JP2005260094A - 電子素子 - Google Patents

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政俊 中川
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Abstract

【課題】 駆動電圧が低く、素子の寿命が長い電子素子を提供する。
【解決手段】 透明基板11表面に、陽極12、正孔注入層13、正孔移送層14、発光層15、電子移送層16、陰極17をこの順に形成されたものであって、正孔注入層13が、下記の化学式(1)又は化学式(2)で示される有機化合物を含んでなる。
【化1】
Figure 2005260094

(但し、上記化学式(1)及び(2)において、R1〜R4は各々独立的に水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアルキルアミン基、ジアリールアミン基、エステル基、芳香族炭化水素基、複素環式化合物、ニトリル(−CN)基からなる群から選択される。またR1とR2あるいはR3とR4とが結合して環状構造を形成してもよい。)
【選択図】 図1

Description

本発明は電子素子に係り、特にp−型半導体的性質を有し正孔注入または正孔移送作用を果たす有機化合物を含む電子素子に関する。
有機化合物には、絶縁物質と伝導性物質との中間的な伝導度を有するものがあり、この中でもp−型半導体的性質を有するp−型有機化合物は、半導体素子、例えば、複写機またはレーザープリンタ等におけるOPCドラム(organic photo conductor drum)、太陽電池、光電池、あるいはトランジスタの材料として、既に広く利用されている。
p−型有機化合物を材料とする半導体素子(p−型有機質半導体素子)は大きく次のような2グループに分けられる。
第一グループは、前述したOPCドラム、太陽電池または光電池等の、外部の光源から光を導入して電気を発生させる半導体素子である。このような半導体素子では、光の導入により生成されるエキシトンが電子と正孔とに分離されたときに、p−型有機化合物からなる層が、正孔を半導体素子内で移送する役割を果たす。
例えばOPCドラムに利用する場合は、アリールアミン(トリス体、ジ体)系、スチルベン系の物質がポリカーボネート(polycarbonate)などの高分子を、レーザープリンタ等のドラム表面にブレンド(blend)形態でディプ方式、スキージングドクター方式等によりで薄膜形成することで正孔移送層をなし、ドラムから正孔を移送する。p−型半導体的性質を有する有機化合物をこのように応用する場合、有機化合物が、適切な正孔移送速度(hole mobility)、正孔に対する電気的安定性、熱的安定性、形態の安定性(morphological stability)を同時に有していなければならない。
一方、第二グループは、外部光を利用せず直接電極から電子または正孔を注入するもので、有機EL(organic electroluminescence)素子やダイオード、トランジスタ等に利用される。この半導体素子では、p−型有機化合物に、これと界面をなして二つ以上の電極を形成し、この電極に電圧を印加することでp−型有機化合物に直接キャリアを注入する。例えば、上記有機ELでは、電子及び正孔を同時に二つの電極から各々注入して、電子と正孔とを結合させることで発光させる。また、トランジスタでは、ゲート電極に印加された電圧によってソースからドレインにキャリアを移送させることでスイッチングの役割を果たす。
第二グループにおける利用では、p−型有機化合物と電極との間に安定した界面を形成することが重要である。この理由は、一般的に電極は金属物質または金属酸化物からなるので、そのような無機物質と有機物質である有機質半導体との間の界面が安定していないと、半導体素子に加えられる電場、または外部から加えられる熱または内部で生成する熱を原因として半導体素子の性能が顕著に低下することがあるからである。
以上のような半導体素子に用いられるp−型性質を有する有機化合物としては、従来からアリールアミン系化合物が広く用いられている。また、薄膜トランジスタとして、オリゴチオフェン(oligothiophene)またはポリチオフェン(polythiophene)を使用したものが実験的に作製されており、このトランジスタが高いキャリア移送速度を有することが知られている(特許文献1および2参照)。
1つの有機化合物は、多様な半導体素子において応用可能であり、具体的には、OPCドラムに使用される、TPD(4,4’−ビス[N−(3−トリル)−N−フェニル−アミノ]ジフェニル)に代表されるアリールアミン系の有機化合物は、有機発光素子(Organic Light Emitting Diode)にも適用できる。また、薄膜トランジスタに使用されるオリゴチオフェン(oligothiophene)も同様に、有機発光素子の正孔注入物質または正孔移送物質として使用できる。同様に、有機発光素子の正孔移送物質として使用されるアリールアミン系誘導体を、有機質太陽電池に使用される固体状態の正孔移送物質として使用することもできる(非特許文献1参照)。
このように、p−型半導体的性質を有するどんな有機化合物でも、そのエネルギー準位、正孔移送能力、環境などを考慮して適切に半導体素子を製作することで、種々の半導体素子に広く応用できるので、p−型有機化合物は互換性に優れているといえる。
ところで、有機発光素子に使用されるp−型有機化合物は、陽極からの正孔注入を円滑にすると同時に、注入された正孔を発光層に移送する役割を果たす。この時、有機化合物の層は正孔注入層(hole injecting layer)及び正孔移送層(hole transporting layer)の2つの層に分離して設けてもよい。このとき、有機半導体層の安定性確保のために、有機半導体層として、金属または金属酸化物からなる陽極と安定した界面をなすことができる物質が使用されなければならい。さらに、正孔注入を円滑にして素子の低電圧駆動を可能にするために、上記物質は適切な酸化電位及び注入された正孔の高移送能力を有していなければならない。
このような条件を満たす物質としてに、特許文献3にはフタロシアニン銅錯化合物(copper phthalocyanine)が開示され、特許文献4には、オリゴチオフェン(oligothiophene)が開示されている。さらに、特許文献5に開示されているキナクリドン(quinacridone)系物質も素子の安定性に寄与することが知られている。
最近、発光物質と金属酸化物からなる陽極との間に、PEDOT(poly(3,4-ethylene dioxythiophene)等からなる正孔移送層を別に導入することによって、発光効率が向上するとともに、発光物質の安定性が大いに向上することが分かった。特に、熱的に安定した高分子発光物質において、ガラス転移温度(glass transition temperature)が高く、正孔の注入を円滑にする物質を、陽極と発光高分子との間に挿入させて界面を安定化させることで、素子の性能、特に寿命及び駆動電圧について性能を大いに向上させることができる(非特許文献2)。
p−型有機質半導体は、正孔注入物質として用いられると、素子の寿命を延長させる効果があり、さらに素子の製作工程で発生する発光素子の漏電を防止する効果を有する。つまり、一般的に、100乃至200nmの厚さを有する有機発光素子は、不安定な陽極と有機化合物との間の界面または有機化合物蒸着途中に発生するピンホール(pinhole)によって漏電(device short)することがある。この時、安定した正孔注入層を挿入することにより、このような漏電の可能性を減少させることができ、特に厚い正孔移送層を挿入することによりその可能性を大いに減少させることができる。
特開平4−133351(公開日:1992年5月7日) 特開平1−313521(公開日:1989年12月19日) 米国特許第4,356,429号明細書 米国特許第5,540,999号明細書 米国特許第5,616,427号明細書 米国特許第5,366,811号明細書 特開平6−167807(公開日:1994年6月14日) 「アドバンスドマテリアルズ」("Advanced Materials"),(アメリカ合衆国),2000年,第12巻,第6号,p.447−451 「ジャーナルオブアプライドフィジックス」("Journal of Applied Physics") ,(アメリカ合衆国),1998年,第84巻,第12号,p.6859−6870 「ケミストリーレターズ」("Chemistry Letters"),日本化学会,1998年,no.8,p.753−754
しかし、以上のような従来の半導体的特性の有機化合物を正孔注入物質として用いた場合、正孔注入物質の厚さによっては、駆動電圧が逆に上昇してしまうという問題があった。また、電極との間の界面も十分に安定せず、長期間の使用に耐えられなかった。
本発明は前記従来の技術の問題点を考慮してなされたものであって、駆動電圧を低くし、素子の寿命を向上させることができる有機化合物の層を含む電子素子を提供することを目的とする。
本発明の電子素子は、上記課題を解決するために、陽極と陰極との間に下記の化学式(1)又は化学式(2)で示される有機化合物を含む有機半導体層を有することを特徴としている。
Figure 2005260094
(但し、上記化学式(1)及び(2)において、R1〜R4は各々独立的に水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアルキルアミン基、ジアリールアミン基、エステル基、芳香族炭化水素基、複素環式化合物、ニトリル(−CN)基からなる群から選択される。またR1とR2あるいはR3とR4とが結合して環状構造を形成してもよい。)
これによれば、上記有機化合物層が、印加電圧が低くても正孔を効率よく運ぶため、種々の電子素子に用いることで高性能な電子素子となり、また有機半導体層の界面が安定するので有機半導体層の寿命も長くなる。
また、本発明の電子素子は、上記有機化合物が、下記の化学式(3)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2005260094
(R2は上記と同義である。)
また、上記有機化合物が、下記の化学式(4)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2005260094
(R2は上記と同義である。)
また、上記有機化合物が、下記の化学式(5)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2005260094
有機化合物として、上記した化合物を用いることで、正孔をより効率よく運べるため、より高性能な電子素子となり、また有機半導体層の界面がより安定するので有機半導体層の寿命もより長くなる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層の厚さが0.1nm以上10000nm以下であることを特徴としている。
有機半導体層の厚さが0.1nmより薄いと、有機半導体層に途切れが起こりやすくなり、10000nmより厚いと正孔の移送が効率的に行われなくなり、電子素子の性能が低下する。よって、半導体の厚さを、0.1nm以上10000nm以下とすることで、良好に正孔を運ぶことができる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層が、フタロシアニン銅錯化合物、オリゴチオフェン、アリールアミン系化合物、エナミン系化合物、多環式芳香族化合物からなる群から選択される正孔注入物質をさらに含むことで、有機半導体層の正孔注入や移送の能力がより一層向上する。
また、本発明の電子素子は、陽極と、上記有機半導体層と、発光層と、陰極と、をこの順に有し、有機半導体層が、陽極から放出される正孔を発光層へ向けて運ぶものであり、発光層が、正孔と電子が結合することで発光するものであることを特徴としている。
これによれば、有機半導体層が、効率的に陽極から放出される正孔を受け取り、発光層に向けて注入するので、少ない電力で、十分な発光を得られる電子素子となり、また、耐久性が向上するので、長期間十分な光を発する電子素子となる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層が、陽極に接していることを特徴としている。
これによれば、有機半導体層が、効率的に、陽極から放出される正孔を受け取り、発光層に向けて注入するので、スムーズな正孔注入が行われる。また、有機半導体層の界面が安定するので、長期間安定した正孔注入、発光ができる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層が、発光層に接しているを特徴としている。
これによれば、有機半導体層が、陽極から放出される正孔を受け取った後、効率的に発光層へと移送させるので、効率的な正孔移送が行われる。また、有機半導体層の界面が安定するので、長期間安定した正孔移送、発光ができる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層が、陽極に接する層と、発光層に接する層との2層からなることを特徴としている。
これによれば、上記したような、陽極からの正孔を注入する層と、発光層へと正孔を移送する層とを別に形成できるので、より一層効率的に正孔を発光層に送ることができる。
また、本発明の電子素子は、上記有機半導体層が、陽極および発光層に接する1層からなることを特徴としている。
これによれば、有機半導体層が、陽極から放出される正孔を受け取り、そのまま発光層に移送できるので、よりスムーズに正孔を送り出せる。また、有機半導体層をより薄膜化できる。さらに、有機半導体層の界面が安定するので、長期間安定した正孔移送、発光ができる。
また、本発明の電子素子は、上記陽極、有機半導体層および陰極を含む層構造が、透明基板表面に形成されていることを特徴としている。これによれば、発光層で発生した光が透明基板を透過して外部に放出されるので好ましい。
また、本発明の電子素子は、発光層と陰極との間に、陰極から放出される電子を発光層へ移送する電子移送層を有していることを特徴としている。これによれば、陰極から発生した電子が発光層に向けて移送されるので、発光層で良好に正孔と再結合して発光させることができる。
また、本発明の電子素子は、上記陽極が、導電性高分子または導電性金属酸化物を含むことで、陽極が十分な正孔を放出できるので、良好な電子素子を形成できる。
また、本発明の電子素子により、トランジスタを構成することで、低電圧で動作する、耐久性の高いトランジスタとなる。
また、本発明の電子素子により、光電池を構成することで、わずかな光から効率的に電力を生成し、耐久性も高い光電池となる。
また、本発明の電子素子により、画像形成装置の感光体ドラムを構成することで、低電力で効率的に静電潜像を形成でき、耐久性が向上した感光体ドラムとなる。
本発明の電子素子は、以上のように、上記した化学式(1)又は化学式(2)で示される有機化合物を含む有機半導体層を有することを特徴としている。
これによれば、少ない電力で正孔を効率よく運べるため、高性能な電子素子となり、また有機半導体層の界面が安定するので有機半導体層の寿命も長くなるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。
〔実施の形態1〕
まず、図1を用いて本実施の形態の発光素子1を説明する。発光素子1は薄膜の多層構造を有する電子素子であり、透明基板11表面に、透明電極(陽極)12、正孔注入層(有機半導体層)13、正孔移送層(有機半導体層)14、発光層15、電子移送層16、陰極層(陰極)17をこの順に形成している。ここで、透明電極12と陰極層17とに電圧を与えることで、発光層15から光を放射する。
透明基板11は、発光素子1の基台となるものである。透明電極12は、電極の陽極として機能し、透明電極12に電圧を印加するとと、正孔が放出される。正孔注入層13は、正孔を受け入れやすい性質を有し、透明電極12から放出された正孔を受け入れ、正孔移送層14に注入する機能を有する。また、正孔移送層14は、注入された正孔を発光層15に移送する役割を果たす。一方、陰極層17に電圧を印加すると、電子を放出する。電子移送層16は、陰極層17から電子を受けて発光層15に移送する。発光層15では、二つの電極層から注入された電子及び正孔が再結合することで発光する。
なお、必要によって、電子障壁層、ホール(正孔)障壁層、または接着保持層を、発光層15と透明電極12との間に、または発光層15と陰極層17の間に形成しても良い。
また、正孔注入層13、正孔移送層14の間にも、目的に応じて任意の数の層を形成し、多様に適用してもよい。この場合、間の層としては、化学式(1)または(2)の有機化合物からなる層でもよく、従来の正孔移送物質からなる層でもよい。この場合の正孔注入層13正孔移送層14の間の層は、正孔の輸送の中継、あるいは層間の接着性向上、ガス(水蒸気等)の混入防止等の機能を備えるように形成する。
上記透明基板11の材料としては、非晶質の性質を有するガラスまたはプラスチック使用することが好ましく、用途によっては金属またはウェハー(wafer)のように適切な機械強度及び表面平坦度を有する基板を使用することができる。
また、陽極層12としては、典型的には、透明基板11表面にITO(indium tin oxide)薄膜をコーティングした透明電極であり、他に、錫酸化物、インジウム錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム亜鉛酸化物などのような金属酸化物または混合金属の酸化物を使用することができ、金のように高い仕事関数を有する金属、またはPEDOT(poly[3,4-(ethylene-1,2-dioxy)thiophene])、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)などのような高分子に電解質等のドーパント(dopant)を添加した伝導性高分子を使用することができる。
正孔注入層13を形成する物質としては、上記化学式(1)又は(2)で示される有機化合物を単独に或いは他の種類の正孔注入物質と混合して使用することができる。R1〜4の置換体としては、スピンコーティングによって薄膜を形成する時には、少なくともどちらかの置換体が、高柔軟性を有する炭素数3〜15の飽和炭化水素基であることが好ましい。
化学式(1)で示される有機化合物としては、上記化学式(3)で表される化合物であることが好ましく、具体的には、下記の化学式(6)や化学式(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005260094
Figure 2005260094
ここで化学式(7)で表される化合物は、高柔軟性を有する炭素数3〜15の飽和炭化水素の置換基を有している。
化学式(2)で示される有機化合物としては、上記した化学式(4)(R2は水素であることが好ましい)や、具体的には、上記した化学式(5)、化学式(8)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005260094
これら化学式(1)及び(2)については、ジケトン化合物とジアミノマレオニトリル(Diaminomaleonitrile)とを、適当な非ケトン系溶剤(酢酸、アセトニトリル)に等モル(化学式(5)を使用する場合は、ジケトン化合物:ジアミノマレオニトリル=1:2モル比にする)溶解し、加熱攪拌して、脱水反応を起こすことで、容易に得られる。又は、少量のPTS(p−トルエンスルホン酸)に加え、ソックスレー抽出器を用いて副生成物の水を除くことにより得ることもできる。用いられる代表的なジケトン化合物としては、ベンジル(Benzil)、フェナントレンキノン(Phenanthrenequinone)、アセナフテンキノン(Acenaphthenequinone)及びその誘導体等があげられる。
また、正孔注入層13として、化学式(1)又は(2)の有機化合物を使用しない場合は、従来のジアリールアミン系化合物または多環式芳香族化合物(polycyclic aromatic compound)を用いても構わない。
化学式(1)又は(2)で示される有機化合物と共に使用される他の正孔注入物質の例としては、フタロシアニン銅錯化合物(copper phthalocyanine)またはオリゴチオフェン(oligothiophene)などのようなp−型有機質半導体を挙げることができる。
上記有機化合物と他の正孔注入物質との混合比は、有機化合物の割合が1重量%乃至100重量%の範囲内となるように混合すればよいが、混合比率によって正孔注入層13が正孔移送層14に注入する正孔の量が変化するので、適切な注入が得られるように混合量を調整することが好ましい。殊に、有機化合物と他の正孔注入物質とが、互いに異なるエネルギー準位及び正孔に対するモビリティー(mobility)を有する場合、化合物を選択し、最適な混合比率を見つけ出すことで、発光素子の構造に最適な正孔の濃度を調節することが望ましい。
正孔移送層14を形成する材料としても、正孔注入層13と同様の、化学式(1)又は(2)で示される有機化合物を単独に或いは他の種類の正孔注入物質と混合して使用することができる。しかし、正孔移送層14として、従来のジアリールアミン系化合物または多環式芳香族化合物(polycyclic aromatic compound)で正孔移送層14を形成しても良い。
また、化学式(1)又は(2)で示される有機化合物を用いない場合の正孔移送層14の材料の具体例としては、4,4’−ビス[N−(3−トリル)−N−フェニル−アミノ]ジフェニル(4,4''-bis[N-(3-tolyl)-N-phenyl-amino]diphenyl;略称:TPD)を挙げることができる。また、注入される電子と正孔との比率を最適化するために、さらに他の種類の正孔移送物質を混合しても良い。
発光層15の材料としては、高蛍光効率を有する物質であれば特に限定されない。代表的な例としては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム塩(8-hydroxyquinoline aluminum salt;Alq3)、特許文献6に記載された二重体化されたスチリル化合物(dimerized styryl compound)、ベンツオキサゾール(benzoxazole)誘導体及びその金属錯体、ベンツイミダゾール(benzimidazole)誘導体及びその金属錯体、ポリ(p−フェニレンビニレン)(poly(p-phenylene vinylene))のような高分子及びその誘導体または共重合体(copolymer)形態の誘導体、ポリフルオレン(polyfluorene)及びその誘導体などを挙げることができる。
また、染料を使って発光させるためには、上記したような発光層15の材料を、蛍光性染料にアリールアミン化合物のような正孔移送能力を有する物質をドーピングしたものとし、このときの正孔輸送能力が、発光層15のホストを形成する物質(すなわち、上記したような通常発光層15に使用される材料、例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム塩)の正孔輸送能力と類似しているか小さくなければならない。蛍光性染料の代表的な例としてはルブレン(rubrene)、ルテニウム錯体色素等をあげることができる。これらの色素については、特許文献7あるいは非特許文献3に記載されている。
などをあげることができる。
正孔注入層13および正孔移送層14の厚さは、合わせて0.1nm以上10000nm以下であるのが好ましく、10nm以上400nm以下であるのがより好ましい。0.1nmより薄いと有機半導体層に途切れが生じる可能性があり、10000nmより厚いと正孔の移送が効率的に行われなくなり、発光に大きな電圧を要するようにとなる。
電子移送層16の材料としては、陰極層17から円滑に電子の注入を受けられるとともに、陰極層17と安定した界面を形成する物質であればよい。なお、発光層15がAlq3のように、発光する性質と同時に電子を移送できる性質を有していれば、電子移送層16は形成しなくてもかまわない。代表的な電子移送物質の例としてはAlq3が挙げられるが、フタロシアニン銅錯化合物(copper phthalocyanine)を使用することもできる。
また、陰極層17を形成する物質としては、電子移送層への電子注入が容易に行われるように仕事関数の低い物質を使用する。例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金などのような合金、マグネシウム、カルシウムなどを使用することができる。さらに、例えばフッ化リチウム(LiF)/アルミニウム、リチウムオキサイド(Li2O)/アルミニウムなどのような二層構造を有する電極を使用することもできる。
なお、電子移送層16と陰極層17とを混合蒸着することによって電子の注入を容易にすることができ陰極層17と電子移送層16との間の界面を強化することができる。
以上のように、発光素子1は、正孔の移送能力が高く、界面が安定した正孔注入層13および正孔移送層14を有するので、低電力で、寿命の長い発光素子となる。
〔実施の形態2〕
次に、本発明の他の実施形態について図2に基づいて説明すると以下の通りである。
まず、図2を用いて本実施の形態の発光素子2を説明する。発光素子2は薄膜の多層構造を有する電子素子であり、透明基板21表面に、透明電極(陽極)22、正孔注入移送層(有機半導体層)24、発光層25、電子移送層26、陰極層(陰極)27をこの順に形成している。ここで、陽極層22と陰極層27とに電圧をかけることで、発光層25から光を放射する。
なお、本実施の形態は、実施の形態1における正孔注入層13および正孔移送層14を、正孔注入移送層24に変えたものであり、正孔注入移送層24以外の部材は実施の形態1と同じである。
正孔注入移送層24を形成する物質としては、上記した化学式(1)又は(2)で示される有機化合物を単独に或いは他の種類の正孔注入物質と混合して使用することができる。
化学式(1)又は(2)で示される有機化合物と共に使用される他の正孔注入物質の例としては、フタロシアニン銅錯化合物(copper phthalocyanine)またはオリゴチオフェン(oligothiophene)などのようなp−型有機質半導体を挙げることができる。
上記有機化合物と他の正孔注入物質との混合比は、有機化合物の割合が1重量%以上100重量%以下の範囲内となるように混合すればよいが、混合比率によって正孔移送層24が発光層25に注入する正孔の量が変化するので、適切な注入が得られるように混合量を調整することが好ましい。殊に、有機化合物と他の正孔注入物質とが、互いに異なるエネルギー準位及び正孔に対するモビリティー(mobility)を有する場合、素子の構造に最適な正孔の濃度を調節することができる化合物の選択ならびに最適な混合比率にて混合することが望ましい。また、注入される電子と正孔との比率を最適化するために、さらに他の種類の正孔移送物質を混合しても良い。
さらに、正孔注入移送層24の厚さは、0.1nm以上10000nm以下であるのが好ましく、10nm以上400nm以下であるのがより好ましい。0.1nmより薄いと有機半導体層に途切れが生じる可能性があり、10000nmより厚いと正孔の移送が効率的に行われなくなり、発光に大きな電圧を要するようにとなる。
以上のように、発光素子2は、正孔の移送能力が高く、界面が安定した正孔注入移送層24を有するので、低電力で、寿命の長い発光素子となる。さらに、陽極22と発光層25との間に正孔移送層14を1層だけを有するので、正孔の輸送がより効率よくなる。
〔実施の形態3〕
続いて、式(1)あるいは式(2)にてあらわされる化合物を半導体として用いたスイッチングのための有機薄膜トランジスタの構成を説明する。
図5に本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としてボトムゲートボトムコンタクト型の構成を示す。図5に示すように、本実施の形態のトランジスタ3は、基板31、ゲート電極32、絶縁膜33、ソース電極34、ドレイン電極35、有機半導体層36からなる。ここで、ゲート電極32は基板31表面に形成され、ゲート電極32を覆うように絶縁膜33が積層される。そして、絶縁膜33表面の一部にソース電極34とドレイン電極35とが形成され、ソース電極34とドレイン電極35との間の絶縁膜33表面に有機半導体層36が成膜される。
有機半導体層36を形成する物質としては、上記した化学式(1)又は(2)で示される有機化合物を単独に或いは他の種類の化合物と混合して使用することができる。
基板31はトランジスタ3の基台となるものである。ゲート電極32は印加される電圧によって、ソース電極34からドレイン電極35へのキャリア移送を調節するスイッチングの役割を果たす。絶縁膜33は、ソース電極34、ドレイン電極35、有機半導体層36をゲート電極32から絶縁する。有機半導体層36はゲート電極32の印加電圧に応じて、調節されながら、ソース電極34からドレイン電極35へキャリアを移送する。
化学式(1)又は(2)で示される有機化合物と共に使用される物質の例としては、フタロシアニン銅錯化合物(copper phthalocyanine)またはオリゴチオフェン(oligothiophene)などのようなp−型有機質半導体を挙げることができる。
上記有機化合物と他の正孔注入物質との混合比は、有機化合物の割合が1重量%以上100重量%以下の範囲内となるように混合すればよいが、混合比率によって移送するキャリアの量が変化するので、適切な移送ができるように混合量を調整することが好ましい。殊に、有機化合物と他の物質とが、互いに異なるエネルギー準位及び正孔に対するモビリティー(mobility)を有する場合、素子の構造に最適なキャリアの濃度を調節することができる化合物の選択ならびに最適な混合比率を見つけ出すことが望ましい。
さらに、有機半導体層36の厚さは、0.1nm以上1000nm以下であるのが好ましく、1nm以上300nm以下であるのがより好ましい。さらに、1nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが望ましい。0.1nmより薄いと有機半導体層36に途切れが生じる可能性があり、1000nmより厚いと正孔の移送が効率的に行われなくなり、良好なスイッチングができなくなる。
このように、トランジスタ3の有機半導体層36として化学式(1)または(2)で示される化合物を用いることで、有機半導体層36が、絶縁膜33と安定した界面を形成し、速い速度でキャリアをソース電極34からドレイン電極35へと移送できる。
以上のように、トランジスタ3は、正孔の移送能力が高く、界面が安定した有機半導体層36を有するので、低電力で動作する、寿命の長いトランジスタとなる。
なお、本発明のトランジスタの構成はボトムゲートボトムコンタクト型に限定されず、公知の他の構造であっても良い。
また、化学式(1)又は(2)で示される化合物を含む有機半導体層を有する電子素子は、光電池(photovoltaic cell)を構成していても良い。この場合、有機半導体層表面に2つの電極を形成し、有機半導体層に照射された光により生成したキャリアを電極から取り出す構成となる。光電池の構成は透明電極と陰極との間に有機半導体層を設置することが基本である(場合によっては電界層を設置する)。このような構成の光電池は、光から効率よく電力を発生でき、耐久性も高い。
また、化学式(1)又は(2)で示される化合物を含む有機半導体層を有する電子素子は、レーザープリンタや複写機(画像形成装置)のOPCドラム(感光体ドラム)を構成していても良い。この場合、アルミ等の導電性支持体上に電荷発生層ついで電荷輸送層としての有機半導体層を順次積層した構成とする。このような構成の感光体ドラムは、低電力で効率よく静電潜像を形成でき、耐久性も高い。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本発明は、以下の構成とすることもできる。
陽極と陰極との間に上記の化学式(1)又は化学式(2)で示される有機化合物を含む層が少なくとも一つ以上挿入される有機発光素子。
前記化学式(1)及び(2)で示される有機化合物を含む層は、正孔注入層、正孔移送層、または正孔注入移送層である有機発光素子。
a)透明基板、b)陽極、c)正孔注入層、d)正孔移送層、e)発光層、f)電子移送層、g)陰極を順に含む有機発光素子。
a)透明基板、b)陽極、c)正孔注入移送層、e)発光層、f)電子移送層、g)陰極、を順に含む有機発光素子。
前記化学式(1)の化合物が上記の化学式(3)で示される化合物である有機発光素子。
前記化学式(2)の化合物が上記の化学式(4)で示される化合物である有機発光素子。
前記化学式(2)の化合物が下記の化学式(5)で示される化合物である有機発光素子。
前記化学式(1)及び(2)で示される有機化合物を含む層の厚さは0.1〜0,000nmである有機発光素子。
前記化学式(1)及び(2)で示される有機化合物を含む層がフタロシアニン銅錯化合物、オリゴチオフェン、アリールアミン系化合物、エナミン系化合物、多環式芳香族化合物からなる群から選択される正孔注入物質をさらに含む有機発光素子。
前記陽極は導電性高分子または導電性金属酸化物を含む有機発光素子。
化学式(1)及び(2)で示される有機化合物を含む層が、有機物薄膜トランジスタ、光電池、または有機光導電体(OPC)ドラムの構成要素であることを特徴とする電子素子。
以下の実施例及び比較例を通じて本発明をより詳しく説明する。但し、実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるのではない。
ガラス基板に、1500Åの厚さのITO(indium tin oxide)薄膜をコーティングし、洗浄剤を含有する水溶液で超音波洗浄し、乾燥した後、プラズマ洗浄機に移した。上記ITOコーティング基板を酸素プラズマで5分間洗浄した後、真空蒸着器に移送した。
前記ITOコーティング基板表面に、正孔注入物質として、化学式(1)を満たし、化合物(3)において、R2=水素である、上記化学式(6)の有機化合物の化合物を熱真空蒸着することによって、200Åの厚さを有する正孔注入層を形成した。さらに、正孔注入層表面に正孔移送物質としてのNPB(600Å)と、電子移送及び発光の役割を全て有するAlq3(600Å)とを順次に蒸着した。次いで、Alq3の層表面に5Åのフッ化リチウム(LiF)及び2500Åのアルミニウムを蒸着して電極を形成した。上記の過程で、蒸着速度は、有機物の場合は1Å/sec、フッ化リチウムの場合は0.2Å/sec、アルミニウムの場合は3〜7Å/secを維持した。
製造された有機発光素子の電圧と輝度との関係を測定した。結果を図3に示す。ここで、横軸が電圧を、縦軸が輝度を示している。これによると、8V〜8.5Vの電圧を印加することで輝度が10000から30000Cd(カンデラ)に急速に上がっている。したがって、化学式(1)を満たす化合物を用いることで、低い駆動電圧で高い輝度が得られるという効果が得られることが分かった。
実施例1において、化学式(6)の化合物を使用した正孔注入層を、厚さ200Åでなく1000Åにした以外は、実施例1と同様な方法で有機発光素子を作製した。製造された有機発光素子の電圧と輝度との関係を測定し、結果を図3に示した。これによると、9V前後の電圧を印加することで、輝度が10000から40000Cdに急速に上がっている。したがって、化学式(1)を満たす化合物を用いることで、低い駆動電圧で高い輝度が得られるという効果が得られることが分かった。また、厚さ200Åのものより駆動電圧に対する輝度は落ちるが、発光素子としては十分に機能する。
次に、化学式(6)の化合物と他の物質とを混合使用して有機化合物の層を形成した発光素子を形成した。
実施例1において、化学式(6)の化合物の代わりに、共蒸発(co-evaporation)法によって90重量%の化学式(6)の化合物及び10重量%のフタロシアニン銅錯化合物からなる500Åの厚さの混合物を蒸着して、発光素子を製造した。製造された発光素子の電圧と輝度との関係を測定し、図3に示した。これによると、7〜8Vの電圧を印加することで、輝度が10000から30000Cdに急速に上がっている。
これにより、有機化合物の層として適切な他の物質との混合物を形成した化合物を使用し、その相対的比率を調整することにより一層低駆動電圧で高い輝度を維持することができる事がわかった。
次に、化学式(2)を満たす化合物と他の物質とを混合使用して有機化合物の層を形成した発光素子を作製した。
実施例1において、化学式(6)の化合物の代わりに、化学式(2)を満たし、化学式(4)において、R2=水素である化合物を70重量%と、30重量%のフタロシアニン銅錯化合物の混合物で、共蒸発法により500Åの厚さの層を形成した。製造された有機発光素子の電圧と輝度との関係を図3に示した。これによると、8〜8.5Vの電圧を印加することで、輝度が10000から30000Cdに急速に上がっている。
なお、本実施例の発光素子の輝度半減期は、100mA/cm2の直流電流密度で測定し、220時間であった。この半減期は後述する比較例より長く、つまり、従来最も安定性を維持することができるものとして知られているフタロシアニン銅錯化合物より、本実施例の発光素子の方が長時間安定して輝度を維持できることが確認された。このような現象は本発明の化学式(3)の化合物が、従来よりも電極(陽極層)との間に安定した界面を形成することができることを示す。
次に、化学式(1)を満たす化合物と他の物質とを混合使用して有機化合物の層を形成した発光素子を作製した。
実施例1において、化学式(6)の化合物の代わりに、上記化学式(7)の化合物を70重量%と、30重量%の3量体のオリゴチオフェン化合物との混合物を用いて、スピンコート法(溶剤:NMP)により500Åの厚さの正孔注入層を形成した。製造された有機発光素子の輝度半減期は、100mA/cm2の直流電流密度で測定した場合に、190時間であった。
〔比較例1〕
本発明の比較例として、最も普遍的に知られているフタロシアニン銅錯化合物を使用し、最も普遍的に用いられる厚さにて、下記のように発光素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層として、化学式(6)の代わりに150Åの厚さフタロシアニン銅錯化合物を蒸着した。製造された有機発光素子の電圧と輝度との関係は図3に示した。
なお、比較例1の発光素子の輝度半減期測定は100mA/cm2の直流電流密度で測定した場合に、88時間であった。
次に、正孔注入層としての有機半導体層と正孔移送を行うNPBの層とを別に形成するのでなく、両者の機能を兼ね備えた正孔注入移送層を1つ形成する発光素子の実施例について説明する。
まず、ガラス基板に1500Åの厚さのITO(indium tin oxide)の薄膜(陽極)をコーティングし、洗浄剤を含有した水溶液で超音波洗浄法で洗浄し、乾燥した後、プラズマ洗浄機に移した。このITOコーティング基板を酸素プラズマで5分間洗浄した後、真空蒸着器に移送した。
そして、ITOコーティング基板上に上記化学式(8)の化合物を熱真空蒸着することによって2000Åの厚さの正孔注入移送層を形成した。前記層上に2500Åの厚さのアルミニウムを蒸着することによって陰極を形成した。アルミニウムは比較的仕事関数が高く陰極として適した素材である。上記の過程で、蒸着速度は有機物質の場合は1Å/secを維持し、アルミニウムの場合は3〜7Å/secを維持した。
そして、化学式(8)の化合物の正孔注入能力及び移送能力を測定するために、本実施例の発光素子に順方向電圧を加え、加えた電圧と電流との関係を求めた。結果を図4に示す。これによれば、実施例6の発光素子は、印加電圧が0Vを越えると正孔が注入され、それから電圧を1Vまで上げると急激に大きな電流(10-1mA/cm2)が流れるようになり、注入された正孔濃度が増えたことが分かる。後述する従来の比較例2と比べても、同じ電圧を印加している場合は常に流れる電流が大きく、特に、印加電圧0〜1Vでは電流の値が大きく上回っている。
したがって、化学式(8)の物質は、従来の材料よりも正孔移送能力が優れていることを証明され、低電圧の印加で十分な正孔移送を行うことができるので、消費電力の小さいの発光素子ができる。
〔比較例2〕
従来の半導体を用いた発光素子として、有機発光素子及びOPCドラムの正孔移送物質に広く用いられるp−型有機質半導体である素子にアリールアミン系TPDを適用したものを比較例として作製した。
作製方法は、化学式(8)の物質の代わりにTPDを熱真空蒸着することによって1600Åの厚さの正孔注入移送層を形成する以外は実施例6と同様である。
製造された素子において、印加電圧と電流との関係を図4に示した。図4に示されているように、TPDを使用した比較例2の発光素子は、約1Vとなるまでほとんど正孔が注入されず、印加電圧を1〜2Vにかけないと電流が上昇せず、実施例6よりも印加電圧に対する正孔移送能力が低いことが分かる。電圧正孔濃度は化学式(8)の化合物を使用した素子より低かった。
続いて、本発明を薄膜トランジスタに適用した実施例を説明する。
本実施例の薄膜トランジスタは、実施の形態3と同様の構成である。すなわち、図5に示すように、のシリコン基板上にクロムを50nm真空蒸着することによりゲート電極を形成した。続いて、プラズマCVD法によりチッ化シリコン膜からなる絶縁膜をゲート電極を覆うように300nm堆積した後、クロム20nmと、金30nmとをこの順に蒸着した。そして、絶縁膜上のクロムと金からなる層に、通常のリソグラフィー技術を施すことにより、厚さ50nmのソース電極及びドレイン電極を形成した。なお、両電極間の距離は5μmである。そして、電極の間の絶縁膜表面に化学式(6)からなる100nmの有機半導体層を真空蒸着法にて形成して薄膜トランジスタを製造した。
この薄膜トランジスタのソース−ドレイン電極間に一定の電圧を印加した状態で、ゲート電極に印加する電圧を変調させたときに、ソース−ドレイン間に流れる電流を測定した。なお、ゲート電極に印加する電圧は、0、−2、−4、−6、−8、−10Vに保った場合の6通りについて測定した。
図6にその結果示す。横軸はゲート電極に印加する電圧であり、縦軸はソース−ドレイン間に流れる電流を示している。そして、各折れ線グラフから引き出し線を引いて示しているのが、ソース−ドレイン間に印加した電圧である。
これによれば、ソース電極に電圧印加していない場合(0V)は電流が流れないが、その他はすべてゲート電極に印加された電圧を強くするほど、ソース−ドレイン電極間に流れる電流が大きくなっており、ゲート電極がスイッチング機能を果たしていることが分かる。
次に上記のソースードレイン電極間に印加する電圧と、ゲート電極に流す電圧と、ソース−ドレイン間に流れる電流とから、正孔移動度とON/OFF比とを求め、この薄膜トランジスタの性能を調べた。ここで、正孔移動度とは正孔の移動しやすさを示し、これが高いほどあるゲート電圧において正孔が移動する割合が上がる。また、ON/OFF比とは、ソースドレイン間の電流量が流れる条件及び流れない条件それぞれの電流値の比を示し、これが高いほど、優れたデバイス特性を有することを意味する。
薄膜トランジスタの線形領域のソース−ドレイン間に流れるドレイン電流IDは、以下の式(1)で表される。そして、式(1)を微分した式(2)により、正孔移動度を求めることができる。
ID=μ・C0・W/L{(VG−Vth)VD−VD2/2} ・・・ (1)
△ID/△VG=μC0VDW/L ・・・ (2)
ここで、μは移動度、C0は単位面積あたりのゲート電極の容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長(チャネルとは、本実施例におけるソースドレイン電極間距離である。)を示し、VGはゲート電極に印加する電圧、VDはソース−ドレイン間に印加する電圧、Vthはしきい値電圧、すなわち、OFFからONに切り替わる電圧である。また、Co=To×εrにより表される。ここで、Toは絶縁膜の厚みであり、εrは絶縁膜の比誘電率である。
本実施例においては、Toは300nm、εrは4.0、Wは2000μm、Lは5μmである。この数値と、測定したVG、VD値を用いて、上記式(2)を計算することで得られる本実施例の薄膜トランジスタの正孔移動度は、1.1×10-1cm/Vsと良好な値を示していた。また、ゲート電圧0V及び20Vをそれぞれ印加したときにソースドレイン間に流れる電流の大きさから計算されたON/OFF比は5桁と良好であった。
有機半導体層として、化学式(6)の化合物を使用する代わりに、化学式(5)で示される化合物の100nmを用いる以外は、実施例6と同様に有機薄膜トランジスタを作製した。
作製した有機薄膜トランジスタを、実施例6と同様にして、ソース−ドレイン電極間に一定の電圧を印加した状態で、ゲート電極に印加する電圧を変調させたときに、ソース−ドレイン間に流れる電流を測定した。結果を図7に示す。このときの薄膜トランジスタの移動度は、1.4×10-1cm/Vsであり、ON/OFF比は5桁であり、良好な特性を示した。
本発明の電子素子は、少ない電力で正孔を効率よく運べ、有機半導体層の寿命が長いので、あらゆる電子素子、特に、発光素子、トランジスタ、あるいは画像形成装置の感光体ドラムとして適用できる。
本発明の一実施の形態の発光素子の構造を示す断面図である。 本発明の他の実施の形態の発光素子の構造を示す断面図である。 本発明の実施例および比較例の発光素子について、印加電圧と輝度との相関関係を示す図面である。 本発明の実施例および比較例の発光素子について、印加電圧と電流密度との関係を示す図面である。 本発明の一実施の形態のトランジスタの構造を示す断面図である。 本発明の実施例のトランジスタにおける、ゲート電極印加電圧とソース−ドレイン間に流れる電流との関係を示した図面ある。 本発明の実施例のトランジスタにおける、ゲート電極印加電圧とソース−ドレイン間に流れる電流との関係を示した図面ある。
符号の説明
1 発光素子(電子素子)
2 発光素子(電子素子)
3 トランジスタ(電子素子)
11 透明基板
12 陽極層(陽極)
13 正孔注入層(有機半導体層)
14 正孔移送層(有機半導体層)
15 発光層
16 電子移送層
17 陰極層(陰極)
21 透明基板
22 陽極層(陽極)
24 正孔注入移送層(有機半導体層)
25 発光層
26 電子移送層
27 陰極層(陰極)
31 基板
32 ゲート電極
33 ゲート絶縁膜
34 ソース電極
35 ドレイン電極
36 有機半導体層

Claims (17)

  1. 下記の化学式(1)又は化学式(2)で示される有機化合物を含む有機半導体層を有することを特徴とする電子素子。
    Figure 2005260094
    (但し、上記化学式(1)及び(2)において、R1〜R4は各々独立的に水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアルキルアミン基、ジアリールアミン基、エステル基、芳香族炭化水素基、複素環式化合物、ニトリル(−CN)基からなる群から選択される。またR1とR2あるいはR3とR4とが結合して環状構造を形成してもよい。)
  2. 上記有機化合物が、下記の化学式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子素子。
    Figure 2005260094
    (R2は上記と同義である。)
  3. 上記有機化合物が、下記の化学式(4)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子素子。
    Figure 2005260094
    (R2は上記と同義である。)
  4. 上記有機化合物が、下記の化学式(5)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子素子。
    Figure 2005260094
  5. 上記有機半導体層の厚さが0.1nm以上10000nm以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電子素子。
  6. 上記有機半導体層が、フタロシアニン銅錯化合物、オリゴチオフェン、アリールアミン系化合物、エナミン系化合物、多環式芳香族化合物からなる群から選択される正孔注入物質をさらに含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電子素子。
  7. 陽極と、上記有機半導体層と、発光層と、陰極と、をこの順に有し、
    有機半導体層が、陽極から放出される正孔を発光層へ向けて運ぶものであり、
    発光層が、正孔と電子が結合することで発光するものであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子素子。
  8. 上記有機半導体層が、陽極に接していることを特徴とする請求項7に記載の電子素子。
  9. 上記有機半導体層が、発光層に接していることを特徴とする請求項7に記載の電子素子。
  10. 上記有機半導体層が、陽極に接する層と、発光層に接する層との2層からなることを特徴とする請求項7に記載の電子素子。
  11. 上記有機半導体層が、陽極および発光層に接する1層からなることを特徴とする請求項7に記載の電子素子。
  12. 上記陽極、有機半導体層および陰極を含む層構造が、透明基板表面に形成されていることを特徴とする請求項7から11の何れか1項に記載の電子素子。
  13. 上記発光層と陰極との間に、陰極から放出される電子を発光層へ移送する電子移送層を有していることを特徴とする請求項7から12の何れか1項に記載の電子素子。
  14. 上記陽極が、導電性高分子または導電性金属酸化物を含むことを特徴とする請求項7から13の何れか1項に記載の電子素子。
  15. トランジスタを構成することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子素子。
  16. 光電池を構成することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子素子。
  17. 画像形成装置の感光体ドラムを構成することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子素子。
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