上から覆う状態に形成された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、この有機化合物層を間に挟んで、透明陽極と交差対向するように配置された金属陰極とを備えてなる有機EL素子が知られている。
この有機EL素子においては、透明陽極と金属陰極との間に電流が流されると、有機化合物層に含まれる発光層が発光し、発光光が透明陽極および透明基板を介して取り出される。つまり該有機EL素子では、透明陽極と金属陰極の交差部分を1つの発光部として、その発光部毎に発光、非発光を制御することができる。なおこのような有機EL素子は、波長安定性に優れる特性を有している。
特許第2911552号公報 特許第3016808号公報
上記の基本構成を有する、例えば特許文献1に示される有機EL素子においては、一般に金属陰極が走査電極、透明陽極が信号電極とされ、選択された金属電極と交差している複数の透明陽極がそれぞれ独自に駆動電流源に接続されるようになっており、駆動電流源に接続された透明陽極と金属陰極との間の発光部が発光する。
ここで、ある1つの透明陽極について考えると、それが駆動電流源に接続されたとき、隣接する透明陽極は駆動電流源に接続された状態も、また接続されない状態も取り得るものである。従来の有機EL素子においては、1つの透明陽極が駆動電流源に接続された際、隣接する透明陽極が駆動電流源に接続されているか否かによって、該1つの透明陽極から構成されている発光部の輝度が変動してしまう、という問題が認められている。この問題は、該1つの透明陽極とそれに対向する陰極との間に流すべき電流が、陽極間を延びるように形成されている有機化合物層を通って、隣接する透明陽極側に漏れ出てしまうことに起因している。このように漏れ出る電流(漏れ電流)の値は、駆動電流源に接続された陽極と隣接陽極との間の電位差に依存し、それら両陽極間の距離に反比例するので、発光部に流れる電流が隣接陽極の電位状態に応じて変わってしまい、それが輝度変動につながるのである。
なお特許文献2には、発光部位の正孔輸送層と金属陰極とが近接した構成が示されており、そのような構成においては金属陰極を介して隣接陽極へ電流が漏れ出るので、その解決は困難となっている。
以上、有機化合物層を挟んで基板側に陽極が、それと反対側に陰極が形成されてなる有機EL素子における問題について説明したが、陰極と陽極とを上述の例とは反対に形成することも可能であり、そうした場合にも、同様の問題が起こり得る。
本発明は上記の事情に鑑みて、有機化合物層を介して漏れ電流が流れることに起因する発光輝度の変動を防止することを目的とする。
本発明による有機EL素子は、前述したように、
絶縁性の基板と、
この基板上に互いに間隔を置いて配設された複数の第1電極と、
これらの第1電極を上から覆う状態に形成された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、
この有機化合物層を間に挟んで、前記第1の電極と交差対向するように配置された第2電極とを備えてなる有機EL素子において、
前記複数の第1電極どうしの間に、所定電位に保たれて前記有機化合物層と導通する接地電極が設けられていることを特徴とするものである。
なお、上記所定電位は、通常はゼロ電位とするのが望ましい。
また、通常上記第1電極は透明陽極であり、第2電極は金属陰極である。
また本発明による有機EL素子においては、前記接地電極が、前記第2電極と同じ材料から形成されていることが望ましい。
本発明の有機EL素子においては、複数の第1電極どうしの間に、有機化合物層と導通する接地電極が設けられているので、駆動電流源に接続された第1電極から有機化合物層を経て漏れる電流は、すべてこの接地電極に流れる。そしてこの接地電極は所定電位に保たれるものであるから、漏れ電流の値は常に一定になる。このように漏れ電流の値が一定であれば、発光輝度は電流漏れのために低下するものの、一定に保たれるようになる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による有機EL素子の一部の概略断面形状を示すものであり、また図2はこの有機EL素子の概略斜視形状を示すものである。なお図2は、この有機EL素子を構成する各要素の組合せ関係を示すためのもので、各層の断面形状等は概略的に示してある。
この有機EL素子は、透明ガラス基板10と、このガラス基板10の上に互いに間隔を置いて配設された複数の帯状の透明陽極(第1電極)11と、これらの透明陽極11を上から覆う状態に形成された正孔輸送層12と、この正孔輸送層12の上に形成された発光層13と、この発光層13および上記正孔輸送層12を間に挟んで上記透明陽極11と交差対向するように配置された複数の帯状の金属陰極(第2電極)14とを備えている。なお図2においては、有機化合物層である正孔輸送層12および発光層13を一体的に図示してある。
またガラス基板10の上には、複数の透明陽極11どうしの間において、該透明陽極11と接触しない状態にして帯状の接地電極15が設けられている。この接地電極15は透明陽極11と同方向に延び、その一端が図示外のグランドに接続されることにより、常に0(ゼロ)電位に保たれる。
複数の金属陰極14は、互いに間隔を置いて、透明陽極11と直交する方向に配設されている。それにより、透明陽極11と金属陰極14との交差部分が2次元マトリクス状に並んだ状態となり、この交差部分毎に、透明陽極11と金属陰極14との間に正孔輸送層12および発光層13が配されてなる発光部が構成されている。このような構成において、透明陽極11と金属陰極14との間に所定の電流が流されると、上記発光部単位で発光層13が発光し、その発光光が透明陽極11およびガラス基板10を介して取り出される。
透明陽極11は、400nm〜700nmの可視光の波長領域において、少なくとも50パーセント以上、好ましくは70パーセント以上の光透過率を有するものが好ましい。透明陽極11の材料としては、酸化錫、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等、透明電極材料として従来公知の化合物を適宜用いることができるが、その他、金や白金など仕事関数が大きい金属からなる薄膜を用いてもよい。また、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体などの有機化合物を用いることもできる。なお、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー社刊(1999年)には、透明導電膜について詳細な記載があり、そこに示されているものを本発明に適用することも可能である。
また本実施形態の有機EL素子は、有機化合物層として正孔輸送層12および発光層13を有するものであるが、その他に正孔注入層や電子注入層、電子輸送層等の層が適宜設けられてもよい。
金属陰極14は、仕事関数の低いLi、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、およびこれらの金属とAgやAlなどとの合金や混合物等の金属材料から形成されるのが好ましい。陰極における保存安定性と電子注入性とを両立させるために、上記材料で形成した電極を、仕事関数が大きく導電性の高いAg、Al、Auなどで更に被覆してもよい。なお、金属陰極14も透明陽極11と同様に、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの公知の方法で形成することができる。
また帯状の接地電極15も、例えばマスクを用いた真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの公知の方法で形成することができる。この接地電極15の材料としては、金属、金属酸化物、導電性高分子膜などあらゆるものが適用可能であるが、リソグラフィで形成する場合にはインジウム酸化物や金属クロムが好ましく、マスクを用いる方法ではアルミニウムが好ましい。そして、この接地電極15に後述のようにして流れ込む漏れ電流の値は、透明陽極11と該接地電極15との距離に反比例するので、漏れ電流を少なく抑える上では、接地電極15をできるだけ細く形成するのがよい。そのように細い接地電極15を作製するためには、酸化インジウムや金属クロムがより望ましいといえる。また、低抵抗という点では金属クロムが特に望ましい。
次に、上記有機EL素子の製造方法について説明する。先ずガラス基板10の上に、互いに間隔を置いて複数の帯状の透明陽極11を形成する。そのような透明陽極11は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。
次に前述したような方法で接地電極15を形成し、その後、各透明陽極11を上から覆い、その左右側端面も完全に覆う状態にして、正孔輸送層12および発光層13を順次形成する。さらにその上に金属陰極14を形成すると、本実施形態の有機EL素子が完成する。
本実施形態の有機EL素子においては、複数の透明陽極11どうしの間に、正孔輸送層12と導通する接地電極15が設けられているので、駆動電流源に接続された透明陽極11から正孔輸送層12を経て漏れる電流は、すべてこの接地電極15に流れる。そしてこの接地電極15はゼロ電位に保たれるから、漏れ電流の値は常に一定になる。このように漏れ電流の値が一定であれば、発光輝度は電流漏れのために低下するものの、一定に保たれるようになる。
次に、図3を参照して本発明の第2の実施形態による有機EL素子について説明する。なおこの図3において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。この図3に示す有機EL素子は、図1に示したものと比べると、基本的に、複数の透明陽極11どうしの間に絶縁層20が形成されている点が異なるものである。
この第2の実施形態の有機EL素子においても、複数の透明陽極11どうしの間に、正孔輸送層12と導通する接地電極15が設けられたことにより、第1実施形態におけるのと同様の効果を得ることができる。
なお本実施形態のように、絶縁層20の上に接地電極15を形成する場合は、素子の発光によって発生する熱により、接地電極15が剥がれやすくなっている。そこで該接地電極15を金属陰極14と同じ材料から形成すれば、熱膨張率の差によって該接地電極15に作用する応力を緩和して、その剥がれを防止することができる。
なお、前述した第1実施形態の有機EL素子と、接地電極15は形成せずに、その他の点は該第1実施形態の有機EL素子と同様に形成した従来の有機EL素子とについて、漏れ電流の有無を比較検討した。比較検討は、1つの選択透明陽極11とそれに対向する金属陰極14との間の電圧を15Vに固定し、それに隣接する透明陽極11における同様の電圧を4通りに変化させたときの、選択透明陽極11からの発光の輝度(単位はcd/m)を測定して行った。その結果を下の表1に示す。
Figure 2005276668
この表1に示される通り、従来例では隣接陽極の電圧を低くするにつれて、つまり選択陽極との電位差を大きくするにつれて発光輝度が低下している。これは、電位差が大きくなるにつれて漏れ電流が流れやすくなっていることを示している。それに対して本発明による有機EL素子では、上記電位差が変化しても発光輝度に顕著な変化が現れず(数値のバラツキは測定誤差範囲内である)、漏れ電流が生じていないことが明らかである。
本発明の第1の実施形態による有機EL素子を示す概略断面図 上記有機EL素子の概略斜視図 本発明の第2の実施形態による有機EL素子を示す概略断面図
符号の説明
10 ガラス基板
11 透明陽極
12 正孔輸送層
13 発光層
14 金属陰極
15 接地電極
20 絶縁層

Claims (4)

  1. 絶縁性の基板と、
    この基板上に互いに間隔を置いて配設された複数の第1電極と、
    これらの第1電極を上から覆う状態に形成された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、
    この有機化合物層を間に挟んで、前記第1の電極と交差対向するように配置された第2電極とを備えてなる有機EL素子において、
    前記複数の第1電極どうしの間に、所定電位に保たれて前記有機化合物層と導通する接地電極が設けられていることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記所定電位がゼロ電位であることを特徴とする請求項1記載の有機EL素子。
  3. 前記第1電極が透明陽極であり、第2電極が金属陰極であることを特徴とする請求項1または2記載の有機EL素子。
  4. 前記接地電極が、前記第2電極と同じ材料から形成されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の有機EL素子。
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