JP2005238792A - 光ディスク成形用スタンパー - Google Patents
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Abstract
【課題】 金型とスタンパーの裏面との摩擦による摩耗の弊害をなくすと共に、仮にそのような弊害が生じたときであっても成形を続けることができるようする。
【解決手段】 樹脂を射出成形するためのキャビティ空間3を画定する固定型1及び可動型2と、キャビティ空間3に臨んで固定型1に取り付けられ光ディスクを表面36a側により成形するためのスタンパー36とが備えられる。固定型1にスタンパー36の裏面36bを受けるスタンパー支持面17aが形成されると共に、スタンパー36の裏面36bに耐摩耗性のクロム窒化物を含む被膜36cが被覆される。被膜剥離等を起こすことがなく、長期間安定した品質のディスクを製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】 樹脂を射出成形するためのキャビティ空間3を画定する固定型1及び可動型2と、キャビティ空間3に臨んで固定型1に取り付けられ光ディスクを表面36a側により成形するためのスタンパー36とが備えられる。固定型1にスタンパー36の裏面36bを受けるスタンパー支持面17aが形成されると共に、スタンパー36の裏面36bに耐摩耗性のクロム窒化物を含む被膜36cが被覆される。被膜剥離等を起こすことがなく、長期間安定した品質のディスクを製造することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えばDVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクを製造するための光ディスク成形用スタンパーに関するものである。
従来、光ディスクの成形にあっては、ディスク状のスタンパーをキャビティ空間に取り付けた金型のキャビティ空間に溶融樹脂を射出充填することで、ディスク基板の成形と同時にスタンパーの表面形状をディスク基板に転写することによって行われている。このような成形工程では、成形工程が繰り返し行われると、スタンパーが金型の支持面に強く圧着しながら半径方向に延びる伸縮を繰り返すことになり、この過程で金型のスタンパー支持面は、スタンパーの裏面との摩擦により摩耗して摩耗粉が発生する虞がある。
このような問題を問題を解決するものとして成形母型となるスタンパーの金型への取付面にダイヤモンド状薄膜を被覆した保護膜付スタンパーが公知である。このような保護膜付スタンパーによればキャビテイ側の表面をTiN等の耐摩耗性膜により被覆したものより、充分な耐摩耗性と低摩擦性を得らるというものである。
特許第2826827号公報
前記従来技術のダイヤモンド状薄膜を被覆した保護膜付スタンパーにおいては、ダイヤモンド状薄膜の被膜が硬いうえに摩擦係数が0.1程度と小さいことから、長時間継続して使用できるという利点があるが、スタンパーへの被膜の密着性が低いうえに密着特性にばらつきが比較的多いため、使用途中で被膜が剥離する虞がある。
解決しようとする問題点は、光ディスクを成形するための光ディスク成形スタンパーにおいて、長期間安定して使用することができるようにする点である。
請求項1の発明は、成形母体となるスタンパーの金型への取付け面にクロム窒化物を含む被膜を形成したことを特徴とする光ディスク成形用スタンパーである。
請求項2の発明は、前記クロム窒化物はCrNまたはCr2Nを含み、このクロム窒化物が少なくとも前記被膜の最表面に形成されることを特徴とする請求項1記載の光ディスク成形用スタンパーである。
請求項3の発明は、前記被膜の表面をX線回折したときに同定されるクロム窒化物がCrNまたはCr2Nを含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク成形用スタンパーである。
請求項4の発明は、前記被膜はアークイオンプレーティング法によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ディスク成形用スタンパーである。
請求項1の発明によれば、成形時にスタンパー支持面とスタンパーの裏面との間に摩擦が生じて摩耗が発生しようとしても耐摩耗性の被膜によりこれを阻止することができると共に、金型への取付け面に形成する被膜をクロム窒化物を含む被膜としたことにより、スタンハ゜ーに対する密着性および耐食性に優れ長期間安定して使用することができる。
請求項2の発明によれば、CrN、Cr2Nを含んだクロム窒化物を含む被膜を形成したスタンパーにより、被膜を厚く形成しても反りなどの問題を生じることがなく、また、被膜が比較的軟らかいため、表面に傷がついても再研磨することによって容易に再使用できる。
請求項3の発明によれば、被膜の表面をX線回折したときに同定されるクロム窒化物がCrNまたはCr2Nとしたことでも、被膜を厚く形成しても反りなどの問題を生じることがなく、また、被膜が比較的軟らかいため、表面に傷がついても再研磨することによって容易に再使用できる。
請求項4の発明によれば、アークスポットに集中する極めて高いエネルギを利用しているため、簡単にコーティングすることができる光ディスク成形用スタンパーを提供することができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
本発明の光ディスクの成形に用いる光ディスク成形用金型の一実施例について、図を参照しながら説明する。まず光ディスクの成形用金型の構成を説明する。1は第1の金型としての固定型、2は第2の金型としての可動型で、これら固定型1および可動型2は、図1、 図2および 図4における型開閉方向(図示AB方向)に移動して互いに開閉し、型閉時に光ディスクを形成する製品キャビティ(キャビティ空間)3を相互間に形成するものである。
前記固定型1は、固定側型板6と、この固定側型板6における可動型2と反対側の面に固定された固定側取り付け板7とを備えている。この固定側取り付け板7は、図示していない射出成形機の固定側プラテンに取り付けられるものである。なお、 図3に図示の7aは、固定側プラテンヘの取り付け用のボルトを通すために固定側取り付け板7に形成された通孔である。そして、固定側取り付け板7の中央部には、射出成形機のノズルが接続されるスプルーブッシュ8がボルト9により固定されている。このスプルーブッシュ8は、内部が材料通路であるスプルー10になっており、固定側取り付け板7及び固定側型板6を貫通し、その先端が固定側型板6の可動型2側へ突出している。さらに、前記スプルーブッシュ8における可動型2と反対側の面には、円環状のローケートリング11が配置され、ボルト12によりスプルーブッシュ8に固定されている。
前記固定側型板6は、前記固定側取り付け板7にボルト16により固定されたキャビティ形成部材としてのほぼ円板状のキャビティブロック17と、固定側取り付け板7にボルト18により固定された位置決め部材としてのほぼ円環状の固定側位置決めリング19とからなっている。この固定側位置決めリング19は、前記固定側取り付け板7における可動型2側の面の周縁部に形成された段部20および前記キャビティブロック17の外周側に嵌合しており、金型製作の段階でキャビティブロック17に対して芯合わせされている。そして、固定側位置決めリング19は、可動型2側の部分の内周面に、この可動型2側へ向かって径が大きくなるテーパー面21を有している。
また、 図3に示すように、前記固定側取り付け板7におけるほぼ一対角線上に位置する2つの角部には円柱形状のガイドピン22がそれぞれ固定されている。これらガイドピン22は、図2に示すように、その一端側に形成された鍔部23が固定側取り付け板7に突き当てられるとともに、鍔部23よりも一端側が固定側取り付け板7に形成された孔部24内に嵌合され、固定側取り付け板7の他面側に設けられた補助部材25およびこの補助部材25を貫通してガイドピン22の端面に螺合されたボルト26により固定されている。そして、ガイドピン22は、前記型開閉方向を軸方向として可動型2側へ突出している。さらに、ガイドピン22の先端面にはフランジ状のストッパー27が固定されている。
さらに、 図1に示す前記キャビティブロック17における可動型2側の外周部には段差部31が形成されているが、この段差部31には円環状の外周スタンパー押え32が嵌合されてボルト33により固定されている。一方、前記キャビティブロック17の中央部に形成された孔部としての貫通孔34内にはほぼ円筒状の筒状部材としての内周スタンパー押え35が嵌合されて固定されている。前記キャビティブロック17のスタンパー支持面17aには、図4に示すように、光ディスクに凹凸を形成するためのスタンパー36が着脱可能に装着されるようになっており、前記外周スタンパー押え32がスタンパー36の外周部を固定し、内周スタンパー押え35がスタンパー36の内周部を固定するようになっている。つまり、 図4に示すように、内周スタンパー押え35の可動型2側面の先端外周部には、スタンパー36の内周部を押えるための爪部37が形成されている。また、前記スプルーブッシュ8は、筒状の内周スタンパー押え35内に嵌合している。そして、スプルーブッシュ8における可動型2側の先端面にはスプルー10と連通された凹部38が形成されている。
成形母体となるスタンパー36は、Ni等の円盤状金属板からなり、DVD用スタンパーの場合には、DVDの情報記録領域を規定するグルーブ部やランド部のようなディスク円周方向に沿って形成される円弧状の凸部やこれら凸部の間に形成される円弧状の溝を形成するための型を表面36aに有するものとされる。また、CD用スタンパーの場合には、情報記録用のピットをディスク円周方向に沿って形成するための型を有するものとされる。さらに、スタンパー36の金型(スタンパー支持面17a)への取付け面となる裏面36bは鏡面状となるように平滑に形成されている。
本実施例の金型においては、前記爪部37が設けられていることにより、スタンパー36をより確実にスタンパー支持面17aに固定できるようになっている。これにより、成形時にスタンパー36がスタンパー支持面17aから浮き上がるのを防止することができ、スタンパー36やスタンパー支持面17aの損耗を防止することができる。
また、 図1に示すように、前記キャビティブロック17の製品キャビティ3側の面の周縁部には、ほぼ環状に溝が刻設されており、その溝に排気通路4が接続されている。排気通路4は、 図1には1つのみ示したが、前記の溝に沿って8〜12箇所程度に設けられている。そして、排気通路4は、図示しない排気手段に接続されており、この排気手段により排気通路4内を排気することでスタンパー36を固定するようになっている。すなわち、この排気通路4は、スタンパー36の外周側を吸着して固定する真空チャック機構を構成するものである。
前記可動型2は、可動側型板41と、この可動側型板41における固定型1と反対側の面に固定された可動側受け板42と、この可動側受け板42における固定型1と反対側の面にボルト43により固定された可動側取り付け板44とを備えている。この可動側取り付け板44は、射出成形機の可動側プラテンに取り付けられるものである。前記可動側型板41は、前記可動側受け板42にボルト45により固定されたキャビティ形成部材としてのほぼ円板状のコアブロック46と、可動側受け板42にボルト47により固定された位置決め部材としてのほぼ円環状の可動側位置決めリング48とからなっている。この可動側位置決めリング48は、前記可動側受け板42における固定型1と対向する面の外周部に形成された段部49および前記コアブロック46の外周側に嵌合しており、金型製作の段階でコアブロック46に対して芯合わせされている。そして、可動側位置決めリング48は、型閉時に前記固定側位置決めリング19のテーパー面21が当接してテーパー嵌合するテーパー面50を有している。さらに、このテーパー面50の外周側に位置して、可動側位置決めリング48における固定側位置決めリング19への対向面には、この固定側位置決めリング19が当接するスペーサ51がボルト52により固定されている。すなわち、固定側位置決めリング19と可動側位置決めリング48とはインロー嵌合する。
また、 図2に示すように、前記可動側受け板42および可動側取り付け板44におけるほぼ一対角線上に位置する2つの角部の、前記固定側受け板7の貫通孔(孔部)24と対向する位置に、貫通孔56が形成されている。そして、可動側受け板42の貫通孔56には、前記固定型1側のガイドピン22がそれぞれ前記型開閉方向へ摺動自在に嵌合するガイドピン受け58が組み込まれている。これらガイドピン受け58は、前記貫通孔56内に嵌合されて固定された円筒状のガイドブッシュ59と、このガイドブッシュ59の内周側に摺動自在に組み込まれたスライドボールベアリングあるいはスライドローラーベアリングなどよりなるリテーナ60とからなっており、このリテーナ60の内周側に前記ガイドピン22が常時嵌合している。
なお、このガイドピン22のストッパー27は、リテーナ60を抜け止めするものである。また、可動側取り付け板44に形成された貫通孔57には、ガイドピン22の先端部が挿入されるようになっている。
また、前記コアブロック46の中央部における固定型1側の面に形成された凹部76内には、ほぼ円環状の工ア吹き出し入子77が嵌合され、凹部76の背面側から挿入されたボルト78により固定されている。この工ア吹き出し入子77と凹部76の内周面との間の隙間には、コアブロック46や可動側受け板42内に形成された空気通路79が連通している。
また、前記工ア吹き出し入子77内にはほぼ円筒状の突き出しスリーブ81が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に嵌合されている。この突き出しスリーブ81は、前記コアブロック46を貫通し一端側が可動側受け板42内に位置しているが、この可動側受け板42との間にはスライドベアリング82が介在させてある。さらに、突き出しスリーブ81は、スプリング83により固定型1と反対側へ付勢されている。なお、84は、突き出しスリーブ81の摺動範囲を規制するために可動側受け板42内に固定された規制板である。
また、前記突き出しスリーブ81内にはほぼ円筒状のゲートカット部材としてのゲートカットスリーブ86が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に嵌合されている。このゲートカットスリーブ86は、突き出しスリーブ81および前記規制板84を貫通しているが、ゲートカットスリーブ86と突き出しスリーブ81との間にはスライドベアリング87が介在させてある。そして、ゲートカットスリーブ86の一端部に形成されたフランジ部88が前記規制板84よりも可動側取り付け板44側に位置している。さらに、ゲートカットスリープ86は、スプリング89により固定型1と反対側へ付勢されている。
さらに、前記可動側取り付け板44には、突き出し板91が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に支持されている。この突き出し板91は、スプリング92により固定型1と反対側へ付勢されている。そして、突き出し板91に固定された突き出しピン93が前記ゲートカットスリーブ86内に摺動自在に嵌合されている。また、突き出し板91に固定された連動ピン94が前記ゲートカットスリーブ86のフランジ部88および規制板84を貫通して前記突き出しスリーブ81に突き当たるようになっている。さらに、前記ゲートカットスリーブ86のフランジ部88に突設された受け部95が前記突き出し板91を摺動自在に貫通している。
そして、 図4に示すように、前記固定型1側のスプルーブッシュ8の先端面外周部と可動型2側のゲートカットスリーブ86の先端面外周部との間に、固定型1側のスプルー10を製品キャビティ3に連通させるゲート96が形成されるようになっている。また、ゲートカットスリーブ86がスプルーブッシュ8の凹部38に嵌合することにより、ゲート96においてスプルー10内の成形材料である樹脂と製品キャビティ3内の樹脂すなわち光ディスクとが切断され、この光ディスクの中心部の開口孔が形成されるようになっている。したがって、固定型1においては、キャビティブロック17に加えて内周スタンパー押え35およびスプルーブッシュ8の先端面外周部によっても光ディスクの一部が形成される。また、可動型2においては、コアブロック46に加えて工ア吹き出し入子77および突き出しスリーブ81によっても光ディスクの一部が形成される。
さらに、本実施例の金型においては、 図4および図6に示すスタンパー36の裏面36bにクロム窒化物を含む被膜36cが形成されている。すなわち、この被膜36cは、キャビティブロック17のスタンパー支持面17aに対向する面に形成されており、この被膜36cに用いられるクロム窒化物はCrNまたはCr2Nを含み、このクロム窒化物CrNまたはCr2Nが少なくとも被膜36cの最表面に形成されている。また、被膜36cの表面をX線回折したときに同定されるクロム窒化物がCrNまたはCr2Nを含む。具体的には、CrN、Cr+Cr2N、Cr+Cr2N+CrN、Cr2N+CrN、のいずれかからなる薄膜材料を被覆することで、被膜36cを形成する。尚、CrNは硬度Hv1800〜2200、粗さ(Ra・μm) 0.10〜0.20、酸化開始温度550℃、最大可能膜厚ほぼ30μmである。
このような被膜36cの形成は、アークイオンプレーティング(AIP)法によって実現される。アークイオンプレーティング(AIP)法は、真空アーク放電を利用してターゲットとなる被膜材料(クロム窒化物)を蒸気化、イオン化し、被コーティング物(スタンパー)の表面に密着力に優れた硬質被膜を形成するものであり、 図7に示すような成膜装置を用いて実行される。成膜装置は真空チャンバ101を備え、真空チャンバ101内には、被膜材料(クロム窒化物)である金属ターゲット(蒸発源)102が、アーク電源103の陰極側に接続されてカソードとして適宜の位置に配置され、アーク電源103の陽極側に接続されたアノードもカソードの近傍適宜位置に配置される。また、真空チャンバ101内に、被コーティング物(スタンパー)104を保持する回転テーブル105が配置されている。そして被コーティング物104に負のバイアス電圧を印加するバイアス電源106に接続されている。さらに、真空チャンバ101には、反応ガスの導入口57および排出口58が接続され、それぞれ図示しないガス供給源および排気ポンプが接続されている。したがって、アークイオンプレーティング法によれば、真空中で、金属ターゲット(蒸発源)102を陰極としてアーク放電を起こすと、アークはターゲット表面上にアークスポットを形成し、ターゲット表面上をランダムに走り回る。アークスポットに集中するアーク電流(例えば70〜200A)のエネルギにより、金属ターゲット(蒸発源)102は瞬時に蒸発すると同時に金属イオンとなり、真空中に飛び出す。一方、バイアス電圧を被コーティング物104に印加することにより、この金属イオンは加速され、反応ガス粒子とともに被コーティング物104の表面に密着し、緻密な膜を生成するというものである。
以上のように、アークイオンプレーティング法によれば、アークスポットに集中する極めて高いエネルギを利用しているため、クロム窒化物を簡単にコーティングすることができる。さらに、蒸発源の蒸発はアークスポットの近傍でのみ起こり、他の部分は冷却状態であるため、蒸発源全体としてはつねに固体のままに保たれると共に、被コーティング物104に応じてカソードの取付位置・姿勢を自由に選ぶことができる。
次に、前記構成の金型を用いた光ディスクの成形方法について説明する。固定型1と可動型2とを型開した状態でも型閉した状態でも、 図2及び図3に示す固定型1の両ガイドピン22は可動型2のガイドピン受け58に常時嵌合したままである。これにより、固定型1と可動型2とが芯合わせされる。すなわち、固定型1のキャビティブロック17の中心軸と可動型2のコアブロック46の中心軸とが同一直線上に位置する。
そして、光ディスクの成形時には、まず固定型1と可動型2とを型閉して、これら固定型1および可動型2間に製品キャビティ3を形成する。なお、このように型閉した状態で、可動型2の突き当てリング67が固定型1のスタンパー36に突き当たり、また、固定型1および可動型2の位置決めリング19,48が相互にインロー嵌合し、それらのテーパー面21,50が相互にテーパー嵌合する。そして、射出成形機のノズルからスプルー10へ成形材料である溶融した熱可塑性樹脂を射出する。この樹脂は、スプルー10からゲート96を通って製品キャビティ3内に流入する(充填工程)。なお、当初は固定型1および可動型2の型締力は比較的弱くなっており、製品キャビティ3内に充填された樹脂の圧力により固定型1および可動型2が若干、例えば0.1〜0.3mm程度開き、位置決めリング19,48のテーパー面21,50も若干離れる。
このようにして製品キャビティ3内に樹脂が充填された後、射出成形機側に設けられた図示していない押圧ロッドによってゲートカットスリーブ86の受け部95が固定型1の方へ押されることにより、ゲートカットスリーブ86が固定型1側へ移動し、この固定型1のスプルーブッシュ8の凹部38に嵌合する。これにより、ゲート96においてスプルー10と製品キャビティ3とが遮断されるとともに、この光ディスクの中心部の開口孔が形成される(ゲートカット工程)。このような成形工程では、高温状態の溶融樹脂が製品キャビティ3に射出充填された瞬間、スタンパー36はその裏面36bを支持する金型のスタンパプレート支持面17aに強く圧着しながら半径方向に延びようとする。そのため、成形工程が繰り返し行われると、スタンパー36がキャビティブロック17のスタンパー支持面17aに強く圧着しながら半径方向に延びる伸縮を繰り返すことになり、この過程でスタンパー支持面17aは、スタンパー36の裏面36bとの摩擦により摩耗する虞があるが、裏面36bにはクロム窒化物を含む被膜36cが形成されており、この被膜36cにより耐摩耗性を発揮して前記摩耗を低減することができる。
また、固定型1および可動型2の型締めが強められることにより、コアブロック46を含めて可動型2のほぼ全体が固定型1側へ移動する。これにより、製品キャビティ3内の樹脂が圧縮される(圧縮工程)。この圧縮工程が終了した時点で、固定型1および可動型2の位置決めリング19,48のテーパー面21,50が再び相互にテーパー嵌合する。これにより、圧縮工程の終了時点以降、固定型1と可動型2とが確実に芯合わせされる。
さらに、この製品キャビティ3内の樹脂すなわち光ディスクが冷却して固化した後、固定型1と可動型2とが型開される。この型開に伴い、成形された光ディスクおよびスプルー10内で固化した樹脂はまず固定型1から離れる。ついで、射出成形機側に設けられた図示していない押圧ロッドによって突き出し板91が固定型1の方へ押されることにより、突き出し板91と連動して突き出しピン93が固定型1側へ移動し、スプルー10内で固化した樹脂を突き出して可動型2から離型させる。また、突き出し板91に固定された連動ピン94によって押されることにより突き出しスリーブ81が固定型1側へ移動し、光ディスクの内周部を突き出して可動型2から離型させる。なお、この離型時、空気通路79から供給される空気がエア吹き出し入子77とコアブロック46との間の隙間から吹き出すことにより、光ディスクと可動型2との間の真空破壊が行われる。そして、離型した光ディスクは、図示していない取り出しロボットにより取り出される。その際、取り出しロボットは、固定型1および可動型2間において、ガイドピン22およびガイドピン受け58が設けられていない角部を介して出入りする。尚、このようにして成形されるのは、最終的な製品としての光ディスクではなくその基板であるが、この基板には、その後、保護層、記録層、反射層およびオーバーコート層などが適宜形成されて、DVDやCD等の光ディスクが完成する。
以上のように前記実施例においては、成形時には加熱冷却がショット毎に繰り返されるため、スタンパー36は膨張収縮を繰り返して、スタンパー支持面17aとの間に摩擦が生ずるが、これに伴う摩耗を被膜36cにより阻止することができる。さらに被膜36cはスタンパー36の裏面36bに設けることにより、仮に被膜36cが損傷したとしても、固定型1および可動型2はそのまま使用することができるので、スタンパー36の修理中であっても他のスタンパーと交換して引続き成形を行うことができる。
さらに、クロム窒化物(CrN、Cr2N)を含む被膜36cを形成したスタンパー36は、被膜を厚く形成しても反りなどの問題を生じることがなく、また、被膜36cが比較的軟らかいため、表面に傷がついても再研磨することによって容易に再使用できる。したがって、DLCをスタンパーのように、被膜剥離したスタンパーを修理するために、被膜剥離→基材の肉盛り→研磨→再コートという修理作業が不要となるので、修理費用を含めたスタンパーの費用を低減することができる。また被膜36cは、DLCのように被膜剥離を起こすことがなく、長期間安定した品質のディスクを製造することができる。また、耐食性に優れているため、成形過程で樹脂などから腐食性のガスが発生した場合でも、孔食などの問題を生じることがない。
しかも、被膜36cをアークスポットに集中する極めて高いエネルギを利用するアークイオンプレーティング法により形成しているため、簡単にコーティングすることができる。
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、クロム窒化物は、クロムと窒素からなるものだけに限定されるものではなく、目的によってはその固溶限界内において、クロムの一部をB,Al,Si,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W等の1種以上で置換し、皮膜物性を微妙に変化させてもよい。さらに、このクロム窒化物皮膜の形成には、アークイオンプレーティング法が好適に用いられるが、目的によっては、例えばスパッタ法などのPVD法を用いてもよいことはもちろんである。
1 固定型(金型)
17a スタンパー支持面
36 スタンパー
36b 裏面(取付け面)
36c 被膜
17a スタンパー支持面
36 スタンパー
36b 裏面(取付け面)
36c 被膜
Claims (4)
- 成形母体となるスタンパーの金型への取付け面にクロム窒化物を含む被膜を形成したことを特徴とする光ディスク成形用スタンパー。
- 前記クロム窒化物はCrNまたはCr2Nを含み、このクロム窒化物が少なくとも前記被膜の最表面に形成されることを特徴とする請求項1記載の光ディスク成形用スタンパー。
- 前記被膜の表面をX線回折したときに同定されるクロム窒化物がCrNまたはCr2Nを含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク成形用スタンパー。
- 前記被膜はアークイオンプレーティング法によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ディスク成形用スタンパー。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20070501 |