本発明の実施例1であるカメラシステムについて図1から図7を参照しながら説明する。
図6は、本実施例であるカメラシステムの概略構成を示す側方視断面図である。本実施例のカメラシステムは、CCDあるいはCMOSセンサなどの撮像素子を用いた単板式のデジタルカラーカメラであり、撮像素子を連続的又は単発的に駆動して動画像又は静止画像を表す画像信号を得る。ここで、撮像素子は、受光した光を画素毎に電気信号に変換して光量に応じた電荷を蓄積し、この蓄積された電荷を読み出すタイプのエリアセンサである。
図6において、101はカメラ本体であり、この内部には以下に説明する部材が配置されて撮影が可能となっている。102はレンズ装置であり、この内部に結像光学系103を有し、カメラ本体101に対して着脱可能となっている。レンズ装置102は、公知のマウント機構を介してカメラ本体101に電気的、機械的に接続される。
カメラ本体101には、焦点距離の異なる複数のレンズ装置102が着脱可能であり、レンズ装置を取り換えることにより様々な画角の撮影画面を得ることが可能である。
レンズ装置102は不図示の駆動機構を有しており、この駆動機構は結像光学系103の一部の要素であるフォーカシングレンズを光軸L1方向に移動させることにより焦点調節を行わせる。ここで、フォーカシングレンズを柔軟性のある透明弾性部材や液体レンズで構成し、界面形状を変化させて屈折力を変えることにより焦点調節を行うようにすることもできる。
また、レンズ装置102内には、光通過口の開口面積を変化させて撮影光束の光量を調節する絞り(不図示)と、この絞りを駆動する駆動機構(不図示)とが配置されている。
106はパッケージ124に収納された撮像素子である。結像光学系103から撮像素子106に至る光路中には、撮像素子106上に物体像の必要以上に高い空間周波数成分が伝達されないように結像光学系103のカットオフ周波数を制限する光学ローパスフィルタ156が設けられている。また、結像光学系103には赤外線カットフィルタも形成されている。
撮像素子106で捉えられた物体像は、ディスプレイユニット(画像表示手段)107上に表示される。ディスプレイユニット107は、カメラ本体101の背面に取り付けられており、使用者がディスプレイユニット107に表示された画像を直接観察できるようになっている。ここで、ディスプレイユニット107を、有機EL空間変調素子や液晶空間変調素子、微粒子の電気泳動を利用した空間変調素子などで構成すれば、消費電力を小さくかつ薄型にすることができる。
撮像素子106は、増幅型固体撮像素子の1つであるCMOSプロセスコンパチブルのセンサ(CMOSセンサ)である。CMOSセンサの特長の1つとして、エリアセンサ部のMOSトランジスタと撮像素子駆動回路、AD変換回路、画像処理回路といった周辺回路を同一工程で形成できるため、マスク枚数、プロセス工程がCCDと比較して大幅に削減できるということが挙げられる。また、任意の画素へのランダムアクセスが可能といった特長も有し、ディスプレイ表示用に間引いた読み出しが容易であって、高い表示レートでリアルタイム表示が行える。
撮像素子106は、上記特長を利用し、ディスプレイ画像出力動作、高精彩画像出力動作を行う。
111はハーフミラー(第1のミラー)であり、結像光学系103からの光束の一部をファインダ光学系(ペンタプリズム112や接眼レンズ109)に導くとともに、残りの光束を透過させることにより、1つの光路を2つの光路に分割する。すなわち、ハーフミラー111は、その少なくとも一部が光束を透過する透過領域になっている。このハーフミラー111は可動型となっており、撮影光路上(L1上)に斜設されたり、撮影光路から退避したりする。105は、物体像の予定結像面に配置されたフォーカシングスクリーンである。112はペンタプリズムであり、ハーフミラー111からの光束を複数回反射(正立像に変換)させて接眼レンズ109に導く。
109は、フォーカシングスクリーン105上に形成された物体像を観察するための接眼レンズであり、実際には後述するように3つのレンズ(図1の109a、109b、109c)で構成されている。フォーカシングスクリーン105、ペンタプリズム112、接眼レンズ109はファインダ光学系を構成する。
ハーフミラー111の屈折率はおよそ1.5、厚さは0.5mmである。ハーフミラー111の背後(撮像素子106側)には、可動型のサブミラー(第2のミラー)122が設けられており、ハーフミラー111を透過した光束のうち光軸L1近傍の光束を焦点検出ユニット121に向けて反射させる。
サブミラー122は、後述する回転軸125を中心に回転可能であり、ハーフミラー111の動きに連動する。そして、サブミラー122は、後述する第2の光路状態および第3の光路状態において、ハーフミラー111およびサブミラー122を保持するミラーボックスの下部に収納される。
104は物体に照明光を照射する可動式の照明ユニットであり、使用時にはカメラ本体101から突出し、不使用時にはカメラ本体101内に収納される。
113はフォーカルプレンシャッタ(以下、シャッタと称す)であり、複数枚の遮光羽根で構成される先幕および後幕を有している。このシャッタ113において、非撮影時には光通過口となるアパーチャを先幕又は後幕で覆うことで撮影光束を遮光しており、撮影時には先幕および後幕がスリットを形成しながら走行することで撮影光束を像面側に通過させる。
119は、カメラを起動させるためのメインスイッチである。120は、2段階の押圧操作が可能なレリーズボタンであり、半押しで撮影準備動作(焦点調節動作および測光動作等)が開始され、全押しで撮影動作が開始される。121は焦点検出ユニットであり、位相差検出方式により焦点調節状態を検出する。なお、ファインダ光学系および焦点検出ユニット121は、ハーフミラー111によって反射される前の結像光学系103からの光束の光軸を挟んで互いに対向する領域に配設されている。
123はファインダモード切り換えスイッチであり、このスイッチ123の操作により光学ファインダモード(OVFモード)および電子ファインダモード(EVFモード)の設定を切り換えることができる。ここで、OVFモードでは、ファインダ光学系を介して物体像を観察することができ、EVFモードでは、ディスプレイユニット107を介して物体像を観察することができる。
180は光学ファインダ内情報表示ユニットであり、フォーカシングスクリーン105上に所定の情報(例えば、撮影情報)を表示させる。これにより、撮影者は、接眼レンズ109を覗くことで物体像とともに所定の情報を観察することができる。
上述した構成において、ハーフミラー111およびサブミラー122は、後述するようにファインダ光学系および焦点検出ユニット121に光を導くための第1の光路状態(第1の状態)と、撮像素子106および焦点検出ユニット121に光を導くための第2の光路状態(第2の状態)と、結像光学系103からの光をダイレクトに撮像素子106で受光させるための第3の光路状態(第3の状態)とからなる3つの状態を選択的にとることができる。
第1の光路状態では、ハーフミラー111およびサブミラー122が撮影光路上に斜設されており、結像光学系103からの光が、ハーフミラー111で反射することによりファインダ光学系に導かれるとともに、ハーフミラー111を透過した光がサブミラー122で反射することにより焦点検出ユニット121に導かれる。これにより、第1の光路状態では、接眼レンズ109を介して物体像を観察することができるとともに、焦点検出ユニット121において焦点検出を行うことができる。
第2の光路状態では、ハーフミラー111だけが撮影光路上に斜設されたままとなっており、結像光学系103からの光が、ハーフミラー111で反射することにより焦点検出ユニット121に導かれるとともに、ハーフミラー111を透過した光が撮像素子106に到達可能となっている。なお、サブミラー122は、撮影光路から退避した状態となっている。
これにより、第2の光路状態では、撮像素子106の出力に基づいて撮影画像をディスプレイユニット107に表示させたり、撮影(連続撮影や動画撮影)を行ったりすることができるとともに、焦点検出ユニット121において焦点検出を行うことができる。
第3の光路状態では、ハーフミラー111およびサブミラー122が撮影光路上から退避しており、結像光学系103からの光が直接、撮像素子106に到達可能となっている。これにより、第3の光路状態では、撮像素子の106の出力に基づいて撮影画像をディスプレイユニット107に表示したり、撮影を行ったりすることができる。この撮影では、高精細な画像を生成することができ、撮影画像を拡大して大型プリントを行う場合等において好適である。
上述した3通りの光路状態を高速で切り換えるために、ハーフミラー111は透明樹脂で構成され、軽量化が図られている。また、ハーフミラー111の裏面には複屈折性をもつ高分子薄膜が貼り付けられている。このため、第2の光路状態において、撮影画像をディスプレイユニット107でモニタする場合や高速連続撮影を行う場合には、撮像素子106の全画素を用いて撮像しないことに対応して、さらに強いローパス効果を付与する。
なお、ハーフミラー111の表面に、可視光の波長よりも小さなピッチをもつ微細な角錐状の周期構造を樹脂によって形成し、いわゆるフォトニック結晶として作用させることによって、空気と樹脂との屈折率差による光の表面反射を低減し、光の利用効率を高めることも可能である。このように構成すると、第2の光路状態において、ハーフミラー111の表裏面での光の多重反射によってゴーストが発生するのを防ぐことができる。
不図示の電磁モータとギア列からなるミラー駆動機構は、ハーフミラー111およびサブミラー122の位置を変化させることにより、光路状態を、第1の光路状態、第2の光路状態および第3の光路状態で切り換える。
第2の光路状態における撮像では、後述するようにハーフミラー111およびサブミラー122が所定位置に保持されたままであり、ミラー駆動機構を作動させる必要がないため、画像信号処理を高速化させることで超高速連続撮影を行うことができる。また、ディスプレイユニット107に画像が表示されているときでも、焦点調節を行うことができる。
図7は、本実施例であるカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。このカメラシステムは、撮像系、画像処理系、記録再生系および制御系を有する。まず、物体像の撮像、記録に関する説明を行う。なお、同図において、図6で説明した部材と同じ部材については同一符号を付す。
撮像系は、結像光学系103および撮像素子106を含み、画像処理系は、A/D変換器130、RGB画像処理回路131およびYC処理回路132を含む。また、記録再生系は、記録処理回路133および再生処理回路134を含み、制御系は、カメラシステム制御回路(制御手段)135、操作検出回路136および撮像素子駆動回路137を含む。
138は、外部のコンピュータ等に接続して、データの送受信を行うための規格化された接続端子である。上記の電気回路は、不図示の小型燃料電池によって駆動される。
撮像系は、物体からの光を結像光学系103を介して撮像素子106の撮像面に結像する光学処理系であり、レンズ装置102内の絞り(光量調節ユニット)143と、必要に応じてシャッタ113における先幕および後幕の走行を調節し、適切な光量の物体光を撮像素子106に露光する。
撮像素子106は、正方画素が長辺方向に3700個、短辺方向に2800個並べられ、合計約1000万個の画素数を有しており、各画素にR(赤色)G(緑色)B(青色)のカラーフィルタを交互に配して4画素が1組となる、いわゆるベイヤー配列を形成している。
ベイヤー配列では、撮影者が画像を見たときに強く感じやすいGの画素をRやBの画素よりも多く配置することで、総合的な画像性能を上げている。一般に、この方式の撮像素子106を用いる画像処理では、輝度信号は主にGから生成し、色信号はR、G、Bから生成する。
撮像素子106から読み出された画像信号は、A/D変換器130を介して画像処理系に供給される。A/D変換器130は、露光した各画素の信号の振幅に応じて、例えば10ビットのデジタル信号に変換して出力する信号変換回路であり、以降の画像信号処理はデジタル処理にて実行される。
画像処理系は、R、G、Bのデジタル信号から所望の形式の画像信号を得る信号処理系であり、R、G、Bの色信号を輝度信号Yおよび色差信号(R−Y)、(B−Y)にて表されるYC信号などに変換する。
RGB画像処理回路131は、A/D変換器130を介して撮像素子106から受けた3700×2800画素の画像信号を処理する信号処理回路であり、ホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算による高解像度化を行う補間演算回路を有する。
YC処理回路132は、輝度信号Yおよび色差信号R−Y、B−Yを生成する信号処理回路である。この処理回路132は、高域輝度信号YHを生成する高域輝度信号発生回路、低域輝度信号YLを生成する低域輝度信号発生回路、および色差信号R−Y、B−Yを生成する色差信号発生回路で構成されている。輝度信号Yは、高域輝度信号YHと低域輝度信号YLを合成することによって形成される。
記録再生系は、メモリ(記録媒体、不図示)への画像信号の出力と、ディスプレイユニット107への画像信号の出力とを行う処理系である。記録処理回路133は、メモリへの画像信号の書き込み処理および読み出し処理を行う。再生処理回路134は、メモリから読み出した画像信号を再生して、ディスプレイユニット107に出力する。
また、記録処理回路133は、静止画像および動画像を表すYC信号を所定の圧縮形式(例えば、JPEG形式)にて圧縮するとともに、圧縮データを読み出した際に圧縮データを伸張する圧縮伸張回路を有する。圧縮伸張回路は、信号処理のためのフレームメモリなどを含み、このフレームメモリに画像処理系からのYC信号をフレーム毎に蓄積して、それぞれ複数のブロック毎に読み出して圧縮符号化する。圧縮符号化は、例えば、ブロック毎の画像信号を2次元直交変換、正規化およびハフマン符号化することにより行われる。
再生処理回路134は、輝度信号Yおよび色差信号R−Y、B−Yをマトリックス変換して、例えばRGB信号に変換する回路である。再生処理回路134によって変換された信号は、ディスプレイユニット107に出力され、可視画像が表示(再生)される。
再生処理回路134およびディスプレイユニット107は、Bluetoothなどの無線通信回線を介して接続することができ、このように構成すれば、カメラで撮像した画像を離れたところからモニタすることができる。
一方、制御系の一部である操作検出回路136は、レリーズボタン120やファインダモード切り換えスイッチ123等の操作を検出する。また、カメラシステム制御回路135は、操作検出回路136の検出信号に応じてハーフミラー111やサブミラー122を含むカメラ内の各部材の駆動を制御し、撮像の際のタイミング信号などを生成して出力する。
撮像素子駆動回路137は、カメラシステム制御回路135の制御の下に撮像素子106を駆動する駆動信号を生成する。情報表示回路142は、光学ファインダ内情報表示ユニット180の駆動を制御する。
制御系は、外部操作に応じて撮像系、画像処理系および記録再生系における各回路の駆動を制御する。例えば、制御系は、レリーズボタン120が押圧操作されたことを検出して、撮像素子106の駆動、RGB画像処理回路131の動作、記録処理回路133の圧縮処理などを制御する。また、制御系は、ファインダ内情報表示回路142によって光学ファインダ内に表示される情報における各セグメントの状態を制御する。
次に、焦点調節に関する説明を行う。カメラシステム制御回路135には、AF制御回路140およびレンズシステム制御回路141が接続されている。これらの制御回路は、カメラシステム制御回路135を中心にして各々の処理に必要とするデータを相互に通信している。
AF制御回路140は、撮影画面上の所定の位置に設けられた焦点検出領域に対応する焦点検出用センサ167の信号出力を受けることにより焦点検出信号を生成し、結像光学系103の合焦状態(デフォーカス量)を検出する。
デフォーカス量が検出されると、このデフォーカス量を結像光学系103の一部の要素であるフォーカシングレンズの駆動量に変換し、カメラシステム制御回路135を介してレンズシステム制御回路141に送信する。
移動する物体に対しては、レリーズボタン120が押圧操作されてから実際の撮像動作が開始されるまでのタイムラグを勘案して、適切なレンズ停止位置を予測した結果に基づいてフォーカシングレンズの駆動量を指示する。また、カメラ本体101内に設けられ、物体の輝度を検出する輝度検出装置(不図示)の検出結果に基づいて、物体の輝度が低く、十分な焦点検出精度が得られないと判定したときには、照明ユニット104又はカメラ本体101に設けられた不図示の白色LEDや蛍光管によって物体を照明する。
レンズシステム制御回路141は、カメラシステム制御回路135から送られたフォーカシングレンズの駆動量を受信すると、レンズ装置102内の不図示の駆動機構によってフォーカシングレンズを光軸L1方向に移動させるなどの動作を行い、焦点調節を行う。
AF制御回路140において物体にピントが合ったことが検出されると、この検出情報はカメラシステム制御回路135に伝えられる。このとき、レリーズボタン120が押圧操作されていれば、上述したように撮像系、画像処理系、記録再生系により撮像制御が行われる。
絞り143はレンズシステム制御回路141からの指令に応じて像面側に向かう被写体光の光量を調節する。なお、カメラシステム制御135とレンズシステム制御回路141は、レンズ装置102側のマウント部電気接点(通信ユニット)144aおよびカメラ本体101側のマウント部電気接点144bを介して通信が行えるように構成されている。
図1から図5は、本実施例であるカメラシステムの縦断面図である。なお、レンズ装置102については、この一部を示している。これらの図では、主にハーフミラー111およびサブミラー122の駆動機構(ミラー駆動機構)の動作を時系列で示している。なお、図6および図7で説明した部材と同じ部材については同一符号を付す。
図3を用いてミラー駆動機構の構成について説明する。図3は、カメラが上述した第1の光路状態にあるときの図を示している。
同図において、101はカメラ本体、102はレンズ装置、103aは結像光学系を構成する複数のレンズのうち最も像面側に位置するレンズ、105はファインダ光学系のフォーカシングスクリーンである。164は焦点検出ユニット121における光束の取り込み窓となるコンデンサーレンズ、107はディスプレイユニットである。163は、ファインダ光学系の光路内に進退可能なアイピースシャッタ(遮光部材)である。この遮光部材は接眼レンズ109a側からの光による撮像への影響を回避する部材である。
可動型のハーフミラー111は、不図示のハーフミラー受け板に保持されている。このハーフミラー受け板にはピン173、174が設けられており、ハーフミラー111およびピン173、174はハーフミラー受け板を介して一体となって移動可能となっている。
170はハーフミラー駆動レバー、171はハーフミラー支持アームである。ハーフミラー駆動レバー170は、回転軸170aに対して回転可能に支持されており、ハーフミラー支持アーム171は、回転軸171aに対して回転可能に支持されている。
ハーフミラー駆動レバー170は、不図示の動力伝達機構を介して駆動源に連結されており、駆動源からの駆動力を受けることにより回転軸170aを中心に回転することができる。また、ハーフミラー支持アーム171は、接続部171bを介してミラーボックスの対向する壁面側にある略同一形状の構造と接続されている。
ハーフミラー支持アーム171の先端に設けられた貫通孔171cには、不図示のハーフミラー受け板に設けられたピン173が摺動可能に係合している。これにより、ハーフミラー111は、ハーフミラー受け板を介して貫通孔171cを中心に回動可能となっている。また、ハーフミラー受け板のうちピン173とピン174の中間位置には、不図示のトーションバネによって矢印A方向の付勢力が付与されている。
第1の光路状態(図3)においては、ミラーストッパ(位置決め部材)160、161が、撮影光路外であってハーフミラー111の移動軌跡内に進入した状態にある。この状態にあるとき、ハーフミラー111は、トーションバネによる矢印A方向の付勢力を受けることにより、ミラーストッパ160、161に当接して位置決めされる。これにより、ハーフミラー111は、撮影光路上に斜設された状態となる。
ここで、ピン173は、ハーフミラー駆動レバー170の第1カム面170bに当接しておらず、ピン174はハーフミラー駆動レバー170の第2カム面170cに当接していない。
また、サブミラー122は回転軸125周りの回転が抑制された状態で、ハーフミラー111の背後に位置している。
上述した第1の光路状態において、結像光学系103から射出した光束のうちハーフミラー111で反射した光束はファインダ光学系に導かれ、ハーフミラー111を透過した光束はハーフミラー111の背後にあるサブミラー122で反射して焦点検出ユニット121に導かれる。
ミラーストッパ160、161がハーフミラー111の移動軌跡から退避したときや、ハーフミラー駆動レバー170が図3中時計回りに回転したときには、不図示のトーションバネによる矢印A方向の付勢力により、ピン173はハーフミラー駆動レバー170の第1カム面170bに当接し、ピン174はハーフミラー駆動レバー170の第2カム面170cに当接する。
そして、ピン173、174はそれぞれ、ハーフミラー駆動レバー170の回転量に応じて、第1カム面170bおよび第2カム面170cに沿って移動する。これにより、ハーフミラー111の姿勢が変化する。
すなわち、ハーフミラー駆動レバー170の回転に連動してハーフミラー支持アーム171が回転する。そして、ハーフミラー駆動レバー170およびハーフミラー支持アーム171にピン173、174を介して連結しているハーフミラー受け板が作動し、ハーフミラー受け板とともにハーフミラー111が作動する。
図1から図5は、ハーフミラー111やサブミラー122の動作を示す図である。図1は、上述した第2の光路状態を示し、図2は、第1の光路状態から第2の光路状態への移行過程を示す。図4は、第1の光路状態から第3の光路状態への移行過程を示し、図5は上述した第3の光路状態を示す。
第1の光路状態(図3)にあるとき、ハーフミラー111およびサブミラー122は、上述したように結像光学系103から射出された物体光を、ファインダ光学系および焦点検出ユニット121に導くように作用する。
また、第2の光路状態(図1)にあるときには、ハーフミラー111が結像光学系103から射出された物体光を、撮像素子106および焦点検出ユニット121に導くように作用する。さらに、第3の光路状態(図5)にあるときには、ハーフミラー111およびサブミラー122が撮影光路から退避する。
次に、本実施例のカメラシステムにおける撮影シーケンスについて図8を用いて説明する。
ステップS1では、メインスイッチ119が操作(ON状態)されるまで待機し、操作されることでステップS2に進む。ステップS2では、カメラ本体101内の各種電気回路に電流を供給(起動)する。
ステップS3では、設定されているファインダモードを判別し、OVFモードに設定されている場合にはステップS4に進み、EVFモードに設定されている場合にはステップS5に進む。
ステップS4では、光学ファインダ内情報表示ユニット180を駆動することにより、光学ファインダ内に設けられた表示部に所定の情報を表示させる。このOVFモードでは、接眼レンズ109を介して上記所定の情報とともに物体を観察することができる。
ステップS5では、ディスプレイユニット107に画像や所定の情報を表示させる。このEVFモードでは、ディスプレイユニット107を介して上記所定の情報とともに物体を観察することができる。
ここで、操作検出回路136によりファインダモード切り換えスイッチ123が操作されたことを検出した場合には、ファインダモードを切り換える。例えば、OVFモードからEVFモードに切り換えられた場合には、撮像系および画像処理系の駆動により、ディスプレイユニット107に画像(物体像)が表示される。
ステップS6では、操作検出回路136の出力に基づいてレリーズボタン120が半押し操作されるのを検出するまで、すなわち、SW1がON状態になるまで待機し、SW1がON状態になることでステップS7に進む。
ステップS7では、被写体輝度の測定(測光動作)が行われるとともに、焦点検出ユニット121において位相差検出方式による焦点調節状態の検出動作(焦点検出動作)が行われる。
これらの検出結果は、カメラシステム制御回路135に送られ、露出値(シャッタ速度および絞り値)およびデフォーカス量が演算される。そして、演算されたデフォーカス量に基づいて、AF制御回路140およびレンズシステム制御回路141の制御により結像光学系103のフォーカシングレンズを駆動してピント合わせを行う。また、演算された絞り値に基づいて絞り143を駆動して光通過口の開口面積を切り換える。
ステップS8では、操作検出回路136の出力に基づいてレリーズボタン120が全押し操作されているか否か、すなわち、SW2がON状態となっているか否かを判別する。ここで、SW2がON状態になっていればステップS9に進み、OFF状態になっていればステップS6に戻る。
ステップS9では、ミラー駆動機構を駆動することにより、ハーフミラー111およびサブミラー122を第3の光路状態(図5)とする。ステップS10では、先に演算されたシャッタ速度に基づいてシャッタ113を動作させることで撮像素子106を露光し、ステップS11で画像処理系により高精細画像の取り込みを行う。
なお、上述した撮影シーケンスは高精細画像の撮影を行う場合であり、高速連続撮影を行う場合には、上述したシーケンスとは一部異なるシーケンスとなる。すなわち、ハーフミラー111およびサブミラー122は第2の光路状態(図1)となり、シャッタ113はアパーチャを開いたままとなる。
このとき、結像光学系103からの光束は、ハーフミラー111により焦点検出ユニット121に反射される成分と、ハーフミラー111を透過する成分とに分けられる。そして、ハーフミラー111を透過した成分が、撮像素子106で受光されることで撮影が行われる。連続撮影を行う際には、ミラー駆動機構を駆動することがないため、ハーフミラー111は同じ状態(図1の状態)に保持される。
本実施例のカメラは、撮像した画像をディスプレイユニット107上でモニタしているときにも、焦点検出ユニット121において位相差検出方式による焦点調節状態の検出を行うことにより、高速な焦点調節動作(フォーカシングレンズの合焦駆動)を行うことができるように構成されている。
次に、ファインダモードの切り換え動作について説明する。
カメラ内の電気回路が動作している間は、各操作スイッチの状態が操作検出回路136を介して検出され、ファインダモード切り換えスイッチ123が操作されたことを検出すると、ファインダモード(OVFモードおよびEVFモード)の切り換え動作が直ちに開始される(図8のステップS3)。
図9は、ファインダモードの切り換え動作を説明するためのフローチャートであり、以下、このフローに沿って説明する。
ステップS100において、現在のファインダモードが検知され、ファインダモード切り換えスイッチ123の操作によりOVFモードからEVFモードへ切り換えられたときには、ステップS101へ移行する。一方、ファインダモード切り換えスイッチ123の操作により、EVFモードからOVFモードへ切り換えられたときにはステップS111へ移行する。
まず、OVFモードからEVFモードに切り換えられた場合について説明する。
OVFモードにおいては、ハーフミラー111およびサブミラー122からなる光路分割系が第1の光路状態(図3)となっている。EVFモードでは、光学ファインダに物体光を導かないため、まず、ステップS101において、カメラシステム制御回路135は、不図示の駆動源を駆動することによりアイピースシャッタ163を閉じ動作させる。すなわち、アイピースシャッタ163を、レンズ109bおよびレンズ109c間におけるファインダ光路内に進入させる。
これは、EVFモードが設定されているときに接眼レンズ109を介して物体像が見えなくなるのを撮影者がカメラの故障と誤解しないようにするためと、光学ファインダからの逆入光が撮像素子106に入射することによりゴーストが発生するのを防ぐためである。
ステップS102では、ファインダ内情報表示ユニット180の駆動制御により光学ファインダ内の情報表示を非表示状態とする。これは、ステップS101において、すでにアイピースシャッタ163を閉じ状態としているため、光学ファインダ内に情報表示を行っても撮影者はこの表示を見ることができないからである。これにより、電力消費を軽減して電池の消耗を抑えることができる。
ステップS103では、ミラー駆動機構を動作させることにより、ハーフミラー111を第2の光路状態(図1)に移行させるのに備えて、サブミラー122をミラーボックスの下部に退避させる(図1)。
ステップS104では、ミラーストッパ160、161をハーフミラー111の移動軌跡上から退避させる。ミラーストッパ160、161が退避した後、ステップS105では、ミラー駆動機構によりハーフミラー駆動レバー170を反時計方向に回転させる。これにより、ハーフミラー111は、不図示のトーションバネによる矢印A方向の付勢力を受けることで、図2に示す状態を経て第2の光路状態(図1)となる。
ハーフミラー111が第2の光路状態にあるときには、結像光学系103からの光束のうち一部の光束がハーフミラー111で反射して焦点検出ユニット121に導かれる。また、残りの光束は、ハーフミラー111を透過して撮像素子106側に向かう。
第2の光路状態では、ハーフミラー111が、トーションバネによる矢印A方向の付勢力を受けることにより、撮影光路外に配置されたミラーストッパ175、176に当接して位置決めされる。このとき、ピン173は、ハーフミラー駆動レバー170の第1カム面170bに当接しておらず、ピン174は、ハーフミラー駆動レバー170の第2カム面170cに当接していない。
ハーフミラー111の反射面の位置は、第1の光路状態においてサブミラー122の反射面があった位置と略等しくなっている。このように構成することで、サブミラー122(第1の光路状態)により焦点検出ユニット121に導かれる反射光と、ハーフミラー111(第2の光路状態)により焦点検出ユニット121に導かれる反射光とのズレを無くし、焦点検出領域の位置がほとんど変化しないようにすることができる。
ここで、ハーフミラー111を透過した光束が撮像素子106上で結像されることで形成される物体像のピント位置は、物体光がハーフミラー111を透過しない場合のピント位置に比べて若干ずれることがある。このため、ステップS106では、ピント位置のずれを補正するために、ピント補正モードを起動する。
第1の光路状態において、焦点検出ユニット121は、ハーフミラー111およびサブミラー122が撮影光路から退避(第3の光路状態)したときに、物体像が撮像素子106上にシャープに結像するように焦点検出信号を出力している。
これに対して、第2の光路状態でピント補正モードがオン状態にあるときは、ハーフミラー111を透過して撮像素子106上に投影された物体像がシャープに結像するように焦点検出ユニット121の焦点検出信号を補正する。これにより、第2の光路状態でピント補正モードが設定されている場合、第2の光路状態におけるフォーカシングレンズの合焦位置は、焦点検出ユニット121の焦点検出信号を補正した分だけ、第3の光路状態におけるフォーカシングレンズの合焦位置に対してずれる。
したがって、EVFモードが設定されている状態においてレリーズボタン120が全押し操作されて撮像動作がスタートし、第2の光路状態から第3の光路状態に切り換わるときには、これと同期してシャッタ113の先幕駆動機構をチャージ(シャッタ113を閉じ状態)するとともに、ピント補正モードにより物体像のピント位置を補正した分だけフォーカシングレンズを元の位置(第3の光路状態における合焦位置)に戻す。その後、シャッタ113を所定の時間だけ開いて撮像素子106による撮像を行う。
このように構成することにより、第2の光路状態においてディスプレイユニット107に表示された画像に基づいてピントの状態を正確に確認した上で、第3の光路状態でピントの合った画像を撮像することができる。
ステップS107では、シャッタ113の先幕だけを走行させてバルブ露光状態にして撮像素子116に連続的に物体光を導き、ディスプレイユニット107上に画像を表示するための撮像を可能にする。ステップS108では、ディスプレイユニット107の電源を投入する。
ステップS109では、撮像素子106にて連続的に物体像を撮像し、ディスプレイユニット107上でリアルタイム表示を開始し、一連のファインダ切り換え処理をリターンする。
EVFモード(第2の光路状態)では、結像光学系103から射出された物体光がハーフミラー111での屈折作用を受けるため、ディスプレイユニット107上にリアルタイム表示される物体の電子画像は、第3の光路状態において実際に撮像される画像に比べて僅かに上下方向にずれる。
図12は、第2の光路状態でディスプレイユニット107上に表示される画像と、第3の光路状態で実際に撮影される画像とのズレを説明するための図である。
同図において、190は第2の光路状態で撮像される撮像範囲(太線の枠で囲まれた領域)、すなわち、リアルタイム表示の際にディスプレイユニット107に出力可能な撮影画像の範囲である。191は、第3の光路状態で撮像される撮像範囲である。
撮像範囲190と撮像範囲191は上下方向にシフトした関係にあり、その結果、ディスプレイユニット107には出力可能であるものの第3の光路状態で撮像されない領域190a、すなわち、撮像範囲190のうち撮像範囲191と重ならない領域が存在する。
そこで、再生処理回路134は、図13に示すように図12の領域190aに相当する領域192を非表示状態とし、撮影範囲190全体をディスプレイユニット107で表示しないように処理する。これにより、ディスプレイユニット107には、撮像領域190のうち領域192を覗く領域(クレームでの一部の領域に相当する)が表示されることになる。こうすることによって、EVFモードでディスプレイユニット107に表示されているにもかかわらず実際には撮影されないという不具合を無くすことができる。
次に、ステップS100におけるファインダモードの判別により、EVFモードからOVFモードへ切り換えるためにステップS111へ移行した場合について説明する。
初期状態のEVFモードにおいては、ハーフミラー111とサブミラー122からなる光路分割系は第2の光路状態(図1)にあり、上述したようにディスプレイユニット107でリアルタイム表示が為されている。
ステップS111では、ディスプレイユニット107の電源をオフ状態にするとともに、撮像素子106による撮像を停止する。ステップS112では、シャッタ113の後幕を走行させてシャッタ113を閉じ状態とし、撮影に備えて先幕・後幕駆動機構をチャージする。
ステップS113では、ハーフミラー111の移動を可能にするためにミラーストッパ160、161をハーフミラー111の移動軌跡から退避させる。
ステップS114では、ハーフミラー駆動レバー170を図1中時計回りに回転させることにより、光路分割系であるハーフミラー111およびサブミラー122を図2の状態→図3の状態→図4の状態→図5の状態(第3の光路状態)となるように移動させる。
ハーフミラー駆動レバー170が時計方向に回転すると、ピン174は第2カム面170cに押し込まれて移動し、ピン173は第1カム面170bに押し込まれて移動する。これにより、ハーフミラー支持アーム171が回転軸171aを中心に時計方向に回転するとともに、ハーフミラー111がピン173を中心に時計方向に回転する。
ステップS115では、ミラーストッパ160、161をハーフミラー111の移動軌跡内に挿入させる。
第3の光路状態までハーフミラー111を移動させてからミラーストッパ160、161を挿入するので、ミラーストッパ160、161の挿入に際してハーフミラー111と衝突することはなく、ハーフミラー111の位置を切り換える際(OVFモードおよびEVFモード間の切り換え)の機構的信頼性を高くすることができる。
なお、本実施例ではハーフミラー111を第3の光路状態まで移動させているが、ミラーストッパ160、161がハーフミラー111に衝突しなければよいため、ハーフミラー111を第3の光路状態に相当する位置の近傍まで移動させてもよい。
ステップS116では、ハーフミラー駆動レバー170を図5中反時計回りに回転させることにより、ハーフミラー111を第3の光路状態(図5)から図4の状態を経て第1の光路状態(図3)とする。このとき、ハーフミラー111は、ミラー駆動機構内の不図示のバネの付勢力を受けてミラーストッパ160、161に当接した状態となる。
ステップS117では、アイピースシャッタ163を開く。
ステップS118では、操作検出回路136からの出力に基づいてマニュアル(M)フォーカスモードに設定されているか否かを判別し、マニュアルフォーカスモードであればステップS107に移行し、マニュアルフォーカスモードではなくオートフォーカスモードであれば、ステップ120に進む。
マニュアルフォーカスモードである場合には、焦点検出ユニット121を動作させる必要がなく、背景のボケ具合の把握が光学ファインダよりも電子画像表示の方が正確にできるので、ディスプレイユニット107でのリアルタイム表示を行うステップS107に移行する。
ステップS120では、焦点検出ユニット121に物体光を導くようにサブミラー122を所定の位置にセットする。すなわち、ミラーボックスの下部に収納(図5)されているサブミラー122を回転軸125を中心に回転させることにより、ハーフミラー111の背後に移動させる(図3)。
ステップS121では、光学ファインダ内情報表示ユニット180の駆動制御により所定の情報をファインダ内に点灯表示し、一連のファインダ切り換え処理を終了する。
次に、焦点検出ユニット121と焦点検出のための信号処理について説明する。
図1から図5において、164はコンデンサーレンズ、165は反射ミラー、166は再結像レンズ、167は焦点検出用センサである。
結像光学系103から射出し、ハーフミラー111(第2の光路状態のとき)又は、サブミラー122(第1の光路状態のとき)で反射した光束は、ミラーボックス下部のコンデンサーレンズ164に入射した後、反射ミラー165で偏向し、再結像レンズ166の作用によって焦点検出用センサ167上に物体の2次像を形成する。
焦点検出用センサ167には少なくとも2つの画素列が備えられており、2つの画素列の出力信号波形の間には、焦点検出領域上に結像光学系103によって形成された物体像の結像状態に応じて、相対的に横シフトした状態が観測される。前ピン、後ピンでは出力信号波形のシフト方向が逆になり、相関演算などの手法を用いてこの位相差(シフト量)を、シフト方向を含めて検出するのが焦点検出(コントラスト検出方式)の原理である。
図10と図11は、AF制御回路140に入力された焦点検出用センサ167の出力信号波形を表す図である。横軸は画素の並びを、縦軸は出力値を表している。図10は物体像にピントが合っていない状態での出力信号波形を示し、図11は物体像にピントが合った状態での出力信号波形を示す。
一般に、焦点検出のための光束は絞り開放の結像光束と同じではなく、結像光束の一部を使用して焦点検出が行われる。すなわち、焦点検出には暗いFナンバーの光束が用いられる。また、機構の誤差を考慮すると、撮像素子106の位置と焦点検出用センサ167の位置が厳密な意味で光学的に共役とはいえない。この結果、物体像にピントが合った状態であっても、2つの出力信号波形の間には僅かの初期位相差Δが残る(図11)。
これは、先に説明した電子画像表示のピントをシャープにするためのピント補正モードでの補正(図9のステップS106)とは異なるものである。初期位相差Δの存在自体は、これを2像の相関演算で検出された位相差から差し引けば真の位相差を知ることができるので、通常問題とはならない。
しかしながら、第1の光路状態におけるサブミラー122の反射面位置と、第2の光路状態におけるハーフミラー111の反射面位置が機構精度上完全には一致しないという問題があり、初期位相差Δも僅かに異なってくる。通常の部品加工精度では、およそ30μm程度は反射面がその法線方向にずれる可能性があり、この量を小さくしようとすると、
部品加工のためのコストが極めて高くなる。
そこで、第1の光路状態と第2の光路状態とで初期位相差Δをそれぞれ設定しておき、光路状態に応じて初期位相差Δの値を変更する。例えば、第1の光路状態および第2の光路状態における初期位相差Δをカメラシステム制御回路135内に設けられたメモリ135aに格納しておく。そして、ミラー(ハーフミラー111およびサブミラー122)の位置を検出したり、ファインダモード(EVFモードおよびOVFモード)を検出したりすることで、第1の光路状態や第2の光路状態における初期位相差Δを読み出すことができる。
このように構成することによって、何れの光路状態の場合にも良好な精度で焦点検出を行うことが可能である。
このように、まず初期位相差の考え方を使って、1組の信号の同一性を判別することで合焦状態の検知を行うことができる。また、相関演算を用いた公知の手法、例えば、上述した特許文献5に開示されている手法を用いて位相差を検出することにより、デフォーカス量を求めることができる。得られたデフォーカス量を結像光学系103のフォーカシングレンズを駆動すべき量に換算すれば、自動焦点調節が可能である。
この方法では、フォーカシングレンズを駆動すべき量があらかじめ分かるので、通常、フォーカシングレンズの合焦位置への駆動はほぼ1回で済み、極めて高速な焦点調節が可能である。
本実施例のカメラによれば、第2の光路状態においてディスプレイユニット107上で物体像の電子画像表示を行う際にも、第1の光路状態と同様に焦点検出ユニット107において位相差検出方式による焦点調節状態の検出を行うことができ、高速な焦点調節動作(フォーカシングレンズの合焦駆動)を行うことができる。また、第2の光路状態で連続撮影や動画撮影を行うようにすることで、高速な焦点調節動作が可能となる。しかも、上述した特許文献4のように焦点検出ユニットを、レンズ装置およびカメラ本体にそれぞれ設ける場合に比べてカメラの小型化を図ることができるとともに、コスト高になるのを防止することができる。
なお、本実施例では、第2の光路状態(図1)において結像光学系103からの射出光をハーフミラー111により焦点検出ユニット121に導き、焦点検出ユニット121で位相差検出方式による焦点調節だけを行っているが、これに加えてハーフミラー111を透過した光を用いて撮像素子106でコントラスト検出方式による焦点調節を行うようにしてもよい。
例えば、まず位相差検出方式による焦点調節によりフォーカシングレンズを合焦位置の近傍に移動させるとともに、コントラスト検出方式による焦点調節によりフォーカシングレンズを合焦位置に停止させることができる。これにより、フォーカシングレンズを合焦位置近傍まで素速く移動させることができるとともに、合焦位置の精度を高めることができる。
また、本実施例ではレンズ装置102およびカメラ本体101からなるカメラシステムについて説明したが、レンズ装置およびカメラ本体が一体で構成されているカメラについても本発明を適用することができる。この場合、図7のレンズシステム制御回路141は不要となり、カメラシステム制御回路135によってレンズシステム制御回路141の制御動作が行われる。
カメラ本体101には、焦点距離の異なる複数のレンズ装置102が着脱可能であることは上述のとおりである。したがって、当該装着されたレンズ装置102に対しては、本実施例で説明したようなカメラ本体101であるか、従来のカメラ本体であるかによって、カメラシステム制御回路135から送信されてくる信号が異なる。
すなわち、本実施例で説明したようなカメラ本体101との装着の場合、カメラシステム制御回路135とレンズシステム制御回路141との間では次のような制御を行うための通信が行われる。
カメラシステム制御回路135から第2の光路状態(第2のモード)を示す信号を受けたレンズシステム制御回路141は、絞り143の絞り開口を制御する。これは、従来のカメラ本体を用いた場合では、測光や撮影のために絞りを絞り込んでいるのに対し、本実施例でのカメラ本体101を用いた場合では、ディスプレイユニット(画像表示ユニット)107上に画像を表示するために露光量を調節するためである。また、従来のカメラ本体を用いたときの自動ピント調節や、本実施例のカメラシステムにおいて、レンズ制御回路141がカメラシステム制御回路135から第1の光路状態(第1のモード)を示す信号を受けた場合における自動ピント調整は、絞り開放で行う。
これに対し、本実施例のカメラシステムでは、第2の光路状態で絞り143を絞り込み中であっても、焦点検出ユニット121での検出結果に基づく結像光学系103でのピント調整を許可する。そして、本実施例のカメラシステムでは、第2の光路状態で絞り開口を変化させて撮影(例えば、連続撮影や動画撮影)を行った後に、絞り143の絞り開口を、ディスプレイユニット107上に画像を表示させるための状態に復帰させる。
本実施例によれば、結像光学系103からの光束をファインダ光学系に導く場合(第1の光路状態)や撮像素子に導く場合(第2の光路状態)には、ともに上記光束を焦点検出ユニット121にも導くようにしている。これにより、ファインダ光学系を介して物体像を観察するときはもちろんのこと、撮像素子により物体像を撮像する場合(例えば、連続撮影や動画撮影を行う場合)であっても、焦点検出ユニット121において位相差検出方式による焦点調節状態の検出を行うことができる。
このため、撮像素子106により物体像を撮像する際、コントラスト検出方式により焦点調節状態の検出を行う場合(従来)に比べて焦点調節動作を素速く行うことができる。しかも、上述した特許文献4のように焦点検出ユニットを2つ備える必要もないため、装置の大型化やコストアップを防止することができる。
また、撮像素子106により撮像された画像をディスプレイユニット107に表示して、この画像を観察する場合でも、上述したように焦点調節動作を素速く行うことができる。