以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
本発明の実施例に係る可搬型除湿機の外観を図1及び図2に示す。図1(a)は上面から見た外観、図1(b)は正面から見た外観、図2(a)は右側面から見た外観、図2(b)は背面から見た外観をそれぞれ簡略化して示している。また、この可搬型除湿機を右側面から見た内部の概略構造を図3に断面図で示している。更に、この可搬型除湿機の除湿動作を説明するための模式図を図4に示している。
この可搬型除湿機は、樹脂成形品である前ケース11F及び後ケース11Rからなる本体ケース11の内部に、メインファン12とそのモーター13、除湿ローター14とその回転駆動用モーター15、再生ユニット16、熱交換器17、フィルター18、ドレインタンク19等が収容された構造を有する。遠心ファンであるメインファン12は、本体ケース11(後ケース11R)の背面に形成された空気取込口21から空気を取り込み、除湿処理後の乾燥空気を吹出口から吹き出す。
吹出口は、本体ケース11の上面の右側に設けられた吹出筒22の上端開口部と蓋部材23との間に形成される。詳しくは後述するが、吹出筒22の上端開口部を閉じる円盤状の蓋部材23は水平軸心周りに傾斜した姿勢で固定可能である。図2(a)及び図3に示すように、傾斜姿勢の蓋部材23と吹出筒22の上端開口部との間に形成された吹出口OPから矢印ARで示すように前方斜め上方へ乾燥空気が吹き出される。後述するように、蓋部材23は垂直軸心周りに所定の角度範囲で往復回動可能であり、これにより、吹出口OPから吹き出される乾燥空気の吹出方向が水平方向に所定の角度範囲で変化する。
本実施例の可搬型除湿機では、除湿ローター14、再生ユニット16、熱交換器17等によって除湿手段が構成されている。除湿ローター14は、セラミック繊維紙を円盤状に巻回して高温焼成したものに吸湿剤としてのゼオライトを含浸させた構造を有する。メインファン12によって空気取込口21から取り込まれた空気(以下、処理空気という)がこの除湿ローター14を通過するときに、処理空気中の水分が除湿ローター14に吸湿されることによって処理空気の除湿処理が行われる。除湿ローター14の外周には平ギア14aが設けられ、これに噛み合う小径ギア15aが除湿ローター駆動用モーター15の回転軸に固定されている。除湿ローター駆動用モーター15が回転すると、除湿ローター14が中心軸14AXの周りをゆっくり回転するように構成されている。
図4に示されているように、除湿ローター14の一部である扇形部分に再生ユニット16を構成する金属ケース16Aが設けられている。この金属ケース16Aの中には、再生ヒーター25が装着されている。金属ケース16Aの側部には再生ユニット16を構成する再生用空気の送風路16Bが連通しており、送風路16Bの中には、シロッコファンである再生ファン24のインペラーが収容されている。再生ファン24によって送風される再生用空気は再生ユニット16の金属ケース16Aの中の再生ヒーター25で加熱された後、除湿ローター14の一部である扇形部分(再生ゾーン)に前面側から当てられる。
再生ゾーンでは、除湿ローター14の吸湿剤に含まれていた水分が、加熱された再生用空気によって取り除かれる(除湿ローター14が乾かされる)。これにより吸湿剤の吸湿機能が回復して再生され、除湿ローター14の回転に伴って再び除湿ゾーンへ移動して除湿処理を行う。なお、除湿ゾーンは、扇形の再生ゾーン以外の部分を意味する。除湿ローター14の再生ゾーンを通過して吸湿した再生用空気は、図4に矢印ARCで示すように熱交換器17に入り、熱交換器17の内部を通過して冷却されることによって水分が結露して取り除かれる。この後、熱交換器17から出た再生用空気は再生ファン24によって再び再生用空気の送風路16Bから再生ヒーター25が収容された金属ケース16Aへ送り込まれる。
熱交換器17はポリプロピレン製の成形品であり、前側熱交換器17Fと後側熱交換器17Rからなる。前側熱交換器17Fと後側熱交換器17Rは互いに独立した内部空間を有し、図4に示すように重ね合わせられた状態で、下部コーナーの連結部17aで互いに連通している。前側熱交換器17Fの上部中央に再生用空気の入口17bが形成され、後側熱交換器17Rの上部コーナーに再生用空気の出口17cが形成されている。
再生ゾーンの後面側から出た再生用空気は入口17bから前側熱交換器17Fに入り、前側熱交換器17Fを上から下へ流れた後に連結部17aを通って後側熱交換器17Rへ移り、後側熱交換器17Rを下から上へ流れた後に、出口17cから熱交換器17を出て再生ユニット16の送風路16Bへ戻る。図4では除湿ローター14及び再生ユニット16と熱交換器17とを離して描いているが、実際にはこれらは図3に示すように接近しており、再生ユニット16及び熱交換器17で構成された閉回路を再生用空気が循環する。
熱交換器17を構成する前側熱交換器17F及び後側熱交換器17Rは、それぞれの内部を再生用空気が流れると共に、それに直交する方向に処理空気が通過できるように多数のスリット17dが形成されている。除湿機背面の空気取込口21から取り入れられた処理空気は、矢印ARで示すように、フィルター18を通過した後、熱交換器17のスリット17dを通過する。この際、熱交換器17の内部を流れる再生用空気と処理空気との熱交換が行われる。すなわち、温度の高い再生用空気は冷却され、処理空気は暖められる。
再生用空気が冷却されることにより、再生用空気中の水分が結露し取り除かれる。前側熱交換器17F及び後側熱交換器17Rの内部で結露した水分はそれぞれの中を滴下しながら集められ、熱交換器17の下端部に形成された排水口から落下し、ドレインタンク19に貯められる。水分が取り除かれた再生用空気は、熱交換器17から再び再生ユニット16の送風路16Bを経て金属ケース16Aへ送り込まれ、再生ヒーター25で加熱されて除湿ローター14の再生に使用される。このように、除湿ローター14の再生手段が再生ファン24及び再生ヒーター25を含む再生ユニット16と熱交換器17によって構成されている。
再生ゾーンで加熱された再生用空気によって暖められた除湿ローター14は、回転によって除湿ゾーンへ移動した部分に余熱が残っている。熱交換器17のスリット17dを通過して暖められた処理空気は、矢印ARで示すように除湿ローター14の除湿ゾーンを通過する際に除湿されると共に、余熱の残っている除湿ローター14で更に暖められ、メインファン12によって吹出筒22へ送り込まれ、吹出口OPから外部へ吹き出される。したがって、吹出口OPから吹き出される乾燥空気は、空気取込口21から取り入れられた空気に比べて湿度が低く、かつ、温度が高い空気となる。
図1(a)に示されているように、本体ケース11(前ケース11F及び後ケース11R)の上面において、運転モードの設定及び運転の開始又は停止の指令のための操作部27が前面側に設けられ、その背面側には可搬型除湿機の持ち運びのためのハンドル28が取り付けられた取っ手部28Bが配置されている。ハンドル28は、取っ手部28Bすなわち後ケース11Rの上面に対して水平軸心28AX周りに回動自在に軸支されている。図1(a)及び図2(b)から分かるように、ハンドル28は、実線で示された水平姿勢の収容状態では取っ手部28Bすなわち後ケース11Rの上面、背面及び側面より突出しないように各面内に収まっている。他方、破線で示されているようにハンドル28が上向きに引き起こされた状態で、ハンドル28を把持して可搬型除湿機を持ち運ぶことができる。
図2(b)及び図3から分かるように、後ケース11Rの上面に形成された取っ手部28Bは、操作部より一段下がった位置に設けられている。そして、この段部を利用して、後ケース11Rの上部を前ケース11Fの上部に固定するための固定螺子30を背面からねじ込むようにしている(図2(b)参照)。こうすることにより、本体ケース11の組み立てに必要な固定螺子30の頭部を前面、側面及び上面の目立つ場所から隠すことができる。また、本体ケース11(後ケース11R)の背面に空気取込口21を設け、本体ケース11の上面の側部(右側)に吹出口を有する吹出筒22を設けた構造により、外観上目立たない背面に広い面積の空気取込口21を確保することができる。
また、図3の断面図に示したように、本体ケース11の内部の背面側に熱交換器17が配置され、除湿ローター14、再生ヒーター25及びメインファン12のモーター13を含む重量部品が前後方向の略中央部に配置されている。そして、ハンドル28と本体ケース11の上面(取っ手部28B)との接続部である水平軸心28AXが前後方向の略中央部に位置する。このような構造により、取っ手部28Bのハンドル28を把持して可搬型除湿機を持ち上げたときの重量バランスが良く、持ち運びが容易である。樹脂成形品である本体ケース11の強度上の観点からも好ましい構造である。
また、図1(b)及び図3から分かるように、操作部27には前面に向かって下がる傾斜が与えられており、吹出筒22の吹出口を形成する上端部が操作部27より高い位置に設けられている。このような構成によれば、操作部27のキースイッチ等の操作性が良くなる。また、吹出口から吹き出される暖かい乾燥空気が操作部27の付近を流れる可能性が低くなるので、操作部27に貼付される化粧パネル(樹脂シート)の劣化が早くなるおそれが無くなる。あるいは動作中に操作を行う場合の不快感が解消される。
図5は、吹出筒22を構成する吹出筒部材20を示し、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB−B断面図である。この吹出筒部材20は、本体ケース11(前ケース11F)の吹出筒22を構成する円筒状部分の上端部に装着される。したがって、図5に示す吹出筒部材20とその下につながる本体ケース11(前ケース11F)の円筒状部分とで吹出筒22が構成されている。吹出筒部材20(吹出筒22)の内面には、乾燥空気の吹出延長用ホース(蛇腹ホース)を接続するための係合部が設けられている。即ち、周方向に120度間隔で3箇所に、係止突起20aと係合孔20bが上下に並ぶように設けられている。係止突起20aは吹出延長用ホースの基端面を受け止め、係合孔20bは吹出延長用ホースの基端部外周面に設けられた係合突起が係合するためのものである。
吹出延長用ホース29が吹出筒22(吹出筒部材20)の上端開口部に接続された様子が図6に示されている。吹出筒22の上端開口部を閉じる蓋部材23は着脱自在であり、吹出延長用ホース29を吹出筒22に接続する場合は、蓋部材23を取り外して吹出延長用ホース29の基端部を吹出筒22の上端開口部に挿入する。吹出延長用ホース29の基端面が吹出筒部材20の内面の3個の係止突起20aに当接し、吹出延長用ホース29の基端部外周面に設けられた3個の係合突起が吹出筒部材20の3個の係合孔20bに係合することによって、吹出延長用ホース29が吹出筒22(吹出筒部材20)に固定される。吹出延長用ホース29は、可搬型除湿機から出てくる暖かい乾燥空気を用いて靴や小物衣類等の乾燥を行う場合に使用される。
また、本体ケース11(前ケース11F)の上面から突出する吹出筒22は、図1乃至図3から分かるように、その側面が操作部から取っ手部にわたる段部に接するように配置されている。このような構造によれば、平坦な上面から吹出筒が突出している場合に比べて吹出筒22と本体ケース11の上面との境界部分の強度が増す。特に、吹出筒22に吹出延長用ホース29を接続したときに吹出筒22と本体ケース11の上面との境界部分に外力が加わるおそれがあるので、この部分の強度が強いことが好ましい。
図7は、可搬型除湿機の操作部27を示す平面図である。この図を参照しながら、本実施例の可搬型除湿機の動作モードについて説明する。操作部27には、以下に説明する複数の押釦スイッチ及びLEDランプが設けられている。正確には、図3の断面図に示すように、操作部27の下方(前ケース11Fの内側)に2枚のプリント基板31,32が上下に重なるように配置されており、上側のプリント基板であるスイッチ基板31に操作部27に対応する複数の押釦スイッチ及びLEDランプが実装されている。操作部27に各押釦スイッチに対応する押下部及び各LEDランプに対応する透明窓が設けられた印刷樹脂シート(化粧シート)が貼付されている。また、下側のプリント基板である制御基板32には、上述のメインファン用モーター13、除湿ローター用モーター15、再生ファン24、再生ヒーター25等の駆動制御や操作部27の各押釦スイッチの入力信号処理、各LEDランプの表示出力処理等を司るマイクロプロセッサを含む制御回路(制御部)が実装されている。
図7の操作部27において、右端の入/切スイッチ33は可搬型除湿機の運転開始及び停止の指令のための押釦スイッチである。停止中にこのスイッチを押下すれば運転を開始し、運転中にこのスイッチを押下すれば運転を停止する。なお、後述するようにいくつかの運転モード(運転状態)の設定内容は制御部に記憶され、運転開始時には前回の設定内容で継続運転される。但し、メイン電源が切られたとき(停電時又は電源プラグが抜かれたとき)は設定内容の記憶が失われる。
図7において、入/切スイッチ33の上に設けられたLEDランプはイオン表示ランプ34であり、運転中に点灯し、停止中は消灯している。吹出筒22の内部の送風路にイオン発生電極が装着されており、運転中はこのイオン発生電極に高電圧が印可されるようになっている。これによりマイナスイオンが含まれた乾燥空気が吹出筒22から吹き出される。
図7において、操作部27の左上のLEDランプは満水/タンクなし表示ランプ35である。これは、ドレインタンク19が装着されていない場合、又はドレインタンク19に貯まっている水が満水レベルを超えている場合に点灯する。後述するように、ドレインタンク19が装着されていない状態又は貯まっている水が満水レベルを超えていることを検出するための磁気センサーを用いたフロートセンサーが備えられている。
図7において、操作部27の左下の押釦スイッチは吹出口回転/固定切換スイッチ36である。詳しい構造については後述するが、吹出筒22の上端開口部を閉じる円盤状の蓋部材23は水平軸心周りに傾斜した姿勢で固定可能であり、傾斜姿勢の蓋部材23と吹出筒22の上端開口部との間に吹出口が形成される。そして、蓋部材23は垂直軸心周りに所定の角度範囲で往復回動可能であり、これにより、吹出口から吹き出される乾燥空気の吹出方向が水平方向に所定の角度範囲で変化する。蓋部材23を垂直軸心周りに所定の角度範囲で往復回動させるモーターが吹出方向変更手段として備えられ、このモーターのオン・オフを切り換えることによって吹出方向(吹出口)の回転・停止を切り換えることができる。この指令を行うための押釦スイッチが吹出口回転/固定切換スイッチ36である。
吹出口(蓋部材23)が停止しているときに吹出口回転/固定切換スイッチ36を押下すれば吹出口(蓋部材23)の往復回動が始まり、吹出口(蓋部材23)が往復回動しているときに吹出口回転/固定切換スイッチ36を押下すれば吹出口(蓋部材23)の往復回動が停止する。この往復回動させるか否かの設定は、メイン電源が切られない限り制御部に記憶され、運転開始時には前回の設定内容で継続運転される。メイン電源がオフ・オンされた後の初期状態では吹出口を往復回動させる設定となる。
図7において、吹出口回転/固定切換スイッチ36の右側にはオフタイマー設定スイッチ37が設けられ、その上に1時間、3時間及び6時間をそれぞれ表示する3個のタイマー表示ランプ38が設けられている。オフタイマー設定スイッチ37を1回押下するたびに、オフタイマー設定値が1時間、3時間、6時間と変化し、それに応じて3個のタイマー表示ランプ38が順番に点灯する。6時間の設定状態から更にオフタイマー設定スイッチ37を押下すれば、オフタイマー設定が解除され、3個のタイマー表示ランプ38は全て消灯する(連続動作設定に戻る)。オフタイマーが設定されているときは、除湿機の動作が設定時間後に自動停止する。また、動作中は残り時間に応じて3個のタイマー表示ランプ38の表示が変化する。
図7において、オフタイマー設定スイッチ37の右側には運転切換スイッチ39が設けられ、その上に弱、標準及び自動の運転モードをそれぞれ表示する3個の運転モードランプ40が設けられている。運転切換スイッチ39を1回押下するたびに、運転モードが弱、標準、自動の3通りのうちの1つに順番に切り換わり、対応する運転モードランプ40が点灯する。この設定情報は、メイン電源が切られない限り制御部に記憶され、運転開始時には前回の設定内容で継続運転される。メイン電源がオフ・オンされた後の初期状態では標準運転が設定される。弱運転及び標準運転では除湿能力がそれぞれ弱及び標準(中)に設定される。除湿能力は主として再生ヒーター25による加熱出力及びメインファン12による送風量によって決まる。再生ヒーター25及びメインファン12はそれぞれ低、中及び高の3段階に出力制御され、弱運転では再生ヒーター25及びメインファン12が共に低出力に設定され、標準運転では再生ヒーター25及びメインファン12が共に中出力に設定される。自動運転では、後述する湿度センサーの検出情報に基づいて除湿能力(再生ヒーター25及びメインファン12)が可変制御される。
図7において、運転切換スイッチ39の右側には、衣類乾燥モードスイッチ41及び除菌乾燥モードスイッチ42が設けられている。これらの押釦スイッチは、通常の除湿モードである上述の弱、標準及び自動運転に優先する特別な運転モードである衣類乾燥モード又は除菌乾燥モードを設定するために使用される。すなわち、衣類乾燥モードスイッチ41又は除菌乾燥モードスイッチ42が押下されると、記憶されている運転モードの設定情報が弱、標準及び自動運転のいずれであるかに関わらず、衣類乾燥モード又は除菌乾燥モードが開始する。これらの運転モードの詳細な制御については後述する。
また、衣類乾燥モードスイッチ41及び除菌乾燥モードスイッチ42には、それぞれの設定表示ランプ41a又は42aが設けられている。衣類乾燥モードスイッチ41及び除菌乾燥モードスイッチ42が押下されて衣類乾燥モード又は除菌乾燥モードが設定されると、対応する設定表示ランプ41a又は42aが点灯する。なお、衣類乾燥モード又は除菌乾燥モードの設定は運転が停止すればリセットされ、次に運転が開始したときは通常の除湿モード(設定情報が記憶されている弱、標準又は自動運転)が開始される。
図7において、衣類乾燥モードスイッチ41及び除菌乾燥モードスイッチ42の上側には、3個の湿度表示ランプ43が設けられている。湿度センサーによって、空気取込口21から取り込まれる空気の湿度が検出され、その検出結果が運転制御に使用されると共に、3個の湿度表示ランプ43によって表示される。一実施例として、検出された湿度が40%より低い場合は3個の湿度表示ランプ43のうち左端の1個が点灯し、40〜60%の場合は右端を除く2個が点灯し、60%より高い場合は3個すべてが点灯する。
次に、湿度センサーの取り付け構造について説明する。図3の断面図に示すように、熱交換器17の下方に隔壁44で仕切られた湿度センサー用空気路45が形成され、この湿度センサー用空気路45の途中に湿度センサー46が実装されたプリント基板が配置されている。湿度センサー46の引き出し線は、湿度センサー用空気路45を通って前述の制御基板32に接続されている。湿度センサー用空気路45は、空気取込口21から除湿ローター14へ至る処理空気(矢印AR)の通路(処理空気路)と仕切られた専用の空気路であり、その入口47も空気取込口21と別に設けられている。すなわち、図2(b)に示すように、本体ケース11(後ケース11R)の背面に設けられた空気取込口21の直ぐ下に湿度センサー用空気路の入口47が設けられている。
入口47から湿度センサー用空気路45に吸い込まれた空気ARHは、除湿ローター14を通らずにメインファン12に至る。空気取込口21から取り込まれて除湿ローター14を通過後にメインファン12に至る処理空気ARと湿度センサー用空気路45に吸い込まれた空気ARHはメインファン12で合流して吹出筒22に至る。つまり、空気取込口21からの処理空気ARの取り込みと入口47から湿度センサー用空気路45への空気ARHの吸い込みが共通のメインファン12によって行われる。
吹出筒22の上端開口部と蓋部材23との間の吹出口がほとんど塞がれた状態で除湿機が運転されたような場合に、本体ケース11の内部、特に再生ヒーター25及び除湿ローター14の周辺の温度が異常に上昇する。この場合でも、処理空気ARの通路(処理空気路)と仕切られた湿度センサー用空気路45の温度上昇は抑制されるので、湿度センサー46の誤検出を回避することができる。その結果、設定湿度より高い湿度で運転を停止してしまうといった誤動作が回避される。また、湿度センサー用空気路45に吸い込まれた空気は、除湿ローター14を通過しないで吹出筒22に至るので、除湿機内部の温度を下げる効果も有する。また、空気取込口21の近傍(直ぐ下)に湿度センサー用空気路45の入口47が配置されているので、室内空気のうち空気取込口21から除湿機内部に流れ込む空気の一部が湿度センサー用空気路45に流れ込む。したがって、除湿処理される空気ARの湿度の検出精度が高くなる。
図8は、本実施例の可搬型除湿機の制御回路のブロック図である。制御部48は、マイクロプロセッサやその周辺回路、各モーター及びヒーターの駆動回路等で構成され、制御基板32に実装されている。前述の操作部27を構成する複数の押釦スイッチ49の信号が制御部48に入力されると共に、複数のLEDランプ50が制御部48によって点灯又は消灯制御される。また、制御部48には、上述の湿度センサー46の検出信号及び位置センサー51の検出信号が入力される。位置センサー51は、吹出方向変更手段によって往復回動される蓋部材23が基準位置にあるか否かを検出するセンサーである。このセンサーとその検出情報に基づく吹出方向変更手段の制御はオプションであり、後に詳しく説明する。また、前述のフロートセンサー59の検出信号も制御部48に入力されている。
制御部48の出力によって駆動制御される機構部品として、前述のメインファン12のモーター13、除湿ローター14のモーター15、再生ファン24(のモーター)、再生ヒーター25、及び吹出方向回動モーター52が含まれている。吹出方向回動モーター52は、前述の吹出方向変更手段のモーターである。制御部48を構成するマイクロプロセッサは、ROM(リードオンリーメモリー)に記憶されたプログラムに従い、また、必要に応じて湿度センサー46の検出信号や位置センサー51の検出信号に基づいて、各機構部品の駆動制御を実行する。
図9は、自動運転モードにおける制御の例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて自動運転モードの概略を説明する。なお、通常の除湿モードのうちの弱運転では再生ヒーター25及びメインファン12が共に低出力に設定され、標準運転では再生ヒーター25及びメインファン12が共に中出力に設定される。再生ヒーター25及びメインファン12は、それぞれ低、中及び高の3段階の出力制御が可能である。
自動運転モードで運転が開始されると、ステップ#101において、メインファン12(のモーター13)が高出力(高速)で駆動されると共に再生ヒーター25が高出力で駆動される。また、除湿ローター14(のモーター15)、再生ファン24及び吹出方向回動モーター52がオンになる。但し、前回の運転時に吹出方向回動モーター52をオフに設定していたときは、その設定情報が継続して有効になるので吹出方向回動モーター52はオフのままである。別実施例として、自動運転モードでの運転開始時に必ず吹出方向回動モーター52がオンになるようにしてもよい。この場合は、操作部27の吹出口回転/固定切換スイッチ36を押下すれば吹出方向回動モーター52を停止して吹出方向を固定に変更することができる。
次のステップ#102において、運転開始から10分が経過したか否かをチェックする。10分が経過するまで、ステップ#101で設定された高出力(高除湿能力)が維持される。10分が経過すると、ステップ#103において湿度センサー46による検出湿度を取得する。そして検出湿度が60%以上である場合(ステップ#104のYes)はステップ#105でメインファン12及び再生ヒーター25の高出力(高除湿能力)を維持する。
検出湿度が55〜60%である場合(ステップ#106のYes)はステップ#107でメインファン12及び再生ヒーター25を共に中出力(中除湿能力)に切り換える。検出湿度が40〜55%である場合(ステップ#108のYes)はステップ#109でメインファン12及び再生ヒーター25を共に低出力(低除湿能力)に切り換える。検出湿度が40%未満の場合(ステップ#108のNo)は、メインファン12の低出力を維持し、再生ヒーター25をオフにする(ステップ#110)。
上記のように、湿度センサー46による検出湿度に基づく除湿能力の切換制御をオフタイマーに設定された時間が経過するまで続ける。オフタイマーに設定された時間が経過すれば(ステップ#111のYes)、ステップ#113で運転停止の処理を行い、すべての制駆動出力を停止する。また、オフタイマーが設定されていない連続運転の場合でであっても、自動運転モードの最大運転時間として設定されている時間(図9の例では36時間)が経過すれば(ステップ#112のYes)、ステップ#113の運転停止処理に移行する。なお、上記の説明における制御パラメータとしての検出湿度やタイマー時間の具体値は一例に過ぎず、必要に応じてこれらの値は変更可能である。
図10は、衣類乾燥モードにおける制御の例を示すフローチャートである。衣類乾燥モードで運転が開始されると、ステップ#201において、メインファン12(のモーター13)が高出力(高速)で駆動されると共に再生ヒーター25が高出力で駆動される。また、除湿ローター14(のモーター15)、再生ファン24及び吹出方向回動モーター52がオンになる。衣類乾燥モードでも、操作部27の吹出口回転/固定切換スイッチ36による吹出方向を変化させるか否かの設定は有効である、また、その設定情報は記憶され、次回の運転開始のときに継続して有効になる。別実施例として、衣類乾燥モードでの運転開始時に必ず吹出方向回動モーター52がオンになるようにしてもよい。
衣類乾燥モードでは、運転開始から停止までステップ#201で設定された高出力(高除湿能力)が維持される。つまり、衣類乾燥モードでは最大除湿出力を用いて衣類を短時間で乾かす。次のステップ#202において、運転開始から30分が経過したか否かをチェックする。30分が経過すると、ステップ#203において湿度センサー46による検出湿度を取得する。続くステップ#204において、検出湿度が35%から30%に低下するまでの時間を計測する。つまり、検出湿度の低下勾配を判定し、以下のように検出湿度の低下勾配が大きいほど短い残り動作時間をオフタイマーにセットする。
検出湿度が35%から30%に低下するまでの時間が15分未満であった場合(ステップ#205のYes)は、検出湿度の低下勾配が大きいことを意味するので、オフタイマーに短い時間15分をセットする(ステップ#206)。乾燥対象の衣類が少ない場合、衣類の水分量が少ない場合、あるいは衣類を吊している乾燥室の容積が小さい場合がこれに対応する。検出湿度が35%から30%に低下するまでの時間が15〜30分であった場合(ステップ#207のYes)は、検出湿度の低下勾配が中間レベルであることを意味するので、オフタイマーに中間の時間30分をセットする(ステップ#208)。検出湿度が35%から30%に低下するまでの時間が30分以上であった場合(ステップ#207のNo)は検出湿度の低下勾配が小さいことを意味するので、オフタイマーに長い時間60分をセットする(ステップ#209)。乾燥対象の衣類が多い場合、衣類の水分量が多い場合、あるいは衣類を吊している乾燥室の容積が大きい場合がこれに対応する。
上記のようにセットされたオフタイマーが経過すれば(ステップ#210のYes)、ステップ#212で運転停止の処理を行い、すべての制駆動出力を停止する。また、衣類乾燥モードの最大運転時間として設定されている時間(図10の例では4時間)が経過した場合(ステップ#211のYes)もステップ#212の運転停止処理に移行する。
なお、検出湿度が35%から30%に低下するまでの時間が30分以上かかった場合(ステップ#207のNo)とは、実際には30分経過しても検出湿度が30%まで下がらなかった場合を意味する。つまり、検出湿度が35%になった後に30分経過しても検出湿度が30%まで下がらなかった場合は、その時点でステップ#209へ移行してオフタイマーに60分をセットする。また、上記の説明における制御パラメータとしての検出湿度やタイマー時間の具体値は一例に過ぎず、必要に応じてこれらの値は変更可能である。
図11は、除菌乾燥モードにおける制御の例を示すフローチャートである。除菌乾燥モードは、無駄な電力消費を抑えながら、前述のイオン発生電極によるマイナスイオンが含まれた乾燥空気を部屋の隅々まで送風することを目的とする運転モードである。除菌乾燥モードで運転が開始されると、ステップ#301において、メインファン12(のモーター13)が高出力(高速)で駆動されると共に再生ヒーター25が中出力で駆動される。また、除湿ローター14(のモーター15)、再生ファン24及び吹出方向回動モーター52がオンになる。除菌乾燥モードでも、操作部27の吹出口回転/固定切換スイッチ36による吹出方向を変化させるか否かの設定は有効である、また、その設定情報は記憶され、次回の運転開始のときに継続して有効になる。別実施例として、除菌乾燥モードでの運転開始時に必ず吹出方向回動モーター52がオンになるようにしてもよい。乾燥空気を部屋の隅々まで行き渡らせることを目的とする除菌乾燥モードでは特に、吹出方向を変化させる設定での運転が好ましい。
次のステップ#302において、運転開始から10分が経過したか否かをチェックする。10分が経過するまで、ステップ#301で設定された出力、すなわち、メインファン12の高出力及び再生ヒーター25の中出力が維持される。なお、除菌乾燥モードでは、メインファン12を高出力に維持しながら、再生ヒーター25の出力は中出力(最大出力より低い第1出力に相当する)から開始し、湿度センサー46による検出湿度の低下に伴って再生ヒーター25の出力を段階的に低下させる制御が行われる。すなわち、運転開始から10分が経過した時点から検出湿度を取得し(ステップ#303)、検出湿度が50%以下になれば(ステップ#304のYes)再生ヒーター25の出力を低出力(第1出力より低い第2出力に相当する)に変更する(ステップ#305)。50%を超えている場合はステップ#301に戻って再生ヒーター25の中出力が維持される。
この後、ステップ#306で検出湿度を取得し、検出湿度が45%以下であれば(ステップ#307のYes)、再生ヒーター25をオフ(出力ゼロ)にする(ステップ#308)。検出湿度が45%を超えている場合は(ステップ#307のNo)、再生ヒーター25の出力を低出力に維持する(ステップ#309)。このような検出湿度に基づく再生ヒーター25の出力制御をオフタイマーに設定された時間が経過するまで続ける。オフタイマーに設定された時間が経過すれば(ステップ#310のYes)、ステップ#312で運転停止の処理を行い、すべての制駆動出力を停止する。また、オフタイマーが設定されていない連続運転の場合であっても、除菌乾燥モードの最大運転時間として設定されている時間(図11の例では36時間)が経過すれば(ステップ#311のYes)、ステップ#312の運転停止処理に移行する。
なお、上記の説明における制御パラメータとしての検出湿度やタイマー時間の具体値は一例に過ぎず、必要に応じてこれらの値は変更可能である。特に、検出湿度に基づく再生ヒーター25の出力制御を行う際に、判断基準となる湿度のしきい値(ステップ#307の45%)は、室温に応じて変更することが望ましい。つまり、本実施例の除湿機は前述のように暖かい乾燥空気を供給して室温を上げる効果があるが、室温が低い場合に除菌乾燥モードで運転すると、室温の上昇に伴って部屋の隅の断熱が不十分な箇所や空気の対流が起こりにくい箇所で結露が発生するおそれがある。この結露を回避するために、湿度センサー46の近傍に温度センサーを設け、その検出温度が所定のしきい値より低い場合は、ステップ#307における湿度のしきい値を45%より5〜10%下げるような制御を行うことが好ましい。
また、除菌乾燥モードでは、上述のように、再生ヒーター25の出力を最大出力より低くして無駄な消費電力を抑えながら、メインファン12は最大出力(高出力)を維持する。再生ヒーター25の出力を下げた場合、図4を用いて説明した再生ゾーンにおける除湿ローター14の再生が十分ではなくなる。つまり、再生ゾーンで除湿ローター14に当てられる再生用空気の温度が低下し、除湿ローター14の吸湿剤が完全に乾かない状態で再生ゾーンから除湿ゾーンへ移動することになる。この結果、除湿ローター14の除湿能力を最大限に使用できなくなる。この場合に大量の処理空気ARが除湿ローター14へ供給されても、除湿ローター14の除湿能力を超える分については除湿されず、除湿ローター14を単に通過することになる。むしろ、そのような通過するだけの処理空気は除湿ローター14や再生ユニット16(内の再生用空気)の温度を下げ、除湿ローター14の除湿能力を更に下げることになる。
上記のような現象を回避するために、除湿ローター14をバイパスしてメインファン12に至る処理空気のバイパス路を設けてもよい。つまり、除湿ローター14を囲む樹脂成形品の周辺部(特に下端部)にバイパス路を構成する開口を設け、この開口を通過する処理空気が除湿ローター14を通過しないでメインファン12に至るようにすればよい。更に、その開口を閉じるダンパーを設け、除菌乾燥モードの運転時のみ、そのダンパーを開くようにしてもよい。
次に、吹出筒22の上端開口部と傾斜姿勢の蓋部材23との間に形成される吹出口から吹き出される乾燥空気の吹出方向を水平方向に所定の角度範囲で変化させる機構について、図12〜17を参照しながら説明する。図12は、蓋部材の正面図、下面図及び側面図である。図13は、蓋部材を水平軸心周りに傾斜した姿勢で固定可能に保持すると共に垂直軸心周りに回動可能に保持する中継軸部材の上面図、正面図、側面図及び断面図である。図14は、中継軸部材を介して蓋部材を保持する垂直軸部とそれを回動させるギアが一体に構成された整流部材の上面図及び断面図である。図15は、蓋部材、中継軸部材及び整流部材の組み立て方法を説明するための図である。図16は、蓋部材、中継軸部材及び整流部材の組立状態を示す図である。図17は、整流部材が装着される整流部材ベースの上面図である。
蓋部材23を示す図12において、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。蓋部材23は樹脂成形品で作られ、ドーム状の天板231と、その下方に所定の間隔で天板231と平行に配設された複数(図示の例では4枚)の翼232とで構成されている。翼232は、天板231の前側(正面側)の縁に沿って略半周にわたって設けられ、両端部の柱部233及び中央部(正面)の柱部234によって所定の間隔で天板231の下面に固定されている。また、天板231の下面中央部には、平面視U字状の壁部235が設けられている。壁部235の互いに平行な対向壁面には一対の枢支用孔236が設けられている。
この壁部235とその枢支用孔236は、蓋部材23が水平軸心23AX周りに回動して傾斜姿勢で固定されるための手段を構成する。また、壁部235を平面視U字状とし、更に両端を曲げた形状としているのは、天板231の下面と壁部235との境界部(接合部)の強度を高めるためである。また、互いに平行な対向壁面を連結する中央壁面237は、次に述べる中継軸部材の取り付け方向の誤り(逆差し)を防ぐ効果も有する。
図13は中継軸部材53を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(a)におけるD−D断面図である。中継軸部材53は樹脂成形品で作られ、上面が閉じ、下端が解放した円筒形状を有する。中継軸部材53の左右の側面には、蓋部材23の枢支用孔236に係合する一対の枢支用突起531が設けられ、一方の側面には枢支用突起531の周りに円形の摩擦保持面532が設けられている。摩擦保持面532は、環状突起部と環状溝部が同心円状に交互に配置された構造を有する。
蓋部材23の一対の枢支用孔236に中継軸部材53の一対の枢支用突起531を係合させるようにして蓋部材23と中継軸部材53とを結合したとき、蓋部材23の壁部235を構成する互いに平行な対向壁面が中継軸部材53の左右の側面を挟み込むように保持する。そして、摩擦保持面532の働きにより、蓋部材23を水平軸心23AX周りに回動操作することが容易であり、かつ、蓋部材23の傾斜姿勢での固定が確実になる。また、中継軸部材53の背面側には逆差し防止用の突起リブ533が設けられている。すなわち、中継軸部材53を前後逆にして蓋部材23に結合しようとしても、突起リブ533が蓋部材23の壁部235を構成する中央壁面237と干渉するので、逆差しができないようになっている。
中継軸部材53の上面には、整流部材の垂直軸部(回動軸)の先端に設けられた係合突起と係合する3つの係合孔が設けられている。すなわち、中央の係合孔534と、90度異なる方向に設けられた2個の係合孔535である。2個の係合孔535のうちの1個だけが整流部材の垂直軸部に設けられた係合突起に係合する。90度異なる方向に2個の係合孔535が設けられているのは、整流部材の垂直軸部に対して中継軸部材53を介して取り付けられる蓋部材23を、水平方向に90度異なる2つの向きの間で変更可能とするためである。中継軸部材53の正面下部及び右側面下部には、整流部材の垂直軸部の側面に設けられた係合突起と係合する係合溝536及び537が設けられている。上記の係合孔535と同じ理由により、90度異なる方向(正面下部及び右側面)に2個の係合溝536及び537が設けられている。
図14は整流部材54を示し、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB−B断面図である。整流部材54は樹脂成形品で作られ、2つの機能を有する。第1の機能は、吹出筒22内部空間における水平断面を複数の区画に分割する整流機能である。本実施例では、ハニカム状の隔壁541で構成された円盤状の部分がこの整流機能を発揮する。これにより、メインファン12の吹出風路から吹出口に至る風路の形状にかかわらず、吹出口から吹き出される風が均一化される効果が得られる。本実施例の除湿機のように、吹出口を構成する吹出筒22が本体ケース11の上面側部から突出するように設けられた構造では、メインファン12の吹出風路(除湿機の前面側)から吹出筒22を経て吹出口に至る風路の形状が曲線的になっているので、風路を流れる空気流が不均一になりやすい。この場合でも、整流部材54の整流作用によって、空気流が不均一になるのが抑制される。なお、吹出筒22内部空間における水平断面を複数の区画に分割するための隔壁は、ハニカム状の隔壁に限られるわけではなく、例えば格子状の隔壁であってもよい。
整流部材54の第2の機能は、中継軸部材53を介して蓋部材23を支持すると共に、吹出方向回動モーター52の駆動力を蓋部材23に伝達して垂直軸心周りに蓋部材23を往復回動させる機能である。この機能を奏するために、ハニカム状の隔壁541で構成された円盤状部分の中央部から上方に突出する垂直軸部(回動軸)542が立設されると共に、外周部に平ギア543が設けられている。なお、図14(a)において、平ギア543の各歯の輪郭は省略し、山の包絡線及び谷の包絡線を細線で描き、それらの中間の線を一点鎖線で描いている。
垂直軸部542の先端面(上面)には、中継軸部材53の係合孔534及び535に係合する2個の係合突起544及び545が設けられている。中心(軸心)からずれた位置にある係合突起545は中心に位置する係合突起544に比べて背が低い。また、係合突起545は、周囲をスリットで分離された舌部545aの先端に位置し、係合突起545の先端が押下されると舌部545aの弾性変形(撓み)によってある程度下方へ後退可能である。また、垂直軸部542の側面には、中継軸部材53の2個の係合溝536及び537のいずれかに係合する係合突起546が設けられている。
図15に例示する組立関係では、中継軸部材53の右側面に設けられた係合溝537が整流部材54の垂直軸部542の側面に設けられた係合突起546に係合する。中継軸部材53を整流部材54の垂直軸部542に被せ、中継軸部材53の係合溝537の下端開口部を垂直軸部542の係合突起546に位置合わせして軸方向に押し込んだ後、中継軸部材53を整流部材54に対して回転させる。L字状に形成された係合溝537に沿って係合突起546が移動し、図16(a)に示す状態で固定される。このとき、整流部材54の垂直軸部542の上面の中心に設けられた係合突起544は中継軸部材53の上面の中心に設けられた係合孔534に係合する。垂直軸部542の上面の中心からずれた位置に設けられた係合突起545は、中継軸部材53の上面内側に当接して舌部545aの弾性変形によって下方へ後退し、中継軸部材53を整流部材54に対して回転させたときに係合突起545が中継軸部材53の上面の係合孔535に嵌合する。これによって、中継軸部材53と整流部材54(の垂直軸部542)との嵌合状態が固定される。
図16(b)は、図16(a)の状態に蓋部材23を取り付けた状態を示している。実際には、先に蓋部材23と中継軸部材53とを結合させ、これを整流部材54に結合させるほうが作業性が良い。図16(c)は、蓋部材23を水平軸心(図12における水平軸心23AX)周りに略30度傾けた状態を示している。図16(b)及び(c)では、蓋部材23等と吹出筒22との関係が分かるように、図5に示した吹出筒部材20の断面を破線で付加している。また、図16(c)では、蓋部材23と吹出筒22(吹出筒部材20)の上端開口部との間に形成された吹出口OPから処理空気が吹き出される様子を矢印線ARで示している。
図15及び図16に示した組立関係では、中継軸部材53の右側面に設けられた係合溝537を整流部材54の垂直軸部542の側面に設けられた係合突起546に係合させており、この場合は除湿機の正面側に吹出口が向く(図16(c))。これに対して、中継軸部材53の正面に設けられた係合溝536を整流部材54の垂直軸部542の側面に設けられた係合突起546に係合させた場合は、除湿機の右側面側に吹出口が向くことになる。このように、蓋部材23(及び中継軸部材53)は整流部材54の垂直軸部(回動軸)542に対して着脱自在であり、かつ、水平方向に90度異なる2つの角度位置で蓋部材23が垂直軸部542に固定可能である。この2つの異なる角度位置(向き)は、蓋部材23が垂直軸心周りに往復回動する際の中心位置(向き)となる。なお、本実施例では、整流部材54の垂直軸部542と蓋部材23とが中継軸部材53を介して取り付けられているが、別実施例として整流部材54の垂直軸部の上端部に蓋部材23を直接取り付ける構造を採用してもよい。
次に、整流部材54を支持して垂直軸心周りに往復回動させるための整流部材ベース等について説明する。図17に示すように、整流部材54が装着される整流部材ベース55は略中央部に円形開口551が設けられた樹脂製の板状部材である。円形開口551の縁から少し後退した部分に低い円環壁部552が形成されている。整流部材ベース55の周縁部にも補強のための低い壁部553が形成されている。他方、図14に示した整流部材54には、外周部の平ギア543の下方に円筒部547が設けられ、その少し内側には、周方向に120度間隔で配設された3本の脚部548が設けられている。整流部材54の円筒部547が整流部材ベース55の円環壁部552に外嵌するように、整流部材54が整流部材ベース55に装着される。このとき、3本の脚部548の先端に形成された外側へ突出する爪部548aが整流部材ベース55の下面を保持することにより、整流部材54が整流部材ベース55に対して回動自在に保持される。
整流部材ベース55に対して回動自在に保持される整流部材54の外周部に設けられた平ギア543に螺合する小径ギア56が備えられ、整流部材ベース55の下面に取り付けられた吹出方向回動モーター52の回転軸に小径ギア56が固着されている。この吹出方向回動モーター52は、一定の負荷が掛かると回転方向を自動的に反転させる自動反転機能を有する低速ギアドモーターである。また、整流部材54を回動自在に保持する整流部材ベース55の円環壁部552の高さは、図17に示す角度SA(150度)の範囲の部分が他の部分より低く形成されている。そして、この低くなった凹部に係合する小突起が整流部材54の円筒部547の内面1箇所(図14(a)に示す角度位置RS)から内側へ突出するように設けられている。
したがって、駆動手段である吹出方向回動モーター52と小径ギア56によって整流部材54が回転駆動され、円筒部547に設けられた上記の小突起が角度SAの範囲の端部に達すると、円環壁部552が高くなる段部に小突起が当接してそれ以上回転できなくなる。その結果、吹出方向回動モーター52の自動反転機能が働いて整流部材54の回転方向が反転する。このようにして、図8に示した制御部48は、吹出方向回動モーター52をオンにするだけで整流部材54を水平方向の角度SAの範囲内で往復回動させることができ、その結果、蓋部材23(したがって吹出方向)を垂直軸心周りに角度SAの範囲内で往復回動させることができる。この往復回動を停止するには、吹出方向回動モーター52をオフにすればよい。
しかし、吹出方向回動モーター52をオフにするタイミングに応じて蓋部材23(吹出方向)が停止したときの向きは、回動角度SAの範囲内のランダムな角度位置となる。そこで、蓋部材23(整流部材54)の垂直軸心周りの角度範囲SAにおける中心位置(基準位置)を検出する位置センサーとして、マイクロスイッチ57とそれを操作する揺動部材58が設けられている。揺動部材58は、その基端側が整流部材ベース55の上面に、垂直軸心58AX周りに揺動自在に軸支され、先端側がマイクロスイッチ57の操作レバーに当接している。また、基端側と先端側との中間部に突出部581が設けられ、この突出部581が整流部材54の円筒部547の外周面に当接するように構成されている。整流部材54の円筒部547は、基準位置(図14(a)に示す角度位置RC)に相当する箇所において、外周面に窪みが設けられており、この窪みが揺動部材58の突出部581に合致したときに揺動部材58及びマイクロスイッチ57の操作レバーが図17(a)に矢印で示す方向に動く。
したがって、整流部材54の円筒部547が回動角度SAの範囲内の中心位置(基準位置)に来ればマイクロスイッチ57がオン(又はオフ)になり、それ以外の場所ではマイクロスイッチ57がオフ(又はオン)となる。このようにして、整流部材54(蓋部材23すなわち吹出方向)の垂直軸心周りの角度範囲SAにおける中心位置(基準位置)を検出することができる。但し、基準位置を検出する位置センサーは上記のようなマイクロスイッチ57及び揺動部材58からなる構成に限らず、公知の種々のセンサーを用いて構成することができる。
マイクロスイッチ57(位置センサー)の出力信号は次のような制御に用いることができる。第1の制御として、制御部48は、蓋部材23の回動停止が指令されたときに位置センサーの検出情報に基づいて蓋部材23が基準位置に達するまで蓋部材23の回動停止を遅らせるように制御する。これにより、吹出方向の往復回動が動作中に操作部27の吹出口回転/固定切換スイッチ36が押下されて吹出方向回動モーター52がオフにされるときに、ランダムな角度位置ですぐにオフにされるのではなく、蓋部材23が基準位置すなわち回動角度の中心である正面(又は右側面)を向いてからオフにされる。また、入/切スイッチ33によって運転が停止されるときも同様に、吹出方向回動モーター52のオフタイミングは遅延される。こうすることにより、運転再開時に常に同じ方向(除湿機の正面又は右側面)に乾燥空気が吹き出す。蓋部材の回動停止モードで運転再開するような場合は、常に同じ方向から乾燥空気が吹き出すほうが使用勝手が良い。
第2の制御として、制御部48は電源投入時に、蓋部材23が基準位置にあること示す検出情報が位置センサーから得られないときは、蓋部材23の回動を開始し、蓋部材23が基準位置に達したことを位置センサーが検出したときに蓋部材23の回動を停止する初期位置制御を実行する。このような初期位置制御を実行することにより、電源投入時に自動的に吹出口が基準方向(除湿機の正面又は右側面)を向く。蓋部材23が回動中に電源プラグが抜かれたような場合は上記第1の制御でも蓋部材23がランダムな角度位置で停止することを回避できないが、この第2の制御によれば、そのような場合であっても運転再開時に常に同じ方向から乾燥空気を吹き出すことができる。第1の制御を省略して第2の制御のみを行ってもよい。
なお、上記のような蓋部材23(すなわち吹出方向)の垂直軸心周りの角度範囲SAにおける基準位置を検出する位置センサーと、その検出情報に基づく制御はオプションであり、必須ではない。
次に、除湿手段を構成する熱交換器17から集められた水を貯めるドレインタンク19とその周辺の構造について図18から図21を参照しながら説明する。図18は、本実施例の可搬型除湿機を背面から見たときのドレインタンク19とその周辺の構造を示す部分断面図である。図19は、本実施例の可搬型除湿機を左側面から見たときの一時貯水部材に関する構造を示す部分断面図である。図20は、本実施例の可搬型除湿機を左側面から見たときのドレインタンク19のフロートセンサーに関する構造を示す部分断面図である。
図1に示した可搬型除湿機の全体図と図18から分かるように、ドレインタンク19は細長い略直方体形状を有し、除湿機の本体ケース11の右側面の吹出筒22を構成する円筒状部分の下方に設けられた開口からドレインタンク19を挿入するようにして装着する。ドレインタンク19の右側面(図18では左側)の上部に凹部191が設けられ、その上に平面視U字状の取っ手192が備えられている。したがって、ドレインタンク19を本体ケース11から取り出すときは、凹部191から手指を上方に差し込み、取っ手192を把持してドレインタンク19を引き出せばよい。ドレインタンク19を少し引き出せば、取っ手192の上側からも手指を差し込むことができるので把持しやすい。特に、床に置かれた可搬型除湿機のドレインタンク19を人が立ったままで取り出す際の作業性が良い。
図18及び図19に示すように、ドレインタンク19にはタンク蓋61が備えられ、タンク蓋61の左側面側(図18では右側)端部近くに漏斗状に窪んだ水受部611が設けられている。水受部611の中心にはドレインタンク19の内部に連通する入口孔612が設けられている。水受部611の上方には熱交換器17の下端に設けられた排水口171が位置する。図19に示すように、排水口171は前側熱交換器17Fの下端部に設けられ、後側熱交換器17Rの下端部には前側熱交換器17Fの下端部へ連通する排水路172が設けられている。
図18及び図19に示すように、熱交換器17の下端に設けられた排水口171とドレインタンク19の水受部611との間に、一時貯水部材62が設けられている。この一時貯水部材62は、ドレインタンク19を本体ケース11から取り外した状態で排水口171から滴下した水を一時的に貯める働きを有する。一時貯水部材62は、上部が開口した容器の底面から垂下する板状の垂下板621を有すると共に、容器の上端部が本体ケース11に対して軸支され、水平軸心62AX周りに揺動自在な構造を有する。
ドレインタンク19を本体ケース11から取り外した状態では、図18に破線で示すように、一時貯水部材62の垂下板621が垂下し、容器の開口が上方の排水口171に対向した状態となる。この状態で、排水口171から滴下した水が一時貯水部材62の容器に一時的に貯められる。ドレインタンク19を本体ケース11に装着すると、ドレインタンク19の左側面側(図18では右側)端部が一時貯水部材62の垂下板621に当接し、一時貯水部材62が水平軸心62AX周りに回動し、図18に実線で示すような傾斜姿勢となる。その結果、一時貯水部材62の容器に貯まっていた水がドレインタンク19の蓋部61に形成された水受部611に落下し、入口孔612からドレインタンク19の内部へ落下する。そして、この状態では、排水口171から滴下した水はドレインタンク19の水受部611に直接落下する。
また、図18及び図20に示すように、ドレインタンク19にはフロート63が取り付けられている。このフロート63は、ドレインタンク19の長手方向略中央部に掛け渡された軸部材631から垂下するように、かつ、軸部材631を中心に揺動できるように支持されている。垂下状態のフロート63が図20には実線で描かれ、図18には破線で描かれている。ドレインタンク19に水が貯まり、その水位が図18において二点鎖線で示すように満水レベルになると、フロート63は軸部材631を中心に回動し、実線で示すような傾斜姿勢になる。
フロート63の上面にはマグネットが収容された検知部632が設けられている。また、垂下姿勢のフロート63の検知部632に対向する位置に磁気センサーで構成されたフロートセンサー59が配置されている。フロートセンサー59はプリント基板591に実装され、プリント基板591が本体ケース11の内部フレームに固定されている。フロートセンサー59の出力信号は、制御基板32に実装された制御部48に入力されている。ドレインタンク19が本体ケース11に装着され、かつ、貯まっている水が満水レベルに達していない場合は、フロート63が略垂下姿勢であり、フロートセンサー59がフロート63の検知部632に収容されたマグネットを検知している。ドレインタンク19が本体ケース11から取り外されている状態、又はドレインタンク19に貯まっている水が満水レベルに達してフロートセンサー59が傾斜姿勢になっている状態ではフロートセンサー59からマグネットの検知信号は出力されない。制御部48は、このようなフロートセンサー59からの信号に基づいて、前述のように操作部27の満水/タンクなし表示ランプ35の点灯又は消灯を制御する。
図21は、一時貯水部材62に関する変形例を示している。図21(a)に示す変形例では、一時貯水部材62を水平軸心62AX周りに回動自在に支持する本体ケース11の内部フレーム側の一対の支持部材111の内側に、一対の細長い壁部材112が設けられている。この一対の壁部材112は、一時貯水部材62の枢支軸部622が支持部材111の枢支孔111aから脱落しにくくする働きを有する。
図21(b)に示す変形例では、一時貯水部材62の両側面(除湿機の前後面側)の端部に小さな半球状の係合突起623が設けられている。また、一時貯水部材62の垂下姿勢(図21(b)では破線で示されている)で係合突起623に係合する係合孔113aが先端部に形成された一対の細長い部材113が、一対の支持部材111に並ぶように設けられている。つまり、ドレインタンク19を本体ケース11から取り外したときに、一時貯水部材62の垂下姿勢を固定する掛止部が一時貯水部材側の係合突起623と本体ケース側の係合孔113a(細長い部材113)とで構成されている。ドレインタンク19が本体ケース11から一時的に取り外された状態では、水平軸心62AX周りに揺動自在に軸支された一時貯水部材62に排水口171から滴下した水が貯まるが、この状態で可搬型除湿機に振動が加わると、一時貯水部材62が揺動し、一時貯水部材62に溜まっている水がこぼれるおそれがある。図21(b)の変形例の構成では一時貯水部材62の垂下姿勢が固定されるので、可搬型除湿機に振動が加わっても一時貯水部材62が揺動せず、溜まっている水が一時貯水部材からこぼれる可能性が低くなる。
以上、本発明の実施例を説明し、適宜変形例についても説明したが、本発明は上記の実施例や変形例に限らず、種々の形態で実施することができる。