JP2005237203A - :喫煙によって生ずるdna酸化損傷を抑制するに有効な食品組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする喫煙によって生ずるDNA酸化損傷抑制用食品組成物であって、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標とし、尿中に排出される8-OHdGの量を低下せしめるものである。該食品組成物は更に抗酸化性物質を含有させることによって喫煙によって生ずるDNA酸化損傷抑制効果を増大させることが出来る。
Description
疾病・老化の予防のためにはこの酸化ストレスをコントロールし、小さくすることが重要である。
呼吸により吸収される酸素の約2%が活性酸素になるといわれるが、時には10%にも達することがある。本来活性酸素は、生体内ではエネルギーを産生する際や、マクロファージが病原菌などの外界から侵入した異物を攻撃したり、また生体内で不要となった細胞を処理するときにも発生するなど、生体維持に必要かつ有用なものである。こうして生じた活性酸素群のうち、抗酸化システムで捕捉しきれなかった余剰の活性酸素は、脂質やたんぱく質・酵素や、遺伝情報をになう遺伝子DNAを酸化し損傷を与え、生体の構造や機能を乱し、種々の病気を引き起こし、老化を早めている。実際に、ガンや生活習慣病といわれる動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、糖尿病、白内障などが、活性酸素による酸化ストレスが原因で起っていることがわかってきている。
このほか、生活習慣の中でも、過食、深酒、喫煙、激しい運動、睡眠不足、過度の身体的・精神的ストレス、薬物摂取、自動車の排気ガスの吸引、紫外線・放射線暴露など種々の原因により活性酸素群が発生し、酸化ストレスとなり生体に害を及ぼす。
非特許文献2には酸化による2’-dGから8-OHdGの生成が示されている(図1参照)。
また駿河台日本大学 救急医学教室助教授 長尾 建、同大学病院循環器科 川保 博文は、「喫煙は冠動脈疾患に対してリスクファクターともなっている。この原因はタバコの煙には多量のフリーラジカルが含まれており、冠動脈の血管内皮細胞の機能を傷害(血管弛緩作用を有するNOの産生・放出を障害)させ、冠収縮を惹起しやすくなることによると言われる。また、タバコのニコチンはカテコールアミンの分泌を亢進させ、肝臓でのトリグリセリドの合成を促進し、悪玉コレステロールといわれるLDL−コレステロールを増加し、善玉コレステロールであるHDL−コレステロールを減少させる。さらに、喫煙はマクロファージへのHDLの取り込みを促進し、泡沫細胞化を促し、動脈硬化を進展させる。体内に取込まれた一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンに結合しやすく、血管内細胞を酸欠状態にして機能障害を惹起させ、血液粘度を高め血小板凝集能を亢進させたりして、動脈硬化の発生、進展に強く関与している」旨報告している(例えば非特許文献6参照)。
即ち、Haruko Kiyosawa ほかは、20-25才の健康な男性ボランティアに対し、10分間で2本のタバコを喫煙させ、喫煙前と喫煙10分後の血液を採取し、白血球中の8-OHdG量をelectrochemical scanを備えたHPLC(高速液体クロマトグラフィ−)を用いて測定し、8-OHdG/106 dG比を求め、喫煙前のこの比は、平均値が3.3±0.8 であったのに対して喫煙後は5.1±2.5と有意に高かったこと、このことから喫煙は比較的短時間で末梢血球中のDNA酸化損傷を引き起こすことがわかったことを報告している(例えば非特許文献7参照)。また、Steffen Loftらは、83名の40-64才の日常喫煙者及び非喫煙者の健常人(53名の女性を含む)について、2週間食事内容を記録させ2週間後尿中の8-OHdG量をelectrochemical検出器付HPLCによって定量し、喫煙者の8-OHdG排出量は非喫煙者のそれよりも50%も多く、男性喫煙者は女性喫煙者に比べ約30%も多く8-OHdG量を排出していると報告し、さらに、食事からの計算平均抗酸化物質としての、ビタミンC(72±43mg/日)、ビタミンE(5.9±2.7mg/日)、ビタミンA当量(1.1±0.6mg/日)と8-OHdG量の相関性を検討して、関連性がなかったとしている(例えば非特許文献8参照)。
このように、喫煙による生体の酸化ストレスを評価する有用且つ簡便な方法の一つとして、血中または尿中の8-OHdG量を測定する方法が挙げられるのである。
そして、これら喫煙に限らずDNA酸化損傷を、健康食品や食事によって改善しようとする検討が報告されている。
鎌田 靖弘、立花 寛ほかは、境界型糖尿病患者10人および健常者12人に、発酵グァバ粒7粒(1.4g)を毎食後、3ヶ月摂取させた結果、発酵グァバの摂取は、食後の急激な血糖上昇を抑制し、インスリン分泌促進や感受性改善などに効果を示し、尿中の8-OHdGを低下させることを見出している(例えば非特許文献11参照)。
金谷 節子、三浦綾子らは、ボランティア非喫煙者50名に対し、アンチオキシダントを多く含むようにデザインした食事(高ORAC食)を摂取させ、尿中酸化損傷バイオマーカー、8-OHdG、フリーラジカルによる非酵素的脂質酸化マーカー尿8-isoprostane 2F α(8-iso-PGF2α)の変化を栄養介入前後で比較し、8-OHdG値は、栄養介入により有意に低減することを発表している(例えば非特許文献12参照)。
以上のように、世界的に喫煙率は低下しているものの、我国では近年20才代の女性を中心としての喫煙率は上昇しており、将来的な健康への影響が懸念される。したがって、喫煙によるDNA酸化損傷を抑制することのできるように改善された食事の摂取および抗酸化健康食品の提案が望まれる。
しかし、喫煙者や受動喫煙者のDNAの酸化損傷の改善には、前記のように発酵グァバ粒の摂取、およびアンチオキシダントを多く含むようにデザインした食事(高ORAC食)の摂取が、DNA酸化損傷のバイオマーカーとしての尿中の8-OHdGを低減することに有効であることが報告されているにすぎない。
本発明者は、生体に害を及ぼす酸化ストレスの一つである喫煙によるDNA酸化損傷を、尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標として、尿中に排出される8-OHdGの量を低下せしめるに有効な食品組成物を提供するものである。
すなわち、本発明は、生体に害を及ぼす酸化ストレスの一つである喫煙によるDNA酸化損傷を、尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標として、松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上を有効成分とする、8-OHdGを低下せしめるに有効な食品組成物を提供することを特徴とするものである。
本発明で用いる松樹皮抽出物としては、市販されているフランス海岸松樹皮抽出物(例えば商品名「ピクノジェノール」スイス、ホファー・リサーチ社製造、日本シーベルヘグナー(株)販売、商品名「フラバンジェノール」(株)東洋新薬販売)、同じく市販されているフィンランド産松樹皮抽出物(例えば商品名「フィンジェノール」)、および同じく市販されているニュージーランド産松樹皮抽出物(例えば商品名「エンゾジノール」)などを挙げることができる。
またブドウ種子抽出物としては市販されているもの(例えば商品名「グラヴィノール」(キッコーマン(株)製造・販売)、および落花生種皮抽出物としては市販されているもの(例えば商品名「PAQ」((株)エフェクト社販売))などを挙げることができる。
これらは、抽出原料由来植物によって含有するプロアントシアニジン化合物の量と化学構造は多少異なるものの、ほとんどプロアントシアニジン系ポリフェノール類であり、図2にそれらの化学構造の代表例を示した。またプロアントシアニジンを含有する植物抽出物には、主要構成成分として、プロシアニジンB1、−B3、−B6、−B7、−C1およびプロシアニジン C2などが挙げられ、補助的成分としてはhydroxy benzoic acid(p−オキシ安息香酸)、vanillic acid(バニリン酸)p−cumaric acid(p−オキシ桂皮酸)、ferulic acid(フェルラ酸)、vanilline(バニリン)、caffeic acid(3,4−ジオキシ桂皮酸)、gallic acid(没食子酸)、(+)−catechin(カテキン)およびこれらのエステル化合物などが挙げられるが、その具体的な代表的構成成分の一部を図3に示した。
さらに、フランス海岸松樹皮抽出物の持つ薬理効果は多彩で、人の脳血流障害の改善、動脈硬化症による末梢血流障害の改善、血栓予防、ADHD(注意欠陥多動障害=いわゆる,落ち着きのない子、多動児)への改善・治癒効果、月経困難症、子宮内膜症の治療薬、糖尿病性網膜症、美肌効果、鎮痛作用、不眠の改善・治療、こむら返りの治療、慢性疲労症候群;CFS(chronic farigue symdrome)の改善・治療、その他、足のむくみ、静脈瘤、花粉症や喘息等のアレルギー性疾患、眼精疲労、糖尿病、インフルエンザ、癌の予防といった疾患の改善・治療効果があるとされている。
また、フランス海岸松樹皮抽出物の安全性については、過去30年以上に亘り、フランス、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本などの研究者によって安全が確認されている。
さらに、落花生種皮(通称、赤皮)抽出物も、松樹皮抽出物やぶどう種子抽出物と同様、プロアントシアニジン系ポリフェノールを含有し、含有量は約90%以上といわれる。まだその薬理作用についての報告は少ないが、造血機能回復効果、花粉症治癒効果および美白効果などを挙げることができる。
スクワレンは、ヒト生体内では主として肝臓、皮膚組織内で産生され、種々の臓器、組織に分布・存在していることが知られている。生体内ではビタミンD3前駆体、コレステロールに代謝し、さらにコレステロールからは男性・女性ホルモン、コルチゾールなどの副腎皮質ホルモン、胆汁酸などに代謝していく生体内の免疫に係わる重要な脂溶性内因性抗酸化剤であることは多くの生化学教科書に記載されている。さらに、スクワレンは表皮皮脂構成成分であり、皮膚を健康に保つのに重要な役割を果たしていることは広く知られているが、年齢と共に減少したり、ストレスなどにより減少するため、鮫肝油エキスの名で健康食品として摂取される長い使用実績を有し、愛好者も多い。スクワレンの水素添加物であるスクワランは化粧品、医薬部外品、医薬品の原料として安全性の高い原料として認識されている。
またスクワレンは我々人間にとって、太陽光線からの紫外線を防御するための皮膚組織の中で最も重要な脂溶性内因性抗酸化剤であることも知られている。
古くから漁民の間ではスクワレンを含む鮫肝油を民間薬的に食してきた。深海に生息するある種の鮫の肝臓に特異的に多不飽和炭化水素が存在することを、1907年辻本 満丸博士が発見し,1916年スクワレンと命名して以来、世界各国の多くの研究者が研究をしている。スクワレンの摂取効果については、動物実験およびヒトでの臨床試験結果など数多く発表されているが、代表的なものとして、血中コレステロールの低減、化学療法剤の抗腫瘍効果を高める、癌の成長の抑制、免疫システムの効果の増大、肝機能の改善などが挙げられる。
以上のようにスクワレンについてはいくつかの効果が期待されるものである。
キサントフィルを含むカロテン類も、優れた脂溶性抗酸化物質であり、その摂取効果はビタミンA前駆体としての役割は深く認識されている。中でもルテイン、ゼアキサンチンは網膜黄斑部に特異的に存在するなど、活性酸素傷害防御に役立つことが知られている。配合に当たっては、上記カロテン類単品ではなく、パーム油から抽出されるカロテン混合物が望ましい。
本発明では、松樹皮抽出物(例えば上述の商品名「ピクノジェノール」、「フラバンジェノール」および「エンゾジノール」)、ブドウ種子抽出物(例えば商品名「グラヴィノール」および落花生種皮抽出物(例えば商品名「PAQ」)などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物は、1日20mg以上、好ましくは60mg以上120mg以下摂取することが望まれる。1日120mg以上の摂取は松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物が比較的高価であり、特別な目的で摂取する以外には一般的に経済的ではない。
本発明で用いる有効成分としての松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上と、組み合わせ配合するに好ましい抗酸化物質の、スクワレン、ビタミンE、カロテン類などの脂溶性抗酸化物及びビタミンCなどの水溶性抗酸化物の配合は、それぞれ摂取習慣量や公的摂取基準に基づくことが好ましい。特に脂溶性抗酸化物の摂取量は、スクワレンについては100mg〜3,000mg/日、ビタミンEは第6次改訂日本人の栄養所要量(1999.10)によると、成人の許容上限摂取量がα−トコフェロール当量として、1日600mgとされ、又栄養機能食品の栄養素としてのビタミンE量の配合限度量は上限150mg、下限3mgと定められているので、この範囲量であれば量は問わないが、1日50mg以上の摂取が好ましい。
更にカロテン類はビタミンA前駆体として知られ、体内でのビタミンAが不足するとビタミンAに転換することから、公的には上限値は定められていないが、栄養機能食品の栄養素としてのビタミンAとしての配合限度量はレチノール当量として、上限2000IU(1IU=0.33μgであるので660μg)、下限600IU(=198μg)である。β−カロテンのビタミンA当量は約10〜43%であるので、これらの値を参考にすると460〜6600μgの間の量を配合することが好ましい。水溶性のビタミンCについては栄養機能食品として食品の公定書(厚生労働省)が定めた35〜1000 mg/日程度を摂取するよう配合することが好ましい。
本発明で用いる有効成分としての松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上と、組み合わせ配合する抗酸化物質との重量配合割合は、植物抽出物:抗酸化物質=1:0〜1:100、好ましくは1:0〜1:15の範囲である。このものに賦型剤、増量剤、乳化剤、香料、着色剤など添加剤を剤型等に応じて常法に従い含有させることが出来るが、これら添加剤の配合量は上記植物抽出物および抗酸化物質の総量に対して0ないし50の重量割合とすることが出来る。
また、摂取に当たっては形態に応じ、好ましくは1日の摂取量を2〜数回に分けて摂取することができる。形態によって、賦型剤、増量剤、乳化剤、香料、着色剤およびその他の抗酸化剤など定法に従い添加することができる。これら添加剤の配合量は剤型等に応じて常法に従い適宜決めることが出来る。
〔実施例1〕
*(注):Brinkmann指数:1日の喫煙本数×喫煙年数
抗酸化天然成分としてフランス海岸松エキス(商品名PYCNOGENOL60mg/日)を14日間服用し、服用前、服用後3、7、14日目、服用終了後1カ月目の尿中8- OHdGを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定した。
<結果>
服用3日目の尿中8- OHdGは、クレアチニン換算値で3.8±1.4ng/mgCRE(平均±標準偏差)で、服用前の5.4±1.4ng/mgCREより有意に低下していた(p<0.01)。服用終了後1ヶ月目の尿中8-OHdGは、4.9±1.8ng/mgCREであり、投薬中止によって再上昇した。
<結果>
抗酸化天然成分であるフランス海岸松エキス(PYCNOGENOL)は、喫煙によるDNA酸化傷害を抑制することが示唆された。
〔実施例2〕
*(注):Brinkmann指数:1日の喫煙本数×喫煙年数
<試験物質>
1.(株)ハーバー研究所品、商品名「ピクエース」
内容量:250mg
内容成分:フランス海岸松エキス(商品名ピクノジェノール) 15mg
スクワレン 138.9mg
ビタミンE 56.1mg
ミツロウ 40mg
<服用方法> 1.「ピクエース」:朝、夕2回、2カプセル・・・4カプセル/日、14日間内服
<尿の採取法>
1.早朝一番尿を採取し、直ちに−20℃で保存、
2.採取日:0、3、7、14、44日(服用後1ケ月後)
<8- OHdG>の測定 :高速液体クロマトグラフィーによる。
8- OHdGはng/mgで測定されるが、尿の濃度差を補正するため、尿中のクレアチン濃度で除して表示した。
結果を表1および図4に示した。
Claims (7)
- プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷の抑制用食品組成物。
- プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物から選ばれた1種以上である請求項1記載の食品組成物。
- 尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標とし、尿中に排出される8-OHdGを低下せしめるものである請求項1または2記載の食品組成物。
- プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が、フランス海岸松樹皮抽出物である請求項1、2または3記載の食品組成物。
- プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を20mg/日〜120mg/日となるように配合してなる、請求項1、2、3または4記載の食品組成物。
- 更に抗酸化性物質を含有する請求項1、2、3、4または5記載の食品組成物。
- 抗酸化性物質が水溶性抗酸化物質のビタミンC、脂溶性抗酸化物のスクワレン、ビタミンEおよびカロテン類から選ばれる一種以上である請求項6記載の食品組成物。
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