JP2005271193A - 表面被覆超硬合金切削工具 - Google Patents

表面被覆超硬合金切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】硬質皮膜の密着性を高め、耐摩耗性に優れた表面被覆超硬合金切削工具を提供することにある。
【解決手段】超硬合金基体の1部の表面に機械加工を施し、該超硬合金基体上に硬質皮膜を少なくとも1層以上有する表面被覆超硬合金切削工具において、切刃稜線部は基体表面から内部に向かって3μm以内の領域に該機械加工による0.2μm以下の結晶粒径を有するWC粒子の存在率が50%以下であり、基体表面の面粗さを示すRmax値が0.8μm以下であり、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜との界面におけるWC粒子と硬質皮膜の接触比率が70%以上であることを特徴とする表面被覆超硬合金切削工具である。
【選択図】図1

Description

本願発明は、硬質皮膜の密着性に優れた表面被覆超硬合金切削工具に関する。
表面被覆超硬合金切削工具は、4a、5a、6a族の炭化物、窒化物、炭窒化物から選ばれた1種以上と、Fe、Ni、Co、Mo、Crの1種以上よりなる超硬合金の粉末を成形・焼結した後に、切刃稜線部を所定の形状に加工することにより超硬合金基体を得、その表面に、TiC、TiCN、Alなどの所定の硬質皮膜を化学蒸着法(以下、CVD法という。)又は物理蒸着法(以下、PVD法という。)により1層以上成膜することにより作製され、広く用いられている。硬質皮膜の密着性を向上するために、加工変質層の低減、基体表面の表面粗さの調整、η相の低減等の技術が、以下の特許文献1から4に開示されている。
特許文献1は、加工変質層を低減する方法としてエッチング処理により、加工変質層を除去する方法が開示されている。しかし、エッチング処理により加工変質層を除去しても、表面の粗さが大きい場合には、凹部に形成された膜の結晶の成長する方向が重なることにより、結晶粒界にクラックが生じやすくなり、その密着性は十分とはいえない。
特許文献2は、表面粗さの調整方法としてブラシ加工することにより、表面粗さRaを0.15〜0.4μmとした基体表面に硬質被膜を被覆した切削工具が開示されている。
特許文献3は、機械加工後に電解研磨をすることにより加工変質層の低減と表面の凹凸を調整する方法が開示されている。しかし加工方法の制御により表面粗さを規定しても、基体表面に埋没した加工変質層の除去が十分でない場合は、基体と硬質皮膜の密着性は十分とはいえない。加工変質層の除去と基体表面の凹凸を規定しても、界面に結合相が多い場合には、良好な密着性を示すWCと硬質皮膜との結合が減じるため、必ずしも良好な密着性が得られない。
特許文献4は、ブラシ加工等にレーザー照射処理等を併用することにより、基体表面のη相の領域割合を5%以上、40%以下、基体表面の粗さRmaxを0.15〜1.3μmとした硬質被膜被覆切削工具が開示されている。しかしη相の量と基体表面の粗さを規定した場合でも、界面に結合相、空隙、η相が多くWC粒子と硬質皮膜との結合が少ない場合には、界面基体と硬質皮膜の密着性が十分でない場合があった。
特開平8−257809号公報 特開平6−108253号公報 特開2000−212743公報 特許3468221号公報
本願発明の目的は、硬質皮膜の密着性を高め、耐摩耗性に優れた表面被覆超硬合金切削工具を提供することにある。
本願発明は、超硬合金基体の1部の表面に機械加工を施し、該超硬合金基体上に硬質皮膜を少なくとも1層以上有する表面被覆超硬合金切削工具において、切刃稜線部は基体表面から内部に向かって3μm以内の領域に該機械加工による0.2μm以下の結晶粒径を有するWC粒子の存在率が50%以下であり、基体表面の面粗さを示すRmax値が0.8μm以下であり、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜との界面におけるWC粒子と硬質皮膜の接触比率が70%以上であることを特徴とする表面被覆超硬合金切削工具である。本構成を採用することによって、硬質皮膜と基体界面との空隙が減少し、加工変質層も低減することから、表面被覆超硬合金切削工具の密着性が向上して高寿命化が可能となる。ここでいう加工変質層とは、加工屑であり、加工により破砕した微細なWC粒子が基体表面近傍の結合相に埋没したものに代表されるものである。加工変質層の存在は超硬合金基体と硬質被膜の密着性を低下させるため低減する必要がある。
本願発明によって、表面被覆切削工具の超硬合金表面近傍における微細WC粒子の存在率と基体表面の粗さと界面でのWC粒子と硬質皮膜の接触比率を規定することによって、硬質皮膜の密着性に優れた表面被覆切削工具を提供することができる。
本発明は、表面被覆超硬合金切削工具の切刃稜線部の表面近傍、即ち基体表面から内部に向かって3μm以内の深さ領域において、0.2μm以下の結晶粒径を有するWC粒子の存在率を50%以下にすることにより、基体界面と硬質皮膜との界面の不要な加工変質層を低減し、空隙も減少する。このことは機械加工による破砕等の影響を受けない良好な状態のWC粒子が、基体表面に多く存在することを意味する。そしてこのWC粒子が、硬質皮膜と高頻度で接触して、高い密着性を有することになる。更にη相量も低減するため、表面被覆超硬合金切削工具における硬質皮膜の密着性の向上に有効に作用する。より好ましくは、結晶粒径0.2μm以下のWC粒子の存在率が40%以下として加工変質層を低減すると、より密着性が高く表面被覆超硬合金切削工具の高寿命化が可能となる。
結晶粒径0.2μm以下のWC粒子の存在率が50%を超えて大きいと言うことは、加工により破砕された微細なWC粒子の存在が多くなることを意味する。しかも微細なWC粒子は結合層中に埋没して残存するため、良好な密着性に寄与するWC粒子としては機能しない。この場合、硬質皮膜との接触面は結合層であるCo相となり、破砕された0.2μm以下のWC粒子自体も脱落しやすいため、密着性の阻害要因となる。従って、基体界面と硬質皮膜との界面の不要な加工変質層、空隙、更にη相量も増加することは、表面被覆超硬合金切削工具における硬質皮膜の密着性が低下するという不都合がある。そこで、本願発明はWC粒子の存在率を50%以下に規定する。
機械加工等によって基体表面全面の面粗さRmaxを0.8μm以下にすることが必要である。面粗さのRmaxが0.8μm以下であることにより、表面に加工変質層やキズが少なく、硬質皮膜と基体界面の空隙が減少する他、凹凸による硬質皮膜のクラックが減じるため、表面被覆超硬合金切削工具の密着性が向上する。一方、Rmaxが0.8μmを超えて大きいと、加工表面にキズなどが多数存在するため、表面のWC結晶が焼結肌のように角ばった状態となっている。そのため、表面の加工変質層やキズの存在により、硬質皮膜と基体との界面に空隙が発生し、凹凸による硬質皮膜のクラックが発生したりするため、硬質皮膜の密着性には不都合である。そこで、本願発明は基体表面全面の面粗さRmaxを0.8μm以下に規定する。
更に、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜との界面において、WC粒子と硬質皮膜の接触部の比率は70%以上とする。更に、比率が80%以上であることが、より好ましい状態である。0.2μmを超えて大きいWC粒子に接触している硬質皮膜は、欠陥の少ない硬質皮膜として成長する。そこで、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜との接触比率を70%以上とすれば、表面被覆超硬合金切削工具における硬質皮膜の密着性が向上する。一方、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触部の比率が70%未満の場合は、硬質皮膜の密着性を低下させるため、不都合である。そこで、本願発明は0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触部の比率は70%以上であり、更に、比率は80%以上であることが、より好ましい状態である。但し、ここで言う0.2μmを超えて大きいWC粒子とは、機械加工による破砕等の影響を受けない良好な状態のWC粒子のことであり、加工変質層に含まれる結晶粒径0.2μm以下のWC粒子は含まない。
基体表面から3μm以内に存在するWC粒子のうち、結晶粒径0.2μm以下の粒子の存在率を評価する方法は、表面被覆超硬合金切削工具の断面組織を日立製作所製S4200型の電界放射走査型電子顕微鏡を用いてにより加速電圧5.0kVで観察し、領域内のWC粒子の個数と結晶の平均粒径を計測することにより算出した。基体の切断面を研削加工とダイヤモンドペーストを用いたラップ加工をした後、電子顕微鏡を用いて切刃稜線部の硬質皮膜と基体との界面を10、000倍で観察した。得られた断面観察像を画像解析ソフト(株式会社プラトロン製Image−ProPlus)を用いて、基体界面から3μm深さまでのWCの結晶の平均粒径と個数を測定した。領域内のWC粒子のうち、結晶粒径0.2μm以下の粒子の個数を領域内の全WC粒子の個数で除して、結晶粒径0.2μm以下のWC粒子の存在率を算出した。同様の画像と解析ソフトを用いて、画像内の基体界面の長さと界面のうち、WC粒子と硬質皮膜の接触している長さを測定した。また、超硬合金基体表面部の面粗さRmaxの評価方法は、表面被覆超硬合金切削工具の断面組織を電子顕微鏡観察により観察し、同様の画像と解析ソフトを用いて、基準長さを5μmとして、この基準部分の山頂線と谷底線との距離を計測することにより求めた。ここで基準長さを5μmとしたのは、表面のうねりの影響を排除するためである。界面の0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触部の比率の評価方法は、表面被覆超硬合金切削工具の断面組織を電子顕微鏡観察により観察し、同様の画像と解析ソフトを用いて、観察像の界面の全長と0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜が接触する部分の長さを測定し、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触している長さを基体界面の長さで除して、界面での0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率を算出した。
本願発明の更に好ましい形態は、該超硬合金基体表面において、すくい面側の機械加工領域をM、すくい面側の曲率を有する領域の曲率半径をRaとした時、M/Ra≧0.7であり、また逃げ面側の機械加工領域をN、逃げ面側の曲率を有する領域の曲率半径Rbとした時、N/Rb≧0.8となることである。図1は、表面被覆超硬合金工具の外観を示す斜視図の1例であり、切刃稜線1、すくい面2、逃げ面3が表されている。図2は図1のA−A’断面図であり、すくい面2、逃げ面3が表されている。図3は図2の断面図を45°傾斜した図であり、その頂点である切刃稜線1、すくい面側の曲率を有する領域4、逃げ面側の曲率を有する領域5が表されている。すくい面側の曲率を有する領域4の曲率半径値をRa、及び逃げ面側の曲率を有する領域5の曲率半径値をRbは、ホーニング形状測定器(NOVATEC社製NOVAGRAPH、NG01型)を用いて測定した。図4は、機械加工された処理領域を示す図である。切刃稜線1からすくい面2側への機械加工領域6及び切れ刃稜線1から逃げ面3側への機械加工領域7を説明する図である。切刃稜線1からすくい面2側への機械加工領域6の長さM、及び切刃稜線1から逃げ面3側への機械加工領域7の長さNは、表面被覆超硬合金切削工具の表面を日立製作所製S3500N型の電子顕微鏡を用いて加速電圧15・0KV、倍率100倍で観察することにより求めた。また、A値をM/Raとし、B値をN/Rbとし、それぞれ計算によりを求めた。ここで、A値は、すくい面側の曲率を有する領域を超えて機械加工される割合を示す数値であり、Bは逃げ面側の曲率を有する領域を超えて機械加工される割合を示す値である。本願発明においては、A≧0.7、B≧0.8であることが好ましい数値範囲である。そこで、上記数値限定の理由を以下に述べる。A値が0.7以上であることにより、切り屑が初期に接触する範囲の凹凸が小さく、硬質皮膜と基体界面の空隙が減少する他、凹凸による硬質皮膜のクラックが減じるため、表面被覆超硬合金切削工具の耐クレータ性が向上する。一方、Aが0.7未満であると、切り屑が初期に接触する領域に凹凸が大きい部分が生じるため、硬質皮膜と基体との界面に空隙が発生し、凹凸による硬質皮膜のクラックが発生したりする。そのため、硬質皮膜の耐クレータ性には不都合である。そこで、本願発明はA値を0.7以上とすることが好ましい。また、B値が0.8以上であることにより、被削物と接触する領域の凹凸が小さく、硬質皮膜と基体界面の空隙が減少する他、凹凸による硬質皮膜のクラックが減じるため、表面被覆超硬合金切削工具の耐剥離性が向上する。一方、B値が0.8未満であると、被削物と接触する領域に凹凸が大きい部分が生じるため、硬質皮膜と基体との界面に空隙が発生し、凹凸による硬質皮膜のクラックが発生したりする。そのため、硬質皮膜の耐剥離性には不都合である。そこで、本願発明はB値を0.8以上とすることが好ましい。これにより表面被覆超硬合金工具の耐磨耗性と耐クレータ性のバランスが良くなる。更に好ましくはA値を0.9以上、B値を1.2以上にすると、より多くの切削方法に対応することが可能になる。
超硬合金基体の切刃稜線部は、機械加工により用途に応じ所定の形状に作製される。機械加工の方法としては、弾性砥石加工、ブラシ加工、研削加工等がある。本願発明では、加工変質層の低減、表面粗さやWC粒子と硬質皮膜との接触比率の制御を行うために、切刃稜線部の形状加工において、SiC砥粒入りナイロンブラシ加工を採用した。このことにより、加工変質層の発生量を低減することが可能である。更にSiC砥粒の粒度が細かく線径の細いブラシで加工変質層の除去することが可能である。
本願発明の超硬合金基体上に被覆する硬質膜は、TiC、TiCN、Al2O3等の周期律表の4a、5a、6a族元素、アルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物の中から選ばれた1種以上を単層または、複数層を形成した。硬質被膜の膜厚は、1〜15μmで形成した。以下、本願発明に基づいた表面被覆超硬合金切削工具の実施形態について説明するが、本願発明は実施例に限定されるものではない。
WC:72質量%、TiC:8質量%、(Ta、Nb)C:11質量%、Co:9質量%の組成を有する超硬合金を基体とした。切刃稜線部を320番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシ用いてホーニング加工をした。更に500番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシで仕上げ加工を行い、ブラシ加工条件を調整することにより表1に示した本発明例1から6を作製した。
Figure 2005271193
また、本発明例と比較するため、本発明例と同じ成分、同じ形状の超硬合金基体を用いて、比較例7から11を作成した。比較例7は切刃稜線部を80番のSiC砥粒を含有した弾性砥石でホーニング加工を行った。比較例8は切刃稜線部を80番のSiC砥粒を含有した弾性砥石でホーニング加工をし、500番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシで仕上げ加工を行った。比較例9は切刃稜線部を80番のSiC砥粒を含有した弾性砥石でホーニング加工をし、表面をHF−HNO−CHCOOH−4・HClの混合液25℃で5分間エッチング処理を行った。比較例10は切刃稜線部を240番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシ用いて、ホーニング加工をし、500番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシで仕上げ加工を行い、その時のブラシ加工条件を調整した。比較例11は切刃稜線部を320番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシ用いて、ホーニング加工をし、500番のSiC砥粒を含有したナイロン製ブラシで仕上げ加工を行い、その時のブラシ加工条件を調整した。
本発明例1から6、比較例7から11の表面加工済み基体を中性洗浄剤中で超音波洗浄し、CVDコーティング装置を用いて、基体側からTiN、TiCN、Al、TiNとなる多層被覆を形成して表面被覆超硬合金切削工具を得た。本発明例1から6と比較例7から11を用いて、Ra、Rb、M、N、A値、B値、切刃稜線部の基体表面から内部に向かって3μm以内に存在する0.2μm以下の結晶粒径を有するWC粒子の存在率、基体表面の面粗さを示すRmax値、基体表面と硬質皮膜との界面における0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率を算出した結果を表1に併記した。
本発明例1から6と比較例7から11を夫々5個使用して硬質皮膜の密着性、耐クレータ性を評価するため、下記の切削試験を行った。切削条件を以下に示す。
切削条件1は、断続切削による衝撃回数が3、000回に達した時点での膜剥離などの観察を行った結果、切削条件2は、断続切削による衝撃回数が5000回に達した時点での膜剥離などの観察を行った結果、切削条件3は、連続切削試験後のすくい面の摩耗量を測定した結果、を表1に併記した。
(切削条件1)
被削材:SCM435
被削材形状:丸棒材、4本溝入り
インサート形状:JIS規格CNMG120408
切削速度:180m/min
送り量:0.4mm/回転
軸方向切込み量:1.5mm
加工方法:湿式切削
(切削条件2)
被削材:SCM440
被削材形状:板材
インサート形状:JIS規格CNMG120408
切削速度:250m/min
送り量:0.2mm/回転
軸方向切込み量:1.5mm
加工方法:湿式切削
(切削条件3)
被削材:SCM435
被削材形状:丸棒材
インサート形状:JIS規格CNMG120408
切削速度:200m/min
送り量:0.3mm/回転
軸方向切込み量:1.5mm
加工方法:湿式切削
切削時間:30分
本発明例は、0.2μm以下のWC粒子の存在率、基体表面の表面粗さRmax値、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率、機械加工領域/曲率を有する領域の曲率半径等、全ての項目が、本願発明の規定値を満足することから、比較例と比べて硬質皮膜の剥離頻度、クレータ磨耗量も少なく、優れた性能を示した。特に、本発明例6は、0.2μm以下のWC粒子の存在率が14.8%、Rmaxが0.31μm、界面での0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率が87.8%であり、A値が0.96、B値が1.27であり、膜剥離の発生は見られず、クレータ磨耗量も少なく、優れた性能を示した。比較例7、8は、Rmaxが0.8μm以下、0.2μm以下のWC粒子の存在率が61.1%、53.5%と何れも50%を超えていため、いずれも膜剥離を生じ、すくい面の摩耗も大きかった。比較例9は、0.2μm以下のWC粒子の存在率が8.7%と50%以下であったが、Rmaxが0.8μmを超えたため、膜剥離の発生率が高く、すくい面の磨耗も大きかった。比較例10は、0.2μm以下のWC粒子の存在率が50%以下、Rmaxが0.8μm以下であったが、界面での0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率が68.5%と70%未満であったために膜剥離の発生率が高く、すくい面の磨耗も大きかった。比較例11は、0.2μm以下のWC粒子の存在率が33.5%、Rmaxが0.43μm、界面での0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜の接触比率が82.1%であったが、A値が0.6以下、B値が0.9以下であったために膜剥離の発生率が高く、すくい面の磨耗も大きかった。比較例7から11は何れも本願発明が規定する数値範囲を全て満たしていなかったため、硬質皮膜に良好な密着性や耐クレータ性が得られなかった。
比較例が本発明例の様に良好な密着性が得られなかった理由として、第1に、切刃稜線部を所定形状に加工したときに生じる加工変質層が、皮膜形成時の皮膜の収縮により基体から剥離しやすく、剥離した場合には皮膜と基体の界面に空隙を形成し、第2に、加工変質層があると、基体と硬質皮膜の界面に脆化層であるη相が発生しやすく、切削中にη相が脱落して硬質皮膜の密着性を低下させてしまうい、第3に、機械加工する領域が少ないと、切り屑や被削物と接触する領域に凹凸が大きい部分が生じるため、硬質皮膜の密着性を低下させてしまう、と考えられる。
図1は、本願発明の表面被覆超硬合金工具の斜視図を示す。 図2は、図1のA−A’断面図を示す。 図3は、図2の断面図を45°傾斜した図を示す。 図4は、機械加工された処理範囲を示す。
符号の説明
1:切刃稜線
2:すくい面
3:逃げ面
4:すくい面側の曲率を有する領域
5:逃げ面の曲率を有する領域
6:すくい面側への機械加工領域
7:逃げ面側への機械加工領域

Claims (1)

  1. 超硬合金基体の1部の表面に機械加工を施し、該超硬合金基体上に硬質皮膜を少なくとも1層以上有する表面被覆超硬合金切削工具において、切刃稜線部は基体表面から内部に向かって3μm以内の領域に該機械加工による0.2μm以下の結晶粒径を有するWC粒子の存在率が50%以下であり、基体表面の面粗さを示すRmax値が0.8μm以下であり、0.2μmを超えて大きいWC粒子と硬質皮膜との界面におけるWC粒子と硬質皮膜の接触比率が70%以上であることを特徴とする表面被覆超硬合金切削工具。
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