JP2005242135A - 平版印刷版原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】現像性および耐刷性のいずれにも優れる、サーマルポジタイプの平版印刷版原版の提供。
【解決手段】アルミニウム板に少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体上に、アルカリ可溶性の高分子化合物を含有する中間層と、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する画像記録層とをこの順に設けてなる平版印刷版原版であって、
上記支持体上に上記中間層を設けた基板を30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬させた後の該中間層中の高分子化合物の残存率が、15%以上である、平版印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版原版に関する。
近年、画像形成技術の発展に伴い、細くビームを絞ったレーザ光を平版印刷版原版の版面上に走査させ、文字原稿、画像原稿等を直接版面上に形成させ、フィルム原稿を用いず直接製版することが可能となりつつある。
そのような方法に用いられる平版印刷版原版として、支持体上に、サーマルタイプの画像記録層を設けた平版印刷版原版が知られている。サーマルタイプの画像記録層としては、具体的に、画像記録層中に存在する赤外線吸収剤がその光熱変換作用を発現し露光により発熱し、その熱により画像記録層の露光部分がアルカリ可溶化しポジ画像を形成するいわゆるサーマルポジタイプの画像記録層等が知られている。
サーマルポジタイプの画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる場合、レーザ露光の露光量が十分大きくないと、本来、非画像部となるべき露光部分においてアルカリ可溶化反応が十分に進行せず、ポツ状残膜と呼ばれるポツ状現像不良が発生し、印刷物の非画像部の汚れの原因となる。
これに対して、レーザ露光の出力を上げて画像記録層で発生する熱を増加させたり、レーザ露光の走査速度を下げて露光時間を増やしたりすれば、これらの問題は防止することができるが、レーザ露光の出力を上げると、一般に使用されている半導体レーザの場合にはレーザの寿命が低下するので、高額なレーザを頻繁に交換する必要が生じ、また、レーザ露光の走査速度を下げると、製版作業時間が増して、製版工程のコストアップにつながる。
したがって、サーマルポジタイプの画像記録層を有する平版印刷版原版であって、露光量が低くても現像することができる、現像性に優れる平版印刷版原版が求められている。
従来、平版印刷版原版の現像性を向上させるため、平版印刷版用支持体の表面に、高分子化合物を含有する中間層を設けることが知られている。
しかしながら、平版印刷版用支持体の表面に高分子化合物を含有する中間層を設ける場合には、親水性表面(支持体表面または親水性処理された表面)と相互作用する親水的な部分が高分子化合物の中に存在することが必要であるが、中間層と親水性表面との界面において、そのような親水性部分が存在する場所に、印刷に用いられる湿し水やプレートクリーナーが浸透して、耐刷性を低下させることがあった。
そのため、現像性および耐刷性のいずれにも優れる中間層が求められてきている。
例えば、特許文献1には、耐刷性の向上等を目的とした、粗面化処理、陽極酸化処理し、更に親水化処理したアルミニウム板上に、ビニル安息香酸の構造単位を含有する高分子化合物を含む層を設けた後に、感光層を設けることを特徴とするポジ型感光性平版印刷版が記載されている。
特開平11−109641号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、サーマルポジタイプの平版印刷版原版に、特許文献1に記載されている中間層を用いた場合、現像性は向上するものの、耐刷性は十分ではないことが分かった。
そこで、本発明は、現像性および耐刷性のいずれにも優れる、サーマルポジタイプの平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく、サーマルポジタイプの平版印刷版原版に用いた場合に現像性および耐刷性のいずれもが優れたものになる支持体表面と中間層について、鋭意研究した。
その結果、本発明者は、陽極酸化処理後に行われる封孔処理と、アルカリ性の現像液に対する溶解脱離性が制御された特定の高分子化合物を含有する中間層とを組み合わせることによって、現像性および耐刷性のいずれもが優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下に示す(1)〜(5)の平版印刷版原版を提供する。
(1)アルミニウム板に少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体上に、アルカリ可溶性の高分子化合物を含有する中間層と、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する画像記録層とをこの順に設けてなる平版印刷版原版であって、
上記支持体上に上記中間層を設けた基板を30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬させた後の該中間層中の高分子化合物の残存率が、15%以上である、平版印刷版原版。
(2)上記高分子化合物が、上記支持体を構成する金属とキレート形成可能な官能基を有する上記(1)に記載の平版印刷版原版。
(3)上記キレート形成可能な官能基が、アセチルアセトナートである上記(2)に記載の平版印刷版原版。
(4)上記封孔処理が、無機フッ素化合物を溶解した水溶液中で行われる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版原版。
(5)上記封孔処理による封孔率が、15%以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版原版。
本発明によれば、現像性(感度)および耐刷性のいずれにも優れる平版印刷版原版を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<表面処理>
本発明の平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体においては、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させるのが好ましい。
本発明に用いられる平版印刷版用支持体の表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法;
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法;
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法;
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法
等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、上記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−24168号公報に記載されている方法も適用可能である。
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、ロール表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いるのが好ましい。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。
この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
酸性溶液の濃度は0.01〜2.5質量%であるのが好ましいが、0.05〜1.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
台形波交流のduty比(ta/T)は0.33〜0.66のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が0.5のものが好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。ただし、周波数を100〜300Hzとすることにより、小波構造の開口径の標準偏差を0.2以下とすることもできる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2であるのが好ましく、50〜300C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2であるのが好ましい。
また、高濃度または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2であるのが好ましく、20〜70C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2であるのが好ましい。
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dm2と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能である。この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
本発明においては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2、より好ましくは5〜30C/dm2で行われる。陰極電気量が3C/dm2未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、上記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2であるのが好ましく、1〜5g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2であるのが好ましく、5〜15g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
本発明においては、以上のように必要に応じて処理されたアルミニウム板に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2¥未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
<封孔処理>
本発明においては、上述したようにしてアルミニウム板に陽極酸化皮膜を形成させた後、該陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの平均ポア径を制御するために封孔処理を施す。この封孔処理により、陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径が小さくなり、これにより平版印刷版原版の製造の際に中間層や画像記録層がマイクロポアの内部に入ることを防止することができるため、得られる平版印刷版原版の現像性が極めて向上する。
また、この封孔処理により、現像後の画像記録層の残膜量を少なくすることができ、これにより平版印刷版の非画像部の表面を親水的にすることができるので、耐汚れ性が優れたものとなる。更に、この封孔処理により、陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径が小さくなり、これにより印刷時にインキが潜り込むことを抑制することができるので、この点からも耐汚れ性が優れたものとなる。
上記封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
(無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理)
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、例えば、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
また、無機フッ素化合物を含有する水溶液は、リン酸塩化合物を含有させてもよい。リン酸塩化合物を含有すると、より低温で封孔処理が可能になり、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、現像性および耐汚れ性を向上させることができる。
このようなリン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
本発明において、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、無機フッ素化合物を含有する水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有しているのが好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比は、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、無機フッ素化合物を含有する水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。更に、無機フッ素化合物を含有する水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
本発明において、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、無機フッ素化合物を含有する水溶液を用いた浸せき法、スプレー法を用いることができる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸せき法が好ましい。浸せき法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
(水蒸気による封孔処理)
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が好適に挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
(熱水による封孔処理)
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸せきさせる方法が好適に挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸せきさせる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
上記で例示した3つの封孔処理のうち、均一な封孔層を得ることができ現像性に非常に優れる点で、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理であるのが好ましい。これは、水蒸気または熱水による封孔処理においては、陽極酸化皮膜表面にベーマイト等の針状結晶が形成されやすく、それにより表面積が増大することで現像性が若干低下する傾向があるが、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理においては、そのような針状結晶が形成されることがないためである。
本発明においては、上記封孔処理による封孔の目安として封孔率を用いる。
ここで、封孔率とは、陽極酸化皮膜の表面積の減少割合を表すものであり、下記の式で定義される。また、上記封孔処理前後の陽極酸化皮膜の表面積は、簡易BET方式を採用した装置であるFLOWSORB(島津製作所(株)製)を使って測定した値を用いる。
封孔率(%)=〔(封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積−封孔処理後の陽極酸化皮膜の表面積)/封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積〕×100
上記封孔処理により、封孔率が15%以上となるのが好ましく、30%以上となるのがより好ましい。なお、この封効率、即ち、表面積の減少率は、処理条件により制御することができ、例えば、処理温度もしくは処理時間を長くすることで、封効率を上げることができる。
<親水化処理>
本発明においては、上述したようにしてアルミニウム板に陽極酸化処理、封孔処理および必要に応じて行われるその他の処理を施した後、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液による親水化処理(アルカリ金属ケイ酸塩処理)を施すのが好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができるが、本発明においては、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の濃度を、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上とし、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下とする。上記範囲であると、平版印刷版としたときの耐汚れ性が優れたものとなる。
アルカリ金属ケイ酸塩は、特に限定されず、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有していてもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有していてもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理は、陽極酸化処理、封孔処理および必要に応じて行われるその他の処理を施したアルミニウム板をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に接触させることにより行う。アルミニウム板をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、アルミニウム板を上記水溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を上記水溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、上記水溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理の諸条件は、特に限定されないが、液温は10〜80℃であるのが好ましく、15〜50℃であるのがより好ましく、また、処理時間は1〜100秒であるのが好ましく、5〜20秒であるのがより好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって付着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができる。平版印刷版用支持体の表面のSi原子付着量は、1〜10mg/m2であるのが好ましい。支持体の表面のSi原子付着量が上記範囲であれば、現像性および耐刷性の極めて高いレベルで両立させることができる。
また、このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
本発明において、平版印刷版用支持体の表面へのアルカリ金属ケイ酸塩の付着量は、蛍光X線分析装置(XRF:X−ray Fluorescence Spectrometer)を用いて、検量線法によりSi原子付着量(Simg/m2として測定された値を用いる。検量線を作成するための標準試料としては、既知量のSi原子を含有するケイ酸ナトリウム水溶液を、アルミニウム板の上の30mmφの面積内に均一に滴下した後、乾燥させたものが用いられる。蛍光X線分析装置の機種その他の条件は、特に限定されない。Siの蛍光X線分析の条件の一例を以下に示す。
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh、測定スペクトル:Si−Kα、管電圧:50kV、管電流:50mA、スリット:COARSE、分光結晶:RX4、検出器:F−PC、分析面積:30mmφ、ピーク位置(2θ):144.75deg.、バックグランド(2θ):140.70deg.および146.85deg.、積算時間:80秒/sample
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明に用いられる平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。上記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、または、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。0.5℃/秒未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mm程度であり、0.15mm〜0.4mmであるのが好ましく、0.2mm〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、上述した平版印刷版用支持体上に、高分子化合物を含有する中間層と、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する画像記録層とをこの順に有する。
<中間層>
本発明の平版印刷版原版に用いられる中間層は、高分子化合物を含有し、特定の条件、即ち、平版印刷版用支持体上に中間層を設けた基板を、30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬させた後の該中間層中の該高分子化合物の残存率が、15%以上となる条件を満たすものである。
中間層中の高分子化合物の残存率が上記範囲であると、アルカリ性の現像液に対する耐性が十分となり、耐刷性が良好となる。
本発明においては、「高分子化合物の残存率」は、蛍光X線分析装置を用いて、炭素原子量として測定された値を用いて下記式より計算されるものである。
具体的には、中間層を塗布しない基板、中間層を塗布した基板、および、中間層を塗布し30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬した基板をそれぞれ基板A、BおよびCとし、蛍光X線測定装置で求めた炭素原子量をそれぞれCa、Cb、Ccとしたときに、下記式より計算されるものである。
残存率(%)=(Cc−Ca)/(Cb−Ca)×100
なお、蛍光X線分析装置の機種その他の条件は、特に限定されない。以下に、蛍光X線分析の条件の一例を示す。
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh(50kV、50mA)、分析面積:30mmφ
平版印刷版用支持体に対する残存率が上記範囲となる高分子化合物は、その種類を特に限定されないが、後述する特定の高分子化合物が好適に例示される。
以下、中間層に用いられる高分子化合物について説明する。
本発明に用いられる高分子化合物は、平版印刷版用支持体を構成する金属とキレート形成可能な官能基を有しているのが好ましく、該官能基としてアセチルアセトナートを有しているのがより好ましい。
ここで、平版印刷版用支持体を構成する金属としては、主としてアルミニウムが挙げられるが、アルミニウム中に含まれる銅、鉄、マグネシウム、マンガン、亜鉛等の微量成分、上述した封孔処理に無機フッ素化合物(例えば、フッ化ジルコン酸ナトリウム等)を用いた場合には、さらにジルコニウム、ナトリウム等の金属も挙げられる。
具体的には、本発明に用いられる高分子化合物は、後述する単位(A)と後述する単位(C)とを含有する高分子化合物、後述する単位(B)と後述する単位(C)とを含有する高分子化合物、または、後述する単位(A)と後述する単位(B)と後述する単位(C)とを含有する高分子化合物であるのが好ましい。
ここで、「単位(A)」は、アルミナを主成分とする薄層クロマトグラフィーをメタノールで展開したときのRf値が0.5以下、好ましくは0.2以下の単量体(以下「単量体(A)」という。)から誘導される単位である。
「単位(B)」は、シリカを主成分とする薄層クロマトグラフィーをメタノールで展開したときのRf値が0.5以下、好ましくは0.2以下の単量体(以下「単量体(B)」という。)から誘導される単位である。
「単位(C)」は、「単位(A)」と同様、アルミナを主成分とする薄層クロマトグラフィーをメタノールで展開したときのRf値が0.5以下、好ましくは0.2以下の単量体(以下「単量体(C)」という。)から誘導される単位である。
本発明に用いられる高分子化合物は、好ましくは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン等のビニル系単量体の付加重合体、または、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリアミド等の重付加重合体もしくは重縮合重合体である。より好ましくは、上記ビニル系単量体の付加重合体である。
単量体(A)は、酸基を有する単量体等から適宜選択することができる。
酸基を有する単量体(A)について説明する。酸基としては、酸解離指数(pKa)が7以下のものが好ましく、−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−がより好ましく、−COOHが更に好ましい。特に好ましい酸基を有する単量体(A)は、下記式(1)または(2)で表される単量体である。
上記式中、Aは2価の連結基を表し、−COO−または−CONH−であるのが好ましい。Bは2価の芳香族基または置換芳香族基を表し、フェニレン基またはフェニレン基の水素原子をヒドロキシ基、ハロゲン原子もしくはアルキル基で置換して得られる置換フェニレン基であるのが好ましい。DおよびEは、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、アルキレン基またはCn2nO(式中、nは1〜12の整数を表す。以下同じ。)、Cn2nSもしくはCn2n+1Nで表される2価の連結基であるのが好ましい。Gは2価または3価の連結基を表し、Cn2n-1、Cn2n-1O、Cn2n-1Sで表される2価の連結基またはCn2nNで表される3価の連結基であるのが好ましい。
XおよびX′は、それぞれ独立に、pKaが7以下の酸基またはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を表し、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、硫酸モノエステル基またはリン酸モノエステル基であるのが好ましい。
1は、水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表し、水素原子またはアルキル基であるのが好ましい。
a、b、dおよびeは、それぞれ独立に、0または1を表し、aとbが同時に0でないのが好ましい。tは1〜3の整数を表す。
中でも、酸基を有する単量体(A)としては、上記式(1)で表され、Bがフェニレン基またはフェニレン基の水素原子をヒドロキシ基もしくは炭素数1〜3のアルキル基で置換して得られる置換フェニレン基であり、Dが炭素数1〜2のアルキレン基または酸素原子で連結された炭素数1〜2のアルキレン基であり、R1が水素原子またはメチル基であり、Xがカルボキシ基であり、aが0であり、bが1であり、dが1であり、tが0である単量体が好ましい。
酸基を有する単量体(A)の具体例を以下に示す。
アクリル酸(Rf:0.09)
メタクリル酸(Rf:0.09)
マレイン酸(Rf:0.00)
また、別のタイプの単量体(A)の具体例として、下記の単量体が挙げられる。
単量体(B)は、オニウム基を有する単量体、アルキレンオキシ基を有する単量体等から適宜選択することができる。
オニウム基を有する単量体(B)としては、下記式(3)、(4)または(5)で表わされる単量体が好ましい。
上記式中、Jは2価の連結基を表す。Kは芳香族基または置換芳香族基を表す。Mは2価の連結基を表す。Y1は周期律表の15族の原子を表し、Y2は周期律表の16族の原子を表す。Z-は対アニオンを表す。R2は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表す。R3、R4、R5およびR7は、それぞれ独立に、水素原子または置換基が結合していてもよいアルキル基、芳香族基もしくはアラルキル基を表し、R6は、アルキリジン基または置換アルキリジンを表すが、R3とR4、および、R6とR7は、それぞれ結合して環を形成していてもよい。j、kおよびmは、それぞれ独立に、0または1を表す。uは1〜3の整数を表す。
中でも、オニウム基を有する単量体(B)としては、上記式(3)〜(5)のいずれかで表され、Jが−COO−または−CONH−であり、Kがフェニレン基またはフェニレン基の水素原子をヒドロキシ基もしくは炭素数1〜3のアルキル基で置換して得られる置換フェニレン基であり、Mがアルキレン基またはCn2nO、Cn2nSまたはCn2n+1Nで表される2価の連結基であり、Y1が窒素原子またはリン原子であり、Y2がイオウ原子であり、Z-がハロゲンイオン、PF6 -、BF4-またはR8SO3 -であり、R2が水素原子またはアルキル基であり、R3、R4、R5およびR7が、それぞれ独立に、水素原子または置換基が結合していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基またはアラルキル基であり、R6が炭素数1〜10のアルキリジン基または置換アルキリジンであり(ただし、R3とR4、および、R6とR7は、それぞれ結合して環を形成していてもよい。)、j、kおよびmが、それぞれ独立に、0または1である(ただし、jとkが同時に0でない。)、単量体が好ましい。
特に、Kがフェニレン基またはフェニレン基の水素原子をヒドロキシ基もしくは炭素数1〜3のアルキル基で置換して得られる置換フェニレン基であり、Mが炭素数1〜2のアルキレン基または酸素原子で連結された炭素数1〜2のアルキレン基であり、Z-が塩素イオンまたはR8SO3 -であり、R2が水素原子またはメチル基であり、jが0であり、kが1である単量体が好ましい。
オニウム基を有する単量体(B)の具体例を以下に示す。
また、別のタイプの単量体(B)の具体例として、4−クラウンエーテル、6−クラウンエーテル等を含有する単量体が挙げられる。
単量体(C)は、金属とキレート形成可能な官能基を有する単量体から適宜選択することができ、アセチルアセトナートを有する単量体が特に好ましく、イミノジ酢酸基や多価リン酸等を有する高分子化合物であってもよい。
アセチルアセトナートを有する単量体(C)の具体例を以下に示す。
単位(A)と単位(C)とを含有する高分子化合物においては、単位(A)の含有量は、5モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、15モル%以上であるのが更に好ましく、20モル%以上であるのが更に好ましく、また、95モル%以下であるのが好ましい。また、単位(C)の含有量は、1モル%以上であるのが好ましく、5モル%以上であるのがより好ましく、また、85モル%以下であるのが好ましい。単位(A)を20モル%以上含有すると、アルカリ現像時の除去性がいっそう促進される。また、単位(C)を1モル%以上含有すると、平版印刷版用支持体を構成する金属(例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ナトリウム等)とキレート形成することにより密着性がいっそう向上する。
単位(B)と単位(C)とを含有する高分子化合物においては、単位(B)の含有量は、5モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、15モル%以上であるのが更に好ましく、20モル%以上であるのが更に好ましく、また、95モル%以下であるのが好ましい。また、単位(C)の含有量は、1モル%以上であるのが好ましく、5モル%以上であるのがより好ましく、また、85モル%以下であるのが好ましい。単位(B)を20モル%以上含有すると、アルカリ現像時の除去性がいっそう促進される。また、単位(C)を1モル%以上含有すると、平版印刷版用支持体を構成する金属(例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ナトリウム等)とキレート形成することにより密着性がいっそう向上する。
一方、単位(A)と単位(B)と単位(C)とを含有する高分子化合物においては、単位(A)の含有量は、5モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、15モル%以上であるのが更に好ましく、20モル%以上であるのが更に好ましく、また、95モル%以下であるのが好ましい。また、単位(B)の含有量は、1モル%以上であるのが好ましく、5モル%以上であるのがより好ましく、また、85モル%以下であるのが好ましい。さらに、単位(C)の含有量は、1モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、また、90モル%以下であるのが好ましい。単位(A)を20モル%以上含有すると、アルカリ現像時の除去性がいっそう促進される。また、単位(B)を1モル%以上含有すると、単位(A)との相乗効果により密着性がいっそう向上する。さらに、単位(C)を1モル%以上含有すると、平版印刷版用支持体を構成する金属(例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ナトリウム等)とキレート形成することにより密着性がいっそう向上する。
単位(A)、単位(B)および単位(C)は、いずれも1種であってもよく、2種以上組み合わせてもよい。
本発明に用いられる高分子化合物の代表的な例としては、実施例で用いた高分子化合物のほか、以下の高分子化合物が挙げられる。なお、高分子化合物の構造式中の組成比はモル百分率を表す。

本発明に用いられる高分子化合物は、一般には、ラジカル連鎖重合法を用いて製造することができる(“Textbook of Polymer Science”3rd ed,(1984)F.W.Billmeyer,A Wiley−Interscience Publication参照。)。
本発明に用いられる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)が500〜2,000,000であるのが好ましく、2,000〜600,000であるのがより好ましい。また、高分子化合物中に含まれる未反応モノマー量は、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
本発明に用いられる高分子化合物の合成例を、上記で挙げた共重合体(上記No.1)を例にとって示すが、他の高分子化合物も同様の方法で合成することができる。
まず、p−ビニル安息香酸(北興化学工業社製)8.30g(56mmol)、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.05g(12mmol)、エチレングリコールアセトアセタートメタクリラート(東京化成工業社製)2.62g(12mmol)および2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.921g(4mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)31.4g中に溶解させた。次いで、溶解後の溶液を、75℃のDMAc8.4gが入った1L容の三つ口フラスコの中に、2時間かけて滴下し、さらにそのまま5.5時間反応させた後、室温まで冷却した。
冷却後の反応溶液を、かくはん下、3Lのアセトン中に注いだ。これにより析出した固体をろ取し、乾燥させた。その収量は、12.42gであった。得られた固体についてGPCで分子量測定を行った結果、重量平均分子量は50,000であった。
本発明に用いられる中間層は、単位(A)、単位(B)および単位(C)の種類、組成比、分子量等の異なる2種以上の高分子化合物を含有していてもよい。
中間層は、上記高分子化合物を、上述した平版印刷版用支持体の上に種々の方法で塗布することにより設けることができる。
中間層を設ける方法としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤またはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記高分子化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持体上に塗布し乾燥させて設ける方法;メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤またはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記高分子化合物を溶解させた溶液に、平版印刷版用支持体を浸せきさせて高分子化合物を吸着させた後、水等によって洗浄し乾燥させて設ける方法が挙げられる。
前者の方法では、上記高分子化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等のいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05%〜5質量%であり、浸せき温度は20℃〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸せき時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質;塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機スルホン酸、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸等の種々の有機酸性物質;ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド等の有機酸クロライド等によりpHを調整し、pH0〜12、より好ましくはpH0〜5の範囲で使用することもできる。
本発明において、中間層の塗布量は、現像性と耐刷性を両立させることができる点で、10〜30mg/m2であるのが好ましい。
本発明において、単位(A)と単位(C)、単位(B)と単位(C)、または、単位(A)と単位(B)と単位(C)とを含有する高分子化合物が好適に用いられる理由は以下のように推測される。
中間層に含有する高分子化合物として必要な機能は、画像部においては基板に強く吸着し密着性を向上させ、非画像部においては、アルカリ性の現像液に溶解除去されることである。しかしながら、現像性を確保するためにある一定以上のアルカリ溶解性をもつ高分子化合物を中間層に用いると、現像時に未露光部であっても、現像液が該中間層に浸透することでその一部を溶解し、基板と画像記録層の密着性が低下してしまうことから、耐刷性低下の原因となっていた。
本発明においては、上述したように、陽極酸化処理後に封孔処理を行うことにより現像性が飛躍的に向上している。これにより、従来の高分子化合物よりもアルカリ溶解性が低く、基板と画像記録層の密着性の向上に寄与するものを組み合わせて中間層として用いることが可能となり、その結果、現像性を損なうことなく高耐刷化が可能となる。
また、中間層に含有する高分子化合物のアルカリ溶解性は、単に酸価のみでなく、基板への吸着性の強さによっても影響を受けるものである。
そこで、本発明においては、上述した単位(A)および/または単位(B)に、金属とキレート形成可能な単位(C)を導入することにより、基板への吸着性が非常に高くなり、画像部における中間層の現像液に対する耐性が強まるため、耐刷性向上が可能となったと考えられる。
<画像記録層>
本発明の平版印刷版原版に用いられる画像記録層は、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する画像記録層、いわゆるサーマルポジタイプの画像記録層である。
サーマルポジタイプの画像記録層は、アルカリ可溶性高分子化合物と赤外線吸収剤とを含有する。
アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に、(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましい。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。更に詳しくは特開2001−305722号公報の[0023]〜[0042]に記載されている高分子が好ましく用いられる。
赤外線吸収剤は、露光エネルギーを熱に変換して画像記録層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。このような赤外線吸収剤としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、例えば、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料が挙げられる。
サーマルポジタイプの画像記録層に用いられる組成物には、いわゆるコンベンショナルポジタイプで用いることができる感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。詳しくは特開2001−305722号公報の[0053]〜[0059]に記載されている化合物が好ましい。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層型の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、赤外線吸収剤を含有する。赤外線吸収剤としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<バックコート層>
このようにして、平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けて得られた平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、平版印刷版を重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなるバックコート層を設けることができる。
[平版印刷版]
本発明の平版印刷版原版は、熱により画像形成され、平版印刷版とされる。具体的には、赤外線レーザから照射された赤外線を画像記録層の赤外線吸収剤が熱に変換し、これにより熱反応が起きて、画像記録層のアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大し、画像が形成される。
一般には、像露光を行う。像露光に用いられる活性光線の光源としては、波長830nmの赤外線を放射する半導体レーザが用いられる。なお、本発明の平版印刷版原版の画像記録層に画像を記録させることができるものであれば、他の活性光線の光源を用いてもよい。
上記露光の後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。平版印刷版原版に用いられる好ましい現像液は、アルカリ現像液であれば特に限定されないが、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液が好ましい。また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像することもできる。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、該公報に記載されている内容を用いることができる。また、平版印刷版原版をアルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像することもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版原版の作成
(実施例1〜16および比較例1〜4)
(1)平版印刷版用支持体の作成
<アルミニウム板>
Si:0.07質量%、Fe:0.27質量%、Cu:0.025質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Cr:0.001質量%、Zn:0.003質
量%、Ti:0.020質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理およびアルカリ金属ケイ酸塩処理に順次供し、平版印刷版用支持体を得た。
<粗面化処理>
粗面化処理としては、第1表に示されるように、下記粗面化処理A1〜A5のいずれかを行った。
(粗面化処理A1)
粗面化処理A1は、アルミニウム板に、以下の(a)〜(i)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、研磨剤(パミス)と水との懸濁液(比重1.13)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。
研磨剤としては、軽石を粉砕し、粒子の平均粒径が30μmとなるように分級して得たパミストンを用いた。
ナイロンブラシとしては、3号ブラシ(毛径0.30mm)を用い、ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷を、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して管理し、機械的粗面化処理後のアルミニウム板の算術平均粗さ(Ra)が0.45〜0.55μmとなるように押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
その後、スプレーによる水洗いを行った。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸水溶液で、スプレーによるデスマット処理を2秒間行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、後述する(d)硝酸水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理工程のオーバーフロー廃液を用いた(液組成は後述する(d)の場合と同様である。)。
(d)硝酸水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/L水溶液に硝酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオンを4.5g/Lとした電解液(液温35℃)を用いた。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比(ta/T)が0.5であった。また、カーボン電極を対極として用い、補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを2槽使用した。
この電気化学的粗面化処理においては、電流密度(電流のピーク値)を50A/dm2とし、アルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和とカソード反応にあずかる電気量の総和との比を0.95とした。また、電気量をアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和で195C/dm2とし、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度27質量%、アルミニウムイオン濃度5.5質量%、温度65℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を3.5g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度35℃の硝酸300g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)で、スプレーによるデスマット処理を10秒間行い、その後、スプレーで水洗した。
(g)塩酸水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5g/L水溶液に塩化アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオンを4.5g/Lとした電解液(液温35℃)を用いた。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比(ta/T)が0.5であった。また、カーボン電極を対極として用い、補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを1槽使用した。
この電気化学的粗面化処理においては、電流密度(電流のピーク値)を50A/dm2とし、アルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和とカソード反応にあずかる電気量の総和との比を0.95とした。また、電気量をアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和で60C/dm2とし、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度48℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度65℃の硝酸300g/L水溶液(アルミニウムイオンを1g/L含む。)で、スプレーによるデスマット処理を5秒間行い、その後、スプレーで水洗した。
(粗面化処理A2)
粗面化処理A2は、上記(e)において、水溶液の温度を40℃とし、アルミニウム板の溶解量を0.7g/m2とし、上記(g)〜(i)を行わなかった以外は、粗面化処理A1と同様に行った。
(粗面化処理A3)
粗面化処理A3は、上記(a)を行わなかった以外は、粗面化処理A1と同様に行った。
(粗面化処理A4)
粗面化処理A4は、上記(a)および(g)〜(i)を行わず、上記(d)において、電気量をアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和で270C/dm2とし、上記(e)において、水溶液の温度を30℃とし、アルミニウム板の溶解量を0.3g/m2とした以外は、粗面化処理A1と同様に行った。
(粗面化処理A5)
粗面化処理A5は、上記(a)〜(d)を行わず、上記(g)において、電気量をアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和で500C/dm2とし、上記(h)において、水溶液の温度を55℃とし、アルミニウム板の溶解量を0.8g/m2とした以外は、粗面化処理A1と同様に行った。
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理は、図4に示す構造の陽極酸化装置を用いて行った。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L、温度33℃であった。電流密度は電流のピーク値で5A/dm2、処理時間は50秒間であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
<封孔処理>
封孔処理としては、第1表に示されるように、以下に示す水蒸気による封孔処理、熱水による封孔処理または無機フッ素化合物等を含有する水溶液による封孔処理を行った。なお、第1表中、「−」は、封孔処理を行わなかったことを示す。
(水蒸気による封孔処理)
水蒸気による封孔処理は、上述した陽極酸化処理により表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、圧力が大気圧から(大気圧+30mmAq)までの範囲(1.013×105〜1.016×105Pa)である第1表に示される温度の水蒸気に、第1表に示される時間、接触させることにより行った。
(熱水による封孔処理)
熱水による封孔処理は、上述した陽極酸化処理により表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、第1表に示される温度の純水に、第1表に示される時間、浸せきさせることにより行った。
(無機フッ素化合物等を含有する水溶液による封孔処理)
無機フッ素化合物等を含有する水溶液による封孔処理は、上述した陽極酸化処理により表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、第1表に示される化合物を第1表に示される濃度(質量%)で含有する、第1表に示される温度の水溶液に、第1表に示される時間、浸せきさせることにより行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
<アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)>
シリケート処理は、封孔処理後のアルミニウム板を、温度20℃、3号ケイ酸ソーダ1.0質量%水溶液の処理槽の中に10秒間浸せきさせることにより行った。
(2)中間層の形成
上記のようにして得られた平版印刷版用支持体上に、下記組成の中間層用塗布液を乾燥前の塗布量が7.5g/m2となるようにバー塗布し、100℃で8秒間乾燥させて、中間層を形成させた。なお、第1表中、「−」は、中間層を形成しなかったことを示す。
<中間層用塗布液組成>
・下記式で表される高分子化合物(組成(a:b:c(モル比))、重量平均分子量は第1表に示したとおり。) 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
(3)画像記録層の形成
その後、重層型のサーマルポジタイプの画像記録層を以下のようにして形成させた。
下記組成の第一層用塗布液を調製し、中間層を形成させた平版印刷版用支持体に、この第一層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.8g/m2になるよう塗布し、140℃で60秒間乾燥させて第一層(上述したA層)を形成させた。ついで、下記組成の第二層用塗布液を調製し、第一層を形成させた平版印刷版用支持体に、この第二層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるよう塗布し、140℃で50秒間乾燥させて第二層(上述したB層)を形成させ、重層型のサーマルポジタイプの画像記録層を有する平版印刷版原版を得た。
<第一層用塗布液組成>
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000、酸価2.65) 2.133g
・下記式で表されるシアニン染料A 0.109g
・4,4′−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・テトラヒドロフタル酸無水物 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート 0.030g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホンに変えたもの 0.100g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製、30質量%溶液) 0.023g(溶液として)
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.2g
<第二層用塗布液組成>
・m,p−クレゾール−ノボラック樹脂(m/p比=6/4、重量平均分子量4,500、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.3479g
・上記式で表されるシアニン染料A 0.0192g
・エチルメタクリレート/モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸エステル共重合体(モル比67/33)の30質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液 0.1403g(溶液として)
・下記式で表される化合物Y 0.0043g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製、30質量%溶液) 0.015g(溶液として)
・含フッ素化合物(メガファックF−781、大日本インキ化学工業社製) 0.0033g
・メチルエチルケトン 10.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.78g
2.平版印刷版原版の高分子化合物の残存率の測定
「高分子化合物の残存率」は、上述したように、蛍光X線分析装置を用いて、炭素原子量として測定された値を用いて下記式より計算される。
中間層を塗布しない基板、中間層を塗布した基板、および、中間層を塗布し30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬した基板をそれぞれ基板A、BおよびCとし、蛍光X線測定装置で求めた炭素原子量をそれぞれCa、Cb、Ccとしたときに、下記式より計算されるものである。
残存率(%)=(Cc−Ca)/(Cb−Ca)×100
本実施例における蛍光X線分析装置の機種その他の条件を以下に示す。
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh(50kV、50mA)、分析面積:30mmφ
3.封孔率の測定
封孔率は、上述したように、陽極酸化皮膜の表面積の減少割合を表すものであり、下記の式で定義される。封孔処理前後の陽極酸化皮膜の表面積は、簡易BET方式を採用した装置であるFLOWSORB(島津製作所(株)製)を使って測定した値を用いた。
封孔率(%)=〔(封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積−封孔処理後の陽極酸化皮膜の表面積)/封孔処理前の陽極酸化皮膜の表面積〕×100
4.露光
上記で得られた各平版印刷版原版には、下記の方法で画像露光を行った。
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nm、ビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザを装備したCREO社製TrendSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2で像様露光した。なお、後述する感度の評価のためには、版面エネルギー量を50〜120mJ/cm2まで5mJ/cm2おきに変えて露光を行ったサンプルを準備した。
5.現像処理
上述したようにして露光した後、各平版印刷版原版に、下記の方法で現像処理を行った。
現像処理は、下記組成の現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
<現像液組成>
・SiO2濃度1.4質量%のケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2O=1.2(モル比)) 100質量部
・トリエタノールアミン・エチレンオキサイド付加物 0.03質量部
6.平版印刷版原版の評価
上記で得られた平版印刷版原版の感度および耐刷性を下記の方法で評価した。
(1)感度
画像記録層が完全に除去されたと目視で観察されたときの最も低い版面エネルギー量により感度を評価した。版面エネルギー量が低いほど、感度、即ち、現像性に優れる。
結果を第1表に示す。
(2)耐刷性
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。耐刷性に優れる場合は印刷枚数が多くなり、耐刷性に劣る場合は印刷枚数が少なくなる。
結果を第1表に示す。
第1表から明らかなように、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜16)は、高分子化合物の残存率が高く、感度および耐刷性に優れることが分かった。
これに対し、陽極酸化処理後に封孔処理を施していない場合(比較例1および2)は、耐刷性もしくは感度に劣り、中間層を設けない場合(比較例3)や単位(C)を有さない高分子化合物を用いた場合(比較例4)は、耐刷性に劣ることが分かった。
本発明の平版印刷版原版の作成における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 本発明の平版印刷版原版の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版原版の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版原版の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
61 アルミニウム板
62 陽極
63 陰極
64 電解液
65 電解槽
66 供液ノズル
67 排液管
68 供液管
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (5)

  1. アルミニウム板に少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体上に、アルカリ可溶性の高分子化合物を含有する中間層と、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する画像記録層とをこの順に設けてなる平版印刷版原版であって、
    前記支持体上に前記中間層を設けた基板を30℃・pH12.5の水酸化カリウム水溶液に12秒間浸漬させた後の該中間層中の高分子化合物の残存率が、15%以上である、平版印刷版原版。
  2. 前記高分子化合物が、前記支持体を構成する金属とキレート形成可能な官能基を有する請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記キレート形成可能な官能基が、アセチルアセトナートである請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記封孔処理が、無機フッ素化合物を溶解した水溶液中で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版。
  5. 前記封孔処理による封孔率が、15%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版原版。
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