JP2005255643A - 抗腫瘍効果増強方法および抗腫瘍効果増強剤 - Google Patents

抗腫瘍効果増強方法および抗腫瘍効果増強剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 結腸・直腸癌に対する癌化学療法として、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を、経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤と併用することにより増強させ、効果的な治療効果を達成させること。
【解決手段】 結腸・直腸癌の治療において、抗腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させるために、塩酸イリノテカンを点滴靜注するとともに、フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を連日経口投与することを特徴とする塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法であり、より具体的には、塩酸イリノテカンの投与量が、塩酸イリノテカンとして成人に10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤であるドキシフルリジンまたはカペシタビンの投与量が、1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて経口投与する塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させる方法、ならびに抗腫瘍効果増強剤に関する。
1957年に5−フルオロウラシル(5−FU)が抗腫瘍剤として開発されて以来、その他種々の抗腫瘍剤が誕生するに至っている。現在、大腸癌の治療に対しては5−FUを中心とする、その他の抗腫瘍剤との併用療法(コンビネーションセラピー)が治療成績を向上させている。特に5−FUに関しては、同じ静脈投与でも、短時間の注射投与よりも長時間をかけた持続的静脈投与のほうが抗腫瘍効果が優れていることが証明されており、5−FUの持続的静脈投与と塩酸イリノテカンなどの抗腫瘍剤との併用療法が広く行なわれている。また最近では、5−FUの持続的投与、低い副作用率、経済性といったメリットから5−FUのプロドラッグとしての経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤が注目を浴びており、これら経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤と新規抗腫瘍剤との併用療法に期待が寄せられている。
たとえば本発明者は、24時間点滴靜注される5−FUと、経口投与されるUFT(テガフールとウラシルの配合製剤)を併用投与することにより、体内中での高濃度の5−FUと低濃度の5−FUを同時に長時間維持させ、効果的に抗腫瘍効果を発揮させる化学療法を提案し、とくにこれをPMC療法(薬物動態修飾化学療法:Pharmacokinetic modulating chemotherapy)と命名し、結腸・直腸癌患者において根治手術後の補助化学療法としても、また切除不能進行再発癌に対する治療的効果としても、大きく予後を改善するなど、多大な貢献をしてきている(特許文献1)。
アメリカ特許第6,303,583号
ところで、欧米並みの食生活の浸透により、最近では結腸・直腸癌の罹患率、死亡率はともに上昇しており、近い将来には、胃癌を追い越し、癌の死因の第2位になろうとしている。この結腸・直腸癌の治療は、基本的には腫瘍部位の切除術を行うことにより実施されているが、一般的には術後5年の生存率が50〜60%を占めている。それに併せ、術後の補助療法として、(1)化学療法、(2)放射線療法、(3)免疫療法、(4)温熱療法、(5)その他が行われている。これらは術前後において、それぞれ単独または複数の療法を併用して行われており、先に本発明者が提案したPMC療法は、補助療法として極めて効果的なものである。
結腸・直腸癌は今後社会的に大きな問題となる悪性腫瘍であり、そのための治療薬も積極的に検討されてきており、最近では植物アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である塩酸イリノテカンが、極めて効果的な抗腫瘍剤であるとして登場してきている。この塩酸イリノテカンは、生体内でエステラーゼにより活性代謝物SN−38に加水分解されるプロドラッグであり、その抗腫瘍作用は、異種腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有する。また、その毒性も強いことから、結腸・直腸癌においては、手術不能あるいは再発癌に対してのみ投与されており、切除可能な結腸・直腸癌においては、補助化学療法として、たとえば5−FUあるいはUFT等が用いられてきている。
このように、結腸・直腸癌に対する化学療法は、塩酸イリノテカンなどの新薬の登場で、近年著しい進歩を遂げている。例えば、臨床試験の結果から、新しいregimen(投薬計画)を作り上げる手法は、欧米を中心に検討されてきており、複数の薬剤の併用療法による実際の臨床結果を重視したエビデンスが次々に形成されてきている。
例えば、2000年代に入り、いくつかの臨床成績から、5−FUと塩酸イリノテカンとの併用療法が、奏効率、生存率ともに、有意に治療成績を改善することが、欧米の研究者により報告され、5−FUをはじめとするフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤と塩酸イリノテカンとの併用療法が広く検討されてきている。しかしながら、5−FUと塩酸イリノテカンの組合せにおいては、その併用の正当性や意義は、いまだ科学的に証明されているものではない。
一方、日本国内においては、日本の企業により独自に開発された塩酸イリノテカンにしても、海外の臨床試験の結果を経て、ようやく国内でも使用されるようになったように、結腸・直腸癌に対する化学療法は、世界の動向から大きく遅れをとっているのが現状である。すなわち、我が国では、医療施設ごと、また医者毎に治療方法が異なるものであって、比較臨床試験など、実際の治療効果、すなわちEvidence Based Medicine(EBM)に基づく治療がなかなか進まなかったのが現状である。
しかしながら、考え方を変えると、いくつかの施設が示したように、自由な発想に基づく化学療法を、大きく発展させ得る環境下にあったということができる。本発明者が先に提案した大腸癌に対する薬物動態修飾化学療法(PMC療法)は、まさにこの自由な発想のもとに開発された化学療法であって、これまで結腸・直腸癌に対する化学療法として、極めて良好な臨床成績を残してきている。
ところで、このPMC療法は、基本的には、5−FU/UFTの併用療法よる薬物の動態を意図的に修飾させ、より有効な抗腫瘍効果を、継続的に発揮させる療法である。2001年には基礎実験により、これまで5−FU単独投与では確認されていなかった細胞周期2経路を制御することがわかり、癌抑制遺伝子p53に依存することなく、14−3−3−σ遺伝子の関与で、アポトーシスとは別の細胞死をもたらすことを明らかにしてきた。このように、抗腫瘍効果におけるメカニズムの解明は、癌化学療法の本質を理解するものであり、癌化学療法の更なる発展につながっていくものである。
本発明者は、これまで提案してきている結腸・直腸癌に対する極めて効果的な抗腫瘍効果を発揮するPMC療法の考え方をさらに発展させて、PMC療法(5−FU/UFTの併用療法)/ロイコボリン(葉酸代謝拮抗剤)/塩酸イリノテカンとの併用療法が、現在国内においては最強、且つ最先端の癌化学療法に基づく治療方法になるものと考え、切除不能な大腸癌への治療を検討した。
その結果、比較的良好な治療効果を示したものの、いまだ、この手法による治療にも抵抗する症例が認められた。
そこで、PMC療法における5−FU/UFTの併用に代え、また葉酸代謝拮抗剤であるロイコボリンを使用することなく、他のフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤として、経口投与可能なドキシフルリジンを塩酸イリノテカンと併用させたところ、極めて良好な治療効果が得られることを新規に見出したのである。
しかも、塩酸イリノテカンの総投与量を、PMC療法との併用時より減量させたにも拘わらず、より有効な治療効果を得ることを確認した。
このことは、ドキシフルリジンには、塩酸イリノデカンとの関係において、他の5−FU系薬剤との併用療法にはないメカニズムが存在していることを示唆していることに他ならない。
したがって本発明は、結腸・直腸癌に対する癌化学療法として、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を、経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤と併用することにより増強させ、効果的な治療効果を達成させることを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明の基本的態様は、結腸・直腸癌の治療において、抗腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させるために、塩酸イリノテカンを点滴靜注するとともに、フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を連日経口投与することを特徴とする塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法である。
好ましい態様として、より具体的には、本発明は、塩酸イリノテカンの投与量が、塩酸イリノテカンとして成人に10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を連日経口投与する方法である。
より具体的には、本発明は、経口投与するフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤が、ドキシフルリジンまたはカペシタビンである塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法であり、好ましくは、ドキシフルリジンまたはカペシタビンの投与量が、1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて経口投与する塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法である。
したがって、最も好ましい本発明は、結腸・直腸癌の治療において、抗腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させるために、塩酸イリノテカンを、成人に10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてドキシフルリジンを1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて連日経口投与することを特徴とする塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法である。
また本発明は、別の態様として、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させる抗腫瘍効果増強剤を提供するものであり、具体的には、フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤からなり、塩酸イリノテカンと併用投与することにより、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させることを特徴とする抗腫瘍効果増強剤であり、より具体的には、フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤が、ドキシフルリジンまたはカペシタビンである抗腫瘍効果増強剤である。
本発明により、抗腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増大させ、効果的に結腸・直腸癌に対する癌化学療法としての併用療法が提供される。この併用療法は、これまで切除不能である結腸・直腸癌の治療として極めて効果的なものであり、特にドキシフルリジンと併用することにより塩酸イリノテカンの総投与量を軽減することができる。この投与量の軽減は、副作用の発現を必然的に回避するものであり、その効果は多大なものであるといえる。
本発明で使用する塩酸イリノテカンと併用投与されるフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤としては、具体的にはドキシフルリジンまたはカペシタビンをあげることができる。ドキシフルリジンは、化学名5’−デオキシ−5−フルオロウリジンであるフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤であり、5−FUのプロドラッグである。薬理的には、腫瘍組織で高い活性を有する酵素、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼの一種であるチミジンホスホリラーゼ(TP)により5−FUと5−デオキシ−D−リボース−1−リン酸に分解され、分解された5−FUが抗腫瘍効果を発揮する。この5−FUは、FdUMPに代謝され、ウラシル由来のdUMPと拮抗し、チミジル酸合成酵素によるDNA合成経路を阻害する。
また、5−FUは、FUTPに変換され、ウラシルと同じく、RNAに取り込まれてF−RNAを生成し、RNAの機能を阻害する。
その投与量は、一般的には、1日用量としてドキシフルリジンの800〜1500mgを、3〜4回に分けて経口投与する。したがって本発明においても、塩酸イリノテカンの点滴靜注とともに、ドキシフルリジンを1日用量として800〜1500mgを、3〜4回に分けて経口投与するのが好ましい。なお、ドキシフルリジンは他の経口投与可能な5−FU系製剤とは異なり、血中濃度を介さずに、腫瘍組織選択性があるのが大きな特徴である。しかしながら、チミジンホスホリラーゼ(TP)は、小腸にも多く存在することから、下痢の副作用が大きなものであるのが欠点であるとされている。
したがって、この欠点を改良したものとしてカペシタビンがある。カペシタビンはドキシフルリジンの欠点を改良したものであり、このカペシタビンは日本においてはいまだ臨床試験中であるが、アメリカにおいては、経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤として製造承認許可がなされている。このカペシタビンは、これまで大腸癌化学療法のGold-standardとされている5−FU/ロイコボリンの併用療法と、予後の効果は同等であり、奏効率はより高いことが海外の臨床試験で認められている。
したがって、本発明においては、このカペシタビンを経口フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤として使用することができる。
一方、このドキシフルリジン、あるいはカペシタビンと併用投与される塩酸イリノテカンは、抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である。その抗腫瘍作用は、生体内においてエステラーゼにより活性代謝物SN−38に加水分解されるプロドラッグとしての抗腫瘍効果であり、その作用は、移植腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有する。
この塩酸イリノテカンの抗腫瘍作用は、殺細胞効果によるものであり、毒性も極めて強いことから、その投与方法も、適用症に応じて、厳しく規制されている。例えば、適用症として、小細胞肺癌、乳癌(手術不能または再発)および有棘細胞癌にあっては、後記するA法を、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能または再発)および結腸・直腸癌(手術不能または再発)にあってはA法またはB法を、また、悪性リンパ腫(非ポジキンリンパ腫)の場合にはC法を使用し、投与する。
A法として:塩酸イリノテカンとして、通常、成人に1日1回、100mg/mを1週間間隔で3〜4回点滴靜注し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして投薬を繰返す。
B法として:塩酸イリノテカンとして、通常、成人に1日1回、150mg/mを2週間間隔で2〜3回点滴靜注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして投薬を繰返す。
C法として:塩酸イリノテカンとして、通常、成人に1日1回、40mg/mを3日間連日点滴靜注する。これを1週間毎に2〜3回繰り返し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして投薬を繰返す。
したがって本発明にあっても、基本的にはこの投与方法が守られるものであるが、ドキシフルリジンと併用することにより、塩酸イリノテカンの総投与量を著しく減少させても、より有効な治療効果を得ることが判明した。
その点から、本発明にあっては、好ましくは、例えばC法の変法として、塩酸イリノテカンとして、通常、成人に、10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてドキシフルジンを1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて経口投与する方法があげられる。
しかしながら、塩酸イリノテカンの投与方法は、対象患者の年齢、その症例等により上記したA法、B法ならびにC法をベースとし、それを種々変法させることも可能であり、その変法に基づく塩酸イリノテカンの投与も、本発明の技術的範囲内であることはいうまでもない。
この塩酸イリノテカンは、基本的には点滴靜注され、それに併せ、ドキシフルリジンが経口投与される。これにより塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果が増強した。この事実は、ドキシフルリジンには、塩酸イリノデカンとの関係において、他の5−FU系薬剤との併用療法にはないメカニズムが存在していることが示唆された。
ところで、例えば本発明が提供する併用療法において、ドキシフルリジンが塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増大させるメカニズムを解明することは、癌化学療法の本質を理解し、今後の更なる発展につながっていくものである。その点を踏まえ、本発明者はその点のメカニズムを解明するべく、以下の試験を行った。
試験1:
(目的)
塩酸イリノテカンとフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤との併用療法における、治療効果の正当性を評価するため、2種のフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を使用し、塩酸イリノテカンに反応する大腸癌細胞での遺伝子発現を検討した。
(方法)
インフォームドコンセントによる説明を十分に行なって、同意が得られた結腸・直腸癌患者12症例に対し、腫瘍切除術前に以下の癌化学療法を施行した。なお、化学療法を行なう前の大腸癌について生検組織と、術後の切除標本を用いた。
癌化学療法は、
(1)ドキシフルリジン(フルツロンカプセル(登録商標))経口投与群
(2)5−FU点滴静注投与群
(3)塩酸イリノテカン(商品名:トポテシン注(登録商標))点滴靜注投与群
(4)ドキシフルリジン(フルツロンカプセル)経口投与/塩酸イリノテカン(商品名:トポテシン注(登録商標))点滴靜注併用投与群
の4療法分け、各3例ずつ振り分けた。
化学療法による治療前後の遺伝子発現を、12,000遺伝子を含むマイクロアレイを用いて分析した。
抗腫瘍効果としては、TUNEL法を用いたアポトーシスインデックスを検討し、細胞増殖能の変化は、Ki−67の免疫染色で行い、アポトーシス関連評価として、p53、bax、bcl−2の免疫染色を行った。DNAマイクロアレイデータの検証はRT−PCRおよびWestern-blotting法により行なった。
(結果)
治療前後で大きく動く遺伝子として3,801遺伝子を同定した。次に、上記の(1)〜(4)の治療法のうち、各2つの組合せで全症例ともに共通に変化する遺伝子を検討した。
その結果、ドキシフルリジンと塩酸イリノテカンの関与する腫瘍では、2つのproto-oncogene(癌原遺伝子)であるNOT、c−fosの発現が強く上昇し、5−FU関連腫瘍では、発現上昇は認められなかった。
また、(4)のドキシフルリジンの経口投与と、塩酸イリノテカン点滴靜注の併用療法では、最もアポトーシスが誘導されており、かつ細胞増殖能が最も低下していた。
さらにこれらはドキシフルリジンの効果発現に重要とされる、腫瘍中のTP(チミジンホスホリラーゼ)の発現にかかわらず、認められていた。
マイクロアレイデータは、RT−PCRでの検証でも同様の結果が得られ、かつWestern-blotting法による蛋白レベルの検証では、治療法(4)のドキシフルリジン、塩酸イリノテカン併用療法において最も高度に発現していた。
c−fosの発現が塩酸イリノテカンの感受性に関与する報告がある(例えば、Scanlon K. J.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:10591-10595,1991;Singh A.ら, Am. J. Clin. Oncol., 21:466-469,1998)ことからして、ドキシフルリジンにはTP(チミジンホスホリラーゼ)発現よりも、c−fosの発現をとおして塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強する可能性が示唆された。
すなわち、5−FUとドキシフルリジンでは、同じフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤であるが、塩酸イリノテカンとの併用においては、互いに異なる作用メカニズムがあり、塩酸イリノテカンとフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤との併用における、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強していることの正当性の一つを証明することができた。
上記のメカニズムの解明を踏まえ、実際の結腸・直腸癌患者に本発明の併用療法を実施し、その実際の治療効果を検討した。その結果、極めて良好な治療効果をあげることができた。そのいくつかの臨床例を、以下に示す。
なお、以下の臨床データにおいては以下の略語を用いている。
PMC:5−FU/UFTの併用療法
LV:ロイコボリン
CPT-11:塩酸イリノテカン
NC:不変(no change)
PD:進行(progressive disease)
症例1:
再発肺転移:49歳/男性 PMC/LV/CPT-11投与で無効症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11併用療法を実施。CPT-11 300mg/monthから200〜160mg/monthへ減量し、長期のNC。
症例2:
再発肺転移:65歳/女性 PMC/CPT-11 30mg投与で無効症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11 30mg併用療法を実施し、有効。
症例3:
再発肺転移:43歳/女性 PMC/CPT-11 40〜80mg隔週投与でNCからPD症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11 40mg毎週投与の併用療法を実施し、再びNC。
症例4:
肝転移再発:79歳/男性 PMC/LV/CPT-11 80〜100mg隔週投与でNCからPD症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11 40mg毎週投与の併用療法を実施し、再びNC。
症例5:
肝転移再発:62歳/女性 PMC/CPT-11 30mg隔週投与で無効症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11 30mg隔週投与の併用療法を実施し、有効。
症例6:
肺、肝再発:79歳/男性 PMC/LV投与で無効症例
本発明のドキシフルリジン/CPT-11 40mg毎週投与の併用療法を実施し、有効。
上記した実際の臨床例は、本発明の療法を実施した臨床例のうち、ほんの一部を記載したものに過ぎないが、これまでの療法では無効であった結腸・直腸癌患者に本発明の併用療法を実施することにより、極めて良好な臨床成績を上げることができた。
以上記載のように、本発明により、抗腫瘍剤である塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増大させ、効果的に結腸・直腸癌に対する癌化学療法としての併用療法が提供される。この併用療法は、これまで切除不能であった結腸・直腸癌の治療として、極めて効果的なものである。特にドキシフルリジンと併用することにより塩酸イリノテカンの総投与量を軽減することができる利点を有しており、この投与量の軽減は、副作用の発現を必然的に回避するものであり、その臨床的効果は多大なものである。

Claims (8)

  1. 結腸・直腸癌の治療において、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させるために、塩酸イリノテカンの点滴靜注とともに、フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を連日経口投与することを特徴とする塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  2. 塩酸イリノテカンの投与量が、塩酸イリノテカンとして成人に10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤を連日経口投与する、請求項1に記載の塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  3. 経口投与するフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤が、ドキシフルリジンまたはカペシタビンである請求項1または2に記載の塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  4. ドキシフルリジンの投与量が、1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて経口投与する請求項1ないし3のいずれかに記載の塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  5. カペシタビンの投与量が、1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて経口投与する請求項1ないし3のいずれかに記載の塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  6. 手術不能または再発した結腸・直腸癌の治療において、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させるために、塩酸イリノテカンを、成人に10〜40mg/mを1日1回毎週24時間で点滴靜注し、それに併せてドキシフルリジンを1日量として800〜1500mgを3〜4回に分けて連日経口投与することを特徴とする塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果増強方法。
  7. フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤からなり、塩酸イリノテカンと併用投与することにより、塩酸イリノテカンの抗腫瘍効果を増強させることを特徴とする抗腫瘍効果増強剤。
  8. フッ化ピリミジン系抗腫瘍剤が、ドキシフルリジンまたはカペシタビンである請求項7に記載の抗腫瘍効果増強剤。
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