JP2005272845A - ポリマー溶液の濾過方法及び溶液製膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリマー溶液の濾過において濾過寿命を長くできると共に濾過精度を高精度にできる。
【解決手段】ポリマーを溶媒に溶解したポリマー溶液中の異物を濾材で濾過するポリマー溶液の濾過において、ドープ原液41中の異物を濾過するための濾過装置30A〜30Cを3段設け、最後にドープ原液41中の異物以外の外部からの異物を除去する保障濾過装置30Dを設けた合計4段濾過の濾過を行うように構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明はポリマー溶液の濾過方法及び溶液製膜方法に係り、特にセルロースアシレートフィルムの製膜に使用されるセルロースアシレート溶液のドープ原液から異物を濾過する濾過方法及びドープ原液を濾過して得られたドープを用いてフィルムを製膜する溶液製膜方法に関する。
セルロースアシレート、特に57.5〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテートから形成されたフィルム(以下、TACフィルムと称する)は、その強靱性と難燃性とから写真感光材料のフィルムベースなどとして利用されている。また、TACフィルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルムやカラーフィルムの用途に適している。
TACフィルムは、一般的に溶液製膜方法により製造され、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーを溶媒(主に有機溶媒)に溶解してポリマー溶液(以下、ドープと称する)を調製した後、このドープを流延バンドや流延ドラムなどの流延支持体に流延して製膜する方法である。
溶液製膜方法に用いられるドープ中のポリマーには、天然素材を原料として用いるものがあり、その原料中には、ドープの有機溶媒に溶解しないものや、溶解しにくいものを少量含んでいる場合がある。また、ポリマー及びその他の原料中に含まれる不純物や、原料の搬送工程及び溶解工程で混入するゴミや埃などの異物などがドープ中に含まれる場合もある。なお、本発明において、ポリマーが溶媒に溶解しなかった未溶解ポリマー、ドープ中でゾル化しているポリマー、原料中の不純物、前記異物などの溶媒に溶解しないもの全てを異物と称する。これらの異物を含有するドープは、ドープを調製して流延するまでに濾過により除去され、これにより製膜されたフィルムに欠陥が生じるのを防止している。
従来、ドープ中の異物を濾過する考え方は、小さな異物まで全ての異物を濾過するのが一般的であり、例えば特許文献1では8μm以下の保有粒子径の濾紙で濾過するようにしている。
特開2000−256477号
しかしながら、ドープ中の異物を濾過する従来の濾過方法は、濾材が直ぐに目詰まりを起こしてしまい、濾過寿命が短いために、濾材を頻繁に取り替える必要があった。この結果、濾過効率の低下が生じたり、濾材費等のランニングコストが増大したりする等の問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、ポリマー溶液の濾過において濾過寿命を長くできると共に濾過精度を高精度にできるポリマー溶液の濾過方法及びその濾過方法を組み込むことでフィルムの品質を向上できる溶液製膜方法を提供することを目的とする。
発明者は、レーザー光散乱・回折法を用いて、ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物のサイズ分布に対する異物の存在数の関係を調べたところ、異物サイズが広い範囲で分布していると共に、複数のピーク、即ち複数の異物集団で構成されていることを発見した。そして、このように、異物サイズが広い範囲で分布している場合には、1回の濾過で異物を除去するのではなく、段階的に濾過することで、濾材の目詰まりを抑制して濾過寿命を長くすることができると共に、濾過精度も良くなるとの知見を得た。多段濾過は、例えば、各異物集団ごとに段階的に濾過してもよく、或いは1つの異物集団を複数段に細かく分けて濾過してもよく、複数の異物集団を隣り合う幾つかのグループに分けて段階的に濾過してもよく、要は多段濾過することで濾過寿命の延長及び濾過精度の向上を一層図ることができる。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、ポリマーを溶媒に溶解したポリマー溶液中の異物を濾過工程で濾過するポリマー溶液の濾過方法において、前記濾過工程を多段に設けて前記異物を多段濾過すると共に、前記濾過工程の前段に加熱器を設けて前記ポリマー溶液を加熱することを特徴とするポリマー溶液の濾過方法を提供する。
ここで、「濾過工程を多段に設ける」とは複数の濾過工程を直列に配置することを言う。
本発明の請求項1によれば、ドープを濾過する濾過工程を多段に設けることで、広い範囲で分布している異なるサイズの異物を段階的に除去することができるので、1つの濾過工程での負荷を小さくすることができる。これにより、濾過寿命を長くすることができると共に、濾過精度を良くすることができる。また、加熱器によりポリマー溶液の粗溶解液を加熱することで、粗溶解液中の溶媒に溶解していないポリマーなどの溶質の溶解し、この後に濾過工程を行う。
請求項2は請求項1において、前記加熱器へ前記ポリマー溶液を送る配管は保温あるいは加熱されていることを特徴とする。
加熱器へポリマー溶液を送る配管を保温あるいは加熱すれば、粗溶解液中の溶媒に溶解していないポリマーなどの溶質の溶解が進行する。
請求項3は請求項1又は2において、前記加熱器として、加熱手段を有する静的混合攪拌器で構成されたインラインミキサーを使用することを特徴とする。
このような加熱器を用いることが、ドープ調製時間の短縮のために好ましいからである。
請求項4は請求項3において、前記加熱手段は2枚の板を中心部から渦巻状に巻き上げ、2つの流路から構成されたスパイラル式熱交換器であることを特徴とする。
この構造は、プロセス液の流路断面積に対して、伝熱面積を広くとれるために、熱交換効率に極めて優れているからである。
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記加熱器で加熱した前記ポリマー溶液を冷却器で該ポリマー溶液の主要溶媒の沸点以下まで冷却してから前記濾過工程に送ることを特徴とする。
このように、加熱器で加熱されたドープは冷却器に送られて、該ドープを構成している主要溶媒の沸点以下まで冷却することが、良好な品質のフィルムを製膜するためのドープを調製するために好ましいからである。
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記ポリマー溶液は、セルロースアシレート溶液であることを特徴とする。
これは、写真感光材料のフィルムベース、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム等を溶液製膜方法で製膜するためのドープとして優れた適性を備えているセルロースアシレート溶液の濾過は、厳密な異物除去が要求されることから、従来の単一の濾過方法では目詰まりが極端に早くなる。従って、本発明の多段濾過をセルロースアシレート溶液に適用することは極めて有効である。特に、セルロースアシレート溶液の種類の中でも、セルロースアセテートがより好ましく、セルローストリアセテート(TAC)が最も好ましい。
請求項7は請求項1〜6の何れか1において、前記ポリマー溶液中の異物のサイズ分布に対する異物集団の存在状態に基づいて前記多段濾過の段数を設定することを特徴とする。
ここで、「異物集団の存在状態」とは、ドープ中に異物集団がどのように存在しているかの状態で、異物集団の分布数、それぞれの異物集団の大きさ(異物集団を構成する異物量)、それぞれの異物集団を構成する異物サイズ等をいう。このように、ドープ中における異物集団の存在状態を知ることで、それぞれの異物集団を除去するための最適な濾過条件を的確に設定することができる。従って、濾過寿命を長くすることができると共に、濾過精度を良くすることができる。濾過条件としては、濾材の平均孔径や材質(濾紙、金属フィルタ等)、濾材の使用前後の厚み変化率、濾過圧力、使用前の濾材の厚み、ポリマー溶液の濾過温度、濾過面積等がある。
本発明の請求項8は、請求項1〜7の何れか1において、前記多段濾過を行う各濾過工程は、上流側の濾過工程から下流側の濾過工程にいくに従って使用する濾材の平均孔径を小さくすることを特徴とする。
これにより、上流側の濾過工程から下流側の濾過工程に向けて、サイズの大径な異物から小径な異物の順に、順番に除去される。従って、上流側の濾過工程の濾材だけが早く目詰りすることがなく、上流側の濾材の濾過寿命も下流側の濾材の濾過寿命も均等化することができる。
本発明の請求項9は請求項8において、前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材の平均孔径は、それぞれの濾過工程で濾過する異物集団の存在状態に基づいて設定することを特徴とする。
即ち、各濾過工程で濾過する異物集団の分布数、異物集団の大きさ(異物集団を構成する異物量)、異物集団を構成する異物サイズ等を把握した上で使用する濾材の平均孔径を設定することにより、好適な濾過条件を的確に設定し易い。
本発明の請求項10は請求項8又は9において、前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材の材質は、異物集団の存在状態に基づいて、セルロース繊維、炭化水素系高分子繊維、金属繊維を使い分けることを特徴とする。
即ち、各濾過工程で使用する濾材は、濾材の性能、品質設計のし易さ、選択の自由度等が異なる。従って、異物集団の存在状態によって、セルロース繊維、炭化水素系高分子繊維、金属繊維を使い分けることにより、存在状態に応じて最適な濾材の材質を選択することができる。これにより、濾過寿命を長くできるだけでなく、多段の濾過工程のそれぞれにおける濾過寿命を均等化することができる。一般には、セルロース繊維又は炭化水素系高分子繊維の濾材と、金属繊維の濾材と比較すると、後者の方が高精細な濾過を行うことができるので、セルロース繊維や炭化水素系高分子繊維を上流側の濾過工程で使用し、金属繊維の濾材を下流側の濾過工程で使用することが好ましい。セルロース繊維の濾材としては濾紙が好ましく、炭化水素系高分子繊維の濾材としてはポリプロピレン、テフロンが好ましく、金属繊維の濾材としては焼結金属の濾材が好ましい。
本発明の請求項11は請求項8〜10の何れか1において、前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材は、水との接触角が40°以上の疎水性の濾材であることを特徴とする。
発明者は、ドープ中の異物の濾過における濾材の閉塞メカニズムについて調べたところ、濾材の孔径よりも小さな異物が濾材の孔を通過する際に、その一部が濾材の孔の内周面に吸着して徐々に濾材の孔を閉塞していき、濾材の見かけ上の孔径を小さくすることが分かった。そして、この吸着現象が濾過寿命を短期化させている大きな原因であるとの知見を得た。そこで発明者は、吸着現象の防止対策を鋭意研究したところ、吸着現象が濾材と異物との間で生じる水素結合が主たる要因であることを解明し、濾材として水との接触角が40°以上の疎水性を有する濾材を使用することで、水素結合が生じないようにして吸着現象を効果的に抑制できるとの知見を得た。これにより、濾過寿命を長くできるだけでなく、各異物集団の最小異物サイズに濾材の平均孔径を設定すれば、その異物集団の異物だけを精度良く濾過することができるので、各濾過工程での濾過寿命を均等化し易い。
ちなみに、親水性の濾材の場合、異物集団の最小異物サイズに濾材の平均孔径を設定しても、吸着現象により孔径が閉塞するので、設定した平均孔径よりも小径な異物までも必要以上に除去してしまう。従って、濾材を設定するときに予め吸着現象による平均孔径の縮小も想定して濾材の平均孔径を設定する必要があるので、各濾過工程での濾過寿命を均等化するのが難しい。
本発明の請求項12は請求項8〜11の何れか1において、前記多段濾過を行う各濾過工程は、濾材の使用前後の厚みの変化率が50%以下、濾過圧力が30kg/cm2 以下、使用前の濾材の厚みが0.5〜5mm、ポリマー溶液の濾過温度が25〜45°C、濾過面積が5〜100m2 、の濾過条件のうちの少なくとも1つの濾過条件を満足することを特徴とする。
これにより、多段濾過における各濾過工程での濾過寿命を長くでき、しかも各濾過工程での濾過寿命の均等化を促進することができる。濾材の使用前に比べて使用後の厚みが減少すると、実質的に濾材の孔径が減少し、濾過負荷が大きくなってしまうので、濾材の使用前後の厚み変化を所定範囲内に納めることが濾過寿命の向上や各濾過工程での濾過寿命の均等化に重要である。濾材の使用前後の厚みの変化率が50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。同様に、濾過圧力はできるだけ小さく保つことが重要であるが、各濾過工程での濾過寿命の長期化及び均等化を考慮すると、濾過圧力30kg/cm2 以下、好ましくは10kg/cm2 以下が好ましい。また、使用前の濾材の厚みも、各濾過工程での濾過寿命の長期化及び均等化に重要な因子であり、使用前の濾材の厚みが0.5〜5mm、好ましくは0.5〜3mmにすることが重要である。同様に、ポリマー溶液の濾過温度を25〜45°C、各濾過工程での濾過面積を5〜100m2 にすることが重要である。
本発明の請求項13は請求項8〜12の何れか1において、前記多段濾過の後に、直前の濾過工程で使用する濾材の平均孔径よりも大きな平均孔径の濾材を使用し保証濾過工程を配置したことを特徴とする。
即ち、ドープ中の異物除去を目的とした多段濾過の後に、ドープ中の異物以外の異物を除去することを目的とした保障的な濾過工程を設けるようにしたもので、これにより、多段濾過を行う各濾過工程での濾材交換時に、外部からの異物が万が一ドープに混入しても、保証濾過工程で除去することができる。
本発明の請求項14は請求項1〜13の何れか1において、前記溶媒は、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることを特徴とする。
これにより、環境に優しいだけでなく、非塩素系有機溶媒を主溶媒とした溶媒の方が濾材を疎水性にした際の濾過寿命を長くする効果が大きく、特に有効である。
本発明の請求項15は前記目的を達成するために、請求項1〜14の何れか1のポリマー溶液の濾過方法で得られたドープを流延支持体に流延して製膜することを特徴とする溶液製膜方法を提供する。
請求項1〜14の何れかのポリマー溶液の濾過方法で得られたドープを流延支持体に流延して製膜するようにしたもので、これにより溶液製膜方法のドープ調製工程における濾過効率が良くなるので溶液製膜方法の生産性を高めることができる。
請求項16は請求項15において、ポリマー溶液を共流延法により製膜するようにしたもので、共流延ごとのポリマー溶液に求められる異物の除去程度に応じて濾材を変えることができる。例えば、フィルムを3層の共流延で製膜して、表面層を形成するドープは高精度な濾過を行う濾材を使用し、中間層を形成するドープは比較的低精度な濾過を行う濾材を使用すれば、フィルムを1層の単流延で製膜して、全てのドープを高精度な濾過を行う場合に比べて濾過負荷を低減することができる。
以上説明したように本発明に係るポリマー溶液の濾過方法によれば、濾過寿命を長くできると共に濾過精度を高精度にできる。
また、本発明の濾過方法を組み込んだ溶液製膜方法によれば、フィルムの品質を向上できる。
以下添付図面に従って本発明に係るポリマー溶液の濾過方法及び溶液製膜方法の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係る溶液製膜方法を適用する溶液製膜装置のうち、ドープ調製ライン10であり、図4はドープ調製ライン10で調製したドープをフィルムに製膜するフィルム製膜ライン50である。そして、濾過する前までのポリマー溶液をドープ原液41、濾過した後の濾過液をドープ42と称して以下に、溶液製膜方法の手順に沿って説明する。
ドープ調製ライン10は、溶媒タンク11から必要な量の溶媒を溶解タンク12に送液する。溶媒タンク11には、溶媒(混合溶媒を用いるときも以下の説明においては、単に溶媒と称する場合もある)が注入されている。この溶媒は、溶媒タンク11と溶解タンク12との間に取り付けられている溶媒タンク開閉バルブ13により、送液量を調整しながら送液される。
次に、計量器14に仕込まれているポリマーを溶解タンク12に計量しながら送り込む。ポリマーは、前述した溶媒に対して15重量%〜20重量%仕込むことが好ましく、これにより調製されたドープを製膜して得られるフィルムの品質が良好なものが得られる。しかしながら、本発明において溶媒に仕込むポリマー量は前述した範囲に限定されるものではない。なお、ポリマーにはTACを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
さらに、可塑剤タンク15から可塑剤を溶解タンク12に送り込む。可塑剤タンク15と溶解タンク12との間には、可塑剤タンク開閉バルブ16が取り付けられており、必要量の可塑剤を溶解タンク12に送り込む。なお、可塑剤には、トリフェニルホスフェートを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、図1では、可塑剤を溶媒に溶解させた溶液として、溶解タンク12に送り込んでいるが、本発明はこの方法に限定されない。可塑剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク12に送り込むことも可能である。また、可塑剤が固体の場合には、計量器を用いて溶解タンク12に送り込むことも可能である。なお、本発明において溶解タンク12に送り込む可塑剤の量は、前述したポリマーに対して5重量%〜20重量%であると、調製されたドープから製膜されたフィルムの可塑性が製品として最も好ましい柔軟性を持つものが得られる。しかしながら、本発明において溶解タンク12に送り込む可塑剤の量は前述した範囲に限定されるものではない。
また、前述した説明においては、溶解タンク12に仕込む順番が、溶媒、ポリマー、可塑剤の順であったが、本発明は必ずしもこの順に限定されるものではない。例えば、ポリマーを計量し、溶解タンク12に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することも可能である。また、可塑剤は必ずしも溶解タンク12に予め送り込む必要はなく、後の工程でポリマーと溶媒との混合物に混合することもできる。また、溶解タンク12に可塑剤以外の例えばマット剤等の添加剤を送り込むことも可能である。
溶解タンク12には、モータ17により回転する攪拌翼18が備えられている。攪拌翼18が回転することにより、溶解タンク12内に送り込まれていた溶媒、ポリマー、必要に応じて送り込まれていた可塑剤及びその他の添加剤を攪拌することで、溶媒にポリマーなどの溶質を粗溶解させる。粗溶解とは、溶質が完全に溶媒に溶解していない状態を意味している。以下の説明においてこの粗溶解したドープ原液41を特に粗溶解液19と称する。なお、本発明において粗溶解液19を調製するために、溶解タンク12中で攪拌翼18により攪拌する時間は、30〜90分であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
貯蔵タンク20に一旦粗溶解液19を送り込み、溶解タンク12内を空にして、粗溶解液19を形成する工程を繰り返す連続バッチ式で行なうことが、コストの点から好ましい。貯蔵タンク20にも、モータ21で回転する攪拌翼22が備えられており、送り込まれた粗溶解液19を攪拌し、均一にする。貯蔵タンク20内の粗溶解液19は、ポンプ23により配管24を通り加熱器25に送液される。なお、本工程は、図示したものに限定されるものではない。
ポンプ23から加熱器25へ粗溶解液19を送液する際に、配管24が保温あるいは加熱されていることが好ましい。粗溶解液19が配管24内を送液される際にも加熱されることで、粗溶解液19中の溶媒に溶解していないポリマーなどの溶質の溶解が進行するために、短時間でドープ原液41を調製することができる。
次に、加熱器25により粗溶解液19を加熱することでフィルムの製膜に必要なポリマーなどの溶質が溶解したド−プ原液41を調製することができる。加熱時間は5〜30分、加熱温度は60〜120°Cであることが好ましいが、これら範囲に限定されるものではない。5分未満であると、ドープ原液41の調製が完全に行なわれないおそれが生じ、30分を超えて加熱しても、完全に必要な溶質成分が溶媒に溶解しているために時間の無駄であるとともに、調製されたドープ原液41の変質を招くおそれがあるからである。また、加熱温度も50°C未満であると、ドープ原液41の調製が完全に行なわれないおそれが生じ、120°Cを超えると必要な溶質成分の変性を招くおそれがあるからである。
加熱器25には、ドープ原液41を効率良く調製するために多管式熱交換器(シェル&チューブ方式)や2重管以上の管を備え加熱手段を有する静的混合攪拌器(スタチックミキサーとも称する)などのインラインミキサーを用いることが、ドープ調製時間を短縮するために好ましい。特に熱交換効率の観点から、スパイラル式熱交換器を用いることがより好ましい。スパイラル式熱交換器は2枚の板を中心部から渦巻状に巻きあげ、2つの流路から構成されている。この構造はプロセス液の流路断面積に対して、伝熱面積を広くとれるために、熱交換効率に極めて優れた機器である。また、加熱器25の材質は、耐食性の高いものを用いることが好ましく、具体的にはステンレス、チタン、ハステロイ(商品名)などから形成されたものを用いることがより好ましい。これにより、溶解タンク12の容量を変更することなく、ドープ原液41の量産のためのスピードアップが可能となる。
次に、加熱器25を経たドープ原液41を冷却器26に送り、ドープ原液41を構成している主要溶媒の沸点以下まで冷却することが、良好な品質のフィルムを製膜するためのドープ原液41を調製するために好ましい。なお、本発明においてドープ原液41を調製する方法は、必ずしも前述した加熱器25により行なう必要はない。例えば、配管24を加熱して粗溶解液19を送液するだけで、ドープ原液41を調製できることも場合によっては可能である。または貯蔵タンク20で、攪拌翼22を急速回転することでドープ原液41を調製することも場合によっては可能である。これらのようにドープ原液41を調製する方法は、必ずしも前述した加熱器25による加熱方法に限定されるものではない。
次に、上記の如く調製されたドープ原液41は、多段に配置された複数の濾過装置30A〜30Cにより多段濾過され、多段濾過の後で保障濾過装置30Dで保証濾過して得られたドープ42はドープ用タンク33に送液される。また、各濾過装置30A〜30Dを洗浄した後の廃液は、図示しない配管によりフィルタ洗浄後溶媒タンク34に送り込まれる。この廃液は、図示しない溶液処理装置により処理された後に、ポンプ35によりリサイクル溶液タンク36に送液される。このリサイクルされた溶媒は、ドープ調製用の溶媒として、溶解タンク12へ送り込まれて再使用される。
図1の多段濾過は、ドープ原液41中の異物を濾過するための濾過装置30A〜30Cを3段設けた例であり、この多段濾過の後に、ドープ原液41中の異物以外の外部からの異物を除去する保障濾過装置30Dを設けた。この場合、濾過装置30A〜30Dの間に他の装置を介在させないようにしたが、例えば、各濾過装置30A〜30Dでの濾過温度を一定にするための加熱器や冷却器等を設けてもよい。濾過装置30A〜30Dのうち、多段濾過を行う濾過装置30A〜30Cは並列に配置された2台の濾過器31、31で構成され、それぞれの濾過装置30A〜30Cごとに設けたポンプ28により切替器27を介して選択された濾過器31に送液される。一方、保障濾過装置30Dは、濾過負荷が小さいことから1台の濾過器31で構成したが、濾過装置30A〜30Cと同様に2台を並列に設けてもよい。
図2は濾過器31の要部断面図である。図示した濾過器31は、マルチフィルタ方式の濾過器の例であるが、例えば円筒式濾過器、フィルタープレス式濾過器などの公知の形態の濾過器を用いることができる。マルチフィルタ方式の濾過器31の利点は、フィルタ40が中空円筒状に形成されており、それを複数個(図では3個)設けることにより、濾過器31の大きさを変えることなく、ドープ原液41がフィルタ40に接する面積を増加させることができる。また、ドープ原液41を濾過装置30に一定流量で送液するために、図1に示すように、濾過装置30の下流側に流量計29が取り付けられている。流量計29で測定されたドープ42の流量値がポンプ28に送信され、ポンプ28の流量調整機構により、ドープ原液41の流量が調整された定量濾過方法にすることがより好ましい。
多段濾過を行う濾過装置30A〜30Cの濾過器31に使用するフィルタ40の材質としては、フィルタ40の性能、品質設計のし易さ、選択の自由度等が異なるので、セルロース繊維、炭化水素系高分子繊維、ステンレス金属繊維を使い分けることが好ましい。セルロース繊維のフィルタ40は濾紙が好ましく、炭化水素系高分子繊維のフィルタ40はポリプロピレン、テフロンが好ましく、金属繊維のフィルタ40は焼結金属が好ましい。
濾過装置30A〜30Cの段数は、ドープ原液41中の異物のサイズ分布に対する異物集団の存在状態を、レーザー光散乱・回折法により検出することにより設定される。例えば、図3のようなA、B、C、Dの4つの異物集団が存在するとした場合、サイズ分布に対する異物の存在量を測定することで、ドープ原液41中における異物集団の分布数を検出すると共に、各異物集団の大きさ(異物量)や異物集団を構成する異物サイズの分布状態等を検出する。そして、異物集団の存在状態に基づいて多段濾過の段数を設定する。例えば、分布する異物集団の大きさが同等の場合には、多段濾過の段数を異物集団の分布数と同じにすればよい。また、分布する異物集団の大きさが顕著に異なる場合には、多段濾過する各濾過工程での濾過負荷が均等化するように多段濾過の段数を設定することが好ましく、その場合の段数は2〜10段、好ましくは3〜6段の範囲である。更には、図3のA、B、C、Dの4つの異物集団のうち、異物集団Dはフィルムの品質に悪影響がなく除去する必要のない異物サイズの集団である場合には、多段濾過の段数から除外する。この多段濾過の段数を設定する場合、除去すべき各異物集団A、B、Cごとに段階的に濾過してもよく、或いは1つの異物集団を複数段に細かく分けて濾過してもよく、複数の異物集団を隣り合う幾つかのグループに分けて段階的に濾過してもよい。これにより、除去すべき異物集団A、B、Cのみを効率的に除去でき、品質上除去の必要のない異物集団Dを除去しないようにでき、しかも濾過寿命を大幅に長くすることができる。
そして、多段濾過する濾過装置の段数が決まったら、次に、上流側の濾過装置30Aから下流側の濾過装置30Cにいくに従って、使用するフィルタ40の平均孔径が小さくなるように設定する。これにより、上流側の濾過装置30Aから下流側の濾過装置30Cに向けて、サイズの大きな異物から順番に除去されるので、上流側の濾過装置30Aのフィルタ40だけが早く目詰りすることがなく、上流側と下流側の濾過装置のフィルタ40の濾過寿命を同等に長くすることができる。この場合の濾過装置30A〜30Cにおけるフィルタ40の平均孔径を決め方であるが、異物集団の存在状態に基づいてフィルタ40の平均孔径を設定することが好ましく、例えば、多段濾過の各濾過において除去すべき最小異物サイズにフィルタ40の平均孔径を設定する。しかし、親水性の材質のフィルタ40は、フィルタ40と異物との間の水素結合により、フィルタ40の孔が閉塞する吸着現象が生じ、これにより設定した平均孔径よりも小さなサイズの異物までも濾過するので、濾過負荷が大きくなり濾過寿命が短くなる。従って、各濾過装置30A〜30Cの濾過寿命が均一化されにくい。この対策としては、水との接触角が40°以上の疎水性のフィルタ40を使用することが極めて有効である。この疎水性のフィルタ40を使用することで、吸着現象が効果的に抑制されるので、多段濾過における各濾過工程のフィルタ40の平均孔径を、各濾過工程で濾過する必要のある最も小さい異物サイズに設定することで、その濾過装置で除去することを目的とした異物集団のみを除去することができる。従って、セルロース繊維のように親水性のフィルタ40の場合には、化学的或いは物理的な疎水化処理を施したものを使用することが好ましい。尚、濾過装置30A〜30Cにおけるフィルタ40の平均孔径を決め方は、上記した異物集団ごとに除去することに限定されるものではなく、上述したように各濾過装置で30A〜30Cで除去する異物量が均一化するようにしてもよい。この方法は、異物集団A、B、Cの大きさ(異物量)が大きく異なる場合に有効であり、何れにしても、異物集団A、B、Cの分布数、大きさ(異物量)、異物集団を構成する異物サイズの分布幅等の異物集団の存在状態に応じて決めることにより、各濾過装置30A〜30Cの濾過負荷の均等化を図ることができる。
また、各濾過装置30A〜30Cの濾過負荷の均等化を図り、濾過寿命を長くするには、上記した多段濾過における各濾過装置30A〜30Cでの平均孔径の適切な設定に加え、以下の濾過条件を設定することが好ましい。即ち、各濾過装置30A〜30Cでの使用前後のフィルタ40の厚みの変化率が50%以下、濾過圧力が30kg/cm2 以下、使用前の濾材の厚みが0.5〜5mm、ポリマー溶液の濾過温度が25〜45°C、濾過面積が5〜100m2 になるようにする。このように、各濾過装置30A〜30Cにおける濾過条件を最適化することにより、各濾過装置30A〜30Cでの濾過負荷の均等化を図り、濾過寿命を長くするという多段濾過の効果を一層高めることができる。
次に、ドープ調製ライン10で上記の如く調製されたドープ42は、フィルム製膜ライン50に送られて製膜される。
フィルム製膜ライン50は、図4に示すように、バンドゾーン51と乾燥ゾーン52とから構成されているものを示したが、本発明に用いられるフィルム製膜ライン50は図示したものに限定されるものではない。前述したドープ42が仕込まれているドープ用タンク33(図1も参照)は、ポンプ53とフィルタ54とを介してフィルム製膜ライン50に接続している。また、ドープ用タンク33には、モータ55により回転する攪拌翼56が取り付けられ、ドープ42を常に均一にしている。
バンドゾーン51には、支持ローラ57、58に掛け渡された無端状の流延バンド59が設けられており、この流延バンド59は、図示しない駆動装置により支持ローラ57、58が回転する。流延バンド59の上には、流延ダイ60が設けられている。ドープ42は、ドープ用タンク33からポンプ53により送液され、フィルタ54で仕上げ濾過された後に流延ダイ60に送られる。フィルタ54は、ドープ用タンク33にドープ42が仕込まれている間に大気中に含まれているゴミ、ホコリなどを除去するために取り付けられている。
流延ダイ60は、ドープ42を流延バンド59上に流延する。ドープ42は、流延バンド59で搬送されながら自己支持性を有するまで徐々に乾燥し、剥ぎ取りローラ61によって流延バンド59から剥ぎ取られてフィルム62が形成される。このフィルム62は、テンター装置63により搬送されながら乾燥される。なお、この際に少なくとも一軸以上が所定の幅に引き延ばされることが好ましい。テンター装置63から乾燥ゾーン52に送られたフィルム62は、乾燥ゾーン52内で、複数のローラ64に巻き掛けられて乾燥される。乾燥ゾーン52内の温度は、50〜150°Cの範囲に制御されることが、フィルム62の均一な乾燥のために好ましい。乾燥後のフィルム62は、巻き取り装置65に巻き取られる。
尚、本発明に用いられるポリマーは特に限定されないが、セルロースエステルを用いることが好ましい。また、セルロースエステルの中では、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、セルロースアセテートを使用することが好ましい。さらに、このセルロースアセテートの中では、その平均酢化度が57.5ないし62.5%(置換度:2.6ないし3.0)のセルローストリアセテート(TAC)を使用することが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明では、セルロースアシレート粒子を使用し、使用する粒子の90重量%以上が0.1ないし4mmの粒子径、好ましくは1ないし4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1ないし4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2ないし3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2ないし3mmの粒子径を有する。セルロースアシレートの粒子形状は、なるべく球に近い形状を有することが好ましい。
本発明に用いられる溶媒を、塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも可能であるが、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることがより好ましい。これは、非塩素系有機溶媒を主溶媒とした溶媒の方がフィルタ40を疎水性にした際に濾過寿命を長くする効果が大きいためである。
塩素系有機溶媒とは、一般的にハロゲン化炭化水素化合物を意味しており、代表的な例として、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また非塩素系有機溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などがあるが、これらに限定されるものではない。溶媒は、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶媒は、単独(100重量%)で使用しても良いし、炭素数1ないし6のエステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類を混合して使用するものでもよい。使用できる溶媒の例には、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなど)などが挙げられる。なお、本発明に用いられる有機溶媒には、前述した塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを混合して用いることも可能である。
本発明のドープ中には添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤などがある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては例えば、オキシベンゾフエノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル酢塩系化合物及びその他の紫外線吸収剤を用いることができる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。
マット剤としては、フィルムをハンドリングする際に傷が付いたり、搬送性が悪化することを防止するために、ドープ中に分散される微粒子であり、ブロッキング防止剤、キシミ防止剤とも称される。マット剤は、表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。また、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。好ましい突起物は突起物の平均高さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/ m2 であり、より好ましいのは1〜400mg/ m2 である。
マット剤は、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルローストリアセテートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、130、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物があげられ、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120、及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
さらにドープには、必要に応じてその他の種々の添加剤、例えば、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面括性剤などをドープの調製前から調製後のいずれかの段階で添加してもよい。
また、図4では、単層の流延ダイ60を用いたフィルム製膜ライン50の例で説明したが、図5に示すように、マルチマニホールドを備えた流延ダイ70による共流延による溶液製膜方法にも適用することができる。この流延ダイ70は、複数(図5では3個)のマニホールドが設けられている。マニホールド71、72、73に、それぞれ前述したドープ調製ラインで調製した裏面層用ドープ、中間層用ドープ、表面層用ドープが注入されており、流延ダイ70の内部でそれぞれのドープを合流させた後に、流延リボン74を流延バンド75上に流延してフィルムを形成する。また、共流延法は図示したマルチマニホールド方法に限定されず、フィードブロック法などの公知の方法で行ってもよい。
図6は、本発明を逐次的に流延(逐次流延)する溶液製膜方法に適用した例の概略の一部である。本方法では、支持ローラ80、81に掛け渡された無端状の流延バンド82が設けられており、支持ローラ80、81が図示しない駆動装置により回転すると、流延バンド82が周回移動する。流延バンド82上には、2個の流延ダイ83、84が配置されており、各流延ダイ83、84からは、前述したドープ調製ライン10で調製された裏面層用ドープ、表面層用ドープが流延され、フィルムが形成される。なお、本発明において、逐次流延による製膜は図示した2個の流延ダイに限定されず、3個以上の流延ダイを用いてもよい。
以下に本発明の溶液製膜方法の実施例及び比較例を説明するが、これに限定されるものではない。
濾過する前のドープ原液は、図1に示したドープ調製ライン10の濾過装置30A〜30D前までの工程を使用して調製し、表1に示すようにA1とA2の2種類のドープ原液41を調製した。
Figure 2005272845
A1のドープ原液の調製は、ドープの調製用の溶媒には、塩化メチレン(85重量%)とメタノール(12重量%)とブタノール(3重量%)とからなる混合溶媒を溶解タンク12に送液した。この混合溶媒100Lに対して、ポリマーであるセルロースアセテート(置換度2.84)を23kgになるように計量器14により溶解タンク12に送り込んだ。さらに、可塑剤であるTPPとBDPの混合物(重量混合比…TPP:BDP=2:1)1.2kgを溶解タンク12に送り込んだ。これら混合物を出力45kwのモータ17により攪拌翼18を80rpmの速さで30分攪拌して粗溶解液19を作成して、貯蔵タンク20に貯蔵した後、加熱器25に送液して85°Cまでインライン昇温し、10分間保持することにより、セルロースアセテート濃度19%のドープ原液を得た。
また、A2のドープ原液の調製は、ドープの調製用の溶媒には、酢酸メチル(75重量%)とアセトン(12.5重量%)とメタノール(6.25重量%)とブタノール(6.25重量%)とからなる混合溶媒を溶解タンク12に送液した。この混合溶媒100Lに対して、ポリマーであるセルロースアセテート(置換度2.75)を23kgになるように計量器14により溶解タンク12に送り込んだ。さらに、可塑剤であるTPPとBDPの混合物(重量混合比…TPP:BDP=2:1)1.2kgを溶解タンク12に送り込んだ。これら混合物を出力45kwのモータ17により攪拌翼18を80rpmの速さで30分攪拌して粗溶解液19を作成して、貯蔵タンク20に貯蔵した後、加熱器25に送液して85°Cまでインライン昇温し、10分間保持することにより、セルロースアセテート濃度19%のドープ原液を得た。
そして、本発明の実施例では、このように調製したドープ原液A1とA2のドープ原液41中の異物サイズに対する異物集団A、B、Cの存在状態を、レーザー光散乱・回折法により測定し、異物集団の存在状態に基づいて3段の多段濾過を行うと共に、多段濾過の後に、保証濾過装置を配置した。表2の各濾過装置1〜3が多段濾過であり、濾過装置4が保証濾過である。濾過装置1が上流側でドープ中の大径異物を除去し、濾過装置2が中径異物を除去し、濾過装置3が小径異物を除去する。各濾過装置の濾過条件は、表2の通りである。
一方、比較例では、従来のように、ドープ原液A1とA2を、それぞれ単一の濾過装置で濾過した。比較例の濾過装置の濾過条件は、小径異物まで除去可能な実施例の濾過装置3と同じにした。
Figure 2005272845
その結果、実施例では、4台の濾過装置ともに、100時間以上濾過を継続しても、濾材(フィルタ)の交換や洗浄が必要なく、安定して濾過を行うことができ、製膜されたフィルムの品質も良好であった。また、濾過装置2の濾材の材質をセルロース繊維を疎水化したものを使用したところ濾過装置2の濾過寿命が更に向上し、且つ濾過装置1〜3の濾過寿命をほぼ均等化することができた。
これに対し、単一濾過の比較例の濾過寿命は、実施例の約1/4程度であり、製膜されたフィルムの品質も実施例に比べて劣った。
本発明を適用した溶液製膜装置のドープ調製ラインの構成例を示す構成図 本発明のポリマー溶液の濾過方法に用いられる濾過装置の1例を示した要部断面図 ドープ原液中に分布される異物集団の一例を説明する説明図 本発明を適用する溶液製膜装置のフィルム製膜ラインの構成例を示す構成図 本発明の溶液製膜方法に用いられる他の実施の形態の要部概略図 本発明の溶液製膜方法に用いられる別の実施の形態の要部概略図
符号の説明
10…ドープ調製ライン、12…溶解タンク、25…加熱器、26…冷却器、30…濾過装置、40…フィルタ、40a…フィルタの孔、40b…フィルタの内周面、41…ドープ原液、42…ドープ、50…フィルム製膜ライン、52…乾燥ゾーン、59…流延バンド、60…流延ダイ、62…フィルム、63…テンター装置、65…巻き取り装置

Claims (16)

  1. ポリマーを溶媒に溶解したポリマー溶液中の異物を濾過工程で濾過するポリマー溶液の濾過方法において、
    前記濾過工程を多段に設けて前記異物を多段濾過すると共に、前記濾過工程の前段に加熱器を設けて前記ポリマー溶液を加熱することを特徴とするポリマー溶液の濾過方法。
  2. 前記加熱器へ前記ポリマー溶液を送る配管は保温あるいは加熱されていることを特徴とする請求項1のポリマー溶液の濾過方法。
  3. 前記加熱器として、加熱手段を有する静的混合攪拌器で構成されたインラインミキサーを使用することを特徴とする請求項1又は2のポリマー溶液の濾過方法。
  4. 前記加熱手段は2枚の板を中心部から渦巻状に巻き上げ、2つの流路から構成されたスパイラル式熱交換器であることを特徴とする請求項3のポリマー溶液の濾過方法。
  5. 前記加熱器で加熱した前記ポリマー溶液を冷却器で該ポリマー溶液の主要溶媒の沸点以下まで冷却してから前記濾過工程に送ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  6. 前記ポリマー溶液は、セルロースアシレート溶液であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  7. 前記ポリマー溶液中の異物のサイズ分布に対する異物集団の存在状態に基づいて前記多段濾過の段数を設定することを特徴とする請求項1〜6の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  8. 前記多段濾過は、上流側の濾過工程から下流側の濾過工程にいくに従って使用する濾材の平均孔径を小さくすることを特徴とする請求項1〜7の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  9. 前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材の平均孔径は、各濾過工程で濾過する異物集団の存在状態に基づいて設定することを特徴とする請求項8のポリマー溶液の濾過方法。
  10. 前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材の材質は、各濾過工程で濾過する異物集団の存在状態に基づいてセルロース繊維、炭化水素系高分子繊維、金属繊維を使い分けることを特徴とする請求項8又は9のポリマー溶液の濾過方法。
  11. 前記多段濾過を行う各濾過工程で使用する濾材は、水との接触角が40°以上の疎水性の濾材であることを特徴とする請求項8〜10の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  12. 前記多段濾過を行う各濾過工程は、濾材の使用前後の厚みの変化率が50%以下、濾過圧力が30kg/cm2 以下、使用前の濾材の厚みが0.5〜5mm、ポリマー溶液の濾過温度が25〜45°C、濾過面積が5〜100m2 、の濾過条件のうちの少なくとも1つの濾過条件を満足することを特徴とする請求項8〜11の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  13. 前記多段濾過の後に、直前の濾過工程で使用する濾材の平均孔径よりも大きな平均孔径の濾材を使用した保証濾過工程を配置したことを特徴とする請求項8〜12の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  14. 前記溶媒は、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることを特徴とする請求項1〜13の何れか1のポリマー溶液の濾過方法。
  15. 請求項1〜14の何れか1のポリマー溶液の濾過方法で得られたドープを流延支持体に流延して製膜することを特徴とする溶液製膜方法。
  16. 前記ドープを共流延法により製膜することを特徴とする請求項15の溶液製膜方法。
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