液晶表示装置に代表される非自発光型の表示装置は、一般に、表示パネルの透過率(又は反射率)を駆動信号によって変化させ、表示パネルに照射される光源からの光の強度を変調して画像や文字を表示する。このような表示装置には、表示パネルに表示された画像などを直接観察する直視型表示装置と、表示パネルに表示された画像等を投影レンズによってスクリーン上に拡大投影する投影型表示装置(プロジェクタ)とがある。また、液晶表示パネル以外の非自発光型の表示パネルとしては、エレクトロクロミック表示パネル、電気泳動型表示パネル、トナー表示パネルやPLZTパネルなどが知られている。現在、液晶表示装置は、モニター、プロジェクタ、携帯情報端末、携帯電話などに幅広く利用されている。
液晶表示装置は、マトリクス状に規則的に配列された画素に画像信号に対応した駆動電圧をそれぞれ印加することによって、各画素の液晶層の光学特性を変化させ、画像や文字などを表示する。上述した画素に独立した駆動電圧を印加する方式としては、単純マトリクス方式と、アクティブマトリクス方式とがある。アクティブマトリクス方式の液晶表示パネルには、スイッチング素子と画素電極に駆動電圧を供給するための配線とを設ける必要がある。スイッチング素子としては、MIM(金属−絶縁体−金属)素子などの非線形2端子素子やTFT(薄膜トランジスタ)素子等の3端子素子が用いられている。
表示パネルに設けたスイッチング素子(特にTFT)に強い光が入射すると、OFF状態における素子抵抗が下がり、電圧印加時に絵素容量に充電された電荷が放電され、所定の表示状態が得られないため、黒状態でも光が漏れてコントラスト比が低下するという問題がある。
そこで、液晶表示パネルでは、例えば、TFT(特にチャネル領域)に光が入射するのを防止するために、TFTや画素電極が設けられたTFT基板やTFT基板と液晶層を介して対向する対向基板に遮光層(ブラックマトリクスと称される)が設けられる。反射型液晶表示装置においては、反射電極を遮光層として用いれば、有効画素面積が低下することがないが、透過光を利用して表示を行う液晶表示装置においては、光を透過しないTFT、ゲートバスラインおよびソースバスラインに加えて遮光層を設けることによって有効画素面積が低下し、表示領域の全面積に対する有効画素面積の比率、すなわち開口率が低下する。
さらに、液晶表示パネルの高精細化、小型化が進むに連れてこの傾向は顕著になる。これは、画素のピッチを小さくしても、TFTやバスラインなどは、電気的性能や製造技術等の制約からある程度の大きさよりも小さくすることができないからである。
特に、近年、携帯電話などモバイル機器の表示装置として普及している半透過型の液晶表示装置は、個々の画素に反射モードで表示する領域(反射領域)と透過モードで表示する領域(透過領域)とを有しているので、画素ピッチを小さくすることによって、表示領域の全面積に対する透過領域の面積の比率(透過領域の開口率)が著しく低下する。
半透過型液晶表示装置は、暗い照明下では液晶表示パネルを透過するバックライトの光を利用して表示を行い、明るい照明下では周囲からの光を反射することによって表示を行うので、周囲の明るさに拘らず、コントラスト比の高い表示を実現できるのであるが、透過領域の開口率が小さくなると、輝度が低下するという問題がある。
特に、カラー表示を行うためにカラーフィルタによる光の吸収を利用する直視型液晶表示装置や単板式プロジェクタにおいては、さらに光の利用効率(すなわち明るさ)が低下する。
光の利用効率を改善するための一つの方法として、投影型液晶表示装置では、液晶表示パネルに、個々の画素に光を集光するマイクロレンズを設け、液晶表示パネルの実効的な開口率を向上させる方法が実用化されている。従来のマイクロレンズは、液晶表示パネルの対向基板内に形成されたものがほとんどであり、マイクロレンズが2枚のガラス板の間にサンドイッチされた構造を有している。
図20(a)および(b)を参照しながら、従来のマイクロレンズを備える対向基板の典型的な2つの製造方法を説明する。なお、規則正しく配列された複数のマイクロレンズをマイクロレンズアレイと総称する。
第1の製造方法は、図20(a)に模式的に示す工程(a−1)〜(a−4)によって、マイクロレンズアレイを備える基板(マイクロレンズアレイ基板)を製造する。
(a−1):ガラス基板の上のフォトレジスト層をパターニングする。
(a−2):パターニングされたレジスト層を加熱し、熱だれを起こさせ、マイクロレンズの形状を有するレジスト層を形成する。
(a−3):マイクロレンズ形状のレジスト層とともにガラス基板をドライエッチングすることによりレジスト層の形状をガラス基板に形成(エッチバック)し、マイクロレンズアレイ基板を得る。
(a−4):得られたマイクロレンズアレイ基板に接着層を介してカバーガラスを接着し、カバーガラスの表面を研磨し、対向基板が得られる。なお、必要に応じて、電極や配向膜などが形成される。
第2の製造方法は、図20(b)に模式的に示す工程(b−1)〜(b−4)によって、マイクロレンズアレイを備える対向基板を製造する。
(b−1):ガラス基板の上のフォトレジスト層を例えば電子ビーム露光によってパターニングし、マイクロレンズの形状を有するレジスト層を形成する。これをマスター(原版)とする。
(b−2):マスターを用い、例えばメッキ法によって、金属スタンパを作製する。
(b−3):金属スタンパを用いて、マイクロレンズの形状をガラス基板に転写し、マイクロレンズアレイ基板を得る。
(b−4):得られたマイクロレンズアレイ基板に接着層を介してカバーガラスを接着し、カバーガラスの表面を研磨し、対向基板が得られる。
また、特許文献1は、液晶表示パネルの画素を利用して、対向基板表面に塗布した感光性材料を露光することにより、画素に対して自己整合的にマイクロレンズを形成する方法を開示している。この方法によると、マイクロレンズと画素との間にアライメントずれが発生することが無く、また、低コストでマイクロレンズを製造できるという利点がある。
特開2002−62818号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、感光性材料を露光するために紫外線を用いるので、カラーフィルタを有しない表示パネル(例えば3板式プロジェクタ用の液晶表示パネル)には適用できるものの、カラーフィルタを有する表示パネルには適用できない。なぜならば、カラーフィルタが紫外線を吸収するので、カラーフィルタを介して紫外線を感光性材料に照射することができないからである。実際、特許文献1は、カラーフィルタを有する表示パネルにマイクロレンズを形成する方法には言及すらしていない。
なお、液晶表示パネルを作製する前の段階、すわなち、対向基板にカラーフィルタを形成する前に、対向基板(またはTFT基板)に上記の方法で、マイクロレンズを形成することはできるが、両基板を貼り合わせる工程のアライメントずれの影響を受けることになり、上記方法の利点の一部が損なわれる。また、マイクロレンズの効果を十分に発揮させるためには、マイクロレンズが形成されたガラス基板の厚さを0.5mmより薄くすることが好ましいが、多面取りで作られる液晶表示パネルは、数十cm2以上のマザーガラス基板を用いて製造され、このマザーガラス基板を薄くすると、ハンドリング上の問題が発生する。さらに、TFT基板にマイクロレンズを作成する場合は、基板に数百度におよぶ温度がかかるため、感光性材料自体がもたない。従って、液晶表示パネルが作製された後(すなわち、両基板を貼り合せた後)、ガラス基板を所望の厚さにエッチングまたは研磨した後、マイクロレンズを形成することが好ましい。
液晶表示装置を例に従来のマイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法の問題点を説明したが、上述の問題は、液晶表示装置に限られず、他の非自発光型表示装置に共通の問題である。また、カラーフィルタを備える構成を例示したが、これに限られず、例えばゲストホスト液晶表示装置のように、表示媒体層(液晶層)に混合した色素等を用いてカラー表示を行う表示装置も同様の問題を有している。
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、カラー表示パネル上に自己整合的にマイクロレンズを製造する方法を提供することにある。
本発明のマイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法は、表示パネルと前記表示パネルの光入射側に設けられた複数のマイクロレンズとを備えるマイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法であって、(a)マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルを用意する工程であって、前記複数の画素のそれぞれが、第1の色光を透過する第1絵素と、第1の色光と異なる第2の色光を透過する第2絵素とを含む複数の絵素を備える表示パネルを用意する工程と、(b)前記表示パネルの互いに対向する一対の主面の一方の主面に光硬化性材料層を形成する工程と、(c)前記表示パネルを介して前記光硬化性材料層を露光する工程であって、少なくとも前記第1絵素を透過した光によって前記光硬化性材料層を少なくとも部分的に硬化させる工程と、(d)前記露光された前記光硬化性材料層の未硬化部分を除去することによって複数のマイクロレンズを形成する工程とを包含する。
なお、本発明の説明において、「画素」は、それぞれが特定の色光を透過する複数の「絵素」から構成されるものとする。典型的には、赤色光を透過する赤色絵素(R絵素)、緑色光を透過する緑色絵素(G絵素)および青色光を透過する青色絵素(B絵素)が各画素を構成する。但し、各画素が有する絵素は、この例に限られず、R絵素、G絵素およびB絵素に加えて、他の色光(例えば白色光)を透過するW絵素をさらに有しても良いし、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色光を透過する絵素を有しても良いし、1つの画素が同じ色光を透過する絵素を複数含んでも良い。なお、本明細書では、絵素内の光を透過する領域を「絵素の開口部」と呼ぶ。
ある実施形態において、前記工程(a)は、前記第1の色光の中心波長が前記複数の絵素が透過する色光の中心波長の中で最も短い波長である前記表示パネルを用意する工程である。
ある実施形態において、前記工程(b)は、前記第1の色光の中心波長よりも短い波長の光に対して感光性を有する前記光硬化性材料層を形成する工程である。
ここで、絵素を透過する色光の中心波長とは、それぞれの絵素を透過した可視光(380nm以上800nm以下)の色を規定する波長範囲の中心の波長を指し、例えば、赤色光であれば600nm〜650nm、緑色光であれば520nm〜580nm、青色光であれば430nm〜490nmの範囲内に中心波長を有する。但し、絵素を透過する可視光の波長範囲内であっても、透過率が相対値で10%以下の波長の光は考慮しない。
ある実施形態において、前記工程(c)は、前記第1絵素を透過した光によって、前記複数の画素のそれぞれが有する前記複数の絵素に対応する前記光硬化性材料層を少なくとも部分的に硬化させる工程を包含し、前記工程(d)は、前記表示パネルの前記複数の画素の配列に応じて配列された複数のマイクロレンズを形成する工程を包含する。複数のマイクロレンズアレイは、例えば、それぞれがマトリクス状に配列された複数の画素の行に対応して配列された複数のレンチキュラーレンズであっても良いし、それぞれが複数の画素のそれぞれに対応する複数のマイクロレンズであっても良い。さらに、マトリクス状に配列された複数の画素が有する絵素のそれぞれに対応して配列された複数のマイクロレンズであってもよい。それぞれの絵素が透過領域と反射領域とを有する半透過型表示装置においては、それぞれの透過領域(絵素の開口部)に対応するマイクロレンズであってもよい。また、複数のマイクロレンズは、矩形レンズ(正方レンズを含む)のようにそれぞれ独立したレンズとして形成されても良いし、レンチキュラーレンズにように複数のマイクロレンズが一体に形成されても良い。
ある実施形態において、前記工程(a)は、前記複数の画素のそれぞれの略中央に前記第1絵素を有する前記表示パネルを用意する工程である。
ある実施形態において、前記工程(a)は、前記複数の絵素が、赤色絵素と、青色絵素と、緑色絵素とを含む前記表示パネルを用意する工程であって、前記工程(c)は少なくとも前記青色絵素を透過した光によって前記光硬化性材料層を少なくとも部分的に硬化させる工程である。
ある実施形態において、前記工程(b)は、380nm以上420nm以下の波長範囲の光に対して感光性を有する前記光硬化性材料層を形成する工程である。
ある実施形態において、前記工程(c)は、少なくとも前記青色絵素を透過した光によって、前記赤色絵素、前記青色絵素および前記緑色絵素に対応する領域の前記光硬化性材料層を少なくとも部分的に硬化させる工程を含む。
ある実施形態において、前記工程(c)は、略平行光で露光する工程であって、前記一方の主面に対する略平行光の入射角を変化させる工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程(c)は、それぞれが前記マトリクス状に配列された前記複数の画素の行に対応して配列された複数のレンチキュラーレンズが形成されるように、前記略平行光を走査する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程(c)は、それぞれが前記マトリクス状に配列された前記複数の画素が有する複数の絵素のそれぞれに対応して配列された複数のマイクロレンズが形成されるように、前記略平行光を走査する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程(c)は、光の配光分布を調整する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程(c)は、所定の透過率の分布を有するフォトマスクを用いて前記配光分布を調整する工程を包含する。
ある実施形態において、前記マイクロレンズは、頂上部に光の集光効果を有しない平坦部を有する。
ある実施形態において、前記マイクロレンズがレンチキュラーレンズであり、前記平坦部のサイズが、前記レンチキュラーレンズの集光方向に対する前記表示パネルの前記絵素の開口部のサイズと略同じかまたは小さい。
ある実施形態において、前記マイクロレンズが前記表示パネルの複数の絵素の開口部それぞれに対応しており、前記平坦部のサイズが、前記絵素の開口部のサイズと略同じかまたは小さい。
本発明の表示装置の製造方法は、上記のいずれかの製造方法によって製造されたマイクロレンズアレイ付き表示パネルを用意する工程と、前記表示パネルの前記マイクロレンズ側に面光源を配置する工程とを包含する。
本発明の表示装置は、上記のいずれかの製造方法によって製造されたマイクロレンズアレイ付き表示パネルと、前記表示パネルの前記マイクロレンズアレイに向けて光を出射する面光源とを備える。
本発明の露光装置は、感光性樹脂層を露光するための露光装置であって、略平行光を出射する光学系と、前記感光性樹脂層が形成された被露光物を受容する受容面を有するステージと、前記光学系から出射される前記略平行光の前記ステージの前記受容面に対する入射角を連続的または段階的に変化させる入射角制御機構とを備える。本発明の露光装置は、上記マイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法に好適に用いることができる。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、前記受容面に対する入射角を所定の速度で変化させることができる。前記所定の速度は使用者が設定する。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、前記速度を変化させることができる。前記速度は、連続的または段階的に変化させられる。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、前記速度を前記入射角と関連付けて段階的に変化させることができる。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、照射時間と関連付けて前記入射角を変化させることができる。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、前記受容面に配置された前記被露光物の所定の方向に延びるある軸を中心に前記受容面を回転させる機構を含む。
ある実施形態において、前記光学系は、光源部と、光源部からの光を反射するミラー部とを有し、前記入射角制御機構は、前記ミラー部における前記光の反射角度を変化させる機構を含む。
ある実施形態において、前記入射角制御機構は、前記ステージの前記受容面に対する前記光学系の位置を変化させる機構を含む。
本発明のマイクロレンズアレイを形成する方法は、上記のいずれかの露光装置を用いて、光硬化性樹脂を露光することを特徴とする。
本発明のマイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法は、特定の色光(例えば第1の色光:青色光)に露光されることによって硬化する光硬化性材料(典型的には光硬化性樹脂)を用いてマイクロレンズを形成するので、特定の色絵素を透過した光を利用してカラー表示パネルの画素(または絵素)に対して自己整合的にマイクロレンズを形成することができる。
本発明の製造方法によると、例えば、R、GおよびB絵素からなる画素に対応して、B絵素を透過した光を用いてマイクロレンズを形成することができるし、あるいは、R絵素、G絵素およびB絵素のそれぞれに対応するマイクロレンズを形成することもできる。
従って、非常に低コストでマイクロレンズの形成ができるとともに、画素または絵素に対して自己整合的にマイクロレンズが配置されるので、マイクロレンズの集光機能が十分に発揮される結果、高輝度な表示が可能な表示装置を製造することができる。また、マイクロレンズによって集光された光は絵素を通過後、その集光角のままで発散するため、視野角を広げる効果が得られる。すなわち、本発明による直視型の表示装置は、高輝度で広視野角という特徴を有する。
また、光硬化性材料を感光させる(硬化させる)光として、画素を構成する複数の絵素の中で、透過する色光の中心波長が最も短い波長である絵素を透過した光を利用すれば、光硬化性材料(光反応開始剤)による吸収があっても、その影響は僅かであり、表示における色再現性の低下が抑制される。典型的には青色絵素を透過した光を用いることが好ましく、青色光の中心波長(例えば450nm)よりも短い波長の光を用いることがさらに好ましい。特に、380nm〜420nmの範囲の波長の光を用いることが好ましい。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態のマイクロレンズアレイ付き表示パネルの製造方法およびそれを備える液晶表示装置を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1を参照しながら、本発明による実施形態のマイクロレンズアレイ付き表示パネル100の製造方法を説明する。図1(a)〜(d)は、本発明による実施形態のマイクロレンズアレイの製造方法を説明するための模式的な断面図である。
まず、図1(a)に示すように、カラー液晶表示パネル101を用意する。ここでは、絵素に対応してR、GおよびBのカラーフィルタ104R、104G、104Bが形成された液晶表示パネル101を用意する。なお、ここでは、簡単のために、カラーフィルタ104R、104Bおよび104Gにそれぞれ対応する絵素をR絵素104R、B絵素104BおよびG絵素104Gと呼ぶこともある。また、ここでは簡単のために、各絵素の開口部(透過領域)に対応する領域を絵素104R、104G、104Bとして図示している。なお、絵素の開口部は絵素のほぼ中央に配置された例を示しているが、これに限られない。
液晶表示パネル101は、TFT基板102と、カラーフィルタ104R、104Gおよび104Bが形成された対向基板103とを有している。TFT基板102と対向基板103との間には所定の液晶層(不図示)が形成されている。TFT基板102の液晶層側には、マトリクス状に配列された絵素に対応して設けられた画素電極、画素電極に接続されたTFT、ゲートバスラインおよびソースバスラインなどの回路要素(いずれも不図示)が形成されている。また、対向基板103の液晶層側にはカラーフィルタ104R、104Gおよび104Bと、これらの間に配置された遮光層BMおよび対向電極(不図示)が形成されている。また、TFT基板102および対向基板103の液晶層に接する面に、必要に応じて配向膜(不図示)が形成されている。
図1(b)に示すように、液晶表示パネル101のTFT基板102上に、光硬化樹脂を塗布し、光硬化性樹脂層105を形成する。ここでは380nmから420nmの波長範囲内に感光波長を有する光硬化性樹脂を用いる。
なお、光硬化性樹脂層105とTFT基板102との接着性を高めるために、光硬化性樹脂を塗布する前に、TFT基板102のガラス表面にシランカップリング剤を塗布するなどして、表面改質することが好ましい。
ここで、図2Aを参照しながら、カラーフィルタ104R、104G、104Bの分光透過率特性を説明する。
カラーフィルタ104R、104Gが形成された絵素からは、400nm近辺の光はほとんど透過しないため、400nm近辺の露光用照射光106を液晶表示パネル101の対向基板103側から入射させても、これらの絵素を透過した光で光硬化性樹脂はほとんど感光(硬化)されない。
青色カラーフィルタ104Bの透過波長域の短波長側(特に、380nmから420nm)に感光波長を有する感光性材料層を用いることにより、カラーフィルタ104Bからの透過光で感光性材料を感光させると同時に、可視域の透過率の非常に高いマイクロレンズを形成することができる。すなわち、通常、感光性材料はその感光波長の光を吸収するため、例えば、赤(R)または緑(G)に感光波長を有する光硬化性材料を用いると、RまたはBの光の一部を吸収するため、表示における色再現性が低下する。青(B)の場合も同様の現象が起こるが、色再現性に与える影響は小さい。特に、例えば、携帯電話やPDA、デジタルスチルカメラなどの液晶表示装置に使用されているバックライト用光源であるLED光源など、発光スペクトルが図2Bに示すように420nm付近より長波長側に存在する光源を用いる場合、380nm〜420nmの範囲の波長の光を用いると色再現性の低下を更に効果的に抑制することができる。
なお、一般に、380nm未満の波長の光(紫外線)を透過するカラーフィルタ(色素や顔料)はほとんど無く、紫外線を用いるためには、上述したように、カラーフィルタを形成する前の段階で、光照射する必要がある。
カラーフィルタ104Bが形成された絵素を透過した光は、図2Aに示すように400nm近辺の光を含んでいるため、この絵素(青色絵素)を透過した光が光硬化性樹脂層105に入射すると、光量に応じて光硬化性樹脂が感光し、硬化する。照射時間が一定の場合には配光分布に応じて硬化する。すなわち、硬化度の分布が形成される。従って、光量(配光分布および/または照射時間)の分布を調整することによって、光硬化性樹脂層に硬化度の分布を形成することができる。なお、「配光分布」とは、表示パネルに入射させる感光性材料層を露光するための光の、表示パネルの面法線に対して成す角度(入射角度)に対する強度分布のことであり、青色絵素への入射角と感光性材料層への入射位置が1:1で対応する。
露光した光硬化性樹脂層を現像することによって未硬化部分を除去すれば、硬化度の分布に対応した形状のマイクロレンズが得られる。配光分布は、例えば、露光用照射光の入射角を変化することによって調整できる。また、露光用照射光と光硬化性樹脂層105とを相対的に移動させる、例えば、露光用照射光を走査することによって、照射時間の分布を調整しても良いし、これらを組み合わせてもよい。さらに、所定の透過率の分布を有するフォトマスクを用いて配光分布を調整してもよい。また、露光用照射光を青色絵素104Bを介して光硬化性樹脂層105に斜めに入射させることによって、B絵素104Bと同じ画素に含まれるR絵素104RおよびG絵素104Gに対応するマイクロレンズ(すなわち画素に対応するマイクロレンズ)、例えばレンチキュラーレンズを形成することもできるし、B絵素104B、R絵素104RおよびG絵素104Gのそれぞれに対応するマイクロレンズ(すなわち、各絵素の開口部に対応するマイクロレンズ)を形成することもできる。露光用照射光を透過する絵素の開口部を画素の略中央に配置すれば、光量の分布を簡便に調整できるので好ましい。例えば、赤色絵素、青色絵素および緑色絵素がこの順に対称に配列された画素の場合、青色絵素を中心に露光用照射光を対称に走査すれば、画素の中心線に対して対称な形状のマイクロレンズを容易に形成することができる。
図3(a)から(c)を参照しながら、画素に対応するレンチキュラーレンズを形成する例を説明する。図3(a)は、マイクロレンズアレイ付き表示パネル100の1つの画素に対応する部分を模式的に示す平面図および断面図であり、対向基板103は省略している。図3(b)および(c)は、図3(a)に示したマイクロレンズアレイ付き表示パネルを作製するための露光工程(図1(c))の詳細を説明するための図であり、図3(b)は図3(a)のA−A’線に沿った模式的な断面図であり、図3(c)は図3(a)のB−B’線に沿った模式的な断面図である。
図3(a)に示すように、この表示パネル100の1つの画素は、R絵素104R、B絵素104BおよびG絵素104Gで構成されている。各絵素の周囲にはブラックマトリクスBM(遮光領域)が設けられている。画素は、行(X方向)および列(Y方向)を形成するようにマトリクス状に配列されており、ここでは、X方向の画素ピッチPXおよびY方向の画素ピッチPYがいずれも150μmの場合を例示している。TFT型表示装置の場合、典型的には、行方向(X方向)はゲートバスラインに平行であり、列方向(Y方向)はソースバスライン(ビデオライン)に平行である。
表示パネル100が有するマイクロレンズアレイは、複数の画素の行に対応して配列された複数のレンチキュラーレンズ107を含む。レンチキュラーレンズ107は、行方向(X方向)に延び、列方向(Y方向)には集光力を有するが、行方向(X方向)には集光力を有しない。
図3(b)および(c)を参照しながら、レンチキュラーレンズ107を形成するための露光工程を説明する。
図3(b)に示すように、照射光106が液晶表示パネル101に対する入射方向を、A−A’線を含む面内において入射角θ1で規定される方向から入射角θ2で規定される方向に変化させ、図3(c)に示すようにB−B’線を含む面内においては、入射角θ3で規定される方向から入射角θ4で規定される方向に変化させる。すなわち、照明光106の入射角をA−A’線を含む面内においてθ1からθ2まで連続的にまたは段階的に変化させ、B−B’線を含む面内においてθ3からθ4まで連続的にまたは段階的に変化させる。露光照射光106としては平行光を用いることが好ましい。露光用照射光の平行度は、±3°以内であることが好ましく、マイクロレンズの形状を精度よく制御するためには、±1°以内であることが更に好ましい。
このとき、照射光106の入射角度θ1とθ2、およびθ3とθ4は、マイクロレンズが隙間なく形成されるように、設定することが好ましい。例えば、入射角θ1とθ2は、図3(b)に示すように、隣接する画素のB絵素を透過した光が、隣接する画素の間の中央部(図3(b)中のポイントa)で一致し、隣り合う画素に対応したレンチキュラーレンズ間の膜厚が同じになるように、液晶表示パネル101の画素ピッチPXおよび対向基板103の厚さに応じて、適宜設定する。また、入射角θ3とθ4は、図3(c)に示すように、隣接する画素のB絵素を透過した光が、隣接する画素の間の中央部(図3(c)中のポイントb)で一致し、レンズ間の境界ができるように(隣接する画素の間の中央部でレンズの膜厚が一番薄い状態になるように)、液晶表示パネル101の画素ピッチPYおよび対向基板103の厚さに応じて、適宜設定する。
ここで例示した液晶表示パネル101は、行方向(カラーフィルタの配列方向)の画素ピッチPXが150μm、行方向に直交する列方向の画素ピッチPYが150μm、対向基板103の物理的な厚さは400μm(空気換算で400/1.52=260μm)であるため、θ1とθ2、θ3とθ4は、
θ1=θ2=θ3=θ4= tan-1(75/260)=約16°
となる。
また、光は斜めに入射させるほど(入射角が大きくなるほど)照射面での照射面積が広がるため、照射強度が弱くなる。従って、上記入射角θ1とθ2(θ3とθ4)は、光硬化性樹脂層105に形成すべき硬化度分布(マイクロレンズの形状)に応じて、上記計算で得られた角度から調整が必要な場合がある。
次に照射光106のスキャン方法について説明する。ここで「スキャン」とは、露光用照射光106が照射される領域の2次元的に走査すること、および、照射光の入射角度を変化させることを含む。また、スキャンは、照射光106と光硬化性樹脂層105との位置関係および角度が相対的に変化すれば良いので、光硬化性樹脂層105が形成された液晶パネル101を動かしても良いし、照射光(光源)を動かしてもよい。
本実施形態では、カラーフィルタ104R、104G、104Bの配列方向(行方向:X方向)には、集光力を有しないレンチキュラーレンズ107を形成するため、X方向(A−A’線に平行)に対しては、光量(照度×時間)の分布が均一になるようにスキャンを行い、Y方向(B−B’線に平行)に対しては、照射光の入射角度が大きいほどスキャンスピードを速くし、入射角度が小さいほど(表示パネルの法線方向に近づくほど)、スキャンスピードを遅くする。例えば、入射角を表示パネルの法線に対して−30°から+30°まで走査する場合、−30°から−10°までの角度範囲を5°/secの速度で走査し、−10°から+10°の角度範囲を3°/secの速度で走査し、さらに、+10°から+30°までの角度範囲を5°/secの速度で走査する。
このように、照射光106をスキャンしながら、光硬化性樹脂層105を露光することによって、図4に模式的に示すように、X方向に対しては曲率を有せず、Y方向にのみ曲率を有するレンチキュラーレンズ107に対応する部分105’を硬化させることができる。
また、照射光106をX方向およびY方向にスキャンする方法としては、図5に模式的に示すように、X方向およびY方向の両方向に対して、スキャンを行う。図5は、照射光106によって照射される領域106aが光硬化性樹脂層105に対して走査される軌跡を示している。また、照明光の入射角度は、連続的に変化させてもよく、段階的に変化させてもよい。
露光工程の後、現像工程において、光硬化性樹脂層105の未硬化部分を除去することによって、硬化部分105’の形状を有するレンチキュラーレンズ107が得られる。なお、現像工程の後で、光硬化性樹脂層105の硬化部分105’(レンチキュラーレンズ107)に再度、露光用照射光を照射することによって、光硬化性樹脂の硬化を更に進行させ、完全硬化状態に近づけることが好ましい。また、光硬化とともに熱硬化を併用してもよい。
次に、上述の製造方法の露光工程に好適に用いられる露光装置の例を図6、図7および図8を参照しながら説明する。
図6〜8に示す本発明による実施形態の露光装置は、表示パネルの主面に形成された光硬化性樹脂層を露光するための略平行光を出射する光学系と、表示パネルを受容する受容面を有するステージと、光学系から出射される略平行光のステージの受容面に対する入射角を連続的または段階的に変化させる入射角制御機構とを備える。入射角制御機構は、受容面に対する入射角を所定の速度で変化させることができることが好ましく、所定の速度は、入射角および光量等に応じて、使用者が設定する。
さらに、入射角制御機構は、上記速度を連続的または段階的に変化させられる(可変とする)ことが好ましい。例えば、上述したように、マイクロレンズを形成する一連の過程において光量を調節するために、速度を入射角と関連付けて段階的に変化させられることが好ましい。入射角が変化する速度を調整することにより、所望形状により近いマイクロレンズ形状を得ることができる。
さらに、入射角制御機構は、照射時間と関連付けて入射角を変化させることができることが好ましい。照射時間は、例えば、光学系と受容面の間に設けれられたシャッターの開閉によって制御され、入射角制御機構は、シャッターを開状態とした時刻を基準に入射角を変化させる。
図6(a)に示す露光装置は、略平行光を出射する光学系(光源部)310と、表示パネル101を受容する受容面を有するステージ320と、ステージ制御装置324とを備えている。表示パネル101の主面には光硬化性樹脂層105が形成されている。ステージ320は、ステージ制御装置324からの信号に従って、ステージ320の受容面に配置された表示パネル101の面内の所定の方向に延びるある軸を中心に受容面を回転させる。ただし、完全に回転する必要はなく、図6(a)中の6Cで示す円弧を描くように所定の角度範囲で動作すればよい。
受容面を回転させる軸は、図6(b)に示すように、表示パネル101のマトリクス状に配列されている画素行方向に延びる6A−6A’軸および/またはこれに直交する方向(典型的には画素列方向)に延びる6B−6B’軸である。ステージ320は、少なくとも1つの軸を中心に受容面を回転できればよく、受容面に対して表示パネル101を所定の方向に回転されるように配置すればよい。また、このとき、硬化性樹脂層105中に回転軸が位置するように配置することが好ましい。
図7に示す露光装置は、略平行光を出射する光源部310と、光源部310からの光を反射するミラー部とを有している。ミラー部は、ミラー332とミラー332における反射角度θr(ミラーに対する入射角度θiと等しい)を変化させるミラー駆動部334と、ミラー駆動部334を制御するミラー制御部336を有しており、これらがステージ320の受容面に配置された表示パネル101に対する光の入射角を変化させる。すなわち、ミラー332の表面(すなわち反射面)の角度を変化させることによって、表示パネル101に対する光の入射角を変化させる。ミラー332は、たとえば、図7中に示した円弧7Cを描くように、および/または紙面に垂直な面内で円弧を描くように動作される。
この露光装置において、ミラー332の角度だけを変えると、表示パネル101に対する光の入射角度が変化するだけでなく、照射位置も変化する。したがって、ミラー332の可動角度範囲の全てにおいて表示パネル101の全面を照射するためには、照射領域を表示パネル101よりも大きくする必要があり、光源部310を大型化するためのコストが高くなる。これを防止するためには、ミラー332の角度を7Cの円弧を描くように変化するのと連動して、ミラー332を図7に示す7A−7A’方向に移動させる機構を設けることによって、ミラー332の角度の変化に伴う照射領域のズレを補正することができる。ミラー332の角度を紙面に垂直な面内で円弧を描くように変化させる場合は、紙面に垂直な方向7B、7B’にミラー332を移動させる機構を設ければよい。
図8に示す露光装置は、ステージ320の受容面に対する光学系310の位置を変化させる機構を有している。光学系310は、光学系制御部312からの信号に従って、たとえば、図8中の8Cで示す円弧を描くように動作し、ステージ320の受容面の表示パネルに向けて出射する略平行光の入射角度が変化する。
この露光装置も図7に示した露光装置と同様に、光源部310の角度だけを変えると、表示パネル101に対する光の入射角度が変化するだけでなく、照射位置も変化する。従って、図8中の8A−8A’方向や8Bまたは8B’の方向に対して、表示パネル101の表示部の中心軸(図6中の6A−6A’、6B−6B’参照)を中心とする同心円上に回転させるように、光源部310の角度と位置とを変えることが好ましい。
上述した入射角度制御機構は、照射時間と関連付けて入射角を変化させることができることが好ましい。照射時間(露光時間)は、例えば、光学系(光源部)310とステージ320の受容面との間に設けられたシャッター(不図示)の開閉によって制御される。従って、シャッターの開閉動作と入射角度制御機構とを連動させればよい。
例えば、ステージを所定の入射角(例えば−30°)となる位置に設定した後、シャッターを開状態とした時刻を基準に、−10°までの角度範囲を5°/secの速度で変化させる。この後、−10°から+10°の角度範囲を3°/secの速度で変化させ、さらに、+10°から+30°までの角度範囲を5°/secの速度で変化させる。入射角が+30°に到達した時点で、シャッターを閉じる。これらの一連の動作はシャッターを開状態とした時刻を基準に、時間に基づいて制御することができる。
また、図6から図8に示した露光装置の入射角度制御機構は、適宜組み合わせることができる。図5を参照しながら説明したような2軸スキャンを行う場合には、図6から図8に示した露光装置の入射角度制御機構を組み合わせることによって、たとえば、2軸のうちの1軸をステージ320の制御で行い(図6)、もう一方の軸をミラー332の制御で行う(図7)ことができる。このような構成とすることによって、1つの部位で2軸を動かす機構を備える必要がなくなるため、露光装置の設計が容易となる。
なお、露光工程は、表示パネル101ごとに行ってもよし、複数枚の表示パネル101を含む大判に対して、一度に行ってもよい。
図6〜図8には、表示パネル101を介して硬化性樹脂層105を露光する例を示したが、これに限られない。例えば、逆に、硬化性樹脂層105側から露光してもよい。ただし、この場合、硬化性樹脂層105の表示パネル101とは反対側の表面付近に、硬化性樹脂層105を所望のパターンで露光可能なマスクを配置し、このマスクを通過した光で露光することとなる。
上述の露光装置は、光硬化性樹脂を用いてマイクロレンズを形成する用途に限られず、感光性樹脂(ネガ型、ポジ型を問わず)を露光する用途に広く利用することができる。
上記の実施形態では、照射光106をスキャンすることによって、光硬化性樹脂層105を所望のマイクロレンズ形状になるように露光したが、あらかじめ、照射光106を所望のマイクロレンズ形状が得られるような配光分布を有するように調整することにより、スキャンを行わずにマイクロレンズを形成することもできる。この方法では、スキャンに要する時間が削減できるため、短時間でマイクロレンズが形成でき、生産性が向上する。
例えば、図9(b)に示すレンチキュラーレンズ107を作製する場合は、図9(a)に模式的に示す配光分布を有するように照射光106を調整すればよい。すなわち、X方向に対しては、θ1からθ2の範囲内(図3(b)参照)で、一定の強度を有し、Y方向に対しては、入射角度が大きくなるにつれて、強度が弱くなるような配光分布を有する照射光とすればよい。
例えば、図10(a)に示すように、光源701からの光を一旦集光し、その集光ポイントに段階的(または連続的に)に透過率の異なる領域を有するマスク702を挿入することで、配光分布を調整することができる。
マスク702としては、光源701からの光の配光分布に依存するが、例えば、通常の円形のレンズを作製する場合は、図10(b)に示すように、マスク702を透過した光の配光分布が中心部に近いほど強くなるような分布となるように、透過率が中心領域702aから周辺領域702bに亘って段階的(または連続的に)変化するものを用いる。上記のレンチキュラーレンズ107を作製する場合には、一方向(Y方向)においてのみ光の強度分布が中心部にいくほど強くなるような配光分布にするとよい。
また、スキャンによる露光と配光分布の制御による露光の両方を併用してもよい。この場合、例えばX方向またはY方向のどちらか一方向をスキャンし、他方の配光分布を調整することも可能である。
上述したように、ストライプ配列の画素を有する表示パネルに対して、列方向(Y方向)にのみ集光効果を有するレンチキュラーレンズ107を用いると、図9に示したように、行方向(X方向)の強度分布は一定でよいので、均一な配光分布の光を出射する光源を用いれば、配光分布をほとんど調節する必要がないので、マイクロレンズ(レンチキュラーレンズ)の形状の制御が比較的容易である。
なお、レンチキュラーレンズ107を用いると、カラーフィルタの配列方向(X方向)には集光効果がないため、その分マイクロレンズによって明るさを向上する効果が低下するが、液晶表示パネルは、通常、図11に示すように、行方向(X方向)における隣接画素(および絵素)間の間隔WXよりも、列方向(ソースバスライン(ビデオライン)が延設される方向)における隣接画素間の間隔(WY)の方が広い。すなわち、Y方向に集光効果を有するレンズを用いる方が、X方向に集光効果を有するレンズを用いるよりも明るさを向上する効果が高く、X方向に集光効果を有しないことによる明るさ向上効果の低下は小さい。
一方向にのみ集光効果を有するマイクロレンズを用いる場合には、カラーフィルタの色配列が図11に示したストライプ配列の場合に限られず、例えば、図12に示すような斜め配列の場合においても、上記と同じ理由により、マイクロレンズが集光効果を有する方向を表示パネルの列方向(ビデオライン方向)とすることが好ましい。
もちろん、本発明の実施形態によると、一方向にのみ集光効果を有するレンチキュラーレンズに限られず、X方向とY方向とに集光効果を有するマイクロレンズを有する液晶表示パネルを作製することもできる。
例えば、図13(a)および(b)に模式的に示すように、青色絵素104Bを透過した光を用いて、上述したように露光用照射光のスキャンスピードや配光分布を調節することによって、緑色絵素104G、青色絵素104B及び赤色絵素104Rのそれぞれに対応し、X方向およびY方向に曲率を有する硬化部分105’’を形成することができる。この後、現像工程を経ることによって、X方向およびY方向に集光効果を有するマイクロレンズ(例えば矩形レンズ)が絵素毎に形成されたマイクロレンズアレイが得られる。
なお、露光工程は、液晶表示パネルに液晶材料を注入する前に行っても良い。但し、この場合には、液晶材料を注入した後で液晶材料の配向のための熱処理工程で、マイクロレンズアレイが例えば百数十℃に加熱されるため、光硬化性樹脂としては、熱処理によって、形状変化や剥がれなどマイクロレンズの集光効果に影響を及ぼす変化が発生しない樹脂を用いることが好ましい。
また、上記の実施形態では、図2Aに示したように、赤カラーフィルタ104Rおよび緑カラーフィルタ104Gは露光用照射光として用いた400nm近辺の光をほとんど透過せず、青カラーフィルタ104Bだけが400nm近辺の光を十分に透過するカラーフィルタを用いた例を説明したが、これに限られない。
例えば、図14に示すような分光透過率特性を有するカラーフィルタを用いても、上述した方法によって、所定の形状のマイクロレンズを形成することができる。すなわち、青カラーフィルタ104Bと赤カラーフィルタ104Rが露光用の400nm付近の光を透過する場合には、青カラーフィルタ104Bおよび赤カラーフィルタ104Rの透過率を考慮して、露光用照明光のスキャンスピードを調整する、および/または、照明光の配光分布を調整すれば良い。図14では、青と赤の2色のカラーフィルタが露光用光を透過する場合を示したが、青と緑の2色の場合でも同様であり、さらに、青、緑および赤のすべてのカラーフィルタが露光用の光を透過する場合でも同じである。
上記の実施形態では、TFT基板102側にマイクロレンズアレイを形成したが、対向基板103側に形成してもよい。もちろん、TFT型液晶表示装置に限られず、MIMを用いた液晶表示装置や、スイッチング素子を有しないパッシブ型の液晶表示装置を用いることもできる。
上述のようにして得られたマイクロレンズアレイ付き液晶表示パネル100は、例えば、図15に模式的に示すように、指向性の高いバックライト120と組み合わせて用いることが好ましい。指向性の高い光をマイクロレンズに入射させることによって高い集光効率が得られる。
図15に示した液晶表示装置200は、マイクロレンズ107を備える液晶表示パネル100と、液晶パネル100のマイクロレンズ107側に配置された高指向性バックライト120とを備えている。バックライト120は、光源122と、光源122から出射された光を受けてその中を伝播させながら液晶表示パネル100に向けて出射する導光板124と、導光板124の裏面から出射された光を導光板124に向けて反射する反射板126とを有している。なお、図15では主要部品のみ記載し、液晶表示パネル101の前後に設けられる偏光板などは省略している。
液晶表示装置200に好適に用いられるバックライトとして、例えば、IDW’02 「Viewing Angle Control using Optical Microstructures on Light−Guide Plate for Illumination System of Mobile Transmissive LCD Module 」K.KALANTAR p549−552や特開2003−35824号公報、M.Shinohara、et al.:Optical Society of American Annual Meeting Conference Program、Vol.10、p.189(1998)、特表平8−511129号公報などに記載されているバックライトを挙げることができる。
上述したように、半透過型液晶表示装置では、光を透過する領域(絵素の開口部)が透過型に比べて小さいため、画素ピッチを小さくすることによって、表示領域の全面積に対する透過領域の面積の比率(絵素の開口部の面積比率)の低下が透過型よりも顕著である。従って、半透過型液晶表示装置にマイクロレンズを用いて実効的な開口率を向上させることによる効果は透過型よりも大きいと言える。上述の実施形態における液晶表示装置の絵素の開口部は、半透過型液晶表示装置においても絵素の開口部に対応する。但し、半透過型液晶表示装置においては、絵素内における開口部(透過領域)の配置は種々あり得るが、上述したように行方向に延びるレンチキュラーレンズを用いる場合には、行方向に隣接する絵素の開口部(透過領域の間に位置する遮光領域(反射領域も含む)ができるだけ細くなるように開口部(透過領域)を配置することが好ましい。
例えば、図16(a)に模式的に示す絵素204のように、絵素204の中央部に透過領域(絵素の開口部)204tを設け、その周辺に反射領域204rを配置すると、隣接する絵素の透過領域204tの間には、ソースバスラインだけでなく、反射領域204rが存在することになるので、隣接する透過領域204tの間の間隔(遮光領域の幅)が広くなる。これに対し、図16(b)に模式的に示すように、透過領域204t’の周辺に反射領域204r’を設けない配置とすると、隣接する透過領域204t’間の遮光領域の幅を細くできるため好ましい。なお、透過領域は、典型的には、TFT基板に形成される透明画素電極によって規定され、反射領域は、反射画素電極によって規定される。
上記の実施形態では、カラーフィルタを有する液晶表示パネルを用いたが、これに限られず、例えばゲストホスト液晶表示装置のように、表示媒体層(液晶層)に混合した色素等を用いてカラー表示を行う表示装置も同様に適用できる。さらに、液晶表示パネルに限られず、他の非自発光型表示パネル(例えば、エレクトロクロミック表示パネル、電気泳動型表示パネル、トナー表示パネルやPLZTパネル)にも適用できる。
また、上記実施形態の液晶表示装置に用いたマイクロレンズの頂点部に平坦部を設けることによって、マイクロレンズによる輝度向上効果をさらに増大させることができる。
たとえば、図17に示すマイクロレンズアレイ付き表示パネル100’は、頂点部に平坦部107’fを有するマイクロレンズ107’を備えているので、図3に示したマイクロレンズアレイ付き表示パネル100よりも正面輝度を高くできる。
図17に示すように、マイクロレンズがレンチキュラーレンズの場合は、平坦部107’fの幅は、絵素の開口部(104R、104G、104B)のレンズの集光方向の幅と略同じにすることが好ましい。もちろん、平坦部107’fの幅は絵素の開口部(104R、104G、104B)のレンズの集光方向の幅よりも小さくてもよいが、平坦部107’fを設けることによる効果が小さくなる。なお、ここでも簡単のために、各絵素の開口部(透過領域)に対応する領域を絵素104R、104G、104Bとして図示している。
このように平坦部107’fを有するマイクロレンズ107’を用いると、平坦部107’fを通過した光は、図18(a)に示すように、マイクロレンズ107’で曲げられることなく、そのまま絵素の開口部を通過する。従って、正面輝度が高い高指向性のバックライトを用いると、高い正面輝度を得ることができる。一方、マイクロレンズ107’の平坦部107’f以外の領域(マイクロレンズ107’の曲面部)に入射する光は、マイクロレンズ107’で屈折され絵素の開口部を通過する。マイクロレンズ107’の曲面部に入射する光は、マイクロレンズ107’を設けない場合にはBM等で蹴られる光であるので、光の利用効率が向上する。
これに対し、図3に示した平坦部を有しないマイクロレンズ107を用いると、光の利用効率は向上するものの、図18(b)に示すように、高指向性バックライトから出射された平行度の高い光のほとんど全て(光軸を通る光以外)がマイクロレンズ107によって曲げられるため、正面輝度が多少低下することになる。すなわち、高指向性バックライトを用いることによる、正面輝度の向上効果が低減する。
平坦部を設けることによる正面輝度の向上効果は、上記の例に限られない。例えば、図19に示すマイクロレンズアレイ付き表示パネル100’’のように、表示パネルの各絵素に対応して配列され、縦・横の両方向に集光効果を有するマイクロレンズ107’’に平坦部107’’fを設けてもよい。この場合、平坦部107’’fのサイズは、縦横とも絵素の開口部の縦・横サイズと略同じにすることが好ましい。このような構成を採用することによって、図18(a)および(b)を参照して説明した効果が、縦・横の両方向について得ることができる。この場合も平坦部107’’fの幅は、絵素の開口部の幅より小さくても良いが、効果が低下するのは上述のとおりである。