JP2005270163A - 医療用メス - Google Patents

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Abstract

【課題】 切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性に優れ、ひいては長寿命化を可能にした医療用メスを提供する。
【解決手段】 一実施形態では、鋼製医療用メスの刃先部1を、0.02μmを超え0.5μm以下の厚さの硬質炭素膜2で被覆する。別の実施形態では、鋼製医療用メスの刃先部1の片面1bのみを硬質炭素膜2bで被覆する。硬質炭素膜2bの厚さは0.02μmを超え0.5μm以下であることが好ましい。さらに別の実施形態では、鋼製医療用メスの刃先部1の片面1aを、極薄の第1硬質炭素膜2cで被覆し、かつ刃先部1の他方の面1bを、第1硬質炭素膜2cより厚い第2硬質炭素膜2dで被覆する。第1硬質炭素膜2cの厚さは0.02μmを超え0.1μm以下であり、かつ第2硬質炭素膜2dの厚さは0.1μmを超え0.5μm以下であることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は医療用メスに関し、より詳細には硬質炭素膜を被覆した医療用メスに関する。
医療用メスには大別して使い捨て型と繰返し使用型がある。使い捨て型メスは、炭素工具鋼製、ステンレス鋼製が主であり、通常、滅菌して一度使用した後廃棄される。また繰返し使用型メスは、金属製メスの表面に防錆を目的としてニッケルめっきを施したメス及び表面被覆処理無しのステンレス鋼製メスがある。これらは使用の度に消毒して繰返し使用される。
上述の使い捨て型炭素工具鋼製メスは、安価で高硬度、かつ切れ味が優れている反面、使用の度に医療廃棄物が増える。また、使用済みの医療用メスは、触れることでエイズ、肝炎等、感染性疾患を引き起こす危険性があり、取り扱いには極めて慎重を要し、リサイクル・廃棄等、その処理が煩雑である。また、使い捨て型ステンレス鋼製メスは、安価であるが、炭素工具綱メスと同様に医療廃棄物の増加をもたらすと共にその処理に窮する。
一方、市販されている繰り返し使用型のニッケルめっきを施したメスは、耐食性に優れ、高硬度かつ切れ味が良好である反面、金属ニッケルはアレルギーによる皮膚炎発生や発ガン性が疑われており、医療器具としては適正を欠く等の問題がある。また繰返し使用型の表面被覆処理無しのステンレス鋼製メスでは、炭素工具鋼製メスに比べ耐食性に優れているが、塩水に対して腐食が生じる場合もある。
医療廃棄物の低減という観点から、医療用メスを長寿命化して繰り返し使用することが好ましい。しかし、従来の炭素工具綱又はステンレス綱製の医療用メスでは、使用初期は刃先が鋭敏で切れ味が良いが、図6(A)に示されるように、比較的短時間で刃先先端が摩耗して丸くなり切れ味が悪くなるという欠点がある。そこで、硬質炭素膜の超硬質性等の機能に着目して硬質炭素膜で被覆したメスが提案されている(特許文献1参照)。
特開昭62−117546号公報
しかし、炭素工具綱又はステンレス綱等の材質には硬質炭素膜が密着しにくく、特に膜厚が厚い場合(例えば、上述の特開昭62−117546号公報では2μmの膜厚が例示されている)、図6(B)に示されるように、はく離しやすいという欠点があった。また、硬質炭素膜は摩擦係数が小さいため、膜厚が増加すると刃先が滑る、また刃先先端が丸くなる等の原因から切れ味が劣るという課題があった。
本発明は、上述したような課題を解決するために提案されたもので、その目的は、切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性に優れ、ひいては長寿命化を可能にした医療用メスを提供することである。
さらに、本発明の目的は、刃先の被加工材に対するくい込みを向上させることで、さらに切れ味性を改善した医療用メスを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明の医療用メスは、請求項1に記載のように、鋼製医療用メスの少なくとも刃先部を、0.02μmを超え0.5μm以下の厚さの硬質炭素膜で被覆したことを特徴とする。
ここで、硬質炭素膜は、いわゆるDLC(Diamond-Like Carbon)膜を意味し、かつ膜中に基材との密着性又はその他の特性を改善するための異種成分やその中間層を含む膜及びそれらを含まない膜を包含する。
この硬質炭素膜は耐摩耗性・耐食性に優れるため、メスの長寿命化を図る上で好適である。しかし、硬質炭素膜の厚さが厚い場合は、膜のはく離が生じやすい。また、硬質炭素膜は摩擦係数が小さいため、膜厚が増加すると刃先が滑る、また刃先先端が丸くなる等の原因から切れ味が劣る。そこで、硬質炭素膜の厚さを0.5μm以下にすることにより、それを抑制することができる。すなわち従来のコーティングメスが持つ膜のはく離、切れ味性の課題を解消あるいは軽減することができる。一方、膜厚が0.02μm以下では、硬質炭素膜の特性である耐摩耗性が十分に発揮されない。また、耐食性という観点からも0.02μm以下では不十分である。従って、上記範囲内の膜厚の硬質炭素膜を有する医療用メスは、切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性に優れ、ひいては寿命が著しく向上する。
メスの刃先部の全面(両面)を硬質炭素膜で被覆すると、刃先先端の鋭さが低減する。また、一般に硬質炭素膜は摩擦係数が小さく、平滑性に富むため、刃先/被加工材間は滑り易く、メスが被加工材にくい込みにくい。そこで、請求項2に記載のように、鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面のみを硬質炭素膜で被覆する構成とすることができる。ここで、「片面のみを硬質炭素膜で被覆する」とは、片面を耐熱テープあるいはその他でマスキングし、他の片面に硬質炭素膜形成することをいう。
このような手段を講じると、メスの刃先の被加工材に対するくい込みを容易にすることができ、ひいては切れ味性をさらに改善することができる。なおかつ硬質炭素膜の耐摩耗性ゆえ、メスを長寿命化することができる。
この硬質炭素膜の厚さは、請求項3に記載のように、0.02μmを超え0.5μm以下にすることが好ましい。0.02μm以下では、硬質炭素膜の特性である耐摩耗性が十分に発揮されず、メスの長寿命化に寄与できない。一方、0.5μmを超えると、上述したようにはく離しやすくなり、切れ味が劣ると共にメスの寿命が短くなってしまう。
一般に、医療用メスでは切れ味性に加え、耐食性と耐摩耗性が要求される。刃先部両面の硬質炭素膜の厚さが極めて薄い場合は、硬質炭素膜の特徴である耐摩耗性が十分発揮されない。また両面とも膜厚が厚い場合は刃先が被加工材にくい込みにくいため切れ味性が劣り、かつ膜のはく離が生じやすい。そこで、請求項4に記載のように、鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面を、極薄の第1硬質炭素膜で被覆し、かつ前記刃先部の他方の面を、前記第1硬質炭素膜より厚い第2硬質炭素膜で被覆する構成とすることができる。ここで、「極薄」は、一般に超薄膜といわれている0.1μm程度以下の膜厚を意味する。
このような手段を講じると、刃先部の両面を被覆することで耐食性の向上を図ることができると共に、片面を薄くすることにより被加工材へのくい込みを容易にして切れ味性を改善することができる。また他方の面をそれよりも厚い膜にすることで刃先部の耐摩耗性を向上させることができる。従って、切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性を兼ね備えた長寿命の医療用メスを提供することができる。
この場合、請求項5に記載のように、前記第1硬質炭素膜の厚さを、0.02μmを超え0.1μm以下とし、かつ前記第2硬質炭素膜の厚さを、0.1μmを超え0.5μm以下にすることが好ましい。極薄の第1硬質炭素膜の厚さが0.02μm以下では、硬質炭素膜の特性である耐摩耗性・耐食性が十分に発揮されず、メスの長寿命化に寄与できない。また、第2硬質炭素膜の厚さが0.5μmを超えると、上述したようにはく離しやすくなり、切れ味が劣ると共にメスの寿命が短くなってしまう。
本発明の医療用メスは、請求項6に記載のように、その材質が炭素工具鋼又はマルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。ここで、鋼とは炭素を2.14wt%以下含んだ鉄の総称であり、炭素工具鋼とは、JIS G4401に規定する鋼を指す。「マルテンサイト系ステンレス」は、焼入れするとマルテンサイト組織になるステンレス綱を意味する。その代表的なものがJISの材種「SUS420J2」であり、医療用メスの基材として一般的に使用されている。
このような一般に硬質炭素膜が形成しにくい材質に上記手段を講じて硬質炭素膜を被覆することで、切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性に優れ、ひいては長寿命化を可能にした医療用メスを提供することができる。
上述したように、鋼製医療用メスの少なくとも刃先部を適正な厚さ、すなわち0.02μmを超え0.5μm以下の硬質炭素膜で被覆することで、切れ味が良好で、かつ耐摩耗性・耐食性に優れ、ひいては長寿命化を可能にした医療用メスを提供することができる。従って、従来1回使用して廃棄していた医療用メスも繰返し使用することができ、医療廃棄物の増加を抑制でき、省資源に貢献することができる。さらに、長時間に及ぶ手術でも切れ味が持続するのでメスの信頼性が向上する。
また、鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面のみを硬質炭素膜で被覆することで、刃先の被加工材に対するくい込みを向上させることができ、切れ味性を改善することができる。さらに、耐摩耗性を有するため、メスの長寿命化に寄与することができる。
鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面を極薄の硬質炭素膜で被覆し、他方の面をそれよりも厚い硬質炭素膜で被覆することで、刃先の被加工材に対するくい込みが改善され、なおかつ耐摩耗性・耐食性に優れた長寿命の医療用メスを提供することができる。
以下、本発明の医療用メスの実施形態について、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明で医療用メスの少なくとも刃先部に被覆される硬質炭素膜は、ラマン分光分析図においてラマンシフト1550cm−1付近を頂点に左右非対称なブロードなピークを示す炭素が主成分の薄膜である。
上記硬質炭素膜は、周知の成膜方法に基づいて形成することができる。例えば、イオン化蒸着法は、イオン化した炭化水素を基材に印加されたバイアス電圧で加速するため、プラズマCVD法に比し、膜の硬度化と密着性を高めることができ好適に用いられる。
また、鋼製医療用メス基材との密着性を向上させるため、中間層を設けた構造を採用することができる。さらに、原料ガスの流量比を段階的に制御する手法により、傾斜組成薄膜を形成することも好ましい。本実施形態では、硬質炭素膜の原料としてベンゼンを用い、傾斜組成化の原料ガスとして、工業的に広く利用され、低コストで安全性の高いヘキサメチルジシロキサン([(CH)Si]O)を用いた。
図1は、本発明の実施形態の医療用メスの刃先部の断面図である。図1(A)は、刃先部1の両面1a、1bに、厚さが0.02μmを超え0.5μm以下の硬質炭素膜2を被覆した場合を示す。図1(B)は、刃先部1の片面1bのみに硬質炭素膜2bを被覆した場合を示す。この硬質炭素膜2bの厚さは、0.02μmを超え0.5μm以下であることが好ましい。図1(C)は、刃先部1の片方の面1aに、極薄の第1硬質炭素膜2cを被覆し、他方の面1bに、第1硬質炭素膜2cより厚い第2硬質炭素膜2dを被覆した場合を示す。この第1硬質炭素膜2cの厚さは0.02μmを超え0.1μm以下であり、第2硬質炭素膜2dの厚さは0.1μmを超え0.5μm以下であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらに限定されない。
硬質炭素膜は、ナノテック株式会社製のイオン化蒸着装置(DASH-450 DS)を用いてイオン化蒸着法で形成した。原料ガスはベンゼン(C:純度99.9%以上)及びヘキサメチルジシロキサン([(CH)Si]O:純度99.0%以上)を用い、ガス流量を4段階に変化させて傾斜組成成膜を行った。
(実施例1)
炭素工具鋼製及びSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼製医療用メスの片面をマスキングし、他の片面をイオン化蒸着法により硬質炭素膜の作製を行った。メスの配置はメス被膜形成面をイオン源に向けて膜形成を行った。膜の作製条件は以下のとおりである。フィラメント出力(12V-30A)、アノード出力(63V-0.34A)、基板バイアス出力(1.5kV-10mA)、処理圧力(1.2×10−1Pa)、原料ガス:C/[(CH)Si]Oを以下のようなガス流量(膜作製時間):0/5.8sccm(1.5分)→1.9sccm/4.4sccm(1.5分)→3.8sccm/2.9sccm(1.5分)→5.6sccm/1.5sccm(1.5分)→7.8sccm/0(35分)で膜作製を行った結果、共にメスの片面のみに膜厚0.3μmの硬質炭素膜が得られた。
(実施例2)
実施例1の方法で炭素工具鋼製及びSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼製医療用メスの片面に硬質炭素膜の作製を行った後、この膜形成した面にマスキング用テープを貼り、他の片面も実施例1と同様の条件で硬質炭素膜の作製を行った結果、共にメスの両面に膜厚0.3μmの硬質炭素膜が得られた。
(実施例3)
実施例1の方法で炭素工具鋼製及びSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼製の医療用メスの片面に膜厚0.3μmの硬質炭素膜の作製を行った後、この膜形成した面にマスキング用テープを貼り、他の片面に以下の条件で極薄膜を作製した。フィラメント出力(11V-30A)、アノード出力(63V-0.35A)、基板バイアス出力(0.4kV-3.5mA)、処理圧力(1.4×10−1Pa)、原料ガス/ガス流量/(膜作製時間):C/6.8sccm/(6分)で膜作製を行った結果、共にメスの片面のみに膜厚0.02μmの硬質炭素膜が得られた。その結果、片面に膜厚0.3μmの硬質炭素膜、他方の片面に膜厚0.02μmの硬質炭素膜を有するメスが得られた。
(比較例1)
炭素工具鋼製及びSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼製の医療用メスの片面をマスキングし、他の片面をイオン化蒸着法により硬質炭素膜の作製を行った。メスの配置はメス被膜形成面をイオン源に向けて膜形成を行った。作製条件は以下のとおりである。フィラメント出力(12V-30A)、アノード出力(63V-0.34A)、基板バイアス出力(1.5kV-10mA)、処理圧力(1.2×10−1Pa)、原料ガス:C/[(CH)Si]Oを以下のようなガス流量(膜作製時間):0/5.8sccm(3分)→1.9sccm/4.4sccm(3分)→3.8sccm/2.9sccm(3分)→5.6sccm/1.5sccm(3分)→7.7sccm/0(80分)で膜作製を行った結果、共にメスの片面のみに膜厚0.8μmの硬質炭素膜が得られた。
(比較例2)
炭素工具鋼製及びSUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼製医療用メスにイオン化蒸着法により硬質炭素膜の作製を行った。メスの配置はメスの背をイオン源に向けて膜の作製を行った。作製条件は以下のとおりである。フィラメント出力(12V-30A)、アノード出力(63V-0.35A)、基板バイアス出力(1.5kV-10mA)、処理圧力(1.2×10−1Pa)、原料ガス:C/[(CH)Si]Oを以下のようなガス流量(膜作製時間):0/5.8sccm(5分)→1.9sccm/4.4sccm(5分)→3.8sccm/2.9sccm(5分)→5.6sccm/1.5sccm(5分)→7.8sccm/0(100分)で膜作製を行った結果、共にメスの両面に膜厚1μmの硬質炭素膜が得られた。
上記実施例及び比較例のメスの硬質炭素膜被覆状態を下表1にまとめて示す。
Figure 2005270163
切れ味性試験
上記実施例1〜3、比較例1〜2及び対照として硬質炭素膜を被覆しない炭素工具綱製メス(以後、未被覆メスという)を用い、以下のような切れ味性の試験を行った。
すなわち、メスに223gの荷重を付加してテッシュペーパーの束(36枚)を切断した場合、切断されたペーパーの枚数と試験回数との関係を調べた。なお1回の試験で10cmの距離を切断した。
図2は、未被覆メスと実施例1(片面被覆:膜厚0.3μm)及び比較例1(片面被覆:膜厚0.8μm)のメスとの切れ味性の比較を示す。図2より、未被覆メスでは1回目は14枚切断され切れ味が良い。しかし、7枚以上切断できる回数は21回目(切断距離210cm)までである。片面被覆メスでは、1回目は実施例1のメスが12枚、比較例1のメスが7枚であり、当初は切れ味が未被覆メスより劣るが、7枚以上切断できる回数は実施例1のメスが33回目(切断距離330cm)までであり、片面に0.3μm厚さの硬質炭素膜を被覆することにより、未被覆メスに比べメスの切れ味性が向上することが分った。一方、比較例1のメスは、未被覆メス及び実施例1のメスに比し、切れ味が劣った。これは硬質炭素膜の摩擦係数に起因する刃先の滑り、膜厚増加による刃先先端の丸みの増加等が原因して切れ味性が低下したと考えられる。
図3は、未被覆メスと実施例1(片面被覆:膜厚0.3μm)及び実施例2(両面被覆:膜厚0.3μm)との切れ味性の比較を示す。メスの使用初期は未被覆メスが最も切れ味が良く、実施例1、実施例2の順である。しかし、22回目(切断距離220cm)以降では、切れ味性は実施例2のメスが最も優れ、次に実施例1のメス、未被覆メスの順であった。この理由は、未被覆メスでは使用初期はメスの刃先が鋭敏であるが、片面あるいは両面に硬質炭素膜を被覆することにより、刃先先端の鋭さが低減する。また硬質炭素膜は摩擦係数が小さいため、滑りが生じ、切れ味が劣ったと考えられる。しかし、試験回数の増加により未被覆メスでは切断枚数が大きく減り、刃先が摩耗して急激に切れ味が劣化したと言える。一方、実施例1のメスでは、皮膜が基材よりも高硬度であるため摩耗が少なく、切れ味性が維持された。また、片面のみの被覆なので、両面被覆した実施例2に比し、刃先の被加工材に対するくい込みが容易なため、使用初期の切れ味が良いことが分かった。実施例2のメスでは、使用初期は切れ味が劣るが、両面被覆により刃先の耐摩耗性が優れているため、メスの損耗がさらに少なく良い結果が得られた。すなわち未被覆メスに比べ、適切な膜厚の硬質炭素膜で被覆されたメスは、切れ味性、耐摩耗性、及び寿命が著しく向上することが実証された。
図4は、実施例2(両面被覆:膜厚0.3μm)と比較例2(両面被覆:膜厚1μm)のメスとの切れ味性の比較を示す。図4より、膜厚が増加することにより、切れ味性が極端に劣化することが分かる。これは、硬質炭素膜の摩擦係数が小さいため刃先が滑り、また膜厚が増加すると刃先先端が丸くなったためと考えられる。本発明では、膜厚を0.5μm以下にすることで優れた切れ味性が得られた。
図5は、実施例1(片面被覆:膜厚0.3μm)と実施例3(両面被覆:膜厚:片面0.3μm、片面0.02μm)のメスとの切れ味性の比較を示す。図5より、片面のみを被覆した実施例1のメスに比し、両面を被覆した実施例3のメスは全体的に多少切れ味性が劣ることが分かる。しかし、実施例3のメスは、両面を硬質炭素膜で被覆することにより耐食性が向上するので、耐摩耗性と耐食性を兼ね備え、ひいては寿命が伸長すると考えられる。
耐食性試験
未被覆の炭素工具綱メスと片面を極薄の硬質炭素膜(膜厚0.02μm)で被覆した炭素工具綱メスについて耐食性試験(塩水噴霧試験:JIS Z 2371に準拠)を24時間行った。そのまま槽内に3時間保持後、両メスについて腐食状態を視認により調べた。その結果、極薄(0.02μm)の硬質炭素膜であっても、未被覆メスと比較して腐食の程度は少なく、耐食性が改善されることが分かった。しかし、メスの長寿命化という観点から、硬質炭素膜は0.02μmを超える膜厚を有することが好ましい。
本発明の実施形態の医療用メスの刃先部の断面図である。 未被覆メスと片面被覆メス(膜厚:0.3μm及び0.8μm)の切れ味性の比較を示すグラフである。 未被覆メス、片面被覆メス(膜厚:0.3μm)及び両面被覆メス(膜厚:0.3μm)の切れ味性の比較を示すグラフである。 膜厚1μmと0.3μmの両面被覆メスの切れ味性の比較を示すグラフである。 両面被覆メス(膜厚:片面0.3μm、片面0.02μm)と片面被覆メス(膜厚:0.3μm)の切れ味性の比較を示すグラフである。 従来の医療用メスの欠点を示す刃先部の断面図である。
符号の説明
1 医療用メスの刃先部
2、2b 硬質炭素膜
2c 第1硬質炭素膜
2d 第2硬質炭素膜

Claims (6)

  1. 鋼製医療用メスの少なくとも刃先部を、0.02μmを超え0.5μm以下の厚さの硬質炭素膜で被覆したことを特徴とする医療用メス。
  2. 鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面のみを硬質炭素膜で被覆したことを特徴とする医療用メス。
  3. 前記硬質炭素膜の厚さが、0.02μmを超え0.5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の医療用メス。
  4. 鋼製医療用メスの少なくとも刃先部の片面を、極薄の第1硬質炭素膜で被覆し、かつ前記刃先部の他方の面を、前記第1硬質炭素膜より厚い第2硬質炭素膜で被覆したことを特徴とする医療用メス。
  5. 前記第1硬質炭素膜の厚さが、0.02μmを超え0.1μm以下であり、かつ前記第2硬質炭素膜の厚さが、0.1μmを超え0.5μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の医療用メス。
  6. 前記医療用メスの材質が、炭素工具鋼又はマルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用メス。
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