JP2005253435A - 蹄状態診断システムとその診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】乳牛等の蹄状態診断システムにおいて、蹄の状態を客観的に診断することができるようにして、削蹄の適期(適正な時期)を容易に知ることができ、乳牛等の動物が脚等の病気になりにくいようにする。
【解決手段】撮像画像中における乳牛の特定の部位の動きを捕捉して、この特定の部位の動きに基づいて、撮像した乳牛の蹄の状態を診断するようにしたことにより、蹄の状態を客観的に診断することができる。これにより、削蹄の適期を容易に知ることができるので、乳牛が脚等の病気になりにくいようにすることができると共に、乳牛の運動量を増やし、脚の痛み等に伴うストレスを減らして、乳量を増加させ、乳の質を良くすることができる。また、乳牛の健康状態を維持することができるので、乳牛の平均分娩回数を多くすることができる。
【選択図】図24

Description

本発明は、乳牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断システムとその診断方法に関するものである。
従来の乳牛等の家畜の生産現場では、家畜の脚と蹄の問題がクロース・アップされてきている。これは、図25に示される3つの理由に起因する。1つ目の理由は、家畜の居住環境が土の床からセメント床に変わってきたということである。この背景には、家畜の飼育戸数が減少していることから、一戸当たりの飼育頭数が増加(家畜飼育が高密度化)してきており、家畜の飼育方法を放牧飼育から舎内飼育に切り替えざるをえないという事情がある。2つ目の理由は、家畜を大型化させるように品種改良した結果、家畜の四肢が虚弱化したということである。3つ目の理由は、家畜の成長をスピード化させるように品種改良した結果、家畜の歩行様式がアンバランスになったということである。
特に、乳牛の生産現場では、蹄の状態が乳牛の全身の健康を左右し、さらには乳量にも影響を及ぼすと言われている。すなわち、図26(a)に示されるように、蹄101が長い状態(以下、長蹄という)を放置しておくと、乳牛の脚の関節に負担がかかり、脚の病気になり易くなる。また、上記のように、乳牛の脚の関節に負担がかかり、歩く際に痛みをも伴う状態となるため、乳牛の運動量が減ってしまうだけではなく、乳牛のストレスが大きくなる。このため、脚以外の病気(乳房炎等)にもなり易くなると共に、乳量も低下してしまう。従って、図26(b)に示されるように、削蹄を行って、蹄の状態を良好に保つ必要がある。
しかしながら、削蹄の質は削蹄師の経験的技術に負うところが多く、また蹄の状態を客観的・精密に診断する手段もないため、各酪農家が独自にきめ細かい蹄管理を行うことは難しいという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、蹄の状態を客観的に診断することができるようにして、削蹄の適期(適正な時期)を容易に知ることができ、乳牛等の動物が脚等の病気になりにくいようにすることが可能な蹄状態診断システムとその診断方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、乳牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断システムにおいて、動物が歩いている様子(以下、歩様という)を撮像する撮像手段と、撮像手段による撮像画像中における動物の特定の部位の動きを捕捉するモーションキャプチャー手段とを備え、モーションキャプチャー手段により捕捉した動物の特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断するものである。
請求項2の発明は、牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断方法において、動物が歩いている様子(以下、歩様という)を撮像し、撮像した画像中における動物の特定の部位の動きを捕捉し、捕捉した動物の特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断するものである。
請求項1及び請求項2の発明によれば、撮像画像中における動物の特定の部位の動きを捕捉して、この特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断するようにしたことにより、蹄の状態を客観的に診断することができる。これにより、削蹄の適期を容易に知ることができるので、乳牛等の動物が脚等の病気になりにくいようにすることができると共に、動物の運動量を増やし、脚の痛み等に伴うストレスを減らすことができる。特に、診断対象となる動物が家畜の場合には、家畜の生産性を高めることができる。例えば、診断対象となる動物が乳牛の場合には、乳量を増加させ、乳の質を良くすることができると共に、乳牛一頭当たりの平均分娩回数を多くすることができる。
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。本発明は、乳牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断システムとその診断方法に関するものであり、撮像画像中における動物の特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断するものである。なお、以下に記載した実施形態は、本発明を網羅するものではなく、本発明は、下記の形態だけに限定されない。
図1は、本発明の蹄状態診断システムにより乳牛の蹄の状態を診断する様子を示す。図に示されるように、乳牛1の大腿骨突端2には、リフレクタ(反射板)3が取り付けられている。この乳牛1を綱で引っ張って歩かせながら、乳牛1が歩いている様子(以下、歩様という)をビデオカメラ(撮像手段)で撮影する。そして、ビデオカメラによる撮像画像をコンピュータに取り込んで、撮像画像中におけるリフレクタ3の動きを専用の画像解析用プログラムで追尾することにより、乳牛1の大腿骨突端2の動きを捕捉する。この大腿骨突端2の動きをディスプレイ等に表示して確認することにより、蹄の状態を客観的に診断することができる。
図2はと図3は、それぞれ削蹄前と削蹄後における乳牛1の大腿骨突端2の動きをグラフ化して示したものである。削蹄前の乳牛1は、脚の関節に負担がかかり、歩く際に痛みをも伴う状態となるため、スムーズに歩くことができない。従って、図2に示されるように、削蹄前の乳牛1の大腿骨突端2の動きを示す曲線11の振幅には規則性がない。これに対して、削蹄後の乳牛1は、脚の関節にかかる負担が減るため、歩き易くなり、歩様がリズミカルになる。従って、図3に示されるように、削蹄後の乳牛1の大腿骨突端2の動きを示す曲線12の振幅には規則性が生じる。
上記のような削蹄の前後における乳牛1の歩様の変化は、ビデオカメラによる撮像画像を肉眼で見ただけでは把握することができないが、上記のように、削蹄の前後における乳牛1の大腿骨突端2の動きをグラフ化することにより、容易に知ることができる。このことは、乳牛1の大腿骨突端2の動きをグラフ化して確認することにより、乳牛1の蹄の状態を数値で客観的に診断することができ、削蹄の適期(適正な時期)を容易に知ることもできるということを示す。これは、各酪農家が独自にきめ細かい蹄管理を行うことを容易にすることにつながる。
上記のような歩様解析手法に基づいて、適正な時期に乳牛1の削蹄を行うことにより、乳牛1は、動き易くなる。図4は、6頭の乳牛1の削蹄前と削蹄後における立ち座り回数を比較して示すグラフである。図にしめされるように、削蹄後における乳牛1の立ち座り回数は、削蹄前と比べて、有意に高くなった。このグラフから、削蹄後における乳牛1が、動き易くなり、姿勢を直す回数が増えたことが分かる。なお、この実験では、p(優位差検定による危険率)<0.05である。なお、図中におけるT検定とは、対応のあるt検定のことである。
また、上記のような歩様解析手法に基づいて、適正な時期に乳牛1の削蹄を行うことにより、乳牛1の乳量が増加する。図5は、5頭の乳牛1の削蹄前と削蹄後における乳量を比較して示すグラフである。図に示されるように、削蹄後における乳牛1の立ち座り回数は、削蹄前と比べて、有意に増加した。なお、この実験では、p(優位差検定による危険率)<0.01である。
図6は、図5中におけるCow2の削蹄の前後に亘る乳量の経時的な変化を示す。図に示される菱形の点21は、それぞれの時点におけるCow2の乳量を示し、曲線22は、Cow2の前回の分娩時における乳量に基づく予想の乳量を示す。通常の乳牛1は、分娩後、時間が経過していくに従って、乳量が減っていくが、このCow2の場合は、図に示されるように、削蹄前よりも削蹄後の方が乳量が増えている。これは、削蹄を行ったことによる効果である。
次に、リフレクタ3(図1参照)を乳牛1の体のどの部分に取り付けると、撮影画像に基づく歩様のデータから乳牛1の蹄の状態を把握し易いかについて説明する。図7と図8とは、リフレクタ3を乳牛1の大腿骨突端に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示し、図9と図10とは、リフレクタ3を乳牛1の肩に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示し、図11と図12とは、リフレクタ3を乳牛1のもも(大腿部)に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示す。また、図13と図14とは、リフレクタ3を乳牛1の前膝部に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示し、図15と図16とは、リフレクタ3を乳牛1の後膝部に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示し、図17と図18とは、リフレクタ3を乳牛1のアキレス腱に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示す。さらにまた、図19と図20とは、リフレクタ3を乳牛1の前蹄に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示し、図21と図22とは、リフレクタ3を乳牛1の後蹄に取り付けた場合における削蹄前と削蹄後のリフレクタ3の動きを示す。これらの図7乃至図22から、リフレクタ3の乳牛1への取付位置を大腿骨突端2にした場合に、削蹄前と削蹄後における乳牛1の動きの差異を最も把握し易いことが分かる。従って、リフレクタ3を乳牛1の大腿骨突端2に取り付けると、歩様のデータから乳牛1の蹄の状態を最も把握し易くなる。
次に、図23を参照して、本実施形態による蹄状態診断システムの構成について説明する。この蹄状態診断システムは、乳牛1の歩様を撮影するためのハイスピードカメラ31と、ハイスピードカメラ31によりNTSC(National Television System Committee)形式の信号で記録された動画データを、デジタルビデオ信号の形式の動画データに変換するためのAV機器33と、このAV機器33からデジタルビデオ信号の形式の動画データを取り込むための画像入力ボード35を有するパソコン34とから構成される。また、このパソコン34内には、画像取込用プログラム、マーカー追尾ソフト、画像処理ソフト、アプリケーション開発ツール等の各種プログラムが格納されている。請求項1におけるモーションキャプチャー手段は、主にパソコン34内のCPUとマーカー追尾ソフトとから構成される。
上記構成において、ユーザは、ハイスピードカメラ31によりサンプリング周波数250Hz(4msec)で、乳牛1の歩様を撮影してNTSCの形式でビデオテープ32に記録する。そして、ビデオカメラ32に記録されたNTSC形式の動画データをAV機器33でデジタルビデオ信号の形式の動画データに変換する。このデジタルビデオ信号の形式の動画データは、画像入力ボード35を介してAV機器33からパソコン34内に取り込まれて、上記のマーカー追尾ソフト等により、図2及び図3に示される削蹄前と削蹄後における乳牛1の大腿骨突端2の動きを示すグラフ等の解析データが作成される。そして、パソコン34のディスプレイ上に歩様解析結果を示す画面36が表示される。
次に、図24を参照して、ハイスピードカメラ31により撮像した動画データの解析方法について説明する。パソコン34は、上記のマーカー追尾ソフトを用いて、AV機器33より取り込んだ動画データから、各マーカーの軌跡データをサンプリングする。そして、乳牛1の4〜5箇所にリフレクタ3を付けて、約4完歩分のデータをサンプリングして、各乳牛1毎のデータファイルを得る。そして、このマーカー追尾ソフトにより得られた各乳牛毎のデータファイルから、自動的、かつ瞬時に各マーカーのxy軸データを読み込み、マーカーの軌道を算出し、図2及び図3に示される削蹄前と削蹄後における乳牛1の大腿骨突端2の動きを示すグラフをピクセル単位で作図する。さらに、平均軌道、変化率、各マーカー間の相関係数等を求める。そして、削蹄前と削蹄後におけるマーカーの軌道の比較と平均値の比較を行う。なお、乳牛1のリフレクタ3を付ける箇所は、大腿骨突端2のみでもよい。
上記のように、本実施形態による蹄状態診断システムによれば、撮像画像中における乳牛1の特定の部位の動きを捕捉して、この特定の部位の動きに基づいて、撮像した乳牛1の蹄の状態を診断するようにしたことにより、蹄の状態を客観的に診断することができる。これにより、削蹄の適期を容易に知ることができるので、乳牛1が脚等の病気になりにくいようにすることができると共に、乳牛1の運動量を増やし、脚の痛み等に伴うストレスを減らして、乳量を増加させ、乳の質を良くすることができる。また、乳牛1の健康状態を維持することができるので、乳牛1の平均分娩回数を多くすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、乳牛1の歩様の動画像を取り込んで、リフレクタ3の動きを解析することにより、乳牛1の歩様のモーションキャプチャーを行ったが、磁気センサ等のセンサからの検出信号を取り込んで、これらの検出信号に基づいて乳牛の歩様のモーションキャプチャーを行ってもよい。また、モーションキャプチャーに用いるマーカーは、リフレクタに限らず、例えばピンポン球等でもよい。さらにまた、本発明により蹄の状態を診断可能な動物は、乳牛に限らず、馬等の他の動物であってもよい。
本発明の蹄状態診断システムにより乳牛の蹄の状態を診断する様子を示す図。 上記蹄状態診断システムにおける削蹄前の乳牛の大腿骨突端の動きを示すグラフ。 上記蹄状態診断システムにおける削蹄後の乳牛の大腿骨突端の動きを示すグラフ。 6頭の乳牛の削蹄前と削蹄後における立ち座り回数を比較して示すグラフ。 5頭の乳牛の削蹄前と削蹄後における乳量を比較して示すグラフ。 図5中におけるCow2の削蹄の前後に亘る乳量の経時的な変化を示すグラフ。 リフレクタを大腿骨突端に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを大腿骨突端に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを肩に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを肩に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタをもも(大腿部)に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタをもも(大腿部)に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを前膝部に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを前膝部に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを後膝部に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを後膝部に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタをアキレス腱に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタをアキレス腱に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを前蹄に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを前蹄に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを後蹄に取り付けた場合における削蹄前のリフレクタの動きを示すグラフ。 リフレクタを後蹄に取り付けた場合における削蹄後のリフレクタの動きを示すグラフ。 上記蹄状態診断システムの構成図。 上記蹄状態診断システムにおける動画データの解析方法の説明図。 従来の家畜の生産現場における脚と蹄の問題の説明図。 乳牛の削蹄の前後における蹄の状態を示す図。
符号の説明
1 乳牛
2 大腿骨突端(特定の部位)
31 ハイスピードカメラ(撮像手段)
34 パソコン(モーションキャプチャー手段の一部)

Claims (2)

  1. 乳牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断システムにおいて、
    動物が歩いている様子(以下、歩様という)を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段による撮像画像中における動物の特定の部位の動きを捕捉するモーションキャプチャー手段とを備え、
    前記モーションキャプチャー手段により捕捉した動物の特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断することを特徴とする蹄状態診断システム。
  2. 牛等の動物の蹄の状態を診断する蹄状態診断方法において、
    動物が歩いている様子(以下、歩様という)を撮像し、
    前記撮像した画像中における動物の特定の部位の動きを捕捉し、
    前記捕捉した動物の特定の部位の動きに基づいて、撮像した動物の蹄の状態を診断することを特徴とする蹄状態診断方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018143156A (ja) * 2017-03-03 2018-09-20 有限会社エムエイチ 牛の削蹄補助具
JP7553971B2 (ja) 2021-09-10 2024-09-19 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 評価装置、評価方法、評価プログラム、及び記録媒体

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