JP2005261218A - 脂肪族炭化水素分解能を有する新菌株およびその利用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脂肪族炭化水素の分解能を有する新菌株およびそれを用いた脂肪族炭化水素の分解方法を提供する。
【解決手段】脂肪族炭化水素、とくに直鎖状アルカンと共に分岐鎖状アルカンを分解する能力を有し、特定の塩基配列と98 %以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子を有する新菌株を提供する。その代表株はロドコッカス エリスロポリス M-13株(受託番号FERM P-19716)である。また、脂肪族炭化水素の分解方法は、該新菌株を、脂肪族炭化水素を含有する試料と接触させる工程を含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、石油構成成分である脂肪族炭化水素を分解する能力を有する新菌株およびその利用方法に関し、より詳しくは、その新菌株を利用して石油汚染の生じた環境の浄化を促進することができる新種の脂肪族炭化水素分解細菌およびその利用方法等に関する。
石油は、今日の生活に欠かせないエネルギー源であるが、その一方で広範囲での利用の結果、パイプラインの破損、油槽所、製油所、ガソリンスタンドなどの貯蔵タンクからの漏洩や汚染廃水の排出等が原因で土壌、河川水、地下水などが汚染された例が数多く報告されている。また、海上の輸送船舶などの事故で起こる原油や燃料油等の流出による海洋汚染の報告も多数ある〔非特許文献1〕。
石油汚染環境を浄化する手法の一つとして、微生物を主とした生物の汚染物質分解能を利用して浄化を行うバイオレメディエーションがあり、低コストで修復現場にて浄化を行うことができるという利点をもつため、注目を集めている。バイオレメディエーションには、浄化対象環境中の細菌を活性化し浄化を行うバイオスティミュレーション法と、外部から浄化対象環境中に分解菌を投与し浄化を促すバイオオーグメンテーション法がある。
脂肪族炭化水素は、油膜や油臭の原因ともいわれている成分で、原油構成成分の約3割を占めている。脂肪族炭化水素には鎖状アルカンと環状アルカンの2つがあり、さらに鎖状アルカンは、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンに大別される。直鎖状アルカンは比較的微生物などの生分解を受けやすい炭化水素群であるが、一方の分岐鎖状アルカンは、直鎖状アルカンに側鎖としてアルキル基(-CnH2n+1)を付加した炭化水素群を指し、構造によって生分解されやすい化合物と生分解されにくい化合物を含む。原油中の分岐鎖状アルカンとしては、プリスタン(2, 6, 10, 14-テトラメチルペンタデカン)とフィタン(2, 6, 10, 14-テトラメチルヘキサデカン)が最も豊富に含まれるが、これらの分岐鎖状アルカンは生分解されにくいことが報告されている〔非特許文献2〕。
現在までに、脂肪族炭化水素分解菌としてシュードモナス属細菌〔非特許文献3〕、アシネトバクター属細菌〔非特許文献4〕、アルカニボラックス属細菌〔非特許文献5〕やロドコッカス属細菌〔非特許文献6〕など多くの分解菌が知られている。これら多くの脂肪族炭化水素分解菌は、直鎖状アルカンを分解する能力をもち、それらのうち分岐鎖状アルカンも分解できる菌も報告されている。しかしながら分岐鎖状アルカンを分解できる菌でも、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンが混合して存在している場合には直鎖状アルカンを優先的に分解するため、分岐鎖状アルカンはゆっくりと分解される、あるいは直鎖状アルカンの存在により分岐鎖状アルカンの分解が抑制されることも知られている〔非特許文献7〕。
現在までに脂肪族炭化水素を分解するロドコッカス属細菌のうち、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンを分解する菌、例えばロドコッカスsp. PR4株〔特許文献1〕やロドコッカスsp. M2〔特許文献2〕など幾つか報告があるが、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンが混合した状態で存在し、それらを高効率で分解する菌の存在は知られていなかった。
本発明者等は、当該技術に関連して、環境試料のアルカン分解能の評価法及びそのためのオリゴヌクレオチドを既に発見している〔未公開特許文献1〕。
さらに、石油汚染環境中での脂肪族炭化水素は、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンが混在して存在することが考えられるため、脂肪族炭化水素の直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンを共に効率よく分解する細菌の発見が期待されている。
日本地盤環境浄化推進協議会監修 : 土壌・地下水汚染の実態とその対策, オーム社出版, p28 , 2000. Harayama, S., Kishira, H., Kasai Y. and Shutsubo K. : Petroleum Biodegradation in Marine Environments, J. Mol. Biotechnol. 1(1) 63-70, 1999. Smits, T. H. M., Rothlisberger, M., Witholt, B. and van Beilen, J. B. : Molecular screening for alkane hydroxylase genes in gram-negative and gram-positive strains. Environ. Microbiol. 1(4) 307-317, 1999. Maeng, J. H., Sakai, Y., Tani Y. and Kato, N. : Isolation and characterization of a novel oxygenase that catalyze the first step of n-alkane oxidation in Acinetobacter sp. M-1., J. Bacteriol. 3695-3700, 1996. Hara, A., Syutsubo, K. and Harayama, S. : Alcanivorax which prevail in oil contaminated seawater exhibits broad substrate specifity for alkane degradation. Environ. Microbiol. 5(9), 746-753, 2003. Whyte, L. G., Hawari, J., Zhou, E., Bourbonniere, L., Inniss, W. E. and Greer, C. : Biodegradation of variable-chain-length alkanes at low temperatures by a psychrotrophic Rhodococcus sp., Appl. Environ. Microbiol., 2578-2584, 1998 Morgan, P. and Watkinson, R. J., Biochemistry of Microbial Degradation. Kluwer Academic Publisher, Dordrecht, Netherlands. 1-33 (1994) 特開平7-95879号公報 特開2002-101873号公報
未公開特許文献1
特願2003-56155号
本発明の目的は、脂肪族炭化水素による汚染がある土壌、河川水、地下水、海洋および海洋沿岸等の浄化処理を促進するために、脂肪族炭化水素の分解能を有する新菌株、特に直鎖状アルカンと共に分岐鎖状アルカンを効率的に分解できる新菌株およびそれを用いた脂肪族炭化水素の分解方法等を提供することにある。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、土壌中から脂肪族炭化水素を高効率で資化して生育・増殖することができる新菌株を発見し、これを用いることによって脂肪族炭化水素による汚染がある土壌、河川水、地下水、海洋および海洋沿岸等を浄化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、脂肪族炭化水素を分解する能力を有し、配列番号1に記載の塩基配列と98 %以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子を有する新菌株を提供する。
本発明の新菌株は、炭素数10〜36の直鎖状アルカン、及び分岐鎖状アルカンのうちのプリスタンとフィタンよりなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族炭化水素を分解する能力を有する。
本発明の新菌株は、代表的には、ロドコッカス エリスロポリス M-13株(受託番号FERM P-19716)である。
また、本発明は、上記いずれかの新菌株を、脂肪族炭化水素を含有する試料と接触させる工程を含む、脂肪族炭化水素の分解方法を提供する。
本発明は、所望の脂肪族炭化水素分解能を有するロドコッカス エリスロポリスの新菌株を提供する。本発明の新菌株及びこれを利用する分解方法によれば、脂肪族炭化水素を含む汚染環境を効果的に浄化処理することが可能となる。
(1)本発明の新菌株の単離法
本発明の新菌株は、以下のようにして単離することができる。
採取された石油汚染土壌に、230〜280 ℃で熱処理し軽質分を除去した原油(以下「W.oil」という)、無機栄養塩類等を加え、適切な条件下で培養する。培養後、試験土壌中の菌相解析を行うとともに栄養培地を用いて菌の単離を行う。ここで、脂肪族炭化水素分解能が高い試験土壌中において優占化が確認された細菌を単離し、各単離菌について石油分解特性の評価を行う。この評価は、単離菌を使用したW.oilの分解実験を行い、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC-MS)等により、W.oilに含まれる主要脂肪族炭化水素の残存量を調査することにより行うことができる。
また本願において、本発明の新菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列が開示されている(配列番号1)。したがって最も簡易には、当業者であれば、この配列情報を基に本発明の新菌株の16S rRNA遺伝子を標的とするプローブやプライマーとしてポリヌクレオチドを合成し、石油汚染土壌中に目的の菌が存在するかを検出し、それを単離することもできる。特にその16S rRNA遺伝子をPCR法により特異的に増幅し、そのコピー数を定量することもできる。さらに、保存性の高いrRNA部位等を増幅して得られる核酸混合物をDGGE法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)により分離し、分離した核酸の配列を決定すると共に濃度を測定することにより、当該試料中の菌相構造(同一試料中に存在する同種ないし近縁の微生物群における各種微生物の存在比を示す)を知ることもできる。なお、本明細書において「16S rRNA遺伝子を標的とする検出」に言及する場合、これには、16S rRNA遺伝子のプローブを用いた検出のほか、16S rRNA遺伝子を鋳型としたPCRなど、当該遺伝子の存在を知るためのあらゆる検出法が含まれる。
具体的な検出法としては、競合的PCR法(中山広樹、細胞工学別冊バイオ実験イラストレイテッド3、秀潤社、1996)、カイネティックスを利用する方法(中山広樹、細胞工学別冊バイオ実験イラストレイテッド3、秀潤社、1996)、Taq Man PCR法(磯野一宏、臨床病理、45、p218、1997)、ライトサイクラーを用いる方法(磯野一宏、臨床病理、45、p218、1997)、およびハイブリダイゼーション法(Amann, R.I., Binder, B.J., Olson, R.J., Chisholm, S.W., Devereux, R., and Stahl, D.A. (1990) Combination of 16S rRNA-targeted oligonucleotide probes with flow cytometry for analyzing mixed microbial populations. Appl Environ Microbiol 56:1919-1925)等が挙げられる(特願2003-056155号公報参照)。
(2)本発明の新菌株
脂肪族炭化水素分解能
後述の実施例で示されるように脂肪族炭化水素を分解する能力を有し、分子系統学的側面から見てロドコッカス エリスロポリスに属する公知の菌株とは区別される新菌株が単離、発見された。その新菌株は、ロドコッカス エリスロポリス M-13株と命名され、平成16年3月10日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、受託番号FERM P-19716が与えられているので、この機関より入手することができる。
本発明の新菌株は、脂肪族炭化水素成分のうち、炭素数10〜36の直鎖状アルカン、及びプリスタンやフィタンのような分岐鎖状アルカンを有効に分解する特性を有する。特に前記分岐鎖状アルカンについて、直鎖状アルカンと同程度に高い分解能を示すことが確認されている。
菌学的性質
本発明の新菌株の形態学的性質および生理学的性質は以下の通りである。
上記の菌学的性質に基づいて、本発明の菌株は、“Bergey’s Manual Of Systematic Bacteriology Vol. 4 (1989)”により検索した結果、ロドコッカス エリスロポリスに非常に近いことが明らかになった。
系統学的位置づけ
本発明の新菌株を代表するロドコッカス エリスロポリス M-13株について、16S rRNA遺伝子の塩基配列の約1,500塩基が決定された(配列番号1)。この塩基配列をBLAST検索(Altschul, S.F. et al., Basic local alignment search tool. J. Mol. Biol. 215, 403-410)を利用した遺伝子データベース上の既知遺伝子との比較、およびCLUSTAL W (Thompson,J.D., Higgins,D.G. and Gibson,T.J. 1994. CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic. Acid. Res. 22. 4673-4680)による近縁種との相同性解析を行うと、下記のように近縁な菌株の配列が見つかった。
ロドコッカス エリスロポリス NVI株 00/50/6670 (AY147846)の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、配列番号1の塩基配列全長と97.8%の相同性を示した。しかしながら、この菌は脂肪族炭化水素を分解する細菌であるかどうかは不明であった。また、脂肪族炭化水素の直鎖状アルカン(炭素数5〜20, 30)と分岐鎖状アルカンのプリスタンを分解するロドコッカス sp. PR4株 (D84420)の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、配列番号1の塩基配列全長と97.2%の相同性を示すにとどまった。
つまり、本発明の新菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列全長について98%以上の相同性をもち、且つ脂肪族炭化水素を分解することができる菌株についての報告はない。一般的に、比較対照の細菌が持つ16S rRNA遺伝子の塩基配列との相同性が99 %以上であれば同じ種に属し、99 %未満であれば新種あるいは既知の菌株と区別すべき新菌株である可能性が高いとされる。従って、上記相同性解析の結果から、少なくとも上記菌株は、ロドコッカス エリスロポリスの既知の菌株とは区別される新菌株であると考えられた。かくして、本発明の菌株は、脂肪族炭化水素を分解する能力を有し、且つ配列番号1に記載の塩基配列と98 %以上の相同性を持つ16S rRNA遺伝子を有する新菌株であると定義づけられた。
(3)本発明の新菌株を用いた分解処理
本発明の新菌株を用いた脂肪族炭化水素を含有する環境の浄化処理は、典型的には培養した本菌株を修復対象環境に添加することにより行われる。これは、本菌株を含む培養液または培養物またはその乾燥菌体を環境中に添加することでよい。
また、本菌株を含む土壌、コンポスト、土壌改良剤などを環境中に添加することもできる。この際、本発明の新菌株の増殖を促進させるために、水と増殖を補助する無機栄養塩類(窒素源、リン源など)、ビタミン類、炭素源等を同時に添加して好気条件下で培養することが好ましい。上記培養における温度条件は、ロドコッカス エリスロポリスM-13株の生育温度の範囲、好ましくはその最適生育温度に設定する。例えば20〜30 ℃、好ましくは28 ℃に設定することができる。なお、培地のpHは、6.5〜7.5の範囲に設定すればよい。培養時間は、栄養源の量や種類により異なるが、通常1日、好ましくは2〜3日である。
添加すべき本菌株の量は、処理対象の環境に含まれる脂肪族炭化水素の量や投入する環境の施工状況などに応じて任意に定めることができるが、典型的には処理環境内の最終濃度で106〜109 cells / g-soil あるいは106〜109 cells / mL程度である。
上記のように本発明の新菌株を添加する必要があるのは、処理環境中に本新菌株が存在しない場合である。そのような土着の本菌株が存在している場合は、本菌株を人為的に添加せずに、環境中に元々存在する本菌株を利用し、ここで好ましくは上記のように増殖を促進する環境を与えて、そこに含まれる脂肪族炭化水素を分解処理することができる。
処理環境中に本菌株が存在するか否かは、既に述べたように、本菌株に特有な遺伝子を標的としたPCR法を用いた検出等により確認することができる。
本発明の実施例を以下に示すが、本発明の範囲はこれに限定されない。
〔実施例1〕ロドコッカス エリスロポリス M-13株の単離
石油汚染土壌 (2 g)をガラス製遠沈管に入れ、W.oil(10 mg)、アンモニア性窒素(35 mg-N/L)、リン酸ナトリウム(10 mg-P/L)、滅菌水(10 mL)を加えて28 ℃で連続振とう培養した。2週間経過後、試験土壌中の菌相解析を行うとともに栄養培地を用いて菌の単離を行った。菌相解析の結果、2週間の集積培養実験で試験土壌中において優占化が確認された細菌を発見し、これを単離してロドコッカス エリスロポリス M-13と命名した。
〔実施例2〕主要脂肪族炭化水素についての分解能力の評価
実施例1で単離したロドコッカス エリスロポリス M-13株の脂肪族炭化水素分解能を評価するため、下記の通り、W.oilを用いた石油分解実験を行い、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC-MS)によりW.oilに含まれる主要脂肪族炭化水素の分解能を調査した。
脂肪族炭化水素を含むW.oil 5 mgと、表2に示す組成の無機塩培地5 mLを15mL容量のガラス製試験管に入れ、そこに栄養培地で生育させたロドコッカス エリスロポリス M-13株を一白金耳添加し、2週間28 ℃で振とう培養して分解実験を行った。また分解実験期間中の石油成分の揮発分を考慮するため、菌を添加しない対照系の実験も同時に行った。2週間の培養後、培養液中の全油をクロロホルムにより抽出し、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(SHIMADZU, QP-5000) を使用し、全イオン検出法により抽出油中の脂肪族炭化水素(炭素数10〜36の各種直鎖状アルカンおよび分岐鎖状アルカンであるプリスタンとフィタン)を定量した。表3に分析条件を示し、表4に定量結果を示す。
結果は添加したW.oilの初期濃度を100 %としたときの残存率(%)で示した。表4に示すように、炭素数10〜36の直鎖状アルカンの各成分は94 %以上分解され、分岐鎖状アルカンのプリスタンとフィタンも96 %以上分解された。以上の結果から、ロドコッカス エリスロポリスM-13株は、一定の脂肪族炭化水素に対して高い分解能を有することがわかった。
[実施例3〕模擬石油汚染土の浄化実験
ロドコッカス エリスロポリス M-13株を模擬汚染土に添加するバイオオーグメンテーション実験を行い、ロドコッカス エリスロポリス M-13株が脂肪族炭化水素の分解に寄与するかどうかを調査した。模擬汚染土は石油汚染がなく滅菌していない珪砂を、2.6 mg/ g-soilとなるようにW.oilを混合し作製した。これを3 g取り50 mL容量のガラス製遠沈管に入れ、そこに滅菌水10 mL、無機栄養塩類(35 mg-N/L, 10 mg-P/L)、ロドコッカス エリスロポリス M-13株を108cells/g-soilとなるようにそれぞれ添加して2週間28 ℃下で振とう培養(120 rpm)を行った。またロドコッカス エリスロポリス M-13株を添加せずに、珪砂に存在する細菌の石油分解も調査した。
2週間後、培養液中の全油をクロロホルムにより抽出し、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(SHIMADZU, QP-5000)を使用し、全イオン検出法により抽出油中の脂肪族炭化水素のうち、炭素数10〜36の各種直鎖状アルカンおよび分岐鎖状アルカンであるプリスタンとフィタンを定量した。
また、各実験系から核酸試料を抽出し、真性細菌の16S rRNA遺伝子を標的にしたPCR法により増幅を行い、増幅した遺伝子混合物をDGGE法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)により分離し、分離した微生物遺伝子の塩基配列を決定し濃度を測定することにより、実験開始時と終了時の試料中の細菌相変化を半定量した。
図1は、各系による脂肪族炭化水素成分の分解を示す。「珪砂+M-13(Day14)」は、模擬汚染珪砂土にロドコッカス エリスロポリス M-13株を添加した系による分解、「珪砂(day14)」は、ロドコッカス エリスロポリス M-13株を添加しない珪砂中に存在する細菌のみによる石油分解、「コントロール」は、分解実験期間中の石油成分の揮発分を考慮するため、菌と珪砂のいずれも添加しない石油の分解の結果を示す。またこの結果は、添加したW.oilの初期濃度を100 %としたときの残存率(%)で示されている。図1の結果によると、珪砂のみの系では、炭素数10〜36の直鎖状アルカンが約50 %分解されたが、プリスタンやフィタンの分岐鎖状アルカンは分解されなかった。一方のロドコッカス エリスロポリスM-13株を添加した系では、直鎖状アルカン成分の少なくとも96 %以上が分解され、分岐鎖状アルカンについては80 %程度分解された。
図2には、各系の実験開始時と終了時の珪砂中の菌相構造をPCR法とDGGE法により解析した結果を示した。この結果、珪砂(レーン1〜3)中では認められなかったバンドに対応する細菌が、実験開始時と終了時のロドコッカス エリスロポリス M-13株を添加した系(レーン4及び5)でバンドAとして検出された。ロドコッカス エリスロポリス M-13株の存在を示すバンドAの強度(細菌の存在量)は、実験開始時(レーン4)と終了時(レーン5)とでほとんど変わらなかった。さらに、バンドAの塩基配列を解析したところ、ロドコッカス エリスロポリス M-13株の塩基配列と完全に一致したため、バンドAは添加したロドコッカス エリスロポリス M-13株であることが確かめられた。
以上の結果から、今回の実験に用いた珪砂中にはロドコッカス エリスロポリスM-13株と比較して低い分解率ではあるものの直鎖状アルカンを分解する細菌が存在したが、ロドコッカス エリスロポリスM-13株を添加した系では、明らかに脂肪族炭化水素成分の分解が促進され、脂肪族炭化水素による汚染がある環境中にロドコッカス エリスロポリスM-13株を添加することが有効であると示された。
図1は、実施例3の各実験系に関し、模擬石油汚染土中の脂肪族炭化水素成分の残存率を示す。 図2は、実施例3の各実験系における菌相構造についてのPCR法およびDGGE法による解析結果を示す。

Claims (4)

  1. 脂肪族炭化水素を分解する能力を有し、配列番号1に記載の塩基配列と98 %以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子を有する新菌株。
  2. 炭素数10〜36の直鎖状アルカン、及び分岐鎖状アルカンのうちのプリスタンとフィタンよりなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族炭化水素を分解する能力を有する、請求項1に記載の新菌株。
  3. ロドコッカス エリスロポリス M-13株(受託番号FERM P-19716)である、請求項1又は2に記載の新菌株。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の新菌株を、脂肪族炭化水素を含有する試料と接触させる工程を含む、脂肪族炭化水素の分解方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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RU2534816C2 (ru) * 2013-08-20 2014-12-10 Открытое акционерное общество "Нефтяная компания"ЛУКОЙЛ" ШТАММ Rhodococcus erythropolis ДЛЯ ОЧИСТКИ ВОДЫ И ДОННЫХ ОТЛОЖЕНИЙ ОТ НЕФТИ И НЕФТЕПРОДУКТОВ

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